JP6913534B2 - クランキング制御装置 - Google Patents

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Description

本開示は、車両等におけるクランキングの動作を制御するクランキング制御装置に関する。
自動車等の車両に適用される内燃機関(エンジン)を始動させる際には、スタータモータを用いたスタータ機構が利用される(例えば、特許文献1参照)。このようなスタータ機構においては、スタータモータを用いてピニオンギヤを回転駆動し、このピニオンギヤとリングギヤとの噛み合いを利用してエンジンのクランクシャフトを回転させることで、エンジンを始動させるクランキングが開始されるようになっている。
特開2015−25443号公報
このようなクランキングの動作を制御する際には、一般に、車両等の商品性を向上させることが求められている。商品性を向上させることが可能なクランキング制御装置を提供することが望ましい。
本開示の一実施の形態に係るクランキング制御装置は、エンジンのクランクシャフトと共に回転するリングギヤに対してスタータモータのピニオンギヤを噛み合わせるとともにスタータモータの回転を開始させるクランキング開始制御と、リングギヤとピニオンギヤとの噛み合いを解除させるとともにスタータモータの回転を停止させるクランキング停止制御と、を行う制御回路を備えたものである。この制御回路は、以下の条件(A),(B)が成立した後、以下の条件(C)が成立したときに、上記クランキング停止制御を行うと共に、以下の条件(D),(E),(F)においてそれぞれ示される異常発生時のうちのいずれかに該当すると判定された場合には、上記条件(D),(E),(F)においてそれぞれ示されるタイミングにて、上記クランキング停止制御を行う
(A)上記クランクシャフトの回転数であるクランク回転数が、第1の閾値を超えていること
(B)上記クランクシャフトの角加速度であるクランク角加速度の符号が反転したこと
(C)上記クランクシャフトが、上記クランク角加速度の符号が反転したタイミングである反転タイミングにおける回転角度位置から、所定の遅延角度だけ回転したこと
(D)上記クランク回転数が限界回転数に対応する第2の閾値を超えた、という上記異常発生時:即時に上記クランキング停止制御を行う
(E)上記クランキング開始制御が行われてから限界時間に対応する第1の期間が経過した、という上記異常発生時:即時に上記クランキング停止制御を行う
(F)上記クランク回転数が、上記第1の閾値よりも大きいと共に上記第2の閾値よりも小さい第3の閾値を超えた、という上記異常発生時:第2の期間の経過後に上記クランキング停止制御を行う
本開示の一実施の形態に係るクランキング制御装置によれば、商品性を向上させることが可能となる。
本開示の一実施の形態に係るクランキング制御装置を内蔵した車両の概略構成例を表す模式図である。 図1に示したパワーユニットの詳細構成例を表す模式図である。 図2に示したピニオンギヤとリングギヤとの噛み合い状態の例を表す模式図である。 図2に示したパワーユニットに適用されるクランキング制御システムの概略構成例を表す模式ブロック図である。 図4に示したスタータリレー等の詳細構成例を表す模式図である。 スタータリレーのオフ状態時におけるクランキング制御システムの動作状態例を表す模式ブロック図である。 スタータリレーのオン状態時におけるクランキング制御システムの動作状態例を表す模式ブロック図である。 ピニオンギヤとリングギヤとの接触面圧が高い状態の例を表す模式図である。 ピニオンギヤとリングギヤとの接触面圧が低い状態の例を表す模式図である。 実施の形態に係るクランキング停止制御の一例を表す流れ図である。 図9に示したクランキング停止制御の一例を表すタイミング図である。 図4に示した水温テーブルの一例を表す模式図である。 変形例1に係るクランキング停止制御の一例を表すタイミング図である。 変形例2に係るクランキング停止制御の一例を表すタイミング図である。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(クランク角加速度の正から負への最初の反転タイミングを適用する例)
2.変形例
変形例1(クランク角加速度の負から正への反転タイミングを適用する場合の例)
変形例2(クランク角加速度の2番目の反転タイミングを適用する場合の例)
3.その他の変形例
<1.実施の形態>
[車両1の概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係るクランキング制御装置(後述するコントロールユニット15)を内蔵する車両1の概略構成例を、模式的に表したものである。車両1は、この例では四輪の自動車として構成されている。この車両1は、車体10内に、パワーユニット(駆動ユニット)としてのエンジン2、自動変速機3、トルクコンバータ4およびスタータ機構5を備えている。
エンジン2は、車両1の動力を発生させるものであり、各種の内燃機関を用いて構成されている。自動変速機3は、エンジン2において発生した動力を、車両1の走行に適した変速比で各駆動輪へ伝達する機構である。トルクコンバータ4は、エンジン2から出力される動力を、自動変速機3へと伝達する機構である。スタータ機構5は、停止状態のエンジン2を始動させる(クランキングを行う)際に用いられる機構であり、後述するスタータモータ51等を含んで構成されている。
[パワーユニットの詳細構成]
図2は、上記したパワーユニット(エンジン2、自動変速機3、トルクコンバータ4およびスタータ機構5)の詳細構成例を、模式的に表したものである。
(エンジン2)
エンジン2には、図2に示したように、その構成部品の1つとして、クランクシャフト20が設けられている。このクランクシャフト20は、エンジン2内のピストンにおける往復運動を回転力に変えるための軸である。
(自動変速機3)
自動変速機3は、図2に示したように、入力軸321を有している。この入力軸321は、トルクコンバータ4に接続されている。エンジン2から出力されてトルクコンバータ4を介して伝達された動力は、入力軸321に入力された後、変速機構を介して各駆動輪へ伝達されるようになっている。
(トルクコンバータ4)
トルクコンバータ4は、図2に示したように、コンバータケース40内に、ポンプインペラ411、タービンランナ412およびロックアップクラッチ413を有している。このトルクコンバータ4にはまた、リングギヤ42が設けられている。
ポンプインペラ411は、コンバータケース40に固定されている。このポンプインペラ411は、トルクコンバータ4内の作動油を介して動力を伝達するための部材であり、この作動油の流れを発生させるようになっている。
タービンランナ412は、コンバータケース40内において、ポンプインペラ411に対向する位置に配置されている。このタービンランナ412は、ポンプインペラ411により発生された作動油の流れを利用して動力を伝達するための部材である。
ロックアップクラッチ413は、動力の伝達効率を向上させるための部材であり、例えば車両1の定常走行時に締結されるようになっている。
リングギヤ42は、コンバータケース40の外周部分に固定されており、エンジン2におけるクランクシャフト20の回転と連動して回転するギヤである。このリングギヤ42は、詳細は後述するが、前述したエンジン2のクランキングを行う際に、スタータ機構5におけるピニオンギヤ52と噛み合うようになっている。
(スタータ機構5)
スタータ機構5は、図2に示したように、スタータモータ51を有している。また、このスタータモータ51には、ピニオンギヤ52が設けられている。
スタータモータ51は、前述したエンジン2のクランキングを行う際に用いられるモータである。具体的には、以下説明するピニオンギヤ52と前述したリングギヤ42との噛み合いを利用して、このスタータモータ51の回転をエンジン2のクランクシャフト20に伝達して回転させることで、クランキングが開始されるようになっている。すなわち、このスタータモータ51の回転を利用して、エンジン2を始動させるようになっている。なお、このようなクランキングの開始制御の詳細については、後述する。
ピニオンギヤ52は、スタータモータ51の回転と連動して回転するギヤである。このピニオンギヤ52は、図2中の破線の矢印d1で示したように、リングギヤ42に噛み合う位置である突出位置と、リングギヤ42と噛み合わない位置である退避位置との間で、双方向に移動可能となっている。そして、ピニオンギヤ52が突出位置に移動してリングギヤ42と噛み合うことで、スタータモータ51の回転がコンバータケース40を介してクランクシャフト20に伝達され、クランキングが開始されるようになっている。
ここで、図3は、このようなピニオンギヤ52とリングギヤ42との噛み合い状態の例を、平面図(X−Y平面図)にて模式的に表したものである。なお、図3においては、クランクシャフト20におけるX−Y平面内での配置位置(クランクシャフト20はZ軸方向に延在)と、上記したピニオンギヤ52の移動方向(図2中の矢印d1の方向)とについても、模式的に図示している。この図3中に示した領域P1では、ピニオンギヤ52における歯520と、リングギヤ42における歯420とが、互いに噛み合う状態となっている。そして、この噛み合い状態において、ピニオンギヤ52が例えば回転方向d21に沿ってX−Y平面内を回転すると、その回転に連動して、リングギヤ42が例えば回転方向d22に沿ってX−Y平面内を回転するようになっている。
[クランキング制御システムの構成]
続いて、図4および図5を参照して、これまでに説明したパワーユニットに適用される、クランキング制御システムの構成例について説明する。
図4は、このようなクランキング制御システムの概略構成例を、模式的にブロック図で表したものである。このクランキング制御システムは、前述したエンジン2のクランキング動作の制御を行うシステムである。図4に示したように、このクランキング制御システムは、前述したトルクコンバータ4およびスタータ機構5に加え、スタータスイッチ11、バッテリ12、スタータリレー13、クランク角センサ141、水温センサ142およびコントロールユニット15を備えている。
スタータスイッチ11は、車両1の運転者による車両1の始動操作(スタータスイッチ11に対する押し操作)がなされるスイッチである。このような運転者による始動操作に伴って、車両1の始動指示を示す操作信号Smが、スタータスイッチ11からコントロールユニット15へと供給されるようになっている。
バッテリ12は、スタータモータ51を動作させるための電力Peを、スタータリレー13を介してスタータモータ51へと供給するためのバッテリである。このようなバッテリ12は、例えば、12Vの鉛蓄電池等により構成されている。
(スタータリレー13)
スタータリレー13は、図4に示したように、バッテリ12とスタータモータ51との間の経路(電力Peの供給経路)上に配置されている。このスタータリレー13は、コントロールユニット15から供給される制御信号Scに従って、この経路を接続または遮断させるためのスイッチ素子である。具体的には、スタータリレー13が制御信号Scによってオン状態に設定されると、バッテリ12とスタータモータ51との経路が接続され、バッテリ12からスタータモータ51へと電力Peが供給されるようになっている。一方、スタータリレー13が制御信号Scによってオフ状態に設定されると、バッテリ12とスタータモータ51との経路が遮断され、バッテリ12からスタータモータ51へは電力Peが供給されないようになっている。
図5は、このようなスタータリレー13の詳細構成例を、バッテリ12、スタータモータ51およびピニオンギヤ52と共に、模式的に表したものである。この例ではスタータリレー13は、マグネットスイッチを用いて構成されており、図5に示したように、接点130、コイル131、可動鉄心(プランジャ)132およびシフトレバー133を有している。
接点130は、スタータリレー13の接点部分であり、バッテリ12とスタータモータ51との間の経路上に配置されている。コイル131は、マグネットスイッチにおける固定子として機能する素子である。このコイル131の一端には、図5に示したように、前述した制御信号Scがコントロールユニット15から供給されると共に、コイル131の他端は、バッテリ12と接点130との間の経路上に接続されている。可動鉄心132は、コイル131内を延伸するように配置されており、この延伸方向に沿って移動可能に構成されている。この可動鉄心132の一端は、シフトレバー133に接続されていると共に、可動鉄心132の他端は、接点130と接触して接点130を閉じさせることが可能となっている。シフトレバー133の一端は、スタータモータ51とピニオンギヤ52との間の経路上に配置されており、シフトレバー133の他端は、可動鉄心132の一端に接続されている。
このような構成のスタータリレー13では、制御信号Scが供給されてコイル131に電流が流れると、このコイル131に発生する磁気によって、例えば図5中の破線の矢印d0で示した方向に、可動鉄心132が移動する。このような可動鉄心132の移動により、接点130が閉じられてバッテリ12からスタータモータ51に電力Peが供給されることで、スタータモータ51が動作する(回転を開始する)。それとともに、シフトレバー133を介して、例えば図5中の破線の矢印d1(前出)で示した方向に、ピニオンギヤ52が移動する。このようにして、スタータリレー13に制御信号Scが供給されることで、スタータモータ51が回転を開始すると共に、ピニオンギヤ52が前述した突出位置に移動してリングギヤ42と噛み合う状態となる結果、エンジン2のクランキングが開始されるようになっている。
図4に示したクランク角センサ141は、エンジン2の近傍に配置されており、クランクシャフト20の回転角度(クランク角Ac)を示すパルス信号を出力するセンサである。このようにしてクランク角センサ141において検知されたクランク角Ac(出力されたパルス信号)は、コントロールユニット15へ供給されるようになっている。なお、このようなクランク角センサ141は、例えば磁気センサを用いて構成されている。
水温センサ142もまた、エンジン2の近傍に配置されており、このエンジン2の温度に対応するエンジン水温Tw(例えばエンジン2の冷却水の温度等)を検知するセンサである。このようにして水温センサ142において検知されたエンジン水温Twは、コントロールユニット15へ供給されるようになっている。
(コントロールユニット15)
コントロールユニット15は、パワーユニット全体の動作を制御するユニットであり、いわゆるエンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)として機能する部分である。このコントロールユニット15は、演算処理部としてのCPU(Central Processing Unit)を備えると共に、各種の制御プログラムや演算式、後述する水温テーブル150等の各種データなどを格納するROM(Read Only Memory)と、一時的にデータを格納するRAM(Random Access Memory)とを備えている。なお、このようなコントロールユニット15は、本開示における「クランキング制御装置」および「制御回路」の一具体例に対応している。
ここで、本実施の形態のコントロールユニット15は、前述したエンジン2のクランキング動作を制御するようになっている。具体的には、コントロールユニット15は、エンジン2のクランクシャフト20と共に回転するリングギヤ42に対して、スタータモータ51におけるピニオンギヤ52を噛み合わせるとともに、スタータモータ51の回転を開始させる、クランキング開始制御を行う。また、コントロールユニット15は、リングギヤ42とピニオンギヤ52との噛み合いを解除させるとともに、スタータモータ51の回転を停止させる、クランキング停止制御を行う。なお、コントロールユニット15は、このようなクランキング動作の制御(クランキング開始制御およびクランキング停止制御)を、供給された操作信号Sm、クランク角Acおよびエンジン水温Tw等の各種信号および各種パラメータに基づいて行うようになっている。
また、特に本実施の形態では、コントロールユニット15は、例えば以下の条件(A),(B),(C)の全てが成立したときに、上記したクランキング停止制御を行う。具体的には、コントロールユニット15は、条件(A),(B)が成立した後、条件(C)が成立したときに、クランキング停止制御を行うようになっている。なお、条件(A)における閾値Nth1は、本開示における「第1の閾値」に一具体例に対応し、エンジン2が始動する回転数に設定されるようになっている。また、このようなクランキング停止制御の詳細については、後述する。
(A)クランクシャフト20の回転数であるクランク回転数Ncが、閾値Nth1を超えていること(Nc>Nth1)
(B)クランクシャフト20の角加速度であるクランク角加速度αcの符号(極性)が、反転したこと
(C)クランクシャフト20が、上記したクランク角加速度αcの符号の反転タイミングにおける回転角度位置から、所定の遅延角度ΔAdだけ回転したこと
[動作および作用・効果]
(A.クランキング制御システムの基本動作)
図4に示したクランキング制御システムでは、例えば以下のようにして、エンジン2におけるクランキング動作の制御(クランキング開始制御およびクランキング停止制御)が行われる。
(クランキング開始制御)
すなわち、まず、リングギヤ42に対してピニオンギヤ52を噛み合わせるとともにスタータモータ51の回転を開始させるクランキング開始制御が、以下のようにして行われる。
具体的には、最初に、図6に模式的に示したエンジン2の停止状態では、クランキング制御システムは以下のようになっている。すなわち、このエンジン2の停止状態では、車両1の始動指示を示す操作信号Smが、スタータスイッチ11からコントロールユニット15へは供給されていない。したがって、コントロールユニット15からの制御信号Scによって、スタータリレー13がオフ状態に設定され、バッテリ12とスタータモータ51との経路が遮断されると共に、バッテリ12からスタータモータ51へは電力Peが供給されない。その結果、図6中に模式的に示したように、スタータモータ51の動作が停止していると共に、ピニオンギヤ52が前述した退避位置に設定されてリングギヤ42とは噛み合わない状態となっている。
ここで、例えば図7に模式的に示したように、車両1の始動指示を示す操作信号Smが、スタータスイッチ11からコントロールユニット15へ供給されると、このクランキング制御システムでは、以下のようにしてクランキング開始制御が行われる。すなわち、コントロールユニット15からの制御信号Scによって、スタータリレー13がオン状態に設定され、バッテリ12とスタータモータ51との経路が接続されると共に、バッテリ12からスタータモータ51へ電力Peが供給されるようになる。その結果、図7中に模式的に示したように、スタータモータ51が動作(回転)を開始すると共に、ピニオンギヤ52が前述した突出位置に移動して(破線の矢印d1参照)、リングギヤ42と噛み合う状態となる。そして前述したように、ピニオンギヤ52がリングギヤ42との噛み合い状態に設定されると、スタータモータ51の回転がコンバータケース40を介してクランクシャフト20に伝達されることで、クランキングが開始される。
(クランキング停止制御)
続いて、このようにしてクランキングが開始された後、コントロールユニット15においてエンジン2の始動が完了したと判断されると、以下のようにして、クランキング停止制御が行われる。すなわち、リングギヤ42とピニオンギヤ52との噛み合いが再び解除されるとともに、スタータモータ51の回転が停止させられる。
具体的には、図6を再び参照すると、このクランキング停止制御では、まず、コントロールユニット15からの制御信号Scによって、スタータリレー13が再びオフ状態に設定される。したがって、バッテリ12とスタータモータ51との経路が再び遮断されると共に、バッテリ12からスタータモータ51に対して、電力Peが再び供給されないようになる。その結果、図6中に模式的に示したように、スタータモータ51の動作(回転)が停止すると共に、ピニオンギヤ52が再び退避位置に移動して戻ることで、リングギヤ42とは噛み合わない状態となる。このようにして、エンジン2の始動完了後に、クランキングが停止される。
(B.クランキング停止制御の詳細について)
ここで、このようなクランキング停止制御の際に、例えば以下のような問題が生じ得る。すなわち、まず、上記したように、ピニオンギヤ52をリングギヤ42との噛み合い状態から退避位置に戻すとき、ピニオンギヤ52はリングギヤ42と摺動しながら引っ込むことになる。この際に、ピニオンギヤ52の先端は細くなっているため、エンジン2の回転変動に伴ってリングギヤ42が回転変動すると、ピニオンギヤ52とリングギヤ42との間で歯当たりが発生し易くなる。
具体的には、例えば図8Aに模式的に示したように、ピニオンギヤ52の歯520とリングギヤ42の歯420との接触面圧が高い状態で、ピニオンギヤ52がリングギヤ42から摺動しながら引っ込むと、離れる瞬間に歯当たりが発生するおそれがある(符号P21参照)。このような歯当たりが発生すると、そのときの振動がリングギヤ42からトルクコンバータ4に伝わり、耳障りな金属音(異音)が響くケースがある。このようにして、ピニオンギヤ52とリングギヤ42との間での接触面圧が高い状態での噛み合いの解除動作に起因して、異音が発生するケースがあると、車両1の商品性が低下するおそれがある。
そこで本実施の形態では、例えば図8Bに示したように、ピニオンギヤ52の歯520とリングギヤ42の歯420との接触面圧が低くなるタイミングを捉え(符号P22参照)、そのタイミングにて、ピニオンギヤ52がリングギヤ42から離れて退避位置に戻るようにしている。すなわち、コントロールユニット15は、そのような接触面圧が低くなるタイミング(ピニオンギヤ52とリングギヤ42との間での歯当たりが生じにくいタイミング)を検出し、そのタイミングにて、上記したクランキング停止制御を実行するようにしている。
(本実施の形態のクランキング制御動作)
以下、図9〜図11を参照して、本実施の形態のクランキング制御動作(クランキング停止制御)の詳細について説明する。図9は、本実施の形態のクランキング停止制御の一例を、流れ図で表したものである。図10は、図9に示したクランキング停止制御の一例を、タイミング図で表したものである。具体的には、この図10では、前述したクランク回転数Nc(エンジン回転数に対応)、クランクシャフト20の角速度であるクランク角速度ωcの逆数(1/ωc)、および、前述したエンジン水温Twのタイミング波形を、それぞれ示している。また、図11は、図4に示した水温テーブル150の一例を、模式的に表したものである。
本実施の形態のクランキング停止制御では、まず、コントロールユニット15は、前述した条件(A)が成り立つのか否か、すなわち、クランク回転数Ncが閾値Nth1を超えている(Nc>Nth1)のか否かを判定する(図9のステップS11)。具体的には、コントロールユニット15は、クランク角センサ141から供給される、クランク角Acを示すパルス信号に基づいて、エンジン2の回転数に対応するクランク回転数Ncを算出し、算出したクランク回転数Ncと閾値Nth1との大小関係を判定する。なお、この閾値Nth1は、後述するようにエンジン水温Twに応じて変動する値(図11参照)であるものの、例えば、600〜900(rpm:回転毎分)程度の値である。
ここで、クランク回転数Ncが閾値Nth1を超えていない(Nc≦Nth1)と判定された場合(ステップS11:N)、再びステップS11へと戻ることになる。
一方、例えば図10中の矢印P31(タイミングt1)で示したように、クランク回転数Ncが閾値Nth1を超えている(Nc>Nth1)と判定された場合(ステップS11:Y)、以下のようになる。つまり、次にコントロールユニット15は、前述した条件(B)が成り立つのか否か、すなわち、クランク角加速度αcの符号(極性)が反転したのか否かを判定する(ステップS12)。
具体的には、コントロールユニット15は、まず、クランク角センサ141から供給されるクランク角Acを示すパルス信号における、立ち上がりおよび立ち下りの各タイミングに同期して、クランク角速度ωcを算出する。そして、コントロールユニット15は、このクランク角速度ωcにおける算出サイクル間の(時間軸に沿った)増減傾向(=クランク角加速度αc)を算出し、このクランク角加速度αcにおける正負の符号の反転タイミングを検出する。
また、本実施の形態では、例えば図10中の矢印P32(タイミングt2)で示したように、コントロールユニット15は、上記した条件(A)が成立した後において、クランク角加速度αcの符号が、最初に正(+)から負(−)へ反転したタイミングを検出する。なお、図10では、クランク角速度ωcの逆数(1/ωc)のタイミング波形を示しているため、以下のことが言える。すなわち、(1/ωc)の時間変化が減少(負)から増加(正)に反転したタイミングが、クランク角加速度αcの符号における、正から負への反転タイミング(タイミングt2)に相当する。なお、このタイミングt2は、本開示における「反転タイミング」の一具体例に対応している。
ここで、クランク角加速度αcの符号が反転していないと判定された場合(ステップS12:N)、再びステップS11へと戻ることになる。
一方、例えば図10中の矢印P32(タイミングt2)で示したように、クランク角加速度αcの符号が反転したと判定された場合(ステップS12:Y)、以下のようになる。つまり、次にコントロールユニット15は、前述した条件(C)が成り立つのか否か、すなわち、クランクシャフト20が上記した反転タイミング(タイミングt2)における回転角度位置から所定の遅延角度ΔAdだけ回転したのか否かを判定する(ステップS13)。なお、この遅延角度ΔAdは、後述するようにエンジン水温Twに応じて変動する値(図11参照)であるものの、例えば、0〜90(deg:度)程度の値である。
この際にコントロールユニット15は、具体的には、クランク角センサ141から供給されるクランク角Acを示すパルス信号に基づいて、クランクシャフト20が上記した反転タイミングの回転角度位置から遅延角度ΔAdだけ回転したのか否かを判定する。なお、この際にコントロールユニット15は、この遅延角度ΔAdを、上記した反転タイミングからの遅延時間Δtdを用いて間接的に規定するようにしてもよい。これは、条件(C)における遅延角度ΔAdは、クランキング停止制御を実行する際における、コントロールユニット15での制御タイミングから、各機構(ピニオンギヤ52など)が実際に動作するまでの、機械的な遅延時間を考慮したものであるからである。ただし、遅延角度ΔAdを用いて直接的に算出処理を行う場合のほうが、遅延時間Δtdを用いて間接的に規定して算出処理を行う場合と比べ、コントロールユニット15における算出処理が簡易となるため、好ましいと言える。
ここで、クランクシャフト20がタイミングt2から遅延角度ΔAdだけ回転していない(あるいは、タイミングt2から遅延時間Δtdが経過していない)と判定された場合(ステップS13:N)、後述するステップS15〜S17(異常発生の判定)へと進む。
一方、例えば図10中の矢印P33(タイミングt3)で示したように、クランクシャフト20がタイミングt2から遅延角度ΔAdだけ回転した(あるいは、タイミングt2から遅延時間Δtdが経過した)と判定された場合(ステップS13:Y)、以下のようになる。つまり、コントロールユニット15は、前述した制御信号Scを用いて、スタータリレー13を即時にオフ状態に設定することで、クランキング停止制御を実行する(ステップS14)。これにより前述したように、リングギヤ42とピニオンギヤ52との噛み合いが解除されるとともに、スタータモータ51の回転が停止させられる。以上により、図9に示した一連の処理(クランキング停止制御)が終了となる。
ここで、上記したステップS15〜S17(異常発生の判定)では、コントロールユニット15は、具体的には以下の処理を行う。すなわち、コントロールユニット15は、以下の条件(D),(E),(F)においてそれぞれ示される異常発生時のうちのいずれかに該当すると判定された場合には、条件(D),(E),(F)において示される各タイミングにて、クランキング停止制御を実行する。
(D)クランク回転数Ncが限界回転数に対応する閾値Nth2を超えた、という異常発生時:即時にクランキング停止制御を行う
(E)クランキング開始制御が行われてから限界時間に対応する期間Δt1が経過した(クランキングが期間Δt1の間、継続している)、という異常発生時:即時にクランキング停止制御を行う
(F)クランク回転数Ncが閾値Nth3(Nth2>Nth3>Nth1)を超えた(Nc>Nth3)、という異常発生時:期間Δt2の経過後にクランキング停止制御を行う
なお、条件(D)における閾値Nth2は、本開示における「第2の閾値」に一具体例に対応すると共に、条件(F)における閾値Nth3は、本開示における「第3の閾値」に一具体例に対応している。また、条件(E)における期間Δt1は、本開示における「第1の期間」に一具体例に対応すると共に、条件(F)における期間Δt2は、本開示における「第2の期間」に一具体例に対応している。
このような異常発生の判定では、詳細にはまず、コントロールユニット15は、前述した条件(D)が成り立つのか否か、すなわち、クランク回転数Ncが閾値Nth2を超えている(Nc>Nth2)のか否かを判定する(ステップS15)。ここで、クランク回転数Ncが閾値Nth2を超えている(Nc>Nth2)と判定された場合(ステップS15:Y)、以下のようになる。すなわち、コントロールユニット15は、制御信号Scを用いて、スタータリレー13を即時にオフ状態に設定することで、前述したクランキング停止制御を実行する(ステップS14)。以上により、図9に示した一連の処理が終了となる。
一方、クランク回転数Ncが閾値Nth2を超えていない(Nc≦Nth2)と判定された場合(ステップS15:N)、以下のようになる。つまり、次にコントロールユニット15は、前述した条件(E)が成り立つのか否か、すなわち、クランキング開始制御が行われてから期間Δt1が経過したのか否かを判定する(ステップS16)。ここで、クランキング開始制御が行われてから期間Δt1が経過したと判定された場合(ステップS16:Y)、以下のようになる。すなわち、コントロールユニット15は、制御信号Scを用いて、スタータリレー13を即時にオフ状態に設定することで、前述したクランキング停止制御を実行する(ステップS14)。以上により、図9に示した一連の処理が終了となる。
一方、クランキング開始制御が行われてから期間Δt1が経過していないと判定された場合(ステップS16:N)、以下のようになる。つまり、次にコントロールユニット15は、前述した条件(F)が成り立つのか否か、すなわち、クランク回転数Ncが閾値Nth3を超えている(Nc>Nth3)のか否かを判定する(ステップS17)。ここで、クランク回転数Ncが閾値Nth3を超えている(Nc>Nth3)と判定された場合(ステップS17:Y)、以下のようになる。すなわち、コントロールユニット15は、期間Δt2の経過後に、制御信号Scを用いてスタータリレー13をオフ状態に設定することで、前述したクランキング停止制御を実行する(ステップS14)。以上により、図9に示した一連の処理が終了となる。
一方、クランク回転数Ncが閾値Nth3を超えていない(Nc≦Nth3)と判定された場合(ステップS17:N)、再び前述したステップS13へと戻ることになる。
ここで、図11に示した水温テーブル150の一例において規定されているように、これまでに説明した閾値Nth1,Nth2,Nth3および遅延角度ΔAd(あるいは遅延時間Δtd)はそれぞれ、エンジン水温Twに応じて規定されている。具体的には、この例では、エンジン水温Twが高くなるのに従って、閾値Nth1,Nth3がそれぞれ、(段階的に)小さくなるように設定されている。一方、この例では、エンジン水温Twが高くなるのに従って、遅延角度ΔAd(遅延時間Δtd)および期間Δt2がそれぞれ、(段階的に)大きくなるように設定されている。本実施の形態では、コントロールユニット15は、前述した水温センサ142において検知されたエンジン水温Twの情報を用いて、これらの閾値Nth1,Nth2,Nth3および遅延角度ΔAd(あるいは遅延時間Δtd)の値を、随時設定するようにしている。
(C.作用・効果)
このようにして本実施の形態では、コントロールユニット15は、上記した条件(A),(B)が成立した後、上記した条件(C)が成立したときに、クランキング停止制御を行う。
これにより、例えば、前述した図8B中の符号P22で示したように、リングギヤ42とピニオンギヤ52との接触面圧が低くなるタイミング(歯当たりが生じにくいタイミング)にて、リングギヤ42とピニオンギヤ52との噛み合いを解除できるようになる。その結果、リングギヤ42とピニオンギヤ52との接触面圧が高い状態(例えば、前述した図8A中の符号P21参照)での噛み合いの解除動作(クランキング停止制御)に起因した、異音の発生が抑えられる。
また、本実施の形態では、例えば図10(タイミングt2,矢印P32)に示したように、条件(B)におけるクランク角加速度αcの符号の反転タイミングは、条件(A)の成立後において、クランク角加速度αcの符号が最初に反転したタイミングとなっている。これは、例えば図10に示したように、クランク角速度ωc(1/ωc)は、脈動状に変化しながら収束していくタイミング波形を示すからである。つまり、クランク角加速度αcの符号の反転タイミングを検知する際には、その脈動状の時間変化における山部分と谷部分との差が最も大きくなる、最初の反転タイミングにて検知する場合が、最も検知精度が高くなり、上記した異音の発生が抑えられ易くなると言える。
更に、本実施の形態では、例えば図10(タイミングt2,矢印P32)に示したように、条件(B)におけるクランク角加速度αcの符号の反転タイミングは、クランク角加速度αcの符号が正から負に反転したタイミングとなっている。これにより、リングギヤ42側よりもピニオンギヤ52側のほうを支配的にした、クランキング停止制御が実現される。したがって、例えば逆に、クランク角加速度αcの符号が負から正に反転したタイミングを条件(B)における反転タイミングとした場合(後述する変形例1の場合に相当)と比べ、クランキング停止制御を行うことが容易となる。ちなみに、この逆のケースでは、ピニオンギヤ52側よりもリングギヤ42側のほうを支配的にした、クランキング停止制御となる。
加えて、本実施の形態では、コントロールユニット15は、前述した異常発生時(条件(D),(E),(F)のいずれか)に該当すると判定された場合には、これらの条件において示される各タイミングにて、クランキング停止制御を行うようにしている。これにより、条件(A),(B),(C)に該当する場合(通常時)に加え、このような異常発生時についても、適切なクランキング停止制御の対応を取ることができる。したがって、前述した異音の発生を、更に抑え易くすることが可能となる。
また、図11(水温テーブル150の一例)に示したように、本実施の形態では、条件(A),(F)における閾値Nth1,Nth3はそれぞれ、エンジン水温Twに応じて規定されるようになっている。具体的には、このエンジン水温Twが高くなるのに従って、これらの閾値Nth1,Nth3はそれぞれ、小さくなるように設定されている。これは、エンジン水温Twが相対的に高い場合(高温の場合)と比べ、エンジン水温Twが相対的に低い場合(低温の場合)のほうが、エンジン2の始動時における燃焼動作が一般に安定しにくいため、閾値Nth1,Nth3が高めに設定されているのである。このようにして本実施の形態では、エンジン水温Tw(温度)に応じて閾値Nth1,Nth3を随時変化させているため、前述した異音の発生を、更に抑え易くすることが可能となる。なお、この図11に示した例では、閾値Nth1,Nth3はいずれも、エンジン水温Twに対して同傾向の変化を示していると共に、閾値Nth3の値は、閾値Nth1の値に対して全体的に嵩上げしたものとなっている。
同様に、図11(水温テーブル150の一例)に示したように、本実施の形態では、条件(C),(F)における遅延角度ΔAd(あるいは遅延時間Δtd)および期間Δt2もそれぞれ、エンジン水温Twに応じて規定されるようになっている。具体的には、このエンジン水温Twが高くなるのに従って、これらの遅延角度ΔAd(遅延時間Δtd)および期間Δt2はそれぞれ、大きく(長く)なるように設定されている。これは、エンジン水温Twが相対的に高い場合と比べ、エンジン水温Twが相対的に低い場合のほうが、エンジン2の始動時におけるエンジン回転数が一般に大きくて早く安定化するため、遅延角度ΔAd(遅延時間Δtd)を小さく設定しているのである。このようにして本実施の形態では、エンジン水温Twに応じて遅延角度ΔAd(遅延時間Δtd)および期間Δt2を随時変化させているため、前述した異音の発生を、更に抑え易くすることが可能となる。なお、この図11に示した例では、遅延角度ΔAd(遅延時間Δtd)および期間Δt2はいずれも、エンジン水温Twに対して同傾向の変化を示していると共に、期間Δt2の値は、遅延角度ΔAd(遅延時間Δtd)の値に対して全体的に嵩上げしたものとなっている。
以上のように本実施の形態では、条件(A),(B)が成立した後、条件(C)が成立したときに、クランキング停止制御を行うようにしたので、リングギヤ42とピニオンギヤ52との接触面圧が高い状態での噛み合いの解除動作に起因した、異音の発生を抑えることができる。よって、車両1における商品性を向上させることが可能となる。
<2.変形例>
続いて、本開示の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
[変形例1]
図12は、変形例1に係るクランキング停止制御の一例を、タイミング図で表したものである。具体的には、この図12では、実施の形態で説明した図10と同様に、クランク回転数Nc、クランク角速度ωcの逆数(1/ωc)、および、エンジン水温Twのタイミング波形を、それぞれ示している。
上記実施の形態では、例えば図10(タイミングt2,矢印P32)で示したように、条件(B)におけるクランク角加速度αcの符号の反転タイミングが、クランク角加速度αcの符号が正から負に(最初に)反転したタイミングとなっている。これに対して本変形例では、例えば図12(タイミングt2,矢印P32)で示したように、条件(B)におけるクランク角加速度αcの符号の反転タイミングが、逆に、クランク角加速度αcの符号が負から正に(最初に)反転したタイミングとなっている。
なお、この図12においても図10と同様に、クランク角速度ωcの逆数(1/ωc)のタイミング波形を示しているため、以下のことが言える。すなわち、(1/ωc)の時間変化が増加(正)から減少(負)に反転したタイミングが、クランク角加速度αcの符号における、負から正への反転タイミング(タイミングt2)に相当する。
このように、条件(B)におけるクランク角加速度αcの符号の反転タイミングとしては、正から負への反転タイミング(実施の形態)、および、負から正への反転タイミング(本変形例)、のいずれを採用するようにしてもよい。ただし、前述したように、実施の形態の場合には、リングギヤ42側よりもピニオンギヤ52側のほうを支配的にしたクランキング停止制御が実現されるため、本変形例の場合と比べ、クランキング停止制御を行うことが容易になると言える。
[変形例2]
図13は、変形例2に係るクランキング停止制御の一例を、タイミング図で表したものである。具体的には、この図13においても図10,図12と同様に、クランク回転数Nc、クランク角速度ωcの逆数(1/ωc)、および、エンジン水温Twのタイミング波形を、それぞれ示している。
上記実施の形態では、例えば図10(タイミングt2,矢印P32)で示したように、条件(B)におけるクランク角加速度αcの符号の反転タイミングが、条件(A)の成立後において、クランク角加速度αcの符号が最初に反転したタイミングとなっている。これに対して本変形例では、例えば図13(タイミングt2,矢印P32)で示したように、条件(B)におけるクランク角加速度αcの符号の反転タイミングが、条件(A)の成立後において、クランク角加速度αcの符号が2回目に反転したタイミングとなっている。
このように、条件(B)におけるクランク角加速度αcの符号の反転タイミングとしては、条件(A)の成立後における最初の反転タイミングには限られず、2番目(2回目)以降の反転タイミングを採用するようにしてもよい。すなわち、図13に示した2番目の反転タイミングや、更には3番目,4番目,……などの反転タイミングを採用するようにしてもよい。ただし、前述したように、クランク角加速度αcの符号の反転タイミングを検知する際には、クランク角速度ωc(1/ωc)の脈動状の時間変化における山部分と谷部分との差が最も大きくなる、最初の反転タイミングにて検知する場合が、最も検知精度が高くなる。したがって、実施の形態の場合のほうが本変形例の場合と比べ、前述した異音の発生が抑えられ易くなると言える。
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態等では、車両におけるパワーユニットおよびクランキング制御システム(クランキング制御装置)に適用される各部材の構成(形状、配置、個数等)については、上記実施の形態等で説明したものには限られない。すなわち、これらの各部材(例えば、自動変速機3、トルクコンバータ4、スタータ機構5およびスタータリレー13など)における構成については、他の形状や配置、個数等であってもよい。また、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
また、上記実施の形態等では、クランキング制御動作(クランキング開始制御およびクランキング停止制御)について具体例を挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、図9のステップS15〜S17(条件(D)〜(F))において示した異常発生の判定処理および異常発生時のクランキング停止制御等については、場合によっては行わないようにしてもよい。
更に、上記実施の形態等では、閾値Nth1,Nth3、期間Δt2および遅延角度ΔAd(遅延時間Δtd)がそれぞれ、エンジン水温Twに応じて変化する場合の例について説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、これらの閾値Nth1,Nth3、期間Δt2および遅延角度ΔAd(遅延時間Δtd)がそれぞれ、エンジン水温Twには依存しない値(固定値)であってもよい。また、これらのパラメータがエンジン水温Twに応じて変化する場合であっても、変化の態様については、上記実施の形態で説明したもの(エンジン水温Twの変化に対して増加あるいは減少する変化の態様や、その変化の際の割合など)には限られない。
加えて、上記実施の形態等では、車両1の運転者によるスタータスイッチ11への始動操作に伴って、エンジン2の始動制御(クランキング制御)がなされる場合の例について説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、車両状態に応じてエンジンを停止するアイドリングストップ車両における再始動時に、本開示のクランキング制御システム(クランキング制御装置)を適用するようにしてもよい。
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
更に、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
1…車両、10…車体、11…スタータスイッチ、12…バッテリ、13…スタータリレー、130…接点、131…コイル、132…可動鉄心(プランジャ)、133…シフトレバー、141…クランク角センサ、142…水温センサ、15…コントロールユニット、150…水温テーブル、2…エンジン、20…クランクシャフト、3…自動変速機、321…入力軸、4…トルクコンバータ、40…コンバータケース、411…ポンプインペラ、412…タービンランナ、413…ロックアップクラッチ、42…リングギヤ、420…歯、5…スタータ機構、51…スタータモータ、52…ピニオンギヤ、520…歯、Sm…操作信号、Sc…制御信号、Pe…電力、Ac…クランク角、ΔAd…遅延角度、ωc…クランク角速度、αc…クランク角加速度、Tw…エンジン水温、Nc…クランク回転数、Nth1,Nth2,Nth3…閾値、t1,t2,t3…タイミング、Δt1,Δt2…期間、Δtd…遅延時間。

Claims (10)

  1. エンジンのクランクシャフトと共に回転するリングギヤに対してスタータモータのピニオンギヤを噛み合わせるとともに前記スタータモータの回転を開始させるクランキング開始制御と、前記リングギヤと前記ピニオンギヤとの噛み合いを解除させるとともに前記スタータモータの回転を停止させるクランキング停止制御と、を行う制御回路を備え、
    前記制御回路は、
    以下の条件(A),(B)が成立した後、以下の条件(C)が成立したときに、前記クランキング停止制御を行うと共に、
    以下の条件(D),(E),(F)においてそれぞれ示される異常発生時のうちのいずれかに該当すると判定された場合には、前記条件(D),(E),(F)においてそれぞれ示されるタイミングにて、前記クランキング停止制御を行う
    クランキング制御装置。
    (A)前記クランクシャフトの回転数であるクランク回転数が、第1の閾値を超えていること
    (B)前記クランクシャフトの角加速度であるクランク角加速度の符号が反転したこと
    (C)前記クランクシャフトが、前記クランク角加速度の符号が反転したタイミングである反転タイミングにおける回転角度位置から、所定の遅延角度だけ回転したこと
    (D)前記クランク回転数が限界回転数に対応する第2の閾値を超えた、という前記異常発生時:即時に前記クランキング停止制御を行う
    (E)前記クランキング開始制御が行われてから限界時間に対応する第1の期間が経過した、という前記異常発生時:即時に前記クランキング停止制御を行う
    (F)前記クランク回転数が、前記第1の閾値よりも大きいと共に前記第2の閾値よりも小さい第3の閾値を超えた、という前記異常発生時:第2の期間の経過後に前記クランキング停止制御を行う
  2. 前記反転タイミングは、前記条件(A)が成立した後において、前記クランク角加速度の符号が最初に反転したタイミングである
    請求項1に記載のクランキング制御装置。
  3. 前記反転タイミングは、前記クランク角加速度の符号が正から負に反転したタイミングである
    請求項1または請求項2に記載のクランキング制御装置。
  4. 前記遅延角度が、前記反転タイミングからの遅延時間を用いて間接的に規定される
    請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のクランキング制御装置。
  5. 前記第1の閾値および前記遅延角度は、それぞれ、エンジン水温に応じて規定される
    請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のクランキング制御装置。
  6. 前記エンジン水温が高くなるのに従って、前記第1の閾値が小さくなるように設定されている
    請求項5に記載のクランキング制御装置。
  7. 前記エンジン水温が高くなるのに従って、前記遅延角度が大きくなるように設定されている
    請求項5または請求項6に記載のクランキング制御装置。
  8. 前記第3の閾値および前記第2の期間は、それぞれ、エンジン水温に応じて規定される
    請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のクランキング制御装置。
  9. 前記エンジン水温が高くなるのに従って、前記第3の閾値が小さくなるように設定されている
    請求項に記載のクランキング制御装置。
  10. 前記エンジン水温が高くなるのに従って、前記第2の期間が長くなるように設定されている
    請求項または請求項に記載のクランキング制御装置。
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