次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、図面の各図において同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、同一の符号に対応する部材等の名称が、簡略的に言い換えられたり、上位概念又は下位概念の名称で言い換えられたりすることがある。
本発明は、予め定められた圃場内で1台又は複数台の作業車両を走行させて、圃場内における農作業の全部又は一部を実行させるときに、作業車両を走行させる走行経路を生成する経路生成システムに関する。本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建設作業装置、除雪車等、乗用型作業機に加え、歩行型作業機も含まれる。本明細書において自律走行とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味し、自律作業とは、トラクタが備える制御部によりトラクタが備える作業に関する構成が制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが作業を行うことを意味する。これに対して、手動走行・手動作業とは、トラクタが備える各構成がユーザにより操作され、走行・作業が行われることを意味する。
以下の説明では、自律走行・自律作業されるトラクタを「無人(の)トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称することがあり、手動走行・手動作業されるトラクタを「有人(の)トラクタ」と称することがある。圃場内において農作業の一部が無人トラクタにより実行される場合、残りの農作業は有人トラクタにより実行される。単一の圃場における農作業を無人トラクタ及び有人トラクタで実行することを、農作業の協調作業、追従作業、随伴作業等と称することがある。本明細書において無人トラクタと有人トラクタの違いは、ユーザによる操作の有無であり、各構成は基本的に共通であるものとする。即ち、無人トラクタであってもユーザが搭乗(乗車)して操作することが可能であり(即ち、有人トラクタとして使用することができ)、あるいは有人トラクタであってもユーザが降車して自律走行・自律作業させることが可能である(即ち、無人トラクタとして使用することができる)。なお、農作業の協調作業としては、「単一の圃場における農作業を無人車両及び有人車両で実行すること」に加え、「隣接する圃場等の異なる圃場における農作業を同時期に無人車両及び有人車両が実行すること」が含まれていてもよい。
<第1実施形態>
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態に係る経路生成システム99について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る経路生成システム99によって生成された経路に沿って自律的に走行されるロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、ロボットトラクタ1の平面図である。図3は、ユーザにより操作され、ロボットトラクタ1と無線通信することが可能な無線通信端末46を示す図である。図4は、ロボットトラクタ1及び無線通信端末46の主要な電気的構成を示すブロック図である。
本発明の第1実施形態に係る経路生成システム99は、図1に示すロボットトラクタ1を自律走行・自律作業させるときに走行させる自律走行経路を生成するものである。本実施形態では、経路生成システム99の主要な構成は、ロボットトラクタ1と無線通信するための無線通信端末46に備えられる。
初めに、ロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について、主として図1及び図2を参照して説明する。
トラクタ1は、走行領域としての圃場領域内を自律走行する車体部としての走行機体2を備える。走行機体2には、例えば、耕耘機(管理機)、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機を選択して装着することができるが、本実施形態においては、作業機として施肥装置3が装着されている。走行機体2は、装着された作業機(施肥装置3)の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
トラクタ1の構成について、図1及び図2を参照してより詳細に説明する。トラクタ1の走行機体2は、図1に示すように、その前部が左右1対の前輪7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。本実施形態では、このボンネット9内に、トラクタ1の駆動源であるエンジン10や燃料タンク(不図示)等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としてエンジン10に加えて、又は代えて電気モータを採用してもよい。また、前記燃料タンクはボンネット9外に配置されているものとしてもよい。
ボンネット9の後方には、ユーザが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、ユーザが操向操作するためのステアリングハンドル12と、ユーザが着座可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
上記の操作装置としては、図2に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、主変速レバー27、複数の油圧操作レバー16、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、副変速レバー19、及び作業機昇降スイッチ28等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の出力回転数を設定するための操作具である。主変速レバー27は、トラクタ1の走行速度を無段階で変更するための操作具である。油圧操作レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作するための操作具である。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力伝達軸)への動力の伝達/遮断を切換操作するための操作具である。即ち、PTOスイッチ17がON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転する一方、PTOスイッチ17がOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されて、PTO軸の回転が停止される。PTO変速レバー18は、PTO軸の回転速度の変速操作を行うための操作具である。副変速レバー19は、トランスミッション22内の走行副変速ギア機構の変速比を切り換えるための操作具である。作業機昇降スイッチ28は、走行機体2に装着された作業機(施肥装置3)の高さを所定範囲内で昇降操作するための操作具である。
図1に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
施肥装置3は、肥料(資材)を収容可能な肥料タンク29と、肥料タンク29から供給された肥料を繰り出す繰出部25と、土を鎮圧する回転可能な鎮圧輪26と、を備える。繰出部25及び鎮圧輪26は、走行機体2の幅方向に複数(本実施形態では4つ)並べて配置されており、肥料タンク29に貯留された肥料は、複数の繰出部25に分配して供給される。本実施形態において、それぞれの繰出部25は回転可能な図略のロール状部材を備えており、このロール状部材の外周面には、粒状の肥料を収容可能な複数の小さな凹部が並べて形成されている。このロール状部材は、チェーン等により鎮圧輪26と連結されている。この構成で、施肥装置3を後述の作業高さに支持した状態でトラクタ1が前進すると、接地している鎮圧輪26が回転し、この動力がチェーン等により伝達されてロール状部材が駆動される。これにより、肥料タンク29内の肥料が繰出部25により繰り出されて圃場に撒かれ、施肥が行われる。
図4に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)、及び作業機(本実施形態では、施肥装置3)の動作(昇降、駆動及び停止等)を制御するための制御部4を備える。制御部4は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えて構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。制御部4には、トラクタ1が備える各構成(例えば、エンジン10等)を制御するためのコントローラ、及び、他の無線通信機器と無線通信可能な無線通信部40等がそれぞれ電気的に接続されている。
上記のコントローラとして、トラクタ1は少なくとも、図略のエンジンコントローラ、車速コントローラ、操向コントローラ及び昇降コントローラを備える。それぞれのコントローラは、制御部4からの電気信号に応じて、トラクタ1の各構成を制御することができる。
エンジンコントローラは、エンジン10の回転数等を制御するものである。具体的には、エンジン10には、当該エンジン10の回転数を変更させる図略のアクチュエータを備えたガバナ装置41が設けられている。エンジンコントローラは、ガバナ装置41を制御することで、エンジン10の回転数を制御することができる。また、エンジン10には、エンジン10の燃焼室内に噴射(供給)するための燃料の噴射時期・噴射量を調整する燃料噴射装置が付設されている。エンジンコントローラは、燃料噴射装置を制御することで、例えばエンジン10への燃料の供給を停止させ、エンジン10の駆動を停止させることができる。
車速コントローラは、トラクタ1の車速を制御するものである。具体的には、トランスミッション22には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置である変速装置42が設けられている。車速コントローラは、変速装置42の斜板の角度を図略のアクチュエータによって変更することで、トランスミッション22の変速比を変更し、所望の車速を実現することができる。
操向コントローラは、ステアリングハンドル12の回動角度を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ43が設けられている。この構成で、予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、制御部4は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を計算し、得られた回動角度となるように操向コントローラに制御信号を送信する。操向コントローラは、制御部4から入力された制御信号に基づいて操向アクチュエータ43を駆動し、ステアリングハンドル12の回動角度を制御する。なお、操向コントローラはステアリングハンドル12の回動角度を調整するものではなくトラクタ1の前輪7の操舵角を調整するものであってもよい。その場合、旋回走行を行ったとしてもステアリングハンドル12は回動しない。
昇降コントローラは、作業機(施肥装置3)の昇降を制御するものである。具体的には、トラクタ1は、施肥装置3を走行機体2に連結している3点リンク機構の近傍に、油圧シリンダ等からなる昇降アクチュエータ44を備えている。この構成で、昇降コントローラは、制御部4から入力された制御信号に基づいて昇降アクチュエータ44を駆動して施肥装置3を適宜に昇降動作させることにより、所望の高さで施肥装置3により農作業(施肥作業)を行うことができる。この制御により、施肥装置3を、退避高さ(農作業を行わない高さ)及び作業高さ(農作業を行う高さ)等の所望の高さで支持することができる。
なお、上述した図略の複数のコントローラは、制御部4から入力される信号に基づいてエンジン10等の各部を制御していることから、制御部4が実質的に各部を制御していると把握することができる。
上述のような制御部4を備えるトラクタ1は、ユーザがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1の各部(走行機体2、施肥装置3等)を制御して、圃場内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、ユーザがトラクタ1に搭乗しなくても、無線通信端末46により出力される種々の制御信号により自律走行及び自律作業させることが可能となっている。
具体的には、図4等に示すように、トラクタ1は、自律走行・自律作業を可能とするための各種の構成を備えている。例えば、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(走行機体2)の位置情報を取得するために必要な測位用アンテナ6等を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して圃場上(走行領域内)を自律的に走行することが可能となっている。
次に、自律走行を可能とするためにトラクタ1が備える構成について、図4等を参照して詳細に説明する。具体的には、本実施形態のトラクタ1は、測位用アンテナ6、無線通信用アンテナ48、各種センサ、及び記憶部55等を備える。また、これらに加えて、トラクタ1には、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を特定することが可能な図略の慣性計測ユニット(IMU)が備えられている。
測位用アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。図1に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ5の上面に取り付けられている。測位用アンテナ6で受信された測位信号は、図4に示す位置情報算出部49に入力される。位置情報算出部49は、トラクタ1の走行機体2(厳密には測位用アンテナ6)の位置情報を、例えば緯度・経度情報として算出する。当該位置情報算出部49で算出された位置情報は、記憶部55に記憶されて、適時に制御部4により読み出されて、自律走行に利用される。
なお、本実施形態ではGNSS−RTK法を利用した高精度の衛星測位システムが用いられているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。例えば、相対測位方式(DGPS)、又は静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)を使用することが考えられる。
無線通信用アンテナ48は、ユーザが操作する無線通信端末46からの信号を受信したり、無線通信端末46への信号を送信したりするものである。図1に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ5の上面に取り付けられている。無線通信用アンテナ48で受信した無線通信端末46からの信号は、図4に示す無線通信部40で信号処理され、制御部4に入力される。制御部4から無線通信端末46に送信する信号は、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信される。
燃料残量センサ51は、走行機体2に搭載される図略の燃料タンク内の燃料の残量を検出するものであり、例えば当該燃料タンク内の燃料の液面の高さを検出する。燃料残量センサ51は、トラクタ1が自律走行を開始した後、定期的又は不定期に前記燃料タンク内の燃料の残量を検出し、検出結果を無線通信端末46に送信する。
車速センサ52は、トラクタ1の車速を検出するものであり、例えば前輪7,7の間の車軸に設けられる。
回転数センサ53は、エンジン10の回転数(エンジン回転数)を検出するものであり、例えばエンジン10のクランク軸に設けられる。
負荷センサ54は、エンジン10の負荷(エンジン負荷)を検出するものである。本実施形態の負荷センサ54は、エンジン10のアクセル開度を検出することで負荷を推定し、検出する。
肥料残量センサ30は、肥料タンク29に貯留されている肥料の残量、言い換えれば、施肥装置3を用いて作業を行う際にトラクタ1が使用可能な肥料の量を検出することができる。この肥料残量センサ30は、例えば重量センサとして構成することができる。
燃料残量センサ51、車速センサ52、回転数センサ53、負荷センサ54、及び肥料残量センサ30等の各種センサで得られた検出結果は、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から無線通信端末46に送信される。無線通信端末46は、受信した検出結果をディスプレイ37に表示することができる。また、無線通信端末46は、受信した検出結果(燃料残量等の情報)を考慮に入れて、トラクタ1が走行する経路(自律走行経路)を生成することが可能である。
記憶部55は、トラクタ1を自律走行させる経路を記憶したり、自律走行中のトラクタ1(厳密には測位用アンテナ6)の位置の推移(走行軌跡)を記憶したり、各種センサの検出結果を記憶したりするメモリである。その他にも、記憶部55は、トラクタ1を自律走行・自律作業させるために必要な様々な情報を記憶している。
無線通信端末46は、図3に示すように、タブレット型のパーソナルコンピュータとして構成されている。ユーザは、例えばトラクタ1の外で、無線通信端末46のディスプレイ37に表示された情報(例えば、トラクタ1に取り付けられた各種センサからの情報)を参照して確認することができる。また、ユーザは、ディスプレイ37の近傍に配置されたハードウェアキー38、及びディスプレイ37を覆うように配置されたタッチパネル39等を操作して、トラクタ1の制御部4に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信することができる。ここで、無線通信端末46が制御部4に出力する制御信号としては、自律走行・自律作業の経路に関する信号や自律走行・自律作業の開始信号、停止信号、終了信号、緊急停止信号、一時停止信号及び一時停止後の再開信号等が考えられるが、これに限定されない。
なお、無線通信端末46はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、ロボットトラクタ1と有人トラクタとで協調作業を行う場合、有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置14を無線通信端末とすることもできる。
このように構成されたトラクタ1は、無線通信端末46を用いるユーザの指示に基づいて、予め作成された圃場上の経路に沿って走行機体2を自律的に走行させつつ、施肥装置(作業機)3による施肥作業(農作業)を行うことができる。
具体的には、ユーザは、無線通信端末46を用いて各種設定を行うことにより、直線又は折れ線状の自律作業路(自律作業が行われる線状の経路)P1と、当該自律作業路P1の端同士を繋ぐ円弧状の接続路(旋回・折返し操作が行われる旋回路)P2と、を交互に繋いだ一連の経路としての自律走行経路Pを生成することが可能である。
この自律走行経路Pの例が図5に示されており、自律走行経路Pは、予め指定された作業開始位置Sと、作業終了位置Eと、を結ぶように生成される。図5は、経路生成システム99が生成する自律走行経路Pの例を示す模式図である。図5に示すように、自律走行経路Pを作成するにあたっては、圃場(走行領域)に、施肥装置3による作業が行われない非作業領域である枕地及び非耕作地(サイドマージン)が設定され、この非作業領域を除いた領域が作業領域となる。上記の自律作業路P1,P1,・・・は、この作業領域に並んで複数配置され、接続路P2,P2,・・・は非作業領域である枕地に配置されるように生成される。なお、本実施形態では、非作業領域と作業領域とを合わせた領域を「走行領域」と称している。
上記の自律走行経路Pの情報を制御部4に入力(送信)して所定の操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1を制御して、当該トラクタ1を自律走行経路Pに沿って自律的に走行させながら、自律作業路P1に沿って施肥装置3により農作業を行わせることが可能である。
以下では、主として図4を参照して、本発明の実施の一形態に係る経路生成システム99の主要な構成要素を備える無線通信端末46について、より詳細に説明する。
図3及び図4に示すように、本実施形態の無線通信端末46は、ディスプレイ37、ハードウェアキー38、及びタッチパネル39の他に、主要な構成として、表示制御部31、圃場形状取得部33、経路生成部35、作業車両情報設定部36、圃場情報設定部45、作業情報設定部47、補給位置設定部56、取得部57、判定部58、及び記憶部32等を備えている。
表示制御部31は、ディスプレイ37に表示する表示用データを作成し、表示画面を適宜に切り換える制御を行うものである。表示制御部31は、図6に示す初期画面(メニュー画面)としての入力選択画面60を生成し、ディスプレイ37に表示することが可能である。また、表示制御部31は、入力選択画面60において所定の操作がされたとき、後述する各入力画面70,80,90(図7から図9までを参照)を生成し、ディスプレイ37の表示画面を入力画面70,80,90に切り換えることが可能である。
図4に示す圃場形状取得部33は、例えばトラクタ1を圃場の外周に沿って1回り周回させ、そのときの測位用アンテナ6の位置の推移を記録することで、圃場の形状を取得するものである。圃場形状取得部33で取得された圃場の形状は記憶部32に記憶される。ただし、圃場の形状を取得する方法はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、圃場の角部の位置情報を記録して、記録した点同士を結ぶ線分が交わらないいわゆる閉路グラフにより特定した多角形を圃場の形状として取得することとしてもよい。
経路生成部35は、トラクタ1に入力(送信)する経路を生成するものである。本実施形態の経路生成部35は、トラクタ1を自律走行させる自律走行経路Pを生成する。経路生成部35は、後述する作業車両情報、圃場情報、及び作業情報が入力されるとともに、所定の操作がされた場合に自動的に自律走行経路Pを生成する。また、経路生成部35は、判定部58での判定結果に応じて、必要な場合には燃料補給経路Qを生成(算出)する。生成された自律走行経路P及び燃料補給経路Qは、記憶部32に記憶される。
作業車両情報設定部36は、後述する作業車両情報入力画面に入力された作業車両情報(走行機体2及び施肥装置3に関する情報)を受け付けるものである。作業車両情報設定部36により設定された作業車両情報は記憶部32に記憶される。
圃場情報設定部45は、後述する圃場情報入力画面80に入力された圃場情報(圃場に関する情報)を受け付けるものである。圃場情報設定部45により設定された圃場情報は記憶部32に記憶される。
作業情報設定部47は、後述する作業情報入力画面90に入力された作業情報(作業態様等に関する情報)を受け付けるものである。作業情報設定部47により設定された作業情報は記憶部32に記憶される。
補給位置設定部56は、後述する補給位置設定ウィンドウ91に入力された燃料補給位置の情報を受け付けるものである。燃料補給位置は、燃料を補給する位置であり、燃料切れを防止するための補給用の燃料を入れたタンク等(容器)を予め配置しておく位置である。燃料補給位置は、通常、圃場の端部の、道路等に近い位置に設定される。これにより、燃料を入れたタンクを圃場の近傍まで例えばトラック等により容易に運んできて、燃料補給位置に設置することができる。
取得部57は、燃料残量センサ51から受信した検出値に基づいて、前記燃料タンクにおける燃料の残量、言い換えれば走行機体2が保有する燃料の保有量を取得するものである。
判定部58は、取得部57で取得した燃料の保有量によって走行機体2が自律走行経路Pにおける自律走行を完了させることが可能か否かを判定する。後に詳述するように、判定部58の判定結果に応じて、経路生成部35は、必要な場合には燃料補給経路Qを生成する。
記憶部32は、不揮発性のメモリ(例えば、フラッシュROM)を含んで構成されており、作業車両情報設定部36で設定された作業車両情報、圃場情報設定部45で設定された圃場情報、作業情報設定部47で設定された作業情報、及び補給位置設定部56で設定された燃料補給位置の情報等を記憶することができる。また、記憶部32は、経路生成部35で生成された自律走行経路P及び燃料補給経路Qの情報等を記憶することができる。
次に、作業車両情報、圃場情報、及び作業情報の設定を行い、自律走行経路Pを生成するときに、ユーザが無線通信端末46を用いて行う操作について、無線通信端末46のディスプレイ37に表示される画面である図6から図10までを主に参照して詳細に説明する。図6は、無線通信端末46のディスプレイ37における入力選択画面60の表示例を示す図である。図7は、無線通信端末46のディスプレイ37における作業車両情報入力画面70の表示例を示す図である。図8は、無線通信端末46のディスプレイ37における圃場情報入力画面80の表示例を示す図である。図9は、無線通信端末46のディスプレイ37における作業情報入力画面90の表示例を示す図である。図10は、無線通信端末46のディスプレイ37において表示される、燃料補給位置を設定するための補給位置設定ウィンドウ91の表示例を示す図である。
ユーザが作業車両情報、圃場情報、及び作業情報の設定を開始する前の段階では、無線通信端末46のディスプレイ37には、図6に示すように、表示制御部31により作成された入力選択画面60が初期画面(メニュー画面)として表示されている。入力選択画面60には、作業車両情報入力操作部61と、圃場情報入力操作部62と、作業情報入力操作部63と、走行経路生成・転送操作部64と、農作業開始操作部65と、が主として表示されている。
これらの操作部は、何れもディスプレイ37に表示される仮想的なボタン(いわゆるアイコン)として構成されている。また、以後の説明において「ボタン」とは、何れもディスプレイ37に表示される仮想的なボタンであり、当該ボタンの表示領域に対応するタッチパネル39の位置をユーザが指等で触れることによって操作できるものを意味する。
ユーザは、初めに、作業車両情報を入力するために、入力選択画面60の作業車両情報入力操作部61を操作する。これにより、表示画面が、図7に示す作業車両情報入力画面70に切り換えられる。
この作業車両情報入力画面70では、走行機体2及び当該走行機体2に装着される作業機(施肥装置3)に関する作業車両情報を入力することができる。具体的には、作業車両情報入力画面70には、作業車両情報としての、トラクタ1の機種、測位用アンテナ6の走行機体2に対する取付位置、トラクタ1の横幅、施肥装置3の横幅(作業幅)、3点リンク機構の後端(ロアリンクの後端)から施肥装置3の後端までの距離、施肥装置3における単位長さ当たりの肥料繰出量(肥料使用量)、往路での作業時の車速、復路での作業時の車速、枕地(旋回時)での車速、往路での作業時のエンジン回転数、復路での作業時のエンジン回転数、枕地(旋回時)でのエンジン回転数等を指定する欄がそれぞれ配置されている。なお、図7に示す作業車両情報入力画面70では上記した欄の一部しか表示されていないが、図7の状態から画面を下方へスクロールする操作を行うことで、残りの欄を表示させることができる。
作業車両情報入力画面70の全ての項目について指定が行われ、図略の「車両設定確認」のボタンをユーザが操作すると、作業車両情報の内容が記憶部32に記憶され、作業車両情報の設定が完了する。
ユーザが作業車両情報を設定し終わって図6の入力選択画面60に戻り、圃場情報入力操作部62を操作すると、ディスプレイ37の表示画面が、図8に示す圃場情報入力画面80に切り換えられる。
圃場情報入力画面80では、走行機体2が走行する走行領域(圃場)に関する情報を入力することができる。具体的には、圃場情報入力画面80には、圃場の形状を図形で(グラフィカルに)示す平面表示部81が配置されている。また、圃場情報入力画面80において、「圃場の外周の位置・形状」の欄には、「記録開始」及び「やり直し」のボタンが配置されている。また、圃場情報入力画面80において、「作業開始位置」、「作業終了位置」、「作業方向」、及び「燃料補給位置」のそれぞれの欄には、「設定」及び「やり直し」のボタンが配置されている。
「圃場の外周の位置・形状」の「記録開始」ボタンを操作すると、無線通信端末46が圃場形状記録モードに切り換わる。この圃場形状記録モードにおいて、例えばトラクタ1を圃場の外周に沿って1回り周回させると、そのときの測位用アンテナ6の位置の推移が圃場形状取得部33で記録されて、当該圃場形状取得部33で圃場の形状が取得(算出)される。これにより、圃場の位置及び形状を指定することができる。このようにして算出(指定)された圃場の外周の位置及び形状は、平面表示部81にグラフィカルに表示される。また、「やり直し」ボタンを操作することで、圃場の外周の位置の記録(指定)を再び行うことができる。
「作業開始位置」の「設定」ボタンを操作すると、圃場情報入力画面80の平面表示部81に、上記のようにして取得した圃場の形状が地図データに重ね合わされて表示される。この状態で、ユーザが圃場の輪郭の近傍の任意の点を選択することで、選択した点の近傍の位置情報を作業開始位置として設定することができる。「作業終了位置」の設定についても、「作業開始位置」と同様の方法で行うことができる。
「作業方向」の「設定」ボタンを操作すると、圃場情報入力画面80の平面表示部81に、上記のようにして取得した圃場の形状、作業開始位置、及び作業終了位置が地図データと重ね合わされて表示される。この状態で、ユーザが、例えば圃場の輪郭上の任意の2点を選択することで、当該2点を結んだ直線の方向を作業方向として設定することができる。
圃場情報入力画面80の全ての項目についての設定が完了した場合、「登録」のボタンが表示される。ユーザが指定した内容を平面表示部81等により確認して当該「登録」ボタンを操作すると、設定された圃場情報の内容が記憶部32に記憶され、圃場情報の設定が完了する。
ユーザが圃場情報を設定し終わって図6の入力選択画面60に戻り、作業情報入力操作部63を操作すると、表示画面が図9に示す作業情報入力画面90に切り換わる。
作業情報入力画面90の「作業内容」の欄は、耕耘、整地、施肥、播種、薬剤散布、除草剤散布、及び耕耘しながら施肥等の作業のうちの何れの作業を行うかを選択する欄である。当該欄でプルダウン操作を行うことにより、ユーザがトラクタ1に行わせたい自律作業を設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「複数台の協調作業の有無」の欄は、同一の圃場内において複数のトラクタ(例えば、ロボットトラクタ1及び有人トラクタの2台)を用いて作業を行うか否か(協調作業を行うか否か)を選択する欄である。当該欄でプルダウン操作を行うことにより、「協調作業有り」又は「協調作業無し」の何れかに設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「協調作業態様」の欄は、上記の「複数台の協調作業の有無」の欄で「協調作業有り」に設定した場合に限り、操作可能となる。当該欄は、複数のトラクタを異なる自律作業路P1を走行させて協調作業を行う(随伴)か、あるいは複数のトラクタを同一の自律作業路P1を走行させて協調作業を行う(追従)か、等を選択する欄である。当該欄でプルダウン操作を行うことにより、何れかの協調作業態様に設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「オーバーラップ幅」の欄は、隣接する自律作業路P1,P1において作業機(施肥装置3)が通過する幅をオーバーラップさせる幅(オーバーラップ量)を設定する欄である。当該欄でプルダウン操作を行うか、或いは直接数値を入力することにより、オーバーラップ量を設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「スキップ数」の欄は、トラクタ1が走行する自律走行経路Pの任意の自律作業路P1と、当該任意の自律作業路P1の次にトラクタが走行する自律作業路P1と、の間に配置される自律作業路の数(何列飛ばしで作業を行うか)を選択する欄である。本実施形態では、当該欄でプルダウン操作を行うことにより、スキップ数を設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「枕地幅」の欄は、トラクタ1が旋回して折返しを行う領域(即ち、枕地)の幅を設定する欄である。当該欄には、当初、推奨の幅が表示されているが、プルダウン操作を行うことにより、例えば作業幅の整数倍の値を選択して枕地幅として設定できるようになっている。ただし、これに限るものではなく、ユーザが所望の幅の数値を枕地幅として直接入力することも可能である。
作業情報入力画面90の「非耕作地幅」の欄は、トラクタ1の自律作業路P1が並ぶ方向における走行領域の両端に配置される非作業領域(即ち、非耕作地。サイドマージンともいう。)の幅を設定する欄である。当該欄には、当初、推奨の幅が設定されているが、プルダウン操作を行うことにより、例えば作業幅の整数倍の値を非耕作地幅として設定できるようになっている。ただし、これに限るものではなく、ユーザが所望の幅の数値を非耕作地幅として直接入力することも可能である。
ユーザが作業情報入力画面90のうちの必要な欄を入力して図略の「確定」ボタンを操作すると、図10に示すように、作業情報入力画面90の上に重ねて補給位置設定ウィンドウ91が表示される。
補給位置設定ウィンドウ91には、例えば「燃料の補給位置を指定して下さい。」というメッセージとともに、走行領域(圃場)の形状及び作業領域(自律作業路P1が並べて配置される領域)の形状を図形でグラフィカルに示す平面表示部92が表示されている。ユーザは、平面表示部92において、燃料補給位置として指定する位置に指で触れて当該位置に適宜のマーク(補給位置マーク93)を表示させた状態で、補給位置設定ウィンドウ91の下部の「登録」ボタンを操作する。これにより、燃料補給位置の設定が補給位置設定部56により受け付けられる。なお、本実施形態では、燃料補給位置は、走行領域内でありかつ作業領域外にのみ設定することができる。
ユーザが作業情報を設定し終わって図6の入力選択画面60に戻り、走行経路生成・転送操作部64を選択した場合、自動的にトラクタ1の自律走行経路Pが生成され、この自律走行経路Pが記憶部32に記憶される。また、自律走行経路Pが生成されると、ディスプレイ37の表示画面に「パスシミュレーション」のボタンが選択可能に表示される。この「パスシミュレーション」のボタンを操作することにより、生成した自律走行経路Pを矢印や線等で表現した画像が表示される。なお、自律走行経路Pに沿ってトラクタのアイコンが移動するアニメーション表示が行われてもよい。
更に、ディスプレイ37の表示画面には、「データを転送する」のボタンと、「入力選択画面へ戻る」のボタンと、が選択可能に表示される。「データを転送する」を選択すると、自律走行経路Pの情報をトラクタ1に送信するための指示を行うことができる。「入力選択画面に戻る」のボタンを選択すると、表示画面が入力選択画面60に切り換わる。
このように、本実施形態の経路生成システム99では、無線通信端末46側で生成した自律走行経路Pの情報をトラクタ1の制御部4に送信することができる。制御部4は、無線通信端末46から受信した自律走行経路Pの情報を、当該制御部4に電気的に接続された記憶部55に記憶する。
無線通信端末46側で生成した自律走行経路Pの情報がトラクタ1に送信された後、ユーザがトラクタ1を操向操作して作業開始位置Sに移動させて、入力選択画面60の農作業開始操作部65を操作すると、トラクタ1が自律走行経路Pに沿って自律走行を開始する。トラクタ1が自律走行している間、無線通信端末46のディスプレイ37には、図27に示す監視画面100が表示される。ユーザは、この監視画面100を参照して必要に応じてトラクタ1に制御信号を送信しながら、自律走行中のトラクタ1の監視を続ける。
次に、経路生成部35が燃料補給経路Qを生成するときの具体的な処理について、図11から図13までを参照して説明する。図11は、第1実施形態において、燃料補給経路Qを生成するときに経路生成部35等で行われる処理を示すフローチャートである。図12は、図11の処理の続きを示すフローチャートである。図13は、図12の処理の続きを示すフローチャートである。なお、本実施形態の図11から図13までに示す処理は、トラクタ1の自律走行が開始された後に、取得部57により走行機体2が保有する燃料の量が取得された場合に、その都度行われる。
初めに取得部57は、走行機体2が保有する燃料の保有量を、燃料残量センサ51の検出結果に基づいて取得する(ステップS101)。
続いて、判定部58は、自律走行経路Pを生成するときに設定した車速、エンジン回転数等に基づいて、トラクタ1が自律走行を完了させるまでに必要な燃料の予定量(予定必要量)を算出する(ステップS102)。この予定必要量は、自律走行経路Pのうちトラクタ1の現在位置から作業終了位置Eまでの経路長を求めるとともに、上記の車速等に基づいて求めた単位長さ当たりの燃料消費量を当該経路長に乗じることで求めることができる。
続いて、判定部58は、燃料の補給がされないと仮定した場合に、トラクタ1を現在位置から作業終了位置Eまで自律走行経路Pに沿って走行させている途中で燃料が不足するか否かを判断する。言い換えれば、判定部58は、走行機体2の現在の燃料の保有量により自律走行経路Pに沿った自律走行を完了させることが可能か否かを判断する(ステップS103)。この判断は、ステップS101で取得した燃料の保有量と、ステップS102で取得した燃料の予定必要量と、を比較することで行うことができる。ただし、この比較は、マージンを十分に考慮して行われることが好ましい。
ステップS103の判断の結果、現在の燃料の保有量が自律走行を完了させるのに十分である場合(ステップS103、Yes)、途中で燃料の補給を行う必要がないため、燃料補給経路Qを生成する必要もない。よって、処理が終了する。
一方、ステップS103の判断の結果、現在の燃料の保有量では自律走行を完了させることができない場合(ステップS103、No)、途中で燃料の補給を行う必要があることを意味する。従って経路生成部35は、自律走行経路Pの途中で当該自律走行経路Pから一時的に移行して燃料の補給を行う燃料補給経路Qを生成してトラクタ1に送信するために、以後の処理を行う。
図14には、一側の枕地の適宜の位置に燃料補給位置F1が設定された例が示されている。自律走行経路Pに含まれる複数の自律作業路P1のそれぞれの終端は、作業領域と枕地との境界に位置するが、自律作業から燃料補給に円滑に移行し、かつ燃料補給経路を簡素化するためには、燃料補給位置F1がある側の枕地と作業領域との境界で自律作業路P1が終端する地点において、自律走行経路Pから燃料補給のための走行を開始することが好ましい。これを考慮すると、自律走行経路Pから燃料補給のための経路(燃料補給経路Q)に移行する逸脱地点の候補となる位置は図14に四角形マークで示すように複数考えられる。判定部58は、それぞれの位置について燃料補給位置F1までの経路長を計算し、経路長が最も長くなる位置を選択する。図14の場合、燃料補給位置F1までの経路長が最も長くなる位置はC0である。次に、判定部58は、選択された位置C0から燃料補給位置F1まで到達するために必要な燃料の量(燃料補給時最大必要燃料量)Nを計算により算出する(ステップS104)。
図14の例では、燃料補給時最大必要燃料量Nは、選択された位置C0から燃料補給位置F1へ至る破線の経路を走行するために必要な燃料として計算される。なお、この破線の経路は、当該位置C0から燃料補給位置F1を経由して適宜の地点で自律走行経路Pに復帰する経路である燃料補給経路の往路部分と捉えることができる。このように燃料補給時最大必要燃料量Nを計算すれば、図14の四角形マークの位置のうち何れにおいてトラクタ1が自律走行経路Pを逸脱したとしても、その逸脱時点における燃料の保有量が燃料補給時最大必要燃料量N以上であれば、逸脱した位置から燃料補給位置F1に問題なく到達できることになる。本実施形態では、この燃料補給時最大必要燃料量Nを「基準量」とする。
続いて、判定部58は、自律走行経路Pを生成するときに設定した車速、エンジン回転数、及び自律走行経路Pの経路長、並びに現在の燃料残量等を考慮に入れて、走行機体2(前記燃料タンク)の燃料の保有量が、基準量である燃料補給時最大必要燃料量Nを下回る地点となる自律走行経路P上の位置を燃料不足位置(到達可能位置)Hとして計算により特定する(ステップS105)。
図14には、トラクタ1が図の地点にあるときに計算された燃料不足位置Hの例が示されている。燃料補給の回数を減らして効率を向上させることを考慮すれば、上述の逸脱地点の複数の候補(四角形マーク)のうち、自律走行経路Pにおいて燃料不足位置Hよりも上流側にあり、かつ、最も下流側に位置するもの(位置C1)を選択して、当該位置C1から自律走行経路Pを逸脱するように燃料補給経路を生成すればよい。従って、この場合、図15に示すように燃料補給経路Qが生成される。
なお、上記の燃料不足位置Hは、その時点での燃料残量等に基づいて推定される位置であるので、実際にトラクタ1が燃料を消費しながら自律走行・自律作業をするのに伴って多少変動することがあり、その結果、従前に計算した燃料補給経路Qが適切でなくなる場合もある。本実施形態では、このことも考慮して、図11から図13までの処理を繰返し行って燃料不足位置Hの変化を監視し、燃料補給経路Qを必要に応じて従前から修正する構成となっている。
フローチャートに基づいて具体的に説明すると、判定部58は、従前の処理で燃料不足位置Hを算出したか否かを、記憶部32に記憶されている情報を読み出すことにより判断する(ステップS106)。
作業開始位置Sから自律走行経路Pに沿った自律走行・自律作業を開始した直後であって、燃料不足位置Hの計算が初めてであった場合(ステップS106、No)、経路生成部35は、ステップS105で算出された燃料不足位置Hに基づいて、燃料の補給のために自律走行経路Pを逸脱する地点の推奨位置である推奨燃料補給開始位置C1を求める(ステップS107)。この推奨燃料補給開始位置C1は、図14に示すように、燃料補給位置F1に近い側の枕地に配置される自律作業路P1の終端のうち、今回算出した燃料不足位置Hよりも自律走行経路Pの上流側に位置し、かつ、燃料不足位置Hよりも自律走行経路Pの上流側に自律作業路P1の終端が複数存在する場合には、それら複数の終端の中で最も下流側に配置されるものになる。
続いて、経路生成部35は、今回初めて推奨燃料補給開始位置C1を算出したか否かを判断する(ステップS108)。言い換えれば、従前に推奨燃料補給開始位置を設定したことがなかったか否かを判断する。
ステップS108の判断の結果、従前にも推奨燃料補給開始位置を算出したことがあった場合(ステップS108、No)、経路生成部35は、今回求めた推奨燃料補給開始位置C1が従前の処理で設定されていた燃料補給開始位置と同じであるか否かを判断する(ステップS109)。今回の推奨燃料補給開始位置C1が従前と同じである場合は(ステップS109、Yes)、従前の処理で生成された燃料補給経路をそのまま用いれば良いので、処理を終了する。
ステップS108の判断で今回初めて推奨燃料補給開始位置C1を算出した場合(ステップS108、Yes)、又は、ステップS109の判断で推奨燃料補給開始位置C1が従前と異なる場合は(ステップS109、No)、表示制御部31は、今回の推奨燃料補給開始位置C1を燃料補給開始位置として設定するか否かをユーザに問い合わせるための表示用データを作成し、無線通信端末46のディスプレイ37に表示して、ユーザの操作を待機する(ステップS110)。
ステップS110の問合せに対して、今回の推奨燃料補給開始位置C1を燃料補給開始位置として設定することをユーザが承諾した場合(ステップS110、Yes)、経路生成部35は、推奨燃料補給開始位置C1と接続路P2を介して接続される自律作業路P1の始端を、図15に示すように推奨燃料補給終了位置D1として設定する(ステップS111)。次に、経路生成部35は、非作業領域(枕地、非耕作地)内で、燃料補給位置F1を経由して推奨燃料補給開始位置C1と推奨燃料補給終了位置D1とを結ぶ最短の経路を、図15に示すように燃料補給経路Qとして生成する(ステップS112)。燃料補給経路Qは、始点である推奨燃料補給開始位置C1から枕地又は非耕作地の領域を通過しつつ燃料補給位置F1に到達し、当該燃料補給位置F1から枕地又は非耕作地の領域を通過しつつ終点である推奨燃料補給終了位置D1に至る経路群を計算した上で、最短の経路を選択することにより得られる。
次に、経路生成部35は、燃料補給経路Qに基づいて自律走行経路Pを修正した修正自律走行経路を生成し、適宜のタイミングでトラクタ1に送信する(ステップS113)。この修正は、自律走行経路Pのうち、推奨燃料補給開始位置C1と推奨燃料補給終了位置D1とを繋ぐ接続路P2を燃料補給経路Qに置換することで行われる。その後、処理が終了する。
ユーザが、今回の推奨燃料補給開始位置C1を燃料補給開始位置として設定することを拒否した場合、又は、ユーザの操作がされないまま所定時間が経過した場合(ステップS110、No)、表示制御部31は、燃料が枯渇する位置(燃料が無くなる位置)よりも上流側の枕地で停止することをユーザが承諾するか否かを問い合わせるための表示用データを作成し、無線通信端末46のディスプレイ37に表示して、ユーザの操作を待機する(ステップS114)。
ステップS114の問合せの結果、ユーザが、燃料が枯渇する位置よりも上流側の枕地で停止することを承諾した場合、又は、問い合わせてから操作がされないまま所定時間が経過した場合(ステップS114、Yes)、経路生成部35は、燃料が枯渇する前に枕地でトラクタ1を停止させるように制御する(ステップS115)。例えば、経路生成部35は、燃料が枯渇する位置よりも上流側の枕地内に一時停止位置を設定して当該一時停止位置の情報をトラクタ1に送信する。これにより、制御部4は、トラクタ1を一時停止位置にて一時停止させる。その後、処理が終了する。
一方、ステップS114の問い合わせの結果、ユーザが、燃料が枯渇する位置よりも上流側の枕地で停止することを拒否した場合(ステップS114、No)、表示制御部31は、トラクタ1が自律作業路P1の中途部で燃料枯渇のために停止してしまう旨をユーザに知らせるための表示用データを作成し、無線通信端末46のディスプレイ37に表示する。その後、処理が終了する。
図12に示すステップS106の判断で、従前に燃料不足位置を算出していた場合(ステップS106、Yes)、判定部58は、今回算出された燃料不足位置が、前回算出された燃料不足位置とは異なる自律作業路P1上にあるか否かを判断する(ステップS116)。
図16には、図15からトラクタ1がある程度進行した状態が示されている。そして、図16の時点で検出された燃料の保有量に基づき、今回計算された燃料不足位置がJ1であったとする。この場合は、今回の燃料不足位置J1と前回の燃料不足位置Hとは同じ自律作業路P1上にあるので(ステップS116、No)、推奨燃料補給開始位置C1が前回から変化する可能性がないことを意味する。従って、そのまま処理を終了する。
一方、今回計算された燃料不足位置が例えば図16のJ2である場合は、今回の燃料不足位置J2と前回の燃料不足位置Hとが異なる自律作業路P1上にある。このように燃料不足位置が別の自律作業路P1に移動した場合(ステップS116、Yes)、燃料補給経路Qを変更しなければならない可能性が高くなるので、ステップS107以降の処理を行う。図17には、今回計算された燃料不足位置J2に基づいて修正された後の燃料補給経路Qが示されている。ただし、燃料不足位置が別の自律作業路P1に移動しても、例えば図16のJ3に示すように、当該燃料不足位置J3に基づく推奨燃料補給開始位置C1が前回から変化しないために燃料補給経路Qが修正されない場合もある。
上述したように、本実施形態では、走行機体2の燃料の保有量では自律走行を完了させられない場合、自律走行経路Pの情報に燃料補給経路Qの情報を加えた修正自律走行経路の情報が制御部4に入力される。これにより、トラクタ1を自律走行経路Pに沿って自律的に走行させている途中で、一時的に、トラクタ1を当初の自律走行経路Pから一時的に燃料補給経路Qに移行させることができる。そして、トラクタ1を当該燃料補給経路Qに沿って自律走行させて、当該燃料補給経路Qの中途部にある燃料補給位置F1でいったん停止させ、走行機体2に燃料を補給することができる。その後、トラクタ1は当初の自律走行経路Pに復帰する。これにより、途中で燃料切れが生じることなく、トラクタ1を作業開始位置Sから作業終了位置Eまで走行させて、自律作業路P1に対して農作業を施すことができる。
また、本実施形態の経路生成部35においては、燃料補給経路Qを生成する際に、当該燃料補給経路Qの往路が最も長くなるときの当該往路の自律走行に要する燃料を考慮に入れた上で、燃料補給開始位置C1を設定するため、燃料補給経路Qの途中で燃料切れが起こるようなことがなく、確実に燃料補給位置F1までトラクタ1を自律走行させることが可能である。
以上に説明したように、本実施形態の経路生成システム99は、経路生成部35と、取得部57と、判定部58と、補給位置設定部(燃料補給位置設定部)56と、を備える。経路生成部35は、予め設定された走行領域内において走行機体(車体部)2により自律走行が行われる自律走行経路Pを生成可能である。取得部57は、走行機体2が保有する燃料の保有量を取得する。判定部58は、前記燃料の保有量により自律走行経路Pにおける自律走行を完了させることが可能か否かを判定する。補給位置設定部56は、前記走行領域内に燃料の燃料補給位置(補給位置)F1を設定する。経路生成部35は、判定部58により自律走行を完了させることができないと判定された場合に、自律走行経路P上に燃料補給開始位置C1を設定して当該燃料補給開始位置C1から燃料補給位置F1に至る燃料補給経路Qを生成可能である。経路生成部35は前記燃料の保有量に基づいて、燃料補給開始位置C1までの自律走行、及び、燃料補給経路Qにおける燃料補給開始位置C1から燃料補給位置F1までの自律走行を完了させることができるように燃料補給開始位置C1を設定する(図16を参照)。
これにより、燃料補給経路Qを生成する際に、燃料補給経路Qの往路の自律走行に要する燃料を考慮に入れた上で、燃料補給経路Qの燃料補給開始位置C1を設定するため、燃料補給経路Qの途中で燃料切れが起こるようなことがなく、確実に燃料補給位置F1まで自律走行させることが可能となる。
また、本実施形態の経路生成システム99においては、経路生成部35は、走行機体2が燃料補給経路Qを走行せずに自律走行経路P上を走行し続けたと仮定したときに、走行機体2が保有する燃料の保有量が基準量(燃料補給時最大必要燃料量N)以下となるときの自律走行経路P上の位置を燃料不足位置(到達可能位置)Hとして特定し、この燃料不足位置Hよりも自律走行経路Pの上流側に燃料補給開始位置C1を設定する。
これにより、燃料補給開始位置C1を合理的に設定することができる。
また、本実施形態の経路生成システム99においては、経路生成部35は、燃料補給経路Qが最大の経路長になることを仮定したときに燃料補給開始位置C0から燃料補給位置F1までの走行に必要な燃料補給時最大必要燃料量Nの量を、前記基準量として算出する。
これにより、燃料補給経路Qを走行するために必要な燃料が一定であるとみなすことで、燃料補給経路Qを簡単に生成することができる。
また、本実施形態の経路生成システム99においては、取得部57は、自律走行経路Pにおける自律走行中に、定期又は不定期に前記燃料の保有量を取得する。経路生成部35は、新しく取得された前記保有量に基づいて特定された燃料不足位置(到達可能位置)J2が、従前に特定された燃料不足位置(到達可能位置)Hが配置されていた自律作業路P1よりも上流側又は下流側の異なる自律作業路P1上に位置する場合は、燃料補給開始位置C1を修正し、修正後の燃料補給開始位置C1から燃料補給位置F1に至る修正燃料補給経路Qを生成可能である。
これにより、燃料消費量が事前の計算による推定と異なっていた場合でも、必要に応じて燃料補給開始位置C(C1)を修正することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る経路生成システム99について、主として図18から図23までを参照して説明する。第2実施形態に係る経路生成システム99では、経路生成部35が燃料補給経路Qを生成するときの具体的な処理が、第1実施形態に係る経路生成システム99とは異なっている。図18は、第2実施形態において、燃料補給経路Qを生成するときに経路生成部等で行われる処理を示すフローチャートである。図19は、図18の処理の続きを示すフローチャートである。図20は、図19の処理の続きを示すフローチャートである。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
以下では、第2実施形態において、経路生成部35が燃料補給経路Qを生成するときの具体的な処理について、図18から図20までを参照して説明する。
ステップS201からステップS203までの処理は、第1実施形態におけるステップS101からステップS103までの処理と同様であるため、説明を省略する。
ステップS203の判断の結果、現在の燃料の保有量では自律走行を完了させることができない場合(ステップS203、No)、途中で燃料の補給を行う必要があることを意味する。そこで、判定部58は、自律走行経路Pを生成するときに設定した車速、エンジン回転数、及び自律走行経路Pの経路長、並びに現在の燃料残量等を考慮に入れて、走行機体2(前記燃料タンク)の燃料の保有量が所定値(基準量)Bを下回る地点となる自律走行経路P上の位置を、燃料不足位置(到達可能位置)Kとして計算により特定する(ステップS204)。この所定値Bは、本実施形態ではある程度の燃料量の余裕を見込んで正の値に設定されているが、ゼロであってもよい。図21には、一側の枕地の適宜の位置に燃料補給位置F2が設定された例において、算出された燃料不足位置Kが示されている。
ステップS205及びステップS220の処理は、第1実施形態におけるステップS106及びステップS116と同様であるため、説明を省略する。
燃料不足位置Kの算出が初回である等の場合(ステップS205、No)、経路生成部35は、ステップS204で算出された燃料不足位置Kに基づいて、燃料の補給のために自律走行経路Pを逸脱する地点の暫定位置である暫定燃料補給開始位置C2を求める(ステップS206)。この暫定燃料補給開始位置C2を求める方法は、第1実施形態においてステップS107で推奨燃料補給開始位置C1を求める方法と全く同様であるので、説明を省略する。
続いて、経路生成部35は、非作業領域内で、暫定燃料補給開始位置C2から燃料補給位置F2へ向かう経路を生成する(ステップS207)。この経路は、図21において破線の経路として示されるように、最短の経路となるように計算される。この破線の経路は、暫定燃料補給開始位置C2から燃料補給位置F2を経由して適宜の地点で自律走行経路Pに復帰する経路である燃料補給経路(暫定燃料補給経路)の往路部分と捉えることができる。
その後、経路生成部35は、この往路の走行に必要な燃料である補給時必要燃料量Gを算出する(ステップS208)。
続いて、経路生成部35は、走行機体2が暫定燃料補給開始位置C2に到達したときの燃料残量を計算により推定し、この推定値(予想燃料残量)が補給時必要燃料量G以上であるか否かを判断する(ステップS209)。
ステップS209の判断の結果、暫定燃料補給開始位置C2に到達したときの予想燃料残量が補給時必要燃料量Gを下回る場合(ステップS209、No)、トラクタ1が当該暫定燃料補給開始位置C2を経由して燃料補給位置F2に到達できないことを意味する。そこで、経路生成部35は、暫定燃料補給開始位置C2を、燃料補給位置F2に近い側の枕地に配置される自律作業路P1の終端のうち、現在より1つだけ上流側の終端となるように変更する(ステップS210)。その後、ステップS207に戻り、上記の処理が反復される。
ステップS209の判断の結果、暫定燃料補給開始位置C2に到達したときの予想燃料残量が補給時必要燃料量G以上である場合(ステップS209、Yes)、トラクタ1が暫定燃料補給開始位置C2を経由して燃料補給位置F2に到達可能であることを意味する。そこで、経路生成部35は、当該暫定燃料補給開始位置C2を推奨燃料補給開始位置C1として定める(ステップS211)。その後のステップS212〜ステップS219の処理は、第1実施形態のステップS108〜ステップS115と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態は、上述の第1実施形態とは異なり、暫定燃料補給開始位置C2を下流側から上流側へ順次変更しながら補給時必要燃料量Gを再計算して、燃料補給位置F2に到達可能か否かを判定し、到達可能と判定されたときの暫定燃料補給開始位置C2を推奨燃料補給開始位置C1として定めている。例えば、図21に示す暫定燃料補給開始位置C2ではトラクタ1が燃料補給位置F2に到達できないが、図22のように暫定燃料補給開始位置C2を上流側に移動させることで燃料補給位置F2に到達できると判断されたとする。この場合、図23に示すように、図22の暫定燃料補給開始位置C2が推奨燃料補給開始位置C1に定められ、第1実施形態と同様に燃料補給経路Qを生成することができる。このように構成することで、自律走行経路Pからのトラクタ1の逸脱地点が変わるのに応じて補給時必要燃料量Gが変化すること、及び、逸脱時点での燃料残量が変化することを適切に考慮して、燃料補給経路Qを生成することができる。
以上に本発明の第1実施形態及び第2実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
<第1実施形態及び第2実施形態の変形例>
上記の実施形態では、走行機体2が途中で燃料補給をせずに自律走行経路P上を走行し続けたと仮定したときに、走行機体2が保有する燃料の保有量が基準量以下となるときの自律走行経路P上の位置を到達可能位置として特定し、それよりも自律走行経路Pの上流側となる位置に燃料補給開始位置Cを設定するものとした。しかしながら、これに代えて、トラクタ1の現在位置(又は作業開始位置S)から燃料補給開始位置Cを経由して燃料補給位置Fに至るまでの第1の距離が、走行機体2の燃料の保有量により自律走行を維持することが可能な第2の距離(トラクタ1の現在位置(又は作業開始位置S)から自律走行を維持することが可能な最も離れた位置までの距離)よりも所定距離以上短くなるように、燃料補給開始位置Cを設定することとしてもよい。
その場合、ある程度の燃料残量の余裕を見て燃料補給開始位置Cを設定することができ、燃料消費速度等に誤差が生じても燃料不足により自律走行が中断することがないようにすることができる。
また、上記の変形例の場合、トラクタ1の自律走行中に取得部57が定期的又は不定期に燃料残量を取得し、その都度、第1の距離及び/又は第2の距離を計算し直すこととしてもよい。その場合、経路生成部35が第1の距離と第2の距離との差を監視し、第1の距離と第2の距離との差が上記の所定距離よりも長い第1閾値距離よりも長くなった場合、或いは、上記の所定距離よりも短い第2閾値距離よりも短くなった場合に、燃料補給開始位置Cを修正するものとしてもよい。その場合、経路生成部35は、修正後の燃料補給開始位置Cから燃料補給位置Fに至る燃料補給経路Qを計算により算出する。
このような構成とした場合、実際の燃料消費量が事前の計算による推定と異なっていた場合に、燃料補給開始位置Cを必要に応じて修正することができ、燃料の消費状況に応じた適切な燃料補給経路Qを生成することが可能である。
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、新しく取得された燃料の保有量に基づいて特定された到達可能位置が、従前に設定された到達可能位置よりも自律走行経路Pの上流側又は下流側に配置されることとなった結果、従前とは異なる燃料補給開始位置C及び燃料補給経路Qが生成された場合には、ユーザに問合せを行い、燃料補給開始位置C及び/又は燃料補給経路Qを変更することについて承諾が得られた場合に、今回新たに生成された燃料補給開始位置C及び燃料補給経路Qに変更するものとした。即ち、実際の燃料の減りが想定よりも速かった場合にも、遅かった場合にも、ユーザに変更の可否の問合せをするものとしていた。しかしながら、これに限るものではなく、実際の燃料の減りが想定よりも速かった場合にのみ燃料補給経路Qの変更のための問合わせをユーザに対して行い、燃料の減りが想定よりも遅かった場合には問合せを行わず燃料補給経路Qの変更も行わないものとしてもよい。
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、燃料補給位置Fに近い側の枕地上に自動で燃料補給経路Qが生成されるものとした。しかしながら、これに限るものではなく、ユーザが何れの枕地側に燃料補給経路Qを生成するかを指定できるようにしてもよい。
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、トラクタ1が自律走行を開始した後に、判定部58が、現在の燃料の保有量によって自律走行を完了させることができるか否かを判定するものとした。しかしながらこれに限るものではなく、判定部58が、トラクタ1の機種により特定される燃料の最大保有量によって自律走行経路Pにおける自律走行を完了させることができるか否かを自律走行開始前に予め判定するものとしてもよい(即ち、自律走行開始時点で満量の燃料が保有されているとみなして判定してもよい)。その判定の結果、トラクタ1の機種により特定される燃料の最大保有量だけでは自律走行を完了させることができないことが明らかな場合には、経路生成部35は、自律走行開始前に、自律走行経路Pを生成すると同時に燃料補給経路Qを生成するものとしてもよい。また、その場合、自律走行開始後に、走行機体2が保有する実際の燃料の保有量が最大保有量よりも少ないことが判明したとすれば、そのときに燃料補給経路Qの変更の可否をユーザに問い合わせるものとしてもよい。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る経路生成システム99について、図24を参照して説明する。図24は、第3実施形態における作業情報入力画面95の表示例を示す図である。第3実施形態に係る経路生成システム99では、トラクタ1の自律走行が開始される前に予め、必要な燃料を考慮に入れた自律走行経路が生成される点が、第1実施形態及び第2実施形態とは異なっている。
第3実施形態では、入力選択画面60の作業情報入力操作部63が操作されると、操作画面が図24に示す作業情報入力画面95に切り換わる。即ち、第3実施形態に係る経路生成システム99においては、作業情報入力画面90に代えて作業情報入力画面95が表示されるようになっている。
作業情報入力画面95には、「燃料残量」の欄が設けられる。この「燃料残量」の欄には、初期値として、トラクタ1を前回稼動させたときに、最後に取得部57が取得した燃料残量(燃料残量センサ51の最終検出値)が入力されている。ユーザは、当該欄に数値を直接入力することにより、又はプルダウン操作で「満量」を選択することにより、燃料残量として所望の値を設定できるようになっている。当該欄で設定された燃料残量は、作業情報設定部47により受け付けられて、記憶部32に記憶される。
第3実施形態でも、ユーザが作業情報を設定し終わると、補給位置設定ウィンドウ91が表示されて、燃料の補給位置を設定できるようになっている。ユーザが作業情報及び燃料補給位置を設定し終わって図6の入力選択画面に戻り、走行経路生成・転送操作部64を選択した場合、自動的にトラクタ1の自律走行経路Pに燃料補給経路Qを追加した修正自律走行経路が生成され、この修正自律走行経路が記憶部32に記憶される。
この修正自律走行経路をトラクタ1に送信して、農作業開始操作部65を操作することにより、トラクタ1の自律走行が開始される。
トラクタ1の自律走行の開始直後に、取得部57は、燃料残量センサ51の検出結果を取得することにより、走行機体2が実際に保有する燃料の量を取得する。
そして、経路生成部35は、自律走行開始前に作業情報設定部47で受け付けられた燃料残量と、自律走行開始後に取得部57が取得した燃料残量と、が所定値以上乖離しているか否かを判断する。
自律走行開始前に作業情報設定部47で受け付けられた燃料残量と、自律走行開始後に取得部57が取得した燃料残量と、の乖離が所定値未満の場合、経路生成部35は、燃料補給経路Qを生成し直さない(修正しない)。
一方、自律走行開始前に作業情報設定部47で受け付けられた燃料残量と、自律走行開始後に取得部57が取得した燃料残量と、の乖離が所定値以上の場合、第1実施形態又は第2実施形態で示した処理の流れと同様に、改めて燃料補給経路Qを生成し、ユーザに採用の可否を問い合わせる。当該燃料補給経路Qを「燃料補給経路」として設定(採用)することをユーザが承諾した場合、当該燃料補給経路Qを加えた修正自律走行経路をトラクタ1に送信する。これにより、実際の燃料残量に対応して設定された燃料補給経路Qに沿ってトラクタ1を自動走行させることができ、自律走行の途中で燃料切れが生じるおそれを無くすことができる。
なお、本実施形態において、乖離の程度を判断するための「所定値」は、例えば1本の自律作業路P1を走行するのに要する燃料の量よりも大きい値に設定することができる。これにより、最適な燃料補給開始位置Cの位置が変動する可能性が高い場合に、燃料補給開始位置Cを算出し直して、修正した燃料補給経路Qを生成することが可能である。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る経路生成システム99について、図25及び図26を参照して説明する。第4実施形態に係る経路生成システム99では、補給位置設定ウィンドウ91の表示画面を操作することによって設定する「補給位置」が、燃料を補給する位置でもあり、かつ、肥料を補給する位置でもある点で、上記の実施形態とは異なる。即ち、第4実施形態においては、補給位置設定部56により設定される燃料補給位置が、肥料補給位置を兼ねている。
本実施形態の取得部57は、走行機体2が保有する燃料の保有量だけではなく、施肥装置3が保有する肥料(資材)の保有量も取得する。取得部57は、肥料残量センサ30から受信した検出値に基づいて、肥料タンク29における肥料の残量、言い換えれば施肥装置3が保有する肥料の保有量を取得する。
判定部58は、取得部57で取得した燃料の保有量によって走行機体2が自律走行経路Pにおける自律走行を完了させることが可能か否かについてだけではなく、取得部57で取得した肥料の保有量によって施肥装置3が自律走行経路P(自律作業路P1,P1,・・・)における自律作業を完了させることが可能か否かについても判定する。
次に、経路生成部35が燃料及び/又は肥料の補給経路Qを生成するときの処理について、図25及び図26を参照して説明する。
初めに経路生成部35は、走行機体2が保有する燃料の保有量が基準量以下となるときの自律走行経路P上の位置を到達可能位置として特定し、この到達可能位置よりも自律走行経路Pの上流側に配置され、かつ、燃料及び肥料の補給位置F3に近い側の枕地に配置される自律作業路P1の終端を、燃料補給開始位置C4,C5として設定する。図25には、燃料補給開始位置として2つの位置C4,C5が設定された場合を示している。なお、2つの位置C4,C5のうち上流側に配置される燃料補給開始位置C4に対応する燃料補給終了位置を、位置D4として示している。また、2つの位置C4,C5のうち下流側に配置される燃料補給開始位置C5に対応する燃料補給終了位置を、位置D5として示している。
また、経路生成部35は、施肥装置3が保有する肥料の保有量が所定値以下となるときの自律走行経路P上の位置を肥料切れ位置として特定し、この肥料切れ位置よりも自律走行経路Pの上流側に配置され、かつ、補給位置F3に近い側の枕地に配置される自律作業路P1の終端を、肥料補給開始位置U1,U2として特定する。図26には、肥料補給開始位置として2つの位置U1,U2が設定された場合を示している。なお、2つの位置U1,U2のうち上流側に配置される肥料補給開始位置U1に対応する肥料補給終了位置を、位置V1として示している。また、2つの位置U1,U2のうち下流側に配置される肥料補給開始位置U2に対応する肥料補給終了位置を、位置V2として示している。
続いて、経路生成部35は、上記のように個別に暫定的に生成した燃料補給開始位置C4,C5、及び肥料補給開始位置U1,U2について見たときに、各燃料補給開始位置C4,C5よりも前に肥料補給開始位置U1,U2が配置されているか否かを判断する。
ここで、燃料補給開始位置C4に着目すると、図25に示すように、これよりも上流側の位置に肥料補給開始位置は配置されていない。よって、燃料補給開始位置C4(及び燃料補給終了位置D4)は、何れの肥料補給開始位置(及び肥料補給終了位置)にも統合されない。
一方、燃料補給開始位置C5に着目すると、これよりも上流側の位置に肥料補給開始位置U1,U2が配置されている。即ち、当該燃料補給開始位置C5と、それより上流側の燃料補給開始位置C4と、の間に複数回(本実施形態では2回)にわたって肥料不足となることが特定されており、そのそれぞれに対して、肥料補給開始位置U1及び肥料補給開始位置U2が設定されている。この場合、経路生成部35は、上流側の燃料補給開始位置C4から最も遠い肥料補給開始位置U2(及び肥料補給終了位置V2)と共通の位置に、次の燃料補給開始位置C5(及び燃料補給終了位置D5)を移行する(移動させる)。言い換えれば、前回の燃料補給に係る燃料補給開始位置C4から最も遠い肥料補給開始位置U2(及び肥料補給終了位置V2)に、次の燃料補給開始位置C5(及び燃料補給終了位置D5)を統合する。
これにより、トラクタ1が肥料補給開始位置U2から補給経路Qの往路を通って補給位置F3に至ったときに、肥料だけではなく燃料も併せて補給することができる。よって、全体として見たときに、自律走行経路Pから逸脱して補給位置F3に至る経路を通る回数(即ち、自律走行経路Pから脇にそれる回数)を削減することができ、走行する経路の長さを短くすることができ、効率よく燃料の補給及び肥料の補給を行うことができる。
以上に説明したように、本実施形態の経路生成システム99は、走行機体(車体部)2に装着され、肥料(資材)を保有して走行領域内で自律作業を行う施肥装置(作業機)3を備える。取得部57は、施肥装置3が保有する肥料の保有量を取得可能である。判定部58は、前記肥料の保有量により前記走行領域内における自律作業を完了させることが可能か否かを判定することが可能である。経路生成部35は、判定部58により、自律走行及び自律作業の何れも完了させることができないと判定され、かつ、自律走行経路Pにおいて前記燃料よりも前記肥料の方が先に不足する場合に、前記肥料の保有量に基づいて、燃料補給開始位置Cまでの自律走行及び自律作業、並びに、燃料補給経路Qにおける燃料補給開始位置Cから燃料補給位置Fまでの自律走行を完了させることができるように燃料補給開始位置Cを設定する。
これにより、肥料が不足するタイミングと、燃料が不足するタイミングとで、より早い方に合わせて燃料補給経路(資材補給経路)Qを生成できる。言い換えれば、肥料補給開始位置U2(及び肥料補給終了位置V2)と、燃料補給開始位置C5(及び燃料補給終了位置D5)と、でより上流側に配置される方に合わせて、肥料及び燃料の両方を補給するための補給経路Qを生成できる。よって、効率よく燃料の補給及び肥料の補給を行うことが可能である。
また、本実施形態の経路生成システム99においては、経路生成部35は、判定部58により、自律走行及び自律作業の何れも完了させることができないと判定され、かつ、自律走行経路Pにおいて前回燃料が不足してから次に燃料が不足するまでの間に、複数回肥料が不足する場合に、前回の燃料の不足に伴って設定される燃料補給開始位置C4から最も遠い肥料の不足に伴って設定される肥料補給開始位置U2と共通の位置に、次の燃料補給開始位置C5を設定する。
これにより、燃料補給開始位置C5と肥料補給開始位置U2とを共通の位置にすることができ、効率よく燃料の補給及び肥料の補給を行うことができる。
<第4実施形態の変形例>
上記の第4実施形態では、補給位置設定部56により設定される補給位置F3が、燃料と肥料の両方を補給可能な位置となっている。しかしながら、これに代えて、燃料補給位置と肥料補給位置とを異なる位置に設定するものとしてもよい。その場合、燃料補給位置と肥料補給位置とが同じ側の枕地上に配置されるとすれば、第4実施形態で示したのと同様の方法で、燃料補給開始位置と肥料補給開始位置とを必要に応じて統合することができる。一方、燃料補給位置と肥料補給位置とが互いに異なる側の枕地上に配置されるとすれば、燃料補給開始位置と肥料補給開始位置とを統合せず、燃料補給経路と肥料補給経路とを個別に生成することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
燃料補給位置F1(F2,F3)で走行機体2がいったん停止して燃料を補給した後に、取得部57が走行機体2の燃料の保有量を取得して(補給量を確認して)、必要に応じて燃料が足りない旨の報知を行うこととしてもよい。例えば、燃料補給位置F1(F2,F3)で燃料を補給した後に作業終了位置Eに至るまでに、前記燃料タンクの最大容量以下の量の燃料が必要なところ、補給された燃料の量がこれに満たない場合に、例えば警告ランプの点灯やアラーム音の発生等の報知を行うものとすることができる。これにより、ユーザに必要な量の燃料の補給(追加)を促すことができる。
上記の実施形態では、燃料補給開始位置C及び燃料補給終了位置Dは、接続路P2を介して互いに接続される2つの自律作業路P1の終端及び始端であって、同じ側の枕地に配置されるものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではない。例えばこれに代えて、燃料補給開始位置C及び燃料補給終了位置Dを、共通の自律作業路P1上に配置したり、或いは互いに異なる側の枕地に配置したりするものとしてもよい。
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、判定部58は、自律走行経路Pを生成するときに設定した車速、エンジン回転数及び自律走行経路Pの経路長等に基づいて、当該自律走行経路Pにおいて必要となる燃料の予定量(予定必要量)を算出するものとした。しかしながら、燃料の予定必要量の算出方法はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、負荷センサ54の検出値等を考慮に入れて、エンジン負荷を推定し、エンジン回転数とエンジン負荷の関係から燃料の予定必要量を算出するものとしてもよい。或いは、過去にトラクタ1を稼動したときに判定部58が予想量として算出した予定必要量と、実際に要した燃料の量と、の関係を、記憶部32に記憶しておき、この情報を利用して次回以降の予定必要量の算出を行うものとしてもよい。その場合、自律作業路(直線路)P1での予定必要量と実際に要した燃料の量との関係を、接続路(旋回路)P2での予定必要量と実際に要した燃料との関係とは別に、記憶するものとしてもよい。具体的には、予定必要量と実際に要した燃料の量との比率を補正係数として記憶し、以降の予定必要量の計算に用いるものとすることができる。
一般的に、トラクタ1の現在位置からあまり離れていない位置での燃料残量は比較的高精度で推定することができるが、トラクタ1の現在位置から離れた位置であればあるほど燃料残量の推定の確度は低下すると考えられる。そこで、生成した自律走行経路Pを矢印や線等で表現した画像をディスプレイ37に表示する際に、燃料残量の推定の確度が高い位置ほど濃い色となるように経路の色をグラデーション等で表現することとしてもよい。或いは、トラクタ1を自律走行経路Pに沿って自律走行させている間、ディスプレイ37に表示させている監視画面100(自律走行経路Pをグラフィカルに表示する画面)において、トラクタ1の現在位置から燃料補給開始位置Cまでのパスの色を統一した1つの色で表現し、トラクタ1が自律走行経路Pに沿って下流側に走行するにつれて徐々に色を濃く変化させるものとしてもよい。あるいは、並べて配置される自律作業路P1毎に推定の確度に応じて異なる色で表現するものとしてもよい。なお、このような表現方法によって自律作業路P1毎の推定の確度の差異を監視画面100上で表した例を、図27に示してある。
上記の実施形態では、資材は肥料であるものとしたが、これに限るものではなく、例えばこれに代えて、資材を、除草剤、薬剤、苗、又は種子等としてもよい。例えば、資材が除草剤の場合には除草剤散布装置を、薬剤の場合には薬剤散布装置を、苗の場合には苗移植装置を、種子の場合には播種装置を、上記の施肥装置3の代わりに作業機として用いることができる。
上記の構成では、経路生成部35、補給位置設定部56、取得部57、及び判定部58は、無線通信端末46側に備えられるものとしたが、これらの構成がトラクタ1側及び無線通信端末46側の何れに備えられるかについてはこれに限るものではない。また、これ以外の構成部分についても、トラクタ1側及び無線通信端末46側の何れに備えられていてもよい。
補給経路Qを生成する過程だけに上記の経路生成システム99を用いることとし、実際の走行は、例えばユーザが補給経路Qを無線通信端末46等によって参照しながらトラクタ1を操向操作することにより行うものとしてもよい。