次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、図面の各図において同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、同一の符号に対応する部材等の名称が、簡略的に言い換えられたり、上位概念又は下位概念の名称で言い換えられたりすることがある。
本発明は、予め定められた圃場内で1台又は複数台の作業車両を走行させて、圃場内における農作業の全部又は一部を実行させるときに、作業車両を走行させる走行経路を生成する経路生成システムに関する。また、本発明は、この経路生成システムによって生成された経路に沿って作業車両を走行させる自律走行システムに関する。本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建設作業装置、除雪車等、乗用型作業機に加え、歩行型作業機も含まれる。本明細書において自律走行とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味し、自律作業とは、トラクタが備える制御部によりトラクタが備える作業に関する構成が制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが作業を行うことを意味する。これに対して、手動走行・手動作業とは、トラクタが備える各構成がユーザにより操作され、走行・作業が行われることを意味する。
以下の説明では、自律走行・自律作業されるトラクタを「無人(の)トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称することがあり、手動走行・手動作業されるトラクタを「有人(の)トラクタ」と称することがある。圃場内において農作業の一部が無人トラクタにより実行される場合、残りの農作業は有人トラクタにより実行される。単一の圃場における農作業を無人トラクタ及び有人トラクタで実行することを、農作業の協調作業、追従作業、随伴作業等と称することがある。本明細書において無人トラクタと有人トラクタの違いは、ユーザによる操作の有無であり、各構成は基本的に共通であるものとする。即ち、無人トラクタであってもユーザが搭乗(乗車)して操作することが可能であり(即ち、有人トラクタとして使用することができ)、あるいは有人トラクタであってもユーザが降車して自律走行・自律作業させることが可能である(即ち、無人トラクタとして使用することができる)。なお、農作業の協調作業としては、「単一の圃場における農作業を無人車両及び有人車両で実行すること」に加え、「隣接する圃場等の異なる圃場における農作業を同時期に無人車両及び有人車両が実行すること」が含まれていてもよい。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る経路生成システム99によって生成された経路に沿って自律的に走行されるロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、ロボットトラクタ1の平面図である。図3は、ユーザにより操作され、ロボットトラクタ1と無線通信することが可能な無線通信端末46を示す図である。図4は、ロボットトラクタ1及び無線通信端末46の主要な電気的構成を示すブロック図である。
本発明の一実施形態に係る経路生成システム99は、図1に示すロボットトラクタ1を自律走行・自律作業させるときに走行させる自律走行経路(経路)Pを生成するものである(図5を参照)。本実施形態では、経路生成システム99の主要な構成は、ロボットトラクタ1と無線通信するための無線通信端末46に備えられる。
また、本発明の一実施形態に係る自律走行システム100は、経路生成システム99によって生成された自律走行経路Pに沿ってロボットトラクタ1を自律的に走行させるものである。
初めに、ロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について、主として図1及び図2を参照して説明する。
トラクタ1は圃場領域(特定領域)内を自律走行する車体部としての走行機体2を備える。走行機体2には、例えば、耕耘機(管理機)、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機を選択して装着することができるが、本実施形態においては、ロータリ式耕耘機としての作業機3が装着されている。
トラクタ1の構成について、図1及び図2を参照してより詳細に説明する。トラクタ1の走行機体2は、図1に示すように、その前部が左右1対の前輪7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。本実施形態では、このボンネット9内に、トラクタ1の駆動源であるエンジン10や燃料タンク(不図示)等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としてエンジン10に加えて、又は代えて電気モータを採用してもよい。また、前記燃料タンクはボンネット9外に配置されているものとしてもよい。
ボンネット9の後方には、ユーザが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、ユーザが操向操作するためのステアリングハンドル12と、ユーザが着座可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
上記の操作装置としては、図2に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、主変速レバー27、複数の油圧操作レバー16、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、副変速レバー19、及び作業機昇降スイッチ28等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の出力回転数を設定するための操作具である。主変速レバー27は、トラクタ1の走行速度を無段階で変更するための操作具である。油圧操作レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作するための操作具である。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力伝達軸)への動力の伝達/遮断を切換操作するための操作具である。即ち、PTOスイッチ17がON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転する一方、PTOスイッチ17がOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されて、PTO軸の回転が停止される。PTO変速レバー18は、PTO軸の回転速度の変速操作を行うための操作具である。副変速レバー19は、トランスミッション22内の走行副変速ギア機構の変速比を切り換えるための操作具である。作業機昇降スイッチ28は、走行機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するための操作具である。
図1に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図4に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)、及び作業機3の動作(昇降、駆動及び停止等)を制御するための制御部(自律走行制御部)4を備える。制御部4は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えて構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。制御部4には、トラクタ1が備える各構成(例えば、エンジン10等)を制御するためのコントローラ、及び、他の無線通信機器と無線通信可能な無線通信部40等がそれぞれ電気的に接続されている。
上記のコントローラとして、トラクタ1は少なくとも、図略のエンジンコントローラ、車速コントローラ、操向コントローラ及び昇降コントローラを備える。それぞれのコントローラは、制御部4からの電気信号に応じて、トラクタ1の各構成を制御することができる。
エンジンコントローラは、エンジン10の回転数等を制御するものである。具体的には、エンジン10には、当該エンジン10の回転数を変更させる図略のアクチュエータを備えたガバナ装置41が設けられている。エンジンコントローラは、ガバナ装置41を制御することで、エンジン10の回転数を制御することができる。また、エンジン10には、エンジン10の燃焼室内に噴射(供給)するための燃料の噴射時期・噴射量を調整する燃料噴射装置が付設されている。エンジンコントローラは、燃料噴射装置を制御することで、例えばエンジン10への燃料の供給を停止させ、エンジン10の駆動を停止させることができる。
車速コントローラは、トラクタ1の車速を制御するものである。具体的には、トランスミッション22には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置である変速装置42が設けられている。車速コントローラは、変速装置42の斜板の角度を図略のアクチュエータによって変更することで、トランスミッション22の変速比を変更し、所望の車速を実現することができる。
操向コントローラは、ステアリングハンドル12の回動角度を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ43が設けられている。この構成で、予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、制御部4は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を計算し、得られた回動角度となるように操向コントローラに制御信号を送信する。操向コントローラは、制御部4から入力された制御信号に基づいて操向アクチュエータ43を駆動し、ステアリングハンドル12の回動角度を制御する。なお、操向コントローラはステアリングハンドル12の回動角度を調整するものではなくトラクタ1の前輪7の操舵角を調整するものであってもよい。その場合、旋回走行を行ったとしてもステアリングハンドル12は回動しない。
昇降コントローラは、作業機3の昇降を制御するものである。具体的には、トラクタ1は、作業機3を走行機体2に連結している3点リンク機構の近傍に、油圧シリンダ等からなる昇降アクチュエータ44を備えている。この構成で、昇降コントローラは、制御部4から入力された制御信号に基づいて昇降アクチュエータ44を駆動し、作業機3を適宜に昇降駆動させる。これにより、作業機3を、退避高さ(農作業を行わない高さ)及び作業高さ(農作業を行う高さ)等の所望の高さで支持して農作業を行わせることができる。
なお、上述した図略の複数のコントローラは、制御部4から入力される信号に基づいてエンジン10等の各部を制御していることから、制御部4が実質的に各部を制御していると把握することができる。
上述のような制御部4を備えるトラクタ1は、ユーザがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1の各部(走行機体2、作業機3等)を制御して、圃場内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、ユーザがトラクタ1に搭乗しなくても、無線通信端末46により出力される種々の制御信号により自律走行及び自律作業させることが可能となっている。
具体的には、図4等に示すように、トラクタ1は、自律走行・自律作業を可能とするための各種の構成を備えている。例えば、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(走行機体2)の位置情報を取得するために必要な測位用アンテナ6等を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して圃場上(特定領域内)を自律的に走行することが可能となっている。
次に、自律走行を可能とするためにトラクタ1が備える構成について、図4等を参照して詳細に説明する。具体的には、本実施形態のトラクタ1は、測位用アンテナ6、無線通信用アンテナ48、各種センサ、及び記憶部55等を備える。また、本実施形態のトラクタ1は、傾斜地での走行機体2のずり下がりを抑制して安全に自律走行を可能とするための構成として、慣性計測ユニット53及び傾斜閾値判定部50を備える。
測位用アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。図1に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ5の上面に取付けられている。測位用アンテナ6で受信された測位信号は、図4に示す位置情報算出部49に入力される。位置情報算出部49は、トラクタ1の走行機体2(厳密には測位用アンテナ6)の位置情報を、例えば緯度・経度情報として算出する。当該位置情報算出部49で算出された位置情報は、記憶部55に記憶されて、適時に制御部4により読み出されて、自律走行に利用される。
なお、本実施形態ではGNSS-RTK法を利用した高精度の衛星測位システムが用いられているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。例えば、相対測位方式(DGPS)、又は静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)を使用することが考えられる。
無線通信用アンテナ48は、ユーザが操作する無線通信端末46からの信号を受信したり、無線通信端末46への信号を送信したりするものである。図1に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ5の上面に取り付けられている。無線通信用アンテナ48で受信した無線通信端末46からの信号は、図4に示す無線通信部40で信号処理され、制御部4に入力される。制御部4から無線通信端末46に送信する信号は、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信される。
慣性計測ユニット53は、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を検出することが可能なものである。慣性計測ユニット53で測定された走行機体2の姿勢の情報に基づいて、圃場の傾斜を求めることができる。
傾斜閾値判定部50は、慣性計測ユニット53の検出結果に基づいて走行機体2の現在の斜度(ロール角及びピッチ角を総合した傾斜の程度)を取得し、この現在の斜度が第1閾値を上回っているか否かを判定するものである。後に詳述するように、制御部4は、傾斜閾値判定部50の判定結果に応じて、走行機体2の旋回時の車速を制御する。
記憶部55は、トラクタ1を自律走行させる経路である、直線又は折れ線状の自律作業路(農作業を行う経路)P1と、旋回用の円弧状の接続路(旋回路)P2と、を交互に繋いでなる走行経路(パス)Pを記憶する。また、記憶部55は、自律走行中のトラクタ1の位置情報(走行軌跡)を記憶したり、当該位置情報と関連付けられた走行機体2の姿勢の情報を記憶したりする。その他にも、記憶部55は、トラクタ1を自律走行・自律作業させるために必要な様々な情報を記憶している。
本実施形態の無線通信端末46は、図3に示すように、タブレット型のパーソナルコンピュータとして構成されている。ユーザは、例えばトラクタ1の外で、無線通信端末46のディスプレイ37に表示された情報(例えば、トラクタ1に取り付けられた各種センサからの情報)を参照して確認することができる。また、ユーザは、ディスプレイ37の近傍に配置されたハードウェアキー38、及びディスプレイ37を覆うように配置されたタッチパネル39等を操作して、トラクタ1の制御部4に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信することができる。ここで、無線通信端末46が制御部4に出力する制御信号としては、自律走行・自律作業の経路に関する信号や自律走行・自律作業の開始信号、停止信号、終了信号、緊急停止信号、一時停止信号及び一時停止後の再開信号等が考えられるが、これに限定されない。
なお、無線通信端末46はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、ロボットトラクタ1と有人トラクタとで協調作業を行う場合、有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置14を無線通信端末とすることもできる。
このように構成されたトラクタ1は、無線通信端末46を用いるユーザの指示に基づいて、圃場上の経路に沿って自律的に走行しつつ、作業機3による農作業を行うことができる。
具体的には、ユーザは、無線通信端末46を用いて各種設定を行うことにより、直線又は折れ線状の自律作業路(自律作業が行われる線状の経路)P1と、当該自律作業路P1の端同士を繋ぐ円弧状の接続路(旋回・切返し操作が行われる旋回路)P2と、を交互に繋いだ一連の経路としての自律走行経路Pを生成することが可能である。
この自律走行経路Pの例が図5に示されており、自律走行経路Pは、予め指定された作業開始位置Sと、作業終了位置Eと、を結ぶように生成される。図5は、経路生成システム99が生成する自律走行経路Pの例を示す模式図である。図5に示すように、自律走行経路Pを生成するにあたっては、圃場(特定領域)に、作業機3による作業が行われない非作業領域である枕地(第2領域)及び非耕作地(サイドマージン)が設定され、この非作業領域を除いた領域が作業領域(第1領域)となる。上記の自律作業路(経路)P1,P1,・・・は、この作業領域(第1領域)に並んで複数配置され、接続路P2,P2,・・・は非作業領域である枕地(第2領域)に配置されるように生成される。なお、本実施形態では、非作業領域と作業領域とを合わせた領域を「特定領域」と称している。
上記の自律走行経路Pの情報を制御部4に入力(送信)して所定の操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1を制御して、当該トラクタ1を自律走行経路Pに沿って自律的に走行させながら、自律作業路P1に沿って作業機3により農作業を行わせることが可能である。
以下では、主として図4を参照して、本発明の実施の一形態に係る経路生成システム99の主要な構成要素を備える無線通信端末46について、より詳細に説明する。
図3及び図4に示すように、本実施形態の無線通信端末46は、ディスプレイ37、ハードウェアキー38、及びタッチパネル39の他に、主要な構成として、表示制御部31、記憶部32、経路生成部35、作業車両設定部36、圃場情報設定部45、作業情報設定部47、傾斜閾値判定部54、及び旋回半径指定部59を備えている。
表示制御部31は、ディスプレイ37に表示する表示用データを作成し、表示画面を適宜に切り換える制御を行うものである。表示制御部31は、図6に示す初期画面(メニュー画面)としての入力選択画面60を生成し、ディスプレイ37に表示することが可能である。また、表示制御部31は、入力選択画面60において所定の操作がされたとき、後述する各入力画面70,80,90を生成し、ディスプレイ37の表示画面を入力画面70,80,90に切り換えることが可能である。
経路生成部35は、トラクタ1に入力(送信)する経路を生成するものである。本実施形態の経路生成部35は、トラクタ1を自律走行させる自律走行経路Pを生成する。経路生成部35は、後述する作業車両情報、圃場情報、及び作業情報が入力されるとともに、所定の操作がされた場合に自動的に自律走行経路Pを生成する。また、経路生成部35は、必要な場合には、トラクタ1(走行機体2)の自重によるずり下がりを考慮した自律走行経路Pを生成(算出)する。生成された自律走行経路Pは、記憶部32に記憶される。
作業車両設定部36は、後述する作業車両情報入力画面70に入力された作業車両情報(走行機体2及び作業機3に関する情報)を受け付けるものである。作業車両設定部36により設定された作業車両情報は記憶部32に記憶される。
圃場情報設定部45は、後述する圃場情報入力画面80に入力された圃場情報(圃場に関する情報)等を受け付けるものである。圃場情報設定部45により設定された圃場情報は記憶部32に記憶される。
詳細には、本実施形態の圃場情報設定部45は、圃場形状取得部52と、高度情報取得部56と、走行方向設定部57と、領域設定部58と、を有する。
圃場形状取得部52は、例えばトラクタ1を圃場の外周に沿って1回り周回させ、そのときの測位用アンテナ6の位置の推移を記録することで、圃場の(平面的な)形状を取得するものである。この圃場形状取得部52で取得された圃場の形状は記憶部32に記憶される。ただし、圃場の形状を取得する方法はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、圃場の角部の位置情報を記録して、記録した点同士を結ぶ線分が交わらないいわゆる閉路グラフにより特定した多角形を圃場の形状として取得することとしてもよい。
高度情報取得部56は、圃場形状取得部52により登録された圃場の各地点の高度情報を、例えば地図データを読み込むことにより取得するものである。
走行方向設定部57は、ユーザにより指定されたトラクタ1の走行方向を取得するものである。
領域設定部58は、作業車両設定部36で設定された作業車両情報(具体的には、旋回半径の情報)と、高度情報取得部56で取得された圃場の各地点の高度情報と、走行方向設定部57で設定された走行方向(作業方向)と、に基づいて、作業領域(第1領域)と、枕地(第2領域)と、を圃場(特定領域)に設定するものである。領域設定部58は、作業領域(第1領域)の走行方向一側及び他側にそれぞれ枕地(第2領域)を設定する。また、領域設定部58は、設定された旋回半径でトラクタ1が旋回するときに必要となる枕地の広さを考慮して、枕地(第2領域)を設定する。後に詳述するように、本実施形態の領域設定部58は、圃場の傾斜に起因する走行機体2のずり下がりを考慮して、上記の走行方向に平行な方向で見たときの枕地の長さ(以下、単に枕地幅と呼ぶことがある。)を通常より広く設定することができる。
作業情報設定部47は、後述する作業情報入力画面90に入力された作業情報(作業態様等に関する情報)を受け付けるものである。作業情報設定部47により設定された作業情報は記憶部32に記憶される。
傾斜閾値判定部54は、高度情報取得部56で取得された高度情報に基づいて、枕地の斜度が第2閾値を上回っているか否か、及び、第3閾値を上回っているか否かを判定することができる。後に詳述するように、領域設定部58は、傾斜閾値判定部54の判定結果に応じて、上記の走行方向に平行な方向で見たときの作業領域(第1領域)の長さ、及び前記枕地幅を適宜に設定する。また、経路生成部35は、傾斜閾値判定部54の判定結果に応じて、自律走行経路Pを適宜に設定する。
旋回半径指定部59は、傾斜閾値判定部54で枕地の斜度が第3閾値を上回っていると判定された場合に、ユーザによる旋回半径の指定を受け付けるものである。本実施形態の旋回半径指定部59では、旋回半径として、トラクタ1の機種によって定まる基準旋回半径(最小旋回半径)よりも大きい値を指定することができるが、小さい値を指定することもできるようになっている。旋回半径指定部59で指定された旋回半径は、作業車両設定部36で受け付けられた旋回半径よりも優先される。
記憶部32は、不揮発性のメモリ(例えば、フラッシュROM)を含んで構成されており、作業車両設定部36で設定された作業車両情報、圃場情報設定部45で設定された圃場情報、作業情報設定部47で設定された作業情報、及び旋回半径指定部59で設定された旋回半径の情報等を記憶することができる。また、記憶部32は、経路生成部35で生成された自律走行経路Pの情報等を記憶することができる。
次に、作業車両情報、圃場情報、及び作業情報等の設定を行い、自律走行経路Pを生成するときに、ユーザが無線通信端末46を用いて行う操作について、無線通信端末46のディスプレイ37に表示される画面である図6から図11までを主に参照して詳細に説明する。図6は、無線通信端末46のディスプレイ37における入力選択画面60の表示例を示す図である。図7は、無線通信端末46のディスプレイ37における作業車両情報入力画面70の表示例を示す図である。図8は、無線通信端末46のディスプレイ37における圃場情報入力画面80の表示例を示す図である。図9は、無線通信端末46のディスプレイ37に表示される、ずり下がりへの対応方法を設定するための傾斜地対応設定ウインドウ82の表示例を示す図である。図10は、傾斜地対応設定ウインドウ82の別の表示例を示す図である。図11は、無線通信端末46のディスプレイ37における作業情報入力画面90の表示例を示す図である。
ユーザが作業車両情報、圃場情報、及び作業情報の設定を開始する前の段階では、無線通信端末46のディスプレイ37には、図6に示すように、表示制御部31により作成された入力選択画面60が初期画面(メニュー画面)として表示されている。入力選択画面60には、作業車両情報入力操作部61と、圃場情報入力操作部62と、作業情報入力操作部63と、走行経路生成・転送操作部64と、農作業開始操作部65と、が主として表示されている。
これらの操作部は、何れもディスプレイ37に表示される仮想的なボタン(いわゆるアイコン)として構成されている。また、以後の説明において「ボタン」とは、何れもディスプレイ37に表示される仮想的なボタンであり、当該ボタンの表示領域に対応するタッチパネル39の位置をユーザが指等で触れることによって操作できるものを意味する。
ユーザは、初めに、作業車両情報を入力するために、入力選択画面60の作業車両情報入力操作部61を操作する。これにより、表示画面が、図7に示す作業車両情報入力画面70に切り換えられる。
この作業車両情報入力画面70では、走行機体2及び当該走行機体2に装着される作業機3に関する作業車両情報を入力することができる。具体的には、作業車両情報入力画面70には、作業車両情報としての、トラクタ1の機種、測位用アンテナ6の走行機体2に対する取付位置、トラクタ1の横幅、作業機3の横幅(作業幅)、3点リンク機構の後端(ロアリンクの後端)から作業機3の後端までの距離、作業時の車速、枕地(旋回時)での車速、作業時のエンジン回転数、枕地(旋回時)でのエンジン回転数、旋回半径等を指定する欄がそれぞれ配置されている。
なお、本実施形態では、トラクタ1の機種が入力されたら、当該機種に応じて予め記憶されている横幅、旋回半径(最小旋回半径)等のプリセット値が各欄に自動的に入力される。ただし、例えばユーザが各欄でプルダウン操作等を行ったり数値を直接入力したりすることにより、プリセット値とは異なる値を設定することも可能になっている。
作業車両情報入力画面70の全ての項目について指定が行われ、図略の「車両設定確認」のボタンをユーザが操作すると、作業車両情報が作業車両設定部36に受け付けられて、記憶部32に記憶されて、作業車両情報の設定が完了する。
なお、詳細には、作業車両情報のうち、作業時の車速(第1車速)の情報、及び枕地での車速(第2車速)の情報の設定は、作業車両設定部36の車速設定部(不図示)によって受け付けられる。
ユーザが作業車両情報を設定し終わって図6の入力選択画面60に戻り、圃場情報入力操作部62を操作すると、ディスプレイ37の表示画面が、図8に示す圃場情報入力画面80に切り換えられる。
圃場情報入力画面80では、走行機体2が走行する特定領域(圃場)に関する情報を入力することができる。具体的には、圃場情報入力画面80には、圃場の形状を図形で(グラフィカルに)示す平面表示部81が配置されている。また、圃場情報入力画面80において、「圃場の外周の位置・形状」の欄には、「記録開始」及び「やり直し」のボタンが配置されている。また、圃場情報入力画面80において、「作業開始位置」、「作業終了位置」、及び「作業方向」のそれぞれの欄には、「設定」及び「やり直し」のボタンが配置されている。また、圃場情報入力画面80において、「高度情報」の欄には、「読込」のボタンが配置されている。
「圃場の外周の位置・形状」の「記録開始」ボタンを操作すると、無線通信端末46が圃場形状記録モードに切り換わる。この圃場形状記録モードにおいて、例えばトラクタ1を圃場の外周に沿って1回り周回させると、そのときの測位用アンテナ6の位置の推移が圃場形状取得部52で記録されて、当該圃場形状取得部52で圃場の形状が取得(算出)される。これにより、圃場の位置及び形状を指定することができる。このようにして算出(指定)された圃場の外周の位置及び形状は、平面表示部81にグラフィカルに表示される。また、「やり直し」ボタンを操作することで、圃場の外周の位置の記録(指定)を再び行うことができる。
「作業開始位置」の「設定」ボタンを操作すると、圃場情報入力画面80の平面表示部81に、上記のようにして取得した圃場の形状が地図データに重ね合わされて表示される。この状態で、ユーザが圃場の輪郭の近傍の任意の点を選択することで、選択した点の近傍の位置情報を作業開始位置として設定することができる。「作業終了位置」の設定についても、「作業開始位置」と同様の方法で行うことができる。
「作業方向」の「設定」ボタンを操作すると、圃場情報入力画面80の平面表示部81に、上記のようにして取得した圃場の形状、作業開始位置、及び作業終了位置が地図データに重ね合わされて表示される。この状態で、ユーザが、例えば圃場の輪郭の任意の2点を選択することで、当該2点を結んだ直線の方向を作業方向として設定することができる。この作業方向(走行方向)の設定は、走行方向設定部57により受け付けられる。
「高度情報」の「読込」ボタンを操作すると、図示しないファイル指定ウインドウが表示される。この状態で、高度分布データを記述したファイルを保存した外部メモリを無線通信端末に装着し、当該ファイルを指定することで、高度情報が高度情報取得部56により取得される。この高度分布データの内容は、例えば、数メートル程度のメッシュ単位で航空レーザ測量により求めた数値標高データとすることができる。ただし、これに限られず、例えば地図上の等高線の位置及び形状を示すデータを高度分布データとすることもできる。この高度分布の情報を高度情報取得部56が得ることにより、圃場上の各地点における傾斜を計算により求めることができる。
圃場情報入力画面80の全ての項目についての設定が完了した場合、傾斜閾値判定部54により、圃場(枕地)の斜度が第2閾値を上回っているか否かが判定される。なお、以下では、特に説明がない限り、圃場(枕地)の斜度とは、作業方向(走行方向)で見たときのピッチ成分の傾斜を意味する。傾斜閾値判定部54の判定の結果、枕地の斜度が第2閾値を上回っていた場合、図9に示すように、圃場情報入力画面80の上に重ねて傾斜地対応設定ウインドウ82が表示される。より具体的には、圃場の外側に近づくにつれて低くなる傾斜が枕地に生じている場合に、枕地を旋回走行するときに走行機体2が遠心力及び自重によりずり下がって、圃場外に逸脱してしまうことが懸念される。これを防止するために、ユーザに、枕地幅を広げる領域設定を行うことを提案する傾斜地対応設定ウインドウ82が表示される。
傾斜地対応設定ウインドウ82には、例えば「作業方向に対するピッチ方向の傾斜が検出されました。枕地旋回時のずり下がりへの対応方法を選択して下さい。」というメッセージとともに、ずり下がり低減のための対応策が表示される。具体的には、本実施形態の傾斜地対応設定ウインドウ82では、「枕地幅を広げる」という対応策が表示されるとともに、その左側には、この対応策を行う旨をユーザが指示するためのチェックボックスが配置されている。ユーザがこのチェックボックスにチェックマークを入れると、右側に表示されている入力ボックスに枕地幅を入力できるようになる。なお、傾斜地対応設定ウインドウ82が表示された時点で、この枕地幅を入力する欄には、作業車両設定部36で設定された旋回半径、高度情報取得部56で取得された高度情報(斜度)、及び走行方向設定部57で取得された走行方向に基づいて、ずり下がりを効果的に防止するために適宜に算出された値が予め入力されている。ユーザは、この欄を指等で触れて操作することにより、プリセットされた値とは異なる値を指定することも可能になっている。
傾斜閾値判定部54の判定の結果、枕地の斜度が第2閾値を上回っているだけではなく、第3閾値も上回っていた場合、図10に示すように、傾斜地対応設定ウインドウ82には、上記の「枕地幅を広げる」という対応策の他に、「旋回半径を変更する」という対応策も表示される。この対応策についてもチェックボックスが配置され、このチェックボックスにユーザがチェックマークを入れると、右側に表示されている入力ボックスに任意の旋回半径を入力できるようになる。なお、傾斜地対応設定ウインドウ82が表示された時点で、この旋回半径を入力する欄には、高度情報取得部56で取得された高度情報(斜度)、及び走行方向設定部57で取得された走行方向に基づいて、ずり下がりを効果的に防止するために適宜に算出された値が予め入力されている。ユーザは、この欄を指等で触れて操作することにより、プリセットされた値とは異なる値を指定することも可能になっている。当該欄で指定された旋回半径の情報は、旋回半径指定部59で受け付けられる。
なお、本実施形態では、走行機体2のずり下がりの防止のための対応策を、単独ではなく複数組み合わせて選択することも可能となっている。ユーザは、該当するチェックボックスに例えば図10に示すようにチェックマークを入れた後、傾斜地対応設定ウインドウ82の下部の「登録」ボタンを操作する。
上記「登録」ボタンが操作されたら、領域設定部58は、傾斜地対応設定ウインドウ82で指定された枕地幅、及び/又は、旋回半径指定部59で受け付けられた旋回半径を実現するように、圃場(特定領域)に作業領域(第1領域)と、枕地(第2領域)と、を設定する。具体的には、例えば、圃場外に作業領域又は枕地がはみ出ることがないように、走行方向での作業領域の長さを適宜狭める代わりに、枕地幅を広げて、傾斜地対応設定ウインドウ82で指定された枕地幅を確保する。
なお、本実施形態の領域設定部58は、圃場において走行方向一側に設けられた枕地と、他側に設けられた枕地と、の間で高度差がある場合、低い側(谷側)に位置すると判定された枕地の幅L2は、傾斜地対応設定ウインドウ82で指定された枕地幅に設定する(広げる)が、高い側(山側)に位置する枕地の幅L1は、それよりも狭い枕地幅(例えば、旋回半径に基づいて定まる最小の幅)に設定する(L1<L2)。
ユーザが圃場情報を設定し終わって、また、該当する場合には傾斜地への対応策も設定して、図6の入力選択画面60に戻り、作業情報入力操作部63を操作すると、表示画面が図11に示す作業情報入力画面90に切り換わる。
作業情報入力画面90の「作業内容」の欄は、耕耘、整地、施肥、播種、薬剤散布、及び除草剤散布等の作業のうちの何れの作業を行うかを選択する欄である。当該欄でプルダウン操作を行うことにより、ユーザがトラクタ1に行わせたい自律作業を設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「複数台の協調作業の有無」の欄は、同一の圃場内において複数のトラクタ(例えば、ロボットトラクタ1及び有人トラクタの2台)を用いて作業を行うか否か(協調作業を行うか否か)を選択する欄である。当該欄でプルダウン操作を行うことにより、「協調作業有り」又は「協調作業無し」の何れかに設定できるようになっている。なお、「複数台の協調作業の有無」の欄は設けない構成であってもよい。
作業情報入力画面90の「協調作業態様」の欄は、上記の「複数台の協調作業の有無」の欄で「協調作業有り」に設定した場合に限り、操作可能となる。当該欄は、複数のトラクタを異なる自律作業路P1を走行させて協調作業を行う(随伴)か、あるいは複数のトラクタを同一の自律作業路P1を走行させて協調作業を行う(追従)か、等を選択する欄である。当該欄でプルダウン操作を行うことにより、何れかの協調作業態様に設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「オーバーラップ幅」の欄は、隣接する自律作業路P1,P1において作業機3が通過する幅をオーバーラップさせる幅(オーバーラップ量)を設定する欄である。当該欄でプルダウン操作を行うか、或いは直接数値を入力することにより、オーバーラップ量を設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「スキップ数」の欄は、トラクタ1が走行する自律走行経路Pの任意の自律作業路P1と、当該任意の自律作業路P1の次にトラクタが走行する自律作業路P1と、の間に配置される自律作業路の数(何列飛ばしで作業を行うか)を選択する欄である。本実施形態では、当該欄でプルダウン操作を行うことにより、スキップ数を設定できるようになっている。
作業情報入力画面90の「非耕作地幅」の欄は、トラクタ1の自律作業路P1が並ぶ方向における走行領域の両端に配置される非作業領域(即ち、非耕作地。サイドマージンともいう。)の幅を設定する欄である。当該欄には、当初、推奨の幅が設定されているが、プルダウン操作を行うことにより、例えば作業幅の整数倍の値を非耕作地幅として設定できるようになっている。ただし、これに限るものではなく、ユーザが所望の幅の数値を非耕作地幅として直接入力することも可能である。
ユーザが作業情報入力画面90のうちの必要な欄を入力して図略の「確定」ボタンを操作すると、作業情報が作業情報設定部47により受け付けられて、図6の入力選択画面60に戻る。この状態において、ユーザが走行経路生成・転送操作部64を選択した場合、自動的にトラクタ1の自律走行経路Pが生成され、この自律走行経路Pが記憶部32に記憶される。なお、ユーザが傾斜地でのずり下がり防止のための対応案を選択している場合には、当該対応案を考慮に入れた自律走行経路Pが生成される。具体的には、旋回半径指定部59で指定された旋回半径を実現するような接続路P2,P2,・・・を含む自律走行経路Pが生成される。
自律走行経路Pが生成されると、ディスプレイ37の表示画面に「パスシミュレーション」のボタンが選択可能に表示される。この「パスシミュレーション」のボタンを操作することにより、生成した自律走行経路Pを矢印や線等で表現した画像が表示される。なお、自律走行経路Pに沿ってトラクタのアニメーションが移動するアニメーション表示が行われてもよい。
更に、ディスプレイ37の表示画面には、「データを転送する」のボタンと、「入力選択画面へ戻る」のボタンと、が選択可能に表示される。「データを転送する」を選択すると、自律走行経路Pの情報をトラクタ1に送信するための指示を行うことができる。「入力選択画面に戻る」のボタンを選択すると、表示画面が入力選択画面60に切り換わる。
このように、本実施形態の経路生成システム99では、無線通信端末46側で生成した自律走行経路Pの情報をトラクタ1の制御部4に送信することができる。制御部4は、無線通信端末46から受信した自律走行経路Pの情報を、当該制御部4に電気的に接続された記憶部55に記憶する。
無線通信端末46側で生成した自律走行経路Pの情報がトラクタ1に送信された後、ユーザがトラクタ1を操向操作して作業開始位置Sに移動させて、入力選択画面60の農作業開始操作部65を操作すると、トラクタ1が自律走行経路Pに沿って自律走行を開始する。トラクタ1が自律走行している間、無線通信端末46のディスプレイ37には、走行機体2が備える図示しないカメラからの映像を含む監視画面が表示される。ユーザは、この監視画面を参照して、必要に応じてトラクタ1に制御信号を送信しながら、自律走行中のトラクタ1の監視を続ける。
次に、圃場(特定領域)を走行方向で見たときにある程度以上の傾斜の成分(高低差)が含まれる場合に、走行機体2の枕地でのずり下がりを考慮した領域設定を実現し、更には適宜の自律走行経路Pを生成するために、無線通信端末46で行われる処理について、図12のフローチャートを参照して詳細に説明する。図12は、走行機体2の枕地でのずり下がりを考慮した領域設定を行い、傾斜地に対応した自律走行経路Pを生成するために無線通信端末46で行われる処理を示すフローチャートである。
初めに、ステップS101において、傾斜閾値判定部54は、高度情報取得部56で取得された高度情報に基づいて、圃場(枕地)の斜度が第2閾値(例えば、1.5°)を上回っているか否かを判断する。その結果、圃場(枕地)の斜度が第2閾値以下の場合(ステップS101、No)、領域設定部58は、作業車両設定部36で設定された旋回半径、及び走行方向設定部57で設定された走行方向に基づいて、作業領域及び枕地の設定を行う。即ち、この場合は走行機体2が枕地でずり下がる危険性は低いため、枕地幅を広げる等の特段の処理は行わず、通常どおりの方法により、作業領域及び枕地の設定を行う。また、経路生成部35は、作業領域に複数の線状の自律作業路P1,P1,・・・が並ぶように、かつ、枕地に旋回状の接続路P2が並ぶように、自律走行経路Pを生成する(ステップS107)。
一方、ステップS101での判断の結果、圃場(枕地)の斜度が第2閾値を上回っている場合(ステップS101、Yes)、無線通信端末46の表示制御部31は、ディスプレイ37に傾斜地対応設定ウインドウ82(図9を参照)を表示させ、ユーザに対し、走行機体2のずり下がりに対応するために枕地を広げるか否かを問い合わせる(ステップS102)。
ステップS102での問い合わせの結果、ユーザが枕地を広げることを指示した場合(ステップS102、Yes)、領域設定部58は、傾斜地対応設定ウインドウ82の画面に入力された(或いはずり落ちを効果的に防止するために適宜に算出されてプリセットされた)、拡大された枕地幅を取得する(ステップS103)。その後、ステップS104に移行する。
一方、ステップS102での問い合わせの結果、ユーザが枕地を広げる指示をしなかった場合(ステップS102、No)、ステップS103の処理を飛ばして次のステップS104に移行する。
ステップS104において、傾斜閾値判定部54は、高度情報取得部56で取得された高度情報に基づいて、圃場(枕地)の斜度が第3閾値(例えば、2°)を上回っているか否かを判断する。その結果、枕地の斜度が第3閾値以下の場合(ステップS104、No)、領域設定部58は、作業車両設定部36で設定された旋回半径、走行方向設定部57で設定された走行方向、及びステップS104で取得した枕地幅に基づいて、作業領域及び枕地の設定を行う。即ち、この場合は、圃場を走行方向で見たときにある程度以上のピッチ傾斜成分が生じており、走行機体2が枕地でずり落ちる危険性があるため、ユーザが枕地幅を広げることを指示した場合には、広げられた枕地幅を適用して、作業領域及び枕地の設定を行う。なお、本実施形態の領域設定部58は、自重に起因するずり下がりによって圃場外に逸脱する可能性が高い谷側の枕地にのみ、ステップS103で取得された拡大された枕地を適用する。これにより、走行機体2が谷側の枕地でずり下がっても、圃場外にはみ出てしまうことを防止することができる。
一方、ステップS104での判断の結果、枕地の斜度が第3閾値を上回っている場合(ステップS104、Yes)、無線通信端末46の表示制御部31は、図10に示すように傾斜地対応設定ウインドウ82をディスプレイ37に表示させ、ユーザに対し、走行機体2のずり下がりに対応するために旋回半径を変更するか否かを問い合わせる(ステップS105)。
ステップS105での問い合わせの結果、ユーザが旋回半径を変更することを指示した場合(ステップS105、Yes)、旋回半径指定部59は、傾斜地対応設定ウインドウ82の画面に入力された(或いはずり下がりを効果的に低減するために適宜に算出されてプリセットされた)、変更後の旋回半径を取得する(ステップS106)。その後、ステップS107に移行する。
一方、ステップS105での問い合わせの結果、ユーザが旋回半径を変更する指示をしなかった場合(ステップS105、No)、ステップS106の処理を飛ばして次のステップS107に移行する。
ステップS107において、領域設定部58は、ステップS103で取得された広げられた枕地幅、ステップS106で取得された変更後の旋回半径、及び走行方向設定部57で設定された走行方向に基づいて、作業領域及び枕地の設定を行う。即ち、この場合は圃場を走行方向で見たときに比較的大きなピッチ傾斜成分が含まれており、走行機体2が枕地でずり下がることが懸念されるため、ユーザが枕地を広げること及び旋回半径を変更することを指示した場合には、広げられた枕地幅、及び変更後の旋回半径を適用して、作業領域及び枕地の設定を行う。なお、本実施形態の傾斜地対応設定ウインドウ82で変更後の旋回半径を入力する欄にプリセットされる値は、トラクタ1の機種によって決まる基準旋回半径(最小旋回半径)よりも大きな値としている。これにより、ユーザに対し、より大きな旋回半径に変更することを促すことができる。旋回半径がより大きな値に変更されることにより、旋回時に走行機体2に働く遠心力を低減することができ、ずり落ちを効果的に防止することができる。また、経路生成部35は、作業領域に複数の線状の自律作業路P1,P1,・・・が並ぶように、かつ、枕地に旋回状の接続路P2,P2,・・・が並ぶように、かつ、変更後の旋回半径を実現できるように、自律走行経路Pを生成する(ステップS107)。
以上のような処理により、トラクタ1により自律走行される自律走行経路Pに走行方向で見たときにある程度以上の傾斜の成分(高低差)が含まれる場合に、枕地における走行方向の幅(枕地幅)を広げたり、旋回半径を基準旋回半径(最小旋回半径)よりも大きく設定したりすることにより、トラクタ1のずり下がりを考慮した安全性の高い自律走行経路Pを生成することができる。
次に、圃場(特定領域)を走行方向で見たときにある程度以上の傾斜の成分(高低差)が含まれる場合に、走行機体2の枕地でのずり下がりを低減するために制御部(自律走行制御部)4により行われる処理について、図13のフローチャートを参照して詳細に説明する。図13は、走行機体2の枕地でのずり下がりを低減するためにトラクタ1の制御部(自律走行制御部)4で行われる処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態のトラクタ1では、走行機体2が接続路P2,P2,・・・に沿って走行している間、図13の処理が繰り返し行われる。
初めに、ステップS201において、制御部4の傾斜閾値判定部50は、慣性計測ユニット53の検出結果を読み出して走行機体2の現在の斜度を取得し、この現在の斜度が第1閾値を上回っているか否かを判定する。ただし、ここで検出する斜度とは、ピッチ角とロール角を総合した傾斜を意味する。
ステップS201の判断の結果、走行機体2の現在の斜度が第1閾値(例えば、1.2°)以下である場合(ステップS201、No)、接続路P2を走行中に走行機体2が大きくずり下がる危険性は低いため、制御部4は、特段の車速の調整は行わずに、作業車両設定部36で設定された枕地での車速(第2車速)を実現するように走行機体2を制御する。そして、制御部4は、走行機体2の現在の斜度の監視を続ける(ステップS201の判断を繰り返し行う)。
ステップS202の判断の結果、走行機体2の現在の斜度が第1閾値を上回っている場合(ステップS201、Yes)、傾斜の成分が比較的大きい状況と言えるため、走行機体2の自重によるずり下がりが生じるおそれがあると言える。その場合、制御部4は、走行機体2の旋回時の車速が、作業車両設定部36で設定された枕地での車速(第2車速)よりも遅い車速(第3車速)となるように、走行機体2を制御する。これにより、走行機体2が遅い速度で旋回することとなり、旋回時に自重による大きなずり下がりが生じることを防止できる。
本実施形態の経路生成システム99では、図12の処理が行われることにより、走行機体2の圃場外へのずり落ちが生じにくい領域設定(作業領域及び枕地の設定)が領域設定部58で行われるとともに、走行機体2のずり下がりが生じにくい自律走行経路Pが経路生成部35で生成される。図14に、本実施形態の経路生成システム99で生成される自律走行経路Pの例を示した。図14は、走行機体2の枕地でのずり下がりを考慮して経路生成システム99が生成する自律走行経路Pの例を示す模式図である。図5と比較すれば明らかなように、図14に示した例では、谷側の枕地における走行方向の幅L2が広げられる(L1<L2)とともに、谷側の枕地での走行機体2の旋回半径が通常(圃場が傾斜地でない場合)よりも大きく設定されている。
同時に、本実施形態の経路生成システム99によって生成された自律走行経路Pに沿ってトラクタ1を自律走行させる自律走行システム100においては、走行機体2のずり下がりが生じにくい車速で当該走行機体2を旋回させる。このように、本実施形態では、様々な点で、走行機体2のずり下がりに対する対策がとられている。よって、トラクタ1が自重によってずり下がって圃場からはみ出るおそれを低減することができ、従来よりも安全に自律走行させることが可能となる。
以上に説明したように、本実施形態の経路生成システム99は、トラクタ(作業車両)1により自律走行される自律走行経路(経路)Pを生成する。この経路生成システム99は、作業車両設定部36と、高度情報取得部56と、走行方向設定部57と、領域設定部58と、を備える。作業車両設定部36は、トラクタ1の車両情報(具体的には、旋回半径等)を設定する。高度情報取得部56は、自律走行経路Pが生成される圃場(特定領域)の高度情報(斜度)を取得する。走行方向設定部57は、前記圃場におけるトラクタ1の走行方向を設定する。領域設定部58は、前記圃場に前記走行方向に平行な複数の自律作業路(経路)P1,P1,・・・が生成される作業領域(第1領域)と前記複数の自律作業路P1,P1,・・・同士を接続する接続路P2,P2,・・・が生成される枕地(第2領域)を含む複数の領域を設定する。領域設定部58は前記車両情報と前記高度情報と前記走行方向とに基づいて前記枕地における前記走行方向に平行な方向の幅(枕地幅)を設定する。
これにより、枕地の幅を設定する際に、高度情報と走行方向とが考慮されるため、例えば枕地に、走行方向で見たときのピッチ方向の傾斜が生じている場合に、当該枕地を旋回するときのトラクタ1のずり下がりを考慮して枕地幅を確保することができる。この結果、トラクタ1が圃場から逸脱するのを防止することができる。
また、本実施形態の経路生成システム99においては、領域設定部58は、前記作業領域の前記走行方向(作業方向)の一側及び他側にそれぞれ枕地を設定し、前記一側に設けられた枕地と前記他側に設けられた枕地のうち、前記高度情報に基づいて、高い側に位置する枕地の前記幅L1よりも低い側に位置する枕地の前記幅L2を広幅に設定する(L1<L2)。
これにより、例えば特定領域が傾斜状の圃場であって、2つの枕地に高低差がある場合に、圃場の外側に向けて自重が作用し易い低い側の枕地を広く設定することができ、トラクタ1が圃場から逸脱することを効果的に防止することができる。
また、本実施形態の経路生成システム99においては、作業車両設定部36は前記車両情報としてトラクタ1の旋回半径を設定する。領域設定部58が領域(作業領域及び枕地等)を設定する際、及び経路生成部35が自律走行経路Pを生成する際には、前記高度情報と前記走行方向とに基づいて前記旋回半径を予め定められた基準旋回半径(最小旋回半径)よりも大きい旋回半径に設定する。
これにより、枕地に傾斜が生じている場合に、当該枕地で旋回を行うときのトラクタ1の旋回半径を大きく設定することができ、トラクタ1のずり落ちを防止することができる。
また、本実施形態の経路生成システム99は、前記旋回半径として任意の旋回半径の指定を受け付ける旋回半径指定部59を備える。作業車両設定部36は、旋回半径指定部59により任意の旋回半径の指定が受け付けられた場合に、当該指定に係る旋回半径をトラクタ1の旋回半径として設定する。
これにより、旋回半径をユーザが指定できることで、圃場の高度情報やトラクタ1の旋回特性に依存せず傾斜地への対応を実現することができる。
また、本実施形態で開示した自律走行システム100は、前記の経路生成システム99によって生成された自律走行経路(経路)Pに沿ってトラクタ(作業車両)1を自律走行させるものである。この自律走行システム100においては、作業車両設定部36は、作業領域(第1領域)におけるトラクタ1の第1車速及び枕地(第2領域)におけるトラクタ1の第2車速を設定する車速設定部(不図示)を有する。また、この自律走行システム100は、トラクタ1の自律走行を制御する制御部(自律走行制御部)4を備える。この制御部4は、前記高度情報に基づいて前記枕地におけるトラクタ1の車速を前記第2車速よりも遅い第3車速に制御する。
これにより、枕地にピッチ方向/ロール方向の傾斜が生じている場合に、当該枕地で旋回するときの車速を設定車速よりも減じる制御を行うことができ、トラクタ1のずり下がりを抑制できる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、高度情報取得部56は、無線通信端末46に読み込まれた地図データに基づいて高度分布情報を取得するものとしたが、必ずしもこれに限るものではない。例えばこれに代えて、圃場の外周の位置・形状を設定するためにトラクタ1で圃場を周回したときの慣性計測ユニット53による検出結果から走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)の推移を取得し、これに基づいて圃場の高度分布情報を取得(推定)することができる。また、トラクタ1で圃場を周回したときの位置情報に、緯度及び経度に加えて高度の情報を含めるように構成し、この推移に基づいて高度情報取得部56が高度分布情報を取得しても良い。
上記の実施形態では、領域設定部58は、谷側の枕地の走行方向における幅L2が、山側の枕地の走行方向における幅L1よりも広くなるように、領域(特定領域)を設定するものとしたが、必ずしもこれに限るものではない。例えばこれに代えて、谷側の枕地と、山側の枕地と、の両方を、同じ幅となるように広げることとしてもよい。
上記の実施形態では、傾斜閾値判定部50は第1閾値を用いて、傾斜閾値判定部54は第2閾値及び第3閾値を用いて、それぞれ圃場の傾斜の程度を判定するものとしたが、これらの閾値は、異なる値であっても、共通する値であっても、何れでも構わない。また、閾値の数も上記の実施形態のものに限定されるものではない。
上記の実施形態では、旋回半径指定部59は、ユーザが傾斜地対応設定ウインドウ82に入力した内容に基づいて、例えば基準旋回半径よりも小さい値の旋回半径も設定値として受け付けるものとした。小さい旋回半径(例えば、ずり下がりが懸念されるほどの小さな値の旋回半径)がユーザにより設定された場合、いわゆるフィッシュテールターンを用いて旋回が行われるように自律走行経路Pの接続路P2,P2,・・・を生成することにより、実質的な旋回半径はずり下がりを防止できる程度に十分大きなものに設定することが好ましい。
上記の実施形態では、走行機体2の枕地でのずり落ちのおそれに対する対応策(具体的には、枕地幅を広げるか、或いは旋回半径を変更するか、或いはこれらの両方を行うか)を、ユーザに問い合わせるものしたが、これに限るものではない。例えばこれに代えて、自動的に、枕地幅を広げた領域設定が行われたり、旋回半径を変更した自律走行経路Pが生成されたりするものとしてもよい。
上記の実施形態では、走行機体2の枕地でのずり落ちのおそれに対応するために、領域設定(枕地幅の設定)及び旋回半径を調整する制御と、枕地での車速を調整する制御と、が並行して行われるものとしたが、これに限るものではなく、これらのうちの何れかの制御が単独で行われるものとしてもよい。
上記の構成では、主として、走行方向で見たときのピッチ方向の傾斜の成分が圃場に生じている場合についての走行機体2のずり下がりを防止する制御についてのみ触れた。しかしながら、これに加えて、ロール方向の傾斜の成分が圃場に生じている場合についての走行機体2のずり下がりも考慮して、自律走行経路Pの生成を行うものとしてもよい。その場合、例えば、各自律作業路P1におけるロール方向の斜度を高度分布情報に基づいて取得し、走行機体2に作業幅方向へのずり下がりが生じたとしても隣接する自律作業路P1が重ならないように、自律作業路P1,P1,・・・の間隔を調整することとしてもよい。言い換えれば、作業幅方向へのずり下がりの分だけ余裕をみて自律作業路P1,P1,・・・を並べるようにして、自律走行経路Pを生成することとしてもよい。
上記の構成では、作業車両設定部36、高度情報取得部56、走行方向設定部57、及び領域設定部58は、無線通信端末46側に備えられるものとしたが、これらの構成がトラクタ1側及び無線通信端末46側の何れに備えられるかについては、これに限るものではない。また、これ以外の構成部分についても、トラクタ1側及び無線通信端末46側の何れに備えられていてもよい。
走行機体2の傾斜地でのずり下がりを考慮した経路を生成する過程だけに経路生成システム99を用いることとし、実際の走行は、例えばユーザが、生成した経路を無線通信端末46等によって参照しながらトラクタ1を操向操作することにより行うものとしてもよい。
上記の実施形態では、圃場の斜度のみに基づいて、トラクタ1のずり下がりへの対策の必要性を判断するものとしたが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、圃場の斜度の他に、圃場の硬度や土質も考慮して、トラクタ1のずり下がりへの対策の必要性を判断するものとしてもよい。
上記の実施形態では、高度情報を参照した結果、枕地においてトラクタ1のずり下がりが懸念される場合には、枕地幅を広めに取ることを開示したが、これに限るものではない。例えば、これに代えて、枕地においてトラクタ1のずり下がりが懸念される場合には、その枕地上の接続路P2,P2,・・・の周囲のマージンを広めに取ることとし、その結果として枕地幅が広くなることとしてもよい。その場合、圃場(の枕地)の傾斜角度と、当該マージンの幅と、の対応関係を示すマップを予め作成しておき、当該マップに基づいてマージンの幅を定めることとしてもよい。