次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、図面の各図において同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、同一の符号に対応する部材等の名称が、簡略的に言い換えられたり、上位概念又は下位概念の名称で言い換えられたりすることがある。
本発明は、予め定められた圃場内で1台又は複数台の作業車両を走行させて、圃場内における農作業の全部又は一部を実行させるときに、走行経路を生成して、作業車両を自律走行させる自律走行経路生成システム(自律走行システム)に関する。本実施形態では作業車両としてトラクタを例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等、乗用型作業機に加え、歩行型作業機も含まれる。本明細書において自律走行とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味し、自律作業とは、トラクタが備える制御部によりトラクタが備える作業に関する構成が制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが作業を行うことを意味する。これに対して、手動走行・手動作業とは、トラクタが備える各構成がオペレータにより操作され、走行・作業が行われることを意味する。
以下の説明では、自律走行・自律作業されるトラクタを「無人(の)トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称することがあり、手動走行・手動作業されるトラクタを「有人(の)トラクタ」と称することがある。圃場内において農作業の一部が無人トラクタにより実行される場合、残りの農作業は有人トラクタにより実行される。単一の圃場における農作業を無人トラクタ及び有人トラクタで行うことを、農作業の協調作業、追従作業、随伴作業等と称することがある。無人トラクタと有人トラクタは、互いに異なる構成とすることもでき、共通の構成とすることもできる。無人トラクタと有人トラクタの構成が共通である場合、無人トラクタであってもオペレータが搭乗(乗車)して操作することが可能であり(即ち有人トラクタとして使用することができ)、或いは有人トラクタであってもオペレータが降車して自律走行・自律作業させることが可能である(即ち、無人トラクタとして使用することができる)。なお、農作業の協調作業としては、「単一圃場における農作業を、無人車両及び有人車両で実行すること」に加え、「隣接する圃場等の異なる圃場における農作業を同時期に無人車両及び有人車両で実行すること」が含まれてもよい。
図1は、圃場(予め定められた領域)80において生成された自律走行経路83に沿ってロボットトラクタ1が自律走行・自律作業を行う様子を示す概念図である。図2は、本発明の一実施形態に係る自律走行経路生成システム99が生成した自律走行経路83に沿って走行するロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図3は、ロボットトラクタ1の平面図である。図4は、ロボットトラクタ1を制御するための構成を示すブロック図である。図5は、自律走行経路生成システム99を備えた無線通信端末46のブロック図である。
本発明の実施の一形態に係る自律走行経路生成システムは、図1に示すように圃場80においてロボットトラクタ1が自律走行・自律作業をするための自律走行経路83を生成するものであって、図2等に示す無線通信端末46に備えられている。ロボットトラクタ1は、図4に示すように、当該ロボットトラクタ1の走行及び作業を制御する制御部4を備えており、前記無線通信端末46は、当該制御部4と無線通信することにより、ロボットトラクタ1に対して自律走行・自律作業に関する所定の信号を出力することができる。無線通信端末46が制御部4に出力する信号としては、自律走行・自律作業の経路に関する信号や自律走行・自律作業の開始信号、停止信号、終了信号等が考えられるが、これらに限定されない。
初めに、ロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について、主として図2及び図3を参照して説明する。
トラクタ1は、圃場80を自律走行することが可能な走行機体(車体部)2を備える。走行機体2には、図2及び図3に示す作業機3が着脱可能に取り付けられている。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して走行機体2に装着することができる。走行機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
本実施形態では、作業機3として、図略の回転刃により草刈作業を行う草刈作業部(作業部)3aを備える草刈機が用いられている。この草刈機は、草刈作業部3aを走行機体2に対して機体左右方向にオフセットさせた状態で草刈作業を行うことが可能なオフセット型草刈機(オフセット型作業機)として構成されている。図3には、草刈作業部3aが走行機体2に対して進行方向右側にオフセットした状態が示されている。ただし、詳細は図示しないが、作業機3は油圧シリンダ(後述のオフセットアクチュエータ45)を備えており、この油圧シリンダを駆動することにより、草刈作業部3aを、図3とは反対側に(進行方向左側に)オフセットさせたり、走行機体2の真後ろに位置させたりすることもできる。
トラクタ1の構成について、図2及び図3を参照してより詳細に説明する。トラクタ1の走行機体2は、図2に示すように、その前部が左右1対の前輪7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内には、トラクタ1の駆動源であるエンジン10及び燃料タンク(図略)が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成しても良い。また、駆動源としては、エンジンに加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用しても良い。
ボンネット9の後方には、オペレータが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、オペレータが操向操作するためのステアリングハンドル12と、オペレータが座ることが可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
上記の操作装置としては、図3に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、主変速レバー27、複数の油圧操作レバー16、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、副変速レバー19、及び作業機昇降スイッチ28等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の出力回転数を設定するための操作具である。主変速レバー27は、トラクタ1の走行速度を無段階で変更するための操作具である。油圧操作レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作するための操作具である。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力取出軸)への動力の伝達/遮断を切換操作するための操作具である。即ち、PTOスイッチがON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチがOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止される。PTO変速レバー18は、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うための操作具である。副変速レバー19は、トランスミッション22内の走行副変速ギア機構の変速比を切り換えるための操作具である。作業機昇降スイッチ28は、走行機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するための操作具である。
図2に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図4に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動及び停止等)を制御するための制御部4を備える。この制御部4は、走行機体2の適宜の位置に配置されている。制御部4は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えて構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。制御部4には、トラクタ1が備える各構成(例えば、エンジン10等)を制御するためのコントローラ、及び、他の無線通信機器と無線通信可能な無線通信部40等がそれぞれ電気的に接続されている。
上記のコントローラとして、トラクタ1は少なくとも、エンジンコントローラ61、車速コントローラ62、操向コントローラ63、及び昇降コントローラ64を備える。それぞれのコントローラは、制御部4からの電気信号に応じて、トラクタ1の各構成を制御することができる。
エンジンコントローラ61は、エンジン10の回転数を制御するものである。具体的には、エンジン10には、当該エンジン10の回転数を変更させる図略のアクチュエータを備えたガバナ装置41が設けられている。エンジンコントローラ61は、ガバナ装置41を制御することで、エンジン10の回転数を制御することができる。
車速コントローラ62は、トラクタ1の車速を制御するものである。具体的には、トランスミッション22には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置である変速装置42が設けられている。車速コントローラ62は、変速装置42の斜板の角度を図略のアクチュエータによって変更することで、トランスミッション22の変速比を変更し、所望の車速を実現することができる。
操向コントローラ63は、ステアリングハンドル12の回動角度を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ43が設けられている。この構成で、予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、制御部4は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を計算し、得られた回動角度となるように操向コントローラ63に制御信号を出力する。操向コントローラ63は、制御部4から入力された制御信号に基づいて操向アクチュエータ43を駆動し、ステアリングハンドル12の回動角度を制御する。
昇降コントローラ64は、作業機3の昇降を制御するものである。具体的には、走行機体2には、作業機3を走行機体2に連結している3点リンク機構の近傍に、油圧シリンダ等からなる昇降アクチュエータ44が設けられている。この構成で、昇降コントローラ64は、制御部4から入力された制御信号に基づいて昇降アクチュエータ44を駆動して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。この制御により、作業機3を、退避高さ(農作業を行わない高さ)及び作業高さ(農作業を行う高さ)等の所望の高さで支持することができる。
作業機3は、草刈作業部3a等を制御するための作業機制御部35を備える。作業機制御部35は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えて構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。作業機制御部35は、走行機体2の制御部4と電気的に接続されており、制御部4からの指令に基づいて作業機3を制御することができる。作業機制御部35には、オフセットコントローラ65が電気的に接続されている。
オフセットコントローラ65は、作業機3の草刈作業部3aのオフセット量を制御するものである。具体的には、作業機3は、オフセットアクチュエータ45を備えている。オフセットアクチュエータ45としては、例えば油圧シリンダ、電動モータ等が考えられるが、これらに限定されない。この構成で、オフセットコントローラ65は、作業機制御部35から入力された制御信号に基づいてオフセットアクチュエータ45を駆動する。この制御により、作業機3の草刈作業部3aを機体左右方向に変位させることができる。
オフセットアクチュエータ45を制御部4(作業機制御部35)により制御し、作業機3の草刈作業部3aを走行機体2から適宜にオフセットさせた状態でトラクタ1を走行させることで、草刈作業部3aが通る経路の中心と走行機体2が通る経路の中心とが機体左右方向にズレた状態で草刈作業部3aによる作業を行うことができる。
なお、上述したエンジンコントローラ61等の複数のコントローラ(作業機3のオフセットコントローラ65を含む)は、トラクタ1の制御部4から入力される信号に基づいてエンジン10等の各部を制御している。従って、制御部4が実質的に各部を制御していると把握することができる。
上述のような制御部4を備えるトラクタ1は、オペレータがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1の各部(走行機体2、作業機3等)を制御して、圃場80内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、オペレータがトラクタ1に搭乗しなくても、無線通信端末46により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行及び自律作業させることが可能となっている。
具体的には、図4に示すように、トラクタ1は、自律走行を可能とするための各種の構成を備えている。更に、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(走行機体2)の位置情報を取得するために必要な測位用アンテナ6等の構成を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場80を自律走行することが可能となっている。
次に、自律走行を可能とするためにトラクタ1が備える構成について詳細に説明する。具体的には、トラクタ1は、図2及び図4に示すように、測位用アンテナ6及び無線通信用アンテナ48等を備える。また、これらに加えて、トラクタ1には、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を特定することが可能な慣性計測ユニット(IMU)が備えられていてもよい。
測位用アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。図2に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11のルーフ29の上面に配置されている。測位用アンテナ6で受信された測位信号は、図4に示す位置情報算出部49に入力される。位置情報算出部49は、トラクタ1の走行機体2(厳密には、測位用アンテナ6)の位置情報を、例えば緯度・経度情報として算出する。当該位置情報算出部49で検出された位置情報は、制御部4に入力されて、自律走行に利用される。
なお、本実施形態ではGNSS−RTK法を利用した高精度の衛星測位システムが用いられているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いても良い。例えば、相対測位方式(DGPS)、又は静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)を使用することが考えられる。
無線通信用アンテナ48は、オペレータが操作する無線通信端末46からの信号を受信したり、無線通信端末46への信号を送信したりするものである。図2に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ29の上面に配置されている。無線通信用アンテナ48で受信した無線通信端末46からの信号は、図4に示す無線通信部40で信号処理された後、制御部4に入力される。また、制御部4から無線通信端末46に送信する信号は、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信される。
無線通信端末46は、図4に示すように、タブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。オペレータは、無線通信端末46のディスプレイ37に表示された情報(例えば、トラクタ1の現在位置等)を参照して確認することができる。また、オペレータは、ディスプレイ37の傍に配置されたハードウェアキー38、及びディスプレイ37を覆うように配置された図示しないタッチパネル等を操作して、トラクタ1の制御部4に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信することができる。なお、無線通信端末46はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、前述の協調作業を行うために有人のトラクタを無人のトラクタ1に付随して走行させる場合、有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置を無線通信端末とすることもできる。
次に、主として図4及び図5を参照して、自律走行経路生成システム99を備える無線通信端末46の構成についてより詳細に説明する。
図5に示すように、無線通信端末46は、制御部71と、ディスプレイ(表示部)37と、通信部72と、作業車両情報設定部(オフセット設定部)51と、圃場情報設定部(領域設定部)52と、作業情報設定部53と、自律走行経路生成部54と、を備える。
具体的には、無線通信端末46の制御部71は、トラクタ1の制御部4と同様に、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。また、前記ROMには、トラクタ1に自律走行・自律作業を行わせるための適宜のプログラムが記憶されている。そして、上記したソフトウェアとハードウェアの協働により、無線通信端末46を、作業車両情報設定部51、圃場情報設定部52、作業情報設定部53、自律走行経路生成部54等として動作させることができる。
作業車両情報設定部51は、トラクタ1に関する情報(以下、作業車両情報と呼ぶことがある。)を設定するためのものである。作業車両情報設定部51は、トラクタ1の機種、トラクタ1において測位用アンテナ6が取り付けられている位置、作業機3の種類、作業機3のサイズ及び形状、作業機3の走行機体2に対する位置、トラクタ1の作業中の車速及びエンジン回転数、トラクタ1の旋回中の車速及びエンジン回転数等について、オペレータが無線通信端末46を適宜操作することにより指定した内容を記憶することができる。
作業車両情報設定部51は、上記の作業機3のサイズとして、草刈作業部3aによって作業が行われる左右方向の有効幅(図3に示す幅L2。以下、作業幅と呼ぶことがある。)を設定することができる。また、作業車両情報設定部51は、作業機3がオフセット型作業機である場合に、上記の作業機3の走行機体2に対する位置として、草刈作業部3aを走行機体2に対してオフセットさせる方向(機体左方向か、機体右方向か、又は両方か)と、オフセット作業を行う場合の機体左右方向のオフセット距離L1と、を設定することができる。
オフセット距離L1は、図3及び図6に示すように、走行機体2に適宜設定された基準点2cと、作業機3(草刈作業部3a)に適宜設定された基準点3cと、の間の機体左右方向での距離として定義することができる。走行機体2の基準点2cは、走行機体2の位置を代表する点として任意に定めることができるが、当該基準点2cは走行機体2の左右方向中央に位置するように設定することが好ましい。作業機3(草刈作業部3a)の基準点3cについても、当該作業機3(草刈作業部3a)の位置を代表する点として任意に定めることができるが、当該基準点3cは草刈作業部3aの左右方向中央に位置するように設定することが好ましい。なお、走行機体2に対する作業機3の連結位置が走行機体2の左右方向中央でない場合、上記基準点2cの代わりに当該連結位置(複数位置で連結されている場合は連結位置中心)を基準点として、当該基準点と上記基準点3cとの間の機体左右方向での距離をオフセット距離L1として定義することとしてもよい。また、測位用アンテナ6の取付位置は、図2に示すように走行機体2の基準点2cと一致していても良いし、一致しなくても良い。
図5に示すように、圃場情報設定部52は、圃場80に関する情報(以下、圃場情報と呼ぶことがある。)を設定するためのものである。圃場情報設定部52は、圃場80の位置及び形状、自律走行させたい開始位置及び終了位置、作業方向等について、オペレータが無線通信端末46を操作することにより設定した内容を記憶することができる。
なお、作業方向とは、図1に示すように、圃場80から(枕地(枕地領域)や非耕作地等の)非作業領域(第2領域)82を除いた領域である作業領域(第1領域)81において、作業機3で作業を行いながらトラクタ1を走行させる方向を意味する。
圃場80の位置及び形状の情報は、例えばオペレータがトラクタ1に搭乗して圃場の外周に沿って1回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ6の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。ただし、圃場80の位置及び形状は、ディスプレイ37に地図を表示させた状態でオペレータが無線通信端末46を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場80の位置及び形状により特定される領域は、トラクタ1を走行させることが可能な領域であり、本願では上記領域を走行領域と称することがある。
作業情報設定部53は、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報と呼ぶことがある。)を設定するためのものである。作業情報設定部53は、作業情報として、ロボットトラクタ1と有人のトラクタの協調作業の有無、トラクタ1が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路83aの数であるスキップ数、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を設定可能に構成されている。
自律走行経路生成部54は、トラクタ1を自律走行させる経路である自律走行経路83を生成するためのものである。自律走行経路生成部54は、作業車両情報設定部51、圃場情報設定部52及び作業情報設定部53で設定された情報に基づいて、トラクタ1の自律走行経路83を生成して記憶することができる。
自律走行経路83は、図1に示すように、作業領域81に配置される作業経路83aと、非作業領域82に配置される非作業経路83bと、により構成される。自律走行経路生成部54が自律走行経路83を生成する過程では、作業機3の作業幅L2、作業領域81において互いに隣接する作業経路83aの間で作業機3の作業幅L2同士が一部重複することの可否(可能な場合は、重複幅の上限値)、非作業領域82の大きさ及び形状(言い換えれば、枕地の幅及び非耕作地の幅)、トラクタ1が非作業経路83bにおいて旋回する場合にスキップする作業経路83aの数等が考慮される。また、無人トラクタ1と有人トラクタとで協調作業を行う場合は、自律走行経路83の生成過程において、無人トラクタ1と有人トラクタとの位置関係、有人トラクタの作業機の幅等が考慮される。
通信部72は、トラクタ1側との間で通信を行うためのものである。無線通信端末46の制御部71は、通信部72によりトラクタ1の制御部4と通信することで、自律走行経路生成部54が生成した自律走行経路83の情報をトラクタ1側に送信することができる。また、無線通信端末46の制御部71は、通信部72を用いて制御信号をトラクタ1側に送信することで、トラクタ1に対して自律走行の開始及び停止等を指示することができる。また、トラクタ1が自律走行している場合、無線通信端末46の制御部71は、当該トラクタ1の状態(位置、走行速度等)をトラクタ1側から受信してディスプレイ37に表示することができる。
次に、図7から図11までを参照して、自律走行経路83を生成するための無線通信端末46における設定について説明する。図7は、無線通信端末46のディスプレイ37における作業車両情報入力画面91の表示例を示す図である。図8は、無線通信端末46のディスプレイ37における圃場情報入力画面92の表示例を示す図である。図9は、無線通信端末46のディスプレイ37における圃場情報入力画面92の別の表示例を示す図である。図10は、無線通信端末46のディスプレイ37における作業情報入力画面93の表示例を示す図である。
無線通信端末46においてオペレータが所定の操作を行うと、制御部71は、図7に示す作業車両情報入力画面91をディスプレイ37に表示するように制御する。
作業車両情報入力画面91では、走行機体2及び当該走行機体2に装着される作業機3に関する情報(前記作業車両情報)を入力することができる。具体的には、作業車両情報入力画面91には、トラクタ1の機種、トラクタ1の大きさ、測位用アンテナ6の走行機体2に対する取付位置、作業機3の種類、作業機3の作業幅L2、3点リンク機構の後端(ロアリンクの後端)から作業機3の後端までの距離、走行機体2に対して作業機3(草刈作業部3a)をオフセットすることが可能な方向、作業機3をオフセットした場合の機体左右方向のオフセット距離(具体的には、走行機体2の基準点2cと草刈作業部3aの基準点3cとの間の機体左右方向の距離)L1等を入力する欄がそれぞれ配置されている。
オペレータは、無線通信端末46を操作して、作業車両情報入力画面91の各欄に配置されているテキストボックスに数値を入力したりドロップダウンボックスの一覧から選択したりすることにより、設定を行う。これにより、作業機3が有する草刈作業部3aの作業幅L2、草刈作業部3aを走行機体2に対してオフセットさせることが可能な左右オフセット方向(右か、左か、両方か)及びオフセット距離L1等を含む各種の情報を設定することができる。
作業車両情報入力画面91においてオペレータが指定した作業車両情報は、作業車両情報設定部51に記憶される。作業車両情報の入力が完了すると、制御部71は、図8に示すような圃場情報入力画面92を表示するようにディスプレイ37を制御する。
圃場情報入力画面92では、走行機体2が走行する圃場80に関する情報(前記圃場情報)を入力することができる。具体的には、圃場情報入力画面92には、圃場80の位置及び形状と、自律走行の開始位置及び終了位置と、を図形で示す平面表示部88が配置されている。また、圃場情報入力画面92には、圃場外周、自律走行の開始位置、自律走行の終了位置、及び作業方向のそれぞれについて、「指定」、「リセット」のボタンが配置されている。
なお、圃場情報入力画面92等におけるボタンは、何れもディスプレイ37に表示される仮想的なボタンとして構成され、当該ボタンの表示領域に相当するタッチパネルの位置をオペレータが指で触れることによって操作することができる。
「圃場外周」の「指定」ボタンを操作すると、無線通信端末46が圃場形状記録モードに切り換わる。この圃場形状記録モードにおいて、オペレータがトラクタ1に乗り込んで運転し、圃場80の外周に沿って1回り周回させると、そのときの測位用アンテナ6の位置情報の推移に基づいて、圃場80の位置及び形状が取得(算出)される。これにより、圃場80の位置及び形状の指定を行うことができる。
無線通信端末46の制御部71は、得られた圃場80の位置及び形状を、図8に示すように、圃場情報入力画面92の平面表示部88にグラフィカルに表示する。圃場80の位置及び形状の指定をやり直したい場合は、今まで指定した内容を「リセット」ボタンの操作により破棄し、再度「指定」ボタンを操作すれば良い。
なお、上記のように圃場80においてトラクタ1を実際に走行させることで圃場80の位置及び形状を指定することに代えて、例えば、無線通信端末46のディスプレイ37に地図を表示させ、地図上においてオペレータが複数の点を指定することにより、指定した点同士を結ぶ線が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形の位置及び形状を圃場80の位置及び形状として指定することもできる。
「作業開始位置」の「指定」ボタンを操作すると、指定された圃場80の位置及び形状が平面表示部88に表示された状態で、オペレータは適宜の点を自律走行の開始位置として指定することができる。指定された開始位置には、開始位置マークF1が表示される。なお、「リセット」ボタンの動作は上記と同様である。
「作業終了位置」の「指定」ボタンを操作すると、「作業開始位置」の「指定」ボタンと同様に、適宜の点を、自律走行の終了位置として指定することができる。指定された終了位置には、終了位置マークF2が表示される。「リセット」ボタンの動作は上記と同様である。
図8には、圃場80の位置及び形状、作業の開始位置並びに終了位置を設定した例が示されている。図8の例においては、矩形状の圃場80の隅の1つに開始位置が設定され、当該隅と対角位置にある隅に終了位置が設定されている。このように、本実施形態の自律走行経路生成システム99では、開始位置及び終了位置の両方が圃場80の端部に設定されることを原則としている。
一方、本実施形態においては、作業機3(草刈作業部3a)が走行機体2に対して機体左右方向何れかにオフセットしながら作業可能である旨の設定が作業車両情報設定部51に設定されている場合、自律走行の開始位置及び終了位置のうち一方(だけ)について、作業領域81の中央付近の点を指定することができる。図9の例では、開始位置が圃場80の隅に設定される一方、終了位置が圃場80の中央部に設定されている。なお、このような設定はオフセット型作業機を用いる場合に特有のものであり、オフセット型でない作業機を用いる場合は、図9のような指定を行うことができない。
圃場情報入力画面92においてオペレータが指定した圃場情報は、圃場情報設定部52に記憶される。圃場情報の入力が完了すると、制御部71は、図10に示すような作業情報入力画面93を表示するようにディスプレイ37を制御する。
作業情報入力画面93では、具体的な作業の情報(前記作業情報)を入力することができる。具体的には、作業情報入力画面93には、ロボットトラクタ1と有人トラクタの協調作業の有無、有人のトラクタが協調作業する場合のパターン、有人のトラクタが協調作業する場合の当該有人のトラクタの作業幅、有人のトラクタが協調作業する場合のロボットトラクタ1のスキップ数(作業経路を何列飛ばして走行するか)、隣接する作業経路における作業幅のオーバーラップ許容量、作業機3の初期オフセット方向、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を入力する欄がそれぞれ設けられている。
「有人トラクタの協調作業の有無」の欄では、ロボットトラクタ1を単独で自律走行させて農作業を行うか(有人トラクタの随伴無し)、又は、自律走行するロボットトラクタ1と有人のトラクタ(オペレータが搭乗するトラクタ)とを随伴させることにより農作業を行うか(有人トラクタの随伴有り)、の何れかを選択することが可能となっている。
「随伴有り」の場合、「協調作業パターン」の欄で、ロボットトラクタ1に対する有人のトラクタの位置のパターンを、ロボットトラクタ1の真後ろ、左斜め後ろ、右斜め後ろ、の何れかから選択することができる。また、「有人トラクタの作業幅」の欄で、有人トラクタの作業幅(作業機により作業が行われる有効幅)を入力することができる。
「ロボットトラクタのスキップ数」の欄には、作業経路を何列飛ばして農作業を行うかを示す数値を入力することができる。これにより、例えば、随伴する有人のトラクタでも農作業を行うことを考慮に入れて、1列おきに農作業を行う設定とすることが可能である。
「作業幅のオーバーラップ量」の欄では、互いに隣接する作業経路83aの間で作業幅L2同士が一部重複しても良い場合、その重複幅の上限値を入力することができる。重複を全く許容しない場合は、この欄にゼロを入力すれば良い。
「作業機の初期オフセット方向」の欄では、トラクタ1にオフセット型作業機を装着している場合に、自律走行の開始時点において作業機3(草刈作業部3a)が左右どちらにオフセットしているか、又はオフセットしていないか、を指定することができる。
「枕地の幅」の欄では、例えば、無人のトラクタ1に装着される作業機3のサイズ等に基づいて予め算出される枕地幅の下限値と同じかそれよりも大きい値を、枕地の幅として設定することができる。
「非耕作地の幅」の欄では、非作業領域82のうち、前述の作業方向と垂直な向きで作業領域81に隣接する非耕作地の幅(サイドマージンSM1)を設定することができる。この非耕作地の幅については、自律走行の終了後に圃場80の端部を手動走行で周回しつつ作業すること等を考慮しながら、適宜の値を設定することができる。
なお、本実施形態のようにオフセット型作業機を用いる場合の「枕地幅」及び「非耕作地の幅」については、オフセットなしの作業機を用いる場合と比較して広くなるように、設定値が制限されても良い。これにより、オフセット型作業機を装着した場合でも、作業機3の端部(草刈作業部3aの端部)が圃場80からハミ出ないように考慮しながら、当該枕地等での自律走行経路を容易に形成することができる。
ただし、本実施形態においては、作業機3としてオフセット型作業機を装着して作業する旨が作業車両情報として設定されている場合、自律走行経路83の生成ロジックの複雑化を避けるため、「有人トラクタの協調作業の有無」の欄は入力できない(即ち、協調作業なしが強制される)ようになっている。また、同様の事情により、作業機3としてオフセット型作業機を用いる場合、「ロボットトラクタのスキップ数」の欄は入力できない(即ち、スキップ数が強制的にゼロにされる)ようになっている。従って、本実施形態においては、オフセット型作業機を用いてトラクタ1に自律走行・自律作業させる場合、有人トラクタの存在を考慮した経路を生成して自律走行・自律作業させることはできず、作業経路83aを1列以上飛ばして作業することもできない。
オペレータが作業情報入力画面93の入力欄を全て入力して「自律走行経路を生成」ボタンを操作した場合、自律走行経路生成部54により自律走行経路83が生成されるとともに、当該自律走行経路83が自律走行経路生成部54に記憶される。生成された自律走行経路83は確認のためにディスプレイ37に適宜表示され、オペレータは生成された自律走行経路83を画像により確認することが可能である。
自律走行経路83の生成後は、制御部71は、図示しない経路データ転送画面をディスプレイ37に表示するように制御する。この経路データ転送画面では、オペレータは、自律走行経路生成部54により生成した自律走行経路83のデータを、トラクタ1側へ例えば無線により転送し、トラクタ1が備える記憶部55に記憶させることができる。
自律走行経路83のデータがトラクタ1に入力されると、オペレータが無線通信端末46を適宜操作することで、トラクタ1に自律走行の開始を指示することができる。自律走行の開始が指示されると、トラクタ1は、無線通信端末46から当該トラクタ1に送信された自律走行経路83に従って自律走行し、自律作業を行う。
次に、図11を参照しながら、自律走行経路生成部54が自律走行経路83を生成する処理について説明する。図11は、自律走行経路83を生成する処理を示すフローチャートである。
図10に示す作業情報入力画面93において「自律走行経路を生成」ボタンが操作されると、最初に、圃場情報入力画面92において設定された圃場80の形状と、作業情報入力画面93において設定された枕地の幅及び非耕作地の幅に基づいて、作業領域81及び非作業領域82が定められる。その後に図11の処理が開始され、最初に自律走行経路生成部54は、作業領域81において草刈作業部3aが通る経路84を、図12の破線矢印のように生成する(ステップS101)。このときの経路の計算は、走行機体2の基準点2cではなく、作業機3の基準点(草刈作業部3aの基準点)3cを基準にして行われる。なお、以下では、作業領域81において作業機3の基準点3cが通る経路84を、「作業機作業経路」と呼ぶことがある。
次に、自律走行経路生成部54は、ステップS101の処理で生成された作業機作業経路(前記経路84)と、作業車両情報設定部51により設定されたオフセット方向及びオフセット距離と、に基づいて(言い換えれば走行機体2の基準点2cに基づいて)、作業領域81における走行機体2が通る経路(作業経路83a)を、図13の太線矢印のように生成する(ステップS102)。この計算は、簡単な幾何学的関係に基づいて行うことができる。なお、以下では、作業領域81において走行機体2の基準点2cが通る経路を、「走行機体作業経路」と呼ぶことがある。
その後、自律走行経路生成部54は、ステップS102の処理で生成された走行機体作業経路(作業経路83a)の端点を繋ぐように、非作業領域82において走行機体2の基準点2cが通る経路(非作業経路83b)を、図14の太線矢印のように生成する(ステップS103)。このとき、自律走行の開始位置と走行機体作業経路の端点とを繋ぐ経路、及び、走行機体作業経路の端点と自律走行の終了位置とを繋ぐ経路も、同様に生成される。非作業領域82において走行機体2が通る経路は、作業機3の端部が圃場80から外部にハミ出すことを防止する観点から、必要に応じて所定のマージン内において適宜修正される。以上により、圃場80(作業領域81及び非作業領域82)における走行機体2の自律走行経路83を生成することができる。
なお、本実施形態において自律走行経路生成システム99が生成することができる自律走行経路83は2種類あり、そのうちの1つが、図14の太線矢印で示す折返し走行経路である。この折返し走行経路は、図8の例のように圃場情報設定部52で設定された自律走行の開始位置及び終了位置が何れも圃場80の端部である場合に適用されるものであり、圃場80の縁部と縁部の間で折返しを反復しながら作業を行うように生成される。
この折返し走行経路の特徴は、図12に示す作業機作業経路が、予め指定された作業方向と平行な直線路を、当該作業方向と垂直な方向に往路、復路、往路、・・・と交互に並べることで形成されることである。この作業機作業経路を配置するにあたっては、作業領域81に対する作業機3の作業漏れが生じないように、かつ、作業効率が良好となるように、当該作業機3の作業幅L2等が考慮される。また、作業機作業経路の配置は、指定された開始位置(又は開始位置の近傍)から上記の作業方向に従って最初の作業が行われ、可能な限り終了位置(又は終了位置の近傍)において作業が終了するように、適宜考慮される。
なお、作業領域81又は圃場80の形状が複雑である場合は、上記の往路及び復路を、直線路に代えて折れ線路等としても良い。
ところで、本実施形態においては、作業機3が、草刈作業部3aのオフセット方向を変更可能に構成されている。この場合、自律走行経路生成部54は、必要に応じて、草刈作業部3aのオフセット方向を、作業経路83aと作業経路83aとを繋ぐ非作業経路83bにおいて変更することができる。例えば、図13の例では、左から1本目及び2本目の作業経路83aにおける草刈作業部3aのオフセット方向は右であるが、3本目ではオフセット方向が左に切り換えられており、その後も更に交互に切り換えられている。このように経路を生成することで、非耕作地の幅(サイドマージンSM1)の大きさ等の様々な事情に応じて自律走行・自律作業を柔軟に行うことができる。また、草刈作業部3aのオフセット方向を非作業経路83bにおいて切り換えることで、自律走行経路83を単純な処理で生成することができる。
次に、もう1つの自律走行経路である周回走行経路について、図15を参照して説明する。
図15に示す周回走行経路は、図9の例のように圃場情報設定部52で設定された自律走行の開始位置及び終了位置の一方が圃場80の中央である場合に生成されるものである。図9の例では自律走行の終了位置が圃場80の中央に設定されているので、周回走行経路は図15の太線矢印のように、圃場80内を外側から内側へ角渦巻き状に周回するように生成される。ただし、自律走行の開始位置を圃場80の中央に、終了位置を圃場80の端部に、それぞれ設定することもでき、この場合、周回走行経路は、圃場80内を内側から外側へ角渦巻き状に周回するように生成される。
この周回走行経路も、図11で示す処理により生成される。具体的には、作業領域81において作業機作業経路(図15の破線矢印の経路84)が作業機3の基準点3cを基準にして渦巻き状に生成され、この作業機作業経路がオフセットされることで(走行機体2の基準点2cに基づいて)走行機体作業経路(作業経路83a)が生成される。更に、自律走行の開始位置近傍の部分は非作業領域82となっているので、この非作業領域82において走行機体2の基準点2cが通る経路(非作業経路83b)を、自律走行の開始位置と走行機体作業経路の端点とを繋ぐように生成する。以上により、図15に太線矢印で示す周回走行経路を生成することができる。
図15に示す周回走行経路の例においては、作業機3のオフセット方向が自律走行経路83の途中で変更されない。言い換えれば、当該周回走行経路では、圃場80の外側から内側に向かって作業をしていく経路の全行程において、作業機3が走行機体2よりも圃場80の中央側へオフセットした状態が維持されている。従って、走行機体2は作業機3による作業を終えた部分を走行するため、例えば、草刈作業において常に見通しの良い状態で作業を行わせることができる。なお、周回走行経路においても、折返し走行経路と同様に、作業内容に応じて自律走行経路83の途中で作業機3のオフセット方向を変更しても良い。
本実施形態では圃場80に作業領域81及び非作業領域82が含まれることとしたが、作業領域81と非作業領域82とは一部が重複する領域であってもよい。作業領域81と非作業領域82の一部が重複するとは、その重複領域をトラクタ1がN回(Nは2以上の整数)走行する場合において、X回(XはN未満の整数)は作業機3による作業を行わずに走行し、N−X回は作業機3による作業を行いながら走行することを意味する。従って、本実施形態において作業領域81とは、作業機3による作業を伴ってトラクタ1が走行する領域であるといえ、非作業領域82とは、作業機3による作業を伴わずにトラクタ1が走行する領域であるともいえる。
図15に示すように、作業機作業経路が圃場80の中心部に向かって渦巻き状に生成される場合、圃場80の中心部ではトラクタ1の旋回半径よりも狭い残存領域について作業機3により作業を行うために、切り返し(トラクタ1を一旦後進させて残存領域から一定距離離れた上で、残存領域に移動する動作)が必要となりうる。この一連の切返し動作は、作業機3により作業が行われないため、一連の切り返し動作が行われる領域は非作業領域82であるといえる。自律走行経路生成部54はそのような切り返し動作を行うための経路を生成するにあたっては作業機3の基準点3cではなく、走行機体2の基準点2cに基づいて経路を生成する。つまり本実施形態において自律走行経路生成部54は、作業機3による作業を伴ってトラクタ1が走行する領域については作業機3の基準点3cに基づいて経路(作業機作業経路)を生成し、作業機3による作業を伴わずにトラクタ1が走行する領域については走行機体2の基準点2cに基づいて経路(走行機体作業経路)を生成することが可能である。
以上に説明したように、本実施形態の自律走行経路生成システム99は、予め定められた圃場80において、走行機体2と走行機体2に装着される作業機3を備えるトラクタ1を自律走行させるための自律走行経路83を生成する。自律走行経路生成システム99は、作業車両情報設定部51と、自律走行経路生成部54と、を備える。作業車両情報設定部51は、走行機体2の基準点2cに対する作業機3の基準点3cのオフセット方向及びオフセット距離を設定可能である。自律走行経路生成部54は、作業機3の基準点3cに基づいて圃場80内における自律走行経路83を生成可能である。
これにより、作業機3の基準点3cが通る経路84と走行機体2の基準点2cが通る経路(作業経路83a)とをズラした自律走行経路83を生成することができる。その結果、トラクタ1の自律走行を、例えば圃場端を除草しながら走行する場合等、様々な作業形態に適用することができる。
また、本実施形態の自律走行経路生成システム99において、圃場80は、作業機3により作業が行われる作業領域81と、作業領域81の周囲に設定される非作業領域82と、を含む。自律走行経路生成部54は、作業機3の基準点3cに基づいて作業領域81内における作業経路83aを生成し、走行機体2の基準点2cに基づいて非作業領域82内における非作業経路83bを生成する。
これにより、自律走行経路83を生成するときの位置の基準を作業領域81と非作業領域82との間で異ならせることで、作業領域81において作業機3(草刈作業部3a)をオフセットさせて作業する場合でも、作業領域81及び非作業領域82の両方において、自律走行経路83の生成処理を単純化することができる。
また、本実施形態の自律走行経路生成システムは、圃場80におけるトラクタ1による作業の開始位置及び終了位置を設定する圃場情報設定部52を備える。図8に示すように、圃場情報設定部52により開始位置及び終了位置の両方が圃場80の端部に設定された場合、自律走行経路生成部54は、自律走行経路83として、圃場80の縁部と縁部の間で折返しを反復しながら開始位置から終了位置に向かう折返し走行経路(図14)を生成する。図9に示すように、圃場情報設定部52により開始位置及び終了位置の一方が圃場80の端部に設定され、他方が圃場80の中央部に設定された場合、自律走行経路生成部54は、自律走行経路83として、開始位置から終了位置に向かう渦巻き状の周回走行経路(図15)を生成する。
これにより、2種類の自律走行経路83を作業内容等に応じて適宜選択することができるので、作業効率を向上させることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態において、自律走行の開始位置と終了位置の両方が圃場80の端部に指定された場合に、折返し走行経路が生成される。しかしながら、例えば、生成された折返し走行経路を確認のためにディスプレイ37に表示するときに、メッセージの表示等の適宜の方法で、自律走行経路生成システム99側からオペレータに周回走行経路の生成を提案しても良い。
オフセット型作業機としては、上記の草刈作業機に限定されず、例えばオフセット型のプラウを用いることができる。また、左右両側にオフセットさせることが可能な作業機だけでなく、左右何れか一側にのみオフセット可能な作業機についても、自律走行経路生成システム99によって自律走行経路83の生成を行うことができる。
上記の実施形態においては、走行機体2に対して作業機3をオフセットすることが可能な旨が作業車両情報設定部51で設定された場合にのみ、自律走行の開始位置又は終了位置として圃場80の中央部を選択可能に構成されている。しかしながら、非オフセット型の作業機3を用いる場合においても、圃場80の中央部を自律走行の開始位置又は終了位置として選択できるようにしてもよい。
上記の実施形態においては、作業機3を走行機体2に対して、機体左方向及び機体右方向にオフセットさせることができるとしたが、左右一側方向にしかオフセットできないようにしてもよい。この場合、(オフセットしないときは、オフセット距離L1が0であるので)作業車両情報設定部51においてオフセット距離L1のみを設定するように構成すればよい。
上記の実施形態では、往復走行経路においては、トラクタ1が作業の進行方向に対して交互に逆方向を向き、周回走行経路においては、トラクタ1が作業の進行方向に対して常に同じ方向を向いている。即ち、往復走行経路ではオフセット方向を反転する必要性が高く、周回走行経路ではオフセット方向を反転する必要性が低いと言える。従って、生成される経路が往復走行経路である場合はオフセット方向が必要に応じて反転され、生成される経路が周回走行経路である場合はオフセット方向が途中で変更(反転)されないようにしてもよい。
また、作業機3として、左右一側にだけオフセット可能なものは走行機体2に装着できず、左右両側にオフセット可能なものだけを走行機体2に装着できるようにしてもよい。この場合、左右一側にだけオフセット可能な場合を考慮しなくて良いので、図7の設定画面において、「作業機が左右オフセット可能な方向」の「左だけ」及び「右だけ」の項目を省略することができる。
上記の実施形態では、作業情報入力画面93で設定された枕地の幅及び非耕作地の幅に基づいて非作業領域82が定められ、圃場80から非作業領域82を除外した残りの領域として作業領域81が定められている。しかしながら、作業領域81を設定する方法は上記に限らず、例えば、上述の圃場情報入力画面92において平面表示部88に表示された圃場80の任意の点をオペレータが指定することで作業領域81及び非作業領域82を設定できるように構成されてもよい。
上記の実施形態では、自律走行経路生成システム99を構成する作業車両情報設定部51と、自律走行経路生成部54とは、無線通信端末46側に備えられている。しかしながら、作業車両情報設定部51及び自律走行経路生成部54のうちの一部又は全部がトラクタ1側に備えられているものとしてもよい。