JP6911030B2 - 無機/有機ハイブリッド化合物からなる抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料およびその製造方法 - Google Patents

無機/有機ハイブリッド化合物からなる抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6911030B2
JP6911030B2 JP2018529801A JP2018529801A JP6911030B2 JP 6911030 B2 JP6911030 B2 JP 6911030B2 JP 2018529801 A JP2018529801 A JP 2018529801A JP 2018529801 A JP2018529801 A JP 2018529801A JP 6911030 B2 JP6911030 B2 JP 6911030B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
algae
antiviral
antimicrobial
silver
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018529801A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2018021106A1 (ja
Inventor
澤 春夫
春夫 澤
和哉 志村
和哉 志村
拓哉 餘舛
拓哉 餘舛
英俊 妻木
英俊 妻木
太映子 森下
太映子 森下
昇治 福山
昇治 福山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KI Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
KI Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KI Chemical Industry Co Ltd filed Critical KI Chemical Industry Co Ltd
Publication of JPWO2018021106A1 publication Critical patent/JPWO2018021106A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6911030B2 publication Critical patent/JP6911030B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01NPRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
    • A01N25/00Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators, characterised by their forms, or by their non-active ingredients or by their methods of application, e.g. seed treatment or sequential application; Substances for reducing the noxious effect of the active ingredients to organisms other than pests
    • A01N25/34Shaped forms, e.g. sheets, not provided for in any other sub-group of this main group
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01NPRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
    • A01N59/00Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators containing elements or inorganic compounds
    • A01N59/16Heavy metals; Compounds thereof
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01NPRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
    • A01N59/00Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators containing elements or inorganic compounds
    • A01N59/16Heavy metals; Compounds thereof
    • A01N59/20Copper
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C02TREATMENT OF WATER, WASTE WATER, SEWAGE, OR SLUDGE
    • C02FTREATMENT OF WATER, WASTE WATER, SEWAGE, OR SLUDGE
    • C02F1/00Treatment of water, waste water, or sewage
    • C02F1/50Treatment of water, waste water, or sewage by addition or application of a germicide or by oligodynamic treatment
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C09DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • C09DCOATING COMPOSITIONS, e.g. PAINTS, VARNISHES OR LACQUERS; FILLING PASTES; CHEMICAL PAINT OR INK REMOVERS; INKS; CORRECTING FLUIDS; WOODSTAINS; PASTES OR SOLIDS FOR COLOURING OR PRINTING; USE OF MATERIALS THEREFOR
    • C09D201/00Coating compositions based on unspecified macromolecular compounds

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Pest Control & Pesticides (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Agronomy & Crop Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Dentistry (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Environmental & Geological Engineering (AREA)
  • Hydrology & Water Resources (AREA)
  • Water Supply & Treatment (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Description

本発明は、新規な抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料に関する。
従来、家庭、ビルなど住環境を改善することを目的として、殺菌、抗菌処理がなされている。例えば住宅設備機器に対しては、紫外線ランプによる紫外線照射法、オゾン酸化法、次亜塩素酸ナトリウム溶液による洗浄法などによる各種方法があり、目的に応じてそれぞれ選択されている。殺菌性、抗菌性を有する製品には、有機系抗菌剤や銀、銅などの殺菌、抗菌材料が使用され、清潔な環境を提供するために殺菌又は抗菌性を付与する様々な工夫がなされている。
これらの方法のうち、物理的手法であるγ線、電子線、紫外線、マイクロ波などの電磁波(光)を照射する方法は非常に効果的ではあるが、そのための装置や電源が必要であり、工場の専用設備内や住宅設備機器の中などもともと限られた場所でしか使用できない。オゾン酸化法についても、それを発生させるための装置や電源が必要であり、事情はあまり変わらない。また、より簡単な方法として加熱殺菌法もあるが、やはり加熱のための何らかの設備が必要である。これら電磁波照射、オゾン酸化、加熱などの方法はまた、いずれも抗微生物効果のみならず、対象物の劣化を伴う場合が多く、その点からも適用できないケースが多々ある。
光を間接的に利用する方法として、酸化チタンなど光触媒を利用して、そこに光を当てることによって抗微生物あるいは抗ウイルス作用を発現させる方法もある。この場合は自然光や住環境での照明によって効果を発現させることができ、必ずしも専用装置や電源が必要なわけではないが、しかし何某かの光源が必要であるという点では使用場所、用途にやはり制限もある。
化学物質(薬剤)による抗微生物、抗ウイルス、防藻は、特に装置、電源、光源を必要とせず、使用場所に制限が少ないため、広く使用されている方法である。最も菌が増殖しやすい環境は貯め水、循環水、水まわり、湿潤環境であるが、例えば、水道水の殺菌には昔から塩素が使用されている。また、工場やビルの冷却水、プール、温浴施設の浴槽水、水を使用する紙・パルプ工業の抄紙工程の水などの抗菌のためには、塩素あるいは塩素系化合物、イソチアゾリン系化合物などが使用され、直接水の中に溶解する方法が取られている。これらの方法は水に溶解させるために抗菌作用が広く全域に及ぶ点で効果的であるが、より高い抗菌効果を得るために高濃度に溶解させると、健康を害する懸念が生じる他、排水の際の環境に対する悪影響も懸念される。また、その薬剤が持つ酸化性、pHに対する影響が、設備の部材や機器の腐食を促進することも懸念される。
一方で、建具、家具、文房具、玩具、美容用具など、日常的に皮膚と接触する部分の抗微生物、抗ウイルスのための方法としては、構成材料に有効成分を練り込んだり、材料表面にコートしたりする方法が取られる。すなわち、有効成分は固形材料に固定された状態となる。例えば、チアベンダゾール系化合物、あるいは銀などの有効成分をシリカ、アルミナ、ゼオライト、リン酸ジルコニウムなどに担持させた抗微生物、抗ウイルス組成物を構成材料中に練り込んだり、材料表面にコートしたりする方法などがとられる。これらの方法は抗微生物、抗ウイルス作用を必要とする固形物全般に適用可能であり、例えば、抗微生物、抗ウイルス作用を持つフィルター(マスク)、ネット、シート、フィルム、繊維などにも適用できる。これら抗微生物、抗ウイルス有効成分が固形物に固定されたタイプのものは、前記のような貯め水、循環水、水まわり、湿潤環境に適用することもでき、薬剤を水中に溶解せずして抗微生物、抗ウイルス効果を実現できる可能性もある。
抗微生物、抗ウイルス成分を固定した固形物の例としては以下のようなものが開示されている。
例えば、プラスチックシートや樹脂成形物の場合は、ジフェニルエーテル系殺菌剤やクロルヘキシジン系殺菌剤などの有機系抗菌剤を樹脂に練り込む、または表面に塗工することにより、殺菌性又は抗菌性を保持させている(特許文献1参照)。
またゼオライトやシリカゲル、およびガラスなどの鉱物担体に、銀、銅、および亜鉛などの金属材料を担持させた無機系抗菌剤を、樹脂に練り込む、または表面に塗工させたフィルムやプラスチックシート、繊維に殺菌性又は抗菌性を保持させている(特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
また二軸延伸PETフィルム上に、銀イオンをイオン蒸着法により蒸着して抗菌層としし、ポリエステルなどを抗菌層の上に塗布したフィルム状の抗菌性積層体が開示されている(特許文献5参照)。
またセルロース系誘導体、ウレタン樹脂、アクリル樹脂およびポリビニルアルコール樹脂などの高分子化合物をバインダーとし、銀、銀ナノ粒子、銅、亜鉛、および金などの抗菌性を有する無機化合物や、クロルヘキシジンやトリクロサン等の有機系抗菌剤、および防腐剤や抗生剤を併用するなどをした抗菌積層構造体が開示されている(特許文献6参照)。
また、アクリル系樹脂に銀を担持させたシリカやアルミナ粒子を、フィルム表面に塗工処理とすることによって、防藻性を有するフィルムが得ることが開示されている(特許文献7参照)。
これらの先行文献は、いずれも抗微生物、抗ウイルス作用を持たせる固形物、すなわち有効成分を固定化する基材となるものは既存の有機ポリマー(プラスチック)である。
ところで、本発明の発明者の一部はこれまでに、純粋な有機ポリマーとも純粋な無機酸化物とも異なる新たな素材である無機/有機ハイブリッド化合物を開示している。このものは、水酸基を持つポリビニルアルコールが無機酸化物と分子レベルで化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物であって、無機酸化物の性質を反映して、低価格にもかかわらず化学的安定性や耐熱性に優れ、いくつかの分野(抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を含まない)に適用可能であることが示されている。
例えば、これらの無機/有機ハイブリッド化合物は、プロトン(あるいは水酸化物イオン)伝導性固体電解質として使用することができ、燃料電池、各種電解装置、センサー、電池、エレクトロクロミックデバイス、除湿機などさまざまな用途への応用が提案されている。これら固体電解質として使用できる無機/有機ハイブリッド化合物は、詳しくは珪酸化合物とポリビニルアルコールからなる無機/有機ハイブリッド化合物(特許文献8参照)、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールからなる無機/有機ハイブリッド化合物(特許文献9、10参照)などである。あるいはまた、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールからなる無機/有機ハイブリッド化合物がパラジウムなどの金属ナノ粒子を含んでいる有機合成用の触媒も開示されている(特許文献11参照)。これらのハイブリッド化合物から成る固体電解質は、無機酸化物の塩とポリビニルアルコールが共存する状態で、無機酸化物の塩を酸あるいはアルカリで中和する工程を経て製造される。
特表2010−510819号公報 特表2011−500306号公報 国際公開第2012/098742号 特表2011−530400号公報 国際公開第2007/132919号 特表2010−509791号公報 特開2003−327730号公報 特許第4832670号 特許第3848882号 特許第4081343号 PCT/JP2011/065129
本願の課題は、新規な抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を提供することである。好ましくは、下記課題を解決する抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を提供することである。
上記のとおり、電磁波(光)照射、オゾン酸化、加熱などの物理的方法での殺菌は、専用の装置や電源、光源などが必要であり、もともと使用できる場所や用途が限定される。従って、使用できる場所や環境の制限が少ない化学物質(薬剤)を用いた抗微生物、抗ウイルス処理が広く使用されるが、貯め水、循環水などに使用される薬剤は水に溶解させるタイプが主流であり、人体や環境に対する悪影響が懸念される他、それと接触する部材、機器の腐食も問題となる可能性がある。そのため、貯め水、循環水などに適用するためには有効成分を固形物に固定した抗微生物、抗ウイルス材料を使用するのが望ましい。すなわち、水に接触する部材そのものを抗微生物、抗ウイルス作用のあるもので構成するとか、有効成分を固形物に固定した材料でフィルター等を形成し、そこに水を接触させて抗微生物、抗ウイルス処理を行なう方法もある。
固形物に固定される抗微生物、抗ウイルス有効成分としてはチアベンダゾール系化合物などの有機化合物、および銀、銅などの金属、金属微粒子(ナノ粒子)、あるいは塩、酸化物、錯体などの金属化合物がある。また、金属の場合、シリカ、アルミナ、ゼオライト、リン酸ジルコニウムなどの無機固体粒子に担持された状態で、その無機固体粒子担持体を固形物に固定して使用される場合も多い。水に接触する部材そのものに抗微生物、抗ウイルス作用を持たせるためには、これらの有効成分を部材に練り込む方法が考えられる。しかし、その場合部材に使用できる構成材料の選択にある程度制約が生じるため、実際には有効成分を固定したコート膜を部材表面に形成するのがより簡単である。あるいは有効成分を固定したフィルム状物を部材表面に貼り付ける方法も考えられる。一方、有効成分を固形物に固定した材料でフィルターを形成し、そこに水を接触させて抗微生物、抗ウイルス処理を行なう場合も、フィルターであるネット、メッシュ、不織布などの多孔質体の構成部材そのものに有効成分を練り込むか、有効成分を固定したコート膜を部材表面に形成すればよい。
ところで、抗微生物、抗ウイルス有効成分を固形物の部材に練り込む方法をとる場合、練り込みプロセスを容易に行なえる点から構成材料はほぼプラスチック(有機ポリマー)に限られる。また、固形物表面に有効成分を固定したコート膜を形成する場合でも、そのコート膜はフレキシブルでなくてはならないため、有機ポリマーで形成される。有効成分を固定したフィルム状物を固形物に貼り付ける場合にも、そのフィルム状物はフレキシブルである必要があり、有機ポリマーで形成されることになる。例えば特許文献1〜7でも有効成分が固定されているのはポリエステルなどの一般的な有機ポリマーである。前記の抗微生物、抗ウイルス作用のある金属成分をシリカ、アルミナ、ゼオライト、リン酸ジルコニウムなどの無機固体粒子に担持させたものは、直接的には有効成分は無機固体粒子に固定されているが、最終的にはその粒子ごと有機ポリマーに練り込まれることによって使用される。
これらの有効成分は、有機ポリマーに練り込まれる場合は、有効成分が有機ポリマーに包み込まれることによって固定される。固形物表面に形成されるコート膜においても、結局、有効成分はコート膜を構成する有機ポリマーに包み込まれることによって固定されている。ところで、抗微生物、抗ウイルス、あるいは防藻作用が発現されるためには、微生物、ウイルス、藻などが有効成分と接触する必要があり、多くの場合固定した有効成分が微量溶出し、それが微生物、ウイルス、藻と接触することによって効力が発現すると考えられている。従って、有効成分は固形物の有機ポリマーに包み込まれながらも、露出される部分も必要である。しかし、水中では露出部分での有効成分の溶出、脱離速度が大きいため、露出度が大きすぎる場合には有効成分の減失が起こりやすく、初期には大きな抗微生物、抗ウイルス効果が得られるものの、効果が持続しないことになってしまう。あるいはまた、有効成分が高濃度に溶出することによって、周囲の環境を汚染してしまうことにもなり、さらには有効成分を無駄に多量に溶出することで材料コストの点からも好ましくない。しかし、逆に有効成分が容易に脱離しないように過度に埋め込まれた状態にすると、十分な抗微生物、抗ウイルス作用が得られなくなり、やはり無駄に多くの有効成分を練り込んで使用することになってしまう。有効成分を固定したタイプのものでは、これらは相反する条件を適度な状態に調節する必要があるが、実際にはその調節は難しい。
前記のとおり、有効成分を固定する固形物は多くの場合有機ポリマーであるが、使用される一般的有機ポリマーは疎水性であり、水に溶けず、かつ水を吸収しない。水溶性の有機ポリマーを使用すると水中でそれ自身が溶解してしまうため、水中での安定性から自ずと疎水性の一般的な有機ポリマーが選択されることになる。しかし、疎水性の有機ポリマーに包埋されて固定された有効成分は、水との接触が阻まれることから実質的に抗微生物、抗ウイルス、あるいは防藻作用に対してより不活性となってしまう。有効成分が露出した部分では溶出、脱離速度が非常に大きく、これらの相反する条件を適度な状態に調節することは難しく、抗微生物、抗ウイルス、あるいは防藻作用に対する高活性と有効成分の脱離抑制(耐久性)とを両立させることは極めて困難である。また、そもそも埋め込まれた部分の有効成分の失活によって必ず有効成分の無駄が自動的に多量に生じてしまうことは避けられない。これらの問題は、貯め水、循環水、水まわり、湿潤環境のような水環境での抗微生物、抗ウイルス、あるいは防藻処理全般に当てはまることである。
抗微生物、抗ウイルス作用は水環境だけでなく、通常のドライな環境にある建具、家具、文房具、玩具、美容用品など、日常的に皮膚と接触するものにも要求される。この場合も上記と同様、抗微生物、抗ウイルス有効成分が構成部材に練り込まれたり、有効成分が固定されたコート膜が表面に形成されたり、有効成分が固定されたフィルムが貼り付けられたりする方法が有り、一般的には固定されるものは有機ポリマーである。前記のとおり、抗微生物、抗ウイルス作用は固定した有効成分が微量溶出し、それが微生物、ウイルスと接触することによって効力が発現すると考えられている。従って、水環境と異なり、通常のドライな状態で使用される場合にはもともと効果が出にくい。大気中の湿気、あるいは人間の体から発散される湿気、分泌される汗等に由来する有機ポリマー表面の微量吸着水分によって機能することになるが、前記のとおり、一般的に使用される有機ポリマーは疎水性であり、もともと吸着水をはじきやすいために抗微生物、抗ウイルス作用が発現しにくい。
有効成分が固定されたコート膜が表面に形成される抗微生物、抗ウイルス材の場合、下地の構成部材が有機ポリマーであればなじみがよく、接合安定性が良いが、適用しようとするものの構成材料は必ずしも有機ポリマーとは限らない。例えば、ガラス、タイル、便器などの陶器製品、セメント材などの無機材料で構成されている場合、有機ポリマーでできたコート膜はなじみがよくないため、コート膜自体の長期的な接合安定性に問題を生じることになる。
本発明は、無機酸化物あるいはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物から成り、その無機/有機ハイブリッド化合物が銀または銅の金属またはその化合物を内部に含有するとともに、水に溶解しない固体であり、かつ水を吸収することができることを特徴とする。
無機/有機ハイブリッド化合物は、特には無機酸化物あるいはその誘導体がジルコニウムの酸化物あるいはそれらの誘導体を含み、水酸基を有する有機ポリマーがポリビニルアルコールを含むものである。無機/有機ハイブリッド化合物に含有される銀または銅の金属またはその化合物が直径10nm以下の粒子を含んでおり、またCuΚα線を利用したX線回折法で得られた回折強度―回折角図において、銀または銅の金属またはその化合物に帰属される最高ピークの半値幅が2(2θ°)以上であるか、ピークが無いことを特徴とする。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料は、その中の銀または銅の量が常温の水に対して1mg/L以上となるように材料を投入して24時間以上浸漬した場合、水中に材料から溶け出した銀または銅の濃度が0.05mg/L未満であることを特徴とする。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料は膜状物であることができ、膜状物が固形物表面にコートされた塗布膜であることができる。塗布膜は、建具、家具、文房具、玩具、美容用具、ゴミ容器、排水口部材、便器、ビニールハウス用ビニールシート、機器のスイッチ、医療用具、船底外面などの固形物表面にコートすることができる。塗布膜をコートする固形物は多孔質材料であり、ネット、メッシュ、織物、不織布であることができ、フィルターあるいはマスクとして使用することができる。さらに、本発明の材料が膜状である場合、無機/有機ハイブリッド化合物に含有される銀または銅の金属またはその化合物が膜状物の厚さ方向に対して濃度傾斜を持っていることを特徴とする。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料は液体に接触させることで、その液体中の微生物、ウイルスの個体数の増加を抑えるか、個体数を減らすことができる。その場合、液体を強制的に循環させながら接触させることができ、また適用される液体は、プール、浴場、集合住宅用貯水槽、飼育用水槽、工業用貯水槽、工業用循環水、水道水、浄化槽、冷却塔、輸送船のバラスト水に使用される水である。本材料は気体に接触させることで、その気体中の微生物、ウイルスの個体数の増加を抑えるか、個体数を減らすこともでき、その場合気体を強制的に循環させながら接触させることができる。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料は、ポリビニルアルコールおよび銀または銅の塩の共存する状態で、ジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩をアルカリによって中和し、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって製造される。その場合、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程が、ジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコール、および銀または銅の塩の共存する溶液から溶媒を除去することによって固形物を形成し、それをアルカリに接触させて固形物中のジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩を中和することによって行なうことができる。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の製造方法において、銀または銅の化合物を含有する、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成した後、銀または銅の化合物を還元剤で還元することによって金属状態の銀または銅にすることができる。
上記と重複するが、本発明を以下に示す。
[発明1]
無機酸化物あるいはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物から成り、その無機/有機ハイブリッド化合物が銀または銅の金属またはその化合物を内部に含有するとともに、水に溶解しない固体であり、かつ水を吸収することができることを特徴とする抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明2]
無機酸化物がジルコニウム、珪素、チタン、またはタングステンの酸化物である発明1に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明3]
無機酸化物がジルコニウムの酸化物である発明2に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明4]
水酸基を有する有機ポリマーがポリビニルアルコールである発明1に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明5]
無機/有機ハイブリッド化合物に含有される銀または銅の金属またはその化合物が直径10nm以下の粒子を含んでいる発明1〜4のいずれか一項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明6]
CuΚα線を利用したX線回折法で得られた回折強度―回折角図において無機/有機ハイブリッド化合物に含有される銀または銅の金属またはその化合物に帰属されるピークのうち最高ピークの半値幅が2(2θ°)以上であるか、ピークが無いことを特徴とする発明1〜4のいずれか一項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明7]
抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を中の銀または銅の量が1mg/L以上となるような量の常温の水に24時間以上浸漬した場合の水中に溶け出した銀または銅の濃度が0.05mg/L未満であることを特徴とする発明1〜4のいずれか一項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明8]
膜状物であることを特徴とする発明1〜4のいずれか一項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明9]
膜状物が固形物表面にコートされた塗布膜であることを特徴とする発明8に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明10]
表面に塗布膜コートされた固形物が建具、家具、文房具、玩具、美容用具、ゴミ容器、排水口部材、便器、ビニールハウス用ビニールシート、機器のスイッチ、医療用具であることを特徴とする発明9に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明11]
固形物が多孔質材料であることを特徴とする発明9に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明12]
多孔質材料が、ネット、メッシュ、織物、不織布であることを特徴とする発明11に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明13]
多孔質材料がフィルターあるいはマスクである発明11に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明14]
無機/有機ハイブリッド化合物に含まれる銀または銅の金属またはその化合物が膜状物の厚さ方向に対して濃度傾斜を持っていることを特徴とする発明8に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明15]
抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を液体に接触させることで、その液体中の微生物、ウイルスの個体数の増加を抑えるか、個体数を減らすことを特徴とする発明1〜5のいずれか一項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明16]
液体を強制的に循環させながら接触させることを特徴とする発明15に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明17]
液体が、プール、浴場、集合住宅用貯水槽、飼育用水槽、工業用貯水槽、工業用循環水、水道水、浄化槽、冷却塔、輸送船のバラスト水に使用される水であることを特徴とする発明15に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明18]
抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を気体に接触させることで、その気体中の微生物、ウイルスの個体数の増加を抑えるか、個体数を減らすことを特徴とする発明1〜4のいずれか一項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明19]
気体を強制的に循環させながら接触させることを特徴とする発明18に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
[発明20]
ポリビニルアルコールおよび銀または銅の塩の共存する状態で、ジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩をアルカリによって中和し、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって発明3または4の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を得る製造方法。
[発明21]
ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程が、ジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコール、および銀または銅の塩の共存する溶液から溶媒を除去することによって固形物を形成し、それをアルカリに接触させて固形物中のジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩を中和することによって行なわれる発明20の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料の製造方法。
[発明22]
銀または銅の化合物を含有するジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成した後、銀または銅の化合物を還元剤で還元することによって金属状態の銀または銅にすることを特徴とする発明20の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を得る製造方法。
本発明の材料は抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻効果を奏する。好ましくは、本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料は水に溶解しない固体であり、かつ水を吸収することができることを特徴とする。本発明は銀または銅などの有効成分の放出速度を容易に制御できることで過度の放出を抑制し、有効成分を無駄なく活用できるために長期に亘って効果を維持でき、かつコストメリットも大きい。また、無機/有機ハイブリッド化合物中で銀または銅などの有効成分がナノ粒子など微細で活性な状態で存在しており、表面にある粒子は直接接触することで高い抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を示し、小さなウイルスなどを材料中に取り込んで攻撃することも可能である。さらに、コート膜として使用する場合にも有機材料、無機材料を問わず、広範囲な材料に安定した接合性を示す。
すなわち、まず無機酸化物と有機ポリマーが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物は抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻効果を持つ銀および銅の、金属、金属化合物などの有効成分をナノ粒子のような微細な粒子として安定的に固定することができる。これら銀および銅の有効成分は、ハイブリッド化合物が生成する際に同時にその固体内部で生成するために多くはナノ粒子など微細な状態で留まり、大きく成長して不活性化することなく、活性な状態で維持されるのである。本発明の無機/有機ハイブリッド化合物は内部に水を吸収する性質があるため、環境中に水分があると、それをハイブリッド化合物の分子間隙に吸収した状態となる。その状態ではハイブリッド化合物の水を吸収した分子間隙を通って銀および銅の有効成分が化合物内部を拡散するようになり、徐々に表面にも供給されるようになる。表面に到達した銀および銅の有効成分は、そこで微生物、ウイルスなどと接触し、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を発現するが、この時表面への有効成分の供給は、ハイブリッド化合物内でのゆっくりとした内部拡散に律速されることで、速度が適度に制御され、有効成分の過剰な放出を避けることができる。それによって有効成分の無駄な消費がなくなる。このような効果は、有機ポリマーであっても水溶性の有機ポリマーをベースにした親水性の高い有機ポリマーを使用すれば実現可能であるが、その場合水環境において安定な材料を得るのが難しい。本発明の材料は、高い親水性を持ちながら水に溶解せず、水中でも高い安定性を維持する無機/有機ハイブリッド化合物を適用することでこのような効果を実現できる。
また、ハイブリッド化合物内部では有効成分がナノ粒子のような微細で常に活性の高い状態にあるため、有効成分を余すことなく活用しきることができるため、長期に亘って高い抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を安定的に維持することができる。前記のとおり、従来の有効成分を固形物に固定するタイプの抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料では、有効成分の露出部では脱離、溶出が過度に起こり、包埋部では逆にまったく不活性であるという問題がある。一方、本材料では無機/有機ハイブリッド化合物で構成されていることにより、水中でも安定な材料でありながら親水性で水を吸収することができ、有効成分を材料内の内部拡散によって速度制御された状態で表面に供給できることで、従来材料の問題を解消できる。そのような効果を持ちながら、ハイブリッド化合物は有機ポリマーのようにフレキシブルな物性も持ち合わせている。
銀または銅の有効成分はまた、ハイブリッド化合物内部だけでなく表面にも存在し、微生物、ウイルスなどと直接接触するが、これら表面にある有効成分もナノ粒子で活性の高い状態にあるため、高い抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を発揮する。さらにはまた、水を吸収することでハイブリッド化合物の格子間隙が広がるが、サイズの小さいウイルスはその内部に入り込み、そこでナノ粒子と接触し、攻撃される。すなわち、有効成分を放出することなく抗ウイルス効果を得ることも可能である。
無機/有機ハイブリッド化合物が吸水性であることは、水環境に限らず、通常の環境にある建具、家具、文房具、玩具、美容用品など、日常的に皮膚と接触するものの抗微生物、抗ウイルス処理においても重要である。前記のとおり一般的に有効成分が固定されるのは有機ポリマーであるが、有機ポリマーは疎水性であり、水環境、湿潤環境ではない普通のドライな環境では抗微生物、抗ウイルス作用が発現しにくい。それに対し、本発明の無機/有機ハイブリッド化合物は吸水性があることから、大気中の湿気、あるいは人間の体から発散される湿気、分泌される汗等に由来する水分を吸収し、通常のドライな環境であっても保水した状態を実現することが可能である。無機/有機ハイブリッド化合物の部分はある程度水環境、湿潤状態に似た抗微生物、抗ウイルス作用を発現しやすい状態を維持でき、それによって高い効果を得ることができる。
従来の有機ポリマーに有効成分を固定する方法においても、有効成分ができるだけ表面に露出するようにすることで、活性を上げる方法もあるが、その場合使用中に水に濡れることがあると有効成分が簡単に除去されてしまう。また、水に濡れなくても人が触る用途である場合に有効成分が簡単に取れてしまう。しかし、本発明の材料では、もともと内部に存在する有効成分が無機/有機ハイブリッド化合物の吸湿性によって、表面へと拡散していく機構が働くため、有効成分の表面露出が少なくても効果を発現することができる。あるいはウイルスを内部に取り込んで攻撃する場合には、そもそも有効成分は表面に露出している必要もない。
銀または銅は抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の一般的な有効成分としてよく使用され、本発明においてもそれらを利用しているが、それらの酸化物などの化合物は酸化性が非常に強い。しかし、一般的には有機ポリマーは酸化に対して弱く、銀または銅の化合物を担持した場合に、それらの酸化作用で劣化される可能性がある。それに対し、本発明の無機/有機ハイブリッド化合物は無機酸化物の極めて高い耐酸化性の性質を反映して、酸化作用の強い銀または銅の化合物を担持した場合にも劣化が起こりにくい。
また、本発明の材料は無機物と有機物の両方に対して親和性の高い、無機/有機ハイブリット化合物で構成されている。そのため、固形物の表面にコート膜を形成する際、固形物の構成材料が有機ポリマーであっても、セラミックのような無機物であっても安定的に接合することができる。
本発明にかかる抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の、CuΚα線を利用したX線回折法で得られた回折強度―回折角図(45kV、40mA、スキャン速度0.002°s−1)(a)銀を含む材料、(b)銅を含む材料 本発明にかかる抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の代表的な実施形態(第1実施形態)を概略的に示すシステム図。 本発明にかかる抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の代表的な実施形態(第2実施形態)を概略的に示すシステム図。
本出願において、「から成り」「から成る」は、記載の成分以外の成分を含んでもよいことを意味する。
以下本発明にかかる抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の実施形態を説明する。本発明は、無機酸化物あるいはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物から成り、その無機/有機ハイブリッド化合物が銀または銅の金属あるいはその化合物を内部に含有するとともに、水に溶解しない固体であり、かつ水を吸収できることを基本とする。本発明において、無機酸化物あるいはその誘導体は、好ましくはジルコニウムの酸化物あるいはそれらの誘導体である。ここでのジルコニウムの酸化物あるいはその誘導体とはZrO2を基本単位として含む化合物であり、水酸化ジルコニウムや一般式ZrO2・xH2Oで表せるジルコン酸、あるいはそれらの誘導体全般を指す。また、他の無機酸化物として珪素の酸化物あるいはその誘導体なども使用することができるが、その場合珪素の酸化物あるいはその誘導体とはSiO2を基本単位として含む化合物であり、一般式SiO2・xH2Oで表せるケイ酸、あるいはそれらの誘導体全般を指す。それ以外の無機酸化物としてはチタン、タングステンなどの酸化物も使用可能である。これらの無機酸化物あるいはその誘導体には一部別の金属元素が置換されていてもよく、化学量論組成からのずれ、或いは添加物を加えることも許容される。
本発明における無機/有機ハイブリッド化合物は、上記無機酸化物あるいはその誘導体が有機ポリマー分子と化学結合したものである。従って、有機ポリマー分子には無機酸化物と結合する手が必要であり、その結合のための手として水酸基を有する有機ポリマーが使用される。例えば、無機酸化物あるいはその誘導体が水酸基を有する有機ポリマーと無機/有機ハイブリッド化合物を形成する場合、両者は分子レベルでお互いに絡み合うとともに、有機ポリマーの水酸基を介して水素結合、脱水縮合によって強固に結びついている。ハイブリッド化合物は、有機ポリマーと無機酸化物あるいはその誘導体との物理的な混合による混合物とは区別される。すなわち、混合物と異なりハイブリッド化合物を構成する各成分の化学的性質はハイブリッド化後には必ずしも保持されない。例えば、水酸基を有する有機ポリマーが単独では水溶性の場合であっても、無機酸化物あるいはその誘導体とハイブリッド化合物形成した状態では水には基本的に溶解しない。このようにハイブリッド化後に化学的性質が変化していることにより、物理的な混合による混合物とは異なるハイブリッド化合物であることを示すことができる。また、この無機/有機ハイブリッド化合物は水に溶けないが、親水性が高く、吸水性を持つ。前記のとおり、有効成分を固定するこの無機/有機ハイブリッド化合物の耐水性と吸水性の両立によって、本発明は抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料に関する高活性、有効成分放出速度の制御などさまざまな効果を生む。
抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の有効成分としてよく使用される銀または銅の酸化物などそれらの化合物は酸化性が非常に強いため、それらを担持させた一般的な有機ポリマーは劣化される可能性がある。それに対し、本発明の無機/有機ハイブリッド化合物は無機酸化物の極めて高い耐酸化性の性質を反映して、酸化作用の強い銀または銅の化合物を担持した場合にも劣化が起こりにくい。すなわち、有効成分を固定させるものとして無機/有機ハイブリッド化合物を適用することは、上記のような耐水性と吸水性を両立できる点に加え、銀または銅の化合物の強い酸化作用に耐えられる点においても重要である。
本発明において、無機/有機ハイブリッド化合物を構成する水酸基を有する有機ポリマーの重合度は特に限定されない。例えば、500〜100000、好ましくは1000〜20000、より好ましくは2000〜5000である。重合度は、例えばJIS K 6726:1994にしたがって測定される。
本発明において、無機/有機ハイブリッド化合物を構成する水酸基を有する有機ポリマーは、より好ましくはポリビニルアルコールである。ここでのポリビニルアルコールは完全なものである必要がなく、本質的にポリビニルアルコールとして機能するものであれば使用することができる。例えばヒドロキシル基の一部が他の基で置換されているもの、一部分に他のポリマーが共重合されているものもポリビニルアルコールとして機能することができる。例えば、本発明の有機ポリマーのポリビニルアルコールは、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より一層好ましくは90モル%以上のビニルアルコール又はその誘導体のモノマー単位で構成されている。例えば、そのビニルアルコール又はその誘導体のモノマー単位は、そのヒドロキシル基の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%が他の基で置換されていない。また、本発明の製造過程でポリビニルアルコールを経由すれば同様な効果が得られるので、ポリビニルアルコールの原料となるポリ酢酸ビニルなどを出発原料とすることができる。例えば、ポリ酢酸ビニルの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%がけん化されて得られたポリビニルアルコールを使用することができる。けん化度は、例えばJIS K 6726:1994にしたがって測定される。
ポリビニルアルコールは、その機能が十分発現する範囲であれば、他のポリマー、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、メチルセルロース等の糖鎖系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、エポキシ樹脂系ポリマー或いはその他の有機,無機添加物などを混合することもできる。例えば、本発明の有機ポリマーは、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より一層好ましくは90重量%以上のポリビニルアルコールを含んでいる。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料では、無機/有機ハイブリッド化合物における有機ポリマーに対する無機酸化物あるいはその誘導体の量が少なすぎると、耐水性、耐酸化性が不十分となる。逆に、無機酸化物あるいはその誘導体が多すぎると、水分の吸収量が低下し、膨潤も小さくなることから、有効成分やウイルスの拡散速度が小さくなり、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻効果が低くなったり、無機/有機ハイブリッド化合物が固く、脆くなり、破損が起こりやすくなる。従って、ハイブリッド化合物における無機酸化物あるいはその誘導体重量の、有機ポリマー重量に対する重量比が0.1〜10になるように制御するのが好ましい。
本発明では、無機/有機ハイブリッド化合物が、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を持つ有効成分として銀または銅の金属またはその化合物を含んでいる。銀の場合、金属状態の他、銀酸化物、塩化銀などの銀塩、銀の錯体などの化合物が使用できる。銅の場合には、金属状態の他、銅酸化物、銅の錯体などの化合物が使用できる。これらは単独で含まれていても、複数種が同時に含まれていてもよい。また、これらが、固体の粒子として無機/有機ハイブリッド化合物中に含まれている場合、それらがナノ粒子であることが好ましく、特には直径10nm以下の粒子を含んでいることが望ましい。それによって、常に活性の高い状態にあるため、有効成分が無機/有機ハイブリッド化合物内での内部拡散によって表面に供給される場合に余すことなく活用しきることができ、長期に亘って高い抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を安定的に維持することができる。また、微細なナノ粒子であることによって、表面に存在する粒子が直接微生物やウイルスに接触して攻撃する際、高い活性を示し、またウイルスなどを取り込んで攻撃する際にも高い活性を示す。これら銀または銅の金属またはその化合物が十分小さな粒子として存在することは、CuΚα線を利用したX線回折法で得られた回折強度―回折角図において、それらの金属または化合物に帰属されるピークのうち、最高ピークの半値幅が2(2θ°)以上であるか、ピークが無い状態であることによって示すことができる。本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料中に、銀または銅の金属またはその化合物は、金属原子で換算して0.1wt%以上、より好ましくは0.5wt%以上、さらに好ましくは1wt%以上含有されていることが好ましい。上限はないが、金属原子で換算して例えば15wt%以下、金属の溶出を抑制できる観点からは5wt%以下の含有が望ましい。
回折強度―回折角図とはX線回折の結果として一般的に得られるものであり、回折角2θに対するX線のカウント数との関係を示すものである。物質が結晶性である場合、結晶面の規則的な積層によってX線の回折現象が起こり、結晶面の面間隔に対応するある特定の回折角においてX線のカウント数が著しく高くなり、回折強度―回折角図においてその回折角位置にシャープなピークが得られる。粒子が小さく、結晶面の積層数が多くない場合、ピークは高さが低く幅の広いブロードなものとなるため、半値幅(回折ピークの頂点の高さの半分の位置でのピーク幅を2θの角度単位2θ°で表したもの)が大きくなる。また、物質が結晶を形成できないほど小さい微粒子(ナノ粒子)の場合、本来その物質が結晶である場合にピークが生じるはずの回折角においてもまったく回折ピークが現れない。すなわち、半値幅は無限大となる。従って、半値幅は微粒子(ナノ粒子)の程度を表す尺度とみなすことができ、その値が大きいほど結晶性が低く、より微粒子であることを示している。本発明では、無機/有機ハイブリッド化合物の回折強度―回折角図において、その中に含まれる銀または銅の金属またはその化合物に帰属されるピークのうち、最高ピークの半値幅が2(2θ°)以上であるか、回折ピークが無い状態となる。図1に本発明の銀および銅を含む材料のX線回折の典型的な回折強度―回折角図を示した(パナリティカル社製X‘Part Pro、CuΚα線使用)。いずれの材料の回折強度―回折角図にもシャープな回折ピークは見られず、半値幅が2(2θ°)未満のものは無い。
本発明では、有効成分である銀または銅の金属またはその化合物が、微粒子(ナノ粒子)の状態で吸水性を持つ無機/有機ハイブリッド化合物中に含まれていることが特徴であり、それによってそれら有効成分が材料表面まで拡散し、放出される速度を制御することが可能となる。すなわち、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用のために必要最小限の有効成分が徐々に放出され、内包する有効成分が微粒子(ナノ粒子)の状態であるため、有効成分の供給はそれを使いきるまでコンスタントに維持することができ、耐久性に優れる。その上、周囲の環境の汚染や、接触する人に対する汚染を最小限に抑えることが可能となる。また、表面に固定化されている有効成分の粒子が活性の高い微粒子(ナノ粒子)であることで、微生物、ウイルスなどに直接接触して高い抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を示す。さらにはウイルスなどを取り込んで攻撃する際にも高い活性を示すことで、有効成分の放出を極限的に少なくして効果を得ることも可能である。これら有効成分の放出速度は、本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の中の銀または銅の量が1mg/L以上となるような量の常温の水に抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料を24時間以上浸漬し、水中に溶け出した銀または銅の濃度を測定することで数値化することが可能である。本発明では望ましくはその数値が0.05mg/L未満である。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料は、適当な形態の固形物にして、そのまま処理したい水に漬けておくなどして使用することができる。好ましい形態は膜状である。その場合、例えば膜状物をそのまま水に漬けることも可能であり、何らかの支持材にマウントしたり、丸めてカラムに挿入したりして使用することも可能である。また、細かくカットして小片として使用することもでき、その小片をカラムに充填して使用することも可能である。また、膜状物を対象とする固形物の表面に貼り付けて使用することも可能である。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料は、対象とする固形物の表面にコートして使用することも可能である。その場合にもやはり表面では膜状物となっている。コートする場合、対象とする固形物の形態はどのようなものでもよく、あらゆるものが対象となる。また、本材料は無機物、有機物の両方の性質を兼ね備えた無機/有機ハイブリッド化合物をベースとしてできているため、無機物、有機物を問わず、あらゆるものと安定的に接合することができ、有機ポリマー(プラスチック)、木材、紙、ガラス、セラミックス、金属などに安定的にコートすることが可能である。例えば、多孔質材であるネット、メッシュ、織物、不織布などの表面に本発明の材料をコートすることで、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を持つフィルターとして使用することが可能である。あるいは、ビーズなど粒状物あるいはその他固形物の表面に本発明の材料をコートしておき、貯め水に沈めておくタイプの抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料とすることもできる。
本材料が膜状物の場合、無機/有機ハイブリッド化合物に含まれる有効成分の銀または銅の金属またはその化合物が膜状物の厚さ方向に対して濃度傾斜を持つようにすることができる。例えば、水環境で使用する場合には、有効成分の過度の放出が起こりやすいため、膜状物の表面側の有効成分濃度を内部側よりも低くすることで、放出速度を抑える方法が有効である。一方、通常のドライな環境で使用する場合には、逆に有効成分の放出が起こりにくく、効果が出にくいため、むしろ膜状物の表面側の有効成分濃度を内部側よりも高くするのが有効である。
本発明の材料は、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料としてあらゆる用途に使用可能である。菌や藻が増殖しやすい場所として貯め水、循環水があるが、本発明は前記のとおり、余分な有効成分の溶出で水を汚染することなく効果的に抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を発現するため、あらゆる貯め水、循環水に使用可能である。例えば、プール、温浴施設の浴槽水、集合住宅用貯水槽の水、水道水などは直接人体に触れたり、人が体内に摂取したりするものであるから、極力薬剤を使用したくない用途である。また、養殖用あるいは鑑賞用の飼育用水槽も、魚類など飼育する生物への影響があるため、薬剤を使用したくない、あるいは使用できない用途である。輸送船のバラスト水は最終的に海に廃棄されるため、環境汚染の観点からやはり薬剤の使用は避けたい用途である。その他、例えば紙・パルプ工業の抄紙工程に使用する水などの工業用貯水・循環水、工場やビルの冷却塔の水などは、薬剤を使用した場合にその薬剤の酸化性、pHに対する影響が、設備の部材や機器の腐食を促進することが懸念される。また、工業用水の場合には製品に対する薬剤混入の懸念もある。これらの用途では、本発明の材料の余分な有効成分の溶出が抑えられる特徴を活かすことができる。
これらの用途に本発明の材料を適用する場合、基本的には本材料が水と接触していれば、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻効果を得ることができるため、どのような使用形態も可能である。最も簡単なのは本発明の材料を直接水に漬けることである。有効成分を効果的に機能させる観点からは比表面積の比較的大きい膜状、繊維状が好ましいが、製造の容易さ、使用後の回収の簡単さ、強度などの点から膜状が最も好ましい。また、水と接触する部材に本発明の材料の膜状物を貼り付けるか、あるいは部材表面にコートしておく方法もある。また、貯め水の場合はガラスビーズ、石、セラミックブロック、セラミック片などの固形物に本発明の材料をコートしておき、それを沈めておいたり、あるいはプラスチック球などにコートして浮かせておくなどの方法もある。例えば養殖用あるいは鑑賞用の飼育用水槽では、魚類など飼育する生物がウイルスに感染するのを防止したり、飼育ケースのガラスに藻(苔)が生えないようにするなどの必要があり、飼育する生物に影響しないように抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻処理を施すことが必要となる。例えば本発明の材料をコートした小石を水槽の底に敷き詰めておくとか、飼育ケースのガラス内面に本発明の材料をコートしておくなどの方法がある。
ただし、水に薬剤を溶解させる方法が有効成分を水全域に満遍なく行き渡らせられるのと異なり、本発明の材料の場合は材料と接触した水にしか効果が及ばない。すなわち、ごく限られた場所にのみ本材料を設置して、かつ水があまり動いていない場合、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻効果は水全体に行き渡らない。そこで、底一面に本材料をコートしたものを敷き詰めるとか、水と接している構成材料の全面に本材料をコートするなどの必要があるが、その場合かなりコストがかかる場合もある。従って、本材料を貯め水で使用する場合は水全体を循環させるのが効果的である。その場合、本材料を適当な形態で充填したカラムを構成し、そこに水を通すようにしたり、攪拌装置の攪拌羽の表面に本材料を貼り付ける、あるいはコートしておくと、効果的に処理することができる。
本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料は、船の船底外面にフジツボなどの貝類や藻が付着、成長し、推進時の抵抗が増大するのを防ぐことに使用することができる。その場合、船底外面に本材料をコートするか、膜を貼り付ける方法がある。従来の方法のように、銅化合物などの有効成分を塗料に混ぜて塗布する方法もあり得るが、その場合は有効成分の過度の溶出が起こりやすいため、海洋、河川、湖などの環境汚染が起こりやすい。本発明の材料では余分な有効成分の溶出なしに効果が得られるため、汚染が少なくてすむ。
本発明の材料は、貯め水、循環水など常に水に漬かった環境のみならず、水まわり、湿潤環境での抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料として使用できる。これらの用途では、そのような環境にある物品の表面に本材料をコートする方法が中心となる。例えば、浴室の壁、床、排水口、あるいはそこで使用されるすべてのものが対象となる。それらの大半は通常有機ポリマー(プラスチック)でできているが、それらの表面に対して本材料は安定なコート膜を形成することができる。また、本発明の材料は無機/有機ハイブリッド化合物でできており、無機物に対しても高い親和性を持っていることから、壁、床、浴槽、窓などがセメント、タイル、陶器、ガラスなど無機物質でできている場合も本材料を安定的にコートすることができる。その他、台所、洗面所、トイレの水まわりで使用されるあらゆるもの、洗面器、桶、たらい、バケツ、ゴミ容器なども対象となる。この場合も、無機物質である陶器でできた洗面所のシンク、便器などに対しても安定なコート膜を形成することができる。調理器具、その他いわゆる台所用品にも使用可能であり、水筒、弁当容器などのパッキンにも使用できる。
また、湿潤環境で使用されるものとしてビニールハウスに使用されるビニールシートには藻が生えやすく、植物の生育に必要な光の供給を妨げる問題があるが、このビニールシートに本材料をコートしておく方法が考えられる。
本発明の材料は特に湿潤環境でなくても通常の大気環境下でも抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料としても使用することができる。例えば建具、家具、文房具、おもちゃ、美容用品、機器のスイッチ類など、日常的に皮膚と接触するものに対してどのようなものにも適用することができる。特に病院内のこれらのものに適用すると、院内感染の抑止に有効である。また、各種医療器具に利用することも可能である。これらの用途に対しては、本発明の材料の膜状物をそれらの表面に貼り付けるか、本発明の材料をそれらの表面にコートして使用する。
例えば家畜、鳥、その他動物の飼育場において、そこで使用されるあらゆるものに対して本材料を表面にコートしておくか、表面に貼り付けておくと、菌、ウイルスの感染の防止に役立つ。特に菌やウイルスを持った鳥が外から飛来することによって起こる鳥インフルエンザなどの病気の感染は、本材料をコートしたネットで囲っておくなどの方法をとることで防止できる可能性がある。
多孔質材であるネット、メッシュ、織物、不織布などの表面に本発明の材料をコートすることで、抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を持つフィルターとして使用することが可能である。気体を強制的に循環させながら、このフィルターに通し、接触させることで、空気中の菌、ウイルス増えないようにしたり、減少させることができる。従って、空気清浄機のエアフィルターとして使用することが可能である。また、同様の作用でマスクに使用することも可能である。
次に、本発明にかかる抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の製造工程を説明する。図2は本材料の製造工程の第1実施形態を概略的に示すシステム図である。先ず、原料として、ステップ1で溶媒を、ステップ2で銀または銅の塩を、ステップ3で銀または銅の塩以外の無機塩あるいはオキソ酸塩を、ステップ4で水酸基を有する有機ポリマーをそれぞれ準備し、ステップ5でこれらの原料を混合して、溶媒中で銀または銅の塩、およびそれ以外の無機塩あるいはオキソ酸塩と水酸基を有する有機ポリマーが共存する混合溶液を得る。ステップ1から4の準備工程の順序は限定されないし、ステップ5においてこれらの原料を混合する順序も限定されない。溶媒は水を含んでいるのが好ましい。また、銀または銅の塩、それ以外の無機塩、オキソ酸塩、あるいは水酸基を含む有機ポリマーはどのような組成のものでもよいが、水に溶解するものが好ましい。例えば、ステップ2において、銀または銅の塩としては硝酸銀、塩化銅などが使用でき、それらの水和物でもいい。ステップ3において、銀または銅の塩以外の無機塩あるいはオキソ酸塩としては、ジルコニウム塩、オキシジルコニウム塩、珪酸塩などが使用可能である。また、例えばステップ4の水酸基を有する有機ポリマーとしてポリビニルアルコールを使用する場合では、後工程で水を除去して成形する工程を、生産上の実際的な時間範囲の中で行えるようにするためには、ステップ5の混合溶液において、ポリビニルアルコール濃度にして5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であることが望ましい。また、銀塩を用いる場合は、光によって銀塩が還元されることを防ぐため、この工程では光を遮断して行なうのが好ましい。
次に、ステップ3の銀または銅の塩以外の無機塩あるいはオキソ酸塩がジルコニウム塩、オキシジルコニウム塩などアルカリで中和され得るものである場合は、ステップ6で混合溶液中の銀または銅の塩、それ以外の無機塩あるいはオキソ酸塩を、アルカリによって中和し、ステップ7で中和後の原料溶液を得る。ステップ3の銀または銅の塩以外の無機塩あるいはオキソ酸塩が珪酸塩など酸で中和され得るものである場合は、ステップ6で混合溶液中の銀または銅の塩以外の無機塩あるいはオキソ酸塩を、酸によって中和し、ステップ7で中和後の原料溶液を得る。その後ステップ8で溶媒を除去し、ステップ9で本発明の材料の成形体を得る。ステップ7の中和後の原料液に中和によって生成した不要な塩が存在する場合は、ステップ9で成形物を得た後、それを水洗することによって不要な塩を除去することができる。
図2のステップ5の原料液においては、銀または銅の塩、それ以外の無機塩あるいはオキソ酸塩と水酸基を有する有機ポリマーは溶解して分子レベルで混ぜ合わさっている。この状態においてステップ6で中和操作を行なうと、無機塩あるいはオキソ酸塩は中和されて、無機酸化物あるいはその誘導体となる。生まれたばかりの小さな無機酸化物あるいはその誘導体は不安定であり、近傍に水酸基を有する有機ポリマーがあると、その水酸基と結合する。このようにして、無機酸化物あるいはその誘導体と有機ポリマーとが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物が形成される。この時、無機酸化物あるいはその誘導体は有機ポリマーと化学結合するために成長を阻害され、ナノ粒子に留まる。銀または銅の塩は、ステップ6の中和操作がアルカリで行なわれた場合は酸化物、水酸化物などの形で無機/有機ハイブリッド化合物に取り込まれた状態、あるいはそれら自身も有機ポリマーと化学結合した状態となるが、いずれにしてもナノ粒子に留まる。ステップ6の中和操作が酸で行なわれた場合は銀または銅の塩は、中和後も塩の状態で無機/有機ハイブリッド化合物中に取り込まれる。従って、この場合は銀または銅の塩は中和操作の前でなく、後で加えてもよい。いずれの場合も銀または銅の化合物は無機/有機ハイブリッド化合物中で生成するため、大きな粒子とはならない。
ステップ6において原料溶液中の無機塩あるいはオキソ酸塩を中和する酸は、これらの中和が行えるものであればどのようなものでもよい。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロトンタイプのカチオン交換性樹脂等が使用可能である。ステップ6において原料溶液中の無機塩あるいはオキソ酸塩を中和するアルカリは、これらの中和が行えるものであればどのようなものでもよい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸塩、水酸化物イオンタイプのアニオン交換性樹脂等が使用可能である。これらの酸、アルカリは単独でも、複数混合した状態で使用してもよい。
既存の固形物の表面に本材料をコートする場合は、ステップ7の原料溶液を対象物表面に塗布した後、ステップ8で溶媒を除去(乾燥)し、ステップ9で本材料のコート膜を得る。例えば、ネットの表面に本材料のコート膜を形成する場合は、ステップ7の原料溶液を直接塗布あるいは噴霧するか、ネットを原料液に浸して引き上げるなどしておき、加熱して溶媒を除去(乾燥)するなどの方法で実施することができる。
図3は本材料の製造工程の第2実施形態を概略的に示すシステム図である。図2と同じ工程を経てステップ5で銀または銅の塩、およびそれ以外の無機塩あるいはオキソ酸塩と水酸基を有する有機ポリマーが共存する混合溶液を得る。次に、ステップ6で溶媒を除去する。ステップ7で銀または銅の塩、およびそれ以外の無機塩あるいはオキソ酸塩と水酸基を有する有機ポリマーの混合物が成形された固形物とする。ステップ8でそれを酸あるいはアルカリに接触させて無機塩あるいはオキソ酸塩を中和する。ステップ9で本材料の成形体を得る。ステップ8において、酸あるいはアルカリと接触させる方法としては、酸あるいはアルカリの溶液に浸漬するか、酸あるいはアルカリ溶液をステップ7の混合物に塗布或いは噴霧するか、蒸気に曝すなどの方法がある。図3のステップ8の中和工程においても図2の場合の原理と同様にしてハイブリッド化が進行し、銀または銅の化合物、あるいはそれ以外の無機酸化物あるいはその誘導体はナノ粒子のような微細粒子に留まる。
第2実施形態に基づいて既存の固形物の表面に本材料をコートする場合は、ステップ5の混合溶液を対象物表面に塗布した後、ステップ6で溶媒を除去(乾燥)し、ステップ7で銀または銅の塩、およびそれ以外の無機塩あるいはオキソ酸塩と水酸基を有する有機ポリマーの混合物のコート膜が対象物表面上に成形される。ステップ8でそれを酸あるいはアルカリに接触させて無機塩あるいはオキソ酸塩を中和して、ステップ9で本材料のコート膜を得る。ステップ8において、酸あるいはアルカリと接触させる方法としては、酸あるいはアルカリの溶液に浸漬するか、酸あるいはアルカリ溶液をステップ7の混合物のコート膜に塗布或いは噴霧するか、蒸気に曝すなどの方法がある。
図2あるいは図3のような方法で無機酸化物あるいはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーとが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を製造することができる。このハイブリッド化合物は有機ポリマーが無機酸化物あるいはその誘導体のナノ粒子によって架橋されているために水には溶解しない。そして、無機酸化物あるいはその誘導体のナノ粒子、あるいは有機ポリマーの結合せずに残された水酸基などの作用によって親水性が高く、吸水する性質がある。前記のとおり、この耐水性と吸水性の両立によって、良好な抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻作用を実現できる。また、既製の銀、銅あるいはその化合物を後で練り込む方法をとった場合には、それらの粒子をそれほど細かくすることはできないが、本発明の方法のように、銀、銅の成分を原料液の段階から導入し、無機/有機ハイブリッド化合物の生成過程で同時にそれらの化合物も生成させることで、ナノ粒子のような非常に微細な粒子とすることができる。前記のとおり、このことによって最後まで有効成分を使い切ったり、表面に固定された粒子が直接微生物、ウイルスを攻撃する際の活性を高めたり、ウイルスを内部に取り込んで攻撃する際の活性を高めるなどの効果が得られる。銀または銅の金属または化合物の微粒子(ナノ粒子)の程度は、無機/有機ハイブリッド化合物の無機酸化物がジルコニウムの酸化物である場合のように図2のステップ6あるいは図3のステップ8の中和操作がアルカリで行なわれ、銀または銅の塩も中和を受ける場合により微細なものとなる。この点から無機酸化物としては特にジルコニウムの酸化物が好ましく、その場合製造方法としては図3の第2実施形態の方が好ましい。
図2あるいは図3のステップ9の段階で、成形体となった後もさらに80〜170℃で加熱を続けることで、ハイブリッド化の反応をさらに進め、本材料の強度を向上させることができる。また、図2あるいは図3の方法で製造した無機/有機ハイブリッド化合物中の銀または銅の化合物は、適当な還元剤で還元することで、金属状態とすることもできる。
本材料の膜状物を得る場合は図2のステップ7の原料液、あるいは図3のステップ5の混合溶液を平面の基材にキャストするか、あるいはコートする対象物表面に塗布して製造する。この場合、ある程度溶媒を飛ばした状態でさらに二層目をキャストあるいは塗布し、これを繰り返すことによって複数層コートすることができる。各層の組成を変えることも可能で、例えば各層の銀または銅の濃度を変えることにより、膜状物の厚さ方向に対して濃度傾斜を持たせることも可能である。水環境で使用する場合には、有効成分の過度の放出が起こりやすいため、膜状物の表面側の有効成分濃度を内部側よりも低くすることで、放出速度を抑える方法が有効である。その状態は表面側の層の銀または銅成分の濃度を内部側の層よりも低くすることで実現できる。一方、通常のドライな環境で使用する場合には、逆に有効成分の放出が起こりにくく、効果が出にくいため、むしろ膜状物の表面側の層の有効成分濃度を内部側よりも高くするのが有効である。その状態は表面側の層の銀または銅成分の濃度を内部側の層よりも高くすることで実現できる。
以下に本発明にかかる抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料の実施例を説明する。なお、本願発明はこれら実施例の記載内容に限定されるものではない。
例1
銀を有効成分として含む本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料である膜を第3実施形態に従って作製し、なおかつ膜状物の厚さ方向に対して銀成分が濃度傾斜を持っており、内部の方が表面よりも銀成分の濃度が高いものを作製した。
重合度が3100〜3900でケン化度が86〜90%のポリビニルアルコール10重量%水溶液90gに硝酸銀(AgNO)0.7gおよびオキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrClO・8HO)4gを加えて、硝酸銀の光還元を防止するためアルミ箔で遮光した状態で攪拌しながら50℃で1時間加熱して、混合溶液Aを調製した。また、重合度が3100〜3900でケン化度が86〜90%のポリビニルアルコール10重量%水溶液90gにオキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrClO・8HO)4gを加えて、攪拌しながら50℃で1時間加熱して、混合溶液Bを調製した。すなわち混合溶液Aには銀化合物が入っており、混合溶液Bには銀化合物は入っていなかった。
次に、この混合溶液を、マイクロメータを用いて台座とのギャップを調節できるブレードが装着されたコーティング装置(R K Print Coat Instruments Ltd.製 Kコントロールコータ202)の平滑な台座の上に敷いたポリエステルフィルム上に混合溶液Bを流延した。このとき台座を70℃になるように制御しながら加熱した。混合溶液Bを台座の上に流延した後、すぐにギャップを0.4mmに調節したブレードを一定速度で混合溶液B上を掃引して一定の厚みにならした。さらに、70℃で加熱しながら放置することによって水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で混合溶液Aを上から重ねて流延し、再びすぐにギャップを0.6mmに調節したブレードを一定速度で混合溶液A上を掃引した。さらに、70℃で加熱しながら放置することによって水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で再び混合溶液Bを上から重ねて流延し、すぐにギャップを0.4mmに調節したブレードを一定速度で原料溶液B上を掃引した。70℃で加熱しながら放置することによって水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で台座の温度を130℃まで引き上げ、その状態を保って1.5時間の加熱処理を行った。その後、台座の上に生成した膜を剥離し、0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液に常温で18時間浸漬した後、60℃〜70℃の熱水中で30分程度洗浄した。室温で乾燥後、120℃で1時間加熱処理を行い、再び90℃の熱水中で1時間程度洗浄して、膜1を作製した。膜1は銀を平均して1.3wt%含有していた。
本例のように、本材料を三層塗布することで作製し、内部の層のみ銀化合物を持つ混合溶液Aにすることで、内部の銀成分の濃度が高く、表面付近では濃度が低い膜状物を製造することができる。
例2
銀を有効成分として含む本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料である膜を第3実施形態に従って作製し、なおかつ膜状物の厚さ方向に対して銀成分が濃度傾斜を持っており、表面の方が内部よりも銀成分の濃度が高いものを作製した。
重合度が3100〜3900でケン化度が86〜90%のポリビニルアルコール10重量%水溶液90gにオキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrClO・8HO)2g、および硝酸銀0.05gを加えて、硝酸銀の光還元を防止するためにアルミ箔で遮光した状態で攪拌しながら50℃で1時間加熱して、混合溶液Aを調製した。また、重合度が3100〜3900でケン化度が86〜90%のポリビニルアルコール10重量%水溶液90gにオキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrClO・8HO)2gを加えて、攪拌しながら50℃で1時間加熱して、混合溶液Bを調製した。すなわち混合溶液Aには銀化合物が入っており、混合溶液Bには銀化合物は入っていなかった。
次に、この混合溶液を、マイクロメータを用いて台座とのギャップを調節できるブレードが装着されたコーティング装置(R K Print Coat Instruments Ltd.製 Kコントロールコータ202)の平滑な台座の上に敷いたポリエステルフィルム上に混合溶液Aを流延した。このとき台座を70℃になるように制御しながら加熱した。混合溶液Aを台座の上に流延した後、すぐにギャップを0.3mmに調節したブレードを一定速度で混合溶液A上を掃引して一定の厚みにならした。さらに、70℃で加熱しながら放置することによって水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で混合溶液Bを上から重ねて流延し、再びすぐにギャップを0.6mmに調節したブレードを一定速度で混合溶液B上を掃引した。さらに、70℃で加熱しながら放置することによって水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で再び混合溶液Aを上から重ねて流延し、すぐにギャップを0.4mmに調節したブレードを一定速度で混合溶液A上を掃引した。70℃で加熱しながら放置することによって水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で台座の温度を130℃まで引き上げ、その状態を保って1.5時間の加熱処理を行った。その後、台座の上に生成した膜を剥離し、0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液に常温で18時間浸漬した後、60℃〜70℃の熱水中で30分程度洗浄した。室温で乾燥後、120℃で1時間加熱処理を行い、再び90℃の熱水中で1時間程度洗浄して、膜2を作製した。
本例のように、本材料を三層塗布することで作製し、表面側の層のみ銀化合物を持つ混合溶液Aにすることで、表面付近の銀成分の濃度が高く、内部では濃度が低い膜状物を製造することができる。
例3
銅を有効成分として含む本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料膜を第3実施形態に従って作製した。
重合度が3100〜3900でケン化度が86〜90%のポリビニルアルコール10重量%水溶液90gにオキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrClO・8HO)6g、および塩化銅二水和物(CuCl・2HO)0.3gを加えて、攪拌しながら50℃で1時間加熱して、混合溶液を調製した。次に、この混合溶液を、マイクロメータを用いて台座とのギャップを調節できるブレードが装着されたコーティング装置(R K Print Coat Instruments Ltd.製 Kコントロールコータ202)の平滑な台座の上に敷いたポリエステルフィルム上に混合溶液を流延した。このとき台座を70℃になるように制御しながら加熱した。混合溶液を台座の上に流延した後、すぐにギャップを0.5mmに調節したブレードを一定速度で混合溶液上を掃引して一定の厚みにならした。さらに、70℃で加熱しながら放置することによって水分を飛ばし、流動性がほぼ消失した段階で台座の温度を130℃まで引き上げ、その状態を保って1.5時間の加熱処理を行った。その後、台座の上に生成した膜を剥離し、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に常温で18時間浸漬した後、60℃〜70℃の熱水中で30分程度洗浄した。室温で乾燥後、120℃で1時間加熱処理を行い、再び90℃の熱水中で1時間程度洗浄して、膜3を作製した。膜3は銅を平均して1.2wt%含有していた。
例4
銀を有効成分として含む本発明の抗微生物、抗ウイルスおよび/または防藻材料である膜を第3実施形態に従って作製し、ポリプロピレン製のメッシュ(ネット)の表面にコートしたものを作製した。
重合度が3100〜3900でケン化度が86〜90%のポリビニルアルコール10重量%水溶液90gにオキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrClO・8HO)4g、および硝酸銀0.4gを加えて、硝酸銀の光還元を防止するためにアルミ箔で遮光した状態で攪拌しながら50℃で1時間加熱して、混合溶液を調製した。この混合溶液にポリプロピレン製のメッシュ(網戸用ネット)を1時間浸漬させた。取り出した後、エアーブローで余分の混合溶液を除去し、130℃で1時間加熱処理を行った。その後、0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液に常温で18時間浸漬した後、60℃〜70℃の熱水中で30分程度洗浄した。室温で乾燥後、120℃で1時間加熱処理を行い、再び90℃の熱水中で1時間程度洗浄して、本発明の膜でコートされたポリプロピレン製のメッシュ(PPメッシュ)を作製した。
例5
(試験例1 溶出試験)
本発明の膜を、各試験水に添加してICP発光分析により銀、および銅の溶出量を測定した。
滅菌水、リン酸バッファー、および菌数が10CFU/mlとなるように黄色ブドウ球菌と大腸菌を含む菌液を添加したリン酸バッファー(リン酸バッファー+菌)の各試験水800mlを調製した。銀または銅の含量が約1mg/L以上となるように膜1または膜3を各試験水に添加して攪拌した。その後、膜投入前と、膜投入から3時間後、6時間後、および24時間後における各試験水中の銀または銅の濃度を測定した。膜1、膜3のいずれにおいても銀、および銅は検出されず、膜に安定に固定化されていることを示した。その測定結果を表1、表2に示す。なお、膜1、膜3ともに、どの水に浸漬した場合にも膜の膨張が見られ、かつ柔らかくなったが、測定後取り出して大気中で放置して乾かしたところ、元の大きさ、硬さに戻った。このことから、これらの膜が明らかに吸水することが確認された。また、膜1、膜3ともにどの水に浸漬した場合にも、吸水はするが溶解することはなく、膜の劣化は見られなかった。
Figure 0006911030
Figure 0006911030
例6
(試験例2 抗菌力試験)
作製した膜を抗菌製品技術協議会の試験法に準じて、シェイクフラスコ法による抗菌力評価試験を実施した。
Staphylococcus aureus、Escherichia coliの各々につき、菌数が10〜10CFU/mL程度になるように滅菌済みリン酸緩衝生理食塩水(KH2PO4)に菌液を添加して、試験菌液30mlを作製した。それを200mlの滅菌済み三角フラスコに加え、銀または銅として1mg/L以上になるように膜1または膜3をカットして投入し、25±5℃、320〜340rpmの条件で振盪した。その後、経過時間(0時間、1時間、3時間、24時間、72時間、168時間)ごとに生菌数を測定し、抗菌力の評価を行った。なお、上記操作で菌液を加えないものをコントロールとした。また、銀および銅を含有しない比較膜を作製し、膜重量として膜1または膜3とほぼ同様の量を投入し、それを評価した(比較例1)。それらの結果を表3、表4に示す。膜1および膜3ともに優れた殺菌効果を示した。
なお、試験に使用した菌株は次の2種類である。
Staphylococcus aureus NBRC12732
Escherichia coli NBRC3972
Figure 0006911030
Figure 0006911030
例7
( 試験例3 殺藻試験)
緑藻類であるChlorella a vulgaris C−135(以下、クロレラという)を、用いて膜1および膜3の殺藻効果を評価した。
MDM培地によるクロレラの前培養液を、吸光度O.D.420での値が0.25〜0.28になるように蒸留水で希釈し、これにHEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)を投入して溶解させ、HEPESの濃度を50mMにした。これに苛性ソーダを添加して、pHを8.5に調整した。この試験液10mlをL字型試験管に分注し、光照射型振盪−恒温水層に設置した。膜1および膜3をカットして、銀または銅として6mg/L以上になるように各々を投入した。また、例6で作製したのと同じ比較膜を作製し、カットし、膜重量として膜1または膜3と同様の量を投入し、それを評価した。30℃、10KLx(明:12時間、暗:12時間)の条件で振盪培養し、目視観察で2日間観察を行った。殺藻効果は表5に記載の判定基準で評価し、試験結果を表6示す。
Figure 0006911030
Figure 0006911030
例8
(試験例4 ウイルス不活化試験)
次に例4で作製した銀ナノ膜処理したPP製メッシュのウイルス不活化性能の評価を行った。
例4のPPメッシュを約3cm×3cmの大きさに切断し、それを4枚重ねて、評価対象のPPメッシュ試験片とした。また、比較対照としてガラス板の試験片を用いた。インフルエンザウイルス(influenza A virus(H1N1) A/PR/8/34 ATCC VR−1469)の細胞培養後のインフルエンザウイルス培養液を遠心分離して、得られた上澄み液を精製水で10倍希釈して、ウイルス液を作製した。各試験片にウイルス液を0.2ml接種し、室温で3時間、6時間、24時間保存した。保存後、ウイルス感染価(TCID50/mL)を測定した。それらの結果を表7に示す。
なお、ウイルス感染価を評価は、[R=logB−logA](A:比較対照としたガラス板の試験片のウイルス感染価、B:評価対象のPPメッシュ試験片のウイルス感染価)で表される不活化効果Rが2以上であるとき、不活化効果かあると判断した。この結果、試験片に24時間後の接触でウイルス不活化効果を示した。
Figure 0006911030
本発明の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料は、有効成分の余分な放出を伴わずに高い効果が得られる特徴を活かし、プール、浴場、集合住宅用貯水槽、飼育用水槽、工業用貯水槽、工業用循環水、水道水、浄化槽、冷却塔、輸送船のバラスト水に使用される水のための抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料として使用できる。また、建具、家具、文房具、玩具、美容用具、ゴミ容器、排水口部材、便器、ビニールハウス用ビニールシート、機器のスイッチ、医療用具、エアフィルター、マスクなどにコートして使用する抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料としても使用できる。

Claims (19)

  1. 無機酸化物あるいはその誘導体と水酸基を有する有機ポリマーが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物から成り、その無機/有機ハイブリッド化合物が銀または銅の金属またはその化合物を内部に含有するとともに、水に溶解しない固体であり、かつ水を吸収することができ、無機酸化物がジルコニウムの酸化物であり、水酸基を有する有機ポリマーがポリビニルアルコールであることを特徴とする抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  2. 無機/有機ハイブリッド化合物に含有される銀または銅の金属またはその化合物が直径10nm以下の粒子を含んでいる請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  3. CuΚα線を利用したX線回折法で得られた回折強度―回折角図において無機/有機ハイブリッド化合物に含有される銀または銅の金属またはその化合物に帰属されるピークのうち最高ピークの半値幅が2(2θ°)以上であるか、ピークが無いことを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  4. 抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を中の銀または銅の量が1mg/L以上となるような量の常温の水に24時間以上浸漬した場合の水中に溶け出した銀または銅の濃度が0.05mg/L未満であることを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  5. 膜状物であることを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  6. 膜状物が固形物表面にコートされた塗布膜であることを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  7. 表面に塗布膜コートされた固形物が建具、家具、文房具、玩具、美容用具、ゴミ容器、排水口部材、便器、ビニールハウス用ビニールシート、機器のスイッチ、医療用具であることを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  8. 固形物が多孔質材料であることを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  9. 多孔質材料が、ネット、メッシュ、織物、不織布であることを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  10. 多孔質材料がフィルターあるいはマスクである請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  11. 無機/有機ハイブリッド化合物に含まれる銀または銅の金属またはその化合物が膜状物の厚さ方向に対して濃度傾斜を持っていることを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  12. 抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を液体に接触させることで、その液体中の微生物、ウイルスの個体数の増加を抑えるか、個体数を減らすことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  13. 液体を強制的に循環させながら接触させることを特徴とする請求項12に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  14. 液体が、プール、浴場、集合住宅用貯水槽、飼育用水槽、工業用貯水槽、工業用循環水、水道水、浄化槽、冷却塔、輸送船のバラスト水に使用される水であることを特徴とする請求項12に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  15. 抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を気体に接触させることで、その気体中の微生物、ウイルスの個体数の増加を抑えるか、個体数を減らすことを特徴とする請求項に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  16. 気体を強制的に循環させながら接触させることを特徴とする請求項15に記載の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料。
  17. ポリビニルアルコールおよび銀または銅の塩の共存する状態で、ジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩をアルカリによって中和し、ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程を経ることによって請求項の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を得る製造方法。
  18. ジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成する過程が、ジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩とポリビニルアルコール、および銀または銅の塩の共存する溶液から溶媒を除去することによって固形物を形成し、それをアルカリに接触させて固形物中のジルコニウム塩あるいはオキシジルコニウム塩を中和することによって行なわれる請求項17の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料の製造方法。
  19. 銀または銅の化合物を含有するジルコン酸化合物とポリビニルアルコールが化学結合した無機/有機ハイブリッド化合物を形成した後、銀または銅の化合物を還元剤で還元することによって金属状態の銀または銅にすることを特徴とする請求項17の抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料を得る製造方法。
JP2018529801A 2016-07-26 2017-07-19 無機/有機ハイブリッド化合物からなる抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料およびその製造方法 Active JP6911030B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016146124 2016-07-26
JP2016146124 2016-07-26
PCT/JP2017/026076 WO2018021106A1 (ja) 2016-07-26 2017-07-19 無機/有機ハイブリッド化合物からなる抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2018021106A1 JPWO2018021106A1 (ja) 2019-05-09
JP6911030B2 true JP6911030B2 (ja) 2021-07-28

Family

ID=61016946

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018529801A Active JP6911030B2 (ja) 2016-07-26 2017-07-19 無機/有機ハイブリッド化合物からなる抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料およびその製造方法

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP6911030B2 (ja)
TW (1) TWI738826B (ja)
WO (1) WO2018021106A1 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108379669B (zh) * 2018-02-06 2021-04-30 中国科学院金属研究所 具有含铜涂层的医用导管及其制备方法
JP2020025608A (ja) * 2018-08-09 2020-02-20 株式会社ニコン 抗菌膜を有する部材、及びその製造方法
GB2596076B (en) * 2020-06-15 2024-09-18 Louver Lite Ltd Coating composition
CN112225984B (zh) * 2020-10-26 2022-12-13 晋江泉得利体育用品有限公司 一种抗菌eva鞋底及其制备方法
WO2022192111A1 (en) * 2021-03-08 2022-09-15 King Technology Pool pump dispensers
EP4312561A1 (en) * 2021-04-02 2024-02-07 Neo Chemicals & Oxides, LLC Zirconium polymer composition with metal particles having biological contaminant removal properties
JPWO2022230405A1 (ja) * 2021-04-28 2022-11-03
CN113718519B (zh) * 2021-09-14 2023-09-26 三河市安霸生物技术有限公司 抗病毒整理剂、抗病毒织物及其制备方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7244797B2 (en) * 2001-02-08 2007-07-17 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha Organic domain/inorganic domain complex materials and use thereof
US20080063693A1 (en) * 2004-04-29 2008-03-13 Bacterin Inc. Antimicrobial coating for inhibition of bacterial adhesion and biofilm formation
JP2014172936A (ja) * 2013-03-06 2014-09-22 Nippon Kodoshi Corp 無機/有機複合化合物の製造方法
JP6088932B2 (ja) * 2013-07-26 2017-03-01 ニッポン高度紙工業株式会社 無機/有機ハイブリッド化合物からなる分離膜およびその製造方法
CZ2013656A3 (cs) * 2013-08-28 2015-04-08 Technická univerzita v Liberci Antibakteriální hybridní vrstva působící proti patogenním bakteriálním kmenům, zejména proti bakteriálnímu kmeni MRSA, a způsob vytvoření této vrstvy
JP2017527592A (ja) * 2014-09-19 2017-09-21 ザ・ホンコン・ユニバーシティー・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジーThe Hong Kong University of Science & Technology 表面の長期殺菌のための抗菌コーティング

Also Published As

Publication number Publication date
WO2018021106A1 (ja) 2018-02-01
TWI738826B (zh) 2021-09-11
TW201809030A (zh) 2018-03-16
JPWO2018021106A1 (ja) 2019-05-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6911030B2 (ja) 無機/有機ハイブリッド化合物からなる抗微生物、抗ウイルス、および/または防藻材料およびその製造方法
Deshmukh et al. Silver nanoparticles as an effective disinfectant: A review
JP3275032B2 (ja) 環境浄化材料及びその製造方法
KR100723956B1 (ko) 기능성 흡착제 및 환경정화제품
WO2011129138A1 (ja) 光触媒塗料及び光触媒塗膜並びに積層塗膜構造
WO1996010917A1 (fr) Solide antibacterien, son procede de preparation et son procede d'utilisation
JP6283922B1 (ja) 光触媒材及び光触媒塗料組成物
WO2009082429A2 (en) Absorbent systems providing antimicrobial activity
Ghedini et al. Which are the main surface disinfection approaches at the time of SARS-CoV-2?
JP2007211238A (ja) 水分散体、表面被覆処理剤、木材処理剤、床ワックス、風路表面処理剤、繊維処理剤、および、塗料
JPH11169724A (ja) 抗菌作用を有する複合粒子材料
JP3914982B2 (ja) 抗菌材料及びそれを用いた抗菌製品
CN103933617B (zh) 一种具有抗细菌粘附的气管导管的制备方法
JP4953888B2 (ja) 銀イオンスプレー用の銀担持セラミック多孔体
US8568757B2 (en) Formulations employing anhydrous disinfectant
JP5082034B2 (ja) 複合機能光触媒分散液及び多孔質複合機能光触媒
JPH1121127A (ja) 酸化チタン膜の作製方法
WO1999020105A1 (fr) Article a tendance poreuse permettant d'eliminer des micro-organismes nuisibles et procede de fabrication dudit article
JP2001019431A (ja) 酸化チタン膜形成用溶液の生成方法
CN105883986A (zh) 生物陶瓷杀菌球
JP2004115422A (ja) 無機系抗菌剤、その製造方法およびそれを含有した製品
JP2019130204A (ja) 抗菌脱臭シート及び抗菌脱臭方法
CN109486316A (zh) 一种壁材保护膜及其制备方法
JP4079306B2 (ja) 光触媒粉体、その製造方法およびその応用
WO2006068167A1 (ja) 多孔性焼成物および製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20181101

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200609

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210423

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210615

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210701

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210707

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6911030

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150