JP6910703B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
すなわち本発明は、下記[1]ないし[5]を提供することを課題とする。
[1]下記条件(A)〜(E)を満たす微細繊維状セルロースと熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(A)数平均繊維径が2nm以上500nm以下
(B)平均アスペクト比が10以上1000以下
(C)セルロースI型結晶構造を有する
(D)アニオン性官能基を有する
(E)(D)記載のアニオン性官能基の一部、または全てに下記式(1)で示すポリエーテルアミンが結合している
[2]上記微細繊維状セルロースがさらに下記条件を満たすことを特徴とする[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(F)(D)記載のアニオン性官能基の一部、または全てに上記一般式(1)で示すポリエーテルアミンと下記一般式(2)で示すアミン化合物が結合している。
[3]上記微細繊維状セルロースのアニオン性官能基がカルボキシル基であることを特徴とする[1]または[2]記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]上記熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、およびエポキシ樹脂から選択される、1種又は2種以上であることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれか1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5]上記微細繊維状セルロースの固形分含有量が0.05質量%以上3.0質量%以下の範囲であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれか一に記載の熱硬化性樹脂組成物。
微細繊維状セルロースは、下記の条件を満たすものである。
上記微細繊維状セルロースの数平均繊維径は2nm以上500nm以下であるが、好ましくは2nm以上150nm以下であり、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、特に好ましくは3nm以上80nm以下である。上記数平均繊維径が2nm未満であると、微細繊維状セルロースの結晶構造が失われ、弾性率を向上できないおそれがあり、上記数平均繊維径が500nmを超える場合も微細繊維状セルロースが硬化前のプレポリマー中で沈降するおそれがある。また最大繊維径は、微細繊維状セルロースの分散性の点で、1000nm以下であることが好ましく、特に好ましくは500nm以下である。
上記微細繊維状セルロースの数平均繊維径および最大繊維径は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、固形分率で0.05〜0.1重量%の微細セルロースの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出する。
上記微細繊維状セルロースの平均アスペクト比は10以上1000以下であるが、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。平均アスペクト比が10未満であると表面電荷が少なくなり、硬化前のプレポリマー中で微細繊維状セルロースが凝集するおそれがある。
上記微細繊維状セルロースは、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース原料を微細化した繊維である。すなわち、天然セルロースの生合成の過程においては、ほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構成する。
上記微細繊維状セルロースはアニオン性官能基を有する。
下記式(iii)
また微細繊維状セルロースのアニオン性官能基の一部がポリエーテルアミンと結合してなる場合、残りのアニオン性官能基に下記一般式(2)で示されるアミン化合物を結合してもよい。
本発明の微細繊維状セルロースは、下記工程(1)〜(4)を有する製造方法によれば、より効率的に製造できるため好ましい。
工程(1):セルロースI型結晶構造を有するセルロース繊維を水に分散させた後、そのセルロース繊維の水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程
工程(2):上記セルロース繊維の分散媒である水を有機溶剤に置換する工程
工程(3):上記分散媒置換後のセルロース繊維にポリエーテルアミンを添加する工程
工程(4):上記ポリエーテルアミンが結合したセルロース繊維を上記有機溶媒中でナノ解繊する工程
工程(1)は、セルロースI型結晶構造を有するセルロースの水酸基を、酸化等によりカルボキシル基を有する置換基(カルボキシル基、カルボキシル塩基、カルボキシルアルキル基等)に変換させる工程である。
上記酸化セルロースは上記天然セルロースと、N−オキシル化合物と、共酸化剤の存在下で酸化処理をして、カルボキシ基を含有するセルロース繊維を得られる。
上記酸化処理後のセルロース繊維は、還元剤により還元させることが好ましい。これにより、アルデヒド基およびケトン基の一部ないし全部が還元され、水酸基に戻る。なお、カルボキシル基は還元されない。そして、上記還元による、上記酸化セルロースの、後述するセミカルバジド法によって算出されるカルボニル基(アルデヒド基とケトン基)の合計含量は、0.3mmol/g以下とすることが好ましく、特に好ましくは0.1mmol/g以下である。これにより、微細繊維状セルロースの分子量低下が抑制され、溶剤中での増粘効果を長期間維持することができる。なお、カルボニル基が0.5mmol/gを超えると、長期保存による凝集物の発生や、粘度が時間経過と共に著しく低下するといったおそれがある。なお、上記還元反応に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH4、NaBH3CN、NaBH4があげられる。なかでも、NaBH4は、コスト及び利用可能性という観点から特に好ましい。
工程(2)は、上記処理後のセルロース繊維を酸で洗浄することで、上記工程(1)で導入したカルボキシル基を酸型にし、適宜、ろ過と水洗とを繰り返して精製し、遠心分離機等により固液分離を行った後、有機溶剤によるセルロースの洗浄を、繰り返し行い、水から有機溶剤へと溶媒置換を行う工程である。
上記酸は、セルロース繊維水分散液を酸性に維持できればよいため、酸の種類は特に限定されず、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、過酸化水素などの無機酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、セバシン酸、セバシン酸ソーダ、ステアリン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、フマール酸、グルコン酸などの有機酸のいずれであっても用いることができる。酸によるセルロース繊維の変質や損傷を回避でき、廃液処理の容易さなどの観点から、塩酸を用いることが好ましい。
上記有機溶媒は、特に限定するものではない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、1−ペンタノール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2-メチル−1−プロパノールグリセリン等のアルコール類、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン、オレイン酸、リノレン酸、乳酸、安息香酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、流動パラフィン等の炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトアニリド等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸メチル、アジピン酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル、4-シクロヘキセン-1, 2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸トリクレジル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリエーテル類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、エステル油、軽油、灯油、原油、サラダ油、大豆油、ヒマシ油、トリグリセライド、ポリイソプレン、フッ素変性油等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、上記有機溶剤の代わりに、後述する熱硬化性樹脂のプレポリマーもしくは上記有機溶剤と上記熱硬化性樹脂のプレポリマーの混合物を用いても良い。
工程(3)は、上記分散媒置換後の酸化セルロースに対し、上記式(1)に示されるポリエーテルアミンを添加する工程である。これにより、上記酸化セルロースのカルボキシル基に、上記式(1)に示されるポリエーテルアミンが結合し、セルロースの親油化が行われる。なお、上記反応は、上記有機溶媒中で行われる。
工程(4)は、上記親油化後のセルロース繊維を有機溶剤中でナノ解繊する工程である。上記ナノ解繊に使用する分散機としては、例えば、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することで、より微細化することが可能となり、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となる。なお、上記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー等を用いても差し支えない。
本発明に好適に使用できる熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、 シリコーン樹脂、 ポリイミド樹脂、 フラン樹脂、 尿素樹脂、 ポリイミド樹脂、 ジアリルフタレート樹脂、 ビニルエステル樹脂、 オキセタン樹脂、 ケイ素樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの熱硬化性樹脂のうち、特にウレタン樹脂、およびエポキシ樹脂を用いることが、微細繊維状セルロースとの均一な分散性がより向上する点から好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は以下の、工程(A)ないし工程(C)を含む方法により製造することができる
工程(A)微細繊維状セルロース分散体と熱硬化前の熱硬化性樹脂プレポリマーとを混合して混合物を得る工程。
工程(B)上記混合物を所定の形状に成形して成形体を得る工程。
工程(C)上記成形体中の前記プレポリマーを熱硬化させる工程。
一方、熱硬化性樹脂プレポリマーの割合は50質量%以上、特に80質量%以上、とりわけ90質量%以上であることが好ましく、99質量%以下、特に98.8質量%以下、とりわけ98.5質量%以下であることが好ましい。
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.2mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応した(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加して中和した後、遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4%に調整した。その後、24%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをセルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、セルロース繊維A1を得た。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して12.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の調製法に準じて、セルロース繊維A2を得た。
針葉樹パルプ100gを、イソプロパノール(IPA)435gと水65gとNaOH9.9gの混合液中にいれ、30℃で1時間撹拌した。このスラリー系に50%モノクロル酢酸のIPA溶液23.0gを加え、70℃に昇温し1.5時間反応させた。得られた反応物を80%メタノールで洗浄し、その後メタノールで置換し乾燥させ、セルロース繊維A3を得た。
尿素 20g、リン酸二水素ナトリウム二水和物 12g、リン酸水素二ナトリウム 8gを20gの水に溶解させてリン酸化剤を調整し、家庭用ミキサーで粉砕した針葉樹パルプ(LBKP)20gをニーダーで攪拌しながらスプレー噴霧し、リン酸化剤含浸パルプを得た。次いで、リン酸化剤含浸パルプを140℃に加熱したダンパー付きの送風乾燥機内で60分間、加熱処理してリン酸化パルプを得た。得られたリン酸化パルプに水を加えて固形分濃度2%とし、攪拌、混合して均一に分散させた後、濾過、脱水の操作を2回繰り返した。次いで、得られた回収パルプに、水を加えて、固形分濃度2%とし、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pH12〜13のパルプスラリーを得た。続いて、このパルプスラリーを濾過、脱水し、更に水を加えて濾過、脱水の操作を2回繰り返し、その後メタノールで置換し乾燥させ、セルロース繊維A4を得た。
針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)50gを水4950gに分散させ、パルプ濃度2%の分散液を調製した。この分散液をセレンディピターMKCA6−3(増幸産業社製)で30回処理し、セルロース繊維A’1を得た。
原料の針葉樹パルプに替えて再生セルロースを使用するとともに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、再生セルロース1.0gに対して27.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の調製法に準じて、セルロース繊維A’2を調製した。
上記セルロース繊維を用いて、下記評価方法に従い、各特性の評価を行った。
X線回折装置(リガク社製、RINT−Ultima3)を用いて、セルロース繊維の回折プロファイルを測定し、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
上記セルロース繊維0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記式に従いカルボキシル基量を求めた。
上記セルロース繊維を0.6質量%スラリーに調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.4とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量からカルボキシル基量を測定し、下式を用いて算出することが出来る。
上記セルロース繊維をイオン交換水で固形分濃度0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%微細セルロース繊維含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の微細セルロース繊維水分散体に、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、水分散体が示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、電気伝導度の値が最も小さくなるまでに加えたアルカリ量[mmol]を、滴定対象スラリー中の固形分[g]で除して、リン酸基量[mmol/g]とした。
上記セルロース繊維を約0.2g精秤し、これに、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加え、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記式に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
上記セルロース繊維A1にメタノールを加えてろ過し、メタノール洗浄を繰り返して、上記セルロース繊維に含まれる水をメタノールに置換した。その後、メタノールと、上記セルロース繊維A1のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)とを加えて、セルロース繊維濃度を2%になるように希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にポリオール(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318A)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をポリオールに置換した。その後、主剤としてポリオールと硬化剤としてポリイソシアネート(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318B)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整したウレタンプレポリマー組成物を得た。
上記ゲル状組成物のセルロース繊維の数平均繊維径、および繊維長を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製JEM−1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および繊維長を算出した。さらに、これらの値を用いてアスペクト比を下記式に従い、算出した。
上記ウレタンプレポリマー組成物中を試験管に移しとり、一晩静置した。試験管中でのセルロース繊維の分散状態により、以下のように分散性を評価した。
○:ウレタンプレポリマー組成物中にセルロース繊維が均一に分散していた。
×:ウレタンプレポリマー組成物中でセルロース繊維が沈降していた。
上記ウレタンプレポリマー組成物を2枚の鉄板の間に流し込み、80℃で一晩乾燥させることで、熱硬化樹脂組成物を得た。JIS K6251に準じて、熱硬化樹脂組成物をダンベル型に切り抜き、万能試験機(インストロンジャパン社製、5581型)を用いて、弾性率を測定した。上記<分散安定性の評価>が「×」の場合、弾性率の評価は行わないこととした。
上記ウレタンプレポリマー組成物を2枚の鉄板の間に流し込み、80℃で一晩乾燥させることで、熱硬化樹脂組成物を得た。JIS K7197に準じて、上記熱硬化樹脂組成物から試験片を切り抜き、熱機械分析装置TMA(リガク社製、TMA8311)を用いて、線膨張係数を測定した。上記<分散安定性の評価>が「×」の場合、線膨張係数の評価は行わないこととした。
上記ウレタンプレポリマー組成物を2枚の鉄板の間に流し込み、80℃で一晩乾燥させることで、熱硬化樹脂組成物を得た。JIS K6911に準じて、電気抵抗計(ADVANTEST社製、TR8601)を用いて、体積固有抵抗値を測定した。体積固有抵抗値により、帯電防止性を以下のように評価した。上記<分散安定性の評価>が「×」の場合、体積固有抵抗値の評価は行わないこととした。
◎:体積固有抵抗値が1.0×109未満
○:1.0×109以上1.0×1011未満
△:1.0×1011以上1.0×1013未満
×:1.0×1013以上1.0×1015未満
セルロース繊維であるセルロース繊維A1と、修飾剤であるポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)と、主剤であるポリオール(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318A)と、硬化剤であるポリイソシアネート(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318B)と、ウレタンプレポリマー組成物中のセルロース繊維濃度、修飾剤濃度、主剤濃度、硬化剤濃度を、下記表2のように変更した。それ以外は実施例1と同様の手法でゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を調製し、各特性の評価を行った。
セルロース繊維A3に水を加え、固形分1%に希釈し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌しながら、溶液のpHが2になるまで1N塩酸を加えた。その後、濾過を行い、水で十分洗浄し、さらにメタノールで繰り返して洗浄することで、メタノールに溶剤置換した酸型セルロース繊維A3を作製した。上記酸型セルロース繊維A3にメタノールと、上記セルロース繊維A3のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)とを加えて、2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にポリオール(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318A)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をポリオールに置換した。その後、主剤としてポリオールと硬化剤としてポリイソシアネート(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318B)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整したウレタンプレポリマー組成物を得た。上記ゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
セルロース繊維A4に水を加え、固形分1%に希釈し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌しながら、溶液のpHが2になるまで1N塩酸を加えた。その後、濾過を行い、水で十分洗浄し、さらにメタノールで繰り返して洗浄することで、メタノールに溶剤置換した酸型セルロース繊維A4を作製した。上記酸型セルロース繊維A4にメタノールと、上記セルロース繊維A4のリン酸基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)とを加えて、2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にポリオール(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318A)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をポリオールに置換した。その後、主剤としてポリオールと硬化剤としてポリイソシアネート(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318B)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整したウレタンプレポリマー組成物を得た。上記ゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
上記セルロース繊維A1にメタノールを加えてろ過し、メタノール洗浄を繰り返して、上記セルロース繊維に含まれる水をメタノールに置換した。その後、メタノールと、上記セルロース繊維A1のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)とを加えて、セルロース繊維濃度を2%になるように希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にビスフェノールA(DIC社製、EPICLON 850S)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をビスフェノールAに置換した。その後、主剤としてビスフェノールAと硬化剤としてジシアンジアミド(味の素社製、アミキュア AH−154)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整したエポキシプレポリマーを得た。上記ゲル状組成物、エポキシプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
セルロース繊維A1をセルロース繊維A2に、修飾剤であるポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)を下記表2記載のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)/脂肪族アミンの混合溶液(モル比で50/50)に変更した以外は、実施例1と同様の手法でゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を調製し、各特性の評価を行った。
セルロース繊維A1をセルロース繊維A2に、修飾剤であるポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)を下記表2記載のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)/脂肪族アミンの混合溶液(モル比75/25)に変更した以外は、実施例1と同様の手法でゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を調製し、各特性の評価を行った。
セルロース繊維A1をセルロース繊維A2に、修飾剤であるポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)を下記表2記載のポリエーテルアミン(HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2070)/脂肪族アミンの混合溶液(モル比25/75)に変更した以外は、実施例1と同様の手法でゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を調製し、各特性の評価を行った。
セルロース繊維A2に、水と上記セルロース繊維A2のカルボキシル基量と等量の24%NaOH水溶液とを加えて、セルロース繊維濃度を2%になるように希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物に水を加えて、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、固形分を0.5%にした微細繊維状セルロース分散液を得た。溶液のpHが2になるまで1N塩酸を加えた。その後、濾過を行い、水で十分洗浄し、さらにアセトンで繰り返して洗浄することで、アセトンに溶剤置換した酸型セルロース繊維A2を作製した。メカニカルスターラー、還流管を備えた4口丸底フラスコに、上記酸型セルロース繊維A2を仕込み、t−ブチルアルコール加えて、固形分濃度0.5%とし、室温下、1時間攪拌した。続いて、オクタデシルアミン(微細繊維状セルロースのカルボキシル基1molに対して2mol)、DMT−MM(微細繊維状セルロースのカルボキシル基1molに対して2mol)を仕込み、溶解したことを確認した後、55℃、6時間反応を行った。反応終了後、ろ過し、メタノール/イオン交換水にて洗浄を行い、未反応オクタデシルアミン、DMT−MMを除去した。さらにアセトンを加えてろ過し、オクタデシル基がアミド結合を介して結合した微細繊維状セルロースを得た。上記微細繊維状セルロースをポリオール(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318A)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりアセトンを留去することで、分散溶剤をポリオールに置換した。その後、主剤としてポリオールと硬化剤としてポリイソシアネート(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318B)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整したウレタンプレポリマー組成物を得た。
セルロース繊維A3にメタノールを加え、ろ過し、メタノールで繰り返して洗浄することでセルロース繊維に含まれる水をメタノールに溶剤置換した。その後、さらにメタノールを加えて2%に希釈して、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にポリオール(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318A)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をポリオールに置換した。その後、主剤としてポリオールと硬化剤としてポリイソシアネート(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318B)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整したウレタンプレポリマー組成物を得た。上記ゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
セルロース繊維A′1にメタノールを加え、ろ過し、メタノールで繰り返して洗浄することでセルロース繊維に含まれる水をメタノールに溶剤置換し、ゲル状組成物を得た。上記ゲル状組成物にポリオール(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318A)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をポリオールに置換した。その後、主剤としてポリオールと硬化剤としてポリイソシアネート(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318B)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整したウレタンプレポリマー組成物を得た。上記ゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
セルロース繊維A′2に水を加えて希釈し、凍結乾燥を行った。凍結乾燥物にメタノールと、上記セルロース繊維A′2のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(JEFFAMINE M−2070、HUNTSMAN社製)とを加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理し、ゲル状組成部を得た。上記ゲル状組成物にポリオール(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318A)を加えて、ロータリーエバポレーター(東京理化機器社製)によりメタノールを留去することで、分散溶剤をポリオールに置換した。その後、主剤としてポリオールと硬化剤としてポリイソシアネート(第一工業製薬社製、エイムフレックスEF318B)を加え、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)を用いて8000rpm×10分間撹拌することにより、セルロース繊維濃度、修飾剤濃度、マトリクス樹脂濃度、硬化剤濃度を表2のように調整したウレタンプレポリマー組成物を得た。上記ゲル状組成物、ウレタンプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
下記表2に記載のポリオールとポリイソシアネートを使用し、ポリオール濃度を59%、ポリイソシアネート濃度を41%に調整したウレタンプレポリマー組成物を得た。上記ウレタンプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
ビスフェノールA濃度を94.6%(DIC社製、EPICLON 850S)、ジシアンジアミド(味の素社製、アミキュア AH−154)濃度を5.4%に調整したエポキシプレポリマーを得た。上記エポキシプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の評価方法で、各特性の評価を行った。
※2 HUNTSMAN社製、JEFFAMINE M−2005
※3 第一工業製薬社製、エイムフレックスEF310SA
※4 第一工業製薬社製、エイムフレックスEF310SB
※5 数平均繊維径が1nm以下であるため測定不可
Claims (4)
- 下記条件(A)〜(F)を満たす微細繊維状セルロースと熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(A)数平均繊維径が2nm以上500nm以下
(B)平均アスペクト比が10以上1000以下
(C)セルロースI型結晶構造を有する
(D)アニオン性官能基を有する
(E)上記(D)に記載のアニオン性官能基の一部に下記式(1)で示すポリエーテルアミンが結合している
(F)上記(D)に記載のアニオン性官能基のうち、下記式(1)で示すポリエーテルアミンが結合しているアニオン性官能基を除いた、残りのアニオン性官能基の一部または全てに下記一般式(2)で示すアミン化合物が結合している
- 上記微細繊維状セルロースのアニオン性官能基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 上記熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、およびエポキシ樹脂から選択される、1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 上記微細繊維状セルロースの固形分含有量が0.05質量%以上3.0質量%以下の範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
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