以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係るCMP研磨装置について説明する。図1は、本実施の形態に係るCMP研磨装置の斜視図である。なお、本実施の形態に係るCMP研磨装置は、図1に示すように研磨加工専用の装置構成に限定されず、例えば、研削加工、研磨加工、洗浄加工等の一連の加工が全自動で実施されるフルオートタイプの加工装置に組み込まれてもよい。
図1に示すように、CMP研磨装置1は、フルオートタイプの加工装置であり、被加工物であるウエーハWに対して搬入処理、研磨加工、洗浄処理、搬出処理からなる一連の作業を全自動で実施するように構成されている。ウエーハWは、略円板状に形成されており、表面に格子状に配列された図示しない分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。分割予定ラインによって区画された各領域には、IC,LSIなどのデバイスが形成されている。
ウエーハWの裏面加工時にデバイスを保護するため、ウエーハWの表面には保護テープT(図2参照)が貼着されている。このように構成されたウエーハWは、搬入側のカセットCに収容された状態でCMP研磨装置1に搬入される。
ウエーハWは、特に限定されないが、例えば、シリコン(Si),ガリウムヒ素(GaAs),シリコンカーバイト(SiC)などの半導体ウエーハや、セラミック、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、板状金属や樹脂の延性材料が挙げられる。
CMP研磨装置1の基台11の前側には、複数のウエーハWが収容された一対のカセットC(一つは不図示)が載置されている。一対のカセットCの後方には、カセットCに対してウエーハWを出し入れするカセットロボット16が設けられている。カセットロボット16の一方側には、加工前のウエーハWの中心位置を検出する検出手段としてのウエーハ位置検出部21が設けられている。また、カセットロボット16の他方側には、加工済みのワークWを洗浄する洗浄機構26が設けられている。ウエーハ位置検出部21と洗浄機構26の間には、加工前のウエーハWを保持テーブル41に搬入する搬入手段31と、保持テーブル41から加工済みのウエーハWを搬出する搬出手段36とが設けられている。
カセットロボット16は、多節リンクからなるロボットアーム17の先端にハンド部18を設けて構成されている。カセットロボット16では、カセットCから後述するウエーハ位置検出部21に加工前のウエーハWが搬送される他、洗浄機構26からカセットCに加工済みのウエーハWが搬送される。
ウエーハ位置検出部21は、カセットロボット16によりウエーハWが載置される支持テーブル22と、支持テーブル22に載置されたウエーハWを撮像する撮像部23と、を備えている。支持テーブル22は、ウエーハWよりも小径の円板状に形成されており、基台11の内部に設けられた図示しない回転部により所定の角度間隔で断続的に回転される。撮像部23は、L字状の支持アーム24を介して支持テーブル22の上方に支持され、撮像範囲をウエーハWの外周縁部に位置付けている。撮像部23は、支持テーブル22の断続的な回転に合わせてウエーハWの外周縁部を逐次撮像する。撮像部23の撮像結果は、制御部70に出力されてウエーハWの中心位置の算出処理に用いられる。このような構成により、支持テーブル22上のウエーハWの位置ずれおよびウエーハWの向きが検出される。
搬入手段31は、上下方向に延在する移動部としての回動軸32と、回動軸32の上端に支持された搬入アーム33と、搬入アーム33の先端に設けられたワークWを吸引保持する搬入パッド34と、を備えている。搬入アーム33は先端部33aが前方に延び、回動軸32は、上下移動可能かつ回動可能に構成されている。搬入パッド34は、搬入アーム33の先端部33aの前方への移動、回動軸32の回動により水平面内における位置調整がなされ、回動軸32の上下移動により高さ方向における位置調整がなされる。
また、搬入手段31は、制御部70により駆動制御されており、搬入アーム33の先端部33aの移動、回動軸32の上下方向の移動量、回動量が調整される。そして、搬入手段31は制御部70に制御され、搬入パッド33によって支持テーブル22からウエーハWを吸引保持して持ち上げ、搬入アーム33によって搬入パッド34を旋回させることで、保持テーブル41にウエーハWが搬入される。このとき、制御部70は、支持テーブル22に対するウエーハWの位置ずれ量を考慮しつつ、搬入アーム33の先端部33aの前方への移動量及び回動軸32の回動量を調整する。これにより、ウエーハWの中心は、保持テーブル41の中心に一致するように位置合わせされる。
搬出手段36は、搬入手段31と略同一に構成されている。搬出手段36では、制御部70に制御されて、搬出パッド38によって保持テーブル41からウエーハWが吸引保持される。搬出アーム37によって搬出パッド38が旋回させることで、保持テーブル41からウエーハWが搬出され、洗浄機構26のスピンナーテーブル27に載置される。このとき、保持テーブル41の中心およびスピンナーテーブル27の中心が搬出手段36の旋回軌跡上に位置するため、ウエーハWの中心がスピンナーテーブル27の中心に位置合わせされる。
洗浄機構26は、スピンナーテーブル27に向けて洗浄水及び乾燥エアーを噴射する各種ノズル(不図示)を設けて構成される。洗浄機構26では、ウエーハWを保持したスピンナーテーブル27が基台11内に降下され、基台11内で洗浄水が噴射されてウエーハWがスピンナー洗浄された後、乾燥エアーが吹き付けられてウエーハWが乾燥される。
搬入手段31及び搬出手段36の後方には、搬入手段31および搬出手段36に隣接して、Y方向に延在する矩形状の開口部45が形成されている。開口部45は、保持テーブル41とともに移動可能な移動板43および蛇腹状の防水カバー46により被覆されている。防水カバー46の下方には、保持テーブル41を前後方向に移動させる図示しないボールねじ式の移動機構が設けられている。保持テーブル41は、移動機構により、搬入手段31および搬出手段36によるウエーハWの搬送位置と、後述する研磨手段51によるCMP研磨位置との間を前後方向に往復移動可能に構成されている。
保持テーブル41は、円板状に形成されており、上面にワークWを吸引保持する保持面42が形成されている。保持面42は、例えば、ポーラスセラミック材により形成されており、基台11内に配置された図示しない吸引源に接続されている。保持テーブル41の下方には保持テーブル41を回転させる回転手段としての保持テーブルモータ44(図2参照)が設けられている。保持テーブル41、保持テーブルモータ44及び移動板43で、保持手段40を構成している。
また、開口部45の側方には、コラム12が立設されている。コラム12には、研磨手段51をZ軸方向に研磨送りする研磨送り手段61が設けられている。研磨送り手段61は、コラム12の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール62と、一対のガイドレール62にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル63とを有している。
Z軸テーブル63の側面には、スピンドルホルダ64を介して研磨手段51が支持されている。Z軸テーブル63の背面側にはナット部(不図示)が形成され、このナット部にボールネジ68が螺合されており、ボールネジ68の一端には駆動モータ66が連結されている。駆動モータ66によってボールネジ68が回転駆動され、研磨手段51がガイドレール62に沿ってZ軸方向に移動される。
研磨手段51は、スピンドルホルダ64を介してZ軸テーブル63の側面に取り付けられており、スピンドルユニット58の下部に研磨パッド53を回転可能に装着して構成されている。研磨手段51は、研磨送り手段61によりZ軸方向に移動され保持テーブル41に保持されたウエーハWに研磨パッド53を押し付けてウエーハWを研磨加工する。スピンドルユニット58にはフランジ55が設けられ、フランジ55を介してスピンドルホルダ64に研磨手段51が支持される。スピンドルユニット58は、エアスピンドルであり、ケーシング56(図2参照)の内側で高圧エアーを介して回転軸57が回転可能に支持されている。回転軸57の下部には、研磨パッド53が装着されるマウント52が取り付けられている。研磨パッド53の研磨面にはスラリーを定着させる多数の孔が形成されている。
また、スピンドルユニット58の上部には、ウエーハWの上面と研磨パッド53の研磨面との間にスラリーを供給するスラリー供給源80が接続されている(図2参照)。スラリー供給源80からスラリーが供給されることで、スピンドルユニット58内の貫通孔58a(図2参照)を通じて研磨面にスラリーが定着される。スラリーは、砥粒を含むアルカリ性水溶液又は酸性水溶液であり、例えば、グリーンカーボランダム、ダイヤモンド、アルミナ、酸化セリウム、CBN(立方晶窒化ホウ素)の砥粒が含有される。
CMP研磨装置1には、装置各部を統括制御する制御部70が設けられている。制御部70には、判断手段71が設けられている。制御部70は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。制御部70は、ウエーハ位置検出部21による検出処理のほか、搬入手段31によるウエーハWの位置合わせ処理、後述する押し付け力測定部からの出力結果に応じ、研磨手段51の制御などの各処理を実行する。
このようなCMP研磨装置1では、カセットロボット16により、カセットC内からウエーハWがウエーハ位置検出部21に搬送される。次に、搬入手段31により、保持テーブル41上にウエーハWが搬入され、ウエーハ位置検出部21の撮像結果に基づき、ウエーハWの中心が保持テーブル41の中心に一致するように位置合わせされる。そして、移動機構により、保持テーブル41に保持されたウエーハWが搬送位置からCMP研磨位置に位置づけられ、CMP研磨位置ではウエーハWが研磨加工される。ウエーハWは、搬出手段36により洗浄機構26に搬出され、洗浄機構26でウエーハWが洗浄されて、洗浄機構26からカセットCへウエーハWが搬送される。
ここで、ウエーハの真円度のバラつきや、機械精度の低下により、ウエーハ位置検出部によってウエーハの中心位置が正確に検出されない場合がある。この場合、搬入手段でウエーハが保持テーブルに保持される際に、ウエーハWの中心が、保持テーブルの中心に一致しない状態で保持される。この状態で、研磨パッドがウエーハに押し付けられてウエーハが研磨されると、保持テーブルの回転によりウエーハが面方向に変位して、ウエーハに作用する圧力が変動する。このため、研磨加工を継続すると、ウエーハに振動が発生し、研磨不良となる問題がある。そこで、本実施の形態においては、研磨手段51に押し付け力測定部91a、91b、91cを設け、研磨パッド53がウエーハWに押し付けられる押し付け力を測定することにより、保持テーブル41の中心に対するウエーハWの中心のずれを検出している。
以下、図2を参照して、研磨手段及び押し付け力測定部の構成について詳細に説明する。図2は、本実施の形態に係る押し付け力測定部が配設された研磨手段及び保持手段の断面図である。
図2に示すように、保持テーブル41はラジアルベアリング48及びスラストベアリング49を介してテーブルベース47に回転可能に支持されており、テーブルベース47は移動板43に支持されている。保持テーブル41の保持面42には保護テープTを介してウエーハWが保持される。保持テーブル41の下方には、保持テーブルモータ44が設けられている。保持テーブル41の上方には、研磨手段51が設けられている。スピンドルユニット58は押し付け力測定部91a、91b、91c(91cは不図示、図3参照)を介してスピンドルホルダ64に支持されている。スピンドルユニット58内の回転軸57の下部にはマウント52が設けられており、マウント52には保持テーブル41上のウエーハWの外径よりも大径の研磨パッド53が装着されている。
回転軸57にはスラスト板57aが形成され、ケーシング56には環状溝56aが形成されており、環状溝56aにスラスト板57aが収容される。この際、スラスト板57aと環状溝56aとの間には、高圧エアーの通り路になる僅かな隙間が設けられている。環状溝56aの内壁には高圧エアーをスラスト板57aに吹き付ける多数の噴射口56cが形成されており、各噴射口56cはケーシング56内に形成された流路56bを通じてエアー供給源59に接続されている。
環状溝56aの多数の噴射口56cからスラスト板57aの外面に高圧エアーが噴射されることで、回転軸57が高圧エアーを介してケーシング56に浮動支持される。これにより、ケーシング56にラジアルエアベアリングとスラストエアベアリングが形成され、ラジアルエアベアリングとスラストエアベアリングによって径方向及び軸方向で回転軸57が回転可能に支持される。
研磨パッド53の中心には空孔Hが開口しており、スピンドルユニット58の回転軸57の中心には貫通孔58aが延在方向(上下方向)に貫通している。貫通孔58aの下端は研磨パッド53の空孔Hに連通している。すなわち、研磨手段51は、研磨パッド53の中心を中心とした空孔Hと、回転軸を延在方向に貫通する貫通孔58aとを備えている。貫通孔58aの上部には、スラリー供給源80に接続するスラリー供給ノズル81が挿し込まれており、スラリー供給源80からスラリー供給ノズル81を介して供給されるスラリーは貫通孔58aを通って研磨面に定着する。
押し付け力測定部91a、91b、91c(91cは不図示、図3参照)は、スピンドルユニット58とスピンドルホルダ64との間に配設されており、研磨パッド53の中心を中心に等角度で3つの押し付け力測定部91a、91b、91cが配設される。押し付け力測定部91a、91b、91cとしては、例えば圧電素子が挙げられる。押し付け力測定部91a、91b、91cは、制御部70に接続されている。
保持テーブル41の回転軸と研磨パッド53の回転軸は間隔を開けて配置されており、研磨手段51が研磨送り手段61によりZ軸方向に移動されると、研磨パッド53がウエーハWに押し付けられる。ウエーハWの上面が研磨パッド53に覆われた状態で、ウエーハWは研磨される。研磨パッド53がウエーハWに押し付けられると、押し付け力測定部91a、91b、91cは、押し付け力に比例する電圧を判断手段71に出力する。
判断手段71は、3つの押し付け力測定部91a、91b、91cから出力された電圧値の変化量を検出する。3つの押し付け力測定部91a、91b、91cの電圧値が一定である場合、保持テーブル41の中心O(図3参照)とウエーハWの中心O1(図3参照)とが一致していると判断して、研磨加工を継続する。いずれかの押し付け力測定部91a、91b、91cの電圧値が周期的に変化しており、電圧値の変化量が予め設定されている閾値より大きい場合、ウエーハWに作用する圧力が変動していることにより保持テーブル41の中心に対してウエーハWの中心がずれていると判断する。この場合、判断手段71は、ウエーハWの研磨加工不良を防止するために研磨加工を中断させる。また、いずれかの押し付け力測定部91a、91b、91cの電圧値が周期的に変化しており、電圧値の変化量が閾値以下の場合、保持テーブル41の中心に対してウエーハWの中心のずれが小さいため、研磨加工の継続が可能であると判断する。
次に、図3から図5及び図7を参照して、保持テーブル41及びウエーハWの中心の位置と押し付け力との関係から、押し付け力測定部91a、91b、91cが保持テーブル41の中心に対してウエーハWの中心のずれを検出する動作について詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る保持テーブルの中心に対してウエーハの中心が一致している様子を示す図である。図4は、本実施の形態に係る保持テーブルの中心に対してウエーハの中心がずれている様子を示す図である。図5は、本実施の形態に係る保持テーブルの中心に対してウエーハの中心がずれている他の例の様子を示す図である。図3から図5の各構成の位置は、研磨パッド53がウエーハWに押し付けられ、ウエーハWが研磨されている際のZ軸方向における位置関係を示している。図7は、本実施の形態に係る電圧値と閾値との関係を示す図である。なお、図7において、横軸は時間、縦軸は電圧値をそれぞれ示している。
図3に示すように、搬入手段31により保持テーブル41にウエーハWが保持され(図1参照)、保持テーブル41の中心OとウエーハWの中心O1とが一致している。研磨パッド53の外周上方には(図2参照)、研磨パッド53の中心O2を中心に等角度で3つの押し付け力測定部91a、91b、91cが配設されている。保持テーブル41が回転するとともに、回転される搬送パッド53がZ軸方向に研磨送りされると、研磨パッド53がウエーハWに押し付けられ、ウエーハWの上面が研磨パッド53に覆われた状態でウエーハが研磨される。研磨パッド53の中央に形成されている空孔Hは、保持テーブル41の中心O及びウエーハWの中心O1の近傍に位置している。研磨パッド53によるウエーハWへの押し付け力は、空孔Hの近傍において小さくなる。
保持テーブル41の中心OとウエーハWの中心O1とが一致しているため、保持テーブル41が回転してもウエーハWは面方向に変位しない。このため、ウエーハWの中心O1と空孔Hとの距離、すなわちウエーハWの中心O1と研磨パッド53の中心O2との距離l1は所定の値に維持されて、ウエーハWが研磨される。このとき、研磨パッド53によるウエーハWへの押し付け力は、保持テーブル41が回転しても一定に維持される。すなわち、押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される押し付け力はそれぞれ、保持テーブル41が回転しても変化しない。押し付け力測定部91a、91b、91cはそれぞれ、測定した押し付け力に比例する電圧を判断手段71に出力する。判断手段71は、押し付け力が変化していないため、保持テーブル41の中心OとウエーハWの中心O1とが一致していると判断し、研磨手段51に研磨加工を継続させる。
図4に示すように、搬入手段31により保持テーブル41にウエーハWが保持された際に(図1参照)、ウエーハWの外周縁部が保持テーブル41の外周縁部側に寄せられて保持されている。このため、保持テーブル41の中心Oに対してウエーハWの中心O1がずれており、ウエーハWの中心O1は保持テーブルの中心Oの紙面左側に位置している。研磨パッド53の空孔Hは、保持テーブル41の中心Oの近傍に位置しており、ウエーハWの中心O1と研磨パッド53の中心O2とは距離l2だけ離れている。
図4の状態から保持テーブル41が180度回転すると、図5に示すように、ウエーハWは面方向に変位する。このため、ウエーハWの中心O1は保持テーブル41の中心Oの紙面右側に位置している。研磨パッド53の空孔Hは、ウエーハWの中心O1の近傍に位置しており、ウエーハWの中心O1と研磨パッド53の中心O2との距離l3は、図4の距離l2より短くなる。
このように、保持テーブル41の中心Oに対してウエーハWの中心O1がずれている場合、保持テーブル41が回転すると、ウエーハWは面方向に変位する。このため、ウエーハWの中心O1と空孔Hとの距離が変化しながら、ウエーハWが研磨される。このような変位や変化によって、研磨パッド53によるウエーハWへの押し付け力は、保持テーブル41が回転することにより周期的に変動する。すなわち、押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される押し付け力はそれぞれ、保持テーブル41の回転数に同期して周期的に変化する。
押し付け力は電圧として押し付け力測定部91a、91b、91cから判断手段71に出力される。図7は、押し付け力測定部91a、91b、91cでそれぞれ測定される電圧値を示している。ウエーハWの中心O1と空孔Hとの距離が変化することにより、図7に示すように、押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される電圧値は、周期的にバランスが崩れる(変化している)。
判断手段71は、3つの押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される押し付け力(電圧値)のうち少なくとも一つの押し付け力が保持テーブル41の回転に伴い変化しているとき、保持テーブル41の中心Oに対してウエーハWの中心O1がずれていると判断する。この際、図7の押し付け力測定部91aで測定される電圧値に示されるように、少なくとも一つの押し付け力の変化量が判断手段71に設定される閾値より大きい場合は、研磨手段51に研磨加工を中断させる。
また、押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される少なくとも一つの押し付け力が保持テーブル41の回転に伴い変化しており、いずれの押し付け力の変化量も判断手段71に設定される閾値以下となる場合は、判断手段71は保持テーブル41の中心Oに対してウエーハWの中心O1のずれが小さく、研磨加工可能であると判断する。
このように、研磨手段51に押し付け力測定部91a、91b、91cを配設し、ウエーハWの中心O1と空孔Hとの距離の変化による押し付け力の変化を測定することで、保持テーブル41の中心Oに対するウエーハWの中心O1のずれを検出することができる。また、研磨中断となるずれと、研磨が継続可能なずれを区別して検出することができる。これにより、CMP研磨装置1に撮像手段を配置して保持テーブル41の中心Oに対するウエーハWの中心O1のずれを検出するよりも、装置構成を簡易にすることができる。また、押し付け力の変化量が大きい、すなわち保持テーブル41の中心Oに対してウエーハWの中心O1の大きなずれを検出した場合は、研磨加工が中断されるため、ウエーハWの研磨不良を防止できる。
以上のように、本実施の形態に係る研磨装置1は、押し付け力測定部91a、91b、91cを用いて、研磨加工中に生じる研磨パッド53のウエーハWに対する押し付け力の変化を測定し、保持テーブル41の回転数に同期した周期的な変化を検出することにより保持テーブル41の中心Oに対するウエーハWの中心O1のずれを検出できる。ずれを検出した際は研磨加工が中断されるため、ウエーハWの研磨不良を防止できる。
上記実施の形態においては、押し付け力測定部91a、91b、91cを研磨手段51に配設する構成としたが、押し付け力測定部は保持手段40に配設されていてもよい。図6は、変形例に係る押し付け力測定部が配設された保持手段及び研磨手段の断面図である。図6に示すように、3つの押し付け力測定部95a、95b(1つは不図示)は、テーブルベース47と移動板43との間に配置され、保持テーブル41の中心を中心に等角度で配設されている。研磨パッド53がウエーハWに押し付けられると、移動板43上で保持テーブル41が上方から押し付けられ、押し付け力測定部95a、95bは押し付け力に比例する電圧を判断手段71に出力する。
また、上記実施の形態においては、判断手段71は、押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される電圧値と閾値を比較して研磨加工の中断を判断する構成としたが、これに限定されない。判断手段71は、押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される電圧値をフーリエ変換した値と閾値を比較する構成としてもよい。図8は、変形例に係る振幅と閾値との関係を示す図である。なお、図8において、横軸は周波数、縦軸は振幅をそれぞれ示している。図8は、図7の押し付け力測定部91aで測定された電圧値をフーリエ変換した結果を示している。図8に示すように、押し付け力測定部91aで測定された電圧値をフーリエ変換することにより、電圧値は例えば2つの周波数成分に分けられる。このように、判断手段71はフーリエ変換した値に閾値を設定して、研磨加工の中断を判断する構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、3つの押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される押し付け力のうち少なくとも一つの押し付け力が保持テーブル41の回転に伴い変化しているとき、保持テーブル41の中心Oに対してウエーハWの中心O1がずれていると判断する構成としたが、これに限定されない。所定の閾値を設定し研磨不良を防止できれば、3つの押し付け力測定部91a、91b、91cの押し付け力の合算値の変化量により、保持テーブル41の中心に対するウエーハWの中心のずれを検出してもよい。また、3つの押し付け力測定部91a、91b、91cで測定される押し付け力のうち、変化量の大きい少なくとも二つあるいは全ての押し付け力(合算値の変化量)を用いてもよいし、3つの押し付け力測定部91a、91b、91cのうち最も大きい変化量が所定の閾値を超えたら研磨加工を中断させてもよい。
また、上記実施の形態においては、押し付け力測定部91a、91b、91cをCMP研磨装置に配設する構成としたが、押し付け力測定部91a、91b、91cは乾式研磨装置に配設される構成としてもよい。この場合、図2において貫通孔58aの上部に挿し込まれるノズル86にはスラリー供給源80の代わりにエアー供給源85が接続される。
また、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記各実施の形態を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
本実施の形態では、本発明をウエーハを研磨加工する研磨装置に適用した構成について説明したが、保持テーブルの中心に対するウエーハの中心のずれを防止する他の装置に適用することも可能である。