以下、本発明に係る、シート、及び、パッド振動特性の調整方法、の実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
図1は、本発明に係るシートの一実施形態としての車両用シート1を示す図である。図2、図3は、車両用シート1の着座部1aの縦断面図である。本実施形態では、本発明に係るシートの一例として車両用シート1(以下、単に「シート1」と記載する。)について例示説明するが、本発明に係るシートは、車両用シートに限らず、別のシートとしてもよい。
図1に示すように、シート1は、着座部1aと、背もたれ部1bと、を備えている。着座部1aは、シート1を使用するシート使用者を、鉛直方向の下方から支持する。また、シート使用者は、着座部1aに着座した状態で、背もたれ部1bに寄りかかることができる。つまり、背もたれ部1bは、着座部1aに着座しているシート使用者の背中を支持可能である。
また、シート1は、硬度の異なる第1発泡体3a及び第2発泡体3bを含むパッド2を備えている。具体的に、本実施形態のシート1は、着座部1aに含まれるクッションパッドと、背もたれ部1bに含まれるバックパッドと、を含んで構成されるシートパッドを備えている。そして、本実施形態のパッド2は、シートパッドのうち着座部1aに含まれるクッションパッドにより構成されている。つまり、本実施形態では、第1発泡体3a及び第2発泡体3bは、クッションパッドに配置されている。
なお、クッションパッドに加えて又は代えて、シートパッドのうち背もたれ部1bに含まれるバックパッドが、硬度の異なる第1発泡体3a及び第2発泡体3bを含む構成としてもよい。つまり、硬度の異なる第1発泡体及び第2発泡体を含むパッドが、バックパッドにより構成されていてもよい。
ここで、第1発泡体3a及び第2発泡体3bの「硬度」とは、例えば、JIS K6401(2011年版)において引用されるJIS K6400−2の「試験の種類」で規定されている「D法」に基づいて測定される硬度である。
図2、図3に示すように、シート1は、上述のパッド2に加えて、第1発泡体3a及び第2発泡体3bの一方の発泡体の体積を調整可能な体積調整機構4を備えている。詳細は後述するが、本実施形態の体積調整機構4は、第2発泡体3bの体積を調整可能な構成である。
体積調整機構4により、パッド2の第2発泡体3bの体積を調整することによって、第2発泡体3bを含むパッド2の静ばね定数、ひいては動ばね定数を変化させることができる。これにより、パッド2自体を変更しなくても、パッド2の振動特性の1つとしての共振周波数を変化させ、調整することができる。
図3は、パッド2の第2発泡体3bを、体積調整機構4により、図2に示す自然状態よりも圧縮した状態を示している。図3に示すように、パッド2の第2発泡体3bを圧縮することにより、第2発泡体3bの静ばね定数、ひいては動ばね定数を大きくすることができ、その結果、パッド2としてのクッションパッド全体の静ばね定数、ひいては動ばね定数を大きくすることができる。これにより、第2発泡体3bを体積調整機構4により圧縮しない場合と比較して、共振周波数を高周波数側に移動させることができる。逆に、パッド2の第2発泡体3bの圧縮を解除することにより、第2発泡体3bの静ばね定数、ひいては動ばね定数を小さくすることができ、その結果、パッド2としてのクッションパッド全体の静ばね定数、ひいては動ばね定数を小さくすることができる。これにより、第2発泡体3bを体積調整機構4により圧縮している場合と比較して、共振周波数を低周波数側に移動させることができる。
以下、本実施形態のシート1の更なる詳細について説明する。
本実施形態のシート1において、第2発泡体3bは、第1発泡体3aよりも硬度が小さい。そして、図2、図3に示すように、本実施形態の体積調整機構4は、第2発泡体3bの体積を調整可能に構成されている。
なお、体積調整機構4を、第2発泡体3bよりも硬度が大きい第1発泡体3aの体積を調整可能な構成としてもよい。また、体積調整機構4を、第1発泡体3a及び第2発泡体3bの両方の体積を調整可能な構成としてもよい。つまり、体積調整機構4は、硬度の異なる第1発泡体3a及び第2発泡体3bの少なくとも一方の発泡体の体積を調整可能な構成であればよい。但し、本実施形態のように、硬度の小さい第2発泡体3bの体積を調整可能な体積調整機構4とすることが好ましい。体積調整機構4により、相対的に硬度の小さい第2発泡体3bの体積を調整する構成とすれば、相対的に硬度の大きい第1発泡体3aの体積を調整する構成と比較して、体積変化に対するパッド2の振動特性の変化量を小さくすることができるため、パッド2の振動特性を細かく微調整し易くなる。
また、体積調整機構4を、第1発泡体3a及び第2発泡体3bそれぞれの体積を独立して調整可能な構成とすれば、第1発泡体3aの体積調整により、パッド2の振動特性の大きな変動を実現できると共に、第2発泡体3bの体積調整により、パッド2の振動特性の細かい微調整を実現することができる。
更に、本実施形態の体積調整機構4は、パッド2において外部からの荷重を支持する荷重支持面5と略直交する面直交方向Aに向かって、第2発泡体3bの体積を調整可能である。上述したように、本実施形態のパッド2は、クッションパッドにより構成されている。そのため、本実施形態において、パッド2の荷重支持面5は、クッションパッドの鉛直方向の上側の上面により構成されている。より具体的に、本実施形態の荷重支持面5は、パッド2の後述するカバー部材13(図2等参照)の表面により構成されている。したがって、本実施形態の体積調整機構4は、パッド2としてのクッションパッドの上面と略直交する面直交方向Aに向かって、第2発泡体3bの体積を調整可能である。より具体的に、本実施形態において、第2発泡体3bの位置での荷重支持面5の面直交方向Aは鉛直方向である。そのため、本実施形態の体積調整機構4は、鉛直方向に向かって、第2発泡体3bの体積を調整可能である。
なお、本実施形態の荷重支持面5は、パッド2がクッションパッドであるため、クッションパッドの上面により構成されているが、パッド2がバックパッドである場合は、パッド2の荷重支持面5は、バックパッドの背もたれ面により構成される。
ここで、体積調整機構4は、第2発泡体3bの体積を、荷重支持面5に沿って調整する構成としてもよい。但し、本実施形態のように、第2発泡体3bの体積を、荷重支持面5と略直交する面直交方向Aで調整可能な体積調整機構4とすることが好ましい。このような構成とすれば、パッド2の荷重支持面5側とは反対の裏面側に、体積調整機構4を配置し易くなる。
また、図2、図3に示すように、本実施形態の第1発泡体3a及び第2発泡体3bは、荷重支持面5の延在方向Bに隣接して配置されている。より具体的に、本実施形態の第1発泡体3a及び第2発泡体3bは、延在方向Bにおいて、接触した状態で隣接して配置されている。なお、「荷重支持面の延在方向」とは、荷重支持面に沿う方向を意味する。したがって、本実施形態の荷重支持面5の延在方向Bは、パッド2としてのクッションパッドの上面に沿う方向である。また、図2、図3に示すように、本実施形態の第1発泡体3a及び第2発泡体3bは、延在方向Bのうち、略水平に延在する領域において、略水平方向に隣接して配置されている。本実施形態のパッド2の詳細な構成については後述する。
本実施形態では、上述したように、パッド2としてのクッションパッドが、第1発泡体3a及び第2発泡体3bを備えている。図4は、荷重支持面5の正面視としての、パッド2としてのクッションパッドを鉛直方向の上側から見た上面視(以下、単に「上面視」と記載する。)を示す図である。図4では、説明の便宜上、後述するカバー部材13(図2等参照)を取り除いた状態のパッド2を示している。また、図4では、説明の便宜上、第2発泡体3bの位置を破線により示している。図4に示すように、第2発泡体3bの周囲は、上面視において、第1発泡体3aに囲まれている。より具体的に、本実施形態の第2発泡体3bは、直方体又は立方体の外形を有している。そして、2つの第2発泡体3bが、シート使用者の尻下の位置に対応するように、上面視の略中央に配置されている。そして、第1発泡体3aは、上面視において、2つの第2発泡体3bの間、及び、2つの第2発泡体3bの周囲、に配置されている。このような配置とし、第2発泡体3bの体積を調整することで、第1発泡体3aが上面視の略中央に配置される構成と比較して、パッド2としてのクッションパッドの振動特性の調整に加えて、シート使用者が特に尻下の位置で感じ易いシート1(図1等参照)の座り心地を調整し易くすることができる。
なお、本実施形態の図4に示す第1発泡体3a及び第2発泡体3bの配置関係を逆にし、略中央に配置された硬度の大きい第1発泡体3aの体積を調整する構成としてもよい。
更に、図2、図3に示すように、本実施形態の第2発泡体3bの面直交方向Aの荷重支持面5側は、第1発泡体3aに覆われている。そのため、第2発泡体3bの面直交方向Aの荷重支持面5側が第1発泡体3aに覆われていない構成と比較して、パッド2の荷重支持面5としての、クッションパッドの上面における、第1発泡体3a及び第2発泡体3bの触感の相違による違和感や異物感を、シート使用者に与え難くすることができる。なお、本実施形態のパッド2としてのクッションパッドに含まれる発泡体は、第1発泡体3a及び第2発泡体3bのみである。
また、本実施形態の体積調整機構4は、第2発泡体3bを、面直交方向Aの荷重支持面5側とは反対側から、荷重支持面5側に向かって押圧し、第1発泡体3aとの間で圧縮することができる。このようにすることで、荷重支持面5における、第1発泡体3a及び第2発泡体3bの触感の相違による違和感や異物感を、シート使用者に与え難くした状態で、パッド2の振動特性を容易に調整することができる。より具体的に、本実施形態では、クッションパッドの上面における、第1発泡体3a及び第2発泡体3bの触感の相違による違和感や異物感を、シート使用者に与え難くした状態で、クッションパッドの振動特性を容易に調整することができる。
なお、本実施形態の第1発泡体3a及び第2発泡体3bは、延在方向Bにおいて、接触した状態で隣接して配置されているため、体積調整機構4により第2発泡体3bを面直交方向Aに圧縮する際に、周囲の第1発泡体3aの存在により、第2発泡体3bが延在方向Bに座屈し難く、面直交方向Aに圧縮され易い。これにより、第2発泡体3bの静ばね定数及び動ばね定数を、より確実に調整することができる。その結果、パッド2の振動特性についても、より確実に調整することが可能となる。
次に、本実施形態のシート1の具体的な構成例について説明する。
図2、図3に示すように、本実施形態のシート1は、上述のパッド2に加えて、フレーム6と、押圧部材7と、を備えている。なお、詳細は後述するが、押圧部材7は、上述の体積調整機構4を構成している。
本実施形態のパッド2は、上述したように、シート使用者が着座するクッションパッドである。本実施形態のパッド2は、メインパッド部材11と、サイドパッド部材12と、メインパッド部材11及びサイドパッド部材12を覆うカバー部材13と、を備えている。
メインパッド部材11は、パッド2の上面視(図4参照)で、パッド2の中央の位置に配置されている。つまり、メインパッド部材11は、着座しているシート使用者の尻及び大腿部の鉛直方向の下方に位置するように配置されている。そして、本実施形態のメインパッド部材11は、第1発泡体3a、及び、この第1発泡体3aよりも硬度の小さい第2発泡体3b、により構成されている。
図2、図3、図4に示すように、本実施形態のメインパッド部材11の一部を構成する第1発泡体3aは、扁平形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向と略一致している。また、本実施形態のメインパッド部材11の一部を構成する第1発泡体3aは、鉛直方向の上方又は下方から見た場合、略矩形状の外形を有している(図1、図4参照)。更に、本実施形態のメインパッド部材11の一部を構成する第1発泡体3aの鉛直方向の下側の面には、直方体又は立方体の形状を有する第2発泡体3bを収容可能な収容凹部3a1が形成されている。なお、本実施形態のメインパッド部材11の一部を構成する第1発泡体3aには、2つの第2発泡体3bそれぞれを収容可能な2つ収容凹部3a1が形成されている。
図2、図3、図4に示すように、サイドパッド部材12は、メインパッド部材11の左右両側にそれぞれ隣接して配置されている。ここで、「左右」とは、シート1を、着座部1aを挟んで背もたれ部1b(図1参照)と対向するように正面側から見た場合の、左右方向Cを意味する。サイドパッド部材12は、第1発泡体3aにより構成されている。
本実施形態の第1発泡体3a及び第2発泡体3bは、硬度の異なるポリウレタンフォームにより形成されているが、ポリウレタンフォームに限らず、別の軟質の発泡合成樹脂から形成してもよい。但し、ポリウレタンフォームは汎用性が高いため、ポリウレタンフォームを利用してパッド2の振動特性を所望の状態に調整することが好ましい。そのため、メインパッド部材11及びサイドパッド部材12の第1発泡体3a、並びに、メインパッド部材11の第2発泡体3b、についても、本実施形態のように、硬度の異なるポリウレタンフォームにより形成されていることが好ましい。
図2、図3に示すように、本実施形態のサイドパッド部材12は、メインパッド部材11よりも鉛直方向の最大厚みが厚い。そして、本実施形態のサイドパッド部材12は、メインパッド部材11の左右両側で、メインパッド部材11よりも鉛直方向の上方に突出するように配置されている。このようなサイドパッド部材12を設けることにより、メインパッド部材11の鉛直方向の上方の位置で着座しているシート使用者が、慣性力等により左右に移動することを抑制することができ、シート使用者の着座時の位置安定性を高めることができる。
カバー部材13は、メインパッド部材11及びサイドパッド部材12を覆っている。カバー部材13は、例えば布製、革製など、通気性を有する材料から形成することができる。
フレーム6は、パッド2を支持している。具体的に、本実施形態のフレーム6は、パッド2のメインパッド部材11を鉛直方向の下方から支持しており、シート使用者の体重を、メインパッド部材11を介して、鉛直方向の下方から支持することができる。フレーム6は、例えば、鋼材により形成することができ、シート使用者の体重によって変形しない高い強度を有している。そのため、シート使用者がシート1の着座部1a(図1参照)に着座すると、パッド2としてのクッションパッドのメインパッド部材11が、シート使用者とフレーム6との間で圧縮変形した状態となる。
押圧部材7は、フレーム6に対して移動可能に取り付けられている。具体的に、本実施形態の押圧部材7は、フレーム6に対して鉛直方向に移動可能に取り付けられている。押圧部材7は、フレーム6に対して鉛直方向に移動して、パッド2の第2発泡体3bを鉛直方向の下方から上方に押圧することにより、第2発泡体3bを圧縮可能である。つまり、本実施形態の体積調整機構4は、押圧部材7により構成されている。
より具体的に、本実施形態の押圧部材7は、鉛直方向に移動することで、メインパッド部材11のうち、第1発泡体3aの収容凹部3a1に収容されている第2発泡体3bを、鉛直方向の下方から上方に向かって押圧することができる。メインパッド部材11の第2発泡体3bは、押圧部材7によって鉛直方向の下方から上方に押圧されることにより、収容凹部3a1に収容された状態のまま、メインパッド部材11の第1発泡体3aとの間で圧縮変形する。
ここで、本実施形態のフレーム6は、メインパッド部材11を構成する第1発泡体3a及び第2発泡体3bのうち、硬度の大きい第1発泡体3aを下方から直接的に支持している。また、本実施形態のフレーム6は、メインパッド部材11を構成する第1発泡体3a及び第2発泡体3bのうち、硬度の小さい第2発泡体3bを、フレーム6に対して移動可能に取り付けられた押圧部材7を介して、間接的に支持している。
そのため、シート使用者がシート1の着座部1a(図1参照)に着座すると、シート使用者の体重によって、パッド2としてのクッションパッドにおけるメインパッド部材11の第1発泡体3aが、シート使用者とフレーム6との間で圧縮変形する。
また、シート使用者がシート1の着座部1a(図1参照)に着座すると、シート使用者の体重によって、メインパッド部材11の第2発泡体3bは、シート使用者と押圧部材7との間、より具体的には、第1発泡体3aと押圧部材7との間、で圧縮変形する。換言すれば、本実施形態の押圧部材7は、シート使用者が着座部1aに着座する動作に連動して第2発泡体3bを圧縮するような位置に配置されている。
このように、本実施形態では、シート使用者の体重を、メインパッド部材11における第1発泡体3a及び第2発泡体3bを介してフレーム6により支持することができる。
但し、シート使用者の体重は、主に、硬度の大きい第1発泡体3aを介してフレーム6により支持されており、第2発泡体3b及び押圧部材7は、主に、パッド2の振動特性の調整に利用される。
具体的には、本実施形態の押圧部材7により、シート使用者が着座する際の第2発泡体3bの圧縮量を調整することで、第1発泡体3a及び第2発泡体3bを含むパッド2の共振周波数を調整することができる。また、本実施形態の押圧部材7を、シート使用者が着座した後、フレーム6に対して更に移動させることにより、第2発泡体3bの圧縮状態を再調整することができ、パッド2の共振周波数再調整することができる。
なお、押圧部材7は、シート使用者が着座部1aに着座する際に、第2発泡体3bを圧縮しないように配置されていてもよい。かかる場合は、シート使用者が着座部1aに着座した後、押圧部材7をフレーム6に対して移動させることにより、第2発泡体3bの圧縮状態を調整する。これにより、パッド2の振動特性の1つである共振周波数を調整することができる。
このように、パッド2を支持するフレーム6に対して移動可能に取り付けられた押圧部材7を用いて第2発泡体3bの体積を調整する構成とすれば、簡易な構成で体積調整機構4を実現することができる。
なお、上述したように、本実施形態のシート1では、シート使用者の体重が、パッド2の第1発泡体3a及び第2発泡体3bを介してフレーム6により支持される構成であるが、シート使用者の体重が、パッド2における硬度の大きい第1発泡体3aを介してのみ、フレーム6により支持される構成としてもよい。換言すれば、第2発泡体3bが、シート使用者の体重の支持に全く利用されず、第1発泡体3a及び第2発泡体3bを含むパッド2全体の静ばね定数、ひいては動ばね定数の調整にのみ利用される構成、すなわち、パッド2の振動特性の調整にのみ利用される構成としてもよい。すなわち、本実施形態のパッド2の第2発泡体3bは、着座したシート使用者の体重の負荷によって圧縮され、シート使用者の体重の一部を支持する構成であるが、体積調整機構4が、パッド2の第2発泡体3bの体積を、シート使用者の体重の負荷とは無関係に独立して調整可能であり、かつ、第2発泡体3bの体積の調整によりパッド2全体の静ばね定数、ひいては動ばね定数を調整可能な構成であれば、着座したシート使用者の体重の支持に全く利用されない第2発泡体3bとしてもよい。
このように、メインパッド部材11の第2発泡体3bを圧縮変形させることで、第2発泡体3bの静ばね定数及び動ばね定数のみならず、この第2発泡体3bを含むパッド2全体の静ばね定数及び動ばね定数を大きくすることができ、その結果、パッド2の振動特性の1つであるパッド2の共振周波数を高周波数側に変化させることができる。
逆に、メインパッド部材11の第2発泡体3bの圧縮状態を緩和することで、第2発泡体3bの静ばね定数及び動ばね定数のみならず、この第2発泡体3bを含むパッド2全体の静ばね定数及び動ばね定数を小さくすることができ、その結果、パッド2の振動特性の1つであるパッド2の共振周波数を低周波数側に変化させることができる。
ここで、本実施形態の体積調整機構4は、パッド2としてのクッションパッドのメインパッド部材11における第2発泡体3bの体積を、自然状態の体積に対する割合で、所定の範囲内で調整可能である。このような構成とすれば、パッド2の共振周波数を、所定の範囲内で任意に調整可能とすることができる。上述の所定の範囲の上限値及び下限値は、例えば、自然状態の体積に対する割合で40%〜99%の中から設定することができる。
但し、体積調整機構4による第2発泡体3bの体積の調整タイミングは特に限定されない。つまり、シート1の製造時に調整されてもよく、使用時にシート使用者により調整されてもよい。製造時の調整としては、例えば、所望のパッド振動特性を得るための微調整が挙げられる。また、使用時の調整としては、例えば、シート使用者が個人的な好みに応じて自ら実行する手動又は電動での調整や、後述する制御部15及び荷重センサ16がシート使用者の体重に応じて一定のパッド振動特性を実現するように圧縮状態を自動で制御する調整(図1参照)など、各種調整が挙げられる。
また、本実施形態では、第2発泡体3bを、自然状態(図2参照)から圧縮状態(図3参照)に変化させることにより、第2発泡体3bの静ばね定数、ひいては動ばね定数を大きくし、パッド2の共振周波数を高周波数側に移動させる例を示しているが、この構成に限られない。例えば、第2発泡体3bを異なる圧縮状態に変化させることにより、第2発泡体3bの静ばね定数、ひいては動ばね定数を変化させてもよい。具体的に、第2発泡体3bの圧縮状態として圧縮量が異なる3つ以上の圧縮状態を実現可能な構成とする。例えば、第1圧縮状態と、この第1圧縮状態よりも圧縮量が小さい第2圧縮状態と、この第2圧縮状態よりも更に圧縮量が小さい第3圧縮状態と、の3つの圧縮状態を実現可能な構成とする。このようにすれば、例えば、第2圧縮状態から第1圧縮状態とすることで静ばね定数、ひいては動ばね定数を大きくする調整が可能となる。更に、第2圧縮状態から第3圧縮状態とすることで静ばね定数、ひいては動ばね定数を小さくする調整も可能となる。また、第2発泡体3bを、自然状態から伸長させることにより、第2発泡体3bの静ばね定数、ひいては動ばね定数を変化させてもよい。但し、本実施形態のように、第2発泡体3bの圧縮を利用して静ばね定数及び動ばね定数を変化させることが好ましい。このようにすれば、体積調整機構4の構成を、より簡素化し易い。
なお、図2、図3に示すように、本実施形態のパッド2としてのクッションパッドでは、第2発泡体3bの鉛直方向の上方が、第1発泡体3aに覆われているが、第2発泡体3bの鉛直方向の上方が、第1発泡体3aに覆われていない構成としてもよい。図5、図6は、パッド2の変形例としてのパッド102を示す図である。具体的に、図5では、パッド102としてのクッションパッドの縦断面図であり、図6は、パッド102としてのクッションパッドの上面視を示す上面図である。図5に示すように、パッド102は、硬度の異なる第1発泡体103a及び第2発泡体103bにより構成されており、硬度の大きい第1発泡体103a及び硬度の小さい第2発泡体103bが、荷重支持面105の延在方向Bに隣接して配置されており、第1発泡体103a及び第2発泡体103bは、面直交方向Aに重なっていない。
但し、図2、図3に示すパッド2のように、第2発泡体3bの面直交方向Aの荷重支持面5側は、第1発泡体3aに覆われていることが好ましい。このようにすれば、上述したように、パッド2の荷重支持面5としての、クッションパッドの上面における、第1発泡体3a及び第2発泡体3bの触感の相違による違和感や異物感を、シート使用者に与え難くすることができる。
また、図6に示す上面視における第2発泡体103bの位置は、図4に示す上面視における第2発泡体3bの位置(図4の破線参照)と同様である。
また、図7は、パッド2の別の変形例としてのパッド202を示す図である。具体的に、図7は、パッド202としてのクッションパッドの上面視を示す上面図である。更に、図8は、パッド2の更に別の変形例としてのパッド302を示す図である。具体的に、図8は、パッド302としてのクッションパッドの上面視を示す上面図である。なお、図7、図8では、説明の便宜上、カバー部材13(図2等参照)を取り除いた状態のパッド202及びパッド302を示している。
図7に示すパッド202としてのクッションパッドのメインパッド部材11は、直方体又は立方体の形状を有する複数の第1発泡体203aと、直方体又は立方体の形状を有する複数の第2発泡体203bと、を備えている。そして、図7に示す例では、メインパッド部材11における第1発泡体203a及び第2発泡体203bが、左右方向Cと、水平方向のうち左右方向Cに直交する方向と、の両方向において、交互に配置されている。なお、図7に示す上面視において、メインパッド部材11における各第1発泡体203aの上面、及び、メインパッド部材11における各第2発泡体203bの上面、は同一寸法の正方形の形状を有している。
図8に示すパッド302としてのクッションパッドのメインパッド部材11は、直方体又は立方体の形状を有する複数の第1発泡体303aと、直方体又は立方体の形状を有する複数の第2発泡体303bと、を備えている。そして、図8に示す上面視において、メインパッド部材11における全ての第2発泡体303bが、中央に集中して配置され、メインパッド部材11における複数の第1発泡体303aが、第2発泡体303bの周囲を取り囲むように配置されている。なお、図8に示すメインパッド部材11において、第1発泡体303aの周囲には、例えば、第1発泡体303a及び第2発泡体303bよりも硬度の大きい第3発泡体303cが配置されている。
図4、図6、図7、図8に示すように、パッドを構成する硬度の異なる第1発泡体及び第2発泡体は、上面視において、様々なパターンで配置することができ、その配置パターンは特に限定されない。但し、図4、図6、図8に示すように、シート使用者の尻下の位置に対応し易いクッションパッドの中央の位置に、硬度の小さい第2発泡体を配置することで、シート使用者が特に尻下の位置で感じ易い座り心地を調整し易くすることができる。
なお、図7の示すメインパッド部材11における第2発泡体203bの鉛直方向の上方は、第1発泡体203aに覆われていない。また、図8に示すメインパッド部材11における第2発泡体303bの鉛直方向の上方は、第1発泡体303aに覆われていない。図5〜図8に示すような、第2発泡体の鉛直方向の上方が第1発泡体に覆われていない構成とする場合には、第2発泡体を第1発泡体よりも荷重支持面側に突出させる構成とし、第2発泡体の突出量を調整する調整機構を設けてもよい。かかる場合は、調整機構の突出量の調整により、シート使用者が着座する際の第2発泡体の圧縮量を調整することができる。そのため、調整機構が、第2発泡体の体積を調整可能な体積調整機構を構成する。
次に、硬度の異なる第1発泡体及び第2発泡体を備えるパッドに関して、硬度の小さい第2発泡体の圧縮量を変化させることで、パッド全体の振動特性を調整可能であることを確認するために行った確認試験について説明する。
図9は、この試験で用いた試験体Xを示す図である。試験体Xは、8個の立方体(100mm×100mm×100mm)の第1ポリウレタンフォームY1と、この第1ポリウレタンフォームY1と同一の形状を有する、8個の立方体の第2ポリウレタンフォームY2と、を備えている。第1ポリウレタンフォームY1は、第2ポリウレタンフォームY2よりも硬度が大きい。また、第1ポリウレタンフォームY1及び第2ポリウレタンフォームY2は、上面視で外縁が正方形(400mm×400mm)となるように、市松模様状に配置されている。換言すれば、試験体Xは、図7に示すパッド202の第1発泡体203a及び第2発泡体203bと同様の上面視となる。また、上面視で正方形になるように配置された8個の第1ポリウレタンフォームY1及び8個の第2ポリウレタンフォームY2から構成される試験体Xは、枠体Zにより取り囲まれており、第1ポリウレタンフォームY1及び第2ポリウレタンフォームY2の水平方向の変形が規制されている。この試験では、第1ポリウレタンフォームY1に対する第2ポリウレタンフォームY2の上面側へ底上げ量Pのみを異ならせた3つの試験体Xを用意し、これら3つの試験体Xそれぞれの上面に、50kgの錘を載せることで、シート使用者の体重がかかった状態を模擬した上で、振動試験を行った。なお、底上げされた第2ポリウレタンフォームY2の下面は、底上げ状態を維持する底上げ冶具により支持されている。また、3つの試験体Xそれぞれにおいて、第2ポリウレタンフォームY2は、50kgの錘を載せた状態で、底上げ量Pの全てが圧縮された状態となる。つまり、3つの試験体Xそれぞれにおいて、50kgの錘によって、第1ポリウレタンフォームY1も圧縮された状態になっている。以下、3つの試験体Xのうち、底上げされていない、底上げ量Pが0mmの試験体を「第1試験体X1」と記載し、底上げ量Pが30mmの試験体を「第2試験体X2」と記載し、底上げ量Pが50mmの試験体を「第3試験体X3」と記載する。
図10は、第1試験体X1(図10では「X1」と表記)、第2試験体X2(図10では「X2」と表記)、及び、第3試験体X3(図10では「X3」と表記)についての試験結果を示すグラフである。具体的に、図10は、第1ポリウレタンフォームY1及び第2ポリウレタンフォームY2で構成される各試験体X1〜X3の共振周波数及び振動伝達率を示している。各グラフでピークを示す周波数が共振周波数である。図10に示すように、底上げ量Pの大きい方から順に、共振周波数が高いことがわかる。つまり、第2ポリウレタンフォームY2の圧縮量を大きくし、第2ポリウレタンフォームY2の静ばね定数及び動ばね定数を大きくすることで、第1ポリウレタンフォームY1及び第2ポリウレタンフォームY2により構成される試験体Xの全体の静ばね定数及び動ばね定数を大きくでき、その結果、共振周波数を高周波数側に移動させることができることがわかる。
逆に言えば、図10に示すように、底上げ量Pの小さい方から順に、共振周波数が低いことがわかる。つまり、第2ポリウレタンフォームY2の圧縮量を小さくし、第2ポリウレタンフォームY2の静ばね定数及び動ばね定数を小さくすることで、第1ポリウレタンフォームY1及び第2ポリウレタンフォームY2により構成される試験体Xの全体の静ばね定数及び動ばね定数を小さくでき、その結果、共振周波数を低周波数側に移動させることができることがわかる。
以上の試験結果から、硬度の異なる第1発泡体3a及び第2発泡体3bを含むパッド2と、第1発泡体3a及び第2発泡体3bの少なくとも一方の発泡体の体積を調整可能な体積調整機構4と、を備えるシート1とすれば、シート1の製造時や使用時等において、パッド2自体を変更することなく、パッド2の振動特性の1つである共振周波数を調整することができる。例えば、製造時に調整する場合は、パッド2の第1発泡体3a自体及び第2発泡体3b自体を変えることなく、同一の第1発泡体3a及び第2発泡体3bを用いて共振周波数を微調整することができる。また、使用時に調整する場合は、例えば搭乗者などのシート使用者の個人差に合わせた共振周波数の調整を実行することができる。
最後に、本実施形態のシート1が、搭乗者の体重に応じて自動でパッド振動特性としての共振周波数を調整する制御フローを例示説明する。図11は、シート1が、搭乗者の体重に応じて自動で共振周波数を調整する制御フローの一例である。図1に示すように、シート1は、制御部15及び荷重センサ16を備えている。荷重センサ16は、シート使用者が着座部1aに着座することで、搭乗者の体重情報を検出する(体重検出工程S1)。制御部15は、荷重センサ16の検出した体重情報に基づき、体積調整機構4を駆動し、第2発泡体3bの体積を調整し、パッド2の共振周波数を調整する(自動調整工程S2)。制御部15は、一例として、パッド2の共振周波数が、車両供給者、又は、搭乗者などのシート使用者、により予め設定された、体重差によらない共振周波数となるように、第2発泡体3bの体積を調整する。
なお、図11に示すように、制御部15が振動特性の調整を完了した後で、手動又は電動により、シート使用者の好みに応じて、第2発泡体3bの体積を調整してもよい(搭乗者調整工程S3)。
本発明に係るシート、及び、パッド振動特性の調整方法は、上述した実施形態の具体的な構成及び工程に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。例えば、上述したパッド2(図1等参照)、102(図5等参照)及び202(図7参照)に含まれる発泡体は、硬度の異なる2種類の発泡体により構成されているが、硬度の異なる2種類の発泡体を含むものであればよく、例えば、図8に示すパッド302のように、硬度の異なる3種類以上の発泡体を含む構成としてもよい。また、メインパッド部材11を構成する発泡体と、サイドパッド部材12を構成する発泡体と、を硬度の異なる別の発泡体で構成してもよい。
また、上述した第2発泡体3b、103b、203b及び303bは、いずれも直方体又は立方体の外形を有するものであるが、この形状に限られるものではなく、例えば、両底面を鉛直方向に向けて配置した円柱状や、テーパ状の側面を有し、両底面を鉛直方向に向けて配置した、例えば円錐台状等の錐台状など、別の外形を有する第2発泡体としてもよい。