本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、特殊信号発光機における発光を、簡易かつ確実に検出できる特殊信号検出装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための特殊信号検出装置は、連続画像を撮像する撮像部と、撮像部により取得された連続画像について、輝度についての周波数に対する振幅データを抽出する画像処理部と、画像処理部での抽出結果に基づき所定周期で点滅する特殊信号発光機における発光の有無を判断する判断部とを備える。
上記特殊信号検出装置では、撮像部により取得された連続画像について、輝度についての周波数に対する振幅データを抽出することで、撮像された画像中において、特殊信号発光機での所定周期で点滅する発光の動作が含まれているか否かを的確に捉えることができる。この場合、周波数に基づいて判断をすることで、特に、撮像時における逆光や映像の揺れの影響等を吸収できるので、外部環境に対してロバスト性の高いものにできる。また、この場合、撮像対象となる特殊信号発光機については、例えば赤外線発光器を取り付けたり、断線を検出するための構造を設けたりする必要が無く、簡易な構成で、確実に所望の検出を行うことができる。
本発明の具体的な側面では、画像処理部は、撮像部で撮像される画像全体に対してフーリエ変換処理してデータを抽出する。この場合、画像全体に対してフーリエ変換処理を施すことで、特殊信号発光機の部分画像の切り出しといった処理を省略でき、処理の簡易化が図れる。
本発明の別の側面では、撮像部は、特殊信号発光機で発する光の波長帯域に対応する透過特性を有する波長フィルターを備える。この場合、対象とすべき光の波長帯域の抽出を顕著にできる。
本発明のさらに別の側面では、撮像部は、移動体に設置されて進行方向前方を撮像する。この場合、例えば列車の車両等の移動体上において、進行方向前方に設置されている特殊信号発光機における発光の有無を検出できる。
本発明のさらに別の側面では、撮像部は、特殊信号発光機よりも進行方向手前側の所定の位置に移動体が到達すると、撮像を開始する。この場合、進行方向前方側において発生した異常事態を事前に捉えることができる。
本発明のさらに別の側面では、撮像部は、特殊信号発光機の位置に移動体が到達すると、撮像を終了する。この場合、当該特殊信号発光機に対する検出を終了し、次の特殊信号発光機についての対応が可能となる。
本発明のさらに別の側面では、移動体は、特殊信号発光機が設置される専用走行路を走行する車両である。この場合、専用走行路を走行する車両(例えば列車やバス)において、特殊信号発光機による異常事態の発生の連絡を的確に捉えることができる。
本発明のさらに別の側面では、判断部の判断結果において特殊信号発光機における発光有りと判断された場合に、報知を行う報知部を備える。この場合、特殊信号発光機の動作に基づく異常事態発生について、特殊信号検出装置の側において、特殊信号発光機による伝達とは別の方法で報知を行うことができる。
本発明のさらに別の側面では、報知部は、警報を発する音声部である。この場合、特殊信号発光機の動作に基づく異常事態発生について、特殊信号検出装置の側において警報による音声での報知ができる。
以下、図1等を参照して、本発明の一実施形態に係る特殊信号検出装置についての一例を説明する。図1は、本実施形態に係る特殊信号検出装置100の一例についての概要を説明するための概念図であり、図1では、特殊信号検出装置100を搭載した鉄道の列車TRや、列車TRが走行する専用走行路である線路RRの脇に設置された特殊信号発光機200を含む地上側の特殊信号発生システムSGの様子を示している。特に、ここでは、列車TRが走行する線路RRの脇に設置された特殊信号発光機200で異常事態の発生を示す赤色光の点滅動作がなされた場合にこれを列車TRに搭載された特殊信号検出装置100において確認する場合についての様子を概略的に示している。
以上のような構成の前提として、図示の例では、まず、列車TRに搭載されている特殊信号検出装置100は、移動体である列車TRの矢印A1で示す進行方向前方に設置されている。より具体的には、一部拡大して示すように、特殊信号検出装置100は、例えば、カメラ等で構成される撮像部10を備え、列車TRの車内(特に運転士)に報知するための報知部IPとしてスピーカーやモニター等で構成される音声部30や表示部40を備え、また、これらを統括制御するための管理装置MCを備える。特殊信号検出装置100は、撮像部10を列車TRの進行方向前方に向けて配置して前方の特殊信号発光機200を捉え、撮像部10での特殊信号発光機200についての画像データを管理装置MCにおいて処理することで、異常事態の発生を示す点滅動作がなされているかを確認し、必要に応じて、確認結果に基づく車内への報知を報知部IPによって行う。
なお、図示のように、ここでの撮像部10は、光を取り込む前面側に、波長フィルターFIを備えている。波長フィルターFIは、特殊信号発光機200で発する光の波長帯域に対応する透過特性を有するものとなっている。これにより、特殊信号発光機200からの光の成分については確実に取り込む一方、他の成分については、波長フィルターFIにおいて遮断させることができる。すなわち、波長フィルターFIを設けることによって、撮像部10で取得される画像データについて、対象とすべき光の波長帯域の抽出が顕著なものとなるようにしている。
ここで、既述のように、図1では、上記した特殊信号検出装置100に関するもののほか、特殊信号発光機200を含む地上側の特殊信号発生システムSGについても例示している。ここでは、一例として、特殊信号発生システムSGは、踏切CRに設けられており、踏切CRに連動する非常ボタンEBに加え、非常ボタンEBが押されることで発動する特殊信号発光機200を有した構成となっている。この場合、例えば図示のように、踏切CR内において自動車等の車両VEが立ち往生して非常ボタンEBが押されると、特殊信号発光機200が赤色光による所定の点滅動作を開始することで、踏切CRに近づく列車TRへの点滅表示による緊急事態発生の連絡がなされる。
ここで、特殊信号発光機200での点滅動作による緊急事態発生の連絡については、特殊信号発光機200が正常に動作していても、例えば屋外に設置されている特殊信号発光機200と列車TRとの位置が逆光等の状態となっていて肉眼での確認が難しかったり、走行による振動が激しくて前方を撮像するのが難しかったりすると、列車TRにおいて、人間の目視やカメラの画像データをそのものだけでは、的確に特殊信号発光機200の動作を捉えられない可能性がある。また、そもそも特殊信号発光機200は、ほとんどの列車運転の場合である平常の運転時においては滅灯しており、極稀に発生する異常時にのみ点滅動作をするものであるため、正常に点滅動作をした場合であっても、運転士が他の種々の動作に注意が行っておりうっかり見逃してしまう、という可能性も無いとは言えない。
以上に対して、本実施形態の特殊信号検出装置100では、上記事情を加味して、逆光や振動等の外部環境に対して強く、すなわちロバスト性が高いものとし、また、運転士による特殊信号発光機200の作動の見逃しを抑制できるようにするための構成を有するものともなっている。
以下、本実施形態の特殊信号検出装置100を説明するための前提として、まず、特殊信号発光機200の構造等について、図2を参照して説明する。なお、ここでの例では、特殊信号発光機200は、踏切付近に設けられるものとしているが、この他、落石のおそれがある場所等、異常事態が発生する可能性のある種々の場所に設置されている。
図2に外観の一例を示すように、ここでの特殊信号発光機200は、前面200aに配された多数の線状に並ぶLED光源LSを赤色に発光させて点滅することにより、踏切等で異常が発生したなどの情報を運転士などに伝えている。すなわち、前面200aが列車TRに配置された特殊信号検出装置100(図1等参照)に向けられるように、特殊信号発光機200は線路脇に設置されている。
特殊信号発光機200での点滅動作の一例として、ここでは、1分間に500回程度で点滅の動作をするものとする。言い換えると、特殊信号発光機200での点滅動作についての周波数は、8.3Hz程度になっている。この周波数8.3Hzは、特殊信号発光機200での点滅動作を示す特殊信号発光機200に固有の周波数であると考えることができる。以下では、この周波数8.3Hzを、特発点滅周波数と呼ぶ。
以上のように、特殊信号発光機200は、異常発生を知らせるための動作として、一定の特定周期で赤色をすなわち特定周波数帯域の光を点滅する。そこで、本実施形態では、特殊信号発光機200での発光動作が、上記のような所定周期で所定波長帯域の光による点滅動作となっている点に着目し、特殊信号検出装置100の撮像部10で取得した画像データから赤色成分を抽出し、連続する動画の各コマを構成するフレームに関して、現フレームと前フレームとの差分から赤色の点灯を検出している。すなわち、取得した画像データにおいて、赤色の点灯が一定フレームの周期であることを検出した場合に、特殊信号検出装置100は、特殊信号発光機200における発光があると判断し、スピーカーである音声部30から警報を鳴らすようにしている。
以上のような特殊信号発光機200の点滅周期の検出方法として、ここでは、フーリエ変換を利用している。ここでのフーリエ変換とは、撮像部10で取得した時系列のデータを周波数成分ごとの大きさに変換する手法であり、例えば撮像部10で取得した画面全体の輝度に対して複数フレームごとにフーリエ変換を行うことで、特殊信号発光機200での点滅周期を検出できる。つまり、フーリエ変換処理をすることで特殊信号発光機200での点滅動作の周期すなわち周波数を捉えることで、確実な特殊信号発光機200の動作検出を可能にしている。言い換えると、連続画像についてフーリエ変換処理を施すことで、画像中の輝度に関する周波数特性を抽出した場合に、上記特発点滅周波数が存在するか否かによって特殊信号発光機200において発光がなされているか否かを判定する。
また、上記のような解析の結果、特殊信号発光機200において発光有りと判断された場合には、報知部IPにより報知を行う。すなわち、特殊信号検出装置100側において、特殊信号発光機200による伝達とは別の方法で運転士に対して報知を行うことができるようにしている。
以下、図3のブロック図を参照して、特殊信号検出装置100における構成及び特殊信号検出装置100を構成する各部の機能等について説明する。
図示のように、また、図1を参照して既述のように、特殊信号検出装置100は、撮像部10と、管理装置MCと、報知部IPとを備える。このうち、管理装置MCは、図示のように、各種画像処理を行う画像処理部20と、各種データを記憶する記憶装置50と、各部の動作を司る制御部60とを備える。なお、報知部IPは、図示のように、また、既述のように、音声部30と、表示部40とを備える。
特殊信号検出装置100のうち、まず、撮像部10は、カメラ等で構成されており、動画すなわち連続画像を撮像することが可能であり、撮像により取得した画像データを管理装置MCに送信する。ここでの連続画像として、例えば30fps程度での動画の録画が可能となっている。したがって、8.3Hz程度で点滅する特殊信号発光機200の発光動作についてであれば、数フレーム程度で1回分の点滅動作を捉えることになる。
次に、管理装置MCのうち、画像処理部20は、例えばGPU等で構成され、撮像部10で取得した画像について各種処理を行う。特に、ここでは、後述する制御部60からの指示に従い、連続するフレームについての画像、すなわち時系列に並ぶ画像データに関して、フーリエ変換処理、より具体的には高速フーリエ変換(FFT)の処理を施すことにより、画像中での輝度についての周波数に対する振幅データを抽出する。これにより、上述した特殊信号発光機200での点滅動作に相当する周波数での輝度の変化が存在するか否かを捉えることができる。
次に、管理装置MCのうち、記憶装置50は、例えばストレージデバイス等で構成され、各種データを格納する。すなわち、記憶装置50は、撮像部10で取得されたデータやこれを画像処理部20において加工したデータ等の各種画像データを格納する録画装置として機能するほか、例えば特殊信号発光機200における発光での点滅周期(点滅周波数)や、線路上における特殊信号発光機200の配置位置、さらには、各特殊信号発光機200を視認可能となる位置やこれに応じて定まる撮像部10の撮像を開始する位置等についてのデータ、さらには、画像処理部20での高速フーリエ変換(FFT)の処理を行うためのプログラム等の各種プログラムのデータを格納する。
次に、管理装置MCのうち、制御部60は、例えばCPU等で構成されて、特殊信号検出装置100を構成する各部の動作を統括制御する。すなわち、処理に応じて必要なデータやプログラムを記憶装置50から適宜読み出して、各種指令を行う。また、ここでは、画像処理部20での画像解析のための高速フーリエ変換(FFT)による抽出結果に基づいて、所定周期で点滅する特殊信号発光機200における発光の有無を判断する判断部として機能する。
次に、報知部IPのうち、音声部30は、スピーカー等で構成される。音声部30は、例えば運転席内において十分聞こえる程度の音量で警報を発することで、運転士に対して聴覚による異常発生の報知が可能となっている。通常の運転のため、各種操作や確認を行っている運転士に対して、聴覚による異常発生通知を行うことで、より気づきやすくし、見落とす可能性を低減させることができる。
最後に、報知部IPのうち、表示部40は、モニター等で構成される。表示部40は、例えば運転席内において運転士の眼にとまりやすい位置に配置されて文字や図柄表示、あるいは各種点滅・点灯表示等を行うことで、特殊信号発光機200での発光による表示とは別個に、運転席内において運転士に対して視覚による異常発生の報知が可能となっている。
以下、図4を参照して、画像処理部20での画像解析のための高速フーリエ変換(FFT)について説明する。図4(A)は、画像処理部20での処理対象となる連続画像についての概念図であり、図示では、連続画像を構成する各フレームGIを時系列に順次並べた様子を概念的に示している。ここでは、これらの時系列に並ぶ複数のフレームGI,…を取り出し、これらについて高速フーリエ変換(FFT)を行うことで、時系列のデータを周波数成分ごとの大きさに変換している。
また、図4(B)は、図4(A)に例示した連続画像を構成する複数のフレームGI,…についての画像処理部20による処理結果から得られる輝度に関する周波数について示すデータの一例について、曲線(折れ線)C1のグラフで示している。図4(B)において、横軸は、周波数であり、縦軸は、振幅すなわち各周波数で繰り返される輝度変化の度合を示している。図示の曲線C1において丸で囲んで示すように、特発点滅周波数である8.3Hzあるいはこれの近傍においてピークが発生している場合、周波数8.3Hzでの輝度変化すなわち特殊信号発光機200での点滅動作が生じている、と捉えることができる。したがって、図4(B)の曲線C1のような結果が得られた場合、判断部としての制御部60は、特殊信号発光機200における発光有り、との判断をし、判断結果に従って、報知部IPに前方で異常が発生している旨の報知の動作を行わせる。曲線C1のようなピークが発生していなければ、制御部60は、特殊信号発光機200における発光無し、と判断する。すなわち、特殊信号検出装置100は、特殊信号発光機200の管轄範囲において異常が発生していないものとして取り扱う。なお、例えば踏切の警報器等、特殊信号発光機200における発光以外の他の周期的な点滅動作を生じるものが併せて画像に取り込まれた場合であっても、上記のような特発点滅周波数とは異なる周波数で点滅しているので、特発点滅周波数に対応するピークを生じさせることはない。
以上において、連続画像を構成する複数のフレームに関して、上記高速フーリエ変換(FFT)による処理を可能とするために必要となるフレーム数は、特発点滅周波数とフレームレートとの関係で定まる。上記例のように、特発点滅周波数が8.3Hz程度(1分間に500回程度の点滅)であり、撮像部10での動画撮像が30fps程度のフレームレートで処理されている場合に、図4(B)のようなデータ取得を1回行うために最低限必要な特殊信号発光機200の点滅回数(点滅周期)を2〜3回分程度とすると、数フレームから十数フレーム分の画像データが必要となる。すなわち、数フレームから十数フレーム分のフレームGI,…について高速フーリエ変換(FFT)をすることで、判定に必要なデータが取得できる。なお、一般には、撮像部10においては、フレームレート数が大きいほど、すなわち細かな動きを捉えられるほどより詳細な輝度変化を捉えられるが、以上の考察から、特発点滅周波数が8.3Hz程度(1分間に500回程度の点滅)であれば、撮像部10に30fps程度の動画撮像能力があれば、必要に足る程度のデータが十分に得られると言える。
以下、図5のフローチャートを参照して、列車TRに搭載された特殊信号検出装置100における特殊信号の検出すなわち特殊信号発光機200での点滅動作の検出のための一連の動作の一例を説明する。
なお、ここでは、前提として、図1に例示する線路RRに沿って踏切等に設置されている単数又は複数の特殊信号発光機200の設置位置は、既知であり、各特殊信号発光機200の設置位置に関する情報及び設置位置に伴う各特殊信号発光機200についての運転士による視認可能位置についても既知であるものとする。また、これに伴い、特殊信号検出装置100による検知が必要な線路RR上の範囲も予め定まっているものとする。ここでは、図1に例示するように、各特殊信号発光機200についての運転士による視認可能位置(各特殊信号発光機200の手前600m〜800mの所定位置)AAよりも手前の検出開始位置(各特殊信号発光機200の手前1km程度の所定位置)XXから特殊信号検出装置100による検出を開始し、特殊信号発光機200の設置位置BBまで特殊信号検出装置100による検出を行うものとする。すなわち、上記位置XXを特殊信号検出装置100による検出の開始位置とし、特殊信号発光機200の設置位置BBを特殊信号検出装置100による検出の終了位置として、この間の区間DD(1km程度の区間)を、線路RR上において特殊信号発光機200の検知が必要な範囲とする。
また、ここでは、例えば図示を省略する車上装置等により、列車TRの走行位置の情報が取得可能であるものとする。なお、位置情報の方法としては、例えばタコメーターを利用した位置検出等、既知の種々の位置検出の方法が利用できる。すなわち、特殊信号検出装置100は、例えば列車TR側から列車TRの走行位置についての情報を受け取ることが可能である。
図5において、まず、特殊信号検出装置100は、列車の運転制御における既知の列車TRの位置検出方法を利用して列車TRの位置を検出し、列車TRが運転士の目視による特殊信号発光機200の視認可能位置AAよりも少し手前の検出開始位置XXに到達するまで、当該位置に到達したか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1において、特殊信号発光機200の検出開始位置XXに到達したと判定されると、特殊信号検出装置100の管理装置MCは、撮像部10を起動して、撮像を開始する(ステップS2)。すなわち、列車TRの進行方向前方に存在する特殊信号発光機200を含む動画での画像データの取得を開始する。ステップS2において必要に足るフレーム数のデータを取得すると、管理装置MCの制御部60は、画像処理部20に高速フーリエ変換(FFT)による輝度に関する周波数についてのデータ抽出を行わせる(ステップS3)。
ステップS3におけるデータ抽出がなされると、判断部としての制御部60は、特殊信号発光機200における発光動作の有無を判定する(ステップS4)。すなわち、図4(B)に例示したような特性を示すピークが存在するか否かを確認することで、発光動作が検出されたか否か、延いては進行方向前方において異常が発生しているか否かを判断する。
ステップS4において、特殊信号発光機200における発光動作の検出がされない場合(ステップS4:No)、特殊信号検出装置100は、列車TRが特殊信号発光機200の設置位置BBに到達したか否か、すなわち検出の終了位置に到達したか否かを確認する(ステップS5)。ステップS5において、当該位置BBに到達していないと判断すると(ステップS5:No)、判断部としての制御部60は、再び、特殊信号発光機200における発光動作の有無を判定する(ステップS4)。すなわち、特殊信号発光機200における発光動作の検出がされない場合、検出の終了位置に到達するまでステップS4及びステップS5の動作を繰り返して、特殊信号発光機200についての検出動作を続ける。また、このため、ステップS2での撮像部10による撮像と、ステップS3での画像処理部20によるデータ抽出とについては、列車TRが検出の終了位置に到達するまで、新しいデータの取得を逐次行っていく。これに応じて、ステップS4では、都度、新しいデータに基づく判定を行う。
一方、ステップS4において、特殊信号発光機200における発光動作の検出がされた場合(ステップS4:Yes)、すなわち進行方向前方において異常が発生していると判断される場合、管理装置MCは、報知部IPによる運転士に対する報知を行う(ステップS6)。
ステップS6による報知がなされた後、あるいは、ステップS5において検出の終了位置に到達したと判定された(ステップS5:Yes)後、管理装置MCは、撮像部10による撮像を終了させ(ステップS7)、特殊信号検出装置100での一連の動作が終了する。
なお、ステップS5において検出の終了位置に到達したと判定された場合(ステップS5:Yes)には、異常が発生しておらず、通常の走行が続くことになり、特殊信号検出装置100は、次の特殊信号発光機200について、上記ステップS1からの動作を行う。
以上のように、本実施形態に係る特殊信号検出装置100では、撮像部10により取得された連続画像について画像処理部20により輝度に関する周波数を抽出することで、撮像された画像中において、特殊信号発光機200での所定周期で点滅する発光の動作が含まれているか否かを的確に捉えることができる。この場合、画像そのものではなく、連続する画像から抽出した点滅状態の特性を示す輝度の差を捉え、この周波数に基づいて判断をしている。すなわち、対象となる特殊信号発光機200からの波長帯域成分の輝度差を捉えられれば、目的を達成できるので、特に、特殊信号発光機200の撮像時における逆光といった日光や他からの成分による影響や映像の揺れの影響等を吸収できるので、外部環境に対してロバスト性の高いものにできる。また、この場合、撮像対象となる特殊信号発光機200については、例えば赤外線発光器を取り付けたり、断線を検出するための構造を設けたり、それらの情報を送信する送信機を取り付けたりする必要が無く、既存のものをそのまま利用できるので、簡易な構成で、確実に所望の検出を行うことができる。さらに、上記の場合、画像処理部20での解析処理において、撮像部10で撮像される画像全体に対してフーリエ変換処理してデータを抽出しているので、例えば画像中から特殊信号発光機200の部分画像を切り出す、といった処理を省略でき、処理の簡易化が図れる。また、全体画像の中のどこかで特殊信号発光機200を捉えればよいため、画像のブレ等が必要な検出に対してほとんど影響しないようにできる。
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
まず、上記では、特殊信号検出装置100による検出の開始位置と終了位置とを定め、この間においてのみ撮像部10による画像取得から特殊信号発光機200での発光検知までを行うものとしているが、開始位置や終了位置の定め方は上記以外のものとしてもよい。また、上記のように、検出を行う区間を定めておくことで、録画するデータのデータ量や動作に伴う消費電力量等を抑制できるが、例えば十分なデータ量や電気容量の確保が可能であれば、以上に限らず、例えば撮像部10を常時起動させて、検出を行うものとしてもよい。
また、上記では、専用走行路として線路において、移動体としての鉄道の列車に特殊信号検出装置100を搭載した場合について説明しているが、これに限らず、例えば、専用走行路としての軌道(新設軌道、併用軌道)を走行する車両(移動体)である路面電車、専用走行路としての専用道路を走行する車両であるバスについて、当該専用道路脇等に設けられた特殊信号発光装置200に対して特殊信号検出装置100を設けることも可能である。
また、列車等の移動体において、障害物の有無の検知のためといった各種検知のためにカメラを設けている場合には、当該カメラを撮像部10として利用してもよい。すなわち、各種検知のために設けたカメラにおいて取得された画像情報を利用して、本願構成による特殊信号発光機200での発光検知を行ってもよい。例えば障害物検知のカメラで撮像したデータのうち、特殊信号検出装置100による検出対象区間における画像データのみ利用する、といった態様が考えられる。また、撮像部10については、カメラとしているが、データ抽出に必要な光の受光が可能であれば、種々のものが適用でき、例えばレンズを有さず受光素子のみで構成するといったことも考えられる。また、上記では、撮像部10の前面側に波長フィルターFIを設けているが、波長フィルターFIの位置は、前面以外であってもよく、撮像部10内の光路上の他の位置に設けてもよい。また、撮像部10における受光素子の受光特性を特殊信号発光機200からの光の特性に対応させてもよい。
また、上記では、列車等の移動体に特殊信号検出装置100を搭載するものとしているが、例えば特殊信号発光機200に対して600m〜1km程度離れた所定位置において特殊信号発光機200の動作確認をするために、特殊信号検出装置100を用いてもよい。すなわち、当該所定位置に特殊信号検出装置100を設置固定して、固定位置から特殊信号検出装置100によって特殊信号発光機200が通常動作が可能な状態に維持されているか否かを確認するものとしてもよい。
また、例えば図1において一部拡大して例示した特殊信号検出装置100を構成する各部を、例えば一つの筐体にユニット化したひとまとまりの装置として、既存の列車等の移動体に、後から取り付けることができるようにしてもよい。