〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
(図1〜図20:画像形成装置の前提構成)
初めに、図1〜図20を参照して、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の前提構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1を示す概略構成図である。図1において、画像形成装置1は、記録シートに画像を形成する画像形成部100、画像形成部100に対して記録シート5を供給する給紙装置200、原稿の画像を読み取るスキャナ300などを備えている。また、画像形成装置1は、スキャナ300の上部に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400なども備えている。画像形成部100には、記録シート5を手差しでセットするための手差しトレイ6や、画像形成済みの記録シート5をスタックするためのスタックトレイ7などが設けられている。
図2は、画像形成部100を拡大して示す拡大構成図である。画像形成部100には、転写体たる無端状の中間転写ベルト10を備える転写ユニットが設けられている。転写ユニットの中間転写ベルト10は、3つの支持ローラ14,15,16に張架された状態で、それら支持ローラの何れか1つの回転駆動により、図中時計回り方向に無端移動する。支持ローラ14,15,16のうちの第1支持ローラ14と第2支持ローラ15との間で移動するベルト部分のおもて面には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4つの作像ユニットが対向している。また第2支持ローラ15と第3支持ローラ16との間で移動するベルト部分のおもて面には、中間転写ベルト10上に形成されたトナー像の画像濃度(単位面積あたりのトナー付着量)を検知するための光学センサユニット150が対向している。
図1において、作像ユニット18Y,18C,18M,18Kの上方には、レーザ書込装置21が設けられている。このレーザ書込装置21は、スキャナ300で読み取られた原稿の画像情報、あるいは外部のパーソナルコンピュータから送られてくる画像情報に基づいて、書込光を出射する。具体的には、レーザ書込装置21は、画像情報に基づいて、レーザ制御部によって半導体レーザを駆動して書込光を出射する。そして、レーザ書込装置21は、その書込光により、各作像ユニット18Y,18C,18M,18Kに設けられた潜像担持体たるドラム状の感光体20Y,20C,20M,20Kを露光走査して感光体に静電潜像を形成する。なお、書込光の光源としては、レーザダイオードに限るものではなく、例えばLEDであってもよい。
図3は、Y用の感光体20Y及び帯電装置70Yを拡大して示す拡大構成図である。帯電装置70Yは、感光体20Yに当接して回転する帯電ローラ71Yと、帯電ローラ71Yに当接して回転する帯電クリーニングローラ75Yと、後述する回転姿勢検知センサとを有している。
図4は、Y用の感光体20Yを拡大して示す拡大斜視図である。感光体20Yは、円柱状の本体部20aY、本体部20aYの回転軸線方向の両端側にそれぞれ配設された大径のフランジ部20bY、軸受けに回転自在に支持される回転軸部20cYなどを有している。
2つのフランジ部20bYの端面からそれぞれ突出している回転軸部20cYの一方は、感光体回転センサ76Yを貫いており、感光体回転センサ76Yから突出している部分が軸受けによって受けられている。感光体回転センサ76Yは、回転軸部20cYに固定されて回転軸部20cYと一体的に回転する遮光部材77Yや、透過型フォトセンサ78Yなどを備えている。遮光部材77Yは、回転軸部20cYの周面における所定の箇所において法線方向に突出する形状になっており、感光体20Yが所定の回転姿勢になったときに、透過型フォトセンサ78Yの発光素子と受光素子との間に介在する。これにより、受光素子が受光しなくなることで、透過型フォトセンサ78Yからの出力電圧値が大きく低下する。つまり、透過型フォトセンサ78Yは、感光体20Yが所定の回転姿勢になると、そのことを検知して出力電圧値を大きく低下させる。
図5は、Y用の感光体回転センサ76Yからの出力電圧の経時変化を示すグラフである。なお、感光体回転センサ76Yからの出力電圧は、具体的には、透過型フォトセンサ78Yからの出力電圧のことである。図5に示すように、感光体20Yが回転しているとき、大半の時間は、感光体回転センサ76Yから6[V]の電圧が出力される。但し、感光体20Yが一周する毎に、感光体回転センサ76Yからの出力電圧が一瞬だけ0[V]付近まで大きく低下する。これは、感光体20Yが一周する毎に、遮光部材77Yが透過型フォトセンサ78Yの発光素子と受光素子との間に介在して、受光素子が光を受光しなくなるからである。このように出力電圧が大きく低下するタイミングは、感光体20Yが所定の回転姿勢になったタイミングである。以下、このタイミングを基準姿勢タイミングという。
図3において、帯電装置70Yの帯電クリーニングローラ75Yは、導電性の芯金、これの周面に被覆された弾性層などを備えている。弾性層は、メラミン樹脂を微細発泡させたスポンジ状の部材からなり、帯電ローラ(71Y)に当接しながら回転する。そして、弾性層は、回転に伴って、帯電ローラ71Yに付着している残トナーなどのゴミを本体部から除去することで、異常画像の発生を抑える。
図2において、4つの作像ユニット18Y,18C,18M,18Kは、使用するトナーの色が異なる点の他が、互いにほぼ同様の構成を有している。例えば、Yトナー像を作像するY用の作像ユニット18Yは、感光体20Y、帯電装置70Y、現像装置80Yなどを有している。
感光体20Yの表面は、帯電装置70Yによって負極性に一様に帯電する。このようにして一様に帯電した感光体20Yの表面のうち、レーザ書込装置21によってレーザ光が照射された部分は、電位を減衰させて静電潜像となる。
図6は、Y用の現像装置80YをY用の感光体20Yの一部とともに示す構成図である。現像装置80Yは、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて現像を行う二成分現像方式のものであるが、磁性キャリアを含有しない一成分現像剤を用いる一成分現像方式のものを採用してもよい。この現像装置80Yは、現像ケース内に設けられた攪拌部と現像部とを備えている。攪拌部においては、二成分現像剤(以下、単に現像剤という)が、三本のスクリュー部材によって攪拌搬送されて、現像部に供給される。
現像部には、自らの周面の一部を、現像装置本体ケースの開口を通じて感光体20Yに対して所定の現像ギャップGを介して対向させながら回転駆動する現像スリーブ81Yが配設されている。現像剤担持体たる現像スリーブ81Yは、マグネットローラを自らに連れ回らせないように内包している。
攪拌部の供給スクリュー84Y、回収スクリュー85Y、及び現像部の現像スリーブ81Yは、互いに水平方向に延在する姿勢で平行配設されている。これに対し、攪拌部の撹拌スクリュー86Yは、同図の紙面に直交する方向における手前側から奥側に向けて上り勾配となる傾斜姿勢になるように配設されている。
攪拌部の供給スクリュー84Yは、自らの回転に伴って、現像剤を図の紙面の直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送しながら現像部の現像スリーブ81Yに供給する。現像スリーブ81Yに供給されずに現像装置内における前記方向の手前側の端部まで搬送されてきた現像剤は、供給スクリュー84Yの直下に配設された回収スクリュー85Y上に落とされる。
攪拌部の供給スクリュー84Yによって現像スリーブ81Yに供給された現像剤は、スリーブに内包されるマグネットローラの発する磁力の作用によって現像スリーブ81Yの表面に汲み上げられる。現像スリーブ81Yの表面に汲み上げられた現像剤は、マグネットローラの発する磁力によって穂立ち状態となって磁気ブラシを形成する。そして、現像剤は、現像スリーブ81Yの回転に伴って、規制ブレード87Yの先端と現像スリーブ81Yとの間に形成された規制ギャップを通過して層厚が規制された後に、感光体20Yに対向する現像領域まで搬送される。
現像領域では、現像スリーブ81Yに印加されている現像バイアスにより、現像剤中のトナーのうち、感光体20Y上の静電潜像に対向するトナーに対し、静電潜像に向かう静電気力を付与する現像ポテンシャルが作用する。また、現像剤中のトナーのうち、感光体20Y上の地肌部に対向するトナーに対し、スリーブ表面に向かう静電気力を付与する地肌ポテンシャルが作用する。これらの結果、トナーが感光体20上の静電潜像に転移して静電潜像を現像する。このようにして、感光体20Y上にYトナー像が形成される。このYトナー像は、感光体20Yの回転に伴って、後述するY用の一次転写ニップに進入する。
現像スリーブ81Yの回転に伴って現像領域を通過した現像剤は、マグネットローラの磁力の弱まる領域まで搬送されることで、現像スリーブ81Yの表面から離れて攪拌部の回収スクリュー85Y上に戻される。回収スクリュー85Yは、現像スリーブ81Yから回収した現像剤を、自らの回転に伴って同図の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。そして、現像装置内の同方向における手前側の端部まで搬送した現像剤は、撹拌スクリュー86Yに受け渡される。
回収スクリュー85Yから撹拌スクリュー86Yに受け渡された現像剤は、回収スクリュー85Yの回転に伴って、前記方向の手前側から奥側に向けて搬送される。その過程で、透磁率センサからなるトナー濃度センサ(後述する図7における82Y)によってトナー濃度が検知され、その検知結果に応じて適量のトナーが補給される。この補給は、後述する制御部がトナー濃度センサによる検知結果に応じてトナー補給装置を駆動させることによって行われる。適量のトナーが補給された現像剤は、前記方向における奥側の端部まで搬送されて供給スクリュー84に受け渡される。
現像領域のスリーブ回転方向の長さである現像領域長さLは、現像スリーブ81Yの直径、現像ギャップG、規制ギャップなどによって変化する。現像領域長さLが大きくなるほど現像領域で感光体20Y上の静電潜像にトナーが接触する機会が増えるため、現像効率が上昇する。このため、現像領域長さLを大きくすることで、高速印刷に対応できるようになるが、大きくし過ぎるとトナー飛散、トナー固着、感光体回転ロックなどの不具合を引き起こす可能性が高くなる。このため、現像領域長さLについては、装置仕様の特性に応じた適切な値に設定することが望ましい。
Y用の作像ユニット18YにおけるYトナー像の作像について説明したが、C,M,K用の作像ユニット18C,M,Kにおいては、Yと同様のプロセスにより、感光体20C,20M,20Kの表面にCトナー像,Mトナー像,Kトナー像が形成される。
図2において、中間転写ベルト10のループ内側には、Y,C,M,K用の一次転写ローラ62Y,62C,62M,62Kが配設されており、Y,C,M,K用の感光体20Y,20C,20M,20Kとの間に中間転写ベルト10を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト10のおもて面と、Y,C,M,K用の感光体20Y,20C,20M,20Kとが当接するY,C,M,K用の一次転写ニップが形成されている。そして、一次転写バイアスが印加されるY,C,M,K用の一次転写ローラ62Y,62C,62M,62Kと、感光体20Y,20C,20M,20Kとの間には、それぞれ一次転写電界が形成されている。
中間転写ベルト10のおもて面は、ベルトの無端移動に伴ってY,C,M,K用の一次転写ニップを順次通過していく。その過程で、感光体20Y,20C,20M,20K上のYトナー像,Cトナー像,Mトナー像,Kトナー像が、中間転写ベルト10のおもて面に順次重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト10のおもて面には、4色重ね合わせトナー像が形成される。
中間転写ベルト10の下方には、第1張架ローラ22と第2張架ローラ23とによって張架される無端状の搬送ベルト24が配設されており、この搬送ベルト24は、何れか一本の張架ローラの回転駆動に伴って図中反時計回り方向に無端移動する。そして、搬送ベルト24は、そのおもて面を、中間転写ベルト10の全域のうち、第3支持ローラ16に対する掛け回し箇所に当接させて二次転写ニップを形成している。この二次転写ニップの周辺においては、接地された第2張架ローラ23と、二次転写バイアスが印加される第3支持ローラ16との間に二次転写電界が形成されている。
図1において、画像形成部100には、給紙装置200や手差しトレイ6から給送されてくる記録シート5を、二次転写ニップ、後述する定着装置25、排出ローラ対56に順次搬送するための搬送路48が設けられている。また、給紙装置200から画像形成部100に給送された記録シート5を、搬送路48の入口まで搬送するための給送路49も設けられている。なお、搬送路48の入口には、レジストローラ対47が配設されている。
プリントジョブが開始されると、給紙装置200又は手差しトレイ6から繰り出された記録シート5が、搬送路48に向けて搬送されて、レジストローラ対47に突き当たる。そして、レジストローラ対47は、適切なタイミングで回転駆動を開始することで、記録シート5を二次転写ニップに向けて送り込む。二次転写ニップでは、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像が記録シート5に密着する。そして、二次転写電界やニップ圧の作用により、4色重ね合わせトナー像が記録シート5の表面に二次転写されてフルカラートナー像になる。
二次転写ニップを通過した記録シート5は、搬送ベルト24によって定着装置25に向けて搬送される。そして、定着装置25内で加圧及び加熱されることで、その表面にフルカラートナー像が定着する。その後、記録シート5は、定着装置25から排出された後、排出ローラ対56を経由してスタックトレイ7上にスタックされる。
図7は、画像形成装置1の電気回路の要部を示すブロック図である。図7において、制御手段としての制御部110は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリなどを有している。この制御部110には、Y,C,M,K用の現像装置80Y,80C,80M,80Kのトナー濃度センサ82Y,82C,82M,82Kが電気的に接続されている。これにより、制御部110は、Y,C,M,Kの現像装置80Y,80C,80M,80Kに収容されているY現像剤,C現像剤,M現像剤,K現像剤のトナー濃度を把握することができる。
制御部110には、Y,C,M,K用のユニット脱着センサ17Y,17C,17M,17Kも電気的に接続されている。脱着検知手段としてのユニット脱着センサ17Y,17C,17M,17Kは、作像ユニット18Y,18C,18M,18Kが、画像形成部100から取り外されたことを検知したり、画像形成部100に装着されたことを検知したりすることができる。これにより、制御部110は、画像形成部100に対する作像ユニット18Y,18C,18M,18Kの脱着があったことを把握することができる。
また、制御部110には、Y,C,M,K用の現像電源11Y,11C,11M,11Kも電気的に接続されている。制御部110は、現像電源11Y,11C,11M,11Kに制御信号をそれぞれ個別に出力することで、現像電源11Y,11C,11M,11Kから出力される現像バイアスの値を個別に調整することができる。つまり、制御部110は、Y,C,M,K用の現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kに印加する現像バイアスの値をそれぞれ個別に調整することができる。
また、制御部110には、Y,C,M,K用の帯電電源12Y,12C,12M,12Kも電気的に接続されている。制御部110は、帯電電源12Y,12C,12M,12Kに対して制御信号をそれぞれ個別に出力することで、帯電電源12Y,12C,12M,12Kから出力される帯電バイアスにおける直流電圧の値を個別に制御することができる。つまり、制御部110は、Y,C,M,K用の帯電ローラ71Y,71C,71M,71Kに印加する帯電バイアスの直流電圧の値をそれぞれ個別に調整することができる。
また、制御部110には、Y,C,M,K用の感光体20Y,20C,20M,20Kについてそれぞれ所定の回転姿勢になったことを個別に検知するための感光体回転センサ76Y,76C,76M,76Kも電気的に接続されている。制御部110は、感光体回転センサ76Y,76C,76M,76Kからの出力に基づいて、Y,C,M,K用の感光体20Y,20C,20M,20Kについてそれぞれ所定の回転姿勢になったことを個別に把握することができる。
また、制御部110には、現像装置80Y,80C,80M,80Kのスリーブ回転センサ83Y,83C,83M,83Kも電気的に接続されている。回転姿勢検知手段たるスリーブ回転センサ83Y,83C,83M,83Kは、感光体回転センサ76Y,76C,76M,76Kと同様の構成により、現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kについて所定の回転姿勢になったことを検知するものである。つまり、制御部110は、スリーブ回転センサ83Y,83C,83M,83Kからの出力に基づいて、現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kについて所定の回転姿勢になったタイミングを個別に把握することができる。
また、制御部110には、書込制御部125、環境センサ124、光学センサユニット150、プロセスモータ120、転写モータ121、レジストモータ122、給紙モータ123なども電気的に接続されている。環境センサ124は、機内の温度や湿度を検知するものである。また、プロセスモータ120は、作像ユニット18Y,18C,18M,18Kの駆動源になっているモータである。また、転写モータ121は、中間転写ベルト10の駆動源になっているモータである。また、レジストモータ122は、レジストローラ対47の駆動源になっているモータである。また、給紙モータ123は、給紙装置200の給紙カセット201から記録シート5を送り出すためのピックアップローラ202の駆動源になっているモータである。また、書込制御部125は、画像情報に基づいてレーザ書込装置21の駆動を制御するものである。なお、光学センサユニット150の役割については後述する。
画像形成装置1は、環境変動などにかかわらず画像濃度を長期間に渡って安定化させるために、所定のタイミングでプロセスコントロール処理と呼ばれる制御を定期的に実施する。プロセスコントロール処理では、画像形成装置1は、Y用の感光体20Yに複数のパッチ状Yトナー像からなるYパッチパターン像を作像し、それを中間転写ベルト10に転写する。複数のパッチ状Yトナー像のそれぞれは、Yトナー付着量を検知するためのトナー付着量検知用トナー像である。制御部110は、感光体20C,20M,20Kにも、同様にしてC,M,Kパッチパターン像を作像してそれらを重ね合わさないように中間転写ベルト10に転写する。そして、画像形成装置1は、それらのパッチパターン像における各トナー像のトナー付着量を、光学センサユニット150によって検知する。次いで、画像形成装置1は、それらの検出結果に基づいて、作像ユニット18Y,18C,18M,18Kについてそれぞれ現像バイアスVbの基準値である現像バイアス基準値などの作像条件を個別に調整する。
光学センサユニット150は、中間転写ベルト10のベルト幅方向に所定の間隔をおいて並ぶ4つの反射型フォトセンサを有している。それぞれの反射型フォトセンサは、中間転写ベルト10や中間転写ベルト10上のパッチ状トナー像の光反射率に応じた信号を出力する。4つの反射型フォトセンサのうち、3つは、Yトナー付着量,Cトナー付着量,Mトナー付着量に応じた出力をするように、ベルト表面上における正反射光及び拡散反射光の両方をとらえて、それぞれの光量に応じた出力を行う。
図8は、光学センサユニット150に搭載されたY用の反射型フォトセンサ151Yを示す拡大構成図である。Y用の反射型フォトセンサ151Yは、光源としてのLED152Yと、正反射光を受光する正反射型受光素子153Yと、拡散反射光を受光する拡散反射型受光素子154Yとを備えている。正反射型受光素子153Yは、Yパッチ状トナー像の表面で得られる正反射光の光量に応じた電圧を出力する。また、拡散反射型受光素子154Yは、Yパッチ状トナー像の表面で得られる拡散反射光の光量に応じた電圧を出力する。制御部110は、それらの電圧に基づいて、Yパッチ状トナー像のYトナー付着量を算出することができる。Y用の反射型フォトセンサ151Yについて説明したが、C,M用の反射型フォトセンサ151C,151Mも、Y用と同様の構成になっている。
図9は、光学センサユニット150に搭載されたK用の反射型フォトセンサ151Kを示す拡大構成図である。K用の反射型フォトセンサ151Kは、光源たるLED152Kと、正反射光を受光する正反射型受光素子153Kとを備えている。正反射型受光素子153Kは、Kパッチ状トナー像の表面で得られる正反射光の光量に応じた電圧を出力する。制御部110は、その電圧に基づいて、Kパッチ状トナー像のKトナー付着量を算出することができる。
LED(152Y,C,M,K)としては、発光される光のピーク波長が950nmであるGaAs赤外発光ダイオードを用いている。また、正反射受光素子(153Y,C,M,K)や拡散反射受光素子(154Y,C,M)としては,ピーク受光感度が800nmであるSiフォトトランジスタなどを用いている。但し、ピーク波長やピーク受光感度は前述した値に限られるものではない。
4つの反射型フォトセンサと、中間転写ベルト10のおもて面との間には、5[mm]程度のギャップが設けられている。
制御部110は、主電源の投入時や、所定時間経過した後の待機時、所定枚数以上のプリントを出力したあとの待機時など、所定のタイミングで、プロセスコントロール処理を実施する。そして、制御部110は、プロセスコントロール処理を開始すると、まず、通紙枚数、印字率、温度、湿度などの環境情報を取得した後、作像ユニット18Y,18C,18M,18Kにおけるそれぞれの現像特性を把握する。具体的には、制御部110は、それぞれの色について、現像γと現像開始電圧を算出する。より詳しくは、感光体20Y,20C,20M,20Kを回転させながらそれぞれを一様に帯電させる。この帯電については、帯電電源12Y,12C,12M,12Kから出力する帯電バイアスとして、通常のプリント時とは異なるものを出力する。詳しくは、重畳バイアスからなる帯電バイアスの直流電圧及び交流電圧のうち、直流電圧の絶対値を一様な値ではなく、徐々に大きくしていく。制御部110は、このような条件で帯電させた感光体20Y,20C,20M,20Kに対し、レーザ書込装置21によるレーザ光の走査を施して、パッチ状Yトナー像,パッチ状Cトナー像、パッチ状Mトナー像、パッチ状Kトナー像用の静電潜像を複数形成する。それらを現像装置80Y,80C,80M,80Kによって現像することで、感光体20Y,20C,20M,20K上にY,C,M,Kパッチパターン像を作像する。なお、現像の際に、制御部110は、各色の現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kに印加する現像バイアスの絶対値もそれぞれ徐々に大きくしていく。このとき、制御部110は、各パッチ状トナー像における静電潜像電位と、現像バイアスとの差分を現像ポテンシャルとしてRAMに記憶させる。
図10は、画像形成部100の中間転写ベルト10に転写された各色のパッチパターン像を示す平面模式図である。Y,C,M,Kパッチパターン像は、図10に示されるように、中間転写ベルト10上で重なり合わないように、ベルト幅方向に並んでいる。具体的には、Yパッチパターン像YPPは、中間転写ベルト10の幅方向における一端部に転写される。また、Cパッチパターン像CPPは、ベルト幅方向において、Yパッチパターン像よりも少し中央側にずれた位置に転写される。また、Mパッチパターン像MPPは、中間転写ベルト10の幅方向における他端部に転写される。また、Kパッチパターン像KPPは、ベルト幅方向において、Kパッチパターン像よりも少し中央側にずれた位置に転写される。
光学センサユニット150は、互いにベルト幅方向の異なる位置でベルトの光反射特性を検知するY用の反射型フォトセンサ151Yを有している。また、光学センサユニット150は、C用の反射型フォトセンサ151C、K用の反射型フォトセンサ151K、M用の反射型フォトセンサ151Mも有している。
Y用の反射型フォトセンサ151Yは、中間転写ベルト10の幅方向の一端部に形成されたYパッチパターン像YPPのYパッチ状トナー像のYトナー付着量を検知する位置に配設されている。また、第C用の反射型フォトセンサ151Cは、ベルト幅方向において、Yパッチパターン像YPPの近くに位置するCパッチパターン像CPPのCパッチ状トナー像のCトナー付着量を検知する位置に配設されている。また、M反射型フォトセンサ151Mは、中間転写ベルト10の幅方向の他端部に形成されたMパッチパターン像MPPのMパッチ状トナー像のMトナー付着量を検知する位置に配設されている。また、K用の反射型フォトセンサ150cは、ベルト幅方向において、Mパッチパターン像MPPの近くに位置するKパッチパターン像KPPのKパッチ状トナー像のKトナー付着量を検知する位置に配設されている。
制御部110は、光学センサユニット150の4つの反射型フォトセンサから順次送られてくる出力信号に基づいて、各色のパッチ状トナー像の光反射率を演算し、演算結果に基づいてトナー付着量を求めてRAMに格納していく。なお、中間転写ベルト10の走行に伴って光学センサユニット150との対向位置を通過した各色のパッチパターン像は、クリーニング装置によってベルトおもて面からクリーニングされる。
図11は、プロセスコントロール処理で構築されるトナー付着量と現像バイアスとの関係の近似直線式を示すグラフである。制御部110は、次に、RAMに格納したトナー付着量と、それとは別にRAMに格納した各パッチトナー像における潜像電位のデータと現像バイアスVbのデータとに基づいて、直線近似式(Y=a×Vp+b)を算出する。この直線近似式は、具体的には、図11に示されるように、y軸をトナー付着量とし、且つx軸を現像ポテンシャルとする2次元座標における両者の関係を示す近似直線式である。そして、制御部110は、近似直線式に基づいて、目標のトナー付着量を実現する現像ポテンシャルVpを求め、その現像ポテンシャルVpを実現する現像バイアスVbである現像バイアス基準値および帯電バイアス基準値、(およびLDパワー)を求める。それらの結果については、不揮発メモリに記憶される。制御部110は、このような現像バイアス基準値、並びに帯電バイアス基準値(及びLDパワー)の算出及び記憶を、Y,C,M,Kの各色についてそれぞれ行ってプロセスコントロール処理を終了する。その後、制御部110は、プリントジョブにおいては、Y,C,M,Kについてそれぞれ、不揮発性メモリに記憶している現像バイアス基準値に基づいた値の現像バイアスVbを、現像電源11Y,11C,11M,11Kから出力させる。また、制御部110は、不揮発性メモリに記憶している帯電バイアス基準値に基づいた値の帯電バイアスVdを、帯電電源12Y,12C,12M,12Kから出力させたり、LDパワーをレーザ書込装置21から出力させたりする。
制御部110は、このようなプロセスコントロール処理を実施して目標のトナー付着量を実現する現像バイアス基準値、帯電バイアス基準値(及び光書込強度(後述するLDP))を決定することで、Y,C,M,Kの各色についてそれぞれ、画像全体の画像濃度を長期間に渡って安定化させることができる。しかしながら、感光体20Y,20C,20M,20Kと、現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kとの間の現像ギャップの変動(以下、ギャップ変動という)に起因する頁内での周期的な画像濃度ムラを引き起こしてしまう。
この画像濃度ムラは、感光体20Y,20C,20M,20Kの回転周期で発生するものと、現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kの回転周期で発生するものとが重畳されたものになる。具体的には、感光体20Y,20C,20M,20Kの回転軸が偏心していると、それに起因して、感光体一周あたりでサインカーブ状の変動曲線となるギャップ変動が生ずる。これにより、感光体20Y,20C,20M,20Kと、現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kとの間に形成される現像電界にも、感光体一周あたりでサインカーブ状の変動曲線となる電界強度変動が生ずる。そして、この電界強度変動により、感光体一周あたりでサインカーブ状の変動曲線となる画像濃度ムラが発生する。また、感光体表面の外形には、少なからず歪みがある。この歪みに応じた感光体一周あたりで同じパターンとなる特性の周期的なギャップ変動に起因する画像濃度ムラも発生する。更には、現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kの偏心や外形歪みによるスリーブ回転周期のギャップ変動に起因する周期的な画像濃度ムラも発生する。特に、感光体20Y,20C,20M,20Kよりも小径な現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kの偏心や外形歪みによる画像濃度ムラは比較的短い周期で発生することから、目立ってしまう。
そこで、制御部110は、プリントジョブ時において、Y,C,M,Kの各色についてそれぞれ、以下のような出力変化処理を実施する。即ち、制御部110は、Y,C,M,Kの各色についてそれぞれ、感光体回転周期で発生する画像濃度ムラを相殺することが可能な現像電界強度変動を生じさせるための現像バイアスの出力パターンデータを不揮発性メモリに記憶している。また、制御部110は、現像スリーブ回転周期で発生する画像濃度ムラを相殺することが可能な現像電界強度変動を生じさせるための現像変動パターンデータも不揮発性メモリに記憶している。以下、前者の現像変動パターンデータを感光体周期用の現像変動パターンデータという。また、後者の現像変動パターンデータをスリーブ周期用の現像変動パターンデータという。
Y,M,C,Kのそれぞれに個別に対応する4つの感光体周期用の現像変動パターンデータは、感光体一回転周期分のパターンであって、且つ感光体20Y,20C,20M,20Kの基準姿勢タイミングを基準にしたパターンを表している。それらの現像変動パターンデータは、プロセスコントロール処理で決定されたY,C,M,K用の現像バイアス基準値を基準にして現像電源(11Y,11C,11M,11K)からの現像バイアスの出力を変化させるためのものである。例えば、データテーブル方式のデータである場合には、基準姿勢タイミングから一周期分の期間内において、所定の時間間隔毎の現像バイアス出力差分を示すデータ群を格納したものになっている。そのデータ群の先頭のデータが基準姿勢タイミングにおける現像バイアス出力差分を示しており、二番目、三番目、四番目・・・のデータが以降における所定の時間間隔毎の現像バイアス出力差分を示している。0、−5、−7、−9・・・というデータ群からなる出力パターンは、基準姿勢タイミングから所定の時間間隔毎の現像バイアス出力差分を0[V]、−5[V]、−7[V]、−9[V]・・・にすることを表している。感光体回転周期で発生する画像濃度ムラを抑えるだけであれば、それらの値を現像バイアス基準値に重畳した値の現像バイアスを現像電源から出力させればよい。但し、画像形成装置1では、現像スリーブ回転周期で発生する画像濃度ムラも抑えるので、感光体回転周期の画像濃度ムラを抑えるための現像バイアス出力差分と、現像スリーブ回転周期の画像濃度ムラを抑えるための現像バイアス出力差分とを重畳するようになっている。
Y,C,M,Kのそれぞれに個別に対応する4つのスリーブ周期用の現像変動パターンデータは、現像スリーブ一回転周期分のパターンであって、且つ現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kの基準姿勢タイミングを基準にしたパターンを表している。それらの現像変動パターンデータは、基準値決定処理としてのプロセスコントロール処理で決定されたY,C,M,K用の現像バイアス基準値を基準にして現像電源(11Y,11C,11M,11K)からの現像バイアスの出力を変化させるためのものである。データテーブル方式のデータの場合には、そのデータ群の先頭のデータが基準姿勢タイミングにおける現像バイアス出力差分を示しており、二番目、三番目、四番目・・・のデータが以降における所定の時間間隔毎の現像バイアス出力差分を示している。その時間間隔は、感光体周期用の現像変動パターンデータのデータ群が反映している時間間隔と同じになっている。
制御部110は、作像処理のときには、Y,C,M,Kのそれぞれに個別に対応する感光体周期用の現像変動パターンデータからのデータの読み込みを所定の時間間隔毎で行う。同時に、制御部110は、Y,C,M,Kのそれぞれに個別に対応するスリーブ周期用の現像変動パターンデータからのデータの読み込みも同じ時間間隔毎で行う。なお、感光体周期用の現像変動パターンデータからのデータ読み込みについては、感光体回転センサ(76Y,76C,76M,76K)から基準姿勢タイミング信号が送られてきたタイミングを基準姿勢タイミングとする。また、スリーブ周期用の現像変動パターンデータからのデータ読み込みについては、スリーブ回転センサ(83Y,83C,83M,83K)から基準姿勢タイミング信号が送られてきたタイミングを基準姿勢タイミングとする。
制御部110は、Y,C,M,Kについてそれぞれ、このようなデータの読み込みを行う過程で、感光体周期用の現像変動パターンデータから読み込んだデータと、スリーブ周期用の現像変動パターンデータから読み込んだデータとを加算して重畳値を求める。例えば、制御部110は、感光体周期用の現像変動パターンデータから読み込んだデータが−5[V]であり、スリーブ周期用の現像変動パターンデータから読み込んだデータが2[V]であった場合には、−5[V]と2[V]とを加算して重畳値を−3[V]として求める。そして、制御部110は、例えば現像バイアス基準値が−550[V]である場合には、重畳値の加算によって求められる−553[V]を現像電源から出力させる。制御部110は、このような処理を、Y,C,M,Kについてそれぞれ、所定の時間間隔毎に行う。
これにより、制御部110は、感光体20Y,20C,20M,20Kと、現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kとの間の現像電界に、次の2つの電界強度変動を重畳した電界強度変動を相殺し得る電界強度変動を発生させる。即ち、感光体20Y,20C,20M,20Kの偏心や外形歪みによる感光体回転周期で発生するギャップ変動に起因する電界強度変動、及び現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kの偏心や外形歪みによるスリーブ回転周期で発生する電界強度変動である。制御部110は、このようにすることで、感光体20Y,20C,20M,20Kや、現像スリーブ81Y,81C,81M,81Kの回転姿勢にかかわらず、ほぼ一定の現像電界を感光体と現像スリーブとの間に形成する。これにより、感光体回転周期で発生する画像濃度ムラと、スリーブ回転周期で発生する画像濃度ムラとの両方を抑えることができる。
Y,C,M,Kのそれぞれに個別に対応する4つの感光体周期用の現像変動パターンデータや、4つのスリーブ周期用の現像変動パターンデータについては、構築処理を所定のタイミングで実施することによって構築する。この所定のタイミングは、工場出荷後の初めのプリントジョブに先立つタイミング(以下、初期起動タイミングという)、及び作像ユニット18Y,18C,18M,18Kの交換を検知したタイミング(以下、交換検知タイミングという)である。初期起動タイミングでは、Y,C,M,Kの全色についてそれぞれ、感光体周期用の現像変動パターンデータを構築する。また、スリーブ周期用の現像変動パターンデータも構築する。これに対し、交換検知タイミングでは、交換が検知された作像ユニットについてだけ、感光体周期用の現像変動パターンデータとスリーブ周期用の現像変動パターンデータとを構築する。このような構築が可能になるように、図7に示されるように、作像ユニット18Y,18C,18M,18Kの交換をそれぞれ個別に検知するためのユニット脱着センサ17Y,17C,17M,17Kが設けられている。
初期起動タイミングにおける構築処理では、まず、Yベタトナー像からなるYベタ濃度ムラ検知用トナー像を感光体20Y上に作像する。また、Cベタトナー像,Mベタトナー像,Kベタトナー像からなるCベタ濃度ムラ検知用トナー像,Mベタ濃度ムラ検知用トナー像,Kベタ濃度ムラ検知用トナー像を、感光体20C,感光体20M,感光体20K上に作像する。そして、それらのベタ濃度ムラ検知用トナー像を、図12に示されるように、中間転写ベルト10に一次転写する。図12は、画像形成部100の中間転写ベルト10に転写された各色のベタ濃度ムラ検知用トナー像を示す平面模式図である。図12において、Yベタ濃度ムラ検知用トナー像YITは、感光体20Yの回転周期で発生する画像濃度ムラを検知するためのものであるので、ベルト移動方向において、感光体20Yの周長よりも大きな長さで形成される。同様に、Cベタ濃度ムラ検知用トナー像CIT,Mベタ濃度ムラ検知用トナー像MIT,Kベタ濃度ムラ検知用トナー像KITも、ベルト移動方向の長さが感光体20C,20M,20Kの周長よりも大きくなっている。
なお、図12では、便宜上、4つのベタ濃度ムラ検知用トナー像(YIT,CIT,MIT,KIT)をベルト幅方向に一直線上に並べて形成した例を示している。しかし、実際には、個々の濃度ムラ検知用トナー像のベルト上における形成位置は、ベルト移動方向において最大で感光体周長と同じ値ほどずれる場合がある。これは、例えば、各色についてそれぞれ、ベタ濃度ムラ検知用トナー像の先端位置と、感光体の周方向における基準位置(基準姿勢タイミングで現像領域に進入する感光体表面位置)とを一致させるように、ベタ濃度ムラ検知用トナー像の作像を開始するからである。つまり、各色のベタ濃度ムラ検知用トナー像は、その先端を感光体の周方向における基準位置に一致させるように作像される。
濃度ムラ検知用トナー像として、ベタトナー像に代えて、中間調トナー像を形成してもよい。例えばドット面積率が70[%]である中間調トナー像を形成してもよい。
また、制御部110は、構築処理をプロセスコントロール処理とセットで行うようになっている。具体的には、制御部110は、構築処理を実施する直前でプロセスコントロール処理を実施して各色についてそれぞれ現像バイアス基準値を決定しておく。そして、制御部110は、プロセスコントロール処理の直後に実施する構築処理において、各色についてそれぞれ、プロセスコントロール処理で決定しておいた現像バイアス基準値の条件でベタ濃度ムラ検知用トナー像を現像する。このため、理論的には、ベタ濃度ムラ検知用トナー像は目標トナー付着量になるように作像されるが、実際には現像ギャップ変動によって微妙な濃度ムラが出現してしまう。
ベタ濃度ムラ検知用トナー像の作像を開始してから(静電潜像の書き込みを開始してから)、ベタ濃度検知用トナー像の先端を光学センサユニット150の反射型フォトセンサによる検知位置に進入させるまでのタイムラグは、各色毎に異なった値である。但し、同じ色であれば、経時的に一定の値である(以下、この値を書込−検知タイムラグという)。
制御部110は、各色についてそれぞれ書込−検知タイムラグを不揮発性メモリに予め記憶している。そして、制御部110は、各色についてそれぞれ、ベタ濃度ムラ検知用トナー像の作像を開始した後、書込−検知タイムラグが経過した時点から、反射型フォトセンサからの出力のサンプリングを開始する。このサンプリングについては、感光体回転一周期に渡って、所定の時間間隔毎に繰り返し行う。その時間間隔は、出力変化処理において用いる出力パターンデータにおける個々のデータを読み込む時間間隔と同じ値である。制御部110は、各色についてそれぞれ、サンプリングデータに基づいて、トナー付着量(画像濃度)と時間(又は感光体表面位置)との関係を示す濃度ムラグラフを構築し、その濃度ムラグラフから、二つのベタ濃度ムラパターンを抽出する。一つ目は、感光体回転周期で発生しているベタ濃度ムラパターンである。また、二つ目は、現像スリーブ回転周期で発生しているベタ濃度ムラパターンである。
制御部110は、各色についてそれぞれ、上述したサンプリングデータに基づいて、感光体回転周期で発生しているベタ濃度ムラパターンを抽出すると、トナー付着量平均値(画像濃度平均値)を算出する。このトナー付着量平均値は、感光体回転一周期における現像ギャップの変動の平均値をほぼ反映した値になる。そこで、制御部110は、そのトナー付着量平均値を基準にして、感光体回転周期のベタ濃度ムラパターンを相殺するための感光体周期出力パターンデータを構築する。具体的には、制御部110は、ベタ濃度パターンに含まれる複数のトナー付着量データにそれぞれ個別に対応するバイアス出力差分を算出する。そのバイアス出力差分は、トナー付着量平均値を基準にするものである。制御部110は、トナー付着量平均値と同じ値のトナー付着量データに対応するバイアス出力差分については、ゼロとして算出する。
また、制御部110は、トナー付着量平均値よりも大きいトナー付着量データに対応するバイアス出力差分については、そのトナー付着量とトナー付着量平均値との差分に応じたプラス極性の値として算出する。プラス極性のバイアス出力差分であるので、マイナス極性の現像バイアスを現像バイアス基準値よりも低い値(絶対値の小さい値)に変化させるデータである。
また、制御部110は、トナー付着量平均値よりも小さいトナー付着量データに対応するバイアス出力差分については、そのトナー付着量とトナー付着量平均値との差分に応じたマイナス極性の値として算出する。マイナス極性のバイアス出力差分であるので、マイナス極性の現像バイアスを現像バイアス基準値よりも高い値(絶対値の大きい値)に変化させるデータである。
このようにして、制御部110は、個々のトナー付着量データに対応するバイアス出力差分を求め、それらを順に並べたデータを出力パターンデータたる感光体周期出力パターンデータとして構築する。
また、制御部110は、各色についてそれぞれ、上述したサンプリングデータに基づいて、現像スリーブ回転周期で発生しているベタ濃度ムラパターンを抽出すると、トナー付着量平均値(画像濃度平均値)を算出する。このトナー付着量平均値は、現像スリーブ回転一周期における現像ギャップの変動の平均値をほぼ反映した値になる。そこで、制御部110は、そのトナー付着量平均値を基準にして、現像スリーブ回転周期の濃度ムラパターンを相殺するためのスリーブ周期出力パターンデータを構築する。その具体的なやり方については、感光体回転周期の濃度ムラパターンを相殺するための感光体周期出力パターンデータを構築する方法と同様である。
図13は、ベタ濃度ムラ検知用トナー像のトナー付着量の周期変動と、スリーブ回転センサ出力と、感光体回転センサ出力との関係を示すグラフである。グラフの縦軸はトナー付着量[10−3mg−cm2]を示しており、これは、光学センサユニット150の反射型フォトセンサ151からの出力電圧を、所定の変換式に基づいてトナー付着量に換算した数値である。ベタ濃度ムラ検知用トナー像には、中間転写ベルト移動方向において周期的な濃度ムラが発生していることがわかる。
スリーブ周期用の現像変動データを構築するにあたっては、まず、スリーブ周期とは異なる周期変動成分を除去するために、トナー付着量の経時変動のデータをスリーブ一回転周期毎に切り出して平均化処理を行う。具体的には、ベタ濃度ムラ検知用トナー像の長さは、現像スリーブ周長の十倍以上の値になっていることから、トナー付着量の経時変動のデータは、現像スリーブ十周期分以上に渡って取得される。そのデータに基づく変動波形を、スリーブ基準姿勢タイミングを先頭にしてスリーブ一周期分毎に切り出していく。これにより、十個分の切り出し波形を得たら、図14に示されるようにスリーブ基準姿勢タイミングを同期させる状態でそれら切り出し波形を重ねて平均化処理を行って平均波形を解析する。図14は、平均波形を説明するためのグラフである。十個分の切り出し波形を平均化した平均波形は、図14において太線で示されている。個々の切り出し波形はスリーブ回転周期と異なる周期変動成分を含んで暴れているが、平均波形をその暴れが低減されている。なお、画像形成装置1では、十個分の切り出し波形で平均化処理を行っているが、スリーブ回転周期の変動成分が抽出できれば、他の方法を採用してもよい。
図15は、現像変動パターンデータを構築する際に用いるアルゴリズムの原理を説明するためのグラフである。画像形成装置1では、感光体周期用の現像変動データについても、スリーブ周期用のものと同様に、感光体周期で切り出した切り出し波形によって平均化処理を行い、その結果に基づいて構築している。平均波形に基づく現像変動データの構築については、次のようなアルゴリズムを用いてトナー付着量を現像バイアス変動量に変換することで実現することが可能である。即ち、例えば図15に示されるように、トナー付着量の検出波形に対して逆位相となる変動制御波形を与える現像バイアス変動を発生させることができるアルゴリズムである。
図16は、作像時における各出力のタイミングを示すタイミングチャートである。以上のように、各色についてそれぞれ、構築処理において構築した感光体周期出力パターンデータ、及びスリーブ周期出力パターンデータを用いて、出力変化処理において現像バイアスVbの現像電源(11Y,11C,11M,11K)から出力を変化させる。具体的には、図16に示されるように、感光体周期用の現像変動パターンデータによる現像バイアス変動波形と、スリーブ周期用の現像変動パターンデータによる現像バイアス変動波形とを重畳した重畳波形に従って現像バイアスを周期変動させる。これにより、感光体回転周期で発生するベタ画像濃度ムラや、現像スリーブ回転周期で発生するベタ画像濃度ムラの発生を抑えることができる。
次に、画像形成装置1の特徴的な構成について説明する。帯電変動パターンデータに基づいて帯電バイアスの出力を周期変動させても、中間調部において周期的な濃度変動を引き起こしてしまうことがある。以下、その濃度変動を残留周期変動という。また、現像バイアスや帯電バイアスを周期変動させることに加えて、レーザ書込装置21による潜像書込強度、即ち、書込光量を周期変動させることで、残留周期変動を抑え得る。
そこで、画像形成装置1においては、ユーザーからの命令に基づく画像を形成する際に、現像バイアス及び帯電バイアスに加えて、潜像の書込光量も周期変動させる制御を実施するように、制御部110及び書込制御部125の組み合わせを構成している。これにより、残留周期変動を従来よりも抑えることができる。
次に、実施形態に係る画像形成装置1に、より特徴的な構成を付加した各実施例の画像形成装置1について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係る画像形成装置1の構成は実施形態と同様である。
図17は、スリーブ回転周期で切り出した切り出し波形の平均波形や、これを再現用に変換した再現波形におけるトナー付着変動量の経時変化を示すグラフである。図17において、平均波形は、スリーブ周期用の現像変動パターンデータを構築するために、濃度ムラパターンデータからスリーブ回転周期で切り出した十個の切り出し波形を平均化したものである。この平均波形については、スリーブ回転周期の20倍の周期で変動する正弦波を複数重ね合わせることでほぼ完全に再現することが可能である。しかし、現像バイアスの変動に伴う画像濃度変動は、バイアス変動周波数が高くなると追従性が悪くなる。
その理由について説明する。感光体上の静電潜像の現像は、静電潜像が図6に示される現像領域長さLの範囲内に存在するときに行われる。静電潜像が現像領域に進入してから現像領域を抜け出るまでの時間内において、現像バイアスの出力値を微妙に変化させても、その変化に追従させて静電潜像の画像濃度を微妙に変化させることは非常に困難である。前記時間内の平均的なバイアス値が静電潜像の画像濃度に大きく影響し、瞬時のバイアス変化は画像濃度にそれほど影響しないからである。この現象を避けるために現像領域長さLを小さくし過ぎると、必要な現像能力が得られなくなることから、現像バイアスの変動によって抑えることが可能な画像濃度の周期変動成分の周波数には上限がある。
このような理由から、画像形成装置1では、スリーブ回転周期の3倍の周波数を、抽出する周期変動成分の周波数の上限にしている。即ち、スリーブ回転周期の3倍の周期で変動する正弦波を複数重ね合わせることで平均波形を再現するようになっている。図16に示される再現波形は、そのような再現によって得られたものである。制御部110は、この再現波形に基づいて、感光体周期用の現像変動パターンデータや、スリーブ周期用の現像変動パターンデータを構築する。
構築方法の具体的手順は、次の通りである。まず、制御部110は、平均波形に対して周波数解析を行う。周波数解析については、フーリエ変換(FFT)によって行ってもよいし、直交検波によって行ってもよい。画像形成装置1では、直交検波によって行うようになっている。
図14に示される平均波形は、次式で示されるように、スリーブ回転周期の整数倍の周波数で周期変動する正弦波の重ね合わせによって表現される。なお、次式において、xは、前記正弦波の変動周波数の上限値である。
f(t)=A1×sin(ωt+θ1)+A2×sin(2×ωt+θ2)+A3×sin(3×ωt+θ3)+・・・+Ax×sin(x×ωt+θx)
この式は、次の式に変化することが可能である。
f(t)=ΣAi×sin(i×ωt+θi)
:但し、i=1〜xの自然数
なお、各記号で示されるパラメータは次の通りである。
・f(t):トナー付着変動量の切り出し波形の平均波形[10−3mg/cm2]
・Ai:正弦波の振幅[10−3mg/cm2]
・ω:スリーブ又は感光体の角速度[rad/s]
・θi:正弦波の位相[rad]
・t:時間[s]
画像形成装置1は、直交検波にてAiおよびθiを算出して、周波数毎の濃度ムラ成分を算出する。そして、画像形成装置1は、スリーブ周期用の現像変動パターンデータを構築するための再現波形や、感光体周期用の現像変動パターンデータを構築するための再現波形を、次式に基づいて構築する。
f1/2(t)=ΣAi×sin(i×ωt+θi)
:但しi=1〜3
i=1は、スリーブ又は感光体の一回転周期である。
現像変動パターンデータの構築について説明したが、帯電変動パターンデータについても、同様にして構築する。
図18は、書込光量を変化させるための潜像変動パターンデータを構築する際に参照される平均波形や、これを再現用に変換した再現波形におけるトナー付着変動量の経時変化を示すグラフである。画像形成装置1では、プリントジョブ中に、潜像変動パターンデータに基づいて、感光体に対する書込光量を変化させることで、画像濃度の残留周期変動を抑えるようになっている。現像変動パターンデータを構築するために作像したベタ濃度ムラ検知用トナー像の濃度ムラパターンに基づいて、潜像変動パターンデータを構築する。現像変動パターンデータや帯電変動パターンデータについては、既に述べたように、スリーブ回転周期の3倍の周波数の周期変動成分までを抽出した再現波形に基づいて構築している。このため、画像濃度ムラとして、高周波数の周期変動成分が残ってしまう。これが、画像形成装置1の画像濃度の残留周期変動である。この残留周期変動のパターンについては、現像変動パターンデータを構築するために作像したベタ濃度ムラ検知用トナー像の濃度ムラパターンに基づいて把握することが可能である。
書込光量の変動による画像濃度変動については、1ドット単位で発生させることが可能であることから、高周波数の周期で発生する周期変動成分を相殺するための有効な手段として用いることが可能である。そこで、制御部110は、スリーブ周期用の潜像変動パターンデータを構築するための再現波形や、感光体周期用の潜像変動パターンデータを構築するための再現波形を、次式に基づいて構築する。
f3(t)=ΣAi×sin(i×ωt+θi)
:但し、i=4〜20の自然数
このようにして構築された再現波形が図18に示されている。この再現波形に基づいて、スリーブ周期用の潜像変動パターンデータや、感光体周期用の潜像変動パターンデータを構築する。それらのデータは、書込光量(光書込強度LDP(レーザダイオードパワー)[%])を反映するデータである。書込光量に適宜ゲインを乗じ、狙いの画像濃度における高周波成分を低減できるようにすればよい。本発明における露光強度:LDパワーは、図13の太線で示す高周波数成分を打ち消すように周期的に変化させる。
ユーザーの命令に基づく画像を形成する際には、感光体周期用の潜像変動パターンデータと、スリーブ周期用の潜像変動パターンデータと、感光体基準姿勢タイミングと、スリーブ基準姿勢タイミングとに基づいて、次のような重畳変動パターンデータを構築する。即ち、感光体回転周期の潜像変動波形(書込光量変動波形)と、スリーブ回転周期の潜像変動波形とを重畳した重畳変動波形を発生させる重畳変動パターンデータである。そして、その重畳変動パターンデータを制御部110から書込制御部125に逐次送信する。書込制御部125は、重畳変動パターンデータに基づいて書込光量を周期変動させる。このような処理をY,C,M,Kの各色でそれぞれ個別に行う。
図19は、潜像電位の絶対値と書込光量又は現像ポテンシャルとの関係を示すグラフである。かかる構成では、現像バイアスや帯電バイアスを周期変動させてもなお残ってしまう高周波数の残留周期変動を有効に抑えることができる。加えて、次のような効果も奏することができる。即ち、図19に示されるように、感光体の光減衰特性により、高画像濃度領域では電界変動が小さくなるため、補正できる幅に限界がある。潜像電位が変動し難いことから、トナー付着量の補正幅が狭くなるからである。一般に、スリーブ回転周期や感光体回転周期で発生する画像濃度の周期変動の振幅は、低周波成分ほど大きく、高周波成分になるほど小さくなる。画像形成装置1では、大きな振幅を確保することが可能な低周波数の周期変動成分を現像バイアスや帯電バイアスの周期変動によって低減する。この一方で、比較的振幅の小さい高周波数の周期変動成分を書込光量によって補正する。これにより、高い画像濃度領域でも、書込光量を上限で飽和させることなく、狙い通りの潜像電位の変動幅を確保することができる。
図20は、画像形成装置1の制御手段(制御部110及び書込制御部125)によって実施される制御の処理フローを示すフローチャートである。制御手段は、まず、ベタ濃度ムラ検知用トナー像を形成する(ステップS1)。このとき、現像バイアス、帯電バイアス、書込光量についてはそれぞれ一定の値とする。次に、制御手段は、ベタ濃度ムラ検知用トナー像の濃度ムラパターンを検知した後(ステップS2)、その濃度ムラパターンなどに基づいて現像変動パターンデータを構築する(ステップS3)。その後、制御手段は、現像変動パターンデータなどに基づいて現像バイアスを周期変動させながら中間調濃度ムラ検知用トナー像を形成した後(ステップS4)、その中間調濃度ムラ検知用トナー像の濃度ムラパターンを検知する(ステップS5)。更に、制御手段は、その濃度ムラパターンなどに基づいて帯電変動パターンデータを構築した後(ステップS6)、上記S2で検知しておいたベタ濃度ムラ検知用トナー像の濃度ムラパターンに基づいて潜像変動パターンデータを構築する(ステップS7)。最後に、制御手段は、この制御を開始する直前まで記憶していた現像変動パターンデータ、帯電変動パターンデータ、潜像変動パターンデータのそれぞれを、この制御によって求めた新たなデータに更新する(ステップS8)。制御手段は、このような一連の処理フローを、Y,C,M,Kのそれぞれについて個別に実施する。実施については、一色だけの処理を順に行ってもよいし、二色以上の処理を並行して行ってもよい。
(図21〜図28:画像形成装置1が備えるさらなる構成)
続いて、図21〜図28を参照して、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1が備える、印刷濃度の補正に関するさらなる構成について説明する。
(ADC115および補正部500)
図21は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の一部の構成を示す図である。本実施形態の画像形成装置1は、図21に示すように、制御部110に、ADC(アナログ−デジタル変換器)115および補正部500をさらに備えている。ADC115は、トナー濃度センサ82から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。補正部500は、作像ユニット18の各センサ(トナー濃度センサ82、感光体回転センサ76、およびスリーブ回転センサ83)からの出力値に基づいて、印刷濃度の補正を行う。これにより、補正部500は、回転体(例えば、感光体20、現像スリーブ81等)の不具合等に起因する、サンプリング周期の変動による印刷ムラを解消させることができるようになっている。以下、この点について、具体的に説明する。
(補正部500の機能構成)
図22は、本発明の第1実施形態に係る補正部500の機能構成を示す図である。図22に示すように、補正部500は、データ入力部510、補正処理部520、データ格納部530、CPU IF部540、割り込み制御/エラー処理部550、および処理対象データ制御部560を備える。
データ入力部510は、ADC IF部511、センサIF部512、バッファ513、バッファ514、バッファ515、およびバッファ516を有する。ADC IF部511は、ADC115から出力されたトナー濃度値を受信する。また、ADC IF部511は、シリアルデータとして入力されたトナー濃度値を、パラレルデータに変換する。センサIF部512は、感光体回転センサ76およびスリーブ回転センサ83から出力された、姿勢タイミング信号(以下、「HP(Home Position)信号」と示す)を受信する。このHP信号は、回転体(感光体20およびデータ入力部510)の回転周期を特定するために利用可能である。例えば、一のHP信号を受信してから、次のHP信号を受信するまでの間を、回転体の1回転周期(HP周期)として特定することができる。
バッファ513〜516は、センサIF部512が受信したHP信号に基づいて、ADC IF部511が受信したトナー濃度値を、回転体毎に、偶数周(0,2,4,・・・周)と奇数周(1,3,5,・・・周)とを区別して格納する。
具体的には、バッファ513は、ADC IF部511が受信したトナー濃度値のうち、感光体20の偶数周において検出されたトナー濃度値を格納する。また、バッファ514は、ADC IF部511が受信したトナー濃度値のうち、感光体20の奇数周において検出されたトナー濃度値を格納する。
また、バッファ515は、ADC IF部511が受信したトナー濃度値のうち、現像スリーブ81の偶数周において検出されたトナー濃度値を格納する。また、バッファ516は、ADC IF部511が受信したトナー濃度値のうち、現像スリーブ81の奇数周において検出されたトナー濃度値を格納する。
補正処理部520は、平均化処理部521、付着量変換処理部522、および直交検波部523を有する。平均化処理部521は、上述した平均化処理を行う。付着量変換処理部522は、上述した付着量変換処理を行う。直交検波部523は、上述した直交検波を行う。補正処理部520は、一連の補正処理(平均化処理、付着量変換処理、および直交検波)を、回転体毎に、偶数周と奇数周とを区別して(すなわち、バッファ513〜516毎に)行う。
例えば、補正処理部520は、互いに並列処理が可能な第1〜第4の処理部を有して構成される。第1の処理部は、バッファ513に格納された、感光体20の偶数周用の処理対象データに対する一連の補正処理を行う。第2の処理部は、バッファ514に格納された、感光体20の奇数周用の処理対象データに対する一連の補正処理を行う。第3の処理部は、バッファ515に格納された、現像スリーブ81の偶数周用の処理対象データに対する一連の補正処理を行う。第4の処理部は、バッファ516に格納された、現像スリーブ81の奇数周用の処理対象データに対する一連の補正処理を行う。
データ格納部530は、補正処理部520による処理結果データ(すなわち、第1〜第4の処理部の各々の処理結果データ)を格納する。データ格納部530は、処理結果データを格納すると、割り込み制御/エラー処理部550へ終了割込みを出力する。
CPU IF部540は、CPUとのインターフェースを行う。例えば、割り込み制御/エラー処理部550からの終了割込みがCPUによって検知されると、CPUは、CPU IF部540を介して、データ格納部530に格納されている処理結果データを読み取る。
処理対象データ制御部560は、回転体(感光体20および現像スリーブ81)のHP周期毎(回転周期毎)に、ADC IF部511が受信したトナー濃度値のうち、補正処理部520による一連の補正処理の処理対象とする所定数の処理対象データを決定する。なお、処理対象データ制御部560による処理対象データを決定する処理の詳細については、図23以降で説明する。
(処理対象データ制御部560によって決定される処理対象データ)
図23および図24は、本発明の第1実施形態に係る処理対象データ制御部560によって決定される処理対象データを示す概念図である。図23は、HP周期が理論値よりも短い場合において、処理対象データ制御部560によって決定される処理対象データを示している。一方、図24は、HP周期が理論値よりも長い場合において、処理対象データ制御部560によって決定される処理対象データを示している。
ここで、補正部500においては、HP周期(HP位置検出〜次のHP位置検出までの周期(実時間))の理論値に応じて、1周期分の処理対象データ数の所定数が予め定められている。しかしながら、回転体の周期変動が生じた場合、HP周期が理論値よりも短くなる場合または長くなる場合がある。この場合、処理対象データ制御部560は、以下のとおり、1周期分の処理対象データを決定する。
図23に示すように、HP周期が理論値よりも短い場合、1周目のデータ取得数が所定数に達する前に、2周目のHP(図中HP2)が検出されることとなる。この場合、処理対象データ制御部560は、それ以降、1周目のデータ取得数が所定数に達するまでのデータ(図中斜線部分)を、1周目の処理対象データとしてバッファに格納するとともに、2周目の処理対象データとしてもバッファに格納する。
一方、図24に示すように、HP周期が理論値よりも長い場合、1周目のデータ取得数が所定数に達した後も、2周目のHP(図中HP2)が検出されないこととなる。この場合、処理対象データ制御部560は、それ以降、2周目のHP(図中HP2)が検出されるまでのデータ(図中斜線部分)を、処理対象データとせずに破棄する。
このようにして、処理対象データ制御部560は、HP周期が理論値よりも短い場合、および、HP周期が理論値よりも長い場合のいずれにおいても、各HP周期について、所定数のデータを処理対象データとして決定する。
図25は、本発明の第1実施形態に係る処理対象データ制御部560によって決定される処理対象データの具体例を示す図である。ここでは、連続する3つのHP周期を例に説明する。また、ここでは、HP周期の理論値に応じた処理対象データの所定数を「624」とする。
図25(a)に示すように、3つのHP周期がいずれも理論値と一致する場合、各HP周期において、624個のデータが取得される。この場合、処理対象データ制御部560は、各HP周期について、そのHP周期に取得された624個のデータを処理対象データとして決定する。
また、図25(b)に示すように、1周目のHP周期が理論値よりも長い場合、そのHP周期において、624個以上のデータが取得される。この場合、処理対象データ制御部560は、624個までのデータをそのHP周期の処理対象データとし、それ以降のデータ(図中斜線部分)を処理対象データとせずに破棄する。この場合、3つのHP周期の補正処理に必要なデータ数は、624×3+1周目に破棄したデータの数となる。
また、図25(c)に示すように、1周目のHP周期が理論値よりも短い場合、そのHP周期において、624個未満のデータが取得される。この場合、処理対象データ制御部560は、そのHP周期に取得された624個未満のデータと、その次の2周目のHP周期に取得されたデータ(図中斜線部分)とを足し合わせた624個のデータを、そのHP周期の処理対象データとする。この場合、3つのHP周期の補正処理に必要なデータ数は、624×3−1周目に不足したデータの数となる。
なお、図25では、感光体20に対する処理対象データの決定方法について説明したが、現像スリーブ81に対する処理対象データの決定方法も同様である(但し、感光体20と現像スリーブ81とではHP周期(すなわち、処理対象データの所定数)が異なる)。
(補正部500が用いる各種信号のタイミングチャート)
図26は、本発明の第1実施形態に係る処理対象データ制御部560が用いる各種信号のタイミングチャートである。
図26(1段目)に示すHP信号は、感光体回転センサ76から供給された信号であり、感光体20のHP周期を特定可能な信号である。
図26(4,5段目)に示すスタート信号は、HP信号のアサートを検知して生成されるパルスである。図26に示す例では、HP信号のアサートが検知される毎に、偶数周の開始を表すevenスタート信号(4段目)と、奇数周の開始を表すoddスタート信号(5段目)とが、交互に生成されている。
図26(2,3段目)に示すHPイネーブル信号は、所定数のデータを取得するまでの期間をイネーブル期間とし、このイネーブル期間においてHとなる信号である。図26に示す例では、偶数周用のevenHPイネーブル信号(2段目)と、奇数周用のoddHPイネーブル信号(3段目)とが示されている。evenHPイネーブル信号は、evenスタート信号のパルス発生とともに、イネーブル期間が開始される。一方、oddHPイネーブル信号は、oddスタート信号のパルス発生とともに、イネーブル期間が開始される。
なお、上記各HPイネーブル信号のイネーブル期間は、HP周期の理論値に応じた所定数のデータを取得するまでの期間である。したがって、実際のHP周期に理論値からのずれが生じた場合、上記各HPイネーブル信号のイネーブル期間は、HP信号の周期と異なるものとなる。
なお、図26では、感光体20に対する補正処理に用いられる各種信号について説明したが、現像スリーブ81に対する補正処理についても、同様に、現像スリーブ81のHP周期に応じたHP信号、イネーブル信号、およびスタート信号が用いられる(但し、感光体20と現像スリーブ81とではHP周期(すなわち、処理対象データの所定数)が異なる)。
(処理対象データ制御部560による処理対象データの決定処理の具体例)
図27および図28は、本発明の第1実施形態に係る処理対象データ制御部560による処理対象データの決定処理の具体例を示す図である。ここでは、HP周期の理論値に応じた処理対象データの所定数を「624」とする。また、ここでは、ADC115によって取得されたトナー濃度データを、「ADC取得データ」と示す。
図27は、1周目のHP周期が理論値よりも短い場合を例示するものである。図27の例において、まず、1周目のHP周期の開始を示すevenスタート信号のパルス発生とともに、evenHPイネーブル信号のイネーブル期間が開始される。この場合、処理対象データ制御部560は、以降のADC取得データを、1周目のHP周期の処理対象データ0,1,2,3・・・として決定していく。
続いて、2周目のHP周期の開始を示すoddスタート信号のパルス発生とともに、oddHPイネーブル信号のイネーブル期間が開始される。この場合、処理対象データ制御部560は、以降のADC取得データを、2周目のHP周期の処理対象データ0,1,2,3・・・として決定していく。
図27に示す例では、1周目のHP周期の処理対象データ620(621個目の処理データ)が決定された時点で、2周目のHP周期が開始されている。この場合、処理対象データ制御部560は、1周目のHP周期に取得された621個のADC取得データと、その次の2周目のHP周期に取得された3個のADC取得データ(図中I1)とを足し合わせた624個のADC取得データを、1周目のHP周期の処理対象データとして決定する。すなわち、2周目のHP周期の処理対象データ0,1,2は、1周目のHP周期の処理対象データ621,622,623としても使用される。これにより、1周目のHP周期の処理対象データとして、所定数である624個のデータが決定されることとなる。
図28は、1周目のHP周期が理論値よりも長い場合を例示するものである。図28の例において、まず、1周目のHP周期の開始を示すevenスタート信号のパルス発生とともに、evenHPイネーブル信号のイネーブル期間が開始される。この場合、補正部500は、以降のADC取得データを、1周目のHP周期の処理対象データ0,1,2,3・・・として決定していく。
続いて、2周目のHP周期の開始を示すoddスタート信号のパルス発生とともに、oddHPイネーブル信号のイネーブル期間が開始される。この場合、補正部500は、以降のADC取得データを、2周目のHP周期の処理対象データ0,1,2,3・・・として決定していく。
図27に示す例では、1周目のHP周期の処理対象データ623(624個目の処理データ)が決定された時点で、2周目のHP周期がまだ開始されていない。この場合、補正部500は、2周目のHP周期が開始されるまでに取得したADC取得データのうち、624個を超える部分のADC取得データ(図中I2)を破棄する。これにより、1周目のHP周期の処理対象データとして、所定数である624個のデータが決定されることとなる。
なお、図27および図28では、感光体20に対する処理対象データの決定方法について説明したが、現像スリーブ81に対する処理対象データの決定方法も同様である(但し、感光体20と現像スリーブ81とではHP周期(すなわち、処理対象データの所定数)が異なる)。
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1は、回転体(感光体20および現像スリーブ81)の回転周期毎に、所定数のトナー濃度値を処理対象データとして決定し、この処理対象データを用いて、所定の補正処理(平均化処理、付着量変換処理、および直交検波)を行うようにしている。このため、画像形成装置1によれば、回転体の回転周期に時間的なムラが生じた場合であっても、印刷濃度を補正するための補正データの変動が生じないようにすることができる。したがって、画像形成装置1によれば、印刷濃度の補正を高精度に行うことができる。
〔第2実施形態〕
図29は、本発明の第2実施形態に係る補正部500'の機能構成を示す図である。ここでは、第1実施形態からの変更点について説明する。図29に示す補正部500'は、第2データ格納部570をさらに備える点で、第1実施形態(図22)の補正部500と異なる。この第2実施形態の補正部500'は、CPU(図21参照)からCPU IF部540を介して入力されたモード選択信号を、データ入力部510および補正処理部520に供給するように構成されている。そして、補正部500'は、このモード選択信号により、回転体の変動要因を伴う第1の補正処理(HP検出モードである場合)と、回転体の変動要因を伴わない第2の補正処理(HP検出モードでない場合であって、プロセスコントロールを実施する場合)とを、選択的に切り替えることができるように構成されている。以下、それぞれの場合について説明する。
(直交検波を実施しない選択がなされた場合)
モード選択信号によって直交検波を実施しない選択がなされた場合、補正部500'は、回転体の変動要因を伴わない第2の補正処理として、直交検波を実施せずに、平均化処理および付着量変換処理の一方または双方を実施する。そして、補正部500'は、ADC取得データ、平均化データ、および付着量変換値の少なくともいずれか1つを、処理結果データとして、第2データ格納部570へ格納する。すなわち、この場合、第2データ格納部570に格納されている処理結果データが、CPUによって読み出されるようになる。なお、この場合、直交検波を実施しない故に、回転体の回転ムラを考慮する必要はないため、HP信号の起点に同期したデータ取得は必要ない。そのため、補正部500'は、補正処理(平均化処理および付着量変換処理の一方または双方)を回転体毎に行う必要はなく、HP周期毎に行う必要もない。したがって、補正部500'は、バッファ513〜516のいずれか1つに格納された処理対象データの処理系統から、処理結果データを取得すればよい。例えば、図29に示す例では、バッファ513に格納された処理対象データ(感光体20の偶数周におけるデータ)の処理系統から、処理結果データを取得するようにしている。
(直交検波を実施する選択がなされた場合)
モード選択信号によって直交検波を実施する選択がなされた場合、補正部500'は、回転体の変動要因を伴う第1の補正処理として、第1実施形態で説明したように、回転体毎、且つ、HP信号に基づくHP周期毎に、所定数の処理対象データを決定する。そして、補正部500'は、回転体毎に、偶数周と奇数周とで別々に、決定された所定数の処理対象データを用いて、一連の補正処理(平均化処理、付着量変換処理、および直交検波)を実施する。そして、補正部500'は、一連の補正処理の処理結果データを、データ格納部530へ格納する。すなわち、この場合、データ格納部530に格納されている処理結果データが、CPUによって読み出されるようになる。
(補正部500'による処理の手順)
図30は、本発明の第2実施形態に係る補正部500'による処理の手順を示すフローチャートである。
まず、ADC IF部511が、ADC115から出力されたトナー濃度値を取得する(ステップS3001)。次に、データ入力部510が、CPU(図21参照)からCPU IF部540を介して入力されたモード選択信号に基づいて、HP検出モードか否かを判断する(ステップS3002)。
ステップS3002において、HP検出モードではないと判断された場合(ステップS3002:No)、データ入力部510は、ステップS3001で取得されたトナー濃度値を、そのまま処理対象データとして、バッファ513へ格納する(ステップS3003)。そして、平均化処理部521が、バッファ513に格納された処理対象データを用いて、平均化処理を行う(ステップS3004)。さらに、付着量変換処理部522が、バッファ513に格納された処理対象データを用いて、付着量変換処理を行う(ステップS3005)。そして、補正処理部520が、ステップS3004,S3005の処理結果データを第2データ格納部570に格納して(ステップS3006)、補正部500'は、ステップS3013へ処理を進める。
一方、ステップS3002において、HP検出モードであると判断された場合(ステップS3002:Yes)、処理データ制御部560が、ステップS3001で取得されたトナー濃度値の中から、回転体毎且つHP周期毎に、処理対象データを決定する(ステップS3007)。そして、データ入力部510が、ステップS3004で決定された処理対象データを、回転体別且つHP周期別(偶数周奇数周別)に、バッファ513〜516に格納する(ステップS3008)。
続いて、平均化処理部521が、バッファ513〜516に格納された処理対象データを用いて、回転体別且つHP周期別(偶数周奇数周別)に、平均化処理を行う(ステップS3009)。また、付着量変換処理部522が、バッファ513〜516に格納された処理対象データを用いて、回転体別且つHP周期別(偶数周奇数周別)に、付着量変換処理を行う(ステップS3010)。さらに、直交検波部523が、バッファ513〜516に格納された処理対象データを用いて、回転体別且つHP周期別(偶数周奇数周別)に、直交検波を行う(ステップS3011)。そして、補正処理部520が、ステップS3009〜S3011の処理結果データをデータ格納部530に格納して(ステップS3012)、補正部500'は、ステップS3013へ処理を進める。
ステップS3013では、割り込み制御/エラー処理部550が、CPUへ終了割り込みを出力する。そして、補正部500'は、図31に示す一連の処理を終了する。
上記第2実施形態の補正部500'によれば、同一の回路で、回転体の変動要因を伴う第1の補正処理と、回転体の変動要因を伴わない第2の補正処理とを実現できるため、これらの補正処理にかかる回路規模を抑制することができる。
(変形例)
図31は、本発明の第2実施形態に係る補正部500'の変形例を示す図である。図31に示す補正部500''は、第2実施例の補正部500'の変形例であり、外部端子から入力されたモード選択信号を、データ入力部510および補正処理部520に供給するように構成されている。
この変形例によれば、一旦、外部端子から補正部500''へモード選択信号を供給すれば、補正部500''が実行する補正処理を、第1の補正処理または第2の補正処理に固定しておくことができる。すなわち、この変形例によれば、補正部500''が実行する補正処理が変更されない限り、補正部500''へモード選択信号を供給しなくてもよいため、補正部500''の制御に係る負荷を抑制することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。