本明細書に引用した全ての特許文献および非特文献の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
他に特に開示しない限り、本明細書で使用する用語「1つの」は、参照した特徴の1つ以上(つまり、少なくとも1つ)を含むことが意図されている。
存在する場合、他に特に記載されていない限り、全ての範囲は、包括的および結合可能である。例えば、「1〜5」の範囲が記載された場合、記載された範囲は、「1〜4」、「1〜3」、「1〜2」、「1〜2および4〜5」、「1〜3および5」などの範囲を含むと解釈すべきである。
用語「長鎖アシル−CoAシンテターゼ」、「長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼ」、「長鎖脂肪酸CoAリガーゼ」などは、本明細書では互換的に使用され、「ACoS」と略記することができる。EC登録番号6.2.1.3を有する本明細書のACoS酵素は、ATPによって提供されるエネルギーを使用して長い脂肪酸鎖から脂肪酸アシル−CoAへの活性化を触媒することができる。詳細には、ACoS酵素によって触媒される反応は次の通りである(「ACoS活性」):ATP+長鎖カルボキシレート+CoA(補酵素A)→AMP+二リン酸塩(PPi)+アシル−CoA。一般に、ACoS酵素は、真核細胞内のペルオキシソームタンパク質である。本明細書のACoS酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションは、ACoS酵素の増加した量の発現をもたらし、これは順に増加した量の長鎖脂肪酸から長鎖アシル−CoAへ活性化するために利用することができる。本明細書のACoS酵素は、EC登録番号2.3.1.86を有する「脂肪酸アシル−CoAシンターゼ」酵素ではない。
用語「シトクロムP450モノオキシゲナーゼ」、「CYP酵素」などは、本明細書では互換的に使用される。本明細書のCYP酵素は、二原子酸素(O2)の1個の原子の有機基質への移動(典型的にはアルコール基を産生する)を触媒することができ、その間に他方の酸素原子は水に還元される。CYP酵素は、酵素委員会(EC)登録番号1.14.14.1を有する。CYP酵素は、ω−ヒドロキシラーゼ錯体(下記)内に含まれる可能性がある。本明細書のCYP酵素は、一般に、電子移動のためにCPR酵素を利用するクラスIIのP450酵素として分類されている。一般に、CYP酵素は、膜結合型である。CYP酵素は、一般に、参照により本明細書に組み込まれるUrlacher and Girhard(Cell 30:26−36)およびvan Bogaert et al.(FEBS Journal 278:206−221)に記載されている。本明細書のCYP酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションは、増加した量のCYP酵素の発現をもたらし、これは順に増加した量のω−ヒドロキシラーゼ錯体を形成するために利用することができる。
用語「シトクロムP450レダクターゼ」、「NADPH−シトクロムP450レダクターゼ」、「CPR酵素」、「NADPH−フェリヘムタンパク質レダクターゼ」などは、本明細書では互換的に使用される。CPR酵素は、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)およびFMN(フラビンモノヌクレオチド)レドックス補因子を介して、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ内でのヘムチオレート部分の還元をそれに電子を移動させることによって触媒することができる。CPR酵素は、EC登録番号1.6.2.4を有する。CPR酵素は、ω−ヒドロキシラーゼ錯体(下記)内に含まれる可能性がある。一般に、CPR酵素は、膜結合型である。CPR酵素機能は、一般に、参照により本明細書に組み込まれるPorter and Kasper(Biochemistry 25:1682−1687)およびElmore and Porter(J.Biol.Chem.277:48960−48964)に記載されている。本明細書のCPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションは、増加した量のCPR酵素の発現をもたらし、これは順に増加した量のω−ヒドロキシラーゼ錯体を形成するために利用することができる。
用語「ω−ヒドロキシラーゼ錯体」、「ヒドロキシラーゼ錯体」、「ヒドロキシラーゼ酵素錯体」、「CPR−P450系」などは、本明細書では互換的に使用される。本明細書のω−ヒドロキシラーゼ錯体は、CYP酵素およびCPR酵素を含み、例えばアルカン、脂肪族アルコール、脂肪族アルデヒドおよび脂肪酸などの所定の有機基質のω水酸化を実施することができる。一般に、ω−ヒドロキシラーゼ錯体は膜結合型である。酵母の小胞体(ER)膜内で発生するω水酸化は、典型的にはω酸化の第1工程である。
用語「脂肪族アルコールオキシダーゼ」(FAO)、「長鎖脂肪酸オキシダーゼ」、「長鎖アルコールオキシダーゼ」、「FAO酵素」などは、本明細書では互換的に使用される。FAO酵素は、EC登録番号1.1.3.20を有する。本明細書のFAO酵素は、次の反応:脂肪族アルコール+O2→脂肪族アルデヒド+H2O2(式中、脂肪族アルコールは好ましくはω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸であり、および脂肪族アルデヒドは好ましくはω−アルド長鎖脂肪酸であり、それぞれは少なくとも炭素10個(例えば、10〜24個)の炭素鎖長を有する)を触媒することができる。一般に、FAO酵素は、酵母細胞内のペルオキシソームタンパク質である。
用語「脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ」(FADH)、「長鎖脂肪酸デヒドロゲナーゼ」、「ADH酵素」、「FADH酵素」などは、本明細書では互換的に使用される。FADH酵素は、EC登録番号1.1.1.1を有する。本明細書のFADH酵素は、次の反応:脂肪族アルコール+NAD+→脂肪族アルデヒド+NADH(式中、脂肪族アルコールは好ましくはω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸であり、および脂肪族アルデヒドは好ましくはω−アルド長鎖脂肪酸であり、それぞれは少なくとも炭素10個(例えば、10〜24個)の炭素鎖長を有する)を触媒することができる。一般に、FADH酵素は、酵母細胞内の小胞体膜タンパク質である。FADH酵素は、典型的には補因子としてのZn2+もしくはFeカチオンを使用する。
用語「脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ」(FALDH)、「長鎖アルデヒドデヒドロゲナーゼ」、「FALDH酵素」などは、本明細書では互換的に使用される。FALDH酵素は、EC登録番号1.2.1.48を有する。本明細書のFALDH酵素は、次の反応:脂肪族アルデヒド+NAD++H2O→LCDA+NADH+2H+(式中、脂肪族アルデヒドは、好ましくは少なくとも炭素10個(例えば、10〜24個)の炭素鎖長を有するω−アルド長鎖脂肪酸である)(好ましいLCDAについては、本明細書で詳細に開示する)を触媒することができる。一般に、FALDH酵素は、酵母細胞内のペルオキシソームタンパク質および/または小胞体膜タンパク質である。
本明細書の「工学的LCDA生成経路」は、例えば:
(i)ACoS酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、および
(ii)CYP酵素および/またはCPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション(すなわち、ω−ヒドロキシラーゼのアップレギュレーション)を含むことができる。
そのような経路は、例えば、長鎖脂肪酸含有基質からLCDA生成物を生成することができる。
本明細書で使用する用語「ω酸化」は、ω炭素(脂肪酸のカルボキシル基から最も離れている炭素)がカルボン酸基に酸化される脂肪酸代謝経路を意味する(図1を参照されたい)。ω酸化の第1工程は、ω炭素へのヒドロキシル(OH)基の添加を触媒するω−ヒドロキシラーゼ錯体によって実施され、結果としてω−ヒドロキシ脂肪酸が生じる。ω酸化の次の工程は、脂肪族アルコールオキシダーゼ(例えば、EC登録番号1.1.3.20)または脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ(例えば、EC登録番号1.1.1.66、1.1.1.192)によるω−ヒドロキシル基からアルデヒド(C=O)基への酸化を含み、結果としてω−アルド脂肪酸が生じる。ω酸化の最終工程は、脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ(例えば、EC登録番号1.2.1.3、1.2.1.48)によるアルデヒド基からカルボキシル(COOH)基(カルボン酸基)への酸化を含み、結果としてジカルボン酸が生じる。長鎖脂肪酸のω酸化の生成物は、長鎖ジカルボン酸(LCDA)である。
本明細書の用語「β酸化」は、脂肪酸がその脂肪酸のカルボキシル末端からある時点に2個の炭素の除去によって異化されるプロセスを意味する。β酸化は、典型的には酵母内のペルオキシソーム内でのみ発生する。ペルオキシソームは、膜に包まれた、様々なオキシドレダクターゼを含有する細胞質小器官である。本明細書の脂肪酸のβ酸化の遮断は、例えば、ペルオキシソーム発生を破壊する工程、および/または1つ以上のβ酸化経路酵素の発現をダウンレギュレートする工程によって実施できる。
用語「ペルオキシソームタンパク質」、「ペルオキシソーム関連性タンパク質」などは、本明細書では互換的に使用される。ペルオキシソームタンパク質は、ペルオキシソーム発生に関係する、および/またはタンパク質がペルオキシソーム構造および/または代謝機能(例えば、β酸化経路)を維持することに関係するペルオキシソーム内に所在するタンパク質である。本明細書のペルオキシソームタンパク質の例としては、Pexタンパク質およびPoxタンパク質が挙げられる。
用語「ペルオキシソーム生物発生因子」、「ペルオキシソーム生物発生因子タンパク質」、「ペルオキシン」、「Pexタンパク質」などは、本明細書では互換的に使用され、ペルオキシソーム生物発生に関係する、および/または細胞タンパク質をペルオキシソーム内に持ち込むプロセスに関係しているタンパク質を意味する。例えば、Pexタンパク質をコードする遺伝子もしくはオープンリーディングフレームなどのポリヌクレオチド配列の略語は、例えば、「PEX」または「PEXポリヌクレオチド」またはPEX遺伝子」と呼ぶことができる。Pex配列の命名方式は、Distel et al.(J.Cell Biol.135:1−3)によって記載されている。これまでに、少なくとも32の異なるPEX配列が様々な真核生物において同定されている。次の真菌Pexタンパク質:Pex1p、Pex2p、Pex3p、Pex3Bp、Pex4p、Pex5p、Pex5Bp、Pex5Cp、Pex5/20p、Pex6p、Pex7p、Pex8p、Pex10p、Pex12p、Pex13p、Pex14p、Pex15p、Pex16p、Pex17p、Pex14/17p、Pex18p、Pex19p、Pex20p、Pex21p、Pex21Bp、Pex22p、Pex22p様およびPex26pは、Kiel et al.(Traffic 7:1291−1303)によって同定された。Hong et al.(米国特許出願公開第2009/0117253号明細書)は、酵母における所定のPEX配列のダウンレギュレーションが脂質および脂肪酸蓄積を増強することを開示した。
本明細書の用語「PEX3」は、ペルオキシソーム生物発生因子3(Pex3タンパク質[「Pex3p」])をコードするポリヌクレオチド配列を意味する。Pex3タンパク質は、ペルオキシソーム生物発生中のペルオキシソーム膜形成において重要な役割を果たすと考えられるペルオキシソーム内在性膜タンパク質である(例えば、Baerends et al.,J.Biol.Chem.271:8887−8894;Bascom et al.,Mol.Biol.Cell 14:939−957を参照されたい)。
用語「ペルオキシソームアシル−CoAオキシダーゼ」、「Poxタンパク質」、「Aoxタンパク質」などは、本明細書では互換的に使用され、ペルオキシソーム内で発生するβ酸化経路に含まれるタンパク質を意味する。EC登録番号が1.3.3.6である本明細書のPoxタンパク質は、典型的には次の反応:脂肪酸アシル−CoA+O2→トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA+H2O2を触媒する。例えば、Poxタンパク質をコードする遺伝子もしくはオープンリーディングフレームなどのポリヌクレオチド配列の略語は、例えば、「POX」、「POXポリヌクレオチド」または「POX遺伝子」(例えば、POX4)と呼ぶことができる。Poxタンパク質の例は、Pox−1、−2、−3、−4、−5および−6である。
用語「ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ」、「アシル−CoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ」、「ジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ」、「DGAT」、「DAGAT」などは、本明細書では互換的に使用される。DGAT酵素は、EC登録番号2.3.1.20を有し、アシル−CoAおよび1,2−ジアシルグリセロール(DAG)をトリアシルグリセロール(TAG)およびCoAに変換させる(これによりTAG生合成の最終工程に含まれる)。DGAT1およびDGAT2は、本明細書のDGATSの例である。DGAT1酵素は、アシル−CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ酵素と相同性を共有する(Lardizabal et al.,J.Biol.Chem.276:38862−38869)。
用語「クマロイル−CoAシンテターゼ」、「4−クマロイル−CoAシンテターゼ」、「4−クマル酸−CoAリガーゼ」などは、本明細書では互換的に使用される。EC登録番号6.2.1.12を有する本明細書のクマロイル−CoAシンテターゼ酵素は、次の反応(「クマロイル−CoAシンテターゼ活性」):ATP+4−クマル酸+CoA→AMP+二リン酸+4−クマル酸+CoAを触媒することができる。
本明細書で使用する用語「長鎖」は、少なくとも10個の炭素原子、および典型的には24個までの炭素原子の直鎖を意味する。「長鎖脂肪酸」は、例えば、長さが10〜24個の炭素原子の鎖を有することができる。長鎖脂肪酸の炭素鎖内の炭素原子の数は、その脂肪族炭素(存在する場合は、CH3−、−CH2−および=CH−)およびカルボン酸基炭素(COOH)からなる。
用語「長鎖ジカルボン酸」(LCDA)、「長鎖二酸」、「長鎖二塩基酸」、「長鎖α,ω−ジカルボン酸」、「長鎖脂肪ジカルボン酸」などは、本明細書では互換的に使用される。LCDAは、長鎖脂肪酸の完全ω酸化の結果として生じるので、αおよびωカルボン酸基(すなわち、炭素鎖の各末端にあるCOOH)を有する。本明細書のLCDAは、例えば、長さが炭素原子10〜24個の鎖を有することができる。LCDAの炭素鎖内の炭素原子の数は、その脂肪族炭素(存在する場合は、−CH2−および=CH−)および両方のカルボン酸基の炭素からなる。例示するために、C18:0のLCDA(18炭素鎖長、二重結合なし)は、16のCH2基および2つのカルボキシル基を有する;およびC18:1のLCDA(18炭素鎖長、1つの二重結合)は、14のCH2基、2つのCH基および2つのカルボキシル基を有する。本明細書のLCDAは、好ましくは脂肪族炭素のいずれにも有機側鎖を有していない直鎖状である。
本明細書の「長鎖アシル−CoA」もしくは「長鎖脂肪酸アシル−CoA」は、長鎖脂肪酸が補酵素A(CoA)とチオエステル結合している化合物を意味する。長鎖アシル−CoAは、長鎖脂肪酸基質上の長鎖アシル−CoAシンテターゼ活性の生成物である。本明細書の「長鎖脂肪酸活性化」は、それにより長鎖脂肪酸が長鎖アシル−CoAシンテターゼ活性によって細胞内で長鎖アシル−CoAに変換させられるプロセスを意味する。
用語「長鎖脂肪酸含有基質」、「長鎖脂肪酸を含む基質」、「長鎖脂肪酸含有供給原料」などは、本明細書では互換的に使用される。生物学的もしくは生物学的由来起源から得られる本明細書の任意の長鎖脂肪酸含有基質は、所望であれば「再生可能」または「生体再生可能」であると特徴付けることができる。長鎖脂肪酸含有基質は、例えば、「遊離長鎖脂肪酸」(例えば、非エステル化もしくは非アミド結合長鎖脂肪酸)または「結合長鎖脂肪酸」(例えば、エステル化もしくはアミド結合長鎖脂肪酸)を含むことができる。
本明細書の遊離長鎖脂肪酸のCOOH基は、例えばエステル結合(すなわち、遊離長鎖脂肪酸はエステル化されていない)またはアミド結合(すなわち、遊離長鎖脂肪酸はアミド結合していない)などの結合中には含まれていない。
結合長鎖脂肪酸は、例えば、「エステル化長鎖脂肪酸」または「アミド結合長鎖脂肪酸」であってよい。
長鎖脂肪酸の構造は、「X:Y」(式中、Xは脂肪酸内の炭素(C)原子の総数であり、Y(もしあれば)は二重結合の数である)の単純な表記法によって表示できる。「飽和脂肪酸」対「不飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸」対「多価不飽和脂肪酸」(PUFA)および「ω−6脂肪酸」対「ω−3脂肪酸」の区別に関する追加の情報は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7238482号明細書に提供されている。
本明細書の「グリセリド分子」もしくは「グリセリド」は、グリセロールにエステル化されたそれぞれ1個、2個または3個の脂肪酸を含有するモノ−、ジ−および/またはトリグリセリド(または、それぞれモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよび/またはトリアシルグリセロールと呼ぶことができる)を意味する。グリセリド分子は、中性脂質の例である。
本明細書の「脂肪酸アルキルエステル」は、脂肪酸のカルボン酸基とアルキルアルコールのヒドロキシル基との間のエステル結合によって形成されたエステルを意味する。例示するために、本明細書の脂肪酸アルキルエステルは、例えば、脂肪酸からメタノールへのエステル化によって生成される脂肪酸メチルエステルであってよい。脂肪酸アルキルエステルは、脂肪酸エステルの1つの例である。
本明細書で使用する「エステル基」は、エーテル結合に隣接するカルボニル基(C=O)を有する有機部分を意味する。エエステル基の一般式は:
である。
エステル化長鎖脂肪酸に関して、上記のエステル式内のRは、エステル化脂肪酸の脂肪族炭素原子の直鎖を含む。R’基は、例えば、アルキル基、アリール基または他の有機基を意味する。エステル基の例は、グリセロールにエステル化された、それぞれ1個、2個または3個の脂肪酸を含有するモノ−、ジ−およびトリグリセリド内で見いだされる。上記の式を参照すると、モノグリセリドのR’基は、その分子のグリセロール部分を意味するであろう;ジグリセリドもしくはトリグリセリドのR’基は、それぞれ1個もしくは2個の他の脂肪酸にエステル結合したグリセロール部分を意味するであろう。
本明細書で使用する用語「脂質」は、脂肪可溶性(すなわち、親油性)分子を意味する。脂質の一般的概説は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0093543号明細書に提供されている(その中の表2を参照されたい)。長鎖脂肪酸含有基質として本明細書で有用な脂質の例としては、グリセロ脂質(例えば、モノ−、ジ−およびトリアシルグリセロール)、脂肪酸アシル(例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド)、グリセロリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸)、スフィンゴ脂質(例えば、セラミド、ホスホ−スフィンゴ脂質、例えばスフィンゴミエリン、グリコスフィンゴ脂質、例えばガングリオシドおよびセレブロシド)およびサッカロ脂質(その中で脂肪酸が糖骨格に直接結合している化合物)(例えば、アシルアミノ糖、アシルアミノ−グリカン、アシルトレハロース)が挙げられる。本明細書の脂肪酸含有基質は、所望であれば、脂肪酸含有脂質であると特徴付けることができる。
本明細書で使用する用語「油」は、25℃で液体である脂質を意味する;油は、有機溶媒中では疎水性および可溶性である。油は、典型的には主としてトリアシルグリセロールから構成されるが、さらに他の中性脂質の例である、ならびにリン脂質および遊離脂肪酸を含有することができる。
本明細書で使用する用語「脂肪酸留出物」、「油の脂肪酸留出物」などは、特定タイプの油の脂肪酸を含む組成物を意味する。例えば、パーム脂肪酸留出物は、パーム油中に存在する脂肪酸を含む。脂肪酸留出物は、一般に植物油精製プロセスの副生成物である。
本明細書の用語「細胞」は、原核細胞または真核細胞などの任意のタイプの細胞を意味する。真核細胞は、核および他の膜で包まれた構造(細胞小器官)を有するが、他方、原核細胞は核を持たない。本明細書の「微生物細胞」(微生物)は、例えば、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、原核細胞、原生生物細胞(例えば、藻類細胞)、鞭毛虫細胞、黄色植物細胞または卵菌細胞を意味することができる。本明細書の原核細胞は、典型的には、細菌細胞を意味する。
本明細書の用語「酵母」は、主として単細胞の形態で存在する真菌種を意味する。または、酵母は、「酵母細胞」と呼ぶこともできる。本明細書の酵母は、例えば、従来型酵母または非従来型酵母のいずれかであると特徴付けることができる。
本明細書の用語「従来型酵母」(「モデル酵母」は、一般に、サッカロミセス(Saccharomyces)属またはシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属酵母種を意味する。所定の実施形態における従来型酵母は、非相同末端結合(NHEJ)によって媒介される修復プロセスよりも相同組換え(HR)DNA修復プロセスを好む酵母である。
本明細書の用語「非従来型酵母」は、サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母種でもシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属酵母種でもない任意の酵母を意味する。非従来型酵母は、参照により本明細書に組み込まれるNon−Conventional Yeasts in Genetics,Biochemistry and Biotechnology:Practical Protocols(K.Wolf,K.D.Breunig,G.Barth,Eds.,Springer−Verlag,Berlin,Germany,2003)およびSpencer et al.(Appl.Microbiol.Biotechnol.58:147−156)において記載されている。非従来型酵母の一部の菌株は、追加して(またはその代りに)HRによって媒介される修復プロセスよりもNHEJ DNA修復プロセスを好む酵母である可能性がある。この考えに沿った非従来型酵母の定義−HRよりもNHEJを優先する傾向−は、参照により本明細書に組み込まれるChen et al.(PLoS ONE 8:e57952)によってさらに開示されている。本明細書の好ましい非従来型酵母は、ヤロウィア(Yarrowia)属の酵母(例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))である。
遺伝子もしくはポリヌクレオチド配列の発現を説明するために使用する場合、用語「ダウンレギュレートされた」、「ダウンレギュレーション」、「破壊」、「阻害」、「不活性化」および「サイレンシング」などは、ポリヌクレオチド配列の転写が減少または排除される例を言及するために、本明細書では互換的に用いられる。これは、ポリヌクレオチド配列からのRNA転写産物の減少または排除を生じさせ、結果として(遺伝子がORFを含む場合は)ポリヌクレオチド配列に由来するタンパク質発現の減少もしくは排除をもたらす。または、ダウンレギュレーションは、ポリヌクレオチド配列によって生成される転写産物からのタンパク質翻訳が減少させられる、または排除される場合を意味することができる。さらにまたは、ダウンレギュレーションは、ポリヌクレオチド配列によって発現されるタンパク質の活性が低下する場合を意味することができる。細胞内での上記のプロセス(転写、翻訳、タンパク質活性)のいずれかにおける減少は、好適なコントロール細胞内での対応するプロセスと比較して少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%である可能性がある。ダウンレギュレーションは、例えば、ターゲティング事象(例えば、インデル、ノックアウト、ノックイン)から、またはアンチセンスもしくはRNAiテクノロジーを使用した結果として生じる可能性がある。
用語「ターゲティング」、「遺伝子ターゲティング」、「DNAターゲティング」、「編集」、「遺伝子編集」、および「DNA編集」などは、本明細書では互換的に使用される。本明細書のDNAターゲティングは、例えば細胞の染色体中などの、特定のDNA配列でのインデル、ノックアウトもしくはノックインの導入であってよい。例えば相同組換え(HR)などの微生物細胞内でのターゲティングのための手段は、当分野において公知であり、適宜に適用することができる。例えば、酵母細胞内で実施できる様々なHR手法は、参照により本明細書に組み込まれるDNA Recombination:Methods and Protocols:1st Edition(H.Tsubouchi,Ed.,Springer−Verlag,New York,2011)に開示されている。HRプロセスは、例えば、DNAターゲット部位でインデル、ノックアウトまたはノックインを導入するために使用できる。
用語「ノックアウト」、「遺伝子ノックアウト」、「遺伝的ノックアウト」、「破壊された」などは、本明細書では互換的に使用される。ノックアウトは、本明細書中で、DNAターゲティングによって部分的または完全に無効にされている、本明細書の細胞のDNA配列を表す;そのノックアウト前のそのようなDNA配列は、例えば、アミノ酸配列をコードしていてもよい、または調節機能(例えば、プロモーター)を有していてもよい。ノックアウトは、例えば、DNA配列欠失を提供するための特定の方法を表す。ノックアウトは、例えば、突然変異誘発プロセス(例えば、インデル形成をもたらす)もしくは(例えば、HRによる)配列の特異的除去によって生成することができ、例えばタンパク質および/またはその調節配列をコードするポリヌクレオチドなどのDNA配列の機能を減少させる、または完全に破壊する。本明細書のノックアウトされたDNA配列ポリヌクレオチドは、さらにまた部分的もしくは完全に破壊されている、または部分的もしくは完全にダウンレギュレートされていると特徴付けることができる。
用語「ノックイン」、「遺伝子ノックイン」および「遺伝的ノックイン」などは、本明細書では互換的に使用される。ノックインは、DNAターゲティングによる細胞内での特異的DNA配列でのDNA配列の置換もしくは挿入を表す。ノックインの例としては、異種アミノ酸コーディング配列のポリヌクレオチド配列および/またはその調節配列のタンパク質コーディング領域内への特異的挿入が挙げられる。そのような挿入は、例えば、標的配列のダウンレギュレーションを生じさせることができる。ノックインは、例えば、(例えば、HRによる)配列の特異的挿入によって生成することができる。
本明細書の用語「インデル」は、標的DNA配列中の1つまたは複数のヌクレオチド塩基の挿入もしくは欠失を意味する。そのような挿入もしくは欠失は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の塩基の挿入もしくは欠失であってよい。所定の実施形態におけるインデルは、いっそう大きく、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90または100塩基であってよい。インデルが遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)内に導入される場合は、インデルは多くの場合、フレームシフト突然変異を生じさせることによって、ORFによってコードされたタンパク質の野生型発現を破壊する。インデルは、例えば、突然変異誘発プロセスを使用して作成することができる。
用語「体積によるパーセント」、「体積パーセント」、「体積%」、「v/v%」などは、本明細書では互換的に使用される。溶液中の溶質の体積によるパーセントは、式:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%を使用して決定できる。
用語「重量によるパーセント」、「重量パーセンテージ(wt%)」、「重量−重量パーセンテージ(%w/w)」などは、本明細書では互換的に使用される。重量によるパーセントは、それが組成物中、混合物中もしくは溶液中に含まれるかのように質量ベースでの物質のパーセンテージを意味する。
用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」などは、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、ヌクレオチド配列などを包含する。ポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖であり、任意選択的に合成、非天然もしくは改変ヌクレオチド塩基を含有するDNAもしくはRNAのポリマーであってよい。ポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたはそれらの混合物のうちの1つ以上のセグメントから構成されてよい。ヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)は、次の一文字略称によって呼ぶことができる:アデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれRNAまたはDNAに対して)に対して「A」、シチジル酸またはデオキシチジル酸(RNAまたはDNAそれぞれに対して)に対して「C」、グアニル酸またはデオキグアニル酸(RNAまたはDNAそれぞれに対して)に対して「G」、ウリジル酸(RNAに対して)に対して「U」、デオキシチミジル酸(DNAに対して)に対して「T」、プリン(AまたはG)に対して「R」、ピリミジン(CまたはT)に対して「Y」、GまたはTに対して「K」、AまたはCまたはTに対して「H」、イノシンに対して「I」、AまたはTに対して「W」、そして任意のヌクレオチドに対して「N」(例えば、DNA配列に言及する場合は、Nは、A、C、TまたはGであってよく;RNA配列に言及する場合は、Nは、A、C、UまたはGであってよい)。
本明細書で使用する用語「遺伝子」は、コーディング領域からRNA(RNAはDNAポリヌクレオチド配列から転写される)を発現するDNAポリヌクレオチド配列を指し、そのRNAはメッセンジャーRNA(タンパク質をコードする)または非タンパク質コーディングRNAであってよい。遺伝子は、コーディング領域単独を意味する場合がある、またはコーディング領域への上流および/または下流の調節配列(例えば、プロモーター、5’非翻訳領域、3’転写ターミネーター領域)を含む場合がある。またはタンパク質をコードするコーディング領域は、本明細書では「オープンリーディングフレーム」(ORF)と呼ぶことができる。「天然」もしくは「内因性」である遺伝子は、固有の調節配列を備える自然界で見いだされる遺伝子を意味する;そのような遺伝子は、宿主細胞のゲノム内の自然な場所に所在する。「キメラ」遺伝子は、天然遺伝子ではない、自然には一緒に見いだされることのない調節配列およびコーディング配列を含む(すなわち、調節配列およびコーディング配列は相互に異種である)あらゆる遺伝子を意味する。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列およびコーディング配列、または同一起源に由来するが自然に見いだされるのとは異なる方法で配列された調節配列およびコーディング配列を含む可能性がある。「外来」もしくは「異種」遺伝子は、遺伝子導入によって宿主生体内に導入される遺伝子を意味する。外来/異種遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、天然宿主の新規な場所に導入された天然遺伝子またはキメラ遺伝子を含む可能性がある。本明細書に開示した所定の実施形態内のポリヌクレオチド配列は、異種である。「導入遺伝子」は、遺伝子導入手法(例えば、形質転換法)によりゲノム内に導入されている遺伝子である。「コドン最適化」オープンリーディングフレームは、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するよう設計されたコドン使用頻度を有する。
本明細書の細胞もしくは生物に含まれる「非天然」アミノ酸配列もしくはポリヌクレオチド配列は、そのような細胞もしくは生物の天然(自然)対応物中では発生しない。
本明細書で使用する「調節配列」は、遺伝子の転写開始部位の上流に位置するヌクレオチド配列(例えば、プロモーター)、5’非翻訳領域、イントロンおよび3’非コーディング領域を指し、遺伝子から転写されたRNAの翻訳、プロセシングもしくは安定性および/または翻訳に影響を及ぼす可能性がある。本明細書の調節配列は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、ステムループ構造および遺伝子発現の調節に関連する他の要素を含む可能性がある。本明細書の1つ以上の調節要素は、本明細書のコーディング領域に対して異種であってよい。
本明細書中で使用する「プロモーター」は、遺伝子からのRNAの転写を制御することができるDNA配列を意味する。一般に、プロモーター配列は、遺伝子の転写開始部位の上流にある。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来してよい、自然界で見出される様々なプロモーターに由来する様々な要素から構成されてよい、またはいっそう合成DNAセグメントを含んでいてもよい。あらゆる状況下のほとんどの時点で遺伝子が細胞内で発現することを誘発するプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。本明細書の1つ以上のプロモーターは、本明細書のコーディング領域にとって異種であってよい。
本明細書で使用する「誘導性プロモーター」は、所定の特定条件下で(すなわち、生物因子もしくは非生物因子の存在または非存在によって)遺伝子からのRNAの転写を制御することのできるプロモーターを意味する。これらのタイプのプロモーターは、典型的には、誘導条件が存在しない条件下では活性を有していない、または極めて低い活性しか有していない。
本明細書で使用する「強力プロモーター」は、単位時間当たり相当に多数の生成開始を指示できるプロモーター、および/または細胞内の遺伝子の平均転写レベルよりも高いレベルの遺伝子転写を駆動するプロモーターである。
本明細書で使用する用語「3’非コーディング配列」、「転写ターミネーター」および「ターミネーター」は、コーディング配列の下流に位置するDNA配列を意味する。これには、ポリアデニル化認識配列、およびmRNAプロセシングもしくは遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをコードする他の配列が含まれる。
用語「カセット」、「発現カセット」、「遺伝子カセット」などは、本明細書では互換的に使用される。カセットは、タンパク質コーディングRNAもしくは非タンパク質コーディングRNAをコードするDNA配列に機能的に連結したプロモーターを意味することができる。カセットは、任意選択的に3’非コーディング配列に機能的に連結していてよい。本明細書のカセットの構造は、任意選択的に、「X::Y::Z」の単純な表記方式によって表すことができる。詳細には、Xはプロモーターを表し、Yはコーディング配列を表し、およびZはターミネーター(任意選択的)を表す;XはYに機能的に連結しており、およびYはZに機能的に連結している。
本明細書で使用する用語「発現」は、(i)コーディング領域からのRNA(例えば、mRNAもしくは非タンパク質コーディングRNA)の転写、および/または(ii)mRNAからのポリペプチドの翻訳を意味する。ポリヌクレオチド配列のコーディング領域の発現は、所定の実施形態では、アップレギュレートまたはダウンレギュレートすることができる。
本明細書で使用する用語「機能的に連結した」は、一方の機能が他方の機能によって影響されるような2つ以上の核酸配列の会合を意味する。例えば、プロモーターは、それがコーディング配列の発現に影響を及ぼすことができる場合、コーディング配列と機能的に連結している。すなわち、コーディング配列は、プロモーターの転写調節下にある。コーディング配列は、例えば、1つ(例えば、プロモーター)または2つ以上(例えば、プロモーターおよびターミネーター)の調節配列と機能的に連結させることができる。
本明細書で例えばプラスミド、ベクターまたは構築物などのDNA配列を特徴付けるために本明細書で使用する場合の用語「組換え」は、例えば化学合成によって、および/または遺伝子工学技術による核酸の分離セグメントの操作によって、2つのさもなければ分離した配列のセグメントの人工的組み合せを意味する。本明細書の組換え構築物/ベクターを調製するための方法は、例えば、J.Sambrook and D.Russell(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001);T.J.Silhavy et al.(Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1984);およびF.M.Ausubel et al.(Short Protocols in Molecular Biology,5th Ed.Current Protocols,John Wiley and Sons,Inc.,NY,2002)によって記載された標準組換えDNAおよび分子クローニング技術にしたがうことができる。
本明細書で使用する用語「形質転換」は、任意の方法によって核酸分子を宿主生物または宿主細胞に移動させることを意味する。生物/細胞に形質転換されている核酸分子は、生物/細胞中で自律的に複製する分子、生物/細胞のゲノムに組み込まれる分子または複製もしくは組み込みされずに細胞内に一時的に存在する分子であってよい。例えばプラスミドおよび直鎖状DNA分子などの、形質転換のために好適な核酸分子の非限定的な例は、本明細書に開示されている。形質転換核酸配列を含有する本明細書に記載の宿主生物/細胞は、例えば、「トランスジェニック」、「組換え」、「形質転換(された)」、「工学的(に操作された)」、「形質転換体」、および/または「外因性遺伝子発現のために改変(された)」と称することができる。
本明細書に記載したポリヌクレオチドを含む構築物もしくはベクターは、任意の標準技術によって細胞内に導入することができる。これらの技術には、例えば、形質転換法(例えば、酢酸リチウム形質転換[Methods in Enzymology,194:186−187(1991)])、バイオリスティックインパクト法、エレクトロポーレーション法およびマイクロインジェクション法が含まれる。1つの例として、米国特許第4880741号明細書および同第5071764号明細書ならびにChen et al.(1997,Appl.Microbiol.Biotechnol.48:232−235)は、DNAの線状化断片に基づくY.リポリティカ(lipolytica)についての統合技術を開示している。
用語「コントロール細胞」および「好適なコントロール細胞」は、本明細書では互換的に使用され、特定の改変(例えば、ポリヌクレオチドの過剰発現、ポリヌクレオチドのダウンレギュレーション)が加えられた細胞(すなわち、「実験細胞」)の基準として参照することができる。コントロール細胞は、実験細胞の特定の改変を有していない、または発現もしない任意の細胞であってよい。したがって、コントロール細胞は、非形質転換野生型細胞であってよい、または遺伝的に形質転換されているが、特定の改変を発現しない細胞であってよい。例えば、コントロール細胞は、実験細胞の直接の親であってよく、その直接の親細胞は、実験細胞中に存在する特定の改変を有していない。または、コントロール細胞は、一世代または複数世代によって除去される、実験細胞の親であってよい。さらにまたは、コントロール細胞は、実験細胞の同胞であってよく、この同胞は、実験細胞中に存在する特定の改変を含まない。コントロール細胞は、任意選択的に、実験細胞になるように改変させられる前に存在していた細胞であると特徴付けることができる。
ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド配列に関して本明細書で使用する用語「配列同一性」もしくは「同一性」は、特定の比較窓にわたって最高一致について整列させた場合に同一である2つの配列内の核酸塩基もしくはアミノ酸残基を意味する。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」もしくは「同一性率(%)」は、比較窓にわたって2つの最適に整列した配列を比較することによって決定される数値を意味するが、このとき比較窓内のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適整列のための参照配列(付加もしくは欠失を含まない)と比較して付加もしくは欠失(すなわち、ギャップ)を含む可能性がある。パーセンテージは、配列同一性のパーセンテージを得るために、マッチした位置数を生じさせるために両方の配列内で同一の核酸塩基もしくはアミノ酸残基が発生する位置の数を決定し、マッチした位置数を比較窓内の位置の総数で割り、その結果に100を掛けることによって計算される。DNA配列とRNA配列との間の配列同一性を計算した場合に、DNA配列のT残基がRNA配列のU残基と一致すれば「同一」と見なせることは理解されるであろう。第1および第2ポリヌクレオチドの「相補率」を決定するためには、例えば、(i)第1ポリヌクレオチドと第2ポリヌクレオチドの相補配列(またはその逆)との同一性率、および/または(ii)正準ワトソン&クリック塩基対を作り出すであろう第1および第2ポリヌクレオチド間の塩基のパーセンテージを決定することによってこれを得ることができる。
オンラインにより全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)ウェブサイトで利用できるBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)のアルゴリズムを使用すると、例えば、本明細書で開示する、2つ以上のポリヌクレオチド配列(BLASTNアルゴリズム)またはポリペプチド配列(BLASTPアルゴリズム)間の同一性率を測定することができる。または、配列間の同一性率は、Clustalアルゴリズム(例えば、ClustalW、ClustalVもしくはClustal−Omega)を使用して実施することができる。Clustalアラインメント法を使用するマルチプルアラインメントについては、デフォルト値はGAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に対応する可能性がある。Clustal法を使用するタンパク質配列のペアワイズアラインメントおよび同一性率の計算のためのデフォルトパラメーターは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5であってよい。核酸については、これらのパラメーターは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4であってよい。またはさらに、配列間の同一性率は、BLOSUMマトリックス(例えば、BLOSUM62)を使用して、例えば、GAP OPEN=10、GAP EXTEND=0.5、END GAP PENALTY=フォールス、END GAP OPEN=10、END GAP EXTEND=0.5などのパラメーターを用いるEMBOSSアルゴリズム(例えば、ニードル)を使用して実施することができる。
本明細書で、第2配列と「相補的な」第1配列は、または第2配列と「アンチセンス」方向にあると呼ぶことができる。
本明細書では、様々なポリペプチドアミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列は、所定の実施形態の特徴として開示されている。本明細書に開示した配列と少なくとも約70〜85%、85〜90%もしくは90%〜95%同一であるこれらの配列の変異体は、使用または参照することができる。または、変異アミノ酸配列もしくはポリヌクレオチド配列は、本明細書に開示した配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有することができる。変異アミノ酸配列もしくはポリヌクレオチド配列は、開示した配列と同一の機能/活性または開示した配列の少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の機能/活性を有する。メチオニンで始まらない、本明細書に開示した任意のポリペプチドアミノ酸配列は、典型的には、アミノ酸配列のN末端で少なくとも1つの開始メチオニンをさらに含むことができる。
本明細書に開示したタンパク質の各アミノ酸位置の全てのアミノ酸残基は、例である。所定のアミノ酸が相互に類似の構造的特徴および/または荷電特徴を共有する(すなわち、保存されている)ことを前提にすると、本明細書のタンパク質の各位置でのアミノ酸は、本明細書に開示した配列で提供されるようなアミノ酸であってよい、または以下のように、保存アミノ酸残基で置換されていてもよい(「保存的アミノ酸置換」):
1.次の小さな脂肪族の非極性もしくは弱極性の残基は、相互に置換することができる:
Ala(A)、Ser(S)、Thr(T)、Pro(P)、Gly(G);
2.次の極性の負荷電残基およびそれらのアミドは、相互に置換することができる:Asp(D)、Asn(N)、Glu(E)、Gln(Q);
3.次の極性の正荷電残基は、相互に置換することができる:His(H)、Arg(R)、Lys(K);
4.次の脂肪族の非極性残基は、相互に置換することができる:Ala(A)、Leu(L)、Ile(I)、Val(V)、Cys(C)、Met(M);および
5.次の大きな芳香族残基は、相互に置換することができる:Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W)。
本明細書で使用する用語「単離(された)」は、その天然源から完全に、または部分的に精製されているポリヌクレオチドもしくはポリペプチド分子を意味する。一部の例では、単離ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド分子は、より大きな組成物、バッファー系または試薬ミックスの一部である。例えば、単離ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド分子は、細胞もしくは生物の内部に異種的方法で含まれる可能性がある。異種構成要素および/または1つ以上の遺伝子欠失を含むそのような細胞もしくは生物は、自然には発生しない。本明細書の「単離(された)」は、さらに合成/人工である実施形態、および/または天然型ではない特性を有する実施形態を特徴付けることができる。
本明細書で使用する用語「増加(した)」は、それに対して増加した量または活性が比較される量もしくは活性より少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、50%、100%もしくは200%以上である量もしくは活性を意味することができる。用語「増加(した)」、「上昇(した)」、「増強(された)」、「より多い」、「改善(された)」などの用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの「過剰発現」または「アップレギュレーション」を特徴付けるために使用できる。
増強されたLCDA発酵能力を備える新規な微生物生体触媒が望ましい。したがって、本明細書に開示した一部の実施形態は、長鎖アシル−CoAシンテターゼ(ACoS酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションを含む工学的LCDA生成経路を含む組換え微生物細胞に関する。重要なことに、そのような微生物細胞は、長鎖脂肪酸含有基質から1つ以上の長鎖ジカルボン酸(LCDA)生成物を生成することができる。
本明細書に開示した一部の実施形態は、例えば酵母細胞などの組換え微生物細胞であって:
(i)シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションおよび/またはシトクロムP450レダクターゼ(CPR酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、
(ii)長鎖アシル−CoAシンテターゼ(ACoS酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、および
(iii)ペルオキシソーム生物発生因子3をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションを含む組換え微生物細胞に関する。
重要なことに、そのような微生物細胞は、長鎖脂肪酸含有基質から1つ以上の長鎖ジカルボン酸(LCDA)生成物を生成することができる。
本明細書の組換え細胞内のACoS酵素のこの酵素をコードするポリヌクレオチド配列をアップレギュレートすることによるアップレギュレーションは、この細胞内での増加したレベルの長鎖アシル−CoAを生じさせると考えられる。この代謝産物のそのような増加は、細胞内の増加したレベルの長鎖脂肪酸の活性化を反映する。
本明細書の所定の態様におけるACoS酵素のアップレギュレーションは、ACoS酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションを通してであってよい。ACoS酵素の過剰発現をもたらすそのようなアップレギュレーションは、1つ以上の様々な方法によって実施することができる。例えば、ACoSコーディングポリヌクレオチドは、一過性または安定性のいずれかで、細胞に多コピーで提供することができる(そのようなポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列[例えば、異種プロモーター]に機能的に連結している。ポリヌクレオチド配列を多コピーで提供する工程は、ポリヌクレオチドの1つ以上のコピー(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25もしくは50コピー)を細胞に提供する工程によって実施できる。安定性方法で提供されるポリヌクレオチド配列は、典型的には一過性方法で提供されるポリヌクレオチド配列のコピー数と比較して少ないコピー数を有することは理解されるであろう。また別の例として、ACoSコーディングポリヌクレオチド配列は、それらのいずれも異種である可能性がある構成的プロモーター、強力プロモーターもしくは誘導性プロモーターへの機能的連結によってアップレギュレートすることができる。
本明細書の細胞内のACoS酵素のアップレギュレーション(例えば、過剰発現)は、任意選択的に好適なコントロール細胞と比較して考察することができる。例えば、本明細書の細胞内のACoS酵素の増加したレベルは、好適なコントロール細胞内のACoS酵素の発現より少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、100%、150%、200%、500%もしくは1000%高いと特徴付けることができる。好適なコントロール細胞の1つの例は、アップレギュレートされたACoS酵素発現を有するように改変される前に存在した細胞(例えば、親細胞)である。
本明細書のACoS酵素は、例えば、細胞にとって異種であってよい。異種ACoS酵素の1つの例は、その中でACoS酵素がアップレギュレートされている細胞の種もしくは菌株とは異なる種もしくは菌株に由来する異種ACoS酵素であってよい。
または、細胞内でアップレギュレートされるACoS酵素は、その細胞にとって天然であってよい。天然ACoS酵素は、例えば、ポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションに関して上記に開示した手段のいずれかを使用して、アップレギュレートすることができる。例えば、細胞にとって天然であるこの酵素をコードする(プロモーター[例えば、異種プロモーター]に機能的に連結している)ポリヌクレオチド配列は、安定性もしくは一過性方法で細胞に提供することができる(しかしポリヌクレオチド配列の場所は、非天然部位[すなわち、異種部位]に位置するであろう)。また別の例として、細胞のゲノム内に自然に存在するACoS酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、天然ポリヌクレオチド配列が過剰発現するように改変することができる。これは、例えば、ACoS酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含有する遺伝子の1つ以上の調節エレメント(例えば、プロモーター)を改変する工程によって実施することができる。
1種、2種、3種、4種以上のACoS酵素は、任意選択的に、ACoS酵素をコードする2つ、3つ、4つ以上のセット(コピー)のポリヌクレオチド配列を提供することによって本明細書の細胞内でアップレギュレートすることができる。ACoS酵素は、例えば、(i)同一ACoS酵素をコードするポリヌクレオチド配列のコピーおよび/または(ii)異なるACoS酵素をコードするポリヌクレオチド配列を導入する工程(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属ACoSおよびヤロウィア(Yarrowia)属ACoS両方の過剰発現)によって細胞に提供することができる。
本明細書のACoS酵素は、真核生物、例えば、次に開示した任意の真核生物に由来してよい:本明細書の真核生物は、動物、植物、真菌または原生生物であってよい。本明細書の動物は、例えば、哺乳動物、鳥類、両生類、爬虫類、魚類もしくは無脊椎動物(例えば、昆虫、甲殻類、軟体動物、線虫)であってよい。本明細書の哺乳動物は、例えば、ヒトまたは齧歯類(例えば、マウス、ラット)であってよい。本明細書の植物は、例えば、単子葉植物または双子葉植物であってよい。本明細書の単子葉植物の例としては、コーン、コメ、ライムギ、ソルガム、キビ、コムギ、サトウキビ、オートムギ、オオムギおよびスイッチグラスが挙げられる。本明細書の双子葉植物の例としては、ダイズ、カノーラ、アルファルファ、タバコ、アラビドプシス(Arabidopsis)(例えば、A.タリアナ(thaliana)、A.リラータ(lyrata))、ヒマワリ、綿、落花生、トマト、ジャガイモおよびオオカラスノエンドウ(例えば、ビシア・サティバ(Vicia sativa))が挙げられる。本明細書の真菌は、例えば、担子菌類(Basidiomycetes)、接合菌類(Zygomycetes)、ツボカビ類(Chytridiomycetes)もしくは子嚢菌類(Ascomycetes)の真菌であってよい。真菌は、所定の実施形態では酵母または糸状菌であってよい。酵母の例としては、下記に開示した種(例えば、本明細書の所定の態様における組換え酵母細胞を調製するために使用できるヤロウィア(Yarrowia)属種、例えばY.リポリティカ(lipolytica)、カンジダ(Candida)属種、例えばC.トロピカリス(tropicalis)、サッカロミセス(Saccharomyces)属種、例えばS.セレビジエ(cerevisiae))のいずれかが挙げられる。本明細書の糸状菌の例としては、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、オーレオバシジウム(Aureobasidium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、クリホネクトリア(Cryphonectria)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、フィリバシジウム(Filibasidium)属、フザリウム(Fusarium)属、ギベレラ(Gibberella)属、フミコラ(Humicola)属、ムコール(Mucor)属、ミセリオフトラ(Myceliophthora)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ピロミセス(Piromyces)属、スキタリジウム(Scytalidium)属、シゾフィルム(Schizophyllum)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、チエラビア(Thielavia)属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属およびトリコデルマ(Trichoderma)属が挙げられる。本明細書の原生生物の例としては、藻細胞(例えば、緑藻類、褐藻類、紅藻類)および繊毛虫(Ciliata)綱の原生生物、鞭毛虫亜門(subphylum Mastigophora)(鞭毛虫)、植物性鞭毛虫(Phytomastigophorea)綱、動物性鞭毛虫(Zoomastigophorea)綱、根足虫(Rhizopoda)上綱、葉状仮足(Lobosea)綱および真正動菌(Eumycetozoea)綱が挙げられる。
所定の実施形態におけるACoS酵素は、原核生物、例えば、次に開示する任意の原核生物などに由来してよい:本明細書の原核生物は、例えば、細菌もしくは古細菌であってよい。細菌の例としては、グラム陰性およびグラム陽性である細菌が挙げられる。細菌のさらに他の例としては、アクロモバクター(Achromobacter)属、アシドアミノコッカス(Acidaminococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アクチノバチルス(Actinobacillus)属、アクチノマデュラ(Actinomadura)属、アクチノミセス(Actinomyces)属、アエロコッカス(Aerococcus)属、アエロモナス(Aeromonas)属、アフィピア(Afipia)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アルカノバクテリウム(Arcanobacterium)属、アクロバクター(Arcobacter)属、バチルス(Bacillus)属(例えば、B.サブチリス(subtilis)、B.メガテリウム(megaterium))、バクテロイデス(Bacteroides)属、バルトネラ(Bartonella)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ビロフィラ(Bilophila)属、ボルデテラ(Bordetella)属、ボレリア(Borrelia)属、ブルセラ(Brucella)属、カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、カルジオバクテリウム(Cardiobacterium)属、クラミジア(Chlamydiae)属、クリセオモナス(Chryseomonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、クロストリジウム(Clostridium)属、コマモナス(Comamonas)属、コプロコッカス(Coprococcus)属、コクシエラ(Coxiella)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、エドワードシエラ(Edwardsiella)属、エーリキア(Ehrlichia)属、エイケネラ(Eikenella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、エリシペロスリックス(Erysipelothrix)属、エシェリキア(Escherichia)属(例えば、E.コリ(coli))、ユーバクテリウム(Eubacterium)属、ユーインゲラ(Ewingella)属、フラビモナス(Flavimonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、フランシセラ(Franciesella)属、フソバクテリウム(Fusobacterium)属、ガードネレラ(Gardnerella)属、ゲメラ(Gemella)属、ヘモフィルス(Haemophilus)属、ハフニア(Hafnia)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属(例えば、H.ピロリ(pylori))、クレブシエラ(Klebsiella)属、クルイベラ(Kluyvera)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、レジオネラ(Legionella)属、レプトスピラ(Leptospira)属、レプトトリキア(Leptotrichia)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、リステリア(Listeria)属、メガスファエラ(Megasphaera)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ミクロポリスポラス(Micropolysporas)属、モビルンカス(Mobiluncus)属、モラクセラ(Moraxella)属、モルガネラ(Morganella)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属、ネイセリア(Neisseria)属、ノルカルジア(Norcardia)属、ノルカルジオプシス(Norcardiopsis)属、オリゲラ(Oligella)属、パスツレラ(Pasteurella)属、ペディコッカス(Pedicoccus)属、ペプトコッカス(Peptococcus)属、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、プラノコッカス(Planococcus)属、プレシオモナス(Plessiomonas)属、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属、プレボテラ(Prevotella)属、プロテウス(Proteus)属、プロビデンシア(Providencia)属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロードコッカス(Rhodococcus)属、リケッチア(Rickettsia)属、ロカリマエア(Rochalimaea)属、ロチア(Rothia)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属、サルシニア(Sarcinia)属、サルモネラ(Salmonella)属、シェワネラ(Shewanella)属、シゲラ(Shigella)属、セラチア(Serratia)属、スピリルム(Spirillum)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ストマトコッカス(Stomatococcus)属、ストレプトバチルス(Streptobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、テルモアクチノミセテス(Thermoactinomycetes)属、トレポネマ(Treponema)属、ウレアプラズマ(Ureaplasma)属、ベイヨネラ(Veilonella)属、ビブリオ(Vibrio)属、ウィークセラ(Weeksella)属、ウォリネラ(Wolinella)属、キサントモナス(Xanthomonas)属またはエルシニア(Yersinia)属の細菌が挙げられる。
一部の実施形態では、ACoS酵素は、微生物性(すなわち、細菌細胞;藻類細胞などの原生生物細胞;酵母細胞などの真菌細胞;ユーグレナ類細胞;ストラメノパイル類細胞;または卵菌類細胞に由来する)であると特徴付けることができる。
本明細書のACoS酵素のアミノ酸配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号XP_503862.1、XP_503608.1、XP_502959.1、AJT71734.1、NP_014962.3、AJU13255.1、NP_010931.3、EWG91402.1、EJT42092.1、NP_001153101.1、NP_001273637.1、XP_001146361.1、XP_003829365.1、XP_004033324.1、NP_001125625.1、XP_003266954.1、XP_001363547.2、XP_007422758.1、XP_002880290.1、NP_631034.1、O14975.2、CAH21295.1、CAL20709.1、AEV18827.1、CEM58466.1、CBA20954.1、BAK25224.1、AIU33175.1、CBJ51928.1、CAL93650.1、CAL09544.1、CEE01548.1、GAE33988.1、AAY81441.1、BAH81064.1、CCA89166.1、KJX89569.1、WP_023306469.1、EAZ59428.1、EFH75916.1、EFG64803.1、EFF13066.1、AIE60968.1、KJF31148.1、WP_023290211.1、AGC43083.1、GAL05408.1、KGM65079.1、CEE01549.1、KDL77549.1、BAO70678.1、EPY53810.1、EEB08740.1、GAF10677.1、CCG43904.1、WP_042268578.1、KGG85769.1、CNO88241.1、KKE73357.1、WP_001055160.1、WP_003239466.1、WP_028742371.1、WP_027325346.1およびKBA42642.1において開示されたアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。これらのACoSアミノ酸配列のいずれかの変異体を使用することができるが、対応する非変異ACoS酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。そのような変異ACoS酵素は、対応する非変異ACoS酵素参照物質のアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含む可能性がある。
本明細書の所定の態様では、ACoS酵素は、配列番号44(Y.リポリティカ(lipolytica)ACoS)、配列番号49(Y.リポリティカ(lipolytica)ACoS)、配列番号36(Y.リポリティカ(lipolytica)ACoS)、配列番号33(S.セレビジエ(cerevisiae)ACoS)または配列番号34(S.セレビジエ(cerevisiae)ACoS)のアミノ酸配列を含むことができる。表2および3(下記)において列挙したアミノ酸配列のいずれかを含むタンパク質は、一部の他の態様においてACoS酵素として有用な可能性があると考えられる。または、本明細書のACoS酵素は、例えば、上記のACoS酵素アミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むことができる。そのような変異ACoS酵素は、対応する非変異ACoS酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。当分野において(例えば、本明細書に参照により組み込まれるGalton and Fraser,Analytical Biochemistry 28:59−64)または下記の実施例5に開示した利用できるACoS酵素活性を測定する方法は、本明細書において適宜に適用することができる。
所定の実施形態では、本明細書のACoS酵素は、長鎖アシル−CoAシンテターゼ活性およびクマロイル−CoAシンテターゼ活性の両方を有する。本明細書に開示したそのようなACoS酵素の例は、配列番号44もしくは49と少なくとも90%同一である1つのアミノ酸配列を含む。
本明細書の組換え細胞は、任意選択的に、少なくとも1つのアップレギュレートされたACoS酵素を含む工学的LCDA生成経路を含むと特徴付けることができる。一部の態様における工学的LCDA生成経路は:(i)シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションおよび/または(ii)シトクロムP450レダクターゼ(CPR酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションをさらに含む。これらのアップレギュレーション([i]および/または[ii])のいずれかまたは両方はω−ヒドロキシラーゼのアップレギュレーションをもたらすと期待されている。一部の他の実施形態では、工学的LCDA生成経路は、(任意選択的にアップレギュレーション([i]および/または[ii]に加えて):(iii)脂肪族アルコールオキシダーゼ(FAO)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、(iv)脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ(FADH酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションおよび/または(v)脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ(FALDH酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションのうちの少なくとも1つをさらに含む。
所定の実施形態における組換え細胞は、例えば、アップレギュレートされたCYP酵素およびCPR酵素の両方を有することができる。または、CYP酵素をアップレギュレートすることができる、またはCPR酵素をアップレギュレートすることができる。CYP酵素がアップレギュレートされるが、CPR酵素は野生型レベルで発現する実施形態では、アップレギュレートされたω−ヒドロキシラーゼ錯体は、CYP酵素のアップレギュレーションによって生じる可能性がある。CPR酵素がアップレギュレートされるが、CYP酵素は野生型レベルで発現する実施形態では、アップレギュレートされたω−ヒドロキシラーゼ錯体は、CPR酵素のアップレギュレーションによって生じる可能性がある。
本明細書の所定の態様におけるCYP酵素および/またはCPR酵素のアップレギュレーションは、CYP酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションおよび/またはCPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションを通してであってよい。CYP酵素および/またはCPR酵素の過剰発現をもたらすそのようなアップレギュレーションは、様々な方法の1つ以上によって実施することができる。例えば、CYPコーディングポリヌクレオチドおよび/またはCYP酵素コーディングポリヌクレオチドは、一過性または安定性のいずれかで、細胞に多コピーで提供することができる(そのようなポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列[例えば、異種プロモーター]に機能的に連結している。ポリヌクレオチド配列を多コピーで提供する工程は、ポリヌクレオチドの1つ以上のコピー(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25もしくは50コピー)を細胞に提供する工程によって実施できる。安定性方法で提供されるポリヌクレオチド配列は、典型的には一過性方法で提供されるポリヌクレオチド配列のコピー数と比較して少ないコピー数を有することは理解されるであろう。また別の例として、CYP酵素コーディングポリヌクレオチド配列および/またはCPR酵素コーディングポリヌクレオチドは、それらのいずれも異種である可能性がある構成的プロモーター、強力プロモーターもしくは誘導性プロモーターへの機能的連結によってアップレギュレートすることができる。
CYP酵素コーディングポリヌクレオチド配列およびCPR酵素コーディングポリヌクレオチド配列は、所定の実施形態ではどちらもアップレギュレートされる;このアップレギュレーションは、例えば、本明細書に開示した過剰発現戦略の1つまたは組み合わせにしたがって実施することができる。例えば、個々のポリヌクレオチド(例えば、プラスミドなどのベクター)−CYP酵素をコードするポリヌクレオチドおよびCPR酵素をコードする他のポリヌクレオチド−を使用することができる。また別の例として、各CYPおよびCPRコーディング配列を含む単一ポリヌクレオチド(例えば、プラスミドなどのベクター)を使用することができる;各コーディング配列は、例えば、その固有の発現カセット(例えば、プロモーター−−コーディング配列−−ターミネーター)内またはバイシストロニック発現カセット内に含まれてよい。
細胞内のCYP酵素および/またはCPR酵素のアップレギュレーション(例えば、過剰発現)は、任意選択的に好適なコントロール細胞と比較して考察することができる。例えば、本明細書の細胞内のCYP酵素および/またはCPR酵素の増加したレベルは、好適なコントロール細胞内のCYP酵素および/またはCPR酵素の発現より少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、100%、150%、200%、500%もしくは1000%高いと特徴付けることができる。好適なコントロール細胞の1つの例は、アップレギュレートされたCYP酵素および/またはCPR酵素発現を有するように改変される前に存在した細胞(例えば、親細胞)である。
本明細書のCYP酵素および/またはCPR酵素は、例えば、細胞にとって異種である可能性がある。異種CYP酵素(および/またはCPR酵素)の1つの例は、その中でCYP酵素(および/またはCPR酵素)がアップレギュレートされている細胞の種もしくは菌株とは異なる種もしくは菌株に由来するCYP酵素および/またはCPR酵素であってよい。CYP酵素および/またはCPR酵素は、所定の態様では、細胞にとって異種である。細胞内のCYP酵素および/またはCPR酵素の異種発現は、任意選択的に細胞へ異種ω−ヒドロキシラーゼ錯体を提供すると特徴付けることができる。異種ω−ヒドロキシラーゼ錯体は、異種CYP酵素またはCPR酵素の一方または両方を含む。
または、細胞内でアップレギュレートされるCYP酵素および/またはCPR酵素は、その細胞にとって天然であってよい。天然CYP酵素および/またはCPR酵素は、例えば、ポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションに関して上記に開示した手段のいずれかを使用して、アップレギュレートすることができる。例えば、細胞にとって天然である(プロモーター配列に機能的に連結している)この酵素をコードする各ポリヌクレオチド配列は、安定性もしくは一過性方法で細胞に提供することができる(しかしポリヌクレオチド配列の場所は、非天然部位[すなわち、異種部位]に位置するであろう)。また別の例として、CYP酵素および/またはCPR酵素をコードする各ポリヌクレオチド配列は、それらが細胞のゲノム内に自然に存在するので、天然ポリヌクレオチド配列が過剰発現するように改変することができる。これは、例えば、CYP酵素および/またはCPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含有する遺伝子の1つ以上の調節エレメント(例えば、プロモーター)を改変する工程によって実施することができる。
2種、3種、4種以上のω−ヒドロキシラーゼ錯体は、任意選択的に、それぞれCYP酵素および/またはCPR酵素をコードする2つ、3つ、4つ以上のセット(例えば、コピー)のポリヌクレオチド配列を提供することによって本明細書の細胞内でアップレギュレートすることができる。複数のω−ヒドロキシラーゼは、細胞に、例えば、(i)同一ω−ヒドロキシラーゼを過剰発現させるためにCYP酵素および/またはCPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、CYP/CPRコーディング配列の2つのコピーを用いて形質転換された酵母細胞)のコピーおよび/または(ii)異なるω−ヒドロキシラーゼのCYPおよび/またはCPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、マウスおよび植物ω−ヒドロキシラーゼ両方の過剰発現)のセットを導入する工程によって提供することができる。一部の実施形態では、本明細書の細胞は、2つ、または少なくとも2つのアップレギュレートされたCYP−およびCPRコーディングポリヌクレオチド配列(例えば、VsCYPおよびVsCPR)を含む。
CYP酵素およびCPR酵素のどちらも本明細書の細胞内でアップレギュレートされる実施形態では、これらの酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、同一の種/起源由来であってよい。または、これらの酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、異なる種/起源由来であってよい。1つの例は、CYP酵素が哺乳動物配列によってコードされ、CPR酵素が植物配列によってコードされる実施形態である。また別の例は、これらの酵素の1つ(例えば、CYP)が細胞にとって異種であり、他方の酵素(例えば、CPR)がその細胞にとって天然である実施形態である。CYPおよびCPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列が異なる種/起源由来であるこれらの後者の実施形態のタイプでは、結果として生じるω−ヒドロキシラーゼ(起源の異なるCYPおよびCPR酵素成分を含有する)は、任意選択的にキメラω−ヒドロキシラーゼ錯体であると特徴付けることができる。
本明細書のCYP酵素および/またはCPR酵素は、例えば、真核生物もしくは原核生物に由来してよい。そのような真核生物および原核生物の例は、ACoS酵素の誘導に関して上記に開示されている。本明細書において有用なCYP活性およびCPR活性両方を有するCYP酵素は、一部の態様では原核生物に由来することができる。一部の実施形態におけるCYP酵素および/またはCPR酵素は、微生物性であると特徴付けることができる(すなわち、細菌細胞;藻類細胞などの原生生物細胞;酵母細胞などの真菌細胞;ユーグレナ類細胞;ストラメノパイル類細胞;または卵菌類細胞に由来する)。
ω−ヒドロキシラーゼ錯体が同一の種もしくは菌株(例えば、マウス、ラット、ヒト、植物、アラビドプシス(Arabidopsis)属、オオカラスノエンドウ、酵母、カンジダ(Candida)属などの本明細書に開示した種/菌株のいずれか)由来のCYPおよびCPR酵素成分を有する実施形態では、そのようなω−ヒドロキシラーゼ錯体は、任意選択的にその種もしくは菌株由来であると特徴付けることができる。例えば、マウスCYPおよびCPR酵素成分を含むω−ヒドロキシラーゼ錯体は、任意選択的に、マウスω−ヒドロキシラーゼ錯体であると特徴付けることができる。同様に、本明細書の所定のω−ヒドロキシラーゼ錯体は、それぞれ、ラット、ヒト、植物、アラビドプシス(Arabidopsis)属、オオカラスノエンドウ、酵母またはカンジダ(Candida)属ω−ヒドロキシラーゼ錯体であると特徴付けることができる。
所定の実施形態におけるCYP酵素は、特定のCYP酵素サブファミリー由来であってよい。例えば、CYP酵素は、サブファミリーCYP4(例えば、CYP4A1およびCYP4A10などの哺乳動物CYP4)、CYP86(例えば、植物CYP86)、CYP94(例えば、CYP94A1などの植物CYP94)、CYP96(例えば、CYP96A4などの植物CYP96)、CYP52(例えば、CYP52A4およびCYP52A1などの酵母CYP52)またはCYP102(例えば、細菌CYP102)由来であってよい。
本明細書のCYP酵素のアミノ酸配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号BAA31435、BAA31437、BAA31439、P16496、P16141、Q12586、EEQ43763、P10615、P30609、P30610、AAO73952、AAO73953、AAO73954、AAO73955、AAO73958、AAO73959、NP_200694、NM_100042、NP_182121、DQ099538、AAD10204、P98188、Q9FMV7、Q9SMP5、Q9ZUX1、NP_200045、XP_002865907、NM_175837、P20816、NP_786936、AAH81771、NP_034141およびQ02928に開示されたCYPアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。これらのCYPアミノ酸配列のいずれかの変異体を使用することができるが、対応する非変異CYP酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。そのような変異CYP酵素は、対応する非変異CYP酵素参照物質のアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含んでいる可能性がある。
本明細書の所定の態様では、CYP酵素は、配列番号84(C.トロピカリス(tropicalis)CYP)または配列番号94(V.サティバ(sativa)CYP)のアミノ酸配列を含む可能性がある。または、本明細書のCYP酵素は、例えば、上記のCYP酵素アミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むことができる。そのような変異CYP酵素は、対応する非変異CYP酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。
本明細書のCPR酵素のアミノ酸配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号X76226、P37201、X66016、X66017、NM_008898、M12516およびZ26252に開示されたCPRアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。これらのCPRアミノ酸配列のいずれかの変異体を使用することができるが、対応する非変異CPR酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。そのような変異CPR酵素は、対応する非変異CPR酵素参照物質のアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含んでいる可能性がある。
本明細書の所定の態様では、CPR酵素は、配列番号86(C.トロピカリス(tropicalis)CPR)または配列番号96(V.サティバ(sativa)CPR)のアミノ酸配列を含む可能性がある。または、本明細書のCPR酵素は、例えば、上記のCPR酵素アミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むことができる。そのような変異CPR酵素は、対応する非変異CPR酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。
本明細書の一部の態様における組換え細胞は、(1)脂肪族アルコールオキシダーゼ(FAO酵素)のアップレギュレーションおよび/または(2)脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ(FADH酵素)のアップレギュレーションおよび/または(3)脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ(FALDH酵素)のアップレギュレーションを含むことができる。FAOおよび/またはFADHのアップレギュレーションは、長鎖脂肪酸ω酸化の経路におけるω−ヒドロキシ脂肪酸からω−アルド脂肪酸へのアップレギュレートされた転換を提供する(図1および2)。FALDHのアップレギュレーションは、長鎖脂肪酸ω酸化の経路におけるω−アルド脂肪酸からLCDAへのアップレギュレートされた転換を提供する(図1および2)。
本明細書の組換え細胞内でのFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素のアップレギュレーションは、例えば下記の通りであってよい:
(i)少なくとも1つのFAO酵素がアップレギュレートされる、
(ii)少なくとも1つのFADH酵素がアップレギュレートされる、
(iii)少なくとも1つのFALDH酵素がアップレギュレートされる、
(iv)少なくとも1つのFAOおよび少なくとも1つのFADH酵素がアップレギュレートされる、
(v)少なくとも1つのFAOおよび少なくとも1つのFALDH酵素がアップレギュレートされる、
(vi)少なくとも1つのFADHおよび少なくとも1つのFALDH酵素がアップレギュレートされる、または
(vii)少なくとも1つのFAO、少なくとも1つのFADHおよび少なくとも1つのFALDH酵素がアップレギュレートされる。
本明細書の所定の態様におけるFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素のアップレギュレーションは、(1)FAO酵素をコードするポリヌクレオチド配列、(2)FADH酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、および/または(3)FALDH酵素をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションを通してでよい。FAO、FADHおよび/またはFALDH酵素の過剰発現をもたらすそのようなアップレギュレーションは、1つ以上の様々な方法によって実施することができる。例えば、FAO−、FADH−および/またはFALDH−コーディングポリヌクレオチドは、一過性または安定性のいずれかで、細胞に多コピーで提供することができる(そのようなポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列[例えば、異種プロモーター]に機能的に連結している。ポリヌクレオチド配列を多コピーで提供する工程は、ポリヌクレオチドの1つ以上のコピー(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25もしくは50コピー)を細胞に提供する工程によって実施できる。また別の例として、FAO−、FADH−および/またはFALDH−コーディングポリヌクレオチド配列は、それらのいずれも異種である可能性がある構成的プロモーターもしくは強力プロモーターへの機能的連結によってアップレギュレートすることができる。上記の(i)〜(vii)に列挙したFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素のアップレギュレーションのいずれもポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションによってでよい。
ポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションは、例えば、本明細書に開示した過剰発現戦略の1つまたは組み合わせにしたがって実施することができる。例えば、FAO、FADHまたはFALDH酵素をコードする個別ポリヌクレオチド(例えば、プラスミドなどのベクター)が使用されてよい。また別の例として、2つ以上のFAO、FADHまたはFALDHコーディング配列を含む単一ポリヌクレオチド(例えば、プラスミドなどのベクター)が使用されてよい;各コーディング配列は、例えば、その固有の発現カセット(例えば、プロモーター−−コーディング配列−−ターミネーター)内またはバイシストロニック発現カセット内に含まれてよい。
本明細書の細胞内のFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素のアップレギュレーション(例えば、過剰発現)は、任意選択的に好適なコントロール細胞と比較して考察することができる。例えば、本明細書の細胞内のFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素の増加したレベルは、好適なコントロール細胞内のFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素の発現より少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、100%、150%、200%、500%もしくは1000%高いと特徴付けることができる。好適なコントロール細胞の1つの例は、アップレギュレートされたFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素発現を有するように改変される前に存在した細胞(例えば、親細胞)である。
FAO、FADHおよび/またはFALDH酵素は、例えば、細胞にとって異種であってよい。異種FAO、FADHまたはFALDH酵素の1つの例は、その中でFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素がアップレギュレートされている細胞の種もしくは菌株とは異なる種もしくは菌株に由来する異種FAO、FADHまたはFALDH酵素であってよい。FAO、FADHおよびFALDH酵素のうちの少なくとも1つ、2つまたは全部は、所定の態様(例えば、上記の(i)〜(vii)に列挙したアップレギュレーションのいずれか)における細胞にとって異種である。
または、細胞内でアップレギュレートされるFAO、FADHおよびFALDH酵素は、その細胞にとって天然であってよい。天然FAO、FADHおよびFALDH酵素は、例えば、ポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションに関して上記で開示した任意の手段を使用してアップレギュレートすることができる。例えば、細胞にとって天然である(プロモーター配列[例えば、異種プロモーター]に機能的に連結している)これらの酵素をコードする各ポリヌクレオチド配列は、安定性もしくは一過性方法で細胞に提供することができる(しかしポリヌクレオチド配列の場所は、非天然部位[すなわち、異種部位]に位置するであろう)。また別の例として、FAO、FADHおよび/またはFALDH酵素をコードする各ポリヌクレオチド配列は、それらが細胞のゲノム内に自然に存在するので、天然ポリヌクレオチド配列が過剰発現するように改変することができる。これは、例えば、FAO、FADHおよび/またはFALDH酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含有する遺伝子の1つ以上の調節エレメント(例えば、プロモーター)を改変する工程によって実施することができる。
1種、2種、3種、4種以上のFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素は、任意選択的に、それぞれFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素をコードする1つ、2つ、3つ、4つ以上のセット(例えば、コピー)のポリヌクレオチド配列を提供することによって本明細書の細胞内でアップレギュレートすることができる。複数のFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素は、細胞に、例えば、(i)同の一FAO、FADHおよび/またはFALDH酵素を過剰発現させるためにFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、FAO、FADHおよび/またはFALDH酵素の2つのコピーを用いて形質転換された細胞)のコピーおよび/または(ii)異なるFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、マウスFAOおよび植物FAO両方の過剰発現)のセットを導入する工程によって提供することができる。一部の実施形態では、本明細書の細胞は、3つ、または少なくとも3つの異なるアップレギュレートされたFAOコーディングポリヌクレオチド配列(例えば、CtFAO1M、CcFAO1およびCcFAO2)を含む。
本明細書のFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素は、例えば、真核生物もしくは原核生物に由来してよい。そのような真核生物および原核生物の例は、ACoS酵素の誘導に関して上記に開示されている。一部の実施形態におけるFAO、FADHおよび/またはFALDH酵素は、微生物性であると特徴付けることができる(すなわち、細菌細胞;藻類細胞などの原生生物細胞;酵母細胞などの真菌細胞;ユーグレナ類細胞;ストラメノパイル類細胞;または卵菌類細胞に由来する)。
FAO、FADHおよび/またはFALDH酵素は、特定の酵素ファミリーもしくはサブファミリー由来であってよい。例えば、FAO酵素は、FAO1、FAO2、FAO3もしくはFAO4酵素であってよい。FADH酵素は、例えば、ADH、ADH1、ADH2、ADH3、FADH1、FADH2もしくはFADH3酵素であってよい。FALDH酵素は、例えば、FALDH1、FALDH2、FALDH3もしくはFALDH4酵素であってよい。
本明細書のFAO酵素のアミノ酸配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号XP_001389382、XP_002867943、Q9ZWB9、CAA18625、AEE76762.1、AEE84174、AEE85508、XP_007158083、XP_007132926、XP_003540021、XP_003554295、XP_003534338、XP_009102621、EAK93199、CAB75351、CAB75352、XP_002422236、CCG23291、CCG23293、CCE42799、CCE42800、AAS46878、AAS46879、AAS46880、CAB75353、EGV61357、XP_459506、EFX04185、JX879776、XP_001525361、CAP15762.1、KEH23950、EGW33941およびXP_001386087に開示されたアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。これらのFAOアミノ酸配列のいずれかの変異体を使用することができるが、対応する非変異FAO酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。そのような変異FAO酵素は、対応する非変異FAO酵素参照物質のアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含んでいてよい。
本明細書の所定の態様では、FAO酵素は、配列番号100(C.トロピカリス(tropicalis)FAO)、配列番号102(C.クロアカエ(cloacae)FAO)または配列番号104(C.クロアカエ(cloacae)FAO)のアミノ酸配列を含む可能性がある。または、本明細書のFAO酵素は、例えば、上記のFAO酵素アミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むことができる。そのような変異FAO酵素は、対応する非変異FAO酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。
本明細書のFADH(ADH)酵素のアミノ酸配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号NP_982625、EEQ46516、EEQ42383、XM_712556、BAD12482、CD36_07850、ABD60084、ABD60084、XP_002619012、ADM08005、ADM08008、XP_003870523、AFD29185、XP_006683745、XP_002546635、XP−002550829、GU056282、GU056283、GU056286、GU056287、XP_460537、WP_024173607、AHC53987、AAP51040、XP_001524974、AAP51047、AAP51048、AAP51049、XP_001485610、ESW95881、AFH35136、KGK40277、EJS44121、AAP51043、EHN00693、EJT43588、XP_007377163、AGO10074、CAA73690、XP_001382922、XP_003686595、XP_001642939、CCH41227、XP_503282、F2Z678、XP_500127、XP_500087およびXP_503672に開示されたアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。これらのアミノ酸配列のいずれかの変異体を使用することができるが、対応する非変異FADH(ADH)酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。そのような変異FADH(ADH)酵素は、対応する非変異FADH(ADH)酵素参照物質と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含んでいてよい。
本明細書のFALDH酵素のアミノ酸配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号XP_719028、KGQ84508、KGQ98444、XP_002421401、EMG46594、EMG47675、XP_003868193、XP_002550173、XP_002550712、XP_505802、XP_500380、XP_503981、BAP82457、XP_500179およびCCH41136に開示されたアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。これらのFALDHアミノ酸配列のいずれかの変異体を使用することができるが、対応する非変異FALDH酵素参照物質の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。そのような変異FALDH酵素は、対応する非変異FALDH酵素参照物質のアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含んでいてよい。
本明細書の所定の態様では、FALDH酵素は、配列番号91(C.トロピカリス(tropicalis)FALDH)のアミノ酸配列、または配列番号91と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含んでいてよい。そのような変異FALDH酵素は、配列番号91のFALDH酵素の酵素活性の一部(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%)または全部の酵素活性(上記の定義を参照されたい)を有しているはずである。
一部の実施形態では、組換え細胞は、ペルオキシソーム生物発生因子(Pexタンパク質)のダウンレギュレーションを含む可能性がある。例えば、組換え細胞は、ペルオキシソーム生物発生因子3(Pex3タンパク質)をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションを含む可能性がある。任意の特定の理論もしくは機序に固執することは意図していないが、Pexタンパク質のダウンレギュレーションが正常ペルオキシソーム機能(例えば、ペルオキシソーム膜機能)を損傷させることによって組換え細胞内の遮断もしくは減少したレベルのβ酸化を生じさせることは企図されている。遮断もしくは減少したレベルのβ酸化は、脂肪酸がLCDA合成のための基質として機能するω酸化経路へ脂肪酸を向け直すことを生じさせることは企図されている(図1および2を参照されたい)。所定の実施形態では、次のPexタンパク質:Pex1p、Pex2p、Pex3p、Pex3Bp、Pex4p、Pex5p、Pex5Bp、Pex5Cp、Pex5/20p、Pex6p、Pex7p、Pex8p、Pex10p、Pex12p、Pex13p、Pex14p、Pex15p、Pex16p、Pex17p、Pex14/17p、Pex18p、Pex19p、Pex20p、Pex21p、Pex21Bp、Pex22p、Pex22p様およびPex26pの1つ以上の発現は、ダウンレギュレートすることができる。
例えばPex3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をダウンレギュレートすることなどによってダウンレギュレートすることができるPex3タンパク質の例は、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号CAG78565(Y.リポリティカ(lipolytica)、本明細書では配列番号107としても開示されている)、NP_010616.3(S.セレビジエ(cerevisiae)S288)、AHY75303.1(S.セレビジエ(cerevisiae)YJM993)、EWH19033.1(S.セレビジエ(cerevisiae)P283)、EWG96624.1(S.セレビジエ(cerevisiae)R103)、EWG87344.1(S.セレビジエ(cerevisiae)R008)、EGA75546.1(S.セレビジエ(cerevisiae)AWRI796)、CAB10141(S.ポンベ(pombe))、EKD00377.1(トリコスポロン・アサヒイ(Trichosporon asahii))、AAC49471(ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))、XP_569751.1(クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans))、XP_003193133.1(クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii))、XP_713871.1(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、CCG21168.1(カンジダ・オルトプシロシス(Candida orthopsilosis))、CAX44998.1(カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis))、CCA39066.1(コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris))、Q6BK00.1(デバリョミセス・ハンセニ(Debaryomyces hansenii))、O94227.1(クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis))、Q01497.1(オガタエア・アングスタ(Ogataea angusta))、ABN67699.2(シェフェルソミセス・スティピィティス(Scheffersomyces stipitis))、AAS52217.1(アシュビヤ・ゴシッピイ(Ashbya gossypii))およびCCH44061.1(ウィッカーハモミセス・シフェリイ(Wickerhamomyces ciferrii))に開示されている。これらのPex3タンパク質がPex3タンパク質を発現する各細胞内でのダウンレギュレーションの標的とされることは理解されるであろう(例えば、S.セレビジエ(cerevisiae)Pex3タンパク質はS.セレビジエ(cerevisiae)内でダウンレギュレートされるであろう)。
例えば、上記のPex3タンパク質のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むPex3タンパク質は、他の実施形態において細胞内でダウンレギュレートすることができる。例えば、配列番号107と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むPex3タンパク質を発現するヤロウィア(Yarrowia)属細胞もしくは任意の他のタイプの本明細書の酵母細胞は、そのようなPex3タンパク質のダウンレギュレートされた発現を有するように改変することができる。
ヤロウィア(Yarrowia)属細胞を用いるなどの一部の実施形態では、ダウンレギュレートされた内因性ポリヌクレオチド配列は、配列番号107と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むPex3タンパク質をコードする可能性がある。所定の他の実施形態では、Pex3タンパク質をコードするダウンレギュレートされた内因性ポリヌクレオチド配列は、配列番号106と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのヌクレオチド配列を含む。
Pex3などのPexタンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションは、本明細書の所定の態様におけるポリヌクレオチド配列の突然変異に起因する可能性がある。そのような突然変異は、例えば、置換、欠失または挿入であってよい。
欠失は、(i)Pexタンパク質(すなわち、PEXオープンリーディングフレーム)をコードするオープンリーディングフレーム由来の1つ以上のヌクレオチドおよび/または(ii)例えば、Pexタンパク質をコードするオープンリーディングフレームの5’末端の500もしくは1000塩基対内に位置する非タンパク質コーディング配列の1つ以上のヌクレオチドを除去することができる。所定の実施形態における挿入は、(i)Pexタンパク質をコードするオープンリーディングフレームまたは(ii)Pexタンパク質をコードするオープンリーディングフレームの5’末端の500もしくは1000塩基対内に位置する非タンパク質コーディング配列内で発生する可能性がある。他のタイプの突然変異もまた、さらに、所望であればPexタンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列をダウンレギュレートするために使用できる。例えば、単一ヌクレオチドを他のヌクレオチドと交換する(すなわち、ヌクレオチド置換)1つ以上の点突然変異は、適宜に使用することができる。
実施例6では、Pex3タンパク質をコードするY.リポリティカ(lipolytica)内の内因性ポリヌクレオチド配列を欠失させることを開示する。この研究の1つの態様では、PEX3オープンリーディングフレームは、相同性組換えに基づくターゲティングによって除去され、適切なドナーDNAを使用してURA3カセットと置換された。この置換は、LoxP隣接URA3カセットに隣接する5’−および3’−非コーディングPEX3相同性アーム配列(それぞれ100bp)の部分を含む配列番号71を含むダウンレギュレート(破壊またはノックアウト)された配列を提供した。この研究のまた別の態様は、配列番号72を含む配列をダウンレギュレート(破壊またはノックアウト)させるためにCreリコンビナーゼ(1つのLoxP配列を残して、LoxP配列間の組換えを刺激した)を発現させることによってURA3カセットを除去することを含んでいた。配列番号72は、1つのLoxP配列を隣接する5’−および3’−非コーディングPEX3相同性アーム配列(それぞれ100bp)の部分を含む。したがって、本明細書の所定の実施形態は、Pex3タンパク質をコードするダウンレギュレートされた内因性ポリヌクレオチド配列を含む組換えヤロウィア(Yarrowia)属酵母細胞に関するが、ここでこのダウンレギュレーションは、Pex3タンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列の破壊(ノックアウト)に起因する;この破壊(ノックアウト)は、配列番号71もしくは72、または配列番号71もしくは72と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
コドンによってコードされたアミノ酸を変化させないPEXオープンリーディングフレームのコドンにおける突然変異(すなわち、サイレント突然変異)は、典型的には、本明細書に記載したPEXポリヌクレオチドをダウンレギュレートする突然変異ではない。さらに典型的には、Pexタンパク質の野生型機能を変化させない関連アミノ酸へのコドンによってコードされるアミノ酸を変化させる突然変異(例えば、保存的突然変異)でもない。所定の実施形態における関連アミノ酸は、構造および/または電荷を共有する側基を有する、および次の:脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)、芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、ヒドロキシル基含有(セリン、トレオニン)、硫黄基含有(システイン、メチオニン)、カルボン酸基含有(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩)、アミド基含有(アスパラギン、グルタミン)およびアミノ基含有(ヒスチジン、リシン、アルギニン)のように分類することができる。しかし、PEXポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を(例えば、トランス活性化転写および/または翻訳因子を阻害することによって)ダウンレギュレートするそのような突然変異(サイレント突然変異または保存的突然変異)のいずれも、典型的には本明細書ではPEXポリヌクレオチドをダウンレギュレートする突然変異であると見なされる。
当業者であれば、Pexタンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列への本明細書に開示した突然変異のいずれかは、好適なコントロール細胞中の対応する内因性Pexタンパク質をコードする配列を参照することによってダウンレギュレーション突然変異を構成すると決定できることは理解されるであろう。例えば、改変細胞内のPEXポリヌクレオチド配列は、それに改変細胞が由来した対応細胞(例えば、親細胞)の内因性の対応するPEXポリヌクレオチド配列と比較することができる。
所定の実施形態におけるPexタンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションは、好適なコントロール細胞(例えば、親細胞)内での対応するPexタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と比較して、内因性ポリヌクレオチド配列の転写および/または翻訳における少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%の減少である。他の実施形態では、Pexタンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションは、好適なコントロール細胞(例えば、親細胞)内の対応するPexタンパク質の機能と比較して、コードされたPexタンパク質の機能(例えば、タンパク質局在化および/または活性)の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%の減少によって反映される。
任意の特定の理論もしくは機序に固執することは意図していないが、本明細書の組換え細胞内のPexタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションが、正常ペルオキシソーム機能(例えば、ペルオキシソーム膜機能)を損傷させることによって組換え細胞内の遮断もしくは減少したレベルのβ酸化を生じさせることは企図されている。β酸化は、ダウンレギュレートされたPexタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列含む細胞内で、例えば、(主題ダウンレギュレーションを有していない親細胞などの好適なコントロール細胞と比較して少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%減少させることができる。
本明細書の所定の態様では、Pexタンパク質(例えば、配列番号107)をコードするが、Pex10タンパク質(例えば、配列番号108)もPex16タンパク質(例えば、配列番号109)もコードしないポリヌクレオチドをダウンレギュレートする工程は、長鎖脂肪酸含有基質から1つ以上のLCDA生成物を生成できる組換え酵母細胞(例えば、Y.リポリティカ(lipolytica)、実施例14を参照されたい)を調製するために好適である。したがって、一部の実施形態における酵母細胞は、ダウンレギュレートされたPex10タンパク質をコードするポリヌクレオチド、Pex16タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよび/またはダウンレギュレートされた、Pex−1、−2、−4、−5、−6、−7、−8、−12、−13、−14、−15、−17、−18、−19、−20、−21、−22または−26タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含まない。本明細書のPex10タンパク質もしくはPex16タンパク質の例は、それぞれ配列番号108もしくは配列番号109、または配列番号108もしくは配列番号109と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含む。
Pex3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションは、一部の実施形態では、LCDA生成物を生成するために組換え酵母細胞にとって必要である、ペルオキシソームタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列にとっての唯一の改変である可能性がある。実際に、下記の実施例14は、ダウンレギュレートされたPEX3ポリヌクレオチドだけを含み、ペルオキシソーム機能(例えば、ペルオキシソーム発生および/または維持;ペルオキシソーム内で発生するβ酸化などの代謝経路)に直接含まれる任意の他のタンパク質のダウンレギュレーションを含まない組換え酵母が脂肪酸含有基質からLCDAを生成できることを証明している。したがって、本明細書に開示した所定の実施形態は、ダウンレギュレートされたPEX3ポリヌクレオチドがペルオキシソームタンパク質をコードするポリヌクレオチドにとっての唯一の改変である組換え酵母細胞に関する。
所定の態様におけるペルオキシソームタンパク質は、Pexタンパク質(例えば、Pex−1、−2、−4、−5、−6、−7、−8、−12、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−20、−21、−22および/または−26タンパク質)などのペルオキシソーム構造/機能を発生および/または維持する際に重要な役割を果たすペルオキシソームタンパク質であってよい。本明細書のペルオキシソームタンパク質のまた別の例は、例えばβ酸化などのペルオキシソーム内で実施される代謝活性において重要な役割を果たすペルオキシソームタンパク質である。β酸化に含まれるペルオキシソームタンパク質の例としては、Poxタンパク質(例えば、Pox−1、−2、−3、−4、−5、−6)が挙げられる。本明細書の一部の態様における酵母細胞は、Pex3以外のPexタンパク質のダウンレギュレートされた発現および/またはPoxタンパク質のダウンレギュレートされた発現を有していない。一部の他の態様では、酵母細胞は、(i)Pox−1、−2、−3、−4、−5および−6タンパク質;(ii)Pox−1、−2、−3、−4および−5タンパク質;(iii)Pox−2、−3、−4および−5タンパク質;(iv)Pox−2、−3および−5タンパク質;または(v)Pox−4および−5タンパク質のダウンレギュレートされた発現を有していない。
Pex3タンパク質は、本明細書の組換え酵母細胞内でのダウンレギュレーションのための唯一のPexタンパク質であることは企図されているが、1つ以上の追加のPexタンパク質が任意選択的にダウンレギュレートされてもよい。本明細書に列挙したPexタンパク質のいずれかをダウンレギュレートすることができる;そのような他のPexタンパク質の特定の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0117253号明細書の表4に列挙されている。例えば、Pex10および/またはPex16タンパク質は、Pex3タンパク質をダウンレギュレートすることに加えてダウンレギュレートすることができる。
本明細書に開示した組換え細胞は、一部の実施形態では、ペルオキシソームアシル−CoAオキシダーゼ(Poxタンパク質)をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションを含む可能性がある。例えば、Pox−1、−2、−3、−4、−5または−6は、ダウンレギュレーションのために好適な可能性がある。これらのPoxタンパク質のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つまたはそれらの任意の組み合わせをダウンレギュレートする工程は、所望に応じて使用することができる。本明細書のダウンレギュレーションのためのPoxタンパク質の組み合わせの例としては:(i)Pox−2、−3、−4;(ii)Pox−2、−3、−4、−5;(iii)Pox−1、−2、−3、−4、−5;(iv)Pox−1、−2、−3、−4、−5、−6;(v)Pox−1、−2、−3、−4;および(vi)Pox−2、−3、−4、−5、−6が挙げられる。追加の例として、組換え細胞は、アシル−CoAオキシダーゼ−2、−3および/または−4酵素のダウンレギュレーションを含むことができる。本明細書の1つ以上のPoxタンパク質のダウンレギュレーションは、例えば、Pex3タンパク質の発現をダウンレギュレートするために有用である本明細書に開示した戦略(例えば、欠失、挿入、他のタイプの突然変異)のいずれかを使用して実施できる。さらに、そのようなダウンレギュレーションのレベルおよびダウンレギュレーションが決定される方法は、Pex3タンパク質の発現のダウンレギュレーションに関して上記に開示した関連する実施形態にしたがうことができる。組換え細胞は、任意選択的に、一部の態様ではPoxタンパク質のダウンレギュレーションを含まない。
上述したPoxタンパク質のいずれかは、例えば、本明細書では1つ以上のPoxタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をダウンレギュレートすることによってでよい。所定の実施形態におけるPoxタンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションは、好適なコントロール細胞(例えば、親細胞)内での対応するPoxタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と比較して、内因性ポリヌクレオチド配列の転写および/または翻訳の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%の減少である。他の実施形態では、Poxタンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションは、好適なコントロール細胞(例えば、親細胞)内の対応するPoxタンパク質の機能と比較して、コードされたPoxタンパク質の機能(例えば、タンパク質局在化および/または活性)の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%の減少によって反映される。
Pox4タンパク質などのタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をダウンレギュレートすることなどによって本明細書でダウンレギュレートできるPox4タンパク質の例は、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号CAG80078(本明細書では配列番号111としても開示されているY.リポリティカ(lipolytica)、P06598(カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))、P05335(カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa))、KHC52040(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、EIF46613(ブレッタノミセス・ブルクセレンシス(Brettanomyces bruxellensis))、XP_007376225(スパサスポラ・パッサリダルム(Spathaspora passalidarum))、XP_001526373(ロッデロミセス・エロンジスポラス(Lodderomyces elongisporus))、XP_001387042(シェフェルソミセス・スティピィティス(Scheffersomyces stipitis))、XP_011276972(ウィッカーハモミセス・シフェリイ(Wickerhamomyces ciferrii))およびENH66703(フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum))が含まれる。これらのPox4タンパク質がPox4タンパク質を発現する各細胞内でのダウンレギュレーションの標的とされることは理解されるであろう(例えば、C.トロピカリス(tropicalis)Pox4タンパク質はC.トロピカリス(tropicalis)内でダウンレギュレートされるであろう)。
上記のPox4タンパク質のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含み、Pox4活性を有する、Pox4タンパク質は、所定の実施形態において細胞内でダウンレギュレートすることができる。例えば、配列番号111と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むPox4タンパク質を発現するヤロウィア(Yarrowia)属細胞もしくは本明細書の任意の他のタイプの細胞は、そのようなPox4タンパク質のダウンレギュレートされた発現を有するように改変することができる。
実施例6では、Pox4タンパク質をコードするY.リポリティカ(lipolytica)内の内因性ポリヌクレオチド配列を欠失させることを開示する。本研究の1つの態様では、POX4オープンリーディングフレームは、相同性組換えに基づくターゲティングによって除去した。このターゲティングは、5’および3’POX4相同性アーム配列の所定の部分を含む配列番号74を含むダウンレギュレート(破壊またはノックアウト)された配列を提供した。詳細には、配列番号74の塩基位置1〜455位および464〜957位は、それぞれ所定の5’および3’POX4遺伝子配列と対応する。したがって、本明細書の所定の実施形態は、Pox4タンパク質をコードするダウンレギュレートされた内因性ポリヌクレオチド配列を含む組換えヤロウィア(Yarrowia)属酵母細胞に関するが、ここでこのダウンレギュレーションは、Pox4タンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列の破壊(ノックアウト)に起因する;この破壊(ノックアウト)は、配列番号74、または配列番号74と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
Pox2タンパク質などのタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をダウンレギュレートすることなどによって本明細書でダウンレギュレートすることができるPox2タンパク質の例としては、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号Q00468.1(カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa))、P11356.3(カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))、O74935.1(Y.リポリティカ(lipolytica)、本明細書では配列番号79としても開示されている)、CCA37459.1(コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris))、CAX42707.1(カンジタ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis))およびXP_721613.1(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))が挙げられる。これらのPox2タンパク質がPox2タンパク質を発現する各細胞内でのダウンレギュレーションの標的とされることは理解されるであろう。
上記のPox2タンパク質のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である、およびPox2活性を有するアミノ酸配列を含むPox2タンパク質は、所定の実施形態において細胞内でダウンレギュレートすることができる。例えば、配列番号79と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むPox2タンパク質を発現するヤロウィア(Yarrowia)属細胞もしくは本明細書の任意の他のタイプの細胞は、そのようなPox2タンパク質のダウンレギュレートされた発現を有するように改変することができる。
本明細書のPox3タンパク質などをコードするポリヌクレオチド配列をダウンレギュレートすることなどによって本明細書でダウンレギュレートすることができるPox3タンパク質の例は、配列番号81と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含む。
組換え細胞は、本開示の所定の態様において減少した脂質(油)合成および/または貯蔵能力を有する可能性がある。脂質合成および/または貯蔵能力は、例えば、(親細胞などの好適なコントロール細胞と比較して)少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%減少させることができる。細胞内の減少した脂質合成および/または貯蔵能力は、例えば細胞脂質含量のクロマトグラフィー分析(例えば、ガスクロマトグラフィー)および/または所定の視覚的分析(例えば、脂肪体の顕微鏡評価)などの当分野において公知の任意の多数の手段を使用して決定することができる。
減少した脂質合成および/または貯蔵能力を備える組換え細胞は、例えば、乾燥細胞重量(DCW)のパーセントとして測定した全脂質の約50%、25%、10%、5%、4%、3%、2.5%、2.0%、1.5%もしくは1.0%未満を有する可能性がある。
ジアシルグリセロール(DAG)をトリアシルグリセロール(TAG)に変換させる内因性活性は、一部の実施形態では、脂質合成および/または貯蔵能力を減少させるために減少させることができる。これは、TAGが一般に細胞内の主要脂質貯蔵分子を表すことを反映している。TAG合成を減少させる例は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)をコードする少なくとも1つの内因性ポリヌクレオチド配列をダウンレギュレートすることによってでよい。ダウンレギュレーションのための本明細書のDGATの例としては、DGAT1およびDGAT2が挙げられる。DGAT1およびDGAT2の一方または両方は、本明細書の一部の態様においてダウンレギュレートすることができる。DGAT1および/またはDGAT2のダウンレギュレーションは、例えば、Pex3タンパク質の発現をダウンレギュレートするために有用である本明細書に開示した戦略(例えば、欠失、挿入、他のタイプの突然変異)のいずれかを使用して実施できる。さらに、そのようなダウンレギュレーションのレベルおよびダウンレギュレーションが決定される方法は、Pex3タンパク質の発現のダウンレギュレーションに関して上記に開示した関連する実施形態にしたがうことができる。
本明細書でダウンレギュレートすることのできるDGAT1酵素の例は、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT1酵素を表す配列番号113である。配列番号113と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である1つのアミノ酸配列を含むDGAT1酵素を発現するヤロウィア(Yarrowia)属細胞もしくは本明細書の任意の他のタイプの細胞は、そのようなDGAT1酵素のダウンレギュレートされた発現を有するように改変することができる。また別の例として、配列番号113のDGAT1の少なくとも約80%、90%、95%もしくは100%の活性を有する酵素を発現するヤロウィア(Yarrowia)属細胞もしくは本明細書の任意の他のタイプの細胞は、そのようなDGAT1酵素のダウンレギュレートされた発現を有するように改変することができる。
本明細書でダウンレギュレートすることのできるDGAT2酵素の例は、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT2酵素を表す配列番号115である。配列番号115と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むDGAT2酵素を発現するヤロウィア(Yarrowia)属細胞もしくは本明細書の任意の他のタイプの細胞は、そのようなDGAT2酵素のダウンレギュレートされた発現を有するように改変することができる。また別の例として、配列番号115のDGAT2の少なくとも約80%、90%、95%もしくは100%の活性を有する酵素を発現するヤロウィア(Yarrowia)属細胞もしくは本明細書の任意の他のタイプの細胞は、そのようなDGAT2酵素のダウンレギュレートされた発現を有するように改変することができる。
本明細書のDGAT酵素は、例えば、1つ以上のDGATコーディングポリヌクレオチド配列をダウンレギュレートすることによってダウンレギュレートすることができる。所定の実施形態におけるDGATをコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションは、好適なコントロール細胞(例えば、親細胞)内での対応するDGATをコードするポリヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と比較して、内因性ポリヌクレオチド配列の転写および/または翻訳の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%の減少である。他の実施形態では、DGATをコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションは、好適なコントロール細胞(例えば、親細胞)内の対応するDGATタンパク質の機能と比較して、コードされたDGATの機能(例えば、タンパク質局在化および/または活性)の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%の減少によって反映される。
他のタイプのアシルトランスフェラーゼは、所望であれば、脂質合成および/または貯蔵能力における減少をもたらすために、本明細書の組換え細胞内でダウンレギュレートすることができる。そのようなダウンレギュレーションは、DGAT1および/またはDGAT2酵素をダウンレギュレートすることとは無関係であってよい、またはそれに追加してでもよい。任意選択的にダウンレギュレーションの標的にすることのできる他のアシルトランスフェラーゼには、どちらも、一般に、リン脂質およびDAGからリソリン脂質およびTAGへの変換を触媒することができるレシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.43;ホスファチジルコリン−ステロールO−アシルトランスフェラーゼとも呼ばれる)およびリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT、EC2.3.1.158)が含まれる。
本明細書の組換え微生物細胞は、例えば、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、原核細胞、原生生物細胞(例えば、藻類細胞)、鞭毛虫細胞、黄色植物細胞または卵菌細胞を意味することができる。本明細書の原核細胞は、例えば、細菌細胞または古細菌細胞を意味することができる。酵母細胞は、本明細書に開示した任意の酵母であってよい。例えば、酵母は、ヤロウィア(Yarrowia)属(例えば、Y.リポリティカ(lipolytica))、カンジダ(Candida)属(例えば、C.トロピカリス(tropicalis))、デバリオミセス(Debaryomyces)属(例えば、D.ハンセニイ(hansenii))、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、S.セレビジエ(cerevisiae))、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属(例えば、S.ポンベ(pombe))またはピチア(Pichia)属(例えば、P.パストリス(pastoris))酵母種であってよい。
本明細書中の真菌細胞は、酵母(例えば、下記)または糸状菌などの任意の他の真菌型であってよい。例えば、本明細書の真菌は、担子菌類(Basidiomycetes)、接合菌類(Zygomycetes)、ツボカビ類(Chytridiomycetes)もしくは子嚢菌類(Ascomycetes)の真菌であってよい。本明細書中の糸状菌の例としては、トリコデルマ(Trichoderma)属(例えば、T.リーゼイ(reesei))、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、チエラビア(Thielavia)属、ニューロスポラ(Neurospora)属(例えば、N.クラッサ(crassa)、N.シトフィラ(sitophila))、クリホネクトリア(Cryphonectria)属(例えば、C.パラシチカ(parasitica))、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属(例えば、A.プルランス(pullulans))、フィリバシジウム(Filibasidium)属、ピロミセス(Piromyces)属、クリプトコックス(Cryptococcus)属、アクレモモニウム(Acremonium)属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属、スキタリジウム(Scytalidium)属、シゾフィルム(Schizophyllum)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属(例えば、P.ビライアエ(bilaiae)、P.カメムベルチ(camemberti)、P.カンディヅム(candidum)、P.クリソゲヌム(P.chrysogenum)、P.エクスパンスム(expansum)、P.フニクロスム(funiculosum)、P.グラウクム(glaucum)、P.マルネフェイ(marneffei)、P.ロケフォルチ(roqueforti)、P.ベルコスム(P.verrucosum)、P.ビリジカツム(P.viridicatum))、ギベレラ(Gibberella)属(例えば、G.アクミナタ(acuminata)、G.アベナセア(avenacea)、G.バッカータ(baccata)、G.シルシナタ(circinata)、G.シアノゲナ(cyanogena)、G.フジクロイ(fujikuroi)、G.イントリカンス(intricans)、G.プリカリス(pulicaris)、G.スティルボイデス(stilboides)、G.トリシンクタ(tricincta)、G.ゼアエ(G.zeae))、ミセリオフトラ(Myceliophthora)属、ムコール(Mucor)属(例えば、M.ロウキシイ(rouxii)、M.シルシネロイデス(circinelloides))、アスペルギルス(Aspergillus)属(例えば、A.ニガー(niger)、A.オリザエ(oryzae)、A.ニデュランス(nidulans)、A.フラブス(flavus)、A.レンツルス(lentulus)、A.テレウス(terreus)、A.クラバツス(A.clavatus)、A.フミガーツス(fumigatus))、フザリウム(Fusarium)属(例えば、F.グラミネアルム(graminearum)、F.オキシスポルム(oxysporum)、F.ブビゲヌム(bubigenum)、F.ソラニ(solani)、F.オキシスポルム(oxysporum)、F.ベルチシリオイデス(verticillioides)、F.プロリフェラツム(proliferatum)、F.ベネナツム(F.venenatum))、およびフミコーラ(Humicola)属の糸状菌ならびにそれらのアナモルフおよびテレモルフが挙げられる。本明細書の真菌の属および種は、所望であれば、Barnett and Hunter(Illustrated Genera of Imperfect Fungi,3rd Edition,Burgess Publishing Company,1972)に開示された形態学によって定義することができる。
本明細書の所定の実施形態における酵母は、無性生殖(アナモルフィック)または有性生殖(テレオモルフィック)で繁殖する酵母であってよい。本明細書の酵母は、典型的には、単細胞の形態で存在するが、これらの酵母の所定のタイプは、任意選択的に、仮性菌糸(出芽細胞が連結した糸)を形成することができる。さらに他の態様では、酵母は一倍体もしくは二倍体であってよい、および/またはこれらの倍数体形のいずれでも存在する能力を有していてよい。
本明細書の酵母の例としては、従来型酵母および非従来型酵母が挙げられる。本明細書の従来型酵母の例としては、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、出芽酵母、パン酵母、および/または醸造酵母としても知られるS.セレビジエ(cerevisiae);S.バヤヌス(bayanus);S.ボウラルディ(boulardii);S.ブルデリ(bulderi);S.カリオカヌス(cariocanus);S.カリオクス(cariocus);S.ケバリエリ(chevalieri);S.ダイレネンシス(dairenensis);S.エリプソイデウス(ellipsoideus);S.オイバヤヌス(eubayanus);S.エクシグウス(exiguus);S.フロレンティヌス);S.クルイベリ(kluyveri);S.マルチニアエ(martiniae);S.モナセンシス(monacensis);S.ノルベンシス(norbensis);S.パラドクスス(Paradoxus);S.パストリアヌス(pastorianus);S.スペンセロルム(spencerorum);S.ツリセンシス(turicensis);S.ユニスポルス(unisporus);S.ウバルム(uvarum);S.ゾナツス(zonatus)およびシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属(例えば、分裂酵母としても知られるS.ポンベ(pombe);S.クリオフィルス(cryophilus);S.ヤポニクス(japonicus);S.オクトスポルス(octosporus))の種が挙げられる。
本明細書中の非従来型酵母は、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、S.セレビジエ(cerevisiae))またはシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属(例えば、S.ポンベ(pombe))の種などの従来型酵母ではない。本明細書の非従来型酵母は、それらの全部が参照により本明細書に組み込まれるNon−Conventional Yeasts in Genetics,Biochemistry and Biotechnology:Practical Protocols(K.Wolf,K.D.Breunig,G.Barth,Eds.,Springer−Verlag,Berlin,Germany,2003)、Yeasts in Natural and Artificial Habitats(J.F.T.Spencer,D.M.Spencer,Eds.,Springer−Verlag,Berlin,Germany,1997)および/またはYeast Biotechnology:Diversity and Applications(T.Satyanarayana,G.Kunze,Eds.,Springer,2009)などに開示されている当分野において公知の任意の手段にしたがって培養することができる。
本明細書の非従来型酵母の非限定的例には、下記の:ヤロウィア(Yarrowia)属、ピチア(Pichia)属、シュワニオミセス(Schwanniomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、アルクスラ(Arxula)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、カンジダ(Candida)属、ウスティラゴ(Ustilago)属、トルロプシス(Torulopsis)属、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、トリゴノプシス(Trigonopsis)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ファフィア(Phaffia)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属、パチソレン(Pachysolen)属およびモニリエラ(Moniliella)属の酵母が含まれる。ヤロウイア(Yarrowia)属種の好適な例は、Y.リポリティカ(lipolytica)である。ピチア(Pichia)属種の好適な例としては、P.パストリス(pastoris)(コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)としても公知である)、P.メタノリカ(methanolica)、P.スティピティス(stipitis)、P.アノマラ(anomala)およびP.アングスタ(angusta)(ハンヌセラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)としても公知である)が挙げられる。シュワニオミセス(Schwanniomyces)属種の好適な例としては、S.カステリイ(castellii)、S.アルビウス(alluvius)、S.ホミニス(hominis)、S.オキシデンタリス(occidentalis)、S.カプリオッティ(capriottii)、S.エチェルシィ(etchellsii)、S.ポリモルファス(polymorphus)、S.シュードポリモルファス(pseudopolymorphus)、S.バンリジアエ(vanrijiae)、およびS.ヤマダエ(yamadae)が挙げられる。クルイベロミセス(Kluyveromyces)属種の好適な例としては、K.ラクティス(lactis)、K.マルキシアヌス(marxianus)、K.フラギリス(fragilis)、K.ドロソフィラルム(drosophilarum)、K.サーモトレランス(thermotolerans)、K.ファゼオロスポラス(phaseolosporus)、K.バヌデニイ(vanudenii)、K.ワルティ(waltii)、K.アフリカヌス(africanus)およびK.ポリスポラス(polysporus)が挙げられる。アルクスラ(Arxula)属種の好適な例としては、A.アデニニボランス(adeninivorans)およびA.テレストレ(terrestre)が挙げられる。トリコスポロン(Trichosporon)属種の好適な例としては、T.クタネウム(cutaneum)、T.カピタツム(capitatum)、T.インキン(inkin)およびT.ビーメリ(beemeri)が挙げられる。
カンジダ(Candida)属種の好適な例としては、C.アルビカンス(albicans)、C.アスカラフィダルム(ascalaphidarum)、C.アンフィクシアエ(amphixiae)、C.アンタークティカ(antarctica)、C.アピコーラ(apicola)、C.アルゲンティア(argentea)、C.アトランティカ(atlantica)、C.アトモスファェリカ(atmosphaerica)、C.ブラッテ(blattae)、C.ブロメリアセアルム(bromeliacearum)、C.カルポフィラ(carpophila)、C.カルバジャリス(carvajalis)、C.セラムビシダルム(cerambycidarum)、C.チャウリオデス(chauliodes)、C.コリダリ(corydali)、C.ドッセイ(dosseyi)、C.デュブリニエンシス(dubliniensis)、C.エルガテンシス(ergatensis)、C.フルクツス(fructus)、C.グラブラタ(glabrata)、C.フェルメンタティ(fermentati)、C.ギリエルモンディ(guilliermondii)、C.ハエムロニィ(haemulonii)、C.インセクタメンス(insectamens)、C.インセクトルム(insectorum)、C.インテルメディア(intermedia)、C.イェフレシィ(jeffresii)、C.ケフィア(kefyr)、C.ケロセニエ(keroseneae)、C.クルセイ(krusei)、C.ルシタニエ(lusitaniae)、C.リキソソフィラ(lyxosophila)、C.マルトーサ(maltosa)、C.マリーナ(marina)、C.メンブラニファシエンス(membranifaciens)、C.ミレリ(milleri)、C.モギイ(mogii)、C.オレオフィラ(oleophila)、C.オレゴネンシス(oregonensis)、C.パラプシローシス(parapsilosis)、C.クエルシトルーサ(quercitrusa)、C.ルゴサ(rugosa)、C.サケ(sake)、C.シャハテア(shehatea)、C.テムノキラエ(temnochilae)、C.テヌイス(tenuis)、C.テアエ(theae)、C.トレランス(tolerans)、C.トロピカリス(tropicalis)、C.ツチヤエ(tsuchiyae)、C.シノラボランティウム(sinolaborantium)、C.ソーヤ(sojae)、C.サブハシィ(subhashii)、C.ビスワナチイ(viswanathii)、C.ユティリス(utilis)、C.ウバツベンシス(ubatubensis)およびC.ゼンプリニナ(zemplinina)が挙げられる。ウスティラゴ(Ustilago)属種の好適な例としては、U.アベナエ(avenae)、U.エスクレンタ(esculenta)、U.ホルデイ(hordei)、U.マイジス(maydis)、U.ヌーダ(nuda)およびU.トリチシ(tritic)が挙げられる。トルロプシス(Torulopsis)属種の好適な例としては、T.ゲオチャレス(geochares)、T.アジマ(azyma)、T.グラブラータ(glabrata)およびT.カンジダ(candida)が挙げられる。チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属種の好適な例としては、Z.バイリイ(bailii)、Z.ビスポラス(bisporus)、Z.シドリ(cidri)、Z.フェルメンタティ(fermentati)、Z.フロレンティヌス(florentinus)、Z.コンブチャエンシス(kombuchaensis)、Z.レンツス(lentus)、Z.メリス(mellis)、Z.ミクロエリプソイデス(microellipsoides)、Z.ムラキイ(mrakii)、Z.シュードロウキシイ(pseudorouxii)、およびZ.ロウキシィ(rouxii)が挙げられる。トリゴノプシス(Trigonopsis)属種の好適な例としては、T.バリアビリス(variabilis)が挙げられる。クリプトコッカス(Cryptococcus)属種の好適な例としては、C.ローレンティ(laurentii)、C.アルビダス(albidus)、C.ネオフォルマンス(neoformans)、C.ガッティ(gattii)、C.ユニグトゥラツス(uniguttulatus)、C.アデリエンシス(adeliensis)、C.アエリウス(aerius)、C.アルビドシミリス(albidosimilis)、C.アンタルクティカス(antarcticus)、C.アクアティカス(aquaticus)、C.アーテル(ater)、C.ブータネンシス(bhutanensis)、C.コンソルティオニス(consortionis)、C.カルバツス(curvatus)、C.フェノリカス(phenolicus)、C.スキンネリ(skinneri)、C.テレウス(terreus)およびC.ビシュニアッシ(vishniacci)が挙げられる。
ロドトルラ(Rhodotorula)属種の好適な例としては、R.アケニオルム(acheniorum)、R.トゥラ(tula)、R.アクタ(acuta)、R.アメリカーナ(americana)、R.アラウカリアエ(araucariae)、R.アークティカ(arctica)、R.アルメニアカ(armeniaca)、R.アウランティアカ(aurantiaca)、R.アウリクラリエ(auriculariae)、R.バカルム(bacarum)、R.ベンチカ(benthica)、R.ビオウルゲイ(biourgei)、R.ボゴリエンシス(bogoriensis)、R.ブロンキアリス(bronchialis)、R.ブフォニィ(buffonii)、R.カリプトゲナエ(calyptogenae)、R.チュングナメンシス(chungnamensis)、R.クラディエンシス(cladiensis)、R.コラリナ(corallina)、R.クレゾリカ(cresolica)、R.クロセア(crocea)、R.シクロクラスティカ(cycloclastica)、R.ダイレネンシス(dairenensis)、R.ディフルエンス(diffluens)、R.エバーグラディエンシス(evergladiensis)、R.フェルリカ(ferulica)、R.フォリオルム(foliorum)、R.フラガリア(fragaria)、R.フジサネンシス(fujisanensis)、R.フトロネンシス(futronensis)、R.ゲラティノーサ(gelatinosa)、R.グラシアリス(glacialis)、R.グルティニス(glutinis)、R.グラシリス(gracilis)、R.グラミニス(graminis)、R.グリンベルグシィ(grinbergsii)、R.ヒマライエンシス(himalayensis)、R.ヒヌレア(hinnulea)、R.ヒストリティカ(histolytica)、R.ヒロフィラ(hylophila)、R.インカルナタ(incarnata)、R.インゲニオサ(ingeniosa)、R.ジャバニカ(javanica)、R.コイシカウェンシス(koishikawensis)、R.ラクトーサ(lactosa)、R.ラメリブラキエ(lamellibrachiae)、R.ラリンギス(laryngis)、R.リグノフィラ(lignophila)、R.リニ(lini)、R.ロンギッシマ(longissima)、R.ルドウィギィ(ludwigii)、R.リシノフィラ(lysinophila)、R.マリーナ(marina)、R.マルチニエ−フラガンティス(martyniae−fragantis)、R.マトリテンシス(matritensis)、R.メリ(meli)、R.ミヌータ(minuta)、R.ムシラギノーサ(mucilaginosa)、R.ニテンス(nitens)、R.ノトファギ(nothofagi)、R.オリザエ(oryzae)、R.パシフィカ(pacifica)、R.パリダ(pallida)、R.ペネアウス(peneaus)、R.フィリラ(philyla)、R.フィロプラナ(phylloplana)、R.ピラティ(pilatii)、R.ピリマナエ(pilimanae)、R.ピニコラ(pinicola)、R.ピリカータ(plicata)、R.ポリモルファ(polymorpha)、R.サイクロフェノリカ(psychrophenolica)、R.サイクロフィラ(psychrophila)、R.パストゥラ(pustula)、R.レティノフィラ(retinophila)、R.ロザケア(rosacea)、R.ロスラータ(rosulata)、R.ルベファシエンス(rubefaciens)、R.ルベラ(rubella)、R.ルベスセンス(rubescens)、R.ルブラ(rubra)、R.ルブロルゴサ(rubrorugosa)、R.ルフラ(rufula)、R.ルティラ(rutila)、R.サングイネア(sanguinea)、R.サニエイ(sanniei)、R.サルトリィ(sartoryi)、R.シルベストリス(silvestris)、R.シンプレックス(simplex)、R.シネンシス(sinensis)、R.スルーフィアエ(slooffiae)、R.ソンクキィ(sonckii)、R.ストラミネア(straminea)、R.スベリコラ(subericola)、R.スガニィ(suganii)、R.タイワネンシス(taiwanensis)、R.タイワニアナ(taiwaniana)、R.テルペノイダリス(terpenoidalis)、R.テッレア(terrea)、R.テキセンシス(texensis)、R.トキョエンシス(tokyoensis)、R.ウルザマエ(ulzamae)、R.バニリカ(vanillica)、R.ブイレミニィ(vuilleminii)、R.ヤロウィ(yarrowii)、R.ユナネンシス(yunnanensis)およびR.ゾルティ(zsoltii)が挙げられる。ファフィア(Phaffia)属種の好適な例としては、P.ロドジマ(rhodozyma)が挙げられる。
スポロボロミセス(Sporobolomyces)属種の好適な例としては、S.アルボルベスセンス(alborubescens)、S.バナエンシス(bannaensis)、S.ベイジンゲンシス(beijingensis)、S.ビスコフィエ(bischofiae)、S.クラバツス(clavatus)、S.コプロスマエ(coprosmae)、S.コプロスミコーラ(coprosmicola)、S.コラリヌス(corallinus)、S.ディメナエ(dimmenae)、S.ドラコフィリィ(dracophylli)、S.エロンガツス(elongatus)、S.グラシリス(gracilis)、S.イノシトフィルス(inositophilus)、S.ジョンソニィ(johnsonii)、S.コアラエ(koalae)、S.マグニスポラス(magnisporus)、S.ノボゼアランディカス(novozealandicus)、S.オドラス(odorus)、S.パタゴニカス(patagonicus)、S.プロダクツス(productus)、S.ロセウス(roseus)、S.サシコーラ(sasicola)、S.シバタヌス(shibatanus)、S.シンギュラリス(singularis)、S.スブルンネウス(subbrunneus)、S.シンメトリカス(symmetricus)、S.シジギィ(syzygii)、S.タウポエンシス(taupoensis)、S.ツガエ(tsugae)、S.キサンツス(xanthus)、およびS.ユナネンシス(yunnanensis)が挙げられる。パチソレン(Pachysolen)属種およびモニリエラ(Moniliella)属種の好適な例としてはそれぞれ、P.タノフィルス(tannophilus)およびM.ポリニス(pollinis)が挙げられる。本明細書の非従来型酵母のさらになお他の例としては、シュードジマ(Pseudozyma)属種(例えば、S.アンタルクチカ(antarctica))、トドトルタ(Thodotorula)属種(例えば、T.ボゴリエンシス(bogoriensis))、ウィッカーハミエラ(Wickerhamiella)属種(例えば、W.ドメルキアエ(domercqiae))、スタルメレラ(Starmerella)属種(例えば、S.ボンビコーラ(bombicola))、デバリオミセス(Debaryomyces)属種(例えば、D.ハンセニイ(hansenii))、オガタエア(Ogataea)属種(例えば、O.アングスタ(angusta))およびアシュビヤ(Ashbya)属種(例えば、A.ゴシッピイ(gossypii))が挙げられる。
所定の実施形態における酵母は、ヤロウィア(Yarrowia)属酵母、例えば、ヤロウィア・リポリティカ(lipolytica)である。好適なY.リポリティカ(lipolytica)の例としては、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、Manassas,VA)から入手できる次の単離菌:菌株名称ATCC番号#20362、#8862、#8661、#8662、#9773、#15586、#16617、#16618、#18942、#18943、#18944、#18945、#20114、#20177、#20182、#20225、#20226、#20228、#20327、#20255、#20287、#20297、#20315、#20320、#20324、#20336、#20341、#20346、#20348、#20363、#20364、#20372、#20373、#20383、#20390、#20400、#20460、#20461、#20462、#20496、#20510、#20628、#20688、#20774、#20775、#20776、#20777、#20778、#20779、#20780、#20781、#20794、#20795、#20875、#20241、#20422、#20423、#32338、#32339、#32340、#32341、#34342、#32343、#32935、#34017、#34018、#34088、#34922、#34922、#38295、#42281、#44601、#46025、#46026、#46027、#46028、#46067、#46068、#46069、#46070、#46330、#46482、#46483、#46484、#46436、#60594、#62385、#64042、#74234、#76598、#76861、#76862、#76982、#90716、#90811、#90812、#90813、#90814、#90903、#90904、#90905、#96028、#201241、#201242、#201243、#201244、#201245、#201246、#201247、#201249および/または#201847が挙げられる。
所定の実施形態における微生物細胞は、藻類細胞である。例えば、藻類細胞は、下記:緑藻植物門(Chlorophyta)(緑藻類)、紅色植物(Rhodophyta)(紅藻類)、褐色植物(Phaeophyceae)(褐藻類)、珪藻綱(Bacillariophycaeae)(珪藻類)および双鞭毛虫類(Dinoflagellata)(渦鞭毛藻(dinoflagellates))のいずれか由来の藻類細胞であってよい。藻類細胞は、他の態様において、微細藻類(例えば、植物プランクトン、微細植物もしくはプランクトン藻類)または大型藻類(ケルプ、海草)の細胞であってよい。また別の例として、本明細書の藻類細胞は、クラミドモナス(Chlamydomonas)属(例えば、C.レインハルティ(reinhardtii))、ポルフィラ(Porphyra)属(紫色の海苔)、パルマリア(Palmaria)属(例えば、P.パルマータ(palmata)[ダルス]))、アルスロスピラ(Arthrospira)属(例えば、A.プラテンシス(platensis)[スピルリナ])、クロレラ(Chlorella)属(例えば、C.プロトテコイデス(protothecoides)、C.ブルガリス(vulgaris))、コンドラス(Chondrus)属(例えば、C.クリスプス(crispus)[アイリッシュ・モス]))、アファニゾメノン(Aphanizomenon)属、サルガスム(Sargassum)属、コチャユヨ(Cochayuyo)属、ボトリオコッカス(Botryococcus)属(例えば、B.ブラウニイ(braunii))、デュナリエラ(Dunaliella)属(例えば、D.テルティオレクタ(tertiolecta)、D.サリナ(salina))、グラシラリア(Gracilaria)属、プロイロクリシス(Pleurochrysis)属(例えば、P.カルテラエ(carterae))、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)属、シクロテラ(Cyclotella)属、ハンチア(Hantzschia)属、ナノクロリス(Nannochloris)属、ナノクロロプシス(Nannochloropsis)属、ニッスチア(Nitzschia)属、ファエオダクチラム(Phaeodactylum)属(例えば、P.トリコルヌツム(tricornutum))、セネデスムス(Scenedesmus)属(例えば、S.オブリクウス(obliquus))、スティコノコッカス(Stichococcus)属、テトラセルミス(Tetraselmis)属(例えば、T.スエシカ(suecica))、タラシオシリア(Thalassiosira)属(例えば、T.シュードナナ(pseudonana))、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)属(例えば、C.コーニイ(cohnii))、ネオクロリス(Neochloris)属(例えば、N.オレオアバンダンス(oleoabundans))またはシオキトリウム(Schiochytrium)属の種であってよい。本明細書の藻類種は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるThompson(Algal Cell Culture.Encyclopedia of Life Support System(EOLSS),Biotechnology Vol 1、eolss.net/sample−chaptersのインターネットサイトから入手可能)に記載されたように培養および/または操作することができる。
所定の実施形態における細菌細胞は、球菌、桿菌、スピロヘータ菌、スフェロプラスト菌、プロトプラスト菌などの形態の細菌細胞であってよい。細菌のさらに他の非限定的例としては、サルモネラ(Salmonella)属(例えばS.チフス(typhi)、S.エンテリティディス(enteritidis))、シゲラ(Shigella)属(例えばS.ディセンテリアエ(dysenteriae))、エシェリキア(Escherichia)属(例えばE.コリ(coli))、エンテロバクター(Enterobacter)属、セラチア(Serratia)属、プロテウス(Proteus)属、シトロバクター(Citrobacter)属、エドワードシエラ(Edwardsiella)属、プロビデンシア(Providencia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、ハフニア(Hafnia)属、ユーインゲラ(Ewingella)属、クルイベラ(Kluyvera)属、モルガネラ(Morganella)属、プラノコッカス(Planococcus)属、ストマトコッカス(Stomatococcus)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属(例えばS.アウレウス(aureus))、ビブリオ(Vibrio)属(例えばV.コレラエ(cholerae)、エーロモナス(Aeromonas)属、プレシオモナス(Plessiomonas)属、アクチノバチルス(Actinobacillus)属、パスツレラ(Pasteurella)属、ウレアプラズマ(Ureaplasma)属、コクシエラ(Coxiella)属、ロカリマエア(Rochalimaea)属、エーリキア(Ehrlichia)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属(例えばS.ピオゲネス(pyogenes)属、S.ミュータンス(mutans)、S.ニューモニアエ(pneumoniae))、エンテロコッカス(Enterococcus)属(例えばE.フェーカリス(faecalis))、エーロコッカス(Aerococcus)属、ゲメラ(Gemella)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属(例えばL.ラクティス(lactis))、ロイコノストック(Leuconostoc)属(例えばL.メセンテロイデス(mesenteroides))、ペディコッカス(Pedicoccus)属、バチルス(Bacillus)属(例えばB.セレウス(cereus)、B.サブチリス(subtilis)、B.チューリンギエンシス(thuringiensis))、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属(例えばC.ジフテリア(diphtheriae))、アルカノバクテリウム(Arcanobacterium)属、アクチノミセス(Actinomyces)属、ロードコッカス(Rhodococcus)属、リステリア(Listeria)属(例えばL.モノシトゲネス(monocytogenes))、エリシペロトリックス(Erysipelothrix)属、ガルドネレラ(Gardnerella)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、アクロバクター(Arcobacter)属、ウォリネラ(Wolinella)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属(例えばA.ツメファシエンス(tumefaciens))、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、クリセモナス(Chryseomonas)属、コマモナス(Comamonas)属、エイケネラ(Eikenella)属、フラビモナス(Flavimonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、モラクセラ(Moraxella)属、オリゲラ(Oligella)属、シュードモナス(Pseudomonas)属(例えばP.アエルギノーサ(aeruginosa))、シェバネラ(Shewanella)属、ウィークセラ(Weeksella)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、フランシエセラ(Franciesella)属、アフィピア(Afipia)属、バルトネラ(Bartonella)属、カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium)属、カルジオバクテリウム(Cardiobacterium)属、ストレプトバチルス(Streptobacillus)属、スピリルム(Spirillum)属、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、ペプトコッカス(Peptococcus)属、サルシニア(Sarcinia)属、コプロコッカス(Coprococcus)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、モビルンクス(Mobiluncus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、オイバクテリウム(Eubacterium)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属(例えばL.ラクティス(lactis)、L.アシドフィルス(acidophilus))、ロチア(Rothia)属、クロストリジウム(Clostridium)属(例えばC.ボツリナム(botulinum)、C.パーフィリンゲンス(perfringens))、バクテロイデス(Bacteroides)属、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属、プレボテラ(Prevotella)属、フソバクテリウム(Fusobacterium)属、ビロフィラ(Bilophila)属、レプトリキア(Leptotrichia)属、ウォリネラ(Wolinella)属、アシダミノコッカス(Acidaminococcus)属、メガスファエラ(Megasphaera)属、ベイロネラ(Veilonella)属、ノルカルディア(Norcardia)属、アクチノマデュラ(Actinomadura)属、ノルカルディオプシス(Norcardiopsis)属、ストレプトミセス(Streptomyces)、ミクロポリスポラス(Micropolysporas)属、サーモアクチノミセス(Thermoactinomycetes)属、トレポネマ(Treponema)属、レプトスピラ(Leptospira)属およびクラミジア(Chlamydiae)属の細菌が挙げられる。
本明細書の組換え細胞は、長鎖脂肪酸含有基質から1つ以上のLCDA生成物を生成することができる。本明細書に開示した細胞によって培養培地の体積中で生成できるLCDAの総量は、例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110もしくは120g/L(または5〜120g/Lの間の整数)であってよい。本開示の組換え細胞の例は、同一発酵条件下で増殖させた場合に、好適なコントロール細胞(例えば、親細胞)と比較して、LCDA生成における10倍〜1000倍の増加を示すことができる。そのような増加は、例えば、約、または少なくとも約10倍、25倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、400倍、500倍、750倍または1000倍であってよい。
本明細書の細胞によって生成されたLCDAの均質性もしくは不均質性の程度は、典型的には細胞に供給された長鎖脂肪酸含有基質の性質に左右される。例えば、1つのタイプの長鎖脂肪酸(均質脂肪酸含有基質)を含む基質を用いて増殖した細胞は、典型的には、基質内の脂肪酸と同一の炭素鎖長を備える大部分の(例えば、少なくとも50、55、60、65、70もしくは75重量%)のLCDAを含むLCDA生成物を生成することができる。例示するために、パルミチン酸(C16:0)もしくはオレイン酸(C18:1)だけを含む基質を用いた培養培地中で増殖させた一部の態様における細胞は、典型的には、それぞれ16または18の炭素鎖長を備える少なくとも50重量%のLCDA生成物を含むLCDAを生成することができる。
2つ以上のタイプの長鎖脂肪酸(不均質脂肪酸含有基質)を含む基質を用いた培養培地中で増殖させた一部の態様における細胞は、典型的には、基質内の脂肪酸の対応する炭素鎖長に概して比例する炭素鎖長を備えるLCDA生成物のプロファイルを生成することができる。例えば、典型的には脂肪酸の約7%のαリノレン酸(C18:3)、約55%のリノール酸(C18:2)、約23%のオレイン酸(C18:1)、約4%のステアリン酸(C18:0)および約11%のパルミチン酸(C16:0)(したがって、脂肪酸の約89%はC18であり、約11%はC16である)を含む大豆油を用いて増殖させた細胞は、18の炭素鎖長を備える大部分が(例えば少なくとも50、55、60、65、70もしくは75重量%)のLCDA生成物を含むLCDAを生成することができる。
本明細書のLCDAは、例えば、10〜24個の炭素鎖長を有することができる。LCDAは、例えば、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23もしくはC24のLCDAであってよい。LCDAは、一部の実施形態では、10〜22個、12〜22個、14〜22個、16〜22個、18〜22個、20〜22個、16〜18個、16〜20個もしくは16〜22個の炭素原子の鎖長を有することができる。所定の態様におけるLCDA生成物の例は、飽和であり(それらの炭素鎖は二重結合を含んでいない)、表Aに列挙されている。
本明細書のLCDA生成物のさらに他の例は、不飽和である。不飽和LCDAは、例えば、1、2、3、4、5もしくは6個の二重結合を有する脂肪族炭素鎖を含むことができる。本明細書の不飽和LCDAの例としては、C16:1、C16:2、C18:1、C18:2、C18:3、C18:4、C20:1、C20:2、C20:3、C20:4、C20:5、C22:1、C22:2、C22:3、C22:4、C22:5およびC22:6が挙げられる。上記のLCDAのいずれも、例えば、対応する鎖長および飽和/不飽和プロファイルを有する脂肪酸を含む基質を用いて、本明細書に開示した組換え細胞を増殖させることによって生成することができる。LCDA生成物の炭素鎖内の不飽和の位置は、例えば、LCDAを調製するために使用される脂肪酸含有基質内の不飽和の位置と対応する可能性がある。
本明細書の長鎖脂肪酸含有基質内で提供される長鎖脂肪酸は、例えば、少なくとも10個の炭素鎖長または10〜24個の炭素原子の長さを有することができる。長鎖脂肪酸は、例えば、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23もしくはC24長鎖脂肪酸であってよい。長鎖脂肪酸は、一部の実施形態では、10〜24個、12〜24個、14〜24個、16〜24個、18〜24個、20〜24個、10〜22個、12〜22個、14〜22個、16〜22個、18〜22個、20〜22個、16〜18個、16〜20個もしくは16〜22個の炭素原子の鎖長を有することができる。本明細書に開示した基質は、少なくとも10個の炭素鎖長または10〜24個の範囲内の炭素原子を備える脂肪酸を含むが、所望であれば、追加のタイプの脂肪酸もまた本基質中に存在することができる。例えば、基質は、さらに10個未満の炭素鎖長を備える1つ以上のタイプの脂肪酸を含むことができる。
本明細書の長鎖脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和長鎖脂肪酸の例は、脂肪酸炭素鎖内に唯一の二重結合が存在する場合は一不飽和脂肪酸(MUFA)、脂肪酸炭素鎖が2つ以上の二重結合を有する場合は多不飽和脂肪酸(PUCA)である。本明細書の長鎖脂肪酸の例は、表Bに提供した。
長鎖脂肪酸は、それが細胞にとって非毒性または低毒性しか示さない限り、一部の場合には置換脂肪酸であってよい。脂肪酸の脂肪族鎖内の1つ以上の水素は、任意選択的に、ハロゲン、アセチル、OR、NR2もしくはSR基(式中、Rは、例えば、独立してHまたはC1−C8アルキル基である)で置換することができる。本明細書の置換脂肪酸の所定の例としては、ω−アルコールもしくはω−アルデヒド基を備える脂肪酸が挙げられる。
本明細書に開示した長鎖脂肪酸含有基質は、本明細書の一部の態様では、遊離長鎖脂肪酸を含むことができる。そのような脂肪酸は、任意選択的に、非エステル化長鎖脂肪酸もしくは非結合長鎖脂肪酸であると特徴付けることができる。本明細書に開示した(例えば、表Bに列挙した)任意の長鎖脂肪酸は、例えば、そのような基質中に含まれる可能性がある。遊離長鎖脂肪酸を含む基質のその他の例としては、油の脂肪酸留出物が挙げられる。脂肪酸留出物は、例えば植物油(例えば、パーム油脂肪酸留出物[PFAD])などの本明細書に開示した任意の油の脂肪酸留出物であってよい。
本明細書に開示した長鎖脂肪酸含有基質は、一部の態様では、エステル化長鎖脂肪酸を含むことができる。本明細書に開示した(例えば、表Bに列挙した)任意の長鎖脂肪酸は、例えば、そのような基質中に含まれる可能性がある。本明細書のエステル化長鎖脂肪酸の一部の例としては、グリセリド分子または脂肪酸アルキルエステル内に含まれる長鎖脂肪酸が挙げられる。
本明細書のグリセリド分子は、モノ−、ジ−もしくはトリグリセリドまたはそれらの混合物であってよい。長鎖脂肪酸含有基質がジ−および/またはトリグリセリドを含む実施形態では、それらのエステル化脂肪酸の全部が長鎖脂肪酸である必要はない。本明細書のグリセリド分子は、典型的には油として提供されるが、一部の実施形態では、グリセリド分子は脂肪として提供することもできる。したがって、長鎖脂肪酸含有基質は、任意選択的に1つ以上のタイプの油および/または脂肪を含むと特徴付けることができる。
本明細書で使用するために好適な油(もしくは脂肪)の例は、植物、微生物、酵母、真菌、細菌、藻類、ユーグレナ類、ストラメノパイル類、動物、家禽類および魚類由来であってよい。植物油(植物性油脂)の例としては、カノーラ油、コーン油、パーム核油、ケル(cheru)種油、野生アンズ種油、ゴマ油、ソルガム油、大豆油(soy oil)、菜種油、大豆油(soybean oil)、セイヨウアブラナ油、トール油、ヒマワリ油、麻実油、オリーブ油、亜麻仁油、ココナッツ油、ヒマシ油、落花生油、パーム油、マスタード油、綿実油、カメリナ油、ジャトロファ油およびハマナ油が挙げられる。本明細書の油および脂肪のその他の例としては、精製脂肪および油;飲食店用油脂;黄色および褐色油脂;廃産業用揚油;獣脂;ラード;鯨油;乳脂肪;魚油;藻類油;酵母油;微生物油;酵母バイオマス、微生物バイオマス、下水汚泥由来の油/脂肪;ならびにリン脂質(例えば、石鹸原料で提供される)が挙げられる。本明細書において有用な油のさらに他の例としては、(i)化石燃料由来油、例えば石油関連製品由来の油、使用済み潤滑油および工業用潤滑油、石炭液化油;(ii)石油化学プロセスおよび化学プロセスからの副生成物として生成される合成油;および(iii)産業廃棄物および/または農業廃棄物由来の油が挙げられる。
本明細書の脂肪酸アルキルエステルは、例えば、それぞれメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルもしくはデシル基などのC1〜C10アルキル基を含むことができる。例としては、脂肪酸メチルエステルおよび脂肪酸エチルエステルが挙げられる。本明細書に開示した長鎖脂肪酸は、脂肪酸アルキルエステル内に含まれてよいが、一部の例には、C16(例えば、パルミチン酸)およびC18(例えば、オレイン酸)脂肪酸が含まれる。脂肪酸アルキルエステルのうちの1つまたは混合物は、LCDA生成のために本明細書の細胞とともに使用することができる。脂肪酸アルキルエステルの混合物は、一部の態様では、当分野において公知の任意の適切な方法を使用して、脂肪酸エステルを生成するために、本明細書に開示したいずれかの油もしくは脂肪(すなわち、脂質)をアルコール(例えば、メタノールもしくはエタノール)と化学的に反応させることによって提供することができる。そのような混合物の1つの例は、典型的には植物性油脂もしくは動物性脂肪(例えば、獣脂)由来であるバイオディーゼルである。
本明細書に開示した長鎖脂肪酸含有基質は、一部の態様では、アミド結合長鎖脂肪酸を含むことができる。本明細書のアミド結合長鎖脂肪酸の例としては、脂肪族アミド、アシルアミノ糖およびアシルアミノ−グリカンが挙げられる。本明細書に開示した(例えば、表Bに列挙した)任意の長鎖脂肪酸は、例えば、アミド結合長鎖脂肪酸として提供することができる。
本明細書の細胞は、長鎖脂肪酸を含む基質からLCDAを生成すると記載されてはいるが、さらに、例えばアルカン、脂肪族アルコールおよび/または脂肪族アルデヒドなどの他の有機基質からLCDAを生成することもできると考えられている。そのような他の基質は、長鎖脂肪酸を含む基質について本明細書に開示した基質と同一の炭素鎖長の基質であってよい。
本開示は、さらに1つ以上の長鎖ジカルボン酸(LCDA)を生成する方法に関する。本方法は、本明細書に開示した組換え細胞(例えば、酵母細胞などの微生物細胞)を長鎖脂肪酸含有基質と接触させる工程であって、ここで細胞がその基質からLCDAを合成する工程を含む。本方法は、細胞によって合成されたLCDAを回収する任意選択的工程をさらに含む。
本方法は、例えば、上記に開示した実施形態または下記の実施例の任意の特徴(例えば、細胞タイプ;ACoS酵素の配列;CYPおよび/またはCPR酵素の配列;FAO、FADHおよび/またはFALDH酵素の配列;Pex3タンパク質の配列などに関連する特徴)を使用して実施することができる。したがって、上記に開示した特徴もしくは実施例中の特徴のいずれか、またはこれらの特徴の任意の組み合わせを適切に使用すると、本明細書のLCDA生成法の実施形態を特徴付けることができる。下記の方法の特徴は、また別の実施例である。
本明細書に開示したLCDA生成法は、組換え細胞を長鎖脂肪酸含有基質と接触させる工程であって、ここで細胞がその基質からLCDAを合成する工程を含む。そのような接触させる工程は、任意選択的に、脂肪酸含有基質を含む培地中で組換え細胞をインキュベートする、培養する、および/または増殖させる工程であると特徴付けることができる。この接触させる工程は、所望であれば、発酵工程(例えば、長鎖脂肪酸含有基質からのLCDA生成の発酵)(例えば、LCDA発酵法)であると特徴付けることもできる。
本明細書のLCDAを発酵させるために好適なpH(例えば、その中で細胞が長鎖脂肪酸含有基質と接触させられる培地のpH)は、例えば、約pH4.0〜9.0である。この範囲内の好適なpHは、例えば、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5または9.0であってよい。一部の他の態様では、約pH7.5〜8.5の範囲内のpHを使用することができる。約5.5〜7.5のpHは、場合により初期増殖条件のために有用な場合がある。
本明細書のLCDAを発酵させるために好適な温度(例えば、その中で細胞が長鎖脂肪酸含有基質と接触させられる培地の温度)は、本明細書の組換え細胞が最高増殖を示す温度であってよい。好適な温度の例としては、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34もしくは35℃が挙げられる。一部の場合に使用できる好適な温度範囲には、25〜32℃、28〜32℃および28〜30℃が含まれる。
1つ以上のLCDAを発酵させるために組換え細胞を長鎖脂肪酸含有基質とともに増殖させるための時間量は、約、または少なくとも約36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、156、168、180、192、204、216、228または240時間であってよい。発酵期間は、所定の他の実施形態では、約3〜7日間、4〜6日間または5日間であってよい。細胞は、任意選択的に、長鎖脂肪酸含有基質と接触させる前に約12〜24時間増殖させることができる。
その中で組換え微生物細胞が長鎖脂肪酸含有基質と接触させられる培地中のそのような基質の濃度は、例えば、約、または少なくとも約1、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100g/L(または1〜100g/Lの間の任意の整数)であってよい。そのような濃度は、所定の他の実施形態では、約3〜30もしくは5〜20g/Lであってよい。これらの濃度のいずれも、微生物細胞を含むLCDAを発酵させるための培地に加えられた直後に存在する基質の濃度である、開始濃度(出発濃度)であってよい。初期長鎖脂肪酸含有基質の濃度は、任意選択的に、例えば、パルス式供給または連続的供給の開始時の濃度を特徴付けることができる。
一部の実施形態におけるLCDA発酵法は、バッチ式、フェドバッチ式または連続式発酵プロセスを使用して実施することができる。バッチ式発酵法は、典型的には、その中で培地(長鎖脂肪酸含有基質を含む)がプロセスの開始時に固定され、発酵中のpHおよび/または酸素レベルを維持するために必要とされる可能性がある添加/修飾を超えるそれ以上の添加/修飾を受けない閉鎖型システムを含む。本明細書のフェドバッチ式システムは、このプロセスが発酵中のpHおよび/または酸素レベルを維持するために必要とされる可能性がある添加/修飾を超えるそれ以上の添加/修飾を受けることを除けば、バッチ式プロセスと類似である。例えば、長鎖脂肪酸含有基質がこのプロセス中にこのシステムに加えられる場合がある;そのような添加は、交互/断続的または連続的であってよい。バッチ式およびフェドバッチ式培養法は、当分野において公知である(例えば、Brock,Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,2nd Edition,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.,1989;Deshpande,Appl.Biochem.Biotechnol.36:227−234を参照されたい)。本明細書の連続式発酵プロセスは、典型的には、LCDA生成物回収のための培養体積の等量を同時に除去しながら、発酵容器に規定培地を連続的に添加することによって実施することができる。Brockは、連続的発酵方法論を開示している。
さらに他の培養条件は、任意選択的に、本明細書のLCDA生成法を実施するために適用することができる。例えば、組換え細胞は、好気的(例えば、微好気的)または嫌気的条件下で培養することができるが、一部の例では前者が好ましい。振とうまたは回転の形態での撹拌は、任意選択的に、例えば約100、150、200、300、500、800、1000、1200、1500、1800もしくは2000rpmなどの速度で培養に適用することができる。また別の例では、第1段階が細胞増殖を促進し、第2段階がLCDA生成を促進する2段階プロセスを使用することができる。本明細書に開示した2つ、3つ、4つ以上の異なるタイプの(好ましくは同一の種、属もしくは科の)組換え細胞は、さらに他の実施例において使用できる。
本明細書に開示したLCDA生成法において生成されるLCDAの総量は、例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110もしくは120g/L(または5〜120g/Lの間の整数)であってよい。これらの濃度は、その中で本明細書の微生物細胞が長鎖脂肪酸含有基質と接触させられる培地中で、および上記に開示した増殖期間のいずれかで測定される濃度であってよい。所定のLCDA生成法におけるLCDA生成率は、約、または少なくとも約0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15もしくは1.20g/L/時であってよい。LCDA産出量のこれらの尺度のいずれかをもたらす微生物細胞の出発量は、所定の態様では、下記の実施例において試験したそれらの量のいずれかであってよい。
本明細書のLCDA生成法において細胞によって合成されるLCDA生成物は、任意選択的に単離することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0228587号明細書および/または同第2012/0253069号明細書に開示されているなどの発酵ブロスからLCDAを単離するための当分野において公知の任意の方法を適用することができる。さらに、例えば、下記の実施例において開示した任意のLCDA単離法を使用することができる。
1つ以上のω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸および/またはω−アルド長鎖脂肪酸は、本明細書のLCDA合成法中の中間物として生成される(図1および2を参照されたい)。したがって、本開示の所定のまた別の実施形態では、LCDAを合成する方法は、任意選択的に、ω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸および/またはω−アルド長鎖脂肪酸を生成する方法であると特徴付けることもできる。そのようなLCDA代謝産物は、例えば、本明細書に開示したLCDAおよび長鎖脂肪酸のいずれかに対応する炭素数を有することができる。
本明細書に開示した組成物および方法の非限定的例としては、以下が挙げられる:
1.長鎖アシル−CoAシンテターゼ(ACoS酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションを含む工学的LCDA生成経路を含む組換え微生物細胞であって、長鎖脂肪酸含有基質から1つ以上の長鎖ジカルボン酸(LCDA)生成物を生成することができる組換え微生物細胞。
2.ACoS酵素が配列番号44、49、36、33もしくは34と少なくとも90%同一である1つのアミノ酸配列を含む、実施形態1の組換え微生物細胞。
3.ACoS酵素が長鎖アシル−CoAシンテターゼ活性およびクマロイル−CoAシンテターゼ活性の両方を有する、実施形態1または2の組換え微生物細胞。
4.ACoS酵素が配列番号44もしくは49と少なくとも90%同一である1つのアミノ酸配列を含む、実施形態3の組換え微生物細胞。
5.工学的LCDA生成経路がさらに下記の特徴:
(i)シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、
(ii)シトクロムP450レダクターゼ(CPR酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、
(iii)脂肪族アルコールオキシダーゼ(FAO酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、
(iv)脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ(FADH酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーション、
(v)脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ(FALDH酵素)をコードするポリヌクレオチド配列のアップレギュレーションのうちの1つ以上を含む、実施形態1、2、3または4の組換え微生物細胞。
6.CYP酵素をコードするポリヌクレオチド配列およびCPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列の一方または両方がアップレギュレートされる、実施形態5の組換え微生物細胞。
7.微生物細胞がペルオキシソーム生物発生因子をコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションをさらに含む、実施形態1、2、3、4、5または6の組換え微生物細胞。
8.ペルオキシソーム生物発生因子はペルオキシソーム生物発生因子3である、実施形態7の組換え微生物細胞。
9.微生物細胞がペルオキシソームアシル−CoAオキシダーゼをコードする内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションをさらに含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7または8の組換え微生物細胞。
10.ペルオキシソームアシル−CoAオキシダーゼはペルオキシソームアシル−CoAオキシダーゼ−2、−3および/または−4である、実施形態9の組換え微生物細胞。
11.微生物細胞は、減少した脂質合成および/または貯蔵能力を有する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の組換え微生物細胞。
12.減少した脂質合成および/または貯蔵能力は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT酵素)をコードする少なくとも1つの内因性ポリヌクレオチド配列のダウンレギュレーションに起因する、実施形態11の組換え微生物細胞。
13.微生物細胞は酵母細胞である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12の組換え微生物細胞。
14.酵母細胞はヤロウィア(Yarrowia)属細胞である、実施形態13の組換え微生物細胞。
15.LCDA生成物は炭素原子10〜24個の鎖長を有する、および/または長鎖脂肪酸含有基質は遊離長鎖脂肪酸またはエステル化長鎖脂肪酸を含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14の組換え微生物細胞。
16.長鎖ジカルボン酸(LCDA)を生成する方法であって:a)実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15の組換え微生物細胞を長鎖脂肪酸含有基質と接触させる工程であって、微生物細胞がその基質からLCDAを合成する工程;およびb)任意選択的に工程(a)のLCDAを回収する工程を含む方法。
17.微生物細胞は酵母細胞である、および任意選択的に、酵母細胞はヤロウィア(Yarrowia)属細胞である、実施形態16の方法。
本開示を以下の実施例において詳細に説明する。これらの実施例は、本明細書の所定の好ましい態様を示しているが、単に説明の目的でのみ記されていると理解すべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者であれば、本明細書に開示した実施形態の本質的な特徴を確認することができ、本発明の趣旨および範囲を逸脱しない範囲で、本明細書に開示した実施形態を様々な使用および条件に適合させるために様々な変更および修飾を加えることができる。
一般的方法
実施例において使用した標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当分野において周知であり、例えば:1)J.Sambrook and D.Russell(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001);2)T.J.Silhavy et al.(Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1984);および3)F.M.Ausubel et al.(Short Protocols in Molecular Biology,5th Ed.Current Protocols,John Wiley and Sons,Inc.,NY,2002)によって記載されている。
微生物培養の維持および増殖に好適な材料および方法は、当分野において周知である。下記の実施例において使用するために好適な技術は、例えば、Manual of Methods for General Bacteriology(P.Gerhardt,R.G.E.Murray,R.N.Costilow,E.W.Nester,W.A.Wood,N.R.Krieg and G.B.Phillips,Eds.,American Society for Microbiology:Washington,D.C.,1994);および/またはThomas D.Brock in Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,2nd Ed.(Sinauer Associates:Sunderland,MA,1989)の中に見いだすことができる。全ての試薬、制限酵素および細胞増殖材料は、他に特に明記しない限り、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、New England Biolabs,Inc.(Beverly,MA)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)またはSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。E.コリ(coli)菌株は、典型的には37℃のルリア・ベルターニ(LB)プレート上で増殖させた。
一般的分子クローニングは、標準方法(例えば、Sambrook and Russell)にしたがって実施された。オリゴヌクレオチドは、Sigma−Genosys(Spring,TX)によって合成された。個々のPCR増幅反応は、他に特に明記しない限り、次の:PCRバッファー(10mMのKCl、10mMの(NH4)2SO4、20mMのTris−HCl(pH8.75)、2mMのMgSO4、0.1%のTriton X−100を含む)、100μg/mLのBSA、200μMの各デオキシリボヌクレオチド三リン酸、10pmoleの各プライマーおよび1μLのPfu DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を含む総量50μL中で実施された。部位特異的突然変異誘発法は、Agilentの部位特異的突然変異誘発キットを製造業者の取扱説明書にしたがって使用して実施された。PCRもしくは部位特異的突然変異誘発法がサブクローニングに含まれた場合、構築物は、配列に誤差が持ち込まれなかったことを確証するためにシークエンシングされた。PCR生成物は、pGEM(登録商標)−T Easy Vector(Promega,Madison,WI)および/またはpCR(登録商標)4−TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)内にクローニングされた。全てのコドン最適化遺伝子は、GenScript(Piscataway,NJ)によって合成された。
DNA配列は、ベクター特異的およびインサート特異的プライマーの組み合わせを用いて色素ターミネーターテクノロジーを使用してABI自動シークエンサー上で生成された。配列の編集および分析は、SEQUENCHERソフトウェア(Gene Codes Corporation,Ann Arbor,MI)を使用して実施された。遺伝子配列の比較は、DNASTARソフトウェア(DNA Star,Inc.)を使用して実施された。または、遺伝子配列の操作は、Life Technologies(Grand Island,NY)から入手できるVector NTI Advance(登録商標)10プログラムを使用して達成された。
それにクエリー配列が最大の類似性を有した配列を要約するアラインメント比較の結果は、同一性率、類似性率および期待(E)値にしたがって報告されている。「期待値」は、完全に偶然によってこのサイズのデータベースの検索において期待される、マッチ数を特定するマッチの統計的有意性を所定のスコアを用いて推定する。
本明細書で使用する所定の略語の意味は、次の通りである:「sec」は秒(間)を意味し、「min」は分(間)を意味し、「h」は時(間)を意味し、「d」は日(間)を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」は「マイクロモルの」を意味し、「mM」は「ミリモルの」を意味し、「M」は「モルの」を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kB」はキロベースを意味し、「DCW」は乾燥細胞重量を意味し、および「TFA」は全脂肪酸を意味する。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の培養および形質転換
Y.リポリティカ(lipolytica)菌株ATCC番号20362およびATCC番号#90812は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Rockville,MD)から購入した。Y.リポリティカ(lipolytica)菌株は、下記に示した配合にしたがって、28〜30℃の数種の培地中で規定通りに増殖させた。寒天プレートは、各液体培地に20g/Lの寒天を添加することによって調製した。
YPD寒天培地(1L当たり):10gの酵母抽出物(DIFCO)、20gのBacto(商標)ペプトン(DIFCO)、20gのグルコース。
基本の最少培地(MM)(1L当たり):20gのグルコース、1.7gの酵母用ニトロゲンベース(アミノ酸不含)、1.0gのプロリン(pH6.1)(無調整)。
最少培地+ウラシル(MM+ウラシルもしくはMMU)(1L当たり):MM培地を上述のように調製し、0.1gのウラシルおよび0.1gのウリジンを加える。
最少培地+ウラシル+スルホニル尿素(MMU+SU)(1L当たり):MM培地を上述のように調製し、280mgのスルホニル尿素を加える。
最少培地+ロイシン+リシン(MMLeuLys)(1L当たり):MM培地を上述のように調製し、0.1gのロイシンおよび0.1gのリシンを加える。
最少培地+5−フルオロオロチン酸(MM+5−FOA)(1L当たり):20gのグルコース、6.7gの酵母用ニトロゲンベース、75mgのウラシル、75mgのウリジンおよび(供給業者から受領した各バッチ内では変動が発生するので100mg/L〜1000mg/Lの濃度範囲に対して試験したFOA活性)に基づく適切な量のFOA(Zymo Research Corp.,Orange,CA)。
MF培地(1L当たり):14.3gの酵母抽出物、7.15gのペプトン、0.82gのKH2PO4、16.37gのK2HPO4、20gのグルコース、1.2mLの微量金属(100×)。3mLのMgSO4(1M)、0.6mLのチアミンHCl(1.5g/L)。
MFバッファー1培地(1L当たり):150gのグルコース、100.12gのKHCO3、4.29gの尿素。
YM培地:0.5%のペプトン、0.3%の酵母抽出物、0.3%のマルトース抽出物。
YNB培地(1L当たり):20gのグルコース、1.7gの酵母用ニトロゲンベース(アミノ酸不含)、20gの寒天(pH6.1)(無調整)。
YPD2−B培地:10gの酵母抽出物、10gのペプトン、20gのグルコース、94mLのK2HPO4(1M)、6mLのKH2PO4(1M)、200μLの微量金属(100×)、1mLのチアミンHCl(75mg/mL)、1mLのMgSO4・7H2O(12.5g/100mL)。
YPD4−B培地:10gの酵母抽出物、10gのペプトン、40gのグルコース、94mLのK2HPO4(1M)、6mLのKH2PO4(1M)、200μLの微量金属(100×)、1mLのチアミンHCl(75mg/mL)、1mLのMgSO4・7H2O(12.5g/100mL)。
Y2P1D2−B培地:20gの酵母抽出物、10gのペプトン、20gのグルコース、94mLのK2HPO4(1M)、6mLのKH2PO4(1M)、200μLの微量金属(100×)、1mLのチアミンHCl(75mg/mL)、1mLのMgSO4・7H2O(12.5g/100mL)。
微量金属の配合(100×):10.0g/Lのクエン酸、1.5g/LのCaCl2・2H2O、10.0g/LのFeSO4・7H2O、0.39g/LのZnSO4・7H2O、0.38g/LのCuSO4・5H2O、0.20g/LのCoCl2・6H2O、0.30g/LのMnCl2・4H2O。
ヤロウィア(Yarrowia)属の形質転換:
Y.リポリティカ(lipolytica)の形質転換は、他に特に明記しない限り、Chen et al.(Appl.Microbiol.Biotechnol.48:232−235)にしたがって実施した。手短には、ヤロウィア(Yarrowia)属をYPDプレート上に画線し、30℃でおよそ18時間増殖させた。プレートから多めの数ループ分の細胞を擦り取り、2.25mLの50%のPEG(平均MW3350)、0.125mLの2Mの酢酸リチウム(pH6.0)および0.125mLの2MのDTTを含有する1mLの形質転換バッファー中に再懸濁させた。次に、およそ500ngの線状化プラスミドDNAを100μLの再懸濁細胞中でインキュベートし、ボルテックスミキサーを用いて15分間隔で撹拌しながら39℃で1時間維持した。細胞は選択培地プレート上でプレーティングし、30℃で2〜3日間にわたり維持した。
長鎖ジカルボン酸(LCDA)生成のためのフラスコ培養:1ループの新鮮画線ヤロウィア(Yarrowia)属細胞を15mLのFalcon(商標)細菌培養管中の3mLのMM培地に接種し、振とうしながら(250rpm)30℃で一晩(約20時間)増殖させた。一晩培養した細胞を使用して250mLのバッフル付きフラスコ内で50mLのY2P1D2−B液体培地に接種し、30℃、250rpmで振とうした。24時間後、培養は、2.0mLの1MのNaHCO3および1.0mLのグルコース溶液(200g/L)を添加することによってpH8.0へ調整した。次に、1.5mLのパルミチン酸エチル(基質)を最終濃度が23mg/mLとなるように培養培地に直接加え、この培養物を250rpm、30℃で4日間にわたり振とうした。各フラスコ培養からの全ブロスサンプルをLCDA分析にかけた。
LCDA生成のための微量発酵:
微量発酵槽分析のための菌株は、冷凍ストックからYPD寒天プレート上の単一コロニーに増殖させた。単一コロニーは15mLのFALCON培養管中の3mLの最少培地中に接種し、30℃、250rpmで一晩増殖させた。これらの培養から、1mLの種培養および1mLの50%のグリセロールストックを用いて発酵バイアルを作成し、−80℃で保管した。発酵バイアルを解凍し、200μLの培養を使用して24ウエルカセット内の1ウエル当たり4mLのMF培地に接種した。微量発酵槽は30℃、700rpm、最初の24時間については20のDOおよびラン中の残り72時間については75のDOを用いてで作動させた。MFバッファー1培地は、各ウエルに24時間後(200μL)、32時間後(150μL)、48時間後(150μL)、56時間後(150μL)および72時間後(50μL)に添加した。パルミチン酸エチル基質は、各ウエルに24時間後(20μL)、32時間後(30μL)、48時間後(20μL)、56時間後(30μL)、72時間後(20μL)および80時間後(30μL)に添加した。微量発酵槽培養を96時間後に収穫し、LCDA分析のためにアリコートを採取した。
250mLのフラスコ培養からのLCDA抽出および分析:
全ブロスサンプル(1.0mL)は、TEFLON(登録商標)製セプタムを備えるネジ蓋付きガラスバイヤル内に収穫した。サンプルは、1MのHClを添加することによってpH3.0に酸性化し、次に5.0mg/mLのミリスチン酸内部標準物質を含有する1.0mLのtert−ブチルメチルエーテル(MTBE、Sigma−Aldrich)を用いて1回抽出した。サンプルをボルテックスミキサーにかけ、その後に水相および有機相は4500rpmでの5分間の遠心分離によって分離させた。有機MTBE相(LCDAを含有する)アリコート(0.5mL)を新規なバイアルに移し、メチル基を備えるLCDA生成物の誘導体化は0.5mLのメタノール性H2SO4(5%v/v)の添加により実施し、80℃で1時間加熱した。誘導体化後、1MのNaCl水溶液(0.5mL)を加え、サンプルをボルテックスミキサーにかけると、静止後に相分離した。メチル誘導体化LCDA生成物を含有する上方のMTBE有機相は、水素炎イオン化検出器(FID)を備えるガスクロマトグラフィー(GC)による分析のために収集した。化合物保持時間および質量スペクトルデータは、商業規格からのメチルエステルについて測定された化合物保持時間および質量スペクトルデータと比較した(Ultra Scientific,North Kingstown,RI)。GC分析は、Omegawax(登録商標)320溶融シリカ毛細管カラム、30m×0.32mm×0.25m(Supelco Inc.,Bellefonte,PA)を装備した7890 GC(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を用いて実施された。水素は、分割比10:1および入口圧力18.0psiを用いて5.5mL/分でキャリアーガスとして使用した。オーブン温度は、最初は200℃にプログラミングし、次に直ちに25℃/分で240℃へ上昇させた;検出器は260℃であった。
2Lの発酵サンプルからのLCDAの抽出および分析:
本方法は、100μLの全ブロスサンプルを反応バイアルへ移す工程を含んでいた。サンプル重量を測定し、化学天秤を使用して±0.1mgまで記録した。移した直後、メチル基を備えるLCDA生成物の誘導体化は、100μLの20mg/mLのミリスチン酸内部標準物質(トルエン中で提供された)および2.0mLのメタノール性H2SO4(5%v/v)を添加し、この反応バイアルを80℃で1時間加熱することによって実施した。誘導体化後、溶媒抽出は、2.0mLの1MのNaCl水溶液および2.0mLのヘキサンを反応混合液に添加することによって実施した。FIDを備えるGCによる分析のために、誘導体化生成物を含有する上方のヘキサン有機相を収集した。化合物保持時間および質量スペクトルデータは、商業規格からのメチルエステルについての化合物保持時間および質量スペクトルデータと比較された(Ultra Scientific,North Kingstown,RI)。サンプル中のLCDA生成物の濃度は、ミリスチン酸内部標準物質に関連付けて計算した。GC分析は、Omegawax(登録商標)320溶融シリカ毛細管カラム、30m×0.32mm×0.25m(Supelco Inc.)を装備した6890 GC(Agilent Technologies)を用いて実施された。ヘリウムは、分割比20:1および入口圧力18.0psiを用いて2.8mL/分でキャリアーガスとして使用した。オーブン温度は、最初は160℃にプログラミングし、次に直ちに5℃/分で200℃へ上昇させ、10℃/分で240℃へ上昇させ4分間保持した。検出器は260℃であった。
植物油系基質からLCDAを生成するためのヤロウィア(Yarrowia)属酵母を工学的に操作するための戦略
Y.リポリティカ(lipolytica)は、炭素源としてのグルコースを用いて窒素制限条件下で増殖させた場合に25%超の乾燥細胞重量(DCW)で脂質を生成する非従来型油脂性酵母である。Y.リポリティカ(lipolytica)は強力なβ酸化能力を有するので、この酵母は例えばn−アルカン、油、脂肪および脂肪酸などの疎水性基質を単独炭素源として容易に使用することができる。Y.リポリティカ(lipolytica)に脂肪酸または脂肪酸エステルが供給されると、Y.リポリティカ(lipolytica)は40%を超えるDCWで脂質を生成することができる。ヤロウィア(Yarrowia)属に供給される脂肪酸および/または脂肪酸エステルの大多数は、トリアシルグリセロールの形態で貯蔵される。
図1は、脂肪酸β酸化およびω酸化態様を含む、脂質代謝経路を示している。Y.リポリティカ(lipolytica)は、極めて弱いω酸化能力(図1において破線で表示されている)を有する。この低活性のために、酵母(野生型)に植物油、植物油由来脂肪酸または脂肪酸エステルが供給された場合には、検出可能なLCDAは生成されない。植物油、植物油由来脂肪酸または脂肪酸エステルをLCDAに転換させるためにY.リポリティカ(lipolytica)を工学的に操作するための戦略は、図2に例示されており、下記の:(1)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1(DGAT1)、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)およびリン脂質ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)をコードする遺伝子をノックアウトすることにより貯蔵脂質を減少させる工程;(2)ペルオキシソーム生物発生因子(PEX)をコードする遺伝子をノックアウトすることによってペルオキシソーム内のβ酸化を減少もしくは除外する工程;(3)シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP)およびシトクロムP450レダクターゼ(CPR)遺伝子を過剰発現させることによってω酸化を強化する工程が含まれる。
したがって、図1および2に示したように、細胞膜を越える細胞質内への脂肪酸輸送の速度および程度は、脂肪酸トランスポーターおよび長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼ活性によって、工学的Y.リポリティカ(lipolytica)細胞内でのLCDAの生成に影響を及ぼすと考えられる。実際に、下記に開示するように、長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼのアップレギュレーションは、工学的ヤロウィア(Yarrowia)属細胞内でのLCDAの生成を増加させることが見いだされた。
実施例1
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの推定長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼをコードする遺伝子
本実施例では、微生物中で長鎖脂肪酸アシル−CoA代謝産物を生成するためのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)内の長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼの候補配列の同定について記載する。
細胞内に輸送される脂肪酸は、エステル化によって活性化されなければならない。長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼ酵素は、脂肪酸を補酵素Aにコンジュゲートさせることによるこの活性化工程を触媒して、脂肪酸アシル−CoAを形成する。S.セレビジエ(cerevisiae)内には中鎖および長鎖脂肪酸に対する特異性を有するアシル−CoAシンテターゼをコードする4種の遺伝子(FAA−1、−2、−3、−4)が存在する。例えば、FAA1はC12〜C16の鎖長を備える脂肪酸を好むアシル−CoAシンテターゼScFaa1p(配列番号33)をコードし、およびFAA2はC9〜C13の鎖長を備える脂肪酸を好む酵素ScFaa2p(配列番号34)をコードする(J.Cell Biol.127:751−762;Biochim.Biophys.Acta 1486:18−27)。
Y.リポリティカ(lipolytica)内のFAAホモログを同定するために、Y.リポリティカ(lipolytica)ゲノムデータベース(www.genolevures.org/yali.html)内の予測オープンリーディングフレーム(ORF)配列によってコードされるアミノ酸配列をS.セレビジエ(cerevisiae)Faa1p(配列番号33)およびFaa2p(配列番号34)の予測アミノ酸配列に対して整列させた。これらのBLAST分析によって15個のY.リポリティカ(lipolytica)ORFが同定された(表2)。これらのORFによってコードされた15個のFaa1pおよびFaa2pホモログ中、12個はペルオキシソーム性(ペルオキシソーム局在化シグナルを含有する)であると予測されたが、3個は未知の細胞局在化情報を有していた。
別々に、S.セレビジエ(cerevisiae)Faa1p(配列番号33)およびFaa2p(配列番号34)アミノ酸配列をカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)のゲノム(www.candidagenome.org/cgi−bin/compute/blast_clade.pl#Select_Target_Organisms)によってコードされたアミノ酸配列に対して整列させた。全6個の候補ORFが同定された。これらのORF中3個は推定ペルオキシソーム局在化シグナルを含有するアミノ酸配列をコードしたので、したがってペルオキシソームタンパク質をコードすると予測された。表3は、これらの候補配列の各々を列挙している。
S.セレビジエ(cerevisiae)Faa1p(配列番号33)およびFaa2p(配列番号34)のアミノ酸配列、15種のY.リポリティカ(lipolytica)長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼ候補および6種のC.トロピカリス(tropicalis)長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼ候補をVECTOR NTIソフトウェアを使用して整列させた。このアラインメントから生じた系統樹は、図3に示した。ヤロウィア(Yarrowia)属候補YlAcoS−2P(配列番号37)、−3P(配列番号39)、−4P(配列番号40)、−5P(配列番号42)、−6P(配列番号44)、−7P(配列番号45)、−9P(配列番号47)、−10P(配列番号49)、−11P(配列番号50)および−12P(配列番号51)は、一緒にクラスター化して1つの群を形成した。これらの配列は全部がペルオキシソームタンパク質であると予測される。6種のカンジダ(Candida)長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼ候補およびヤロウィア(Yarrowia)属長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補YlFaa1(配列番号36)、YlAcoS−8(配列番号46)、−13P(配列番号52)、−14(配列番号53)、−15P(配列番号54)は2種のS.セレビジエ(cerevisiae)アシル−CoAシンテターゼと一緒にクラスター化した。ScFaa1(配列番号33)は、CA−1(配列番号57)およびYlFaa1(配列番号36、図3における「YA−1」)と密接に関連している。ScFaa2(配列番号34)およびCA−2〜−6は1つの群を形成し、YlAcoS−8(配列番号46、−13P(配列番号52)、−14(配列番号53)および−15P(配列番号54)は第3グループを形成した。
したがって、Y.リポリティカ(lipolytica)内の候補長鎖アシル−CoAシンテターゼの配列が同定された。
実施例2
工学的Y.リポリティカ(lipolytica)細胞内での候補長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼの発現パターン
本実施例では、培地への基質添加の条件下で誘導される配列を同定するためのqRT−PCRによる、実施例1において同定されたY.リポリティカ(lipolytica)長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補のスクリーニングについて説明する。その発現が脂肪酸含有基質によって誘導される任意の長鎖アシル−CoAシンテターゼの配列は、基質移入を促進するための候補酵素であろう。
LCDAを生成するY.リポリティカ(lipolytica)菌株であるD0145(下記の実施例13はこの菌株の構築について記載する)は、30℃、振とう速度250rpmで0.15の出発OD600を用いて、Y2P2D2増殖培地(20g/Lの酵母抽出物;20g/LのBACTO−PEPTONE;20g/Lのグルコース)を含む250mLのフラスコ内の50mL培養中で3回ずつ増殖させた。24時間後、RNA抽出およびLCDA定量それぞれのために0.5mLおよび1mLの「第0日」培養サンプルを収集した。残りの培養については、pHを8.0に調整するために1MのNaHCO3を加え、その後にパルミチン酸エチル基質を最終濃度が3%になるまで加えた。基質添加の24時間後、RNA抽出およびLCDA定量それぞれのために0.5mLおよび1mLの「第1日」培養サンプルを収集した。図4は、様々な時点での菌株D0145によるLCDAの生成を示している。培地へのパルミチン酸エチル添加前にLCDAの生成は見られなかったが、基質添加後にはそのような生成が生じ、これは定常速度で約第2日まで増加した(図4)。
RNAサンプルを調製するために、第0日および第1日の各培養からの0.5mLのアリコートを13,000×gでの1分間の遠心分離によって採取した。細胞ペレットを直ちに凍結し、−80℃で貯蔵した。全RNAは各細胞ペレットからTRIzol(商標)試薬(Life Technologies,Carlsbad,CA)を使用して調製した。細胞破砕は、MINI−BEADBEATER−8(BSP,Bartlesville,OK)を使用して実施した。各サンプルから抽出した全RNAを次にQiagen RNeasy(商標)キットを使用して精製した。任意の残留ゲノムDNAを除去するために、3μgの全RNAはRNaseフリーDNase(Qiagen,Hilden,Germany)を用いて処理した。DNaseは次に、1mMのEDTAを添加し、75℃で5分間加熱することによって不活性化した。1μgのDNase処理RNAは、次に高能力cDNA逆転写キット(Applied Biosystems,Foster City,CA)を製造業者の取扱説明書にしたがって使用して相補的(cDNA)に転換させた。cDNAは次に、定量的PCR(qPCR)分析のためにRNaseフリー水中に1:10で希釈した。
qPCRは、表4に列挙した標的遺伝子の発現を検出するために実施した。表4に列挙した全プライマーは、PRIMER EXPRESSのバージョン3.0.1のソフトウェア(Applied Biosystems)を利用して設計した。プライマーは、BLAST分析によってY.リポリティカ(lipolytica)Genolevuresデータベース(genolevures.org/yali.html)に対して特異性について評価し、ゲノムDNAを使用する定量について妥当性を確認した(データは示していない)。0.85〜1.15の間のPCR効率を備えるプライマーを定量のために妥当性を確認した。全qPCR反応は、ABI7900 SDS機器(Applied Biosystems;Foster City,CA)上での検出のためにSYBR(登録商標)Greenを使用して3回ずつ実施した。相対発現(RQ)は、Data Assistソフトウェアのバージョン3.01およびΔΔCt法(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用して計算した。18S rRNAをコードする遺伝子は、このソフトウェアによって最適内因性コントロール遺伝子であると同定されたので、データ正規化のために利用した。第1日の各遺伝子の相対発現は、次に、その発現を1.0に設定されたその第0日の発現と比較することによって計算した。
表5(下記)は、qRT−PCR分析の結果を示している。第0日(D0)および第1日(D1)サンプルそれぞれの発現測定値(SYBR)は、1.00に設定されたサンプル第0〜1日(「D0〜1」)に比例している。各データポイントは、3回の独立PCR反応によってランし、ヤロウィア(Yarrowia)属18S rRNA発現に正規化した。「SYBR SD」値は、PCR反応の各3例についての標準偏差である。YlAcoS−10P(配列番号49)、YlAcoS−6P(配列番号44)およびYlAcoS−3P(配列番号39)長鎖アシル−CoAシンテターゼをコードする転写産物は、第0日の発現に比較して第1日に相対発現における4倍を超える増加を示した(表5のグレーのセルを用いて示した。
表5に記載のデータに基づくと、YlAcoS−10P(配列番号49)、YlAcoS−6P(配列番号44)およびYlAcoS−3P(配列番号39)の推定長鎖アシル−CoAシンテターゼの発現は、長鎖脂肪酸含有基質を用いた処理後にはY.リポリティカ(lipolytica)内で誘導される。このためこれらの長鎖アシル−CoAシンテターゼは、長鎖脂肪酸含有基質の移入を促進するために有用な可能性がある。
実施例3
Y.リポリティカ(lipolytica)における発現のための推定長鎖アシル−CoAシンテターゼをコードするポリヌクレオチド配列のコドン最適化
長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補YlACoS−3P(配列番号39)、YlACoS−5P(配列番号42)、YlACoS−6P(配列番号44)、YlACoS−10P(配列番号49)およびYlFAA(配列番号36)をコードするDNAオープンリーディングフレームは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7125672号明細書に開示された方法にしたがってY.リポリティカ(lipolytica)における高度の発現のためにコドン最適化した。したがって、YlACoS−3P(配列番号39)、YlACoS−5P(配列番号42)、YlACoS−6P(配列番号44)、YlACoS−10P(配列番号49)およびYlFaa1(配列番号36)をそれぞれコードするポリヌクレオチド配列YlACoS−3P(配列番号38)、YlACoS−5P(配列番号41)、YlACoS−6P(配列番号43)、YlACoS−10P(配列番号48)およびYlFAA1(配列番号35)を調製した。コドン最適化DNA配列のそれぞれは、個別に合成し、pZP2−YlACoS−3P(配列番号63)、pZP2−YlACoS−5P(配列番号64)、pZP2−YlACoS−6P(配列番号65)、pZP2−YlACoS−10P(配列番号66)およびpZKL7A−FYlFAA(配列番号67)(それぞれ図5A〜E)を生成するためにGenScript(Piscataway,NJ)によって発現ベクター内にクローニングした。YlAcoS−5P(配列番号42)の短縮バージョン(アミノ酸6個のC末端切断)であるYlACoS−5PS3(配列番号56)の発現を可能にするまた別のベクターであるpZP2−YlACoS−5PS3(配列番号68、図5F)もまた調製した。
上記の構築物は、ヤロウィア(Yarrowia)属内で長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補を過剰発現させるために使用することができる。
実施例4
E.コリ(coli)内での長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補の発現
本実施例は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)内のT7誘導性プロモーター下でのアシル−CoAシンテターゼ候補YlACoS−3P(配列番号39)、YlACoS−5P(配列番号42)、YlACoS−6P(配列番号44)、YlACoS−10P(配列番号49)、YlACoS−5PS3(配列番号56、YlACoS−5Pのアミノ酸6個のC末端切断バージョン)およびYlFAA(配列番号36)を過剰発現させる工程を開示する。
最初に、YlACoS−3P(配列番号38)、YlACoS−5P(配列番号41)、YlACoS−6P(配列番号43)、YlACoS−10P(配列番号48)、YlACoS−5PS3(配列番号55)およびYlFAA(配列番号35)(それぞれヤロウィア(Yarrowia)属における発現のためにコドン最適化されている)のポリヌクレオチド配列は、それぞれ、pZP2−YlACoS−3P(配列番号63)、pZP2−YlACoS−5P(配列番号64)、pZP2−YlACoS−6P(配列番号65)、pZP2−YlACoS−10P(配列番号66)、pZP2−YlACoS−5PS3(配列番号68)およびpZKL7A−FYlFAA(配列番号67)(図5A〜F)からNcoI/NotI制限エンドヌクレアーゼ使用して切断し、NcoI/NotIエンドヌクレアーゼ部位で個別pET23dベクター(配列番号69)(Novagen,Madison,WI)内にライゲートした。制限分析を使用して、各ライゲーションを検証した(データは示していない)。
各推定長鎖アシル−CoAシンテターゼを過剰発現させるために、適切なpET23dをベースとするプラスミドを用いて形質転換させ、LBAMP培地(AMP:アンピシリン、最終濃度100μg/mL)中で増殖させたE.コリ(coli)BL(DE3)の8時間培養を500mLフラスコ内の100mLの同一培地中に1:50で希釈した。各培養は600nmでの光学密度が0.8〜0.9に達するまで37℃で振とうし、その後にフラスコを18℃のインキュベーター内に約20分間配置し、その後にイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)を最終濃度が100μMとなるまで添加した。各培養は、次に18℃でさらに10〜12時間振とうした。細胞(15mLの培養からの約100mgの湿塊)を遠心分離によって収集し、リン酸緩衝食塩液(PBS)(pH7.4)で1回洗浄し、次に400μLの溶解バッファー(25%のグリセロール、0.5mg/mLのリゾチームおよびプロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するPierce製のBUGBUSTER HT)中に再懸濁させ、20分間にわたり室温の振とうプラットフォーム上でインキュベートした。細胞断片は、4℃で30分間にわたり12,000×gでの遠心分離によって除去した。後に続く酵素アッセイを妨害する可能性がある上清から小分子を除去するために、上清を10KDa分子量カットオフ(MWCO)遠心分離装置内に配置し、4℃、12,000×gで30分間の遠心分離によって除去した。保持されたタンパク質溶液(約50〜100μL)を400μL(最終体積)のバッファー(0.1MのKPi、20%のグリセロール(pH7.5))中に再懸濁させ、再び4℃、12,000×gで30分間にわたり1回遠心分離した。濃縮タンパク質溶液を約200μLの最終体積の0.1MのKPi、20%のグリセロール(pH7.5)中に再懸濁させ、新規な遠心分離管に移し、いずれかの沈降タンパク質を除去するために最高速度で短時間遠心分離した。SDS−PAGE分析、タンパク質濃度の決定および酵素アッセイのために使用した浄化上清を−80℃で貯蔵した。図6AおよびBに示したように、全6種のアシル−CoAシンテターゼ候補は、YlACoS−3P(配列番号39)を除いてE.コリ(coli)内で上首尾で過剰発現させ、E.コリ(coli)細胞溶解物の可溶性分画で見いだされた。
実施例5
長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補の比活性の決定
本実施例では、長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補の比活性の分析について開示する。詳細には、可溶性E.コリ(coli)分画(実施例4で生成)中に存在するアシル−CoAシンテターゼ候補を基質としてパルミチン酸もしくはp−クマル酸のいずれかを使用して活性について試験した。
パルミチン酸基質上の各長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補の比活性は、下記のように決定した。推定アシル−CoAシンテターゼによる浄化上清(実施例4)中のアデノシン一リン酸(AMP)の形成は、下記のスキーム(1→4)に描出したように、ホスホエノールピルビン酸(PEP)、NADH、ミオキナーゼおよびピルビン酸キナーゼの存在下で、乳酸デヒドロゲナーゼによるNADHの酸化(340nmの吸光度によって監視)と結合した:
1.RCOOH(脂肪酸基質)+CoASH+ATP←→RCOSCoA+AMP+PPi(アシル−CoAシンテターゼが触媒した)。
2.AMP+ATP←→2ADP(ミオキナーゼが触媒した)。
3.2 ADP+2 PEP→2ATP+2ピルビン酸(ピルビン酸キナーゼが触媒した)。
4.2ピルビン酸+2NADH→2乳酸+2NAD+(乳酸デヒドロゲナーゼが触媒した)。
詳細には、各アッセイ(300μLの最終体積)は30℃で実施し、下記を含有していた:1mMのパルミチン酸(DMSO中で作成した10mMのストック液から希釈した)、4mMのATP、1.5mMのCoASH、1mMのPEP、5単位のピルビン酸キナーゼ、5単位の乳酸デヒドロゲナーゼ、100mMのTris−Cl中の6単位のミオキナーゼ、50mMのNaCl、10mMのMgCl2(pH7.2)。この反応プロセスは、候補長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼを含有する適切な量の細胞溶解物(実施例4)を添加することによって開始した。340nmでのNADHの(NAD+への)酸化は、Cary−100 UV−Vis分光光度計(Agilent)を使用して細胞抽出物の添加後5分間にわたり監視した。初期勾配は、パルミチン酸基質がDMSOと交換された酵素アッセイにおいて観察された背景活性を減じることによって計算した。
パルミチン酸基質に対して上記で測定した推定長鎖アシル−CoAシンテターゼの比活性は、下記の表6に要約した。比活性測定値はmU/mgで提供されるが、このとき1単位は、30℃およびpH7.2;NADHの吸光度係数=6,220M−1/cmで、1mMのパルミチン酸、4mMのATPおよび1.5mMのCoAの存在下で1分間当たり1.0μモルのパルミトイル−CoAを生成する酵素の量に対応する。コントロール細胞(空pET23dベクターを用いて形質転換された)から調製された上清ならびにYlACoS−3P(配列番号39)、YlACoS−5P(配列番号42)およびYlACoS−5PS3(配列番号56)を発現する細胞から調製された上清内では、背景レベルを超える活性は検出されなかった(表6では「n.d.」と記載した)。
アシル−CoAシンテターゼ候補YlACoS−3P(配列番号39)、YlACoS−5P(配列番号42)およびYlACoS−10P(配列番号49)に関連する配列はNCBI GENBANKデータベースにおいて推定4−クマル酸−CoAリガーゼであると注記されているが、他方YlFAA(配列番号36)はFaa1p(配列番号33)(明確に特徴付けられたS.セレビジエ(cerevisiae)由来のC12:0〜C16:0の脂肪酸への優先性を備える長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼ)との50%の同一性を示し、上述の酵素の比活性についても基質としてのp−クマル酸(pCA)を使用して試験した。pCA基質上の各長鎖アシル−CoAシンテターゼ候補の比活性は、下記のように決定した。各アッセイ(250μLの最終体積)は30℃で実施し、下記を含有していた:1mMのp−クマル酸(DMSO中で作成された10mMのストック液から希釈した)、4mMのATP、100mMのTris−Cl中の1.5mMのCoASH、50mMのNaCl、10mMのMgCl2(pH7.2)。この反応は、候補長鎖脂肪酸アシル−CoAシンテターゼを含有する適切な量の細胞溶解物(実施例4)を添加することによって開始させた。340nmでの吸光度の増加(p−クマロイル−CoAの形成に起因する)は、Cary−100 UV−Vis分光光度計(Agilent)を使用した細胞抽出物の添加後10分間にわたり監視した。初期勾配は、pCAがDMSOと交換された酵素アッセイにおいて観察された背景活性を減じることによって計算した。
pCA基質に対して上記で測定した推定長鎖アシル−CoAシンテターゼの比活性は、下記の表6に要約した。比活性測定値はmU/mgで提供されるが、このとき1単位は1mMのp−クマル酸、4mMのATPおよび1.5mMのCoAの存在下で30℃およびpH7.2;クマロイル−CoAの吸光度係数=21,000M−1/cmで1分間当たり1.0μモルのp−クマロイル−CoAを生成する酵素の量に対応する。コントロール細胞(空pET23dベクターを用いて形質転換された)から調製された上清およびYlACoS−3P(配列番号39)、YlACoS−5P(配列番号42)、YlACoS−5PS3(配列番号56)およびYlFAA(配列番号36)を発現する細胞から調製された上清内では、背景レベルを超える活性は検出されなかった(表6では「n.d.」と記載した)。
これらの結果は、YlACoS−6P(配列番号44)およびYlACoS−10P(配列番号49)が、基質として芳香族カルボン酸および長鎖脂肪酸の両方を受容できるという意見を支持している。これとは対照的に、YIFAA1(配列番号36)は、パルミチン酸にとって特異的であると思われる。YlACoS−3P(配列番号39)およびYlACoS−5P(配列番号42)は、どちらも既定の反応条件下では2種の基質に対する活性を示さなかった。
実施例6
植物油系基質からLCDAを生成するための新型Y.リポリティカ(lipolytica)親菌株の生成
本実施例は、多量のLCDAを生成できる菌株を生じさせる、追加の遺伝子組換えに適していたY.リポリティカ(lipolytica)菌株について開示する。
上述したように、Y.リポリティカ(lipolytica)は、植物油、植物油由来脂肪酸または脂肪酸エステルからLCDAを効率的に生成するための脂質貯蔵およびβ酸化を減少もしくは排除するために工学的に操作される必要がある可能性が高い。さらに、LCDAの生成のためには多様な遺伝的背景が有益である可能性も高い。表7に示したように、一連のY.リポリティカ(lipolytica)菌株は野生型菌株ATCC番号20362および90812から生成した。これらの菌株の一部は、脂質貯蔵能力を減少させ、β酸化機能を減少させた。図7Aは、相互に対してこれらの菌株の一部の系統を図で示している。
詳細には、菌株D0004は、菌株L183内のPEX3遺伝子(ペルオキシソーム生物発生因子3タンパク質[Pex3p]をコードする)をノックアウトすることによって生成した。D0003と指名された菌株L183は、相同組換えによってPEX3遺伝子をノックアウトするためにプラスミドpY157(配列番号70、米国特許出願公開第62/140,681号明細書における図4Aを参照されたい)のURA3含有AscI/SphI断片を用いて形質転換させた。菌株T1876と指名された形質転換体の1つは、リアルタイムPCRによってpex3−(すなわち、Δpex3)であると同定された。菌株T1876のPEX3ノックアウト部位は、配列番号71(野生型PEX3遺伝子座配列に代えて)(配列番号71の説明については表1を参照されたい)を含むと予測された。菌株T1876は、LoxP隣接URA3遺伝子(PEX3をノックアウトしたpY157の断片によって導入された)を切断するためにCreリコンビナーゼを発現させるためにプラスミドpY117(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0142082号明細書の表20に開示されている)を用いて形質転換させた。pY117形質転換体は、MM上では増殖できなかったがMMU上では増殖することができ、これはこの形質転換体にURA3遺伝子が欠如することを示していた;この形質転換体は菌株D0004(dgat1−、dgat2−、pex3−、ura3−)と指名された。菌株D0004のPEX3ノックアウト部位は、配列番号72(野生型PEX3遺伝子座配列に代えて)(配列番号72の説明については表1を参照されたい)を含むと予測された。
菌株D0015は、菌株D0004からPOX4遺伝子(ペルオキシソームアシル−CoAシンテターゼ−4[Pox4酵素、GenBankアクセッション番号CAG80078])を「ポップイン/ポップアウト」法によってノックアウトすることによって生成した(このタイプのノックアウト戦略に関するこれ以上の詳細については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0220645号明細書を参照されたい)。手短には、菌株D0004は、Xbal消化プラスミドpYRH146−Pox4KO(配列番号73、米国特許出願公開第62/140,681号明細書における図4Cを参照されたい)。計28種の形質転換体をMMプレート上で増殖させた。PCR分析は、その中で第一交雑(ポップイン)が天然POX4遺伝子の相同性3’−アーム配列と構築体pYRH146−Pox4KOとの間であった2つの形質転換体#7および#17を検出した。#7形質転換体を取り上げ、YPD液体培地中で増殖させ、YPD液体培地中で増殖させ、次にFOA600プレート上でプレーティングした(ura3−を生じさせるポップアウトイベントのために選択するため)。PCR分析は、FOA600プレート上で増殖させた菌株28個中13において第二交雑(各5’−アーム相同配列間)を検出した。これらの13個の菌株中1個は、POX4遺伝子のノックアウトを有すると決定されたD0015と指名された。D0015は、次の遺伝子型:dgat1−、dgat2−、pex3−、pox4−、ura3−を有している。POX4ノックアウト部位は、配列番号74(野生型POX4遺伝子座配列に代えて)(配列番号74の説明については表1を参照されたい)を含むと予測された。
菌株W101は、菌株ATCC番号90812をプラスミドpYRH72(配列番号75)のURA3含有EcoRI/ClaI断片で形質転換させることによって生成した。
二倍体菌株である1D2373は、W101をD0004へ交雑させることによって生成した。
菌株1D2373を胞子形成させると、その子孫の1つである菌株2373I−6は、リアルタイムPCRによって交配型B遺伝子型を備える半数体であると決定された。菌株2373I−6は、SC−leu培地上では増殖することができず、菌株1B2479Iと改名された。
二倍体菌株である2D2519は、1B2479IをD0004へ交雑させることによって生成した。
菌株2D2519を胞子形成させると、その子孫の1つである菌株2519I−1は、リアルタイムPCRによって交配型B遺伝子型を備える半数体であると決定された。菌株2519I−1は、SC−leu培地上では増殖することができず、菌株2B2583Iであると改名された。
二倍体菌株である3D2653は、2B2583IをD0004へ交雑させることによって生成した。
菌株3D2653を胞子形成させると、その子孫の1つである菌株2653I−19は、リアルタイムPCRによってdgat2−、MATBの遺伝子型を備える半数体であると決定された。菌株2653I−19は、SC−leu培地上では増殖することができず、菌株3B2702Iであると改名された。
菌株D0015は、二倍体菌株である4D2738を生成するために菌株3B2702Iへ交雑させた。
菌株4D2738を胞子形成させると、その子孫の1つである菌株2738Y−14は、リアルタイムPCRによってdgat1−、dgat2−、pox4−、pex3−およびMATAの遺伝子型を備える半数体であると決定された。菌株2738Y−14は、MM培地上では増殖することができず、D0017であると指名された。
菌株4D2738を胞子形成させると、その子孫の1つである菌株2738Y−45は、リアルタイムPCRによってdgat1−、dgat2−、pox4−およびpex3−の遺伝子型を備える半数体であると決定された。菌株2738Y−45は、SC−uraもしくはSC−leuプレート上では増殖することができなかった。このため、菌株2738Y−45は、MATA、dgat1−、dgat2−、pex3−、pox4−、ura3−およびleu2−の遺伝子型を有する。
菌株77T5−5は、一段階アプローチによって2738Y−45からPOX3遺伝子を欠失させることによって生成した。菌株2738Y−45は、プラスミドp12_3−B−Pex3del1(図8A、配列番号76)のAscI/SphI断片を用いて形質転換させた。形質転換体の1つは、リアルタイムPCRによってpox3−であると同定された。この形質転換体は、77T5−5(MATA、dgat1−、dgat2−、leu2−、pex3−、pox3−、pox4−、Ura3+)であると指名された。
菌株D0031は、一段階アプローチによって77T5−5からPOX2遺伝子を最初に欠失させることによって生成した。菌株77T5−5は、プラスミドp70 Pox2::Leu2(図8B、配列番号77)のAscI/SphI断片を用いて形質転換させた。形質転換体118T1−14の1つは、リアルタイムPCRによってpox2−であると同定された。菌株118T1−14(MATA、dgat1−、dgat2−、Leu2+、pex3−、pox2−、pox3−、pox4−、Ura3+)は順に、プラスミドpY117(LoxP隣接URA3遺伝子(前の段階でp12_3−B−Pex3del1によって導入された)を切断するためにCreリコンビナーゼを発現させるために(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0142082号明細書の表20に開示されている)を用いて形質転換された。形質転換体の1つである118T1−14−7−1Uは、MM上では増殖できなかったがMMU上では増殖することができ、これはこの形質転換体にURA3遺伝子が欠如することを示していた;この形質転換体は菌株D0031(MATA、dgat1−、dgat2−、Leu2+、pex3−、pox2−、pox3−、pox4−、ura3−)と指名された。
したがって、一部の欠如する機能的PEX3(pex3−)、POX2(pox2−)、POX3(pox3−)およびPOX4(pox4−)遺伝子を含む所定のY.リポリティカ(lipolytica)菌株が生成された。これらの菌株は、有意な量のLCDAを生成できた菌株を生じさせる、追加の遺伝子組換えに適していた(下記の実施例)。
実施例7
CYPおよびCPR酵素を過剰発現させることによるLCDAの生成のためのY.リポリティカ(lipolytica)菌株D1017の生成
本実施例は、菌株D0031におけるC.トロピカリス(tropicalis)CYPおよびCPR酵素をコードするコドン最適化配列を発現させることによるヤロウィア(Yarrowia)属菌株D1017の構築について開示する。菌株D1017は、菌株D3928を発生させるために使用した中間菌株であった(図7B)。
構築体pZKLY−FCtR17U(図9A、配列番号82)は、C.トロピカリス(tropicalis)由来のコドン最適化CYP52A17(CtCYPA17、GenBankアクセッション番号AAO73958、配列番号84をコードする配列番号83)およびCPR(CtCPR、GenBankアクセッション番号P37201、配列番号86をコードする配列番号85)コーディング配列のそれぞれ1コピーを含有する。各コーディング配列は、異種プロモーターおよび3’−ターミネーター配列の制御下にあった。NcoIおよびNotIエンドヌクレアーゼ部位は、それぞれCtCYPA17もしくはCtCPRをコードするコドン最適化配列の翻訳開始コドン(ATG)の周囲および停止コドンの後に加えられた。pZKLY−FCtR17Uプラスミド(配列番号82)の構成成分については、表8で詳細に記載する。
プラスミドpZKLY−FCtR17U(配列番号82)はAscI/SphIを用いて消化し、次に一般的方法にしたがって菌株D0031を形質転換させるために使用した。形質転換細胞はMMプレート上でプレーティングし、30℃で2日間にわたり維持した。各形質転換由来の個別コロニーをMMプレート上に再画線し、次に30℃で液体MM中に接種し、250mLで1日間振とうした。一晩培養した細胞を使用して250mLのフラスコ内で25mLのYPD4−B液体培地に接種し、30℃、180rpmで振とうした。40時間後、培養は2.0mLの1MのNaHCO3を添加してpH8.0に調整し、その後にパルミチン酸エチル(W245100、Sigma−Aldrich)を最終濃度が8mg/mLとなるまで培養培地に直接的に添加した。培養を次にさらに4日間にわたり、180rpm、30℃で振とうし、その後に各フラスコ培養からの全ブロスサンプルを一般的方法にしたがってLCDA分析にかけた。
GC分析は、親菌株D0031においてヘキサデカン二酸(C16:0のLCDA)が検出されないことを示した。しかし、親菌株D0031の大多数の形質転換体は、8g/Lを超えるC16:0のLCDAを生成した。形質転換体#6、#8、#10および#11は、それぞれ9.5、9.5、12.1および9.1g/LのC16:0のLCDAを生成した。これらの4種の菌株は、それぞれD1015、D1016、D1017およびD1018と指名された。
その後に、菌株1015、D1016およびD1017のフラスコ分析を実施した。詳細には、D1015、D1016およびD1017菌株は、最終濃度が16mg/mLとなるまで添加したパルミチン酸エチルとともに、それぞれ250mLのバッフル付きフラスコ内の50mLの培養中に配置した。培養は、4日間にわたり180rpm、30℃で振とうした。菌株D1015、D1016およびD1017は、それぞれ約7.4、7.6および9.3g/LでC16:0のLCDAを生成した。
菌株D1017はさらに、微量発酵分析によっても分析した。コントロール菌株(D0285、データは示していない)は6.4g/LでC16:0のLCDAを生成したが、菌株D1017は約7.4g/LでC16:0のLCDAを生成した。
菌株D1017およびその子孫を産生するためにD0031を形質転換させるために使用したpZKLY−FCtR17U(配列番号82)DNAは、リパーゼY遺伝子座(GenBankアクセッション番号AJ549519)を強力にノックアウトできたと認められる。しかし、これらの菌株中ではそのようなノックアウトは確認されなかった。野生型Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC番号#20362と比較してD1017およびその子孫の遺伝子型は、dgat1−、dgat2−、Leu2+、pex3−、pox2−、pox3−、pox4−、Ura3+、不明1−、FBA::CtCPRs::Lip1、FBAINm1::CtCYPA17s::Pex20であった。
したがって、ヤロウィア(Yarrowia)属菌株D1017が生成され、これはフラスコアッセイにおいて長鎖脂肪酸含有基質が供給されると5g/Lを超えるLCDA生成物を生成することができた。
実施例8
脂肪族アルコールオキシダーゼおよび脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼを過剰発現させることによるLCDAの生成のためのY.リポリティカ(lipolytica)菌株D1308の生成
本実施例は、カンジダ・クロアカエ(Candida cloacae)脂肪族アルコールオキシダーゼ(FAO)およびC.トロピカリス(tropicalis)脂肪族アルデヒドデヒドロゲナーゼ(FALDH)酵素をコードするコドン最適化配列を発現させることによるヤロウィア(Yarrowia)属菌株D1308の構築を開示する。菌株D1308は、菌株D3928を発生させるために使用された中間菌株であった(図7B)。
最初に、菌株D1017Uは、菌株D1017から発生した。プラスミドpY117は、菌株D1017内のLoxP隣接URA3遺伝子を切断するためのCreリコンビナーゼの一時的発現のために使用した。pY117形質転換体は、MM上では増殖できなかったがMMU上では増殖することができ、これはこの形質転換体にURA3遺伝子が欠如することを示していた;この形質転換体は菌株D1017Uと指名された。
次に、D1017Uは、線状化プラスミド構築体pZKADnーC2F1U(図9B、配列番号87)を用いて形質転換された。この断片は、1つはFAO酵素(CcFAO1、GenBankアクセッション番号CAB75351、配列番号89をコードする配列番号88)をコードするコドン最適化配列を過剰発現させるため、およびもう1つはFALDH酵素(CtFALDH2、GenBankアクセッション番号XP_002550712、配列番号91をコードする配列番号90)をコードするコドン最適化配列を過剰発現させるための2つの発現カセットを含有していた。pZKADn−C2F1Uプラスミド(配列番号87)の構成成分については、表9で詳細に記載する。
プラスミドpZKADn−C2F1U(配列番号87)はAscIを用いて消化し、次に一般的方法にしたがって菌株D1017Uを形質転換させるために使用した。形質転換体細胞はMMプレート上でプレーティングし、30℃で2日間にわたり維持した。各形質転換由来の個別コロニーをMMプレート上に再画線し、次に24ウエルブロック内のYPD2−B液体培地中に接種し、これを次に30℃、375rpmで20時間にわたり振とうした。培養は0.12mLの1MのNaHCO3を添加してpH8.0に調整し、その後にパルミチン酸エチルを最終濃度が23mg/mLとなるまで培養培地に直接的に添加した。培養を次にさらに4日間にわたり、375rpm、30℃で振とうし、その後に各フラスコ培養からの全ブロスサンプルを一般的方法にしたがってLCDA分析にかけた。
GC分析は、菌株D1017Uの3つの形質転換体が10g/Lを超えるC16:0のLCDAを生成することを証明した。詳細には、形質転換体#2、#5および#10は、それぞれ10.2、14.5および10.8g/LのC16:0のLCDAを生成した。これら3種の菌株は、それぞれD1307、D1308およびD1309と指名された。
菌株D1307およびD1308はさらに、微量発酵分析によっても分析した。コントロール菌株(D0285、データは示していない)は約6.0g/LでC16:0のLCDAを生成したが、菌株D1307およびD1308はそれぞれ約9.7および10.8g/LでC16:0のLCDAを生成した。
菌株D1308は、さらに2L発酵実験を使用して試験した。表10および図10に示したように、菌株D1308は、162時間の発酵後に、総量が約50.9g/LのLCDAを生成し、それらのうち約42.6g/LはC16:0のLCDAであった。
菌株D1308およびその子孫を産生するためにD1017Uを形質転換させるために使用したpZKADn−C2F1U(配列番号87)DNAは、アルコールデヒドロゲナーゼ3遺伝子座(GenBankアクセッション番号AF175273)を強力にノックアウトできたと認められる。しかし、これらの菌株中ではそのようなノックアウトは確認されなかった。野生型Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC番号#20362と比較したD1308およびその子孫の遺伝子型は、dgat1−、dgat2−、Leu2+、pex3−、pox2−、pox3−、pox4−、Ura3+、不明1−、不明2−、FBA::CtCPRs::Lip1、FBAINm1::CtCYPA17s::Pex20、DG2Pro−715::CtALDH2s::Lip1、FBA1L::CcFAO1s::Acoであった。
したがって、ヤロウィア(Yarrowia)属菌株D1308が生成され、長鎖脂肪酸含有基質が供給されると、50g/Lを超えるLCDA生成物を生成できた。
実施例9
70g/Lを超えるLCDA生成のためのY.リポリティカ(lipolytica)菌株D2300の生成
本実施例は、菌株D1308におけるV.サティバ(sativa)CYPおよびCPR酵素をコードするコドン最適化配列を発現させることによるヤロウィア(Yarrowia)属菌株D2300の構築について開示する。菌株D2300は、菌株D3928を発生させるために使用した中間菌株であった(図7B)。
最初に、菌株D1308Uは、菌株D1308から発生した。プラスミドpY117は、菌株D1308内のLoxP隣接URA3遺伝子を切断するためのCreリコンビナーゼの一時的発現のために使用した。pY117形質転換体は、MM上では増殖できなかったがMMU上では増殖することができ、これはこの形質転換体にURA3遺伝子が欠如することを示していた;この形質転換体は菌株D1308Uと指名された。
次に、菌株D1308Uは、線状化プラスミド構築体pYRH213(図11A、配列番号92)由来のDNA断片を用いて形質転換された。この断片は、1つはCYP酵素(VsCYP94A1s、GenBankアクセッション番号AAD10204、配列番号94をコードする配列番号93)をコードするコドン最適化配列を過剰発現させるため、およびもう1つはCPR酵素(VsCPRs、GenBankアクセッション番号Z26252、配列番号96をコードする配列番号95)をコードするコドン最適化配列を過剰発現させるための2つの発現カセットを含有していた。各コーディング配列は、異種プロモーターおよび3’−ターミネーター配列の制御下にあった。NcoIおよびNotIエンドヌクレアーゼ部位は、それぞれVsCYPもしくはVsCPRをコードするコドン最適化配列の翻訳開始コドン(ATG)の周囲および停止コドンの後に加えられた。pYRH213プラスミド(配列番号92)の構成成分については、表11で詳細に記載する。
プラスミドpYRH213(配列番号92)はAscI/SphIを用いて消化し、次に一般的方法にしたがって菌株D1308Uを形質転換させるために使用した。形質転換細胞はMMプレート上でプレーティングし、30℃で2日間にわたり維持した。各形質転換からの個別コロニーをMMプレート上に再画線した。2種の菌株は、フラスコアッセイを使用してLCDAの生成について直接的に分析した。詳細には、個別コロニーをMMプレート上に再画線し、次に24ウエルブロック内のYPD2−B液体培地中に接種し、これを次に30℃、375rpmで20時間にわたり振とうした。培養は0.12mLの1MのNaHCO3を添加してpH8.0に調整し、その後にパルミチン酸エチルを最終濃度が23mg/mLとなるまで培養培地に直接的に添加した。培養を次にさらに4日間にわたり、375rpm、30℃で振とうし、その後に各フラスコ培養からの全ブロスサンプルを一般的方法にしたがってLCDA分析にかけた。
GC分析は、菌株D1308Uの2つの形質転換体が8.2および12.6g/LのC16:0のLCDAを生成することを証明した。12.6g/LのC16:0のLCDAを生成した菌株は、菌株D2300と指名された。
菌株D2300は、さらに2L発酵実験を使用して試験した。表12および図12に示したように、菌株D2300は、163時間の発酵後に、総量が約72.7g/LのLCDAを生成し、そのうち約64.6g/LはC16:0のLCDAであった。
菌株D2300およびその子孫を産生するためにD1308Uを形質転換させるために使用したpYRH213(配列番号92)DNAは、リパーゼY遺伝子座(GenBankアクセッション番号AJ549519)を強力にノックアウトできたと認められる。しかし、これらの菌株中ではそのようなノックアウトは確認されなかった。野生型Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC番号#20362と比較したD2300およびその子孫の遺伝子型は、dgat1−、dgat2−、Leu2+、pex3−、pox2−、pox3−、pox4−、Ura3+、不明1−、不明2−、不明3−、FBA::VsCPRs::Lip1、FBAINm1::CtCYPA17s::Pex20、CPR1::VsCYP94A1s::Pex20、DG2Pro−715::CtALDH2s::Lip1、FBA1L::CcFAO1s::Acoであった。
したがって、ヤロウィア(Yarrowia)属菌株D2300が生成され、長鎖脂肪酸含有基質が供給されると、70g/Lを超えるLCDA生成物を生成できた。
実施例10
LCDA生成のためのY.リポリティカ(lipolytica)菌株D2882の生成
本実施例は、菌株D2300における脂肪族アルコールオキシダーゼ(FAO)酵素をコードする3種のコドン最適化配列を発現させることによるヤロウィア(Yarrowia)属菌株D2882の構築について開示する。菌株D2300は、菌株D3928を発生させるために使用した中間菌株であった(図7B)。
最初に、pYR213(配列番号92)DNA(実施例9を参照されたい)を用いて形質転換されることによってUra3+であった菌株D2300は、ura3−にさせられた。詳細には、D2300は、無傷URA3配列にura3−突然変異配列を統合するためにプラスミドpZKUMを用いて形質転換させた。ura−Y.リポリティカ(lipolytica)細胞を得るためのプラスミドpZKUMの構築および使用は、記載されている(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0093543号明細書、その中の表15を参照されたい)。手短には、プラスミドpZKUMはSalI/PacIを用いて消化され、次に一般的方法にしたがって菌株D2300内に形質転換された。形質転換後、細胞はMM+5−FOAプレート上でプレーティングし、30℃で2〜3日間にわたり維持した。MM+5−FOAプレート上で増殖した計8個の形質転換体を取り上げ、MMプレートおよびMM+5−FOA上に個別に再画線した。これらの全8個の形質転換体は、ura−表現型を有していた(すなわち、細胞はMM+5−FOAプレート上で増殖できたが、MMプレート上では増殖できなかった)。形質転換体#1、#2および#3は、D2300U1、D2300U2およびD2300U3と指名され、これらはまとめてD2300Uであると指名された。
菌株D2882を生成するために、菌株D2300U1は、FAO酵素(CtFAO1、CcFAO1、CcFAO2)をコードするコドン最適化配列を過剰発現させるために3つの発現カセットを含有していた構築体pZSCPn−3FAOBU(図11B、配列番号98)由来のDNA断片を用いて形質転換された。詳細には、発現カセットは、下記の配列:(i)CtFAO1M(GenBankアクセッション番号AAS46878のCtFAO1の突然変異形である配列番号100をコードする配列番号99)(野生型CtFAO1と比較して、CtFAO1Mはチロシン残基の代わりにアミノ酸359位でヒスチジン残基を含む)、(ii)CcFAO1(配列番号102をコードする配列番号101)および(iii)CcFAO2(配列番号104をコードする配列番号103)を含んでいた。NcoIおよびNotI部位は、それぞれ上記のFAO酵素をコードするコドン最適化配列の翻訳開始コドン(ATG)の周囲および停止コドンの後に加えられた。pZSCPn−3FAOBUプラスミド(配列番号98)の構成成分については、表13で詳細に記載する。
プラスミドpZSCPn−3FAOBU(配列番号98)はAscI/SphIを用いて消化し、次に一般的方法にしたがって菌株D2300U1を形質転換させるために使用した。形質転換細胞はMMプレート上でプレーティングし、30℃で2日間にわたり維持した。各形質転換由来の個別コロニーをMMプレート上に再画線し、次に24ウエルブロック内のYPD2−B液体培地中に接種し、これを次に30℃、375rpmで20時間にわたり振とうした。培養は0.12mLの1MのNaHCO3を添加してpH8.0に調整し、その後にパルミチン酸エチルを最終濃度が23mg/mLとなるまで培養培地に直接的に添加した。培養を次にさらに4日間にわたり、375rpm、30℃で振とうし、その後に各フラスコ培養からの全ブロスサンプルを一般的方法にしたがってLCDA分析にかけた。
それぞれがpZSCPn−3FAOBU(配列番号98)を用いた菌株D2300U1の形質転換の結果として生じた24種の菌株を培養し、GCによって分析した。24個の形質転換体中5つは10.6g/L超でC16:0のLCDAを生成した。詳細には、形質転換体#11、#14、#18および#21は、それぞれ12.1、12.0、12.4および10.6g/LでC16:0のLCDAを生成した。これらの4種の菌株は、それぞれD2882、D2883、D2884およびD2885と指名された。
菌株D2882、D2883、D2884およびD2885はさらに、一般的方法にしたがってフラスコアッセイによってLCDAの生成について分析された。表14に示したように、菌株D2882、D2883、D2884およびD2885は、それぞれ約15.1、13.2、15.0および15.5g/LでC16:0のLCDAを生成した。
菌株D2882およびD2885はさらに、一般的方法にしたがって微量発酵分析によってLCDAの生成について分析された。表15に示したように、菌株D2882およびD2885は、それぞれ約23.4および21.0g/LでC16:0のLCDAを生成した。
菌株D2882およびその子孫を産生するためにD2300U1を形質転換させるために使用したpZSCPn−3FAOBU(配列番号98)DNAは、Y.リポリティカ(lipolytica)SCP2(ステロール担体タンパク質)遺伝子座(GenBankアクセッション番号AJ431362、YALI0E01298g)を強力にノックアウトできたと認められる。しかし、これらの菌株中ではそのようなノックアウトは確認されなかった。野生型Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC番号#20362に比較したD2882およびその子孫の遺伝子型は、dgat1−、dgat2−、Leu2+、pex3−、pox2−、pox3−、pox4−、Ura3+、不明1−、不明2−、不明3−、不明4−、FBA::CtCPRs::Lip1、FBA::VsCPRs::Lip1、FBAINm1::CtCYPA17s::Pex20、CPR1::VsCYP94A1s::Pex20、DG2Pro−715::CtALDH2s::Lip1、FBA1L::CcFAO1s::Aco;YAT::CtFAO1sM::Pex20、FBA::CcFAO1s::Lip1、ALK2LM−C::CcFAO2s::Aco3であった。
実施例11
長鎖アシル−CoAシンテターゼを過剰発現させることによるY.リポリティカ(lipolytica)菌株D3928の生成
本実施例では、長鎖アシル−CoAシンテターゼ(YLACoS−6P、配列番号44、実施例5を参照されたい)をコードするコドン最適化配列を発現させることによるヤロウィア(Yarrowia)属菌株D3982の構築について開示する。この菌株は、実施例12に示したように、100g/L超でLCDAを生成することができた。
菌株D3928は、下記のように菌株D2882(図7B)から生成された。
最初に、pZSCPn−3FAOBU(配列番号98)DNA(実施例10を参照されたい)を用いて形質転換されることによってUra3+であった菌株D2882は、ura3−にさせられた。詳細には、プラスミドD2882は、菌株D2882内のLoxP隣接URA3遺伝子を切断するためのCreリコンビナーゼの一時的発現のためにプラスミドpY117を用いて形質転換された。pY117形質転換体は、MM上では増殖できなかったがMMU上では増殖することができ、これはこの形質転換体にURA3遺伝子が欠如することを示していた;この形質転換体は菌株D2882Uと指名された。
菌株D3928を生成するために、菌株D2882Uは、YIACos−6P酵素(配列番号44)をコードするコドン最適化配列を過剰発現させるために1つの発現カセットを含有していた構築体pZP2−YIACoS−6P(図5C、配列番号65)由来のDNA断片を用いて形質転換された。詳細には、発現カセットは、配列番号44をコードする長鎖アシル−CoAシンテターゼ配列YLACoS−6P(配列番号43)を含んでいた。NcoIおよびNotI部位は、それぞれ上記のYLACoS−6P(配列番号44)をコードする合成配列の翻訳開始コドン(ATG)の周囲および停止コドンの後に加えられた。pZP2−YLACoS−6Pプラスミド(配列番号65)の構成成分については、表16で詳細に記載する。
プラスミドpZP2−YIACoS−6P(配列番号65)はAscI/SphIを用いて消化し、次に一般的方法にしたがって菌株D2882Uを形質転換させるために使用した。形質転換細胞はMMプレート上でプレーティングし、30℃で2日間にわたり維持した。各形質転換由来の個別コロニーをMMプレート上に再画線し、次に24ウエル内のYPD2−B液体培地中に接種し、これを次に30℃、375rpmで20時間にわたり振とうした。培養は0.12mLの1MのNaHCO3を添加してpH8.0に調整し、その後にパルミチン酸エチルを最終濃度が23mg/mLとなるまで培養培地に直接的に添加した。培養を次にさらに4日間にわたり、375rpm、30℃で振とうし、その後に各フラスコ培養からの全ブロスサンプルを一般的方法にしたがってLCDA分析にかけた。
それぞれがpZP2−YIACoS−6P(配列番号65)を用いた菌株D2882Uの形質転換の結果として生じた24種の菌株を培養し、GCによって分析した。24個の形質転換体中9個は14.5g/L超でC16:0のLCDAを生成した。詳細には、形質転換体#6、#7、#8、#9、#10、#11、#12、#13および#20は、それぞれ14.8、17.7、18.7、18.3、20.6、17.8、15.4、17.1および14.5g/L超でC16:0のLCDAを生成した。これらの形質転換体は、それぞれ菌株D3924、D3925、D3926、D3927、D3928、D3929、D3930、D3931およびD3932と指名された。
菌株D3928、D3931およびD3932はさらに、一般的方法にしたがって微量発酵分析によってLCDAの生成について分析された。表17に示したように、菌株D3928、D3931およびD3932は、それぞれ約23.0、21.2および22.7g/LでC16:0のLCDAを生成した。
菌株D3928およびその子孫を産生するためにD2882Uを形質転換させるために使用したpZP2−YIACoS−6P(配列番号65)は、Pox2遺伝子(GenBankアクセッション番号AJ001300)を強力にノックアウトできたと認められる。しかし、これらの菌株中ではそのようなノックアウトは確認されなかった。野生型Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC番号#20362に比較したD3928およびその子孫の遺伝子型は、dgat1−、dgat2−、Leu2+、pex3−、pox2−、pox3−、pox4−、Ura3+、不明1−、不明2−、不明3−、不明4−、不明5−、FBA::CtCPRs::Lip1、FBA::VsCPRs::Lip1、FBAINm1::CtCYPA17s::Pex20、CPR1::VsCYP94A1s::Pex20、DG2Pro−715::CtALDH2s::Lip1、FBA1L::CcFAO1s::Aco;YAT::CtFAO1sM::Pex20、FBA::CcFAO1s::Lip1、ALK2LM−C::CcFAO2s::Aco3、FBAINm::YlAcoS−6Ps::Pex20であった。
したがって、長鎖脂肪酸含有基質が供給された場合に有意な量のLCDA生成物を合成することができる長鎖アシル−CoAシンテターゼを過剰発現するヤロウィア(Yarrowia)属菌株が生成された。
実施例12
フェドバッチ式発酵条件下で長鎖アシル−CoAシンテターゼを過剰発現するヤロウィア(Yarrowia)属によるLCDAの生成
本実施例では、長鎖アシル−CoAシンテターゼを過剰発現するヤロウィア(Yarrowia)属がフェドバッチ式発酵で増殖させた場合に100g/L長のLCDA生成物を生成できることについて開示する。特別には、菌株D3928は、約143時間の発酵後に109g/LでC16:0のLCDAおよび119g/Lで全LCDASを生成することができた(表18、図13)。
種培養プロトコール:−80℃で貯蔵された工学的ヤロウィア(Yarrowia)属菌株D3928をYPDプレート上に画線し、30℃で約24時間インキュベートした。単一コロニーは、5mLの天然培地(6.7g/Lの酵母用ニトロゲンベース(アミノ酸不含)、5g/Lの酵母抽出物、20g/LのD−グルコース、6g/LのKH2PO4、3.3g/LのNa2HPO4・12H2O)を含有する14mLのFALCON試験管(Corning,NY)内に接種した。試験管培養は、約250〜300rpmで振とうしながら30℃で約24時間増殖させた。この培養の一部分(0.2〜5.0mL)は、50mLの天然培地(上記)を含有する250mLの振とうフラスコに移し、さらに30℃で追加して約20時間にわたりおよそ5.0〜10.0のOD600へインキュベ
ートした。この培養は、体積で約3%で5Lの発酵槽に接種するための種培養として使用した。
5Lの発酵プロトコール:上記で調製した振とうフラスコ種培養は、発酵を開始させる(t=0時間)ために5Lの発酵槽(Sartorius BBI,BioStat B plus)に移した。発酵培地は、50g/LのD−グルコース、6g/LのKH2PO4、3.3g/LのNa2HPO4・12H2O、8mL/Lの微量金属(100×)、40g/LのBacto(商標)酵母抽出物、20g/LのBacto(商標)ペプトン、20mMのMgSO4、6mg/LのチアミンHClおよび15g/Lの(NH4)2SO4を含有していた。微量金属(100×)は、10g/Lのクエン酸、1.5g/LのCaCl2・2H2O、10g/LのFeSO4・7H2O、0.39g/L 10g/LのZnSO4・7H2O、0.38g/LのCuSO4・5H2O、0.2g/LのCoCl2・6H2OおよびMnCl2・4H2Oから構成された。初期作業体積は、3.0Lであった。最初の26時間にわたり、溶存酸素レベル(pO2)は、撹拌速度を300〜1200rpmの間でカスケードすることによって約20%の空気飽和度で制御した。t=26時間になった後、撹拌速度を1200rpmで固定し、次にpO2は、純粋酸素供給だけを用いたカスケードによって60%の空気飽和度で制御した。700g/Lのグルコースおよび15〜25g/Lの尿素を含むグルコース供給原料を調製した;グルコース供給は、最初に装填したグルコースが消費された約18時間後に開始した。グルコース供給速度は20mL/時という高さで開始し、次に発酵終了時(約144時間後)には10mL/時に徐々に減少した。通気速度は1.5〜2.5L/分で制御し、温度は全ランを通して30℃で維持した。pH値は最初の26時間は6.0で制御し、その後にKOHを供給することによってランの残りにおいては7.5に上昇した。t=28時間から出発して、パルミチン酸エチルの残留濃度を1〜20g/Lの範囲内に制御するために発酵槽に供給した。発酵サンプル(各時点に約25mL)は、発酵培地中のOD600、残留グルコース、残留パルミチン酸エチルおよびLCDAを分析するために1日2回採取した。
5Lの発酵試験結果:143.4時間の発酵後、約119g/LのLCDAが生成された。LCDA生成物の大多数は、ヘキサデカン二酸(C16:0の二酸)(表18および図13)であった。
したがって、長鎖アシル−CoAシンテターゼを過剰発現する(Yarrowia)属は、長鎖脂肪酸含有基質が供給された場合に有意な量のLCDA生成物を合成することができる。
実施例13
LCDA生成のための陽性コントロールとしてのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)菌株D0145の生成
本実施例では、所定のビシア・サティバ(Vicia sativa)(オオカラスノエンドウ)CYPおよびCPR酵素をコードするコドン最適化配列を発現させることによる様々なヤロウィア(Yarrowia)属菌株の構築について開示する。菌株D0145を含むこれらの菌株の大多数は、LCDAを生成することができた。
構築体pZKLY−VsCPR&CYP(配列番号105)は、コドン最適化オオカラスノエンドウCYP(VsCYP94A1、V.サティバ(sativa)、GenBankアクセッション番号AAD10204、配列番号94をコードする配列番号93に由来する)およびCPR(VsCPR、V.サティバ(sativa)、GenBankアクセッション番号Z26252、配列番号96をコードする配列番号95)コーディング配列それぞれの1コピーを統合するために生成された。各コーディング配列は、異種プロモーターおよび3’−ターミネーター配列の制御下にあった。NcoIおよびNotIエンドヌクレアーゼ部位は、それぞれVsCYPもしくはVsCPRをコードするコドン最適化配列の翻訳開始コドン(ATG)の周囲および停止コドンの後に加えられた。pZKLY−VsCPR&CYP(配列番号105)プラスミドの構成成分については、表19で詳細に記載する。
プラスミドpZKLY−VsCPR&CYP(配列番号105)はAscI/SphIを用いて消化し、次に一般的方法にしたがって菌株D0004(dgat1−、dgat2−、pex3−、ura3−)(表7を参照されたい)を形質転換させるために使用した。形質転換細胞はMMプレート上でプレーティングし、30℃で2日間にわたり維持した。各形質転換由来の個別コロニーをMMプレート上に再画線し、次に30℃で液体MM中に接種し、250mLで1日間振とうした。一晩培養した細胞を使用して250mLのバッフル付きフラスコ内で50mLのYPD2−B液体培地に接種し、これを次に30℃、250rpmで振とうした。24時間後、培養は2.0mLの1MのNaHCO3を添加してpH8.0に調整し、その後にパルミチン酸エチルを最終濃度が16mg/mLとなるまで培養培地に直接的に添加した。培養を次にさらに4日間にわたり、250rpm、30℃で振とうし、その後に各フラスコ培養からの全ブロスサンプルを一般的方法にしたがってLCDA分析にかけた。
それぞれがpZKLY−VsCPR&CYP(配列番号105)を用いた親菌株D0004の形質転換の結果として生じた48種の菌株を培養し、GCによって分析した。48種の菌株中のほぼ全部が3g/L超でC16:0のLCDAを生成した。例えば、形質転換体#12、#15、#20、#23、#28、#29、#31、#37、#39、#44および#48は、それぞれ5.0、5.1、5.1、5.0、5.2、4.9、5.5、4.8、5.5、5.0および4.8g/LでC16:0のLCDAを生成した。これらの11個の形質転換体は、それぞれD0138、D0139、D0140、D0141、D0142、D0143、D0144、D0145、D0146、D0147およびD
0148と指名された。
菌株D0145およびその子孫を産生するためにD0004を形質転換させるために使用したpZKLY−VsCPR&CYP(配列番号105)は、リパーゼY遺伝子座(GenBankアクセッション番号AJ549519)を強力にノックアウトできたと認められる。しかし、これらの菌株中ではそのようなノックアウトは確認されなかった。野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号#20362に比した菌株D0145およびその子孫の遺伝子型は、Ura3+、dgat1−、dgat2−、pex3−、不明1−、FBA::VsCPRs::Lip1、FBAINm::VsCYP94A1s::Pex16であった。
したがって、アップレギュレートされたヒドロキシラーゼ複合発現およびダウンレギュレートされたPEX3発現を備える酵母(例えば、ヤロウィア(Yarrowia)属)は、脂肪酸含有基質からLCDAを生成することができる。
実施例14
pex3−ヤロウィア(Yarrowia)属はLCDAを生成できる
本実施例は、C.トロピカリス(tropicalis)CYPおよびCPR酵素をコードするコドン最適化配列を発現させることによるヤロウィア(Yarrowia)属菌株D0101の構築について開示する。さらに、本実施例では、pex3−菌株はLCDAを生成できるが、他方PEX3+菌株(例えば、PEX遺伝子破壊を有していない、またはpex10−もしくはpex16−である菌株)はこの活性を有していないことを開示する。
構築体pZP2N−FCtA1Rは、C.トロピカリス(tropicalis)由来のコドン最適化CYP(CtALK1、GenBankアクセッション番号P10615)およびCPR(CtCPR、GenBankアクセッション番号P37201)コーディング配列それぞれの1コピーを統合するために生成した。各コーディング配列は、異種プロモーターおよび3’−ターミネーター配列の制御下にあった。NcoIおよびNotIエンドヌクレアーゼ部位は、それぞれCtALK1もしくはCtCPRをコードするコドン最適化配列の翻訳開始コドン(ATG)の周囲および停止コドンの後に加えられた。pZP2N−FCtA1Rプラスミドの構成成分については、表12で詳細に記載する。
プラスミドpZP2N−FCtA1RはAscI/SphIを用いて消化し、次に一般的方法にしたがって菌株Y2224、D0003、D0004およびD0009を形質転換させるために使用した。形質転換細胞はMMプレート上でプレーティングし、30℃で2日間にわたり維持した。各形質転換由来の個別コロニーをMMプレート上に再画線し、次に30℃で液体MM中に接種し、250rpmで1日間振とうした。一晩培養した細胞を使用して250mLのフラスコ内で25mLのYPD4−B液体培地に接種し、30℃、180rpmで振とうした。40時間後、培養は2.0mLの1MのNaHCO3を添加してpH8.0に調整し、その後にパルミチン酸エチル(W245100、Sigma−Aldrich)を最終濃度が8mg/mLとなるまで培養培地に直接的に添加した。培養を次にさらに4日間にわたり、180rpm、30℃で振とうし、その後に各フラスコ培養からの全ブロスサンプルを一般的方法にしたがってLCDA分析にかけた。
各親菌株(Y2224、D0003、D0004、D0009)のpZP2N−FCtA1Rを用いた形質転換の結果として生じた菌株はGCによって分析した。親菌株Y2224、D0003もしくはD0009の形質転換体ではヘキサデカン二酸(C16:0のLCDA)は検出されなかった。しかし、親菌株D0004の形質転換体は、1g/Lを超えるC16:0のLCDAを生成した。12.4g/LのC16:0のLCDAを生成した1種のD0004形質転換体は、菌株D0101と指名された。
菌株D0101のその後のフラスコ分析を実施した。詳細には、D0101は、最終濃度が16mg/mLとなるまで添加したパルミチン酸エチルとともに、250mLのバッフル付きフラスコ内の25mLの培養中に配置した。培養は、4日間にわたり180rpm、30℃で振とうした。この培養は、約5g/LでC16:0のLCDAを生成した。
菌株D0101を産生するためにD0004を形質転換させるために使用したpZP2N−FCtA1R DNAは、Pox2遺伝子(GenBankアクセッション番号AJ001300)を強力にノックアウトできたと認められる。しかし、D0101中のそのようなノックアウトは確認されなかった。野生型Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC番号#20362と比較した菌株D0101の遺伝子型は、Ura3+、dgat1−、dgat2−、pex3−、不明1−、FBA1::CtALK1s::Pex20、FBAINm::CtCPRs::Pex16であった。
親菌株D0004(dgat1−、dgat2−、pex3−、ura3−)の形質転換体(例えば、菌株D0101)はLCDAを生成したが、他方親菌株D0009(dgat1−、dgat2−、pex10−、ura3−)の形質転換体はこの能力を有していなかった。両方のタイプの形質転換体は、(i)ダウンレギュレートされたPEX遺伝子(損傷したペルオキシソーム機能および遮断されたβ酸化を生じさせる)および(ii)他の点では同一の遺伝子型(減少した油貯蔵をもたらすダウンレギュレートされたDGAT遺伝子)を有していたが、ダウンレギュレートされたPEX3を有する酵母だけがLCDAを生成することができた。pex10−菌株に類似して、pex16−菌株にもLCDAを生成する能力が欠如していた(データは示していない)。そこで、ペルオキシソーム機能およびβ酸化が遮断される方法は、脂肪酸含有基質からのLCDAの生成に有意な影響を及ぼす。
したがって、ダウンレギュレートされたPEX3発現を有する酵母(例えば、ヤロウィア(Yarrowia)属)は、脂肪酸含有基質からLCDAを生成することができる。