JP2014505472A - 油性酵母中のyap1転写因子活性を増大させることにより増加した含油率 - Google Patents

油性酵母中のyap1転写因子活性を増大させることにより増加した含油率 Download PDF

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Abstract

増大されたYap1転写因子活性を含む、増加した含油率を有するトランスジェニック油性酵母であって、増加した含油率が、非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較したものである、トランスジェニック油性酵母が本明細書に記載される。増大されたYap1転写因子活性は、前記転写因子と、前記転写因子を活性化することができるタンパク質との相互作用を増大することにより、又は両者の組合せにより、Yap1転写因子を過剰発現することによって起こる。これらの酵母株を用いる方法も記載される。

Description

本発明は、2010年12月30日に出願された米国仮特許出願第61/428,655号明細書の利益を主張する。上記の文献は、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
本発明は、生物工学の分野に関するものである。より具体的には、本発明は、増大したYap1転写因子活性を含む油性酵母株であって、その結果、増加した含油率をもたらす油性酵母株に関する。
活性酸素種[「ROS」]は、酸素を含む化学的に反応性の分子であり、不対原子価殻電子を含む。ROS、例えば、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオン、及び過酸化水素[「H」]は、例えば、呼吸の際に、水への酸素の不完全な還元により、細胞内で好気的代謝の副産物として頻繁に生成されている。ROSはまた、放射線、光、金属、及び酸化還元活性剤への暴露によって脂肪酸のβ酸化中にも生成される。ROSは、細胞の酸化還元状態を撹乱し、細胞の成分(脂質、タンパク質、及びDNAなど)に有毒なダメージを引き起こしうることから、細胞は、ROSのレベルを感知し、酸化ストレスの作用から細胞を保護し、細胞の健全性が維持されるように、シグナルを伝達する様々な手段を備えていなければならない。
典型的には、ROSのレベルは、グルタチオン還元−酸化(レドックス)サイクル及びチオレドキシン系の使用によって制御され、これにより、NADPHから電子が受け取られて、Hを水に還元するのに使用される。より具体的には、電子は、NADPHからチオレドキシンレダクターゼを経てチオレドキシン、次いでペルオキシレドキシン、そしてHに移されて、水が得られる。この経路における複数の遺伝子の調節は複雑である。酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるHに対する適応応答は、少なくとも167のタンパク質の発現の変化を伴うことがわかっている(Godon,C.et al.,J.Biol.Chem.,273:22480−22489(1998))。
酵母S.セレビシエ(S.cerevisiae)においてHのレベルを感知する手段の1つは、酸化ストレス応答のマスター転写因子、すなわち転写因子タンパク質Yap1に基づくシグナル伝達経路に依存する。Hストレスに応答して、少なくとも1つの分子内ジスルフィド結合の形成、Tsa1及びGpx3のようなペルオキシレドキシンにより触媒され、かつYbp1のような他のタンパク質によって促進される反応に基づき、Yap1の多段階配座変化が起こる。この活性酸化形態では、Yap1は、少なくとも32の異なるタンパク質(細胞の抗酸化防御及びグルタチオン/NADPH再生に関与するものを含む)の大きなレギュロンの発現を制御する(Lee,J.et al.,J.Biol.Chem.,274:16040−16046(1999))。Yap1制御のチオレドキシンを用いた酵素還元によって、Yap1の不活性化が起こり、このようにして自動調節の作用機序がもたらされる。機能性Yap1タンパク質が欠如したS.セレビシエ(S.cerevisiae)の変異株は、Hによる消滅に対し過敏性である。
二重結合を多く持つ脂肪酸ほど、脂質過酸化を被りやすいことがわかっている。従って、多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]は、複数の二重結合を含み、それらの間に、特に反応性の水素を有するメチレン−CH−基が存在するため、ROSによる酸化的分解をより受けやすい。Avery,A.M.及びS.V.Avery(J.Biol.Chem.,276:33730−33735(2001))は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)のgpx1Δ/gpx2Δ/gpx3Δ変異体が、PUFAαリノレン酸を添加した培地[「ALA」;18:3](ALAは、全膜脂肪酸の60%までを含むことができる)中で増殖するのに欠陥があることを報告しており;gpx1Δ、gpx2Δ及びgpx3Δ変異体はまた、膜脂質への外因性18:3のゆっくりとした組込み速度のために作用は遅れたものの、18:3に対する毒性も示した。
ROSは、好気的代謝を実施する細胞中に頻繁に生成されており、しかも、ROSは、細胞障害及び細胞死を招く可能性があることから、当業者は、組換えにより作製された生物のROSからの防御能力を増強する方法を理解している。これは、特に、微生物油を産生する生物に該当することである。というのは、特定の菌株において、これらの油を産生中にROSが生成されると、収量の低下及び/又は微生物油生産の効率の低下を招きうるからである。
増大されたYap1転写因子活性を有すると同時に、PUFAを生成するように油性酵母を作製することにより、脂質含有率[「TFA%DCW」]及び平均PUFA力価[「PUFA%DCW」]の両方の増加が達成されることがわかっている。
本発明は、非トランスジェニック油性酵母細胞の含油率と比較して増加した含油率を有するトランスジェニック油性酵母を提供する。
一実施形態において、本発明は、増大されたYap1転写因子活性を含む、増加した含油率を有するトランスジェニック油性酵母に関し、ここで、増加した含油率は、非トランスジェニック油性酵母細胞の含油率と比較したものである。
第2の実施形態では、増大されたYap1転写因子活性は、Yap1転写因子を過剰発現すること、前記転写因子と前記転写因子を活性化することができるタンパク質との相互作用を増大すること、又は両者の組合せによって起こる。
第3の実施形態では、転写因子を活性化することができるタンパク質は、Gpx3、Ybp1及びTsa1からなる群から選択される。
第4の実施形態では、Yap1転写因子は、転写因子活性を有し、かつ以下:(a)bZIPロイシンジッパーモチーフ;(b)少なくとも6つのアミノ酸で隔てられた少なくとも2つのシステイン残基の配列を含むN末端Cysリッチドメイン;及び(c)少なくとも8つのアミノ酸で隔てられた少なくとも2つのシステイン残基の配列を含むC末端Cysリッチドメイン、
を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
第5の実施形態では、Gpx3タンパク質は、以下を含む:(a)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このポリペプチドは、配列番号26[ScGpx3]又は配列番号28[YlGpx3]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTPアラインメント方法に基づき、少なくとも70%アミノ酸同一性を有する);(b)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このヌクレオチド配列は、配列番号25[ScGpx3]又は配列番号27[YlGpx3]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTNアラインメント方法に基づき、少なくとも70%配列同一性を有する);及び(c)(a)又は(b)のヌクレオチド配列の相補体(この相補体と上記ヌクレオチド配列は、同じ数のヌクレオチドから構成され、100%相補的である)。
第6の実施形態では、Tsa1タンパク質は、以下を含む:(a)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このポリペプチドは、配列番号34[ScTsa1]又は配列番号36[YlTsa1]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTPアラインメント方法に基づき、少なくとも70%アミノ酸同一性を有する);(b)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このヌクレオチド配列は、配列番号33[ScTsa1]又は配列番号35[YlTsa1]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTNアラインメント方法に基づき、少なくとも70%の配列同一性を有する);及び(c)(a)又は(b)のヌクレオチド配列の相補体(この相補体と上記ヌクレオチド配列は、同じ数のヌクレオチドから構成され、100%相補的である)。
第7の実施形態では、Ybp1タンパク質は、以下を含む:(a)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このポリペプチドは、配列番号38[ScYbp1]又は配列番号40[YlYbp1]からなる群から選択される);(b)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このポリペプチド配列は、保存ドメインの分析方法に基づき、kinetochor_Ybp2スーパーファミリーに分類される);又は(c)(a)若しくは(b)のヌクレオチド配列の相補体(この相補体と上記ヌクレオチド配列は、同じ数のヌクレオチドから構成され、100%相補的である)。
第8の実施形態では、トランスジェニック油性酵母細胞は、以下からなる群から選択される属:ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、及びリポミセス(Lipomyces)に由来する。好ましくは、トランスジェニック油性酵母は、アルカン資化酵母(Yarrowia lipolytica:ヤロウィア・リポリティカ)である。
第9の実施形態では、トランスジェニック油性酵母細胞は、少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を産生する。
第10の実施形態では、本発明は、油性酵母中の含油率を増加する方法に関し、この方法は、以下のステップを含む:
a)(i)Yap1転写因子;
(ii)上記転写因子を活性化することができるタンパク質;
(iii)(i)及び(ii)の組合せ
からなる群から選択されるタンパク質を過剰発現させるように油性酵母を改変するステップ;並びに
b)非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較して、含油率の増加をもたらすような好適な条件下で、油性酵母を増殖させるステップ。
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)GPX3[「ScGPX3」]が、S.セレビシエ(S.cerevisiae)YAP1[「ScYap1」]を活性化する作用機序を示す図である。ScGPX3は、Cys36及びCys82を含み、これらは、分子間ジスルフィド結合(−S−S−)を形成するか、又は還元されて、チオール基(−SH)を含む。ScYap1は、N末端及びC末端Cysリッチドメイン(各々黒色で示す)を含み;これらCysリッチドメイン内のCys303、Cys310及びCys315並びにCys598、Cys620及びCys629は、6つの鉛直の黒線として示す。Cys36ScGpx3のチオール基(−SH)は、Hと反応して、水の放出及びスルフェン酸(−SOH)の形成をもたらす。続いて、−SOHは、ScYap1(還元形態)のCys598の−SHと縮合して、分子間ジスルフィド結合(−S−S−)を形成し、次に、ScYap1のCys303とCys598間の分子内ジスルフィド結合に変換されて、これにより、酸化ScYap1タンパク質に配座の変化を引き起こす。 ScYAP1(配列番号2)とYlYAP1(配列番号4)の配列比較を示す。ScYAP1の69〜115位(YlYAP1の115〜166位に対応する)の下線を引いた太字の塩基性アミノ酸は、DNA結合のためのbZIPドメインの塩基性領域を示す。ScYAP1の87位、94位、108位、及び115位(YlYAP1の138位、145位、159位及び166位に対応する)で、アラインメントの上方に星印で示した太字のロイシン残基は、bZIPドメインのロイシンジッパーモチーフである。ScYAP1の303位、310位、315位、598位、620位及び629位(YlYap1の309位、316位、483位、50位5及び514位に対応する)のボックスで囲んだシステイン残基は、分子間及び分子内相互作用に重要である(又は恐らく重要である)。 (A)pYRH60;及び(B)pYRH61のプラスミドマップを提供する。 増加するH濃度、すなわち0mMから50mMへのH条件下で、YPDプレートでのH感受性アッセイの結果を示す。(A)はY.リポリティカ株Y4184(対照)及びY4184U(yap1Δ)細胞の増殖を比較する。(B)は、プラスミドpRS316(対照)又はpYRH61のいずれかで形質転換したS.セレビシエ(S.cerevisiae)株BY4743(対照)及びBY4743(yap1Δ)細胞の増殖を比較する。 (A)pYRH43;及び(B)pYRH65のプラスミドマップを提供する。 ScGPX3(配列番号26)とYlGPX3(配列番号28)の配列比較を示す。ScGpx3の36位、64位及び82位(YlGpx3の42位、70位及び88位に対応する)のボックスで囲んだシステイン残基は、分子間及び分子内相互作用に重要である(又は恐らく重要である)。 ScTsa1(配列番号34)とYlTsa1(配列番号36)の配列比較を示す。ScTsa1の48位及び171位(YlTsa1の48位及び169位に対応する)のボックスで囲んだシステイン残基は、分子間及び分子内相互作用に重要である(又は恐らく重要である)。 ScYbp1(配列番号38)とYlYbp1(配列番号40)の配列比較を示す。 ScYbp1(配列番号38)、YlYbp1(配列番号40)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)Ybp1[「CgYbp1」](配列番号43)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)NRRL Y−1140 Ybp1[「KlYbp1」](配列番号44)、シェフェルソミセス・スチピチス(Scheffersomyces stipitis)CBS 6054 Ybp1[「SsYbp1」](配列番号45)、ジゴサッカロミセス・ロキシー(Zygosaccharomyces rouxii)CBS 732 Ybp1[「ZrYbp1」](配列番号46)、及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)SC5314 Ybp1[「CaYbp1」](配列番号47)同士の配列比較を示す。
以下の配列は、37 C.F.R.セクション1.821〜1.825(「Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures − the Sequence Rules」)に従い、世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)Standard ST.25(1998)並びにEPO及びPCTの配列一覧要件(Rules 5.2及び49.5(a−bis)、及びAdministrative InstructionsのSection208及びAnnex C)に従う。ヌクレオチド及びアミノ酸配列データに用いる記号及びフォーマットは、37 C.F.R.セクション1.822に記載の規則に従う。
配列番号1〜47は、表1に同定するように、遺伝子、タンパク質(若しくはその部分)、プライマー又はプラスミドをコードするORFである。
表1.核酸及びタンパク質配列番号の概要

本明細書に引用するすべての特許、特許出願、及び刊行物は、その全文を参照として本明細書に組み込むものとする。
本明細書において、多数の用語及び略称を用いる。以下に、それらの定義を記載する。
「オープンリーディングフレーム」は、「ORF」と略記する。
「ポリメラーゼ連鎖反応」は、「PCR」と略記する。
「アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)」は、「ATCC」と略記する。
「多価不飽和脂肪酸」は、「PUFA」と略記する。
「トリアシルグリセロール」は、「TAG」と略記する。
「総脂肪酸」は、「TFA」と略記する。
「脂肪酸メチルエステル」は、「FAME」と略記する。
「乾燥細胞重量」は、「DCW」と略記する。
「質量パーセント」は、「wt%」と略記する。
「活性酸素種」は、「ROS」と略記する。
「過酸化水素」は、「H」と略記する。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「その(the)」は、文面で明確に別途記載していない限り、複数形の指示内容も含む。従って、例えば、「1つの細胞」と言うとき、1つ以上の細胞、並びに当業者には公知のその同等物なども含まれる。
「転写因子」とは、DNA調節エレメントと相互作用して、構造遺伝子の発現又は第2調節遺伝子の発現に作用するタンパク質(又はそのタンパク質をコードするDNA)を指す。さらに具体的には、転写因子(単独で又は他のタンパク質との複合体でのいずれか)は、例えば、転写開始の活性化又は抑制によって、DNAのmRNAへの転写に影響を与える。転写因子は、それらが調節する遺伝子に隣接するDNAの特定の配列に結合する1つ以上のDNA結合ドメインを含みうる。
「Yap1転写因子活性」とは、Yap1転写因子、すなわち、酸化ストレス応答を制御する細胞経路に関与するAP−1ファミリーの転写制御因子の結果として起こる活性を指す。増大したYap1転写因子活性によって、1つのファミリーのタンパク質の調節が行われるが、これは、典型的には、ROSに対する耐性の増大を可能にする(例えば、Hストレスが起こった場合)。本明細書に記載する本発明によれば、増大したYap1転写因子活性は、含油率の増加をもたらす。
「Yap1転写因子活性」とは、Yap1転写因子活性を有する転写因子を指す。一般に、このようなタンパク質は、以下を有していなければならない:(a)bZIPロイシンジッパーモチーフ;(b)少なくとも6つのアミノ酸で隔てられた少なくとも2つのシステイン残基の配列を含むN末端Cysリッチドメイン;及び(c)少なくとも8つのアミノ酸で隔てられた少なくとも2つのシステイン残基の配列を有するC末端Cysリッチドメイン。
「bZIPロイシンジッパーモチーフ」は、以下(i)約14〜16アミノ酸におよぶ塩基性DNA結合領域(すなわち、アルギニン及びリシン残基を含む);及び(ii)隣接するロイシンリッチジッパー領域(すなわち、二量体化を可能にする均一に間隔をあけたロイシンを含む)を含むものとして特徴付けられる(Hurst,H.C.Transcription factors 1:bZIP proteins.Protein Profile,2:101−168(1995))。一般的には、ロイシン残基は、7アミノ酸の間隔で配置されているが、メチオニン、イソロイシン、バリン及びフェニルアラニンのような他の疎水性アミノ酸は、ロイシンと一緒にジッパーを形成することが報告されている。
用語「ScYAP1」(配列番号1;GenBankアクセッション番号:NM_001182362.1)は、配列番号2によりコードされる、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S288cから単離されるAP−1ファミリーのYap1転写因子を指す。GenBankにアノテーションがつけられているように、ScYAP1は、Hにより、酸化ストレス耐性に必要であり、ジスルフィド結合の多段階形成及び細胞質から核への移行を介して活性化される。ScYAP1はまた、カドミウムに対する抵抗性も媒介する。
用語「YlYAP1」(配列番号4;YALI0F03388p;GenBankアクセッション番号:XP_504945)は、本明細書に記載の配列番号3によってコードされる、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から単離されたYap1転写因子を指す。
用語「Yap1転写因子を活性化することができるタンパク質」とは、Yap1転写因子の酸化を促進するような様式で、Yap1転写因子と相互作用するタンパク質を指し、これにより、この転写因子は、少なくとも1つの分子内ジスルフィド結合を含み、このようにして「活性化状態」となる。Yap1転写因子を活性化することができる好ましいタンパク質としては、Yap1結合タンパク質(Ybp1)並びにペルオキシレドキシンタンパク質、Gpx3及びTsa1が挙げられるが、これを、本明細書に記載の本発明を限定するものとして解釈すべきではない。
「Yap1結合タンパク質」又は「Ybp1」は、Yap1転写因子と結合する結合タンパク質を指す。Gulshan,K.et al.(J.Biol.Chem.,286(39):34071−34081(2011))に記載されているように、Yap1とYbp1は、細胞内で直接相互作用するようであるが、相互作用の部位又はドメインの詳しい位置決定はまだ達成されていない。
用語「ScYbp1」(配列番号38;GenBankアクセッション番号:NP_009775.1)は、本明細書に記載の配列番号37によってコードされる、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S288cから単離されたYap1結合タンパク質を指す(Veal,E.A.et al.,J Biol Chem.,278(33):30896−30904(2003);Gulshan,K.et al.、前掲)。GenBankにアノテーションが付けられているように、ScYbp1は、「転写因子Yap1pの特定のシステイン残基の酸化に必要であり、ストレスに応答してYap1pの核局在化を起こすタンパク質」として機能する。
用語「YlYbp1」(配列番号40;YALI0B03762g;GenBankアクセッション番号:XP_500469.1)は、本明細書では、配列番号39によりコードされる、ヤロウィア・リポリティカから単離されたYap1結合タンパク質を指す。
「ペルオキシレドキシンタンパク質」又は「Prxタンパク質」は、酸化還元活性システイン残基を含む。触媒作用中、この酸化還元活性システインは、スルフェン酸に酸化され(例えば、Hにより)、分解システイン残基と共に縮合して、ジスルフィドを形成する(分解システイン残基は、同じPrx分子内か、又は別のPrx分子内に存在し、二量体形成をもたらす)。このジスルフィド結合は、チオレドキシンによって還元され、活性Prxを再生する。従って、Prxタンパク質は、チオオレドキシン及びチオレドキシンレダクターゼを介してNADPHから電子を受け取り、酸化還元サイクルにおいて活性である。T.Tachibana et al.(J.Biol.Chem.,284(7):4464−4472(2009))によって記載されているように、発芽酵母においてチオレドキシン依存的ペルオキシダーゼ活性を示すタンパク質としては、5つのPrxファミリータンパク質[すなわち、Tsa1、Tsa2、Prx1、Ahp1、Dot5]及び2つのグルタチオンペルオキシダーゼ(Gpx)様タンパク質[すなわち、Gpx2、Gpx3]が挙げられるが、「Prx」は、本明細書では、Prxタンパク質及びGpx様タンパク質の両方を指すのに用いられる。Yap1転写因子を活性化することができる好ましいPrxタンパク質としては、Gpx3及びTsa1がある。
用語「ScGpx3」(配列番号26;GenBankアクセッション番号:NM_001179559.1;E.C.1.11.1.15)は、配列番号25によってコードされる、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S288cから単離されたチオールペルオキシダーゼを指す。GenBankにアノテーションが付けられているように、ScGpx3は、細胞内Hレベルを感知して、Yap1p転写因子にレドックスシグナルを伝達するためのヒドロペルオキシド受容体として機能する。
用語「YlGpx3」(配列番号28;YALI0E02310p;GenBankアクセッション番号:XP_503454)は、本明細書に記載の配列番号27によってコードされる、ヤロウィア・リポリティカから単離されたチオールペルオキシダーゼを指す。
用語「ScTsa1」(配列番号34;E.C.1.11.1.15;GenBankアクセッション番号:NP_013684)は、本明細書に記載の配列番号33によってコードされる、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S288cから単離したチオレドキシンペルオキシダーゼを指す(Trotter,E.W.et al.,Biochem J.,412(1):73−80(2008))。GenBankにアノテーションが付けられているように、ScTsa1は、ペルオキシレドキシン(PRX)2−Cysサブファミリーに属し、ペルオキシレドキシンは、「チオール特異的抗酸化(TSA)タンパク質として機能し、これは、H、ペルオキシニトリル、及び有機ヒドロペルオキシドを還元することによって、そのペルオキシダーゼ活性により細胞内での保護的役割を付与する」。
用語「YlTsa1」(配列番号36;YALI0B15125g;GenBankアクセッション番号:XP_500915.1)は、本明細書に記載の配列番号35によってコードされる、ヤロィア・リポリティカから単離されたチオレドキシンペルオキシダーゼを指す。
一般に、用語「油性」とは、エネルギー源を油の形態で蓄積する傾向がある生物を指す(Weete,In:Fungal Lipid Biochemistry,2nd Ed.,Plenum,1980)。この過程では、油性微生物の細胞含油率は、概ねシグモイド曲線に従い、脂質の濃度は、後期対数又は初期安定成長期の最大値に達するまで増加し、その後、後期安定及び死滅期の間に徐々に減少する(Yongmanitchai and Ward,Appl.Environ.Microbiol.,57:419−25(1991))。本出願の目的のために、用語「油性」は、油として、その乾燥細胞重量[「DCW」]の少なくとも約25%を蓄積することができる微生物を指す。
用語「油性酵母」とは、油を生成することができる(すなわち、そのDCWの約25%超の油を蓄積することができる)酵母として分類される油性微生物を指す。油性酵母の例としては、何ら限定されないが、以下の属:ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、赤色酵母(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)及びリポミセス(Lipomyces)が挙げられる。酵母のDCWの約25%を超える油を蓄積することができる能力は、組換え操作の取り組み又は生物の天然の能力によって達成されうる。
用語「トランスジェニック油性酵母」とは、概して、形質転換手順の結果としての、外来又は異種核酸フラグメントを含む油性酵母を指す。しかし、本発明の目的のために、用語「トランスジェニック油性酵母」は、特に、形質転換手順の結果としての、外来又は異種核酸フラグメントを含む油性酵母を指すが、ここで、外来又は異種核酸フラグメントの発現によって、油性酵母中のYap1転写因子活性の増大が起こる。従って、例えば、本明細書に記載する本発明のトランスジェニック油性酵母は、Yap1転写因子又はYap1転写因子を活性化することができるタンパク質のいずれかをコードするキメラ遺伝子を過剰発現するように遺伝子的に改変してもよく、ここで、Yap1転写因子又はYap1転写因子を活性化することができるタンパク質は、ネイティブ遺伝子(native gene)又は外来遺伝子のいずれかである。
対照的に、本明細書において、非トランスジェニック油性酵母とは、トランスジェニック油性酵母中のYap1転写因子活性増大をもたらす外来又は異種核酸で形質転換されておらず、従って、この特定の外来又は異種核酸が欠如していること以外はトランスジェニック油性酵母と同じ遺伝子型を有する油性酵母を指す。明瞭にするために、本明細書に記載する本発明の非トランスジェニック油性酵母は、少なくとも1つの外来又は異種核酸を発現してもよいが、これによって、Yap1転写因子活性の増大は生じない。
「形質転換」とは、宿主生物中への核酸分子の移入を指す。核酸分子は、自律的に複製するプラスミドであってもよいし;又は、これは、宿主生物のゲノムに組み込んでもよい。形質転換された核酸フラグメントを含む宿主生物は、「トランスジェニック」若しくは「組換え体」又は「形質転換生物」若しくは「形質転換体」と呼ばれる。
用語「脂質」とは、任意の脂溶性(すなわち、親油性)の、天然に存在する分子を指す。脂質についての概説は、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書(その表2を参照のこと)に記載されている。
用語「油」とは、25℃で液体である脂質物質を指し;また、油は、疎水性であるが、有機溶媒には可溶性である。油性生物において、油は、全脂質の大部分を占める。「油」は、主にトリアシルグリセロール[「TAG」]から構成されるが、他の中性脂質、リン脂質及び遊離脂肪酸を含んでいてもよい。油中の脂肪酸組成と全脂質の脂肪酸組成は、概ね類似しており;従って、全脂質中の脂肪酸濃度の増加又は減少は、油中の脂肪酸濃度の増加又は減少に対応し、その逆も然りである。
「中性脂質」は、細胞内で、貯蔵脂肪としての脂肪体中に一般にみられる脂質であり、細胞のpHで、脂質が荷電基をまったく持っていないためにそう呼ばれる。一般に、中性脂質は、水に対して親和性がなく、完全に非極性である。中性脂質は、一般に、脂肪酸を含むグリセロールのモノ−、ジ−、及び/又はトリエステルを指し、それぞれ、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール若しくはトリアシルグリセロールとも呼ばれ、あるいは、集合的に、アシルグリセロールと呼ばれる。アシルグリセロールから遊離脂肪酸を放出するためには、加水分解反応が起こらなければならない。
用語「トリアシルグリセロール」[「TAG」]とは、グリセロール分子にエステル化した3つの脂肪アシル残基から構成される中性脂質を指す。TAGは、長鎖の多価不飽和及び飽和脂肪酸、並びに、より短鎖の飽和及び不飽和脂肪酸を含みうる。
本明細書において、用語「総脂肪酸」[「TFA」]とは、所与のサンプル(例えば、バイオマス又は油でよい)中で塩基エステル交換方法(当分野では公知の)によって脂肪酸メチルエステル[「FAME」]に誘導体化することができる全ての細胞脂肪酸の総和である。従って、総脂肪酸には、中性脂質画分(ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール及びTAGなど)由来の脂肪酸、及び極性脂質画分(例えば、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミン画分など)由来の脂肪酸が含まれるが、遊離脂肪酸は含まれない。
用語「全脂質含有率」及び「含油率」は、本明細書では、置換え可能に用いられ、TFAの測度として、乾燥細胞重量[「DCW」]のパーセントで表される細胞の脂質/油含有率を指すが、全脂質含油率は、FAMEの測度として、DCWのパーセント[「FAME%DCW」]として概算することもできる。従って、全脂質含油率[TFA%DCW]は、例えば、DCW100ミリグラム当たりの総脂肪酸(ミリグラム)に相当する。
本発明のトランスジェニック油性酵母の含油率は、同等の増殖条件(例えば、炭素源の種類/量、窒素源の種類/量、炭素:窒素比、ミネラルイオンの量、酸素レベル、増殖温度、pH、バイオマス生産期の長さ、油蓄積期の長さ、及び細胞回収の時期/方法)下で、本発明の非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較しなければならない。
本明細書で用いる場合、「単離された核酸フラグメント」は、一本鎖若しくは二本鎖のRNA又はDNAのポリマーであり、これは、合成、非天然、又は改変されたヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。DNAのポリマーの形態の単離された核酸フラグメントは、cDNA、ゲノムDNA又は合成DNAの1つ以上のセグメントからなるものであってもよい。
アミノ酸又はヌクレオチド配列の「実質的部分」は、当業者による配列の手動での評価、又はBLAST(Basic Local Alignment Search Tool;Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1993))などのアルゴリズムを用いたコンピューター自動化配列比較及び同定のいずれかによって、当該ポリペプチド又は遺伝子を推定的に同定する上で、十分な量のポリペプチドのアミノ酸配列又は遺伝子のヌクレオチド配列を含む部分である。一般に、既知のタンパク質又は遺伝子に対して相同的なものとしてポリペプチド又は核酸配列を推定的に同定するためには、10個以上の隣接したアミノ酸又は30個以上のヌクレオチドの配列が必要である。さらに、ヌクレオチド配列に関しては、20〜30個の隣接したヌクレオチドを含む遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを、遺伝子同定の配列依存的方法(例えば、サザンハイブリダイゼーション)及び単離(例えば、細菌コロニー又はバクテリオファージプラークのin situハイブリダイゼーション)に用いることができる。さらに、12〜15塩基の短いオリゴヌクレオチドをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)での増幅プライマーとして用いて、これらのプライマーを含む特定の核酸フラグメントを取得することもできる。従って、ヌクレオチド配列の「実質的部分」は、その配列を含む核酸フラグメントを具体的に同定及び/又は単離するのに十分な量の配列を含む。
用語「相補的」とは、逆平行配向でアラインメントしたとき、ワトソン・クリック塩基対合が可能なヌクレオチド塩基の2つの配列同士の関係を表す。例えば、DNAに関しては、アデノシンは、チミンと塩基対合することができ、また、シトシンは、グアニンと塩基対合することができる。
「コドンの縮重」とは、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなく、ヌクレオチド配列の改変を可能にする遺伝子コードの性質を指す。当業者であれば、所与のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用頻度において、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」を十分認識している。従って、宿主細胞での発現改善のための遺伝子を合成する場合、コドン使用の頻度が、宿主細胞の優先されるコドン使用の頻度に近似するように、遺伝子を設計することが望ましい。
「合成遺伝子」は、当業者には公知の手順を用いて、化学的に合成されるオリゴヌクレオチドビルディングブロックからアセンブリングすることができる。これらのビルディングブロックは、連結及びアニーリングされて、遺伝子セグメントを形成し、次にこれらが、酵素によりアセンブリングされて、遺伝子全体を構築する。従って、遺伝子は、宿主細胞のコドンバイアスを表すように、ヌクレオチド配列の最適化に基づいて、最適な遺伝子発現のために調整することができる。当業者であれば、コドン使用が、宿主によって優先されるコドンに偏っている場合の、遺伝子発現成功の可能性を理解している。優先されるコドンの決定は、配列情報が入手可能な宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づいて行うことができる。例えば、Y.リポリティカのコドン使用プロフィールは、米国特許第7,125,672号明細書(本明細書に参照として組み込む)に記載されている。
「遺伝子」とは、特定のタンパク質を発現する核酸フラグメントを指すが、これは、コード領域だけを指す場合もあり、あるいは、コード配列に先行する調節配列(5’非コード配列)及び後続の調節配列(3’非コード配列)を含むこともある。「ネイティブ遺伝子」とは、それ自身の調節配列と共に天然に存在する遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、ネイティブ遺伝子ではない任意の遺伝子を指し、天然には一緒に存在しない調節配列及びコード配列を含む。従って、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列、又は同じ供給源に由来するが、天然に存在するのとは異なる様式で配列された調節配列及びコード配列を含みうる。「内在性遺伝子」とは、生物のゲノム内でのその天然の位置にあるネイティブ遺伝子を指す。「外来」遺伝子(又は「外因性」遺伝子)とは、遺伝子移入により、宿主生物に導入された遺伝子を指す。外来遺伝子は、非ネイティブ生物に挿入されたネイティブ遺伝子、ネイティブ宿主内の新しい位置に導入されたネイティブ遺伝子、又はキメラ遺伝子を含みうる。「トランスジーン」は、形質転換手順によりゲノムに導入された遺伝子である。「コドン最適化遺伝子」は、宿主細胞の優先されるコドン使用の頻度を模倣するように設計されたコドン使用の頻度を有する遺伝子である。
「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。
「好適な調節配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内、又はコード配列の下流(3’非コード配列)に位置して、結合したコード配列の転写、RNAプロセシング若しくは安定性、又は翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節配列としては、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列(例えば、転写開始部位と翻訳開始コドンの間)、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位及びステム−ループ構造を挙げることができる。
「プロモーター」とは、コード配列又は機能性RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’側に位置する。プロモーターは、その全体が、ネイティブ遺伝子に由来するものであっても、又は天然に存在する異なるプロモーターに由来する様々なエレメントから構成されるものであってもよく、あるいは、合成DNAセグメントを含んでもよい。当業者であれば、様々なプロモーターが、異なる組織若しくは細胞型において、又は異なる発生段階で、又は異なる環境若しくは生理的条件に応答して、遺伝子の発現を指令しうることは理解されよう。ほとんどの細胞型においてほとんどいつでも遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。また、ほとんどの場合、調節配列の正確な境界は、完全には規定されていないので、異なる長さのDNAフラグメントが同じプロモーター活性を有しうることも認識されよう。
用語「3’非コード配列」、「転写終結因子」及び「ターミネーター」は、本明細書において置換え可能に用いられ、コード配列の3’側下流に位置するDNA配列を指す。これは、ポリアデニル化認識配列、並びに、mRNAプロセシング又は遺伝子発現に影響を与えることができる調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化認識シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸部分の付加に影響を与えることを特徴とする。3’領域は、結合したコード配列の転写、RNAプロセシング若しくは安定性、又は翻訳に影響を与えうる。
用語「機能的に連結された」とは、一方の機能が他方によって影響されるような、核酸配列と単一の核酸フラグメントの結合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に作用することができる場合、そのコード配列と機能的に連結されている。すなわち、コード配列は、プロモーターの転写制御下にある。コード配列は、センス又はアンチセンス配向で調節配列に機能的に連結することができる。
本明細書で用いる場合、用語「発現」とは、センス(mRNA)又はアンチセンスRNAの転写及び安定な蓄積を指す。また、発現は、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指すこともある。
「安定な形質転換」とは、遺伝学的に安定した遺伝をもたらす(すなわち、核酸フラグメントが、「安定に組み込まれる」)、宿主生物のゲノム(核及び細胞小器官ゲノムのいずれも含む)への核酸フラグメントの移入を指す。対照的に、「一過性形質転換」とは、宿主生物の核、又はDNA含有細胞小器官への核酸フラグメントの移入を指し、これによって、組込み又は安定な遺伝を伴わない遺伝子発現が起こる。
用語「プラスミド」及び「ベクター」とは、細胞の中心代謝の一部ではない遺伝子を保有することが多いと共に、通常、環状二本鎖DNAフラグメントの形態をしている染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、自律的に複製する配列、ゲノム組込み配列、ファージ若しくはヌクレオチド配列であってよく、また、任意の供給源に由来する、線状若しくは環状の、一本鎖若しくは二本鎖DNA又はRNAであってよく、ここで、いくつかのヌクレオチド配列は結合されているか、又は細胞に発現カセットを導入することができる特有の構造に組換えられている。
用語「発現カセット」とは、選択された遺伝子のコード配列と、選択された遺伝子産物の発現に必要なコード配列に先行する調節配列(5’非コード配列)及び後続の調節配列(3’非コード配列)を含む、DNAのフラグメントを指す。従って、発現カセットは、典型的に、以下から構成される:1)プロモーター配列;2)コード配列(すなわち、オープンリーディングフレーム(「ORF」));及び3)3’非翻訳領域(すなわち、ターミネーター)(これは、真核生物では、通常、ポリアデニル化部位を含む)。発現カセットは、クローニング及び形質転換を促進するために、通常、ベクター内に含有させる。各宿主について適正な調節配列が用いられている限り、異なる発現カセットを、様々な生物(細菌、酵母、植物及び哺乳動物の細胞など)に形質転換させることができる。
用語「配列分析ソフトウエア」とは、ヌクレオチド又はアミノ酸配列の分析に有用な任意のコンピューターアルゴリズム又はソフトウエアプログラムを指す。「配列分析ソフトウエア」は、市販のものであってもよいし、独立に開発されたものでもよい。典型的な配列分析ソフトウエアとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる:1)GCGプログラム一式(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,WI);2)BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990));3)DNASTAR(DNASTAR,Inc.Madison,WI);4)Sequencher(Gene Codes Corporation,Ann Arbor,MI);及び5)Smith−Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.Editor(s):Suhai,Sandor.Plenum:New York,NY)。本願に関して、配列分析ソフトウエアが分析のために用いられる場合、分析の結果は、別途記載のない限り、言及したプログラムの「デフォルト値」に基づくことは理解されたい。本明細書で用いる場合、「デフォルト値」とは、最初に初期化する際、ソフトウエアに初めから設定されている任意のセットの値又はパラメーターを意味する。
核酸又はポリペプチド配列に関連して、「配列同一性」又は「同一性」とは、指定の比較ウィンドウにわたって最大限に一致するようにアラインメントされたとき、同一である2つの配列中の核酸塩基又はアミノ酸残基を指す。従って、「配列同一性のパーセンテージ」又は「%同一性」とは、比較ウィンドウにわたって最適にアラインメントされた2つの配列を比較することによって決定される値を意味し、ここで、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(これは付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。パーセンテージは、両配列に同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、マッチ位置の数を取得し、このマッチ位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、その結果に100をかけて配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算される。
「%同一性」又は「%類似性」を決定するための方法は、一般公開されているコンピュータープログラムに体系化されている。%同一性及び%類似性は、以下を含む公知の方法によって容易に計算することができるが、これらに限定されるわけではない:1)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988);2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993);3)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.)Humania:NJ(1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987);及び5)Sequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)。
配列アラインメント及び%同一性又は類似性の計算は、相同性配列を検出すべく設計された様々な比較方法を用いて、決定することができる。
配列の多重アラインメントは、「Clustalアラインメント方法」を用いて実施することができるが、この方法は、同アルゴリズムの複数の変種、例えば、「ClustalVアラインメント方法」及び「ClustalWアラインメント方法」(Higgins及びSharpにより記載、CABIOS,5:151−153(1989);Higgins、D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.,8:189−191(1992))や、MegAlign(商標)(バージョン8.0.2)プログラム(前掲)にみいだされるものを包含する。いずれかのClustalプログラムを用いた配列のアラインメント後、プログラム中の「配列距離」表を調べることによって、「%同一性」を取得することができる。
用語「保存ドメイン」又は「モチーフ」とは、進化的に関連するタンパク質のアラインメントされた配列に沿って、特定の位置で保存されているアミノ酸の1セットを意味する。相同性タンパク質同士で、他の位置のアミノ酸は変動しうるが、特定の位置で高度に保存されているアミノ酸は、タンパク質の構造、安定性、又は活性に必須のアミノ酸を意味する。これらは、タンパク質相同体のファミリーのアラインメントされた配列における、高度な保存によって識別されるため、新しく決定された配列のタンパク質が、以前同定されたタンパク質ファミリーに属するか否かを決定するための識別因子、又は「シグネチャー」として用いることができる。
用語「保存ドメインの分析方法」とは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)[「NCBI」]の「Identify Conserved Domains」ツールを指すが、これは、CD検索を用いて、タンパク質配列内の保存ドメインを検出する(Marchler−Bauer,A.and S.H.Bryant,Nucleic Acids Res.,32(W)327−331(2004);Marchler−Bauer,A.et al.,Nucleic Acids Res.,37(D)205−210(2009);及びMarchler−Bauer,A.et al.,Nucleic Acids Res.,39(D)225−229(2011))。
用語「kinetochor_Ybp2スーパーファミリー」とは、Pfamタンパク質データベースに記載されているタンパク質のPfam08568ファミリーを指す(Finn,R.D.et al.,Nucleic Acids Res.,36(Database issue):D281−D288(2008))。
本明細書で用いる標準的組換えDNA及び分子クローニング技術は、当分野では公知であり、以下:Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.,により、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)(以降「Maniatis」);Silhavy,T J.Bennan M L及びEnquist,L.W.,により、Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY (1984);並びに、Ausubel,F.M.et al.,により、Current Protocols in Molecular Biology,published by Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience,Hoboken,NJ(1987)に記載されている。
アクチベータータンパク質1[「AP−1」]は、少なくとも3つの異なる癌原遺伝子ファミリー:Jun(c−Jun、v−Jun、JunB、JunD)、Fos(c−Fos、v−Fos、FosB、FosB2、Fra−1、Fra−2)及び活性化転写因子(B−ATF、ATF2、ATF3/LRF1)ファミリーの産物であるサブユニットから構成されるヘテロ二量体タンパク質である転写因子である。AP−1は、様々な刺激(例えば、サイトカイン、成長因子、ストレス、並びに細菌及びウイルス感染など)に応答して遺伝子発現を調節する。従って、AP−1は、TGA(C/G)TCAとして記載される配列を有する、AP−1認識エレメントを含む遺伝子の転写を上方制御することにより、多数の細胞プロセスを制御する。AP−1は、塩基性アミノ酸領域を介して上記のDNA配列に結合するのに対し、二量体構造は、ロイシンジッパーにより形成される。
YAP1は、S.セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のAP−1同等物であり、酸化ストレス応答についてのマスター転写因子として機能するという結論が出されている(Moye−Rowley et al.,Genes Dev.,:283−292(1989))(配列番号2)。構造的には、このタンパク質は、ロイシンリッチジッパー領域及び隣接する塩基性領域(すなわち、アルギニン及びリシン残基を含む)、さらにはN末端Cysリッチドメイン(すなわち、Cys303、Cys310及びCys315)並びにC末端Cysリッチドメイン(すなわち、Cys598、Cys620及びCys629)から構成されるbZip構造モチーフを有する。
機能的に、少なくとも1つの分子内ジスルフィド結合が、Hストレスに応答して、Cys303とCys598の間に形成され、これは、Yap1の多段階の配座変化及びYap1の核蓄積(核外搬出シグナルに対する改変による)を引き起こす。この活性酸化形態では、Yap1は、少なくとも32の異なるタンパク質の大きなレギュロンの発現を制御するが、このようなタンパク質としては、細胞抗酸化因子並びにグルタチオン及びペントースリン酸経路の酵素がある(Lee,J.et al.,J.Biol.Chem.,274:16040−16046(1999))。Yap1−制御チオレドキシンによる酵素的還元によって、Yap1の非活性化が起こり、このようにして、自動制御の作用機序がもたらされる。
S.セレビシエ(S.cerevisiae)Yap1の酸化は、Hに直接応答して起こるのではなく;構成的に発現されたチオールペルオキシダーゼタンパク質(例えば、Gpx3;配列番号26)が、Hシグナルを伝達し、これによって、Yap1内に分子内ジスルフィド結合の形成の触媒が起こる(Inoue et al.,J.Biol.Chem.,274:27002−27009(1999);Delaunay,A.,et al.,Cell,111:471−481(2002))。このグルタチオンペルオキシダーゼ(Gpx)様タンパク質のCys36は初め、ジスルフィド結合によってYap1のCys598と架橋するが、このジスルフィド結合は、Yap1分子内ジスルフィド結合に変換される(図1:Tachibana,T.et al.,J.Biol.Chem.,284:4464−4472(2009);Okazaki et al.,Mol.Cell,27:675−688(2007)から再現)。Yap1と反応しないGpx3タンパク質は、Hを直接水に還元することができるため、GPX3タンパク質のCys36及びCys82の間に分子内ジスルフィド結合の形成が起こる。また、Yap1活性化のためのGpx3とは独立した経路も周知である(Azevedo,D.,et al.,Free Radic.Biol,Med.,35:889−900(2003))。
Gpx3の他に、少なくとも1つの酸化還元活性システイン残基を含む、1組の他のペルオキシレドキシン(Prx)タンパク質もYap1転写因子を活性化することができると考えられる(直接又は間接的手段により)。特に、T.Tachibanaら(J.Biol.Chem.,284(7):4464−4472(2009))は、発芽酵母中にチオレドキシン依存的ペルオキシダーゼ活性を有するものとして、5つのPrxファミリータンパク質[すなわち、Tsa1、Tsa2、Prx1、Ahp1、Dot5]と、2つのGpx様タンパク質[すなわち、Gpx2、Gpx3]を同定している(これらのすべてを、本明細書では包括的にPrxタンパク質と呼ぶ)。これらのタンパク質が、Yap1と相互作用する厳密な性質については研究が続けられている。T.Tachibanaら(J.Biol.Chem.,284:4464−4472(2009))は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)Tsa1(配列番号34)が、Cys−48及びCys−171に基づき、Gpx3と類似の様式で、Yap1と相互作用することを報告している。
Yap1とYbp1が相互作用する厳密な作用機序は不明だが、Ybp1は、Yap1転写因子の活性化にも影響を及ぼすことが明らかにされている。Gulshan,K.ら(J.Biol.Chem.,286(39):34071−34081(2011))は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)及びカンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)の両方において、Ybp1とYap1の間の相互作用を研究し、「Yap1とYbp1は、細胞中で直接相互作用するようである...これら2つのタンパク質の相互作用モチーフをさらに位置決定しようとする取り組みは失敗した」と報告している。この中で、Yap1とYbp1の相互作用には、複数の低親和性相互作用が含まれているようであり、Yap1の酸化は、Ybp1パートナーからの折りたたまれたタンパク質の放出をトリガーするようであると仮定されている。また、S.セレビシエ(S.cerevisiae)におけるYbp1の過剰生産もH耐性の増大をもたらすと報告されている。
酸化ストレス応答の作用機序は、比較的よく保存されており(種によっていくらか差があるが)、Yap1p相同体、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)中のCap1p、及びシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)中のPap1もまた、酸化ストレスに応答して、いくつかの抗酸化遺伝子を転写により調節することが知られている(Ikner,A.and K.Shiozaki,Mutat.Res.,569:13−27(2005))。しかし、油性酵母において酸化ストレス応答が機能する手段については、これよりはるかに特性決定されていない。油性酵母は、油合成及び蓄積を自然にすることができ、総含油率は、乾燥細胞重量[「DCW」]の約25%超、より好ましくはDCWの約30%超、より好ましくはDCWの約40%超、さらに好ましくはDCWの約50%超、そして最も好ましくはDCWの約60%超を含みうる(ここで、この油蓄積の割合は、本明細書に記載の本発明に従い、酵母中のネイティブYap1転写因子活性を増大するあらゆる取り組みに先立つものである)。様々な酵母が、そのまま油性酵母として分類されるが、別の実施形態では、非油性生物を遺伝子的に改変することにより、油性にすることができ、そのような生物として、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母がある(国際出願公開第2006/102342号パンフレットを参照)。
典型的に油性酵母として識別される属として、限定されないが、以下のものが挙げられる:ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、及びリポミセス(Lipomyces)。より詳細には、油合成酵母の例として、以下を挙げることができる:ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポミセス・スタルケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェルス(L.lipoferus)、カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、C.プルクエリーマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユチリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランス(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルチヌス(Rhodotorula glutinus)、R.グラミニス(R.graminis)、及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(限定されないが、例えば、ATCC#20362、ATCC#8862、ATCC#18944、ATCC#76982及び/又はLGAMS(7)1と称されるヤロウィア・リポリティカ株(Papanikolaou S.,and Aggelis G.,Bioresour.Technol.,82(1):43−9(2002))。
好気的代謝を行う他の生物、従って、ROS(呼吸中に水への酸素の不完全な還元によって発生する)に対する防御に依存する他の生物と同様に、無条件的好気性油性酵母もまた酸化ストレスを感知し、これに応答する様々な手段を必要とする。本発明では、S.セレビシエ(S.cerevisiae)の相同体Yap1、Gpx3、Tsa1及び/又はYbp1遺伝子が、以下の表にまとめるように、油性酵母、ヤロウィア・リポリティカに同定されている。各タンパク質対のアラインメントは、CLUSTAL W(1.81)多重配列アラインメント(Thompson J.D.,et al.,Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994))を用いて実施した。
表2.Yap1、Gpx3、Tsa1及びYbp1相同体
驚くことに、Y.リポリティカYap1[「YlYap1」]及びGpx3[「YlGpx3」]タンパク質を過剰発現させることにより、Yap1転写因子活性を増大させると、トランスジェニックY.リポリティカは、非トランスジェニックY.リポリティカ中の含油率と比較して、増加した含油率(TFA%DCWとして測定される)を有することがわかった。
従って、本発明は、増大したYap1転写因子活性を含む、増加した含油率を有するトランスジェニック油性酵母に関し、ここで、前記増加した含油率は、非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較したものである。
本明細書では、増大したYap1転写因子活性が酸化ストレスに対する抵抗性を増強させるため、増加した含油率がトランスジェニック油性酵母に観察されると仮定する。こうした酸化ストレスに対する抵抗性の増強の1つの有益な成果は、脂質過酸化からの保護の増大であり、これによって、トランスジェニック油性酵母中の油/脂質含油率増加がもたらされる。脂質分子の中でも、PUFAは特にROSに対して敏感であり、脂質の過酸化に対する脂肪酸の感受性は、脂肪アシル鎖不飽和の度合いに応じて増加することが明らかにされた(Porter,N.A.et al.,Lipids,30:277−290(1995))。脂質の過酸化は、膜の完全性に作用する極性ヒドロペルオキシドの生成によって、細胞生存性に影響を及ぼすことがわかっている(Howlett,N.G.and S.V.Avery,Appl.Microbiol.Biotechnol.,48(4):539−545(1997);Howlett,N.G.and S.V.Avery,Appl.Environ.Microbiol.,63(8):2971−2976(1997))。しかし、これまで、含油率におけるYap1転写因子過剰発現の効果を証明した研究はなかった。
好ましくは、本発明のトランスジェニック油性酵母は、非トランスジェニック油性酵母の含油率より少なくとも10〜25%高い含油率を産生することができる。より好ましくは、含油率の増加は、非トランスジェニック油性酵母の含油率より、少なくとも25〜45%高く、最も好ましくは、含油率の増加は、非トランスジェニック油性酵母の含油率より、少なくとも45〜65%高い。従って、当業者は、含油率の増加が、非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較して、10%から100%以上までの任意の整数のパーセンテージ(又はその分数)であってよく、すなわち、具体的には、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の含油率の増加を含むことを理解されよう。
前述したように、微生物油には、トリアシルグリセロール(長鎖の多価不飽和及び/又は飽和脂肪酸と、より短鎖の飽和及び/又は不飽和脂肪酸を含む)、並びにその他の中性脂質、リン脂質及び/又は遊離脂肪酸が含まれる。
一実施形態では、増加した含油率を有するトランスジェニック油性酵母におけるYap1転写因子活性の増大は、Yap1転写因子の過剰発現によって起こる。好適なYap1転写因子は、好ましくは、転写因子活性を有し、かつ以下:
a)bZIPロイシンジッパーモチーフ;
b)少なくとも6つのアミノ酸によって隔てられる少なくとも2つのシステイン残基の配列を含むN末端Cysリッチドメイン;及び
c)少なくとも8つのアミノ酸によって隔てられる少なくとも2つのシステイン残基の配列を含むC末端Cysリッチドメイン、
を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
bZIPロイシンジッパーモチーフは、約14〜16アミノ酸におよぶ塩基性DNA結合領域(すなわち、アルギニン及びリシン残基を含む)と、隣接するロイシンリッチジッパー領域(すなわち、二量体化を可能にする均一な間隔で配置されたロイシンを含む)を含む(Hurst,H.C.,Protein Profile,2:101−168(1995))。
1つの好ましいYap1転写因子は、配列番号4に示されるように、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Yap1[「YlYap1」]ポリペプチド配列である。代替的実施形態では、ScYAp1(配列番号2)又は表4(実施例1)に示す配列のいずれかであり、あるいは、その相同体若しくはコドン最適化誘導体も本発明で用いることができる。
別の実施形態では、増加した含油率を有するトランスジェニック油性酵母におけるYap1転写因子活性の増大は、転写因子と、転写因子を活性化することができるタンパク質との相互作用を増大することによって(すなわち、転写因子を活性化することができるタンパク質自体を過剰発現させることによって)達成する。好ましくは、転写因子を活性化することができるタンパク質は、Gpx3、Ybp1及びTsa1からなる群から選択される。
例えば、好適なGpx3タンパク質は、以下を含む:
a)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このポリペプチドは、配列番号26[ScGpx3]又は配列番号28[YlGpx3]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTPアラインメント方法に基づき、少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する);
b)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このヌクレオチド配列は、配列番号25[ScGpx3]又は配列番号27[YlGpx3]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTNアラインメント方法に基づき、少なくとも70%の配列同一性を有する);又は
c)(a)若しくは(b)のヌクレオチド配列の相補体(この相補体と上記ヌクレオチド配列は、同じ数のヌクレオチドから構成され、100%相補的である)。
好適なGpx3タンパク質は、少なくとも1つの酸化還元活性システイン残基、例えば、ScGpx3(配列番号26)のCys36及びCys82を含む。
好ましくは、Gpx3をコードするポリペプチド配列は、配列番号28(「YlGpx3」)に示される。別の実施形態では、Gpx3をコードするポリペプチド配列は、配列番号26又は配列番号28と比較して、CLUSTALWアラインメント方法に基づき、少なくとも70%の配列同一性を有する。すなわち、このポリペプチドは、上記の配列と比較して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有しうる。別の実施形態では、表9(実施例5)に記載の配列、又はその相同体若しくはコドン最適化された誘導体を本発明で用いてもよい。
同様に、好適なTsa1タンパク質は、以下を含む:
a)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このポリペプチドは、配列番号34[ScTsa1]又は配列番号36[YlTsa1]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTPアラインメント方法に基づき、少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する);
b)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(このヌクレオチド配列は、配列番号33[ScTsa1]又は配列番号35[YlTsa1]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTNアラインメント方法に基づき、少なくとも70%の配列同一性を有する);又は
(c)(a)若しくは(b)のヌクレオチド配列の相補体(この相補体と上記ヌクレオチド配列は、同じ数のヌクレオチドから構成され、100%相補的である)。
好適なTsa1タンパク質は、少なくとも1つの酸化還元活性システイン残基、例えば、ScTsa1(配列番号34)のCys48及びCys171を含む。
好ましくは、Tsa1をコードするポリペプチド配列は、配列番号36(「YlTsa1」)に示される。別の実施形態では、Tsa1をコードするポリペプチド配列は、配列番号34又は配列番号36と比較して、CLUSTALWアラインメント方法に基づき、少なくとも70%の配列同一性を有する。すなわち、このポリペプチドは、上記の配列と比較して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有しうる。別の実施形態では、表12(実施例9)に記載の配列、又はその相同体若しくはコドン最適化された誘導体を本発明で用いてもよい。
好適なYbp1タンパク質は、Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、このポリペプチド配列は、保存ドメインの分析方法に基づき、kinetochor_Ybp2スーパーファミリーに分類される。
好ましくは、Ybp1をコードするポリペプチド配列は、配列番号40に示される(「YlYbp1」)。別の実施形態では、ScYbp1(配列番号38)又は表13若しくは表14に記載の配列(実施例10、すなわち配列番号43〜48を含む)のいずれか、又はそれらの相同体若しくはコドン最適化誘導体を本発明で用いてもよい。
明瞭にするために、トランスジェニック油性酵母中のYap1転写因子活性の増大は、ネイティブYap1転写因子、外来Yap1転写因子、この転写因子を活性化することができるネイティブタンパク質、この転写因子を活性化することができる外来タンパク質、又はこれらの任意の組合せの過剰発現によって達成することができる。過剰発現は、例えば、多コピープラスミドを用いて、宿主細胞に適切な遺伝子のさらなるコピーを導入することによって起こりうる。このような遺伝子は、それらのコードされた機能の活性増大をもたらす適切な調節配列と一緒に、染色体に組み込んでもよい。標的遺伝子は、非ネイティブプロモーター又は改変されたネイティブプロモーターの制御下に置かれるように改変してもよい。外因性プロモーターは、変異、欠失、及び/又は置換により、in vivoで改変することができる。
前述したように、目的の油性酵母の発現のために、上に記載したYap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1タンパク質のいずれか1つを、コドン最適化するのが望ましい。例えば、Y.リポリティカにおける発現のために、表4、9、12、13若しくは14に記載の配列のいずれかをコドン最適化することができる。これは、Y.リポリティカコドン使用プロフィールの以前の決定、優先されるコドンの同定、及び「ATG」開始コドンの周囲の共通配列の決定に基づいて実施可能である(米国特許第7,238,482号明細書を参照)。
別の実施形態では、配列分析ソフトウエアを用いて、同じ又は別の種においてYap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1相同体を検索するために、表4、9、12、13若しくは14に記載の配列、又はそれらの部分を用いることもできる。一般に、このようなコンピューターソフトウエアは、様々な置換、欠失、及びその他の改変物に、相同性の度合いを割り当てることによって、類似の配列をマッチさせる。ソフトウエアアルゴリズム、例えば、低複雑配列フィルター及び以下のパラメーター:期待値=10、マトリクス=Blosum62(Altschul,et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))を用いたBLASTPアラインメント方法の使用は、表4、9、12、13若しくは14に記載のYap1、Gpx3、Tsa1若しくはYbp1タンパク質を、核酸若しくはタンパク質配列のデータベースと比較して、好ましい生物内での類似した既知の配列を同定するための手段として公知である。
既知の配列のデータベースを綿密に調べるためのソフトウエアアルゴリズムの使用は、一般公開されているYap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1配列に対して比較的低い%同一性を有する相同体、例えば、表4、9、12、13若しくは14に記載のものを単離するのに特に適している。一般公開されているYap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1配列に対して少なくとも約70%〜75%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%〜85%の同一性を有するYap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1相同体については、単離が比較的容易であることが推定できる。さらに、少なくとも約85%〜90%の同一性である配列は、特に単離に適しており、また、少なくとも約90%〜95%の同一性である配列は、最も容易に単離される。
また、いくつかのYap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1相同体は、これら酵素に特有のモチーフを用いることによって単離されている。当業者には理解されるように、これは、複数の保存配列モチーフを共有しているものの、互いに比較的低い配列相同性を共有する転写因子について、特に有用である。モチーフ(例えば、bZIPロイシンリッチジッパーモチーフの塩基性DNA結合領域及び隣接するロイシンリッチジッパー領域、Yap1転写因子のN末端Cysリッチドメイン及びC末端Cysリッチドメイン)は、タンパク質相同体のファミリーのアラインメントされた配列における高い保存の度合いによって同定される。特有の「シグネチャー」として、これらは、新たに決定された配列を含むタンパク質が、以前同定されたタンパク質ファミリーに属するか否かを決定することができる。同様に、Gpx3及びTsa1相同体は、タンパク質配列内の相対的位置が保存されている少なくとも1つの酸化還元活性システイン残基を含むと予想される。これらのモチーフは、新しい相同性遺伝子の迅速な同定のための診断ツールとして有用である。
同じ又は別の種に由来する相同性タンパク質をコードする遺伝子を単離するのに、本明細書に記載する、又は公開文献に記載されているYap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1核酸フラグメントのいずれを用いてもよい。配列依存的プロトコルを用いた相同性遺伝子の単離が当分野では公知である。配列依存的プロトコルの例として、限定されないが以下のものが挙げられる:1)核酸ハイブリダイゼーションの方法;2)DNA及びRNA増幅の方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応[「PCR」](米国特許第4,683,202号明細書);リガーゼ連鎖反応[「LCR」](Tabor,S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82:1074(1985));又は鎖置換型増幅[「SDA」](Walker,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89:392(1992))などの各種核酸増幅技術の使用により例示されるもの;並びに、3)ライブラリー構築方法及び相補性によるスクリーニング方法。
本発明はまた、油性酵母中の含油率を増加する方法にも関し、この方法は、以下を含む:
a)(i)Yap1転写因子;
(ii)上記転写因子を活性化することができるタンパク質;
(iii)(i)及び(ii)の組合せ
からなる群から選択されるタンパク質を過剰発現させるように油性酵母細胞を改変するステップ;及び
b)非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較して増加した含油率をもたらすのに適した条件下で、油性酵母を増殖させるステップ。
当業者は、以下の事項を記載する標準的情報資源を認識するであろう:1)DNA分子、プラスミドなどの高分子の構築、操作及び単離についての具体的条件及び手順;2)組換えDNAフラグメント及び組換え発現構築物の作製;3)クローンのスクリーニング及び単離。上に引用したような、Maniatis、Silhavy、及びAusubelを参照されたい。
一般に、組換え発現構築物に組み込む配列の選択は、所望の発現産物、宿主細胞の性質、並びに形質転換細胞と非形質転換細胞を分離する提案された方法に応じて異なる。典型的には、ベクターは、少なくとも1つの発現カセット、選択マーカー、及び自律的複製又は染色体組込みを可能にする配列を含む。好適な発現カセットは、典型的に、プロモーター、選択された遺伝子(例えば、その発現によって、Yap1転写因子活性の増大が起こるポリペプチドをコードする遺伝子)のコード配列、及びターミネーター(すなわち、キメラ遺伝子)を含む。好ましくは、いずれの制御領域も、形質転換した宿主細胞に由来する。
本明細書に記載する本発明のポリペプチドをコードするORFの発現を指令することができる実質的にあらゆるプロモーター(すなわち、ネイティブ、合成、又はキメラ)が好適であるが、Y.リポリティカ由来の転写及び翻訳領域が特に有用である。発現は、誘導又は構成的方式で達成することができる。誘導発現は、目的の遺伝子(例えば、Yap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1)に機能的に連結された調節可能なプロモーターの活性を誘導することによって達成することができ、また、構成的発現は、目的の遺伝子に機能的に連結された構成性プロモーターの使用によって達成することができる。
ターミネーターは、プロモーターを取得した遺伝子の3’領域、又は異なる遺伝子に由来するものでよい。多数のターミネーターが周知であり、これらは、その由来する同じ属及び種、並びに異なる属及び種のいずれで使用する場合でも、多種の宿主において満足に機能する。ターミネーターは、通常、特定の特性のためにというより、便宜上選択される場合が多い。好ましくは、ターミネーターは、酵母遺伝子に由来する。また、当業者は、ターミネーターを設計及び合成するための入手可能な情報を利用できることから、ターミネーターは合成のものであってもよい。ターミネーターは、必要ではない場合もあるが、その存在は極めて好ましい。
限定する意図はないが、組換えY.リポリティカで使用するのに好ましいプロモーター及びターミネーターは、以下の文献に教示されているものである:米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書、米国特許出願公開第2010−0068789−A1号明細書、米国特許出願公開第2011−0059496−A1号明細書、米国仮特許出願第61/469,933号明細書(代理人整理番号:CL4736USPRV、2011年3月31日出願)、米国仮特許出願第61/470,539号明細書(代理人整理番号:CL5380USPRV、2011年4月1日出願)、米国仮特許出願第61/471,736号明細書(代理人整理番号:CL5381USPRV、2011年4月5日出願)、及び米国仮特許出願第61/472,742号明細書(代理人整理番号:CL5382USPRV、2011年4月7日出願)。尚、上記文献の各々の開示内容は、参照として本明細書に組み込むものとする。より具体的には、好ましいプロモーターとして、以下が挙げられる:GPD、GPDIN、GPM、GPM/FBAIN、FBA、FBAIN、FBAINm、GPAT、YAT1、EXP1、DGAT2、EL1、ALK2、及びSPS19。
高い発現率を達成するために、多くの専門化した発現ベクターが作製されている。このようなベクターは、転写、RNA安定性、翻訳、タンパク質安定性及び位置、並びに宿主細胞からの分泌を制御する特定の特性を調節することによって作製される。これらの特性として、以下のものが挙げられる:関連転写プロモーター及びターミネーター配列の性質;コピー及びクローン化遺伝子の数(ここで、単一の発現構築物に追加コピーをクローン化してもよいし、及び/又はプラスミドコピー数を増加するか、若しくはクローン化した遺伝子のゲノムへの多重組込みにより、追加コピーを宿主細胞に導入してもよい);遺伝子が、プラスミド由来か、又は宿主細胞ゲノムに組み込まれているか;宿主生物におけるタンパク質の翻訳及び正しい折りたたみの効率;宿主細胞内のクローン化遺伝子のmRNA及びタンパク質の固有安定性;並びにクローン化遺伝子内のコドン使用(その頻度が、宿主細胞の優先コドン使用の頻度に近似するように)。
油性酵母での発現に好適なDNAカセット(例えば、プロモーター、その発現によって、Yap1転写因子活性の増大が起こるポリペプチド[例えば、Yap1、Gpx3、Tsa1又はYbp1」をコードするORF及びターミネーターを含む、キメラ遺伝子を含む)をいったん取得したら、宿主細胞において自律的複製が可能なプラスミドベクターに導入するか、又はこのキメラ遺伝子を含むDNAフラグメントをゲノムに直接組み込む。発現カセットの組込みは、宿主ゲノム内でランダムに実施してもよいし、あるいは、特定の遺伝子座に組換えをターゲティングするのに十分なゲノムとの相同性の領域を含む構築物を用いて、ターゲティングしてもよい。構築物を内在性遺伝子座にターゲティングする場合には、転写及び翻訳調節領域の全部又は一部を内在性遺伝子座によって付与することもできる。
目的のキメラ遺伝子を含む構築物は、任意の標準的技術によって油性酵母に導入することができる。こうした技術には、形質転換(例えば、酢酸リチウム形質転換[Methods in Enzymology,194:186−187(1991)])、パーティクルガン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、又は目的の遺伝子を宿主細胞に導入する他の任意の方法が含まれる。Y.リポリティカに適用可能な、さらに詳細な教示としては、以下の文献がある:米国特許第4,880,741号明細書及び米国特許第5,071,764号明細書、並びにChen,D.C.et al.(Appl.Microbiol.Biotechnol.,48(2):232−235(1997))。好ましくは、宿主のゲノムへの線状DNAフラグメントの組込みは、Y.リポリティカ宿主細胞の形質転換において有利である。ゲノム内の複数の位置への組込みは、高レベルの遺伝子発現が所望されるとき、特に有用となりうる。好ましい遺伝子座としては、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に教示されているものがある。
用語「形質転換(された)」、「形質転換体」又は「組換え体」は、本明細書において置換え可能に用いられる。形質転換された宿主は、発現構築物の少なくとも1つのコピーを有するが、発現カセットがゲノムに組み込まれたか、増幅されたか、又は複数のコピー数を有する染色体外エレメントに存在するのかに応じて、2つ以上を有しうる。形質転換宿主細胞は、導入された構築物に含まれるマーカーについての選択によって同定することができる。あるいは、多くの形質転換技術は、多数のDNA分子を宿主細胞に導入するため、個別のマーカー構築物を所望の構築物と一緒に共形質転換することもできる。典型的には、形質転換宿主は、選択培地(抗生物質を含んでもよいし、又は、非形質転換宿主の増殖に必要な因子、例えば、栄養素又は成長因子が欠如していてもよい)上で増殖するそれらの能力について選択する。導入されるマーカー遺伝子は、抗生物質抵抗性を付与したり、又は必須成長因子若しくは酵素をコードしたりすることができるため、これらが形質転換宿主に発現されると、選択培地上で増殖が可能になる。形質転換宿主の選択はまた、発現されたマーカータンパク質を直接又は間接的のいずれかで検出することができる場合にも、行うことができる。さらに別の選択技術は、米国特許第7,238,482号明細書、米国特許第7,259,255号明細書、及び国際公開第2006/052870号パンフレットに記載されている。
油性酵母に組み込まれたDNAフラグメントの安定性は、個々の形質転換体、受容株及び用いたターゲティングプラットフォームに応じて変動する。従って、所望の発現レベル及びパターンを展示する株を取得するために、特定の組換え微生物宿主細胞の複数の形質転換体をスクリーニングしなければならない。DNAブロットのサザン分析(Southern,J.Mol.Biol.,98:503(1975))、mRNA発現のノーザン分析(Kroczek,J.Chromatogr.Biomed.Appl.,618(1−2):133−145(1993))、タンパク質発現のウエスタン分析、表現型分析又はGC分析が、好適なスクリーニング方法である。
本発明で用いるのに好適な宿主細胞は、上に定義したように、そのDCWの約25%を超える油を蓄積することができる油性酵母である。本明細書のある実施形態では、油性酵母宿主は、野生型株であり;別の実施形態では、油性酵母宿主は、ネイティブのYap1転写因子活性レベルに影響を及ぼさない発現構築物による形質転換に事前に供された形質転換株又は組換え株である。例えば、ある実施形態では、油性酵母は、少なくとも1つの目的の非ネイティブ産物を産生することができるように、事前に改変されており、目的の好適な非ネイティブ産物の例としては、例えば、多価不飽和脂肪酸、カロテノイド、アミノ酸、ビタミン、ステロール、フラボノイド、有機酸、ポリオール及びヒドロキシエステル、キノン由来の化合物並びにレスベラトロールが挙げられるが、これらに限定する意図はない。
油性酵母は、その微生物油内に「多価不飽和脂肪酸」(又は「PUFA」)を産生しうる(天然の能力又は遺伝子改変のいずれかにより)ことに留意されたい。PUFA、特にω−3及びω−6PUFAに関連する健康効果は、十分に立証されているが、これらの分子は、複数の二重結合を含み、その間に、特に反応性の水素を有するメチレン−CH−基が存在することから、細胞内で脂質過酸化を特に被りやすい。より具体的には、PUFAは、本明細書において、少なくとも18個の炭素原子と、2個以上の二重結合を有する脂肪酸を指す。用語「脂肪酸」は、約C12〜C22の様々な長さの長鎖脂肪酸(アルカノン酸)を指すが、より長い又はより短い鎖長の酸も周知である。主な鎖長は、C16〜C22である。脂肪酸の構造は、「X:Y」の単純な表記法によって表すが、ここで、Xは、特定の脂肪酸中の炭素[「C」]原子の総数であり、Yは二重結合の数である。「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」との違い、「一価不飽和脂肪酸」」と「多価不飽和脂肪酸」[「PUFA」]との違い、並びに「ω−6脂肪酸」[「n−6」]と「ω−3脂肪酸」[「n−3」]の違いについて、さらに詳細には、米国特許第7,238,482号明細書(参照として本明細書に組み込む)に記載されている。米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書、表3には、ω−3及びω−6PUFA並びにそれらの前駆体の化学名及び一般名、さらには一般に用いられている略称が記載されている。
しかし、PUFAのいくつかの例として、限定されないが、以下のものが挙げられる:リノール酸[「LA」、18:2 ω−6]、γリノール酸[「GLA」、18:3 ω−6]、エイコサジエン酸[「EDA」、20:2 ω−6]、ジホモγリノール酸[「GLA」、20:3 ω−6]、アラキドン酸[「ARA」、20:4 ω−6]、ドコサテトラエン酸[「DTRA」、22:4 ω−6]、ドコサペンタエン酸[「DPAn−6」、22:5 ω−6]、αリノール酸[「ALA」、18:3 ω−3]、ステアリドン酸[「STA」、18:4 ω−3]、エイコサトリエン酸[「ETA」、20:3 ω−3]、エイコサテトラエン酸[「ETrA」、20:4 ω−3]、エイコサペンタエン酸[「EPA」、20:5 ω−3]、ドコサペンタエン酸[「DPAn−3」、22:5 ω−3]及びドコサヘキサエン酸[「DHA」、22:6 ω−3]。
PUFA生産のためのY.リポリティカの株を作製することに多大な労力が投じられてきた。例えば、米国特許第7,238,482号明細書では、上記の酵母においてω−6及びω−3脂肪酸を生産する実現可能性が証明された。米国特許第7,932,077号明細書は、組換え体による総脂肪酸の28.1%EPAの生産を立証し;米国特許第7,588,931号明細書は、組換え体による総脂肪酸の14%ARAの生産を立証し;米国特許第7,550,286号明細書は、組換え体による総脂肪酸の5%のDHAの生産を立証し;また、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書は、EPA生産のための最適化組換え株を記載し、組換え体による総脂肪酸の55.6%のEPAの生産を立証している。米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書には、さらに最適化された組換えY.リポリティカ株が記載されており、この株は、TFAの50%以下のEPAを含み、しかも、リノール酸に対するEPAの比(TFAの重量%として測定)が少なくとも3.1である微生物油を産生する。形質転換体Y.リポリティカは、PUFA産生のためのデサチュラーゼ(すなわち、Δ−12デサチュラーゼ、Δ−6デサチュラーゼ、Δ−8デサチュラーゼ、Δ−5デサチュラーゼ、Δ−17デサチュラーゼ、Δ−15デサチュラーゼ、Δ−9デサチュラーゼ、Δ−4デサチュラーゼ、)及びエロンガーゼ(すなわち、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、C20/22エロンガーゼ及びΔ−9エロンガーゼ)遺伝子の様々な組合せを発現する。
表3に、上に引用した参照文献に記載されている特定のY.リポリティカ株のいくつか(ここで、前記株はデサチュラーゼとエロンガーゼの様々な組合せを有する)についての情報を記載する。これらは、本明細書に記載の本発明で好適な宿主細胞として用いることができる株の例であるが、特定の株及び産生された特定のPUFA(若しくはその量)は、本発明を何ら限定するものではないことは理解すべきである。
表3.ω−3/ω−6PUFAを産生するように改変された典型的アルカン資化酵母(Y.lipolytica)株の脂質プロフィール

表3注釈: 「用語「脂質プロフィール」及び「脂質組成物」は、置き換え可能であり、特定の脂質画分(例えば、全脂質又は油)中に含まれる個別の脂肪酸の量を指し、その量は、TFAの重量%として表される。混合物中に存在する個別の脂肪酸の総和は100でなければならない。
用語「総脂肪酸」(「TFA」)とは、所定のサンプル(例えば、バイオマス又は油であってよい)中での塩基エステル交換方法(当分野では公知の)によって、脂肪酸メチルエステル(「FAME」)に誘導体化することができる全ての細胞脂肪酸の総和を指す。従って、総脂肪酸は、中性脂質画分(ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール及びトリアシルグリセロール)由来の脂肪酸及び極性脂質画分由来の脂肪酸を含むが、遊離脂肪酸は含まない。全脂質中の1脂肪酸の濃度は、ここでは、TFAの重量%[「%TFA」]、例えば、TFA100ミリグラム当たりの所定の脂肪酸のミリグラムとして表される。本明細書に別途明示されていない限り、全脂質に対する所定の脂肪酸のパーセントについて述べるとき、これは、%TFAとして表される脂肪酸の濃度に相当する(例えば、全脂質の%EPAは、EPA%TFAに相当する)。
脂肪酸は、以下のものである:16:0(パルミチン酸塩)、16:1(パルミトレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(リノール酸)、18:3(ALAすなわち、αリノール酸)、GLA(γリノール酸)、20:2(EDAすなわち、エイコサジエン酸)、DGLA(ジホモ−γリノール酸)、ARA(アラキドン酸)、ETA(エイコサテトラエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)及びDHA(ドコサヘキサエン酸)。」
当業者には、少なくとも1種のPUFAを産生する油性酵母中の活性酸素種[「ROS」]を低減する手段が、特に望ましいことは明らかであろう。従って、本発明の一実施形態は、増加した含油率を有し、少なくとも1種のPUFAを産生するトランスジェニック油性酵母に関し、前記トランスジェニック油性酵母は、増大したYap1転写因子活性を含み、ここで、増加した含油率は、非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較したものである。Yap1転写因子活性自体の過剰発現による、又はYap1転写因子を活性化することができるタンパク質(例えば、Gpx3、Tsa1、Ybp1)の過剰発現によるYap1転写因子活性の増大は、さらに、乾燥細胞重量の質量パーセント[%DCW]として表される、細胞中の所定のPUFAの含油率増加ももたらしうる。
例えば、EPA生産性又はEPA力価[「EPA%DCW」]の測定値は、以下の式に従って決定する:(EPA%TFA)*(TFA%DCW)/100。主としてEPAを産生する、表3に記載した株のいずれにおいても、酵母中のYap1転写因子活性の増大をもたらす遺伝子操作によって、含油率[「TFA%DCW」]の増加及びEPA力価[EPA%DCW]の増加の両方が達成されると予想される。
好ましい実施形態では、少なくとも1種のPUFAを産生する本発明のトランスジェニック油性酵母は、非トランスジェニック油性酵母(すなわち、そのYap1転写因子活性が増大されていない)中のDCWの質量パーセントとしての所定のPUFAの含油率より、少なくとも10〜25%高い含油率の所定のPUFAを産生することができる。より好ましくは、所定のPUFAの増加は、少なくとも25〜45%であり、最も好ましくは、所定のPUFAの増加は、少なくとも45〜65%超である。従って、当業者であれば、DCWの質量パーセントとしての所定のPUFAの増加が、10%から100%以上の任意の整数のパーセンテージ(又はその分数)であってよく、すなわち、具体的には、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%でありうることを理解されよう。
形質転換宿主細胞は、キメラ遺伝子(例えば、その発現が、Yap1転写因子活性の増大をもたらすポリペプチド[例えば、Yap1、Gpx3、Tsa1、Ybp1]をコードする)の発現を最適化し、最大かつ最高の経済的収量の微生物油を生産する条件下で、増殖させることができる。一般に、最適化することができる培地条件としては、以下のものが挙げられる:炭素源の種類及び量、窒素源の種類及び量、炭素:窒素比、様々なミネラルイオンの量、酸素レベル、増殖温度、pH、バイオマス産生期の長さ、油蓄積期の長さ、細胞回収時期及び方法。油性酵母は、複合培地(例えば、酵母エキス−ペプトン−デキストロースブロス(YPD))又は増殖に必要な成分が欠如しているため、所望の発現カセットの選択を強制する規定の最少培地(例えば、Yeast Nitrogen Base(酵母窒素原礎培地)(DIFCO Laboratories,Detroit,MI)で増殖させる。
本明細書に記載の方法及び宿主細胞のための発酵培地は、好適な炭素源を含んでいなければならず、このようなものとして、米国特許第7,238,482号明細書及び米国特許出願公開第2011−0059204−A1号明細書に教示されているものがある。本発明で使用する炭素源が、多様な炭素含有供給源を含みうることが考慮されるが、好ましい炭素源は、糖、グリセロール及び/又は脂肪酸である。最も好ましいものは、10〜22個の炭素を含むグルコース、スクロース、転化スクロース、フルクトース及び/又は脂肪酸である。
窒素は、無機(例えば、(NHSO)又は有機(例えば、尿素、グルタミン酸、又は酵母エキス)供給源から供給してよい。スクロース及び窒素源に加えて、発酵培地は、好適な鉱物、塩、補因子、バッファー、ビタミン、並びに微生物の増殖及び微生物油産生に必要な酵素経路の促進に好適な、当業者には公知の他の成分も含む。特に、脂質及びPUFAの合成を促進する複数の金属イオン(例えば、Fe+2、Cu+2、Mn+2、Co+2、Zn+2、Mg+2)が注目されている(Nakahara,T.et al.,Ind.Appl.Single Cell Oils,D.J.Kyle and R.Colin,eds.pp61−97(1992))。
本発明において好ましい増殖培地は、一般の市販されている調製培地、例えば、Yeast Nitrogen Base(DIFCO Laboratories,Detroit,MI)である。その他の規定又は合成増殖培地を用いてもよく、特定の微生物の増殖に適した培地は、微生物学又は発酵科学の分野の当業者には周知であろう。発酵に好適なpHの範囲は、典型的に、約pH4.0〜pH8.0であり、初期増殖条件の範囲としてはpH5.5〜pH7.5が好ましい。発酵は、好気性又は嫌気性条件下で行ってよいが、微好気性条件が好ましい。
典型的には、代謝状態は、増殖と脂肪の合成/貯蔵の間で「均衡」していなければならないため、油性酵母細胞中の高レベルのPUFAの蓄積には、2段階発酵方法が必要である。従って、最も好ましくは、油性酵母細胞中のPUFAの生産には、2段階発酵方法を使用する。この方法は、増殖中の様々な好適な発酵方法設計(すなわち、バッチ、供給バッチ及び連続方式)及び研究と同様に、米国特許第7,238,482号明細書に記載されている。
米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の実施例10はまた、組換えYarrowia lipolytica(ヤロウィア・リポリティカ)Y4305(その最大生産量は、162時間にわたって、12.1EPA%DCW[すなわち、EPA%TFAとLA%TFAの比3.03で、55.6EPA%TFA])の2−L発酵に必要なパラメーターの詳細な説明も記載している。この開示内容は、種培養物を生成するための凍結培養物から接種材料を調製し、最初に、高細胞密度まで急速な増殖を促進する条件下で酵母を培養した後、脂質及びPFA蓄積を促進するように(窒素飢餓及びグルコースの連続的供給により)酵母を培養するための手段の説明を含む。温度(30〜32℃に制御)、pH(5〜7に制御)、溶解酸素濃度及びグルコース濃度などのプロセス変量は、一貫したプロセス実施及び最終PUFA油品質を保証するために、標準操作条件に従って、監視及び制御した。特に、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の実施例10のデータは、組換え微生物宿主細胞の油プロフィールが、発酵の実施自体、培地条件、プロセスパラメーター、スケールアップなど、さらには、培地のサンプリングを行う特定の時点に応じて変動することを証明するのに有用である。従って、上記文献に記載の特定の作製株は、様々な脂質含有率及び組成(すなわち、EPA%TFA、LA%TFA及びEPA:LA比に基づき)を有する微生物油を産生することができた。
これらの因子は、本明細書に記載のトランスジェニック油性酵母を培養する場合、いずれか特定の発酵実施中に酵母の完全な能力を発揮させるために、考慮すべきである。含油率を比較しようとする場合、トランスジェニック油性酵母及び非トランスジェニック油性酵母を増殖させて、類似した条件下でサンプリングすべきである。
本明細書のある態様では、一次産物は、油性酵母バイオマスである。そのまま、バイオマスからの微生物油の分離及び精製は必要ないこともある(すなわち、全細胞バイオマスが製品である)。
しかし、特定の最終使用及び/又は製品形態は、部分的精製バイオマス、精製油、及び/又はその精製脂質画分を得るために、バイオマスから微生物油の部分的及び/又は完全な分離/精製を必要とする場合もある。例えば、PUFAは、宿主微生物において、遊離脂肪酸として、又は、アシルグリセロール、リン脂質、硫脂質若しくは糖脂質のようなエステル化形態で存在する可能性があり、当分野では公知の様々な手段によって宿主細胞から抽出することができる。抽出技術、品質分析及び合格基準についての概説が、Z.Jacobs(Critical Reviews in Biotechnology 12(5/6):463−491(1992))にある。また、下流プロセシングについての簡単な説明は、A.Singh及びO.Ward(Adv.Appl.Microbiol.,45:271−312(1997))にも記載されている。
一般に、微生物バイオマスからの微生物脂質及び/又はPUFAの回収及び精製方法は、有機溶剤を用いた抽出(例えば、米国特許第6,797,303号明細書及び第5,648,564号明細書)、音波処理、超臨界流体抽出(例えば、二酸化炭素を用いて)、鹸化、並びにプレス、ビードビーターのような物理的手段、又はこれらの組合せを含みうる。さらに詳細については、米国特許第7,238,482号明細書の教示を参照されたい。
ω−3及び/又はω−6脂肪酸、特に、例えば、ALA、GLA、ARA、EPA、DPA及びDHAを含む多くの食品及び飼料製品がある。長鎖PUFAを含む微生物バイオマス、PUFAを含む一部精製された微生物バイオマス、PUFAを含む精製微生物油、及び/又は精製PUFAは、食品及び飼料製品において本配合物の健康効果を付与する役割を果たすと考えられる。より具体的には、ω−3及び/又はω−6脂肪酸を含む油は、様々な食品及び飼料製品での使用に適しており、こうした製品として、限定されないが、食料類似品、食肉製品、穀物製品、焼成食品、スナック食品、及び乳製品がある(米国特許出願公開第2006−0094092号明細書を参照)。また、飼料製品には、動物用途のものも含まれる。
本組成物を配合物に用いて、医療栄養、補助食品、乳児用調製粉乳及び医薬品を含む医療食に健康効果を付与することもできる。食品加工及び食品配合の分野の当業者は、どのようにして本発明の油の量及び組成物を食品又は飼料製品に添加することができるかを理解されよう。このような量は、本明細書において、「有効」量と呼び、これは、食品又は飼料製品、製品が補充しようとする食事、又は医療食若しくは医療栄養で矯正又は治療しようとする健康状態に応じて変動する。
本組成物を配合物に用いて、医療栄養、補助食品、及び医薬品を含む医療食に動物の健康効果を付与することもできる。
略称の意味は次の通りである:「sec」は、秒を意味し、「min」は、分を意味し、「h」は、時間を意味し、「d」は、日を意味し、「μL」は、マイクロリットルを意味し、「mL」は、ミリリットルを意味し、「L」は、リットルを意味し、「μM」は、マイクロモルを意味し、「mM」は、ミリモルを意味し、「M」は、モルを意味し、「mmol」は、ミリモルを意味し、「μmole」は、マイクロモルを意味し、「g」は、グラムを意味し、「μg」は、マイクログラムを意味し、「ng」は、ナノグラムを意味し、「U」は、単位を意味し、「bp」は、塩基対を意味し、「kB」は、キロベースを意味する。
発現カセットの名称
発現カセットの構造は、「X::Y::Z」の単純な表記系によって表し、Xは、プロモーターフラグメントを、Yは、遺伝子フラグメントを、またZは、ターミネーターフラグメントをそれぞれ示しており、これらはすべて、互いに機能的に連結されている。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換及び培養
Y.リポリティカ株ATCC#20362は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(Rockville,MD)から購入した。Y.リポリティカ株を、以下に示す配合に従う複数の培地において28〜30℃で通常通り増殖させた。
合成完全培地[「SC」]培地(毎リットル):硫酸アンモニウムを含み、アミノ酸を含まない6.7gのYeast Nitrogen base;20gのグルコース;ウラシルを含まない1.9g/Lの酵母合成ドロップアウト培地用添加物。
高グルコース培地[「HGM」](毎リットル):80グルコース、2.58gのKHPO及び5.36gのKHPO、pH7.5(調節の必要なし)。
合成デキストロース培地[「SD」]培地(毎リットル):硫酸アンモニウムを含み、アミノ酸を含まない6.7gのYeast Nitrogen base;20gのグルコース。
発酵培地[「FM」]培地(毎リットル):アミノ酸を含まない6.7g/LのYNB;6g/LのKHPO;2g/LのKHPO;1.5g/LのMgSO−七水和物;5g/Lの酵母エキス;2%炭素源(この場合、炭素源は、グルコース又はスクロースのいずれかである)。
Y.リポリティカの形質転換は、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に記載のように実施した。尚、この文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
ヤロィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の脂肪酸分析
脂肪酸[「FA」]分析のために、遠心分離により細胞を回収し、Bligh,E.G.及びDyer,W.J.(Can.J.Biochem.Physiol.,37:911−917(1959))に記載のように、脂質を抽出した。ナトリウムメトキシドを用いた脂質エキスのエステル交換により、脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製した(Roughan,G.,and Nishida I.,Arch Biochem Biophys.,276(1):38−46(1990))後、30−mX0.25mm(内径)HP−INNOWAX(Hewlett−Packard)カラムを取り付けたHewlett−Packard 6890 GCで分析した。オーブンの温度を170℃(25分保持)から、3.5℃/分で185℃にした。
直接塩基エステル交換のために、ヤロウィア(Yarrowia)細胞(0.5mL培養物)を回収し、蒸留水で1回洗浄した後、Speed−Vac中で真空下5〜10分乾燥させた。ナトリウムメトキシド(1%の100μl)と既知量のC15:0トリアシルグリセロール(C15:0TAG;カタログ番号T−145、Nu−check Prep,Elysian,MN)をサンプルに添加し、次に、サンプルを渦動させ、50℃で30分搖動した。3滴の1M NaClと400μlのヘキサンを添加した後、サンプルを渦動及びスピンさせた。上部の層を取り出して、GCにより分析した。
あるいは、Lipid Analysis,William W.Christie,2003に記載の塩基触媒エステル交換方法の改変を、発酵又はフラスコサンプルのいずれかからのブロスサンプルの常用的分析に用いた。具体的には、ブロスサンプルを室温の水で急速に解凍した後、計量(0.1mgまで)して、0.22μm Corning(登録商標)Costar(登録商標)Spin−X(登録商標)遠心分離管フィルター(カタログ番号8161)を備える、タールを塗った(tarred)2mL微量遠心分離管中に導入した。事前に決定したDCWに応じて、サンプル(75〜800μl)を用いた。Eppendorf5430遠心分離機を用いて、14,000rpmで5〜7分、又はブロスを除去するのに必要な時間だけ、サンプルを遠心分離した。フィルターを取り外し、液体を排出した後、約500μlの脱イオン水をフィルターに添加して、サンプルを洗浄した。遠心分離して水を除去した後、フィルターを再度取り外して、液体を排出した後、フィルターを再挿入した。次に、上記の管を遠心分離機に再挿入し、今回は上部を開放して、約3〜5分乾燥させた。次いで、フィルターを管上部で約半分に切断し、新しい2mL丸底Eppendorf管(カタログ番号2236335−2)に挿入した。
適切な道具でフィルターを管の底に押すが、その際、この道具は、切断したフィルターコンテナーの縁に触れるだけで、サンプル又はフィルター材料には触れないようにする。トルエン中の既知量のC15:0TAG(前記)を添加し、次に、500μlの新たに調製した1%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加した。サンプルペレットを適切な道具で十分に破砕し、管を密閉した後、50℃のヒートブロック(VWRカタログ番号12621−088)内に30分配置した。次に、これらの管を少なくとも5分冷却させた。続いて、400μlのヘキサン及び500μlの1M NaCl水溶液を添加した後、管を2x6秒渦動させて、1分間遠心分離した。約150μlの上部(有機)層を挿入によりGCバイアル中に導入し、GCによって分析した。
GC分析によって記録されたFAMEピークを、それらの保持時間により、既知の脂肪酸と比較して識別し、既知量の内部標準(C15:0TAG)とFAMEピーク面積を比較することによって定量した。従って、1μgのC15:0TAGは、0.9503μgの脂肪酸に等しいため、任意の脂肪酸FAMEの近似量(μg)[「μgFAME」]は、式:(指定の脂肪酸のFAMEピークの面積/標準FAMEピークの面積)*(標準C15:0TAGのμg)に従い計算し、また、任意の脂肪酸の量(μg)[「μgFA」]は、式:(指定の脂肪酸のFAMEピークの面積/標準FAMEピークの面積)*(標準C15:0TAGのμg)*0.9503に従い計算する。0.9503の換算係数は、大部分の脂肪酸(0.95〜0.96)について決定された値の概算であることに留意されたい。
脂質プロフィールは、TFAのwt%として個々の脂肪酸の量をまとめたものであるが、これは、個々のFAMEピークの面積を全FAMEピーク面積の和で割り、これに100をかけることにより決定した。
フラスコアッセイによるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の全脂質含有率及び組成の分析
Y.リポリティカの特定の株の全脂質含有率及び組成を分析するために、フラスコアッセイを以下のように実施した。具体的には、新たに線状に塗った細胞の1ループを3mLのFM培地に接種し、250rpm及び30℃で一晩増殖させた。OD600nmを測定し、細胞のアリコートを125mLフラスコ中の25mLのFM培地において最終OD600nmが0.3になるまで添加した。250rpm及び30℃の振盪インキュベーター中で2日経過した後、6mLの培養物を遠心分離により回収し、これを125mLフラスコ中の25mLHGMに再懸濁させた。250rpm及び30℃の振盪インキュベーター中で5日経過後、1mLのアリコートを脂肪酸分析(前記)に用い、また、10mLを乾燥細胞重量[「DCW」]決定のために乾燥させた。
DCW決定のために、10mLの培養物をBeckman GS−6R遠心分離機内のBeckman GH−3.8ローターにおいて4000rpmで5分の遠心分離により回収した。ペレットを25mLの水に再懸濁させた後、前述のように再回収した。洗浄したペレット20mLの水に再懸濁させた後、予め計量したアルミニウムパンに移した。細胞懸濁物を80℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。細胞の重量を決定した。
細胞の全脂質含有率[「TFA%DCW」]を計算して、TFAの質量パーセント[「%TFA」]として表す各脂肪酸の濃度及び乾燥細胞重量のパーセント[「EPA%DCW「]として表すEPA含有率を作表したデータと一緒に考察した。
実施例1
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YAP1に対して相同性を有するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)遺伝子の同定
「Yeast project Genolevures」(Center for Bioinformatics,LaBRI,Talence Cedex,France)(また、Dujon,B.et al.,Nature,430(6995):35−44(2004)も参照)の一般公開のY.リポリティカタンパク質データベースに対して、クエリー配列としてScYap1を用いて、BLAST検索を実施することにより、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)において、S.セレビシエ(S.cerevisiae)Yap1(GenBankアクセッション番号:NM_001182362;配列番号1)[「ScYap1」]に対するオーソログを同定した。
すべてのY.リポリティカタンパク質の中で、ScYap1に対して最高の相同性(期待値:1.8e−18)を有するタンパク質配列、YALI0F03388p(GenBankアクセッション番号:XP_504945;配列番号4)に「YlYap」という名称を与えた。YALI0F03388pは、「AP−1様転写因子に関連するuniprot|Q9P5L6アカパンカビ(Neurospora crassa)NCU03905.1にやや類似する」というアノテーションが付けられていた。
ScYap1と推定YlYapのアラインメントを図2に示す。いずれのタンパク質も塩基性ロイシンジッパー(bZIP)モチーフを有し、これは、7アミノ酸の間隔で規則正しく配置された複数のロイシン残基を特徴とするロイシンジッパーに隣接する塩基性アミノ酸が豊富なN末端塩基性領域に対応する。図に関しては、太字で下線が引かれたアルギニン及びリシンアミノ酸残基は、塩基性領域に対応し;星印は、ロイシンジッパー内のロイシン残基の各々を強調している。鉛直のボックスは、ScYap1のN末端Cysリッチドメイン(すなわち、配列番号2のCys303、Cys310及びCys315に対応する)及びC末端Cysリッチドメイン(すなわち、配列番号2のCys598、Cys620及びCys629に対応する)を強調している。これらの残基の5つは、YlYapに保存されている。Toone及びJones(Curr.Opin.Genet.Dev.,9:55−61(1999))に論じられているように、bZIPドメイン及びシステインリッチドメインは、AP−1ファミリータンパク質に特徴的である。
YALI0F03388p(配列番号4)をコードするタンパク質配列、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)[「NCBI」]BLASTP 2.2.26+(Basic Local Alignment Search Tool;Altschul,S.F.,et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997);Altschul,S.F.,et al.,FEBS J.,272:5101−5109(2005))を用いて、BLAST「nr」データベース(すべての非重複GenBank CDS翻訳、NCBI’s Reference Sequence ProjectからのRefSeqタンパク質配列、Brookhaven Protein Data Bank[「PDB」]タンパク質配列データベース、SWISS−PROTタンパク質配列データベース、Protein Information Resource[「PIR」]タンパク質配列データベース及びProtein Research Foundation[「PRF」]タンパク質配列データベースを含む)内に類似性を有する配列を同定するために、検索を実施した。
配列番号4が最高の類似性を有する配列をまとめたBLASTP比較の結果は、%同一性、%類似性及び期待値に従って記録することができる。「%同一性」は、2つのタンパク質の間で同一であるアミノ酸のパーセンテージとして定義される。「%類似性」は、2つのタンパク質の間で同一であるか又は保存されたアミノ酸のパーセンテージとして定義される。「期待値」は、マッチの統計的有意性を推定し、所定のスコアと共に、このサイズのデータベースの検索において全く偶然に期待されるマッチの数を具体的に記載する。
YALI0F03388p(配列番号4)に対する類似性を共有するものとして、多数のタンパク質が同定された。表4に、「2e−13」以上の期待値と、具体的にそのタンパク質を同定したという(すなわち、仮想タンパク質へのヒットは除外して)アノテーションを有するこれらのヒットの要約の一部を記載するが、これは本明細書の開示内容を限定するものとして考えるべきではない。表4に記載するタンパク質は、配列番号4と13〜87%のクエリーカバレッジ(query coverage)を共有する。
表4.YlYap1(配列番号4)に対して類似性を共有する遺伝子


BLASTP検索によれば、YALI0F03388p(配列番号4)は、灰色かび病菌(Botryotinia fuckeliana)(GenBankアクセッション番号:XP_001547321)由来の、仮想タンパク質BC1G_14094と、30%同一性及び47%類似性、並びに期待値1e−41で、最高の類似性を共有した。
既知の機能を有するタンパク質のうち、最高ヒットは、以下のものに対してであった:30%同一性及び46%類似性、並びに期待値2e−39を有するアルスロデルマ・オタエCBS 113480(GenBankアクセッション番号:XP_002847259.1)由来のChap1;31%同一性及び46%類似性、並びに期待値1e−37を有するカエトミウム・サーモフィルムのサーモフィルム変種(Chaetomium thermophilum var.thermophilum)DSM 1495由来の推定Ap−1様転写因子;並びに、48%同一性及び64%類似性、並びに期待値2e−27を有するトウモロコシごま葉病菌(Cochliobolus heterostrophus)(GenBankアクセッション番号:AAS64313)由来のChap1。Chap1は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)Yap1の機能性相同体として知られている(S.Lev et al.,Eukaryotic Cell,4(2):443−454(2005))。
前述の分析に基づき、配列番号3は、Y.リポリティカのYap1転写因子(「YlYap1」)(タンパク質配列は、配列番号4として示される)をコードすると仮定された。
YlYap1が、他のbZIP転写因子とこのように比較的低い%同一性及び類似性を共有するのは驚くことではない。例えば、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)CgAP1p(GenBankアクセッション番号:XP 446996)は、Yap1の機能性オーソログとして明確に特性決定されている(Chen,K.−H.et al.,Gene,386(1−2):63−72(2007))。共有される機能性にもかかわらず、Chenらは、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)CgAP1pが、S.セレビシエ(S.cerevisiae)Yap1(GenBankアクセッション番号:NP013707)に対してわずか37%のアミノ酸同一性、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)KlAP1p(GenBankアクセッション番号:P56095)に対して30%の同一性、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)CAP1p(GenBankアクセッション番号:AAD00802)に対して26%の同一性、また、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Pap1p(GenBankアクセッション番号:CA66170p)に対して19%の同一性を示したが、それでも尚、特に、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)CgAP1pとS.セレビシエ(S.cerevisiae)Yap1同士の同一性は、bZipドメイン(73%同一性)、N末端システインリッチドメイン(75%同一性)及びC末端システインリッチドメイン(85%同一性)において、特に高いことを報告している。
従って、上に記載した配列分析にもかかわらず、YlYap1が、ScYap1と相同的な様式で機能することを確認するために、さらなる機能性分析が必要であった。
実施例2
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)YAP1ノックアウト株Y4184U(yap1Δ)における過酸化水素感受性の増大
この実施例では、ヤロウィア・リポリティカのEPA産生作製株、Y4184U(実施例7、後述)由来の染色体YAP1遺伝子の発現を下方制御するための、構築物pYRH60(図3A;配列番号5)の使用を説明する。YAP1ノックアウト構築物フラグメントによるY.リポリティカ株の形質転換により、Y4184U(yap1Δ)を得た。YAP1ノックアウトが、酸化ストレス感受性並びに蓄積脂質レベル及びEPA産生に及ぼす影響を決定し、比較した。具体的には、YAP1のノックアウトは、ネイティブYap1がノックアウトされていない細胞と比較して、Hに対する過敏性を引き起こした。
株Y4184U(yap1Δ)の作製
プラスミドpYRH60は、プラスミドpYPS161に由来し、これは、米国特許出願公開第2010−0062502号明細書(その中の実施例2、図5A、配列番号40)に記載されており、以下の構成要素を含んだ:
表5.プラスミドpYPS161(配列番号6)の説明
Y.リポリティカYAP1遺伝子(「YIAP1」;配列番号3)の940bp5’プロモーター領域(配列番号7)で、pYPS161(配列番号6)のAscI/BsiWIフラグメントを置換し、YIYAP1遺伝子の1164bp3’ターミネーター領域(配列番号32)で、pYPS161のPacl/SphIフラグメントを置換することにより、pYRH60(配列番号5;図3A)を作製した。
Y.リポリティカ株Y4184Uを、YAP1ノックアウト構築物pYRH60(配列番号5)の精製4.7kB AscI/SphIフラグメントで形質転換した(一般的方法)。
yap1欠失を有する細胞をスクリーニングするため、対照として用いるヤロウィア(Yarrowia)翻訳伸長因子遺伝子TEF1(GenBankアクセッション番号:AF054510)と共に、YIYap1について定量的リアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRプライマー、並びにYAP1遺伝子及び対照TEF1遺伝子をターゲティングするTaqMan(登録商標)プローブは、Primer Expressソフトウエアバージョン2.0(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて設計した。具体的には、リアルタイムPCRプライマーYl−EF−1214F(配列番号8)、Yl−EF−1270R(配列番号9)、YAP1−346F(配列番号10)及びYAP1−409R (配列番号11)、さらにはYAP1−366T(すなわち、5’6−FAM(商標)−CGGGCTGCCCAAAGGGCC−TAMRA(商標)(ヌクレオチド配列は、配列番号13として示される)を設計した。TaqManプローブYL−EF−MGB−1235T(すなわち、5’6−FAM(商標)−CCTTCACTGAGTACCC−TAMRA(商標)(このヌクレオチド配列は、配列番号12として示される)は、Applied Biosystemsから取得した。TaqMan蛍光プローブの5’末端には、6−FAM(商標)蛍光レポーター色素が結合しているのに対し、3’末端は、TAMRA(商標)クエンチャーを含む。PCRプライマー及びYAP1プローブは、Sigma−Genosys(Woodlands,TX)から取得した。
50μlの水に1コロニーを懸濁させることにより、ノックアウト候補DNAを作製した。TEF1及びYAP1の反応は、各サンプルについて、同じリアルタイムPCRウェル中で、3回繰り返して実施した。リアルタイムPCR反応は、1反応当たり総量20μlについて、10pモルのフォワード及びリバースプライマー(すなわち、Yl−EF−1214F、Yl−EF−1270R、YAP1−346F及びYAP1−409R、前述)の各々、並びに2.5pモルのTaqMan(登録商標)プローブ(すなわち、YL−EF−MGB−1235T及びYAP1−336T、前掲)、10μlのTaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix−−No AmpEras(登録商標)ウラシル−N−グリコシラーゼ(UNG)(カタログ番号:PN4326614、Applied Biosystems)、1μlのコロニー懸濁液及び8.5μlのRNase/DNase遊離水を含んだ。反応は、ABI PRISM(登録商標)7900 Sequence Detection Systemを用いて、以下の条件下で実施した:95℃で10分の初期変性に続き、95℃で15秒の変性を40サイクル後、60℃で1分のアニーリング。
6−FAM(商標)蛍光をモニターすることにより、各サイクル中、自動的にリアルタイムデータを収集した。ABI PRISM(登録商標)7900 Sequence Detection System指示マニュアル(ABI User Bulletin#2「Relative Quantitation of Gene Expression」)に従い、データ基準化のために、TEF1遺伝子閾値サイクル(C)値を用いて、データ分析を実施した。YAP1遺伝子についての検出可能なシグナルがなく、かつTEF1についてのC値≦30を有するノックアウトクローンを同定した。
前述した方法により、yap1ノックアウトとしてスクリーニングされたコロニーの1つを同定した。Y4184UのY.リポリティカyap1Δ変異体をRHY240と名付けた。
ノックアウト株Y4184U(yap1Δ)を用いたH感受性アッセイ
S.セレビシエ(S.cerevisiae)において、Yap1が欠失した株は、Hによる障害に対して過敏性であった。この表現型は、酸化ストレス防御遺伝子、例えば、TRR1(細胞質チオレドキシンレダクターゼ)、TRX2(チオレドキシン)、GLR1(グルタチオンレダクターゼ)、及びGSH1(γ−グルタミルシステインシンテターゼ)などの誘導を制御する上でのYap1の役割に関連している。酸化ストレス調節因子としての推定YlYap1の機能を試験するために、Y4184U(yap1Δ)をH感受性アッセイに付した。
Y4184U(yap1Δ)及びY4184(対照)細胞をSC培地での指数的成長相(OD600:約0.5)まで増殖させてから、新鮮なSC培地でOD600:約0.01まで希釈した。希釈した培養物のアリコート(100μl)を新鮮なHと一緒に、最終濃度0〜50mMで、30℃で1時間インキュベートし、各サンプルからの7μlをYPDプレートに点在させた。細胞をYPDプレート上で、30℃にて2日間さらに増殖させた。
Y4184U(yap1Δ)細胞は、対照株Y4184より、はるかに高いHに対する感受性を示した(図4A)。この結果は、YALI0F03388pに対応するYlYap1が、Y.リポリティカにおいて酸化ストレス防御に重要であり、ScYap1の機能性相同体であるという仮説を支持するものである。
実施例3
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YAP1ノックアウト株BY4743(yap1Δ)におけるヤロウィア・リポリティカYAP1の過剰発現
この実施例では、S.セレビシエ(S.cerevisiae)yap1Δ株において、推定YlYap1(配列番号4)を過剰発現させて、酸化ストレス感受性への影響を評価するための、動原体プラスミドpYRH61(図3B;配列番号14)の使用を説明する。具体的には、YlYAP1の過剰発現は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)yap1Δ株において、Hに対する過敏性の機能相補をもたらした。
S.セレビシエ(S.cerevisiae)過剰発現プラスミドpYRH61の構築
プラスミドpYRH61は、プラスミドpRS316(Sikorski and Hieter,Genetics,122:19−27(1989))、すなわち、選択マーカーとしてURA3を含む動原体プラスミドに由来する。pYRH61は、以下の成分を含んでいた:
表6.プラスミドpYRH61(配列番号14)の説明
具体的には、プライマーYl.Yap1−F−Spel(配列番号15)及びYap1−R(配列番号16)を用いて、Y.リポリティカゲノムからのPCRにより、YlYAP1遺伝子の1.6kBフラグメントを増幅した。反応混合物は、1μlのゲノムDNA、各1μlのプライマー(20μMストックから)、2μlの水、及び45μlのAccuPrime Pfx SuperMix(Invitrogen)を含んだ。増幅を以下のように実施した:95℃で5分の初期変性に続いて、95℃で60秒の変性を35サイクル、55℃で60秒のアニーリング後、68℃で180秒の伸長。72℃で7分の最終伸長を実施した後、4℃で反応を停止した。PCR反応から、1.6kbのDNAフラグメントが得られた。
増幅した遺伝子をSpeI/NotIで消化してから、S.セレビシエ(S.cerevisiae)FBA1遺伝子[「ScFBA1」]の601bpの5’プロモーター領域(配列番号17)及びScFBA1の1022bpの3’ターミネーター領域(配列番号18)と一緒に、pRS316(配列番号19)にクローン化することにより、pYRH61(配列番号14;図3B)を作製した。従って、pYRH61は、キメラScFBA1::YlYAP1::ScFBA1遺伝子を含んだ。
pYRH61を発現するS.セレビシエ(S.cerevisiae)株を用いたH感受性アッセイ
酸化ストレス感受性にYlYap1が及ぼす影響を評価するために、S.セレビシエ(S.cerevisiae)株BY4743(MATa/αhis3Δ1/his3Δ1 leu2Δ0/leu2Δ0 LYS2/lys2Δ0 met15Δ0/MET15 ura3Δ0/ura3Δ0)及びその同質遺伝子yap1Δ株BY4743(yap1Δ)(Invitrogen,Carlsbad,CAから取得)をpRS316(対照ベクター)又はpYRH61で形質転換した。
細胞を、ウラシルが欠如したSC培地において指数的成長相(OD600:約0.5)まで増殖させてから、新鮮なSC培地でOD600:0.01まで希釈した。希釈した培養物のアリコート(100μl)を新鮮なHと一緒に、最終濃度0〜50mMで、30℃で1時間インキュベートし、各サンプルからの7μlをYPDプレートに点在させた。点在した細胞を、30℃にて2日間、YPDプレート上でさらに増殖させた。
図4Bは、H感受性アッセイの結果を示す。具体的には、上部2列は、BY4743形質転換体(すなわち、対照ベクター又はpYRH61のいずれかを含む)であり、下部2列は、BY4743(yap1Δ)形質転換体(すなわち、対照ベクター又はpYRH61のいずれかを含む)である。
図4Bに示すように、対照プラスミドpRS316で形質転換したBY4743yap1Δ株は、対照又はpYRH61のいずれかを含む同質遺伝子BY4743野生型より、Hストレスに対してはるかに高い感受性を示した。YlYap1をBY4743yap1Δ株に過剰発現させると、細胞は、対照プラスミドを含むBY4743yap1Δ株より、酸化ストレスに対してはるかに抵抗性が高くなったが、これは、YlYap1(配列番号4)が、酸化ストレスに対する抵抗性を付与したことを示している。
本実施例の結果は、YALI0F03388pに対応するYlYap1が、ScYap1の機能性相同体であり、酸化ストレス防御に関連するという仮説を支持するものである。
実施例4
Y.リポリティカ株Y4184及びY9502におけるヤロウィア・リポリティカYAP1の過剰発現
この実施例では、過剰発現構築物pYRH43(図5A;配列番号20)の合成並びにY.リポリティカ株Y4184U(実施例7)及びY9502U(実施例8)へのその形質転換を説明する。蓄積脂質レベルにYlYAP1過剰発現が及ぼす影響を決定及び比較した。具体的には、YlYAP1過剰発現は、ネイティブYap1レベルを操作していない細胞と比較して、全脂質(総乾燥細胞重量のパーセント[「TFA%DCW」]として表す総脂肪酸として測定した)の増大をもたらした。
Y.リポリティカ過剰発現プラスミドpYRH43の構築
プラスミドpYRH43は、プラスミドpZuFmEaD5s(米国特許第7,943,365号明細書の実施例6に記載されており、この文献は、参照として本明細書に組み込む)に由来する。プラスミドpZuFmEaD5sは、FBAINm::EaD5S::PEX20遺伝子を含み、ここで、(i)FBAINmは、フルクトース−二リン酸アルドラーゼ酵素をコードするfba1遺伝子のY.リポリティカ上流のプロモータであり(E.C.4.1.2.13)(米国特許第7,202,356号明細書);(ii)EaD5Sは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)に由来し、ヤロウィア(Yarrowia)での発現のためにコドン最適化された合成Δ−5デサチュラーゼであり、NcoI/NotI制限酵素部位によってフランキングされている;(iii)PEX20は、ヤロウィア(Yarrowia)PEX20遺伝子(GenBankアクセッション番号:AF054613)由来のPEX20ターミネーター配列である。
プライマーYap1−F(配列番号21)及びYap1−R(配列番号16)を用いて、Y.リポリティカゲノムからのPCRにより、YlYAP1遺伝子の1.6kBフラグメントを増幅した。反応混合物は、1μlのゲノムDNA、各1μlのプライマー(20μMストックから)、2μlの水、及び45μlのAccuPrime Pfx Supermix(Invitrogen)を含んだ。増幅を以下のように実施した:95℃で5分の初期変性に続いて、95℃で1秒の変性を35サイクル、55℃で1秒のアニーリング後、68℃で3秒の伸長。72℃で7分の最終伸長を実施した後、4℃で反応を停止した。PCR反応から、1.6kbのDNAフラグメントが得られた。
増幅した遺伝子をPciI/NotIで消化してから、これを用いて、pZuFmEaD5sのNcoI/NotIフラグメントを置換することにより、pYRH43を作製した。従って、pYRH43は、キメラFBAINm::YlYAP1::PEX20遺伝子を含んだ。
定量的リアルタイムPCRによる形質転換株Y4184U+YAP1及びY9502U+Yap1の同定
プラスミドpYRH43をBsiWI/PacIで切断し、4.4kBフラグメントを単離して、これをY.リポリティカ株Y4184U(実施例7)及びY9502U(実施例8)への形質転換(General Methods)のために用い、これによって、株Y4184U+YAP1及びY9502U+Yap1を作製した。
YlYAP1の過剰発現は、実施例2に記載したものと同様に、対照としてヤロウィア(Yarrowia)TEF1遺伝子を用いて、定量的リアルタイムRT−PCRを実施することにより確認した。
ゲノムDNAの希釈シリーズと、以下に詳述するPCR条件を用いたリアルタイム定量のために、プライマーを定量した。設定した各プライマー及びプローブについて得られたCT値対log ng DNAを用いて線形回帰分析を実施したところ、効率が、90〜110%内にあることを確認した。
株Y4184U+YAP1及びY9502U+Yap1からのcDNAは、Qiagen RNeasy(商標)キット(Valencia,CA)を用いて、まずRNAを単離することにより作製した。次に、DNase(カタログ番号:PN79254,Qiagen)を用いて室温で15分にわたり、2μgのRNAを処理することによって残留ゲノムDNAを除去した後、75℃で5分不活性化した。cDNAは、Applied Biosystems(カタログ番号:PN 4368813)からのHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いて、製造業者の推奨プロトコルに従い、1μgの処理済RNAから作製した。
YlTEF1及びYlYAP1のリアルタイムPCR反応は、各サンプルについて、個別に3回繰り返して実施した。リアルタイムPCR反応は、1反応当たり総量20μlについて、各0.2μlのフォワード及びリバースプライマー(100μM)(すなわち、ef−324F[配列番号22]、ef−392R[配列番号23]、YAP1−346F[配列番号10]及びYAP1−409R[配列番号11])、0.05μlの各TaqMan(登録商標)プローブ(100μM)(すなわち、ef−345T[すなわち、5’6−FAM(商標)−TGCTGGTGGTGTTGGTGAGTT−TAMRA(商標);ここで、このヌクレオチド配列は、配列番号24として示される]及びYAP1−336T[すなわち、5’6−FAM(商標)−CGGGCTGCCCAAAGGGCC−TAMRA(商標);ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号13として示される])、10μlのTaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix−−No AmpEras(登録商標)ウラシル−N−グリコシラーゼ(UNG)(カタログ番号:PN4326614、Applied Biosystems)、1μlの希釈cDNA(1:10)、並びに8.55μlのRNase/DNase遊離水を含んだ。反応は、ABI PRISM7900 Sequence Detection Systemを用いて、以下の条件下で実施した:95℃で10分の初期変性に続き、95℃で15秒の変性を40サイクル後、60℃で1分のアニーリング。各サンプルの負の逆転写RNA対照をTEF1プライマーセットと一緒に泳動させて、ゲノムDNAの非存在を確認した。リアルタイムデータを実施例2に記載のように収集した。
この分析に基づき、Y4184U+Yap1株が、Y4184U(Ura+)対照株のそれと比較して、約2.9倍高いYlYAP1遺伝子の発現レベルを示すことが結論付けられ、プラスミドpYRH43の機能性が確認された。
形質転換株Y4184U+YAP1中の脂質含有率及び組成
Y.リポリティカ株Y4184U(Ura+)(対照)及び株Y4184U+Yap1を同等の油性条件下で増殖させた。より具体的には、油性条件は、まず、25mLのSD培地(開始OD600:約0.3)において、30℃で48時間好気的に培養物を増殖させた後、遠心分離により細胞を回収することによって達成した。次いで、ペレットを25mLのHGMに再懸濁させて、250rpm及び30℃のシェーカーインキュベーター中で5日間インキュベートした。
Y.リポリティカY4184U(Ura+)対照及びY4184U+Yap1株について、細胞のDCW、全脂質含有率[「TFA%DCW」]、TFAの質量パーセント[「%TFA」]として表される各脂肪酸の濃度及びEPA生産性(すなわち、乾燥細胞重量のそのパーセント[「EPA%DCW」]として表されるEPA含有率)を以下の表7に示すが、平均値は灰色で強調し、「Ave」として示した。脂肪酸の略称は以下の通りである:ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、及びエイコサペンタン酸(「EPA」、20:5)。
表7.Y.リポリティカ株Y4184U(Ura+)及び株Y4184U+Yap1中の脂質含有率及び組成
Y4184Uにおける、遺伝子座YALI0F03388pに対応するYlYAP1(配列番号4)の過剰発現によって、株Y4184U(Ura+)と比較して、脂質含有率[「TFA%DCW」]が約12%増加し、平均EPA力価[「EPA%DCW」]が約15%増加した。
形質転換株Y9502U+YAP1中の脂質含有率及び組成
Y.リポリティカ株Y9502(対照)及び株Y9502U+Yap1(3つの単離菌)を前述した同等の油性条件下で、2回繰り返して増殖させた。表8に、DCW、TFA%DCW、%TFAとして表す各脂肪酸の濃度、及びEPA%DCWを表7と同じ形式でまとめる。
表8.Y.リポリティカ株Y9502及び株Y9502U+Yap1中の脂質含有率及び組成
Y9502Uにおける、遺伝子座YALI0F03388pに対応するYlYAP1(配列番号4)の過剰発現によって、株Y9502と比較して、脂質含有率[「TFA%DCW」]が約16%増加し、平均EPA力価[「EPA%DCW」]が約15%増加した。
従って、ヤロウィア・リポリティカのPUFA産生株におけるYlYAP1の過剰発現は、酸化ストレスに対する抵抗性の増大をもたらしたようである。酸化ストレスに対する抵抗性増大の1つの有益な成果は、脂質過酸化からの保護の強化であり、これによって、脂質及びPUFA含有率が増加した。
実施例5
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)GPX3に対して相同性を有するヤロウィア・リポリティカ遺伝子の同定
「Yeast project Genolevures」(Center for Bioinformatics,LaBRI,Talence Cedex,France)(また、Dujon,B.et al.,Nature,430(6995):35−44(2004)も参照)の一般公開のY.リポリティカタンパク質データベースに対して、クエリー配列としてScGpx3を用いて、BLAST検索を実施することにより、ヤロウィア・リポリティカにおいて、S.セレビシエ(S.cerevisiae)Gpx3(GenBank(登録商標)アクセッション番号:NM_001179559;配列番号26)[「ScGpx3」]に対するオーソログを同定した。
Y.リポリティカタンパク質の中で、ScGpx3に対して最高の相同性(期待値:4e−68)を有するタンパク質配列、YALI0E02310p(GenBankアクセッション番号:XP_503454;配列番号28)に「YlGpx3」という名称を与えた。YALI0E02310pは、GenBankで「細胞内ヒドロペルオキシドレベルを感知して、レドックスシグナルをYap1p転写因子に伝達するヒドロペルオキシド受容体として機能する、uniprot|P40581サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YIR037w HYR1(YKL026Cのオーソログ)チオールペルオキシダーゼに高度に類似する」というアノテーションが付けられていた。
ScGpx3と推定YlGpx3のアラインメントを図6に示す。鉛直のボックスは、分子間及び分子内相互作用(Delaunay,A.,et al.,Cell,111:471−481(2002))に重要な、ScGpx3のCys36及びCys82を強調している。これらの残基は、YlGpx3に保存されている。
実施例1に記載した方法に従い、BLAST「nr」データベース内に類似性を有する配列を同定するために、YALI0E02310p(配列番号28)をコードするタンパク質配列を用いて、NCBI BLASTP 2.2.26+検索を実施した。
YALI0E02310p(配列番号28)に対する有意な類似性を共有するとして、多数のタンパク質が同定された。表9に、「8e−72」以上の期待値と、具体的にそのタンパク質を同定したという(すなわち、仮想タンパク質及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のタンパク質へのヒットは除外される)アノテーションを有するこれらのヒットの概要の一部を記載するが、これは本明細書の開示内容を限定するものとして考えるべきではない。表9に記載するタンパク質は、配列番号28と93〜95%のクエリーカバレッジ(query coverage)を共有した。
表9.YlGpx3(配列番号28)に対して類似性を共有する遺伝子

BLASTP検索に基づき、YALI0E02310p(配列番号28)は、アッシビヤ・ゴシッピー(Ashbya gossypii)(GenBank(登録商標)アクセッション番号:NP_985509)由来の仮想タンパク質と、73%同一性及び86%類似性、並びに期待値1e−85で、最高の類似性を共有した。既知の機能を有するタンパク質のうち、最高のヒットは、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(GenBank(登録商標)アクセッション番号:XP_002491803、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)と改名)由来のチオールペルオキシダーゼ(同一性71%及び類似性89%、並びに期待値8e−85)であり、次に、ScGPX3(同一性72%及び類似性86%、並びに期待値7e−84)であった。
前述の分析に基づき、配列番号27は、Y.リポリティカのGpx3チオールペルオキシダーゼ(「YlGpx3」)(タンパク質配列は、配列番号28として示される)をコードすると仮定された。
実施例6
Y.リポリティカ株Y4184におけるヤロウィア・リポリティカGPX3の過剰発現
この実施例では、過剰発現構築物pYRH65(図5B;配列番号29)の合成並びにY.リポリティカ株Y4184U(実施例7)へのその形質転換を説明する。YlGPX3の過剰発現が蓄積脂質レベルに及ぼす影響を決定及び比較した。具体的には、YlGPX3の過剰発現は、ネイティブGpx3レベルを操作していない細胞と比較して、全脂質(総乾燥細胞重量のパーセント[「TFA%DCW」]として表される総脂肪酸として測定される)の増大をもたらした。
Y.リポリティカ過剰発現プラスミドpYRH65の構築
プライマーGPX3−F(配列番号30)及びGPX3−R(配列番号31)を用いて、ヤロウィア・リポリティカATCC#20362のゲノムDNAから、YALI0E02310gをコードする510bpフラグメントを増幅した。反応混合物は、1μlのゲノムDNA、各1μlのプライマー(20μMストックから)、2μlの水、及び45μlのAccuPrime Pfx SuperMix(Invitrogen)を含んだ。増幅は、以下のように実施した:95℃で5分の初期変性に続いて、95℃で60秒の変性を35サイクル、55℃で60秒のアニーリング後、68℃で60秒の伸長。72℃で7分の最終伸長サイクルを実施した後、4℃で反応を停止した。PCR反応から、0.51kbのDNAフラグメントが得られた。
次に、増幅した遺伝子をNcoI/NotIで切断してから、これを用いて、以下の成分を含むpYRH65(図5B;配列番号29)を作製した:
表10.プラスミドpYRH65の説明
形質転換株Y4184U+Gpx3における脂質含有率及び組成
プラスミドpYRH65をBsiWI/PacIで切断して、3.3kBフラグメントを単離し、Y.リポリティカ株Y4184Uの形質転換に用い、これにより、株Y4184U+Gpx3を作製した。
Y.リポリティカ株Y4184U(Ura+)(対照)及び株Y4184U+Gpx3を同等の油性条件下で(実施例4に記載のように)増殖させた。表11に、DCW、TFA%DCW、%TFAとして表す各脂肪酸の濃度、及びEPA%DCWを、表7で用いたものと類似の形式でまとめる。
表11.Y.リポリティカ株Y4184U(Ura+)及び株Y4184U+Gpx3中の脂質含有率及び組成
Y4184Uにおける、遺伝子座YALI0E02310gに一致するYlGPX3(配列番号27)の過剰発現によって、株Y4184U(Ura+)と比較して、脂質含有率[「TFA%DCW」]が約47%増加し、平均EPA力価[「EPA%DCW」]が約40%増加した。
従って、ヤロウィア・リポリティカのPUFA産生株におけるYlGpx3の過剰発現は、酸化ストレスに対する耐性の増大をもたらしたようである。酸化ストレスに対する耐性増大の1つの有益な成果は、脂質過酸化からの保護の強化であり、これによって、脂質及びPUFA含有率が増加した。
実施例7
高EPA産生のためのヤロウィア・リポリティカ株Y4184及びY4184Uの作製
実施例4及び6での宿主として、Y.リポリティカ株Y4184Uを用いた。株Y4184Uは、Y.リポリティカATCC#20362に由来するものであり、Δ−9エロンガーゼ/Δ−8デサチュラーゼ経路の発現による全脂質に対して、高いEPAを産生することができる。この株は、Ura表現型を有し、その構築については、国際公開第2008/073367号パンフレット(本明細書に参照として組み込む)の実施例7に記載されている。
株Y4184Uの作製には、以下の株を必要とした:Y2224、Y4001、Y4001U、Y4036、Y4036U、Y4069、Y4084、Y4084U1、Y4127(2007年11月29日にアクセッション番号:ATCC PTA−8802で、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託)、Y4127U2、Y4158、Y4158U1、Y4184。
野生型ヤロウィア・リポリティカATCC#20362に関する株Y4184(全脂質の30.7%EPAを産生)の最終遺伝子型は、以下のものであった:不明1−、不明2−、不明4−、不明5−、不明6−、不明7−、YAT1::ME3S::Pex16、EXP1::ME3S::Pex20(2コピー)、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBA::EgD9eS::Pex20、YAT1::EgD9eS::Lip2、GPD::EgD9eS::Lip2、GPDIN::EgD8M::Lip1、YAT1::EgD8M::Aco、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1(2コピー)、GPM/FBAIN::FmD12S::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、YAT1::FmD12::Oct、GPD::FmD12::Pex20、EXP1::EgD5S::Pex20、YAT1::EgD5S::Aco,YAT1::Rd5S::Oct、FBAIN::EgD5::Aco、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT1::Aco、GPD::YlCPT1::Aco。
上に挙げた略称は以下の通りである:ME3Sは、モルチエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)由来の、コドン最適化C16/18エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,470,532号明細書]であり、;EgD9eは、ユーグレナ・グラリシス(Euglena gracilis)Δ−9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,645,604号明細書]であり;EgD9eSは、ユーグレナ・グラリシス(Euglena gracilis)由来の、コドン最適化Δ−9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,645,604号明細書]であり;EgD8Mは、ユーグレナ・グラリシス(Euglena gracilis)[米国特許第7,256,033号明細書]由来の、合成変異Δ−8デサチュラーゼ[米国特許第7,709,239号明細書]であり;FmD12は、フザリウム・モニフォルメ(Fusarium moniliforme)Δ−12デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,504,259号明細書]であり;FmD12Sは、フザリウム・モニフォルメ(Fusarium moniliforme)由来の、コドン最適化Δ−12デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,504,259号明細書]であり;EgD5は、ユーグレナ・グラリシス(Euglena gracilis)Δ−5デサチュラーゼ[米国特許第7,678,560号明細書]であり;EgD5Sは、ユーグレナ・グラリシス(Euglena gracilis)由来の、コドン最適化Δ−5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,678,560号明細書]であり;RD5Sは、ペリジウム種[Peridinium sp.]CCMP626由来の、コドン最適化Δ−5デサチュラーゼ[米国特許第7,695,950号明細書]であり;PaD17は、ピシウム・アファニデルマータム(Pythium aphanidermatum)Δ−17デサチュラーゼ[米国特許第7,556,949号明細書]であり;PaD17Sは、ピシウム・アファニデルマータム(Pythium aphanidermatum)由来の、コドン最適化Δ−17デサチュラーゼ[米国特許第7,556,949号明細書]であり;並びにYlCPT1は、ヤロウィア・リポリティカ ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ遺伝子[米国特許第7,932,077号明細書]である。
最後に、株Y4184のUra3遺伝子を破壊するために、構築物pZKUE3S(国際公開第2008/073367号パンフレット、その中の配列番号78)を用いて、EXP1::ME3S::Pex20キメラ遺伝子を株Y4184中のUra3遺伝子に組み込むことにより、それぞれ、株Y4184U1(全脂質の11.2%EPA)、株Y4184U2(全脂質の10.6%EPA)及び株Y4184U4(全脂質の15.5%EPA)が得られた(集合的に、Y4184U)。
国際公開第2008/073367号パンフレットは、増殖条件の違いによる、Y4184(30.7%)とY4184U(平均12.4%)において定量されたEPA%TFAの相違を記載している。
実施例8
高EPA産生のためのヤロウィア・リポリティカ株Y9502及びY9502Uの作製
実施例4で、宿主として、Y.リポリティカ株Y9502Uを用いた。株Y9502Uは、Y.リポリティカATCC#20362に由来するものであり、Δ−9エロンガーゼ/Δ−8デサチュラーゼ経路の発現による全脂質と比較して高いEPAを産生することができる。この株は、Ura表現型を有する。
ヤロウィア・リポリティカ株Y9502の遺伝子型
株Y9502の作製は、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載されている。Y.リポリティカATCC#20362に由来する株Y9502は、Δ−9エロンガーゼ/Δ−8デサチュラーゼ経路の発現による全脂質に対して約57.0%EPAを産生することができた。
野生型ヤロウィア・リポリティカATCC#20362に関する株Y9502の最終遺伝子型は、以下のものであった:Ura+、Pex3−、不明1−、不明2−、不明3−、不明4−、不明5−、不明6−、不明7−、不明8−、不明9−、不明10−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT1::Aco、YAT1::MCS::Lip1、FBA::MCS::Lip1、YAT1::MaLPAAT1S::Pex16。
上に用いた略称で、実施例7に記載していないものは以下の通りである:EaD8Sは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)由来の、コドン最適化Δ−8デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,790,156号明細書]であり;E389D9eS/EgD8Mは、ユートレプティラ種(Eutreptiella sp.)CCMP389由来の、コドン最適化Δ−9エロンガーゼ遺伝子(「E389D9eS」)(米国特許第7,645,604号明細書)を、Δ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前掲)に連結することにより作出されたDGLAシンターゼ[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]であり;EgD9eS/EgD8Mは、Δ−9エロンガーゼ遺伝子(「EgD9eS」)(前掲)を、Δ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前掲)に連結することにより作出したDGLAシンターゼ[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]であり;EaD9eS/EgD8Mは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)由来の、コドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,794,701号明細書]をΔ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前掲)に連結することにより作出したDGLAシンターゼ[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]であり;EgD5M及びEgD5SMは、ユーグレナ・グラリシス(Euglena gracilis)由来の変異体HPG(配列番号41)モチーフ[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書]を含む合成変異体Δ−5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,678,560号明細書]であり;EaD5SMは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)由来の、変異体HaGG(配列番号42)モチーフ[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書]を含む合成変異体Δ−5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,943,365号明細書]であり;MCSは、リゾビウム・レグノサルムbv.ビシアエ(Rhizobium leguminosarum bv.viciae)3841由来の、コドン最適化マロニル−CoAシンテターゼ遺伝子[米国特許出願公開第2010−0159558−A1号明細書]であり、並びにMaLPAAT1Sは、モルチエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)由来の、コドン最適化リゾホスファジン酸アシルトランスフェラーゼ遺伝子[米国特許第7,879,591号明細書]である。
株Y9502中の全脂質含量及び組成を詳細に分析するために、フラスコアッセイを以下のように実施し、そこで、細胞を2段階で、合計7日にわたり増殖させた。分析に基づき、株Y9502は、3.8g/L DCW、37.1TFA%DCW、21.3EPA%DCWを産生し、脂質プロフィールは以下の通りであった(ここで、各脂肪酸の濃度は、TFAの重量%[「%TFA」]として表す):16:0(パルミチン酸塩)−2.5、16:1(パルミトレイン酸)−0.5、18:0(ステアリン酸)−2.9、18:1(オレイン酸)−5.0、18:2(LA)−12.7、ALA−0.9、EDA−3.5、DGLA−3.3、ARA−0.8、ETrA−0.7、ETA−2.4、EPA−57.0、その他−7.5。
ヤロウィア・リポリティカ株Y9502Uの遺伝子型
株Y9502のUra3遺伝子を破壊するために、SalI/PacI消化構築物pZKUM(米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書、その中の表15、配列番号133及び図8Aを参照)を用いて、General Methodsに従い、Ura3変異遺伝子を株Y9502のUra3遺伝子に組み込んだ。合計27の形質転換体(8つの形質転換体を含む第1群、8つの形質転換体を含む第2群、及び11の形質転換体を含む第3群から選択される)を最少培地+5−フルオロオロチン酸[「MM+5−FOA」]選択プレートで増殖させ、30℃で2〜5日維持した。MM+5−FOAは、(リットル当たり):20gのグルコース、6.7gのYeast Nitrogen base、75mgのウラシル、75mgのウリジン及び、100mg/L〜1000mg/Lの濃度範囲に対するFOA活性試験に基づいて(供給業者から受領する各バッチ内で変動が起こるため)、適量のFOA(Zymo Research Corp.,Orange,CA)を含む。
さらなる実験により、第3群の形質転換体だけが、実際のUra表現型を有することが明らかになった。
MM+5−FOAプレートから、Ura細胞をこすり取り、General Methodsに従い、脂肪酸分析に付した。これにより、GC分析から、第3群のMM+5−FOAプレートで増殖させたpZKUM形質転換体#1、#3、#6、#7、#8、#10及び#11中の28.5%、28.5%、27.4%、28.6%、29.2%、30.3%及び29.6%EPAのTFAが、それぞれ存在することが明らかになった。これら7つの株は、それぞれ株Y9502U12、Y9502U14、Y9502U17、Y9502U18、Y9502U19、Y9502U21及びY9502U22(集合的に、Y9502U)と称する。
実施例9
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Tsa1遺伝子に対して相同性を有するヤロウィア・リポリティカ遺伝子の同定
「Yeast project Genolevures」(Center for Bioinformatics,LaBRI,Talence Cedex,France)(また、Dujon,B.et al.,Nature,430(6995):35−44(2004)も参照)の一般公開Y.リポリティカタンパク質データベースに対して、クエリー配列としてScTsa1を用いて、BLAST検索を実施することにより、ヤロウィア・リポリティカにおいて、S.セレビシエ(S.cerevisiae)Tsa1(GenBank(登録商標)アクセッション番号:NP_013684;配列番号34)[「ScTsa1」]に対するオーソログを同定した。
Y.リポリティカタンパク質の中で、ScTsa1に対して最高の相同性(期待値1e−82)を有するタンパク質配列、YALI0B15125g(GenBankアクセッション番号:XP_500915.1;配列番号36)に「YlTsa1」という名称を与えた。YALI0B15125gは、GenBankで「uniprot|P34760サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YML028w TSA1(YDR453Cのオーソログ)チオレドキシンペルオキシダーゼに高度に類似し、リボソーム関連及び遊離細胞質抗酸化因子の両方として作用する」というアノテーションが付けられていた。
ScTsa1と推定YlTsa1のアラインメントを図7に示す。鉛直のボックスは、分子間及び分子内相互作用に重要な、ScTsa1のCys48及びCys171を強調している(Tachibana,T.et al.,J.Biol.Chem.,284:4464−4472(2009))。前者のCys残基は、YlTsa1に保存されているが、後者は、ScTsa1と比較すると、YlTsa1において2アミノ酸上流に転位している。
実施例1に記載した方法に従い、BLAST「nr」データベース内に類似性を有する配列を同定するために、YALI0B15125g(配列番号36)をコードするタンパク質配列を用いて、NCBI BLASTP 2.2.26+検索を実施した。
YALI0B15125g(配列番号36)に対する有意な類似性を共有するとして、多数のタンパク質が同定された。表12に、「2e−102]以上の期待値と、具体的にそのタンパク質を同定したという(すなわち、仮想タンパク質へのヒットは除外される)アノテーションを有するこれらのヒットの概要の一部を記載するが、これは本明細書の開示内容を限定するものとして考えるべきではない。表12に記載するタンパク質は、配列番号36と95〜100%のクエリーカバレッジを共有する。
表12.YlTsa1(配列番号36)との類似性を共有する遺伝子

BLASTP検索によれば、YALI0B15125g(配列番号36)は、クラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)ATCC 42720(GenBank(登録商標)アクセッション番号:XP_002616355.1)由来のTsa1ペルオキシレドキシンと、81%同一性及び92%類似性、並びに期待値4e−117で、最高の類似性を共有し、次に、メエロジーマ・グイリエルモンディ(Meyerozyma guilliermondii)ATCC6260由来のTSA1ペルオキシレドキシン(80%同一性及び91%類似性、並びに期待値3e−115)であった。
前述の分析に基づき、配列番号35は、Y.リポリティカのTSA1ペルオキシレドキシン(「YlTsa1」)(このタンパク質配列は、配列番号36として示される)をコードすると仮定された。
本明細書において、ヤロウィア・リポリティカのPUFA産生株におけるYlTsa1の過剰発現は、酸化ストレスに対する耐性の増大をもたらすと想定される。酸化ストレスに対する耐性増大の1つの有益な成果は、脂質過酸化からの保護の強化であり、これによって、脂質及びPUFA含有率が増加することになる。
実施例10
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ybp1遺伝子に対して相同性を有するヤロウィア・リポリティカ遺伝子の同定
「Yeast project Genolevures」(Center for Bioinformatics,LaBRI,Talence Cedex,France)(また、Dujon,B.et al.,Nature,430(6995):35−44(2004)も参照)の一般公開Y.リポリティカタンパク質データベースに対して、クエリー配列としてScYbp1を用いて、BLAST検索を実施することにより、ヤロウィア・リポリティカにおいて、S.セレビシエ(S.cerevisiae)Ybp1(GenBank(登録商標)アクセッション番号:NP_009775.1;配列番号38)[「ScYbp1」]に対するオーソログを同定した。
Y.リポリティカタンパク質の中で、ScYbp1に対して最高の相同性(期待値5e−22)を有するタンパク質配列、YALI0B03762g(GenBankアクセッション番号:XP_500469.1;配列番号40)に「YlYbp1」という名称を与えた。YALI0B03762gは、GenBankで「有糸分裂進行を媒介する、uniprot|P53169サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YGL060w YBP2(YBR216Cのオーソログ)中心動原体関連タンパク質にやや類似する」というアノテーションが付けられていた。
ScYbp1と推定YlYbp1のアラインメントを図8に示すが、両タンパク質の間にはほとんど配列保存がみとめられない。
実施例1に記載した方法に従い、BLAST「nr」データベース内に類似性を有する配列を同定するために、YALI0B03762g(配列番号40)をコードするタンパク質配列を用いて、NCBI BLASTP 2.2.26+検索を実施した。
YALI0B03762g(配列番号40)に対する類似性を共有するとして、複数のタンパク質が同定された。表13に、「2e−37」以上の期待値と、具体的にそのタンパク質を同定したという(すなわち、仮想タンパク質及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のタンパク質へのヒットは除外される)アノテーションを有するこれらのヒットの概要の一部を記載するが、これは、本明細書の開示内容を限定するものとして考えるべきではない。表13に記載するタンパク質は、配列番号40と74〜93%のクエリーカバレッジ(query coverage)を共有する。
表13.YlYbp1(配列番号40)との類似性を共有する遺伝子
BLASTP検索によれば、YALI0B03762g(配列番号40)は、クラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)ATCC 42720(GenBank(登録商標)アクセッション番号:XP_002618921.1)由来の仮想タンパク質CLUG_00080と、28%同一性及び48%類似性、並びに期待値1e−54で、最高の類似性を共有した。
既知機能を有するタンパク質のうち、最高のヒットは、30%同一性及び49%類似性、並びに期待値6e−53のシェフェルソミセス・スチピチス(Scheffersomyces stipitis)CBS 6054(GenBank(登録商標)アクセッション番号:XP_001386941.2)であり、次に、28%同一性及び47%類似性、並びに期待値3e−48のカンジダ・テヌイス(Candida tenuis)ATCC10573(GenBank(登録商標)アクセッション番号:EGV63342.1)由来のYAP1結合タンパク質2であった。
前述の分析に基づき、配列番号39は、Y.リポリティカのYAP1結合タンパク質(「YlYbp1」)(タンパク質配列は、配列番号40として示される)をコードすると仮定された。
YlYbp1をさらに評価するために、CLUSTAL W(1.81)多重配列アラインメント(図9;Thompson J.D.,et al.,Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994))を用いて、配列番号40に示すタンパク質配列を、以下の表14に示すタンパク質とアラインメントした。これらのタンパク質の各々は、Ybp1の相同体をコードすることが仮定される。
表14.YlYbp1(配列番号40)とアラインメントしたタンパク質
アラインメントの視覚検査では、タンパク質の間には、比較的わずかな配列保存領域しか観察されなかった。しかし、CD検索(Marchler−Bauer,A.and S.H.Bryant,Nucleic Acids Res.,32(W)327−331(2004);Marchler−Bauer,A.et al.,Nucleic Acids Res.,37(D)205−210(2009);及びMarchler−Bauer,A.et al.,Nucleic Acids Res.,39(D)225−229(2011))を用いて、タンパク質配列内に検出された保存ドメインを観察するために、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)[「NCBI」]の「Identify Conserved Domains」ツールを用いた分析時には、7タンパク質の各々が、kinetochor_Ybp2スーパーファミリー(Pfam08568;中心動原体に一体的に関与するタンパク質のファミリーとして記載される)内に含まれていた。従って、この明確な特徴は、他の生物由来の他のYbp1タンパク質を同定する手段として有用となりうる。
本明細書において、ヤロウィア・リポリティカのPUFA産生株におけるYlYbp1の過剰発現は、酸化ストレスに対する耐性の増大をもたらすことが仮定される。酸化ストレスに対する抵抗性増大の1つの有益な成果は、脂質過酸化からの保護の強化であり、これによって、脂質及びPUFA含有率が増加することになる。

Claims (12)

  1. 増大されたYap1転写因子活性を含む、非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較して増加した含油率を有するトランスジェニック油性酵母株。
  2. 増大されたYap1転写因子活性が、Yap1転写因子活の過剰発現、前記転写因子と前記転写因子を活性化することができるタンパク質との相互作用を増大すること、又は両者の組合せによって起こる、請求項1に記載のトランスジェニック油性酵母。
  3. 前記転写因子を活性化することができる前記タンパク質が、Gpx3、Ybp1及びTsa1からなる群から選択される、請求項2に記載のトランスジェニック油性酵母。
  4. Yap1転写因子が、転写因子活性を有し、かつ、
    a)bZIPロイシンジッパーモチーフ;
    b)少なくとも6つのアミノ酸で隔てられた少なくとも2つのシステイン残基の配列を含むN末端Cysリッチドメイン;及び
    c)少なくとも8つのアミノ酸で隔てられた少なくとも2つのシステイン残基の配列を含むC末端Cysリッチドメイン、
    を含むポリペプチド、をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項2に記載のトランスジェニック油性酵母。
  5. Yap1転写因子の配列が、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択される、請求項4に記載のトランスジェニック油性酵母。
  6. Gpx3タンパク質が、
    a)Yap1転写因子と相互作用してYap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチドは、配列番号26[ScGpx3]又は配列番号28[YlGpx3]からなる群から選択される配列と比較してBLASTPアラインメント方法に基づき、少なくとも70%アミノ酸同一性を有する、前記ヌクレオチド配列;
    b)Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、配列番号25[ScGpx3]又は配列番号27[YlGpx3]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTNアラインメント方法に基づき、少なくとも70%配列同一性を有する、前記ヌクレオチド配列;又は、
    c)(a)若しくは(b)のヌクレオチド配列の相補体であって、前記相補体と前記ヌクレオチド配列は、同じ数のヌクレオチドから構成され、100%相補的である前記相補体、
    を含む、請求項3に記載のトランスジェニック油性酵母。
  7. Tsa1タンパク質が、
    a)前記Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチドは、配列番号34[ScTsa1]又は配列番号36[YlTsa1]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTPアラインメント方法に基づき、少なくとも70%アミノ酸同一性を有する、前記ヌクレオチド配列;
    b)前記Yap1転写因子と相互作用して、Yap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、配列番号33[ScTsa1]又は配列番号35[YlTsa1]からなる群から選択される配列と比較して、BLASTNアラインメント方法に基づき、少なくとも70%配列同一性を有する、前記ヌクレオチド配列;又は、
    c)(a)若しくは(b)の前記ヌクレオチド配列の相補体であって、前記相補体と前記ヌクレオチド配列は、同じ数のヌクレオチドから構成され、100%相補的である、前記相補体、
    を含む、請求項3に記載のトランスジェニック油性酵母。
  8. Ybp1タンパク質が、
    a)Yap1転写因子と相互作用してYap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチドは、配列番号38[ScYbp1]又は配列番号40[YlYbp1]からなる群から選択される、前記ヌクレオチド配列;又は、
    b)Yap1転写因子と相互作用してYap1転写因子活性を増大させることができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチド配列は、保存ドメインの分析方法に基づき、kinetochor_Ybp2スーパーファミリーに分類される、前記ヌクレオチド配列;又は、
    c)(a)若しくは(b)の前記ヌクレオチド配列の相補体であって、前記相補体と前記ヌクレオチド配列は、同じ数のヌクレオチドから構成され、100%相補的である、前記相補体、
    を含む、請求項3に記載のトランスジェニック油性酵母。
  9. トランスジェニック油性酵母が、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、及びリポミセス(Lipomyces)からなる群から選択される属に由来する、請求項1に記載のトランスジェニック油性酵母。
  10. トランスジェニック油性酵母が、ヤロウィア・リポリティカである、請求項8に記載のトランスジェニック油性酵母。
  11. トランスジェニック油性酵母が、少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を産生する、請求項1に記載のトランスジェニック油性酵母。
  12. 油性酵母中の含油率を増加させる方法であって、
    a)(i)Yap1転写因子;
    (ii)前記転写因子を活性化することができるタンパク質;
    (iii)(i)及び(ii)の組合せ
    からなる群から選択されるタンパク質を過剰発現させるように前記油性酵母を改変するステップ;並びに
    b)非トランスジェニック油性酵母の含油率と比較して含油率の増加をもたらすような好適な条件下で、前記油性酵母を増殖させるステップ、
    を含む、前記方法。
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