以下、本発明に係る構成を図1から図14に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態では、本発明を適用した画像形成装置の一例としてタンデム方式のカラーレーザプリンタ、本発明を適用した定着装置の一例としてベルト定着方式の定着装置を例示して説明する。
(画像形成装置)
図1は画像形成装置の一例であるカラーレーザプリンタ100の概略構成図である。カラーレーザプリンタ100は、Y(イエロー),M(マゼンダ),C(シアン),K(ブラック)の4色分の画像形成ユニット1a,1b,1c,1dを備えており、これら画像形成ユニット1a,1b,1c,1dが転写ベルト10の走行方向(図中矢印B方向)に沿って順次配置された、タンデム方式のカラーレーザプリンタである。
画像形成ユニット1a,1b,1c,1dは、それぞれ感光体2a〜2d、ドラム帯電器3a〜3d、露光装置4a〜4d、現像器5a〜5d、転写器6a〜6d、清掃装置7a〜7dを備えている。感光体2a〜2dはドラム状に構成され、図中矢印A方向に回転操作される。ドラム帯電器3a〜3dは、回転操作される感光体2a〜2dを一様に帯電させる。露光装置4a〜4dは、ドラム帯電器3a〜3dにより帯電された感光体2a〜2dの表面にレーザ光を走査し、画像データに基づく静電潜像を形成する。現像器5a〜5dは、露光装置4a〜4dの露光により感光体2a〜2dに形成された静電潜像をトナーにより現像する。転写器6a〜6dは、現像器5a〜5dの現像により感光体2a〜2d上に形成されたトナー像を転写ベルト10に転写する。清掃装置7a〜7dは、感光体2a〜2dの表面を清掃する。
カラーレーザプリンタ100では、画像形成ユニット1a,1b,1c,1dにより形成されたY,M,C,K4色のトナー像が転写ベルト10上に重ね合わせて転写されることで、転写ベルト10上には4色フルカラーのトナー像が形成される。転写ベルト10上に形成されたトナー像は、用紙転写器9に到達すると同時に用紙転写器9に印加された高電圧の作用により、図中矢印Hの方向に搬送されて転写ベルト10と用紙転写器9との間を通過する記録媒体P上に転写される。転写ベルト10上の未転写トナーはベルト清掃装置8で回収される。記録媒体P上に転写されたトナー像は、定着装置11(12)によって記録媒体Pに定着される。
[第1の実施形態]
本実施形態に係る定着装置は、外周に弾性層(弾性層15b)が形成されてなる定着ローラ(定着ローラ15)と、熱源(ヒータ24)により加熱される加熱ローラ(加熱ローラ14)と、少なくとも定着ローラと加熱ローラとに張架される定着ベルト(定着ベルト13)と、定着ベルトを介して定着ローラに圧接してニップ部(ニップ部N)を形成する加圧部材(加圧ローラ17)と、を備えた定着装置(定着装置11)において、定着ローラと加熱ローラとの隙間幅を検知する隙間幅検知手段(隙間幅検知センサ21)と、加圧部材を定着ローラに対して接離する方向に移動させる移動手段(加圧ローラ移動機構18)と、隙間幅検知手段が検知した隙間幅に基づいて、移動手段による加圧部材の定着ローラ側への移動量を制御する制御手段(制御部22)と、を備えるものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
(定着装置の構成)
図2は定着装置11の詳細を示す構成図である。定着装置11は、定着部材として定着ベルト13を用いたベルト定着方式の定着装置であり、定着ベルト13のほか、加熱ローラ14、定着ローラ15、加圧ローラ17、加圧ローラ移動機構18、定着ベルト温度センサ19、加圧ローラ温度センサ20、隙間幅検知センサ21、制御部22等を備えている。
定着部材としての定着ベルト13は、樹脂材料からなるベース層上に、弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端ベルトである。定着ベルト13の弾性層は、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ベルト13の離型層は、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等で形成されている。定着ベルト13の表層に離型層を設けることにより、トナー像Tに対する離型性(剥離性)が担保されることになる。定着ベルト13は、2つのローラ部材(加熱ローラ14、定着ローラ15)に張架、支持されている。また、定着ベルト13に一定のテンションを与えるテンションローラを設けてもよい。
加熱ローラ14は、金属材料からなる薄肉の円筒体であって、その円筒体の内部にはヒータ24(熱源)が固定して設けられている。
ヒータ24は、例えば、ハロゲンヒータやカーボンヒータであって、その両端部が定着装置11の側板に固定されている。また、加熱ローラ14は、その両端軸部が定着装置11の側板に軸受を介して回転自在に取り付けられている。
ヒータ24は、カラーレーザプリンタ100の電源部(交流電源)から出力制御された電力が供給されることで発熱する。ヒータ24からの輻射熱によって加熱ローラ14が加熱されて、さらに加熱ローラ14からの熱伝導により加熱された定着ベルト13の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。
定着ベルト13の表面温度は、定着ベルト13表面に対向して配置されたサーモパイル等の定着ベルト温度センサ19によって検知され、定着ベルト13の表面温度が所望の制御温度(定着温度)で一定となるように、ヒータ24の出力が制御される。なお、加熱ローラ14は金属材料からなり、定着ローラ15に比べ線膨張係数はきわめて小さい。
定着ローラ15は、ステンレススチール(例えば、SUS304、SUS420)等からなる芯金15a上に、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性層15bが形成されたローラ部材である。
加圧ローラ17は、ステンレススチール(例えば、SUS304、SUS420)等からなる芯金17a上に、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性層17bが形成されたローラ部材である。
加圧ローラ17は、その両端軸部が定着装置11の側板に軸受を介して回転自在に取り付けられており、モータなどの駆動手段によって回転駆動される。定着ローラ15は、その両端軸部が定着装置11の側板に軸受を介して回転自在に取り付けられており、加圧ローラ17の回転駆動に連れて時計回り(図中矢印C方向)に回転駆動する。また、定着ベルト13も図中矢印D方向に走行する。なお、定着ローラ15がモータなどの駆動手段によって回転駆動されるものであってもよい。
加圧ローラ温度センサ20は、加圧ローラ17表面に対向して配置されたサーモパイル等の温度センサであって、加圧ローラ17の表面温度を検知する。
定着装置11では、加圧ローラ17が定着ベルト13を介して定着ローラ15に圧接してニップ部Nを形成している。定着装置11は、ニップ部Nを形成させるために、定着ローラ15の弾性層15bを、加圧ローラ17の弾性層17bよりも厚くしている。例えば、加圧ローラ17の弾性層17bは2mm、定着ローラ15の弾性層15bは15mm等とするものである。
加圧ローラ移動機構18は、揺動アーム18aを備えており、加圧ローラ17の両端軸受けは、揺動アーム18aに回転自在な状態で支持されている。揺動アーム18aは、その一端側に設けられた揺動軸18bを中心として揺動可能とされている。揺動アーム18aの他端側にはベアリング18cが固定されている。そして、ベアリング18cの図中下方に接触する位置に、カム18dが設けられている。カム18dは、モータ、例えばステッピングモータといったカム回転角を制御可能なモータにより駆動される。また、カム18dには遮蔽板18eが備えられ、カム位置検出手段18fが遮蔽板18eの位置を検出することでカム18dの基準位置を把握できるようになっている。
カム18dは、揺動アーム18aに接続された揺動アームスプリング18gの張力によって、ベアリング18cに接触した状態に保たれている。そして、モータの駆動によりカム18dが図中矢印E方向に回転すると、ベアリング18cが図中矢印F方向に移動する。これにより、揺動アーム18aに支持された加圧ローラ17が図中矢印G方向、つまり定着ローラ15に近づく方向に移動することとなる。一方、モータの駆動によりカム18dが図中矢印E’方向に回転すると、ベアリング18cが図中矢印F’方向に移動する。これにより、揺動アーム18aに支持された加圧ローラ17が図中矢印G’方向、つまり定着ローラ15から離間する方向に移動することとなる。
隙間幅検知センサ21は、例えば、二次元レーザ変位計等であって、定着ベルト13の内周側に設けられ、定着ローラ15と加熱ローラ14の間に形成される隙間の幅を検知する。
制御部22は、定着ベルト温度センサ19の検知結果に基づいて、ヒータ24の出力を制御して、定着ベルト13の表面温度を所望の定着温度となるように制御する。このとき、加圧ローラ温度センサ20の検知結果を併せて用いてもよい。
また、制御部22は、隙間幅検知センサ21の検知結果に基づいて、加圧ローラ移動機構18を制御して、加圧ローラ17の位置を制御する。なお、制御部22は記憶部を備えており、必要な情報を適宜記憶することが可能となっている。また、制御部22は、定着装置11用の制御部として構成されていても、カラーレーザプリンタ100の制御部の一部として構成されていてもよい。
(定着装置の制御)
記録媒体P上のトナー像Tを加熱溶融して記録媒体Pに安定的に定着させるには、定着ローラ15と加圧ローラ17との間で記録媒体Pを挟み込む部分であるニップ部Nの幅(ニップ幅)を、使用する記録媒体Pの種類に応じて適切に設定し、トナー像Tに最適な熱量を与えるようにする必要がある。
ニップ幅は、上記の加圧ローラ移動機構18を利用して加圧ローラ17を定着ローラ15に接離する方向に移動させ、定着ローラ15に対する加圧ローラ17の位置を制御することによって調整できる。
しかしながら、定着ローラ15の弾性層15bが温度上昇に伴って膨張することで定着ローラ15の外径が大きくなると、定着ローラ15に対する加圧ローラ17の位置を所定位置に設定してもニップ幅に変動が生じ、結果として定着性のばらつきを招いてしまう場合がある。
そこで、本実施形態に係る定着装置11では、制御部22は、隙間幅検知センサ21によって検知した定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅から定着ローラ15の外径変位量を算出し、定着ローラ15の外径変位量をもとに加圧ローラ移動機構18が加圧ローラ17を定着ローラ15側に移動させる量を制御することで、最適なニップ幅が得られるようにしている。
図3は定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅と定着ローラ15の外径との関係を示すグラフである。図3に示すように、定着ローラ15の外径が小さいときは、隙間幅検知センサ21によって検知される定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅が大きく、定着ローラ15の弾性層15bが温度上昇により膨張して定着ローラ15の外径が大きくなると、検知される定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅は小さい。すなわち、隙間幅検知センサ21によって隙間幅を検知することにより、定着ローラ15の膨張度合いを算出することができる。
図4は、カム18dの回転角θとカム18dの回転軸中心からのカム面距離(中心穴からのカム面距離)との関係を示したグラフである。図4に示すように、カム18dの回転角θに応じてカム面高さが決定する。
本実施形態に係る定着装置11では、制御部22は、例えば、定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅がある値だけ小さくなったことを隙間幅検知センサ21が検知したときに、小さくなった隙間幅に応じてどれだけ定着ローラ15の外径が拡大したかが算出できる。
そして、定着ローラ15の外径拡大量に応じて、加圧ローラ17を定着ローラ15から離間するG’方向にどれだけ移動させればよいかを判断することができる。ここで、加圧ローラ17を移動させる量に応じてカム面の高さを現在位置からどれだけ変位させるかは一意に算出できるため、そのカム面の高さ変位量を得るためにカム18dをEの方向にどれだけ回転させればよいかを求めることができる。
そして、求めた回転角分、カム18dを回転させることで、加圧ローラ移動機構18が加圧ローラ17をG’方向に所定量移動させる。
また、例えば、定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅がある値だけ大きくなった場合も同様に、加圧ローラ17のG方向の移動量とその移動量に応じたカム18dの回転角を求め、加圧ローラ移動機構18が加圧ローラ17をG方向に所定量移動させる。
これにより、定着ローラ15の膨張度合いに応じて、最適なニップ幅に制御することができ、安定した定着性能を維持することができる。また、この制御方法によれば、最適なニップ幅に制御することで定着装置11の生産性を維持することができる。特に、加圧ローラ17を基準位置に戻すことなく、加圧ローラ17を移動前の位置から移動後の位置まで直接移動させて、加圧ローラ17を所望の位置とすることができるため、簡易かつ迅速にニップ幅を制御し、生産性を維持することが可能となっている。
また、特許文献1の技術は、定着ローラ15が加圧ローラ17により連れ回る構成の定着装置には、適用することができないが、本発明は、定着ローラ15が加圧ローラ17により連れ回る構成の定着装置にも好適である。
本実施形態に係る定着装置11のさらに好適な実施形態について説明する。定着装置11は、連続した通紙動作中において、ニップ部Nに記録媒体Pが無い時(紙間時)において、隙間幅検知センサ21が検知した隙間幅に基づいて、ニップ幅の調整量を算出することが好ましい。
記録媒体Pがニップ部Nに進入すると、記録媒体Pの厚み分だけ定着ローラ15と加圧ローラ17に加わる圧力が増加し、圧力に変動が生じると定着ローラ15の弾性層15bの圧縮量が変動し、定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅が変動する。すなわち、記録媒体Pの厚みにより定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅が変動するといえる。定着装置11には、様々な厚みの記録媒体Pが通紙されることから、記録媒体Pの厚みの影響を受けない紙間時の定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅に基づいて、ニップ幅の調整量を算出することが好ましい。
また、定着装置11は、連続した通紙動作中において、ニップ部Nに記録媒体Pが無い時(紙間時)において、カム18dを回転させてニップ幅を調整することが好ましい。ニップ部Nに記録媒体Pがあるときにカム18dが回転してニップ幅を調整すると、1ページ内で定着性が変動することがあるため、ニップ部Nに記録媒体Pがあるときにはニップ幅の調整を行わないことが好ましい。
また、定着装置11において、通紙動作を開始するときの定着ローラ15の温度は、十分に冷えた冷間状態から前回の通紙動作が終了した直後の熱間状態まで多岐にわたる。すなわち、通紙動作開始時の定着ローラ15の弾性層15bの膨張量は一定ではない。
そこで、定着装置11は、記録媒体Pがニップ部Nに進入する前である通紙動作前の定着ローラ15と加熱ローラ14の隙間幅をもとに加圧ローラ17の移動量を決定することが好ましい。
以上説明した本実施形態に係る定着装置11によれば、生産性を低下させることなく、最適なニップ幅に制御することで安定した定着性能を維持することができる。
[第2の実施形態]
以下、本発明に係る定着装置の他の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同様の点についての説明は適宜省略する。
第2の実施形態に係る定着装置は、芯金(芯金15a)の外周に弾性層(弾性層15b)が形成されてなる定着ローラ(定着ローラ15)と、定着ローラに圧接してニップ部(ニップ部N)を形成する加圧部材(加圧ローラ17)と、を備えた定着装置(定着装置12)において、定着ローラの芯金の温度を検知する芯金温度検知手段(芯金温度検知センサ23)と、加圧部材を定着ローラに対して接離する方向に移動させる移動手段(加圧ローラ移動機構18)と、芯金温度には複数の閾値が設けられており、芯金温度検知手段が検知した芯金温度の値が大きくなり閾値を超えるたびに、移動手段により、加圧部材を初期位置から定着ローラから離れる方向に徐々に移動させる制御をする制御手段(制御部22)と、を備えるものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
(定着装置の構成)
図5は第2の実施形態に係る定着装置12の詳細を示す構成図である。定着装置12は、定着部材として定着ベルト13を用いたベルト定着方式の定着装置であり、定着ベルト13のほか、加熱ローラ14、定着ローラ15、加圧ローラ17、加圧ローラ移動機構18、定着ベルト温度センサ19、加圧ローラ温度センサ20、芯金温度検知センサ23、制御部22等を備えている。
この定着装置12は、第1の実施形態に示した定着装置11とは、隙間幅検知センサ21に替えて、定着ローラ15の芯金15aの温度を検知する芯金温度検知センサ23を備える点で異なっている。
芯金温度検知センサ23は、定着装置12内部のヒータ(熱源)24からの影響が小さく、その温度変化がニップ幅変動への影響が大きい部位に設けることが好ましく、例えば、定着ローラ15の芯金15aに圧接して設置され、芯金15aの表面温度を直接検知するサーミスタ等を用いることができる。
制御部22は、芯金温度検知センサ23の検知結果に基づいて、加圧ローラ移動機構18を制御して、加圧ローラ17の位置を制御する。なお、制御部22は記憶部を備えており、必要な情報を適宜記憶することが可能となっている。また、制御部22は、定着装置12用の制御部として構成されていても、カラーレーザプリンタ100の制御部の一部として構成されていてもよい。
(定着装置の制御)
図6は、第2の実施形態に係る定着装置12の制御部22によるニップ幅調整制御の一例を示すフローチャートである。
ニップ幅調整制御では、通紙前に初期加圧ポジションの決定処理(S101〜S106)を実行する。なお、加圧ローラ移動機構18により制御される加圧ローラ17の位置を加圧ポジションという。また、ニップ幅調整制御において以下に説明する各種の情報(直前のジョブ終了時の加圧ポジション、各時点での芯金温度、紙種の情報、等)は、制御部22の記憶部に一時記憶されるものであればよい。
先ず、ジョブ(印刷ジョブ)を受信すると、通紙される紙種の情報を読み取る(S101)。そして、読み取った紙種の情報が、直前のジョブで通紙された紙種と同一であるかどうかを判断する(S102)。
受信したジョブの紙種が、直前のジョブと異なる紙種の場合(S102:NO)、初期加圧ポジションを紙種ごとに設定された所定のポジションにする(S106)。また、直前のジョブの情報がない場合、すなわち、電源オン後、または、オフスリープモードなどからの復帰後1回目のジョブの場合も同様に、初期加圧ポジションを紙種ごとに設定された所定のポジションにする(S106)。
一方、受信したジョブの紙種が、直前のジョブと同一の紙種の場合(S102:YES)、ジョブ受信時において、芯金温度検知センサ23により芯金温度tjを検知する(S103)。
次いで、検知した芯金温度tjと、直前のジョブ終了時の芯金温度tbの差分が所定の値(ts)以下であるかどうかを判断する(S104)。
芯金温度tjと、芯金温度tbの差分がts以下である場合(S104:YES)、すなわち、直前のジョブと紙種が同一であって、芯金温度の差分が小さい条件においては、前状態の加圧ポジションを引き継ぐ(S105)。これにより、ジョブの最初から適正なニップ幅を確保することができる。
一方、芯金温度tjと、芯金温度tbの差分がts以下でない場合(S104:NO)、初期加圧ポジションを紙種ごとに設定された所定のポジションにする(S106)。
初期加圧ポジションの決定処理(S101〜S106)において、直前のジョブ終了から時間が空き、定着ローラ15が放熱過程に入っている場合には、芯金温度と定着ローラ15の熱膨張量の関係性が崩れ、芯金温度に対して熱膨張が進行していない場合がある。この場合、検知した芯金温度に基づいて、加圧ローラの位置制御を行うと、適正なニップ幅が得られず定着不良が発生するおそれがある。このため、直前のジョブと紙種が異なる場合のほか、電源オン後の場合、オフスリープモードなどからの復帰後1回目のジョブの場合、および芯金温度の差が大きい場合は、初期加圧ポジションを紙種ごとに設定された所定のポジションとしている。
次いで、連続通紙中の処理(S107〜S110)について説明する。連続通紙中は現在の芯金温度tnを所定の制御周期ごとに検出する(S107)。制御周期は、特に限られるものではないが、例えば、400msec等とすることができる。
次いで、ジョブ受信から所定時間(除外時間)Tjを経過しているか、または、現在の芯金温度tnとジョブ受信時の芯金温度tjとの差が、所定の温度(Δt)以上となるか(すなわち、tn−tj≧Δt)のいずれかを満たすかを判断する(S108)。いずれか一方を満たすまでの期間は(S108:NO)、制御除外期間とし、通紙中の加圧ポジション変更は実施しない。
一方、いずれか一方を満たした場合(S108:YES)、制御除外期間を終了し、ニップ部Nに記録媒体Pが無い時(紙間時)において、現在の芯金温度tnが、閾値温度ti(i=1,2,3,・・・)よりも高い温度となった場合(S109:YES)、加圧ポジションを初期加圧ポジションから加圧ポジション減少量Ai(i=1,2,3,・・・)ずつ変更する(S110)。なお、閾値温度tiおよび加圧ポジション減少量Aiは、紙種ごとに決定される値である。
このように、制御除外期間を設けることで、前状態が不明確な状態からのジョブでも適切な制御を実施することができ、定着不良を未然に防ぐことができる。なお、前状態が明確な場合には、前ジョブの情報を参照することによって、制御除外期間を設けることなく適切なニップ幅に調整することができる。
加圧ポジションの変更後も、繰り返し、現在の芯金温度tnと閾値温度tiとの大小判定を行い、現在の芯金温度tnが閾値温度tiを超えるたびに、加圧ポジションを初期加圧ポジションからAiずつ定着ローラから離れる側へ移動させる。上記制御においては、連続通紙中に加圧ローラ17のポジションが定着ローラ15に近づく方向に移動させる制御を実施することはなく、常に、定着ローラ15から離れる側への方向へ移動させる制御となる。
図7は、芯金温度とニップ幅との関係を示すグラフである。図7に示すように、芯金温度が上昇するにしたがってニップ幅は広がっていき、適正ニップ幅から外れてしまう。適正なニップ幅から外れると、搬送品質や画像品質が低下してしまうおそれがある。
図8は、芯金温度とニップ幅との関係を示すグラフであって、上述したニップ幅調整制御を実施した場合の例である。すなわち、図8に示すように、ニップ幅が芯金温度の上昇にしたがって広がっていっても、適正ニップ幅の上限近くになると、加圧ポジションをAi(i=1,2,3,・・・)分、定着ローラ15から離れる側に移動させることで、再度、適正なニップ幅の下限近くになるように調整することができる。
このように、適正ニップ幅上限近くになるたびに、加圧ポジションを制御することで、芯金温度が上昇(すなわち、定着ローラ15が熱膨張)しても、常に適正なニップ幅を維持することが可能となっている。
なお、通紙中において、ニップ幅を直接検知するわけでないため、事前に芯金温度とニップ幅の関係を求めておき、かつ、ニップ幅上限付近となる温度(すなわち、閾値温度ti(i=1,2,3,・・・)を紙種ごとに求めておくことで、通紙中の芯金温度tnがtiを超えるたびに制御を実施して、適正なニップ幅を常に維持することが可能となる。
次に、紙間でのニップ幅調整制御の実施可能性について説明する。表1は、A4横サイズの記録媒体Pを、線速300mm/secで通紙した際に、各生産性にて紙間がどの程度あるかを示す表である。
表1に示すように、例えば、生産性が60枚/minの場合、紙間は300msecであり、生産性が80枚/minでは紙間が50msecである。ここで、通紙中の加圧ポジション変更ではニップ幅を1mm変動させるのにかかる加圧ポジションの変更時間を50〜100msec程度の場合、生産性が60枚/min程度であれば、紙間での制御が可能である。
一方で、生産性が80枚/minの場合には、紙間が加圧ポジションの変更時間よりも短いため加圧ポジションの変更制御中に、記録媒体Pがニップ部Nに進入してしまう。このため、制御部22にて、紙間が、加圧ポジションの変更時間よりも短いかどうかを判断し、短いと判断される場合には、一時的に紙間を長くすることが好ましい。これにより、加圧ポジションの変更制御中に、記録媒体Pがニップ部Nに進入しないようにすることができる。なお、加圧ポジションの変更時間は予め記憶される値であればよい。
以上説明した第2の実施形態に係る定着装置12によれば、定着ローラ15の芯金温度によって紙間でニップ幅調整を実施することで、生産性を落とすことなく最適な適正なニップ幅を維持することが可能となる。また、紙種ごとに最適な閾値を設定することで、あらゆる紙種に対して最適なニップ幅を維持することができる。
[第3の実施形態]
上述のように、封筒など、シワや定着不良が発生しやすい記録媒体では、画像品質(定着性)と、搬送品質(搬送性)の双方を満足するニップ幅の範囲が非常に狭いため、定着ローラ15の熱膨張によるニップ幅の変動が発生した際に、この変動を打ち消して、適切なニップ幅に調整することが望まれる。
第2の実施形態では、定着ローラ15の芯金温度を検出し、芯金温度から定着ローラ15の熱膨張量およびニップ幅を予測して、段階的に加圧ローラ17を移動させ、ニップ幅を調整する例を説明した。
しかしながら、上述のように、定着ローラ15の芯金温度と定着ローラ15の熱膨張量との関係は、常に同じではなく、所定の条件下でその関係性が崩れてしまう。例えば、一旦加熱したのちに定着ローラ15が冷えていく過程では、芯金温度の温度低下には時間がかかるのに対し、定着ローラ15の表面は内部よりも冷えやすく熱収縮が素早く進行するために、芯金温度に基づいて予測熱膨張量に対し、実際の熱膨張量は小さくなる。
そして、定着ローラ15の芯金温度と定着ローラ15の熱膨張量との関係が予測から外れると、予測された関係に基づいてニップ幅を制御しても、所望のニップ幅が得られないことになり、通紙時の定着不良や搬送不良に繋がるおそれがある。
そこで、第3の実施形態に係る定着装置は、芯金(芯金15a)の外周に弾性層(弾性層15b)が形成されてなる定着ローラ(定着ローラ15)と、定着ローラに圧接してニップ部(ニップ部N)を形成する加圧部材(加圧ローラ17)と、を備えた定着装置(定着装置12)において、定着ローラの芯金の温度を検知する芯金温度検知手段(芯金温度検知センサ23)と、加圧部材を定着ローラに対して接離する方向に移動させる移動手段(加圧ローラ移動機構18)と、通紙中に芯金温度検知手段が検知した芯金温度に応じて、移動手段により加圧部材の位置を制御する制御手段(制御部22)と、を備え、制御手段は、印刷ジョブの受信後であって通紙前に、定着装置の蓄熱状態を判断し、判断結果に応じて蓄熱回転制御を実施するものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。すなわち、定着ローラ15の芯金温度と定着ローラ15の熱膨張量との関係が、予め予測された関係から変化する条件下では、通紙前に、蓄熱回転制御を実行することで、芯金温度と熱膨張量との関係を、予め予測された関係に近づけるものである。
図9は、第3の実施形態に係る定着装置12の制御部22によるニップ幅調整制御の一例を示すフローチャートである。なお、図9に示す本実施形態に係るニップ幅調整制御において、上述した各実施形態のニップ幅調整制御における各処理も実行するようにしてもよいのは勿論である。
第3の実施形態のニップ幅調整制御では、通紙前に初期加圧ポジションの決定処理(S201〜S204)を実行する。
先ず、ジョブ(印刷ジョブ)を受信すると(S201)、蓄熱回転制御(S202)を実施する。蓄熱回転制御の詳細は後述する。次いで、芯金温度検知センサ23により現在の芯金温度tnを検知する(S203)。この芯金温度の検知は、例えば、記録媒体Pが給紙トレイから給紙されるタイミングで実施される。そして、検知した現在の芯金温度Tnに応じた加圧ポジション(初期加圧ポジション)とする(S204)。
次いで、通紙中の処理(S205〜S209)について説明する。通紙開始(S205)後は、現在の芯金温度tnを所定の制御周期ごとに検出する(S206)。制御周期は、特に限られるものではないが、例えば、400msec等とすることができる。
ニップ部Nに記録媒体Pが無い時(紙間時)において、現在の芯金温度tnが、閾値温度ti(i=1,2,3,・・・)よりも高い温度(tn≧ti)となった場合(207:YES)、加圧ポジションを初期加圧ポジションから加圧ポジション減少量Ai(i=1,2,3,・・・)ずつ変更する(S208)。なお、閾値温度tiおよび加圧ポジション減少量Aiは、紙種ごとに決定される値である。
加圧ポジションの変更後も上記の処理をジョブの終了(S209:Yes)まで繰り返し、現在の芯金温度tnと閾値温度tiとの大小判定を行い、現在の芯金温度tnが閾値温度tiを超えるたびに、加圧ポジションを初期加圧ポジションからAiずつ定着ローラから離れる側へ移動させる。上記制御においては、連続通紙中に加圧ローラ17のポジションが定着ローラ15に近づく方向に移動させる制御を実施することはなく、常に、定着ローラ15から離れる側への方向へ移動させる制御となる。
これにより、図7および図8を参照して上述したように、適正ニップ幅上限近くになるたびに、加圧ポジションを制御することで、芯金温度が上昇(すなわち、定着ローラ15が熱膨張)しても、それに応じて適正なニップ幅を維持することが可能となっている。
(蓄熱回転制御)
蓄熱回転制御(S202)の詳細を説明する。図10は、定着装置12の芯金温度[℃]とニップ幅[mm]との関係を示すグラフの一例である。図10を参照して、蓄熱回転制御の目的について説明する。
昇温過程から通紙をする場合、(1)で示す芯金温度とニップ幅の関係となる。しかしながら、熱膨張した状態から一旦冷却し、その状態から通紙をする場合、(2)で示すような関係となり、(1)に示す芯金温度とニップ幅の関係との間にずれが生じてしまう。
このように予測されている関係性からずれてしまうと、結果として、ニップ幅調整制御により所望のニップ幅が得られなくなってしまい、画像品質や搬送品質に影響が生じてしまう。
このため冷却過程で(2)に示す関係に従っているものを(1)に示す関係に従うように蓄熱回転制御を実行することで、ニップ幅調整制御により所望のニップ幅を得るようにするものである。
図11は、蓄熱回転制御の一例を示すフローチャートである。先ず、蓄熱回転制御の実施のオンオフを判断する(S301)。この判断は、蓄熱回転制御を実施する(オン)、実施しない(オフ)を、スイッチや操作パネルなどからユーザに選択可能としておき、その設定を確認するものである。蓄熱回転制御のオンオフ設定を可能とすることで、ユーザが通紙前に待ち時間を入れたくない場合(印刷速度を優先する場合)には、制御を無効自体にすることができる。
蓄熱回転制御がオンに設定されている場合(S301:Yes)、ジョブの記録媒体Pの種別が、蓄熱回転制御を必要とする所定の紙種であるかどうかを判断する(S302)。一方、蓄熱回転制御がオフに設定されている場合(S301:No)、蓄熱回転制御を実施しない(S308)。
S302では、例えば、記録媒体Pの種別が封筒であるかどうかを判断するものである。封筒はニップ幅の成立範囲が一般紙と比較すると狭いため、高品質な画像を得るためには、定着ローラ15の熱膨張状態を正確に捉えて、ニップ幅を適切に制御することが要求される。このため、封筒の場合、ジョブの受信後の給紙前に、芯金温度から定着ローラ15の熱膨張状態が予測できるようになるまで蓄熱回転を実施する必要がある。蓄熱回転制御を必要とする所定の紙種は、予め設定されるものであればよい。
蓄熱回転を必要とする紙種である場合(S302:Yes)、今回のジョブの前に他のジョブがあったかどうかを判断する(S303)。前ジョブがあったか否かにより、定着装置12の蓄熱状態が膨張過程か冷却過程にあるかを判断するものである。一方、蓄熱回転を必要としない紙種である場合(S302:No)、蓄熱回転制御を実施しない(S308)。
前ジョブがない場合(S303:No)は、画像形成装置の電源オンから所定時間(t1秒)以上経過しているかどうかを判断する(S304)。画像形成装置の電源オン時はウォーミングアップを実施するため、電源オン直後の定着装置12は熱膨張過程にある。
このため、画像形成装置の電源オンからt1秒経過していない場合(S304:No)は、熱膨張過程にあると判断して、蓄熱回転制御を実施しない(S308)。一方、画像形成装置の電源オンからt1秒以上経過している場合(S304:Yes)、冷却過程に入ったと判断して、蓄熱回転制御を実施する(S307)。
このように、画像形成装置の電源オンからジョブ受信までの経過時間に基づいて、定着装置が冷却過程にあるか熱膨張過程にあるかを判断し、冷却過程にある場合に蓄熱回転制御を実施することで、定着装置の状態に応じた制御を実施することが可能となっている。
前ジョブがあった場合(S303:Yes)は、前ジョブの記録媒体Pの種別によって蓄熱回転制御の必要有無を判断する(S305)。定着温度の設定値は記録媒体Pの種別ごとに設定されているため、前ジョブにおける記録媒体Pが定着温度の設定値が高いものである場合、定着装置12は、十分蓄熱されているといえ、設定値が低いものである場合、蓄熱が不十分であるといえる。前ジョブの記録媒体Pの種別によって定着装置12の蓄熱状態を判断することで、蓄熱回転制御の必要性を判断可能となる。
そこで、本実施形態では、前ジョブの記録媒体Pの種別が封筒であるかどうかを判断している(S305)。封筒は、一般紙よりもシワが発生しやすいためニップ幅を狭めているが、その分、定着温度を上げることで定着可能な熱量をトナーに与えている。そのため、前ジョブが封筒通紙である場合には定着装置12の蓄熱が十分であると判断している。
前ジョブが封筒通紙であった場合(S305:Yes)、前ジョブ終了から所定時間(t2秒)以上経過しているかどうかを判断する(S306)。前ジョブからt2秒以上経過している場合(S306:Yes)、定着装置12が冷却過程にあると判断し、蓄熱回転制御を実施する(S307)。また、前ジョブからt2秒以上経過していない場合(S306:No)、定着装置12が熱膨張過程にあると判断し、蓄熱回転制御を実施しない(S308)。一方、前ジョブが封筒通紙以外の場合(S305:No)、前ジョブからの経過時間は関係なく蓄熱回転制御を実施する(S307)。
このように、前ジョブ終了時から現ジョブ受信までの経過時間に基づいて、定着装置12が冷却過程にあるか熱膨張過程にあるかを判断し、冷却過程にある場合に蓄熱回転制御を実施することで、定着装置12の状態に応じた制御を実施することが可能となっている。
また、蓄熱回転制御(S307)の実施時間(t3秒)は、今回のジョブで通紙される記録媒体Pの種別(用紙銘柄)ごとに個別に設定可能としている。表2は、記録媒体Pの種別ごとの蓄熱回転制御の実施時間(t3秒)の設定例を示す一覧である。
表2において、ニップ幅の成立範囲が広い種別(用紙カテゴリー1,2)では、ニップ幅と芯金温度の関係が、所望の関係から多少ずれていても成立可能であるため、蓄熱回転制御を非実施(用紙カテゴリー1)、または、実施時間を短くしている(用紙カテゴリー2)、一方、成立範囲が狭い種別(用紙カテゴリー3)では、所望の関係となるまで、蓄熱回転制御を十分な時間実施するものである。このように用紙銘柄ごとに最適な蓄熱回転時間を設定可能とすることが好ましい。
以上説明した第3の実施形態に係る定着装置12によれば、通紙直前の定着装置12が冷却過程にあり、芯金温度と定着ローラ15の熱膨張の関係が所望の関係から崩れていると判断した場合には、上記所望の関係に復旧させるための蓄熱回転制御を実施することで、定着ローラ15の熱膨張量およびニップ幅を、芯金温度に基づいて正確に予測し、ニップ幅を適切に調整する制御を実施できるようになる。
また、蓄熱回転制御の実施に際し、搬送性と定着性の双方が成立するニップ幅範囲が狭いと判断される用紙銘柄が通紙される際は通紙前に蓄熱回転時間を設けている。また、前ジョブにて、定着ローラ15への蓄熱が不十分であると判断される場合には、通紙前に蓄熱回転時間を設けている。また、前ジョブ終了時からジョブ受信までの経過時間が長く、定着装置12が冷却過程であると判断される場合に蓄熱回転時間を設けている。また、画像形成装置の電源オンからジョブ受信までの経過時間が長く、定着装置12が冷却過程であると判断される場合に蓄熱回転時間を設けている。
よって、通紙する記録媒体Pの種別や、定着装置12の蓄熱状態に関わらず、安定した定着品質および搬送品質を保証するニップ幅を常に維持することが可能となる。
[第4の実施形態]
定着装置12は、加圧ローラ移動機構18の制御により、加圧ローラ17を所望の位置とすることができる。第1の実施形態では、加圧ローラ17を基準位置に戻すことなく、加圧ローラ17を移動前の位置から移動後の位置まで直接移動させて、加圧ローラ17を所望の位置とする例について説明したが、加圧ローラ移動機構18の制御は、これに限られるものではなく、例えば、基準位置からのカム18dの回転時間などの制御により、加圧ローラ17を所望の位置とすることができる。
また、第3の実施形態では、芯金温度と熱膨張量との関係が、変化することが予測される条件下では、通紙前に、蓄熱回転制御を実行することで、芯金温度と熱膨張量との関係を、予め予測された関係に戻す例を説明した。
ところで、定着装置12は、装置ごとに、定着ローラ15の外径や硬度のばらつき、加圧ローラ移動機構18のカム18dの寸法のばらつき、等がある程度生じることは避け難い。このため、すべての定着装置12で同一の制御内容(例えば、カムの回転時間)として加圧ローラ17の位置を設定しても、ニップ幅に差異が生じるおそれがある。そして、これにより所望のニップ幅が得られない場合は、通紙時の定着不良や搬送不良に繋がるおそれがある。
そこで、第4の実施形態では、定着装置12のユニット間(ロット間)での部材等のばらつきを考慮して、このばらつきを打ち消す制御(装置間補正制御という)を実施することで、定着装置12のロットに関わらず、安定した定着品質および搬送品質を保証するニップ幅を維持するものである。また、第4の実施形態で説明する装置間補正制御は、第3の実施形態で説明した蓄熱回転制御と併せて実施することが好ましい。これらのニップ幅を適切に調整する制御をあわせて実行することで、定着装置12のロット、通紙する記録媒体Pの種別、定着装置12の蓄熱状態に関わらず、安定した定着品質および搬送品質を保証するニップ幅を維持することができる。
装置間補正制御について説明する。第4の実施形態では、ニップ幅調整制御における加圧ローラ17の位置は、カム18dの基準位置からの回転時間の制御により制御される。
図12は、加圧ローラ17の位置制御の説明図である。加圧ローラ17の位置は、例えば、加圧ローラ移動機構18のカム18dと同回転軸上に設けられた形状の異なる2つのフィラーを2つのセンサ(センサA、センサB)により検知することで決定される。図12に、離間時ポジション、基準ポジション、調整ポジション、通常加圧ポジション、上限ポジションを示している。
記録媒体Pが、普通紙などの場合は加圧ポジションが固定のもの(通常加圧ポジション)で通紙されるが、封筒などのニップ幅の成立範囲が狭い用紙を通紙する場合は、加圧ポジションが調整される(調整ポジション)。
ここで、調整ポジションは、基準ポジションからのカムの回転時間(カム回転時間P1[msec])で規定されるため位置を連続的に変更可能である。しかしながら、カム回転時間P1を同じ値としても、定着装置12の定着ローラ15の外径や硬度のばらつき、カム18dの寸法ばらつきによって定着装置12ごとに差異が生じ、ロットにおいて、所望のニップ幅を得られない定着装置12が存在する可能性がある。そのため、以下に説明する装置間補正制御を実施する。
図13は、カム回転時間P1とニップ幅との関係を示すグラフである。装置間補正制御では、先ず、各定着装置12において、カム回転時間P1に対するニップ幅のデータを少なくとも2点取得する。このデータの取得は、定着ローラ15の熱膨張の影響を避けるため、熱飽和状態にて実施する。
次いで、得られた少なくとも2点のデータから一次関数を導出する。データ量を増やすことで一次以上の関数を導出することも好ましい。そして、得られた関係式に基づいて、所望のニップ幅を得るためのカム回転時間P1を算出することが可能となる。例えば、図13において定着装置Aではニップ幅Aを得るためにはカム回転時間A1、ニップ幅Bを得るためにはカム回転時間B1であり、定着装置Bではニップ幅Aを得るためにはカム回転時間A2、ニップ幅Bを得るためにはカム回転時間B2となる。これにより、所望のニップ幅に基づいて、各定着装置12でそのニップ幅を達成するためのカム回転時間P1を算出することができる。
以上説明した第4の実施形態に係る定着装置12では、定着装置12のユニット間(ロット間)での部材等のばらつきを考慮して、このばらつきを打ち消す制御を実施している。具体的には、加圧ローラ17の位置決定に使用されるカム回転時間を、定着装置12ごとに算出したカム回転時間とニップ幅との関係式に基づいて決定している。これにより、定着装置12のロットによるばらつきを打ち消すことが可能となり、定着装置12のロットに関わらず、安定した定着品質および搬送品質を保証するニップ幅を維持することができる。また、第3の実施形態で説明した制御を併せて実施することで、定着装置12のロット、通紙される用紙銘柄、定着装置の蓄熱状態にかかわらず、安定した定着品質・搬送品質を保証するニップ幅を維持することが可能となる。
[第5の実施形態]
第4の実施形態では、定着装置12ごとの定着ローラ15の外径や硬度のばらつき、加圧ローラ移動機構18のカム18dの寸法のばらつきを打ち消す装置間補正制御を実行する定着装置12について説明した。装置間補正制御では、定着装置12ごとにカム回転時間P1とニップ幅との関係性を表す値をパラメータ(例えば、一次関数の場合の相関係数)として予め記憶しておき、定着装置12ごとに、最適なニップ幅を得るためのカム回転時間を求めている。これにより、定着装置12ごとに最適な加圧ローラ17の位置を設定することを可能としている。
この相関係数などのパラメータについては、定着装置12の筐体に貼られたラベルや、収容箱、付属書類等に記載しておき、定着装置12の交換時において、交換作業者(サービスマンやユーザ)が画像形成装置の操作部から入力することで、本体側の制御部の記憶部に記憶させることが考えられる。
しかしながら、これを交換作業者による入力とすると、入力作業は煩雑であるとともに入力ミスの発生も考えられる。また、ユーザの中には、1台の画像形成装置に対し、複数の定着装置12を使い分けて使用するユーザもいるため、定着装置12の交換の度に、入力を必要とすることは煩雑であり、効率的な使用とは言えない。
そこで、第5の実施形態では、このパラメータを定着装置12が備えるICタグに記憶させておき、定着装置12の交換時において、ICタグに記憶されたパラメータを画像形成装置本体側で読み込んで、本体側の記憶部に書き込む(換言すれば、ICタグに記憶されたパラメータが本体側の記憶部に送信される)ものである。これにより、画像形成装置本体側の記憶部に書き込まれたパラメータに基づいて、装置間補正制御を実行することが可能となる。
図14は、第5の実施形態に係る定着装置12の外観斜視図である。図14に示す定着装置12は、筐体25にICタグ26を設けている。ICタグ26は、電波を受けて働く小型の電子装置の1つであり、例えば、既存のRFIDタグなどを用いることができる。ICタグ26は、例えば、0.4〜1.0mm角程度の小さな半導体チップ部と、外部との無線通信を可能とする通信部としてのアンテナ部(ループアンテナ)から構成され、半導体チップ部には記憶部(メモリ)が搭載されている。
ICタグ26は、ICタグリーダから発射される電波によって微量な電力を生み出し(電磁誘導方式)、その電力で、内蔵されているタグIDなどの情報処理を行い、電波を送信する。
ICタグリーダは、例えば、アンテナ、チューナー、リーダIC等で構成される。ICタグリーダは、画像形成装置の本体側であって、ICタグ26との通信可能な範囲に設けられる。ICタグリーダは、画像形成装置の制御部の一部として構成されても、画像形成装置の制御部とは別途設けられて、該制御部と情報の送受信が可能に接続されるものであってもよい。
ICタグリーダは、ICタグ26から発信される電波信号を読み取ってICタグ26の情報を得る。電波出力の関係から、ICタグリーダはICタグ26に近接配置される。また、ICタグリーダは必要に応じてICタグ26の内容を書き換えられるライタ機能が備わり、ICリーダ/ライタとなる。
定着装置12におけるICタグ26の取り付け位置は、熱の影響を受けにくくするため、ヒータ24よりも下側(加圧ローラ側)に設けることが好ましい。例えば、図14に示すように、ICタグ26は、筐体25において、定着装置12を画像形成装置の本体側と接続するための接続部27(ドロワコネクタ)の下方に設けることが好ましい。なお、定着装置12におけるICタグ26の取り付け位置および画像形成装置の本体側のICタグリーダの取り付け位置は、ICタグリーダがICタグ26から発信される電波情報を受信できる位置に取り付けられればよく、図14の例に限定されるものではない。
以上説明した第5の実施形態に係る定着装置12では、定着装置12ごとに異なるカム回転時間P1とニップ幅との関係を表す情報を、定着装置12のICタグ26に記憶させておき、定着装置12の交換時において、ICタグ26に記憶されたパラメータを画像形成装置本体側で読み込んで本体側の記憶部に書き込み、これに基づいて、装置間補正制御を実行している。
したがって、交換時にユーザやサービスマンがパラメータを直接入力する必要を無くし、ユーザビリティの向上を図ることができる。特に、複数の定着装置12を使い分ける場合において、交換の度に、パラメータを直接入力する必要を無くし、ユーザビリティの向上を図ることができる。
なお、第5の実施形態では、カム回転時間P1とニップ幅との関係を示す情報を定着装置12のICタグ26に記憶する例について説明したが、これに替えて、またはこれに合わせて、その他の必要な情報を適宜記憶させておき、定着装置12の交換時に画像形成装置本体側で読み込んで記憶部に記憶させるようにしてもよいのは勿論である。また、必要に応じて、ICタグリーダ/ライタとして機能させて、定着装置12のICタグ26への情報の追加、更新を行うようにしてもよい。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
上記実施形態は、本発明をタンデム方式のカラーレーザプリンタ100に適用した例であるが、本発明は、定着装置を備えるあらゆる画像形成装置に対して有効に適用可能である。また、本発明をベルト定着方式の定着装置11,12に適用した例であるが、本発明は、他の方式の定着装置にも有効に適用可能である。また、各実施形態で説明した構成、制御は、他の実施形態にも適用可能であることは勿論である。