以下、実施例を図面を用いて説明する。洗い工程において、ドラム式洗濯乾燥機の基本構成と洗い工程から乾燥工程における各々の構成要素の作用について説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図を示す。また図2は、本発明の第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す正面から見て右側面の概略断面図である。
まず外観について説明する。ベース1hの上部に、主に鋼板と樹脂成形品で作られた側板1a及び補強材(図示せず)を組合わせて骨格を構成し、さらにその上に前面カバー1c、上面カバー1eを取り付けることで筐体1を形成している。前面カバー1cには洗濯物207を出し入れするドア9が設けられており、背面には背面カバー1dがとりつけられている。
次に洗濯乾燥機の概略構造と、洗い工程から乾燥工程までにおける各構成要素の動作と役割について簡単に説明する。図1に示す筐体1の内側には図2のごとく、ほぼ中央部に外槽2が備えられている。外槽2は下部の複数個のダンパ5により支持されている。外槽2の内側には回転可能に設けたドラム3が設けられ、ドア9を開けて洗濯物207が投入される。ドア9自体は、ドア枠9bにドアガラス9aを固定したものであり、ヒンジ(図示せず)を用いて、筐体にドア9を取り付けている。回転可能なドラム3の開口部の外周には、脱水時の洗濯物207のアンバランスによる振動を低減するための、流体バランサー208が必要に応じて設けられている。また、ドラム3の内側には洗濯物207を持ち上げる複数個のリフター209が設けられている。回転可能なドラム3は金属製フランジ210に連結された主軸211を介して、ドラム駆動用のモータM10aに直結されている。あるいは本実施例に対して別方式となる、主軸に固定されたプーリと外槽に固定したモータとをベルトを介して連結させ、ドラムを駆動させるいわゆるベルト駆動構成でもよい。
また外槽2の開口部には弾性体からなるゴム製のベローズ10が取付けられている。このゴム製のベローズ10は、外槽2内とドア9との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い,すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。回転可能なドラム3は、側壁である円筒部に遠心脱水兼通風用の多数の小孔(図示せず)を有する。
図3は、本発明の実施形態に係るドラム散水機構と温風循環機構を模式的に示した斜視図である。ドラムへの散水機構224は、外槽2下部にある熱交換ダクト231の一部をなす水受け部54から循環ポンプ18を介してドラム3上部に散水する構成である。温風を循環させる機構は、外槽2の循環空気出口2bから送風ファン20を介してヒータ237が収まっている熱交換ダクト231で空気を加熱し、吹出しノズル203からドラム3内に吹き出される温風を循環させる構成である。散水には、ドラム3の回転とは独立かつ強制的に洗浄水を外槽2上部まで汲み上げて散水させる散水機構224のほかに、外槽2内に貯めた洗浄水を外槽2の内側にて回転させるドラム3により掻きあげて洗濯物に散布させる散水作用も備えている。また熱交換ダクト231の一部をなす水受け部54の底面54aには、排水のために排水口21(図3参照)が設けられており、糸くずフィルタ222と排水ポンプ230を介して、排水ホース26に通じており、水受け部54内の水を排水ポンプ230により排水できる。
送風手段である送風ファン20と送風ファン20出口からの送風を熱交換ダクト内に導く送風ダクト29は、外槽2から離して筐体1に固定(図示せず)されている。一方、温風を加熱する熱交換ダクト231と温風ダクト231及び吹出しノズル203は外槽2に固定されており、吹出しノズル203は、洗濯乾燥機正面から見て回転可能なドラム3の中心軸よりも上側且つ、洗濯乾燥機側面から見て、正面寄りの外槽2前側に固定されている。送風ファン20は筺体に固定した構造のため、送風ファン20と接続されている送風ダクト29の出口と熱交換ダクト231とは柔軟構造のゴム製の蛇腹管212で連結されており、外槽2の振動を吸収している。その長手伸縮方向が外槽2の回転軸に対して略垂直となる配置で接続し、外槽2の振動を吸収している。また同様にして換気ダクト232と送風ファン20の吸込側の接続にも、ジャバラホース215を設けている。排水口21,送風ファン20の吸気側につながる循環空気出口2b及び熱交換ダクト231の出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
また熱交換ダクト231の一部をなす水受け部54には、前述のように排水口21を設けている。送風ダクト29及び温風ダクト233に連結される上流部231a(図4参照)と下流部231bには、流れ込んだ洗浄水などを水受け部54に流下させるための傾斜を設けてある。この傾斜は運転中にドラム3が数度傾斜した状態においても、速やかに流下できる程度としておく。なお、吹出しノズル203は、外槽2の前面側に限らずモータM10a(図2参照)のあるドラム3背面からの吹き出しでも何ら差し支えない。この場合は、ドラム3の背面は網目形状(図示せず)のようにして通風抵抗を極力小さくしたものが好ましい。
洗濯もしくは洗濯乾燥コースを選んで運転を開始すると、投入された洗剤を溶かして洗濯物207に散布する洗剤溶かし工程を実行する。洗い工程の初期は、工程終了までに使用する全水量よりも少ない給水量で洗剤を溶かして洗浄水を高濃度洗剤液とし、ドラム3の回転による洗濯物207の攪拌動作とともに、ドラム3による掻き揚げ動作で高濃度洗剤液を散布する。さらに掻き上げきれなかった高濃度洗剤液を循環ポンプ18による強制循環にて散布する。このため通常は、外槽2内には高濃度洗剤液のしみこんだ洗濯物207と、外槽2下部の水受け部54に散布し切れなかった少量の洗剤液が存在する。ドラム3を回転させることで、洗濯物207をドラム3上部に持ち上げた後、重力により下部まで落下させるタンブリング動作に基づくたたき洗いを行い続けると、洗濯物207にしみこんだ高濃度洗剤液が搾り出されてくるが、もし、水受け部54が満たされるほどの高濃度洗剤液が溜まれば、ドラム3の回転に伴う洗浄水の掻き揚げ動作により再び散布できる。さらに必要に応じて間欠的に循環ポンプ18を駆動させて、搾り出された高濃度洗剤液を洗濯物207に強制散布する。この動作中において、高濃度洗剤液と洗濯物207のいわゆる洗浄温度を上げることで、洗浄性能を向上できる。本実施例では、この洗い工程においては、送風ファン20を駆動させて熱交換ダクト231にて温風をつくり、高濃度洗剤液及び洗濯物207を温める。
図4は本実施例における熱交換ダクト231の概略構造を示す斜視図である。ヒータ237を収めた部分が外槽2の水受け部54と一体成型としており、その水受け部54に熱交換ダクトの上流部231aと下流部231bを設けた構成としている。外槽2と水受け部54の境目には、開口部239を有する仕切り板238を設けている。上流部231aから下流部231bへと空気を流す場合、仕切り板238の開口部239から空気の一部が外槽2内へと通風できる。
一方、ドラム3内の洗濯物207が浸水する程度の水量が充填された洗い工程では、外槽2と水受け部54の水が開口部239を通して攪拌される。
図5は、熱交換ダクト231通風時の空気流の分岐する様相を示した模式図である。水受け部54から外槽2へ分岐する風量は、上流部231aから下流部231bに向かう通風量の一部が開口部239を通じて順次分岐されていく。本実施例ではヒータ237を外槽2の高さ方向に対して2段構成として、分岐される空気もヒータ237と十分に接触させることで、高温に加熱できる構成としている。また図4の抜粋図に示したように、仕切り板238の開口密度を上流部231a側で低く、下流部231b側に向かうにつれ増やしていく構成とすれば、分岐される空気量を、上流部231aから下流部231bに向かう流れ方向に対して、より均一な分布とすることができる。これによりドラム3及びその内部の洗濯物207をより均一に温めることができる。また仕切り板238の開口密度を、熱交換ダクト内の上流部231aから下流部231bに向かう空気の流れ方向に対して、両端部で高くし、ヒータ収納部に当たる中央部で低くすることで、水受け部54から外槽2へと分岐される空気量を少なく調節できる。温水加熱時のドラム3の回転による水受け部54内の水と外槽2内の水の混合には、両端部の開口密度の高い部分を利用することで、水受け部54から外槽2の底部にわたる浸水の加熱には何ら差し支えない。
このように構成したドラム式洗濯乾燥機における洗い工程から乾燥工程に至るまでを運転パターンと温風及び温水生成のタイミングの観点から、図2、3を用いて詳述する。なお,通常の洗濯コース運転の前段階として、洗い工程から脱水工程までを、通常の洗濯コース用とは分けて準備した洗剤により行う予洗い運転を設定できる機種もあるが、ここでは通常の洗濯運転を対象として述べる。
回転可能なドラム3内に洗濯物207を投入し、排水ポンプ230を停止させた状態で給水して、ドラム3を回転させて洗濯物207を洗濯する。洗い工程は、大別すると洗剤溶かし工程、前洗い工程、本洗い工程からなる。洗剤溶かし工程は、洗濯開始時の布量センシングで洗剤量と洗濯所要時間を提示し、投入された洗剤を水で溶かして、ドラム3内の洗濯物207に洗浄水を散布する工程である。洗剤投入部に給水された水は、洗剤とともにドラム3下部に位置する水受け部54に導かれる。循環ポンプ18を駆動すると、水受け部54の水は,排水口21から糸くずフィルタ222を介して循環ポンプ18の吸込口(図示せず)に入る。循環ポンプ18で昇圧された高濃度洗剤の洗浄水は、循環ポンプ18の出口と連通する循環吐出口54bから再び水受け部54に戻される(洗剤溶かし工程の循環経路:図3参照)。この循環を繰り返すことで、少ない水で洗剤を溶かした高濃度洗剤液を生成する。循環ポンプ18の出力は、最大洗濯負荷に応じた洗浄水を、外槽2の上方に設けた散水ノズル223まで、くみ上げるに十分な仕様となっている。このため、前述の洗剤溶かし工程の循環経路で循環させると、循環ポンプ18の所要動力は最終的には熱エネルギーに変わり、高濃度洗剤液の温度を上昇させる。生成された高濃度洗剤液は、本実施例では循環ポンプ18の回転方向を替えることで、外槽2の上方に設けた散水ノズル223までくみ上げられて、ドラム3内の洗濯物207へ散布される。すなわち、循環ポンプ18の出口には、外槽2上方まで導く経路と、上述のように散布せずに水受け部54に戻す経路が必要となる。これに対しては、循環ポンプ18のケーシング外周に各々の経路につながる吐出口(図3参照)を設けておき、循環ポンプ18の回転方向を替えて、回転方向に応じて最初に連通する吐出口側から吐出させることで経路を切り替えている。あるいは循環ポンプ18の吐出口は一箇所として、その下流側で分岐させて流路を切り替えても、機能としてはなんら差し支えない。
前洗い工程では、高濃度洗剤液が散布された洗濯物207を、タンブリング動作にてたたき洗いを実行する。洗濯物207は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、洗剤成分と機械力の作用により、洗濯物207から汚れを分離できる。前述のように、少ない水で洗剤を溶かした高濃度洗剤液は、洗濯物207に散布された後にはほとんど水受け部54に残らないため、ヒータ237に通電するとともに送風ファン20を駆動させて、温風をドラム3内に送ることができる。これにより、洗濯物207を温めながら洗浄することができる。この場合、大量の洗浄水を加熱して、洗浄水とともに洗濯物207を温めるよりも、より少ない高濃度洗剤液と洗濯物207を温めるので、効率よく温めることができる。また繊維の隙間を水が占有しているので、乾いた洗濯物207よりも熱伝導が良く、より効率よく加熱できる。また高濃度洗剤液の温度を上げることで、保水されている高濃度洗剤液の表面張力を下げることができることと、洗濯物207の温度を上げることで、繊維中の湿っていない箇所の空気とともに繊維を膨潤できるので、高濃度洗剤液の繊維への浸透をより促進できる。これにより繊維から、より多くの汚れを短時間で分離できる。分離された汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。温風の吹出しノズル203と散水ノズル223とは、洗濯乾燥機を正面から見て、中心軸に対して相対する配置としている。このように温風と水流との直接接触が促される相対配置とすることで、高濃度洗剤液のしみ込んだ洗濯物207の攪拌による発泡がおきても、発泡した散水や洗濯物207の表面に付着する泡に効率よく温風を当てることにより、速やかに消泡できる構成としている。
また汚れによっては、洗濯物207にかけた洗浄水の水量が少ない(洗剤濃度が高い)ほうがよく落ちる場合と、逆に洗浄水の水量が多い(洗剤濃度が低い)ほうが良く落ちる場合とがある。両者に作用する汚れ落ちの原動力には違いがあり、以下のように解釈できる。洗剤の主成分の一つである界面活性剤は繊維の濡れを促進して、さらに汚れや布の表面電位を、界面活性剤のマイナス極性に引き寄せることで、負に帯電させる働きがある。これにより、洗濯物207から浮かせた汚れ同士や繊維と汚れの間の反発力を増す効果がある。このため、ファン・デル・ワールス力を主体として付着している固形の汚れの洗浄には、界面活性剤の濃度が高いほうが、ファン・デル・ワールス力に対抗させる前述の反発力を増強できる。よって固形汚れなどは、一般的に界面活性剤濃度が高いほうがよく落とせる。
一方、水や洗浄水に溶け易いいわゆる水溶性の汚れは、溶媒である洗浄水に対する溶質となる汚れの濃度によって、溶解速度が変わる。汚れの濃度が低い液では溶解速度が大きいが、濃度が高い液では溶解速度が低下する。このため洗濯物207が保水する洗浄水中に分散している汚れの濃度を低くしておけば、さらに洗濯物207から汚れが落ちやすい。換言すれば、洗濯物207の保水する洗浄水は、汚れの濃度の極めて低い洗浄水に置き替えてやるか、汚れの濃度を低下させる処置が必要となる。即ち、この種の汚れに対する界面活性剤の役割は、洗濯物207からはがした汚れを分散保持して、凝集や再付着を防ぐ役割が大きいので、ある程度の洗剤濃度が満たされていれば、汚れ落ちに対する洗剤濃度の依存性は小さい。
また、どちらの汚れに対しても、洗浄温度を上げることは、結果的に洗浄力を増すことにつながる。前者に対しては、温度を上げることで、洗浄水中の分子拡散が促進されるので、布表面や汚れ表面に、より多くの界面活性剤を付着させることができ、反発力を増強できる。後者に対しても、洗浄水中での界面活性剤の拡散が向上し、布表面の濡れを促進できる。さらに分離させた汚れも、効果的に拡散できる。
その後の本洗い工程では、前洗い工程が終了した時点で追加給水して、水受け部54の水量を増やして、水位を上げる。この水位は、循環ポンプ18により水受け部54から洗浄水をくみ上げて、外槽2上部の散水ノズル223から連続して散布するのに十分な水位を保つものとする。すなわち十分な洗濯時間を確保して、洗浄水の水量が少なかった前洗い工程において落とし難かった汚れを効果的に落とす工程である。散水ノズル223からの散布は、連続であっても間欠であってもよい。具体的には、洗濯物207の裏側などに多くの汚れがまだ付着している間は、連続で散布して洗浄水の攪拌を促進することで、洗濯物207が保水する洗浄水を、常に汚れ濃度の低い洗浄水に入れ替えることができる。その後、汚れがほとんど落ちた後は、たたき洗いの機械力を主体として残りの汚れを落とすほうが洗浄効率がよい。よって後半の散布は、機械力を妨げないように間欠散布とするのが好ましい。また循環ポンプ18の駆動力を間欠とすることで、消費電力量を抑えられるので、省エネルギー化の面からも好ましい。
なお散水ノズル223は、外槽2に、洗濯乾燥機正面からみて回転可能なドラム3の中心軸よりも上側且つ、洗濯乾燥機側面からみて、正面寄りの前側の位置に固定されており、散水ノズル223からの噴出範囲を、ドラム3の半径方向に対して広角にして散布する構造としている(図3参照)。この本洗い工程では、広範囲の散布とともに、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げるとともに洗浄水を掻き揚げて、ドラム3内の上方から落下させることにより、洗濯物207に機械的な力を与えてたたき洗いをする。ドラム径が大きいほど、広範囲の散布とたたき洗いの相乗効果が得られ、本洗い工程の時間を短縮できる。この工程において、洗濯物207及び洗浄水の洗浄温度を上げるには、浸水したヒータ237に通電することで洗浄水を温める。循環ポンプ18の駆動力により外槽2と水受け部54の洗浄水は攪拌されるが、循環ポンプ18が無くても、ドラム3の回転により開口部239を有する仕切り板238を通して攪拌できる。以上のように1つのヒータ237を用いて、洗浄時の低水位時は温風により洗濯物207を温めることと、洗浄時にヒータ237を浸水させることで洗浄水を加熱することで洗濯物207を温めること、さらに乾燥時に、このヒータ237により温風を作成できる。
また必要に応じて、本洗い工程は、第1本洗い工程および第1本洗い工程の後に実行される第2本洗い工程を有し、第1本洗い工程の終了時に給水し、第2本洗い工程の水量は第1本洗い工程の水量よりも多くすることで、ドラム回転により掻き揚げる水量を増やす。また必要に応じて第2本洗い工程の循環ポンプ18の循環流量も、第1本洗い工程での循環ポンプ18の循環流量よりも多くする。さらに、第2本洗い工程のドラム駆動のモータM10aの回転速度は、第1本洗い工程のモータM10aの回転速度よりも低くする。
本洗い工程は主に、水量の少ない前洗い工程では洗い難い衣類の内側やポケットの中などの汚れを洗濯物207から分離させるために行う。さまざまな汚れを落とすために、前述のように水量とドラム駆動のモータM10aの回転速度を変えた、少なくとも2つ以上の工程の組み合わせとするのがより好ましい。第1本洗い工程では、ドラム3の回転速度を高くするため、ドラム3の回転とともに上方に持ち上げられた洗濯物207は、全て下方に落ちずに、大半は遠心力により、ドラム3の内壁に押しつけられた状態で、ドラム3とともに回転している。そこに循環ポンプ18から洗浄水を散布させるので、洗濯物207への洗浄水の貫通流速を速くしている。これにより、汚れを洗濯物207から溶け出しやすくしている。これに続く第2本洗い工程では、ドラム3の回転速度を第1本洗い工程よりも低くして、遠心力を弱めて前述の洗濯物207のドラム3への固着を極力抑えて、ドラム3の上方から下方に叩き落すたたき洗いを重視した工程としている。これにより、洗濯物207に機械力を作用させることで、主に疎水性の汚れを落としやすくできる。洗濯物207をドラム3の上方から下方に叩き落とす際に、ドラム3の下方に停留している洗浄水の水位を高くして、かつ循環水量も多くすることで、必要以上に洗濯物207どうしが直接ぶつかり合って、繊維を圧迫させることを防ぐこともできる。
すすぎ工程では、排水ポンプ230を駆動させて洗浄水を排水した後、排水ポンプ230を止めて、外槽2内に所定の水位まですすぎ水を給水する。その後、ドラム3を回転させて、洗濯物207とすすぎ水を攪拌してすすぐ(主に図2参照)。
また、脱水工程においては、排水ポンプ230を駆動させて外槽2内のすすぎ水を排水した後、ドラム3を回転させて洗濯物207を遠心脱水する。脱水回転数は、洗濯物207のバランスがとれずにモータM10aの電流値が上限を超えるなどの不具合がない限り、負荷に応じた設定回転数まで上昇させる。脱水回転数を上げて、ドラム3が高速回転すると、外槽2にも振動が伝わり、外槽2自身も僅かながら振動する。外槽2に固定された熱交換ダクト231と筐体1に固定されている送風ダクト29は蛇腹管212にて連結しているため、蛇腹管212が連動して、振動の一部を吸収する。また脱水工程において温風をドラム3内に吹き込むことで、洗濯物207に含水された洗浄水の表面張力を下げて脱水性能をあげることができる(主に図2参照)。
乾燥工程では、低湿な温風を洗濯物に当て、蒸発した水蒸気を含む高湿なドラム出口からの空気を、送風ファン20の吸込側に戻す手前で、外気と一部換気して湿度を下げた後にヒータ237にて加熱して低湿な温風とする温風乾燥を行う。送風ファン20を駆動させてヒータ237に通電して、温風をドラム3内に送る。温風は、熱交換ダクト231において仕切り板238から外槽2に送られる風量と、熱交換ダクト231を抜けて温風ダクト233を介して吹出しノズル203からドラム3内に送られる風量に分けられる。乾燥初期は洗濯物207の含水量が多いため、ドラム3回転に伴って持ち上げて落下される上下動作のたたき洗いにおいて、ドラム3下部に落下した洗濯物207どうしは密接に堆積するので通風抵抗が大きい。このため仕切り板238からの温風は、ドラム3を温めることで洗濯物207を間接的に温めることができる。一方、吹出しノズル203からの温風は、持ち上げ落下動作の落下時の洗濯物207を温めることができる。乾燥が進み洗濯物207の含水量が減ると軽くなるので、ドラム3の回転に伴う持ち上げ落下動作時の洗濯物207の広がり具合が大きくなり、温風の当たる面積も広くなる。さらに落下時に布どうしが重なり合う充填密度が小さくなるので、下からの温風も通りやすくなる。このように2系統からの温風との熱交換により、効率よく加熱して乾燥させることができる。
本実施の形態例では、送風ファン20の吸込口(図示せず)に通ずる換気ダクト232に設けてある排気トビラ234と給気トビラ235を開けて、循環空気の一部を排気トビラ234から排気して、それとほぼ同量の筐体内空気を給気トビラ235から取り入れる。循環空気の一部を、周囲外気に通ずる筐体内空気と入れ替えることで、ドラム3から出た高湿の空気の湿度を下げることができる。とくに乾燥の前半では洗濯物207の含水量が多いため、循環空気に対する上記筺体内空気との入れ替え量を多くして、吹出しノズル203からドラム内に吹く温風の湿度を低く保つのが好ましい(図2、3参照)。乾燥の後半では洗濯物207の含水量が減ってくるため、洗濯物207の繊維内部からの蒸発を促すために、繊維表面の温度を上げて繊維内部への温度勾配による伝熱量を多くする必要がある。そこで温風の温度を高くして洗濯物207の加熱量を多くするとともに、換気ダクト232での循環空気の一部排気とそれとほぼ同量の筺体内空気を熱交換ダクト内に取り入れる入替量を抑えて、循環空気の温度レベルを上げていくのが好ましい。ただし乾燥負荷が小さく、空気の温湿度レベルを変えても乾燥時間や消費電力量にほとんど影響しない場合などは、前述のような換気ダクト232での空気の入替量は、乾燥工程の全域において固定であっても何ら差し支えない。
以上のように、本実施例による洗濯乾燥機によれば、乾燥工程時に、外槽2下部からドラム3へ導く温風と、熱交換ダクト231を貫通させて吹き出しノズル203からドラム内へ吹き出す温風による2方向からの加熱で、温風から洗濯物207への伝熱性能を高めることができ、効率よく加熱することができる。さらにヒータ237による循環空気の加熱と換気ダクト232での設置場所の環境雰囲気相当の湿度の空気との入れ替えで、低湿度の温風を確保することができる。なお、送風ダクト29内に給水して、ダクト内空気を水冷除湿する(冷却水は送風ダクト29の最低部から送風ダクト29外へ排水)構成を追加装備すると、設置場所の環境空気の湿度が高く、入れ替えても湿度を下げるのが難しい使用条件に対しても安定して乾燥できる。
次に制御装置100および各構成要素の制御フローについて説明する。図6は、本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の制御装置100の構成を示すブロック図である。制御装置100(運転制御手段)は、基本的な動作として、モータM10a(駆動装置M10)および給水ユニット15およびヒータ237への通電を制御して洗い運転を実行可能にする。さらに電導度検出手段4を設ければ、制御装置100において電導度検出手段4で検出した外槽2内の洗浄水の電導度を算出して、すすぎ水内に含有している柔軟仕上剤の有無の判定(基準濃度に対する判別)、脱水工程の短縮の判定、すすぎ工程の短縮の判定等を行うことができる。これにより洗剤の種類や水質及び衣類の汚れ量に応じて、きめ細かな洗濯乾燥運転ができる。
図6に示すように、制御装置100は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と称する)110、駆動回路、操作スイッチ12,13や電導度検出手段4や各種センサからの入力回路等で構成される。マイコン110は、使用者の操作や、洗い工程、乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイコン110は、駆動回路を介して、駆動装置M10(モータM10a)、給水電磁弁16、排水ポンプ230、送風ファン20等に接続され、これらの開閉、回転、通電を制御する。また、使用者にドラム式洗濯機に関する情報を知らせるために、表示器14やブザー(図示せず)等を制御する。
次に、第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の運転工程について、主に制御アルゴリズムの観点から説明する。図7は、第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機における洗濯運転(洗い〜すすぎ〜脱水〜乾燥)の運転工程を説明する工程図である。
ステップS1において、工程制御部112は、ドラム式洗濯乾燥機の運転工程のコース選択の入力を受け付ける(コース選択)。ここで、使用者は、ドア9を開けて、ドラム3の内部に洗濯する洗濯物207を投入し、ドア9を閉じる。そして、使用者は、操作スイッチ12,13を操作することにより、運転工程のコースを選択し入力する。操作スイッチ12,13が操作されることにより、選択された運転工程のコースが工程制御部112に入力される。工程制御部112は、入力された運転工程のコースに基づいて、運転パターンデータベース111から対応する運転パターンを読み込み、ステップS2に進む。なお、以下の説明において、40℃温水洗濯コース(予洗いなしの洗い〜すすぎ2回〜脱水)が選択されたものとして説明する。
ステップS2において、工程制御部112は、ドラム3に投入された洗濯物の重量(布量)を検出する工程を実行する(布量センシング)。具体的には、工程制御部112は、モータM10aを駆動してドラム3を回転させるとともに、衣類重量算出部114が注水前の洗濯物207の重量(布量)を算出する。
ステップS3において、工程制御部112は、コース選択の一つである予洗い工程の選択の有無を判断し、制御アルゴリズムの分岐選択を行う。以下、予洗いなしが選択されているものとする。
ステップS4において、工程制御部112は、洗剤量・運転時間を算出する工程を実行する(洗剤量運転時間算出)。具体的には、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して、外槽2の給水口2aに直接給水する。電導度測定部115は、給水された水の電導度(硬度)を検出する。また、センサT1で、給水された水の温度を検出する。その後、給水電磁弁16を制御して、外槽2への給水を終了する。
洗剤量・洗い時間決定部116は、ステップS2で検出した布量、水の電導度(硬度)、水の温度に基づいて、マップ検索により、投入する洗剤量と運転時間を決定する。すなわち布の量、水の電導度と温度に対して各々洗浄性能を確保できる洗剤量と運転時間をデータのマップとして記憶しておき、測定した値をマップと照らし合わせて、測定値が収まる範囲内に基づいた洗剤量と運転時間を決定する。そして、工程制御部112は、決定された洗剤量・運転時間を表示器14に表示する。なお、外槽2に給水して水の電導度(硬度)および水温を検出するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、前回運転時の水の電導度(硬度)および水温をマイコン110の記憶部(図示せず)に記憶しておき、それを用いてもよい。
ステップS5において、工程制御部112は、洗剤投入待ち工程を実行する(洗剤投入待ち工程)。例えば、工程制御部112は所定時間待機して、ステップS6に進む。なお、工程制御部112は、洗剤投入部7の開閉を検知する手段(図示せず)により、洗剤投入部7が開けられた後に閉じられた場合、洗剤が投入されたものとして、ステップS6に進む構成であってもよい。
ステップS6において、工程制御部112は、洗剤溶かし工程を実行する(洗剤溶かし工程)。例えば、工程制御部112は給水電磁弁16を制御して、給水管を介して粉末洗剤投入室73aおよび液体洗剤投入室73bに給水する。粉末洗剤投入室73aおよび液体洗剤投入室73bの洗剤と水は、給水口2aから外槽2の水受け部54まで流入する(図3参照)。所定水量まで給水すると、工程制御部112は給水電磁弁16を制御して、給水を停止させる。そして、工程制御部112は洗剤溶かし動作を実行する(洗剤溶かし動作)。具体的には、工程制御部112は、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだ水と洗剤を水受け部54の循環吐出口54bから吐出させる。循環吐出口54bから吐出された水と洗剤は水受け部54を流れ、排水口21へと向かい、循環するようになっている(図3参照)。これにより、水と洗剤が攪拌され、洗剤が水に溶かされるようになっている。所定時間(例えば、10秒)が経過した後、生成した高濃度洗剤液を外槽2の上部の散水ノズル223までくみ上げて、散布する。少ない高濃度洗剤液を、極力、洗濯物207に均一に散布するために、散布直前にドラム3を高速で回転させて、遠心力でドラム3内面に洗濯物207を張り付かせておく。ドラム3の回転を保ちながら、循環ポンプ18で外槽2上部の散水ノズル231までくみ上げた高濃度洗剤液を散布する。高濃度洗剤液は散水時の速度エネルギーと、洗濯物207に到達してから働く遠心力により、ドラム3内壁に向かって洗濯物207に浸透していく。またドラム3は洗濯物207が遠心力で張り付く回転速度で回っているため、たとえばドラム3を80r/minで回した場合、散布時間が20秒でも、ドラム上の同一点に対して約26回散水された水を浴びせることができる。
高濃度洗剤液を洗濯物207に浸み込ませた後、次の工程において温風を効率よく生成し吹き付けることで、消費電力をおさえつつ、洗浄力を向上できる。
ステップS7において、工程制御部112は、前洗い洗浄工程を実行する(前洗い洗浄工程)。前洗い洗浄工程では、高濃度洗剤液を洗濯物207に散布したので、水受け部54に残る高濃度洗剤液の水位は、ヒータ237位置よりも低い。高濃度洗剤液を散布された洗濯物207に、ヒータ237で加熱した温風を送風ファン20により洗濯物207に吹き付け、押し広げるとともに加熱していく。本工程において、洗濯物207は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、洗濯物207の見かけの熱伝導率は高く、効率よく加熱できる。また温度を上げることで、保水されている高濃度洗剤液の表面張力と粘度をさげることができて、さらに洗濯物207の繊維を膨潤させるので、高濃度洗剤液の繊維への浸透をより促進できる。これにより、繊維から汚れを効率よく分離できる。分離できた汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。工程を開始してから所定時間が経過すると、給水電磁弁16を制御して、外槽2内の洗浄水の水位を上昇させる。そして外槽2内の洗浄水の水位が、洗剤溶かし工程時の水位WL0に対して所定の水位WL1(WL0<WL1)まで上昇すると給水を停止させ、前洗い工程を終了し、ステップS8に進む。
ステップS7の前洗い工程が終了すると、工程制御部112は、本洗い工程を実行する。ここで、本洗い工程とはドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げてドラム3内の上方から落下させることにより、洗濯物207に機械的な力を与えてたたき洗いをする工程である。本洗い工程は、ステップS8の本洗い1工程(第1本洗い工程)と、ステップS9の本洗い2工程(第2本洗い工程)と、で構成されている。
ステップS8において、工程制御部112は、第1本洗い工程を実行する(第1本洗い工程)。具体的には、工程制御部112は循環ポンプ18を所定の流量PF1となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗浄水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を所定の回転速度DR1で回転させることにより、ドラム3の内部の洗濯物207をたたき洗いする。水受け部54の水位は給水により、ヒータ237位置よりも高くしたので、ヒータ237は浸水している。水受け部54のヒータ237に通電して追加給水した水を選択設定された所定温度(40℃)まで温める。また設定温度が高い場合や洗濯負荷が大きい場合には、ドラム3の回転と循環ポンプ18を間欠運転とした状態で、送風ファン20を駆動させて温風をドラム3内へ送風することで、洗濯物と含水されている洗浄水を主体にあたためる。ドラム3を連続的に回転させて追加給水を通常の循環ポンプ18で散布させると、洗濯物207の温度は急激に低下してしまうが、このように温風を送風しつつドラム3と循環ポンプ18による散水を間欠運転とすることで、洗濯物207に含まれる水を僅かずつ入れ替えることができるため、洗濯物207の急激な温度低下も抑えることができる。特に高温環境で落としやすい付着した固形汚れなどの洗浄性能を向上させることができる。
所定の時間(T1)が経過すると、工程制御部112は、第1本洗い工程を終了し、ステップS9に進む。ステップS9において、工程制御部112は第2本洗い工程を実行する(第2本洗い工程)。具体的には、工程制御部112は給水電磁弁16を制御して、所定の水位WL2(WL1<WL2)まで外槽2に給水する。また、工程制御部112は循環ポンプ18を所定の流量PF2(PF1<PF2)となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗浄水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を所定の回転速度DR2(DR1>DR2)で回転させることにより、ドラム3の内部の洗濯物207をたたき洗いする。所定の時間(T2)が経過すると、工程制御部112はモータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水ポンプ230を駆動して外槽2内の洗浄水を排水する。
ステップS9において、工程制御部112は第1すすぎ工程を実行する(第1すすぎ工程)。例えば、第1すすぎ工程において、工程制御部112は、給水電磁弁16および排水ポンプ230を制御して、給水と排水を繰り返すとともに、モータM10aを制御してドラム3を回転させ、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだすすぎ水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させて、衣類をすすぐ。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112はモータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水ポンプ230を駆動して外槽2内のすすぎ水を排水する。
ステップS11において、工程制御部112は第2すすぎ工程を実行する(第2すすぎ工程)。例えば、第2すすぎ工程において、工程制御部112は排水ポンプ230を停止し、給水電磁弁16を制御して、所定の水位まで外槽2に給水する。また、工程制御部112はモータM10aを制御してドラム3を回転させ、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだすすぎ水を外槽2の開口部に設けた散水ノズル223からドラム3の内部に散水させて、洗濯物207をすすぐ。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112はモータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水ポンプ230を駆動して外槽2内のすすぎ水を排水する。
ステップS12において、工程制御部112は脱水工程を実行する(脱水工程)。具体的には、工程制御部112は排水ポンプ230を駆動させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を本洗い工程時よりも高速で回転させ、洗濯物207を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112はモータM10aを停止させ、排水ポンプ230を停止して、洗濯コース(洗い〜すすぎ〜脱水)を終了する。なお,この工程において、送風ファン20を駆動させ、ヒータ237に通電させて温風をドラム3内に送ることで、洗濯物207に含まれる水を温めて表面張力を下げて脱水を促進させてもよい。
なお、ステップS7及びステップS8における本洗い工程においては、洗濯物207の黒ずみ、ごわつきを抑制させる運転特性としており、以下にそのメカニズムを中心に説明する。第1本洗い工程(ステップS8)の後に第2本洗い工程(ステップS9)を行うが、第2本洗い工程の水位WL2は、第1本洗い工程の水位WL1よりも高くなっている(WL1<WL2)。即ち、外槽2内の洗浄水の水量を増やすことにより、洗濯物207から剥がされた汚れを洗浄水に分散させることができ、洗濯物207から剥がされた汚れが再び洗濯物207に付着することにより生じる「洗濯物の黒ずみ」を抑制することができる。
また、第2本洗い工程のドラム3の回転速度DR2は、第1本洗い工程のドラム3の回転速度DR1よりも遅くなっている(DR1>DR2)。ドラム3の回転速度DR2を回転速度DR1より遅くすることにより、ドラム3の回転でドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げてドラム3内の上方から落下させる際、落下を開始する位置が低くなる。即ち、たたき洗いされる洗濯物207に加わる落下衝撃(機械力)が抑制され、「洗濯物のごわつき」を抑制することができる。また、水位WL2を高くすることによっても、落下衝撃(機械力)が抑制され、「洗濯物のごわつき」を抑制することができる。一方、ドラム3の回転速度DR1は、遠心力によってドラム3内壁に張り付いた洗濯物207が、上方に持ち上げられるまでに、重力により全て剥がれ落ちてしまうよりも速い回転速度で回して(遠心力>重力)、すべての洗濯物207に対して、たたき洗いのような落下をさせない運転としても、差支えない。即ち、たたき洗いを極力抑えつつ、通常の洗濯運転よりも多い循環水量を洗濯物207に通過させることで、洗浄する運転としてもよい。しかしながら、たたき洗いによる洗浄性能が低下するおそれがあるが、これに対しては、第2本洗い工程の循環ポンプ18の流量PF2を、第1本洗い工程の循環ポンプ18の流量PF1よりも大きくすることで(PF1<PF2)、水流による洗浄性能を確保させて回避できる。たとえば循環ポンプ18の循環流量は、30L/min以上80L/min以下とすることが望ましい。また、第1本洗い工程の運転時間(T1)と第2本洗い工程の運転時間(T2)は、第2本洗い工程の運転時間(T2)の方が第1本洗い工程の運転時間(T1)よりも長くなるように設定するのが望ましい(T1<T2)。このようにすることにより、「洗濯物のごわつき」をより抑制することができる。
ステップS13において、工程制御部は乾燥工程を実行する(乾燥工程)。具体的にはモータM10を制御して、ドラム3を約40r/minで左右30sずつ回転させ、インターバル10sをはさんで回転を繰り返す。すなわち、洗濯物207がドラム3内壁にへばりつくよりも低い回転数での運転とする。この間、連続もしくは間欠的に送風ファン20を駆動してドラム3内に送風するが、ヒータ237も所定の温風温度となるように、連続もしくは間欠的に通電する。乾燥工程の間、排水ポンプ230は間欠的に駆動させておくことで、ドラム3下部から糸くずフィルタ222付近までに残留している水を排水させる。また換気のための給気トビラ235と排気トビラ234を開いて、循環空気の湿度を調節する。この開度は乾燥コースや負荷に応じて予め用意しておいたデータテーブルに基づいて決めておき、規定時間経過後もしくは送風ファン20の吸気側に向かうドラム3出口の空気温度T2が、初期温度に対して規定値以上に上昇してきたのを確認したら、乾燥が進んだものと判断して温風温度レベルを上げるために吸気トビラ235と排気トビラ234の開度を狭めて、換気量を減らすのが好ましい。次に乾燥開始から規定時間経過したら終了判定を行う。具体的には、乾燥初期の送風ファン20の吸気側に向かうドラム3出口温度T2と判定時のT2との差ΔT2を求め、筐体内雰囲気を測定する温度センサT4の乾燥初期値と判定時の値との差ΔT4を求め、その比ΔT2/ΔT4が規定値以上となった場合には、乾燥を終了させる。すなわち雰囲気温度の変化に対してドラム3出口の温風温度の変化が規定よりも大きくなった場合、洗濯物207からの水分蒸発が治まったものと判定し、乾燥を終了させる。
以上のように、第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機の運転工程によれば、洗浄時には各コースの洗浄水量に応じて温風を生成して、洗濯物207と洗浄水の洗浄温度を、効率よく適正値まで温めることができる。また乾燥時には、熱交換ダクト231に送風してヒータ237により温風を作り、熱交換ダクト231の一部をなす水受け部54から外槽2内への温風と、熱交換ダクト231を貫通して吹出しノズル203からドラム3におくる温風により、効率よく洗濯物203を温めることができ、短時間で乾燥できる。
40℃洗浄コースを基準にして説明したが、温度に対して色落ち、色あせが気になる洗濯物や、加温により繊維の縮みが目立ってしまう洗濯物に関しては、通常の洗濯コースを選ぶことができる。この場合には消費電力量を低減できる。さらに、黒ずみが気になる白物や薄い柄物、ごわつきが気になるタオルなど以外の洗濯物で、どちらかというと節水を望む洗濯では、節水洗濯コースを選ぶことができる。この場合は、本洗い工程において水位を上げず、循環流量も、15〜20L/minに設定することで、洗濯全体の使用水量を抑えることができる。
(実施例2)
図8は、本発明の第2の実施例における熱交換ダクト231の基本構成について示した斜視図である。本実施例では仕切り板238の開口部239に、開口部239をふさぐことができるトビラ236を設けた構成としている。トビラ236は通常時は下向きに開き、ダクト通風時は熱交換ダクト231を流れる空気流の流体力をトビラ236が受けることにより、トビラ236は開口部239をふさぐ方向に動く。洗濯工程時ではトビラ236は開いた状態であるため、洗浄水は開口部239から水受け部54へ通水され、さらにドラム3の回転により撹拌される。必要に応じて浸水したヒータ237に通電することで、洗浄水を加熱できる。乾燥工程では送風ファン20から熱交換ダクト231に送風した際に、トビラ236は風力に応じて閉じる方向に角度が変わり、仕切り板238から外槽2側に分岐する温風量を調節できる。例えば乾燥初期は送風ファン20からの送風量を弱めて、トビラ236をほぼ全開にあけた状態として送風量の約全量を外槽2側に通風して、ドラム3と洗濯物207を外槽2下部から全体的に予熱する。その後、循環空気量とヒータ237の加熱量を増やして、吹出しノズル203からドラム3内への吹き出し、洗濯物207内部からの乾燥を促すことで、より効率よく乾燥させることができる。なお、本実施例のトビラ236は、自重と風力のバランスで開度を調節するが、駆動手段(図示せず)を設ければ、熱交換ダクト231を流れる空気流の流体力に関係なく、洗濯物207の量や給水の温度に応じて任意に調整することができる。例えば洗濯物207の量が多い場合はトビラ236を閉じて、吹出しノズル203から洗濯物207に吹き付ける循環空気量を増やすことで、効率よく乾燥させることができる。また洗濯工程での給水温度が低い場合には、乾燥初期においてトビラ236を開いて、水受け部54からドラム3下部に当てる循環空気量を増やして、ドラム3と洗濯物207をより均一に温めることで乾きムラを減らして効率よく乾燥できる。また、本実施例ではドア9の内部に温風ダクト233を設けた構成としている。このような構成とすることで、熱交換ダクト231を貫通して吹出しノズル203までの風路断面積を十分確保できるので、通風抵抗を極力小さくすることができる。またドア9の内部の閉空間が温風ダクト233の断熱に寄与できるので、より温風ダクト233からの放熱損失を減らすことができ、消費電力量を減らすことができる。
図9は第2の実施例におけるトビラ236の変形例を示した断面図である。本実施例ではトビラ236のヒンジ部240に形状記憶合金による開閉補助具241を設けた構成としている。乾燥初期は循環空気の温度が低いので、洗濯時と同様にトビラ236は開いた状態であるが、乾燥が進むにつれドラム3出口からの循環空気温度レベルも上がってくるので、その温度上昇に応じてトビラ236が閉まる方向に開閉補助具241が変形する。すなわち乾燥終盤は、熱交換ダクト231から外槽2側に分岐する風量を減らし、吹出しノズル203からのドラム3内の洗濯物207に吹き付ける風量を多くして、より洗濯物207の内部からの加熱を促進することができるので、より短時間で乾燥できる。
図10は仕切り板238の開口部239形状の変形例を示した断面図である。本実施例では開口部239を通しての熱交換ダクト231と外槽2の連通に対して抵抗を増したいわゆるラビリンス構造部242を設けた構成としている。このような構成とすることで、洗濯時の洗浄水は重力による通水のため、通過時の抵抗をそれほど増やすことなく通水できる。熱交換ダクト231への送風時に、開口部239を通過して外槽2側に分岐させるためには、空気の主流方向に対して逆向きの流れを必要とさせる構成とすることで、通過しにくくできる。これにより、送風ファン20からの送風量のうち熱交換ダクト231を貫通させて吹出しノズル203からドラム3内の洗濯物207に吹き付ける風量割合を常に多くすることができるので、乾燥時のしわを低減することができる。