JP6890186B2 - 靴底用部材及び靴 - Google Patents

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Description

本発明は、靴底用部材及び靴に関し、より詳しくは、内部に複数の樹脂発泡粒子が分散された樹脂複合体で一部又は全部が形成された靴底用部材、及びその靴底用部材を備えた靴に関する。
靴底用部材は、緩衝能力に優れていることが求められる。一般には、このような要求を満たす靴底用部材の材料として、発泡体が用いられている。例えば、特許文献1〜3には、複数の発泡粒子を溶着させて形成された発泡体を備えた靴底用部材が開示されている。
このような発泡体を用いた靴底用部材では、発泡体の発泡率を高くすることにより、靴底用部材の緩衝性を効果的に高めることができる。さらに、高発泡率の発泡体の低い初期剛性によって、そのような発泡体を靴底用部材として備えた靴は、柔らかで快適な足入れ感覚を有している。
しかしながら、このような従来の発泡体が用いられた靴底用部材では、使用により強い負荷を受け続けると、負荷により変形した発泡体の形状復元力が低下しやすい。そのため、靴底用部材の緩衝性及び耐久性が低下しやすいという問題がある。特に、バスケットボールシューズやランニングシューズのような、靴底に高い負荷が掛かりやすいタイプのスポーツシューズでは、靴底用部材の特定の箇所に負荷が集中する傾向にあり、そのような箇所において復元力の低下が起こりやすい。
また、上述のように高発泡率の発泡体を靴底用部材として備えた靴は、負荷を受けた際の変形が大きいため、高い負荷を受けた際に過度に変形してしまうことがある。その場合、変形によって俊敏性が大きく損なわれることや、着用者の足にかかる負担が大きくなるという問題がある。そのため、上述のスポーツシューズでは、高い負荷を受けた際のひずみ量(変形量)が比較的少ない靴底用部材を備えていることが求められる。
他方、特許文献4に開示されるように、緩衝能力を備えた靴底用部材の他の材料として、エラストマーもまた用いられている。エラストマーは発泡体に比べて高い負荷を受けた際のひずみ量が小さく、弾性回復力にも優れているため、このようなエラストマーが用いられた靴底用部材は、緩衝性を示しつつ耐久性にも優れている。
しかしながら、エラストマーが用いられた靴底用部材は、高い負荷を受けていない通常の使用時における靴底用部材の緩衝性が、上述の発泡体からなる靴底用部材に比べて低いという問題がある。さらに、該エラストマーの剛性が比較的高いため、足入れ感覚が硬いという問題がある。
日本国特表2014−521418号公報 日本国特開2013−220354号公報 日本国特開2014−151210号公報 日本国特開平9−206102号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、靴に備えられた際に柔らかな足入れ感覚を示し、十分な軽量性を有しながら過度の変形を抑制することができ、かつ、高い緩衝性及び耐久性を発揮することができる靴底用部材、及びそのような靴底用部材を備えた靴を提供することを課題とする。
本発明者らは、エラストマーからなる非発泡の弾性体をマトリクスとし、その内部に複数の樹脂発泡粒子を分散させた樹脂複合体を用いることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明に係る靴底用部材は、エラストマーからなる非発泡の弾性体マトリクスと、前記弾性体マトリクス内に分散されている複数の樹脂発泡粒子とを備えた樹脂複合体で一部又は全部が形成されている。
本発明に係る靴底用部材では、例えば、前記エラストマーが、熱可塑性樹脂を含む。
本発明に係る靴底用部材では、例えば、前記エラストマーが、熱硬化性樹脂を含む。
本発明に係る靴底用部材では、好ましくは、前記エラストマーが、ポリオレフィン系エラストマー又はポリスチレン系エラストマーを含み、前記複数の樹脂発泡粒子が、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物により構成されている。
本発明に係る靴底用部材では、好ましくは、前記エラストマーが、ポリウレタン系エラストマーを含み、前記複数の樹脂発泡粒子が、ポリウレタン系樹脂を含む樹脂組成物により構成されている。
本発明に係る靴底用部材では、好ましくは、前記弾性体マトリクスの23℃における初期弾性率が、前記複数の樹脂発泡粒子の23℃における初期弾性率よりも小さい。
本発明に係る靴底用部材では、好ましくは、前記弾性体マトリクスと前記複数の樹脂発泡粒子とが、バインダーを介して接着されている。
本発明に係る靴は、上述の樹脂組成物を備えている。
一実施形態の靴底用部材が用いられてなる靴を示した概略図。 一実施形態の靴底用部材(ミッドソール)の概略的断面図。 実施例及び比較例の発泡体の圧縮応力−ひずみ曲線。 実施例及び比較例の発泡体の圧縮応力−ひずみ曲線。 実施例及び比較例の発泡体の圧縮応力−ひずみ曲線。
以下、図面を参照しつつ、本発明の靴底用部材及び靴の一実施形態について説明する。ただし、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
図1は、本実施形態の靴底用部材をミッドソールとして備えた靴1を示したものである。
該靴1は、足の上面を覆うアッパー材2と、アッパー材2の下側に配置されて靴底をなす靴底用部材3,4とを有している。
該靴1は、前記靴底用部材として、地面と接する位置に配されたアウターソール4と、アッパー材2とアウターソール4との間に配されたミッドソール3とを有している。
図2は、本実施形態の靴底用部材であるミッドソール3の断面図を概略的に示したものである。
本実施形態の靴底用部材であるミッドソール3は、図2に示すように、エラストマーからなる非発泡の弾性体マトリクス31と、前記弾性体マトリクス内に分散されている複数の樹脂発泡粒子32とを備えた樹脂複合体により形成されている。
斯かる構成により、ミッドソール3は、初期剛性が比較的小さく、通常使用時のひずみ量が比較的大きいと共に高負荷時のひずみ量が比較的小さく、靴底用部材として十分に軽量であり、かつ、弾性回復性が比較的高くなる。したがって、該靴底用部材を備えた靴は、柔らかな足入れ感覚を示し、十分な軽量性を有しながら過度の変形を抑制することができ、かつ、高い緩衝性を発揮することができると共に、耐久性に優れる。ここで、高負荷時とは、概ね0.6〜1.0MPa程度の応力を該靴底用部材が受けている場合をいう。
なお、本発明の樹脂複合体において、前記複数の樹脂発泡粒子が前記弾性体マトリクス内に分散されているとは、前記樹脂複合体に含まれる実質的に全ての前記複数の樹脂発泡粒子が互いに溶着することなく(すなわち、前記樹脂複合体に含まれる前記複数の樹脂発泡粒子のうち、互いに溶着している樹脂粒子の数が10%未満)、前記弾性体マトリクス内に独立して分布している状態をいう。すなわち、前記実質的に全ての前記複数の樹脂発泡粒子において、それらの表面に前記弾性体マトリクスが存在している状態をいう。
ミッドソール3における上述の分散状態は、次のようにして確認することができる。まず、ミッドソール3を厚み方向に切断し、切断面を観察する。この切断面に露出した樹脂発泡粒子のうち、隣り合う樹脂発泡粒子とマトリクス樹脂を介さずに直接溶着されている樹脂発泡粒子の数割合を算出する。同様の切断、観察及び算出をミッドソール3の少なくとも異なる3か所において行い、それぞれにおいて算出された直接溶着されている樹脂発泡粒子の数割合を平均する。本発明の樹脂複合体では、このようにして得られる数割合の平均が、10%未満である。
なお、本実施形態の靴1では、ミッドソール3が前記樹脂複合体で形成されているが、ミッドソール3の代わりにアウターソール4が前記樹脂複合体で形成されていてもよく、ミッドソール3及びアウターソール4の両方が前記樹脂複合体で形成されていてもよい。また、ミッドソール3の一部またはアウターソール4の一部が、前記樹脂複合体で形成されていてもよい。
(弾性体マトリクス)
本実施形態の樹脂複合体は、エラストマーからなる弾性体をマトリクスとして有する(弾性体マトリクス)。
本明細書において、エラストマーからなる弾性体は、概して、エラストマーを構成する成分に対して10%以上(重量比)の樹脂成分を含んでいる。
前記樹脂成分は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。
前記樹脂成分が熱可塑性樹脂である場合には、成形が容易であるという利点を有する。
また、前記樹脂成分が熱硬化性樹脂である場合には、耐熱性、耐薬品性及び機械強度に優れるという利点を有する。
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂又は熱可塑性ポリウレタン系樹脂を用いることができる。
前記熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂である場合には、前記ポリスチレン系樹脂は、例えば、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)、水添ポリスチレン−ポリ(スチレン・ブタジエン)−ポリスチレン(SSEBS)、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などであってもよく、SEBS、SSEBS、SISがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、前記ポリオレフィン系樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン‐αオレフィン共重合体、エチレン‐プロピレンゴム、ポリプロピレン、エチレン‐酢酸ビニル、エチレン‐アクリル酸共重合体などであってもよく、好ましくは、ハードセグメントとしてエチレン結晶相を備えているエラストマーが好ましい。より詳細には、該ポリオレフィン系樹脂は、ポリマー鎖の片方又は両方の末端にエチレン結晶相を有するエラストマーや、エチレン結晶相とエチレン−αオレフィン共重合部とを交互に有するブロック共重合体であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリウレタン系樹脂である場合には、前記熱可塑性ポリウレタン系樹脂は、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタンなどであってもよく、ポリエーテルポリウレタンがより好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性ポリウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、架橋ゴム、シリコーン系エラストマー又はフッ素系エラストマーを用いることができ、ウレタン系エラストマーが特に好ましい。
また、これらの樹脂成分は、単独で使用されてもよく、2種以上組み合わせて使用されてもよい。
好ましくは、前記樹脂成分としては、ポリスチレン系エラストマーが選択される。その場合には、該ポリスチレン系エラストマー中に含まれるスチレン成分の含有量(スチレン含有量)を適宜調節することによって、前記エラストマーの初期弾性率を適切な値に調節することができる。それにより、靴底用部材の初期剛性及びひずみ量を、適切な値に調整することができる。
前記エラストマーは、可塑剤をさらに含んでいてもよい。その場合には、前記エラストマーは、樹脂がゲル化したポリマーゲルとなっていてもよい。該可塑剤は、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系、オレフィン系などであり、パラフィン系がより好ましい。
前記エラストマーが可塑剤を含む場合には、前記樹脂成分に含まれる前記可塑剤の含有量は、好ましくは、前記樹脂成分全体の10〜300重量%である。
前記エラストマーとしては、前記弾性体マトリクス内に分散される複数の発泡樹脂粒子との溶着性が高い樹脂成分を含むエラストマーを用いることが好ましい。その場合には、バインダー等の接着要素を用いることなく、前記弾性体マトリクスと前記発泡樹脂粒子とを強固に接着させることができる。
例えば、前記発泡樹脂粒子がポリオレフィン系樹脂により構成されている場合には、前記エラストマーは、ポリオレフィン系エラストマー又はポリスチレン系エラストマーであってもよい。前記発泡樹脂粒子がポリウレタン系樹脂により構成されている場合には、前記エラストマーもまた、ポリウレタン系エラストマーであってもよい。
前記樹脂成分が熱可塑性樹脂である場合には、前記エラストマーは、前記複数の発泡樹脂粒子を構成する樹脂組成物の融点(融解ピーク)よりも低い温度において、十分な流動性を有するものが好ましい。その場合には、前記樹脂複合体を製造する際に、前記複数の樹脂発泡粒子を前記弾性体マトリクス内に分散させることが容易になる。
例えば、前記エラストマーは、前記複数の発泡樹脂粒子を構成する樹脂組成物の融点よりも低い温度において、0.1MPa・s以下の複素粘度を有することが好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂がポリスチレン系エラストマーである場合には、前記ポリスチレン系エラストマーの100℃における複素粘度が0.05MPa・s以下であることが好ましい。
なお、本明細書では、エラストマーの複素粘度は、JIS K 7244−4:1999に基づき、測定モード「正弦波歪みの引張モード」にて周波数10Hzで測定して得られた値をいう。
例えば、エラストマーの複素粘度は、測定装置として(株)ユービーエム製動的粘弾性測定装置「Rheogel−E4000」を下記の条件で用いることにより、測定することができる。
測定モード :正弦波歪みの引張モード
周波数 :10Hz
チャック間距離:20mm
荷重 :自動静荷重
動歪み :5μm
昇温速度 :2℃/min
試験片 :長さ33±3mm、幅5±1mm、厚さ2±1mmの短冊状
なお、前記エラストマーは、他の任意の成分を含んでいてもよく、色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの薬品をさらに含んでいてもよい。
前記エラストマーの初期弾性率は、特に限定されないが、好ましくは、23℃における初期弾性率が、0.1MPa以上5MPa以下であってもよく、0.2MPa以上3MPa以下であることがより好ましく、3MPa以下であることがさらに好ましい。その場合には、前記樹脂複合体の初期剛性及びひずみ量を、靴底用部材としてより好適な値とすることができる。前記エラストマーの23℃における初期弾性率が0.1MPa未満であると、靴底用部材の耐久性や機械的強度が不足することがある。
なお、本明細書では、エラストマーの弾性率(ヤング率)とは、23℃における圧縮弾性率をいう。エラストマーの圧縮弾性率の測定は、例えば、後述する実施例に記載された方法により行うことができる。また、エラストマーの弾性率の値として、上述したJIS
K 7244−4:1999に基づく方法により測定される23℃における貯蔵弾性率の値を用いることもできる。
前記弾性体マトリクスは、非発泡体である。これにより、前記弾性体マトリクスを比較的高密度とすることができる。そのため、前記樹脂複合体は、高負荷時のひずみ量が小さいという特性を効果的に発揮することができる。
また、非発泡の弾性体マトリクスを用いることにより、後述する樹脂複合体の成形時において、発泡度の異なる複数の材料を混合して熱プレスした場合に生じ得る樹脂発泡粒子の収縮による成形品の変形が起こらないという利点も生じる。
(樹脂発泡粒子)
本実施形態の樹脂複合体は、非発泡の前記弾性体マトリクス内に、複数の樹脂発泡粒子が分散されている。
前記複数の樹脂発泡粒子は、樹脂発泡粒子とすることが可能な任意の樹脂組成物により構成されていてもよい。例えば、前記樹脂組成物は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリスチレン(PS)、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリエステル(PEs)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリアミド(PA)であってもよい。
好ましくは、前記樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂又はポリスチレン系樹脂であってもよく、例えば、前記エラストマーに含まれる樹脂成分として使用可能な上述のポリオレフィン系樹脂またはポリウレタン系樹脂を用いることができる。
また、これらの樹脂組成物は、単独で使用されてもよく、2種以上組み合わせて使用されてもよい。
前記複数の樹脂発泡粒子を構成する樹脂組成物としては、前記弾性体を構成するエラストマーに含まれる樹脂成分との溶着性が高い樹脂を用いることが好ましい。その場合には、バインダー等の接着要素を用いることなく、前記弾性体マトリクスと前記発泡樹脂粒子とを強固に接着させることができる。
例えば、前記エラストマーに含まれる樹脂成分がポリオレフィン系エラストマー又はポリスチレン系エラストマーである場合には、前記発泡樹脂粒子を構成する樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。前記エラストマーに含まれる樹脂成分がポリウレタン系エラストマーである場合には、前記発泡樹脂粒子を構成する樹脂組成物もまた、ポリウレタン系樹脂であることが好ましい。
また、前記エラストマーに含まれる樹脂成分が熱可塑性樹脂である場合には、前記複数の発泡樹脂粒子を構成する樹脂組成物の融点は、前記エラストマーが十分な流動性を有することが可能な温度よりも高い温度であることが好ましい。その場合には、前記樹脂複合体を製造する際に、前記複数の樹脂発泡粒子を前記弾性体マトリクス内に分散させることが容易になる。
好ましくは、前記複数の発泡樹脂粒子を構成する樹脂組成物の融点は、100℃〜180℃であってもよい。
前記樹脂組成物の弾性率は、特に限定されないが、例えば、23℃における初期弾性率が、10MPa以上400MPa以下であってもよい。なお、該弾性率は、弾性体の弾性率と同様の方法で測定され得る。
なお、前記樹脂組成物は、他の任意の成分を含んでいてもよく、色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの薬品をさらに含んでいてもよい。
前記複数の樹脂発泡粒子は、従来公知の方法を用いて、前記樹脂組成物より作製され得る。具体的には、前記樹脂発泡粒子を構成する発泡樹脂粒子は、例えば、発泡剤を含有していない樹脂粒子を作製した後に発泡剤を含浸させる含浸法を用いて作製されてもよく、発泡剤を含んだ前記樹脂組成物を冷却水中に押し出して造粒する押出法を用いて作製されてもよい。
前記含浸法では、まず、前記樹脂組成物を成形して樹脂粒子を作製する。次に、前記樹脂粒子、発泡剤及び水系分散剤をオートクレーブ内に導入し、熱及び圧力を加えて撹拌することにより、前記樹脂粒子に発泡剤を含浸させる。この含浸させた発泡剤を発泡させることにより、前記発泡樹脂粒子が得られる。
前記押出法では、例えば、先端に多数の小孔を有するダイが装着された押出機内に、前記樹脂組成物及び発泡剤を添加して溶融混練する。この溶融混練物を前記ダイからストランド状に押出した後、直ちに冷却水中に導入して硬化させる。このようにして得られた硬化物を所定の長さに切断することにより、前記発泡樹脂粒子が得られる。
上記の方法において使用される発泡剤は、特に限定されず、例えば、化学発泡剤であってもよく、物理発泡剤であってもよい。
前記化学発泡剤は、化学反応または熱分解により気体を発生する発泡剤である。このような化学発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミドなどの有機系化学発泡剤が挙げられる。
前記物理発泡剤は、液化ガスや超臨界流体などであり、圧力低下または加熱により発泡する。このような物理発泡剤としては、例えば、ブタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロブタンなどの脂環式炭化水素類、炭酸ガス、窒素、空気などの無機ガスが挙げられる。
本実施形態において、前記発泡樹脂粒子を作製するには、前記樹脂組成物を発泡させるために超臨界流体を用いた含浸法を用いることが特に好ましい。その場合には、前記樹脂組成物を比較的低い温度にて超臨界流体に溶解させることができるため、前記樹脂組成物を溶融するための高温が不要となる。このことは、前記樹脂組成物がポリアミド系エラストマーのような融点の高い樹脂を含んでいる場合において、特に有利である。また、該方法では化学発泡剤を使用しないため、化学発泡剤の発泡に由来する有害ガスの発生が抑制されるという利点も有する。
なお、前記複数の樹脂発泡粒子の密度及び発泡倍率は、特に限定されない。
前記複数の樹脂発泡粒子の形状や大きさは、特に限定されない。前記樹脂発泡粒子の形状は、好ましくは球状である。その場合、前記樹脂発泡粒子の体積平均粒径D50(メディアン径)は、好ましくは、直径1〜20mmの範囲であってもよく、より好ましくは、直径2〜10mmの範囲であってもよい。
なお、本明細書では、樹脂粒子の粒径は、マイクロスコープにて粒子の長径を測定した値をいう。
前記発泡粒子の初期弾性率は、特に限定されないが、好ましくは、前記発泡粒子の23℃における初期弾性率は、0.2MPa以上20MPa以下であってもよく、0.3MPa以上10MPa以下であることがより好ましい。その場合には、前記樹脂複合体の初期剛性及びひずみ量を、靴底用部材としてより好適な値とすることができる。
なお、前記樹脂複合体に含まれる前記発泡粒子の初期弾性率の測定は、例えば、後述する実施例に記載された方法により行うことができる。
(樹脂複合体)
本実施形態の樹脂複合体は、非発泡の前記弾性体マトリクス内に前記複数の樹脂発泡粒子が分散したものである。これにより、本実施形態の靴底用部材は、従来の靴底用部材に比べ、軽量でありながら、柔らかな足入れ感覚、過度の変形抑制、緩衝性を発揮することができると共に、耐久性に優れるという利点を有する。
前記樹脂複合体は、例えば、予め複数の樹脂発泡粒子と前記弾性体とをオープンロール又はミキサー等を用いて予備混練することによって、前記弾性体マトリクス内に前記複数の樹脂発泡粒子が分散した予備混練樹脂材料を得た後に、該予備混練樹脂材料を成形型内に導入し、その後に熱プレス機により成形型内で熱プレスすることによって得られる。
このような方法を用いることにより、前記複数の樹脂発泡粒子が前記弾性体マトリクス内に分散されている樹脂複合体を作製することができる。
前記弾性体は、好ましくは、従来公知の方法を用いて粒子状に成形された後に、前記複数の樹脂発泡粒子と混合され得る。粒子状に成形された前記弾性体の形状や大きさは、特に限定されない。
もっとも、前記弾性体を前記複数の樹脂発泡粒子に混合する方法は、特に限定されず、前記弾性体は、任意の方法により前記複数の樹脂発泡粒子に混合され得る。
前記熱プレスの際の温度は、前記複数の樹脂発泡粒子を構成する樹脂組成物の種類、及び前記弾性体を構成する樹脂組成物の種類に応じて、適宜調整される。例えば、前記樹脂発泡粒子がポリオレフィン系樹脂からなり、前記弾性体がポリオレフィン系エラストマーからなる場合には、前記弾性体が混合された前記複数の樹脂発泡粒子は、80〜160℃の範囲で適宜加圧して熱プレスされ得る。
あるいは、前記エラストマーに含まれる樹脂成分が熱可塑性樹脂である場合には、前記樹脂複合体は、上記のようにして形成された複数の樹脂発泡粒子と前記弾性体とを、弾性体を溶融させずに単に混合した後、この混合材料を成形型内に導入し、熱プレス機内全体に熱を伝達するように加熱しつつ熱プレス機により成形型内で熱プレスすることによっても得られる。
この方法を用いることにより、また、所望の靴底用部材の形状を有する熱プレス機を使用することにより、前記樹脂複合体で形成された靴底用部材を一回のステップで製造することもできる。
前記樹脂複合体では、前記複数の樹脂発泡粒子の表面に結合剤が設けられていてもよく、前記弾性体マトリクスと前記複数の樹脂発泡粒子とが、該結合剤を介して接着されていてもよい。その場合には、前記複数の樹脂発泡粒子を構成する樹脂組成物と前記弾性体に含まれる樹脂成分との溶着性が低い場合であっても、前記複数の樹脂発泡粒子と前記弾性体とを強固に接着することができる。
前記結合剤としては、例えば、表面改質剤やポリオレフィン、ポリウレタン等のバインダーなどが挙げられる。ここで、ポリオレフィン及びポリウレタンは、例えば、上述の前記弾性体マトリクスの材料として使用可能なポリオレフィン樹脂及びポリウレタン樹脂であってもよい。また、これらの結合剤は、単独で使用されてもよく、2種以上組み合わせて使用されてもよい。
好ましくは、前記結合剤は、前記複数の樹脂発泡粒子と前記弾性体とを混合する前に、任意の方法により前記複数の樹脂発泡粒子の表面に設けられてもよい。
上記方法としては、例えば、前記複数の樹脂発泡粒子と前記結合剤とをオープンロール又はミキサー等を用いて予備混練することであってもよい。
本実施形態では、前記樹脂複合体に含まれる前記弾性体と前記樹脂発泡粒子との配合割合を、求められる初期剛性及びひずみ量に応じて適宜調整することにより、幅広い物性を備えた種々の樹脂複合体を得ることができる。
例えば、前記樹脂複合体に含まれる前記弾性体の量は、前記樹脂複合体全体に対して5〜90%(体積比)であってもよい。その場合には、前記樹脂複合体を適度に軽量化することができると共に、前記樹脂複合体の弾性回復性を適度に高くすることができる。
また、前記複数の樹脂発泡粒子を前記弾性体マトリクス内に分散させる前に、求められる初期剛性及びひずみ量に応じて、前記複数の樹脂発泡粒子と前記弾性体との配合割合を所定の領域毎に別々に調整しておき、その後に前記複数の樹脂発泡粒子樹脂を分散させて樹脂複合体としてもよい。
例えば、上述したような前記複数の樹脂発泡粒子と前記弾性体との混合材料を熱プレスする方法を用いる場合には、靴底用部材において比較的大きな負荷のかかりやすい領域、具体的には踵部、前足部の領域における弾性体の配合割合を、他の領域における樹脂組成物の配合割合に比べて大きくしてもよい。靴底用部材の踵部における弾性体の配合割合が大きいと、各種スポーツ動作における着地時に、踵部に比較的大きな負荷がかかった場合にも、弾性体の特性による衝撃緩衝効果を効果的に発揮することができる。また、靴底用部材の前足部における弾性体の配合割合が大きいと、カッティング動作時に靴底の過度な変形を抑制することにより、スムーズな体重移動が可能となる。
一方、靴底用部材において比較的大きな負荷のかかりにくい領域では、弾性体の配合割合を、他の領域における樹脂組成物の配合割合に比べて小さくしてもよい。例えば、中足部には大きな負荷はかかりにくいため、靴底用部材の中足部には一定程度の緩衝性があればよい。そのため、中足部の領域における弾性体の配合割合は小さくてもよく、それにより、靴底用部材を軽量化することができる。
上記のように、前記複数の樹脂発泡粒子と前記弾性体との配合割合を所定の領域毎に別々に調整することにより、初期剛性及びひずみ量が領域毎に異なる樹脂複合体を形成することができる。
本実施形態の前記樹脂複合体は、初期剛性が比較的小さく、通常使用時のひずみ量が比較的大きく、かつ、高負荷時のひずみ量が小さい。これらの初期剛性及びひずみ量は、後述する実施例に記載される方法に基づく圧縮応力−ひずみ曲線より求めることができる。
前記樹脂複合体の23℃における初期弾性率は、好ましくは10MPa以下であり、より好ましくは5MPa以下である。
また、本実施形態の前記樹脂複合体は、エラストマーからなる非発泡の弾性体をマトリクスとして備えているため、従来の靴底用部材に用いられる発泡体に比べて圧縮永久ひずみが小さい。そのため、該樹脂複合体で形成された本実施形態の靴底用部材は、弾性回復性に優れているという利点も有する。
(靴底用部材及び靴)
本実施形態の靴底用部材、及び該靴底用部材を備えた靴は、従来公知の靴の製造方法と同様にして製造することができる。
例えば、本実施形態の靴底用部材を備えた靴底用部材の製造方法は、以下の工程を含む。
(a)前記樹脂組成物より、上述の含浸法、押出法等により前記複数の樹脂発泡粒子をそれぞれ製造する第1工程、
(b)オープンロール又はミキサー等を用いて、前記第1工程で得られた前記複数の樹脂発泡粒子と前記弾性体とを予備混練させる第2工程、
(c)前記予備混練材料を成形型内に導入し、熱プレス機により該成形型を熱プレスすることにより、前記複数の樹脂発泡粒子が前記弾性体マトリクス内に分散されている樹脂複合体を得る第3工程、
(d)前記第3工程で得られた樹脂複合体で一部又は全部が形成された靴底用部材を作製する第4工程。
この製造方法では、前記第2工程における予備混練により、前記弾性体からなる弾性体マトリクス内に前記複数の樹脂発泡粒子が分散された予備混練材料を作製する。該予備混練材料は、その後の第3工程において、所望の形状の樹脂複合体に成形される。
あるいは、本実施形態の靴底用部材を備えた靴底用部材の別の製造方法は、以下の工程を含む。
(a)前記第1樹脂組成物より、上述の含浸法、押出法等により前記複数の樹脂発泡粒子をそれぞれ製造する第1工程、
(b)前記第1工程で得られた前記複数の樹脂発泡粒子に、前記弾性体を混合させる第2工程、
(c)前記混合材料を成形型内に導入し、熱プレス機内全体に熱を伝達するように加熱しつつ熱プレス機により該成形型を熱プレスすることにより、前記複数の樹脂発泡粒子が前記弾性体マトリクス内に分散されている樹脂複合体を得る第3工程、
(d)前記第3工程で得られた樹脂複合体で一部又は全部が形成された靴底用部材を作製する第4工程。
この製造方法では、前記第3工程において、熱プレス機内全体に熱を伝達するように加熱することによって、前記混合材料中の前記弾性体が溶融してマトリクス状となり、前記複数の樹脂発泡粒子が前記弾性体マトリクス内に分散されている樹脂複合体が形成される。
これらの製造方法のそれぞれは、前記第1工程の後かつ前記第2工程の前に、オープンロール又はミキサー等を用いて、前記複数の樹脂発泡粒子の表面にバインダー等の結合剤を設ける工程をさらに含んでいてもよい。
また、これらの製造方法における前記第3工程のそれぞれでは、成形型を用いた熱プレスにより、靴底用部材の形状を直接成形してもよい。その場合、前記樹脂複合体で全部が形成された靴底用部材を直接製造することができるため、前記第4工程を省略できる。
以上のように、本実施形態の靴底用部材は、エラストマーからなる非発泡の弾性体マトリクスと、前記弾性体マトリクス内に分散されている複数の樹脂発泡粒子とを備えた樹脂複合体で一部又は全部が形成された靴底用部材であるため、初期剛性が比較的小さく、通常使用時のひずみ量が比較的大きく、高負荷時のひずみ量が比較的小さく、かつ、弾性回復性が比較的高くなる。したがって、該靴底用部材を備えた靴は、柔らかな足入れ感覚を示し、過度の変形を抑制しつつ高い緩衝性を発揮することができると共に、耐久性に優れている。
また、本実施形態の靴は、前記靴底用部材を備えているため、柔らかな足入れ感覚を示し、過度の変形を抑制しつつ高い緩衝性、高い耐久性を発揮することができる。
なお、ここではこれ以上の詳細な説明を繰り返して行うことをしないが、上記に直接的に記載がされていない事項であっても、靴底用部材について従来公知の技術事項については、本発明においても適宜採用可能である。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
(弾性体マトリクス材料)
種々のスチレン系樹脂と、可塑剤としてのパラフィンオイル(密度0.88g/cm)とを、市販の二軸押出混練機を用いて120〜200℃で混合することにより、弾性率の異なるゲル状のスチレン系エラストマー材料1〜3(GEL1〜3)をそれぞれ作製した。
(樹脂発泡粒子)
発泡粒子原料としてポリオレフィン系樹脂を使用し、従来公知の方法を用いて、発泡度の異なる3種類の樹脂発泡粒子1〜3(Foam1〜3、D50=……mm)を製造した。
(樹脂複合体の製造)
実施例1〜5
まず、以降の製造方法に使用する材料として、以下の表1に示す種類の弾性体マトリクス材料及び樹脂発泡粒子と、バインダーとしてのパラフィンオイル含有ポリオレフィン系樹脂とを、弾性体マトリクス材料:樹脂発泡粒子:バインダー=32:10:58(体積比)となるように用意した。
市販の2本ロール混練機を用いて、上記樹脂発泡粒子と上記バインダーとを共に混練することにより、表面のほぼ全域に該バインダーが付着している樹脂発泡粒子を得た。
次に、このようにして得られた該バインダーが付着している樹脂発泡粒子と上記弾性体マトリクス材料とを、市販の2本ロール混練機を用いて110℃で混練することによって、弾性体マトリクス材料を溶融させて弾性体マトリクスを形成すると共に、該弾性体マトリクス中に該樹脂発泡粒子を分散させた。その後、該混練物を室温まで冷却させた。
続いて、上記混練物を成形型のキャビティ内に充填し(このとき、該混練物をキャビティ内に充填できるようにするため、必要に応じて該混練物を切断してよい)、該成形型を熱プレス機による加圧下にて2分間加熱した後、冷水により10分間冷却することにより、樹脂複合体を得た。
得られた樹脂複合体では、前記弾性体マトリクス材料が全体として連続体となった弾性体マトリクス中に、上記樹脂発泡粒子が分散していた。このとき、全体として、各樹脂発泡粒子の間には弾性体マトリクス又はバインダーが介在しており、樹脂発泡粒子同士が直接溶着されている部分はほとんど見られなかった。
比較例1,2
以下の表1に示す種類の弾性体マトリクス材料のみを成形型のキャビティ内に充填し、該成形型を熱プレス機による加圧下にて2分間加熱した後、冷水により10分間冷却することにより、弾性体単独からなる樹脂成形体を得た。
比較例3
オレフィン樹脂とEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)とのポリマーアロイを従来公知の方法により架橋発泡させて、板状の架橋発泡体からなる樹脂成形体を得た。
(スチレン系エラストマー材料の物性試験)
スチレン系エラストマー材料1〜3のそれぞれを直径29mm×高さ12mmの円柱形状に裁断し、そのサンプル片を、オートグラフ精密万能試験機((株)島津製作所製、製品名「AG−50kNIS MS型」)を用いて、23℃下で、ひずみ速度0.1mm/秒にて圧縮することによって得られた応力−ひずみ曲線より、各スチレン系エラストマー材料の初期弾性率Eを算出した。結果を以下の表1に示す。
Figure 0006890186
(発泡粒子の物性試験)
各発泡樹脂粒子の体積平均粒径D50を、マイクロスコープを用いて測定した。また、各発泡樹脂粒子の密度を、試験片重量と試験片体積から算出した。結果を以下の表2に示す。
各発泡樹脂粒子の23℃における初期弾性率Eを、以下のようにして測定した。詳細には、それぞれの発泡樹脂粒子について、発泡樹脂粒子を熱プレスして一体化することにより、比重の異なる複数の平板状成形体を作製した。この複数の平板状成形体のそれぞれに対して、上述の方法により初期弾性率を測定し、平板状成型体の比重と初期弾性率との近似線を作成した。この近似線に基づいて、発泡樹脂粒子の比重から、発泡樹脂粒子の初期弾性率Eを概算した。結果を以下の表2に示す。
Figure 0006890186
(靴底用部材の物性試験)
試験片の作製
実施例1〜5の樹脂複合体及び比較例1〜3の樹脂成形体を、直径29±1mm、厚さ12±1mmの円盤状に切断し、それぞれについて試験片を得た。
密度の測定
実施例1〜5及び比較例1〜3の試験片の密度を、試験片重量と試験片体積から算出した。結果を表3に示す。
圧縮応力−ひずみ曲線の測定
実施例1〜5及び比較例1〜3の試験片の圧縮応力−ひずみ曲線は、発泡体を直径29mm×高さ12mmの円柱形状に裁断し、そのサンプル片を、オートグラフ精密万能試験機((株)島津製作所製、製品名「AG−50kNIS MS型」)を用いて、23℃下で、ひずみ速度0.1mm/秒にて圧縮することによって得た。
このようにして測定した圧縮応力−ひずみ曲線を、図3〜5に示す。また、圧縮応力−ひずみ曲線から求められる、実施例1〜5及び比較例1〜3の試験片の23℃における初期弾性率E(MPa)、ひずみ0.4時の圧縮応力σ0.4(MPa)及び圧縮応力1MPa時のひずみε1MPaを、表3に示す。
Figure 0006890186
表1及び図3〜5から明らかなように、実施例1〜5の樹脂複合体は、比較例1及び2の弾性体単独からなる樹脂成形体に比べ、非常に軽量であることがわかる。
また、実施例1の樹脂複合体は、比較例1の弾性体単独からなる樹脂成形体に比べ、初期剛性Eが同等でありながら、ひずみ0.4時の圧縮応力σ0.4が小さい。同様に、実施例3〜5の樹脂複合体は、比較例2の弾性体単独からなる樹脂成形体と同等の初期剛性Eを有しながら、ひずみ0.4時の圧縮応力σ0.4が比較例2よりも小さい。このことから、実施例に係る樹脂複合体は、同等の柔軟性を有する弾性体単独材料に比べて、高い緩衝性を発揮できることがわかる。
さらに、実施例1〜5の樹脂複合体は、比較例3の架橋発泡体のみからなる樹脂成形体に比べ、初期剛性Eが非常に小さいことがわかる。すなわち、実施例に係る樹脂複合体は、単なる架橋発泡体に比べて、柔軟性が高いため、柔らかな足入れ感覚を示すことがわかる。加えて、実施例1〜5の樹脂複合体は、比較例3の架橋発泡体のみからなる樹脂成形体よりも密度(比重)が高いため、比較的優れた耐久性を有する。
また、実施例2の樹脂複合体は、比較例3の架橋発泡体のみからなる樹脂成形体に比べ、圧縮応力σ0.4が同等でありながら、初期剛性Eが小さく、かつ、圧縮応力1MPa時のひずみε1MPaが比較的小さい。このことから、実施例に係る樹脂複合体は、同等の緩衝性を有する架橋発泡体に比べて柔軟性が高く、かつ、過度の変形及びそれによる形状復元力低下を抑制できることがわかる。
したがって、実施例に係る樹脂複合体を靴底用部材として備えた靴は、柔らかな足入れ感覚を示し、十分な軽量性を有しながら過度の変形及びそれによる形状復元力低下を抑制し、かつ、高い耐久性及び緩衝性を発揮できることがわかる。
1:靴、3:ミッドソール、4:アウターソール
31:弾性体マトリクス、32:樹脂発泡粒子

Claims (5)

  1. エラストマーからなる非発泡の弾性体マトリクスと、前記弾性体マトリクス内に分散されている複数の樹脂発泡粒子とを備えた樹脂複合体で一部又は全部が形成された靴底用部材であって、
    前記複数の樹脂発泡粒子の体積平均粒径D50は、1mm以上であり、
    前記弾性体マトリクスの23℃における初期弾性率が、0.1MPa以上5MPa以下であり、かつ、前記複数の樹脂発泡粒子の23℃における初期弾性率よりも小さい、靴底用部材。
  2. 記エラストマーが、ポリオレフィン系エラストマー又はポリスチレン系エラストマーを含み、前記複数の樹脂発泡粒子が、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物により構成されている、請求項1に記載の靴底用部材。
  3. 記エラストマーが、ポリウレタン系エラストマーを含み、前記複数の樹脂発泡粒子が、ポリウレタン系樹脂を含む樹脂組成物により構成されている、請求項1に記載の靴底用部材。
  4. 前記弾性体マトリクスと前記複数の樹脂発泡粒子とが、バインダーを介して接着されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の靴底用部材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の靴底用部材を備えた靴。
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