JP6890059B2 - 樹脂組成物、並びにこれを用いた被覆電線及びワイヤーハーネス - Google Patents

樹脂組成物、並びにこれを用いた被覆電線及びワイヤーハーネス Download PDF

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本発明は、樹脂組成物、並びにこれを用いた被覆電線及びワイヤーハーネスに関する。詳細には、本発明は、高い難燃性及び環境特性を有する樹脂組成物、並びにこれを用いた被覆電線及びワイヤーハーネスに関する。
自動車に配索される被覆電線の被覆層には、難燃性が要求される。そして、従来、難燃性を付与するために、無機系の難燃助剤として三酸化アンチモン(Sb)などが使用されている。
従来、ポリエチレン重合体100重量部に対して、難燃剤5〜100重量部配合された放射線架橋性ポリエチレン組成物において、難燃剤としての有機ハロゲン化合物に三酸化アンチモン等の無機化合物を併用している(例えば、特許文献1参照)。
特開昭62−192435号公報
従来技術のように、三酸化アンチモンはハロゲン化合物との共存化で高い難燃性を発揮する。しかし、工業製品などに使われる素材は、環境などへ重大な影響を及ぼさないように、様々な規制が設けられている。そのような中、アンチモン化合物は、欧州などにおいて、環境などへの影響が懸念されており、そのリスクが現在調査されている。そして、アンチモン化合物が、環境へ影響を及ぼすと判断された場合、アンチモン化合物の使用が規制対象となることが予想される。
そのため、アンチモン化合物がこのような規制の対象となる前に、三酸化アンチモンを備えなくても高い難燃性を有する樹脂組成物を開発することが求められている。
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、アンチモン化合物を用いなくても、高い難燃性を有する樹脂組成物、並びにこれを用いた被覆電線及びワイヤーハーネスを提供することにある。
本発明の第1の態様に係る樹脂組成物は、流入ガスが空気、加熱速度が20℃/分の条件下において、熱重量測定により得られる中点温度が250℃〜500℃である樹脂と、加熱により分解して不燃性ガスを発生し、前記不燃性ガスの発生量が最大になる不燃性ガス最大量発生温度が前記樹脂の中点温度よりも高い有機ハロゲン化合物と、100℃以上かつ前記不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で水分を発生する水分発生化合物と、を含む。
本発明の第2の態様に係る樹脂組成物は、第1の態様の樹脂組成物に関し、前記有機ハロゲン化合物は有機臭素化合物である。
本発明の第3の態様に係る樹脂組成物は、第1又は第2の態様の樹脂組成物に関し、前記樹脂100質量部に対し、前記有機ハロゲン化合物の含有量が10〜80質量部であり、前記水分発生化合物の含有量が10〜80質量部である。
本発明の第4の態様に係る樹脂組成物は、第1乃至第3のいずれかの態様における樹脂組成物に関し、前記水分発生化合物が水分を発生する温度の下限値は120℃以上である。
本発明の第5の態様に係る樹脂組成物は、第4の態様における樹脂組成物に関し、前記水分発生化合物がTi,Zr,W,Nb,Mo,Al,Ga,Ge,Sn及びBiからなる群より選択される少なくとも1種の金属の水分発生化合物である。
本発明の第6の態様に係る樹脂組成物は、第1乃至第5のいずれかの態様における樹脂組成物に関し、前記樹脂は、ポリエチレン、エチレン系共重合体及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
本発明の第7の態様に係る被覆電線は、第1乃至第6のいずれかの態様における樹脂組成物により形成された被覆層と、被覆層により被覆される導体と、を備える。
本発明の第8の態様に係るワイヤーハーネスは、第7の態様における被覆電線を備える。
本発明によれば、アンチモン化合物を用いなくても、高い難燃性を有する樹脂組成物、並びにこれを用いた被覆電線及びワイヤーハーネスを提供することができる。
本実施形態に係る被覆電線を示す断面図である。 検出対象をHBr(m/z 80)としてEGA−MS(発生ガス分析−質量分析)で測定したときのEGAサーモグラフである。 検出対象をHO(m/z 18)としてEGA−MS(発生ガス分析−質量分析)で測定したときのEGAサーモグラフである。 TG−DTAで測定した結果を示すグラフである。 Al及びその化合物のポテンシャル相図である。 Mg及びその化合物のポテンシャル相図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る樹脂組成物、並びにこれを用いた被覆電線及びワイヤーハーネスについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、所定の樹脂と、有機ハロゲン化合物と、所定の水分発生化合物と、を含む。有機ハロゲン化合物は、樹脂の燃焼を促進するヒドロキシルラジカルを捕捉し、樹脂組成物を難燃性にすることができる。しかしながら、単に有機ハロゲン化合物を樹脂に添加するだけでは、十分な難燃性は得られない。そこで、従来、有機ハロゲン化合物と三酸化アンチモンとを併用することにより、難燃性を向上させていたが、三酸化アンチモンには、人体への有害性の懸念が報告されている。このため、本実施形態の樹脂組成物では、有機ハロゲン化合物と、特定の水分発生化合物とを併用することにより、三酸化アンチモンを使用せずに難燃性を向上させている。
ここで、熱重量測定により得られる中点温度が250℃〜500℃である樹脂は、主に上記温度領域において、可燃性ガスを発生させて熱分解する。この可燃性ガスは、有機ハロゲン化合物が加熱分解して発生する不燃性ガスにより燃焼が抑制され、また、有機ハロゲン化合物の分解に基づく不燃性ガスの発生は、高温の水蒸気により促進される。そのため、本実施形態では、樹脂と、不燃性ガスを発生する有機ハロゲン化合物と、不燃性ガスの発生温度よりも低温で水蒸気を発生する水分発生化合物と、を備えることで、樹脂の燃焼を抑制し、樹脂の難燃性を向上させている。以下、各構成材料の詳細を説明する。
(樹脂)
樹脂は、流入ガスが空気、加熱速度が20℃/分の条件下において、熱重量測定により得られる中点温度が250℃〜500℃である。なお、熱重量測定により得られる中点温度は、370℃〜470℃としてもよい。
熱重量測定(TG)により得られる中点温度は、JIS K7120:1987(プラスチックの熱重量測定方法)に従い測定することができる。中点温度は、試験片の質量変化が始まる時点の質量を100%としたときにおける、質量が50%に減少した時点の温度である。具体的には、開始温度における試験片の質量と、終了温度における試験片の質量との質量差が、半分の値となる質量における温度である。なお、開始温度は試験片の質量変化が始まる温度、終了温度は試験片の質量変化がなくなる温度である。また、樹脂が多段階で重量減少する場合は、いずれかの段階における中点温度が250℃〜500℃となっていればよい。
中点温度が250℃〜500℃の範囲内にある樹脂としては、例えばポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、アクリルゴムなどが挙げられる。このような樹脂を用いることで、柔軟性に優れた被覆電線を得ることができるため、自動車用途に好適に用いることができる。
<ポリエチレン>
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)などを挙げることができる。これらのポリエチレンは単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。本実施形態におけるポリエチレンは、少量のコモノマーを含む共重合体としてもよい。すなわち、本実施形態におけるポリエチレンとしては、例えば、エチレン単量体の単独重合体、エチレン単量体及び5mol%以下のα−オレフィレン単量体の共重合体、並びにエチレン単量体及び官能基に炭素、酸素、もしくは水素原子だけを持つ1mol%以下の非オレフィン単量体の共重合体である。
<エチレン系共重合体>
エチレン系共重合体は、2種類以上の単量体を用いて重合させたものを用いることができる。エチレン系共重合体は、例えば、エチレン単量体及び5mol%を超えるエチレン単量体以外のオレフィレン単量体の共重合体、並びにエチレン単量体及び1mol%を超える非オレフィン単量体の共重合体である。エチレン系共重合体としては、例えば、エチレンビニルエステル共重合体、エチレンα,β−不飽和カルボン酸及び/又はそのアルキルエステル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンメチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレンメチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン酢酸ビニル−エチルアクリレート共重合体などを挙げることができる。これらのエチレン系共重合体は単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。なお、本実施形態におけるエチレン系共重合体は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、及びエチレン酢酸ビニル−エチルアクリレート共重合体の少なくともいずれか一つを用いることが好ましい。このようなエチレン系共重合体を用いることにより、被覆電線の柔軟性や引張強度などの機械特性を向上させることができる。
エチレン系共重合体に含まれるコモノマーの含有量は特に限定されないが、5〜45質量%の範囲内にあることが好ましく、15〜25質量%の範囲内にあることがより好ましい。コモノマーの含有量をこのような範囲内とすることにより、被覆電線の柔軟性や引張強度などの機械特性を向上させることができる。なお、本実施形態でいうコモノマーは、エチレンモノマー以外のモノマーである。
<ポリプロピレン>
ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレン単量体とプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体又はブロック共重合体などの共重合体を用いることができる。プロピレン以外の単量体としては、例えばエチレン、α−オレフィンなどが挙げられる。
具体的には、プロピレン単量体とプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体として、プロピレンエチレンランダム共重合体、プロピレンα−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・エチレンα−オレフィンランダム共重合体、などを挙げることができる。
また、プロピレン単量体とプロピレン以外の単量体とのブロック共重合体として、プロピレンエチレンブロック共重合体、プロピレンα−オレフィンブロック共重合体、プロピレン・エチレンα−オレフィンブロック共重合体、などを挙げることができる。
<熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系の熱可塑性エラストマーの少なくともいずれか一方を用いることができる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系樹脂からなるハードセグメントと、オレフィン系ゴムからなるソフトセグメントとを含む。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメほントのマトリックス中にソフトセグメントをドメインとして微分散させたポリマーアロイが代表的であるが、ハードセグメントとソフトセグメントとの共重合させたものも用いることができる。オレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。オレフィン系ゴムとしては、例えばエチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとして、芳香族ビニル系重合体からなるハードセグメントと共役ジエン系重合体からなるソフトセグメントとを含むブロック共重合体又はランダム共重合体が挙げられる。芳香族ビニル系重合体を構成するモノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα位置換スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン等の芳香族置換スチレンなどが挙げられる。共役ジエン系重合体を構成するモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、及びメチルペンタジエン等が挙げられる。共役ジエン系重合体は、これらのモノマーの重合体である。共役ジエン系重合体としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、及びブチルゴム(IIR)などを用いてもよい。
<アクリルゴム>
アクリルゴムとは、アクリル酸エステルを主成分とする合成ゴムである。アクリルゴムとしては、例えば、アクリル酸エステル共重合体又はアクリル酸エチル重合体が用いられる。アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、アクリル酸エチル又はアクリル酸エステルと、これらを架橋する単量体とからなる、ゴム弾性を有するアクリル酸エステル共重合体、が用いられる。これらを架橋する単量体としては、例えば、エチレンが用いられる。具体的には、アクリル酸エチル重合体として、例えば、エチレンアクリレートエラストマーが用いられる。
また、アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、アクリル酸エチル又はアクリル酸エステルと、エチレンとからなる、ゴム弾性を有するアクリル酸エステル共重合体、が用いられる。具体的には、アクリル酸エステル共重合体として、例えば、エチレンエチルアクリレート共重合体が用いられる。
樹脂は、上記のものを1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。このうち、樹脂が、ポリエチレン、エチレン系共重合体及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含むと、電線用被覆材料として柔軟性等の機能性を付与することができ、製品の取扱い性を改善することができるため好ましい。また、樹脂が、アクリルゴムとを含むと、電線用被覆材料として柔軟性等の機能性を付与することができ、製品の取扱い性を改善することができるため好ましい。
樹脂は、流入ガスが空気、加熱速度が20℃/分の条件下において、示差熱分析(DTA)により得られる発熱ピークのピーク温度が250℃〜500℃である。示差熱分析(DTA)により得られる発熱ピークのピーク温度は370℃〜470℃としてもよい。なお、ピーク温度は、JIS K7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)の規定に準じ、最も大きい発熱ピークのピーク温度を測定することができる。
樹脂は、25〜50質量部のポリエチレンと、50〜75質量部のエチレン系共重合体と、からなることが好ましい。樹脂の組成をこのようにすることにより、樹脂組成物の押出性などの加工性や、引張強度などの機械特性を向上させることができる。
(有機ハロゲン化合物)
本実施形態における有機ハロゲン化合物は、加熱により分解して不燃性ガスを発生し、前記不燃性ガスの発生量が最大になる不燃性ガス最大量発生温度が前記樹脂の中点温度よりも高い有機ハロゲン化合物である。
本実施形態における有機ハロゲン化合物は、有機化合物に少なくとも1つ以上のハロゲンが置換した化合物である。有機ハロゲン化合物としては、例えば、有機フッ素化合物、有機塩素化合物、有機臭素化合物、有機ヨウ素化合物が挙げられる。これらの有機ハロゲン化合物は、樹脂の燃焼を促進するヒドロキシルラジカルを捕捉し、樹脂組成物の燃焼を抑制することができる。なお、有機ハロゲン化合物は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
ヒドロキシルラジカルの捕捉効果及びコストの観点から、有機ハロゲン化合物は、有機塩素化合物及び有機臭素化合物の少なくともいずれか一方であることが好ましい。また、これらの中でも、有機ハロゲン化合物は、有機臭素化合物であることがより好ましい。HBr及びC−Brの結合解離エネルギーはH−Cl及びC−Clの結合解離エネルギーよりも小さく、ヒドロキシルラジカルの捕捉効果が大きいことから、有機ハロゲン化合物は有機臭素化合物であることがより好ましい。
有機塩素化合物としては、例えば、塩素化ポリオレフィン、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン等を用いることができる。これらの有機塩素化合物は単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
有機臭素化合物としては、例えば、1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビス−ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビス−テトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールS、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、オクタブロモフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA(TBA)、TBAエポキシオリゴマー又はポリマー、TBA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、デカブロモジフェニルオキシド、ポリジブロモフェニレンオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス−ペンタブロモベンゼン、ジブロモエチル−ジブロモシクロヘキサン、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモフェノール、トリブロモフェノールアリルエーテル、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ペンタブロモフェノール、ペンタブロモトルエン、ペンタブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルオキシド、ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモフェニルアミン等を用いることができる。これらの有機臭素化合物は単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。なお、高い難燃性を得る観点から、有機臭素化合物としては、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタンを使用することが好ましい。
有機臭素化合物の臭素量は、50%〜90%であることが好ましく、70%〜90%であることがより好ましい。有機臭素化合物の臭素量をこのような範囲とすることにより、ヒドロキシルラジカルの捕捉効果が高くなるため、樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。なお、有機臭素化合物の臭素量とは、有機臭素化合物の分子量に対する有機臭素化合物を構成する合計の臭素原子量の百分率を意味する。すなわち、有機臭素化合物の分子量に対する有機臭素化合物を構成する合計の臭素原子量の百分率は、50%〜90%であることが好ましく、70%〜90%であることがより好ましい。
本実施形態における有機ハロゲン化合物は、上記のように、加熱により分解して不燃性ガスを発生する。ここで、不燃性ガスとは、加熱された有機ハロゲン化合物が分解して発生する、常温において気体の不燃性物質を意味する。不燃性ガスとしては、例えば、ハロゲンガス、ハロゲン化水素ガス、金属ハロゲン化物ガス等のハロゲン化物ガスなどのハロゲン系ガスが挙げられる。なお、金属ハロゲン化物ガスは、有機ハロゲン化合物と、金属を含む水分発生化合物とが、存在する場合に生成する。ハロゲンガスとしては、例えば、臭素ガス(Br)が挙げられる。ハロゲン化水素ガスとしては、例えば、臭化水素ガス(HBr)が挙げられる。金属ハロゲン化物ガスとしては、例えば、三臭化アルミニウム(AlBr)、六臭化二アルミニウム(AlBr)などが挙げられる。なお、金属ハロゲン化物ガスを生成するための金属は、後述の水分発生化合物から供給される。
有機ハロゲン化合物の分解に基づく不燃性ガスの発生量は、温度により異なる。本実施形態では、水蒸気等の水分が存在しないときに有機ハロゲン化合物が分解して不燃性ガスの発生量が最大になる温度を不燃性ガス最大量発生温度と定義する。有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度は、例えば、400℃以上、好ましくは450〜700℃、より好ましくは500〜650℃、さらに好ましくは550〜600℃である。有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度が上記範囲内にあると、有機ハロゲン化合物と、後述の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で水分を発生する水分発生化合物とを併用したときに、不燃性ガスの発生量が樹脂の中点温度近傍で最大になりやすい。
有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度は、樹脂の中点温度よりも高い。すなわち、本実施形態における有機ハロゲン化合物は、低温から加熱していったときに、樹脂の中点温度よりも高温側で、不燃性ガスの発生量が最大になる。これは、一般的な有機ハロゲン化合物の性質であるが、樹脂の中点温度及びその近傍の温度において不燃性ガスの発生量が最大でないために、有機ハロゲン化合物の難燃剤としての特性としては好ましくない。
そのため、従来、有機ハロゲン化合物の難燃剤としての効果を向上させるために、有機ハロゲン化合物と三酸化アンチモンとを併用することが行われてきた。有機ハロゲン化合物と三酸化アンチモンとを併用すると、有機ハロゲン化合物単体の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温の樹脂の中点温度及びその近傍の温度において不燃性ガスの発生量が大きくなるため、難燃剤としての効果が向上する。しかし、三酸化アンチモンは、人体等への有害性が疑われているため、使用の規制が望まれている。
これに対し、本実施形態では、三酸化アンチモンを用いずに、特定の水分発生化合物と、有機ハロゲン化合物とを併用することにより、不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で有機ハロゲン化合物の不燃性ガスの発生量が増大することを見出した。そして、上記構成により、有機ハロゲン化合物の分解による不燃性ガスの発生量が樹脂の中点温度及びその近傍の温度において増大することを見出した。これは、水分発生化合物から発生する水分(水蒸気)が有機ハロゲン化合物の化学構造の一部を切断する等により、有機ハロゲン化合物の分解による不燃性ガスの発生量が不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で増大するためであると推測される。水分発生化合物については後述する。
有機ハロゲン化合物の含有量について説明する。本実施形態では、樹脂100質量部に対し、これに添加する有機ハロゲン化合物の含有量が、通常10〜80質量部である。有機ハロゲン化合物の含有量を10質量部以上とすることにより、樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。また、有機ハロゲン化合物の含有量を80質量部以下とすることにより、水分発生化合物を添加することによる相乗効果が得られやすく、必要以上の有機ハロゲン化合物を用いずに済むことから、樹脂組成物のコストを低減することができる。
なお、添加する有機ハロゲン化合物の含有量が80質量部を超えると、有機ハロゲン化合物と水分発生化合物とを併用する効果が得られにくくなり、樹脂組成物の物理特性が低下し、有機ハロゲン化合物の過剰添加によりコストが高くなるおそれがある。
(水分発生化合物)
本実施形態における水分発生化合物は、有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で水分を発生する水分発生化合物である。具体的には、本実施形態における水分発生化合物は、100℃以上かつ有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で脱水分解して水蒸気を発生する水分発生化合物である。
水分発生化合物は、好ましくは、120℃以上かつ有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で脱水分解して水蒸気を発生する。樹脂組成物の成形加工は、100℃程度またはそれ以上の高温で行われることが多い。このため、樹脂組成物中にボイドが発生しないようにするために、水分発生化合物からの水蒸気を発生が120℃以上であることが好ましい。
水分発生化合物が脱水分解して発生した水蒸気(水分)は、有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で、有機ハロゲン化合物の分解に基づく不燃性ガスの発生量を増大させる。すなわち、水分発生化合物と有機ハロゲン化合物とを併用すると、有機ハロゲン化合物を単体で用いる場合よりも低温で有機ハロゲン化合物の分解に基づく不燃性ガスの発生量を増大させ、難燃性を向上させることができる。
なお、水分発生化合物から発生した水蒸気が有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で不燃性ガスの発生量を増大させるメカニズムは、水蒸気が有機ハロゲン化合物の構造の一部を切断することによると推測される。例えば、ベンゼン環に臭素とエチル基とが結合した構造を有する有機ハロゲン化合物に対して、水蒸気はベンゼン環からエチル基を切断する作用を有する。そして、このエチル基が切断されて変成された有機ハロゲン化合物は、変成前の有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で分解し不燃性ガスの発生量を増大させる。このように、水分発生化合物から発生した水蒸気は、有機ハロゲン化合物を変成し、より低温で分解し不燃性ガスの発生量を増大させる作用を有すると推測される。
このような水分発生化合物としては、例えば、Ti,Zr,W,B,Al,Mg,La,Si,P,S,Nb,Mo,Sn,Hf,Ta,Bi,Ga及びGeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む化合物が挙げられる。これらは、大気雰囲気中、400℃で、Br等の酸化作用を有するBr含有成分(以下、「Br含有成分」という。)と反応することにより金属臭化物からなる不燃性ガスを生成する。このため、水分発生化合物として上記化合物を用いると、水蒸気による有機ハロゲン化合物の分解で生じた不燃性ガスに加えて、金属臭化物からなる不燃性ガスがさらに生成されるため、樹脂組成物の難燃効果が向上する。
また、水分発生化合物としては、好ましくは、Ti,Zr,W,Nb,Mo,Al,Ga,Ge,Sn及びBiからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む化合物が挙げられる。これらは、大気雰囲気中、400℃で、Br等の酸化作用を有するBr含有成分との反応性が良好であるため、金属臭化物からなる不燃性ガスをより多く発生することが期待できる。上記水分発生化合物とBr含有成分との反応性が良好であることは、例えば、後述の図5及び図6に示すポテンシャル相図を比較することにより推測できる。具体的には、図5に示すAlのポテンシャル相図によれば、不燃性物質であるAlBr及びAlBrは気体であり、これらの物質が不燃性ガスであることが分かる。一方、図6に示すMgのポテンシャル相図によれば、MgBrは固体であり、MgBrが不燃性ガスにならないことが分かる。
また、上記水分発生化合物は、金属水酸化物であると、上記温度領域での水分の発生が容易であるため好ましい。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))等が用いられる。
さらに、上記水分発生化合物は、有機酸金属塩等の有機金属化合物であると、上記温度領域での水分の発生が容易であるため好ましい。有機酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸スズ(II)(C1836・1/2Sn)等が用いられる。
また、水分発生化合物としては、燃焼時に水分を発生することが可能なアルキル基等の水素を分子内に有するものを用いることができる。
本実施形態における水分発生化合物は、水分を発生する温度の下限値が、好ましくは120℃以上、より好ましくは120〜200℃である。水分発生化合物の水分を発生する温度の下限値が上記範囲内にあると、常温での水分の発生を抑制することができるため好ましい。
また、本実施形態における水分発生化合物は、水分を発生する温度のピーク値が、通常150〜500℃、好ましくは250〜400℃、より好ましくは250〜300℃である。水分発生化合物の水分を発生する温度のピーク値が上記範囲内にあると、水分発生化合物から発生した水分によって発生が促進される有機ハロゲン化合物の分解に基づく不燃性ガスの量が、樹脂の中点温度及びその近傍の温度で多くなるため好ましい。
樹脂100質量部に対し、これに添加する水分発生化合物の含有量が、通常10〜80質量部である。水分発生化合物の含有量を10質量部以上とすることにより、不燃性ガスを効果的に発生させ、樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。また、水分発生化合物の含有量を80質量部以下とすることにより、樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。
本実施形態の被覆電線の被覆層を形成する樹脂組成物には、本実施形態の効果を妨げない範囲で種々の添加剤を適量配合することができる。添加剤としては、難燃助剤、酸化防止剤、銅害防止剤、金属不活性剤、老化防止剤、滑剤、充填剤、補強剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤等が挙げられる。
なお、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤などのラジカル連鎖防止剤、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤などの過酸化物分解剤、並びに、ヒドラジン系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤などの金属不活性剤など、ポリオレフィン系樹脂などに用いられる公知の酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。酸化防止剤は、酸化防止効果とブリードアウトによる不具合を考慮して、適宜添加量を調整すればよい。
樹脂組成物は、添加剤のうちでも酸化防止剤及び銅害防止剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むと、樹脂組成物の化学的安定性が高くなるため好ましい。酸化防止剤及び銅害防止剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤は、樹脂100質量部に対し、添加剤を0.5〜10質量部を含むことが好ましい。
(作用)
樹脂組成物の作用について図面を参照して説明する。図2は、検出対象を不燃性ガスであるHBr(m/z 80)としてEGA−MSで測定したときのEGAサーモグラフである。具体的には、Aは、有機ハロゲン化合物である有機臭素系難燃剤について測定したグラフである。Bは、水分発生化合物である水酸化アルミニウムAl(OH)について測定したグラフである。Cは、有機臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムAl(OH)とを併用したときに測定したグラフである。
また、図3は、検出対象をHO(m/z 18)としてEGA−MS(発生ガス分析−質量分析)で測定したときのEGAサーモグラフである。具体的には、Aは、有機ハロゲン化合物である有機臭素系難燃剤について測定したグラフである。Bは、水分発生化合物である水酸化アルミニウムAl(OH)について測定したグラフである。Cは、有機臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムAl(OH)とを併用したときに測定したグラフである。
さらに、図4は、TG−DTAで測定した結果を示すグラフである。具体的には、Aは、有機ハロゲン化合物である有機臭素系難燃剤の単体のグラフである。Bは、水分発生化合物である水酸化アルミニウムAl(OH)のグラフである。Cは、有機臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムAl(OH)とを併用したときのグラフである。
図2のAに示すように、有機臭素系難燃剤単体では、有機臭素系難燃剤の熱分解よる不燃性ガス(HBr)の発生量のピークは、550℃付近にある。また、図2のBに示すように、水酸化アルミニウムAl(OH)単体では、水蒸気や不燃性ガスの発生を示すピークは特に存在しない。なお、Bの280℃付近にあるピークはノイズによるものであり、このピークは水蒸気や不燃性ガスの発生を示すピークではない。一方、図2のCに示すように、有機臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムとを併用したときは、有機臭素系難燃剤の熱分解よる不燃性ガス(HBr)の発生量のピークは、430℃付近にある。すなわち、Cの不燃性ガスの発生量のピークは、Aの不燃性ガスの発生量のピークに比較して低温側にある。
一方、図3のAに示すように、有機臭素系難燃剤単体では、水蒸気は発生しない。また、図3のBに示すように、水酸化アルミニウムAl(OH)単体では、水酸化アルミニウムの熱分解よる水蒸気の発生量のピークは、280℃付近にある。さらに、図3のCに示すように、有機臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムとを併用したときも、水酸化アルミニウムの熱分解よる水蒸気の発生量のピークは、280℃付近にある。すなわち、図3のB及びCにおける水蒸気の発生量のピークは共に280℃付近である。
図3によれば、B及びCの水蒸気の発生量のピークは共に280℃付近である。これに対し、図2によれば、併用系(C)の不燃性ガス(HBr)の発生量のピークの温度は、有機臭素系難燃剤単体(B)の不燃性ガス(HBr)の発生量のピークの温度に比較して低温化する。この併用系(C)における不燃性ガスの発生量のピークの低温側への移動は、水酸化アルミニウムから発生した水蒸気により、有機臭素系難燃剤単体の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で有機臭素系難燃剤の熱分解が起きるために生じたものと考えられる。具体的には、有機臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムとを併用する樹脂組成物は、常温から加熱していったときに、はじめに比較的低温で水酸化アルミニウムから水蒸気が発生する。そして、この水蒸気が有機臭素系難燃剤の化学構造の一部を切断する等により有機臭素系難燃剤が変成し、不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で、不燃性ガスの発生量を最大にすることができるようになる。このため、併用系では、不燃性ガスの発生量が最大のピークが低温側に移動し、樹脂の中点温度に近づく。これにより、有機臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムとの併用系では、樹脂の中点温度及びその近傍の温度において不燃性ガスが多く発生し、樹脂組成物の難燃性が高くなる。
図2のCにおける不燃性ガスのピークの低温側への移動は、有機臭素系難燃剤の分解で生じたBr等の酸化作用を有するBr含有成分と、水酸化アルミニウムまたはその分解中間体とが、不燃性ガスである臭化アルミニウムを生成したためと考えられる。具体的には、樹脂の中点温度及びその近傍の温度において、上記Br含有成分と水酸化アルミニウム等との反応により、不燃性ガスである臭化アルミニウム(AlBr、AlBr)ガスを生成したためでもあると考えられる。
なお、図4のAに示すように、水分を発生させる水酸化アルミニウム等の物質が存在しない有機臭素系難燃剤単体では、370℃付近で分解が生じ、550℃付近で燃焼すると考えられる。また、図4のBに示すように、水酸化アルミニウムAl(OH)単体では、280℃付近で分解が生じ、水(水蒸気)が発生すると考えられる。さらに、図4のCに示すように、有機臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムとの併用系では、280℃付近及び370℃付近で各単体の材料の分解が生じるとともに、410℃近傍に各単体の原材料の分解挙動からは想定できない発熱反応がある。この発熱反応は、水酸化アルミニウムから発生した水蒸気による有機臭素系難燃剤の分解と、有機臭素系難燃剤の分解によるBr含有成分の生成と、Br含有成分と水酸化アルミニウム等との反応による臭化アルミニウムの生成と、によるものと考えられる。
本実施形態の樹脂組成物は、上記のように、有機ハロゲン化合物と水分発生化合物との併用により、有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度よりも低温において、不燃性ガスの発生量が増大する。このため、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂の中点温度及びその近傍の温度において、不燃性ガスの発生量が増大し、難燃性が高くなる。なお、本実施形態で、有機ハロゲン化合物と水分発生化合物とを併用した場合における、有機ハロゲン化合物の分解に基づく不燃性ガスの発生量が最大になる温度を併用時ガス最大量発生温度と定義する。併用時ガス最大量発生温度は、不燃性ガス最大量発生温度よりも低温になる。
併用時ガス最大量発生温度は、樹脂の中点温度に対して±100℃以内であることが好ましい。すなわち、本実施形態の樹脂組成物では、併用時ガス最大量発生温度が、樹脂の中点温度に対して±100℃以内になるように、樹脂、有機ハロゲン化合物及び水分発生化合物の種類及び配合量を調整することが好ましい。併用時ガス最大量発生温度が、樹脂の中点温度に対して±100℃以内であると、樹脂組成物の難燃性が高くなる。
次に、有機ハロゲン化合物である有機臭素化合物と水分発生化合物との併用における金属臭化物ガスの発生挙動の推定について、ポテンシャル相図を用いて説明する。図5は、Al及びその化合物のポテンシャル相図であり、シミュレーションの結果である。図6は、Mg及びその化合物のポテンシャル相図であり、シミュレーションの結果である。
ポテンシャル相図は、ある金属が、臭素及び酸素が存在する雰囲気下において存在する物質の組成と、この物質の固体、液体、気体等の状態を示すものである。なお、本シミュレーションにおいて、混合雰囲気を構成するBrは、有機ハロゲン系難燃剤のハロゲン元素の代表例として選定したものであり、難燃剤から発生する成分として仮定したものである。また、本シミュレーションにおいて、混合雰囲気を構成するOは、実際の燃焼場が空気雰囲気であり、空気を構成する窒素が不活性であることからOのみを選択して空気雰囲気と仮定した。
図5及び図6は、BrとOとの混合雰囲気中、1.0×10Pa、400℃でシミュレーションした結果である。雰囲気中のBr濃度は臭素系難燃剤の使用により発生するBrの濃度を、雰囲気中のO濃度は樹脂組成物の実際の燃焼時のO雰囲気を、1.0×10Paは樹脂組成物の燃焼場の気圧を、400℃は一般的な樹脂の分解温度を、それぞれ考慮して設定した。図5及び図6において、縦軸は雰囲気中のO濃度、横軸は雰囲気中のBr濃度を、それぞれ表す。縦軸は、図中上側ほどO濃度が高いことを示し、横軸は、図中右側ほどBr濃度が高いことを示す。
図5に示すように、金属がAlである場合の金属臭化物は、三臭化アルミニウム(AlBr)又は六臭化二アルミニウム(AlBr)であり、上記条件下では、気体である。ちなみに、三臭化アルミニウム(AlBr)又は六臭化二アルミニウム(AlBr)の融点は約98℃、沸点は約265℃である。そのため、三臭化アルミニウム又は六臭化二アルミニウムは、樹脂の中点温度付近の400℃において、有機ハロゲン化合物の分解により発生するBr等の不燃性ガスと異なる別の不燃性ガスとして用いることができる。これにより、有機ハロゲン化合物とAlを含む水分発生化合物とを有する樹脂組成物は、高い難燃性を有する。
一方、図6に示すように、金属がMgである場合の金属臭化物は、二臭化マグネシウム(MgBr)であり上記条件下では、固体である。ちなみに、二臭化マグネシウムの融点は約700℃である。そのため、二臭化マグネシウムは、通常、樹脂の中点温度付近の400℃では酸素を遮断する不燃性ガスとはならない。なお、この場合でも、不燃性ガス最大量発生温度より低温の樹脂の中点温度付近の400℃において有機ハロゲン化合物の分解によりBr等の不燃性ガスが発生する。このため、有機ハロゲン化合物とMgを含む水分発生化合物とを有する樹脂組成物は、十分に高い難燃性を有する。
以上のように、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂と、有機ハロゲン化合物と、水分発生化合物と、を含む。また、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂の中点温度が特定温度範囲内にあり、有機ハロゲン化合物の不燃性ガス最大量発生温度が樹脂の中点温度よりも高く、水分発生化合物が不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で水分を発生する。水分発生化合物から発生した水分は、有機ハロゲン化合物を不燃性ガス最大量発生温度よりも低温の併用時ガス最大量発生温度で分解して不燃性ガスを発生させる。そのため、本実施形態の樹脂組成物は、難燃助剤としてアンチモン化合物を含まなくても、高い難燃性を有する。
[被覆電線1]
本実施形態の被覆電線1は、上記樹脂組成物により形成された被覆層3と、被覆層3により被覆される導体2と、を備える。上述の樹脂組成物は難燃性に優れているため、このような樹脂組成物により形成された被覆層3を備える被覆電線は、例えば自動車用の被覆電線1として好ましく用いることができる。
本実施形態の被覆電線1の被覆層3を形成する樹脂組成物は、上述の樹脂組成物を溶融混練することにより作製されるが、その方法は公知の手段を用いることができる。例えば、あらかじめヘンシェルミキサー等の高速混合装置を用いてプリブレンドした後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等の公知の混練機を用いて混練することにより、樹脂組成物を得ることができる。
図1は、本実施形態の被覆電線1の一例を示す。被覆電線1は、導体2を被覆層3で被覆することにより形成されている。
導体2は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。そして導体2は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。導体2の材料としては、銅、銅合金及びアルミニウム、アルミニウム合金等の公知の導電性金属材料を用いることができる。
本実施形態の被覆電線1における被覆層3は、上述のように、上記材料を溶融混練することにより作製されるが、その方法は公知の手段を用いることができる。さらに、導体2を被覆層3で被覆する方法も公知の手段を用いることができる。例えば、被覆層3は、一般的な押し出し成形法により形成することができる。そして、押し出し成形法で用いる押出機としては、例えば単軸押出機や二軸押出機を使用し、スクリュー、ブレーカープレート、クロスヘッド、ディストリビューター、ニップル及びダイスを有するものを使用することができる。
被覆層3を構成する樹脂組成物を作製する場合には、樹脂が十分に溶融する温度に設定された押出機に、樹脂組成物を投入する。この際、有機ハロゲン化合物、水分発生化合物、さらには必要に応じて、酸化防止剤などの他の成分も投入する。そして、樹脂組成物はスクリューにより溶融及び混練され、一定量がブレーカープレートを経由してクロスヘッドに供給される。溶融した樹脂組成物は、ディストリビューターによりニップルの円周上へ流れ込み、ダイスにより導体2の外周上に被覆された状態で押し出されることにより、導体2の外周を被覆する被覆層3を得ることができる。
このように本実施形態の被覆電線1では、一般の電線用樹脂組成物と同様に押し出し成形により被覆層3を形成することができる。なお、被覆層3の強度を向上させるために、導体2の外周に被覆層3を形成した後、放射線や電子線を照射し、樹脂組成物の架橋処理を行ってもよい。その結果、被覆層3の強度を向上させることが可能となる。
放射線は、例えば、γ線又は電子線を放射線源として使用することができる。これらを混合後の被覆層に照射線を照射することにより、分子中にラジカルが発生し、これらラジカル同士がカップリングして分子間の架橋結合を形成する。その結果、被覆層3の強度を向上させることが可能となる。なお、被覆層3に、放射線によって活性化する架橋剤を更に配合して、被覆層3の強度をより向上させることもできる。
架橋剤としては、多官能性化合物を用いることができる。このような架橋剤としては、例えば、アクリレート系化合物、メタクリレート系化合物、アリル系化合物又はビニル系化合物などの多官能性化合物が挙げられる。
アクリレート系化合物は、末端にアクリル基を有する多官能性化合物である。アクリレート系化合物としては、例えば、1,1−メタンジオールジアクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、グリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。
メタクリレート系化合物は、末端にメタクリル基を有する多官能性化合物である。メタクリレート系化合物としては、例えば、1,1−メタンジオールジメタクリレート、1,2−エタンジオールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリセリルトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。
アリル系化合物は、末端にアリル基を有する多官能性化合物である。アリル系化合物としては、例えば、ジアリルマレエート、ジアリルイタコネート、ジアリルマロネート、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネート、トリアリルホスフェート、トリアリルシアヌレートなどが挙げられる。
ビニル系化合物は、末端にビニル基を有する多官能性化合物である。ビニル系化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
これらの多官能性化合物は単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。なお、これらの多官能性化合物の中でも、オレフィン系樹脂との親和性が優れていることから、トリメチロールプロパントリメタクリレートを用いることが好ましい。
また、架橋剤は、(A)オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.8〜2質量部であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、強度が高く、柔軟性にすぐれた被覆電線を得ることができる。
なお、樹脂組成物の加工方法に関して、樹脂材料の混練方法、導体2への被覆方法、さらには熱架橋や電子線架橋などの樹脂材料の架橋方法は、目的に沿って最適な工法を選択することができ、特に限定されない。そのため、加工方法は、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
[ワイヤーハーネス]
本実施形態に係るワイヤーハーネスは、上述の被覆電線1を備える。上述の樹脂組成物は難燃性に優れているため、このような樹脂組成物を用いた被覆電線1をワイヤーハーネスとして用いた場合は、例えば自動車用のワイヤーハーネスとして好ましく用いることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例及び比較例の試料作製]
<樹脂組成物の作製>
樹脂ミキサー(株式会社東洋精機製作所製)を用い、表1〜表8に示す材料及び配合量(質量部)で溶融混練することにより、各実施例及び比較例の樹脂組成物(実施例1〜44、比較例1〜6)を作製した。なお、樹脂組成物を作製する際、必要に応じて加工助剤を適宜配合した。
表1〜表8における材料として、以下のものを使用した。
[オレフィン系樹脂]
(1)ノバテック(登録商標)HB432E(日本ポリエチレン株式会社製)
高密度ポリエチレン(HDPE)
熱重量測定(TG)による中点温度391℃
示差熱分析(DTA)による発熱ピーク温度388℃
(2)スミカセン(登録商標)C215(住友化学株式会社製)
低密度ポリエチレン(LDPE)
熱重量測定(TG)による中点温度400℃
示差熱分析(DTA)による発熱ピーク温度413℃
(3)エルバロイ(登録商標)AC1820(三井デュポンポリケミカル株式会社製)
エチレンメチルアクリレート共重合体(EMA)
熱重量測定(TG)による中点温度380℃
示差熱分析(DTA)による発熱ピーク温度385℃
(4)ノバテック(登録商標)LV430(日本ポリエチレン株式会社製)
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)
熱重量測定(TG)による中点温度428℃
示差熱分析(DTA)による発熱ピーク温度430℃
(5)エルバロイ(登録商標)AC2116(三井デュポンポリケミカル株式会社製)
エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)
熱重量測定(TG)による中点温度380℃
示差熱分析(DTA)による発熱ピーク温度470℃
(6)EPT3072EPM(登録商標)(三井化学株式会社製)
飽和炭化水素系ゴム
熱重量測定(TG)による中点温度390℃
示差熱分析(DTA)による発熱ピーク温度390℃
(7)Vamac(登録商標)VMX−2122(デュポン株式会社製)
エチレンアクリレートエラストマー
熱重量測定(TG)による中点温度365℃
示差熱分析(DTA)による発熱ピーク温度350℃
[有機ハロゲン化合物]
(1)SAYTEX(登録商標)8010(Albemarle Corporation製)
1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン
臭素量82%
不燃性ガス最大量発生温度560℃
(2)SAYTEX(登録商標)BT−93W(Albemarle Corporation製)
エチレンビス(テトラブロモフタリミド)
臭素量67%
不燃性ガス最大量発生温度590℃
[水分発生化合物]
(1)Al(OH)(住友化学株式会社製BF013)
水分発生温度280℃
(2)Mg(OH)(協和化学株式会社製キスマ(登録商標)5A)
水分発生温度390℃
(3)ステアリン酸スズ(昭和化学株式会社製)
水分発生温度275℃
なお、水分発生化合物であるAl(OH)及びMg(OH)について、以下の条件によるシミュレーションで臭素−酸素−金属の3元系ポテンシャル相図を作成した。図5は、Al及びその化合物のポテンシャル相図である。図6は、Mg及びその化合物のポテンシャル相図である。
(シミュレーション条件)
温度 400℃(樹脂の分解温度領域)
雰囲気 Br及びO
圧力 1.0×10Pa
図5に示すように、金属がAlである場合の金属臭化物は、三臭化アルミニウム(AlBr)又は六臭化二アルミニウム(AlBr)であり、上記条件下では、気体である。そのため、三臭化アルミニウム又は六臭化二アルミニウムは、樹脂の中点温度付近の400℃において、有機ハロゲン化合物の分解により発生するBr等の不燃性ガスと異なる別の不燃性ガスとして用いることができる。これにより、有機ハロゲン化合物とAlを含む水分発生化合物とを有する樹脂組成物は、高い難燃性を有することが分かる。
一方、図6に示すように、金属がMgである場合の金属臭化物は、二臭化マグネシウム(MgBr)であり上記条件下では、固体である。そのため、二臭化マグネシウムは、通常、樹脂の中点温度付近の400℃では酸素を遮断する不燃性ガスとはならない。なお、この場合でも、不燃性ガス最大量発生温度より低温の樹脂の中点温度付近の400℃において有機ハロゲン化合物の分解によりBr等の不燃性ガスが発生する。このため、有機ハロゲン化合物とMgを含む水分発生化合物とを有する樹脂組成物は、十分に高い難燃性を有することが分かる。
[酸化防止剤]
(1)Irganox(登録商標)1010(BASF製)
(2)アデカスタブ(登録商標)AO−412S(株式会社ADEKA製)
(3)アデカスタブ(登録商標)CDA−10(株式会社ADEKA製)
Figure 0006890059
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[評価]
<熱重量測定(TG)、示差熱分析(DTA)>
熱重量測定(TG)、示差熱分析(DTA)は、示差熱天秤−ガスクロマトグラフィ質量分析同時測定装置にて、以下の条件で測定した。
サンプル重量:4mg〜6mg
流入ガス:大気 100mL/分
容器:白金製
測定温度:20℃〜950℃
加熱速度:20℃/分
<発生ガス分析−質量分析(EGA−MS)>
発生ガス分析−質量分析(EGA−MS)では、加熱炉(EGA)で昇温しながら熱分解を行い、随時発生したガス成分を質量分析(MS)した。測定条件は、以下のとおりとした。
サンプル重量:
(1)水酸化アルミニウム単体の測定の場合、及び臭素系難燃剤単体の測定の場合:0.4g
(2)臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムの複合物の測定の場合:0.8g(臭素系難燃剤と水酸化アルミニウムを0.4gずつ混合した。)
流入ガス:He
測定温度:50℃〜700℃
加熱速度:20℃/分
なお、中点温度は、JIS K7120:1987(プラスチックの熱重量測定方法)の規定に準じて熱重量測定(TG)を実施し、評価した。また、ピーク温度は、JIS K7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)の規定に準じて示差熱分析(DTA)を実施し、最も大きい発熱ピークの温度とした。
<難燃性>
まず、各例で得られた樹脂組成物を、長さ130mm、幅15mm、厚さ0.5mmの短冊状のシートに成形し、試験サンプルを作製した。次に、試験サンプルの両端部より15mmの位置に標線を引き、一方の標線より外側をクランプで固定し、もう一方の標線より外側をガスバーナーで着火した。このとき、試験サンプルは、試験サンプルの長片軸及び短片軸を水平面に対してそれぞれ45度傾斜させた状態で固定した。また、ガスバーナーは、ガスバーナー管の中心軸を水平面に対して45度傾けた状態で固定し、内炎の高さが50mmとなるように調節した。試験サンプルへの接炎時間は15秒とした。そして、火炎の前線がクランプ側の標線に達せず20秒以内に消炎したものを「◎」、火炎の前線がクランプ側の標線に達せず20秒を超えて消炎したものを「○」、火炎の前線がクランプ側の標線に達したものを「×」とした。
<耐熱性>
JIS K6723:1995(軟質ポリ塩化ビニルコンパウンド)の規定に準じ、加熱後の試験サンプルに対して引張破断伸びを測定した。加熱は、150±3℃のギアオーブンで240時間加熱した。また、試験サンプルは、JIS K6251:2010(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方)に規定されたダンベル状3号形を用いた。また、引張伸びは、JIS K7161−1:2014(ISO527−1:2012)(プラスチック−引張特性の求め方−第1部:通則)の規定に準じて測定を行った。加熱後の試験サンプルの引張破断伸びが100%以上であるものを「〇」、100%未満であるものを「×」と評価した。
表1〜表8に示すように、実施例1〜実施例29の樹脂組成物は、所定の量の樹脂、有機ハロゲン化合物及び水分発生化合物を含むため、難燃性及び耐熱性が良好であった。特に、実施例9〜実施例16、実施例19、実施例20、実施例21、実施例29及び実施例33〜実施例35の樹脂組成物は、難燃性が非常に良好であった。
一方、表4に示すように、比較例1の樹脂組成物は、水分発生化合物を含まないため、難燃性が所定の基準を満たさなかった。また、比較例2の樹脂組成物は、有機ハロゲン化合物を含まないため、難燃性が所定の基準を満たさなかった。さらに、比較例3及び4の樹脂組成物は、有機ハロゲン化合物の含有量が特定の範囲を下回っていたため、難燃性が所定の基準を満たさなかった。また、比較例5の樹脂組成物は、水分発生化合物の含有量が特定の範囲を下回っていたため、難燃性が所定の基準を満たさなかった。さらに、比較例6の樹脂組成物は、有機ハロゲン化合物及び水分発生化合物の含有量が特定の範囲を下回っていたため、難燃性が所定の基準を満たさなかった。
以上、本発明を実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
1 被覆電線
2 導体
3 被覆層

Claims (7)

  1. 流入ガスが空気、加熱速度が20℃/分の条件下において、熱重量測定により得られる中点温度が250℃〜500℃である樹脂と、
    加熱により分解して不燃性ガスを発生し、前記不燃性ガスの発生量が最大になる不燃性ガス最大量発生温度が前記樹脂の中点温度よりも高い有機ハロゲン化合物と、
    100℃以上かつ前記不燃性ガス最大量発生温度よりも低温で水分を発生する水分発生化合物と、
    を含み、
    前記有機ハロゲン化合物は有機臭素化合物であり、
    三酸化アンチモン及びシラン化合物を含まない樹脂組成物。
  2. 前記樹脂100質量部に対し、前記有機ハロゲン化合物の含有量が10〜80質量部であり、前記水分発生化合物の含有量が10〜80質量部である、請求項に記載の樹脂組成物。
  3. 前記水分発生化合物が水分を発生する温度の下限値は120℃以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記水分発生化合物がTi,Zr,W,Nb,Mo,Al,Ga,Ge,Sn及びBiからなる群より選択される少なくとも1種の金属の水分発生化合物である、請求項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記樹脂は、ポリエチレン、エチレン系共重合体及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物により形成された被覆層と、
    前記被覆層により被覆される導体と、
    を備える被覆電線。
  7. 請求項に記載された被覆電線を備えるワイヤーハーネス。
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