JP6888743B1 - 熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびにそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

塗装後耐食性、特にジルコニウム系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性、および、水素放出特性に優れる熱間プレス部材およびその製造方法を提供することを目的とする。また、塗装後耐食性および水素放出特性に優れる熱間プレス部材に適した熱間プレス用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。鋼板の少なくとも一方の表面に、Fe、ZnおよびNiを含有する固溶体相と、Zn、NiおよびFeを含有する金属間化合物相と、Znを含有する酸化物層とを有するZn−Ni系合金めっき層を備え、前記酸化物層は前記Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するとともに、前記酸化物層は前記金属間化合物相を分断し、前記酸化物層の少なくとも1断面における単位断面当たりの分断密度は10分断箇所/mm以上である、熱間プレス部材。

Description

本発明は、熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびにそれらの製造方法に関する。特に、塗装後耐食性および水素放出特性に優れた熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびにそれらの製造方法に関する。
近年、自動車の分野では素材鋼板の高性能化と共に軽量化が促進されており、防錆性を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板または電気亜鉛めっき鋼板の使用が増加している。しかし、多くの場合、鋼板の高強度化に伴ってそのプレス成形性が低下するため、複雑な部品形状を得ることは困難になる。例えば自動車用途で、防錆性が必要であり、かつ難成形部品としてはシャシーなどの足回り部材やBピラーなどの骨格用構造部材が挙げられる。
このような背景から、近年では冷間プレスに比べてプレス成形性と高強度化の両立が容易である熱間プレスによる自動車用部品の製造が急速に増加しており、熱間プレス技術の諸課題を解決する様々な技術が開示されている。
なかでもZn−Ni合金めっき鋼板は、めっき層の融点が高いことから熱間プレス用鋼板として注目されており、この鋼板を用いた熱間プレス部材およびその製造方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、α−Fe(Zn、Ni)混晶と、Zn、NiおよびFeの金属間化合物と、Mnを含む層とを有する熱間プレス部材が開示されている。
また、特許文献2には、Ni拡散領域と、γ相に相当する金属間化合物層と、ZnO層とを有する熱間プレス部材が開示されている。
特表2013―503254号公報 特開2011−246801号公報
しかしながら、近年では、従来のリン酸亜鉛系化成処理に代わり、ジルコニウム系化成処理が普及し始めており、このジルコニウム系化成処理を施した後に電着塗装を行った部材の塗装後耐食性も求められるようになってきた。
特許文献1および特許文献2に開示される熱間プレス部材は、いずれもZn−Ni合金めっき鋼板を加熱して製造された熱間プレス部材であり、無塗装での耐食性やリン酸亜鉛系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性には優れるものの、ジルコニウム系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性については不十分であるという問題がある。
一方、熱間プレス部材の遅れ破壊を回避するためには、熱間プレス用鋼板の製造工程において鋼板に侵入した水素を、熱間プレス部材の製造工程において効率よく放出することが望まれる。すなわち、水素放出特性に優れる熱間プレス部材およびその製造方法と、水素放出特性に優れる熱間プレス部材を得るための熱間プレス用鋼板およびその製造方法の開発が課題となっている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、塗装後耐食性、特にジルコニウム系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性、および、水素放出特性に優れる熱間プレス部材およびその製造方法を提供することを目的とする。また、塗装後耐食性および水素放出特性に優れる熱間プレス部材に適した熱間プレス用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するために、鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
(1)熱間プレス部材の塗装後耐食性および水素放出特性を向上させるためには、熱間プレス部材表面のZn−Ni系合金めっき層において、酸化物層はZn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するとともに、金属間化合物相を分断するように酸化物層を形成させ、さらにこの酸化物層について、金属間化合物相に対する単位断面あたりの分断密度を所定値以上とすることが有効である。
(2)単位断面当たりのクラック密度が所定値以上であるZn−Ni系合金めっき層を有する熱間プレス用鋼板を熱間プレスすることにより、塗装後耐食性および水素放出特性に優れる熱間プレス部材を得ることができる。
(3)鋼板のZn−Ni系合金めっき層に単位断面当たりのクラック密度が所定値以上であるクラックを形成する方法としては、Zn−Ni系合金めっき層を備える鋼板を酸性水溶液に浸漬する方法が好ましい。
本発明は上記知見に基づくものであり、その特徴は以下の通りである。
[1]鋼板の少なくとも一方の表面に、Fe、ZnおよびNiを含有する固溶体相と、Zn、NiおよびFeを含有する金属間化合物相と、Znを含有する酸化物層とを有するZn−Ni系合金めっき層を備え、前記酸化物層は前記Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するとともに、前記酸化物層は前記金属間化合物相を分断し、前記酸化物層の少なくとも1断面における単位断面当たりの分断密度は10分断箇所/mm以上である、熱間プレス部材。
[2]前記酸化物層における直交する2断面について、単位断面当たりの分断密度がいずれも10分断箇所/mm以上である、[1]に記載の熱間プレス部材。
[3]前記Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置する酸化物層の平均膜厚が1.5μm以下である、[1]または[2]に記載の熱間プレス部材。
[4]鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、前記Zn−Ni系合金めっき層内部に、前記Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、前記Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上である、熱間プレス用鋼板。
[5]前記Zn−Ni系合金めっき層における直交する2断面について、単位断面当たりのクラック密度がいずれも10分断箇所/mm以上である、[4]に記載の熱間プレス用鋼板。
[6]前記Zn−Ni系合金めっき層の表面に、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層を備える、[4]または[5]に記載の熱間プレス用鋼板。
[7]鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備える鋼板を、pH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上浸漬する、もしくは前記Zn−Ni系合金めっき層に対して歪を付与する、熱間プレス用鋼板の製造方法。
[8]前記鋼板をpH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上浸漬する、[7]に記載の熱間プレス用鋼板の製造方法。
[9]前記酸性水溶液が、前記Zn−Ni系合金めっき層を形成するめっき液である、[7]または[8]に記載の熱間プレス用鋼板の製造方法。
[10]前記pH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上浸漬する、もしくは前記Zn−Ni系合金めっき層に対して歪を付与する工程の後に、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層の形成処理を施す、[7]〜[9]のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板の製造方法。
[11][7]〜[10]のいずれかに記載の製造方法により得られる熱間プレス用鋼板を、Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
[12]鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、前記Zn−Ni系合金めっき層内部に、前記Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、前記Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上である鋼板を、Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
[13]鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、前記Zn−Ni系合金めっき層内部に、前記Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、前記Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上であり、前記Zn−Ni系合金めっき層の表面に、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層を備える鋼板を、
Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
本発明によれば、塗装後耐食性、特にジルコニウム系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性、および、水素放出特性に優れる熱間プレス部材を得ることができる。また、本発明によれば、塗装後耐食性および水素放出特性に優れる熱間プレス部材に適した熱間プレス用鋼板を得ることができる。
図1は、Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されていない場合の、熱間プレス前(加熱前)のZn−Ni系合金めっき層の断面を示す模式図である。 図2は、Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されていない場合の、熱間プレス後(加熱後)のZn−Ni系合金めっき層の断面を示す模式図である。 図3は、Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されている場合の、熱間プレス前(加熱前)のZn−Ni系合金めっき層の断面を示す模式図である。 図4は、Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されている場合の、熱間プレス後(加熱後)のZn−Ni系合金めっき層の断面を示す模式図である。 図5は、Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されている場合の、熱間プレス前(加熱前)のZn−Ni系合金めっき層の断面を示す、別の実施形態を示す模式図である。 図6は、Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されている場合の、熱間プレス後(加熱後)のZn−Ni系合金めっき層の断面を示す、別の実施形態を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な一実施態様を示すものであり、以下の説明によって何ら限定されるものではない。また、鋼成分組成の各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
1)熱間プレス部材
本発明の熱間プレス部材は、鋼板の少なくとも一方の表面に、Fe、ZnおよびNiを含有する固溶体相と、Zn、NiおよびFeを含有する金属間化合物相と、Znを含有する酸化物層とを有するZn−Ni系合金めっき層を備え、酸化物層はZn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するとともに、酸化物層は金属間化合物相を分断し、酸化物層の少なくとも1断面における単位断面当たりの分断密度は10分断箇所/mm以上である。
Zn−Ni系合金めっき層を備える鋼板に熱間プレスを施すと、Zn−Ni系合金めっき層中のZnおよびNiが下地鋼板に拡散し、この拡散領域においてFe、ZnおよびNiを含有する固溶体相を形成する。同時に、Zn−Ni系合金めっき層中のZnと加熱雰囲気中に存在する酸素とが結合して、Znを含有する酸化物層を形成する。また、下地鋼板への拡散にも酸化物層の形成にも寄与しなかった金属間化合物であるZn−Ni系合金めっき層は、そのまま金属間化合物相として残存するが、下地鋼板から拡散したFeが取り込まれるため、Zn、NiおよびFeを含有する金属間化合物相となる。
なお、固溶体相と金属間化合物相は、いずれも犠牲防食作用を有するZnを含有するため、耐食性の向上に寄与する。一方、Znを含有する酸化物層は、塗装下地処理として施されるリン酸亜鉛系化成処理やジルコニウム系化成処理を均一かつ緻密に被覆させる作用を有するため、塗装密着性の向上に寄与する。したがって、本発明が課題とする塗装後耐食性を満足するためには、固溶体相、金属間化合物相、酸化物層のいずれもが必須の構成要件である。
また、本発明において、酸化物層はめっき層の最表層に位置するとともに、めっき層表面に垂直な方向にも位置することによって、金属間化合物相を分断する。酸化物層は金属間化合物相のみを分断し、固溶体相は分断しない。また、酸化物層は、その少なくとも1断面において金属間化合物相を分断していればよく、圧延方向の断面や圧延方向に対して直角の方向の断面といった特定方向の断面に限定されるわけではない。
本発明の酸化物層がZn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するとともに、酸化物層は金属間化合物相を分断することは、塗装後耐食性と水素放出特性を満足させるために必須の構成要件である。
まず、本発明の酸化物層が存在することにより、塗装後耐食性が向上する理由について説明する。
クラックが形成されていない通常のZn−Ni系合金めっき層を有する鋼板(図1)を熱間プレスに供した場合、Zn−Ni系合金めっき層の表面には高低差10μmを超えるような大きな凹凸が形成する(図2)。この理由について、本発明者らは以下のように推測する。
熱間プレス前の加熱により鋼板の温度を上昇させていくと、温度上昇に伴いZn−Ni系合金めっき層の表面に酸化物層が形成されていく。やがて鋼板の温度がZn−Ni系合金めっき層の融点を超えると、酸化物層と鋼板との間に位置するめっき層が溶融して液体となる。なおも加熱が進み鋼板の温度が上昇を続けると、酸化物層も成長を継続していくこととなるが、このとき、めっき層表面に対して垂直な方向では、酸化物層はその厚みを増大させて成長し、めっき層表面に水平な方向には酸化物層が凹凸を形成しながらその表面積を増大させることによって成長する。これは、酸化物層と鋼板との間に位置するめっき層が流動可能な液体であるため、酸化物層がその形状を変化させることが可能なためである。
このようにして製造された、酸化物層が大きな凹凸を有する熱間プレス部材に、ジルコニウム系化成処理および電着塗装を施して塗装後耐食性を評価すると、特にクロスカットを施していない一般部からの赤錆発生が顕著となる。この理由は、電着塗装が熱間プレス部材表面の凹凸に追従せず、凸部において電着塗装の膜厚が極めて薄くなるため、このような部分で赤錆が発生するものと考えられる。
これに対して、本発明のように、あらかじめクラックが形成されているZn−Ni系合金めっき層を有する鋼板(図3)を熱間プレスに供した場合、熱間プレス前にクラックが存在した部分においては酸化物層が形成する(図4)。そして、熱間プレス前の加熱によりZn−Ni系合金めっき層が溶融して液体になったとしても、酸化物層が金属間化合物相を分断しているため、Zn−Ni系合金めっき層全体が大きな凹凸を形成することはない。このため、Zn−Ni系合金めっき層全体として見た場合に、平坦なZn−Ni系合金めっき層を有する熱間プレス部材を得ることができる。
したがって、本発明の熱間プレス部材にジルコニウム系化成処理および電着塗装を施して塗装後耐食性を評価した場合、電着塗装の膜厚が均一であるため、クロスカットを施していない一般部において局部的な赤錆発生が生じることはなく、優れた塗装後耐食性を得ることができる。
また、鋼板のZn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されていない場合、加熱にともないZn−Ni系合金めっき層の表面が大きな凹凸を形成するとともに、酸化物層がそれ自身の変形に追従できず、剥離してしまう場合がある。酸化物層が剥離した部分のジルコニウム系化成処理液との反応性は、酸化物層の存在する部分よりも劣るため、ジルコニウム系化成処理皮膜の被覆率が低下し、化成処理皮膜が被覆していない部分において赤錆が発生する場合がある。一方、本発明の熱間プレス部材では、酸化物層が平坦であるため、加熱時の変形による剥離を生じることはない。このため、ジルコニウム系化成処理皮膜が熱間プレス部材の全面を均一に被覆することができ、上記のような酸化物層の剥離に起因した赤錆発生を生じることはない。
さらにまた、鋼板のZn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されていない場合、加熱によりZn−Ni系合金めっき層が溶融すると、液体であるZn−Ni系合金めっき層は酸化物層と鋼板との間で自由に流動することができ、その結果、鋼板への拡散が活発となり、固溶体相が厚く形成する。一方、鋼板のZn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されている場合には、加熱によりZn−Ni系合金めっき層が溶融しても、液体であるZn−Ni系合金めっき層は酸化物層で取り囲まれているために移動が制限され、その位置に留まり続ける。その結果、鋼板への拡散量が抑制されることとなり、固溶体相の形成が少なく、金属間化合物相の残存量が多くなる。固溶体相よりも金属間化合物相の方がZn含有率が高いため、塗装後耐食性はより一層向上する。
以上のような理由により、本発明の酸化物層が存在することによって、塗装後耐食性が著しく向上する。
なお、本発明において、酸化物層が金属間化合物相を分断する形態としては、図4に示すような形態に限定されず、例えば、図6に示すように、金属間化合物相の断面の一部を分断する形態でも構わない。図5は、あらかじめクラックが形成されているZn−Ni系合金めっき層を有する鋼板の、図3とは別の実施形態を示す模式図である。図5に示すような鋼板を熱間プレスに供した場合、熱間プレス前にクラックが存在した部分においては酸化物層が形成する(図6)。図6に示すように、金属間化合物相の一部が分断されていれば、平坦なZn−Ni系合金めっき層を有する熱間プレス部材を得られ、優れた塗装後耐食性を得ることができる。なお、平坦なZn−Ni系合金めっき層を有する熱間プレス部材を得るためには、金属間化合物相を分断する酸化物層は、金属間化合物相の厚みの少なくとも30%以上を分断していることが必要であり、50%以上を分断していればより好ましい。また、このような熱間プレス部材を得るためには、熱間プレス用鋼板におけるZn−Ni系合金めっき層を分断するクラックは、Zn−Ni系合金めっき層の厚みの少なくとも30%以上を分断していることが必要であり、50%以上を分断していればより好ましい。
次に、Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成された鋼板を用いて熱間プレス部材を製造することにより、水素放出特性が向上する理由について説明する。
Zn−Ni系合金めっき層を有する鋼板を熱間プレス用鋼板として適用した場合、その製造工程において、電気めっき液中で発生した水素ガスの取り込みや、電気めっき後の大気中の水蒸気との接触等により、不可避的に下地鋼板に水素が侵入する。
鋼板のZn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されていない場合、鋼板に侵入した水素は、熱間プレス前の加熱での昇温過程において、Zn−Ni系合金めっき層を経由して放出される。しかしながら、水素の放出経路が金属間化合物相を経由する経路に限られるため、必ずしも効率よく水素を放出することができない。
これに対して、鋼板のZn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されている場合、上記の水素放出経路に加え、昇温過程の初期においてはクラックを経由して水素が放出されるため、鋼板製造時に侵入した水素を効率良く放出することが可能である。鋼板表面に水素放出を妨げるバリア層(またはめっき層)などが存在しない場合、または1時間以上など十分に長時間加熱した場合、鋼板中の拡散性水素は一般に300〜350℃の低温域までに放出されると考えられている。このような理由により、Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成されている鋼板は低温域における水素放出特性が向上する。
一方、熱間プレス工程の昇温過程において、400℃以上の高温では炉内雰囲気中の水蒸気と鋼板またはめっき層が反応して、水素が鋼中に取り込まれることが知られている。このような高温域での鋼板への水素侵入を抑制するためには、酸化物のようなバリア層を形成させることが有効である。Zn−Ni系合金めっき層にクラックが形成された熱間プレス用鋼板では、最表層において横断的に形成する酸化物層に加えて、クラックが形成された箇所に対応して酸化物層が形成する。このような酸化物層は、水素侵入に対するバリア層として機能する酸化物層を疑似的に厚くする効果がある。このような酸化物層が存在することによって高温域での水素侵入が抑制され、結果として遅れ破壊の発生し難い熱間プレス部材を得ることができる。
本発明の熱間プレス部材において、酸化物層の少なくとも1断面における単位断面当たりの分断密度は10分断箇所/mm以上である。酸化物層の少なくとも1断面における単位断面当たりの分断密度が10分断箇所/mm未満であると、上述した塗装後耐食性および水素放出特性の向上効果が不十分である。塗装後耐食性および水素放出特性を向上させる観点から、単位断面当たりの分断密度は、好ましくは50分断箇所/mm以上、より好ましくは100分断箇所/mm以上である。
本発明の熱間プレス部材において、酸化物層における直交する2断面について、単位断面当たりの分断密度がいずれも10分断箇所/mm以上であることが好ましい。本発明の酸化物層の存在による塗装後耐食性および水素放出特性の向上メカニズムは、上述のとおり、めっき層分断による凹凸抑制効果、凹凸低減による酸化物層の剥離抑制効果、めっき層分断による金属間化合物相の残存量増大効果、水素放出経路の増大効果等である。本発明の酸化物層は、1断面のみに10分断箇所/mm以上の密度で存在するよりも、直交する2断面について、それぞれ10分断箇所/mm以上の密度で存在する方が、塗装後耐食性および水素放出特性を向上させる効果がより大きくなる。したがって、本発明の熱間プレス部材において、酸化物層における直交する2断面について、単位断面当たりの分断密度がいずれも10分断箇所/mm以上であることが好ましい。
本発明の熱間プレス部材において、Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置する酸化物層の平均膜厚が1.5μm以下であることが好ましい。Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置する酸化物層は、熱間プレス工程で、Zn−Ni系合金めっき層中のZnが雰囲気中の酸素により酸化されることで形成される。熱間プレスにおける鋼板の到達温度が高いほど、また加熱時間が長いほどZn−Ni系合金めっき層中のZnの酸化が著しくなり、酸化物層が厚くなる。熱間プレス工程でのZn−Ni系合金めっき層表面への酸素の到達を抑制することが可能な無機系の化合物層、たとえばSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層を、Zn−Ni系合金めっき層の表面に形成することにより、酸化物層の厚さを低減することが可能である。Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置する酸化物層は、その平均膜厚が厚くなるほど電気抵抗が増大するため、抵抗スポット溶接性を劣化させる。抵抗スポット溶接性は、溶接強度を確保するために必要なナゲット径を形成し得る最小電流値と、溶接時にチリ(スパーク)が発生しない最大電流値の差から、適正電流範囲として評価される。この適正電流範囲を広くするためには、Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置する酸化物層の平均膜厚が1.5μm以下であることが好ましい。Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置する酸化物層の平均膜厚は、1.2μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。なお、Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置する酸化物層の平均膜厚の測定方法については、熱間プレス部材のZn−Ni系合金めっき層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍で観察し、めっき層の最表層に位置するZnを含有する酸化物層の膜厚を、視野内で任意の9か所で測定し、さらに、酸化物層の膜厚の測定精度を上げるため、1つの供試材について3視野の断面観察を行い、3視野27箇所での測定値の平均値を平均膜厚とすればよい。なお、前述のめっき層を分断する酸化物の厚さは、最表層に位置するZnを含有する酸化物層の膜厚測定からは除外する。
2)熱間プレス用鋼板
本発明の熱間プレス用鋼板は、鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、Zn−Ni系合金めっき層内部にZn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上である。
Zn−Ni系合金めっき層におけるNi含有率を10〜25質量%とすることにより、融点の高いNiZn11、NiZn、NiZn21のいずれかの結晶構造を有するγ相が形成されるため、塗装後耐食性に優れた熱間プレス部材を得ることができる。Ni含有率が10質量%未満であると、融点の低いη相が混在するため、熱間プレス前の加熱により金属間化合物相が消失する場合があり、所望の塗装後耐食性を有する熱間プレス部材を得ることができない。Ni含有率が25質量%を超えると、酸性水溶液によるZnの溶出反応が抑制されることによってクラックの形成が困難となるため、熱間プレス部材の塗装後耐食性および水素放出特性が不十分となる。
また、Zn−Ni系合金めっき層の付着量を10〜90g/mとすることにより、塗装後耐食性および水素放出特性に優れた熱間プレス部材を得ることができる。付着量が10g/m未満であると、熱間プレス前の加熱により金属間化合物相が消失するため、所望の塗装後耐食性を有する熱間プレス部材を得ることができない。付着量が90g/mを超えると塗装後耐食性の向上効果が飽和するためコスト的に不経済であるばかりでなく、水素放出特性が劣化する場合もある。塗装後耐食性のさらなる向上を目的とする場合、付着量を30g/m以上としておくことが好ましい。
本発明の熱間プレス用鋼板において、Zn−Ni系合金めっき層内部に、Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上であることを特徴とする。
なお、本発明の熱間プレス用鋼板において、Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックとは、Zn−Ni系合金めっき層表面に対して垂直な方向、すなわち、Zn−Ni系合金めっき層の表面から下地鋼板側に向かって形成されたクラックのことを指すものとする。また、クラックの幅は、塗装後耐食性の観点から5μm以下とし、より好ましくは2μm以下とする。
上記1)で詳細に説明したとおり、本発明の熱間プレス部材は、酸化物層がZn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するとともに、酸化物層が金属間化合物相を分断し、酸化物層の少なくとも1断面における単位断面当たりの分断密度は10分断箇所/mm以上である。このような熱間プレス部材を得るために、本発明の熱間プレス用鋼板は、Zn−Ni系合金めっき層内部に、Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上とする。Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm未満であると、得られる熱間プレス部材の塗装後耐食性および水素放出特性の向上効果が不十分である。塗装後耐食性および水素放出特性を向上させる観点から、単位断面当たりのクラック密度は、好ましくは50分断箇所/mm以上、より好ましくは100分断箇所/mm以上である。
本発明の熱間プレス用鋼板において、Zn−Ni系合金めっき層における直交する2断面について、単位断面当たりのクラック密度がいずれも10分断箇所/mm以上であることが好ましい。上記1)で説明したとおり、本発明の熱間プレス部材の酸化物層が、1断面のみに10分断箇所/mm以上の密度で存在するよりも、直交する2断面について、それぞれ10分断箇所/mm以上の密度で存在する方が、塗装後耐食性および水素放出特性を向上させる効果がより大きくなる。したがって、本発明の熱間プレス用鋼板においても、Zn−Ni系合金めっき層における直交する2断面について、単位断面当たりのクラック密度がいずれも10分断箇所/mm以上であることが好ましい。
なお、本発明におけるクラックとは、下記3)で説明するとおり、意図的なクラック形成処理を施すことにより形成させたクラックを意味する。したがって、断面を観察するための試験片を準備する際に生じたクラック等を含むものではない。
本発明のZn−Ni系合金めっき層は、単層のZn−Ni系合金めっき層であってもよいが、本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲で、目的に応じて下層皮膜を設けてもよい。例えば、下層皮膜としては、Niを主体とする下地めっき層が例示される。
また、本発明の熱間プレス用鋼板において、Zn−Ni系合金めっき層の表面に、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層を設けてもよい。Si、Ti、Al、Zrは、Zn−Ni系合金めっき層の主成分であるZnと比較して酸化されやすいため、熱間プレス前の加熱工程において、めっき層の表面に薄く緻密な酸化物を主体とした皮膜を形成する。このような、薄く緻密なSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のいずれかが形成することにより、雰囲気中の酸素の移動が阻害され、Zn−Ni系合金めっき層自体の酸化が抑制されて、その最表層に位置するZnを含有する酸化物層の平均膜厚が薄くなる。その結果、得られる熱間プレス部材の抵抗スポット溶接性を向上させることができる。
なお、Si含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層におけるSi、Ti、Al、Zrの存在状態は特に限定されず、金属、酸化物、その他の無機化合物、有機化合物などいずれの状態であってもよい。また、Si含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層の付着量は、Si、Ti、Al、Zr換算の合計の付着量、すなわち金属換算付着量で5mg/m以上であれば、熱間プレス部材の抵抗スポット溶接性を向上させることができるので好ましく、10mg/m以上であればより好ましい。化合物層の金属換算付着量の上限は特に規定されないが、抵抗スポット溶接性の向上効果が飽和するため、1000mg/m以下とすることが好ましい。
本発明において、熱間プレス後に1470MPa級を超えるような熱間プレス部材を得るためには、Zn−Ni系合金めっき層の下地鋼板としては、例えば、質量%で、C:0.20〜0.35%、Si:0.1〜0.5%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼板を用いることができる。なお、鋼板としては冷延鋼板または熱延鋼板のいずれでも構わない。以下に各成分の限定理由を記載する。
C:0.20〜0.35%
Cは、鋼組織としてマルテンサイトなどを形成させることで強度を向上させる。1470MPa級を超えるような強度を得るためには0.20%以上必要である。一方、0.35%を超えるとスポット溶接部の靱性が劣化する。したがって、C量は0.20〜0.35%とすることが好ましい。
Si:0.1〜0.5%
Siは鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素である。そのためには0.1%以上必要である。一方、0.5%を超えるとフェライトが安定化されるため、焼き入れ性が低下する。したがって、Si量は0.1〜0.5%とすることが好ましい。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは鋼の高強度化に有効な元素である。機械特性や強度を確保するためは1.0%以上含有させることが必要である。一方、3.0%超えると焼鈍時の表面濃化が増加し、めっき密着性の確保が困難になる。したがって、Mn量は1.0〜3.0%とすることが好ましい。
P:0.02%以下
P量が0.02%を超えると鋳造時のオーステナイト粒界へのP偏析に伴う粒界脆化により、局部延性の劣化を通じて強度と延性のバランスが低下する。したがって、P量は0.02%以下とすることが好ましい。
S:0.01%以下
SはMnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。したがって、極力低減することが望ましく0.01%以下とすることが好ましい。また、良好な伸びフランジ性を確保するため、より好ましくは0.005%以下とする。
Al:0.1%以下
Al量が0.1%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.1%以下とすることが好ましい。
N:0.01%以下
N量が0.01%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス前の加熱時にAlNの窒化物を形成し、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.01%以下とすることが好ましい。
また、本発明では、上記した基本成分のほかに鋼板の特性の更なる改善を意図して、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下、B:0.0002〜0.005%、Cr:0.1〜0.3%、Sb:0.003〜0.03%のうちから選ばれた少なくとも1種を、必要に応じて適宜含有させることが可能である。
Nb:0.05%以下
Nbは鋼の強化に有効な成分であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下する。したがって、Nbを含有させる場合は0.05%以下とする。
Ti:0.05%以下
TiもNbと同様に鋼の強化には有効であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下するという課題がある。したがって、Tiを含有させる場合は0.05%以下とする。
B:0.0002〜0.005%
Bはオーステナイト粒界からのフェライト生成および成長を抑制する作用を有するため、0.0002%以上の添加が好ましい。一方、過剰なBの添加は成形性を大きく損なう。したがって、Bを含有させる場合は0.0002〜0.005%とする。
Cr:0.1〜0.3%
Crは鋼の強化および焼き入れ性を向上させるために有用である。このような効果を発現するためには0.1%以上の添加が好ましい。一方、合金コストが高いため0.3%超えの添加では大幅なコストアップを招く。したがって、Crを含有させる場合は0.1〜0.3%とする。
Sb:0.003〜0.03%
Sbも熱間プレスのプロセス中に鋼板表層の脱炭を抑止する効果がある。このような効果を発現するためには0.003%以上の添加が必要である。一方、Sb量が0.03%を超えると圧延荷重の増加を招くため生産性を低下させる。したがって、Sbを含有させる場合は0.003〜0.03%とする。
上記以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
3)熱間プレス用鋼板の製造方法
本発明において、鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備える鋼板を、pH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上浸漬する、もしくはZn−Ni系合金めっき層に対して歪を付与することにより、所望のクラック密度を有する熱間プレス用鋼板を製造することができる。
酸性水溶液のpHが4.0を超えると、クラックを形成する効果が減少し、所望のクラック密度を得ることができないため、酸性水溶液のpHは4.0以下とすることが好ましい。また、酸性水溶液への浸漬時間が1.5秒未満である場合にも、クラックを形成する効果が減少し、所望のクラック密度を得ることができないため、酸性水溶液への浸漬時間は1.5秒以上とすることが好ましい。特に本発明では、pH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上鋼板を浸漬することにより、Zn−Ni系合金めっき層における直交する2断面について、単位断面当たりのクラック密度がいずれも10分断箇所/mm以上である熱間プレス用鋼板を得ることができる。
本発明において、酸性水溶液は、Zn−Ni系合金めっき層を形成するめっき液であることが好ましい。Zn−Ni系合金めっき層を形成するためのめっき液は、通常pH4.0以下の酸性水溶液である。したがって、Zn−Ni系合金めっき層を形成した後、引き続きこのめっき液への浸漬処理を行えば、1つの液を用いてZn−Ni系合金めっき層の形成処理とクラック形成処理を行うことができるので、コスト的に有利である。
なお、本発明において、上記のとおりZn−Ni系合金めっき層形成後に、引き続きめっき液に浸漬してクラック形成処理を行った後、さらにZn−Ni系合金めっき層を形成するめっき処理を行ってもよい。
また、本発明では、Zn−Ni系合金めっき層に対して歪を付与することにより、所望のクラック密度を有する熱間プレス用鋼板を製造することができる。歪を付与するクラック形成処理としては、一軸引張等が例示される。また、歪量としては、2%以上が好ましい。
本発明においては、上記いずれかの方法によりクラック形成処理を施した後、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも1種の化合物層の形成処理を施してもよい。このような処理を施すことにより、得られる熱間プレス部材の最表層に位置する酸化物層の平均膜厚が薄くなり、熱間プレス部材の抵抗スポット溶接性を向上させることができる。
Si化合物層の形成に適用するSi含有化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、リチウムシリケート、珪酸ソーダ、コロイダルシリカ、シランカップリング剤などを適用できる。Ti化合物層の形成に適用するTi含有化合物としては、例えば、チタン酸リチウムやチタン酸カルシウムなどのチタン酸塩、チタンアルコキシドやキレート型チタン化合物を主剤とするチタンカップリング剤などを適用できる。Al化合物層の形成に適用するAl含有化合物としては、例えば、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カルシウムなどのアルミン酸塩、アルミニウムアルコキシドやキレート型アルミニウム化合物を主剤とするアルミニウムカップリング剤などを適用できる。Zr化合物層の形成に適用するZr含有化合物としては、例えば、ジルコン酸リチウムやジルコン酸カルシウムなどのジルコン酸塩、ジルコニウムアルコキシドやキレート型ジルコニウム化合物を主剤とするジルコニウムカップリング剤などを適用できる。
Zn−Ni系合金めっき層の表面にこうした化合物層を形成するには、上記のSi含有化合物、Ti含有化合物、Al含有化合物、Zr含有化合物のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物をZn−Ni系合金めっき層上に付着処理した後、水洗することなく加熱乾燥すればよい。これらの化合物の付着処理は塗布法、浸漬法、スプレー法のいずれでもよく、ロールコーター、スクイズコーター、ダイコーターなどを用いればよい。このとき、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、厚みの均一化を行うことも可能である。また、加熱乾燥は鋼板最高到達温度が40〜200℃となるように行うことが好ましい。50〜160℃で行うことがより好ましい。
なお、Si、Ti、Al、Zrのうちから選ばれた少なくとも一種のカチオンを含有し、リン酸イオン、フッ素酸イオン、フッ化物イオンのうちから選ばれた少なくとも一種のアニオンを含有する酸性の水溶液にZn−Ni系合金めっき層を備える鋼板を浸漬する反応型処理を行った後、水洗するかまたは水洗することなく加熱乾燥する方法によっても、Zn−Ni系合金めっき層の表面に上述の化合物層を形成することが可能である。
4)熱間プレス部材の製造方法
本発明において、上記3)で説明した熱間プレス用鋼板、もしくは、鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、Zn−Ni系合金めっき層内部に、Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上である鋼板に対して、Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスすることにより、所望の分断密度を有する熱間プレス部材を得ることができる。さらにまた、鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、Zn−Ni系合金めっき層内部に、Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上であり、Zn−Ni系合金めっき層の表面に、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層を備える鋼板を、Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスすることでも、所望の分断密度を有する熱間プレス部材を得ることができる。
熱間プレス用鋼板の加熱温度の範囲をAc変態点〜1000℃とすることにより、上記1)で説明した、固溶体相と、金属間化合物相と、酸化物層とを有するZn−Ni系合金めっき層を得ることができる。加熱温度がAc変態点より低いと、熱間プレス部材として必要な強度を得ることができない場合があり、加熱温度が1000℃を超えると、Zn−Ni系合金めっき層における金属間化合物相が消失してしまう場合がある。
また、上記加熱温度における保持時間については何ら限定されるものではない。なお、金属間化合物相をなるべく多く残存させて塗装後耐食性をより一層向上させる観点、および、保持時間中に炉内の水蒸気を取り込むことによる水素侵入を避ける観点から、保持時間は3分以内とすることが好ましく、より好ましくは1分以内、さらに好ましくは0分とする。
また、熱間プレス用鋼板を加熱する方法は何ら限定されるものでなく、電気炉やガス炉による炉加熱、通電加熱、誘導加熱、高周波加熱、火炎加熱などが例示される。
加熱に次いで、熱間プレス加工を行い、加工と同時または直後に金型や水などの冷媒を用いて冷却を行うことにより熱間プレス部材が製造される。本発明においては、熱間プレス条件は特に限定されないが、一般的な熱間プレス温度範囲である600〜800℃でプレスを行う事が出来る。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。下記の実施例は本発明を限定するものではなく、要旨構成の範囲内で適宜変更することは、本発明の範囲に含まれるものとする。
下地鋼板として、質量%で、C:0.33%、Si:0.25%、Mn:1.9%、P:0.005%、S:0.001%、Al:0.03%、N:0.004%、Nb:0.02%、Ti:0.02%、B:0.002%、Cr:0.2%、Sb:0.008%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、板厚1.4mmの冷延鋼板を用いた(Ac変態点=730℃)。
上記の下地鋼板に、硫酸亜鉛・7水和物115g/L、硫酸ニッケル・6水和物230g/L(一部の条件では硫酸ニッケル・6水和物の添加量を115〜460g/Lとした。)、硫酸ナトリウム55g/LからなるpH1.4、浴温50℃のめっき浴中で電流密度を10〜100A/dm、通電時間5〜60秒と変化させて電気めっき処理を施し、下地鋼板上に、Ni含有率および付着量の異なるZn−Ni系合金めっき層を形成させた。得られたZn−Ni系合金めっき層のNi含有率および付着量を表1に示す。
このようにして得られた鋼板を以下の方法で処理することにより、Zn−Ni系合金めっき層にクラックを形成させた。
A:鋼板を上記浴組成のめっき液に浸漬する処理
B:鋼板を塩酸に浸漬する処理
C:鋼板の圧延方向に歪量5%の一軸引張を行う処理
なお、上記Cの処理により、めっき層に対しても5%の歪を付与することとなる。
また、一部の鋼板については、上記Aに記載のめっき液浸漬によるクラック形成処理を行った後、再度、所定付着量となるようにZn−Ni系合金めっき層を形成させる電気めっき処理を行うことによって、熱間プレス用鋼板を作製した。
また、一部の鋼板については、上記Aに記載のめっき液浸漬によるクラック形成処理を行った後、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のいずれかの化合物層の形成処理を施した。なお、Si含有化合物層の形成処理は、シリコーン樹脂を鋼板表面に塗布後、乾燥することにより行い、Si換算付着量を50mg/mまたは500mg/mとした。Ti含有化合物層の形成処理は、チタンカップリング剤を鋼板表面に塗布後、乾燥することにより行い、Ti換算付着量を50mg/mとした。Al含有化合物層の形成処理は、アルミニウムカップリング剤を鋼板表面に塗布後、乾燥することにより行い、Al換算付着量を50mg/mとした。Zr含有化合物層の形成処理は、Zrイオンおよびフッ化物イオンを含有する水溶液に鋼板を浸漬後、水洗および乾燥することにより行い、Zr換算付着量を10mg/mまたは50mg/mとした。
得られた熱間プレス用鋼板のZn−Ni系合金めっき層について、断面観察を行い、クラック密度を測定した。具体的には、Zn−Ni系合金めっき層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて500倍で観察し、単位断面長さ当たりのクラック密度(箇所/mm)に換算した。このとき、クラック密度の測定精度を上げるため、1つの供試材について3視野の断面観察を行い、その平均値をクラック密度とした。なお、クラック密度の測定は、鋼板の圧延方向(L方向)および圧延方向に直角の方向(C方向)の2断面について行った。クラック密度を表1に示す。
次いで、得られた熱間プレス用鋼板を、熱間プレスに供した。すなわち、得られた熱間プレス用鋼板から150mm×300mmの試験片を採取し、電気炉によって加熱処理を行った。熱処理条件(加熱温度、保持時間)を表1に示す。熱処理後の試験片を電気炉から取り出し、直ちにハット型金型を用いて成形開始温度700℃で熱間プレスを行うことにより熱間プレス部材を得た。なお、得られた熱間プレス部材の形状は上面の平坦部長さ100mm、側面の平坦部長さ50mm、下面の平坦部長さ50mmである。また、金型の曲げRは上面の両肩、下面の両肩いずれも7Rである。
得られた熱間プレス部材について、めっき層の相構造の同定、酸化物層の分断密度の測定、めっき層の最表層に位置するZnを含有する酸化物層の平均膜厚の測定、塗装後耐食性の評価、水素放出特性の評価、抵抗スポット溶接性の評価を行った。
<めっき層の相構造および酸化物層の分断密度>
得られた熱間ブレス部材の各めっき層について、相構造(固溶体相、金属間化合物相、酸化物層)の同定を行った。具体的には、X線回折により固溶体相、金属間化合物相、酸化物層の各相の存在有無を判定し、走査型電子顕微鏡(SEM)により各相の存在位置を確認した。
また、得られた熱間プレス部材の上面の平坦部から断面観察用の試験片を採取し、断面観察を行うことにより酸化物層の分断密度を測定した。具体的には、熱間プレス部材のZn−Ni系合金めっき層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて500倍で観察し、単位断面当たりの分断密度(箇所/mm)に換算した。このとき、酸化物層の分断密度の測定精度を上げるため、1つの供試材について3視野の断面観察を行い、その平均値を分断密度とした。なお、分断密度の測定は、鋼板の圧延方向(L方向)および圧延方向に直角の方向(C方向)の2断面について行った。酸化物層の分断密度の測定結果を表1に示す。
また、得られた熱間プレス部材について、Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するZnを含有する酸化物層の平均膜厚を測定した。具体的には、熱間プレス部材のZn−Ni系合金めっき層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍で観察し、めっき層の最表層に位置するZnを含有する酸化物層の膜厚を、視野内で任意の9か所で測定した。さらに、酸化物層の膜厚の測定精度を上げるため、1つの供試材について3視野の断面観察を行い、3視野27箇所での測定値の平均値を平均膜厚とした。なお、前述のめっき層を分断する酸化物の厚さは、最表層に位置するZnを含有する酸化物層の膜厚測定からは除外する。
<塗装後耐食性>
塗装後耐食性を評価するため、得られた熱間プレス部材について、上面の平坦部から70mm×150mmの試験片を切り出し、この試験片に対してジルコニウム系化成処理および電着塗装を施した。ジルコニウム系化成処理は、日本パーカライジング社製PLM2100を用いて標準条件で行い、電着塗装は関西ペイント社製GT100Vを用いて塗装膜厚が10μmとなるように行い、焼付け条件は170℃で20分間保持とした。次いで、ジルコニウム系化成処理および電着塗装を施した熱間プレス部材を腐食試験(SAE−J2334)に供し、30サイクル後の腐食状況の評価を行った。
クロスカット部については、クロスカットからの片側最大膨れ幅を測定して以下の基準で判定を行い、◎または○を合格とした。評価結果を表1に示す。
◎:片側最大膨れ幅<1.5mm
○:1.5mm≦片側最大膨れ幅<3.0mm
△:3.0mm≦片側最大膨れ幅<4.0mm
×:4.0mm≦片側最大膨れ幅
クロスカットを施していない一般部については、以下の基準で判定を行い、◎または○を合格とした。評価結果を表1に示す。
◎:一般部における赤錆発生なし
○:1箇所≦赤錆発生箇所<3箇所
△:3箇所≦赤錆発生箇所<10箇所
×:10箇所≦赤錆発生箇所
<熱間プレス部材中の水素量測定>
得られた熱間プレス部材中の水素量をガスクロマトグラフィーにより測定した。ガスクロマトグラフィーの昇温速度は200℃/h,到達温度は300℃である。ここで、水素量とは室温から300℃の温度範囲で鋼中から放出される水素量の累積であり、各温度の放出水素量を積算して算出される。
以下の基準で判定を行い、◎または○を合格とした。評価結果を表1に示す。
◎:熱間プレス部材中の水素量<0.10ppm
○:0.10ppm≦熱間プレス部材中の水素量<0.15ppm
△:0.15ppm≦熱間プレス部材中の水素量<0.20ppm
×:0.20ppm≦熱間プレス部材中の水素量
<抵抗スポット溶接性>
抵抗スポット溶接性を評価するため、得られた熱間プレス部材について、上面の平坦部から20mm×50mmの試験片を切り出し、同種の2枚板組で、抵抗スポット溶接性評価を行った。溶接機には交流抵抗スポット溶接機を用い、電極にはDRφ16タイプ先端径6mmのCr−Cu電極を用いた。加圧力は3.5kN、通電時間は0.42秒とした。溶接電流は3.0kAよりチリが発生するまで0.1kA刻みで上昇させ、チリの発生しない最大の電流値を記録した。溶接後の試験片の溶接部の断面観察よりナゲット径を測定し、板厚t(mm)に対してナゲット径が4√t(mm)以上となる最小の電流と、チリの発生しない最大の電流値の差を、溶接の適正電流範囲とした。
以下の基準で適正電流範囲の判定を行い、◎、○、△のいずれかであれば合格とした。評価結果を表1に示す。
◎:1.5kA≦適正電流範囲
○:1.0kA≦適正電流範囲<1.5kA
△:0.5kA≦適正電流範囲<1.0kA
×:適正電流範囲<0.5kA
Figure 0006888743
表1の結果から、本発明の熱間プレス部材は、塗装後耐食性、特にジルコニウム系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性、および、水素放出特性に優れる。また、本発明の熱間プレス用鋼板であれば、塗装後耐食性および水素放出特性に優れる熱間プレス部材を得ることができる。

Claims (13)

  1. 鋼板の少なくとも一方の表面に、Fe、ZnおよびNiを含有する固溶体相と、Zn、NiおよびFeを含有する金属間化合物相と、Znを含有する酸化物層とを有するZn−Ni系合金めっき層を備え、
    前記酸化物層は前記Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するとともに、前記酸化物層は前記金属間化合物相を分断し、
    前記酸化物層の少なくとも1断面における単位断面当たりの分断密度は10分断箇所/mm以上である、熱間プレス部材。
  2. 前記酸化物層における直交する2断面について、単位断面当たりの分断密度がいずれも10分断箇所/mm以上である、請求項1に記載の熱間プレス部材。
  3. 前記Zn−Ni系合金めっき層の最表層に位置するZnを含有する酸化物層の平均膜厚が1.5μm以下である、請求項1または2に記載の熱間プレス部材。
  4. 鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、
    前記Zn−Ni系合金めっき層内部に、前記Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、
    前記Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上である、熱間プレス用鋼板。
  5. 前記Zn−Ni系合金めっき層における直交する2断面について、単位断面当たりのクラック密度がいずれも10分断箇所/mm以上である、請求項4に記載の熱間プレス用鋼板。
  6. 前記Zn−Ni系合金めっき層の表面に、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層を備える、請求項4または5に記載の熱間プレス用鋼板。
  7. 鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備える鋼板を、
    pH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上浸漬する、もしくは前記Zn−Ni系合金めっき層に対して歪を付与する、
    熱間プレス用鋼板の製造方法。
  8. 前記鋼板をpH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上浸漬する、請求項7に記載の熱間プレス用鋼板の製造方法。
  9. 前記酸性水溶液が、前記Zn−Ni系合金めっき層を形成するめっき液である、請求項7または8に記載の熱間プレス用鋼板の製造方法。
  10. 前記pH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上浸漬する、もしくは前記Zn−Ni系合金めっき層に対して歪を付与する工程の後、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層の形成処理を施す、請求項7〜9のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板の製造方法。
  11. 請求項7〜10のいずれかに記載の製造方法により得られる熱間プレス用鋼板を、Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
  12. 鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、前記Zn−Ni系合金めっき層内部に、前記Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、前記Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上である鋼板を、
    Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
  13. 鋼板の少なくとも一方の表面に、10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/mのZn−Ni系合金めっき層を備え、前記Zn−Ni系合金めっき層内部に、前記Zn−Ni系合金めっき層を分断するクラックを有し、前記Zn−Ni系合金めっき層の少なくとも1断面における単位断面当たりのクラック密度が10分断箇所/mm以上であり、前記Zn−Ni系合金めっき層の表面に、さらにSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層を備える鋼板を、
    Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
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