JP7338606B2 - 熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法 - Google Patents

熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびにそれらの製造方法に関する。特に、ジルコニウム系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性および抵抗スポット溶接性に優れた熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法に関する。
近年、自動車の分野では素材鋼板の高性能化と共に軽量化が促進されており、防錆性を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板または電気亜鉛めっき鋼板の使用が増加している。しかし、多くの場合、鋼板の高強度化に伴ってそのプレス成形性が低下するため、複雑な部品形状を得ることは困難になる。例えば、自動車用途で、防錆性が必要であり、かつ難成形部品としては、シャシーなどの足回り部材やBピラーなどの骨格用構造部材が挙げられる。
このような背景から、近年では冷間プレスに比べてプレス成形性と高強度化の両立が容易である熱間プレスによる自動車用部品の製造が急速に増加しており、熱間プレス技術の諸課題を解決する様々な技術が開示されている。
なかでもZn-Ni合金めっき鋼板は、めっき層の融点が高いことから熱間プレス用鋼板として注目されており、この鋼板を用いた熱間プレス部材およびその製造方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、α-Fe(Zn、Ni)混晶と、Zn、NiおよびFeの金属間化合物と、Mnを含む層とを有する熱間プレス部材が開示されている。
また、特許文献2には、Ni拡散領域と、γ相に相当する金属間化合物層と、ZnO層とを有する熱間プレス部材が開示されている。
特表2013―503254号公報 特開2011-246801号公報 特開2004-323897公報
しかしながら、近年では、従来のリン酸亜鉛系化成処理に代わり、ジルコニウム系化成処理が普及し始めており、このジルコニウム系化成処理を施した後に電着塗装を行った部材の塗装後耐食性も求められるようになってきた。
特許文献1および特許文献2に開示される熱間プレス部材は、いずれもZn-Ni合金めっき鋼板を加熱して製造された熱間プレス部材であり、無塗装での耐食性やリン酸亜鉛系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性には優れるものの、ジルコニウム系化成処理を適用した場合の塗装後耐食性については不十分であるという問題がある。
一方、抵抗スポット溶接性も熱間プレス部材に要求される重要な特性である。亜鉛系めっき鋼板を熱間プレスに供すると、加熱前のめっき層中に含まれるZnが熱間プレス工程で酸化されることで、表面に、酸化亜鉛を主成分とし、数μmの厚さを有する酸化物皮膜が生成する。酸化亜鉛は半導体であるが、比抵抗が大きく、抵抗スポット溶接性を低下させる。そのため、亜鉛系めっき鋼板を用いた熱間プレス部材に対しては、特許文献3で開示されるように、ショットブラストなどにより酸化物皮膜を除去する場合がある。しかしながら、抵抗スポット溶接性確保のためのショットブラスト工程は、工数およびコストが増大するため、亜鉛系めっき鋼板を熱間プレスに適用する際の課題となっている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、塗装後耐食性および抵抗スポット溶接性に優れる熱間プレス部材およびその製造方法を提供することを目的とする。また、塗装後耐食性および抵抗スポット溶接性に優れる熱間プレス部材に適した熱間プレス用鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するために、鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
(1)熱間プレス部材の塗装後耐食性を向上させるためには、熱間プレス部材の一方の面の平均線粗さRaを2.5μm以下とすることが有効である。さらに、熱間プレス部材の抵抗スポット溶接性を向上させるためには、熱間プレス部材のもう一方の面の平均線粗さRaを3.5μm以上とすることが有効である。
(2)鋼板の両面に、付着量が36g/m以上のZn系めっき層を備える鋼板を、Ac変態点~1000℃の温度範囲に加熱後熱間プレスする熱間プレス部材の製造方法であって、Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有し、一方の面のZn系めっき層の少なくとも1断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上であり、もう一方の面のZn系めっき層の少なくとも1断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である熱間プレス用鋼板を熱間プレスすることにより、第一面の塗装後耐食性と、抵抗スポット溶接性に優れる熱間プレス部材を得ることができる。
本発明は上記知見に基づくものであり、その特徴は以下の通りである。
[1]鋼板の両面にZn系めっき層を備え、
鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m以上であり、かつ平均線粗さRaが2.5μm以下であり、
鋼板のもう一方の面の平均線粗さRaが3.5μm以上である、熱間プレス部材。
[2]鋼板の両面にZn系めっき層を備え、前記Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有し、
鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m以上であり、かつZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上であり、
鋼板のもう一方の面のZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である、熱間プレス用鋼板。
[3]鋼板の両面にZn系めっき層を備え、前記Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有し、
鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m以上であり、かつZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上であり、
鋼板のもう一方の面のZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である、熱間プレス用鋼板を、
室温からAc変態点~1000℃の温度範囲に5秒以上600秒以下の時間で昇温し、さらに、Ac変態点~1000℃の温度範囲に300秒以下の時間保持した後、熱間プレスする熱間プレス部材の製造方法。
本発明によれば、塗装後耐食性および抵抗スポット溶接性に優れる熱間プレス部材を得ることができる。また、本発明の熱間プレス用鋼板は、塗装後耐食性および抵抗スポット溶接性に優れる熱間プレス部材に適している。
図1は、Zn系めっき層にクラックが形成されている場合の、熱間プレス前(加熱前)のZn系めっき層の断面を示す模式図である。 図2は、Zn系めっき層にクラックが形成されている場合の、熱間プレス後(加熱後)のZn系めっき層の断面を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な一実施態様を示すものであり、以下の説明によって何ら限定されるものではない。また、鋼成分組成の各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
1)熱間プレス部材
本発明の熱間プレス部材は、鋼板の両面にZn系めっき層を備え、鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m以上であり、かつ平均線粗さRaが2.5μm以下であり、
鋼板のもう一方の面の平均線粗さRaが3.5μm以上である。本発明は、熱間プレス部材の表裏面での表面凹凸の大きさに意図的に差を設けることを最大の特徴とする。
Zn系めっき層を備える鋼板に熱間プレスを施すと、めっき層中のZnが下地鋼板に拡散し、この拡散領域においてFeおよびZnを含有する固溶体相を形成する。めっき層がその他の合金元素を含有する場合、その合金元素を含有してもよい。同時に、Zn系めっき層中のZnと加熱雰囲気中に存在する酸素とが結合して、Zn系めっき層の表面にZnを含有する酸化物層を形成する場合がある。また、下地鋼板への拡散にも酸化物層の形成にも寄与しなかった金属間化合物であるZn系めっき層は、金属間化合物相として残存するが、下地鋼板から拡散したFeが取り込まれるため、Zn、Feおよびめっき層が含有するその他の合金元素を含有する金属間化合物相となる。固溶体相と金属間化合物相は、いずれも犠牲防食作用を有するZnを含有するため、耐食性の向上に寄与する。以上説明したとおり、本発明が課題とする塗装後耐食性を満足するためには、Znを含有するめっき層が必須の構成要件であり、このZn系めっき層は固溶体相、金属間化合物相の少なくともいずれかを含むものである。
本発明において、Zn系めっき層の表面に、厚さ0.2μm以上で金属酸化物を主体とする層とを備えていてもよい。厚さが0.2μm以上とすることにより、化成処理工程で溶解しきらず残存することで,一層の塗装後耐食性改善を見込むことができる。
本発明において、鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m以上であり、かつ平均線粗さRaが2.5μm以下である。Zn付着量が36g/m未満である場合、塗膜下における亜鉛の腐食速度が著しく大きくなり、塗装後耐食性が低下する。一方、Zn付着量が120g/mを超えると、塗装後耐食性改善効果は飽和しコスト高となるばかりであることから、上限は120g/mとすることが好ましい。塗装後耐食性のさらなる向上を目的とする場合、Zn付着量は40g/m以上とすることがより好ましく、50g/m以上とすることがさらに好ましい。
また、本発明において、一方の面のZn系めっき層表面の平均線粗さRaは2.5μm以下である。この面は、熱間プレス部材の外面に位置し、主として外観腐食性能を評価される面である。一方、平均線粗さが2.5μmを超えるような大きな凹凸を有する熱間プレス部材に、ジルコニウム系化成処理および電着塗装を施して塗装後耐食性を評価すると、特にクロスカットを施していない一般部からの赤錆発生が顕著となる。この理由は、電着塗装が熱間プレス部材表面の凹凸に追従せず、凸部において電着塗装の膜厚が極めて薄くなるため、このような部分で赤錆が発生するものと考えられる。ただし、一般部から発生する赤錆は板厚方向への進展は遅いため、部材の機械特性に影響するものでなく、外観品質のみに影響する。平均線粗さRaは、好ましくは2.2μm未満、より好ましくは2.0μm未満とする。
本発明において、もう一方の面のZn系めっき層表面の平均線粗さRaは3.5μm以上である。この面は、上述した一方の面(平均線粗さRaが2.5μm以下である面)の反対側に位置する面であり、熱間プレス部材の内面に位置し、抵抗スポット溶接の際に合わせ面となる面である(Zn系めっき層表面の平均線粗さRaは2.5μm以下である面を鋼板の表面とすると、平均線粗さRaは3.5μm以上である面は鋼板の裏面に相当する)。前述の様に、熱間プレス後の部材の表面には酸化物皮膜が生成する。これは比抵抗が大きいため、厚く均一に存在するほど抵抗スポット溶接性が低下する。具体的には、表面に厚い酸化物皮膜が存在する場合、通電経路が狭まるために通電が不安定化し、局所的な通電による散り(バースト)が比較的低い溶接電流で発生するようになる。酸化物皮膜は、金属皮膜や電極金属と比べ高硬度であるが、靭性に乏しい。そのため、電極、あるいは相手材の鋼板により押圧されることで容易に破壊される。このとき、熱間プレス部材の平均線粗さRaを3.5μm以上とすることで、抵抗スポット溶接におおける電極圧下の際の酸化皮膜の破壊が促進され、通電点が確保されることで散りの発生が低減する。平均線粗さRaは、好ましくは4.0μm以上、より好ましくは4.5μm以上とする。
なお、鋼板のもう一方の面(Zn系めっき層表面の平均線粗さRaが3.5μm以上である面)のZn付着量は特に制限されないが、36g/m以上であることが好ましい。Zn付着量が36g/m未満である場合、塗膜下における亜鉛の腐食速度が著しく大きくなり、塗装後耐食性が低下する場合がある。一方、Zn付着量が120g/mを超えると、塗装後耐食性改善効果は飽和しコスト高となるばかりであることから、上限は120g/mとすることが好ましい。塗装後耐食性のさらなる向上を目的とする場合、Zn付着量は40g/m以上とすることがより好ましく、50g/m以上とすることがさらに好ましい。
2)熱間プレス用鋼板
本発明の熱間プレス用鋼板は、鋼板の両面にZn系めっき層を備え、Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有し、鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m以上であり、かつZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上であり、鋼板のもう一方の面のZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である。本発明では、後述のように、めっき層内の残留応力を活用してクラックを付与するのが最も経済的であることから、めっき層を構成する金属は、合金元素を含有するものであることが望ましい。たとえば、Cr、Fe、Co、Niから選択される元素を8~30%含有させることが好ましい。また、めっき層は酸化物が分散したものでもよく、SiOまたはAlのナノ粒子を0.1~10%含有するものが例示される。
本発明では、Zn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上である面のZn付着量を36g/m以上とすることにより、塗装後耐食性と抵抗スポット溶接性に優れた熱間プレス部材を得ることができる。加熱方法にも依存するが、一般的な炉加熱ホットスタンプでは3~10g/m、通電加熱ホットスタンプでは0~5g/m程度のZnが気化し消失するので、加熱後部材に残存させるZn量を見込んで設定することが望ましい。付着量が36g/m未満であると、加熱後のZn付着量も36g/m未満となり、結果的に塗装欠陥部での赤錆発生が著しくなる。付着量が120g/mを超えると、上記の赤錆抑制効果は飽和する。塗装後耐食性のさらなる向上を目的とする場合、Zn付着量は40g/m以上とすることが好ましく、50g/m以上とすることがより好ましい。
なお、鋼板のもう一方の面、すなわち、Zn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である面のZn付着量については特に制限されないが、36g/m以上であることが好ましい。付着量が36g/m未満であると、加熱後のZn付着量も36g/m未満となり、結果的に塗装欠陥部での赤錆発生が著しくなる。付着量が120g/mを超えると、上記の赤錆抑制効果は飽和する。塗装後耐食性のさらなる向上を目的とする場合、Zn付着量は40g/m以上とすることが好ましく、50g/m以上とすることがより好ましい。
本発明の熱間プレス用鋼板において、Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有し、一方の面のZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上であり、もう一方の面のZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下であることを特徴とする。なお、Zn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上である面を鋼板の表面とした場合、Zn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である面が裏面となる。
クラック密度が30箇所/mm以上の熱間プレス用鋼板(図1)を熱間プレスに供した場合、熱間プレス前にクラックが存在した部分においては酸化物層が形成する(図2)。そして、熱間プレス前の加熱によりZn系合金めっき層が溶融して液体になったとしても、酸化物層が金属間化合物相を分断しているため、Zn系めっき層全体が大きな凹凸を形成することはない。このため、Zn系めっき層全体として見た場合に、平坦なZn系めっき層を有する熱間プレス部材を得ることができる。
一方、クラック密度が20箇所/mm以下の熱間プレス用鋼板に対し、熱間プレス前の加熱により鋼板の温度を上昇させていくと、温度上昇に伴いZn系めっき層の表面に酸化物層が形成されていく。やがて鋼板の温度がZn系めっき層の融点を超えると、酸化物層と鋼板との間に位置するめっき層が溶融して液体となる。なおも加熱が進み鋼板の温度が上昇を続けると、酸化物層も成長を継続していくこととなるが、このとき、めっき層表面に対して垂直な方向では、酸化物層はその厚みを増大させて成長し、めっき層表面に水平な方向には酸化物層が凹凸を形成しながらその表面積を増大させることによって成長する。これは、酸化物層と鋼板との間に位置するめっき層が流動可能な液体であるため、酸化物層がその形状を変化させることが可能なためである。なお、この面のクラック密度は、0箇所/mmであってもよい。
抵抗スポット溶接性の確保の観点では、特に、相手材との合わせ面側の表面凹凸を大きくすることが有効である。そのため、熱間プレス用鋼板の一方の面のクラック密度は小さいことが望ましい。一方、表面凹凸は電着塗膜の局所的な薄膜化を誘発し、塗装後耐食性を低下させる。そのため、塗装後耐食性の評価面側には、高密度のクラックを付与し、加熱後の表面を平坦化することが重要である。
本発明の熱間プレス用鋼板において、Zn系めっき層を分断するクラックとは、Zn系めっき層表面に対して垂直な方向、すなわち、Zn系めっき層の表面から下地鋼板側に向かって形成されたクラックのことを指すものとする。また、クラックの幅は、塗装後耐食性の観点から5μm以下とし、より好ましくは2μm以下とする。
なお、本発明の熱間プレス用鋼板におけるZn系めっき層は、単層のZn系めっき層であってもよいが、本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲で、目的に応じて下層皮膜または上層皮膜を設けてもよい。例えば、下層皮膜としては、Niを主体とする下地めっき層が例示される。
本発明において、熱間プレス後に1470MPa級を超えるような熱間プレス部材を得るためには、熱間プレス用鋼板におけるZn系めっき層の下地鋼板として、例えば、質量%で、C:0.20~0.50%、Si:0.1~0.5%、Mn:1.0~3.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼板を用いることができる。なお、鋼板としては冷延鋼板または熱延鋼板のいずれでも構わない。以下に各成分の限定理由を記載する。
C:0.20~0.50%
Cは、鋼組織としてマルテンサイトなどを形成させることで強度を向上させる。1470MPa級を超えるような強度を得るためには0.20%以上が好ましい。一方、0.50%を超えるとスポット溶接部の靱性が低下する。したがって、C量は0.20~0.50%とすることが好ましい。
Si:0.1~0.5%
Siは鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素である。そのためには0.1%以上が好ましい。一方、0.5%を超えるとフェライトが安定化されるため、焼き入れ性が低下する。したがって、Si量は0.1~0.5%とすることが好ましい。
Mn:1.0~3.0%
Mnは冷却後の強度確保を広い冷却速度範囲で得るために有効な元素である。機械特性や強度を確保するためは1.0%以上含有させることが好ましい。一方、3.0%を超えると、コストが上昇するばかりでなく効果は飽和する。したがって、Mn量は1.0~3.0%とすることが好ましい。
P:0.02%以下
P量が0.02%を超えると鋳造時のオーステナイト粒界へのP偏析に伴う粒界脆化により、局部延性の劣化を通じて強度と延性のバランスが低下する。したがって、P量は0.02%以下とすることが好ましい。
S:0.01%以下
SはMnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。したがって、極力低減することが望ましく0.01%以下とすることが好ましい。また、良好な伸びフランジ性を確保するため、より好ましくは0.005%以下とする。
Al:0.1%以下
Al量が0.1%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.1%以下とすることが好ましい。
N:0.01%以下
N量が0.01%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス前の加熱時にAlNの窒化物を形成し、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.01%以下とすることが好ましい。
また、本発明では、上記した基本成分のほかに鋼板の特性の更なる改善を意図して、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下、B:0.0002~0.005%、Cr:0.1~0.3%、Sb:0.003~0.03%のうちから選ばれた少なくとも1種を、必要に応じて適宜含有させることが可能である。
Nb:0.05%以下
Nbは鋼の強化に有効な成分であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下する。したがって、Nbを含有させる場合は0.05%以下とする。
Ti:0.05%以下
TiもNbと同様に鋼の強化には有効であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下するという課題がある。したがって、Tiを含有させる場合は0.05%以下とする。
B:0.0002~0.005%
Bはオーステナイト粒界からのフェライト生成および成長を抑制する作用を有するため、0.0002%以上の添加が好ましい。一方、過剰なBの添加は成形性を大きく損なう。したがって、Bを含有させる場合は0.0002~0.005%とする。
Cr:0.1~0.3%
Crは鋼の強化および焼き入れ性を向上させるために有用である。このような効果を発現するためには0.1%以上の添加が好ましい。一方、合金コストが高いため0.3%超えの添加では大幅なコストアップを招く。したがって、Crを含有させる場合は0.1~0.3%とする。
Sb:0.003~0.03%
Sbはめっき用原板の焼鈍工程で、鋼板表層の脱炭を抑止する効果がある。このような効果を発現するためには0.003%以上の添加が必要である。一方、Sb量が0.03%を超えると圧延荷重の増加を招くため生産性を低下させる。したがって、Sbを含有させる場合は0.003~0.03%とする。
上記以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
3)熱間プレス用鋼板の製造方法
本発明の熱間プレス用鋼板の製造条件については特に規定しないが、以下に望ましい製造条件について説明する。前述したような成分の鋼を鋳造し、得られた熱片スラブを直接または加熱した後、あるいは冷片を再加熱して熱間圧延を施す。その際、熱片スラブを直接圧延することと再加熱後に圧延することでの特性変化はほとんど認められない。また、再加熱温度は特に限定しないが、生産性を考慮して1000℃から1300℃の範囲とすることが好ましい。熱間圧延は通常の熱延工程、あるいは仕上圧延においてスラブを接合し圧延する連続化熱延工程のどちらでも可能である。熱間圧延の際の圧延終了温度は生産性や板厚精度を考慮してAr変態点以上とすることが望ましい。熱間圧延後の冷却は通常の方法で行うが、その際の巻取温度は生産性の観点からは550℃以上とすることが好ましく、また、巻取温度が高すぎる場合には酸洗性が劣化するため750℃以下とすることが望ましい。酸洗、冷間圧延は常法でよい。
その後の亜鉛系めっきの成膜方法は限定されず、合金系に応じて適宜選択されるが、後述するように、一方の面に対して選択的にクラック付与を行う場合、電気めっき法が最も効率的である。また、めっき後に合金化処理を施すことで、鉄を合金化しためっきを効率的に得ることができる。なお、めっき工程における雰囲気については、無酸化炉を有する連続式めっき設備でも無酸化炉を有しない連続式めっき設備でも通常の条件とすることでめっき可能であり、本鋼板だけ特別な制御を必要としないことから生産性を阻害することもない。
鋼板の両面にZn系めっき層を備え、Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有する熱間プレス用鋼板は、Zn系めっき層を備える鋼板をpH4.0以下の酸性水溶液中で、1.5秒以上浸漬させることにより得られる。具体的には、一方の面については、通電せずにpH4.0以下の酸性水溶液中で、1.5秒以上浸漬させた状態で保持、またはアノードとして電解することにより、付着量が36g/m以上のZn系めっき層を備え、Zn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上である面が得られる。もう一方の面については、0.01A/dm以上の電流密度でカソードとして電解することにより、Zn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である面が得られる。すなわち、電解条件を表裏面で制御することにより、表裏でクラック密度の異なる所望の熱間プレス用鋼板を製造することができる。このとき、浸漬状態で保持、またはアノードとして電解された面では、めっき層中のZnのアノード溶解が進行し、その結果、Zn系めっき層のクラック密度は高い数値となる。一方で、0.01A/dm以上の電流密度でカソードとして電解された面では、めっき層中のZnのアノード溶解は進行せず、Zn系めっき層のクラック密度は低い数値となる。
意図的にクラックを設ける面に対しては、酸性水溶液のpHが4.0を超えると、クラックを形成する効果が減少し、所望のクラック密度を得ることができないため、酸性水溶液のpHは4.0以下とすることが好ましい。また、酸性水溶液への浸漬時間が1.5秒未満である場合にも、クラックを形成する効果が減少し、所望のクラック密度を得ることができないため、酸性水溶液への浸漬時間は1.5秒以上とすることが好ましい。特に本発明では、pH4.0以下の酸性水溶液に1.5秒以上鋼板を浸漬することにより、Zn-Ni系合金めっき層における直交する2断面について、単位断面当たりのクラック密度がいずれも10分断箇所/mm以上である熱間プレス用鋼板を得ることができる。
意図的にクラックを設けない面に対しては、0.01A/dm以上の電流密度でカソード電解することで、クラックの発生を防止することができる。これは、クラックの発生が、めっき層がわずかにアノード溶解することに起因するためである。めっき鋼板を酸性水溶液に浸漬し、電解を行わないと、めっき鋼板上でアノード反応として亜鉛の選択溶解が生じ、それを起点としてクラックが発生する。一方、鋼板をカソードとして電解すると、上記アノード溶解が起きず、クラックの発生が抑制される。
本発明において、酸性水溶液は、Zn系めっき層を形成するめっき液であることが好ましい。Zn系めっき層を形成するためのめっき液は、通常pH4.0以下の酸性水溶液である。したがって、Zn系めっき層を形成した後、引き続きこのめっき液への浸漬処理を行えば、1つの液を用いてZn系めっき層の形成処理とクラック形成処理を行うことができるので、コスト的に有利である。
なお、本発明において、上記のとおりZn系合金めっき層形成後に、引き続きめっき液に浸漬してクラック形成処理を行った後、さらにZn系めっき層を形成するめっき処理を行ってもよい。
4)熱間プレス部材の製造方法
本発明において、鋼板の両面にZn系めっき層を備え、Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有し、鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m以上であり、かつZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上であり、鋼板のもう一方の面のZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である、熱間プレス用鋼板を、室温からAc変態点~1000℃の温度範囲に5秒以上600秒以下の時間で昇温し、さらに、Ac変態点~1000℃の温度範囲に300秒以下の時間保持した後、熱間プレスすることにより、所望の分断密度を有する熱間プレス部材を得ることができる。
熱間プレス用鋼板の加熱温度の範囲をAc変態点~1000℃とすることにより、上記1)で説明したZn系めっき層を得ることができる。加熱温度がAc変態点より低いと、熱間プレス部材として必要な強度を得ることができない場合があり、加熱温度が1000℃を超えると、Znが消失してしまう場合がある。「Ac変態点」は成分組成に基づき以下の式から算出した値とする。
Ac変態点(℃)=910-203C1/2+44.7Si-4Mn+11Cr
上記式における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味し、当該元素が含有されていない場合にはゼロとする。
金属間化合物相を残存させて塗装後耐食性を維持するため、室温から上記加熱温度に至るまでに要する時間は600秒以下とする。室温から上記加熱温度に至るまでに要する時間は好ましくは450秒以下、さらに好ましくは300秒以下とする。また、昇温速度が過度に大きい、すなわち室温から加熱温度に至るまでの時間が短すぎると、金属間化合物の残存量が飽和するのみでなく、加熱処理中にめっき層が溶融することで、垂れ模様を生じ外観を劣化させる恐れがある。このことから、昇温時間については、室温から上記加熱温度に至るまでに要する時間は5秒以上とし、好ましくは10秒以上とする。
また、上記加熱温度における保持時間については、金属間化合物相をなるべく多く残存させて塗装後耐食性をより一層向上させる観点、および、保持時間中に炉内の水蒸気を取り込むことによる水素侵入を避ける観点から、保持時間は300秒以下とする。保持時間は、より好ましくは180秒以下、さらに好ましくは60秒以下とし、保持しないことが最も好ましい。
また、熱間プレス用鋼板を加熱する方法は何ら限定されるものでなく、電気炉やガス炉による炉加熱、通電加熱、誘導加熱、高周波加熱、火炎加熱などが例示される。
加熱に次いで、熱間プレス加工を行い、加工と同時または直後に金型や水などの冷媒を用いて冷却を行うことにより熱間プレス部材が製造される。本発明においては、熱間プレス条件は特に限定されないが、一般的な熱間プレス温度範囲である600~800℃でプレスを行う事が出来る。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。下記の実施例は本発明を限定するものではなく、要旨構成の範囲内で適宜変更することは、本発明の範囲に含まれるものとする。
下地鋼板として、質量%で、C:0.24%、Si:0.25%、Mn:1.28%、P:0.005%、S:0.001%、Al:0.03%、N:0.004%、Nb:0.02%、Ti:0.02%、B:0.002%、Cr:0.2%、Sb:0.008%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、板厚1.4mmの冷延鋼板を用いた(Ac変態点=848℃)。
上記の下地鋼板に、以下の電気めっき法により、鋼板の両面(表面・裏面)にZn系めっき層を施し、熱間プレス用鋼板を得た。
<電気めっき法>
硫酸亜鉛・7水和物115g/L、硫酸ニッケル・6水和物230g/L、硫酸ナトリウム55g/LからなるpH1.4、浴温50℃のめっき浴中で電流密度を10~100A/dm、通電時間5~60秒と変化させて電気めっき処理を施すことで、表1に示す水準No.1~19、26の、Ni含有率12%で、Zn付着量の異なるZn-Ni系合金めっき層を形成させた。また、電流密度を120A/dmとすることで、No.20の、Ni含有率20%のZn-Ni系合金めっき層を形成させた。さらに、前記の硫酸ニッケル・6水和物を、硫酸鉄・6水和物、硫酸コバルト・6水和物面、硫酸クロム・6水和物で置き換えることにより、No.21~25の各種Zn系合金めっき層を形成させた。めっき層形成後、面ごとに電流密度のパターンを変化させることにより、めっき後の両面または片面の浸漬処理を行った。上記のようなめっき及び浸漬処理を行った後のZn系めっき層について、表面観察を行い、クラック密度を測定した。具体的には、Zn系めっき層の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000倍で観察し、任意に3本直線を引き、クラックとの交点を数え、直線の長さで除することにより、単位長さ当たりのクラック密度(箇所/mm)に換算した。このとき、クラック密度の測定精度を上げるため、1つの供試材について3視野の表面観察を行い、その平均値をクラック密度とした。めっき方法、Zn系めっき層の付着量およびクラックの数密度を表1に示す。なお、熱間プレス用鋼板の表面のZn系めっき層の付着量は、後述する熱間プレス部材のZn付着量と同様の方法で求めた。
次いで、上記のめっき処理により得られた熱間プレス用鋼板から100mm×200mmの試験片を採取し、電気炉もしくは通電加熱によって加熱処理を行った。熱処理条件(加熱時間、加熱温度、保持時間)を表1に示す。熱処理後の試験片を電気炉または通電加熱炉から取り出し、直ちにハット型金型を用いて成形開始温度700℃で熱間プレスを行うことにより熱間プレス部材を得た。なお、得られた熱間プレス部材の形状は上面の平坦部長さ100mm、側面の平坦部長さ50mm、下面の平坦部長さ50mmである。また、金型の曲げRは上面の両肩、下面の両肩いずれも7Rである。
得られた熱間プレス部材について、Zn付着量および平均線粗さRaの測定、塗装後耐食性の評価、および抵抗スポット溶接性の評価を行った。
<Zn付着量および平均線粗さRaの測定>
得られた熱間ブレス部材について、表面のZn付着量および両面(表裏面)の平均線粗さRaを測定した。熱間プレス部材のZn付着量は、以下の方法で求めるものとする。評価対象とする熱間プレス部材を打抜き加工して、48mmφの試料3つを採取し、各試料を計量する。その後、各試料において付着量を評価する片面とは反対側の非評価面をマスキングする。その後、重クロム酸アンモニウム20gを1Lにメスアップした溶液に、各試料を60分間浸漬することにより、酸化物層のみを溶解させた。Zn系めっき層の溶解前後の質量差から、各試料における単位面積あたりの付着量を算出した。その後、ヘキサメチレンテトラミン3.5gを添加した500mLの35%塩酸水溶液を1Lにメスアップした溶液に、各試料を10分間浸漬することにより、Zn系めっき層を溶解し、各試料を再度計量する。めっき層を溶解した上記の塩酸溶液試料中の金属成分を、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)により定量し、熱間プレス部材のめっき層中のZn量を同定した。
ミツトヨ製サーフトストSJ-2100を用い、JIS B 0601-2001に準拠し、走査速度0.5mm/s、操作距離4mm、測定荷重0.75mNとして、Zn系めっき層表面の算術平均粗さRaを測定した。任意の30区間で測定を行い、その平均値を算出し、本発明の平均線粗さRaとした。
<抵抗スポット溶接性>
熱間プレス部材の抵抗スポット溶接性を評価するため、得られた熱間プレス部材について、上面の平坦部から30mm×50mmの試験片を切り出し、同種の2枚板組で、抵抗スポット溶接性を行った。溶接機には交流抵抗スポット溶接機を用い、電極にはDRφ16タイプ 先端径6mm Cr-Cu電極を用いた。加圧力は3.5kN、通電時間は0.42秒とした。溶接電流は3.0kAよりチリが発生するまで0.1kA刻みで上昇させ、チリの発生しない最大の電流値を記録した。溶接後の試験片の溶接部の断面観察よりナゲット径を測定し、板厚t(mm)に対してナゲット径が4√t(mm)以上となる最小の電流と、チリの発生しない最大の電流値の差を、溶接の適正電流範囲とした。適正電流範囲を以下の基準で以下の基準で判定を行い、◎または○を合格とした。評価結果を表1に示す。
◎:1.5kA≦適正電流範囲
○:0.8kA≦適正電流範囲<1.5kA
×:0.8kA>適正電流範囲
また、5°の打角を設け、その他の条件は上記と同様に同種の2枚板組で溶接を行い、ナゲット内に生じたクラックの最大長さを断面から測定することにより、溶接部LME割れ長さとした。溶接部LME割れ長さを以下の基準で判定を行い、〇を合格とした。評価結果を表1に示す。
〇:20μm≧溶接部LME割れ長さ
△:100μm≧溶接部LME割れ長さ>20μm
×:100μm<適正電流範囲
<塗装後耐食性>
熱間プレス部材の塗装後耐食性を評価するため、得られた熱間プレス部材について、上面の平坦部から70mm×150mmの試験片を切り出し、この試験片に対してジルコニウム系化成処理および電着塗装を施した。ジルコニウム系化成処理は、日本パーカライジング社製PLM2100を用いて標準条件で行い、電着塗装は関西ペイント社製カチオン電着塗料エレクトロンGT100を用いて塗装膜厚が10μmとなるように行い、焼付け条件は170℃で20分間保持とした。次いで、ジルコニウム系化成処理および電着塗装を施した熱間プレス部材を腐食試験(SAE-J2334)に供し、30サイクル後の腐食状況の評価を行った。
クロスカットを施していない一般部については、以下の基準で判定を行い、◎または○を合格とした。評価結果を表1に示す。
◎:一般部における赤錆発生なし
○:1箇所≦赤錆発生箇所<3箇所
△:3箇所≦赤錆発生箇所<10箇所
×:10箇所≦赤錆発生箇所
クロスカット部(疵部)については、クロスカットからの片側最大膨れ幅を測定して以下の基準で判定を行い、◎または○を合格とした。評価結果を表1に示す。
◎:片側最大膨れ幅<1.5mm
○:1.5mm≦片側最大膨れ幅<3.0mm
△:3.0mm≦片側最大膨れ幅<4.0mm
×:4.0mm≦片側最大膨れ幅
Figure 0007338606000001
表1の結果から、本発明の熱間プレス部材は、塗装後耐食性および抵抗スポット溶接性に優れる。また、本発明の熱間プレス用鋼板であれば、塗装後耐食性および抵抗スポット溶接性に優れる熱間プレス部材を得ることができる。

Claims (3)

  1. 鋼板の両面にZn系めっき層を備え、
    鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m2以上であり、かつ平均線粗さRaが2.5μm以下であり、
    鋼板のもう一方の面の平均線粗さRaが3.5μm以上である、熱間プレス部材。
  2. 請求項1に記載の熱間プレス部材用の熱間プレス用鋼板であって、
    鋼板の両面にZn系めっき層を備え、前記Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有し、
    鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m2以上であり、かつZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上であり、
    鋼板のもう一方の面のZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である、熱間プレス用鋼板。
  3. 請求項1に記載の熱間プレス部材の製造方法であって、
    鋼板の両面にZn系めっき層を備え、前記Zn系めっき層が該Zn系めっき層を縦断するクラックを有し、
    鋼板の一方の面のZn付着量が36g/m2以上であり、かつZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が30箇所/mm以上であり、
    鋼板のもう一方の面のZn系めっき層の任意の1mm長さの断面における単位断面長さ当たりのクラック密度が20箇所/mm以下である、熱間プレス用鋼板を、
    室温からAc3変態点~1000℃の温度範囲に5秒以上600秒以下の時間で昇温し、さらに、Ac3変態点~1000℃の温度範囲に300秒以下の時間保持した後、熱間プレスする熱間プレス部材の製造方法。
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