JP7243949B1 - 熱間プレス部材 - Google Patents

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Abstract

塗装後の外観品質とカット部耐食性に優れた熱間プレス部材を提供する。鋼板と、前記鋼板の少なくとも一方の面の上に配された、FeAl、Fe2Al5、およびZnを含有するめっき層と、前記めっき層の上に配されたZn含有酸化物層とを有し、前記Fe2Al5中のZn固溶量が10質量%以上である、熱間プレス部材。

Description

本発明は、熱間プレス部材に関する。特に、塗装後の外観品質およびカット部耐食性に優れた熱間プレス部材に関する。
近年、自動車の分野では素材鋼板の高性能化とともに軽量化が促進されており、防錆性を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板または電気亜鉛めっき鋼板の使用が増加している。しかし、多くの場合、鋼板の高強度化に伴ってそのプレス成形性が低下するため、複雑な部品形状を得ることは困難になる。例えば、自動車用途で、防錆性が必要であり、かつ難成形部品としてはシャシーなどの足回り部材やBピラーなどの骨格用構造部材が挙げられる。
このような背景から、冷間ではなく熱間で形成を行う、熱間プレス技術の適用が増加している。熱間プレスとは、鋼板をオーステナイト単相の温度域(900℃前後)まで加熱した後に、高温のままでプレス成形し、同時に金型との接触により急冷(焼入れ)する成形方法である。加熱されて軟質化した状態でプレス成形が行われ、次いで、焼入れによって高強度化されるため、熱間プレスによれば、鋼板の高強度化とプレス成形性の確保とを両立させることができる。
しかし、亜鉛系めっき鋼板の熱間プレスには、液体金属脆化(Liquid Metal Embrittlement、LME)に起因する割れが曲げ加工部に生じるという問題があった。すなわち、熱間プレスでは、一般的なZn系めっき層の融点よりも高い温度まで加熱された状態でプレス成形が行われる。そのため、加熱により液体化した亜鉛が母材鋼板に侵入して液体金属脆化を引き起こす結果、引張応力を受ける曲げ加工部で割れ(クラック)が発生する。
そこで、液体金属脆化に起因するクラックを防止するという観点から、融点が高いZn-Ni合金めっき層を備える鋼板を熱間プレス用鋼板として用いることが提案されている。
例えば、特許文献1には、7~15質量%のNiを含むZn-Ni合金めっき層を有する鋼板を800℃以上に加熱して熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、13質量%以上のNiを含むZn-Ni合金めっき層を有する鋼板を、Ac3変態点~1200℃の温度範囲に加熱して熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法が開示されている。
特表2013―503254号公報 特開2011-246801号公報 特開2003-49256号公報
これまで、熱間プレス部材は主に自動車の内板(inner panel)、すなわち外部から見えない部材に使用されてきたため、外観品質は重要視されていなかった。しかし、近年、ドアを開けたときに見えるピラーまわりの部材などの準外板(semi-outer panel)などにも熱間プレス部材が用いられるようになってきており、それにともなって熱間プレス部材にも塗装後の外観品質および耐食性に優れることが求められるようになってきた。
しかし、上記特許文献1および特許文献2に開示される熱間プレス部材は、犠牲防食作用を持つZnがめっき層中に存在するためカット部などの塗装後耐食性には優れるものの、塗装後の外観品質が不十分であった。
一方、Zn系以外にも、自動車部材用鋼板としてAl系めっき鋼板を用いる技術が提案されている。例えば、特許文献3には、溶接性、塗装後耐食性に優れた高強度自動車部材用Al系めっき鋼板が開示されている。しかし、Alめっきは犠牲防食作用を持たないため、カット部や鋼板端部などから赤錆が発生しやすいという問題があった。
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであり、塗装後の外観品質とカット部耐食性に優れた熱間プレス部材を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、以下を要旨とする。
1.鋼板と、
前記鋼板の少なくとも一方の面の上に配された、FeAl、FeAl、およびZnを含有するめっき層と、
前記めっき層の上に配されたZn含有酸化物層とを有し、
前記FeAl中のZn固溶量が10質量%以上である、熱間プレス部材。
2.前記Zn含有酸化物層の厚さが0.10μm以上5.0μm以下である、上記1に記載の熱間プレス部材。
3.前記めっき層におけるFeAl/FeAl比が0.5以上50以下である、上記1または2に記載の熱間プレス部材。
4.前記めっき層におけるZnの面積率が1%以上20%以下である、上記1または2に記載の熱間プレス部材。
5.前記めっき層におけるZnの面積率が1%以上20%以下である、上記3に記載の熱間プレス部材。
本発明の熱間プレス部材は、塗装後の外観品質とカット部耐食性に優れている。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明は本発明の好適な一実施態様を示すものであり、本発明は以下の説明に限定されるものではない。また、Zn固溶量、鋼板の成分組成、およびめっき層の組成における単位「%」は、とくに断らない限り「質量%」を表す。
本発明の熱間プレス部材は、母材としての鋼板と、前記鋼板の上に配されためっき層と、前記めっき層の上に配されたZn含有酸化物層とを有する。以下、各部について説明する。
[鋼板]
本発明では、後述するようにめっき層の組成と、FeAl中に存在するZn固溶量を制御することによって上記課題を解決している。したがって、上記鋼板としては、特に限定されることなく任意の鋼板を用いることができる。
しかし、自動車用部材等として使用する観点からは熱間プレス部材の強度が高いことが好ましい。特に、1470MPa級を超えるような熱間プレス部材を得るためには、下記の成分組成を有する鋼板を用いることが好ましい。
質量%で、
C :0.20~0.35%、
Si:0.1~0.5%、
Mn:1.0~3.0%、
P :0.02%以下、
S :0.01%以下、
Al:0.1%以下、および
N :0.01%以下を含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成。
また、前記成分組成は、さらに任意に
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
B :0.0050%以下、
Cr:0.3%以下、および
Sb:0.03%以下
からなる群より選択される少なくとも1つを含有することができる。
以下、上記好ましい成分組成における各元素の作用効果と好適な含有量について説明する。
C:0.20~0.35%
Cは、マルテンサイトなどの組織を形成させることで強度を向上させる作用を有する元素である。1470MPa級を超える強度を得るという観点からは、C含有量を0.20%以上とすることが好ましい。一方、C含有量が0.35%を超えると、スポット溶接部の靱性が劣化する。したがって、C含有量は0.35%以下とすることが好ましい。
Si:0.1~0.5%
Siは、鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素である。前記効果を得るために、Si含有量を0.1%以上とすることが好ましい。一方、Si含有量が0.5%を超えるとフェライトが安定化されるため、焼き入れ性が低下する。そのため、Si含有量は0.5%以下とすることが好ましい。
Mn:1.0~3.0%
Mnは、鋼の高強度化に有効な元素である。優れた機械特性や強度を確保するという観点からは、Mn含有量を1.0%以上とすることが好ましい。一方、Mn含有量が過剰であると焼鈍時の表面濃化が増加し、鋼板に対するめっき層の密着性に影響を及ぼす。そのため、めっき層の密着性を向上させるという観点からは、Mn含有量を3.0%以下とすることが好ましい。
P:0.02%以下
P含有量が過剰であると、鋳造時のオーステナイト粒界へのP偏析に伴う粒界脆化により、局部延性が劣化する。そしてその結果、鋼板の強度と延性のバランスが低下する。そのため、鋼板の強度と延性のバランスを向上させるという観点からは、P含有量を0.02%以下とすることが好ましい。一方、P含有量の下限についてはとくに限定されず、0%であってよい。しかし、過度の低減は製造コストの増加を招くことから、P含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.01%以下
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。そのため、S含有量は極力低減することが望ましく、具体的には0.01%以下とすることが好ましい。また、良好な伸びフランジ性を確保するという観点からは、0.005%以下とすることがより好ましい。一方、S含有量の下限についてはとくに限定されず、0%であってよい。しかし、過度の低減は製造コストの増加を招くことから、S含有量0.0001%以上とすることが好ましい。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素である。しかし、Al含有量が0.1%を超えると、焼入れ性が低下する。そのため、Al含有量は0.1%以下とすることが好ましい。一方、Al含有量の下限は特に限定されないが、脱酸剤としての効果を高めるという観点からは、Al含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
N:0.01%以下
N含有量が0.01%を超えると、熱間プレス前の加熱時にAlNが生成し、焼入れ性が低下する。そのため、N含有量は0.01%以下とすることが好ましい。一方、N含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。しかし、過度の低減は製造コストの増加を招くことから、N含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Nb:0.05%以下
Nbは、鋼の強化に有効な成分であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下する。したがって、Nbを添加する場合、Nb含有量を0.05%以下とする。一方、Nb含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。
Ti:0.05%以下
Tiは、Nbと同様に鋼の強化に有効な成分であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下する。したがって、Tiを添加する場合、Ti含有量を0.05%以下とする。一方、Ti含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。
B:0.0050%以下
Bは、オーステナイト粒界からのフェライト生成および成長を抑制する作用を有する元素である。しかし、過剰なBの添加は成形性を大きく損なう。そのため、Bを添加する場合、成形性を向上させるという観点からは、B含有量を0.0050%以下とすることが好ましい。一方、B含有量の下限は限定されないが、Bの添加効果を高めるという観点からは、0.0002%以上とすることが好ましい。
Cr:0.3%以下
Crは、鋼の強化および焼き入れ性向上のために有用な元素である。しかし、Crは高価な元素であるため、Crを添加する場合、合金コストを低減するためにCr含有量を0.3%以下とすることが好ましい。一方、Cr含有量の下限は特に限定されないが、Crの添加効果を高めるという観点からは、0.1%以上とすることが好ましい。
Sb:0.03%以下
Sbは、熱間プレス中に鋼板表層の脱炭を防止する効果を有する元素である。しかし、Sbが過剰であると圧延荷重の増加を招くため生産性が低下する。そのため。Sbを添加する場合、生産性のさらなる向上の観点から、Sb含有量を0.03%以下とすることが好ましい。一方、Sb含有量の下限は特に限定されないが、Sbの添加効果を高めるという観点からは、0.003%以上とすることが好ましい。
[めっき層およびZn含有酸化物層]
本発明の熱間プレス部材は、めっき層を有する。前記めっき層は、鋼板の少なくとも一方の面に設けられていればよく、両面に設けられていてもよい。前記めっき層は、FeAl、FeAl、およびZnを含有する。FeAlおよびFeAlは、FeとAlが反応してできる金属間化合物である。また、Znは犠牲防食効果を有する元素である。そして、前記めっき層の表面には、Zn含有酸化物層が存在する。
上記層構造を有する本発明の熱間プレス部材は、典型的にはZn-Al合金めっき鋼板を熱間プレスすることにより製造することができる。Zn-Al合金めっき層を備えるめっき鋼板に熱間プレスを施すと、めっき層に含まれるZnなどの成分が下地鋼板側に拡散する一方、下地鋼板に含まれるFeなどの成分がめっき層側へ拡散する。同時に、めっき層中のZnと加熱雰囲気中に存在する酸素とが結合し、めっき層の表面にZn含有酸化物層が形成される。この時、AlはZnよりもFeとの親和性が高いため、めっき層中に含まれるAlがFeと優先的に反応してFeAl系金属間化合物(FeAl、FeAlなど)を形成する。Znは主にFeAl系金属間化合物の相に固溶し、一部が金属Znとして残存する。
上記層構造を有する本発明の熱間プレス部材が優れた塗装後耐食性を備える理由について、以下説明する。通常、めっき層中にAlを含まないZn系合金めっき層を有する鋼板を熱間プレスに供した場合、Zn系合金めっき層の表面には高低差10μmを超えるような大きな凹凸が形成される。この理由について、本発明者らは以下のように推測している。すなわち、熱間プレス前の加熱により鋼板の温度を上昇させていくと、温度上昇にともないZn系合金めっき層の表面に表層酸化物層が形成されていく。やがて鋼板の温度がめっき層の融点を超えると、表層酸化物層と鋼板との間に位置するめっき層が溶融して液体となる。さらに鋼板の温度が上昇すると、表層酸化物層もさらに成長する。このとき、表層酸化物層は、厚さ方向に成長するだけでなく、めっき層表面に平行な方向にも成長しようとする。その結果、表層酸化物層は、表面に凹凸を形成して表面積を増加させるように成長する。これは、表層酸化物層と鋼板との間に位置するめっき層が流動可能な液体であるため、表層酸化物層がその形状を変化させることが可能なためである。
このようにして製造された熱間プレス部材は、表面に大きな凹凸を有している。そのため、この熱間プレス部材に化成処理および電着塗装を施した場合、塗装膜厚に顕著なムラが生じ、その結果、外観品質が低下する。
これに対して、Zn-Al合金めっき鋼板を熱間プレスに供した場合、Feは優先的にAlと反応してFeAl系金属間化合物(FeAl、FeAlなど)を形成する。このFeAl系金属間化合物は融点が1000℃以上とZn系合金めっきに比べて高いため、熱間プレス前の加熱によってめっき層が溶融することはない。そのため、めっき層がAlを含有しない場合に比べて表面が平坦な熱間プレス部材を得ることができる。
このようにして製造した熱間プレス部材に化成処理および電着塗装を施した場合、電着塗装の膜厚が均一であるため優れた外観品質を得ることができる。
また、加熱にともないめっき層の表面が大きな凹凸を形成する場合、表層酸化物層がそれ自身の変形に追従できず、剥離してしまう場合がある。このように酸化物が剥離した箇所は塗装欠陥の起点となるため、やはり外観品質を損なう要因となる。
これに対して表層酸化物層が平坦である場合、加熱時の変形による剥離が生じない。そのため、上記のような表層酸化物層の剥離に起因した塗装欠陥を生じることがない。
上記熱間プレス部材のめっき層は、FeAl、FeAl、およびZnを含有するめっき層であればよいが、めっき層全体に占めるFeAl、FeAl、およびZnの合計量が89%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。めっき層全体に占めるFeAl、FeAl、およびZnの合計量の上限はとくに限定されないが、例えば、100%であってよく、99.9%以下であってもよい。
また、前記熱間プレス部材のめっき層は、Fe、Al、および残部のZnからなる成分組成を有していてもよく、前記成分組成には、さらに任意にSiが含まれていてもよい。前記めっき層がFe:20~80%、Al:10~50%、Si:0.1~11%、および残部のZnおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することがより好ましい。Al含有量は20~50%であることがさらに好ましい。
熱間プレス部材のめっき層の成分組成は、該めっき層を塩酸水溶液に溶解し、得られた溶解液に含まれる元素をICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析法)により定量するすることで求めることができる。より詳細には、実施例に記載した方法で測定することができる。
FeAl中のZn固溶量:10%以上
上述したようにZnめっき中にAlが含まれる場合、熱間プレス時にFeは優先的にAlと反応してFeAl系金属間化合物(FeAl、FeAlなど)を形成し、Znは主に前記FeAl系金属間化合物中に固溶する。この時、FeAl中へのZn固溶量が十分に高いと、良好なカット部耐食性を得ることができる。これは、FeAl系金属間化合物が腐食する際に、固溶したZnが保護性の高いZn系腐食生成物を生成するためであると考えられる。FeAl中のZn固溶量が10%未満であると、十分なカット部耐食性を得ることができない。そこで、本発明では、前記めっき層に含まれるFeAl中のZn固溶量を10%以上とする。前記Zn固溶量は、12%以上とすることがより好ましく、15%以上とすることがさらに好ましい。
一方、FeAl中のZn固溶量の上限はとくに限定されないが、製造しやすさの観点からは、30.0%以下であることが好ましく、25.0%以下であることがより好ましい。
前記FeAl中のZn固溶量は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)により測定することができる。具体的には、熱間プレス部材のFeAl中の任意の50か所におけるZn固溶量をEPMAにより測定し、その平均値をFeAl中のZn固溶量とする。
Zn含有酸化物層の厚さ:0.10~5.0μm
めっき層の表面に存在するZn含有酸化物層は、化成処理液との反応性が良いため、良好な化成処理性、ひいては良好な電着塗装性を得るためにZn含有酸化物層の形成は必須である。
Zn含有酸化物層の厚さは特に限定されず、任意の厚さであってよい。しかし、カット部耐食性をさらに高めるという観点からは、Zn含有酸化物層の厚さを0.10μm以上とすることが好ましい。Zn含有酸化物層の厚さが0.10μm以上であれば、高い化成処理性が得られる結果、最終的な耐食性がさらに向上する。
一方、Zn含有酸化物層の厚さが過度に厚いと、Zn含有酸化物層の一部が剥離する場合がある。Zn含有酸化物層が剥離した部分は塗装欠陥の起点となり、塗装後外観品質の低下を招く。そのため、塗装後耐食性をさらに高めるという観点からは、Zn含有酸化物層の厚さを5.0μm以下とすることが好ましい。
前記Zn含有酸化物層の厚さは、熱間プレス部材の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定することができる。具体的には、熱間プレス部材の断面を、SEMを用いて500倍で観察し、任意の20か所におけるZn含有酸化物層の厚さを測定し、その平均値をZn含有酸化物層の厚さとする。
FeAl/FeAl比:0.5~50
上記めっき層におけるFeAl/FeAl比は特に限定されず、任意の値であってよい。しかし、本発明者らは同じFeAl系金属間化合物であっても、FeAlに比べてFeAlの比率が多い場合に、より優れたカット部耐食性が得られることを知見した。FeAl中のZn固溶量はFeAlに比べて大きく、FeAlの比率が高いほどめっき層全体としてのZn固溶量が増加するためであると考えられる。そのため、カット部耐食性をさらに向上させるという観点からは、めっき層におけるFeAl/FeAl比を50以下とすることが好ましい。
一方、FeAl/FeAl比が過度に小さいとプレス成型時にマイクロクラックが生じる場合がある。これはFeAl中の固溶Znから蒸気Znが発生し、マイクロクラックを発生させるためであると考えられる。マイクロクラックが生じた部分では正常な部分に比べて表面が粗くなるため、外観品質が劣化する。そのため、塗装後外観品質をさらに向上させるという観点からは、FeAl/FeAl比を0.5以上とすることが好ましい。
前記FeAl/FeAl比は、X線回折(XRD)測定により測定することができる。具体的には、XRD測定により回折パターンを取得し、前記回折パターンにおける、FeAlに帰属するピークの強度に対する、FeAlに帰属するピークの強度の比をFeAl/FeAl比とする。ここで、FeAlに帰属するピークの面間隔dは2.19であり、FeAlに帰属するピークの面間隔dは2.05である。また、前記XRD測定の条件は、X線源:Cu-Kα、管電圧:40kV、管電流:30mAとすればよい。
Zn面積率:1~20%
上述したように、Znは犠牲防食効果を有する元素であり、めっき層に含まれるZnの割合が増加するほど耐食性が向上する。そのため、カット部耐食性をさらに向上させるという観点からは、めっき層におけるZnの面積率を1%以上とすることが好ましい。一方、めっき層におけるZnの面積率が高すぎると、プレス成形時にめっき層の表面に凹凸が生じやすくなるため、塗装後の外観品質が劣化する場合がある。そのため、塗装後の外観品質をさらに向上させるという観点からは、めっき層におけるZnの面積率を20%以下とすることが好ましい。
前記Znの面積率は、EPMAにより測定することができる。具体的には、EPMAによる測定において、Zn固溶量が70%より高いめっき層中の領域を金属Zn領域とし、めっき層の全面積に対する前記金属Zn領域の面積の割合をZnの面積率とする。
前記熱間プレス部材におけるめっき層の付着量は特に限定されないが、鋼板片面あたり40g/m以上であることが好ましく、50g/m以上であることがより好ましく、60g/m以上であることがさらに好ましい。また、前記めっき層の付着量は、鋼板片面あたり400g/m以下であることが好ましく、300g/m以下であることがより好ましく、200g/m以下であることがさらに好ましい。
前記熱間プレス部材におけるめっき層の片面あたりの付着量は、塩酸水溶液を用いて熱間プレス部材のめっき層を溶解除去し、その前後における重量の差から求めることができる。より詳細には、実施例に記載した方法で測定することができる。
なお、熱間プレス部材におけるめっき層の付着量は、通常、熱間プレス前のめっき鋼板におけるめっき層の付着量よりも多い。これは、熱間プレス工程において、めっき層を構成する金属と母材鋼板の金属とが相互拡散するためである。特に、熱間プレス後のめっき層のFe濃度は熱間プレス前のめっき層のFe濃度より著しく大きくなる。Feの拡散量は熱間プレス時の加熱条件等により変化する。
[製造方法]
次に、本発明の熱間プレス部材の好適な製造方法について説明する。
本発明の熱間プレス部材は、下地鋼板にめっきを施してめっき鋼板とし、次いで、前記めっき鋼板に対して熱間プレスを施すことにより製造することができる。
下地鋼板としては、特に限定されることなく任意の鋼板を用いることができる。好適な鋼板の成分組成は先に述べたとおりである。前記下地鋼板は、熱延鋼板または冷延鋼板であることが好ましい。
前記下地鋼板へのめっきは任意の方法で行うことができるが、溶融めっき法により行うことが好ましい。以下、溶融めっき法によりめっき鋼板を作成する場合について説明する。
溶融めっき法でZn系めっき鋼板を製造する場合、通常、アルカリ電解脱脂や塩酸酸洗により下地鋼板表面の汚れや酸化皮膜を除去する前処理を行った後に、焼鈍と溶融めっきが実施される。しかし、本発明の条件を満たす熱間プレス部材を製造するためには、前記前処理に代えて過熱水蒸気による鋼板表面の洗浄を行う。過熱水蒸気による洗浄を行うことで、下地鋼板表面と高温の水蒸気が反応し、下地鋼板表面に厚い自然酸化皮膜が形成される。この厚い自然酸化膜が拡散バリアとして機能することにより、熱間プレス工程におけるめっき層と下地鋼板との間の拡散が抑制されると考えられる。そしてその結果、最終的に得られる熱間プレス部材のめっき層におけるFeAl中のZn固溶量を高めることができる。より具体的には、FeAl中のZn固溶量を10質量%以上とするためには、温度100℃以上の過熱水蒸気を用いて鋼板表面を処理すればよい。
上記過熱水蒸気による処理を行った後、溶融めっきに先立って、下地鋼板に焼鈍を施す。前記焼鈍を行う際は、雰囲気中のH/HO比を200以上とする。H/HO比を高くすることにより下地鋼板に含まれる合金元素が鋼板表面に濃化層を形成し、上記自然酸化皮膜に加え前記濃化層も熱間プレス工程における拡散を抑制するバリアとして機能するものと考えられる。
その後、前記焼鈍後の下地鋼板に溶融めっきを施して、下地鋼板の表面に溶融めっき層を備える溶融めっき鋼板とする。前記溶融めっき層は、Alを含むZn系合金めっき層であればよい。具体的には、前記溶融めっき層は、Fe、Al、および残部のZnからなる成分組成を有していてもよく、前記成分組成には、さらに任意にSiが含まれていてもよい。前記溶融めっき層がAl:20~80%、Si:0.1~11%、および残部のZnおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することがより好ましい。Al含有量は30~70%であることがさらに好ましい。
溶融めっき鋼板の溶融めっき層の成分組成は、インヒビターとしてヘキサメチレンテトラミンを添加した塩酸水溶液に前記溶融めっき層を溶解し、得られた溶解液に含まれる元素をICP-AESにより定量するすることで求めることができる。より詳細には、実施例に記載した方法で測定することができる。
前記溶融めっき層の付着量は特に限定されないが、鋼板片面あたり20g/m以上であることが好ましく、30g/m以上であることがより好ましく、50g/m以上であることがさらに好ましい。また、前記溶融めっき層の付着量は、鋼板片面あたり300g/m以下であることが好ましく、250g/m以下であることがより好ましく、200g/m以下であることがさらに好ましい。先に述べたように、熱間プレスを行うと、母材鋼板からのFeの拡散によりめっき層の付着量が増大する。そのため、熱間プレス前の溶融めっき鋼板における溶融めっき層の付着量を上記範囲とすることにより、熱間プレス部材におけるめっき層の付着量を上述した好ましい範囲とすることができる。
前記溶融めっき鋼板における溶融めっき層の片面あたりの付着量は、インヒビターとしてヘキサメチレンテトラミンを添加した塩酸水溶液を用いて溶融めっき鋼板の溶融めっき層を溶解除去し、その前後における重量の差から求めることができる。より詳細には、実施例に記載した方法で測定することができる。
次に、上記溶融めっき鋼板を熱間プレスすることにより熱間プレス部材とする。前記熱間プレスにおいては、まず、溶融めっき鋼板を、加熱温度:Ac3変態点以上、1000℃以下、保持時間:0~2.5分の条件で加熱した後、金型を用いてプレスする。前記条件で加熱を行うことにより、上述した層構造を有する熱間プレス部材を得ることができる。
加熱温度がAc3変態点より低いと、熱間プレス部材として必要な強度を得ることができない場合がある。一方、加熱温度が1000℃を超えると、操業コストが増大する。
また、保持時間が2.5分を超えると、下地鋼板とめっき層との間で拡散が進行する結果、FeAl中のZn固溶量を10質量%以上とすることができない。また、FeAl/FeAl比を50以下とするという観点からも、保持時間は2.5分以下とする。一方、保持時間の下限は0であってよい。すなわち、上記加熱温度まで加熱した後、保持することなく直ちにプレスを行うこともできる。
以下、本発明の作用・効果について、実施例を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の手順で溶融めっき鋼板を作製し、前記溶融めっき鋼板を熱間プレスすることにより熱間プレス部材とした。
・溶融めっき鋼板の作製
下地鋼板として、質量%で、C:0.24%、Si:0.22%、Mn:2.0%、P:0.005%、S:0.001%、Al:0.03%、N:0.004%、Nb:0.03%、Ti:0.03%、B:0.001%、Cr:0.1%、およびSb:0.015%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、板厚1.4mmの冷延鋼板を用いた。
上記下地鋼板に、表1、2に示す温度の過熱水蒸気により30秒間の高温表面洗浄を施した。その後、前記下地鋼板に、表1、2に示した条件で焼鈍、および溶融めっきを順次施して溶融めっき鋼板を得た。
得られた溶融めっき鋼板のそれぞれにおける、溶融めっき層の成分組成と、溶融めっき層の付着量を、以下の手順で測定した。測定結果を表1、2に示す。
(溶融めっき層の成分組成)
まず、評価対象とする溶融めっき鋼板を打抜き加工して、48mmφの試料を採取した。その後、前記試料の一方の面(成分組成を測定する面と反対側の面)をマスキングした。次いで、20g/Lの重クロム酸アンモニウム水溶液に前記試料を60分浸漬して表面酸化物層を溶解した。さらに、インヒビターとしてヘキサメチレンテトラミン1mLを添加した17%塩酸水溶液に前記試料を60分間浸漬して溶融めっき層を溶解した。前記溶融めっき層を溶解した塩酸水溶液中の金属成分(Al、Si、Fe、Zn)を、ICP-AESにより定量し、溶融めっき層中に含まれていた各元素の質量を求めた。得られた各元素の質量を、溶融めっき層の全質量で除することにより、溶融めっき層に含まれている各元素の含有量(質量%)を得た。溶融めっき層の全質量は、溶融めっき層の付着量(g/m)と溶融めっき層の面積(m)から算出した。なお、表1、2には、Al、Si、およびFeの含有量のみ示したが、残部はZnおよび不可避的不純物であった。
(溶融めっき層の付着量)
まず、評価対象とする熱間プレス部材を打抜き加工して、48mmφの試料3つを採取する。その後、各試料一方の面(付着量を測定する面と反対側の面)をマスキングした。次いで、20g/Lの重クロム酸アンモニウム水溶液に各試料を60分浸漬して表面酸化物層を溶解した後、各試料の重量を測定した。さらに、インヒビターとしてヘキサメチレンテトラミン1mLを添加した17%塩酸水溶液に各試料を60分間浸漬して溶融めっき層を溶解した後、各試料の重量を再度測定した。溶融めっき層の溶解前後の重量差を、前記試料の面積で割ることにより、各試料における単位面積あたりの溶融めっき付着量を算出した。そして、3試料におけるめっき付着量の平均値を、当該溶融めっき鋼板における溶融めっき層の片面あたりの付着量とした。
・熱間プレス部材の作製
次いで、得られた溶融めっき鋼板から150mm×300mmの試験片を採取し、表1、2に示した条件で前記試験片を加熱した。前記加熱には電気炉を使用した。
所定の保持時間が経過した後、試験片を電気炉から取り出し、直ちにハット型金型を用いて成形開始温度700℃で熱間プレスを行って熱間プレス部材を得た。なお、得られた熱間プレス部材の形状は上面の平坦部長さ100mm、側面の平坦部長さ50mm、下面の平坦部長さ50mmであった。また、金型の曲げRは上面の両肩、下面の両肩いずれも7Rであった。
得られた熱間プレス部材のそれぞれにおける、めっき層の成分組成と、めっき層の付着量を、以下の手順で測定した。測定結果を表3、4に示す。
(めっき層の成分組成)
まず、評価対象とする熱間プレス部材を打抜き加工して、48mmφの試料を採取した。その後、前記試料の一方の面(成分組成を測定する面と反対側の面)をマスキングした。次いで、20g/Lの重クロム酸アンモニウム水溶液に前記試料を60分浸漬して表面酸化物層を溶解した。さらに、17%塩酸水溶液に前記試料を60分間浸漬してめっき層を溶解した。前記めっき層を溶解した塩酸水溶液中の金属成分(Al、Si、Fe、Zn)を、ICP-AESにより定量し、めっき層中に含まれていた各元素の質量を求めた。得られた各元素の質量を、めっき層の全質量で除することにより、めっき層に含まれている各元素の含有量(質量%)を得た。めっき層の全質量は、めっき層の付着量(g/m)とめっき層の面積(m)から算出した。測定結果を表3、4に示す。なお、表3、4には、Al、Si、およびFeの含有量のみ示したが、残部はZnおよび不可避的不純物であった。
(めっき層の付着量)
まず、評価対象とする熱間プレス部材を打抜き加工して、48mmφの試料3つを採取した。その後、各試料一方の面(付着量を測定する面と反対側の面)をマスキングした。次いで、20g/Lの重クロム酸アンモニウム水溶液に各試料を60分浸漬して表面酸化物層を溶解した後、各試料の重量を測定した。さらに、各試料を17%塩酸水溶液に60分間浸漬してめっき層を溶解した後、各試料の重量を再度測定した。めっき層の溶解前後の重量差を、前記試料の面積で割ることにより、各試料における単位面積あたりのめっき付着量を算出した。そして、3試料におけるめっき付着量の平均値を、当該熱間プレス部材におけるめっき層の片面あたりの付着量とした。
さらに、得られた熱間プレス部材のそれぞれについて、以下の方法でFeAl中のZn固溶量、Zn含有酸化物層の厚さ、めっき層におけるFeAl/FeAl比、およびめっき層におけるZnの面積率を測定した。測定結果を表3、4に示す。
(FeAl中のZn固溶量)
熱間プレス部材の上面の平坦部から断面観察用の試験片を採取し、EPMAにより分析することで、FeAl中のZn固溶量を測定した。具体的にはFeAl中の任意の50か所におけるZn固溶量を分析し、その平均値をFeAl中のZn固溶量とした。
(Zn含有酸化物層の厚さ)
熱間プレス部材の上面の平坦部から断面観察用の試験片を採取し、断面観察を行うことによりZn含有酸化物層の厚さを測定した。具体的には、熱間プレス部材の断面を、SEMを用いて500倍で観察し、任意の20か所におけるZn含有酸化物層の厚さを測定し、その平均値をZn含有酸化物層の厚さとした。
(めっき層におけるFeAl/FeAl比)
熱間プレス部材から切り出したサンプルを用いて、めっき層におけるFeAl/FeAl比を測定した。具体的には、XRD測定(X線源:Cu-Kα、管電圧:40kV、管電流:30mA)で得られた回折パターンからFeAl(d=2.05)およびFeAl(d=2.19)に帰属されるピーク強度を測定し、その強度比をめっき層におけるFeAl/FeAl比とした。
(めっき層におけるZnの面積率)
Zn固溶量の測定に用いたものと同じ断面観察用の試験片をEPMAにより分析し、めっき層におけるZnの面積率を測定した。具体的には、めっき層中のZn固溶量が70%より高い領域を金属Zn領域とし、めっき層の全面積に対する前記金属Zn領域の面積の割合をZnの面積率とした。
さらに、得られた熱間プレス部材の特性を評価するために、以下の条件で塗装後の外観品質およびカット部耐食性を評価した。
(塗装後外観品質)
得られた熱間プレス部材の上面の平坦部から70mm×150mmの試験片を切り出し、前記試験片に対してリン酸系化成処理および電着塗装を施した。前記リン酸化成処理は、日本パーカライジング社製PB-SX35を用いて標準条件で行い、電着塗装は関西ペイント社製GT100Vを用いて塗装膜厚が15μmとなるように行った。電着塗装の焼付け条件は170℃で20分間保持とした。
上記電着塗装後の試験片から、観察長として15mmのサンプルを切出した後、断面観察用サンプルに調整した。まず、SEMで200倍の視野で選択した最も電着塗膜が薄い箇所を更に1000倍に拡大、その視野を10等分に分けて各電着膜厚を読みとり、その中の平均膜厚D1(μm)および最少膜厚D2(μm)を測定し、以下の基準で電着塗膜の均一性を評価した。評価が◎、○、△のいずれかであれば、電着塗装膜厚が均一であり、外観品質に優れると判断した。評価結果を表3、4に示す。
◎:D1-D2が4.0μm未満
○:D1-D2が4.0μm以上6.0μm未満
△:D1-D2が6.0μm以上8.0μm未満
×:D1-D2が8.0μm以上
(カット部耐食性)
上記電着塗装後の試験片の中央に、長さ80mmずつ合計160mmのクロスカット傷(角度60°)を形成した後、30サイクルの腐食試験(SAE-J2334)に供した。前記腐食試験後のカット部における発錆状態を観察し、以下の判定基準に基づいてカット部耐食性を判定した。赤錆が発生しているカット傷部の長さが80mm未満であれば(評点2~4)、カット部耐食性が優れているものとした。評価結果を表3、4に示す。
評点4:カット部における赤錆発生なし
評点3:赤錆発生しているカット傷部の長さが30mm未満
評点2:赤錆発生しているカット傷部の長さが30mm以上80mm未満
評点1:赤錆発生しているカット傷部の長さが80mm以上
表1に示した結果から分かるように、本発明の条件を満たす熱間プレス部材は、塗装後の外観品質およびカット部耐食性に優れていた。
Figure 0007243949000001
Figure 0007243949000002
Figure 0007243949000003
Figure 0007243949000004

Claims (5)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板の少なくとも一方の面の上に配された、FeAl、FeAl、およびZnを含有するめっき層と、
    前記めっき層の上に配されたZn含有酸化物層とを有し、
    前記FeAl中のZn固溶量が10質量%以上である、熱間プレス部材。
  2. 前記Zn含有酸化物層の厚さが0.10μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載の熱間プレス部材。
  3. 前記めっき層におけるFeAl/FeAl比が0.5以上50以下である、請求項1または2に記載の熱間プレス部材。
  4. 前記めっき層におけるZnの面積率が1%以上20%以下である、請求項1または2に記載の熱間プレス部材。
  5. 前記めっき層におけるZnの面積率が1%以上20%以下である、請求項3に記載の熱間プレス部材。
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