JP2020180312A - 熱間プレス部材およびその製造方法 - Google Patents

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佳子 中原
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Abstract

【課題】熱間プレス部材の化成処理性、電着塗装性を向上させ、耐食性、特に湿潤環境における耐食性に優れた熱間プレス部材およびその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】鋼板の少なくとも一方の面にZn−Ni系めっき層を備え、前記Zn−Ni系めっき層は、Ni拡散層と、前記Ni拡散層上に15質量%超え40質量%以下のNiと、25質量%以下のFeを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Ni系合金層と、前記Zn−Ni系合金層上にZnO層とを有することを特徴とする熱間プレス部材。【選択図】なし

Description

本発明は、熱間プレス部材およびその製造方法に関する。特に、耐食性に優れた熱間プレス部材およびその製造方法に関する。
近年、自動車の分野では素材鋼板の高性能化と共に軽量化が促進されており、防錆性を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板または電気亜鉛めっき鋼板の使用が増加している。しかし、多くの場合、鋼板の高強度化に伴ってそのプレス成形性が低下するため、複雑な部品形状を得ることは困難になる。例えば自動車用途で、防錆性が必要であり、かつ難成形部品としてはシャシーなどの足回り部材やBピラーなどの骨格用構造部材が挙げられる。
このような背景から、近年では冷間プレスに比べてプレス成形性と高強度化の両立が容易である熱間プレスによる自動車骨格用構造部材の製造が急速に増加しており、熱間プレス技術の諸課題を解決する様々な技術が開示されている。
例えば、特許文献1では、鋼板表層のめっき層融点を800℃以上とすることで、液体金属脆化割れの無い熱間プレス部材を得る製造方法が開示されている。
また、特許文献2では、めっき層表層にZnOを主体とする酸化皮膜を備えることで、熱間プレス加熱時の亜鉛蒸発を防止する熱間プレス用鋼板が開示されている。
また、特許文献3では、熱間プレス前に空気ジェットなどを用いて鋼板を450〜700℃に急速中間冷却した後、プレスによる金型冷却を実施することによってマイクロクラックの無い熱間プレス部材を製造する方法が開示されている。
特開2012―197505号公報 特開2003―73774号公報 特表2014―505791号公報
上述した様に、熱間プレス技術の諸課題に対して、鋼板、めっきおよび工法などの観点から様々な解決策が提案され、熱間プレス技術の進歩・発展を支えてきた。
しかしながら、熱間プレス部品の生産量増加や新規部品への技術適用に伴って、従来に無かった新たな課題が顕在化するようになってきた。
例えば、熱間プレス部材に化成処理および電着塗装を実施する際、熱間プレス部材は冷間プレス部材に比べて、化成処理による皮膜結晶が形成しにくい場合や電着塗装の膜厚が不均一になる場合があった。化成処理皮膜の結晶の形成が不十分な場合は、電着塗膜との密着性が低下し、塗膜膨れやさびの発生が早まり、十分な耐食性が得られなくなる。電着塗装の膜厚が不均一な場合は、部分的に電着塗膜の薄膜部から腐食因子が浸入しやすく、腐食発生の起点になるため、塗装による耐食性向上効果を十分に享受できなくなる。特に、熱間プレス部材が使用されるシャシーやBピラーの一部は、自動車の床下部に設置される、特に腐食環境が厳しい部材と言われている。ここで、自動車の床下部は次のような環境が想定される。道路上の融雪剤や海塩を含んだ雨水が、他の走行車からの飛散や、自らのタイヤの跳ね上げにより、床下部材に付着しやすい。塩分が付着した場合は塩分の潮解性により湿潤状態が長く保たれやすく、床下における部材の腐食環境はより厳しくなる。以上より、熱間プレス部材の化成処理や電着塗装性をより向上させることは、厳しい腐食環境においても優れた耐食性を確保するために非常に重要な課題であった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、熱間プレス部材の化成処理性、電着塗装性を向上させ、耐食性、特に湿潤環境における耐食性に優れた熱間プレス部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するために、鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
(1)熱間プレス部材のZn−Ni系めっき層における、Zn−Ni系合金層中のNi量を15質量%超え40質量%以下とし、Fe量を25質量%以下に制御することにより、耐食性が向上する。
(2)熱間プレス部材の最大高さ粗さRzを15μm以下とすることにより、電着塗膜厚がより均一化する。
(3)熱間プレス部材表面のZnO被覆率を85%以上とすることにより、化成処理性が向上する。
本発明は上記知見に基づくものであり、その特徴は以下の通りである。
[1]鋼板の少なくとも一方の面にZn−Ni系めっき層を備え、前記Zn−Ni系めっき層は、Ni拡散層と、前記Ni拡散層上に15質量%超え40質量%以下のNiと、25質量%以下のFeを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Ni系合金層と、前記Zn−Ni系合金層上にZnO層とを有することを特徴とする熱間プレス部材。
[2]前記Zn−Ni系めっき層の最大高さ粗さが15.0μm以下であることを特徴とする[1]記載の熱間プレス部材。
[3]前記Zn−Ni系めっき層のZnO被覆率が85%以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の熱間プレス部材。
[4]前記鋼板が、質量%で、
C:0.20〜0.35%、
Si:0.1〜0.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.01%以下を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の熱間プレス部材。
[5]さらに前記鋼板が、質量%で、
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.0002〜0.0050%、
Cr:0.1〜0.3%、
Sb:0.003〜0.03%のうちから選ばれる1種または2種以上の成分組成を含有することを特徴とする[4]に記載の熱間プレス部材。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の熱間プレス部材の製造方法であって、
25質量%超え40%質量%以下のNiを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Niめっき層を有するZn−Niめっき鋼板をAc変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後、熱間プレス加工を行うことを特徴とする熱間プレス部材の製造方法。
本発明によれば、熱間プレス部材の化成処理性、電着塗装性が向上し、湿潤環境における耐食性に優れた熱間プレス部材が得られる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な一実施態様を示すものであり、本発明は、以下の説明によって何ら限定されるものではない。また、鋼成分組成の各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
1)熱間プレス部材
本発明の熱間プレス部材は、鋼板の少なくとも一方の面にZn−Ni系めっき層を備え、Zn−Ni系めっき層は、Ni拡散層と、Ni拡散層上に15質量%超え40質量%以下のNiと、25質量%以下のFeを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Ni系合金層と、Zn−Ni系合金層上にZnO層とを有することを特徴とする。以下に、本発明について説明する。
Zn−Ni系めっき層
本発明のZn−Ni系めっき層のめっき付着量は、特に制限されないが、片面あたりの付着量が10〜90g/mとすることが好ましい。片面あたりの付着量が10g/m以上であれば、十分な耐食性が得られる。また、付着量が90g/m以下であればコストアップを招くことがない。付着量は、より好ましくは30g/m以上、さらに好ましくは50g/m以上とする。
本発明では、Zn−Ni系めっき層の最大高さ粗さが15.0μm以下であることが好ましい。Zn−Ni系めっき層の最大高さ粗さが15.0μmを超えた場合、電着塗装時に塗料の熱フローの障壁となるため、部分的に塗装膜厚が薄い部分が存在する場合がある。薄膜部が存在する場合、薄膜部が腐食の起点となり部材全体の腐食に進行するため、塗膜厚さが均一に担保されている場合に比べて耐食性は劣化する。したがって、Zn−Ni系めっき層の最大高さ粗さが15.0μm以下であることが好ましい。
また、本発明では、Zn−Ni系めっき層のZnO被覆率が85%以上であることが好ましい。ZnO被覆率が85%未満では、ZnOに比べて化成処理液との反応性が劣るZn−Ni系めっき層の露出部が多くなるため、化成処理性が劣化し、スケと呼ばれる化成不良が生じる。したがって、Zn−Ni系めっき層のZnO被覆率が85%以上であることが好ましい。
Ni拡散層
熱間プレス部材を構成する鋼板の表層にNi拡散層を存在させると、腐食に伴う鋼中への水素侵入が抑制される。この理由は必ずしも明確ではないが、次のように考えられる。すなわち、腐食による鋼板内部への水素侵入は湿潤環境下におけるFe錆の酸化還元反応に関係しており、水素侵入を抑制するにはFe錆が変化しにくい安定な錆であることが必要である。Fe錆の安定化にはNi拡散層が有効であり、Ni拡散層の存在が腐食に伴う鋼中への水素侵入を抑制することになる。
こうした水素侵入の抑制を効果的に図るには、部材を構成する鋼板の深さ方向に好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上にわたってNi拡散層を存在させることが好ましい。深さの上限は、特に限定しないが、50μm程度でその効果は飽和する。Ni拡散領域の深さは、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)による厚み方向断面の分析、またはGDS(Glow Discharge Spectroscopy)による深さ方向の分析によって求めることができる。
なお、本発明におけるNi拡散層とは、熱間プレス前の加熱時にZn−Ni系めっき層から鋼中に拡散してくるNiが固溶状態で存在している領域(層)をいう。また、本発明の熱間プレス部材はZn−Niめっき層を有するZn−Ni系めっき鋼板を熱間プレスして製造されるため、Ni拡散層にZnが同時に含まれる場合もあるが、本発明の効果が損なわれることはない。
15質量%超え40質量%以下のNiと、25質量%以下のFeを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Ni系合金層
本発明者らは、耐食性向上のために鋭意検討した結果、Zn−Ni系めっき層における、Ni拡散層上に設けたZn−Ni系合金層のNiの含有量を限定することが、耐食性の向上に有効であるとの知見に至った。
すなわち、Zn−Ni系合金層中のNiの含有量を、15質量%超え40質量%以下にすることにより、電着塗装性、化成処理性の両方が向上し、耐食性、特に湿潤環境下での耐食性が向上するとの結論を得た。Zn−Ni系合金層におけるNiの含有量が15質量%以下では、電着塗装性が劣化し、耐食性が低下する。そのため、Zn−Ni系合金層におけるNiの含有量は15質量%超え、好ましくは25質量%超えとする。一方で、Zn−Ni系合金層におけるNiの含有量が40質量%超えでは、化成処理性が劣化するため、耐食性が低下する。そのため、Zn−Ni系合金層におけるNiの含有量は40質量%以下とする。なお、25%超えの場合、Zn−Ni系合金層がγ相およびβ相の混合相となり、γ単相よりも高融点のめっき組織となる。このため、加熱時のZn気化およびZn酸化が抑制され、結果として耐食性がより一層向上すると推定される。
Zn−Ni系合金層中には下地鋼板から拡散したFeが含まれる。Feの含有量は25質量%以下とする。25質量%を超えると、腐食時にZnの溶解が促進され、耐食性が低下するためである。好ましいFeの含有量は、15質量%以下である。また、Zn−Ni系合金層の残部は、Znおよび不可避的不純物とする。
ZnO層
最表層に設けられるZnO層は、Zn−Ni系合金層との密着性に優れるのみならず、塗装下地処理時に形成される化成処理皮膜との密着性にも優れているため、塗装密着性を大きく向上させる。その厚みは、0.1μm以上とすると化成処理皮膜との密着性が十分となり、また、5μm以下とするとZnO層自体が凝集破壊して、塗料密着性を損なうことがない。したがって、ZnO層の厚さは0.1〜5μmとすることが好ましい。
ZnO層はその下のZn−Ni系合金層との密着性に優れているが、ZnO層の直下にSi含有化合物層、Ti含有化合物層、Al含有化合物層、Zr含有化合物層、P含有化合物層のうちから選ばれた少なくとも一種の化合物層を設けるとその密着性がさらに向上し、その結果、より優れた塗装密着性が得られる。
なお、Zn−Ni系合金層におけるNi含有率およびFe含有率は、熱処理後の鋼板の断面をSEM−EDXやEPMAにより分析することで定量することができる。Zn−Ni系めっき層表面の最大高さ粗さ(Rz)は、JIS B 0601に記載の触針式表面粗さ測定機の測定法により測定すればよい。ZnO層は、Zn−Ni系めっき層の表面をSEMで観察することで確認できる。ZnO被覆率については、SEMにより、500倍の倍率で10視野観察し、ZnO未形成部の面積率を測定し、残部をZnO被覆部として割合(平均値)を算出することができる。
本発明において、1470MPa級を超えるような熱間プレス部材を得るためには、Zn−Ni系めっき層の下地鋼板としては、例えば、質量%で、C:0.20〜0.35%、Si:0.1〜0.5%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼板を用いることができる。なお、鋼板としては冷延鋼板または熱延鋼板のいずれでも構わない。以下に各成分の限定理由を記載する。
C:0.20〜0.35%
Cは、鋼組織としてマルテンサイトなどを形成させることで強度を向上させる。1470MPa級を超えるような強度を得るためには0.20%以上必要である。一方、0.35%を超えるとスポット溶接部の靱性が劣化する。したがって、C量は0.20〜0.35%とすることが好ましい。
Si:0.1〜0.5%
Siは鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素である。そのためには0.1%以上必要である。一方、0.5%を超えるとフェライトが安定化されるため、焼き入れ性が低下する。したがって、Si量は0.1〜0.5%とすることが好ましい。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは鋼の高強度化に有効な元素である。機械特性や強度を確保するためは1.0%以上含有させることが必要である。一方、3.0%を超えると焼鈍時の表面濃化が増加し、めっき密着性の確保が困難になる。したがって、Mn量は1.0〜3.0%とすることが好ましい。
P:0.02%以下
P量が0.02%を超えると鋳造時のオーステナイト粒界へのP偏析に伴う粒界脆化により、局部延性の劣化を通じて強度と延性のバランスが低下する。したがって、P量は0.02%以下とすることが好ましい。
S:0.01%以下
SはMnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。したがって、極力低減することが望ましく0.01%以下とすることが好ましい。また、良好な伸びフランジ性を確保するため、より好ましくは0.005%以下とする。
Al:0.1%以下
Al量が0.1%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.1%以下とすることが好ましい。
N:0.01%以下
N量が0.01%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス前の加熱時にAlNの窒化物を形成し、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.01%以下とすることが好ましい。
また、本発明では上記した基本成分のほかに鋼板の特性の更なる改善を意図して、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下、B:0.0002〜0.0050%、Cr:0.1〜0.3%、Sb:0.003〜0.03%のうちから選ばれる1種または2種以上を必要に応じて適宜含有させることが可能である。
Nb:0.05%以下
Nbは鋼の強化に有効な成分であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下する。したがって、Nbを含有させる場合は0.05%以下とする。
Ti:0.05%以下
TiもNbと同様に鋼の強化には有効であるが、過剰に含まれると形状凍結性が低下するという課題がある。したがって、Tiを含有させる場合は0.05%以下とする。
B:0.0002〜0.0050%
Bはオーステナイト粒界からのフェライト生成および成長を抑制する作用を有するため、0.0002%以上の添加が好ましい。一方、過剰なBの添加は成形性を大きく損なう。したがって、Bを含有させる場合は0.0002〜0.0050%とする。
Cr:0.1〜0.3%
Crは鋼の強化および焼き入れ性を向上させるために有用である。このような効果を発現するためには0.1%以上の添加が好ましい。一方、合金コストが高いため0.3%超えの添加では大幅なコストアップを招く。したがって、Crを含有させる場合は0.1〜0.3%とする。
Sb:0.003〜0.03%
Sbも熱間プレスのプロセス中に鋼板表層の脱炭を抑止する効果がある。このような効果を発現するためには0.003%以上の添加が必要である。一方、Sb量が0.03%を超えると圧延荷重の増加を招くため生産性を低下させる。したがって、Sbを含有させる場合は0.003〜0.03%とする。
上記以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
次に、本発明の熱間プレス部材の製造方法について説明する。
本発明の熱間プレス部材は、鋼板表面に25質量%超え40質量%以下のNiを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Niめっき層を有するZn−Niめっき鋼板を、Ac変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後、熱間プレスすることによって製造できる。
鋼板表面に25質量%超え40質量%以下のNiを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Niめっき層を有するZn−Niめっき鋼板をAc変態点〜1000℃の温度範囲に加熱することにより、めっき層のNiが鋼板内へ拡散し、Ni拡散層を形成する。また、Zn−Niめっき層中のNi量を25質量%超え40質量%以下とすることにより、Ni拡散層上に、15質量%超え40質量%以下のNiと、15質量%以下のFeを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Ni系合金層が形成されるとともに、Znの一部が表面まで拡散し、最表層にZnO層が形成される。この理由は、Zn−Niめっき層中のNi量が25%超えの場合、Zn−Ni合金層がγ相およびβ相の混合相となり、γ単相よりも高融点のめっき組織となる。このため、加熱時のZn気化およびZn酸化が抑制され、結果として耐抑制がより一層向上すると推定される。
本発明の熱間プレス部材を製造するためには、熱間プレス加工前の熱処理時における鋼板の最高到達温度および加熱速度を制御することが重要である。熱間プレス加工前の熱処理温度について、熱間プレス時の鋼板到達板温の下限は母材組織によって異なり、加熱温度の下限はオーステナイト単相領域に加熱されるAc変態点以上とし、加熱温度の上限は1000℃以下とする。
なお、加熱温度を850〜930℃に制御することが好ましい。これにより、Zn−Ni系めっき層の所望の最大高さ粗さを得ることができる。また、熱間プレス前の加熱時間については、加熱時間を1〜5分に制御することが好ましい。加熱時間を制御することにより、所望のZnO被覆率が得られる。
加熱に次いで、熱間プレス加工を行い、引き続き金型や水などの冷媒を用いて冷却を行うことにより熱間プレス部材が製造される。本発明においては、熱間プレス条件は特に限定されないが、一般的な熱間プレス温度範囲である600〜800℃でプレスを行う事が出来る。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。下記の実施例は本発明を限定するものではなく、要旨構成の範囲内で適宜変更することは、本発明の範囲に含まれるものとする。
下地鋼板として、鋼種AおよびBの2種類の冷延鋼板を用いた。鋼種Aは、質量%で、C:0.30%、Si:0.25%、Mn:2.0%、P:0.005%、S:0.005%、Al:0.03%、N:0.004%、Nb:0.005%、Ti:0.02%、B:0.0020%、Cr:0.2%、Sb:0.008%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、板厚1.4mmの冷延鋼板を用いた(Ac変態点:729℃)。鋼種Bは、質量%で、C:0.23%、Si:0.25%、Mn:1.3%、P:0.006%、S:0.005%、Al:0.03%、N:0.004%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、板厚1.4mmの冷延鋼板を用いた(Ac変態点:769℃)。
この冷延鋼板の表面に、表1に示すめっき方法で、種々のZn−Niめっき層を形成した。電気めっき処理の条件は、所望の組成が得られるように浴中の金属塩比および電流値を調整した。
得られた熱間プレス用鋼板から150mmC×300mmLの試験片を採取し、電気炉によって加熱した。加熱条件(熱処理条件)を表1に示す。なお、総加熱時間は鋼板を炉内に投入してから取り出すまでの時間、最高到達温度は鋼板が炉内で記録した最高温度のことである。種々の条件で熱処理した後、電気炉から試験片を取り出し、ハット型金型によって700℃で熱間プレスを実施した。成形後の部品形状は上面の平坦部長さ100mm、側面の平坦部長さ50mm、下面の平坦部長さ50mmである。また、金型の曲げRは上面の両肩、下面の両肩いずれも7Rである。次いで、得られた熱間プレス部材を表1に示す化成処理条件および電着塗装条件により電着塗装処理し、電着塗装した熱間プレス部材を得た。なお、化成処理液には、PLM2100(日本パーカライジング社製)もしくはPBSX−35(日本パーカライジング社製)を用いた。化成液はそれぞれ標準条件に建浴し、PLM2100の化成処理時間は90秒、PBSX−35の化成処理時間は120秒とした。また、電着塗料には、GT100V(関西ペイント社製)もしくはGT100(関西ペイント社製)を用いた。いずれの電着塗料も厚さ20μmになるように電圧を調整し、塗装焼付条件は170℃で20分保持とした。
以上より得られた熱間プレス部材について、以下の評価を実施した。
1)ZnNi系合金層中のNi濃度およびFe濃度
熱処理後の鋼板のめっき断面をEPMAにより分析することで、ZnNi系合金層中のNi濃度およびFe濃度を測定した。具体的にはZnNi系合金層中の任意の50か所を点分析し、その平均値をそれぞれZnNi系合金層中のNi濃度、Fe濃度とした。
2)最大高さ粗さRz
触針式表面粗さ測定機を用いてJIS B 0601に記載の手法により測定した。
3)ZnO被覆率
熱処理後の熱間プレス部材表面をSEM(倍率×500)で観察して(N=10)、ZnO未形成部の面積率を測定し、残部をZnO被覆部として割合(平均値)を算出した。
4)化成処理性評価
化成処理性については、極低加速電圧SEM(ZEISS社、ULTRA55)のEDXマッピングによって評価した。具体的には、倍率×500倍の10視野を加速電圧5kV、積算5.5時間でZrマッピングを実施し、Zr強度(カウント)が100未満の領域を化成不良と判断し、以下の基準で化成処理性を評価した。
◎:化成不良の面積率が15%未満
○:化成不良の面積率が15%以上25%未満
△:化成不良の面積率が25%以上35%未満
×:化成不良の面積率が35%以上
評価が◎または○であれば、化成処理性に優れると判断した。
5)電着塗装の電着塗装膜厚
熱間プレス部材より、観察長として15mmのサンプルを切出した後、断面観察用サンプルに調整した。まず、SEMで200倍の視野で選択した最も電着塗膜が薄い箇所を更に1000倍に拡大、その視野を10等分に分けて各電着膜厚を読みとり、その中の平均膜厚D1(μm)および最少膜厚D2(μm)を測定し、以下の基準で電着塗膜の均一性を評価した。
◎:D1−D2が4.0μm未満
○:D1−D2が4.0μm以上6.0μm未満
△:D1−D2が6.0μm以上8.0μm未満
×:D1−D2が8.0μm以上
評価が◎または○であれば、電着塗装膜厚の均一性に優れると判断した。
6)電着塗膜の密着性
5)と同じ電着塗装後のハット成形部品をJASO M610で20サイクルの腐食試験に供した後の側面平坦中央(100mmC×30mmLの領域)にカッターで100個の碁盤目を入れた後、テープで剥離し、電着塗膜の剥離した個数をカウントした。
◎;碁盤目100個中、剥離部なし
〇;碁盤目100個中、剥離部3個未満
△;碁盤目100個中、剥離部3個以上10個未満
×;碁盤目100個中、剥離部10個以上
評価が◎または○であれば、電着塗膜の密着性に優れると判断した。
7)耐食性評価
得られたハット成形部品を2種の腐食試験(SAE−J2334 120サイクル、JASO M 610 80サイクル)に供し、腐食試験後の側面平坦部中央(100mmC×30mmLの領域)の最大腐食深さE1および平均腐食深さE2を調査し、以下の基準で評価した。
◎:平均腐食深さが0.5mm未満であり、E1−E2が0.2mm未満
○:平均腐食深さが0.5mm未満であり、E1−E2が0.2mm以上
△:平均腐食深さが0.5mm以上1.0mm未満
×:平均腐食深さが1.0mm以上
評価が◎または○であれば、耐食性に優れるとした。なお、JASO M610の方がSAE−J2334試験より、より湿潤率が高い試験となる。
結果を表1に示す。
Figure 2020180312
表1によれば、本発明の熱間プレス部材は化成処理性および電着塗装性が向上し、良好な耐食性を有する。

Claims (6)

  1. 鋼板の少なくとも一方の面にZn−Ni系めっき層を備え、前記Zn−Ni系めっき層は、Ni拡散層と、前記Ni拡散層上に15質量%超え40質量%以下のNiと、25質量%以下のFeを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Ni系合金層と、前記Zn−Ni系合金層上にZnO層とを有することを特徴とする熱間プレス部材。
  2. 前記Zn−Ni系めっき層の最大高さ粗さが15.0μm以下であることを特徴とする請求項1記載の熱間プレス部材。
  3. 前記Zn−Ni系めっき層のZnO被覆率が85%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス部材。
  4. 前記鋼板が、質量%で、
    C:0.20〜0.35%、
    Si:0.1〜0.5%、
    Mn:1.0〜3.0%、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱間プレス部材。
  5. さらに前記鋼板が、質量%で、
    Nb:0.05%以下、
    Ti:0.05%以下、
    B:0.0002〜0.0050%、
    Cr:0.1〜0.3%、
    Sb:0.003〜0.03%のうちから選ばれる1種または2種以上の成分組成を含有することを特徴とする請求項4に記載の熱間プレス部材。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱間プレス部材の製造方法であって、
    25質量%超え40%質量%以下のNiを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn−Niめっき層を有するZn−Niめっき鋼板をAc変態点〜1000℃の温度範囲に加熱後、熱間プレス加工を行うことを特徴とする熱間プレス部材の製造方法。
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