JP6886142B2 - 腸内細菌叢改善剤及びその使用 - Google Patents

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Description

本発明は、腸内細菌叢改善剤、腸内細菌叢改善用の医薬組成物、飲食品、ビフィズス菌の増殖促進方法、及びクロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法に関する。
腸内常在菌叢のバランスの崩壊により様々な疾病が発生すること、又は様々な疾病に特徴的な腸内常在菌叢が報告されてきており、腸内細菌叢制御の重要性への認識が近年高まってきている。
例えば、偽膜性腸炎患者の腸管内ではクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile;C.difficile)が異常増殖し、ディフィシル毒素を盛んに放出して炎症を誘発している。偽膜性腸炎は近年増加している疾患であるが、抗生剤が効果を示さないケースも多く、健常成人の糞便をカテーテル経由で十二指腸に注入する糞便移植が最も効果的な治療法である。
また、従来の腸内細菌叢制御する方法としては、プロバイオティクス及びプレバイオティクスが挙げられる。プロバイオティクスは、腸内細菌叢のバランスを改善し、体に良い作用をもたらす生きた細菌を示す。一方、プレバイオティクスは、宿主による消化に対する耐性をもつこと、及びプロバイオティクス細菌の資化性の条件を満たす摂食可能な化合物を示す。
現在までに、オリゴ糖(例えば、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸等)や食物繊維の一部(例えば、ポリデキストロース、イヌリン等)がプレバイオティクスとしての要件を満たす食品成分として認められている。プレバイオティクスの摂取により、乳酸菌及びビフィズス菌増殖促進作用、整腸作用、ミネラル吸収促進作用、炎症性腸疾患への予防及び改善作用、等の人の健康に有益な効果が報告されている。例えば、マンノオリゴ糖は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)菌とラクトバチルス(Lactobacillus)菌の両者を増殖させることが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2004−159659号公報
従来の偽膜性腸炎の治療において、素性の明らかでない常在菌が殆どを占める糞便の移植に伴って肥満となった例が報告される他、心理的抵抗の存在などの問題も多く、腸内細菌叢の制御法としては大きな改善の余地があった。
また、従来のプレバイオティクスでは、腸内常在菌による資化については考慮されておらず、多くの腸内常在菌に対して増殖促進効果を示していた。すなわち、従来のプレバイオティクスでは、ヒト腸管内で他の常在菌に資化されることで、プロバイオティクス細菌を特異的に増殖させ効率的に腸内細菌叢を改善することが困難な状況であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、プロバイオティクス細菌を特異的に増殖可能な腸内細菌叢改善剤、及び腸内細菌叢改善用の医薬組成物を提供する。また、効率的なビフィズス菌の増殖促進方法及びクロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法を提供する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース又はその類縁体がプロバイオティクス細菌を特異的に増殖し、さらに該プロバイオティクス細菌の増殖に伴い、クロストリジウム・ディフィシルの増殖を抑制させることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]ガラクトシル−β−1,4−ラムノース有効成分として含有することを特徴とする腸内細菌叢改善剤。
[2][1]に記載の腸内細菌叢改善剤、並びに薬学的に許容できる担体及び希釈剤のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする腸内細菌叢改善用の医薬組成物。
[3][1]に記載の腸内細菌叢改善剤を含むことを特徴とする腸内細菌叢改善用の飲食品。
[4]ヒト以外の哺乳動物において、日和見菌及び悪玉菌の増殖を促進させず、ビフィズス菌を特異的に増殖促進させるための、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースの使用
[5]前記ビフィズス菌がビフィドバクテリウム・インファンティスである[4]に記載の使用
[6]クロストリジウム・ディフィシルを保菌するヒト以外の被検体にガラクトシル−β−1,4−ラムノース投与し、日和見菌及び悪玉菌の増殖を促進させず、ビフィズス菌を特異的に増殖促進させる、クロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法。
本発明によれば、プロバイオティクス細菌を特異的に増殖可能な腸内細菌叢改善剤、及び腸内細菌叢改善用の医薬組成物を提供することができる。また、本発明によれば、効率的なビフィズス菌の増殖促進方法及びクロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法を提供することができる。
(A)実施例1における各種腸内細菌へのガラクトシル−β−1,4−ラムノースを含む培地を用いた培養による増殖試験の結果を示すグラフである。(B)実施例1における各種腸内細菌へのラクチュロースを含む培地を用いた培養による増殖試験の結果を示すグラフである。 実施例2におけるガラクトシル−β−1,4−ラムノース含有又は不含培地を用いた、クロストリジウム・ディフィシルの単培養、又はクロストリジウム・ディフィシル及びビフィドバクテリウム・インファンティスの共培養によるクロストリジウム・ディフィシルの菌数の経時的な変化を示すグラフである。 実施例3におけるガラクトシル−β−1,4−ラムノース含有又は不含培地を用いた、クロストリジウム・ディフィシルと糞便との共存培養下、又はクロストリジウム・ディフィシル及びビフィドバクテリウム・インファンティスと糞便との共存培養下でのイムノクロマト法によるディフィシル毒素の検出結果を示す図である。 実施例3におけるガラクトシル−β−1,4−ラムノース含有又は不含培地を用いた、クロストリジウム・ディフィシルと糞便との共存培養下、又はクロストリジウム・ディフィシル及びビフィドバクテリウム・インファンティスと糞便との共存培養下でのELISA法によるディフィシル毒素の検出結果を示す図である。
≪腸内細菌叢改善剤≫
一実施形態において、本発明は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩(以下、「ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類」と称する場合がある。)を有効成分として含有する腸内細菌叢改善剤を提供する。
本実施形態の腸内細菌叢改善剤は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類を含有し、該ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類は、腸内常在菌及び悪玉菌には資化されず、プロバイオティクス細菌によってのみ資化される。すなわち、本実施形態の腸内細菌叢改善剤は、腸内常在菌及び悪玉菌に対して増殖促進効果を有さず、プロバイオティクス細菌のみを特異的に増殖させることができるため、腸内細菌叢を効果的に改善させることができる。さらに、プロバイオティクス細菌の増殖に伴い、クロストリジウム・ディフィシルの増殖及びディフィシル毒素の産生を抑制できるため、効果的に偽膜性腸炎の予防又は治療することができる。
なお、一般に、「腸内細菌叢」とは、腸内に常在する多種多様な細菌群を意味し、腸内細菌叢にはヒト一人当たり150種以上、重量にして1kg以上、細胞数にしてヒト細胞数を上回る数の細菌が含まれる。腸内細菌叢を構成する腸内常在菌の機能はその多くが不明であるが、免疫賦活能、短鎖脂肪酸生産能、整腸作用などを持つことが古くから知られている。ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌(乳酸菌)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌(ビフィズス菌)等は善玉菌としてとらえられており、プロバイオティクスとして食品中に添加されているものも多い。
これに対して腸内に存在する悪玉菌としては、例えば、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、有毒株である大腸菌(例えば、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌(例えば、O1、O18、O26、O111、O128、O157等)の腸管内病原性大腸菌等)、クロストリジウム・ディフィシル等が挙げられる。これらの細菌が異常増殖し、腸内細菌叢のバランスが破綻した場合に、様々な疾病が発生する。
さらに、腸内細菌叢の多くを占める常在菌(日和見菌とも呼ばれる)、すなわち、バクテロイデス(Bacteroides)属細菌や、非病原性のクロストリジウム(Clostridium)属細菌はその宿主へ及ぼす影響が不明であり、腸内において豊富とは言えない栄養源を善玉菌と奪い合う競争関係にあることから、善玉菌の増殖には負の効果を持つと考えられる。
本明細書における「腸内細菌叢改善」とは、悪玉菌、日和見菌を増殖させず、善玉菌を特異的に増殖させることで、善玉菌優勢の腸内細菌叢を実現することを意味する。これにより悪玉菌の宿主への悪影響を抑制することで、疾病の改善及び健康増進が期待される。
一般に、「プレバイオティクス」とは、宿主による消化に対する耐性をもつこと、及びプロバイオティクス細菌の資化性の条件を満たす摂食可能な化合物であり、腸におけるプロバイオティクス細菌の増殖を促進するものであると考えられている。
また、「プロバイオティクス」とは、微生物細胞の調製物(例えば、生存している微生物細胞等)又は微生物細胞の成分であり、有効量で投与される際に対象の健康又は健康状態(well−being)への有益な作用を提供することができるものを意味する。
本明細書における「プロバイオティクス」は、非病原性のものを示す。プロバイオティクスの健康上の利点は、消化管におけるヒト又は非ヒト動物の微生物叢の均衡の改善、及び/又は正常な微生物叢の回復に関連する点が挙げられる。
<ガラクトシル−β−1,4−ラムノース>
ガラクトシル−β−1,4−ラムノースは、L−ラムノースの4位水酸基にβ−D−ガラクトピラノースがグリコシド結合した構造の二糖である (CAS番号:52482−68‐5) 。
本明細書において、「ガラクトシル−β−1,4−ラムノース」の類縁体とは、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースと分子生物学的な性質(プロバイオティクス細菌のみを特異的に増殖させる性質)及び構造が類似しているが、化合物中の一部の原子又は官能基が他の原子又は官能基に置換された化合物を意味する。具体的には、例えば、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース中に存在する水素原子がハロゲン原子に置換された化合物、水酸基のうち少なくとも一つがアルコキシ基に置換された化合物等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、前記アルコシキ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
また、本実施形態の腸内細菌叢改善剤は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース又はその類縁体の薬学的に許容できる塩を含んでいてもよい。
本明細書において、「薬学的に許容できる」とは、被検動物に適切に投与された場合に、概して、副作用を起こさない程度を意味する。
塩としては、薬学的に許容できる酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。
酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸等の無機酸との塩;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸との塩等が挙げられる。
塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基との塩;カフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジン等の有機塩基との塩等が挙げられる。
本実施形態の腸内細菌叢改善剤は、他の成分として、例えば、PBS、Tris−HCl等の緩衝液、アジ化ナトリウム、グリセロール等の添加剤を含んでいてもよい。
本実施形態の腸内細菌叢改善剤を用いて、腸内細菌叢を改善するための予防又は治療方法を提供することができる。
治療対象としては、特別な限定はなく、例えば、ヒト又はヒト以外の哺乳動物(例えば、サル、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ウマ、ウシ等)が挙げられ、中でも、ヒトが好ましい。
<ガラクトシル−β−1,4−ラムノースの製造方法>
ガラクトシル−β−1,4−ラムノースは、植物の細胞壁に存在する多糖であるラムノガラクツロナンI(ペクチンの一種)、又は乳酸菌等の微生物の菌体外多糖の構成要素として存在するが、植物又は乳酸菌等の微生物から大量に抽出及び分離することが難しかった。
しかしながら、本発明者らによって開発された、スクロースとL−ラムノースを原料とし、4種の酵素を組み合わせた複合酵素反応によりガラクトシル−β−1,4−ラムノースを大量に合成し得ることができる(参考文献:Nakajima M., et al., “Practical Preparation of D-Galactosyl-β1→4-Lrhamnose Employing the Combined Action of Phosphorylases”, Biosci. Biotechnol. Biochem., vol.74, no.8, p1652-1655, 2010.)。
具体的には、まずスクロースをスクロースホスホリラーゼ(第1の酵素)により加リン酸分解し、フラクトース及びグルコース1リン酸に分解する(第1の酵素反応)。次いで、得られたαグルコース1リン酸及びUDP−ガラクトースをUDP−グルコース−ヘキソース1リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(第2の酵素)の転移反応により、αガラクトース1リン酸及びUDP−グルコースに変換する(第2の酵素反応)。また、得られたUDP−グルコースはUDP−グルコース4−エピメラーゼ(第3の酵素)によりUDP−ガラクトースに変換させて(第3の酵素反応)、前記第2の酵素反応に再利用することができる。次いで、得られたガラクトース1リン酸及びL−ラムノースをガラクトシル−β−1,4−ラムノースホスホリラーゼ(第4の酵素)によりガラクトシル−β−1,4−ラムノースを製造することができる(第4の酵素反応)。4種の酵素反応を同じ反応液中で同時に行うと、触媒量のリン酸およびUDP−グルコース存在下にスクロース及びL−ラムノースを原料としてガラクトシル−β−1,4−ラムノースを生成させることができる。
得られたガラクトシル−β−1,4−ラムノースは、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースを取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、酵母等の微生物による処理、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースを取り出せばよい。また、取り出したガラクトシル−β−1,4−ラムノースは、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
ガラクトシル−β−1,4−ラムノースは、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
<用途>
本実施形態の腸内細菌叢改善剤は、例えば、後述に記載のとおり、腸内細菌叢改善用の医薬組成物、飲食品等に用いることができる。また、本実施形態の腸内細菌叢改善剤は、例えば、培地、又は培養用製剤等に用いることができる。本実施形態の腸内細菌叢改善剤を含む培養用製剤を培地に添加する、又は本実施形態の腸内細菌叢改善剤を含む培地を用いてプロバイオティクス細菌(好ましくは、ビフィズス菌)を培養することにより、効果的にプロバイオティクス細菌の増殖を促進することができる。
≪腸内細菌叢改善用の医薬組成物≫
一実施形態において、本発明は、上述の腸内細菌叢改善剤、並びに薬学的に許容できる担体及び希釈剤のうち少なくともいずれかを含む腸内細菌叢改善用の医薬組成物を提供する。
本実施形態の医薬組成物によれば、効果的に腸内細菌叢を改善し、腸内細菌叢に関連する疾患の予防又は治療を行うことができる。
例えば、腸内細菌叢において、抗生物質を長期間投与することで、該抗生物質に感受性を有する細菌は、減少し、一方で、抗生物質に耐性を有するクロストリジウム・ディフィシルは腸内で異常に増殖する。このクロストリジウム・ディフィシルは毒素を産生し、腸管内の炎症を誘発する。この疾病は「偽膜性腸炎」(又は、「クロストリジウム・ディフィシル誘発性腸炎」)と呼ばれている。
従来の偽膜性腸炎の治療方法としては、例えば、クロストリジウム・ディフィシルに有効な抗生物質(例えば、バンコマイシン、メトロニダゾール等)の投与、又はカテーテル経由で十二指腸に注入する糞便移植等が挙げられる。バンコマイシンの投与では、バンコマイシン耐性菌株の出現の可能性があり、またメトロニダゾール投与では、嘔気、金属味、神経症状等の副作用が生じる虞がある。また、糞便移植では、素性の明らかでない常在菌が殆どを占める糞便の移植に伴い、肥満となった例が報告される他、心理的抵抗の存在などの問題が多い。
これに対し、本実施形態の医薬組成物によれば、後述の実施例に示すとおり、善玉菌(特に、ビフィズス菌)の増殖を促進することで、クロストリジウム・ディフィシルの増殖を抑制し、さらに、クロストリジウム・ディフィシルの毒素の産生を抑制することができるため、偽膜性腸炎を効果的に予防又は治療することができる。
また、例えば、腸内細菌叢のうち、一部の悪玉菌は変異原物質や発癌性物質を生成又は活性化することで、発癌を促進する場合があり、一方、一部の善玉菌はそれらの物質を分化、不活性化、又は吸着等により除去する働きにより、癌の予防に役立つことが知られている。
また、例えば、腸内細菌叢が肥満やメタボリックシンドロームに深く関与していることを示す研究も報告されている。例えば、肥満とそうではなない組み合わせの一卵性双生児の腸内細菌叢を、細菌の有する16S rRNA遺伝子の塩基配列によって解析及び比較した研究では、肥満によって腸内細菌叢の多様性が減少していることが明らかとなっている。
また、例えば、腸内細菌叢は非消化性食餌成分を分解してエネルギー回収を向上させるという腸管における働きだけでなく、エンドトキシンによる全身の軽度な慢性炎症や各種のホルモンの分泌に対する影響を介して、肥満や糖尿病の発生に影響を与えていると考えられている。
また、例えば、最近の研究では、腸内細菌叢が自閉症やうつ等の精神疾患やストレスに対する応答、情動行動や学習等の脳機能に関連する現象にまで関わっていることを示唆する報告もされている。
よって、腸内細菌叢に関連する疾患としては、例えば、偽膜性腸炎;十二指腸癌、小腸癌、大腸癌(例えば、盲腸癌、結腸癌、直腸癌等)等の癌;肥満(特に、内臓脂肪型肥満)、高血圧症、脂質代謝異常症、糖尿病等のメタボリックシンドローム;自閉症、うつ病等の神経疾患等が挙げられる。中でも、本実施形態の医薬組成物は偽膜性腸炎の予防又は治療に用いられることが好ましい。
<投与量・投与方法>
本実施形態の医薬組成物は、被検動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)の年齢、性別、体重、症状、治療方法、投与方法、処理時間等を勘案して適宜調節される。
本実施形態の医薬組成物に含まれるガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の投与量は、症状又は適用する疾患に応じて適宜調整すればよく、例えば、経口投与の場合、一般の成人(体重60kgとして)においては、1日あたり500mg以上15g以下であればよく、1g以上10g以下であることが好ましい。
投与回数としては、1週間平均当たり、1回〜数回投与することが好ましい。
投与形態としては、例えば、経腸的、または経口的に当業者に公知の方法が挙げられ、経口的投与が好ましい。
<組成成分>
本実施形態の医薬組成物は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の他に、薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含んでいてもよい。
薬学的に許容されうる担体又は希釈剤は、賦形剤、稀釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味料、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、添加剤等が挙げられる。これら担体の1種以上を用いることにより、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、又はシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。
また、担体としてコロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の生体内安定性を高める効果や、特定の臓器、組織、又は細胞へ、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の移行性を高める効果が期待される。コロイド分散系としては、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル、リポソームを包含する脂質を挙げることができ、腸内へ、有効成分を効率的に輸送する効果のある、リポソームや人工膜の小胞が好ましい。
本実施形態の医薬組成物における製剤化の例としては、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に使用されるものが挙げられる。
さらには、薬理学上許容される担体又は希釈剤、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化されたものが挙げられる。
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖、又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油、又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。
本実施形態の医薬組成物は、単独で用いてもよく、その他の腸内細菌叢改善用の医薬組成物と組み合わせて用いてもよい。その他の腸内細菌叢改善用の医薬組成物としては、例えば、ビフィズス菌製剤、酪酸菌製剤、ラクトミン製剤、耐性乳酸菌製剤等の善玉菌を有効成分として含有する整腸剤;ペプシン、パンクレアチン等を有効成分として含有する動物性消化酵素剤、ジアスターゼ等を有効成分として含有する植物性消化酵素剤等の消化酵素剤を有効成分として含有する整腸剤等が挙げられる。
<治療方法>
本発明の一側面は、腸内細菌叢改善のための上述の腸内細菌叢改善剤を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、治療的に有効量の上述の腸内細菌叢改善剤、並びに薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、前記医薬組成物を含む、腸内細菌叢改善剤を提供する。
また、本発明の一側面は、腸内細菌叢改善用の治療剤を製造するための腸内細菌叢改善剤の使用を提供する。
また、本発明の一側面は、上述の腸内細菌叢改善剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、腸内細菌叢改善のための治療方法を提供する。
≪飲食品≫
一実施形態において、本発明は、上述の腸内細菌叢改善剤を含む飲食品を提供する。
本実施形態の飲食品によれば、効果的に腸内細菌叢を改善することができる。また、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースは二糖であり被検体(好ましくは、ヒト)に吸収されず、安全性の面からも毎日摂取することに問題が少ないと考えられ、安全でかつ腸内細菌叢の改善に有効な飲食品を提供することができる。
なお、本明細書において、「飲食品」とは、食品と飲料を合わせたものであり、主に加工食品を意味する。また、本実施形態の飲食品は、健康食品(特定保健用食品を含む)、機能性食品、健康飲料、機能性飲料を含む。
上述の腸内細菌叢改善剤を含む飲食品の形態は、固形状であっても液状であってもよく、上述の腸内細菌叢改善剤は広く食品一般に食品添加物として添加して用いることができる。
飲食品の種類としては、具体的には、清涼飲料(例えば、ミネラルウォーター、炭酸飲料、栄養飲料、スポーツドリンク、ココア飲料、果実飲料、乳飲料(乳児用調製粉乳、乳幼児用液体ミルクを含む。)、コーヒー飲料、茶系飲料、豆乳飲料、野菜飲料、アルコールテイスト飲料(例えば、ノンアルコールビール、ノンアルコールワイン等))、アルコール飲料(例えば、ビール、発泡酒、カクテル、チューハイ、焼酎、日本酒、ウィスキー、ブランデー、ワイン等)等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、スパゲッティ、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、グミ、ガム、キャラメル、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット等の焼き菓子、ゼリー、ジャム、クリーム等の菓子類;かまぼこ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産又は畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、カレー、パン、ジャム、サラダ、惣菜、漬物等が挙げられ、これらに限定はされない。
本実施形態の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加剤を適宜配合してもよい。添加剤としては、例えば、砂糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、デキストリン、澱粉等の賦形剤、結合剤、希釈剤、香料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
本実施形態の飲食品におけるガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の配合量は、その生理作用や薬理作用が発揮できる量であればよく、上述の≪腸内細菌叢改善用の医薬組成物≫における経口投与での投与量及び対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、通常、成人1日当たりの摂取量が500mg以上15g以下であればよく、1g以上10g以下であることが好ましい。例えば、固形状食品の場合には0.5〜50重量%、飲料等の液状食品の場合には0.1〜10重量%であればよい。
≪ビフィズス菌の増殖促進方法≫
一実施形態において、本発明は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩を投与するビフィズス菌の増殖促進方法を提供する。
本実施形態のビフィズス菌の増殖促進方法によれば、効率的かつ効果的にビフィズス菌の増殖を促進することができる。
後述の実施例に示すとおり、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースを各種ビフィズス菌に投与することにより、ビフィズス菌の増殖を促進することができたことから、ビフィズス菌の増殖にガラクトシル−β−1,4−ラムノースが有効であることが明らかとなった。
増殖が促進されるビフィズス菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum;B.bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロングム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(B.lactis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)等が挙げられ、これらに限定されない。
中でも、ビフィズス菌としては、ビフィドバクテリウム・インファンティスが好ましい。ビフィドバクテリウム・インファンティスは乳幼児の腸内に存在するビフィズス菌であるため、例えば、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類を乳幼児用調製粉乳、又は乳幼児用液体ミルクに配合し、乳幼児に投与することで、ビフィドバクテリウム・インファンティスの増殖を効果的に促進することができる。
本実施形態のビフィズス菌の増殖促進方法において、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類を、上述の各種ビフィズス菌を腸内細菌叢に有する被検体に投与してもよく(インビボ系)、又は上述の各種ビフィズス菌に直接投与してもよい(インビトロ系)。
ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類を被検体に投与する場合の投与量としては、上述の≪腸内細菌叢改善用の医薬組成物≫における経口投与での投与量と同様の量が挙げられる。
また、投与回数及び投与形態についても、上述の≪腸内細菌叢改善用の医薬組成物≫に例示されたものと同様のものが挙げられる。
なお、被検体としては、哺乳動物であることが好ましい。前記哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等の霊長類等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、本実施形態のビフィズス菌の増殖促進方法は、実験又は臨床用途で用いられることから、被検体は、マウス及びヒトが好ましい。
また、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類を培地等に添加し、上述の各種ビフィズス菌の増殖を促進させてもよい。これにより、得られるビフィズス菌は、必要に応じて飲食品、又はビフィズス菌製剤等に加工して、ヒト又は非ヒト動物が直接投与する等、プロバイオティクス用途に好適に用いられる。
ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類を培地に添加する場合の投与量(培地に含まれる濃度)としては、0.1mg/L以上20mg/L以下であることが好ましく、1mg/L以上10mg/L以下であることがより好ましい。
ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の培地に含まれる濃度が上記範囲であることにより、効率的にビフィズス菌の増殖を促進させることができる。
ビフィズス菌の増殖に用いられる培地は、ビフィズス菌の培養に適した組成であればよく、栄養源として利用し得る炭素源、窒素源、ビタミン類、無機塩類等を含有するものであればよい。前記培地としては、例えば、TOSプロピオン酸寒天培地(ヤクルト薬品工業社製)等が挙げられ、これに限定されない。
また、ビフィズス菌の培養条件としては、嫌気条件下であることが好ましく、例えば、静置培養、振盪培養、又は攪拌培養等により培養を行えばよい。
培養温度は、例えば20℃以上40℃以下であればよい。
≪クロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法≫
一実施形態において、本発明は、クロストリジウム・ディフィシルを保菌する被検体にガラクトシル−β−1,4−ラムノース若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩を投与するクロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法を提供する。
本実施形態のクロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法によれば、クロストリジウム・ディフィシルを保菌する被検体の腸内において、ビフィズス菌等の善玉菌の増殖が促進されることにより、クロストリジウム・ディフィシルの増殖が抑制されて腸内細菌叢のバランスを改善することができる。さらに、クロストリジウム・ディフィシルの毒素の産生を効果的に抑制することができる。
後述の実施例に示すとおり、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースを、クロストリジウム・ディフィシルを含む糞便に投与することにより、ビフィズス菌が増殖することで、クロストリジウム・ディフィシルの増殖が抑制され、さらに毒素の産生を抑制できたことから、クロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制にガラクトシル−β−1,4−ラムノースが間接的に作用することが明らかとなった。
ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類を被検体に投与する場合の投与量としては、上述の≪腸内細菌叢改善用の医薬組成物≫における経口投与での投与量と同様の量が挙げられる。
また、投与回数及び投与形態についても、上述の≪腸内細菌叢改善用の医薬組成物≫に例示されたものと同様のものが挙げられる。
クロストリジウム・ディフィシルを保菌する被検体としては、哺乳動物であることが好ましい。前記哺乳動物としては、上述の≪ビフィズス菌の増殖促進方法≫において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、本実施形態のクロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法は、実験又は臨床用途で用いられることから、被検体は、マウス及びヒトが好ましい。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)培地の調製
(1−1)Gifu Anaerobic Medium(GAM)(前培養用培地)の調製
GAMブイヨン(ニッスイ社製)と脱塩水とを混合してスターラーでよく溶かしてから、GAMブイヨンが5.9(w/v)%になるように脱塩水でメスアップした。次いで、前記5.9(w/v)%のGAMを1mLずつ4mL容バイアル瓶に分注し、その後115℃で15分間オートクレーブした。蓋は半開きのまま素早く、嫌気条件下のアネロパック角型ジャー(三菱ガス化学社製)に入れ、終夜放置し、前培養用のGAMを調製した。
(1−2)糖除去GAMの調製
次いで、GAM糖分解用半流動培地(ニッスイ社製)26.25gと、約100mLの脱塩水とをスターラーバーを入れた200mL容ビーカーに加え、脱塩水を200mL程度まで加えながら撹拌し、粉末を溶解させた。その後、寒天を除くために、ろ紙を用いてろ過した。この際、ビーカーに残った液を洗いこむようにした。ろ液を脱塩水で450mLにメスアップし、耐熱性瓶に入れ、115℃で15分間オートクレーブした。蓋は半開きのまま素早く、嫌気条件下のアネロパック角型ジャーに入れ、終夜放置し、GAM糖除去培地を調製した。
(1−3)5(w/v)%糖溶液の調製
糖として、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース(以下、「Gal−β1,4−Rha」と称する場合がある。)(公知の文献(参考文献:Nakajima M., et al., “Practical Preparation of D-Galactosyl-β1→4-Lrhamnose Employing the Combined Action of Phosphorylases”, Biosci. Biotechnol. Biochem., vol.74, no.8, p1652-1655, 2010.)を元に製造したものを使用。)、及びラクチュロース(以下、「Lat」と称する場合がある。)(和光純薬社製)を用いた。
次いで、耐熱性瓶にMilliQ水を入れ、オートクレーブ(121度、20分)した。次いで、オートクレーブ内の温度が97℃まで下がったら直ちに、アネロパックと共に密閉容器に入れ、終夜放置し、酸素を除去した。次いで、各糖をエッペンチューブに50mgずつ秤量し、嫌気チャンバー内でオートクレーブしたMilliQ水を加え、全量を1mLとした。次いで、ボルテックスミサーで溶解後、新しいエッペンチューブを用意し、0.22μmのフィルター(Merck Millipore社製、カタログ番号:SLGV033RS)と1mL用シリンジ(テルモ社製、コード番号:SS−01T)とを用いてフィルトレーションし、5(w/v)%の2種類の糖溶液を調製した。
(1−4)各種の糖添加培地の調製
嫌気チャンバー(Baker Ruskinn社製、InvivO2)内で(窒素雰囲気下、酸素1%以内)、(1−2)で調製し糖除去GAM36mLに5%糖溶液を各4mLずつ加え、2種類(Gal−β1,4−Rha、又はLat含有)の0.5(w/v)%糖添加培地を調製した。
(2)各種の腸内細菌を用いた選択的増殖促進評価試験
本試験で用いた菌種は以下のとおりである。
・ヒト腸内常在菌最優勢種
Bacteroides thetaiotaomicron
Bacteroides uniformis
Bacteroides vulgatus
Parabacteroides distasonis
Parabacteroides ovatus
Coprococcus comes
Ruminococcus torques
Ruminococcus lactalis
Collinsella aerofaciens
Eubacterium ventriosum
Eubacterium siraeum
Roseburia intestinalis
Clostridium coccoides
・ガス壊疽菌
Clostridium perfringens
・乳酸菌
Leuconostoc mesenteroides
Lactobacillus casei
Lactobacillus rhamnosus
Lactobacillus gasseri
Lactobacillus johnsonii
Lactobacillus plantarum
Lactococcus lactis
Lactobacillus reuteri
・ビフィズス菌
Bifidobacterium bifidum
Bifidobacterium longum subsp. infantis
Bifidobacterium longum
Bifidobacterium breve
Bifidobacterium pseudolongum
Bifidobacterium adolescentis
Bifidobacterium lactis
Bifidobacterium catenulatum
まず、嫌気チャンバー内で、(1−1)で調製したGAM(前培養用培地)1mLに滅菌した爪楊枝で上述のグリセロールストックした各種菌体を接種し、アネロパック角型ジャー内の嫌気条件下、37℃で前培養した。次いで、96ディープウェルプレートに8連マルチピペットで、(1−4)で調製した各種の糖添加培地、又はNegative Control用として糖の代わりに脱塩水を加えた糖除去GAMを各500μLずつ分注し、ガス透過性のマイクロプレート用シールをして、嫌気条件下のアネロパック角型ジャーに入れ、終夜放置した。96マイクロプレート(各ウェル200μL容)に、よく懸濁した上記各菌体の前培養液を50μLずつ分注し、これをマスタープレートとした。乾熱滅菌したコピープレート96(Tokken TK−CP96)のピンを、マスタープレートの底まで差し込み、次に培地の入った96ディープウェルプレートの底まで差し込むことで各菌体の接種を行った。96ディープウェルプレートにガス透過性のマイクロプレート用シールを貼り、アネロパック角型ジャー内の嫌気条件下で培養した。24時間培養後、培養液を8連マルチピペットにてピペッティングにより菌体を懸濁した後、各培養液50μLずつを96マイクロプレートにサンプリングした。ここまでの操作は全て嫌気チャンバー内で行った。サンプリング液の入ったプレートを嫌気チャンバーから出し、サンプリング液に5%糖溶液の代わりに脱塩水を添加することで調製した糖除去GAMを150μLずつ加えることで、各培養液を4倍希釈した。混合は8連マルチピペットによるピペッティングで行った。次いで、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific社製)で600nmの吸光度(濁度)を測定した。ブランク測定は上述した未接種の糖除去GAMを用いて行った。また、糖除去GAMにグルコース添加した培地を用いたClostridium perfringensの培養液の濁度を光路長1cmのキュベットを用いて測定し、マイクロプレートでの測定値を光路長1cmのキュベットでの値に換算できる定数を算出した。この定数をすべての菌種の測定値に適用させて、濁度は光路長1cmでの値として計算した。次いで、得られた計算値から、各菌体について、増殖促進倍率(=糖ありの測定値/糖なしの測定値)を計算した。0.5(w/v)%のGal−β1,4−Rhaを含む培地を用いて培養した結果を図1(A)に、0.5(w/v)%のLatを含む培地を用いて培養した図1(B)に示す。
図1(A)から、Gal−β1,4−Rhaを含む培地による培養では、ヒト腸内常在菌の最優勢種、ガス壊疽菌、及び乳酸菌の増殖促進倍率は1倍前後であるのに対し、ビフィズス菌の増殖促進倍率は2倍以上、特にBifidobacterium infantisでは約7倍であり、ビフィズス菌においてのみGal−β1,4−Rhaが資化されることで選択的に増殖が促進されることが明らかとなった。
また、図1(B)から、Latを含む培地による培養では、ビフィズス菌だけでなく、ヒト腸内常在菌の最優勢種、ガス壊疽菌、及び乳酸菌いずれにおいても、増殖促進倍率が2倍以上となる菌種も存在し、全ての菌においてLatが資化されることで増殖が促進されることが確かめられた。
なお、Gal−β1,4−Rhaは、ガラクトースとラムノースとがβ1,4結合した二糖である。一方、Latは、ガラクトースとフルクトースとがβ1,4結合した二糖である。上記のように、構造が非常に近しい二糖であっても、結合する単糖の種類が異なることで、腸内細菌における資化性が異なることが示唆された。
以上のことから、Gal−β1,4−Rhaは腸内常在菌及び悪玉菌に対して増殖促進効果を有さず、プロバイオティクス細菌のみを特異的に増殖させることができるため、腸内細菌叢を効果的に改善させることができることが示唆された。
[実施例2]
(1)培地の調製
(1−1)Gifu Anaerobic Medium(GAM)(前培養用培地)の調製
実施例1の(1−1)と同様の方法を用いて、前培養用のGAMを調製した。
(1−2)糖除去GAMの調製
実施例1の(1−2)と同様の方法を用いて、GAM糖除去培地を調製した。
(1−3)5(w/v)%糖溶液の調製
実施例1の(1−3)と同様の方法を用いて、5(w/v)%のGal−β1,4−Rha溶液を調製した。
(1−4)糖添加培地の調製
実施例1の(1−4)と同様の方法を用いて、1種類(Gal−β1,4−Rha含有)の0.5(w/v)%糖添加培地を調製した。
(1−5)クロストリジア測定用培地の調製
クロストリジア測定用培地(日水製薬社製、コード番号:05409)14.06gと200mLのElix水とをスターラーバーを入れた500mL容三角フラスコに加えた。スターラーで攪拌して溶解後、オートクレーブ(121℃、15分)した。次いで、クリーンベンチ内でシャーレ10枚に分注した。40分間乾燥後、アネロパックと共に密閉し、4℃で保存し、クロストリジア測定用培地を調製した。
(2)クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile;C.difficile)の生育抑制及びディフィシル毒素の生産抑制試験
(2−1)クロストリジウム・ディフィシル及びビフィドバクテリウム・インファンティスの共培養
まず、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile;C.difficile)及びビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis;B.infantis)について、それぞれグリセロールストックからGAMプレートに滅菌した爪楊枝を用いて植菌及び画線し、37℃嫌気条件下で48時間以上培養した。次いで、C.difficileは1コロニーを、B.infantisは10コロニーを滅菌した爪楊枝を用いてバイアル瓶に入れた2mLGAMに植菌し、37℃嫌気条件下で26時間培養し、前培養液を得た。次いで、96ディープウェルプレートに(1−4)で調製した0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地、又はコントロールとして(1−2)で調製した糖除去GAMを500μLずつ入れた。次いで、C.difficile及びB.infantisの前培養液を、GAMを用いて任意の倍率に希釈し、GAMをブランクとして波長600nmにおける吸光度を測定した。得られた値を用いて前培養液の吸光度がC.difficileについて0.5、B.infantisについて0.05となるように糖除去GAMを用いて希釈した。次いで、0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地又は糖除去GAMが分注された96ディープウェルプレートに、希釈したC.difficile及びB.infantisの前培養液を10μLずつ植菌した(C.difficileの初期濁度は0.01、B.infantisの初期濁度は0.001であった)。また、コントロールとして、単菌培養(C.difficileのみ)のウェルには、0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地又は糖除去GAMが分注された96ディープウェルプレートに、希釈したC.difficileの前培養液を10μLずつ加えた。200μLにあわせた12連のピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。ガス透過性のマイクロプレート用シール(4titude、Product Code 4ti−0516/96)を貼り、37℃嫌気条件下で培養を開始した。
(2−2)菌数の測定
次いで、共培養用又は単培養用溶液中の各菌種の菌数を調べる目的で、以下の操作を本培養開始から0時間、17時間、23時間、及び47時間後に行った。
まず、96ウェル滅菌プレートにオートクレーブ及び嫌気処理済みのPBSを180μLずつ入れた。次いで、(2−1)で培養した共培養又は単培養用培養液を200μLにあわせた12連のピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。次いで、共培養又は単培養用培養液を20μLずつとり、96ウェル滅菌プレートに用意しておいたPBSに加えた。次いで、150μLにあわせた12連のピペットマンで10回ピペッティングすることで希釈及び懸濁した。共培養又は単培養用培養液の希釈液をさらに20μLずつとり、PBS 180μLに加え、同様に希釈及び懸濁を行った。この操作を繰り返すことにより、段階希釈を行った。予め滅菌済みビーズ(ニッポンジーン社製、Code No.314−06251)7個を入れておいたクロストリジア測定用培地にそれぞれの希釈液を50μLずつ添加した。1分間プレートを振り、移動するビーズを利用して希釈液を塗布した。次いで、希釈液を塗布したプレートをパウチ(三菱ガス化学社製、品番A−98)にアネロパックと共に密閉し、37℃インキュベーターに入れ、48時間以上培養した。次いで、C.difficile及びB.infantis、それぞれのコロニー数をカウントした。得られたコロニー数について、下記式[1]を用いて、培養液1mLあたりのコロニー数を算出した。結果を図2に示す。図2において、「Gal−Rha」とは、Gal−β1,4−Rhaを添加した培地を用いたことを意味する。
培養液1mLあたりのコロニー数=50μLあたりのコロニー数×希釈倍率×20 [1]
なお、47時間後の共培養又は単培養用培養液を塗布後、残った共培養又は単培養用培養液をエッペンチューブにとり、遠心(14,000rpm、2min)後、上清200μLを新しいエッペンチューブに取り、−25℃で保存した。
図2から、糖除去GAM又は0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地を用いてC.difficileのみを単培養した場合、及び糖除去GAMを用いてC.difficile及びB.infantisを共培養した場合では、C.difficileの増殖は抑制されず、同様の増殖の傾向が見られた。
これに対し、0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地を用いてC.difficile及びB.infantisを共培養した場合では、培養17時間時間後から、顕著なC.difficileの増殖抑制効果が見られた。これは、培地に含まれるGal−β1,4−RhaがB.infantisのみによって資化され、B.infantisの増殖が促進されることによって、C.difficileの増殖が抑制されたためであると推測される。
[実施例3]
(1)培地の調製
(1−1)Gifu Anaerobic Medium(GAM)(前培養用培地)の調製
実施例1の(1−1)と同様の方法を用いて、前培養用のGAMを調製した。
(1−2)糖除去GAMの調製
実施例1の(1−2)と同様の方法を用いて、GAM糖除去培地を調製した。
(1−3)5(w/v)%糖溶液の調製
実施例1の(1−3)と同様の方法を用いて、5(w/v)%のGal−β1,4−Rha溶液を調製した。
(1−4)糖添加培地の調製
実施例1の(1−4)と同様の方法を用いて、1種類(Gal−β1,4−Rha含有)の0.5(w/v)%糖添加培地を調製した。
(1−5)クロストリジア測定用培地の調製
実施例2の(1−5)と同様の方法を用いて、クロストリジア測定用培地を調製した。
(2)糞便共存培養下におけるディフィシル毒素の産生抑制試験
(2−1)イムノクロマト法による試験
・C.difficile及びB.infantisの糞便共存培養
まず、C.difficile及びB.infantisについて、それぞれグリセロールストックからGAMプレートに滅菌した爪楊枝を用いて植菌及び画線し、37℃嫌気条件下で48時間培養した。次いで、C.difficileは1コロニーを、B.infantisは10コロニーを滅菌した爪楊枝を用いてバイアル瓶に入れた2mL GAMに植菌し、37℃嫌気条件下で24時間培養し、前培養液を得た。また、(1−4)で調製した0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地又は糖除去GAMを500μLずつ96ディープウェルプレートに分注した。ガス透過性のマイクロプレート用シールを貼り、アネロパックと共に密閉容器に入れた。
次いで、C.difficile及びB.infantisの前培養液を、GAMを用いて任意の倍率に希釈し、GAMをブランクとして波長600nmにおける吸光度を測定した。前培養液の吸光度がC.difficileについて0.5、B.infantisについて0.05となるように糖除去GAMを用いて希釈した。
次いで、採便シート(アトレータ社製、商品コード20−1100)と採便管(東洋器材科学社製、製品コード32600)とを用いて採便し、採便管のふたをゆるめた状態でアネロパックと共に密閉容器に入れ、運搬した。次いで、15mL容ファルコンチューブに糞便を適量とり、秤量した。次いで、嫌気チャンバー内でオートクレーブ及び嫌気処理済みPBSを用いて5倍希釈後、懸濁し、37℃、嫌気状態で2〜5時間インキュベートした。次いで、糞便5倍希釈液をオートクレーブ及び嫌気処理済みPBSを用いて任意の倍率に更に希釈し、PBSをブランクとして波長600nmにおける吸光度を測定した。得られた値を用いて糞便希釈液の吸光度が0.5となるようにPBSを用いて希釈した。
次いで、0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地又は糖除去GAMが500μLずつ分注された96ディープウェルプレートに、希釈したC.difficile及びB.infantisの前培養液10μLずつ植菌した。また、コントロールとして、糞便とC.difficileとの共存培養のウェルには、糖除去GAMが500μLずつ分注された96ディープウェルプレートに、希釈したC.difficileの前培養液を10μLずつ加えた。さらに、希釈した糞便溶液を10μLずつ植菌した。(C.difficileの初期濁度は0.01、B.infantisの初期濁度は0.001、糞便希釈液の初期濁度は0.01であった)。次いで、200μLに合わせた12連のピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。ガス透過性のマイクロプレート用シールを貼り、37℃嫌気条件下で24時間培養した。
・濁度の算出
次いで、96ディープウェルプレートを嫌気チャンバーから出し、各培養液を200μLに合わせたピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。培養液のうち20μLをとり、PBSを180μLずつ入れた96ウェルプレートに加えた。次いで、糖除去GAMをブランクとしてプレートリーダーで吸光度を測定した。また、水を添加した糖除去GAMにおいて糞便のみを植菌した培地について、PBSを用いて10倍希釈し、濁度を光路長1cmのキュベットを用いて測定した。マイクロプレートでの測定値を光路長1cmのキュベットでの値に換算できる定数を算出した。この定数を用いて24時間培養後の濁度を下記式[2]を用いて、算出した。
{(プレートの値)−(プレートのブランク)}×ファクター×10 [2]
・イムノクロマト法によるディフィシル毒素の検出
次いで、懸濁した培養液のうち400μLずつをエッペンチューブにとり、遠心(14,000rpm、5min)後、新しいエッペンチューブに上清をとった。これとクロストリジウム ディフィシルキット GEテスト イムノクロマト−CD TOX A/B「ニッスイ」(日水製薬社製、code07851)を用いて、ディフィシル毒素検出試験をキットの添付文書に従って行った。具体的には、まず、テストプレートと検体希釈液とを常温に戻し、検体希釈液に前記上清を50μL加えた。懸濁した後、試料ろ過フィルターを装着した。次いで、テストプレートの検体添加部に3滴添加し、20分間静置した。残った菌体及び上清は−80℃で保存した。結果を図3に示す。
図3から、糞便とC.difficileとの共存培養、並びに糞便とC.difficile及びB.infantisとの共存培養では、ディフィシル毒素が検出された。一方、糞便とC.difficile及びB.infantisとをGal−β1,4−Rha添加培地を用いて共存培養した場合では、ディフィシル毒素の検出量が大幅に減少していた。
(2−2)ELISA法による試験
・C.difficile及びB.infantisの糞便共存培養
3検体の糞便(糞便1〜3)を用いた以外は、上述の(2−1)の「イムノクロマト法による試験」の「・C.difficile及びB.infantisの糞便共存培養」と同様の方法を用いて、C.difficile及びB.infantisの糞便共存培養を行った。
・ELISA法によるディフィシル毒素の検出
次いで、96ディープウェルプレートを嫌気チャンバーから出し、ELISA法を用いてディフィシル毒素検出試験を行った。用いたキットはELISA for the simultaneous detection of Clostridium difficile toxin A and B in stool −For In Vitro Diagnostic Use−(tgcBIOMICS社製、Product Code:TGC−E001−1)であり、添付されていた取扱い説明書に従って試験を行った。具体的には、まず、ELISAキットを常温に戻した。次いで、エッペンチューブにdilution bufferを450μL入れた。次いで、各培養液を200μLに合わせたマルチピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。懸濁した培養液50μLずつをエッペンチューブに加え、ボルテックスミキサーで混合した。次いで、遠心(2500×g、5min)し、粒子を落とした。次いで、10×Wash buffer:滅菌水=9:1となるように混合し、希釈した。次いで、必要な分のウェルだけ(8単位ずつ)とり、残りのウェルはアルミバッグに戻した。
次いで、エッペンチューブの溶液、the toxin A/B positive control mix、又はdilution buffer(Negative Control)をそれぞれのウェルに100μLずつ入れた。次いで、それぞれのウェルにthe anti toxin A/B−HRP conjugateを50μLずつ入れ、室温で60分間インキュベートした。次いで、それぞれのウェルを希釈済みのwash bufferを200μLずつ入れて満たし、ごみ箱に向けて振り捨てた。さらにキムタオルに叩きつけ、液体を飛ばした。次いで、wash bufferを入れて捨てるこの操作をさらに4回繰り返すことで洗浄した。洗浄後、液体が完全になくなるまでキムタオルに叩きつけた。次いで、各ウェルにsubstrateを100μLずつ加え、優しくタップすることで混合し、室温で10分間インキュベートした。次いで、Stop reagentを50μLずつ加え、反応を停止させた。次いで、Stop solutionを加えることにより、色が青色から黄色へと変化した。これを、ブランクを空気として450nm及び620nmで吸光度を測定した。結果を図4に示す。
なお、残った各培養液をエッペンチューブに300μLずつとり、遠心(14,000 rpm、2min)し、上清を新しいエッペンチューブにとった。上清及び菌体は−80℃で保存した。
図4から、糞便1〜3において、糞便とC.difficileとの共存培養、並びに糞便とC.difficile及びB.infantisとの共存培養では、約80〜160mg/mLのディフィシル毒素が検出された。一方、糞便1〜3において、糞便とC.difficile及びB.infantisとをGal−β1,4−Rha添加培地を用いて共存培養した場合では、約20〜40mg/mLとディフィシル毒素の検出量が1/5〜1/4程度まで大幅に減少していた。
また、糞便1〜3において、糞便とC.difficileとをGal−β1,4−Rha添加培地を用いて共存培養した場合においても、ディフィシル毒素が約20〜100mg/mLと減少傾向が見られた。これは、個人差はあるものの被検体の糞便中に含まれるビフィズス菌がGal−β1,4−Rhaにより増殖することで、クロストリジウム・ディフィシルの増殖及びディフィシル毒素の産生が抑制されたためであると推察された。
以上のことから、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースは腸内常在菌及び悪玉菌に対して増殖促進効果を有さず、ビフィズス菌(特に、B.infantis)のみを特異的に増殖させることができ、さらに、該ビフィズス菌(特に、B.infantis)の増殖に伴い、クロストリジウム・ディフィシルの増殖及びディフィシル毒素の産生を抑制できることが確かめられた。
本発明によれば、腸内常在菌及び悪玉菌に対して増殖促進効果を有さず、プロバイオティクス細菌のみを特異的に増殖させることができるため、腸内細菌叢を効果的に改善させることができる。さらに、プロバイオティクス細菌の増殖に伴い、クロストリジウム・ディフィシルの増殖及びディフィシル毒素の産生を抑制できるため、効果的に偽膜性腸炎の予防又は治療することができる。

Claims (6)

  1. ガラクトシル−β−1,4−ラムノース有効成分として含有することを特徴とする腸内細菌叢改善剤。
  2. 請求項1に記載の腸内細菌叢改善剤、並びに薬学的に許容できる担体及び希釈剤のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする腸内細菌叢改善用の医薬組成物。
  3. 請求項1に記載の腸内細菌叢改善剤を含むことを特徴とする腸内細菌叢改善用の飲食品。
  4. ヒト以外の哺乳動物において、日和見菌及び悪玉菌の増殖を促進させず、ビフィズス菌を特異的に増殖促進させるための、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースの使用
  5. 前記ビフィズス菌がビフィドバクテリウム・インファンティスである請求項4に記載の使用
  6. クロストリジウム・ディフィシルを保菌するヒト以外の被検体にガラクトシル−β−1,4−ラムノース投与し、日和見菌及び悪玉菌の増殖を促進させず、ビフィズス菌を特異的に増殖促進させる、クロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法。
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