JP6886142B2 - 腸内細菌叢改善剤及びその使用 - Google Patents
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Description
例えば、偽膜性腸炎患者の腸管内ではクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile;C.difficile)が異常増殖し、ディフィシル毒素を盛んに放出して炎症を誘発している。偽膜性腸炎は近年増加している疾患であるが、抗生剤が効果を示さないケースも多く、健常成人の糞便をカテーテル経由で十二指腸に注入する糞便移植が最も効果的な治療法である。
[1]ガラクトシル−β−1,4−ラムノースを有効成分として含有することを特徴とする腸内細菌叢改善剤。
[2][1]に記載の腸内細菌叢改善剤、並びに薬学的に許容できる担体及び希釈剤のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする腸内細菌叢改善用の医薬組成物。
[3][1]に記載の腸内細菌叢改善剤を含むことを特徴とする腸内細菌叢改善用の飲食品。
[4]ヒト以外の哺乳動物において、日和見菌及び悪玉菌の増殖を促進させず、ビフィズス菌を特異的に増殖促進させるための、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースの使用。
[5]前記ビフィズス菌がビフィドバクテリウム・インファンティスである[4]に記載の使用。
[6]クロストリジウム・ディフィシルを保菌するヒト以外の被検体にガラクトシル−β−1,4−ラムノースを投与し、日和見菌及び悪玉菌の増殖を促進させず、ビフィズス菌を特異的に増殖促進させる、クロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法。
一実施形態において、本発明は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩(以下、「ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類」と称する場合がある。)を有効成分として含有する腸内細菌叢改善剤を提供する。
これに対して腸内に存在する悪玉菌としては、例えば、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、有毒株である大腸菌(例えば、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌(例えば、O1、O18、O26、O111、O128、O157等)の腸管内病原性大腸菌等)、クロストリジウム・ディフィシル等が挙げられる。これらの細菌が異常増殖し、腸内細菌叢のバランスが破綻した場合に、様々な疾病が発生する。
さらに、腸内細菌叢の多くを占める常在菌(日和見菌とも呼ばれる)、すなわち、バクテロイデス(Bacteroides)属細菌や、非病原性のクロストリジウム(Clostridium)属細菌はその宿主へ及ぼす影響が不明であり、腸内において豊富とは言えない栄養源を善玉菌と奪い合う競争関係にあることから、善玉菌の増殖には負の効果を持つと考えられる。
本明細書における「腸内細菌叢改善」とは、悪玉菌、日和見菌を増殖させず、善玉菌を特異的に増殖させることで、善玉菌優勢の腸内細菌叢を実現することを意味する。これにより悪玉菌の宿主への悪影響を抑制することで、疾病の改善及び健康増進が期待される。
また、「プロバイオティクス」とは、微生物細胞の調製物(例えば、生存している微生物細胞等)又は微生物細胞の成分であり、有効量で投与される際に対象の健康又は健康状態(well−being)への有益な作用を提供することができるものを意味する。
本明細書における「プロバイオティクス」は、非病原性のものを示す。プロバイオティクスの健康上の利点は、消化管におけるヒト又は非ヒト動物の微生物叢の均衡の改善、及び/又は正常な微生物叢の回復に関連する点が挙げられる。
ガラクトシル−β−1,4−ラムノースは、L−ラムノースの4位水酸基にβ−D−ガラクトピラノースがグリコシド結合した構造の二糖である (CAS番号:52482−68‐5) 。
酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸等の無機酸との塩;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸との塩等が挙げられる。
塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基との塩;カフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジン等の有機塩基との塩等が挙げられる。
治療対象としては、特別な限定はなく、例えば、ヒト又はヒト以外の哺乳動物(例えば、サル、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ウマ、ウシ等)が挙げられ、中でも、ヒトが好ましい。
ガラクトシル−β−1,4−ラムノースは、植物の細胞壁に存在する多糖であるラムノガラクツロナンI(ペクチンの一種)、又は乳酸菌等の微生物の菌体外多糖の構成要素として存在するが、植物又は乳酸菌等の微生物から大量に抽出及び分離することが難しかった。
しかしながら、本発明者らによって開発された、スクロースとL−ラムノースを原料とし、4種の酵素を組み合わせた複合酵素反応によりガラクトシル−β−1,4−ラムノースを大量に合成し得ることができる(参考文献:Nakajima M., et al., “Practical Preparation of D-Galactosyl-β1→4-Lrhamnose Employing the Combined Action of Phosphorylases”, Biosci. Biotechnol. Biochem., vol.74, no.8, p1652-1655, 2010.)。
具体的には、まずスクロースをスクロースホスホリラーゼ(第1の酵素)により加リン酸分解し、フラクトース及びグルコース1リン酸に分解する(第1の酵素反応)。次いで、得られたαグルコース1リン酸及びUDP−ガラクトースをUDP−グルコース−ヘキソース1リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(第2の酵素)の転移反応により、αガラクトース1リン酸及びUDP−グルコースに変換する(第2の酵素反応)。また、得られたUDP−グルコースはUDP−グルコース4−エピメラーゼ(第3の酵素)によりUDP−ガラクトースに変換させて(第3の酵素反応)、前記第2の酵素反応に再利用することができる。次いで、得られたガラクトース1リン酸及びL−ラムノースをガラクトシル−β−1,4−ラムノースホスホリラーゼ(第4の酵素)によりガラクトシル−β−1,4−ラムノースを製造することができる(第4の酵素反応)。4種の酵素反応を同じ反応液中で同時に行うと、触媒量のリン酸およびUDP−グルコース存在下にスクロース及びL−ラムノースを原料としてガラクトシル−β−1,4−ラムノースを生成させることができる。
本実施形態の腸内細菌叢改善剤は、例えば、後述に記載のとおり、腸内細菌叢改善用の医薬組成物、飲食品等に用いることができる。また、本実施形態の腸内細菌叢改善剤は、例えば、培地、又は培養用製剤等に用いることができる。本実施形態の腸内細菌叢改善剤を含む培養用製剤を培地に添加する、又は本実施形態の腸内細菌叢改善剤を含む培地を用いてプロバイオティクス細菌(好ましくは、ビフィズス菌)を培養することにより、効果的にプロバイオティクス細菌の増殖を促進することができる。
一実施形態において、本発明は、上述の腸内細菌叢改善剤、並びに薬学的に許容できる担体及び希釈剤のうち少なくともいずれかを含む腸内細菌叢改善用の医薬組成物を提供する。
従来の偽膜性腸炎の治療方法としては、例えば、クロストリジウム・ディフィシルに有効な抗生物質(例えば、バンコマイシン、メトロニダゾール等)の投与、又はカテーテル経由で十二指腸に注入する糞便移植等が挙げられる。バンコマイシンの投与では、バンコマイシン耐性菌株の出現の可能性があり、またメトロニダゾール投与では、嘔気、金属味、神経症状等の副作用が生じる虞がある。また、糞便移植では、素性の明らかでない常在菌が殆どを占める糞便の移植に伴い、肥満となった例が報告される他、心理的抵抗の存在などの問題が多い。
これに対し、本実施形態の医薬組成物によれば、後述の実施例に示すとおり、善玉菌(特に、ビフィズス菌)の増殖を促進することで、クロストリジウム・ディフィシルの増殖を抑制し、さらに、クロストリジウム・ディフィシルの毒素の産生を抑制することができるため、偽膜性腸炎を効果的に予防又は治療することができる。
本実施形態の医薬組成物は、被検動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)の年齢、性別、体重、症状、治療方法、投与方法、処理時間等を勘案して適宜調節される。
本実施形態の医薬組成物に含まれるガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の投与量は、症状又は適用する疾患に応じて適宜調整すればよく、例えば、経口投与の場合、一般の成人(体重60kgとして)においては、1日あたり500mg以上15g以下であればよく、1g以上10g以下であることが好ましい。
投与形態としては、例えば、経腸的、または経口的に当業者に公知の方法が挙げられ、経口的投与が好ましい。
本実施形態の医薬組成物は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の他に、薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含んでいてもよい。
薬学的に許容されうる担体又は希釈剤は、賦形剤、稀釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味料、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、添加剤等が挙げられる。これら担体の1種以上を用いることにより、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、又はシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。
また、担体としてコロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の生体内安定性を高める効果や、特定の臓器、組織、又は細胞へ、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の移行性を高める効果が期待される。コロイド分散系としては、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル、リポソームを包含する脂質を挙げることができ、腸内へ、有効成分を効率的に輸送する効果のある、リポソームや人工膜の小胞が好ましい。
さらには、薬理学上許容される担体又は希釈剤、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化されたものが挙げられる。
本発明の一側面は、腸内細菌叢改善のための上述の腸内細菌叢改善剤を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、治療的に有効量の上述の腸内細菌叢改善剤、並びに薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、前記医薬組成物を含む、腸内細菌叢改善剤を提供する。
また、本発明の一側面は、腸内細菌叢改善用の治療剤を製造するための腸内細菌叢改善剤の使用を提供する。
また、本発明の一側面は、上述の腸内細菌叢改善剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、腸内細菌叢改善のための治療方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、上述の腸内細菌叢改善剤を含む飲食品を提供する。
飲食品の種類としては、具体的には、清涼飲料(例えば、ミネラルウォーター、炭酸飲料、栄養飲料、スポーツドリンク、ココア飲料、果実飲料、乳飲料(乳児用調製粉乳、乳幼児用液体ミルクを含む。)、コーヒー飲料、茶系飲料、豆乳飲料、野菜飲料、アルコールテイスト飲料(例えば、ノンアルコールビール、ノンアルコールワイン等))、アルコール飲料(例えば、ビール、発泡酒、カクテル、チューハイ、焼酎、日本酒、ウィスキー、ブランデー、ワイン等)等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、スパゲッティ、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、グミ、ガム、キャラメル、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット等の焼き菓子、ゼリー、ジャム、クリーム等の菓子類;かまぼこ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産又は畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、カレー、パン、ジャム、サラダ、惣菜、漬物等が挙げられ、これらに限定はされない。
一実施形態において、本発明は、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩を投与するビフィズス菌の増殖促進方法を提供する。
増殖が促進されるビフィズス菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum;B.bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロングム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(B.lactis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)等が挙げられ、これらに限定されない。
中でも、ビフィズス菌としては、ビフィドバクテリウム・インファンティスが好ましい。ビフィドバクテリウム・インファンティスは乳幼児の腸内に存在するビフィズス菌であるため、例えば、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類を乳幼児用調製粉乳、又は乳幼児用液体ミルクに配合し、乳幼児に投与することで、ビフィドバクテリウム・インファンティスの増殖を効果的に促進することができる。
また、投与回数及び投与形態についても、上述の≪腸内細菌叢改善用の医薬組成物≫に例示されたものと同様のものが挙げられる。
ガラクトシル−β−1,4−ラムノース類の培地に含まれる濃度が上記範囲であることにより、効率的にビフィズス菌の増殖を促進させることができる。
また、ビフィズス菌の培養条件としては、嫌気条件下であることが好ましく、例えば、静置培養、振盪培養、又は攪拌培養等により培養を行えばよい。
培養温度は、例えば20℃以上40℃以下であればよい。
一実施形態において、本発明は、クロストリジウム・ディフィシルを保菌する被検体にガラクトシル−β−1,4−ラムノース若しくはその類縁体、又はそれらの薬学的に許容できる塩を投与するクロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法を提供する。
また、投与回数及び投与形態についても、上述の≪腸内細菌叢改善用の医薬組成物≫に例示されたものと同様のものが挙げられる。
(1)培地の調製
(1−1)Gifu Anaerobic Medium(GAM)(前培養用培地)の調製
GAMブイヨン(ニッスイ社製)と脱塩水とを混合してスターラーでよく溶かしてから、GAMブイヨンが5.9(w/v)%になるように脱塩水でメスアップした。次いで、前記5.9(w/v)%のGAMを1mLずつ4mL容バイアル瓶に分注し、その後115℃で15分間オートクレーブした。蓋は半開きのまま素早く、嫌気条件下のアネロパック角型ジャー(三菱ガス化学社製)に入れ、終夜放置し、前培養用のGAMを調製した。
次いで、GAM糖分解用半流動培地(ニッスイ社製)26.25gと、約100mLの脱塩水とをスターラーバーを入れた200mL容ビーカーに加え、脱塩水を200mL程度まで加えながら撹拌し、粉末を溶解させた。その後、寒天を除くために、ろ紙を用いてろ過した。この際、ビーカーに残った液を洗いこむようにした。ろ液を脱塩水で450mLにメスアップし、耐熱性瓶に入れ、115℃で15分間オートクレーブした。蓋は半開きのまま素早く、嫌気条件下のアネロパック角型ジャーに入れ、終夜放置し、GAM糖除去培地を調製した。
糖として、ガラクトシル−β−1,4−ラムノース(以下、「Gal−β1,4−Rha」と称する場合がある。)(公知の文献(参考文献:Nakajima M., et al., “Practical Preparation of D-Galactosyl-β1→4-Lrhamnose Employing the Combined Action of Phosphorylases”, Biosci. Biotechnol. Biochem., vol.74, no.8, p1652-1655, 2010.)を元に製造したものを使用。)、及びラクチュロース(以下、「Lat」と称する場合がある。)(和光純薬社製)を用いた。
次いで、耐熱性瓶にMilliQ水を入れ、オートクレーブ(121度、20分)した。次いで、オートクレーブ内の温度が97℃まで下がったら直ちに、アネロパックと共に密閉容器に入れ、終夜放置し、酸素を除去した。次いで、各糖をエッペンチューブに50mgずつ秤量し、嫌気チャンバー内でオートクレーブしたMilliQ水を加え、全量を1mLとした。次いで、ボルテックスミサーで溶解後、新しいエッペンチューブを用意し、0.22μmのフィルター(Merck Millipore社製、カタログ番号:SLGV033RS)と1mL用シリンジ(テルモ社製、コード番号:SS−01T)とを用いてフィルトレーションし、5(w/v)%の2種類の糖溶液を調製した。
嫌気チャンバー(Baker Ruskinn社製、InvivO2)内で(窒素雰囲気下、酸素1%以内)、(1−2)で調製し糖除去GAM36mLに5%糖溶液を各4mLずつ加え、2種類(Gal−β1,4−Rha、又はLat含有)の0.5(w/v)%糖添加培地を調製した。
本試験で用いた菌種は以下のとおりである。
・ヒト腸内常在菌最優勢種
Bacteroides thetaiotaomicron
Bacteroides uniformis
Bacteroides vulgatus
Parabacteroides distasonis
Parabacteroides ovatus
Coprococcus comes
Ruminococcus torques
Ruminococcus lactalis
Collinsella aerofaciens
Eubacterium ventriosum
Eubacterium siraeum
Roseburia intestinalis
Clostridium coccoides
・ガス壊疽菌
Clostridium perfringens
・乳酸菌
Leuconostoc mesenteroides
Lactobacillus casei
Lactobacillus rhamnosus
Lactobacillus gasseri
Lactobacillus johnsonii
Lactobacillus plantarum
Lactococcus lactis
Lactobacillus reuteri
・ビフィズス菌
Bifidobacterium bifidum
Bifidobacterium longum subsp. infantis
Bifidobacterium longum
Bifidobacterium breve
Bifidobacterium pseudolongum
Bifidobacterium adolescentis
Bifidobacterium lactis
Bifidobacterium catenulatum
また、図1(B)から、Latを含む培地による培養では、ビフィズス菌だけでなく、ヒト腸内常在菌の最優勢種、ガス壊疽菌、及び乳酸菌いずれにおいても、増殖促進倍率が2倍以上となる菌種も存在し、全ての菌においてLatが資化されることで増殖が促進されることが確かめられた。
なお、Gal−β1,4−Rhaは、ガラクトースとラムノースとがβ1,4結合した二糖である。一方、Latは、ガラクトースとフルクトースとがβ1,4結合した二糖である。上記のように、構造が非常に近しい二糖であっても、結合する単糖の種類が異なることで、腸内細菌における資化性が異なることが示唆された。
以上のことから、Gal−β1,4−Rhaは腸内常在菌及び悪玉菌に対して増殖促進効果を有さず、プロバイオティクス細菌のみを特異的に増殖させることができるため、腸内細菌叢を効果的に改善させることができることが示唆された。
(1)培地の調製
(1−1)Gifu Anaerobic Medium(GAM)(前培養用培地)の調製
実施例1の(1−1)と同様の方法を用いて、前培養用のGAMを調製した。
実施例1の(1−2)と同様の方法を用いて、GAM糖除去培地を調製した。
実施例1の(1−3)と同様の方法を用いて、5(w/v)%のGal−β1,4−Rha溶液を調製した。
実施例1の(1−4)と同様の方法を用いて、1種類(Gal−β1,4−Rha含有)の0.5(w/v)%糖添加培地を調製した。
クロストリジア測定用培地(日水製薬社製、コード番号:05409)14.06gと200mLのElix水とをスターラーバーを入れた500mL容三角フラスコに加えた。スターラーで攪拌して溶解後、オートクレーブ(121℃、15分)した。次いで、クリーンベンチ内でシャーレ10枚に分注した。40分間乾燥後、アネロパックと共に密閉し、4℃で保存し、クロストリジア測定用培地を調製した。
(2−1)クロストリジウム・ディフィシル及びビフィドバクテリウム・インファンティスの共培養
まず、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile;C.difficile)及びビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis;B.infantis)について、それぞれグリセロールストックからGAMプレートに滅菌した爪楊枝を用いて植菌及び画線し、37℃嫌気条件下で48時間以上培養した。次いで、C.difficileは1コロニーを、B.infantisは10コロニーを滅菌した爪楊枝を用いてバイアル瓶に入れた2mLGAMに植菌し、37℃嫌気条件下で26時間培養し、前培養液を得た。次いで、96ディープウェルプレートに(1−4)で調製した0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地、又はコントロールとして(1−2)で調製した糖除去GAMを500μLずつ入れた。次いで、C.difficile及びB.infantisの前培養液を、GAMを用いて任意の倍率に希釈し、GAMをブランクとして波長600nmにおける吸光度を測定した。得られた値を用いて前培養液の吸光度がC.difficileについて0.5、B.infantisについて0.05となるように糖除去GAMを用いて希釈した。次いで、0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地又は糖除去GAMが分注された96ディープウェルプレートに、希釈したC.difficile及びB.infantisの前培養液を10μLずつ植菌した(C.difficileの初期濁度は0.01、B.infantisの初期濁度は0.001であった)。また、コントロールとして、単菌培養(C.difficileのみ)のウェルには、0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地又は糖除去GAMが分注された96ディープウェルプレートに、希釈したC.difficileの前培養液を10μLずつ加えた。200μLにあわせた12連のピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。ガス透過性のマイクロプレート用シール(4titude、Product Code 4ti−0516/96)を貼り、37℃嫌気条件下で培養を開始した。
次いで、共培養用又は単培養用溶液中の各菌種の菌数を調べる目的で、以下の操作を本培養開始から0時間、17時間、23時間、及び47時間後に行った。
まず、96ウェル滅菌プレートにオートクレーブ及び嫌気処理済みのPBSを180μLずつ入れた。次いで、(2−1)で培養した共培養又は単培養用培養液を200μLにあわせた12連のピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。次いで、共培養又は単培養用培養液を20μLずつとり、96ウェル滅菌プレートに用意しておいたPBSに加えた。次いで、150μLにあわせた12連のピペットマンで10回ピペッティングすることで希釈及び懸濁した。共培養又は単培養用培養液の希釈液をさらに20μLずつとり、PBS 180μLに加え、同様に希釈及び懸濁を行った。この操作を繰り返すことにより、段階希釈を行った。予め滅菌済みビーズ(ニッポンジーン社製、Code No.314−06251)7個を入れておいたクロストリジア測定用培地にそれぞれの希釈液を50μLずつ添加した。1分間プレートを振り、移動するビーズを利用して希釈液を塗布した。次いで、希釈液を塗布したプレートをパウチ(三菱ガス化学社製、品番A−98)にアネロパックと共に密閉し、37℃インキュベーターに入れ、48時間以上培養した。次いで、C.difficile及びB.infantis、それぞれのコロニー数をカウントした。得られたコロニー数について、下記式[1]を用いて、培養液1mLあたりのコロニー数を算出した。結果を図2に示す。図2において、「Gal−Rha」とは、Gal−β1,4−Rhaを添加した培地を用いたことを意味する。
培養液1mLあたりのコロニー数=50μLあたりのコロニー数×希釈倍率×20 [1]
なお、47時間後の共培養又は単培養用培養液を塗布後、残った共培養又は単培養用培養液をエッペンチューブにとり、遠心(14,000rpm、2min)後、上清200μLを新しいエッペンチューブに取り、−25℃で保存した。
これに対し、0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地を用いてC.difficile及びB.infantisを共培養した場合では、培養17時間時間後から、顕著なC.difficileの増殖抑制効果が見られた。これは、培地に含まれるGal−β1,4−RhaがB.infantisのみによって資化され、B.infantisの増殖が促進されることによって、C.difficileの増殖が抑制されたためであると推測される。
(1)培地の調製
(1−1)Gifu Anaerobic Medium(GAM)(前培養用培地)の調製
実施例1の(1−1)と同様の方法を用いて、前培養用のGAMを調製した。
実施例1の(1−2)と同様の方法を用いて、GAM糖除去培地を調製した。
実施例1の(1−3)と同様の方法を用いて、5(w/v)%のGal−β1,4−Rha溶液を調製した。
実施例1の(1−4)と同様の方法を用いて、1種類(Gal−β1,4−Rha含有)の0.5(w/v)%糖添加培地を調製した。
実施例2の(1−5)と同様の方法を用いて、クロストリジア測定用培地を調製した。
(2−1)イムノクロマト法による試験
・C.difficile及びB.infantisの糞便共存培養
まず、C.difficile及びB.infantisについて、それぞれグリセロールストックからGAMプレートに滅菌した爪楊枝を用いて植菌及び画線し、37℃嫌気条件下で48時間培養した。次いで、C.difficileは1コロニーを、B.infantisは10コロニーを滅菌した爪楊枝を用いてバイアル瓶に入れた2mL GAMに植菌し、37℃嫌気条件下で24時間培養し、前培養液を得た。また、(1−4)で調製した0.5(w/v)%糖(Gal−β1,4−Rha)添加培地又は糖除去GAMを500μLずつ96ディープウェルプレートに分注した。ガス透過性のマイクロプレート用シールを貼り、アネロパックと共に密閉容器に入れた。
次いで、C.difficile及びB.infantisの前培養液を、GAMを用いて任意の倍率に希釈し、GAMをブランクとして波長600nmにおける吸光度を測定した。前培養液の吸光度がC.difficileについて0.5、B.infantisについて0.05となるように糖除去GAMを用いて希釈した。
次いで、96ディープウェルプレートを嫌気チャンバーから出し、各培養液を200μLに合わせたピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。培養液のうち20μLをとり、PBSを180μLずつ入れた96ウェルプレートに加えた。次いで、糖除去GAMをブランクとしてプレートリーダーで吸光度を測定した。また、水を添加した糖除去GAMにおいて糞便のみを植菌した培地について、PBSを用いて10倍希釈し、濁度を光路長1cmのキュベットを用いて測定した。マイクロプレートでの測定値を光路長1cmのキュベットでの値に換算できる定数を算出した。この定数を用いて24時間培養後の濁度を下記式[2]を用いて、算出した。
{(プレートの値)−(プレートのブランク)}×ファクター×10 [2]
次いで、懸濁した培養液のうち400μLずつをエッペンチューブにとり、遠心(14,000rpm、5min)後、新しいエッペンチューブに上清をとった。これとクロストリジウム ディフィシルキット GEテスト イムノクロマト−CD TOX A/B「ニッスイ」(日水製薬社製、code07851)を用いて、ディフィシル毒素検出試験をキットの添付文書に従って行った。具体的には、まず、テストプレートと検体希釈液とを常温に戻し、検体希釈液に前記上清を50μL加えた。懸濁した後、試料ろ過フィルターを装着した。次いで、テストプレートの検体添加部に3滴添加し、20分間静置した。残った菌体及び上清は−80℃で保存した。結果を図3に示す。
・C.difficile及びB.infantisの糞便共存培養
3検体の糞便(糞便1〜3)を用いた以外は、上述の(2−1)の「イムノクロマト法による試験」の「・C.difficile及びB.infantisの糞便共存培養」と同様の方法を用いて、C.difficile及びB.infantisの糞便共存培養を行った。
次いで、96ディープウェルプレートを嫌気チャンバーから出し、ELISA法を用いてディフィシル毒素検出試験を行った。用いたキットはELISA for the simultaneous detection of Clostridium difficile toxin A and B in stool −For In Vitro Diagnostic Use−(tgcBIOMICS社製、Product Code:TGC−E001−1)であり、添付されていた取扱い説明書に従って試験を行った。具体的には、まず、ELISAキットを常温に戻した。次いで、エッペンチューブにdilution bufferを450μL入れた。次いで、各培養液を200μLに合わせたマルチピペットマンで20回ピペッティングし、懸濁した。懸濁した培養液50μLずつをエッペンチューブに加え、ボルテックスミキサーで混合した。次いで、遠心(2500×g、5min)し、粒子を落とした。次いで、10×Wash buffer:滅菌水=9:1となるように混合し、希釈した。次いで、必要な分のウェルだけ(8単位ずつ)とり、残りのウェルはアルミバッグに戻した。
なお、残った各培養液をエッペンチューブに300μLずつとり、遠心(14,000 rpm、2min)し、上清を新しいエッペンチューブにとった。上清及び菌体は−80℃で保存した。
また、糞便1〜3において、糞便とC.difficileとをGal−β1,4−Rha添加培地を用いて共存培養した場合においても、ディフィシル毒素が約20〜100mg/mLと減少傾向が見られた。これは、個人差はあるものの被検体の糞便中に含まれるビフィズス菌がGal−β1,4−Rhaにより増殖することで、クロストリジウム・ディフィシルの増殖及びディフィシル毒素の産生が抑制されたためであると推察された。
以上のことから、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースは腸内常在菌及び悪玉菌に対して増殖促進効果を有さず、ビフィズス菌(特に、B.infantis)のみを特異的に増殖させることができ、さらに、該ビフィズス菌(特に、B.infantis)の増殖に伴い、クロストリジウム・ディフィシルの増殖及びディフィシル毒素の産生を抑制できることが確かめられた。
Claims (6)
- ガラクトシル−β−1,4−ラムノースを有効成分として含有することを特徴とする腸内細菌叢改善剤。
- 請求項1に記載の腸内細菌叢改善剤、並びに薬学的に許容できる担体及び希釈剤のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする腸内細菌叢改善用の医薬組成物。
- 請求項1に記載の腸内細菌叢改善剤を含むことを特徴とする腸内細菌叢改善用の飲食品。
- ヒト以外の哺乳動物において、日和見菌及び悪玉菌の増殖を促進させず、ビフィズス菌を特異的に増殖促進させるための、ガラクトシル−β−1,4−ラムノースの使用。
- 前記ビフィズス菌がビフィドバクテリウム・インファンティスである請求項4に記載の使用。
- クロストリジウム・ディフィシルを保菌するヒト以外の被検体にガラクトシル−β−1,4−ラムノースを投与し、日和見菌及び悪玉菌の増殖を促進させず、ビフィズス菌を特異的に増殖促進させる、クロストリジウム・ディフィシルの増殖抑制方法。
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