下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」は、フィルムや板とも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。
以下、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シート、裏面保護シートロール体および太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
A.太陽電池モジュール用裏面保護シート
本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートは、基材と、上記基材の一方の面に直接配置された耐候性樹脂層と、上記基材の他方の面に直接配置され、ワックスを含有する易接着層と、を有する。
図1は、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シート1は、基材2と、基材2の一方の面に直接配置された耐候性樹脂層3と、基材2の他方の面に直接配置され、ワックスを含有する易接着層4と、を有する。
ここで、基材の一方の面に直接配置された耐候性樹脂層とは、耐候性樹脂層が、基材に接するように基材の直上に配置されていることをいう。
また、基材の他方の面に直接配置された易接着層とは、易接着層が、基材に接するように基材の直下に配置されていることをいう。
本開示においては、上述したように、耐候性樹脂層は基材の一方の面に直接配置されており、易接着層は基材の他方の面に直接配置されており、耐候性樹脂層および易接着層はいずれもコーティングにより形成されたコーティング膜である。耐候性樹脂層および易接着層がいずれもコーティング膜である場合、太陽電池モジュール用裏面保護シートをロール・ツー・ロール方式の製造ラインにて製造する場合において、ロール体の状態としたときに、易接着層と耐候性樹脂層との間でブロッキングが生じやすいことが懸念される。これに対して、本開示においては、易接着層にワックスが含有されていることにより、太陽電池モジュール用裏面保護シートをロール体の状態としたときの、易接着層と耐候性樹脂層との間でのブロッキングを抑制することができる。
また、本開示においては、耐候性樹脂層ではなく、易接着層にワックスを含有させるため、耐候性樹脂層の性能を損なうことなく、易接着層と耐候性樹脂層との間の耐ブロッキング性を向上させることができる。
さらに、本開示においては、ブロッキング防止剤としてワックスを用いるため、従来のようにブロッキング防止剤としてフィラーを用いる場合と比較して、太陽電池モジュール用裏面保護シートのヘーズを低くして透明性を高めることができる。そのため、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合には、太陽電池モジュールの発電効率を向上させることができる。
なお、例えば特許文献2には、基材樹脂層と、紫外線吸収剤を含有する耐光接着剤層と、耐候性フィルムとをこの順に有する太陽電池モジュール用保護シートにおいて、太陽電池モジュール用保護シートをロール・ツー・ロール方式の製造ラインにて製造する場合に、ロール体の状態としたときに、耐光接着剤層に含まれる紫外線吸収剤が耐候性フィルムにブリーディングすることで、斑状のむらが発生し意匠性が低くなることを防ぐために、基材樹脂層の耐光接着剤層と反対側の面に配置される易接着層にワックスを含有させることが開示されている。特許文献2によれば、易接着層にワックスを含有させて、易接着層の滑り性を良くすることで、太陽電池モジュール用保護シートをロール体の状態としたときに、耐候性フィルムを適切に滑らせて、耐候性フィルムにかかる圧力を均等に分散させ、斑状のむらの発生を防ぐことができるとされている。また、特許文献2において、耐候性フィルムはフッ素系フィルムであり、太陽電池モジュール用保護シートをロール体の状態としたときに、通常、フッ素系フィルムにはブロッキングが生じない。このように、引用文献2において、易接着層にワックスを含有させるのは、易接着層の滑り性を良くするためであり、易接着層と耐候性フィルムとの間のブロッキングを抑制することは想定されていない。
以下、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートの構成について説明する。
1.易接着層
本開示における易接着層は、基材の他方の面に直接配置され、ワックスを含有する部材である。易接着層は、いわゆるプライマー層であり、太陽電池モジュールにおいて、裏面封止材に対する裏面保護シートの接着性を向上させる機能を有する層である。
上記易接着層は、透明性を有することが好ましい。本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートが、例えばシースルータイプまたは両面採光タイプの太陽電池モジュールに用いられる透明タイプの裏面保護シートである場合、上記易接着層は透明性を有する。
上記易接着層の透明性としては、例えば、上記易接着層が可視光線領域および近赤外線領域の光線を透過することができることが好ましい。本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合に、可視光線領域だけでなく近赤外線領域の光線も発電に利用することができ、発電効率を高めることができる。また、易接着層が近赤外線を吸収することによって太陽電池モジュールの温度が上昇し、その結果、太陽電池モジュールの発電効率が低下するのを抑制することができる。
上記易接着層は、通常、樹脂およびワックスを含有する。
上記易接着層に含有される樹脂としては、一般的に太陽電池モジュールにおける裏面封止材と裏面保護シートとの接着性を向上させるために用いられるプライマー組成物に含まれるベース樹脂を用いることができる。上記易接着層が透明性を有する場合には、上記樹脂としては、上記プライマー組成物に含まれるベース樹脂の中でも、透明性を有する易接着層を得ることが可能なベース樹脂を用いることができる。上記樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂及びその架橋体、ウレタン樹脂、架橋樹脂等が挙げられる。
中でも、上記樹脂は、オレフィン系樹脂及びその架橋体であることが好ましい。オレフィン系樹脂及びその架橋体は、太陽電池モジュールにおける裏面封止材との接着性に優れるからである。特に、太陽電池モジュールにおける裏面封止材がオレフィン系樹脂を含有する場合、易接着層に含有されるオレフィン系樹脂又はその架橋体は裏面封止材に含有されるオレフィン系樹脂との相溶性に優れるため、優れた接着性を得ることができる。
上記オレフィン系樹脂及びその架橋体としては、太陽電池モジュールにおける裏面封止材に対する裏面保護シートの接着性を向上させることができるものであれば特に限定されないが、中でも、酸変性ポリオレフィン樹脂及びその架橋体であることが好ましい。例えば、太陽電池モジュールにおける裏面封止材がオレフィン系樹脂を含有する場合、易接着層が酸変性ポリオレフィン樹脂又はその架橋体を含有することにより、太陽電池モジュールにおける裏面封止材に対する接着性に優れた易接着層とすることができる。なお、例えば、太陽電池モジュール用裏面保護シートにおける基材がポリエステル系樹脂を含有し、太陽電池モジュールにおける裏面封止材がオレフィン系樹脂を含有する場合において、易接着層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する場合に、太陽電池モジュール用裏面保護シートにおける基材と太陽電池モジュールにおける裏面封止材との間の接着性を顕著に向上させることができることは、例えば、特開2013−74172号公報の記載からも明らかである。また、酸変性ポリオレフィン樹脂の架橋体は、後述するように酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋剤によって架橋されたものであり、易接着層を強固にすることができる。
上記酸変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸またはその誘導体で酸変性してなるものであり、オレフィン成分と、不飽和カルボン酸成分とを含む。
上記酸変性ポリオレフィン樹脂の主成分であるオレフィン成分としては、特に限定されないが、中でも、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2以上6以下のオレフィンであることが好ましい。また、上記オレフィン成分は、上記オレフィンの混合物であってもよい。
また、上記酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸や、これらの不飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、酸無水物、エステル等が挙げられる。具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸エチル等のマレイン酸エステル等が挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはこれらの誘導体であることが好ましい。
上記酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれる上記不飽和カルボン酸成分の含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。上記不飽和カルボン酸成分の含有量が少なすぎると、易接着層の形成に用いられる易接着層用組成物において、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体(エマルション)を用いる場合に、酸変性ポリオレフィン樹脂の分散性が不十分となる場合がある。また、上記不飽和カルボン酸成分の含有量が多すぎると、例えば、太陽電池モジュールにおける裏面封止材がオレフィン系樹脂を含有する場合に、太陽電池モジュールにおける裏面封止材に対する易接着層の接着性が低下したり、易接着層の耐水性が低下したりするおそれがある。
上記酸変性ポリオレフィン樹脂として、具体的には、エチレン−アクリル酸ブチル−(無水)マレイン酸共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体等を用いることができる。中でも、上記酸変性ポリオレフィン樹脂としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体、あるいはそれらの混合物を好ましく用いることができる。
上記酸変性ポリオレフィン樹脂は、JIS K7210に準拠して測定した190℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレイト(MFR)が0.01g/10min以上100g/10min未満であることが好ましい。このような酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることにより、易接着層の形成に用いられる易接着層用組成物において、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体(エマルション)を用いる場合に、酸変性ポリオレフィンの良好な分散性を保持することができる。
特に、上記樹脂は、上記酸変性ポリオレフィン樹脂の架橋体であることが好ましい。これにより、易接着層に良好な接着性および耐久性を付与することができる。
上記酸変性ポリオレフィン樹脂の架橋体は、上記酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋剤により架橋されたものである。上記架橋剤としては、上記酸変性ポリオレフィン樹脂を架橋することができれば特に限定されるものではなく、例えば、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。中でも、オキサゾリン化合物が好ましい。
また、上記架橋樹脂は、架橋性樹脂が硬化剤により架橋されたものである。上記架橋樹脂としては、例えば、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂、架橋フッ素樹脂、架橋ビニル樹脂、架橋オレフィン樹脂等が挙げられる。
上記架橋樹脂に用いられる架橋性樹脂としては、溶剤に溶解または分散可能なものであればよく、例えば、架橋性置換基含有アクリル樹脂、架橋性置換基含有ウレタン樹脂、架橋性置換基含有フッ素樹脂、架橋性置換基含有ビニル樹脂、架橋性置換基含有オレフィン樹脂等を挙げることができる。上記架橋性置換基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。中でも、上記架橋性置換基は、入手性および架橋反応性の観点から、水酸基であることが好ましい。
上記架橋樹脂に用いられる硬化剤としては、上記架橋性置換基と反応して上記架橋性樹脂を架橋することが可能なものであればよく、例えば、ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
また、上記易接着層に含有されるワックスとしては、ブロッキング防止剤として機能し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろう等の植物ワックス;セラックワックス、ラノリンワックス等の動物ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス等を用いることができる。
中でも、上記ワックスとしては、木ろう、パラフィンワックス等が好ましい。これらのワックスは白色または淡い琥珀色を有するため、太陽電池モジュール用裏面保護シートの透過率や、太陽電池モジュールの発電効率への影響が少ないからである。また、このようなワックスは、融点が比較的低く、防汚性の付与が期待できるからである。後述するように、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートをロール体の状態としたときに、易接着層と耐候性樹脂層とが接触した状態となるため、易接着層に含まれるワックスが耐候性樹脂層に移行し、耐候性樹脂層の基材側の面とは反対側の面にワックスを有するようになる場合がある。この場合、耐候性樹脂層に防汚性を付与することができる。これにより、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合には、太陽電池モジュールの太陽電池モジュール用裏面保護シート側の表面が汚れにくくなり、発電効率の低下を抑制することができる。よって、易接着層が上記のようなワックスを含有することにより、易接着層と耐候性樹脂層との間のブロッキングを抑制することができるとともに、防汚性の良好な耐候性樹脂層を得ることができる。
特に、上記ワックスは、パラフィンワックスであることが好ましい。パラフィンワックスを易接着層に含有させることにより、易接着層の接着性を良好に保持したまま、易接着層の耐ブロッキング性を向上させることができる。また、パラフィンワックスは、ある程度の硬度を有するため表面平滑性が損なわれにくく汚れを付きにくくすることができること、および防水性に富むため汚れを落ちやすくすることができることから、耐候性樹脂層に防汚性を付与するだけでなく、耐候性樹脂層の防汚性を高めることができる。さらに、パラフィンワックスは、揮発性が比較的低いため、長期にわたって耐候性樹脂層の防汚性を維持することができる。
なお、パラフィンワックスとは、常温で固体、加熱すると液体となる有機系のワックスのうち、炭素数20以上30以下の直鎖状のパラフィン系炭化水素を主成分とするワックス全般のことをいう。
上記易接着層中の上記ワックスの含有量としては、所望の接着性および耐ブロッキング性が得られる程度の量であれば特に限定されるものでなく、例えば、5質量%以上、40質量%以下とすることができ、中でも7質量%以上、25質量%以下であることが好ましく、特に7質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。上記ワックスの含有量が少なすぎると、ブロッキング防止効果が十分に得られない場合がある。また、上記ワックスの含有量が多すぎると、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合に、裏面封止材に対する裏面保護シートの接着性が低下するおそれがある。
上記易接着層は、必要に応じて、種々の添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、増粘剤、難燃剤等が挙げられる。上記添加剤の含有量としては、その目的に応じて任意に設定することができる。
上記易接着層の厚みは、太陽電池モジュール用裏面保護シートに必要な接着強度や透明性等に応じて適宜調整される。上記易接着層の厚みとしては、例えば、0.2μm以上3.0μm以下とすることができ、0.5μm以上1.5μm以下であってもよい。上記易接着層の厚みが上記範囲内であることにより、太陽電池モジュール用裏面保護シートに十分な接着性を付与することができるとともに、製造コストを抑えることがきる。
上記易接着層の形成方法としては、例えば、基材上に、上記の樹脂、ワックスおよび溶媒を含有する易接着層用組成物を塗布し、塗膜を固化する方法等が挙げられる。
上記易接着層用組成物に用いられる溶媒としては、上記樹脂を分散または溶解させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水性媒体、有機系媒体を挙げることができる。中でも、環境保全の観点から、水性媒体が好ましく用いられる。
上記水性媒体は、水を含んでいればよく、水以外の他の溶媒を含有していてもよい。他の溶媒としては、例えば、芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類、アルコール類、エーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記有機系媒体としては、例えば、芳香族系炭化水素、エステル類、ケトン類、アルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記樹脂が上記酸変性ポリオレフィン樹脂である場合は、上記酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に分散された水性分散体(エマルション)を用いることができる。上記酸変性ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に分散させる方法としては、例えば、自己乳化法や強制乳化法等の一般的な分散方法を採用することができる。上記酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体は、接着性の観点から、水性媒体中で酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸成分を塩基性化合物によって中和することで得られるアニオン性の水性分散体とすることが好ましい。
また、上記易接着層用組成物が、上記の酸変性ポリオレフィン樹脂、ワックス、および水性媒体を含有する水性組成物である場合、分散安定性の観点から、pHが7以上12以下であることが好ましく、8以上11以下であることがより好ましい。pHは、塩基性化合物を添加することによって調整することができる。
上記塩基性化合物としては、例えば、アミン化合物等が挙げられる。
上記易接着層用組成物の固形分濃度は、調製時の仕込み組成により調節してもよく、希釈または濃縮することによって調節してもよい。
上記易接着層用組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアコート、リバースコート、ワイヤーバーコート、リップコート、エアナイフコート、カーテンフローコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ダイコート、スクリーン印刷、はけ塗り等が挙げられる。
上記易接着層用組成物の塗布量は、乾燥後の塗布量として、上記易接着層の厚みが上記範囲となるように適宜調整すればよい。
上記易接着層用組成物の塗布後は、乾燥させることにより塗膜を固化させることができる。
2.耐候性樹脂層
本開示における耐候性樹脂層は、基材の一方の面に直接配置される部材である。耐候性樹脂層は、裏面保護シートの最外層に配置されて、基材を保護するために配置される層である。
上記耐候性樹脂層は、透明性を有することが好ましい。本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートが、例えばシースルータイプまたは両面採光タイプの太陽電池モジュールに用いられる透明タイプの裏面保護シートである場合、上記耐候性樹脂層は透明性を有する。
上記耐候性樹脂層の透明性としては、例えば、上記耐候性樹脂層が可視光線領域および近赤外線領域の光線を透過することができることが好ましい。本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合に、可視光線領域だけでなく近赤外線領域の光線も発電に利用することができ、発電効率を高めることができる。また、上記耐候性樹脂層が近赤外線を吸収することによって太陽電池モジュールの温度が上昇し、その結果、太陽電池モジュールの発電効率が低下するのを抑制することができる。
上記耐候性樹脂層は、通常、樹脂を含有する。上記樹脂としては、例えば、架橋樹脂を用いることができる。架橋樹脂は、架橋性樹脂が硬化剤により架橋されたものである。なお、本明細書において、硬化剤によって架橋される前の樹脂を架橋性樹脂と称し、硬化剤によって架橋された後の樹脂を架橋樹脂と称する。
上記架橋樹脂としては、例えば、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂、架橋フッ素樹脂、架橋ビニル樹脂、架橋オレフィン樹脂等が挙げられる。中でも、架橋アクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂は安価であり、基材との密着性が良好である。
上記架橋樹脂に用いられる架橋性樹脂としては、溶剤に溶解または分散可能なものであればよく、例えば、架橋性置換基含有アクリル樹脂、架橋性置換基含有ウレタン樹脂、架橋性置換基含有フッ素樹脂、架橋性置換基含有ビニル樹脂、架橋性置換基含有オレフィン樹脂等を挙げることができる。上記架橋性置換基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。中でも、上記架橋性置換基は、入手性および架橋反応性の観点から、水酸基であることが好ましい。
上記架橋アクリル樹脂は、架橋性置換基含有アクリル樹脂が硬化剤により架橋されたものである。中でも、上記架橋アクリル樹脂に用いられる架橋性置換基含有アクリル樹脂は、水酸基含有アクリル樹脂であることが好ましい。
上記架橋樹脂に用いられる硬化剤としては、上記架橋性置換基と反応して上記架橋性樹脂を架橋することが可能なものであればよく、例えば、ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
特に、上記架橋アクリル樹脂は、水酸基含有アクリル樹脂がポリイソシアネート化合物により架橋されたものである、すなわち、ウレタン結合を有する架橋アクリル樹脂であることが好ましい。
上記架橋アクリル樹脂に用いられる架橋性置換基含有アクリル樹脂は、例えば、架橋性置換基含有アクリルモノマーと、この架橋性置換基含有アクリルモノマー以外のアクリルモノマーとを含むラジカル重合性モノマー類を共重合して得ることができる。
架橋性置換基含有アクリルモノマー以外のアクリルモノマーとしては、特に限定されないが、SP値が7.0以上9.0以下となるアクリル樹脂を与えるアクリルモノマーであることが好ましい。SP値が7.0以上9.0以下となるアクリル樹脂を与えるアクリルモノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル等の炭素数4以上14以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体等を挙げることができる。
上記アクリルモノマーのモノマーのSP値は、ケイ・エル・ホイ(K.L.Hoy)著の「ジャーナル・オブ・ペイント・テクノロジー(Journal of Paint Technology)」、第42巻、第541号、第76頁(1970)という文献に記載の値〔単位はいずれも(cal/ml)1/2〕を採用することができる。例えば、SP値は、スチレンは9.35、メチルメタクリレートは9.23、エチルアクリレートは8.81、n−ブチルアクリレートは8.63、イソブチルメタクリレートは8.15、t−ブチルメタクリレートは8.05、2−エチルヘキシルアクリレートは7.87、という値を採用することができる。一方で文献値として存在しないアクリルモノマーに対しては、次式によって求められる計算値を採用する。ただし、密度は1.0と仮定するものとする。
SP=(d・ΣG)/Mn
[式中、SPはモノマーのSP(cal/ml)1/2、dはモノマーの密度(g/ml)、Gは分子凝集定数(cal・ml)1/2/mol、Mnはモノマーの分子量(g/mol)である。なお、上記Gの値は、Small,P.S.,J.Appl.Chem.3,P.75(1973)に記載の値を使用する。]
なお、上記SP値の計算方法において、コポリマーのSP値は、各モノマーのSP値に重量基準で以て、加成性が成立するものと仮定している。
上記架橋性置換基含有アクリルモノマーとしては、水酸基含有アクリルモノマーであることが好ましい。水酸基含有アクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記ラジカル重合性モノマー類は、必要に応じて、上記の架橋性置換基含有アクリルモノマーおよび所定のSP値のアクリル樹脂を与えるアクリルモノマー以外の重合性モノマーを含んでいてもよい。このような重合性モノマーとしては、例えば、上記以外の(メタ)アクリレートや、スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
上記水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基価が1mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が5,000以上500,000以下であり、ガラス転移温度が20℃以上110℃以下であることが好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂中の上記の所定のSP値のアクリル樹脂を与えるアクリルモノマーの含有量は、例えば、50質量%以上90質量%以下とすることができる。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂中の上記水酸基含有アクリルモノマーの含有量は、SP値が上述の範囲を外れない範囲であればよく、例えば、5質量%以上20質量%以下とすることができる。
上記水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、ラジカル重合開始剤を用いて、上記ラジカル重合性モノマー類をラジカル重合させることにより製造することができる。ラジカル重合反応の温度は、例えば、60℃以上150℃以下とすることができる。また、ラジカル重合反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、活性なイソシアネート基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート等を挙げることができる。上記ポリイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、L−リジンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートが挙げられる。
上記脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式系ジイソシアネート等が挙げられる。
上記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ビフェニルジイソシアネートトリデンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート等が挙げられる。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、3官能以上のポリイソシアネートも用いることができる。具体的には、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、4,4',4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4'−ビフェニルトリイソシアネート、2,4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンフェニルイソシアネート等が挙げられる。
さらに、上記ポリイソシアネート化合物を用いて得られるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート等も用いることができる。
中でも、上記ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネートおよび/または脂環式系ジイソシアネート等の無黄色変型のポリイソシアネートを用いることが好ましい。外観に優れる耐候性樹脂層を得ることができるからである。特に、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂と上記ポリイソシアネートとの配合割合としては、上記水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基と上記イソシアネート化合物中のイソアネート基との当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、0.5以上5.0以下であることが好ましい。
上記耐候性樹脂層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。基材を紫外線から保護することができ、基材の劣化を抑制することができる。
上記耐候性樹脂層に含まれる紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収することで基材の劣化を抑制することができるものあれば特に限定されるものではなく、一般的に太陽電池モジュール用裏面保護シートに用いられる紫外線吸収剤を用いることができる。上記紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、上記紫外線吸収剤は、波長340nmから400nmの間に吸収極大を有する紫外線吸収剤であることが好ましい。このような紫外線吸収剤を用いることにより、波長400nmを超える光線を有効に取り込めるので、太陽電池モジュールの発電量を低下させることなく、基材の紫外線吸収による劣化を抑制することができる。
このような紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
上記耐候性樹脂層中の上記紫外線吸収剤の含有量としては、例えば、2質量%以上40質量%以下とすることができ、好ましくは4質量%以上30質量%以下、より好ましくは6質量%以上20質量%以下とすることができる。上記紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、十分な紫外線遮蔽効果を得ることができる。
上記耐候性樹脂層は、耐候性、基材との密着性、耐溶剤性、透明性等を損なわない範囲で、必要に応じて、種々の添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤等が挙げられる。これらの添加剤は、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができ、耐候性樹脂層に求められる性能に応じて適宜選択される。また、添加剤の含有量は、その目的に応じて任意に設定することができる。
また、上記耐候性樹脂層の基材側の面とは反対側の面に、ワックスを有することが好ましい。これにより、上記耐候性樹脂層に防汚性を付与することができる。よって、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合には、太陽電池モジュールの太陽電池モジュール用裏面保護シート側の表面が汚れにくくなり、発電効率の低下を抑制することができる。
上記耐候性樹脂層に用いられるワックスとしては、上記易接着層に用いられるワックスと同様とすることができる。
上記耐候性樹脂層に含まれるワックスは、上記易接着層に含まれるワックスと同一であってもよく異なっていてもよいが、中でも、上記易接着層に含まれるワックスと同一であることが好ましい。上述したように、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートをロール体の状態としたときに、易接着層と耐候性樹脂層とが接触した状態となるため、易接着層に含まれるワックスが耐候性樹脂層に移行し、耐候性樹脂層の基材側の面とは反対側の面にワックスを有するようになる。この場合、上記耐候性樹脂層に含まれるワックスと、上記易接着層に含まれるワックスとは同一のものとなる。よって、本開示においては、易接着層がワックスを含有することにより、易接着層と耐候性樹脂層との間のブロッキングを抑制することができるとともに、防汚性の良好な耐候性樹脂層を得ることができる。なお、上述したように、耐候性樹脂層に要求される性能、例えば耐候性、基材との密着性、耐溶剤性等が損なわれるおそれがあることから、通常、耐候性樹脂層にはワックスは添加されない。
また、従来、裏面保護シートを構成する耐候性フィルムとしてはフッ素系フィルムが用いられているが、フッ素系フィルムはワックスとの相溶性が低いことから、易接着層がワックスを含有する場合であっても、易接着層に含まれるワックスはフッ素系フィルムに転写されにくく、易接着層に含まれるワックスがフッ素系フィルムに転写されたとしてもワックスは取れやすいと考えられる。これに対し、本開示においては、耐候性樹脂層はコーティング膜であり、フィルムとは異なり浸透性を有することから、易接着層に含まれるワックスは耐候性樹脂層に転写されやすく、さらに耐候性樹脂層の内部に染み込むとも考えられる。そのため、耐候性樹脂層にワックスが固着しやすいと推量される。よって、本開示においては、耐候性樹脂層がコーティング膜であり、易接着層がワックスを含有することにより、易接着層と耐候性樹脂層との間のブロッキングを抑制するだけでなく、防汚性の良好な耐候性樹脂層を得ることが可能である。
上記耐候性樹脂層の基材側の面とは反対側の面において、ワックスは、全面的に存在していてもよく、部分的に存在していてもよい。また、上記耐候性樹脂層の基材側の面とは反対側の面において、ワックスは、均一に存在していてもよく、不均一に存在していてもよい。
上記耐候性樹脂層の厚みは、所望の耐候性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば、3μm以上25μm以下とすることができる。上記耐候性樹脂層の厚みが薄すぎると、耐候性が不足するおそれがあり、また、製膜が困難となる場合がある。また、上記耐候性樹脂層の厚みが厚すぎると、加工適性が低下する場合や、透明性が低下するおそれがある。中でも、上記耐候性樹脂層の厚みは、4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、また、9μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。耐候性樹脂層の厚みは厚いほどブロッキングが生じやすくなる傾向があり、上記耐候性樹脂層の厚みが上記範囲内であるように比較的薄いことにより、上記耐候性樹脂層の耐ブロッキング性を高めることができる。
上記耐候性樹脂層の形成方法としては、例えば、基材上に、上記の樹脂および溶媒を含有する耐候性樹脂層用組成物を塗布し、塗膜を固化する方法等が挙げられる。
上記耐候性樹脂層用組成物に用いられる溶媒としては、上記樹脂を分散または溶解させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水性媒体、有機系媒体を挙げることができる。中でも、環境保全の観点から、水性媒体が好ましく用いられる。
上記水性媒体は、水を含んでいればよく、水以外の他の溶媒を含有していてもよい。他の溶媒としては、例えば、芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類、アルコール類、エーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記有機系媒体としては、例えば、芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、エステル類、ケトン類、アルコール類、エーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記耐候性樹脂層用組成物の固形分濃度は、調製時の仕込み組成により調節してもよく、希釈または濃縮することによって調節してもよい。
上記耐候性樹脂層用組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアコート、リバースコート、ワイヤーバーコート、リップコート、エアナイフコート、カーテンフローコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ダイコート、スクリーン印刷、はけ塗り等が挙げられる。
上記耐候性樹脂層用組成物の塗布量は、乾燥後の塗布量として、上記耐候性樹脂層の厚みが上記範囲となるように適宜調整すればよい。
上記耐候性樹脂層用組成物の塗布後は、乾燥させることにより塗膜を固化させることができる。
3.基材
本開示における基材は、上記の易接着層および耐候性樹脂層を支持する部材である。
上記基材としては、一般的な太陽電池モジュール用裏面保護シートにおける基材を用いることができ、各種の樹脂フィルムを用いることができる。上記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂フィルムが挙げられる。
中でも、電気絶縁性、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性および成形性が良好であることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂フィルムが好ましい。特に、安価であることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。PETフィルムとしては、耐加水分解PETフィルムが好ましく用いられる。耐加水分解PETフィルムとしては、例えば、東レ社製の「ルミラー」、東洋紡社製の「シャインビーム」等が挙げられる。
上記基材は、単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよい。例えば上記基材は、上記樹脂フィルムが複数積層された多層フィルムであってもよい。
また、上記基材が多層である場合、例えば、基材層と、基材層の一方の面に配置されたバリア層とを有することができる。基材がバリア層を有することにより、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合に、水蒸気や酸素等から太陽電子セルを保護することができる。
上記基材層としては、上述の樹脂フィルムを用いることができる。
また、上記バリア層としては、水蒸気や酸素に対してバリア性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、無機膜、バリア性樹脂膜、支持体の片面または両面にバリア膜を有するバリア積層体等が挙げられる。
上記無機膜としては、例えば、金属膜、無機化合物膜が挙げられる。上記金属膜としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、チタン等の金属または合金を含む金属膜が挙げられる。上記無機化合物膜としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物等を含む無機化合物膜が挙げられる。具体的には、ケイ素(シリカ)、アルミニウム、チタン、ニッケル、鉄、銅、マグネシウム、カルシウム、カリウム、錫、ナトリウム、ホウ素、鉛、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム等を含む無機化合物膜が挙げられる。上記無機膜の厚みは、所望のバリア性および透明性を得ることができれば特に限定されるものではなく、無機膜の種類に応じて適宜設定される。上記無機膜の形成方法としては、例えば、蒸着法が挙げられる。すなわち、上記無機膜は蒸着膜とすることができる。
上記バリア性樹脂膜としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等を含むバリア性樹脂膜が挙げられる。上記バリア性樹脂膜の厚みは、所望のバリア性および透明性を得ることができれば特に限定されない。
上記バリア積層体を構成するバリア膜としては、バリア性を有するものであればよく、無機膜、有機−無機ハイブリッド膜、バリア性樹脂膜等が挙げられる。無機膜、バリア性樹脂膜としては、上述したものを用いることができる。また、上記バリア膜は、単層であってもよく、2層以上を積層させて多層としたものであってもよい。上記バリア膜の厚みは、所望のバリア性および透明性を得ることができれば特に限定されるものではなく、バリア膜の種類に応じて適宜設定される。
上記バリア膜は、コーティング膜であってもよく、蒸着膜であってもよい。上記バリア膜は、材料や種類に応じて塗布法、蒸着法、圧着法等の従来公知の方法を用いて成膜することができる。また、上記バリア膜がバリア性樹脂膜である場合には、バリア膜は、共押出により支持体と積層されたものであってもよい。
また、上記バリア積層体を構成する支持体としては、上記バリア膜を支持することができれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール(PVA)やエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系、エチレンビニルエステル共重合体ケン化物、各種のナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアセタール、セルロース樹脂等の各種の樹脂フィルムを使用することができる。上記支持体の厚みは、特に限定されず、適宜設定することができる。
上記バリア積層体は、例えば、接着剤層を介したドライラミネーション法により上記基材層に積層することができる。
上記基材が基材層とバリア層とを有する場合、上記バリア層は、耐候性樹脂層側になるように配置されていてもよく、易接着層側になるように配置されていてもよいが、中でも、バリア層が易接着層側になるように配置されていることが好ましい。本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合に、バリア層がより内層側に配置されていることにより、長期使用におけるバリア性の低下を抑制することができる。
また、上記バリア層が、支持体とバリア膜とを有するバリア積層体である場合、バリア積層体は、通常、バリア膜が基材層側になるように配置される。すなわち、基材層とバリア膜と支持体とが順に積層された構成となる。
基材は、例えば、加工性、耐熱性、耐光性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、光安定化剤、充填剤、滑剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、改質用樹脂等を挙げることができる。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されるものではなく、その目的に応じて適宜調整される。
基材の厚みとしては、特に限定されるものではなく、例えば、150μm以上320μm以下とすることができ、好ましくは200μm以上310μm以下とすることができる。基材の厚みが薄すぎると、絶縁性が低下するおそれがある。また、基材の厚みが厚すぎると、加工適性が低下する場合がある。
4.太陽電池モジュール用裏面保護シート
本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートは、透明性を有することが好ましい。本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートが透明性を有する場合には、例えばシースルータイプまたは両面採光タイプの太陽電池モジュールに用いることができる。
本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートの透明性としては、例えば、太陽電池モジュール用裏面保護シートが可視光線領域および近赤外線領域の光線を透過することができることが好ましい。具体的には、波長400nm以上1200nm以下における平均光線透過率が、80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましく、87%以上であることがさらに好ましい。上記平均光線透過率が上記範囲であることにより、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合に、可視光線領域だけでなく近赤外線領域の光線も発電に利用することができ、発電効率を高めることができる。また、太陽電池モジュール用裏面保護シートが近赤外線を吸収することによって太陽電池モジュールの温度が上昇し、その結果、太陽電池モジュールの発電効率が低下するのを抑制することができる。
なお、波長400nm以上1200nm以下における平均光線透過率は、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率の平均値である。上記平均光線透過率は、JIS K 7361−1:1997に準拠する方法により測定することができる。
また、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートの透明性としては、例えば、ヘーズが低いことが好ましい。具体的には、ヘーズが、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。上記ヘーズが上記範囲であることにより、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いた場合に、発電効率を高めることができる。
なお、上記ヘーズは、JIS K 7136:2000に準拠する方法により測定することができる。
また、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートの上記平均光線透過率が上記範囲のように高く、上記ヘーズが上記範囲のように低いと、太陽電池モジュール用裏面保護シートの表面の平滑性が高くなる。このような場合、太陽電池モジュール用裏面保護シートがロール体の状態となった場合には、耐候性樹脂層と易接着層との間でブロッキングが起こりやすくなる。そのため、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートの上記平均光線透過率が上記範囲のように高く、上記ヘーズが上記範囲のように低い場合に、本開示は有用である。
本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法としては、例えば、まず、基材の一方の面にコーティング法により耐候性樹脂層を形成し、次いで、基材の他方の面にコーティング法により易接着層を形成する方法が挙げられる。
B.裏面保護シートロール体
本開示における裏面保護シートロール体は、上述の太陽電池モジュール用裏面保護シートが、ロール状に巻き取られてなるものである。
図2は、本開示における裏面保護シートロール体の一例を示す概略断面図であり、図2中の右図は部分拡大図である。図2に示すように、裏面保護シートロール体20は、太陽電池モジュール用裏面保護シート1が、ロール状に巻き取られてなるものである。
裏面保護シートロール体20においては、内周側の太陽電池モジュール用裏面保護シート1Aの易接着層4と、これに接触する外周側の太陽電池モジュール用裏面保護シート1Bの耐候性樹脂層3が圧着されている状態で、長時間の養生が行われる場合がある。このとき、易接着層4および耐候性樹脂層3はともにコーティングにより形成されるコーティング膜であるため、内周側の太陽電池モジュール用裏面保護シート1Aの易接着層4と、外周側の太陽電池モジュール用裏面保護シート1Bの耐候性樹脂層3との間でブロッキングが生じやすい。これに対し、本開示においては、易接着層がワックスを含有することにより、易接着層と耐候性樹脂層との間のブロッキングを抑制することができる。
なお、図2に示す例においては、太陽電池モジュール用裏面保護シート1は、耐候性樹脂層3が巻芯側になるようにロール状に巻き取られたものであるが、この限りではなく、太陽電池モジュール用裏面保護シートは、易接着層側が巻芯側になるようにロール状に巻き取られたものであってもよい。
C.太陽電池モジュール
本開示における太陽電池モジュールは、透明前面板と、前面封止材と、複数の太陽電池セルと、裏面封止材と、裏面保護シートと、をこの順に有する太陽電池モジュールであって、上記裏面保護シートが、上述の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
図3は、本開示における太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。図3に示すように、太陽電池モジュール10は、透明前面板11と、前面封止材12と、複数の太陽電池セル13と、裏面封止材14と、太陽電池モジュール用裏面保護シート1と、をこの順に有する。
以下、本開示における太陽電池モジュールの各構成について説明する。
前面封止材および裏面封止材としては、一般的に太陽電池モジュールに用いられる封止材を用いることができる。前面封止材および裏面封止材としては、例えば、ポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂等を含む封止材を挙げることができる。
太陽電池セルとしては、各種の太陽電池セルを用いることができる。
透明前面板としては、通常、ガラス基板が用いられる。また、透明前面板として、耐候性を有する透明樹脂フィルムを用いてもよい。また、透明前面板として、上述の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いることもできる。
太陽電池モジュールは、上記の各部材を、例えば、真空ラミネート法により加熱圧着することにより製造することができる。この際の加熱温度は、例えば、110℃以上190℃とすることができ、好ましくは130℃以上とすることができる。また、ラミネート時間は、例えば、5分間以上60分間以下とすることができる。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
[実施例1〜5]
(基材)
基材として、厚さ160μmの耐加水分解ポリエチレンテレフタレート(HR−PET)フィルム(東レ社製、X10S)を用いた。
(耐候性樹脂層の形成)
耐候性樹脂層用組成物として、DIC社製の機能性コート剤「UC CLEAR BS EXP100330」を用いた。上記PETフィルムの一方の面に、上記耐候性樹脂層用組成物を塗工量が5g/m2となるようにグラビアコートにて塗工し、塗膜を110℃で2分間乾燥させた。
(易接着層の形成)
下記の各材料および溶媒を撹拌混合して、易接着層用組成物を調製した。なお、パラフィンワックスは、易接着層組成物の固形分中の含有量が下記表1に示す量となるように配合した。また、架橋剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂(固形分)100質量部に対して5質量部の割合で添加した。
・酸変性ポリオフィン樹脂(アルケマ社製、ボンダイン)
・パラフィンワックス水性分散体(日本精鑞社製、EMUSTAR−0135)
・架橋剤(日本触媒社製、エポクロスWS700)
・溶媒(蒸留水(76質量部)、イソプロパノール(23質量部)、トリエチルアミン(1質量部)の混合溶媒)
易接着層の形成は、ロール・ツー・ロール方式の製造ラインにて行った。上記PETフィルムの他方の面に、上記易接着層用組成物を塗工量が1g/m2となるようにグラビアコートにて塗工し、塗膜を110℃で2分間乾燥させた後、ロール体の状態で、40℃で5日間養生して、耐候性樹脂層および易接着層の形成を促進させた。これにより、太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。なお、ロール体の状態とは、詳しくは、幅1000mm、長さ1000mの太陽電池モジュール用裏面保護シートを、直径160mmの巻芯に巻き取った状態である。
[比較例1]
易接着層の形成において、パラフィンワックスを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様に太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
[評価]
1.耐ブロッキング性
(試験方法)
太陽電池モジュール用裏面保護シートを10枚重ね、1.5kg/mm2の圧力をかけ、40℃、90%RHで7日間保持し、各太陽電池モジュール用裏面保護シートの状態を確認した。
(評価基準)
A:外観変化無し
B:耐候性樹脂層表面に易接着層は確認されないが、耐候性樹脂層の表面状態に変化が生じている
C:耐候性樹脂層表面の一部に易接着層が確認されるが、外観は変化していない
D:圧力がかかっていた全面において耐候性樹脂層表面に易接着層が移って外観が変化している
2.封止材に対する密着性
(試験方法)
実施例1〜5および比較例1の太陽電池モジュール用裏面保護シートの易接着層側の面に、下記の封止材シートを太陽電池モジュール製造用の真空ラミネータを用いて、圧力100kPaにて150℃で15分間圧着した後、恒温槽にて150℃30分間静置してラミネートを行い、密着性評価用試料とした。各密着性評価用試料について、幅15mmの試験片を用い180度剥離試験にて剥離強度を測定した。測定には、剥離試験装置(エー・アンド・デイ社製 テンシロンRTA−1150−H)を用いて、剥離速度50mm/min、温度23℃の条件で180度剥離試験を行い、3回の測定の平均値を採用した。
(封止材シート)
EVA(酢酸ビニル含量28%、(製品名「EVAFLEX/EV250グレード」、三井デュポンポリケミカル製)100質量部に対して、架橋剤(製品名「Lupersol101」)1.5質量部、架橋助剤(TAIC)0.5質量部、酸化防止剤(製品名「NAUGARD−P」)0.2質量部、UV吸収剤((製品名「Tinuvin7709」)0.1質量部と(製品名「Cyasorb UV−531」)0.3質量部とを配合したもの)を、成膜温度90℃のTダイ法により、厚さ400μmに製膜した。
(評価基準)
A:120N/15mm以上
B:80N/15mm以上、120N/15mm未満
C:80N/15mm未満
3.透明性
実施例1〜5の太陽電池モジュール用裏面保護シートについて、日本分光社製の分光光度計V670を用いて、JIS K 7361−1:1997に準拠して、波長400nm以上1200nm以下における平均光線透過率を測定したところ、いずれも85%以上であった。
また、実施例1〜5の太陽電池モジュール用裏面保護シートについて、村上色彩技術研究所社製のヘーズメーターHM−150Nを用いて、JIS K 7136:2000に準拠して、ヘーズを測定したところ、いずれも20%以下であった。
表1より、本開示における太陽電池モジュール用裏面保護シートは、易接着層がワックスを含有することにより、ロール体の状態における易接着層と耐候性樹脂層との間の耐ブロッキング性が良好であった。