[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図10を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
(四輪駆動車の全体構成)
図1は、四輪駆動車1の概略の構成を示す構成図である。四輪駆動車1は、走行用の駆動力を発生させる駆動源としてのエンジン102、トランスミッション103、左右一対の主駆動輪としての前輪104L,104R、及び左右一対の補助駆動輪としての後輪105L,105Rと、エンジン102の駆動力を前輪104L,104R及び後輪105L,105Rに伝達可能な駆動力伝達系101と、制御装置9及び油圧ユニット8とを備えている。なお、本実施の形態において、各符号における「L」及び「R」は、車両の前進方向に対する左側及び右側の意味で使用している。
この四輪駆動車1は、制御装置9による制御により、エンジン102の駆動力を前輪104L,104R及び後輪105L,105Rに伝達する四輪駆動状態と、エンジン102の駆動力を前輪104L,104Rのみに伝達する二輪駆動状態とを切り替え可能である。なお、本実施の形態では、駆動源として内燃機関であるエンジンを適用した場合について説明するが、これに限らず、エンジンとIPM(Interior Permanent Magnet Synchronous)モータ等の高出力電動モータとの組み合わせによって駆動源を構成してもよく、高出力電動モータのみによって駆動源を構成してもよい。
駆動力伝達系101は、前輪側のドライブシャフト106L,106Rと、後輪側のドライブシャフト107L,107Rと、フロントディファレンシャル11と、エンジン102の駆動力の伝達を遮断可能な断続装置12と、断続装置12の出力側に配置された歯車機構13と、断続装置12及び歯車機構13を介してエンジン102の駆動力が伝達される駆動軸としてのプロペラシャフト14と、プロペラシャフト14から後輪105L,105Rに伝達される駆動力を調節可能な駆動力伝達装置15とを有している。断続装置12及び駆動力伝達装置15は、制御装置9によって制御される。
前輪104L,104Rには、エンジン102の駆動力が常に伝達される。後輪105L,105Rには、車両走行状態に応じて、断続装置12、歯車機構13、プロペラシャフト14、及び駆動力伝達装置15を介してエンジン102の駆動力が伝達される。
フロントディファレンシャル11は、一対の前輪側のドライブシャフト106L,106Rに連結された一対のサイドギヤ111,111、一対のサイドギヤ111,111にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ112,112、一対のピニオンギヤ112,112を支持するピニオンシャフト113、及びこれら一対のサイドギヤ111,111と一対のピニオンギヤ112,112とピニオンシャフト113を収容するフロントデフケース114を有している。
断続装置12は、フロントデフケース114と一体に回転する第1回転部材121と、第1回転部材121と同軸上で相対回転可能に配置された第2回転部材122と、第1回転部材121と第2回転部材122とを相対回転不能に連結することが可能な噛み合い部材としての円筒状のスリーブ123と、スリーブ123を第1回転部材121及び第2回転部材122に対して軸方向移動させるアクチュエータ120とを有している。断続装置12は、スリーブ123の進退移動によって、第1回転部材121と第2回転部材122とがスリーブ123によって一体回転するように連結される作動状態と、第1回転部材121と第2回転部材122とが相対回転可能な非作動状態とが切り替わる。断続装置12の構成の詳細については後述する。
歯車機構13は、プロペラシャフト14の前端部に連結されたピニオンギヤ131と、ピニオンギヤ131に噛み合うリングギヤ132とを有している。リングギヤ132は、断続装置12の第2回転部材122に固定されている。ピニオンギヤ131及びリングギヤ132は、例えばハイポイドギヤからなる。断続装置12及び歯車機構13は、ギヤの潤滑に適した粘度を有するギヤオイルによって潤滑される。
プロペラシャフト14には、制御装置9の近接センサ90により回転速度を検出するための検出部140が設けられている。制御装置9は、近接センサ90の出力信号により、プロペラシャフト14の回転速度を検出可能である。近接センサ90は、本発明の回転速度検出手段の一態様である。
駆動力伝達装置15は、四輪駆動状態において、プロペラシャフト14から入力される駆動力をドライブシャフト107Lを介して左後輪105Lに、またドライブシャフト107Rを介して左後輪105Rに、それぞれ伝達する。本実施の形態では、駆動力伝達装置15が、制御装置9から出力される制御信号によって動作する油圧ユニット8から供給される油圧によって作動する。油圧ユニット8は、オイルポンプや比例制御弁等を含み、制御装置9から出力される制御信号に応じた圧力の作動油を駆動力伝達装置15に供給する。
(断続装置12の構成)
図2は、断続装置12の構成例を示す断面図である。
第1回転部材121は、その内周側に右前輪側のドライブシャフト106Rを挿通させる環状であり、外周面に複数の噛合歯121aを有している。第2回転部材122は、内周側にドライブシャフト106Rを挿通させる筒状であり、第1回転部材121と同軸上で相対回転可能である。また、第2回転部材122は、その外周面に複数の噛合歯122aを有している。
スリーブ123は、第1回転部材121及び第2回転部材122の外周側に配置された円筒状の部材である。スリーブ123の内周面には、第1回転部材121の複数の噛合歯121a及び第2回転部材122の複数の噛合歯122aに噛み合い可能な複数の噛合歯123aが形成されている。第1回転部材121、第2回転部材122、及びスリーブ123の噛合歯121a,122a,123aは、ドライブシャフト106Rの回転軸線Oに平行な軸方向に延びる直線状の突起である。第1回転部材121の噛合歯121aは、本発明の第1噛合歯の一態様である。スリーブ123の噛合歯123aは、本発明の第2噛合歯の一態様である。
スリーブ123の噛合歯123aは、第2回転部材122の噛合歯122aに常に噛み合っている。スリーブ123は、その噛合歯123aが第2回転部材122の噛合歯122aに噛み合うことにより、第2回転部材122に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。より具体的には、スリーブ123の噛合歯123aが第2回転部材122の噛合歯122aに噛み合い、この噛み合い状態を保ちながらスリーブ123が第2回転部材122に対して軸方向に移動する。また、スリーブ123は、アクチュエータ120によって第1回転部材121側に移動したとき、噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに噛み合い、第1回転部材121と相対回転不能に連結される。
アクチュエータ120は、制御装置9によって印加される電圧によって作動し、トルクを発生する電動モータ124と、ピニオン歯車125と、ラック軸126と、シフトフォーク127と、電動モータ124に組み合わされたエンコーダ128とを有している。電動モータ124は、例えばブラシ付きのDCモータである。ピニオン歯車125は、大径歯部125a及び小径歯部125bを有し、大径歯部125aが電動モータ124のシャフト124aに固定された出力歯車124bに噛み合い、小径歯部125bがラック軸126のラック歯126aに噛み合っている。シフトフォーク127は、ラック軸126に固定され、かつスリーブ123に形成された周方向溝123bに係合している。スリーブ123は、シフトフォーク127との係合状態を保ちながら回転可能である。
制御装置9は、四輪駆動車1に搭載された図略のバッテリーの直流電圧をPWM制御によりスイッチングすることで、電動モータ124に電圧を印加する。また、制御装置9は、PWM制御のデューティー比を増減することで、電動モータ124に印加する実効電圧を調節可能である。
電動モータ124が回転すると、その回転がピニオン歯車125によって減速されてラック軸126に伝達され、ラック軸126が第1回転部材121及び第2回転部材122の軸方向に移動する。シフトフォーク127は、ラック軸126と共に移動し、これに伴ってスリーブ123が第1回転部材121及び第2回転部材122に対して軸方向に進退移動する。これにより、第1回転部材121と第2回転部材122とがスリーブ123によって一体回転するように連結された作動状態と、第1回転部材121と第2回転部材122とが相対回転可能な非作動状態とが切り替わる。
エンコーダ128は、電動モータ124のシャフト124aの回転に応じて電気信号を制御装置9に出力する。制御装置9は、エンコーダ128が出力する電気信号に基づいて電動モータ124の回転量を取得可能であり、この電動モータ124の回転量によってスリーブ123の軸方向位置を検出可能である。エンコーダ128としては、シャフト124aの回転に応じて電気信号を出力するものであれば、光学式のものや磁気式のものなど、種々の形式のものを用いることが可能である。エンコーダ128は、スリーブ123の軸方向位置を検出可能な本発明の位置検出手段の一態様である。なお、エンコーダ128に替えて、ラック軸126やシフトフォーク127あるいはスリーブ123の軸方向位置を検出するリニアスケールを位置検出手段として用いてもよい。
図3(a)〜(c)は、断続装置12における第1回転部材121、第2回転部材122、及びスリーブ123の噛合歯121a,122a,123aの噛み合い状態を模式的に示す図である。
スリーブ123は、その噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aと所定の軸方向間隔をもって向かい合う待機位置と、噛合歯123aの軸方向端部が第1回転部材121の噛合歯121aの軸方向端部に当接する当接位置と、噛合歯123aと第1回転部材121の噛合歯121aとの噛み合いが完了した噛み合い完了位置との間を移動可能である。
なお、前述のように、断続装置12は図略のギヤオイルによって潤滑されるので、仮に第1回転部材121と第2回転部材122との軸方向間隔が狭い場合には、ギヤオイルの粘性による引き摺りトルクによって第1回転部材121から第2回転部材122に回転力が伝達され得るが、本実施の形態では、この引き摺りトルクが実質的に無視できる程度に小さくなるように、第1回転部材121と第2回転部材122との軸方向間隔が確保されている。
図3(a)では、スリーブ123が待機位置にある状態を示している。この状態では、第1回転部材121と第2回転部材122とが相対回転可能である。図3(a)に示す待機状態から電動モータ124が作動し、スリーブ123が第1回転部材121側に移動すると、図3(b)に示すように、スリーブ123の噛合歯123aの軸方向端面123bが第1回転部材121の噛合歯121aの軸方向端面121bに当接する。図3(b)は、スリーブ123がこの当接位置にある状態を示している。
スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接することで、スリーブ123の軸方向移動が一時的に停止するが、電動モータ124には引き続き制御装置9から電圧が印加され、スリーブ123は第1回転部材121側に押し付けられる。そして、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の周方向に隣り合う2つの噛合歯121aの間の位置にずれると、スリーブ123が軸方向に移動して噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに噛み合う。図3(c)は、スリーブ123が、噛合歯123aと第1回転部材121の噛合歯121aとの噛み合いが完了した噛み合い完了位置にある状態を示している。
(駆動力伝達装置15の構成)
図4は、駆動力伝達装置15の構成例を示す断面図である。
駆動力伝達装置15は、第1乃至第3ハウジング部材21〜23からなるハウジング2と、プロペラシャフト14が連結される連結部材31と、連結部材31と一体に回転するピニオンギヤシャフト32と、四輪駆動状態においてプロペラシャフト14を介して伝達されたエンジン102の駆動力を左右一対の後輪105L,105Rに差動を許容して配分するディファレンシャル機構4と、ディファレンシャル機構4から後輪105Lに伝達される駆動力を調節可能なクラッチ機構5と、油圧ユニット8から供給される作動油の圧力によって動作するピストン7とを備えている。
クラッチ機構5は、ピストン7によって押圧される摩擦クラッチ53を有し、ドライブシャフト107Lとディファレンシャル機構4との間に配置されている。第2ハウジング部材22には、油圧ユニット8から作動油が供給される環状のシリンダ221と、シリンダ221に連通する作動油供給孔222が設けられている。シリンダ221には、ピストン7の一端部が収容される。図3では、作動油供給孔222を破線で示している。
ディファレンシャル機構4は、デフケース40と、デフケース40に支持されたピニオンシャフト41と、ピニオンシャフト41に軸支された一対のピニオンギヤ42,42と、一対のピニオンギヤ42,42にギヤ軸を直交させて噛合する一対のサイドギヤ43,43と、デフケース40と一体に回転するリングギヤ44とを有している。デフケース40は、車幅方向の両端部が円錐ころ軸受611,612によって回転可能に支持され、回転軸線Oを中心としてピニオンシャフト41と一体に回転する。
ディファレンシャル機構4の一対のサイドギヤ43,43のうち、一方のサイドギヤ43には、クラッチ機構5を介して連結シャフト33が同軸上に配置され、他方のサイドギヤ43にはドライブシャフト107Rが相対回転不能に連結される。連結シャフト33には、ドライブシャフト107Lが相対回転不能に連結される。図3では、後輪側のドライブシャフト107L,107Rの端部に配置された等速ジョイントのアウタレースを図示している。
連結部材31とピニオンギヤシャフト32とは、ボルト301及び座金302によって結合されている。また、ピニオンギヤシャフト32は、軸部321とギヤ部322とを有し、軸部321が一対の円錐ころ軸受621,622によって回転可能に支持されている。ギヤ部322は、ディファレンシャル機構4のリングギヤ44に噛み合っている。
クラッチ機構5は、一方のサイドギヤ43と連結シャフト33との間に配置され、摩擦クラッチ53によって一方のサイドギヤ43側から連結シャフト33側に駆動力を伝達する。四輪駆動車1の四輪駆動状態において、クラッチ機構5によって一方のサイドギヤ43から連結シャフト33を経てドライブシャフト107Lに伝達される駆動力が調節されると、ディファレンシャル機構4の作用により、ドライブシャフト107Rにも、ドライブシャフト107Lに伝達される駆動力と同等の駆動力が伝達される。また、クラッチ機構5の非作動状態では、一方のサイドギヤ43と連結シャフト33との連結が遮断されるので、ドライブシャフト107L,107Rに駆動力が伝達されない。
ハウジング2は、ピニオンギヤシャフト32及びディファレンシャル機構4を収容する第1ハウジング部材21と、第1ハウジング部材21に複数のボルト201によって結合された第2ハウジング部材22と、第2ハウジング部材22に複数のボルト202によって結合された第3ハウジング部材23とを有している。図3では、複数のボルト201,202のうち、それぞれ1つずつのボルト201,202を図示している。
ハウジング2において、ディファレンシャル機構4を収容する第1収容室2aと、クラッチ機構5を収容する第2収容室2bとは、第2ハウジング部材22の中心部に形成された軸孔220の内面に固定されたシール部材67によって区画されている。第1収容室2aには、ギヤの潤滑に適した粘度の潤滑油(ギヤオイル)が封入されている。
第2収容室2bには、クラッチ機構5の摩擦クラッチ53を構成する複数のアウタクラッチプレート531と複数のインナクラッチプレート532との摩擦摺動を潤滑する比較的粘度の低い潤滑油(クラッチオイル)が封入されている。アウタクラッチプレート531と複数のインナクラッチプレート532は、この潤滑油によって摩耗や焼き付きの発生が抑制される。
第1ハウジング部材21には、ドライブシャフト107Rを挿通させる挿通孔の内面にシール部材681が嵌着され、連結部材31及びピニオンギヤシャフト32を挿通させる挿通孔の内面にシール部材682が嵌着されている。また、第3ハウジング部材23には、連結シャフト33を挿通させる挿通孔の内面にシール部材683が嵌着されている。
クラッチ機構5は、連結シャフト33と一体に回転するクラッチドラム51と、ディファレンシャル機構4の一方のサイドギヤ43と一体に回転する軸状のインナシャフト52と、クラッチドラム51とインナシャフト52との間で駆動力を伝達する摩擦クラッチ53と、ピストン7の押圧力を摩擦クラッチ53に伝達する押圧力伝達機構54とを有している。
摩擦クラッチ53は、クラッチドラム51と共に回転する複数のアウタクラッチプレート531と、インナシャフト52と共に回転する複数のインナクラッチプレート532とを有している。アウタクラッチプレート531及びインナクラッチプレート532は、軸方向に沿って交互に配置されている。
アウタクラッチプレート531は、その外周側の端部にクラッチドラム51の内周面にスプライン係合する複数の突起を有し、クラッチドラム51に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。また、インナクラッチプレート532は、その内周側の端部にインナシャフト52の外周面にスプライン係合する複数の突起が形成され、インナシャフト52に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。
摩擦クラッチ53は、ピストン7の押圧力を押圧力伝達機構54を介して受けることにより、複数のアウタクラッチプレート531と複数のインナクラッチプレート532との間に摩擦力が発生し、この摩擦力によって駆動力を伝達する。押圧力伝達機構54は、インナシャフト52に相対回転不能かつ軸方向に連結された環状のスライド部材541と、スラストニードルころ軸受542と、押圧力伝達機構54の回転軸線O方向の位置を調整するシム543とを有している。
スライド部材541は、付勢部材55によって摩擦クラッチ53から離間する方向に付勢されている。付勢部材55は、例えばバネ等の弾性体からなり、軸方向の一端部がインナシャフト52に形成された段差面に当接し、他端部がスライド部材541の内鍔部に当接している。
クラッチドラム51と第3ハウジング部材23の内面との間には、スラストころ軸受63が配置され、このスラストころ軸受63によってクラッチドラム51の軸方向移動が規制されている。インナシャフト52は、軸孔220の内面に固定された玉軸受64によって回転可能に支持されている。インナシャフト52には、連結シャフト33の一端部を収容する収容孔520が中心部に形成されている。連結シャフト33は、収容孔520の内面との間に配置された玉軸受65、及び第3ハウジング部材23との間に配置された玉軸受66によって回転可能に支持されている。
シリンダ221には、作動油供給孔222を介して、油圧ユニット8から作動油が供給される。ピストン7は、シリンダ221に供給される作動油の油圧を受けて摩擦クラッチ53を押圧する。これにより、複数のアウタクラッチプレート531と複数のインナクラッチプレート532との間に摩擦力が発生し、インナシャフト52からクラッチドラム51に駆動力が伝達され、この駆動力がさらに連結シャフト33を経てドライブシャフト107Lに伝達される。また、ドライブシャフト107Rにも、ディファレンシャル機構4を経てドライブシャフト107Lに伝達される駆動力と同等の駆動力が伝達される。
制御装置9は、例えばCAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークにより、前輪104L,104R及び後輪105L,105Rの回転速度や、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を取得可能である。そして、制御装置9は、前輪104L,104Rの平均回転速度と後輪105L,105Rの平均回転速度との差である前後輪回転速差が大きいほど、またアクセルペダルの踏み込み量が大きいほど、高い圧力の作動油がシリンダ221に供給されるように油圧ユニット8に制御信号を出力する。
図5は、プロペラシャフト14の検出部140における断面を近接センサ90と共に示す断面図である。
検出部140の外周面には、プロペラシャフト14の周方向に沿って複数の突起141が等間隔に設けられている。近接センサ90は、検出面90aが突起141に対向するときと対向しないときとで電圧レベルが異なる信号を出力する。プロペラシャフト14が回転すると、近接センサ90からパルス状の信号が出力される。制御装置9は、単位時間あたりに発生するパルスをカウントすることで、プロペラシャフト14の回転速度を検出可能である。
また、突起141には、四輪駆動車1の走行に伴う飛び石等により、割れや欠けが生じる場合がある。図5において、符号141aは突起141に生じた割れ部を示している。また、符号141bは、突起141が欠けた欠け部を示している。このような割れ部141aや欠け部141bが発生すると、プロペラシャフト14の回転速度を正確に検出できなくなるおそれがあるが、本実施の形態では、制御装置9が後述する処理を実行することにより、プロペラシャフト14の回転速度を正確に検出可能である。
制御装置9は、四輪駆動車1の二輪駆動時には、断続装置12を非作動状態とすると共に、駆動力伝達装置15への作動油の供給を遮断し、クラッチ機構5による駆動力の伝達がなされない状態とする。これにより、プロペラシャフト14が回転停止状態となり、歯車機構13のピニオンギヤ131及びリングギヤ132によるギヤオイルの撹拌抵抗が抑制される。また、駆動力伝達装置15のピニオンギヤシャフト32及びリングギヤ44も回転停止状態となるので、ピニオンギヤシャフト32及びリングギヤ44によるギヤイルの撹拌抵抗が抑制される。そして、これらのギヤイルの撹拌抵抗が抑制されることにより走行抵抗が低減され、四輪駆動車1の燃費性能が改善される。
また、制御装置9は、二輪駆動状態から四輪駆動状態に移行するとき、駆動力伝達装置15を制御して、後輪105L,105Rから駆動力伝達装置15を介して伝達される回転力によってプロペラシャフト14を回転させる。そして、断続装置12の第1回転部材121と第2回転部材122との回転が同期した後、アクチュエータ120を制御してスリーブ123を移動させ、第1回転部材121と第2回転部材122とを連結する。
ここで、同期とは、スリーブ123の噛合歯123aを第1回転部材121の噛合歯121aに噛み合わせられる程度に第1回転部材121の回転速度と第2回転部材122の回転速度との差が小さくなることをいう。制御装置9は、近接センサ90によって検出したプロペラシャフト14の回転速度と歯車機構13のギヤ比とに基づいて、第2回転部材122の回転速度を得ることができる。また、制御装置9は、前輪104L,104Rの平均回転速度によって、第1回転部材121の回転速度を得ることができる。そして、制御装置9は、第1回転部材121と第2回転部材122とが連結された後は、前後輪回転速差やアクセルペダルの踏み込み量等に応じて駆動力伝達装置15を制御し、必要な駆動力を後輪105L,105Rに伝達する。
本実施の形態では、駆動力伝達装置15を介して伝達される回転力によってプロペラシャフト14を回転させた後、駆動力伝達装置15によって伝達される回転力を低減し、駆動力伝達装置15によって伝達される回転力が低減された状態で、断続装置12を制御してスリーブ123の噛合歯123aを第1回転部材121の噛合歯121aに噛み合わせる。より具体的には、近接センサ90によって検出されたプロペラシャフト14の回転速度に基づいて第1回転部材121と第2回転部材122との回転が同期したと判定されたとき、駆動力伝達装置15によって伝達される回転力を低減する。ここで、「伝達される回転力を低減する」とは、伝達される回転力をゼロにすることも含む趣旨である。
これにより、スリーブ123の噛合歯123aと第1回転部材121の噛合歯121aとが噛み合ったときにプロペラシャフト14に発生する衝撃が駆動力伝達装置15や後輪側のドライブシャフト107L,107Rに伝わることが抑制され、この衝撃が車体等を介して乗員に知覚されてしまうことを抑制できる。
また、本実施の形態では、スリーブ123を待機位置から当接位置に移動させる際、エンコーダ128によって検出されたスリーブ123の軸方向位置に基づいて、当接位置付近においてスリーブ123の移動速度を減速させる。具体的には、スリーブ123の位置が予め設定された減速開始位置に到達したとき、電動モータ124に印加する電圧のデューティー比を低減し、電動モータ124が発生するトルクを小さくすることで、スリーブ123を減速させる。減速開始位置は、待機位置と当接位置との間であって、待機位置と当接位置との中間の位置よりも当接位置寄りに設定されている。制御装置9は、スリーブ123が待機位置と減速開始位置との間の位置にあるときには、PWM制御のデューティー比を例えば100%にし、減速開始位置と当接位置との間では、デューティー比を例えば50%以下にする。
また、制御装置9は、電動モータ124に供給される電流の変化によってスリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したことを検知し、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したときのスリーブ123の軸方向位置が予め記憶された位置情報と異なるとき、スリーブ123の減速を開始する減速開始位置を補正する。
なお、電動モータ124は、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接することによってシャフト124aの回転が停止するので、シャフト124aの回転に伴う逆起電力が発生しなくなり、電動モータ124に供給される電流が増大する。制御装置9は、例えばホール素子を有する電流センサによってこの電流の変化を監視することで、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したことを検知することが可能である。
この処理は、スリーブ123の噛合歯123a及び第1回転部材121の噛合歯121aが摩耗しても、減速開始位置を適正値に維持するための処理である。つまり、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに噛み合わされるときには、スリーブ123の噛合歯123aの軸方向端面123bが第1回転部材121の噛合歯121aの軸方向端面121bに当接した状態でスリーブ123と第1回転部材121とが相対回転する場合があり、このとき噛合歯123a,121aに摩耗が発生する。噛合歯123a,121aが摩耗すると、噛合歯123a,121aが当接する位置が変化するので、減速開始位置が当初の設定値のままであると、減速開始位置と当接位置との間の距離が長くなってしまう。このため、待機位置から当接位置までの間のスリーブ123の移動距離のうち、デューティー比が高く、スリーブ123が高速で移動する距離の割合が低くなってしまう。
そこで、本実施の形態では、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したときのスリーブ123の軸方向位置が予め記憶された位置情報と異なるときに減速開始位置を補正する。制御装置9には、噛合歯123a,121aが摩耗していない断続装置12の使用開始時において、スリーブ123の第1回転部材121側への移動によって両噛合歯123a,121aが当接する位置の情報が、例えばデータ内容を書き換え可能な不揮発性メモリに記憶されている。減速開始位置の補正は、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したときのスリーブ123の軸方向位置から所定距離だけ待機位置にずれた位置を新たな減速開始位置とすることにより行う。
次に、図6乃至図8を参照して制御装置9が実行する処理の具体例について詳細に説明する。制御装置9は、CPU(演算処理装置)が予め記憶素子に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの処理を実行する。
図6は、四輪駆動車1の駆動状態を二輪駆動状態から四輪駆動状態に切り替える際に制御装置9が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
制御装置9は、例えば前後輪回転速差やアクセルペダルの踏み込み量、あるいは運転者によるモード切り替えスイッチの操作状態に応じて、二輪駆動状態から四輪駆動状態に移行すべきか否かを判定する(ステップS10)。
四輪駆動状態に移行すべきと判定した場合(ステップS10:Yes)、制御装置9は、駆動力伝達装置15を制御して、プロペラシャフト14に回転力を伝達する(ステップS11)。これにより、回転停止状態にあるプロペラシャフト14が、駆動力伝達装置15を介して伝達される後輪105L,105Rの回転力によって回転を始める。
次に、制御装置9は、断続装置12における第1回転部材121と第2回転部材122との回転同期が完了するのを待ち(ステップS12)、回転同期が完了したら(ステップS12:Yes)、駆動力伝達装置15からプロペラシャフト14に伝達される回転力を低減すると共に(ステップS13)、電動モータ124に高デューティー比で電圧を印加する(ステップS14)。これにより、スリーブ123が高速で待機位置から移動を開始する。
次に、制御装置9は、スリーブ123が減速開始位置を通過するのを待ち(ステップS15)、スリーブ123が減速開始位置を通過したら(ステップS15:Yes)、電動モータ124に低デューティー比で電圧を印加する(ステップS16)。これにより、スリーブ123の移動速度が減速され、減速された状態でスリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接する。
次に、制御装置9は、スリーブ123が第1回転部材121に噛み合うのを待つ(ステップS17)。スリーブ123が第1回転部材121に噛み合ったことは、例えばスリーブ123が当接位置よりも噛み合い完了位置側に移動したことによって判定可能である。スリーブ123が第1回転部材121に噛み合ったら(ステップS17:Yes)、制御装置9は、電動モータ124に高デューティー比で電圧を印加する(ステップS18)。これにより、スリーブ123が高速で噛み合い完了位置に向かって移動する。
そして、制御装置9は、スリーブ123が噛み合い完了位置に移動するのを待ち(ステップS19)、スリーブ123が噛み合い完了位置に移動したら、四輪駆動状態への移行処理を完了する。その後、制御装置9は、前後輪回転速差やアクセルペダルの踏み込み量等に基づいて、必要な駆動力が後輪105L,105Rに伝達されるように駆動力伝達装置15を制御する。
図7は、減速開始位置を補正するための処理の具体例を示すフローチャートである。制御装置9は、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したか否かを判定し(ステップS20)、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したとき(ステップS20:Yes)、スリーブ123の軸方向位置と予め記憶された位置情報との差が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS21)。この所定値は、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したときのスリーブ123の軸方向位置が予め記憶された位置情報と実質的に等しい場合にのみステップS21の判定結果が是(Yes)となる程度の小さな値である。
スリーブ123の軸方向位置と予め記憶された位置情報との差が所定値以下である場合(ステップS21:Yes)、制御装置9はこのフローチャートの処理を終了する。一方、この差が所定値よりも大きい場合(ステップS21:Yes)、制御装置9は、スリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接したと判定したときのスリーブ123の位置(スリーブ123の当接位置)を記憶する(ステップS22)。
次に、制御装置9は、ステップS22で記憶したスリーブ123の当接位置が記憶された位置情報よりも噛み合い完了位置寄りであるか否かを判定する(ステップS23:Yes)。制御装置9は、スリーブ123の当接位置が記憶された位置情報よりも噛み合い完了位置寄りである場合(ステップS23:Yes)、カウンタAをインクリメントすると共に(ステップS24)、カウンタBをクリアする(ステップS25)。なお、このカウンタA及びカウンタBは、後述するステップS27,S32の処理においてスリーブ123の当接位置を平均し、精度を高めるために用いられるものである。
次に、制御装置9は、カウンタAが所定値であるか否かを判定する(ステップS26)。カウンタAが所定値である場合、制御装置9は、この所定値分の回数のスリーブ123の当接位置の平均値を算出する(ステップS27)。この所定値は、例えば10〜20に設定されており、ステップS27の処理では、ステップS22で記憶されたスリーブ123の当接位置を過去の所定値回数分にわたって読み出し、その平均値を算出する。そして、制御装置9は、ステップS27で算出された平均値に基づいて、減速開始位置の補正を行う(ステップS28)。この補正は、例えばステップS27で算出された平均値と予め記憶された位置情報との差を演算し、この差の分だけ減速開始位置を噛み合い完了位置側にずらすことにより行う。また、位置情報は、ステップS27で算出された平均値に更新する。
一方、制御装置9は、スリーブ123の当接位置が記憶された位置情報よりも噛み合い完了位置寄りでない場合(ステップS23:No)、カウンタBをインクリメントすると共に(ステップS29)、カウンタAをクリアする(ステップS30)。そして、カウンタBが所定値である場合、ステップS32及びS33の処理を実行する。ステップS32の処理は、前述のステップS27の処理と同様である。
ステップS33の減速開始位置の補正処理では、例えばステップS32で算出された平均値と予め記憶された位置情報との差を演算し、この差の分だけ減速開始位置を待機位置側にずらすことにより行う。この処理によれば、例えば断続装置12の構成部材の加工誤差や組み付け誤差により、所期の位置よりも待機位置側でスリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接してしまう場合でも、減速開始位置を適正化することが可能となる。
図8は、プロペラシャフト14の検出部140における突起141に割れ部141aや欠け部141bが発生しても、プロペラシャフト14の回転速度を正確に検出できるようにするための処理の具体例を示すフローチャートである。制御装置9は、所定の時間間隔でこのフローチャートの処理を繰り返し実行する。
制御装置9は、まず、四輪駆動車1の駆動状態が四輪駆動状態であるか否かを判定する(ステップS40)。四輪駆動車1の駆動状態が四輪駆動状態である場合(ステップS40:Yes)、制御装置9は、例えばCANから前輪104L,104R及び後輪105L,105Rの車輪速を取得し(ステップS41)、取得した車輪速に基づいて、四輪駆動車1が直進状態でかつ各車輪速が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS42)。この所定値は、例えば車速が40km/h以上である場合の車輪速に相当する値である。ステップS40又はステップS42の判定結果が否(No)である場合、制御装置9は、このフローチャートの処理を終了する。
四輪駆動車1が直進状態でかつ各車輪速が所定値以上である場合(ステップS42:Yes)、制御装置9は、車速に基づいてプロペラシャフト14の回転速度を推定演算し、その演算結果を第1推定回転速度として記憶する(ステップS43)。また、制御装置9は、近接センサ90の出力信号に基づいてプロペラシャフト14の回転速度を推定演算し、その演算結果を第2推定回転速度として記憶する(ステップS44)。
次に、制御装置9は、ステップS44で演算したプロペラシャフト14の第2推定回転速度の補正が必要か否かを判定する(ステップS45)。この処理は、後述するステップS49又はS50で演算される補正係数が1以外の値であるか否かによって行い、補正係数が1以外の値であれば(ステップS45:Yes)、ステップS44で演算した第2推定回転速度に補正係数を乗じて第2推定回転速度を補正する(ステップS46)。
次に、制御装置9は、ステップS43で演算した第1推定回転速度と、ステップS44〜S46で演算もしくは補正された第2推定回転速度とを比較し、その差が所定値以内であるか否かを判定する(ステップS47)。この所定値は、プロペラシャフト14の回転速度の検出誤差により、突起141に割れ部141aや欠け部141bが発生していないのに誤って後述するステップS48〜S50の処理を実行してしまうことを防止できる程度の値に設定されている。
第1推定回転速度と第2推定回転速度との差が所定値以内である場合(ステップS47:Yes)、制御装置9は、このフローチャートの処理を終了する。一方、制御装置9は、第1推定回転速度と第2推定回転速度との差が所定値以内でない場合(ステップS47:No)、第1推定回転速度が第2推定回転速度よりも大きいか否かを判定する(ステップS48)。第1推定回転速度が第2推定回転速度よりも大きい場合(ステップS48:Yes)、突起141に欠け部141bが発生し、第2推定回転速度がプロペラシャフト14の実際の回転速度よりも低く推定演算されていると考えられるので、制御装置9は、欠け部141bの発生による影響を補正する補正係数を演算する(ステップS49)。
本実施の形態では、プロペラシャフト14に損傷が発生していない状態において、検出部140に30個の突起141が設けられているので(図5参照)、補正係数を例えば1.03(≒30/29)とする。この補正係数は、制御装置9が次回以降に図8に示すフローチャートの処理を実行する際に、ステップS46における補正処理に用いられる。
一方、第1推定回転速度が第2推定回転速度よりも小さい場合(ステップS48:No)、突起141に割れ部141aが発生し、この割れ部141aを含む突起141が近接センサ90との対向部を通過するとき、近接センサ90から2つのパルス信号が出力されていると考えられるので、制御装置9は、割れ部141aの発生による影響を補正する補正係数を演算する(ステップS50)。本実施の形態では、補正係数を例えば0.97(≒30/31)とする。この補正係数は、制御装置9が次回以降に図8に示すフローチャートの処理を実行する際にステップS46における補正処理に用いられる。
また、ステップS49又はステップS50で演算された補正係数は、例えば図6に示すフローチャートのステップS12において、断続装置12の同期の完了を判定する際のプロペラシャフト14の回転速度を補正するために用いることができる。
以上説明した処理によれば、プロペラシャフト14の検出部140における突起141に割れ部141aや欠け部141bが発生しても、プロペラシャフト14の回転速度を正確に検出することが可能となる。
図9(a)及び(b)は、四輪駆動車1の駆動状態が二輪駆動状態から四輪駆動状態に移行する際の駆動力伝達装置15の伝達トルク、及びプロペラシャフト14の回転速度の変化の一例を示すグラフである。
図9(a)及び(b)において、横軸は時間軸である。横軸における時刻t1は、図6に示したフローチャートのステップS10の判定処理において、四輪駆動状態に移行すべきと判定された時刻である。制御装置9は、四輪駆動状態に移行すべきと判定したとき、駆動力伝達装置15を制御してプロペラシャフト14に回転力を伝達する。プロペラシャフト14は、この回転力を受けて回転速度が増大する。駆動力伝達装置15のからプロペラシャフト14に伝達されるトルクは、油圧ユニット8やピストン7及び摩擦クラッチ53の動作遅れ時間により、時刻t1からやや遅れた時刻t2において一定の値となる。
時刻t3において断続装置12の回転同期が完了すると、制御装置9は、駆動力伝達装置15の伝達トルクを低減する。プロペラシャフト14は、駆動力伝達装置15の伝達トルクが低減された後も、惰性によって略一定の速度で回転する。また、制御装置9は、断続装置12の回転同期が完了すると、電動モータ124に電圧を印加し、スリーブ123を待機位置から噛み合い完了位置側に移動させる。そして、時刻t4においてスリーブ123と第1回転部材121との噛み合いが完了すると、それ以降、制御装置9は、前後輪回転速差やアクセルペダルの踏み込み量等に応じて駆動力伝達装置15を制御する。
図10(a)及び(b)は、制御装置9が電動モータ124に印加する電圧のデューティー比、及びスリーブ123の移動速度の時刻t3からt4までの間における変化の一例を示すグラフである。
時刻t3において断続装置12の回転同期が完了すると、制御装置9は、電動モータ124に高デューティー比で電圧を印加する。また、時刻t31においてスリーブ123が減速開始位置を通過すると、制御装置9は、電動モータ124に印加する電圧のデューティー比を低減する。そして、時刻t32においてスリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接すると、スリーブ123の軸方向移動が一旦停止する。
その後、時刻t33においてスリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに噛み合うと、制御装置9は、電動モータ124に印加する電圧のデューティー比を高め、スリーブ123を噛み合い完了位置まで移動させる。これにより、第1回転部材121と第2回転部材122とがスリーブ123によって一体に回転する状態となり、フロントデフケース114からプロペラシャフト14にエンジン102の駆動力が伝達される四輪駆動状態となる。
(実施の形態の効果)
以上説明した本実施の形態によれば、断続装置12の回転同期が完了してスリーブ123を待機位置から当接位置に移動させる際、減速開始位置までは高いデューティー比で制御装置9から電動モータ124に電圧が印加され、スリーブ123が高速で移動する。これにより、断続装置12の応答性が高められる。また、スリーブ123が減速開始位置を通過すると、低いデューティー比で制御装置9から電動モータ124に電圧が印加され、スリーブ123の移動速度が減速される。そして、減速された速度でスリーブ123の噛合歯123aが第1回転部材121の噛合歯121aに当接するので、断続装置12の作動時の異音や振動を抑制することが可能となる。
(付記)
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。