本発明の特徴及び利点は、図面とともに取り上げられるときに下記に記載される詳細な説明からより明らかとなろう。図面を参照して実施形態を説明するとき、方向に関する参照(「上(above)」、「下(below)」、「上部(top)」、「下部(bottom)」、「左(left)」、「右(right)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」など)が使用される場合がある。そのような参照は、読者が図面を通常の向きで見るのを補助するものとしてのみ意図している。これらの方向に関する記載は、具現化されるデバイスの特徴の好適な向き又は唯一の向きを説明することを意図していない。デバイスは、他の向きを使用して具現化されてもよい。
I.導入
本発明者らは、従来の超短パルスレーザは一般的に大きく、高価で、多くのモバイル用途、及び/又は、イメージング、測距、もしくは生物分析用途に適合することができるポータブル機器への組み込みには適していないことを認識し、諒解するに至った。したがって、本発明者らは、選択された波長において、また最大約400ミリワット(mW)の平均光パワーにおいて100ピコ秒未満のパルスを与えることができるコンパクトな超短パルス・レージング・システムを着想した。レージング・システムは、約50MHzと約200MHzとの間の光パルス繰り返し数を与えるように構成することができる。いくつかの実施形態において、パルスレーザ及びその光学素子によって専有される面積はおおよそ、約40mm以下の厚さを有するA4用紙のサイズであり得る。いくつかの実施態様において、パルス半導体レーザは、実質的にこのサイズよりも小さいものであり得る。
「光学的(optical)」という用語は、紫外線、可視光、近赤外線及び短波長赤外線のスペクトル帯域を参照し得る。
遺伝子シーケンシング又は大規模並列アッセイのようないくつかの生物分析用途において、光励起エネルギーをチップ上に集積されている複数の反応室に送達するために、コン
パクトなパルス・レージング・システムを使用することができる。いくつかの実施態様によれば、チップ上の反応室の数は、約10,000と約10,000,000との間であり得、室は、一定期間にわたって複数の生化学反応を受け得る試料を含むことができる。他の実施態様において、チップ上にはより少ない又はより多い反応室があってもよい。いくつかの実施形態によれば、パルスレーザからの光パルスによる励起後に、試料もしくは試料と相互作用する分子が、蛍光を発する1つもしくは複数の蛍光色素分子によって標識化されてもよく、又は、試料自体が蛍光を発してもよい。反応室からの蛍光発光の検出及び分析は、室内の試料に関する情報をもたらす。
そのような多数の反応室を含み、複数の異なる蛍光色素分子を使用するポータブル機器を作成するためには、いくつかの技術的課題が存在する。パルス・レージング・システムは小型かつ軽量でなければならず、すべての反応室内の蛍光色素分子を励起するのに十分な光パワーを与える必要がある。加えて、種々の蛍光色素分子をパルスレーザによって励起し(例えば、DNAシーケンシングのためには異なる発光特性を有する4つの蛍光色素分子)、各蛍光色素分子を他の蛍光色素分子から区別することができるように、蛍光色素分子からの各反応室における異なる発光特性を検出するための何らかの方法がなければならない。
概観すると、図1−1Aに示すように、分析機器1−100は、機器内に取り付けられているか、又は、他の様態で結合されている、1つ又は複数のパルスレーザ1−110を備えることができる。いくつかの実施形態によれば、パルスレーザ1−110は、モードロックレーザであってもよい。モードロックレーザは、レーザキャビティ内にあるか、又は、レーザキャビティに結合されている、レーザの長手方向周波数モードの位相ロックを誘発する要素(例えば可飽和吸収体、音響光学変調器、カー・レンズ)を含むことができる。他の実施形態では、パルスレーザ1−110は、利得切換レーザであってもよい。利得切換レーザは、レーザの利得媒体における光学利得を変調する外部変調器を備えることができる。
機器1−100は、光学系1−115及び分析システム1−160を含むことができる。工学システム1−115は、1つ又は複数の光学構成要素(例えば、レンズ、ミラー、光学フィルタ、減衰器)を含むことができ、パルスレーザ1−110からの光パルス1−122に対して動作し、及び/又は、この光パルスを分析システム1−160に送達するように構成することができる。分析システムは、光パルスを、分析されるべきである少なくとも1つの試料へと方向付け、少なくとも1つの試料から1つ又は複数の光信号(例えば、蛍光発光、後方散乱放射)を受信し、受信光信号を表す1つ又は複数の電気信号を生成するように構成されている多くの構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態において、分析システム1−160は、1つ又は複数の光検出器と、光検出器からの電気信号を処理するように構成されている信号処理電子装置(例えば、1つ又は複数のマイクロコントローラ、1つ又は複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、1つ又は複数のデジタル信号プロセッサ、論理ゲートなど)とを含むことができ、データ通信リンクを介して外部デバイスにデータを伝送し、外部デバイスからデータを受信するように構成されているデータ伝送ハードウェアをも含むことができる。いくつかの実施形態において、分析システム1−160は、分析されるべき1つ又は複数の試料を保持するバイオ光電子チップ1−140を受け入れるように構成することができる。
光パルス1−122は、単一の横方向光モードを有するものとして示されているが、いくつかの実施形態において、パルスレーザ1−110からの光出力はマルチモードであってもよい。例えば、横方向出力ビーム・プロファイルは、レーザのマルチモード動作に起因して、複数の強度ピーク及び最小値を有してもよい。いくつかの実施形態において、マ
ルチモード出力は、分析システム1−160に結合されるときに(例えば、拡散光学素子によって)均質化することができる。いくつかの実施形態において、マルチモード出力は、分析システム1−160内の複数のファイバ又は導波路に結合することができる。例えば、マルチモード出力の各強度ピークが、バイオ光電子チップ1−140に接続する別個の導波路に結合されてもよい。パルスレーザがマルチモード状態で動作することを可能にすることによって、パルスレーザからの出力パワーをより高くすることが可能になり得る。
図1−1Bは、機器の機器シャーシ又はフレーム1−102に取り付けることができる、パルスレーザ1−110を含む分析機器1−100のさらなる詳細な例を示す。分析機器は、取り外し可能な、パッケージされたバイオ光電子チップ1−140を受け入れるように構成することができる。チップは、複数の反応室と、光励起エネルギーを反応室に送達するように構成されている集積光学構成要素と、反応室から蛍光発光を検出するように構成されている集積光検出器とを含むことができる。いくつかの実施態様において、チップ1−140は、使い捨てであってもよく、一方で、他の実施態様では、チップは再使用可能であってもよい。チップが機器によって受け入れられると、チップは、パルスレーザと電気的及び光学的に通信することができ、分析システム1−160と電気的及び光学的に通信することができる。
いくつかの実施形態において、バイオ光電子チップは、追加の機器電子装置を含むことができるプリント回路基板(PCB)のような電子回路基板1−130上に(例えば、ソケット接続を介して)取り付けることができる。例えば、PCB1−130は、電力、1つ又は複数のクロック信号、及び制御信号をバイオ光電子チップ1−140に与えるように構成されている回路と、反応室から検出される蛍光発光を表す信号を受信するように構成されている信号処理回路とを含むことができる。PCB1−130はまた、バイオ光電子チップ1−140の導波路に結合されている光パルス1−122の光結合及びパワー・レベルに関するフィードバック信号を受信するように構成されている回路をも含むことができる。バイオ光電子チップから戻されるデータは、部分的に又は全体的に機器によって処理することができるが、データは、いくつかの実施態様では、ネットワーク接続を介して1つ又は複数の遠隔データ・プロセッサに伝送されてもよい。
いくつかの実施形態によれば、超短パルスレーザ1−110は、利得媒体1−105(いくつかの実施形態では固体材料であってもよい)と、利得媒体を励起するためのポンプ・ソース(例えばレーザダイオード、図示せず)と、出力カプラ1−111と、レーザキャビティ端部ミラー1−119とを備えることができる。レーザの光学キャビティは、出力カプラ及び端部ミラーによって境界することができる。レーザキャビティの光軸1−125は、レーザキャビティの長さを増大させるための1つ又は複数の折り返し(巻き)を有することができる。いくつかの実施形態において、ビーム成形、波長選択、及び/又はパルス形成のための追加の光学素子(図示せず)がレーザキャビティ内にあってもよい。いくつかの事例において、端部ミラー1−119は、長手方向キャビティ・モードの受動モード・ロックを誘発し、レーザ1−110のパルス動作をもたらす可飽和吸収体ミラー(SAM)を備えてもよい。
受動モード・ロックされると、キャビティ内パルス1−120は、端部ミラー1−119と出力カプラ1−111との間で循環することができ、キャビティ内パルスの一部分は、出力パルス1−122として出力カプラ1−111を通じて伝送することができる。したがって、キャビティ内パルス1−120がレーザキャビティ内の出力カプラ1−111と端部ミラー1−119との間で前後に跳ねるため、図1−2のグラフに示すような、出力パルス1−122の列を、出力カプラにおいて検出することができる。
図1−2は、出力パルス1−122の時間的強度プロファイルを示す。いくつかの実施形態において、放出されるパルスのピーク強度値は、ほぼ等しくなり得、プロファイルはガウス時間プロファイルを有してもよいが、sech2プロファイルのような他のプロファイルが可能であり得る。いくつかの事例において、パルスは、対称時間プロファイルを有しなくてもよく、他の時間的形状を有してもよい。各パルスの持続時間は、図1−2に示すような、半値全幅(FWHM)値によって特性化することができる。パルスレーザのいくつかの実施形態によれば、超短光パルスは、100ピコ秒(ps)未満のFWHM値を有することができる。いくつかの事例において、FWHM値は、30ps未満であってもよい。
出力パルス1−122は、周期的な間隔Tによって分離され得る。いくつかの実施形態において(例えば、モードロックレーザについて)、Tは、出力カプラ1−111とキャビティ端部ミラー1−119との間の往復進行時間によって決定することができる。いくつかの実施形態によれば、パルス分離間隔Tは、約1nsと約30nsとの間であってもよい。いくつかの事例において、パルス分離間隔Tは、約0.7メートルと約3メートルとの間のレーザキャビティ長(レーザキャビティ内の光軸1−125のおおよその長さ)に対応する、約5nsと約20nsとの間であってもよい。
いくつかの実施形態によれば、チップ1−140上の反応室の数、蛍光発光特性、及び、バイオ光電子チップ1−140からデータを読み出すためのデータ処理回路の速度の組み合わせによって、所望のパルス分離間隔T及びレーザキャビティ長を決定することができる。本発明者らは、異なる蛍光色素分子を、それらの異なる蛍光減衰率によって識別することができることを認識し、諒解するに至った。したがって、選択される蛍光色素分子がそれらの異なる減衰率の間を識別するために、十分な統計値を収集するのに十分なパルス分離間隔Tがある必要がある。加えて、パルス分離間隔Tが短すぎる場合、データ処理回路は、大量のデータが多数の反応室によって収集されるのについていくことができない。本発明者らは、約5nsと約20nsとの間のパルス分離間隔Tが、最大約2nsの減衰率を有する蛍光色素分子に、及び、約60,000個と600,000個との間の反応室からのデータの処理に適していることを認識し、諒解するに至った。
いくつかの実施態様によれば、ビーム・ステアリング・モジュール1−150は、パルスレーザ1−110から出力パルスを受信することができ、光パルスの位置、及び、光パルスのバイオ光電子チップ1−140の光カプラへの入射角を調整するように構成することができる。いくつかの実施形態によれば、パルスレーザからの出力パルスは、ビーム・ステアリング・モジュール1−150によって操作することができ、ビーム・ステアリング・モジュール1−150は、出力パルスのビームを、バイオ光電子チップ1−140上の光カプラに位置合わせするように構成されている。ビーム・ステアリング・モジュールは、光カプラにおける光ビームの位置及び入射角の調整を可能にすることができる。いくつかの実施態様において、ビーム・ステアリング・モジュールは、出力パルスのビームの、光カプラへの集束をさらに可能にすることができる。
図1−3を参照すると、出力パルス1−122を、バイオ光電子チップ上の1つ又は複数の光導波路1−312に結合することができる。いくつかの実施形態において、光パルスは、格子カプラ1−310を介して1つ又は複数の導波路に結合することができるが、いくつかの実施形態において、バイオ光電子チップ上の光導波路の端部への結合が使用されてもよい。いくつかの実施形態によれば、光パルス1−122のビームの格子カプラ1−310への位置合わせを補助するために、クワッド検出器1−320が半導体基板1−305(例えば、シリコン基板)上に位置してもよい。1つ又は複数の導波路1−312及び反応室1−330が、基板、導波路、反応室、及び光検出器1−322の間に誘電体層(例えば、二酸化ケイ素層)を介在させて、同じ半導体基板上に集積されてもよい。
各導波路1−312は、導波路に沿って反応室に結合される光パワーを均質化するために、反応室1−330の下の先細り部分1−315を含むことができる。狭まる先細りによって、より多くの光エネルギーを導波路のコアの外側に押しやることができ、反応室への結合が増大し、反応室に結合する光の損失を含む、導波路に沿った光学的損失が補償される。光エネルギーを集積フォトダイオード1−324に方向付けるために、各導波路の端部に第2の格子カプラ1−317が位置することができる。集積フォトダイオードは、導波路を下って結合されるパワーの量を検出することができ、例えば、ビーム・ステアリング・モジュール1−150を制御するフィードバック回路に、検出された信号を与えることができる。
反応室1−330は、導波路の先細り部分1−315と位置合わせすることができ、タブ1−340において陥凹することができる。各反応室1−330に対して、半導体基板1−305上に位置する時間ビニング光検出器1−322があり得る。反応室内にない蛍光色素分子(例えば、反応室の上で溶液中に分散している)の光励起を防止するために、反応室の周囲及び導波路の上に、金属コーティング及び/又は多層コーティング1−350を形成することができる。金属コーティング及び/又は多層コーティング1−350は、各導波路の入力端及び出力端における導波路1−312内の光エネルギーの吸収損失を低減するために、タブ1−340の縁部を越えて隆起することができる。
バイオ光電子チップ1−140上に、複数列の導波路、反応室、及び時間ビニング光検出器があってもよい。例えば、いくつかの実施態様において、各々が512個の反応室を有する128列があてもよく、反応室は合計で65,536個になる。他の実施態様は、より少ない又はより多い反応室を含んでもよく、他のレイアウト構成を含んでもよい。パルスレーザ1−110からの光パワーは、チップ1−140への光カプラと複数の導波路との間に位置する、1つ又は複数のスター・カプラもしくはマルチ・モード干渉カプラ、又は任意の他の手段を介して複数の導波路に分配することができる。
図1−4は、導波路1−315内の光パルス1−122から反応室1−330への光エネルギー結合を示す。図面は、導波路寸法、反応室寸法、種々の材料の光学特性、及び、反応室1−330からの導波路1−315の距離を考慮する、光波の電磁場シミュレーションから生成されている。導波路は、例えば、周囲にある二酸化ケイ素の媒体1−410内の窒化ケイ素から形成されてもよい。導波路、周囲の媒体、及び反応室は、「分子を調査、検出及び分析するための統合デバイス(Integrated Device for Probing, Detecting and Analyzing Molecules)」と題する、2015年8月7日に出願された米国特許出願第14/821,688号に記載されている微細加工工程によって形成されてもよい。いくつかの実施形態によれば、エバネセント光場1−420が、導波路によって運ばれる光エネルギーを反応室1−330に結合する。
反応室1−330内で行われる生物学的反応の非限定例が、図1−5に示されている。この例において、標的核酸に対して相補的である伸長鎖へのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の連続的な取り込みが、反応室内で行われている。連続的な取り込みは、DNAをシーケンシングするために検出することができる。反応室は、約150nm〜約250nmの深さ、及び、約80nm〜約160nmの直径を有することができる。隣接する反応室及び他の望ましくない光源からの迷光を阻害する開口部を設けるために、金属化層1−540(例えば基準電位のための金属化)を、光検出器の上にパターニングすることができる。いくつかの実施形態によれば、ポリメラーゼ1−520が、反応室1−330内に位置する(例えば、室の基部に付着する)ことができる。ポリメラーゼは、標的核酸1−510(例えば、DNAから導出される核酸の一部分)に作用し、相補的な核酸の伸長
鎖をシーケンシングして、DNA1−512の伸長鎖を生成することができる。異なる蛍光色素分子を用いて標識化されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、反応室の上又は中の溶液中に分散され得る。
図1−6に示すように、標識化されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体1−610が相補的な核酸の伸長鎖に取り込まれると、1つ又は複数の付着した蛍光色素分子1−630を、導波路1−315から反応室1−330に結合されている光エネルギーのパルスによって繰り返し励起することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の蛍光色素分子1−630は、任意の適切なリンカ1−620を用いて1つ又は複数のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体1−610に付着することができる。取り込み事象は、最大約100msの期間にわたって継続し得る。この時間の間、蛍光色素分子(複数可)の励起からもたらされる蛍光発光のパルスを、時間ビニング光検出器1−322を用いて検出することができる。異なる発光特性(例えば、蛍光減衰率、強度、蛍光波長)を有する蛍光色素分子を異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させ、DNA1−512のストランドが核酸を取り込んでいる間に異なる発光特性を検出及び識別することによって、DNAの伸長鎖の遺伝子配列を決定することが可能である。
いくつかの実施形態によれば、蛍光発光特性に基づいて試料を分析するように構成されている分析機器1−100は、異なる蛍光分子の間の蛍光寿命及び/もしくは強度の差、ならびに/又は、異なる環境における同じ蛍光分子の寿命及び/もしくは強度の間の差を検出することができる。説明として、図1−7は、例えば、2つの異なる蛍光分子からの蛍光発光を表すことができる、2つの異なる蛍光発光確率曲線(A及びB)をプロットしている。曲線A(破線)を参照すると、短パルス又は超短光パルスによって励起された後、第1の分子からの蛍光発光の確率pA(t)は、示されているように、時間とともに減衰し得る。いくつかの事例において、経時的な光子が放出される確率の低減は、指数減衰関数
によって表すことができ、式中、P
A0は初期発光確率であり、τ
Aは、発光減衰確率を特性化する、第1の蛍光分子と関連付けられる時間パラメータである。τ
Aは、第1の蛍光分子の「蛍光寿命」、「発光寿命」又は「寿命」と称されてもよい。いくつかの事例において、τ
Aの値は、蛍光分子のローカル環境によって変更されてもよい。他の蛍光分子は、曲線Aに示すものとは異なる発光特性を有し得る。例えば、別の蛍光分子は、単一の指数関数的減衰とは異なる減衰プロファイルを有する場合があり、その寿命は、半減期値又は何らかの他の測定基準によって特性化することができる。
第2の蛍光分子は、図1−7の曲線Bについて示すように、指数関数的ではあるが、測定可能に異なる寿命τBを有する減衰プロファイルを有し得る。図示されている例において、曲線Bの第2の蛍光分子の寿命は曲線Aの寿命よりも短く、発光の確率は、第2の分子の励起直後では、曲線Aよりも高い。いくつかの実施形態において、種々の蛍光分子は、約0.1ns〜約20nsに及ぶ範囲の寿命又は半減期値を有し得る。
本発明者らは、蛍光発光寿命の差を使用して、異なる蛍光分子の存否を判別し、及び/又は、蛍光分子がさらされる異なる環境もしくは条件の間で判別することができることを認識し、諒解するに至った。いくつかの事例において、寿命(例えば、発光波長ではなく)に基づいて蛍光分子を判別することによって、分析機器1−100の態様を単純化する
ことができる。1例として、寿命に基づいて蛍光分子を判別する場合、波長弁別光学素子(波長フィルタ、各波長の専用検出器、異なる波長における専用パルス光源、及び/又は回折光学素子)の数を低減することができるか、又は、なくすことができる。いくつかの事例において、単一の固有波長において動作する単一のパルス光源を使用して、光学スペクトルの同じ波長領域内で発光するが、測定可能に異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起することができる。同じ波長領域内で発光する異なる蛍光分子を励起及び判別するために、異なる波長における複数の光源ではなく、単一のパルス光源を使用する分析システムは、動作及び保守管理の複雑さを低減することができ、よりコンパクトにすることができ、より低いコストで製造することができる。
蛍光寿命分析に基づく分析システムは、一定の利点を有することができるが、追加の検出技法を可能にすることによって、分析システムによって得られる情報の量及び/又は検出精度を増大することができる。例えば、いくつかの分析システム1−160は、蛍光波長及び/又は蛍光強度に基づいて試料の1つ又は複数の特性を判別するようにさらに構成されてもよい。
再び図1−7を参照すると、いくつかの実施形態によれば、蛍光分子の励起後の蛍光発光事象を時間ビニングするように構成されている光検出器を用いて、異なる蛍光寿命を区別することができる。時間ビニングは、光検出器の単一の電荷蓄積サイクルの間に行われ得る。電荷蓄積サイクルは、読み出し事象の間の間隔であり、その間に光発生キャリアが時間ビニング光検出器のビン内に蓄積される。発光事象の時間ビニングによって蛍光寿命を決定するという概念は、図1−8にグラフで紹介されている。t1の直前の時刻teにおいて、蛍光分子又は同じタイプ(例えば、図1−7の曲線Bに対応するタイプ)の蛍光分子の集合が、短パルス又は超短光パルスによって励起される。分子の大きい集合について、発光の強度は、図1−8に示すように、曲線Bと同様の時間プロファイルを有し得る。
一方、単一の分子又は少数の分子について、蛍光光子の放出は、この例については、図1−7の曲線Bの統計値に従って生じる。時間ビニング光検出器1−322は、発光事象から発生するキャリアを、蛍光分子(複数可)の励起時間に関して時間分解されている個別の時間ビン(図1−8には3つが示されている)に蓄積することができる。多数の発光事象が合計される場合、結果もたらされる時間ビンは、図1−8に示す減衰強度曲線を近似することができ、ビニングされた信号を使用して、異なる蛍光分子又は蛍光分子が位置している異なる環境の間で区別することができる。
時間ビニング光検出器1−322の例は、参照により本願明細書に援用する、「受け取られる光子の時間ビニングのための統合デバイス(Integrated Device
for Temporal Binning of Received Photons)」と題する、2015年8月7日に出願された米国特許出願第14/821,656号に記載されている。説明を目的として、時間ビニング光検出器の非限定的な実施形態が、図1−9に示されている。単一の時間ビニング光検出器1−900は、すべて半導体基板上に形成される、光子吸収/キャリア発生領域1−902、キャリア移動領域1−906、及び複数のキャリア貯蔵ビン1−908a、1−908b、1−908cを備えることができる。キャリア移動領域は、キャリア輸送チャネル1−907によって複数のキャリア貯蔵ビンに接続することができる。3つのキャリア貯蔵ビンのみが図示されているが、より多くのビンがあってもよい。キャリア貯蔵ビンに接続されている読み出しチャネル1−910があり得る。光子吸収/キャリア発生領域1−902、キャリア移動領域1−906、キャリア貯蔵ビン1−908a、1−908b、1−908c、及び読み出しチャネル1−910は、半導体を局所的にドーピングすること、及び/又は、調整絶縁領域を形成して光検出機能をもたらし、キャリアを閉じ込めることによって形成することがで
きる。時間ビニング光検出器1−900はまた、デバイスを通じてキャリアを輸送するための電場をデバイス内に発生させるように構成されている、基板上に形成されている複数の電極1−920、1−922、1−932、1−934、1−936、1−940をも含むことができる。
動作時、蛍光光子が、異なる複数の時点において光子吸収/キャリア発生領域1−902において受け取られ、キャリアを発生させることができる。例えば、ほぼ時刻t1において、3つの蛍光光子が、光子吸収/キャリア発生領域1−902の空乏領域において3つのキャリア電子を発生させることができる。デバイス内の電場(電極1−920及び1−922及び任意選択的に又は代替的に1−932、1−934、1−936に対するドーピング及び/又は外部印加バイアスに起因する)が、キャリアをキャリア移動領域1−906に移動させることができる。キャリア移動領域において、移動距離が、蛍光分子の励起後の時間に変換される。後の時刻t5において、別の蛍光光子が、光子吸収/キャリア発生領域1−902において受け取られ、追加のキャリアを発生させることができる。この時点において、最初の3つのキャリアは、第2の貯蔵ビン1−908bに隣接するキャリア移動領域1−906内の位置に移動している。後の時刻t7において、電気的バイアスを電極1−932、1−934、1−936と電極1−940との間に印加して、キャリア移動領域1−906から貯蔵ビンへとキャリアを横方向に輸送することができる。最初の3つのキャリアはその後、第1のビン1−908aに輸送して保持することができ、後に発生したキャリアは、第3のビン1−908cに輸送して保持することができる。いくつかの実施態様において、各貯蔵ビンに対応する時間間隔は、ナノ秒未満の時間スケールにあるが、いくつかの実施形態(例えば、蛍光色素分子がより長い減衰時間を有する実施形態)では、より長い時間スケールが使用されてもよい。
励起事象(例えば、パルス光源からの励起パルス)後にキャリアを発生及び時間ビニングする工程は、単一の励起パルスの後に1度行われてもよく、又は、光検出器1−900の単一の電荷蓄積サイクルの間に複数の励起パルス後に複数回繰り返されてもよい。電荷蓄積が完了した後、キャリアは、読み出しチャネル1−910を介して貯蔵ビンから読み出すことができる。例えば、適切なバイアス・シーケンスを少なくとも電極1−940及び下流の電極(図示せず)に印加して、貯蔵ビン1−908a、1−908b、1−908cからキャリアを除去することができる。
複数の励起事象の後、各電子貯蔵ビン内の蓄積された信号を読み出して、例えば、蛍光発光減衰率を表す対応するビンを有するヒストグラムをもたらすことができる。そのような工程は、図1−10A及び図1−10Bに示されている。ヒストグラムのビンは、反応室内の蛍光色素分子(複数可)の励起後の時間間隔中に検出される光子の数を示すことができる。いくつかの実施形態において、ビンの信号は、図1−10Aに示すように、多数の励起パルス後に蓄積される。励起パルスは、パルス間隔時間Tによって分離されている時刻te1、te2、te3、...、teNにおいて生じ得る。電子貯蔵ビン内の信号の蓄積の間に反応室に印加される105個と107個との間の励起パルスがあり得る。いくつかの実施形態において、1つのビン(ビン0)は、各光パルスによって送達される励起エネルギーの大きさを検出するように構成することができ、(例えばデータを正規化するための)基準信号として使用することができる。
いくつかの実施態様において、図1−10Aに示すように、平均して単一の光子のみが、励起事象後に蛍光色素分子から放出され得る。時刻te1における最初の励起事象の後、時刻tf1において放出される光子が、第1の時間間隔内に生じ得、それによって、もたらされる電子信号が、第1の電子貯蔵ビン内に蓄積される(ビン1に寄与する)。時刻te2における後続の励起事象において、時刻tf2において放出される光子が、第2の時間間隔内に生じ得、それによって、もたらされる電子信号が、ビン2に寄与する。
多数の励起事象及び信号蓄積の後、時間ビニング光検出器1−322の電子貯蔵ビンを読み出して、反応室に関する多値信号(例えば、2つ以上の値を備えるヒストグラム、N次元ベクトルなど)を与えることができる。各ビンの信号値は、蛍光色素分子の減衰率に依存し得る。例えば、再び図1−8を参照すると、減衰曲線Bを有する蛍光色素分子は、減衰曲線Aを有する蛍光色素分子よりも高い、ビン1内の信号のビン2内の信号に対する比を有することになる。ビンからの値は、較正値及び/又は互いに対して分析及び比較して、特定の蛍光色素分子を決定することができ、この蛍光色素分子が、反応室内にあるときに蛍光色素分子に結合されているヌクレオチド又はヌクレオチド類似体(又は対象の任意の他の分子もしくは試料)を同定する。
信号分析の理解をさらに補助するために、蓄積されたマルチ・ビン値を、例えば図1−10Bに示すようにヒストグラムとしてプロットすることができ、又は、N次元空間内のベクトルもしくは位置として記録することができる。較正ランを別個に実施して、4つのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に結合されている4つの異なる蛍光色素分子の多値信号(例えば、較正ヒストグラム)の較正値を取得することができる。1例として、較正ヒストグラムを、図1−11A(Tヌクレオチドに関連付けられている蛍光標識)、図1−11B(Aヌクレオチドに関連付けられている蛍光標識)、図1−11C(Cヌクレオチドに関連付けられている蛍光標識)、及び図1−11D(Gヌクレオチドに関連付けられている蛍光標識)に示されているように見ることができる。測定された多値信号(図1−10Bのヒストグラムに対応する)を、較正多値信号と比較することによって、DNAの伸長鎖に取り込まれているヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のアイデンティティ「T」(図1−11A)を決定することができる。
いくつかの実施態様において、異なる蛍光色素分子の間で区別するために、蛍光強度が追加的に又は代替的に使用されてもよい。例えば、いくつかの蛍光色素分子は、たとえそれらの減衰率が類似し得ても、大きく異なる強度において発光する場合があるか、又は、それらの励起の確率に著しい差(例えば、少なくとも約35%の差)を有する場合がある。ビニングされている信号(ビン1〜3)を、測定された励起エネルギービン0に対して参照することによって、強度レベルに基づいて異なる蛍光色素分子を区別することが可能であり得る。
いくつかの実施形態において、同じタイプの異なる数の蛍光色素分子を異なるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に結合することができ、それによって、蛍光強度に基づいてヌクレオチドを同定することができる。例えば、2つの蛍光色素分子を第1のヌクレオチド(例えば、「C」)又はヌクレオチド類似体に結合することができ、4つ以上の蛍光色素分子を第2のヌクレオチド(例えば、「T」)又はヌクレオチド類似体に結合することができる。蛍光色素分子の数が異なるため、異なるヌクレオチドに関連付けられる異なる励起及び蛍光色素分子発光確率があり得る。例えば、信号蓄積間隔中に、「T」ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体についてより多くの発光事象があり得、それによって、これらのビンの見かけの強度は、「C」ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体よりも大幅に高い。
本発明者らは、蛍光色素分子減衰率及び/又は蛍光色素分子強度に基づいてヌクレオチド又は任意の他の生物又は化学試料を区別することによって、分析機器1−100内の光励起及び検出システムを単純化することが可能になることを認識し、諒解するに至った。例えば、光励起は、単一波長源(例えば、複数の光源又は複数の異なる固有波長において動作する光源ではなく、1つの固有波長を生成する光源)を用いて実施することができる。加えて、波長弁別光学素子及びフィルタは、検出システムに必要ない場合がある。また、単一の光検出器を各反応室に使用して、異なる蛍光色素分子からの発光を検出すること
ができる。
「固有波長」又は「波長」という語句は、限定された放射の帯域幅内の中心波長又は主波長(例えば、パルス光源によって出力される20nm帯域幅内の中心波長又はピーク波長)を参照するために使用される。いくつかの事例において、「固有周波数」又は「波長」は、光源によって出力される放射の全帯域幅内のピーク波長を参照するために使用されてもよい。
本発明者らは、約560nmと約900nmとの間の範囲内の発光波長を有する蛍光色素分子が、時間ビニング光検出器(CMOS工程を使用してシリコン・ウェハ上に作製することができる)によって検出されるのに十分な量の蛍光発光を与え得ることを認識し、諒解するに至った。これらの蛍光色素分子は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のような、対象の生体分子に結合することができる。この波長範囲内の蛍光発光は、シリコン・ベースの光検出器内で、より長い波長の蛍光発光よりも高い応答度で検出することができる。加えて、蛍光色素分子及び関連付けられるリンカはこの波長範囲において、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の、DNAの伸長鎖への取り込みに干渉しないことができる。本発明者らはまた、約560nmと約660nmとの間の範囲内の発光波長を有する蛍光色素分子を、単一波長源を用いて光励起することができることを認識し、諒解するに至った。この範囲内の例示的な蛍光色素分子は、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック・インコーポレイテッド社(Thermo Fisher Scientific
Inc.)[米国マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)所在]から入手可能なAlexa Fluor 647である。本発明者らはまた、より短い波長(例えば、約500nmと約650nmとの間)における励起エネルギーが、パルスレーザから、約560nmと約900nmとの間の波長を発光する蛍光色素分子を励起するために必要とされ得ることを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施形態において、時間ビニング光検出器は、例えば、Geのような他の材料を光検出器活性領域に組み込むことによって、試料からより長い波長の発光を効率的に検出することができる。
本発明者らは、パルスレーザからの光パルスは、励起エネルギーが後続して検出される蛍光信号を圧倒しないように、又は、それと干渉しないように、上述した検出方式のために迅速に消滅すべきであるということを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施形態において、再び図1−5を参照すると、導波路1−315と時間ビニング光検出器1−322との間に波長フィルタはなくてもよい。後続の信号収集との励起エネルギーの干渉を避けるために、励起パルスの強度は、励起パルスのピークから約100ps以内に、少なくとも50dBだけ低減する必要があり得る。いくつかの実施形態において、励起パルスの強度は、励起パルスのピークから約100ps以内に、少なくとも80dBだけ低減する必要があり得る。本発明者らは、モードロックレーザが、そのような急速なターン・オフ特性をもたらすことができることを認識し、諒解するに至った。いくつかの事例において、発光波長が励起波長よりも著しく長い場合、単純な光学フィルタを光検出器の上に組み込んで、時間ビニング光検出器に対する励起パルスの影響をさらに低減することができる。いくつかの実施形態によれば、パルス間の励起エネルギーの強度の低減は、励起エネルギーが蛍光信号の検出装置から離れる方向に向けられる場合、さらに20dB以上だけ低減することができる。例えば、励起エネルギーは、図1−3に示すように、蛍光検出経路とは異なる方向(例えば、2つの経路の方向は、図面に示すように、ほぼ直行していてもよい)に伝播する導波路内で送達されてもよい。パルス間の励起エネルギーの低減はまた、導波路材料開発及びデバイス作製(例えば散乱損失の低減及び蛍光発光の低減を呈する導波路材料、ならびに、滑らかな導波路側壁を生成するエッチング工程)を通じて達成することもできる。さらに、反応室から離れた励起エネルギーの散乱は、電磁的シミュレーションからの結果に基づいて、室幾何形状、材料、及び周囲の構造の気化形状を選択することによって低減することができる。
本発明者らはまた、パルスレーザは、各励起パルスについてバイオ光電子チップ上の反応室の各々の中の少なくとも1つの蛍光色素分子を励起するのに十分なパルスあたりのエネルギーを与えるべきであることを認識し、諒解するに至った。約65,000個の反応室を含むチップについて、また、システム全体を通じた光学的損失を考慮に入れて、本発明者らは、パルスレーザが、励起波長において約300mW以上の平均光パワーをもたらすべきであると決定した。
本発明者らはさらに、バイオ光電子チップ1−140の光カプラ及び導波路への効率的な結合を達成することができるように、パルスレーザのビーム品質は高くなるべきである(例えば、1.5未満のM2値)ことを認識し、諒解するに至った。
上記の特性を有し、コンパクトなパッケージ(例えば、占有する体積が約0.01416m3(0.5ft3)未満である)において動作可能なパルスレーザ・システムが、上述したようにDNAをシーケンシングするように構成されている機器のような、ポータブル分析機器1−100にとって有用であろう。
II.パルスレーザ実施形態
II.A.モードロックレーザ
本発明者らは、平均パワー、コンパクトさ、ビーム品質、パルス繰り返し数、動作波長、及び光パルスのターン・オフ速度に関する上述した性能仕様を達成するパルスレーザ・システム1−110を着想し、構築した。いくつかの実施形態によれば、パルスレーザは、図2−1Aに示すような固体モードロックレーザを含む。レージング・システムの光学構成要素は、約20cmと約40cmとの間の長さと、約10cmと約30cmとの間の高さがあり、約10mmと約18mmとの間の厚さを有するベースプレート2−105上に取り付けることができる。いくつかの実施形態において、ベースプレートの寸法は、約30cmの長さ、約18cmの高さ、及び約12mmの厚さであってもよい。いくつかの実施形態において、12mm径の(又はより小さい)光学構成要素をレーザ・システムに使用することができ、光学構成要素及び関連する光学台を含むレージング・システムの厚さ全体が4cmと約6cmとの間になり得るように、ベースプレート(図2−2Aに関連して後述する)内へと部分的に陥凹することができる。いくつかの実施形態によれば、レージング・システムが占有する体積は、約30cm×18cm×5cm又は約0.002832m3(0.1ft3)であってもよい。
パルスレーザは、レーザキャビティの出力端部にある出力カプラ1−111と、利得媒体1−105と、レーザキャビティの反対の端部にある可飽和吸収体ミラー(SAM)1−119とを備えることができる。所望のパルス繰り返し数を達成するために、光軸1−125を折り返し、レーザキャビティの長さを延長するために、レーザキャビティ内に複数のミラーがあり得る。また、キャビティ内レーザビームのサイズ及び/又は形状を変更するために、レーザキャビティ内にビーム成形光学素子(例えば、レンズ及び/又はカーブ・ミラー)もあり得る。
いくつかの実施形態によれば、出力カプラ1−111は、10−5の表面品質(スクラッチ及びディグ)及び最大λ/10の波面誤差を有する高品質レーザ光学素子であってもよい。出力カプラの1つの表面は、レージング波長λ1について約75%と約90%との間の反射率をもたらすために、多層誘電体でコーティングすることができる。出力カプラの第2の表面は、反射防止コーティングでコーティングすることができ、反射面に対して一定の角度に向けることができる。出力カプラ上のコーティングは、利得媒体1−105を励起するために使用することができるダイオード・ポンプ・レーザからのポンプ波長λpを無視できる反射で透過するように、2色性であり得る。出力カプラは、2つの直交する軸を中心とした入射光軸1−125に対する角度調整を可能にする2軸調整可能マウン
ト内に取り付けることができる。いくつかの実施形態において、出力カプラは、非調整可能マウント上に取り付けられてもよい。
利得媒体1−105は、熱をベースプレート2−105へと散逸させる熱伝導性マウント(例えば、銅ブロック)内に取り付けられるネオジム・ドープ材料を含んでもよい。利得媒体から銅ブロックへの熱伝達を改善するために、利得媒体は、インジウム箔又は熱伝導性マウントへの熱伝達を改善する任意の他の適切な材料に巻かれてもよい。いくつかの事例において、利得媒体及び熱伝導性マウントは、ベースプレート2−105へとヒート・シンクすることができる熱電クーラ(TEC)上に取り付けられてもよい。TECは、利得媒体の温度制御を可能にすることができる。いくつかの実施態様において、利得媒体は、約3mmと約10mmとの間の長さを有するバナジン酸ネオジム(例えば、Nd3+:YVO4)を含んでもよい。ネオジム・ドーパント・レベルは、約0.10%と約1%との間であってもよい。結晶の端面は、バナジン酸ネオジムについては約1064nmであり得るレージング波長λ1に対して反射防止コーティングされてもよい。利得媒体1−105は、利得媒体の端面が、レーザキャビティの光軸1−125に対して約1度と約3度との間の角度に向けられている法線ベクトルを有する向きにおいて、非調整可能マウント(微細な角度又は位置の調整を可能にしないマウント)内に取り付けられてもよい。
可飽和吸収体ミラー1−119は、多層半導体構造(例えば、複数の量子井戸)及び高反射器を含むことができる。半導体構造は、非線形光吸収を呈することができる。例えば、SAMは、低い光強度においてより高い吸収を呈することができ、高い光強度において白化するか、又は、ほとんど吸収を呈しないものであり得る。半導体構造は、半導体構造が高反射器に入射し、ほぼ、高反射器から反射される光場によって作成される光定在波のピーク強度に位置するように、SAM内の高反射器から離間され得る。SAMの1例は、BATOPオプトエレクトロニクス有限責任会社(BATOP Optoelectronics GmbH)[独国イェナ(Jena)所在]から入手可能な品番SAM−1064−5−10ps−xである。SAMの非線形光吸収のために、レーザは優先的に、パルス動作モードにおいて動作する(受動的にモード・ロックされる)。いくつかの実施態様において、SAMは、SAMの表面を光軸1−125に対して横方向に動かすことができるように、回転及び/又は横方向位置決めマウント上に取り付けることができる。SAMが損傷した場合、SAMは、キャビティ内ビームがSAMの損傷していない領域へと集束されるように、移動及び/又は回転することができる。他の実施形態において、SAMは、非調整可能マウント上に取り付けられてもよい。
利得媒体1−105を励起するために、ポンプ・モジュール2−140内のレーザダイオードからの連続波出力(図2−1Aにおいて黒い点線によって示される)を、結合レンズ2−142を使用して利得媒体へと集束させることができる。いくつかの実施形態において、レーザダイオードからのビームは、矩形又は正方形の断面を有してもよく、わずかに(例えば、約5度と約10度との間で)発散してもよい。いくつかの実施態様において、結合レンズ2−142の焦点距離は、約20mmと約30mmとの間であってもよい。吸収されないポンプ放射は、レーザキャビティ変向ミラー2−115を通過することができ、ビーム・ダンプ2−116内に吸収され得る。
他の実施形態では利得媒体1−105をポンピングするために他の励起源が使用されてもよく、本発明はレーザダイオードには限定されない。いくつかの実施形態において、パルスレーザ1−110の利得媒体1−105をポンピングするために、ファイバ・レーザ又はファイバ結合レーザが使用されてもよい。ファイバ・レーザは、1つ又は複数のレーザダイオードによってポンピングされるファイバ・レーザキャビティの一部分としてアクティブ光ファイバを含むことができる。ファイバ結合レーザは、出力が光ファイバに結合されている1つ又は複数のレーザダイオードを含むことができる。ファイバ・レーザ又は
ファイバ結合レーザからの光エネルギーを担持するファイバからの出力ビームを、レーザダイオードに使用されるものと同じ又は同様の光学素子を使用して、利得媒体に方向付け、集束させることができる。ファイバからの光ビームは、高出力レーザダイオード・ポンプ・ソースから直接のビームよりも円形で、均質で、かつ/又はガウスの(又はシルクハット形状の)空間プロファイルを有することができる。ポンプ・ソースは、いくつかの実施形態において、ベースプレート2−105以外の固定具に取り付けられてもよく、又は取り付けられなくてもよく、ポンプ・エネルギーを担持するファイバの端部は、ベースプレートの、利得媒体1−105と同じ側又は反対側に位置する、パルスレーザ上のマウントに付着してもよく、又は、レーザキャビティ構造から遠隔して取り付けられてもよい。
結合レンズ2−142の焦点距離、ポンプ・ビームのサイズ、及び利得媒体1−105からのレンズの距離が、利得媒体内のポンプ・ビームのサイズ(断面寸法)を決定する。実施形態において、利得媒体内のポンプ・ビームのサイズは、利得媒体内のレーザビームのモード・フィールド・サイズにほぼ(例えば、15%以内で)一致する。利得媒体内のレーザビームのモード・フィールド・サイズは、主に、レーザキャビティ内のカーブ・ミラー2−117の焦点距離、利得媒体内のポンプ・ビームのウェスト、及び、カーブ・ミラーからの利得媒体の距離によって決定され得る。いくつかの実施形態において、カーブ・ミラー2−117の焦点距離は、約200mmと約300mmとの間であってもよい。
いくつかの実施形態によれば、利得媒体1−105内のポンプ・ビームの位置は、ポンプ・モジュール2−140内の調整可能マウントによって、2自由度で(レーザキャビティの光軸1−125に対して横方向で)調整される。これらの調整可能マウントは、パルスレーザキャビティの外部にある。ポンプ・ビームの調整可能マウントは、利得媒体1−105内のレーザビームと重なり合うようにポンプ・ビームを方向制御し、レーザのポンピング効率を改善するために使用することができる。
SAM1−119内の非線形光吸収を利用するために、集束レンズ2−123が、SAM付近でレーザキャビティ内に組み込まれる。いくつかの実施形態によれば、集束レンズ2−123の焦点距離は、約70mmと約130mmとの間であり、SAMは、ほぼ、集束レンズ2−123の焦点距離に位置する。集束レンズは、SAM上のキャビティ内レーザビームのスポット・サイズを低減し、その強度を引き上げる。
本発明者らは、やや驚くべきことに、いくつかのレーザキャビティ構成について、SAM上のレーザビームのスポット・サイズが、集束レンズ2−123とSAM1−119との間の距離の変化よりも、カーブ・ミラー2−117とレーザの出力カプラ1−111との間の距離の変化の影響をより受けやすいことを発見した。この結果は、カーブ・ミラー2−117と集束レンズ2−123との間の延長されたキャビティ長に関係する。延長されたキャビティ長は、光パルスをベースプレート2−105上で前後に跳ねさせる複数の高反射性光学素子2−121(例えば、約99.9%と約99.999%との間の反射率を有する)を含み、これによって、カーブ・ミラー2−117と集束レンズ2−123との間の移動距離が増大する。この延長されたキャビティ長に沿って、レーザビームを概ねコリメートすることができる。カーブ・ミラー2−117と出力カプラ1−111との間の距離の変化が、延長されたキャビティにおけるコリメートに影響を及ぼすことができ、増大したキャビティ長は、集束レンズ2−123におけるビーム・サイズの変化を増幅する。この増幅が、今度はSAM内のスポット・サイズに、集束レンズ2−123とSAM1−119との間の距離の変化よりも強く影響を及ぼす。
いくつかの実施形態において、出力カプラとカーブ・ミラーとの間の距離の動作中の調節を可能にするために、微細位置制御部(例えば、微細位置決め段)が出力カプラ1−111及び/又はカーブ・ミラー2−117に含まれてもよい。カーブ・ミラー2−117
の焦点距離は、指定の許容誤差(例えば、±2mm)を有し得るため、微細位置制御部の範囲は、少なくとも、カーブ・ミラーの指定の焦点距離許容誤差を含む範囲にわたって延在することができる。いくつかの実施態様において、微細位置制御部は、出力カプラ1−111及び/又はカーブ・ミラー2−117に含まれなくてもよい。代わりに、カーブ・ミラーの焦点距離は、設置前に決定され、それに従って、キャビティ内に位置するカーブ・ミラーの焦点距離が決定されてもよい。いくつかの事例において、出力カプラ1−111は、非調整可能マウント上に取り付けられてもよく、カーブ・ミラー2−117は、2軸傾斜調整マウント上に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、カーブ・ミラーの調整可能マウントは、レーザが動作している間に調整することができ、レーザビームの調整に2自由度をもたらすことができる、パルスレーザキャビティ内の唯一の調整可能マウントであってもよい。それゆえ、パルスレーザは、キャビティ端部ミラーの間に位置するカーブ・ミラー・マウントを介して2自由度のみにわたって動作調整を有するのみであってもよい。図2−1に示すレーザキャビティの残りの光学構成要素は、非調整可能マウントに取り付けられてもよい。非調整可能マウント及び1つのみの調整可能マウントを使用することによって、動作中にパルスレーザをより信頼可能に、かつ堅牢にすることができ、パルスレーザ内の光学構成要素のドリフト及び不整合を低減することができる。
いくつかの実施形態において、レーザキャビティ内に追加の要素が含まれてもよい。例えば、集束レンズ2−123の前及び/又は後ろに、キャビティ内ビーム・ステアリング・モジュール2−130が含まれてもよい(図2−1Aでは集束レンズの前に示されている)。キャビティ内ビーム・ステアリング・モジュールは、レーザビームを2方向に並進させるために、2つの直交する軸を中心としてレーザビームに対して角度をつけることができる反射防止コーティング・オプチカル・フラットを備えることができる。キャビティ内ビーム・ステアリング・モジュール2−130のオプチカル・フラットが集束レンズ2−123の前に位置するとき、レーザビームが並進する結果として、主に、SAM1−119に対するレーザビームの入射角が変化する。集束レンズの後ろに位置するオプチカル・フラットについて、レーザビームが並進する結果として、主に、SAM上のレーザビームの位置が変化する。いくつかの実施態様において、キャビティ内ビーム・ステアリング・モジュール2−130は、キャビティ位置合わせの自動的な微調節(例えば、レーザの平均パワー又は他のパルス動作特性から導出されるフィードバック信号に基づく自動調節及び/又は位置合わせ)を可能にするために使用することができる。いくつかの事例において、キャビティ内ビーム・ステアリング・モジュールは、SAM上でレーザビームを位置決めし直すために使用することができる(例えば、SAMが焦点において損傷した場合のレーザビームの移動)。
いくつかの実施形態によれば、レーザビームのキャビティ内再位置合わせのために回転オプチカル・フラットを使用するのではなく、別の可能性は、利得媒体内の熱レンジングに影響を及ぼすことができる、利得媒体1−105内の非対称熱勾配を誘発することである。利得媒体1−105内の非対称熱勾配によって、キャビティ内レーザビームが利得媒体を通過するときに、キャビティ内レーザビームにおける小さい各偏向が引き起こされ得る。いくつかの実施態様において、1つ又は複数の温度制御デバイス(例えば、抵抗性加熱要素、TECクーラ、又はそれらの組み合わせ)を、利得媒体内の1つ又は複数の側に結合することができる。いくつかの実施形態によれば、利得媒体1−105は、利得媒体の4つの面(4つの長手方向縁部)に熱的に結合されている4つの独立して動作可能な加熱要素を有することができる。熱結合は、温度制御デバイスと利得媒体の面との間に位置する熱エポキシ又はインジウム箔を含むことができる。各温度制御デバイスはまた、温度制御デバイスの反対側のヒート・シンク(レーザ・ブロックなど)への熱的結合をも含むことができる。いくつかの事例において、利得媒体の第1の対向する面に位置する第1の対の温度制御デバイスのうちの1つ又は複数は、2つの第1の対向する面に垂直な方向(
例えば、±x方向)にビーム偏向をもたらすことができる。利得媒体の第2の対向する面の直交する対に位置する第2の対の温度制御デバイスのうちの1つ又は複数は、直交する方向(例えば、±y方向)にビーム偏向をもたらすことができる。温度制御デバイスにおける温度を選択的に変更することによって、キャビティ内レーザビームを方向制御及び再位置合わせすることができる。方向制御及び再位置合わせによって、SAM1−119上のキャビティ内ビームの位置を変化させることができる。いくつかの事例において、カーブ・ミラー2−117又はキャビティ端部ミラーは、追加的に、キャビティ内レーザビームを再位置合わせするように調整することができる。
いくつかの実施形態において、パルスレーザ1−110は、レーザ内の光学構成要素のうちの1つ又は数個のための調整可能マウントを与えることができる。調整可能マウントは、レーザがレージングしている間に、オペレータが、光学構成要素の位置及び/又は向きを微調整することを可能にすることができ、それによって、安定性、ビーム品質、出力パワー、及び/又はパルス特性について、レーザの動作を調節することができる。微調節は、例えば、ミラー・マウント上でのマイクロメートル及び/又は微細にねじ切りされたねじ調整によって達成することができる。いくつかの実施形態において、パルスレーザ1−110は、出力カプラ1−111(角度調整)、カーブ・ミラー2−117(位置及び角度の調整)、及びSAM1−119(角度調整)のうちの1つ又は複数のみのための調整可能マウントを含むことができる。いくつかの実施態様において、結合レンズ2−142は、調整可能位置決めマウントを含むことができる。レーザキャビティの残りの光学構成要素は、固定非調整可能マウントにおいて製造中に位置合わせすることができる。集積自己整合非調整可能マウントの1例が、図2−2Aに関連して下記に説明される。
本発明者らは、利得媒体1−105内及びSAM1−119上のキャビティ内レーザビームの一定範囲の相対スポット・サイズについて、レーザ1−110の安定したパルス動作が行われ得ることを認識し、諒解するに至った。例えば、利得媒体内の最小ビーム・ウェストのSAM上の集束ビーム・ウェストに対する比は、約4:1と約1:2との間であってもよい。いくつかの実施形態によれば、利得媒体内のビーム半径(強度の1/e2値)は、約20μmと約200μmとの間であってもよく、SAM上のビーム半径(強度の1/e2値)は、約50μmと約200μmとの間であってもよい。これらの範囲外の比及びビーム半径では、パルス動作は不安定になる場合があり、レーザはQスイッチする場合があり、これによってSAMが損傷する可能性がある。いくつかの実施形態によれば、SAMの仕様は、その飽和フルエンスであり得、SAM上の集束レーザビームの強度は、飽和フルエンスに比例し得る。例えば、集束レーザビームの強度は、SAMの飽和フルエンスの約1倍と10倍との間であってもよい。
本発明者らは、パルスレーザの平均パワー及び/又はスペクトル特性が、安定したモード・ロック動作を決定づけ得ることを認識し、諒解するに至った。例えば、モード・ロック動作中のレーザの平均パワーが一定の値を下回って降下した場合、モード・ロックを支持するのに十分な非線形光吸収がSAM内にない場合がある。レーザはこのとき、Qスイッチし、SAMを損傷する場合がある。いくつかの事例において、レーザの平均出力パワーの急速な変動は、レーザがモード・ロックに加えてQスイッチしており、SAMを損傷する可能性があることを示し得る。いくつかの実施形態において、センサ2−154(例えば、フォトダイオード)が含まれ、レーザ1−110によって生成される光パワーを検知するように構成されてもよい。検知された平均レーザ・パワーが予め設定されているレベルを下回ってドリフトするか、又は、パワー変動が検出される場合、パワーを回復するために自動キャビティ位置合わせルーチンを実行することができ、かつ/又は、レーザを補修のために止めることができる。
諒解され得るように、レーザキャビティ光学素子の位置合わせは、多数のミラーのため
に困難であり得る。いくつかの実施形態において、パルスレーザは、レーザキャビティの光軸に沿って、例えば、カーブ・ミラー2−117と集束レンズ2−123との間に位置する取り付け特徴部2−118(例えば、ねじ穴及び/又は見当合わせ特徴部)を含むことができる。取り付け特徴部2−118は、第2の出力カプラを中に取り付けることができる光学台を受け入れるように構成することができる。光学台及び第2の出力カプラが適当な位置にあるとき、レーザは、短縮されたレーザキャビティによって連続波モードでレージングするように位置合わせすることができる。第2の出力カプラは、少量のパワー(例えば2%又は任意の他の適切な値)を伝送し得、挿入された光学台とSAM1−119との間でレーザの光学構成要素を位置合わせするために使用することができるレーザビームをもたらすことができる。これらの残りの構成要素が位置合わせされると、挿入された光学台を取り外すことができ、それによって、レーザ1−110を、全キャビティ長によるパルス・モードで動作するように調整することができる。
本発明者らは、ダイオード・ポンプ・モジュール2−140からの熱がパルスレーザ1−110の動作に悪影響を及ぼす可能性があることを認識し、諒解するに至った。例えば、ダイオード・ポンプ・モジュール2−140からの熱が、ベースプレート2−105の相当の面積を加熱し、レーザキャビティ光学素子の位置合わせを経時的に変化させる可能性がある。ダイオード・ポンプ・レーザからの熱によって引き起こされる有害な影響を回避するために、ダイオード・ポンプ・モジュール2−140は、ベースプレート2−105内の穴2−145を通じて取り付けることができる。いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードからのビームは、(紙面から外に出る方向において)ダイオード・ポンプ・モジュール2−140内で45度に向けられており、パルスレーザの出力ビーム経路2−125上にあるダイクロイック・ミラーに方向付けることができる。ダイクロイック・ミラーは、レーザダイオードのポンプ・ビームを利得媒体1−105及びレーザキャビティの光軸に位置合わせすることができる調整部を含むことができる。
いくつかの実施形態において、ダイオード・ポンプ・モジュール2−140は、熱絶縁取り付けハードウェアを使用してベースプレート2−105に付着することができる。例えば、ナイロンねじを使用してダイオード・ポンプ・モジュールを付着させることができ、ナイロン又はセラミック・ワッシャを、ベースプレートとダイオード・ポンプ・モジュールの取り付け面との間に設置することができる。いくつかの実施態様において、小さいステンレス鋼ねじ(例えば、4−40以下のねじサイズ)を、ナイロン又はセラミック・ワッシャとともに使用することができる。加えて、TEC、冷却フィン、及び/又はダイオード・ポンプ・モジュールの強制空冷をベースプレート2−105の裏側に実装することができ、それによって、ベースプレート及びレーザキャビティ光学素子から離れて熱が伝導される。いくつかの実施形態によれば、ダイオード・ポンプ・モジュール2−140は、ベースプレート2−105の縁部約2cm以内に位置することができ、散逸される熱は、例えば、ファンによって縁部に向けて、かつベースプレートから離れる方向に向けることができる。ベースプレート2−105は加えて、ベースプレートの一方の側のレーザ光学素子及びレーザキャビティを、熱が除去されるプレートの裏側に対する空気流又は乱流から保護するウィンド・スクリーンとしての役割を果たすことができる。いくつかの実施態様において、TECは、フィードバック及び制御回路に接続することができ、ダイオード・ポンプ・レーザを所望の動作温度に維持するために使用することができる。
パルスレーザ1−110を含む、部分的に組み立てられたポータブル機器1−100の1例が、図2−1Bに示されている。写真には、バイオ光電子チップ1−140が取り付けられるプリント回路基板1−130も見えている。ビーム・ステアリング・モジュール1−150も、PCB1−130に付着することができる。この実施形態において、パルスレーザの光学素子は、多くのねじ穴を有する光学ブレッドボード上に取り付けられる。いくつかの実施形態において、パルスレーザのいくつかの光学素子は、ベースプレート2
−105内に形成される集積自己整合光学台内に取り付けることができる。
集積自己整合光学台2−210の1例が、図2−2Aに示されている。集積光学台2−210は、パルスレーザ1−110のベースプレート2−105に機械加工又は他の様態で形成されている軸方向トレンチ2−220を備えることができる。軸方向トレンチ2−220は、パルスレーザキャビティの光軸に平行な方向に延在することができる。集積光学台は、軸方向トレンチ2−220に対してほぼ横方向に形成されている共平面2−230をさらに備えることができる。共平面は、軸方向トレンチ2−220にほぼ直交する方向に短いトレンチを機械加工又はフライス加工することによって形成することができる。いくつかの事例において、共平面は、取り付けられた光学素子からの後方反射がレーザキャビティの光軸からずらされるように、小さい角度に向けることができる。軸方向トレンチ2−220の基部には、傾斜面2−240(図2−2Aでは1つだけが見えている)があり得る。傾斜面2−240は、軸方向トレンチの基部付近に機械加工、フライス加工、又は他の様態で形成することができ、軸方向トレンチ2−220の反対側に位置することができる。傾斜面は、共平面2−230に向かう方向に傾き、その上に取り付けられている光学素子に対する支持を可能にすることができる。
パルスレーザの光学構成要素2−250は、例えば、図2−2Bに示すように、集積光学台2−210によって支持することができる。光学素子2−250は、例えば、キャビティ・ミラー、レーザキャビティ内のレンズ、又は利得媒体1−105を含んでもよい。いくつかの事例において、光学素子2−250は、図面に示すように、単独で集積光学台2−210内に取り付けることができる。他の実施形態において、光学素子は、集積光学台2−210内に設置することができる支持固定具(例えば、環状プレート、調整可能マウント)内に取り付けることができる。
いくつかの実施形態によれば、光学構成要素2−250、又は支持固定具は、集積光学台2−210の共平面2−230に見当合わせし、それに対して寄りかかる平坦な表面を含むことができる。光学素子又は固定具は、対応する保持デバイス(例えば、ベースプレートに固定することができるバーの上に取り付けられるOリング、可撓性プラスチック・バー又はアームなど)によって集積台内に保持することができる。対応する保持デバイスは、光学素子2−250又は支持固定具の上縁に接することができ、傾斜面2−240及び共平面2−230に向かう方向において光学素子又は固定具に力を与えることができる。光学素子2−250又は支持固定具の下端は、傾斜面2−240上の点に接することができる。傾斜面2−240もまた、部分的に共平面2−230に向かって方向付けられる成分を有する力を、光学素子又は固定具に対して与えることができる。傾斜面2−240にある接点及び共平面2−230に向かって方向付けられる力は、光学素子又は固定具を、レーザキャビティ内の所望の向き及び位置に自己整合させることができる。いくつかの実施態様において、光学素子又は支持固定具は、位置合わせされた向きにおいて集積光学台内に(例えば、接着剤を用いて)接合することができる。
1つ又は複数の集積光学台2−210は、いくつかの実施形態によれば、パルスレーザ1−110のベースプレート内に形成されてもよい。いくつかの事例において、軸方向トレンチ2−220は、図2−2Aに示すように、いくつかの集積光学台を通じて延在することができる。集積光学台の有利な特徴の中でも、パルスレーザの光軸を下げられるということがある。これによって、そうでなければベースプレートの表面から延在する光学台に結合され、それによって増幅される場合がある機械的振動の影響を低減することができ、そうでなければベースプレートの表面から延在する光学台の動きによって増幅される場合がある熱膨張(例えば、ベースプレート2−105がわずかに反る)の影響を低減することができる。
再び図2−1を参照すると、パルスレーザ1−110の出力は、レンズ2−164を通じて周波数2倍化結晶2−170に集束して、出力パルスの光学波長を半分にすることができる。例えば、パルスレーザ1−110は、約1064nmの固有波長を有するパルスを生成することができ、周波数2倍化結晶2−170は、この波長を約532nmに変換することができる。周波数2倍化出力は、バイオ光電子チップ1−140において異なる発光特性を有する蛍光色素分子を励起するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、半波長板2−160は、回転可能マウント内にその回転角度をアクチュエータ2−162によって制御されて取り付けられることができ、パルスレーザの出力光路内で周波数2倍化結晶2−170の前に位置することができる。いくつかの実施形態によれば、アクチュエータ2−162は、ステッパ・モータ、圧電モータ、精密軸受を有し、光学構成要素を回転させるように構成されている検流計、DCモータ、又は、任意の他の適切な作動機構を含むことができる。半波長板2−160を回転させることによって、レーザの出力パルスの偏光を変化させることができ、周波数2倍化結晶2−170における第2高調波変換効率を変化させることができる。このとき、半波長板の制御部を使用して、バイオ光電子チップ1−140に送達される周波数2倍化波長におけるパワーの量を制御することができる。半波長板(又は周波数2倍化結晶)を回転させることによって、基本波長におけるレーザの動作に影響を及ぼすことなく、周波数2倍化波長における光パワーを、大きい範囲にわたって(例えば、1桁以上にわたって)少量ずつ精密に変化させることができる。すなわち、周波数2倍化波長におけるパワーは、モード・ロック安定性、熱散逸、及びパルスレーザ1−110の他の特性に影響を及ぼすことなく変化させることができる。いくつかの実施形態において、他の調整部を使用して、付加的に又は代替的に、基本レーザ動作に影響を及ぼすことなく、周波数2倍化パワーを制御することができる。例えば、周波数2倍化結晶2−170に対するパルスレーザビームの入射角及び/又はレンズ2−164と周波数2倍化結晶との間の距離を自動的に制御して、周波数2倍化効率を変更及び/又は最大化することができる。
いくつかの実施形態において、周波数2倍化出力パルスは、変向ミラー2−180によってビーム・ステアリング・モジュール1−150へと方向付けることができる。変向ミラー2−180は、周波数2倍化結晶2−170によってダウン・コンバートされていない光放射をビーム・ダンプ(図示せず)へと透過するように、2色性であってもよい。
動作時、7mmの長さ及び0.25%のドーピング・レベルを有する、利得媒体としてNd3+:YVO4を利用するパルスレーザ1−110は、約20psのFWHM値を有する1064nmのパルスを生成することができる。パルスは、パルスのピークから100ps以内で約80dBで消滅する。パルス繰り返し数は約90MHzであり、基本波長におけるパルスレーザの平均パワーは約900mWである。平均周波数2倍化パワーは約300mWである。レーザを動作させるのに必要なAC電力は、約20ワット未満である。レーザはコンパクトで、占有する体積は0.002832m3(0.1ft3)未満であり、重量は約4.536kg(10ポンド)であり、モジュールとして、DNAをシーケンシングするための卓上機器のようなポータブル分析機器に容易に組み込むことができる。
追加のモードロックレーザ構成及び特徴が、いくつかの実施態様において、使用されてもよい。図3−1は、コンパクトなモードロックレーザ3−100のほんの1例を示す。概観すると、コンパクトなモードロックレーザは、ダイオード・ポンプ・ソース3−105と、利得媒体3−107と、周波数2倍化要素3−109と、光学遅延要素3−110と、2つのレーザキャビティ端部ミラーTC1と、可飽和吸収体ミラー3−120とを備えることができる。利得媒体3−107は、レージング波長λ1において光学的発光を生成するために、ダイオード・ポンプ・ソース3−105によって、波長λpにおいて励起
することができる。周波数2倍化要素3−109は、レージング波長を、レージング波長の2分の1である周波数2倍化出力波長λ2に変換することができる。
いくつかの実施形態によれば、図示されている光学的にポンピングされるレージング・システムのいずれかのポンプ波長λpは、約450nmと約1100nmとの間であってもよい。図示されているレージング・システムのいずれかのレージング波長λ1は、いくつかの実施態様によれば、約800nmと約1500nmとの間であってもよい。いくつかの事例において、図示されているレージング・システムのいずれかの出力波長λ2は、約400nmと約750nmとの間であってもよい。いくつかの事例において、出力波長λ2は、約500nmと約700nmとの間であってもよい。出力パルス持続時間は、いくつかの実施形態によれば、約1ピコ秒と約100ピコ秒との間であってもよい。いくつかの事例において、出力パルス持続時間は、約1ピコ秒と約30ピコ秒との間であってもよい。
いくつかの実施形態において、図示されているレージング・システムのいずれかの光ポンプ・ソース3−105、利得媒体3−107、及び周波数2倍化要素3−109は、所望の出力波長λ2を生成するように選択されてもよい。例えば、緑色出力波長が所望される場合、利得媒体は、1064nmにおいてレージングするNd:YAG又は1053nmにおいてレージングするNd:YLFとすることができる。周波数2倍化要素3−109は、いくつかの実施態様において、KTP又はBBOであってもよく、ポンプ・ソースは、約800nmにおいてレージングする1つ又は複数のレーザダイオードを含んでもよい。他の所望の出力波長λ2のためには他の材料が選択されてもよい。例えば、1280nmにおいてレージングすることができ、640nm(光スペクトルの赤色領域内)に周波数2倍化することができるCr:Forsteriteが、利得媒体として使用されてもよい。いくつかの実施形態において、周波数2倍化することなく640nm(赤色)において直接レージングするために、Pr:LiYF4が利得媒体3−107として使用されてもよい。本発明者らは、532nm(緑色)及び/又は671nm(赤色)に2倍化することができる1つ又は2つの波長1064nm及び/又は1342nmにおいてレージングするために、Nd:YVO4を利得媒体として使用することができることを認識し、諒解するに至った。本発明者らはまた、和周波数発生を非線形結晶内で実施して、追加の波長を得ることができることを認識し、諒解するに至った。例えば、Nd:YVO4からの2つのレージング波長にあるパルスは、非線形結晶内で混合して、約594nmの放射を生成することができる。利得媒体、光ポンプ・ソース、非線形要素3−109、及び蛍光色素分子を励起するために対象となるものの選択を通じて生成することができる追加の波長は限定ではないが、515nm、563nm、612nm、632nm、及び647nmを含む。種々の利得媒体は、限定ではないが、ネオジム・ドープ・イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Nd:YAG)、イッテルビウム・ドープYAG(Yb:YAG)、イッテルビウム・ドープ・ガラス(Yb:glass)、エルビウム・ドープYAG(Er:YAG)、又はチタン・ドープ・サファイア(Ti:sapphire)を含む。
いくつかの実施態様において、コンパクトな、ダイオード・ポンピングされるモードロックレーザは、改質された高出力レーザ・ポインタを含む。高出力レーザ・ポインタは、高くない費用で入手可能であり、本発明者らは、そのようなレーザ・ポインタを改質して、コンパクトなモードロックレーザを作製することができることを認識し、諒解するに至った。例えば、ダイクロイック・ミラーDC1が、ダイオード・ポンプ・ソース3−105とレーザ利得媒体3−107との間に挿入されてもよい。ダイクロイック・ミラーは、レーザキャビティの端部ミラーに置き換わってもよく、それによって、キャビティ長を増大して、追加の光学構成要素を組み込むことができる。ダイクロイック・ミラーDC1は、レージング波長λ1のほぼすべてを反射し、ポンプ波長λpのほぼすべてを透過するこ
とができる。
ダイクロイック・ミラーDC1は、レーザキャビティからのビームが、光学遅延要素3−110へと方向付けられることを可能にすることができる。光学遅延要素からの出力は、可飽和吸収体ミラー3−120に送ることができる。可飽和吸収体ミラー3−120は、レーザ・ポインタをモード・ロックし、超高速光パルスを生成する、レーザキャビティ内の強度依存損失要素を与えるために追加することができる。
いくつかの実施形態によれば、ダイオード・ポンプ・ソース3−105は、光学系OS1の1つ又は複数のレンズ上で又はそれらによって動作し、利得媒体3−107へと方向付けられる、波長λpの光ポンプ・ビームを与える。ポンプ波長は、いくつかの実施形態によれば、約700nm〜約900nmであってもよい。レーザダイオード・ポンプ・ソースの1例は、フォーカスライト・コーポレーション(FocusLight Corporation)[中国陝西省(Shaanxi)西安(Xi’an)所在]から入手可能なレーザダイオード・モデルFL−FM01−10−808である。いくつかの実施形態において、ダイオード・ポンプ・ソース3−105は、ポンプ・ソースによって発生する熱を散逸するために熱的に冷却することができる。例えば、熱電クーラ(TEC)が、ダイオード・アセンブリから熱を抽出するために、ダイオード・ポンプ・ソースに熱的に結合されてもよい。いくつかの実施態様において、利得媒体3−107及び/又は周波数2倍化要素3−109もまた、例えば、1つ又は複数の熱電クーラ3−103を使用して温度制御することができる。
いくつかの実施態様において、TECは使用されなくてもよい。代わりに、熱レベルの上昇を受け得る光学構成要素(例えば、ダイオード・ポンプ・ソース、利得媒体、非線形光学素子)が、光学構成要素から熱を伝導及び/又は散逸することができる熱伝導シンク上に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、熱シンクは、光学構成要素及び熱伝導及び/又は散逸支持プレートと熱的に接触している中実銅マウントを含んでもよい。いくつかの事例において、熱伝導性フィルム(例えば、可鍛性インジウム・フィルム)が、構成要素からマウントへの熱伝導を改善するために、熱シンクと光学構成要素との間に設置されてもよい。
モードロックレーザは、ポンプ・ソース3−105からのビームを再成形し、及び/又は、その発散を変化させるように構成されている第1の光学系OS1をさらに備えることができる。例えば、第1の光学系OS1は、ポンプ・ソース・ビーム・ウェストが、利得媒体におけるレーザビームのビーム・ウェストにほぼ一致するように、ポンプ・ソースからのビームのサイズを増大又は低減することができる。付加的に又は代替的に、第1の光学系は、ビームの断面形状を、例えば楕円形から円形又は正方形の形状のビームに変化させることができる。いくつかの実施形態において、本発明者らは、ダイオード・ポンプ・ソース3−105からの正方形又は矩形の形状のビームが、利得媒体3−107をポンピングするために所望され、モードロックレーザのポンピング効率を顕著に改善することができることを見出した。
第1の光学系OS1は、いくつかの実施形態において、1つ又は複数の円柱レンズを備えることができる。例えば、第1の光学系は、一対の交差した円柱レンズを備えることができる。第1の円柱レンズは、短い焦点距離(例えば、約5mm未満)を有することができ、第2の円柱レンズは、より長い焦点距離を有することができる。いくつかの実施態様において、第1の円柱レンズは、約150マイクロメートル(150ミクロン)未満の直径を有する一定の長さの光ファイバを含んでもよい。その焦点距離は、500マイクロメートル(500ミクロン)未満であってもよい。第2の円柱レンズは、約5mmと約10mmとの間である焦点距離を有してもよい。
いくつかの実施形態において、モードロックレーザキャビティは、図3−1に示すような複数の光学構成要素を備えることができる。レーザキャビティの1端は、いくつかの実施形態において、トリクロイック・ミラーTC1を備えてもよい。トリクロイック・ミラーは、レージング波長λ1及びポンプ波長λpを反射し、周波数2倍化出力波長λ2を通すように設計される多層コーティングを有することができる。レーザキャビティは、ポンプ・ソースからのビーム及び利得媒体3−107及び非線形光学素子3−109へのレーザビームを再成形し、及び/又は、その発散を変化させるように構成されている第2の光学系OS2をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、利得媒体と非線形光学素子との間に位置する第5の光学系(図示せず)があってもよい。レーザキャビティは、キャビティ内レーザビームを光学遅延要素3−110へと反射する、上述した2色性反射器DC1を含むことができる。光学遅延要素は、コンパクトな構成でレーザキャビティに光路長を追加するように構成することができる。例えば、光学遅延要素3−110は、各側で5cm未満になり、それでもなお、長さが約40cmよりも大きい要素内の光路長をもたらす光学系を備えることができる。いくつかの実施形態において、光学遅延要素は、その上又は中にレーザキャビティが配置される基部構造又はハウジングの任意の横方向寸法よりも大きい一定量の光路長を、レーザキャビティに追加することができる。レーザキャビティは、光学遅延要素から可飽和吸収体ミラー3−120上へのビームを再成形及び/又は集束するように構成されている、1つ又は複数のレンズを備える第3の光学系OS3をさらに含むことができる。レーザキャビティ内のレーザビーム3−101は、トリクロイック・ミラーTC1と可飽和吸収体ミラー3−120との間で前後に反射することができる。
いくつかの実施形態によれば、モードロックレーザ3−100は、出力光学系OS4及び光学フィルタF1をさらに含むことができる。出力光学系は、レーザキャビティからの出力ビームを再成形し、及び/又は、その発散を変化させるように構成することができる。フィルタは、ポンプ波長λp及びレージング波長λ1の一方又は両方を吸収又は遮断するように構成することができる。
動作時、ダイオード・ポンプ・ソースからのポンプ・ビームは、利得媒体3−107を効率的に励起するために、光学系1を用いて再成形することができる。可飽和吸収体ミラー3−120(その1例が下記にさらに詳細に説明される)は、低い強度がミラーによって吸収され、高い強度が低い損失でミラーによって反射されるような、強度依存損失を呈する。ミラーの強度依存損失のために、レーザは、短い高強度パルスを用いるモード・ロック状態で優先的に動作する。この状態において、高強度パルスは低い損失で可飽和吸収体ミラー3−120から反射される。パルス動作において、パルスは、2つの端部ミラーTC1、3−120の間でレーザキャビティ内を前後に循環し、周波数2倍化要素3−109によって周波数2倍化される。このように、モードロックレーザは、2倍化周波数λ2において出力パルスの列を生成する。
光学遅延要素3−110の例が、図3−2A〜図3−2Dに示されている。ほんの1実施形態によれば、光学遅延要素は、図3−2Aの平面図に示すような、アーガイル・ブロックを含んでもよい。アーガイル・ブロックは、第1の直角プリズム3−112及び第2の直角プリズム3−114を備えることができる。いくつかの実施形態によれば、プリズムの垂直な側面は、コーティングされていないものであり得るが、他の実施形態では、垂直面は、高反射性コーティングを含んでもよい。いくつかの実施態様において、プリズムの1つの垂直面の長さは、約20mmと約60mmとの間であってもよい。各プリズムは、任意の適切な光学品質ガラス、例えばBK−7又は融着石英から形成されてもよい。高い熱的安定性のために、遅延要素は、コーニング(Corning)から入手可能なULEのような超低膨張ガラスから形成することができる。プリズムの側面は、例えば、λ/
10以上の平面度を有する、高い光学品質になるように研磨することができる。
第1のプリズム3−112及び第2のプリズム3−114は、図面に示すように、オフセットしてともに接着することができる。プリズムは、光学接合を介して又は光学接着剤を使用して接着することができる。いくつかの実施態様において、光学遅延要素3−110は、切断及び研磨によって、単一のガラス片から形成することができる。レーザキャビティ・ビーム3−101は、遅延要素の第1のポートを通じて入射し、点線として示す遠回りの光路に沿って内部反射された後、アーガイル・ブロックの第2のポートから出射する。いくつかの実施態様によれば、遅延要素は、レーザキャビティ内の要素における光路長を2倍にするために、ダブル・パスになっている。
光学遅延要素3−212の別の実施形態が、図3−2Bに示されている。いくつかの実施形態によれば、光学遅延要素は、矩形形状に形成されている単一の光学ブロックを含むことができる。遅延要素3−212は、図面内で点線によって示すような、レーザビームを遅延要素内で前後に反射する垂直な端面3−230を備えることができる。遅延要素は、遅延要素の入射ポート3−232及び出射ポート2−234を与える2つの研磨面をさらに含むことができる。垂直側面は、いくつかの実施形態ではコーティングされなくてもよく、又は、他の実施形態では高反射性コーティング(例えば、多層コーティング)によってコーティングされてもよい。遅延要素3−212は、レーザキャビティ内の光路長を増大させるために、ダブル・パスにされてもよい。いくつかの実施態様において、遅延要素の縁部の最大長は、約20mmと約60mmとの間であってもよい。紙面に入る方向において測定されるブロックの厚さは、約5mmと約20mmとの間であってもよい。遅延要素3−212は、上述したような、任意の適切な光学品質ガラスから形成されてもよい。反射性端面は、例えば、λ/10以上の平面度を有する、高い光学品質になるように研磨することができる。
図3−2Cは、光学遅延要素3−214のまた別の実施形態を示す。いくつかの実施形態によれば、遅延要素は、それらの中心において距離Dだけ離間されており、互いに対してわずかな角度αで傾斜している一対の平面ミラーM1、M2を含むことができる。各ミラーは、長さLを有することができる。ミラーの間隔Dは、いくつかの実施形態によれば、約10mmと約50mmとの間であってもよい。ミラーの長さLは、いくつかの実施形態によれば、約20mmと約60mmとの間であってもよい。角度αは、いくつかの実施形態によれば、約0度と約10度との間であってもよい。紙面に入る方向に沿って測定されるミラーM1、M2の高さは、約5mmと約20mmとの間であってもよい。ミラーM1、M2は、上述したような、任意の適切な光学品質ガラスから形成されてもよい。ミラーの反射面は、例えば、λ/10以上の平面度を有する、高い光学品質になるように研磨することができる。反射面は、いくつかの実施態様において、高品質、高反射性の多層コーティングを用いてコーティングすることができ、約99.5%を上回る反射率を有することができる。いくつかの実施形態において、反射率は、約99.9%よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、反射率は、約99.99%よりも大きくてもよい。いくつかの実施態様において、反射率は、約99.999%よりも大きくてもよい。
光学遅延要素3−216の別の実施形態が、図3−2Dに示されている。この実施形態は、図3−2Cに示す実施形態に類似した中実ブロックを含むことができる。いくつかの実施態様によれば、光学遅延要素3−216は、図面に示されているように、5つの表面を有する光学材料の中実ブロックを含むことができる。2つの表面3−234は、互いに対してわずかな角度αで傾斜することができる。これらの表面は、光ビーム3−101を、図面に示すような点線の経路に沿って表面の間で前後に反射するための高反射性コーティングを含むことができる。遅延要素3−216は、遅延要素への入射ポート及び遅延要素からの出射ポートを与える、2つのコーティングされていない又は反射防止コーティン
グされている表面3−232をさらに含むことができる。いくつかの実施形態によれば、遅延要素は、キャビティ内レーザビーム3−101がブルースター角において遅延要素に入射し、遅延要素を出射するように構成することができる。遅延要素3−216は、上述したような、任意の適切な光学品質ガラスから形成されてもよい。反射面3−234は、例えば、λ/10以上の平面度を有する、高い光学品質になるように研磨することができる。反射面は、いくつかの実施態様において、高品質、高反射性の多層コーティングを用いてコーティングすることができ、約99.5%を上回る反射率を有することができる。いくつかの実施形態において、反射率は、約99.9%よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、反射率は、約99.99%よりも大きくてもよい。いくつかの実施態様において、反射率は、約99.999%よりも大きくてもよい。
図3−2A、図3−2B及び図3−2Dに示されている中実ブロック遅延要素3−110、3−212、3−216の利点は、これらの要素が、レーザキャビティに挿入されるときに、図3−2Cの2つのミラーのような多構成要素遅延要素ほど精密な位置合わせを必要としないことである。しかしながら、中実ブロック構成要素は、製造工程の間により多くの注意を要し、これによって製造費用が増大することになり得る。図3−2Cに示す多構成要素遅延要素3−214は、製造工程の間にそれほどの注意を要しないが、レーザキャビティに追加されるときには、より多くの注意及び互いに対するミラーのより精密な位置合わせを必要とする。
光学遅延要素を組み込んでいる他のモードロックレーザは、コンパクトな超短パルスレーザ・システムにおいて実装することができる。図3−3A〜図3−3Cは、コンパクトな超高速モードロックレーザの追加の実施形態を示している。図3−3Aは、周波数2倍化要素3−109がレーザキャビティの外部に位置する、可飽和吸収体ミラー(SAM)モードロックレーザ3−300の実施形態を示している。図3−1に関連して説明されているモードロックレーザ3−100の要素と同様である、モードロックレーザの要素は、同様の参照符号を付されており、それらの説明は繰り返されない。いくつかの実施形態によれば、SAMモードロックレーザは、出力カプラTC1、及び、キャビティ端部ミラーとしての可飽和吸収体ミラー3−120を含むことができる。出力カプラは、ポンプ波長λpを通し、レージング波長λ1及び周波数2倍化波長λ2に対しては高反射性であるように構成されているトリクロイック・ミラーを含むことができる。いくつかの実施形態において、出力カプラTC1は、レージング波長λ1を、約2%と約15%との間で透過することができる。ポンプ波長λpを利得媒体3−107を通じて反射し戻し、レージング波長λ1を遅延要素3−110へと透過させるためのダイクロイック・ミラーDC2が、レーザキャビティ内に位置し得る。レーザキャビティからの出力ビームは、レーザキャビティの外部に位置することができる周波数2倍化要素3−109へと方向付けることができる。レージング波長、及び、任意選択的にポンプ波長を遮断するためのフィルタF1が含まれ得る。
図3−3Bは、いくつかの実施形態による、非線形ミラー・モード・ロック(NMM:nonlinear mirror mode−locked)レーザ3−302の実施形態を示している。この実施形態は、可飽和吸収体を使用してもよいし、又は、使用しなくてもよい。代わりに、周波数2倍化要素3−109及びダイクロイック・ミラーDC2が、レーザのモード・ロックを引き起こす強度依存損失メカニズムを設けることができる。図3−1に関連して説明されているモードロックレーザの要素と同様である、モードロックレーザの要素は、同様の参照符号を付されており、それらの説明は繰り返されない。
いくつかの実施形態によれば、NMMレーザキャビティは、出力カプラとしての役割を果たすトリクロイックミラーTC1と、周波数2倍化波長λ2のための高反射器としての役割を果たすダイクロイック・ミラーDC2とを含むことができる。トリクロイック・ミ
ラーTC1は、ポンプ波長λpを通し、レージング波長λ1に対して高反射性であり、周波数2倍化波長λ2に対して高反射性であるように構成することができる。レーザキャビティは、利得媒体を通じてポンプ波長を反射し戻し、レージング波長及び周波数2倍化波長を通すように構成されている追加のトリクロイック反射器TC2を含むことができる。レージング波長λ1は、周波数2倍化要素3−109に入射することができ、ここで、当該波長は、レーザキャビティ内の周波数2倍化波長λ2に変換される。ダイクロイック反射器DC2は、周波数2倍化波長λ2に対して高い反射性を呈することができる。例えば、ダイクロイック反射器DC2は、周波数2倍化波長を約95%と約100%との間で反射することができ、レージング波長λ1を約60%と約75%との間で反射することができる。レージング波長に対する損失がより高いため、レーザは、高強度のパルスを有するモード・ロック状態において優先的に動作する。これは、これらの高強度パルスが、周波数2倍化要素3−109によってより効率的に2倍化周波数に変換され、ダイクロイック・ミラーDC2からより効率的に反射され得るためである。周波数2倍化波長λ2はその後、モードロックレーザからダイクロイック・ミラーDC1によって結合され得る。
図3−3Cは、2つの周波数2倍化出力波長λ3、λ4を生成するように構成されているコンパクトなモードロックレーザのまた別の実施形態を示している。いくつかの実施態様において、利得媒体3−308は、Nd:YVO4を含んでもよく、レーザキャビティ内の光学素子上のコーティングは、1064nm及び1342nmの波長における同時のレージングを可能にする反射値及び透過値で設計することができる。これらの波長は、例えば、レーザキャビティの外部に位置する2倍化要素3−109によって周波数2倍化され得る。
いくつかの実施形態によれば、2重波長モードロックレーザは、図3−3Aに示すSAMモードロックレーザと同様に構成することができる。しかしながら、第1のダイクロイック・ミラーがトリクロイック・ミラーTC1に置き換えられており、第2のダイクロイック・ミラーが第3のトリクロイック・ミラーTC3に置き換えられている。加えて、2つの波長λ1、λ2においてレージングすることができる利得媒体が選択されている。さらに、可飽和吸収体ミラー3−325は、2つのレージング波長において強度依存損失を呈するように改質されている。
いくつかの実施形態によれば、トリクロイック・ミラーTC1は、ポンプ波長を利得媒体3−308に効率的に反射し、2つのレージング波長λ1、λ2を周波数2倍化要素3−109に通すように構成することができる。トリクロイック・ミラーTC3は、ポンプ波長λpを利得媒体3−308を通じて反射し戻し、2つのレージング波長λ1、λ2を遅延要素3−110へ、及び、可飽和吸収体ミラー3−325上へと通すように構成することができる。SAM3−325及びトリクロイック・ミラーTC2は、レーザキャビティの端部ミラーであり得る。ポンプ・ソースによって励起されると、2重波長レーザは、2つのレージング波長に対してモード・ロックすることができる。
図3−1及び図3−3A〜図3−3Cに示すモードロックレーザは、図面に示すような直線構成で構成されてもよく、又は、構成されなくてもよい。いくつかの実施態様において、キャビティは、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な角度にあり、種々の幾何学的構成にある追加のミラーによって折り返すことができる。光学素子上に形成される反射性及び透過性コーティングは、コーティングがそのために設計される、対応するレージング、ポンプ、及び周波数2倍化ビームの入射角に従って設計される。例えば、垂直なビーム入射において特定の波長について高反射性にするように設計されるコーティングは、45度でミラーに入射する同じ波長のビームに対しては異なる設計を有することになる。いくつかの実施形態において、コーティングは、特定のビーム入射角向けに調整することができる。
ここで、2重波長可飽和吸収体ミラー3−325の詳細を説明する。いくつかの実施形態によれば、2重波長SAMは、半導体基板3−405上に形成することができ、図3−3Aに示されている。基板3−405の表面は、高反射性コーティング3−430を含んでもよい。高反射性コーティングは、いくつかの実施態様において、多層誘電体コーティングを含んでもよい。いくつかの事例において、高反射性コーティングは、金属コーティングを含んでもよい。第1の複数の量子井戸構造3−412が、高反射性コーティングから距離d1をおいて基板上に形成され得る。第2の複数の量子井戸構造3−410が、高反射性コーティング3−430から距離d2をおいて形成され得る。いくつかの実施形態によれば、第1の複数の量子井戸構造及び第2の複数の量子井戸構造は、中間半導体層3−407によって分離され得る。第2の複数の量子井戸構造3−410に隣接して形成される、1つ又は複数の追加の層3−409があってもよいし、又は、なくてもよい。レーザキャビティからの光が、可飽和吸収体ミラーの第1の表面3−402に入射し得る。
いくつかの実施形態によれば、基板3−405、中間層3−407及び1つ又は複数の追加の層3−409のうちの1つ又は複数は、シリコン又は他の半導体材料を含んでもよい。複数の量子井戸構造3−412、3−410は、いくつかの実施形態によれば、エピタキシャル成長又は原子層堆積によって形成されてもよい。複数の量子井戸構造は、以下の元素、すなわち、In、Ga、As、Al、Pのうちの1つ又は複数を含む組成を有する材料の交互の層から形成されてもよい。
図3−4Bは、いくつかの実施形態に従って、図3−4Aに示す可飽和吸収体ミラー3−325の高反射面3−430からの距離の関数としてプロットされている、エネルギーバンドギャップ図を示している。図面に示すように、第1の複数の量子井戸構造3−412は、第1のエネルギーバンドギャップBG2を作成することができ、第2の複数の量子井戸構造3−410は、第2のエネルギーバンドギャップBG4を作成することができる。第1のエネルギーバンドギャップ及び第2のエネルギーバンドギャップは、周囲の領域のバンドギャップBG1、BG3、及びBG5よりも小さくなり得る。第1のエネルギーバンドギャップBG2は、第1のレージング波長λ1を可飽和的に吸収するように設計することができ、第2のエネルギーバンドギャップBG4は、第2のレージング波長λ2を可飽和的に吸収するように設計することができる。第1のレージング波長及び第2のレージング波長は、より大きいバンドギャップを有する周囲の領域を、ほとんど又はまったく減衰することなく通過することができる。
第1の複数の量子井戸構造3−412及び第2の複数の量子井戸構造3−410の位置は、それぞれ、図3−4Cに示すように、反射面3−430から反射される第1のレージング波長λ1及び第2の波長λ2の強度波腹をおおよそ位置合わせするように位置することができる。図示されている強度波腹3−442、3−441は、高反射面3−430から距離d1及びd2をおいて位置し得る。図示されている強度波腹は唯一の強度波腹ではなくてもよく、図示されている強度波腹と高反射面との間により多くの強度波腹があってもよく、高反射面からさらに離れた追加の強度波腹があってもよい。いくつかの実施形態によれば、より小さいバンドギャップBG2を有する複数の量子井戸構造3−412が、高反射面3−430のより近くに位置することになる。これによって、より長い波長λ1が、相当に減衰されることなく、第2の複数の量子井戸構造3−410を通過することが可能になり得る。ほんの1例として、第1の複数の量子井戸構造3−412は、1342nmの波長におおよそ対応するバンドギャップBG2を有するように設計されてもよく、第2の複数の量子井戸構造3−410は、約1064nmに対応するバンドギャップBG4を有するように設計されてもよい。このように、2つのレージング波長におけるモード・ロックを生成するように、両方のレージング波長について強度依存損失をもたらすことができる。
図3−3Cを再び参照すると、動作しているとき、2重波長レーザ3−304は、同時に2つのレージング波長λ1、λ2において超高速パルスを生成することができる。2つの異なる波長におけるパルスの繰り返し数は、レーザキャビティ内の各波長の光路長に依存する。レーザビームが通過しなければならない光学素子(例えば、利得媒体3−308、トリクロイック・ミラーTC3、光学系OS2、光学遅延要素3−110)がレーザキャビティ内にあるため、かつ、各要素における屈折率は2つの波長について異なる場合があるため、レーザキャビティ内の第1のレージング波長及び第2のレージング波長の光路長は異なることになる。光路長の差は、2つの異なるパルス繰り返し数をもたらすことになり得、これは、いくつかの用途には望ましくない場合がある。
いくつかの実施形態において、1つのレーザからの光放射が両方の量子井戸内のキャリア密度に影響を及ぼし得るように、2セットの多重量子井戸がともに近くに位置する。量子井戸は、λ1及びλ2に対応する吸収状態を有するように設計することができる。量子井戸の交差飽和が、両方のレーザ源からのパルスのタイミングの同期を助けることができる。
2つの異なるパルス繰り返し数においてパルスの列が生成されることを回避するために、本発明者らは、2つのレージング波長の光路長をほぼ等しくするために、補償光学系をレーザキャビティ内に含めるべきであることを認識し、諒解するに至った。図3−5Aを参照して、本発明者らは、端部ミラー又は出力カプラのような単一の経路長補償要素3−500を、レーザキャビティ内の2つのレージング波長の光路長の差を補償するように設計することができることを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施形態によれば、出力カプラは、出力カプラの第1の側の第1のレージング波長のための、第1の表面3−552における第1の2色性高反射コーティングを含むことができ、出力カプラの第2の側の第2の表面3−554における第2の2色性高反射コーティングを含むことができる。出力カプラについて、それぞれの波長の各コーティングの反射率は、約70%と約98%との間であってもよく、各コーティングは、他方の波長の98%を超える波長を透過することができる。端部ミラーが補償要素として使用される実施形態において、各コーティングの反射率は、98%を超えてもよい。
補償要素3−500の材料及び厚さtは、第1のレージング波長と第2のレージング波長とのレーザキャビティの光路長の差を補償するように選択することができる。例として、いかなる特定の理論に束縛されることもなく、補償要素の厚さtは、以下の関係に従って選択することができる。
式中、δ
opl(λ
1,λ
2)は、第1のレージング波長λ
1及び第2のレージング波長λ
2におけるパルスの、レーザキャビティ内の光路の差を表し、n
λ1及びn
λ2は、それぞれ第1のレージング波長及び第2のレージング波長の補償要素の基板(反射性コーティングの間)の群指数の値を表す。光路差δ
opd(λ
1,λ
2)は、最初に、レーザキャビティについて、出力カプラ3−500の第1の表面3−552に対する測定によって推定することができる。パルス分離間隔Tを使用して、キャビティ長をより正確に決定することができる。第1の表面は、レーザキャビティに向けることができる。レーザキャビティ内でより短い光路差を有するいずれかのレージング波長が、補償要素の基板を通じて
第2の表面3−554までダブル・パスにするように選択される。例えば、波長λ
2におけるパルスがキャビティ内でより短い光路を有する場合、n
λ2の値が式1において使用される。第2の表面3−554から反射するパルスは、カプラ3−500内で追加の光路をとり、一方で、他方のレージング波長におけるパルスは、第1の表面3−552から反射する。一方のレージング波長におけるパルスについて加えられる追加の光路は、レーザキャビティ内の他方の光路差を補償することができる。
いくつかの事例において、補償要素3−500の厚さtは、約1mm未満であってもよい。そのような薄い基板は、高品質レーザキャビティ・ミラーには適切でない場合がある。例えば、薄い基板上に光学的に平坦な面(例えば、λ/10以上の平面度を有する)を作成又は保持することは困難である場合がある。いくつかの実施形態において、補償要素3−502は、図3−5Bに示すように、支持基板3−556上に形成し、又は、それに接合することができる。支持基板は、補償要素に隣接して、光学的に平坦な面(例えば、λ/10以上の平面度を有する)を含むことができる。いくつかの実施態様において、補償要素は、支持基板3−556に光学的に接触するか、又は、光学接着剤を用いて接着することができる。
いくつかの実施形態において、補償要素は、支持基板3−556上に形成することができる。例えば、第1の高反射性多層コーティング3−562は、支持基板3−556上に形成することができる。その後、中間層3−564を、厚さtになるまで堆積することができる。中間層は、いくつかの実施形態では物理堆積工程によって、又は、いくつかの事例では蒸着工程によって堆積することができる。いくつかの実施態様において、中間層3−564は、堆積後に、光学的に平坦な面まで研磨されてもよく、又は、研磨されなくてもよい。その後、第2の高反射性多層コーティング3−566を、中間層3−564上に形成することができる。
レーザキャビティ向けの補償要素の第1の反射コーティングは、第1のレージング波長を高反射し、第2のレージング波長を高透過する2色性コーティングであってもよい。例えば、第1の反射性コーティング3−566は、第1のレージング波長λ1を約85%と約98%との間で反射することができ、約98%を超える第2のレージング波長λ2を透過することができる。第2の反射性コーティング3−562は、第2のレージング波長を高反射してもよく、第1のレージング波長を高透過してもよく、又はしなくてもよい。キャビティ端部ミラーとしての補償要素3−500、3−502が使用される場合、第2の反射性コーティング(レーザキャビティの中心から最も遠いもの)は、両方のレージング波長に対して高反射性であり得る。そのようなコーティングは、より容易に、より低い費用で製造することができる。出力カプラとしての補償要素3−500、3−502が使用される場合、第2の反射性コーティングは、一方のレージング波長に対して高反射性であり得、他方に対して高透過性であり得る。
本発明者らは、レーザキャビティ内の光学素子に対する加熱効果及び/又は機械的応力が、コンパクトなモードロックレーザの性能に影響を及ぼし得る重要なファクタであり得ることを認識し、諒解するに至った。加熱は、いくつかの実施態様において、ポンプ・ソース3−105、利得媒体3−107、及び/又は周波数2倍化要素3−109において生じ得る。利得媒体に関して、本発明者らは、利得結晶を取り付けるときにさらに注意を払わなければならないことを認識し、諒解するに至った。マウントは、熱散逸を可能にし、さらに、結晶に機械的応力が加わるのを回避すべきである。いくつかの実施形態によれば、利得結晶のための取り付け構造3−600の例が、図3−6に示されている。図示されているマウントは、正方形断面を有する利得媒体向けに設計されているが、マウントは、矩形又は多角形のような他の断面向けに設計されてもよい。利得媒体は、紙面内に向かう方向に沿って延在する長さLを有する。
いくつかの実施形態によれば、利得媒体のための取り付け構造3−600は、締め付け構成においてともに接合されるように構成されている第1の部分3−620及び第2の部分3−622を備えることができる。例えば、第1の部分及び第2の部分は、2つの部分が支持ベースプレートに締結され、支持ベースプレートと熱的に接触して設置されることを可能にする、ねじのための貫通孔3−640を含むことができる。第1の部分3−620及び第2の部分3−622は、銅又はアルミニウムのような高熱伝導性材料から形成することができるが、他の実施形態においては他の材料が使用されてもよい。第1の部分及び第2の部分は、レーザキャビティの利得媒体と熱的に接触して設置されるように構成されているいくつかの内面3−615を有することができる。いくつかの実施形態によれば、利得媒体の隅が位置し得る(例えば、利得媒体が取り付け構造3−600内に取り付けられているときに)マウントの領域に位置するトレンチ又は開口部3−630があってもよい。トレンチ又は開口部3−630は、そうでなければ利得媒体上で誘発される機械的及び/又は熱的応力を低減することができる。トレンチ又は開口部は、利得媒体の隅位置のいずれかの側で約1mmと約3mmとの間で延在してもよい。本発明者らは、利得媒体の隅にある開口部が、そうでなければ利得媒体を裂開し、及び/又は、レーザの光学モード・プロファイルに悪影響を及ぼす場合がある熱的及び機械的応力を軽減することができることを見出した。
いくつかの実施態様において、取り付け構造3−600の第1の部分3−620及び第2の部分3−622は、熱的に冷却する、例えば、熱電クーラに接触することができる。いくつかの実施形態によれば、利得媒体にわたって温度勾配を確立することができるように、第1の部分は、第2の部分とは異なる温度まで制御可能に冷却することができ、又は、逆も可能である。そのような差動制御を使用して、例えば、位置合わせのために、又は、パルス動作を調整するために、レーザキャビティ内でレーザビームを方向制御することができる。
本発明者らは、熱を散逸させる取り付け構造が、レーザキャビティの光学的位置合わせに悪影響を与える場合があることをさらに認識し、諒解するに至った。例えば、利得媒体又はダイオード・ポンプ・ソース3−105のための取り付け構造3−600は、パルスレーザの他の光学素子が締結されるベースプレートに締結され得る。取り付け構造は、ベースプレートへと熱を散逸させ得、この熱は、ベースプレートの膨張及び/又は反りもしくは他の歪みを引き起こす場合がある。結果として、ベースプレートが動いて、レーザキャビティの光学素子の不整合を生じ、レーザ性能に悪影響を与える可能性がある。
いくつかの実施形態によれば、相当の熱散逸を必要とするパルスレーザの取り付け構造又は構成要素は、図3−7Aの平面図に示すような、部分的に絶縁されたプラットフォーム3−710上に取り付けることができる。プラットフォームは、パルスレーザのベースプレートへの熱散逸を、部分的に絶縁することができる。プラットフォームの立面図が、図3−7B及び図3−7Cに示されている。部分的に絶縁されたプラットフォーム3−710は、いくつかの実施態様によれば、機械加工工程によってベースプレート3−705内に形成することができる。例えば、ベースプレート3−705は、コンパクトなモードロックレーザのハウジングを形成するために機械加工される、中実材料ブロックの一部分であってもよい。部分的に絶縁されたプラットフォーム3−710を形成するために、1つ又は複数のトレンチ又はトラフ3−730を、ベースプレート3−705を通じて機械加工することができる。これらのトラフは、図3−7Cに示すように、ベースプレート3−705を通じて延在し、プラットフォーム3−710をベースプレート3−705から部分的に分離し、熱的に絶縁することができる。例えば、熱は、プラットフォームからベースプレートへは容易に散逸することはできない。
複数の支持タブ3−720が、トラフ3−730を形成する機械加工工程の後に残ることができる。支持タブは、プラットフォーム3−710の機械的支持を可能にし、ベースプレート3−705への部分的な熱伝導を可能にする。プラットフォーム3−710の下面は、いくつかの実施態様によれば、熱電クーラ(図示せず)に熱的に接触してもよい。様々な実施形態において、支持タブ3−720は、図3−7Bに示すように、プラットフォーム3−710の上面と下面との間で、プラットフォームの厚さに対して、中央に位置する。例えば、支持タブ3−720は、図3−7Bに示すように、ベースプレート3−705の中立機械平面内に位置することができる。支持タブ3−720をプラットフォーム及びベースプレートの厚さに対して中央に配置することによって、ベースプレート3−705とプラットフォーム3−710との間に与えられる面外熱機械応力の量を低減することができる。ベースプレートへと散逸される熱の量を低減し、面外応力を低減することによって、ベースプレートの反り、及び、レーザキャビティ内の他の光学構成要素の望ましくない相対運動を低減することができる。いくつかの実施形態において、支持タブは、例えば、プラットフォームによって誘発される熱機械応力に対応するために、プラットフォームがベースプレート3−705に対して相対的に動くことを可能にする曲げ部材を含む。いくつかのレーザ構成要素(例えば、利得媒体3−107)の動きは、他の構成要素(例えば、キャビティ・ミラー)ほど、レーザの動作に影響を与えないものであり得、それゆえ、許容することができる。プラットフォーム3−710の部分的な熱機械的絶縁によって、レーザの安定性が向上し、熟練のオペレータによる調整の必要が低減する。
いくつかの実施形態によれば、1つ又は複数のプラットフォーム3−710を使用して、パルスレーザ内の高温要素を支持することができる。例えば、第1のプラットフォーム3−710は、ダイオード・ポンプ・ソース3−105又はポンプ・モジュール2−140を支持するために使用されてもよく、第2のプラットフォームは、レーザ利得媒体3−107、1−105を支持するために使用されてもよい。いくつかの実施態様において、第3のプラットフォームが、非線形要素3−109、2−170を支持するために使用されてもよい。
いくつかの実施形態において、異なる固有波長において動作する複数のパルスレーザが使用されてもよい。本発明者らは、2つのレーザからのパルス列を、電気機械フィードバック制御回路を用いずに同期することができることを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施形態において、図3−8Aに示すように、第1のモードロックレーザからのパルス列を使用して、第2の連続波レーザからのパルスを発生させることができる。第1のレーザ1−110aは、第1の固有波長λ1にある第1のパルスの列3−820aを生成することができる。パルスからのいくらかのエネルギーを、第1の非線形光学素子3−830における第2高調波発生(SHG:second−harmonic generation)を介して、第2高調波に変換することができる。基本波長における残りのエネルギーは、第1のダイクロイック・ミラーDC1によって、第2のレーザ3−800へと方向付けることができ、第2のレーザは、第1の端部ミラーDC2と、和周波数発生(SFG:sum−frequency generation)のための第2の非線形光学素子3−840と、利得媒体3−810と、第2の端部ミラーDC3とを備える。端部ミラーは、第2のレージング波長λ2に対して高反射性であり、他の波長は透過することができるダイクロイック・ミラーであってもよい。例えば、端部ミラーは、第2のレージング波長に対しては99%を超える反射率値を有することができ、第1のレージング波長λ1を透過することができる。第2のレーザ3−800はまた、それを通じて利得媒体のためのポンプ波長λpをキャビティ内に導入することができる、3色性反射器TC1をも含むことができる。
いくつかの実施形態によれば、第2のレーザ3−800は、連続波モードで動作することができる。したがって、第2のレーザはそれ自体では、パルスを生成しない。加えて、
第2のレーザのキャビティ・ミラーは高い反射率値を有するため、キャビティ内パワーは非常に高い。これは、レーザがその動作波長λ2においてキャビティの外部にパワーを与える必要がないためである。その後、高いキャビティ内パワーを、第3の波長λ3にあるパルス列3−820cを生成するための、第1のレーザ1−110aからキャビティに注入されるパルスを用いた和周波数発生に使用することができる。第2のレーザ3−800は連続波モードにおいて動作するため、第2のレーザのキャビティ長はパルス繰り返し数に関連付けられず、そのため、キャビティ長制御は必要ないものであり得る。さらに、SFGを介したパルス生成は、第1のレーザ1−110aからのパルスによって決定され、和周波数波長λ3にある、発生したパルスは自動的に、第1のレーザからのパルスに同期され、2つのパルス列の電子的同期は必要ない。機器電子装置に対する同期は依然として必要になる。
図3−8Bは、1つのレーザが連続波モードにおいて動作する、2レーザ・システムの代替的な実施形態を示す。このシステムにおいて、SFGがSHGの前に行われる。いくつかの事例において、和周波数発生の効率は、第2高調波発生よりも劣る場合があり、そのため、第1のレーザ・パルスの強度がより高くなるように、まずSFGを実施することが有利であり得る。
所望の波長を得るために非線形光学素子を介した波長変換を利用するレーザ実施形態について、非線形光学素子は、光学素子を通過する光ビーム軸に対する光学素子の角度調整を可能にするマウント内に支持することができる。角度調整は、非線形要素が、高い変換効率のための位相整合角度まで回転することを可能にすることができる。角度調整は、例えば、製造時にねじを調整することによって手動で行うことができ、その後、接着剤、樹脂、又は他の方法を介して固定することができる。いくつかの実施形態において、角度調整は固定されなくてもよく、それによって、ユーザ又は技術者が、必要なときにさらなる調整を行うことができる。
本発明者らは、少なくとも1つのレーザが可飽和吸収体を含む、2つのレーザからのパルス列の同期を助けるためのさらなる方法を着想した。図3−9は、第1のモードロックレーザ1−110aからの白化パルス列3−820bが、第2のモードロックレーザ3−910の可飽和吸収体ミラー3−120へと方向付けられる2レーザ・システム3−900を示す。第2のモードロックレーザは、利得媒体3−810及び出力カプラOC1を備えることができる。第2のレーザの利得媒体は、第1のレーザの利得媒体と同じであってもよい。
白化パルス列3−820bは、いくつかの実施形態によれば、ビームスプリッタBS1によって、第1のレーザの主出力パルス列3−820aから分割することができる。白化パルス列が可飽和吸収体ミラーに衝突すると、これは、各パルスの間、可飽和吸収体ミラーの白化(光学損失の低減)を補助することになる。この短い損失低減は、第2のレーザ3−910内の光パルス3−820cの形成及びタイミングに影響を及ぼす。様々な実施形態において、白化パルスは、可飽和吸収体ミラーの、第2のレーザビームによって照射される領域に空間的に位置合わせされるべきである。第2のレーザ3−910の光パルスはまた、形成されると、可飽和吸収体をも白化するため、2つのレーザが定常状態において動作しているときに、それらのパルスは、第1のレーザからのパルスと同時に、可飽和吸収体ミラー3−120に衝突することが望ましい。したがって、電気機械制御回路3−920を使用して、第2のレーザのキャビティ長(及びパルス繰り返し数)を制御することができる。
キャビティ長を制御するための電気機械制御回路3−1000の例が、図3−10に示されている。他の実施形態は、異なる信号処理回路を使用してもよい。いくつかの実施態
様において、2つのレーザからのパルスを、2つの光検出器3−1010、3−1012を用いて検出することができる。光パルスは、ビームスプリッタから取り出されるレーザビームの部分、又は、例えば、迷反射、散乱、又は、レーザキャビティ内の光学構成要素からの残留透過であってもよい。光検出器からの信号は、増幅器3−1020、3−1022によって増幅することができ、ロー・パス・フィルタ又はバンド・パス・フィルタ3−1030、3−1032によってフィルタリングすることができる。2つの信号が直交して混合されることを可能にするために、可変位相遅延3−1034を、1つの信号経路内に含むことができる。増幅器は、オペ・アンプ又は無線周波数増幅器を含んでもよく、デジタル又はアナログであってもよい。フィルタは、デジタル・フィルタ又はアナログ・フィルタであってもよく、実質的に、2つのレーザのパルス繰り返し数の基本又は高調波周波数に対応する正弦波出力を発生させることができる。2つのフィルタからの出力はその後、和周波数及び差周波数を生成するために、混合器3−1040において混合することができる。
いくつかの実施形態によれば、混合器からの出力をロー・パス・フィルタ3−1040を用いてフィルタリングしてDC信号を生成することができ、DC信号は、2つの周波数の間の位相シフトに比例する誤差信号を与える。DC信号レベルは、電気機械制御回路3−920に与えることができ、キャビティ長がどの程度良好に一致するかを決定するために監視される。キャビティ長が一致するとき、DC信号レベルはほぼゼロ値付近になり得る。キャビティ長が一致しないとき、DC信号レベルの大きさは増大し得、制御回路3−920は、例えばDC信号レベルの大きさを低減するために、キャビティ端部ミラーを動かすアクチュエータ3−930に対する制御信号を発生させることができる。
いくつかの実施形態において、位相ロック・ループが、電気機械制御回路において混合器3−1040の代わりに使用されてもよい。例えば、フィルタ3−1030、3−1032からの正弦波信号又はデジタル化方形波信号が、位相ロック・ループの位相検出器に印加されてもよい。位相検出器からの出力は、フィルタリングして、電気機械制御回路3−920に与えることができる。
II.B.モード・ロック半導体レーザ
いくつかの実施態様において、半導体レーザダイオードは、低コストの超高速パルス源を与えるためにモード・ロックすることができる。モードロックレーザダイオードは、いくつかの実施形態に従って、試料を調査し、又は、測定を行うために直接使用されることになる所望の波長(例えば、青色、緑色、又は赤色の波長)にあるパルスを生成することができる。いくつかの事例において、レーザダイオードによって生成されるパルスは、調査又は測定用途に使用するための別の波長に変換(例えば、周波数2倍化)することができる。例えば、モードロックレーザダイオードは、赤外線波長にあるパルスを生成してもよく、これらのパルスが、光スペクトルの青色、緑色、又は赤色の領域まで周波数2倍化されてもよい。
モードロックレーザダイオード4−100の1実施形態が、図4−1に示されている。モード・ロック半導体レーザは、レーザダイオード4−105及び可飽和吸収体ミラー3−120を備えることができる。レーザキャビティの端部は、いくつかの実施形態によれば、半導体レーザダイオード4−105の1端に形成される反射性コーティング4−112及び可飽和吸収体ミラー3−120によって規定することができる。レーザキャビティは、レーザダイオードからの光ビームを再成形し、及び/又は、その発散を変化させる第1の光学系OS1を含むことができる。レーザキャビティは、キャビティ内ビームを再成形し、及び/又は、可飽和吸収体ミラー上に集束することができる第2の光学系OS2をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、レーザキャビティは、光学遅延要素3−110を含むことができる。光学遅延要素は、図3−2Aから図3−2Dに関連して上述した遅延要素の任意の実施形態であってもよい。モードロックレーザダイオード
は、波長λ1においてレージングし、約100psよりも短い持続時間を有する超高速パルスの列を生成することができる。
いくつかの実施態様において、レーザダイオード4−105は、光導波路構造のいずれかの端部上に光学コーティングを含むことができる。光学コーティング4−110、4−112は、蒸着工程又は物理堆積工程のような、任意の適切な堆積工程によって形成されてもよい。いくつかの実施態様において、レーザダイオードの第1の端部は、レーザキャビティの出力カプラとしての役割を果たす部分透過性コーティング4−112を含むことができる。透過性コーティング4−112は、超高速パルスの列を与えるために、レージング・ビームの一部分をキャビティの外部に透過することができる。コーティング4−112の透過率は、いくつかの実施形態によれば、約2%と約15%との間であってもよく、その反射率は、約98%と約85%との間であってもよい。レーザダイオード4−105の反対の端部は、レーザダイオードからの放射のほとんどが著しく反射されることなくレーザキャビティに入ることを可能にするように、反射防止コーティング4−110でコーティングすることができる。例えば、反射防止コーティング4−110は、レージング波長λ1の1%未満を反射し得る。
いくつかの実施形態において、図4−2に示すように、モードロックレーザダイオード4−200の可飽和吸収体は、同じチップ上に、半導体レーザダイオードとともに集積することができる。例えば、可飽和吸収体4−665は、レーザダイオード4−620が形成される基板上に集積することができる。レーザキャビティは、レーザダイオードからのビームを再成形し、及び/又は、その発散を変化させる光学系OS1を含むことができる。いくつかの実施形態において、光学系OS1は、キャビティ内のビームの形状及び/又は発散を変化させるために使用される、レーザキャビティ内の唯一の光学系であってもよい。レーザキャビティはまた、光学遅延要素3−110及び出力カプラOC1をも含むことができる。出力カプラは、レージング・ビームの一部分をキャビティの外部に透過し、レージング・ビームのほとんどをレーザキャビティ内に反射し戻すビームスプリッタを含むことができる。出力カプラOC1の透過率は、いくつかの実施形態によれば、約2%と約15%との間であってもよい。上述したように、レーザダイオード4−620の、可飽和吸収体4−665の反対にある1端は、反射防止コーティングを含むことができる。可飽和吸収体は、放射の大部分をレーザダイオードからレーザキャビティ内へと反射し戻す高反射性コーティングを含んでもよい。
モードロックレーザダイオード4−300の別の実施形態が、図4−3に示されている。この実施形態において、光ファイバ4−320が、レーザキャビティの光学遅延要素として使用される。レーザキャビティは、いくつかの実施形態によれば、レーザダイオード4−620と同じ基板上に集積される、可飽和吸収体4−665及び可飽吸収体に隣接する高反射性コーティングを含むことができる。レーザキャビティは、レーザダイオード4−620からの放射を光ファイバ4−320へと結合するために使用される光学結合構成要素4−310をさらに含むことができる。光学出力結合要素4−330は、いくつかの実施形態によれば、ファイバ4−320の第2の端部に位置することができ、レーザキャビティの出力カプラとして構成することができる。
いくつかの実施態様において、光結合要素4−310は、光学接着剤を含んでもよい。例えば、光ファイバ4−320は、レーザダイオードの端部に位置合わせして、光学接着剤を使用してそれに接着することができる。ファイバ端部は、レーザダイオードの導波領域からの放射がより効率的にファイバに結合する位置において接合することができる。いくつかの実施形態において、光学結合要素4−310は、ボール・レンズ又は屈折率分布型(GRIN)レンズを含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、光ファイバの反対の端部にある、出力光学結合要素4−330の表面は、レーザキャビティからの出力結合
を可能にするように、反射性コーティング4−332を含むことができる。出力結合要素4−330は、いくつかの実施態様において、ボール・レンズ又はGRINレンズを含んでもよい。いくつかの実施形態において、出力結合要素4−330は、光ファイバ4−320の1端付近に取り付けられているレンズを含んでもよい。
図4−1から図4−3に示されているモードロックレーザダイオードの図示されている実施形態のいずれかは、波長変換要素3−109を含んでもよく、又は、含まなくてもよい。いくつかの実施形態によれば、波長変換要素は、レーザキャビティからのビームに位置合わせされる周波数2倍化結晶を含んでもよく、又は、パラメトリック変換もしくは4波混合のために利用される非線形要素を含んでもよい。いくつかの実施形態において、非線形要素は、レーザダイオードと同じ基板上に集積することができる、ニオブ酸リチウムのような、周期分極反転材料を含んでもよい。
モードロックレーザダイオードを使用することは、大量のパワー、例えば、約300mWを超えるパワー・レベルを必要としないいくつかの実施形態にとっては有利であり得る。モードロックレーザダイオードの1つの利点は、それらのサイズがコンパクトであること、及び、レーザ内で使用される光学素子の数が低減されることである。レージング媒体は非常に小さく(例えば、幅を5mm未満に)することができるため、いくつかの実施形態において、モードロックレーザダイオードのアレイを使用することが可能であり得る。いくつかの実施態様において、モードロックレーザダイオードのアレイは、共通の光学素子を共有することができる。例えば、2つ以上のレーザダイオードが、1つ又は複数の光学素子(例えば、光学遅延要素3−110、光学系OS1、OS2、及び可飽和吸収体ミラー3−120のうちの1つ又は複数)を共有することができる。
II.C.モード・ロック・ファイバ・レーザ
いくつかの実施形態によれば、モード・ロック・ファイバ・レーザを使用しても、超高速パルスを生成することができる。モード・ロック・ファイバ・レーザのいくつかの例が、図5−1から図5−3に示されている。モード・ロック・ファイバ・レーザは、上述され図3−3Aから図3−3Cに示されている様な、ダイオード・ポンピングされる固体レーザに使用されている光学素子を含んでもよい。しかしながら、モード・ロック・ファイバ・レーザにおいて、利得媒体は、同じくレーザキャビティの光学遅延要素を与えることができる一定の長さの光ファイバ5−120を含む。いくつかの実施形態によれば、図5−1に示すように、ダイオード・ポンプ・ソース3−105は、ファイバ5−120の1端に結合されるポンピング波長λpを与えることができる。いくつかの実施態様において、第1のダイクロイック端部ミラーDC1、及び、ファイバ・レーザの受動モード・ロックを引き起こす可飽和吸収体ミラー3−120によって、ファイバ・レーザキャビティを画定することができる。
図5−1を参照し、いくつかの実施形態に従って、モード・ロック・ファイバ・レーザ5−100は、ダイオード・ポンプ・ソース3−105からの出力ビームを、レーザの利得媒体としての役割を果たす光ファイバ5−120に結合するように構成されている第1の光学系OS1を備えることができる。いくつかの実施態様において、ダイオード・ポンプ・ソース3−105からのビームを光ファイバのクラッディングに結合して、光ファイバ5−120のコア及び利得媒体を励起することができる。例えば、第2の光学系OS2は、レージング波長λ1にあるビームを形成するために、光ファイバからの放射を結合するように構成することができる。レーザキャビティは、図面に示されているように、光ファイバ5−120の付近又はその1端に位置付けられているダイクロイック・ミラーDC2をさらに含むことができる。第2のダイクロイック・ミラーDC2は、レージング波長λ1の大部分を可飽和吸収体ミラー3−120に透過し、ポンプ波長λpのほとんどを、光ファイバを通じて反射し戻すことができる。例えば、第2のダイクロイック・ミラーDC2は、約98%を超えるレージング波長を透過し、約98%を超えるポンプ波長を反射
することができる。ポンプ・ソースと光ファイバとの間で、レーザキャビティの外部に第3のダイクロイック・ミラーDC3が含まれてもよく、ファイバ・レーザ5−100からの出力レーザビームを方向付けるために使用することができる。第3のダイクロイック・ミラーは、いくつかの実施態様によれば、ポンプ波長λpの大部分(例えば、約98%を超える)を透過し、レージング波長λ1の大部分(例えば、約98%を超える)を反射することができる。
モード・ロック・ファイバ・レーザ5−200の別の実施形態が、図5−2に示されている。いくつかの実施態様によれば、光学結合要素を、光ファイバ5−120の対向する端部に作製又は接合することができる。例えば、第1の光学素子5−210を、光ファイバの第1の端部に接合し、又はその上に形成することができる。第1の光学素子は、光ファイバの端部に直接付着されるか、又は、支持構造を用いて付着されるボール・レンズ又は屈折率分布型レンズを含んでもよい。加えて、第1の光学素子5−210は、ポンプ波長λpの大部分(例えば、約98%を超える)を透過し、レージング波長λ1の大部分(例えば、約98%と約85%との間)を反射する2色性コーティングを含むことができる。したがって、第1の光学素子5−210は、ファイバ・レーザ5−200の出力カプラを含むことができる。
第2の光学素子5−220は、いくつかの実施形態において、レージング波長λ1の大部分(例えば、約98%を超える)を透過し、ポンプ波長λpの大部分(例えば、約98%を超える)を光ファイバに反射し戻すように設計されている、光ファイバの1端に形成される2色性コーティングを含むことができる。いくつかの実施形態において、第2の光学素子5−220は、光ファイバの端部に直接付着されるか、又は、支持構造を用いて結合されるボール・レンズ又はGRINレンズを含んでもよい。例えば、GRINレンズは、光学接着剤を用いてファイバの1端に接着することができ、GRINレンズの露出した端部は、レージング波長λ1の大部分(例えば、約98%を超える)を透過し、ポンプ波長λpの大部分(例えば、約98%を超える)を光ファイバに反射し戻すように設計されている、2色性コーティングでコーティングすることができる。いくつかの実施形態によれば、レーザダイオード3−105からのポンプ放射を光ファイバに結合するために使用される第1の光学レンズシステムOS1、及び、光ファイバからの放射を可飽和吸収体ミラー3−120上に集束させるために使用される第2の光学レンズシステムOS2があってもよい。
図5−3は、モード・ロック・ファイバ・レーザ5−300のまた別の実施形態を示す。そのような実施形態は、上述したファイバ・レーザの先行する実施形態よりも、備える光学素子を少なくすることができる。いくつかの実施態様によれば、ファイバ・レーザキャビティは、光ファイバ5−120の1端に位置する光学プリズム5−310、及び、光ファイバの反対の端部に位置する可飽和吸収体ミラー3−120によって画定することができる。光学プリズム5−310は、第1の2色性コーティング5−312によって被覆されている第1の表面を含むことができる。第1の2色性コーティングは、ポンプ・ソース波長λpの大部分(例えば、約98%を超える)を透過し、レージング波長λ1の大部分(例えば、約98%を超える)を反射することができる。光学プリズム5−310の第2の表面は、ポンプ波長λpの大部分(例えば、約98%を超える)を透過し、レージング波長λ1の大部分(例えば、約85%と約98%との間)を光ファイバに反射し戻すように構成されている第2の2色性コーティング5−314を含むことができる。第2の2色性コーティング5−314は、ファイバ・レーザの出力カプラとしての役割を果たすことができる。例えば、第2の2色性コーティング5−314は、レージング波長λ1を約2%と約15%との間で透過し得る。いくつかの実施形態によれば、光ファイバ5−120の反対の端部に位置する出力結合要素5−220があってもよい。出力結合要素5−220は、レーザ放射を、ファイバから可飽和吸収体ミラー3−120へと結合することが
できる。いくつかの実施形態において、ファイバ出力結合要素は、光ファイバの端部に接着されるボール・レンズ又は屈折率分布型レンズを含んでもよい。いくつかの実施態様において、出力光学結合要素5−220は、レージング放射λ1の大部分を透過し、ポンプ放射λpの大部分をファイバに反射し戻すように設計されている2色性コーティングを含むことができる。出力光学結合要素5−220は、可飽和吸収体ミラー3−120へと、及び、可飽和吸収体ミラー3−120から、レージング放射λ1を結合することができ、SAMと接触していてもよいし、又は、接触していなくてもよい。
II.D.利得切換レーザ
いくつかの実施形態において、利得切換レーザが、分析機器1−100のためのパルスレーザ1−110として利用されてもよい。利得切換レーザは、一般的にモードロックレーザよりも長いパルスを有するが、複雑度がより低く、より低い費用で製造することができる。利得切換レーザは、試料の蛍光寿命がより長い減衰率(例えば、約5nsよりも長い)ときに有用であり得る。
本発明者らは、レーザダイオード及び発光ダイオードから短及び超短光パルスを生成するためのパルサ回路及び技法を着想した。パルス化回路及び技法は、いくつかの実施態様においては、半導体レーザを利得切換し、最大100MHzの繰り返し数(10ナノ秒程度と短いT)において約1Wのピーク・パワーを有する、約85ピコ秒(ps)パルスの列(FWHM)を生成するために利用されている。いくつかの実施形態において、ユニポーラ又はバイポーラ電流波形を、パルサ回路によって生成することができ、光パルスを励起し、パルスのテールにおける発光を抑制するように、レーザダイオードの利得媒体を駆動するために使用することができる。いくつかの実施形態において、ユニポーラ又はバイポーラ電流波形を、パルサ回路によって生成することができ、短又は超短光パルスを出力するように1つ又は複数の発光ダイオードを駆動するために使用することができる。
レーザダイオードにおける利得切換を説明する目的で、利得切換と関連付けられるレーザ動態を示すために、図6−1Aから図6−1Cが含まれている。図6−1Aは、いくつかの実施形態によれば、利得切換レーザの利得媒体に印加されるポンプ・パワーを表すポンプ・パワー曲線6−110を示す。図示されているように、ポンプ・パワーは、レーザキャビティ内の利得媒体に、短い持続時間(約0.6マイクロ秒として示されている)にわたって印加することができる。半導体レーザダイオードについて、ポンプ・パワーの印加は、レーザダイオードのp−n接合又は多重量子井戸(MQW)にわたってバイアス電流を印加することを含むことができる。ポンプ・パワー・パルスは、周期的に離間された時間間隔で、例えば、パルス分離間隔又はパルス繰り返し時間Tで、繰り返し印加することができる。
ポンプ・パワー・パルスが印加されている間、レーザキャビティ内の光学利得は、利得がキャビティにおける光学損失を超え始めるまで増大する。この時点の後、レーザはレージング(すなわち、誘導放出の工程によって利得媒体を通過する光子を増幅)し始めることができる。増幅工程の結果として、レーザ光が急速に増大し、利得媒体内の励起状態が空乏して、少なくとも1つの出力パルス6−130が図示のように生成される。いくつかの実施形態において、ポンプ・パワー・パルス6−110は、出力パルスのピークが生じるのとほぼ同時にオフになるように、タイミングをとられる。ポンプ・パワー・パルスがオフになることによって、さらなるレージングが終了し、それによって、出力パルス6−130が消える。いくつかの実施形態において、出力パルス6−130は、図面に示すように、ポンプ・パルス6−110よりも短い持続時間を有し得る。例えば、利得切換によって生成される出力パルス6−130は、ポンプ・パルス6−110の持続時間の1/5よりも小さくてもよい。
ポンプ・パワー・パルスがオフにされない場合、図6−1Bに示す動態が生じ得る。こ
の事例において、階段関数として示されているポンプ・パワー曲線(ポンプ電流密度として示されている)6−140は、半導体レーザに印加される電流密度を表す。グラフは、利得媒体がポンピング電流密度によって励起され、それによって、レーザダイオードの利得領域におけるキャリア密度Nが生成されることを示している。レージング閾値電流密度Ithの約2倍のポンプ電流密度Iが時刻t=0において印加され、その後、そのままにされる。グラフは、レーザの光学利得がキャビティ内の損失を超えるまで、半導体利得領域のキャリア密度Nが増大することを示している。この時点の後、キャリア密度及び光学利得をキャビティ損失を下回る値まで空乏させる第1のパルス6−161が増大し、放出される。その後、第2のパルス6−162が増大し、キャリア密度Nを空乏させ、放出される。キャリア密度の増大及び空乏は、レーザが安定して連続波動作になる(例えば、この例では約7ナノ秒後)まで、数サイクルにわたって繰り返す。パルス(パルス6−161、パルス6−162、及び後続のパルス)のサイクルは、レーザの緩和振動と称される。
本発明者らは、超短パルスを生成するためにレーザを利得切換するときの課題は、緩和振動が継続することの有害な影響を回避することであることを認識し、諒解するに至った。例えば、図6−1Cに示すように、ポンプ・パワー・パルス6−110が十分迅速に終端しない場合、少なくとも第2の光パルス6−162(緩和振動に起因する)がレーザキャビティ内で増大し始め、利得切換出力パルス6−170にテール6−172を付加する場合がある。本発明者らは、そのようなテールは、蛍光寿命に基づいて蛍光分子を区別することを目標とする用途のようないくつかの用途にとっては望ましくない可能性があることを認識し、諒解するに至った。励起パルスのテールが十分迅速に低減されない場合、波長フィルタリングが利用されない限り、励起放射は、検出器を圧倒する場合がある。代替的に又は付加的に、励起パルス上のテールは、蛍光分子を励起し続ける場合があり、蛍光寿命の検出を複雑にする場合がある。
励起パルスのテールが十分迅速に低減される場合、蛍光発光中に存在する励起放射は、無視できるものであり得る。そのような実施態様において、蛍光発光の検出中に励起放射をフィルタリングすることは、蛍光発光を検出し、蛍光分子寿命を区別するためには必要ない場合がある。いくつかの事例において、励起フィルタリングをなくすことによって、分析システム1−160を大幅に単純化し、その費用を低減することができ、システムの構成をよりコンパクトにすることを可能にすることができる。例えば、蛍光発光中の励起波長を抑制するためにフィルタが必要ない場合、励起源及び蛍光検出器は密に近接して(例えば、同じ回路基板又は集積デバイス上に、またさらには互いの数マイクロメートル(数ミクロン)以内に)位置することができる。
本発明者らはまた、いくつかの事例において、励起パルス上のテールは許容することができることも認識し、諒解するに至った。例えば、分析システム1−160は、波長フィルタを検出光路に組み込むことを容易に可能にする光学的構成を有することができる。波長フィルタは、検出器が生物学的試料から定量化可能な蛍光を受信するように、励起波長を拒絶するように選択することができる。結果として、パルス光源からの励起放射は、検出される蛍光を圧倒しない。
いくつかの実施形態において、蛍光分子の発光寿命τは、いくつかの実施形態によれば、1/e強度値によって特性化することができるが、いくつかの実施形態では、他の測定基準が使用されてもよい(例えば1/e2、発光半減期など)。蛍光分子の寿命を決定する正確度は、蛍光分子を励起するために使用される励起パルスが、蛍光分子の寿命よりも短い持続時間を有する場合に改善される。好ましくは、励起パルスは、蛍光分子の発光寿命よりも少なくとも3倍だけ短いFWHM持続時間を有する。より長い持続時間を有する励起パルス、又は、相当のエネルギーを有するテール6−172は、減衰する発光が評価
されている間に蛍光分子を励起し続け、蛍光分子寿命の分析を複雑にする場合がある。そのような事例における蛍光寿命決定を改善するために、デコンボリューション技法を使用して、検出されている蛍光から、励起パルス・プロファイルの畳み込みを解くことができる。
いくつかの事例において、蛍光分子又は試料の消光を低減するために、超短パルスを使用して蛍光分子を励起することが好ましい場合がある。蛍光分子のポンピングが延長することによって、蛍光分子が経時的に白化及び/又は損傷する場合があり、一方で、より短い持続時間にわたって強度をより高くすることは、(たとえ分子にかかる全エネルギー量が同じであったとしても)より低い強度での長時間の曝露ほどには、蛍光分子を損傷しない場合があることが分かっている。曝露時間を低減することによって、蛍光分子に対する、光によって誘発される損傷を回避又は低減し、蛍光分子が分析システム1−160内でそのために使用される測定の時間又は回数を増大することができる。
いくつかの用途において、本発明者らは、励起パルスが、パルスのピーク・パワー・レベルを少なくとも約40dB下回るパワー・レベルまで、迅速に(例えば、パルスのピークから約250ps以内に)終端することが望ましいことを見出した。いくつかの実施形態は、より少量のパワー低減、例えば、約250ps以内で約20dBと約40dBとの間のパワー低減を許容することができる。いくつかの実施形態は、250ps以内で、例えばいくつかの実施形態において約40dBと約80dbとの間、又は、いくつかの実施形態において約80dBと約120dbとの間の、同様の又はより大量のパワー低減を必要とする場合がある。いくつかの実施形態において、これらのパワー低減レベルは、ポンピング・パルスのピークから約100ps以内に必要とされ得る。
いくつかの実施形態によれば、パルス分離間隔T(図1−2参照)もまた、パルスレーザ・システムの重要な態様になり得る。例えば、蛍光分子の発光寿命を評価及び/又は区別するためにパルスレーザを使用するとき、励起パルスの間の時間は好ましくは、発光寿命を十分に正確に決定することを可能にするために、試験されている蛍光種の任意の発光寿命よりも長い。例えば、後続のパルスは、先行するパルスから励起される蛍光分子又は励起される蛍光分子の集合が、蛍光を発するために妥当な時間を得る前に到来するべきではない。いくつかの実施形態において、間隔Tは、蛍光分子を励起する励起パルスと、励起パルスの終端後で、かつ次の励起パルスの前に、蛍光分子によって放出される後続の光子との間の時間を決定するのに十分に長い必要がある。
励起パルス間の間隔Tは、蛍光種の減衰特性を決定するのに十分に長くなるべきであるが、パルス分離間隔Tが、短期間に多くの測定が行われることを可能にするのに十分に短いことも望ましい。限定ではなく例として、いくつかの用途において使用される蛍光分子の発光寿命(1/e値)は、約100ピコ秒〜約10ナノ秒の範囲内であり得る。それゆえ、使用される蛍光分子に応じて、約200ps程度と短いパルス分離間隔を使用することができ、一方で、より寿命の長い蛍光分子については、約20ナノ秒よりも長いパルス分離間隔Tを使用することができる。したがって、蛍光寿命分析のために蛍光発光を励起するために使用される励起パルスは、いくつかの実施形態によれば、約25ピコ秒と約2ナノ秒との間のFWHM持続時間を有することができる。
蛍光発光を検出し、寿命分析に関するデータ及び視覚表示を与えるために積分時間領域イメージング・アレイが使用されるいくつかの用途において、パルス分離間隔Tは、イメージング・システムのフレーム・レートよりも短くなる必要はない場合がある。例えば、単一の励起パルス後に十分な蛍光信号がある場合、イメージング・フレームの複数の励起パルスにわたる信号累積は必要ない場合がある。いくつかの実施形態において、パルス光源1−110のパルス繰り返し数Rpは、イメージング・システムのフレーム・レートR
fに同期することができ、それによって、パルス繰り返し数は、約30Hz程度に遅くすることができる。他の実施形態において、パルス繰り返し数は、フレーム・レートよりも相当に高くなり得、画像内の各画素の蛍光遅延信号は、複数の励起パルス後の積分値であり得る。
利得切換パルスレーザ6−200の1例が、図6−2Aに示されている。いくつかの実施形態によれば、パルスレーザ6−200は、基板6−208上に形成されている市販の又はカスタム半導体レーザダイオード6−201を備えることができる。レーザダイオードは、電気コネクタ6−224を含むハウジング6−212内にパッケージすることができる。レーザからの出力ビームを再成形し、及び/又は、その発散を変化させるためにパッケージに含まれる、1つ又は複数の光学素子6−205(例えば、1つ又は複数のレンズ)があり得る。レーザダイオード6−201は、接続ケーブル6−226及び少なくとも1本のワイヤ6−220を介してダイオード6−201へと1連の電流パルスを与えることができるパルサ回路6−210によって駆動することができる。パルサ回路6−210からの駆動電流は、レーザダイオードからの放出される光パルスの列6−222を生成することができる。
いくつかの実施形態によれば、レーザダイオード6−201は、第1の導電型(例えば、p型)を有する第1の層6−202と、反対の導電型を有する第2の層6−206とを備える半導体接合を含むことができる。第1の層と第2の層との間には、1つ又は複数の中間層6−204が形成されてもよい。例えば、中間層は、第1の層及び第2の層から注入されるキャリアが再結合して光子を生成する多重量子井戸(MQW)層を含んでもよい。いくつかの実施形態において、中間層は、電子及び/又は正孔ブロック層を含んでもよい。レーザダイオードは、いくつかの実施態様において、無機材料及び/又は有機半導体材料を含んでもよい。材料は、所望の発光波長が得られるように選択することができる。例えば、無機半導体について、III族窒化物組成が約500nm未満の波長において発光するレーザに使用されてもよく、III族ヒ化物組成又はIII族リン化物組成が、約500nmを超える波長において発光するレーザに使用されてもよい。限定ではないが、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)、端面発光レーザダイオード、又は、スラブ結合光導波路レーザ(SCOWL)を含む、任意の適切なタイプのレーザダイオード6−201が使用されてもよい。
いくつかの実施形態によれば、1つ又は複数のパルスLEDが、利得切換レーザダイオードの代わりに使用されてもよい。パルスLEDは、飛行時間3Dイメージング、及び蛍光イメージング用途に有用であり得る。LEDは、LDよりも低い強度を有し得るため、複数のLEDが使用されてもよい。LEDは緩和振動又はレージング動作に関連付けられる動態を受けないため、その出力パルスは、レーザについて生じるよりも持続時間が長く、スペクトル帯域幅がより広くなり得る。例えば、出力パルスは、約100psと約2nsとの間であってもよく、スペクトル帯域幅は、約20nm以上であってもよい。いくつかの実施態様において、LEDからの出力パルスは、約100psと約500psとの間であってもよい。より長い減衰時間を有する蛍光分子を励起するために、より長い励起パルスが許容可能であり得る。加えて、LEDは、非偏光又は部分偏光出力ビームを生成することができる。パルス光源のいくつかの実施態様において、後述するパルサ回路の実施形態を使用して、1つ又は複数のLEDを駆動することができる。
LEDを使用することの1つの利点は、それらの費用がレーザダイオードと比較してより低いことである。加えて、LEDは、イメージング用途により良好に適し得る、より広い、一般的にインコヒーレントなスペクトル出力を与える(例えば、LEDは、より少ない光学干渉アーチファクトを生成し得る)。レーザダイオードについて、収集される画像内のスペックルを回避するための方策がとられない限り、コヒーレント放射は、イメージ
ング用途においてスペックルを導入し得る。また、LEDは、励起波長を紫外線(例えば、約240nmまで下げる)へと拡張することができ、生物試料における自己蛍光を励起するために使用することができる。
本発明者らは、いくつかの従来のレーザダイオード・システムが、図6−2Bに示すようにモデル化することができる電流ドライバ回路を備えることを認識するに至った。例えば、電流ドライバ6−210は、レーザダイオードに電流パルスを送達するように構成されているパルス電圧源6−230を備えることができる。レーザダイオードへの接続は、一般的に、ケーブル6−226、アダプタ又はコネクタ6−224、及び、レーザダイオード6−210上のコンタクト・パッドに接合されている単一のワイヤ6−220を通じて行われる。アダプタ6−224とレーザダイオードとの間の接続は、直列インダクタンスL1及び直列抵抗R1を含むことができる。接続はまた、コンタクト及び/又はダイオード接合と関連付けられる小さい接合静電容量(図示せず)をも含むことができる。
本発明者らは、ワイヤ・ボンド(例えばコネクタ6−224とレーザダイオード6−201との間)の数を増大することによって、レーザダイオード6−201への接続のインダクタンス及び/又は抵抗を低減することができることを認識し、諒解するに至った。そのようなインダクタンス及び/又は抵抗の低減は、レーザダイオードの電流変調をより高速にし、出力パルスをより短くすることを可能にすることができる。いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードの速度を向上させるために、単一のワイヤ・ボンド6−220が、複数の並列ワイヤ・ボンドに置き換えられてもよい。例えば、ワイヤ・ボンドの数は、3本以上に増大することができる。いくつかの実施態様において、レーザダイオードに対する最大50本のワイヤ・ボンドがあってもよい。
本発明者らは、市販のレーザダイオードに対する、ワイヤ・ボンド6−220の数の増大の影響を調査した。考慮された1例の市販のレーザは、現在ウシオ(Ushio)[米国カリフォルニア州サイプレス(Cypress)所在]から入手可能なオクラロ(Oclaro)レーザダイオード、モデルHL63133DGであった。ワイヤ・ボンドの数を増大させる数値シミュレーションの結果が、図6−2Cに示されている。シミュレーションは、ワイヤ・ボンドの数を、市販のデバイスの単一のボンド(曲線6−250)から、3本のワイヤ・ボンド(曲線6−252)及び36本のワイヤ・ボンド(曲線6−254)へと増大させた。固定18Vパルスについてレーザダイオードへと送達される平均駆動電流が、3つの異なる事例について、一定範囲の周波数にわたって決定された。結果は、ワイヤ・ボンドの数が多くなるほど、より多くの電流がより高い周波数においてレーザダイオードに送達されることが可能になることを示している。例えば、1GHzにおいて、3本だけのワイヤ・ボンドを使用することによって(曲線6−252)、単一のワイヤ・ボンドの場合よりも4倍を超える量の電流が、レーザダイオードに送達されることが可能になる。短パルス及び超短パルスは、より広い帯域幅(短パルスを形成するためのより高い周波数成分)を必要とするため、複数のワイヤ・ボンドを加えることによって、より高い周波数成分が、単一のワイヤ・ボンドよりも短いパルスにおいてレーザダイオードを駆動することを可能にする。いくつかの実施態様において、複数のワイヤ・ボンドは、レーザダイオード上の単一のコンタクト・パッド又は複数のコンタクト・パッドと、レーザダイオード・パッケージ上のアダプタ又はコネクタ6−224との間に延在することができる。コネクタは、外部標準ケーブルへ(例えば、50オームBNC又はSMAケーブルへ)接続するように構成することができる。
いくつかの実施形態において、ワイヤ・ボンドの数及びワイヤ・ボンド構成は、レーザダイオードに接続されているアダプタ及び/又はケーブルのインピーダンスに整合するように選択することができる。例えば、ワイヤ・ボンドのインピーダンスは、いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードから電流ドライバへのパワー反射を低減するために、
コネクタ6−224のインピーダンスに整合することができる。他の実施形態において、ワイヤ・ボンドのインピーダンスは、ダイオードの入力インピーダンスと意図的に不整合になってもよい。不整合は、正の電流駆動パルスの間の負のパルスを発生させることができる。レーザダイオードのパッケージング方法を選択すること(例えば、アダプタからレーザダイオードへのワイヤ・ボンドの数を選択すること)によって、より高い周波数においてレーザダイオードに供給される電流変調を改善することができる。これは、高速利得切換信号に対するレーザダイオードの応答性を高めることができ、光パルスをより短くすること、パルス・ピーク後の光パワーの低減をより高速にすること、及び/又は、パルス繰り返し数を増大することを可能にすることができる。
ここで、図6−3を参照して、本発明者らは、バイポーラ・パルス波形6−300をレーザダイオードに印加することによって、生成される光パルス上の望ましくない発光テール6−172(図6−1Cを参照)を抑制することができることをさらに認識し、諒解するに至った。バイポーラ・パルスはまた、LEDからの光パルスを短縮するために使用することもできる。バイポーラ・パルスは、第1の極性の第1のパルス6−310、及び、後続する、反対の極性の第2のパルス6−312を含むことができる。第2のパルス6−312の大きさは、第1のパルスの大きさとは異なってもよい。いくつかの実施形態において、第2のパルスは、第1のパルス6−310とほぼ等しい又はそれよりも小さい大きさを有してもよい。他の実施形態において、第2のパルス6−312は、第1のパルス6−310よりも大きい大きさを有してもよい。
いくつかの実施形態において、第2のパルスの大きさは、第1のパルスの大きさの約10%と、第1のパルスの大きさの約90%との間であってもよい。いくつかの実施態様において、第2のパルスの大きさは、第1のパルスの大きさの約25%と、第1のパルスの大きさの約90%との間であってもよい。いくつかの事例において、第2のパルスの大きさは、第1のパルスの大きさの約50%と、第1のパルスの大きさの約90%との間であってもよい。いくつかの実施形態において、第2のパルスのエネルギー量は、第1のパルスのエネルギー量の約25%と、第1のパルスのエネルギーの約90%との間であってもよい。いくつかの実施態様において、第2のパルスのエネルギー量は、第1のパルスのエネルギー量の約50%と、第1のパルスのエネルギーの約90%との間であってもよい。
第1の駆動パルスは、レーザダイオード接合を順方向バイアスし、それによって、ダイオード活性領域内にキャリアを発生させることができ、キャリアは再結合して、光パルスを生成することができる。反対の極性にある第2の駆動パルス6−312は、ダイオード接合を逆方向バイアスし、活性領域からのキャリアの除去を加速して、光子発生を終了させることができる。第2の電気パルス6−312が、第2の緩和振動パルス(図6−1Bのパルス6−162を参照)とほぼ同時、又はその直前(例えば、約200ps以内)に生じるようにタイミングをとられる場合、そうでない場合に第2の光パルスを生成するキャリア濃度は、発光テール6−172が抑制されるように減少する。
様々な回路構成を使用して、バイポーラ・パルス波形を生成することができる。図6−4Aは、バイポーラ・パルス波形を有するレーザダイオード又は1つもしくは複数のLEDを駆動するために使用することができる回路のほんの1例を示す。いくつかの実施形態において、伝送線路6−410(例えば、ストリップ・ライン又は同軸導体アセンブリ)をパルス回路6−400内に構成して、バイポーラ・パルスを半導体レーザダイオード6−420又は少なくとも1つのLEDに送達することができる。伝送線路6−410は、U字形構成に形成することができ、第1の導体上で、充電抵抗器RChを通じてDC電圧源VDDによってバイアスすることができる。伝送線路は、いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードのインピーダンスにほぼ整合するインピーダンスを有することができる。いくつかの実施形態において、伝送線路のインピーダンスは、約50オームであって
もよい。いくつかの実施態様において、伝送線路のインピーダンスは、約20オームと約100オームとの間であってもよい。いくつかの実施態様において、伝送線路のインピーダンスは、約1オームと約20オームとの間であってもよい。
パルサ6−400は、伝送線路の1端にある伝送線路の第2の導体と、基準電位(例えば図示されている例では接地)との間に接続されている終端抵抗器Ztermをさらに含むことができる。伝送線路の第2の導体の他端は、レーザダイオード6−420に接続することができる。伝送線路の第1の導体の端部は、第1の導体の端部を基準電位(例えば、接地)に周期的に分路するように起動することができるスイッチM1(例えば、電界効果トランジスタ又はバイポーラ接合トランジスタ)に接続することができる。
いくつかの事例において、終端インピーダンスZtermは、線路に戻る反射を低減するために、伝送線路6−410のインピーダンスにほぼ等しくすることができる。代替的に、終端インピーダンスZtermは、負のパルスを(スイッチM1による分路の後に)線路内及びレーザダイオード6−420に反射するために、線路のインピーダンスよりも小さくてもよい。いくつかの実施態様において、終端インピーダンスZtermは、反射される負のパルスの形状を制御するように選択される、容量性及び/又は誘導性構成要素を含んでもよい。図6−4Aに示すような伝送線路パルサを使用して、約30Hzから約200MHzまでの範囲内の繰り返し数を有する電気バイポーラ・パルスを生成することができる。いくつかの実施形態によれば、伝送線路パルサのための伝送線路6−410は、図6−5Aに示すように、プリント回路基板(PCB)上に形成されてもよい。
図6−4Bは、別個の構成要素を使用して形成することができ、基板(チップ又はPCBなど)に集積することができる半導体光ダイオード6−423(例えば、レーザダイオード又は1つもしくは複数のLED)に接続されているドライバ回路6−401の実施形態を示す。いくつかの実施形態において、回路は、レーザダイオード又はLED6−423と同じ基板に集積されてもよい。レーザ・ドライバ回路6−401は、トランジスタM1のゲート又はベースに接続されている制御入力6−405を備えることができる。トランジスタは、CMOS FET、バイポーラ接合トランジスタ、又は高電子移動度トランジスタ(GaN pHEMTなど)であってもよいが、他の高速の、大電流を処理するトランジスタが使用されてもよい。トランジスタは、電流源6−430と、基準電位(例えば、接地電位、ただし、他の基準電位値が使用されてもよい)との間に接続することができる。トランジスタM1は、電流源6−430と基準電位との間で、レーザダイオード6−423(又は1つもしくは複数のLED)、及び、当該レーザダイオードと直列に接続されている抵抗器R1と並列に接続することができる。いくつかの実施形態によれば、ドライバ回路6−401は、レーザダイオードと基準電位との間で抵抗器R1と並列に接続されているキャパシタC1をさらに含むことができる。トランジスタM1が記載されているが、ハイ伝導状態及びロー伝導状態を有する任意の適切な制御可能スイッチが使用されてもよい。
動作時、ドライバ回路6−401は、トランジスタM1がオンである、すなわち、伝導状態にあるときに、レーザダイオード6−423をバイパスする電流をもたらすことができる。それゆえ、レーザダイオードからの光出力はない。トランジスタM1がオフになると、電流はトランジスタにおける抵抗経路の増大に起因して、レーザダイオードを通じて流れることができる。トランジスタが再びオンにされるまで、電流はレーザダイオードをオンにする。光パルスは、レーザダイオードに電流パルスを与えるためにトランジスタの制御ゲートをオン状態とオフ状態との間で変調することによって発生させることができる。この手法は、レーザを駆動するために必要とされる電源上の電圧及びトランジスタ上の電圧の量を、いくつかのパルス技法と比較して低減することができ、これは、そのような高速回路を実装するために重要な態様である。
抵抗器R1及び並列キャパシタC1が存在することに起因して、ダイオードが順方向に伝導されているとき、キャパシタ上に電荷が蓄積する。これは、トランジスタM1が「オフ」状態、例えば、ロー又は非伝導状態にあるときに生じ得る。トランジスタがオンにされると、キャパシタにわたって貯蔵されている電圧がレーザダイオードを逆方向にバイアスする。逆方向バイアスは、実効的に、レーザダイオードにわたって負のパルスを生成し、これによって、そうでなく負のパルスがない場合に生じることになる発光テール6−172が低減し、又は、なくなり得る。抵抗器R1の値は、スイッチがその後開き、及び/又は、その後の光パルスがレーザダイオードによって発生する前に、キャパシタ上の実質的にすべての電荷が放電するように、選択することができる。例えば、時定数t1=R1C1は、パルス繰り返し間隔Tの約2分の1又は3分の1よりも小さくなるように設計されてもよい。いくつかの実施態様において、時定数t1=R1C1は、約0.2nsと約10nsとの間であってもよい。
いくつかの実施態様において、トランジスタM1は、レーザダイオードからの出力光パルスの第1のピークの後に伝導状態に切り替わるように構成することができる。例えば、図6−1Bを参照すると、光検出及び論理回路は、第1のパルス6−161の減衰する強度を検知することができ、伝導状態に切り替わるようにトランジスタM1をトリガすることができる。いくつかの実施形態において、トランジスタM1は、安定したクロック信号に基づいて伝導状態に切り替わるようにトリガされてもよい(例えば、同期クロック・エッジを基準にしてトリガされる)。いくつかの実施態様において、トランジスタM1は、トランジスタM1が非伝導状態に切り替わる時点から測定される所定の遅延時間に従って、伝導状態に切り替わるようにトリガされてもよい。選択された時点においてトランジスタM1を伝導状態に切り替えることによって、ピーク光パルスの直後にレーザ・パワーを低減することができ、レーザ・パルスを短縮することができ、及び/又は、パルスのテール発光を低減することができる。
図6−4Bに示す駆動回路は、レーザのアノード側に位置する電流源6−430を示しているが、いくつかの実施形態において、電流源は代替的に又は付加的に、レーザのカソード側に位置してもよい(例えば、トランジスタM1、抵抗器R1、及び接地のような基準電位の間に接続されてもよい)。
超短パルスを生成するための駆動回路の他の実施形態が可能である。例えば、レーザダイオード又はLEDの電流パルス駆動回路6−402は、図6−4Cに示すように、レーザダイオードのノードに接続されている複数の電流駆動分岐を備えてもよい。ドライバ回路6−402は、個別の又は集積構成要素を使用して形成することができ、基板(例えばASICチップ又はPCB)上に集積することができる。いくつかの実施形態において、ドライバ回路は、1つもしくは複数の半導体光ダイオード6−425(例えば、レーザダイオード又は1つもしくは複数の発光ダイオード)と同じ基板上に集積されてもよい。図面は、ドライバ回路を、レーザダイオード6−425のアノードに接続されているものとして示しているが、いくつかの実施形態において、同様の駆動回路が代替的に又は付加的に、レーザダイオードのカソードに接続されてもよい。レーザダイオードのカソード側に接続されている駆動回路は、レーザダイオードのアノード側で使用されるものとは反対の型のトランジスタ、及び、反対の極性の電圧源を利用することができる。
いくつかの実施態様によれば、N個の順方向バイアス電流パルスをレーザダイオード6−425又はLEDに印加するように構成されているN個の回路分岐(例えば、回路分岐6−432、6−434、6−436)、及び、M個の逆方向バイアス電流パルスをレーザダイオードに印加するように構成されているM個の回路分岐(例えば回路分岐6−438)があってもよい。図6−4Cにおいては、N=3かつM=1であるが、他の値が使用
されてもよい。各順方向バイアス電流分岐は、順方向バイアス電流をレーザダイオードに送達するように構成されている電圧源Viを備えることができる。各逆方向バイアス電流分岐は、逆方向バイアス電流をレーザダイオードに送達するように構成されている電圧源Vjを備えることができる。各回路分岐は、スイッチ又はトランジスタM1と直列に接続されている抵抗器R1をさらに含むことができる。各回路分岐は、一方の側でトランジスタM1と抵抗器R1との間のノードに接続されており、他方の側で固定基準電位に接続されているキャパシタCiを含むことができる。いくつかの実施形態において、キャパシタCiは、トランジスタM1と関連付けられる接合静電容量(例えばソース−ボディ静電容量)であってもよく、別個の個別的なキャパシタは設けられなくてもよい。いくつかの実施態様において、回路分岐から送達される総電流量を制限するために、少なくとも1つの追加の抵抗器がダイオード6−425と直列に含まれてもよい。
動作時、合計され、レーザダイオード接合にわたって印加される、回路分岐の各々からの一連の電流パルスを発生させるために、タイミングをとられたパルス制御信号が、スイッチ又はトランジスタMiの制御入力Siに印加され得る。各分岐内の構成要素(Vi、Vj、Ri、Ci)ならびに制御入力Siに印加される制御パルスのタイミング及びパルス持続時間の値は、レーザダイオード6−425に印加される所望のバイポーラ電流パルス波形を生成するように、独立して選択することができる。ほんの1例として、V1,V2,V3の値は、異なる値を有するように選択することができる。R1,R2,R3の値は同じであってもよく、C1,C2,C3の値は同じであってもよい。この例において、パルス信号を制御入力Siに対してずらすことによって、パルス持続時間は同様であるが,パルス振幅は異なる、順方向バイアス回路分岐からのずれて重なり合う電流パルス系列を生成することができる。逆方向バイアス回路分岐からのタイミングをとられたパルスは、順方向バイアス・パルスを消滅させるか、又は、迅速にオフにすることができる反対の極性の電流パルスを生成することができ、レーザダイオードからのテール発光を抑制することができる逆方向バイアス・パルスをさらに生成することができる。逆方向バイアス・パルスは、順方向バイアス・パルスのうちの1つもしくは複数と時間的に少なくとも部分的に重なり合うように、慎重にタイミングをとることができる。したがって、図6−4Cに示す回路を使用して、図6−3に示すようにバイポーラ電流パルスを同期させることができる。
図6−4Dは、無線周波数(RF)構成要素を使用して製造することができる、パルス・ドライバ6−403の別の実施形態を示す。RF構成要素は、いくつかの実施形態によれば、約50MHzと約1GHzとの間の周波数にある信号を処理するように設計することができる。いくつかの実施態様において、パルス・ドライバ6−403は、入力波形(例えば、方形波又は正弦波)をドライバにAC結合する入力DCブロック6−435を備えることができる。DCブロックに、増幅器6−440を後置することができ、増幅器6−440は、それぞれ別個の回路経路6−440a、6−440bに沿って進む非反転及び反転出力波形を生成する。第1の回路経路6−440aは、1つもしくは複数のアダプタ6−442を含むことができる。第1の経路内の信号に対して第2の経路内の信号を選択的に位相シフトするために、可変位相調整器6−445を、第2の回路経路6−440b内に含むことができる。
第1の回路経路及び第2の回路経路は、RF論理ゲート6−450(例えば、ANDゲート又は他の論理ゲート)の非反転入力に接続することができる。論理ゲート6−450の反転入力は、ゲートにおけるスプリアス・パワー反射を回避するために、適切なインピーダンス整合ターミネータ6−446によって終端することができる。論理ゲート6−450の非反転出力及び反転出力は、2つの回路経路6−450a、6−450bに沿って結合器6−460に接続することができる。反転回路経路6−450bは、遅延要素6−454及び減衰器6−456を含むことができ、これらのいずれか又は両方は、調整可能
であってもよい。遅延要素を使用して、反転信号を非反転信号に対して遅延させることができ、減衰器を使用して、反転信号の振幅を調整することができる。
論理ゲートから結果もたらされる反転信号及び非反転信号はその後、結合器6−460において合計される。結合器6−460からの出力は、レーザダイオード又は1つもしくは複数のLEDを駆動するための出力バイポーラ・パルスを与えるRF増幅器6−470に接続することができる。出力バイポーラ・パルスは、図6−4Eに示すような波形を有することができる。
動作時、入力方形波又は正弦波は、ドライバにAC結合することができ、非反転バージョン及び反転バージョンとして2つの回路経路6−440a、6−440bに分割することができる。第1の増幅器6−440は、いくつかの実施形態によれば、正弦波形を整える制限増幅器であってもよい。第2の回路経路6−440bにおいて、反転波形が、調整可能位相調整器6−445によって位相シフトされて、反転波形を非反転波形に対して時間的に遅延させることができる。第1の増幅器6−440から結果もたらされる波形はその後、RF論理ゲート6−450(例えば、ANDゲート)によって処理されて、論理ゲートの非反転出力及び反転出力において短RFパルスを生成することができる。短RFパルスの持続時間は、いくつかの実施形態によれば、位相調整器6−445を使用して調整することができる。例えば、位相調整器は、論理ANDゲート6−450に対する入力における非反転波形と反転波形の両方が同時に「オン」状態にある期間を調整することができ、これによって出力パルスの長さが決定される。
図6−4Eを参照すると、論理ゲート6−450からの短反転パルス6−417は、非反転パルスと結合する前に、遅延要素6−454によって非反転パルス6−415に対して量δだけ遅延され、減衰器6−456によって所望の振幅まで減衰され得る。いくつかの実施形態において、負のパルス振幅|VP−|は、正のパルス振幅Vp+未満であり得る。パルス分離間隔Tは、パルス・ドライバ6−403への正弦波又は方形波入力の周波数によって決定することができる。出力パルス波形は、DCオフセットを含んでもよく、又は、含まなくてもよい。出力波形は方形波波形を有するものとして示されているが、RF構成要素及び/又はケーブルにおける静電容量及びインダクタンスは、むしろ図6−3に示す波形に近い、より丸みを帯びた波形を有する出力パルスを生成してもよい。
図6−4C及び図6−4Bに関連して前述したように、レーザダイオード又はLEDに対する電流又は電圧の印加は、いくつかの実施形態において、アノードとカソードの両方に対するものであり得る。分割又は差動電圧又は電流パルスをカソードとアノードの両方に印加することができる無線周波数パルス・ドライバ回路6−404が図6−4Fに示されている。回路の前端は、いくつかの実施形態によれば、図6−4Dに示すパルス・ドライバ回路6−403の前端と同様であってもよい。しかしながら、パルス・ドライバ回路6−404においては、論理ゲート6−450からの非反転出力及び反転出力は結合されなくてもよく、代わりに、差動駆動として、レーザダイオードのアノード及びカソードに印加することができる。単純にするために、後続の負又は逆バイアス・パルスの生成に関連する回路は、図6−4Fには示されていない。
差動パルス・ドライバ回路6−404によって生成される分割又は差動駆動の例が、図6−4Gに示されている。論理ゲート6−450からの第1の出力は、振幅+Vpの正のパルス6−416を生成することができ、論理ゲート6−450からの第2の反転出力は、反対の振幅−Vpの負のパルス6−418を生成することができる。パルス列は、いくつかの実施形態において、小さいDCオフセットを有してもよく、又は、有しなくてもよい。正のパルス6−416及び負のパルス6−418が存在することによって、実効的な振幅2Vpを有する順方向バイアス・パルスが、レーザダイオードにわたって生成される
。バイアスをレーザダイオードにわたって分割し、アノード及びカソードに部分バイアスを印加することによって、パルス・ドライバ6−404が処理する電圧パルスの振幅は、実効的に2分の1に低減することができる。したがって、パルス・ドライバ6−404は、そうでない場合により振幅の大きいパルスについて達成することが可能であり得るよりも高い周波数において動作することができ、より短いパルスを生成することができる。代替的に、パルス・ドライバ回路6−404は、バイアス・パルス+Vpをレーザダイオードのアノードに与えるのみである駆動回路と比較して、レーザダイオードにわたって印加される駆動パルスの振幅を実効的に倍増することができる。そのような実施形態において、レーザダイオードからのパワー出力を増大することができる。
レーザダイオードに印加されるパワー及び/又は駆動速度を増大することができる別の方法が、図6−4Hに示されている。いくつかの実施形態によれば、複数のパルス・ドライバ出力6−470は、レーザダイオード6−425又はLEDのアノードに接続することができる。この例においては、4つのパルス・ドライバがレーザダイオードのアノードに接続されている。差動パルス・ドライバ回路が使用されるいくつかの実施形態においては、レーザダイオードのカソードに接続されている複数のドライバもあってもよい。各ドライバ及びその関連するケーブルは、インピーダンスZ0を有することができ、レーザダイオード6−425は、インピーダンスZLになっているものであり得る。それらが並列に接続しているために、ドライバの出力インピーダンスは、レーザダイオードに接続されているドライバの数で分割される。ダイオードへと送達されるパワーは、パルス・ドライバの結合インピーダンスがレーザダイオード6−425のインピーダンスにほぼ一致する、又は、逆が成り立つときに、増大することができる。
図6−4Iのグラフは、4つの駆動ソースに関するレーザダイオード6−425に結合されるパワーの効率の増大を、レーザダイオード及びレーザダイオード回路のインピーダンスの関数として示す。この例において、4つのパルス・ドライバは各々、約50オームの線路インピーダンスを有し、約100mAの最大電流で5V振幅の出力パルスを送達するように構成されている。このプロットは、レーザダイオードのインピーダンスが約10オームであるときに、レーザダイオードに結合されるパワーが最大値に達することを示している。この値は、4つのパルス・ドライバ出力6−470の並列出力インピーダンスにほぼ等しい。したがって、レーザダイオード6−425及びその関連する回路のインピーダンスは、いくつかの実施形態によれば、レーザダイオードを駆動するのに使用される1つもしくは複数のパルス・ドライバの結合インピーダンスにほぼ一致するように設計することができる。
他の回路ドライバ構成が、レーザダイオード又は発光ダイオードをパルシングするために使用されてもよい。いくつかの実施形態によれば、発光ダイオードへの電流注入は、「高い繰り返し数及びピーク・パワーを有する単純なナノ秒未満紫外線光パルス発生器(A
simple sub−nanosecond ultraviolet light
pulse generator with high repetition rate and peak power)」,P.H.ビン(P.H.Binh)ら著,Rev. Sci.Instr. Vol. 84, 083102 (2013)、又は、「光検出器の試験のための発光ダイオードを使用した紫外線ナノ秒光パルス発生器(An ultraviolet nanosecond light pulse generator using a light emitting diode for test of photodetectors)」,荒木勉(T. Araki)ら著,Rev. Sci.Instr. Vol. 68, 1365 (1997)に記載されているパルサ回路を使用してナノ秒未満のパルスを生成するようにパルス化することができる。
パルサ回路の別の例が、図6−4Jに示されている。いくつかの実施形態によれば、パルサ回路は、パルス発生器6−480を備えることができ、パルス発生器6−480は、例えば、システム・クロックからの1つもしくは複数のクロック信号を受信し、ドライバ回路6−490に電気パルスの列を出力することができ、ドライバ回路6−490は、パルス発生器から電気パルスが受信されるのに応答して、レーザダイオード又は発光ダイオードに電流パルスを注入する。したがって、出力光パルスは、システム・クロックに同期することができる。システム・クロックはまた、検出電子装置(例えば、イメージング・アレイ)を動作させるために使用することもできる。
いくつかの実施形態によれば、パルス発生器6−480は、受動電子構成要素とデジタル電子構成要素との組み合わせから形成することができ、第1の回路基板上に形成することができる。いくつかの事例において、パルス発生器は、アナログ回路構成要素を含んでもよい。他の実施形態では、パルス発生器の一部分が、ドライバ回路6−490と同じ基板上に形成されてもよく、パルス発生器の一部分が、ドライバ回路から遠隔した別個の基板上に形成されてもよい。ドライバ回路6−490は、受動、アナログ、及びデジタル電子構成要素から形成されてもよく、パルス発生器又はパルス発生器の一部分と同じ又は異なる回路基板上に形成されてもよい。光源(レーザダイオード又は発光ダイオード)は、ドライバ回路を有する回路基板上に含まれてもよく、又は、システム内に位置して、高速ケーブル(例えばSMAケーブル)によってドライバ回路6−490に接続されてもよい。いくつかの実施態様において、パルス発生器6−480及びドライバ回路6−490は、エミッタ結合論理要素を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、パルス発生器6−480、ドライバ回路6−490、及び半導体光ダイオード6−423は、同じプリント回路基板、ラミネート、又は集積回路に集積することができる。
パルス発生器6−480の1例が、図6−4Kに示されている。いくつかの実施態様において、パルス発生器は、一方が他方に対して遅延されている、2つの差動クロック出力を生成する第1の段を含むことができる。第1の段は、クロック入力を受信することができ、ファン・アウト6−481と、遅延6−483とを含むことができる。ファン・アウトは、クロック信号の2つのコピー及びクロック信号の2つの反転コピーを生成するように構成されている論理ドライバ及び論理インバータを含むことができる。いくつかの実施形態によれば、クロックは、対称デューティ・サイクルを有してもよいが、他の実施形態では、非対称デューティ・サイクルが使用されてもよい。1つのコピー及び1つの反転コピーが、差動クロック出力(CK1、
)を形成することができ、遅延要素6−483によって、第2のコピー及び第2の反転コピー(CK2、
)に対して遅延させることができる。遅延要素は、任意の適切な可変又は固定遅延要素を含んでもよい。遅延要素の例は、RF遅延線及び論理ゲート遅延を含む。いくつかの実施態様において、第1の対のクロック信号(CK1、
)に対して1クロックサイクルのうちの少なくとも一部分だけ遅延される。遅延は、部分サイクルに加えて、1つもしくは複数の全サイクルを含んでもよい。各対のクロック信号の中で、反転信号は、クロックの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが基本的に同時に生じるように、その対応する一方に同期することができる。
本発明者らは、パルス発生器6−480からの電流駆動パルスの長さを調整し、超短電流駆動パルスの振幅を調整するのではなく、固定振幅を維持することによって、レーザダイオード又はLEDの超短パルス化をより確実に制御することができることを見出した。電流駆動パルスの長さを調整することによって、パルスあたりにレーザダイオードに送達されるエネルギーの量が調整される。いくつかの実施形態において、高速回路は、(例えば、アナログ又はデジタル遅延要素6−483を用いて遅延又は位相を調整することによって)信号位相を高分解能に制御することを可能にし、これは、いくつかの実施態様によれば、パルス長の高分解能制御を達成するために使用することができる。
いくつかの事例において、パルス発生器6−480の第1の段は、ファン・アウト6−481及び遅延6−483の代わりに、2重出力クロックを含んでもよい。2重出力クロックは、2つの差動クロック信号を発生させることができ、2つの差動クロック信号の間に調整可能な位相遅延をもたらすことができる。いくつかの実施態様において、調整可能な位相遅延は、3psものわずかな対応する時間分解能を有することができる。
遅延クロック信号CK1、CK2及びそれらの反転信号がどのように生成されるかにかかわらず、信号は、高速伝送線路を介して高速論理ゲート6−485に伝送することができる。基板間のケーブルを介した信号伝送について、クロック・パルスはケーブルに起因して劣化する場合がある。例えば、伝送線路の制限された帯域幅が、クロック・パルスを別様に歪ませる場合があり、結果としてタイミングを不均等にする場合がある。いくつかの実施態様において、伝送歪みが4つのクロック信号に等しく影響を及ぼすように、同じタイプのケーブル又は伝送線路をすべてのクロック信号に使用することができる。例えば、信号歪み及びタイミング・オフセットが、4つのクロック信号について基本的に同じであるとき、結果として受信論理ゲート6−485によって生成される駆動パルスは、基本的に、クロック信号の伝送からの信号歪みがない場合と同じになる。したがって、数フィートの距離を介したクロック信号の伝送は、駆動パルス持続時間に影響を及ぼすことなく、許容することができる。これは、システム・クロックに同期され、精密に調整可能なパルス持続時間(例えば約3psの増分で調整可能)を有する超短駆動パルスを生成するのに有用であり得る。クロック信号がローカルに(例えば、ドライバ回路6−490と同じ基板上に)生成される場合、クロック信号の伝送に関連する信号歪みは、重大でない場合があり、伝送線路はある程度異なってもよい。
いくつかの実施形態によれば、クロック信号は、キャパシタC1とAC結合することが
でき、高速論理ゲート6−485のデータ入力に与えることができる。キャパシタC1は、約10nFと約1μFとの間の静電容量を有することができる。いくつかの実施形態によれば、論理ゲートは、エミッタ結合論理(ECL)2入力差動AND/NANDゲートを含んでもよい。論理ゲート6−485の例は、オン・セミコンダクタ(ON Semiconductor)[米国ロード・アイランド州イースト・グリニッジ(East Greenwich)所在]から入手可能なモデルMC100EP05を含む。論理ゲートへのデータ入力におけるAC結合信号は、図6−4Lに示す信号と同様に見え得、図面において、水平破線はゼロ電圧レベルを示す。図6−4Lの図示は、伝送線路によって導入される歪みを含まない。歪みは、信号プロファイルの形状を丸め、変化させ得るが、同じタイプ及び長さのケーブルが各クロック信号に使用されるときは、クロック信号の相対位相に影響を及ぼさないものであり得る。遅延要素6−483は、垂直破線によって示される遅延Δtを設けることができ、この遅延は、3psと小さい増分で調整可能であり得る。いくつかの実施態様において、遅延要素6−483は、1psと10psとの間の値を有する増分で調整可能な遅延を設けることができる。論理ゲート6−485は、受信クロック信号を処理し、遅延要素6−483によって導入される遅延に対応する出力ポートQにおいて出力信号を生成することができる。小さい遅延によって、出力は、短パルス又は超短パルス系列を含む。高速論理ゲート6−485を用いると、パルス持続時間は、いくつかの実施形態においては約50psと約2nsとの間(FWHM)であってもよく、いくつかの実施形態においては約50psと約0.5nsとの間であってもよく、いくつかの実施形態においては約50psと約200psとの間であってもよく、さらには、いくつかの実施形態においては約50psと約100psとの間であってもよい。ポートQからの駆動パルスは、ECL論理ゲート6−485の高速スルー・レートに起因して、実質的に方形のプロファイルを有することができる。バイアス回路6−487を、出力ポートに接続することができ、正のエミッタ結合論理に対して電圧V1が印加され得る。パルス発生器6−480の出力端子Poutから与えられる出力パルスは、いくつかの実施形態によれば、DCオフセットを含み得る。
いくつかの実施態様において、2つ以上の高速論理ゲート6−485を、キャパシタC1及びバイアス回路6−487の間に並列に接続することができる。これらの論理ゲートは同じであってもよく、並列に動作して、パルス発生器の出力においてより大きい電流駆動機能を与えることができる。本発明者らは、論理ゲート6−485又はゲートが、高速切り換え(例えば、超短駆動パルスを生成するための速やかな立ち上がり及び立ち下がり時間)を可能にする必要があり、ドライバ回路6−490内の高電流トランジスタM1を駆動するのに十分な出力電流を与える必要があることを認識し、諒解するに至った。いくつかの実施態様において、論理ゲート6−485を並列に接続することによって、パルス回路の性能を改善することができ、100ps未満の光パルスを生成することが可能になる。
図6−4Mは、レーザダイオード又はLED6−423に接続することができる、ドライバ回路6−490の実施形態を示す。ドライバ回路は、高速トランジスタM1のゲートに接続されている、抵抗器R3と直列のキャパシタC2を有するAC結合入力を含むことができる。C2の静電容量は、いくつかの実施形態によれば、約0.1μFと約10μFとの間であってもよく、R3は、約10オームと約100オームとの間の値を有してもよい。トランジスタM1は、いくつかの実施形態によれば、高電流(例えば、少なくとも1アンペア、場合によっては、最大4アンペア以上)を切り換えることが可能な高電子移動度電界効果トランジスタ(HEMT FET)を含んでもよい。トランジスタM1は、マルチ・ギガヘルツ速度においてそのような大電流を切り換えることが可能な高速トランジスタであってもよい。いくつかの実施形態によれば、トランジスタM1は、30Hzと約200MHzとの間の繰り返し数において、約50psと約2nsとの間の電気パルス持続時間にわたって、1アンペアを超える電流を切り換えることができる。トランジスタM
1の例は、アバゴ・テクノロジー(Avago Technologies)[米国カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)所在]から入手可能なモデルATF−50189−BLKを含む。バイアス及びフィルタリング回路要素(例えば、抵抗器R4、R7、及びC3)を、キャパシタC2とトランジスタM1のゲートとの間に接続することができる。トランジスタM1のドレインは、レーザダイオード又は発光ダイオード6−423のカソードに直に接続することができ、トランジスタM1のソースは、基準電位(例えば、接地)に接続することができる。ダイオード6−423のアノードは、ダイオード電圧源VLDに接続することができる。抵抗器R6及びキャパシタ4を、ダイオード6−423にわたって並列に接続することができる。いくつかの実施形態によれば、抵抗器R6は、約50オームと約200オームとの間の値を有してもよく、C4は、約5pFと約50pFとの間の静電容量を有してもよい。キャパシタC5(約1μFと約5μFとの間の値を有する)もまた、ダイオード6−423及びトランジスタM1と並列に、ダイオード電圧源VLDと基準電位(例えば、接地)との間に接続することができる。
いくつかの実施形態において、保護ダイオード(図示せず)が、レーザダイオード6−423のカソード及びアノードにわたって逆方向に接続されてもよい。保護ダイオードは、レーザダイオード接合を破壊し得る過剰な逆バイアス電位からレーザダイオードを保護することができる。
動作時、パルス発生器6−480からのパルスがトランジスタM1を一時的にオンにし、レーザダイオード又は発光ダイオード6−423の活性領域に電流が注入されることを可能にする。いくつかの実施態様において、大量の順方向電流(例えば、最大4アンペア)が一時的にトランジスタM1を流れる。順方向電流は、レーザダイオード接合にキャリアを注入し、光放射の短パルス又は超短パルスを生成する。トランジスタM1がオフになると、寄生インダクタンスが発光ダイオード又はレーザダイオードにわたって電流を流し続け、レーザダイオードと並列に接続されているRCネットワークによって消散され得るまで、ダイオードのカソード側に電荷が蓄積される。カソードにおける電荷のこの一時的な蓄積は、レーザダイオードに逆方向バイアス・パルスをもたらし、活性領域からのキャリアの除去を加速する。これによって、光パルスの終端が加速される。
本発明者らは、図6−4Mの実施形態について説明されている光パルス化技法は、レーザダイオードをオンにするために必要とされ得るより高く、より短い電流パルスをもたらすことができるため、方形波パルスの微分に基づくパルス化技法よりも優れていることを見出した。
本発明者らは、様々なパルス駆動回路を組み立て、それらを使用して、レーザダイオードを駆動した。図6−5Aは、組み立てられたパルサ回路6−500の別の実施形態を示す。この実施形態は、図6−4Aに示すようなパルサ6−400を実装する。組み立てられた回路において、伝送線路6−410が、図に示すように、プリント回路基板上にU字形構成でパターン化された平行板ストリップ・ラインとして形成される。GaN pHEMTトランジスタがU字形伝送線路の2つの端部を短絡するための分路スイッチM1として使用された。パルサ回路6−500は、最大100MHzの繰り返し数において動作することができ、50オームの負荷を駆動するために使用することができる。いくつかの実施形態において、パルサ回路は、約10MHzと約1GHzとの間の繰り返し数において動作することができる。
パルサ6−500からの測定波形が、図6−5Bに示されている。波形は、約19.5Vの振幅を有する正のパルス、及び、それに後続する、正のパルスに後続する、約−5Vの振幅に達する負のパルスを示す。正のパルスの持続時間は、約1.5ナノ秒である。再び図6−4Aを参照すると、パルサ6−500は、約50オームの終端抵抗器Zterm
と、約200オームのプル・アップ又は充電抵抗器Rchを有するように構築された。Ztermの値は、終端抵抗から伝送線路に戻るパワー反射を低減するように選択された。伝送線路6−410に印加されるバイアスは、100Vであり、スイッチM1は、100MHzの繰り返し数において駆動された。0Vバイアスからの相対オフセットを調節するために、約−1.3VのDCバイアスがバイアス・ティーを介してダイオードに結合された。スイッチM1の駆動パルスは、約0Vと約2Vとの間で振動する方形波信号であった。
市販のレーザダイオード(ウシオ・モデルHL63133DG)を駆動して100ps未満の光パルスを生成するために、市販のテスト・ベッド・ドライバが使用された。光パルス測定値が、図6−5C及び図6−5Dに示されている。図6−5Cに示すように、テール発光が低減したパルスが、100MHzの繰り返し数において生成された。レーザダイオードからの平均パワーは、約8.3ミリワットであるものとして測定された。図6−5Dに示すパルス持続時間が、約84ピコ秒であるものとして測定された。レーザダイオードからの光学的発光の強度は、パルスのピークの約250ps後に、約24.3dBだけ低減されることが分かった。レーザダイオードは単一のボンド・ワイヤを有していたにもかかわらず、100ps未満のパルスが生成された。複数のボンド・ワイヤ又はパルス回路に対するさらなる改善によって、より短いパルス(例えば、約25psと約75psとの間)が生成され得る。
図6−6Aは、上述の利得切換装置及び技法のいずれかに従って、利得切換によって光パルスを生成するために使用することができる半導体レーザ6−600の例を示す。レーザ及びパルス駆動回路は、大量生産することができ、低コストで製造することができる。例えば、レーザは、平面集積回路技術を使用して端面発光デバイスとして微細加工することができる。そのようなレーザは、スラブ結合光導波路レーザ(SCOWL)と称される場合がある。図面は、レーザの立断面図を示す。レーザは、GaAs/AlGaAs材料系(例えば、光スペクトルの緑色、赤色、又は赤外線領域における放射を放出するため)から形成されてもよいが、他の実施態様においては(例えば、スペクトルの緑色、青色、又は紫外線領域における放射を放出するために)他の材料系(GaN/AlGaNなど)が使用されてもよい。レーザダイオードは、限定ではないが、InP、AlInGaP、InGaP、及びInGaNを含む他の半導体材料系から製造されてもよい。
いくつかの実施形態によれば、SCOWLは、n型基板又はバッファ層6−627(例えば、Alを含んでもよいGaAs基板又はGaAs層)の上に形成されてもよい。例えば、バッファ層は、AlxGa1−xAsを含んでもよく、xは約0.25と約0.30との間である。基板又はベース層の屈折率は、いくつかの実施形態によれば、約3.4と3.5との間である第1の値n1を有してもよい。低ドープn型半導体材料の電子輸送層6−617を、基板6−627上に形成することができる。いくつかの実施形態において、電子輸送層6−617は、エピタキシャル成長によって、AlxGa1−xAsを含むように形成することができ、xは約0.20と約0.25との間であり、約5×1016cm−3のn型ドーパント濃度を有する。電子輸送層の厚さhは、約1マイクロメートル(1ミクロン)と約2マイクロメートル(2ミクロン)との間であってもよい。輸送層6−617は、n1よりも大きい第2の反射率値n2を有することができる。その後、多重量子井戸領域6−620を、電子輸送層6−617上に形成することができる。多重量子井戸領域は、MQW領域内のエネルギーバンドギャップを変調する異なるドーピング濃度を有する材料が交互になった(例えば、AlGaAs/GaAsの層が交互になった)層を含むことができる。量子井戸領域6−620内の層(約20nmと約200nmとの間の厚さを有し得る)は、エピタキシ、原子層堆積、又は適切な蒸着工程によって堆積することができる。多重量子井戸領域は、n2よりも大きい実効的な第3の反射率値n3を有することができる。p型ドープ材料の正孔輸送層6−615が、量子井戸領域に隣接して
形成され得、n2未満の反射率値n4を有し得る。いくつかの実施形態において、SCOWLの異なる複数の領域の反射率の値は、いくつかの実施形態に従って、図6−6Bに示されているようなものであり得る。いくつかの実施形態において、SCOWLは、GaN半導体及びその合金、又は、InP半導体及びその合金を含んでもよい。
レーザ・デバイスの層が堆積された後、トレンチ6−607を層内にエッチングして、約0.25マイクロメートル(0.25ミクロン)と約1.5マイクロメートル(1.5ミクロン)との間である幅wを有するレーザの活性領域を形成することができる。デバイスの第1の表面上にn−コンタクト6−630を形成することができ、p型輸送層6−615上に、活性領域に隣接してp−コンタクト6−610を形成することができる。半導体層の露出面は、いくつかの実施形態によれば、酸化物又は他の電気絶縁層によって不動態化することができる。
活性領域に隣接するトレンチ6−607、及び、屈折率値n1,n2,n3,n4が、レーザの光学モードを、図面に示すように、量子井戸に隣接し、デバイス中央リブの下にあるレージング領域6−625に制限する。SCOWLは、そうでなければレージング領域6−625において形成及びレージングし得るより高次の横方向モードを、隣接する領域内の損失の多いより高次のスラブモードに結合するように設計することができる。適切に設計されると、レージング領域6−625からのすべてのより高次の横方向モードは、そのレージング領域内の基本モードと比較して相対的に損失が高く、レージングしなくなる。いくつかの実施態様において、SCOWL6−600の横方向光学モードは、単一横方向モードであってもよい。光学モードの幅は、約0.5マイクロメートル(0.5ミクロン)と約6マイクロメートル(6ミクロン)との間であってもよい。x方向にとられたモード・プロファイル6−622は、いくつかの実施形態によれば、図6−6Bに示すように成形することができる。他の実施態様において、SCOWLは、分析機器1−100に与えられる複数の光学横方向モードを生成することができる。いくつかの実施形態において、活性領域の長さ(紙面に入る寸法に沿った)は、約20マイクロメートル(20ミクロン)と約10mmとの間であってもよい。SCOWLの出力パワーは、より長い活性領域の長さを選択することによって増大することができる。いくつかの実施形態において、SCOWLは、300mWを超える平均出力パワーを送達することができる。
半導体レーザ(例えば、SCOWL)及びパルサ回路は、結合させて、多くの用途に適した低コスト超高速パルスレーザを作成することができるが、図6−5Dに示すターン・オフ・レートは、いくつかの蛍光寿命分析には適さない場合がある。いくつかの事例において、より迅速なターン・オフが必要とされる場合がある。例えば、本発明者らは、蛍光寿命に基づくいくつかの測定は、パルスのテールが、パルス・ピーク後の250ps以内に、パルス・ピークを約25dBと約40dBとの間で下回るレベルまで消滅することを必要とし得ることを見出した。いくつかの事例において、パルス・パワーは、パルス・ピーク後の100ps以内に、この値の範囲まで降下する必要があり得る。いくつかの実施態様において、パルス・テールは、パルス・ピーク後の250ps以内に、パルス・ピークを約40dBと約80dBとの間で下回るレベルまで降下する必要があり得る。いくつかの実施態様において、パルス・テールは、パルス・ピーク後の250ps以内に、パルス・ピークを約80dBと約120dBとの間で下回るレベルまで降下する必要があり得る。
パルスの発光テールをさらに抑制するための1つの手法は、パルスレーザ又は高輝度LEDシステムに、可飽和吸収体を含めることである。いくつかの実施形態によれば、半導体可飽和吸収体6−665を、図6−6Cに示すように、半導体レーザ6−600又は高輝度LEDと同じ基板上に組み込むことができる。半導体レーザは、いくつかの実施形態によれば、量子井戸領域6−620を含むSCOWL構造を備えることができる。SCO
WLは、パルサ回路6−400又は上述した他のパルス化回路のような、パルス源6−670によって駆動することができる。
SCOWLの1端に隣接して、可飽和吸収体6−665を形成することができる。可飽和吸収体6−665は、半導体レーザからの光子を吸収するように調整されているバンドギャップを有する領域を含むことができる。例えば、可飽和吸収体は、レーザの光学的発光の固有エネルギーにほぼ等しい少なくとも1つのエネルギーバンドギャップを有する単一の量子井戸又は複数の量子井戸を含むことができる。いくつかの実施形態において、可飽和吸収体は、レーザダイオード・キャビティ内の領域を電気的に絶縁するように、レーザダイオードの領域にイオン注入することによって形成することができる。この領域に負のバイアスを印加して、同じレーザダイオード構造の利得よりもむしろ、吸収を促進することができる。レーザ6−600からの高いフルエンスにおいて、可飽和吸収体の価電子帯はキャリアが空乏し得、伝導帯が満たされ得、可飽和吸収体によるさらなる吸収が妨げられる。結果として、可飽和吸収体は白化し、レーザから吸収される放射の量が低減する。このように、レーザ・パルスのピークは、パルスのテール又はウィングよりも小さい強度の減衰で、可飽和吸収体を「突き抜ける」ことができる。したがって、パルスのピークに対して、パルスのテールがさらに抑制され得る。
いくつかの実施形態によれば、高反射器(図示せず)がデバイスの1端に形成され、又は位置することができる。例えば、高反射器は、可飽和吸収体からのレーザ放出を方向転換し、出力パワーを増大させるように、可飽和吸収体から最も遠い、レーザの1端に位置してもよい。いくつかの実施形態によれば、デバイスからの抽出を増大させるために、可飽和吸収体及び/又はSCOWLの1端に、反射防止コーティングを被着させることができる。
いくつかの実施形態によれば、可飽和吸収体は、バイアス供給源6−660を含むことができる。バイアス供給源は、各パルス後に活性領域からキャリアを掃引し、可飽和吸収体の応答を改善するために使用することができる。いくつかの実施形態において、バイアスは、可飽和回復時間を時間依存にするように(例えば、パルス繰り返し数において)変調することができる。この変調は、パルス特性をさらに改善することができる。例えば、可飽和吸収体は、可飽和吸収体の回復時間が十分である場合は、低い強度において別様により大きく吸収することによって、パルス・テールを抑制することができる。そのような差動吸収はまた、パルス長をも低減することができる。可飽和吸収体の回復時間は、可飽和吸収体に対する逆方向バイアスを印加又は増大することによって調整することができる。
II.E.レーザ出力の直接変調
本発明者らは、レーザの出力を直接変調することによって、連続波レーザから超高速パルスを作成することも可能であることを認識し、諒解するに至った。レーザの出力の直接変調は、いくつかの実施形態において、図7−1Aに示すような、カスケード接続された光スイッチから成るスイッチング・アレイ7−100を使用して行うことができる。いくつかの実施形態によれば、光スイッチ7−105は、光ファイバ又は光導波路7−102によって接続することができ、光スイッチの制御入力7−103に制御信号を印加することができる。いくつかの実施態様において、スイッチング・アレイ7−100は、例えば、導波路、及び、ニオブ酸リチウムスイッチのような電気光スイッチから成る集積アレイとして、単一の基板上に集積することができる。
スイッチング・アレイ内の光スイッチ7−105は、入力ポート7−101において光信号を受信し、第1のスイッチS1において、第1の出力ポートP1と第2の出力ポートP2との間で光信号を切り換えるように構成することができる。いくつかの実施形態において、光信号の切り換えは、光スイッチS1の制御入力7−103において駆動信号を印
加することによって実施することができる。例えば、駆動信号は、スイッチの電気光学素子に電界を印加することができる。図面には1つだけの入力ポート7−101が示されているが、いくつかの実施形態において、光スイッチ7−105は、2つの入力ポートを含んでもよい。
いくつかの実施態様において、光スイッチ7−105は、入力ポート7−103に印加される制御入力信号に応答して電気光学的に制御することができるマッハ・ツェンダー干渉型スイッチを含んでもよい。例えば、マッハ・ツェンダー干渉計の1つの光路は、制御信号に応答して電界が印加される、一定の長さのニオブ酸リチウムを含んでもよい。印加される電界は、ニオブ酸リチウムの屈折率を変化させ、それによって、干渉計のそのアーム内の光路長を変化させることができる。したがって、印加される電界の印加によって、出力信号を第1のポートP1から第2のポートP2へと変化させることができ、それによって、これを使用して、入力光エネルギーを、2つの出力ポートの間で前後に迅速に切り換えることができる。
いくつかの実施形態によれば、制御入力7−103に印加される制御信号は、例えば、方形波であってもよいが、いくつかの実施形態において、正弦波制御信号が使用されてもよい。方形波を光スイッチに印加することによって、(例えば、光がそのポートへと、及び、そのポートから離れる方向に向けられるときに)その出力ポートのうちの1つから流れる出力パワーを実効的に変調することができる。言い換えると、図7−1Bを参照して、出力ポートを通して見たスイッチの挿入損失が、印加される制御信号に応答して、ロー値(例えばオン状態7−131)とハイ値(例えば、オフ状態7−132)との間で変調する。出力ポートから見たそのような損失の変調が、アレイ7−100の上方の分岐に沿った光スイッチS1、S2、S4、S8、S9について、図7−1Bに示されている。この例において、スイッチS4、S8、及びS9は、ともに制御され、スイッチS1及びS2の変調から時間的にずれるものとして示されている。
いくつかの実施形態において、オン状態7−131にある光スイッチは、約0dBと約3dBとの間の挿入損失を呈し得る。いくつかの実施態様において、オフ状態7−132にある光スイッチは、約20dB以上だけ、挿入損失を増大させ得る。いくつかの実施形態によれば、オフ状態7−132にある光スイッチは、約15dBと約25dBとの間の挿入損失を呈し得る。
スイッチの挿入損失の変調は、図7−1Cに示すように、スイッチング・アレイ7−100のポートからの出力強度の対応する変調をもたらす。例えば、図7−1Cの上部のトレースに示すように、第1のスイッチS1に方形波を印加することによって、その第1のポートP1からの強度出力を、ロー値とハイ値との間で変調することができる。動作時、第1のスイッチS1の入力ポート7−101において受け取られる強度は、切り換え動作に起因して、出力パルス7−135として2つの出力ポートP1とP2との間で交互になる。いくつかの実施態様によれば、カスケード接続経路に沿った連続するスイッチに対する制御信号のタイミングは、先行するスイッチに対するタイミングとは異なり得る。例えば、図7−1Bに示すように、第2のスイッチS2に対する制御信号のタイミングは、第1のスイッチS1に対する制御信号に対して、時間的に遅延されてもよい。第2のスイッチS2は、第1のスイッチと同様に動作し得るが、その切り換え動作は、第1のスイッチS1に対して時間的にオフセットされ得る。結果として、第2のスイッチS2は、その入力において(スイッチS1の出力ポートP1から)受け取られるパワーを、その出力ポートP3とP4との間に交互にする。
第2のスイッチS2の(ポートP3を通して見た)損失変調のタイミングが、図7−1Bの中央のトレースに示されており、これは、第1のスイッチS1の変調からのタイミン
グ・オフセットを示している。第2のスイッチの出力ポートP3から受け取られる光の対応する強度が、図7−1Cの中央のトレースに示されている。同様に、光路内の第3のスイッチS4に印加される制御信号のタイミングは、図7−1Bで下側のトレースに示されているように、時間的にオフセットされている。したがって、スイッチング・アレイ7−100の出力ポートP8から受信される光パルスは、図7−1Cで下側のトレースに示されているように、さらに短縮される。図面に示されているように、オフセット制御信号及び変調によって2つのスイッチをカスケード接続することによって、均等なデューティ・サイクルで動作するスイッチについて、受信入力パルスのパルス長が、光路内の各連続するスイッチの約2分の1だけ低減する。
図7−1B及び図7−1Cの図において、スイッチのオン対オフ比又は消光比は、背景雑音レベル7−140を示すために人工的に低減されている。実際には、光スイッチの消光比は、図面に示されているよりも相当に高いものであり得る。例えば、各光スイッチは、20dB以上の消光比を呈してもよい。
いくつかの実施形態において、スイッチ7−105の消光比は、パルスの所望のターン・オフ比をもたらすほど十分に高くなくてもよい。例えば、パルスのテール7−150における強度は、いくつかの用途にとっては、高すぎる場合がある。本発明者らは、出力ポート内に減衰スイッチ7−120を加えることによって、出力ポートにおけるテール7−150の強度をさらに低減することができることを認識し、諒解するに至った。減衰光スイッチ7−120は、上流の光スイッチ7−105と一致して切り換えられる同じタイプの光スイッチ(例えば、マッハ・ツェンダー光スイッチ)を含んでもよい。減衰光スイッチは、例えば、ビーム・ブロック7−110にダンプされる出力ポートを有することができる。出力ポートに減衰光スイッチ7−120を加えることによって、上流の光スイッチ(例えば、スイッチS4)の消光比を、一致して切り換えられる光スイッチ(S4、S8、S9)の消光比の積として増大することができる。
図7−1B及び図7−1Cに関連して説明されている例は、スイッチ・アレイ7−100内のすべての光スイッチについて同じ周波数で動作するが、時間的に互いに対してずれている制御信号入力を利用する。いくつかの実施形態において、切換制御信号のタイミングは、マスタ発振器、例えば、切換周波数の倍数である周波数において作動するクロックからトリガ及び/又は同期することができる。いくつかの実施形態において、異なる周波数が、各光路に沿った異なる光スイッチに印加されてもよい。例えば、アレイ7−100の光路に沿った連続するスイッチに対して、制御信号の周波数2倍化が実施されてもよい。
異なる周波数における切り換えの例として、第1の光スイッチS1は、図7−1Dの上側のトレースに示すように、第1の切換周波数f1において駆動することができる。光路内の第2の光スイッチS2は、第1の周波数の2倍である周波数f2において駆動することができる。光路内の第3の光スイッチS4は、第2の光スイッチS2の周波数の2倍である周波数f3において駆動することができる。いくつかの実施態様において、光路に沿ったすべての光スイッチの駆動信号は、第1のスイッチの駆動信号に同期することができる。そのような実施形態の連続する出力ポートP1、P3、P8からの対応する出力パルスが、図7−1Eに示されている。ここでも、出力パルスは、各連続するスイッチについて2分の1だけ低減されるが、この実施形態は、連続するスイッチに対してより高いクロック周波数を必要とする。
異なる周波数において光スイッチ7−105を駆動することの1つの利点は、図7−1B及び図7−1Cに関連して上述した方法と比較して、パルスのターン・オフを増大することができることである。例えば、図7−1Eを参照すると、出力ポートP8からの出力
パルスのテール7−150は、上流経路内の光スイッチS1、S2、及びS4の結合したターン・オフ(消光比の積)によって抑制することができる。この効果は、スイッチS1、S2、及びS4の各々が、出力ポートP7からのパルスのテールにおいてオフ状態に切り換えられることを示している、図7−1Dのトレースの損失変調から分かる。追加の減衰スイッチ7−120が、いくつかの実施形態において、出力P7に加えられてもよく、又は、加えられなくてもよい。異なる光スイッチに異なる周波数を印加することの欠点は、より周波数の高い駆動信号がスイッチング・アレイ7−100に必要となることである。例えば、最後の光スイッチにおいて必要とされる周波数は、いくつかの実施態様において、出力パルス持続時間程度であり得る。
いくつかの実施形態において、図7−1B、図7−1C及び図7−1D、図7−1Eに関連して説明されている技法の組み合わせが利用されてもよい。例えば、光路内の第1のセットの光スイッチが、図7−1Dに示すような異なる周波数によって駆動されてもよい。その後、同じ光路内の第2のセットの光スイッチ7−105が、同じ駆動周波数によって駆動されてもよく、各駆動信号は、図7−1Bに示すように、先行する光スイッチに対する先行する駆動信号に対して、時間的にずれている。
III.バイオ光電子チップに対する光パルスの結合
いくつかの実施態様によれば、パルスレーザ1−110は、ポータブル分析機器1−100に取り付けることができ、パルスレーザの出力を使用して、機器内に位置する1つ又は複数の反応室内の生物及び化学試料を励起することができる。機器は、パルスレーザと反応室との間に、パルスレーザからの出力ビームを1つ又は複数の反応室へと方向制御するように構成されている追加の光学構成要素を有してもよい。上述したように、機器は、1つ又は複数の導波路と、光パルスを1つ又は複数の導波路に結合するための、チップ上に配置されている少なくとも1つの光カプラ(例えば、格子カプラ)とを含む、バイオ光電子チップ1−140を受け入れるように構成することができる。導波路は、図1−3に示すように、光パルスからの放射を、複数の反応室に送達することができる。チップ上の光導波路に光を結合するには、レーザビームをチップ上の光カプラに精密に位置合わせする必要があり得る。いくつかの事例において、ビーム・ステアリング・モジュールを使用して、レーザビームをバイオ光電子チップ上の光カプラに、自動的に位置合わせすることができる。
ビーム・ステアリング・モジュール1−150の例が、図8−1に示されている。いくつかの実施形態によれば、ビーム・ステアリング・モジュールは、ビーム・ステアリング・モジュールのアクチュエータ及び光学構成要素を支持するように構成されている中実シャーシ8−110を備えることができる。シャーシは、金属及び/又は低熱膨張率複合材から形成又は組み立てすることができる。いくつかの事例において、シャーシは、アルミニウムから機械加工又は鋳造することができる。シャーシ8−110は、直線形であっても、又は、角度をつけられていてもよく(図示のとおり)、パルスレーザ1−110が組み込まれている機器のフレーム又はシャーシ1−102に取り付けることができる。
本発明者らは、ビーム・ステアリング・モジュールのシャーシ8−110が、バイオ光電子チップ1−140を取り付けることができるPCB1−130を支持することをさらに可能にすることができることを認識し、諒解するに至った。例えば、シャーシ8−110は、数箇所において機器のシャーシ又はフレーム1−102に付着することができ、PCB1−130の中央領域は、ビーム・ステアリング・モジュールとバイオ光電子チップ1−140との間の相対運動(例えば、機械的振動からの運動)を低減するために、ビーム・ステアリング・モジュールのシャーシ8−110に固定することができる。
いくつかの実施形態において、ビーム・ステアリング・モジュールのアクチュエータは、ビーム・ステアリング・モジュールの光学構成要素を回転させるように構成されている
ステッパ・モータを含むことができる。ビーム・ステアリング・モジュールの高さを低減するために、アクチュエータは、図面に示されているように、それらのシャフトが、ほぼ同じ平面内にあるように取り付けることができる。いくつかの実施態様において、部分的にPCB1−130、又は、PCB1−130に取り付けられる別個のPCB上に作製されるステッパ・モータ(例えば、米国仮特許出願第62/289,019号に記載されているようなもの)を使用して、ビーム・ステアリング・モジュールの光学構成要素を、PCB1−130に垂直である軸を中心として回転させることができる。
いくつかの実施形態によれば、ビーム・ステアリング・モジュール1−150は、第1のオプチカル・フラット8−131と、集束レンズ8−133と、第2のオプチカル・フラット8−135と、第3のオプチカル・フラット8−137とを含むことができる。オプチカル・フラット及びレンズは、光学素子からの望ましくないフレネル反射を低減するために反射防止コーティングすることができる。いくつかの実施形態において、ビーム・ステアリング・モジュール内に位置する変向ミラー8−134があってもよいが、いくつかの事例において、ビーム・ステアリング・モジュールを通るビーム経路は直線形であってもよく、変向ミラーは使用されなくてもよい。いくつかの実施態様によれば、変向ミラー8−134は、基本波長をパルスレーザ1−110からビーム・ダンプ及び/又は光検出器へと通し、周波数2倍化波長をバイオ光電子チップ1−140に反射するように、2色性であってもよい。
第1のオプチカル・フラット8−131は、第1のアクチュエータ8−121によって、x方向においてレーザビームをシフトさせるために、PCB1−130に平行な軸を中心として回転することができる。第2のオプチカル・フラット8−135は、第2のアクチュエータ8−122によって、y方向においてレーザビームをシフトさせるために、PCB1−130に垂直な軸を中心として回転することができる。曲げ接続部(図示せず)が、第2のオプチカル・フラットを回転させるために、第2のアクチュエータ8−122から第2のオプチカル・フラット8−135まで延在してもよい。第3のオプチカル・フラット8−137は、第3のアクチュエータ8−123によって、x方向においてレーザビームをシフトさせるために、PCB1−130に平行な軸を中心として回転することができる。いくつかの実施形態において、レンズ8−133の前に取り付けられる第4のオプチカル・フラット、及び、z方向においてレーザビームをシフトさせるために、PCB1−130に垂直な軸を中心として第4のオプチカル・フラットを回転させるように構成されているアクチュエータがあってもよい。オプチカル・フラットを回転させることによって、ビーム・ステアリング・モジュールを通過する光ビームは、横方向及び垂直方向に並進することができ、チップ1−140におけるその入射角を変化させることができる。
ビーム・ステアリング・モジュール1−150内で光ビームを並進させることの効果は、図8−2から理解することができる。集束レンズ8−133の後ろに位置する光学素子を回転させることによって光ビームが並進する結果として、レンズ8−133の焦点に位置し得る表面8−240(例えば、バイオ光電子チップの表面)におけるx、y並進がもたらされる。例えば、レーザビーム8−250は、集束レンズ8−133を通過することができ、バイオ光電子チップ1−140にある光カプラ上に集束することができる(例えば、格子カプラ1−310上に集束することができる)。図面に示されているy軸に平行な軸を中心として第2のオプチカル・フラット8−135を回転させることによって、表面8−240における集束ビームを、x軸に平行な方向において並進させることができる。x軸に平行な軸を中心として第3のオプチカル・フラット8−137を回転させることによって、表面8−240における集束ビームを、y軸に平行な方向において並進させることができる。
集束レンズ8−133の前に位置する光学素子を回転させることによって光ビーム8−
250を並進させる結果として、表面8−240におけるビームのx−y位置をそれほど変化させることなく、表面8−240におけるビームの入射角が変化する。例えば、y軸に平行な軸を中心として第1のオプチカル・フラット8−131を回転させることによって、集束レンズ8−133において、x軸に平行な方向においてレーザビームを変位することができる。集束レンズにおけるそのようなレーザビームの動きは、表面8−240において、x−z平面内で、x軸に関するレーザビームの入射角θiを変化させる。いくつかの実施形態において、x軸に平行な軸を中心として第4のオプチカル・フラット8−132(図8−1には示されていない)を回転させることによって、y−z平面上の方向において、表面8−240における入射角φiを変化させることができる。表面8−240は概ね、レンズ8−133の焦点距離fに位置するため、レンズの前でビーム8−250を並進させることによる入射角の変化は、表面8−240における集束ビームのx−y位置にそれほど影響を及ぼさない。
いくつかの実施形態において、チップ1−140が、その表面8−240で入来するレーザビーム8−250に平行に向けられ得るように、ビームを−x方向において偏向させるために、バイオ光電子チップ1−140の表面8−240とビーム・ステアリング・モジュール1−150との間に位置する変向ミラー(図8−2には示されていない)があってもよい。これによって、図8−1に示すように、チップ1−140が下にあるPCB1−130に平行に取り付けられることが可能である。いくつかの事例において、変向ミラーは、シリコン・ウェハの小さい部分(例えば、5平方mm未満)から低コストで形成し、反射材料でコーティングし、バイオ光電子チップ1−140を含むパッケージ内に取り付けることができる。
再び図1−3及び図8−1を参照すると、バイオ光電子チップの表面における格子カプラ1−310上のレーザビームのx−y位置を、集束レンズ8−133の後ろに位置するオプチカル・フラット8−135,8−137を回転させるようにアクチュエータ8−122,8−123を動作させることによって調整することができる。光入力を複数の導波路に分配するためにスター・カプラ又はMMIカプラが使用されるとき、スター・カプラ又はMMIカプラに接続されているすべての導波路に光がほぼ均等に結合するまで、格子カプラ1−310上の入力ビームのx−y位置を調整することができる。その後、第1のオプチカル・フラット8−131を回転させるようにアクチュエータ8−121を動作させることによって、x−z平面におけるビームの入射角θiを調整することができる。この調整は、導波路1−312に結合されるエネルギーの量を増大することができる。
当初、y−z平面(格子カプラ2−310の格子歯に平行に延在する平面)におけるビームの入射角θiの変化は、導波路1−312への結合効率にそれほど影響を及ぼさないであろうと予期されていた。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、この入射角の変化が、結合効率に影響を与えるほど大きい変化をθiに与え得ることを発見した。予測よりも大きい感度は、格子カプラと下にある反射層(図1−3には示されていない)との間の光学干渉効果が、導波路1−312への結合効率の増大に加わる結果もたらされると考えられる。いくつかの実施形態において、ビーム・ステアリング・モジュールは、格子カプラにおけるビームの入射角φiの変化に影響を及ぼすように構成されている、集束レンズ8−133の前に位置する第4のオプチカル・フラット8−132を含むことができる。
ビーム・ステアリング・モジュール1−150の有利な態様は、θi,φiへの入射角調整を、表面8−240における集束ビームの位置に対するx、y調整とは実質的に無関係に行うことができることである。例えば、格子カプラ1−310を介して1つ又は複数の導波路1−312に結合される入射レーザビーム8−250からの光エネルギーは、ビーム位置を最適化する位置合わせ手順の間に1つ又は複数の導波路の反対の端部にある1
つ又は複数のフォトダイオード1−324によって監視することができる。その後、格子カプラ上のビームの位置をそれほど変化させることなく、ビーム入射角を最適化することができる。
いくつかの実施形態によれば、自動位置合わせ手順を使用して、パルスレーザ1−110からのレーザビームを、バイオ光電子チップ1−140上のカプラ1−310に対して位置合わせすることができる。位置合わせ手順は、図8−3に示すように、格子カプラ1−310に対する螺旋探索を実行することを含むことができる。螺旋探索は、集束ビーム8−250を、チップの表面上でx及びy方向に並進させるために、第2のオプチカル・フラット8−135及び第3のオプチカル・フラット8−137を回転させることによって実行することができる。例えば、チップ1−140が機器1−100に装填されてパルスレーザがオンにされた後、レーザビームは、図8−3において「A」とマークされた位置においてチップの表面に衝突し得る。この位置において、クワッド検出器1−320によって信号は検出され得ない。クワッド検出器からの信号が監視されている間に、螺旋探索経路8−310が実行され得る。位置「B」において、クワッド検出器は、その検出器からのビームのx、y位置信号を見当合わせし始めることができる。その後、制御回路が、クワッド検出器の中心に対するビームの位置を決定し、螺旋経路の実行を取り消し、ビームをクワッド検出器1−320の中心、すなわち点「C」へと方向制御するように、アクチュエータ8−122,8−123を動作させることができる。格子カプラ1−310は、クワッド検出器の上でほぼ中心に位置することができる。その後、導波路1−312又は複数の導波路に結合される光エネルギーの量を増大させるために、位置及び入射角の微調整を行うことができる。いくつかの実施形態において、複数の導波路1−312の端部における複数の集積光検出器1−324からの光パワーが監視され、それによって、複数の光導波路に結合されるパワーの均一性を増大させるために、格子カプラにおいてレーザビームに微調整を行うことができる。
他の方法及び装置を使用して、クワッド検出器1−320を探索し、集束ビーム8−250を格子カプラ1−310に位置合わせすることができる。いくつかの実施形態において、レーザビームを検出することができる範囲を拡大するために、クワッド検出器1−320の感度を改善することができる。例えば、高いパワー(例えば、完全にオン)にあるレーザ・パワーを有するクワッド検出器からの信号を、低い設定(例えば、オフ)にあるレーザ・パワーを有するクワッド検出器からの信号に対して比較することができる。加えて、レーザビームがクワッド検出器から相当の距離に位置し得るときは、クワッド検出器の位置検出感度を改善するために、より長い期間にわたって信号を積分することができる。
いくつかの実施形態において、光散乱素子(図8−3には示されていない)を、チップ1−140上でクワッド検出器1−320の周囲に作製することができる。集束ビームが不整合になっており、周縁位置においてクワッド検出器から離れているとき、散乱素子は、集束ビームからの光をクワッド検出器1−320に向けて散乱させることができる。このとき、検出される散乱光は、ビームの位置を示す。
いくつかの実施態様において、幅が予期される集束ビームサイズと同様である、狭い線形散乱素子又はライン検出器が、クワッド検出器の中心を通じて(又はクワッド検出器に対して任意の適切な向きにおいて)設置され、クワッド検出器の対向する辺を大きく越えて(例えば、妥当に予測される初期ビーム・オフセット誤差よりも大きい距離まで)延在することができる。この素子又は検出器の向きは設計によって分かるため、集束ビーム8−250は最初に、クワッド検出器1−320への散乱によって、又は、直にライン検出器によってのいずれかで、ビームが素子又は検出器に衝突され、肯定的に検出されるまで、素子に垂直な方向において走査することができる。その後、ビームは、クワッド検出器
1−320を発見するために他の方向において走査することができる。
いくつかの実施形態によれば、レーザビームは最初に、チップ1−140の表面8−240において拡張され得る(例えばレンズ8−133をアクチュエータによって、又は、他の手段を使用して動かすことによってビームの集束を解く)。このとき、チップに対するビームのフットプリントが大きく増大され得(例えば、10倍以上)、それによって、任意の走査工程が、クワッド検出器1−320を探索するときに、ビーム位置の間でより大きい刻み幅(例えば、螺旋走査における放射ループ間のより大きいオフセット)を使用することができる。この探索方法及び上記の代替的な探索方法は、集束ビーム8−250を格子カプラ1−310に位置合わせすることに関連する探索時間を低減することができる。
位置合わせの後、入射レーザビームを能動的に位置合わせされた位置にあるままにすることができる。例えば、クワッド検出器1−320に対する初期位置合わせ後に決定されるビームのx、y位置を、クワッド検出器からのフィードバックならびにアクチュエータ8−122,8−123の起動を使用して能動的に維持して、ビームをほぼ固定の位置に維持することができる。いくつかの実施形態において、表面における光ビームの入射角は、初期位置合わせの後、導波路に結合されるパワーを最適化するために調整されなくてもよい。加えて、導波路に結合されるパワーの量は、測定全体を通じてほぼ一定のレベルに維持することができる。
導波路に送達されるパワーは、導波路の対向する端部からのフォトダイオード1−324の信号を監視し、パルスレーザ・システム1−110の半波長板2−160の向きを制御するアクチュエータ2−162を動作させるコントローラ(図2−1A参照)にその信号を供給することによって、ほぼ一定のレベルに維持することができる。半波長板2−160の回転は、周波数2倍化結晶2−170に入る光パルスの偏光を変化させ、それゆえ、反応室内の蛍光色素分子を励起するために使用されるより短い波長に対する変換効率を変化させる。
ビーム位置合わせ及びパワー安定化のための例示的な回路が、いくつかの実施形態に従って、図8−4に示されている。クワッド検出器1−320は4つのフォトダイオードとして表されており、導波路フォトダイオード1−324は、第5のフォトダイオードとして表されている。いくつかの実施態様において、光パワーが単一の格子カプラから結合される、多数の導波路があってもよい。したがって、導波路の端部に、制御回路8−430に接続される信号出力を有する多数の導波路フォトダイオード1−324があってもよい。ダイオードの光伝導によって生成される電圧を検出するために、増幅回路8−410が配置され得る。増幅回路8−410は、いくつかの実施形態によれば、アナログ信号をデジタル信号に変換するCMOS電子装置(例えばFET、サンプリング回路、アナログ−デジタル変換器)を備えることができる。他の実施形態では、アナログ信号が、増幅回路から制御回路8−430に与えられてもよい。
いくつかの実施形態において、制御回路は、アナログ及びデジタル回路、ASIC、FPGA、DSP、マイクロコントローラ、及びマイクロプロセッサのうちの1つ又は組み合わせを含んでもよい。制御回路8−430は、1つ又は複数の導波路フォトダイオードからの受信信号を処理して、各導波路における光パワーのレベルを決定するように構成することができる。制御回路8−430は、クワッド検出器1−320からの受信信号を処理して、クワッド検出器に対する光ビームのx、y位置を決定するように、さらに構成することができる。いくつかの実施態様において、制御回路8−430は、各導波路に結合されるパワーを検出し、パワーが導波路内で均質化され、導波路にわたって最も高い均一性を有するようにレーザビームを動かすためのアクチュエータに対する制御信号を与える
ように構成されている。
x方向におけるレーザビームの位置は、例えば、以下のアルゴリズムを実行するように適合されている制御回路8−430によって決定することができる:
Sx=[(VQ2+VQ3)−(VQ1+VQ4)]/VT
式中、Sxはx方向に対応する正規化信号レベルであり、VQnは、クワッド検出器のn番目のフォトダイオードから受信される信号レベル(例えば、電圧)であり、VTは、4つすべてのフォトダイオードからの信号を合計することによって受信される総信号レベルである。加えて、y方向におけるレーザビームの位置は、例えば、以下のアルゴリズムを使用して決定することができる:
Sy=[(VQ3+VQ4)−(VQ1+VQ2)]/VT。
チップ1−140上のすべての導波路に結合される平均パワーは、チップ上の導波路の各々におけるパワーを検出するように構成されているすべてのフォトダイオード1−324からの信号を合計することによって決定することができる。
x,yにおける検出されるビーム位置に応答して、ならびに、バイオ光電子チップ1−140の1つ又は複数の導波路内で検出されるパワー・レベルに応答して、制御回路8−430によって制御信号を発生させることができる。制御信号は、デジタル信号として、ビーム・ステアリング・モジュール1−150のアクチュエータへの通信リンク(SM1、SM2、SM3)、及び、半波長板2−160の回転を制御するパルスレーザ・システム1−110のアクチュエータ1−162への通信リンクWPを介して与えることができる。
パルスレーザ1−110及び機器1−100の動作をさらに示すために、バイオ光電子チップ1−140上の光カプラ(例えば、格子カプラ)に対するパルスレーザビームの位置合わせ及び位置合わせの維持のための例示的な方法8−500が、図8−5に示されている。いくつかの実施形態によれば、機器1−100内の制御回路8−430は、バイオ光電子チップが機器内に装填されていることを検出する(動作8−505)ように構成することができる。新たなチップが装填されるとき、その光カプラは、パルスレーザからのレーザビームに位置合わせされないものであり得る。装填が検出されるのに応答して、制御回路8−430は、例えば、図8−3に示すように、バイオ光電子チップの表面にわたってパルスレーザビームの螺旋走査(又は上述した任意の他の適切な走査方法)を実行する(動作8−510)ように、ビーム・ステアリング・モジュール1−150を動作させることができる。制御回路は、螺旋経路8−310又は任意の他の適切な経路においてビームを動かすように、ビーム・ステアリング・モジュール1−150のアクチュエータ8−122、8−123を動作させることができる。パルスレーザビームがチップの表面にわたって走査されている間、レーザビームの位置が検出されるか否かを判定するために、制御回路8−430によって、クワッド検出器1−320からの信号を監視することができる(動作8−515)。
クワッド検出器からの信号が、パルスレーザビームの位置が検出されていないことを示す場合(動作8−520)、制御回路は、バイオ光電子チップの表面にわたってレーザビームを走査し続けることができる(動作8−510)。代替的に、ビームの位置が検出された場合、螺旋走査を停止することができ、ビーム・ステアリング・モジュールのアクチュエータを駆動して、パルスレーザビームを、クワッド検出器1−320に対してほぼ中心に合わせることができる(動作8−525)。いくつかの実施形態によれば、格子カプラ1−310は、クワッド検出器に対してほぼ中心に合わせることができ、それによって、レーザビームをクワッド検出器に対して中心に合わせることによって、ビームが格子カプラにほぼ位置合わせする。おおよそ格子カプラの位置にあるパルスレーザビームによっ
て、制御回路は、格子カプラのすぐ近傍でx−y走査を実行する(動作8−530)ように、ビーム・ステアリング・モジュール1−150のアクチュエータ8−122、8−123を駆動することができる。例えば、ビーム・ステアリング・モジュールは、第1の最適な結合値を発見するためのx方向における連続的な線形走査を実行し、その後、第2の最適な結合値を発見するためのy方向における線形走査を実行することができる。レーザビームが走査されている間、クワッド検出器1−320及び1つ又は複数の導波路フォトダイオード1−324からの出力信号を監視することができる(動作8−535)。
パルスレーザビームが格子カプラの近傍で走査されるとき、1つ又は複数の導波路フォトダイオード1−324から検出されるパワーは増大及び低減し得る。いくつかの実施形態において、(クワッド検出器1−320によって決定されるものとしての)パルスレーザビームの第1のx1、y1位置に対応する(1つ又は複数の導波路フォトダイオード1−324によって検出される)導波路に結合される総パワー内の最大値があり得る。いくつかの事例において、格子カプラに接続されている複数の導波路において検出されるパワー・レベルがほぼ(例えば±20%以内又はさらには±10%以内で)等しい、パルスレーザビームの第2のx2、y2位置があり得る。第2の位置において、導波路に結合される総パワーは、第1の位置において導波路に結合される量未満であり得る。
いくつかの実施形態において、制御回路8−430は、導波路にわたって所定の均一性(例えば、±15%)以内で導波路に結合される最高の総パワーが達成されるまで、パルスレーザビームを動かすように適合することができる。対応する位置は、第1の位置x1、y1及び第2の位置x2、y2とは異なり得る、第1の最適化位置x3、y3であってもよい。いくつかの実施態様において、導波路にわたるより大きいパワー変動を許容することができる(結果もたらされるデータから正規化することができる)。そのような実施態様において、第1の最適化位置x3、y3は、導波路への総パワーが最大化される位置であり得る。
第1の最適化位置x3、y3が発見されていないと制御回路8−430が判定する(動作8−540)場合、制御回路は、ビーム・ステアリング・モジュールのアクチュエータを、格子カプラ1−310の近傍におけるパルスレーザビームのx−y走査を実行する(動作8−530)ように動作させ続けることができる。第1の最適化結合位置が発見されている場合、制御回路8−430は、クワッド検出器1−320によって検知される固定位置にレーザビームを維持するようにアクチュエータ8−122,8−123を動作させることによって、レーザビームの位置を保持することができる(動作8−545)。制御回路はその後、バイオ光電子チップ上の光カプラにおける入射ビーム角を走査する(動作8−550)ように、ビーム・ステアリング・モジュールのアクチュエータ8−121及び任意選択的に追加のアクチュエータを作動させることができる。入射ビーム角が走査されているとき、1つ又は複数の導波路内の導波路フォトダイオード1−324からの信号レベルを監視することができる(動作8−555)。入射ビーム角は、第2の最適化結合向きが発見されていると制御回路8−430が判定する(動作8−560)まで、走査することができる。第2の最適化結合向きは、バイオ光電子チップ1−140上の1つ又は複数の導波路に結合される最高のパワーの量、又は、導波路にわたる所定のパワー均一性で導波路に結合する最高のパワーを与えるビーム入射角に対応し得る。
第2の最適化結合向きが識別されていない場合(動作8−560)、制御回路は、入射ビーム角の走査(動作8−550)を継続することができる。第2の最適化結合向きが識別されている場合、制御回路8−430は、パルスレーザビームのx−y位置及びその入射角を維持することができる(動作8−565)。パルスレーザビームの位置及び入射角が維持されることによって、バイオ光電子チップ1−140上での測定を開始することができる。
いくつかの実施形態において、パルスレーザビームの位置は、数十分以上にわたって継続し得る測定の間に、クワッド検出器1−320に対して維持することができる。例えば、アクティブ・フィードバックを利用して、光カプラにおけるビームの位置を(クワッド検出器1−320を用いて)検知することができ、パルスレーザビームを検知された位置に(例えば、システム内のドリフト又は変動を補償するようにアクチュエータ8−122,8−123を動作させることによって)維持することができる。
測定が開始すると、反応室内の光パワー・レベルも維持することができる(動作8−570)。いくつかの実施形態によれば、光パワー・レベルを維持することは、1つ又は複数の導波路の端部に位置する1つ又は複数の導波路フォトダイオード1−324を用いて導波路パワー・レベルを監視することと、パルスレーザ・システム1−110のアクチュエータ2−162を作動させることによって、光パワーの変化を補償することとを含むことができる。アクチュエータの動作は、半波長板2−160を回転させ、半波長板2−160は、周波数2倍化結晶2−170内の偏光を回転させ、周波数2倍化波長への変換効率を変化させる。このように、そうでなければ反応室内に生じることになるパワー変動を、大きく低減することができる。
いくつかの実施形態において、制御回路8−430は、測定の終わりに、バイオ光電子チップ1−140から測定終了信号を受信することができる。制御回路が測定終了信号を検出しない(動作8−575)場合、ビームの向き及びパワー・レベルは維持され得る。制御回路が測定終了信号を検出する(動作8−575)場合、工程は終了することができる。いくつかの実施形態において、工程を終了することは、パルスレーザ1−110及びビーム・ステアリング・モジュールのアクチュエータの電源を切ることを含むことができる。
IV.クロック発生及びシステム同期
図1−1を再び参照すると、短パルス又は超短パルスを生成するために使用される方法及び装置にかかわらず、システム1−100は、分析システム1−160の少なくともいくつかの電子的動作(例えば、データ取得及び信号処理)を、光源1−110からの光パルス1−122の繰り返し数と同期させるように構成されている回路を含むことができる。パルス繰り返し数を分析システム1−160上の電子装置に同期させるための少なくとも2つの方法が存在する。第1の技法によれば、マスタ・クロックをタイミング・ソースとして使用して、パルス光源におけるパルスの発生と機器電子装置の両方をトリガすることができる。第2の技法において、パルス光源からタイミング信号を導出し、機器電子装置をトリガするために使用することができる。
図9−1は、クロック9−110が同期周波数fsyncにおけるタイミング信号を、パルス光源1−110(例えば、利得切換パルスレーザ又はLED)と、各励起パルス1−120と生物学的物質、化学物質、又は他の物理的物質との間の相互作用からもたらされる信号を検出及び処理するように構成することができる分析システム1−160の両方に与える。ほんの1例として、各励起パルスは、生物試料の特性(例えば、DNAシーケンシングのためのヌクレオチド取り込み、がん性又は非がん性、ウイルス又は細菌感染、血糖値)を分析するために使用される、生物試料の1つ又は複数の蛍光分子を励起することができる。例えば、非がん性細胞は、第1の値の固有蛍光寿命τ1を呈し得、一方で、がん性細胞は、第1の寿命値とは異なり、区別することができる第2の値の寿命τ2を呈し得る。別の例として、血液の試料から検出される蛍光寿命は、血糖値に依存する寿命値及び/又は強度値(別の安定したマーカに対する)を有することができる。各パルス又はいくつかのパルスから成る系列の後、分析システム1−160は、蛍光信号を検出及び処理して、試料の特性を決定することができる。いくつかの実施形態において、分析システムは、イメージングされるエリア内の領域の1つ又は複数の特性を示す、エリアの2次元
又は3次元マップを含む、励起パルスによって調査されるエリアの画像を生成することができる。
行われる分析のタイプにかかわらず、分析システム1−160上の検出及び処理電子装置は、各光励起パルスの到来と慎重に同期される必要があり得る。例えば、蛍光寿命を評価するとき、発光事象のタイミングを正確に記録することができるように、試料の励起の時間を正確に知ることが有益である。
図9−1に示す同期構成は、光パルスが能動的方法(例えば、外部制御)によって生成されるシステムに適し得る。能動パルス・システムは、限定ではないが、利得切換レーザ及びパルスLEDを含むことができる。そのようなシステムにおいて、クロック9−110が、パルス光源1−110におけるパルス生成(例えば、利得切換又はLED接合への電流注入)をトリガするために使用されるデジタル・クロック信号を与えることができる。機器上での電子的動作が、機器におけるパルス到来時間に同期することができるように、同じクロックがまた、同じ又は同期したデジタル信号を分析システム1−160に与えることもできる。
クロック9−110は、任意の適切なクロッキング・デバイスであってもよい。いくつかの実施形態において、クロックは、水晶発振器又はMEMSベースの発振器を含んでもよい。いくつかの実施態様において、クロックは、トランジスタ・リング発振器を含んでもよい。
クロック9−110によって与えられるクロック信号の周波数fsyncは、パルス繰り返し数Rと同じ周波数である必要はない。パルス繰り返し数は、R=1/Tによって与えることができ、Tはパルス分離間隔である。図9−1において、光パルス1−120は、距離Dだけ空間的に分離されるものとして示されている。この分離距離は、関係T=D/c、cは光速、による分析システム1−160におけるパルスの到来の間の時間Tに対応する。実際には、パルス間の時間Tは、フォトダイオード及びオシロスコープによって決定することができる。いくつかの実施形態によれば、T=fsync/Nであり、Nは1以上の整数である。いくつかの実施態様において、T=Nfsyncであり、Nは1以上の整数である。
図9−2は、タイマ9−220が分析システム1−160に同期信号を与えるシステムを示す。いくつかの実施形態において、タイマ9−220は、パルス光源1−110から同期信号を導出することができ、導出された信号は、分析システム1−160に同期信号を与えるために使用される。
いくつかの実施形態によれば、タイマ9−220は、パルス光源1−110から光パルスを検出するフォトダイオードからアナログ又はデジタル化信号を受信することができる。タイマ9−220は、受信したアナログ又はデジタル化信号から同期信号を形成又はトリガするための任意の適切な方法を使用することができる。例えば、タイマは、シュミット・トリガ又は比較器を使用して、検出された光パルスからデジタル・パルスの列を形成することができる。いくつかの実施態様において、タイマ9−220はさらに、遅延ロック・ループ又は位相ロック・ループを使用して、安定したクロック信号を、検出される光パルスから生成されるデジタル・パルスの列に同期させることができる。デジタル・パルスの列又はロックされている安定したクロック信号は、機器上の電子装置を光パルスと同期させるために、分析システム1−160に与えることができる。
本発明者らは、パルスレーザ1−110の(例えば、反応室1−330に励起光パルスを送達する)動作、信号取得電子装置の動作(例えば、時間ビニング光検出器1−322
の動作)、及びバイオ光電子チップ1−140からのデータ読み出しの動作を協調させることが、技術的課題を課すことを認識し、諒解するに至った。例えば、反応室において収集される時間ビニング信号が、蛍光減衰特性の正確な表現であるために、時間ビニング光検出器1−322の各々は、反応室における各励起光パルスの到来後に精密なタイミングでトリガされなければならない。加えて、データは、データの超過及び見過ごしを回避するために、反応室におけるデータ取得とほぼ同期して、バイオ光電子チップ1−140から読み出されなければならない。データの見過ごしは、いくつかの事例においては有害であり得、例えば、遺伝子配列の誤認を引き起こす。本発明者らは、システム・タイミングが、例えば、パルス振幅の変動、パルス間間隔Tの変動、及び偶発的なパルス脱落の影響を受けやすい、受動モードロックレーザの自然動作特性によってさらに複雑になることを認識し、諒解するに至った。
本発明者らは、クロック信号を発生し、ポータブル機器1−100内のデータ取得電子装置を駆動するために使用することができるクロック発生回路を着想し、開発した。クロック発生回路9−300の例が、図9−3に示されている。いくつかの実施形態によれば、クロック発生回路は、パルス検出、自動利得制御による信号増幅、クロック・デジタル化、及びクロック位相ロックの段を含むことができる。
パルス検出段は、いくつかの実施形態によれば、逆バイアスされ、バイアス電位と基準電位(例えば、接地電位)との間に接続される高速フォトダイオード9−310を備えることができる。フォトダイオードに対する逆バイアスは、任意の適切な値であってもよく、固定値抵抗器を使用して固定されてもよく、又は、調整可能であってもよい。いくつかの事例において、キャパシタCが、フォトダイオード9−310のカソードと、基準電位との間に接続されてもよい。フォトダイオードのアノードからの信号が、増幅段に与えられ得る。いくつかの実施形態において、パルス検出段は、約100マイクロワットと約25ミリワットとの間の平均パワー・レベルを有する光パルスを検出するように構成することができる。クロック発生回路9−300のパルス検出段は、パルスレーザ1−110上又はその付近に取り付けることができ、レーザから光パルスを検出するように構成することができる。
増幅段は、可変利得調整又は調整可能減衰を含むことができる1つ又は複数のアナログ増幅器9−320を備えることができ、それによって、アナログ利得増幅器からのパルス出力レベルは、所定の範囲内に設定することができる。クロック発生回路9−300の増幅段は、自動利得制御増幅器9−340をさらに含むことができる。いくつかの事例において、アナログ・フィルタリング回路9−330を、アナログ増幅器9−320の出力に接続することができる(例えば、高周波数(例えば、約500MHzを超えるもの)及び/又は低周波数雑音(例えば、約100Hz未満のもの)を除去するため)。いくつかの実施形態によれば、アナログ利得増幅器9−320からのフィルタリングされた又はフィルタリングされていない出力を、自動利得制御増幅器9−340に与えることができる。
いくつかの実施形態によれば、1つ又は複数のアナログ増幅器からの最終的な出力信号は、正極性であり得る。本発明者らは、後続の自動利得制御(AGC)増幅器が、負電圧ではなく正電圧にパルスを入力するときに、より信頼可能に動作することを認識し、諒解するに至った。自動利得制御増幅器は、受信される電子パルス列の振幅変動を補償するように、その内部利得を変化させることができる。自動利得制御増幅器9−340からの出力パルス列は、図面に示すように、ほぼ一定の振幅を有することができ、一方で、自動利得制御増幅器9−340への入力は、パルス間振幅の変動を有し得る。例示的な自動利得制御増幅器は、アナログ・デバイセズ・インコーポレイテッド社(Analog Devices, Inc.)[米国マサチューセッツ州ノーウッド(Norwood)所在]から入手可能なモデルAD8368である。
クロック・デジタル化段において、いくつかの実施態様によれば、自動利得制御増幅器からの出力を、比較器9−350に与えて、デジタル・パルス列を生成することができる。例えば、AGCからのパルス列を、比較器9−350の第1の入力に与えることができ、基準電位(いくつかの実施形態ではユーザが設定可能であり得る)を、比較器の第2の入力に接続することができる。基準電位は、各生成されるデジタル・パルスの立ち上がりエッジのトリガ・ポイントを確立することができる。
諒解され得るように、光パルス振幅の変動が、AGC増幅器9−340の前の電子パルスの振幅の変動をもたらすことになる。AGC増幅器がなければ、これらの振幅変動は、比較器9−350からのデジタル化パルス列内のパルスの立ち上がりエッジにタイミング・ジッタをもたらすことになる。AGC増幅器によってパルス振幅をレベリングすることによって、比較器の後のパルス・ジッタが大きく低減される。例えば、タイミング・ジッタは、AGC増幅器によって約50ピコ秒未満に低減することができる。いくつかの実施態様において、比較器からの出力は、論理回路9−370に与えることができ、論理回路9−370は、デジタル化パルス列のデューティ・サイクルを、約50%に変化させるように構成されている。
クロック発生回路9−300の位相ロック段は、タイミング及び同期機器動作のための1つ又は複数の安定した出力クロック信号を生成するために使用される位相ロック・ループ(PLL)回路9−380を備えることができる。いくつかの実施形態によれば、クロック・デジタル化段からの出力を、PLL回路9−380の第1の入力(例えば、フィードバック入力)に与えることができ、電子又は電気機械発振器9−360からの信号を、PLLへの第2の入力(例えば、基準入力)に与えることができる。電子又は電気機械発振器は、いくつかの事例において、機械的摂動及び温度変動に対して高度に安定性であり得る。いくつかの実施形態によれば、電子又は電気機械発振器9−360からの安定したクロック信号の位相は、PLLによって、安定性に劣り得る、モードロックレーザから導出されるデジタル化クロック信号の位相に対してロックされる。このように、電子又は電気機械発振器9−360は、パルスレーザ1−110の短期的な不安定性(例えば、パルス・ジッタ、パルス脱落)を乗り切ることができ、さらに、光パルス列にほぼ同期することができる。位相ロック・ループ回路9−380は、電子又は電気機械発振器9−360からの位相ロック信号から導出される1つ又は複数の安定した出力クロック信号を生成するように構成することができる。PLLを実装するために使用することができる例示的な回路は、シリコン・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド社(Silicon Laboratories Inc.)[米国テキサス州オースティン(Austin)所在]から入手可能である、ICチップSi5338である。
いくつかの実施形態によれば、PLL回路9−380から出力される1つ又は複数のクロック信号は、チップ上のデータ取得電子装置とタイミングを合わせるために、バイオ光電子チップ1−140に与えることができる。いくつかの事例において、PLL回路9−380は、そのクロック出力上に位相調整回路9−382、9−384を含むことができ、又は、別個の位相調整回路が、位相ロック・ループのクロック出力に接続されてもよい。いくつかの実施態様において、バイオ光電子チップ1−140は、チップ上の1つ又は複数の光検出器から、パルスレーザ1−110からの光励起パルスの到来を示すパルス到来信号1−142を与えることができる。パルス到来信号を評価及び使用して、バイオ光電子チップ1−140に与えられるクロック信号の1つ又は複数の位相を設定することができる。いくつかの実施形態において、パルス到来信号は、位相ロック・ループ回路9−380に戻すことができ、チップに与えられるクロック信号(複数可)の位相を自動的に調整するために処理することができ、それによって、バイオ光電子チップ1−140上でのデータ取得を駆動するために与えられるクロック信号のトリガ・エッジ(例えば、時間
ビニング光検出器1−322による信号取得のタイミング)が、反応室における光励起パルスの到来後の所定の時点に生じるように調整される。
いくつかの実施形態によれば、PLL回路9−380からのクロック信号は、機器1−100内に含まれる1つ又は複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)9−390にも与えることができる。FPGAは、バイオ光電子チップ1−140から読み出されたデータの駆動、データ処理、データ伝送、データ記憶などのような、機器上の様々な機能に使用することができる。
本発明者らは、AGC増幅器9−340のループ帯域幅と、位相ロック・ループ9−390のループ帯域幅との間には、相互作用があり得ることを認識し、諒解するに至った。例えば、位相ロック・ループのループ帯域幅が高すぎる場合、PLLは、AGC増幅器及び比較器によってデジタル化パルス列に導入されるジッタに応答し、光パルス・タイミングを正確に追跡しない場合がある。他方、AGCとPLLのいずれか又は両方のループ帯域幅が低すぎる場合、結果としてPLLから出力されるクロック信号は、光パルス・タイミングを正確に追跡しないことになる。本発明者らは、PLL9−390のループ帯域幅と関連付けられる積分時定数は、モードロックレーザ1−110からの光パルス列の約30パルスと約80パルスとの間であるべきであることを見出した。加えて、AGC増幅器9−340のループ帯域幅と関連付けられる積分時定数は、PLLの積分時定数の約20%を超えるべきではない。
いくつかの実施態様において、増幅段からの1つ又は複数の信号は、機器1−100内で別の目的に使用されてもよい。例えば、アナログ信号9−332は、AGC増幅器9−340の前で分割され得、パルスレーザ1−110におけるモード・ロックの品質を監視するために使用することができる。例えば、アナログ信号9−332は、パルスレーザによるQスイッチングの始まりを示す特性を検出するために、周波数及び/又は時間領域において電子的に分析することができる。特性(及びQスイッチングの始まり)が検出される場合、システムは、Qスイッチングを回避するためにモードロックレーザ内の光学素子(例えば、キャビティ位置合わせ光学素子)に対する調整を自動的に行うことができ、又は、システムは、エラーを示し、かつ/もしくは、パルスレーザを停止することができる。
いくつかの実施形態において、AGC増幅器は、出力パルスの振幅をレベリングするために必要とされるリアルタイム利得調整を表す出力信号9−342(アナログ又はデジタル)を与えることができる。本発明者らは、この出力信号9−342を使用して、パルスレーザのモード・ロック品質を評価することができることを認識し、諒解するに至った。例えば、そのスペクトルを分析して、Qスイッチングの始まりを検出することができる。
クロック発生及び同期は、自動利得制御増幅器及び位相ロック・ループを使用して説明されているが、他の実施形態においては、より大量のクロック・ジッタ(例えば、最大約300ps)を許容することができる代替的な装置が使用されてもよい。いくつかの実施態様において、パルス増幅段内の増幅器は、立ち上がりエッジ・トリガ信号を与えるために、飽和状態まで駆動することができる。クロックのトリガ・ポイントは、立ち上がりエッジ上の何らかの値に設定することができる。増幅器は飽和しているため、パルス振幅の変動の、トリガ・タイミングに対する影響は、非飽和増幅器よりも小さい。立ち上がりエッジを使用して、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)において実装されるもののような、フリップ・フロップ・クロッキング回路を切り替えることができる。ゼロに戻る飽和増幅器からの立ち下がりエッジは、増幅器の出力がいつ飽和から解放されるかに応じて、相当により大きいタイミング変動性を有し得る。しかしながら、立ち下がりエッジは、フリップ・フロップ・クロッキング回路によっては検出されず、クロッ
キングには影響を及ぼさない。
多くのFPGAは、PLLの代わりに、安定した発振器をフリップ・フロップからのレーザによって発生するクロッキング信号にロックするために使用することができるデジタル遅延ロック・ループ(DLL)を含む。いくつかの実施態様において、受信フリップ・フロップ・デバイスは、光パルス列からのクロッキング・レートを2で除算し、それによって、パルス繰り返し数の2分の1においてDLLに50%のデューティ・サイクルのクロック信号を与えることができる。DLLは、光パルス列と同期される周波数2倍化クロックを発生するように構成することができる。追加の同期される、より高周波数のクロックも、DLL及びFPGAによって発生してもよい。
いくつかの実施形態において、図9−4に示すように、2つ以上のパルス光源1−110a、1−110bが、2つ以上の異なる波長にある光パルスを分析システム1−160に供給するために必要とされ得る。そのような実施形態においては、光源のパルス繰り返し数及び分析システム1−160上の電子的動作を同期させる必要があり得る。いくつかの実施態様において、2つのパルス光源がパルスを生成する能動的方法(例えば、利得切り換え)を使用する場合、図9−1に関連して上述した技法を使用することができる。例えば、クロック9−110が、同期周波数fsyncにあるクロック又は同期信号を、両方のパルス光源1−110a、1−110bの駆動回路及び分析システム1−160に供給することができる。1つのパルス光源1−110bが受動的方法を使用してパルスを生成する場合、図9−2に関連して説明した技法を使用して、受動パルス源から同期信号を導出することができる。その後、同期信号を、その光源によるパルス生成を同期させるために能動パルス源1−110aに与えることができ、機器電子装置及び動作を同期させるために機器1−160に与えることができる。
各光源においてパルスが能動的に生成されるとき、安定的な同期したパルス生成のために、フィードバック制御システムを使用して、レーザキャビティ長を動的に調整する必要がある場合があり、又は、必要ない場合もある。レーザの利得媒体の利得切り換えによってパルスが生成される場合、レーザキャビティ長調整は必要ない場合がある。能動的モード・ロック技法によってパルスが生成される場合、安定した光パルスの列を生成するために、動的なレーザキャビティ長調整が必要であり得る。レーザキャビティ長調整を行うことができるいくつかの電気機械的技法が存在する。例えば、フィードバック信号に従って制御される圧電トランスデューサを使用して、キャビティ・ミラー(キャビティ端部ミラー又は変向ミラー対など)を位置決めすることができる。フィードバック信号は、レーザキャビティによって生成されるパルス繰り返し数と別のパルス繰り返し数との間の差、又は外部で生成されるクロック信号から導出することができる。いくつかの事例において、フィードバック信号に従って、圧電材料を使用してファイバ・レーザ長を伸長することができる。いくつかの実施態様において、キャビティ・ミラーは、フィードバック信号に従って制御される微小電気機械ベースのミラーであってもよい。
いくつかの実施形態によれば、2つのパルス光源1−110a、1−110bは両方とも、受動的に(例えば、受動モード・ロックによって)光パルスを生成し得る。そのような実施形態において、同期信号は、レーザ間パルス及び電子的同期について、図9−3に関連して説明したように、パルス光源のうちの1つから導出することができる。第2のパルス光源からのパルスを、第1の光源からのパルスに同期させるために、追加の方策が必要とされ得る。例えば、第2のパルス光源からタイミング信号も導出して、電気機械フィードバック回路によって使用して、第2のパルス光源のキャビティ長を制御することができる。第2のパルス光源のキャビティ長を制御することによって、第2のパルス光源から導出されるタイミング信号を、周波数及び位相において(例えば、位相ロック・ループを介して)第1のパルス光源から導出されるクロック信号に対してロックすることができる
。このように、第2のパルス光源からのパルス列を、第1のパルス光源のパルス列に同期することができ、機器動作及び電子装置も、第1のパルス光源に同期することができる。
いくつかの実施態様において、図9−5A及び図9−5Bに示すように、2つのパルス光源からのパルスを時間的にインターリーブすることが有益であり得る。パルスがインターリーブされると、第1の供給源1−110aからのパルス9−120aが、第1の時刻t1において第1の固有波長λ1によって分析システム1−160にある1つ又は複数の試料を励起することができる。その後、1つ又は複数の試料との第1のパルスの相互作用を表すデータを、機器によって収集することができる。後の時刻t2において、第2の供給源1−110bからのパルス9−120bが、第2の固有波長λ2によって分析システム1−160にある1つ又は複数の試料を励起することができる。その後、1つ又は複数の試料との第2のパルスの相互作用を表すデータを、機器によって収集することができる。パルスをインターリーブすることによって、1つの波長におけるパルスと試料との相互作用の効果が、第2の波長におけるパルスと試料との相互作用の効果と混じり合わないようにすることができる。さらに、2つ以上の蛍光マーカと関連付けられる特性を検出することができる。
パルスは、図9−5Aに示すように、タイミング及び同期回路によってインターリーブすることができる。図9−4に関連して説明した方法を使用して、2つのパルス光源1−110a、1−110bからのパルス列を同期させ、分析システム1−160上の電子装置及び動作を、パルスの到来と同期させることができる。パルスをインターリーブするために、1つのパルス光源のパルスを他方のパルス光源からのパルスと位相ロックするか、又は、位相がずれるようにトリガすることができる。例えば、第1のパルス光源1−110aのパルスは、第2のパルス光源1−110bからのパルスと(位相ロック・ループもしくは遅延ロック・ループを使用して)位相ロックするか、又は、180度位相がずれるようにトリガすることができるが、いくつかの実施形態において、他の位相又は角度関係が使用されてもよい。いくつかの実施態様において、パルス光源のうちの1つに与えられるトリガ信号に、タイミング遅延を加えることができる。タイミング遅延は、トリガ・エッジを、パルス分離間隔Tのほぼ2分の1だけ遅延させることができる。いくつかの実施形態によれば、周波数2倍化同期信号を、タイマ9−220によって発生させることができ、機器電子装置及び動作をパルス光源からのインターリーブされたパルスの到来と同期させるために、機器9−160に与えることができる。
本発明者らは、2つ以上の異なる固有波長にある光パルス列を生成し、同期することができるさらなる方法及び技法を着想した。図9−6Aは、所望の固有波長λ1/2及びλ3にある2つの同期したパルス列9−120c、9−120dを発生させるために非線形光学材料を利用する2レーザ・システム9−600を示す。いくつかの実施形態によれば、第1のレーザ1−110aは、第1の固有波長λ1にある第1の光パルスの列9−120aを生成することができる。例えば、第1のレーザは、1064nmにあるパルスを生成する受動モードロックレーザ(例えば、Nd:YVO4又はNd:GdVO4レーザ)であってもよい。第1のレーザ1−110aは、図3−3A又は図5−1から図5−3に関連して説明した任意のレーザキャビティ・システムを備えてもよい。第1の光パルスの列9−120aは、第1の非線形光学素子9−610(例えば、KTP又はBBO結晶)における第2高調波発生(SHG)によって周波数2倍化して、第1のレーザのパルス列の波長の2分の1(例えば、λ1/2=532nm)にある第3の光パルスの列9−120cを生成することができる。第2高調波発生は、パルス・エネルギーのすべてを第2高調波周波数に変換するのではなく、それによって、基本波長λ1にある減衰したパルス列が、第1の非線形光学素子9−610から現われる。
加えて、第2の受動モードロックレーザ1−110bは、第2の固有波長λ2にある第
2の光パルスの列9−120bを生成することができる。いくつかの実施形態において、第2のレーザもまた、同じタイプの利得媒体によって支持される第2のレージング遷移である第2の波長(例えば、1342nm)にあるパルスを生成する受動モードロックレーザ(例えば、Nd:YVO4又はNd:GdVO4)を含んでもよいが、他の実施形態においては、他のレージング材料が使用されてもよい。第1のダイクロイック・ミラーDC1を使用して、第1のレーザ1−110aからのパルスを第2のダイクロイック・ミラーDC2へと方向付けることができ、第2のダイクロイック・ミラーDC2において、2つのレーザからのパルス列が結合されて、第2の非線形光学素子9−620(例えばKTP又はBBO結晶)へと方向付けられる。第2の非線形素子において、パルスがともに到来することを条件として、2つのパルス列からの光場が相互作用して、和周波数発生(SFG)として知られる工程によって第3の波長λ3が発生する。この工程において、結果としてもたらされる波長は、以下の関係によって与えられる。
λ3=λ1λ2/(|λ1+λ2|) (2)
上記の例によれば、第3の波長λ3は、約593.5nmにおいて生成することができる。結果として、2レーザ・システムは、532nmにある第3のパルス列9−120c及び593.5nmにある第4のパルス列9−120dを生成することができる。いくつかの実施形態において、第4のパルス列は、基本波長λ1,λ2にあるパルスを含み得るが、この放射は、例えば、赤外線フィルタを使用してパルス列からフィルタリング除外することができる。
いくつかの実施態様において、第4の固有波長λ4にある第5のパルス列(図示せず)が生成されてもよい。例えば、その基本波長λ2にある第2のレーザ1−110bからの放射が、第2の非線形光学素子9−620から現われ、第3の非線形光学素子(図示せず)において周波数2倍化されてもよい。上記の例によれば、第4の固有波長は、約670nmになる。加えて、これらのパルスは、第3のパルス列及び第4のパルス列において、他の光パルスと時間的に同期される。
上述したように、2つのレーザ1−110a、1−110bからのパルスは、第2の非線形光学素子9−620に同時に到来すべきであり、素子内で空間的に可能な限り重なり合うべきである。したがって、2つのレーザは同期されるべきである。2つのレーザの、及び、機器電子装置に対する同期は、例えば、図9−4に関連して説明したように、タイミング及び電気機械制御回路9−220を使用して行うことができる。制御回路9−220は、いくつかの実施形態において、2つのレーザからのパルス繰り返し数を比較して、1つのレーザのキャビティ長を制御するのに使用されるフィードバック信号を生成することができる。キャビティ長は、圧電トランスデューサのような、電気機械式アクチュエータを介して制御することができる。制御回路9−220はさらに、パルスの物質との相互作用を分析する機器1−160の電子的動作を同期させるために使用されるクロッキング信号を発生させるか、又は、当該信号に位相ロックすることができる。
図9−6Aのレージング・システム、又は他のレージング・システム、又は、本明細書において説明されているレージング・システムの組み合わせによって発生する複数の固有波長にある同期されたパルスは、生物分析システムのために蛍光色素分子を励起するのに望ましいものであり得る。いくつかの実施態様において、励起された蛍光色素分子から検出される光学的発光を表す信号を、関連する用途において説明されている方法に従って処理して、蛍光色素分子のタイプを区別することができる。いくつかの事例において、検出される信号の分析は、それらの寿命及び/又はスペクトル特性に基づいて、蛍光色素分子を区別することができる。いくつかの実施形態において、寿命に基づく蛍光色素分子の区別は、区別されるべき異なる蛍光色素分子は異なる吸収帯を有し得るため、試料において複数の励起波長を使用するのに都合がよい。複数の波長にある励起パルスは、試料に存在
するとき、各蛍光色素分子が励起されることを保証することができる。
いくつかの事例において、複数の励起波長が利用可能であるとき、励起源が蛍光色素分子を励起するか否かに基づいて、蛍光色素分子を区別することができる。ほんの1例として、単一分子遺伝子シーケンシング装置において4つの蛍光色素分子を使用して、遺伝子又は遺伝子断片へのヌクレオチド取り込みを検出することができる。4つの蛍光色素分子は、それらの吸収帯における重なりが低減されるように選択することができる。2つ以上のパルスレーザ源からの、吸収帯に一致する4つの励起波長を使用して、蛍光色素分子を励起することができる。パルスは時間的にインターリーブすることができ、それによって、パルスは、各固有波長について異なる時間間隔内で試料に到来する。励起波長に一致する吸収帯を有する蛍光色素分子が存在する場合、蛍光色素分子は、一致する励起波長にあるパルスと関連付けられる時間間隔の間に発光することになる。したがって、試料から検出される信号のタイミング又は位相が、存在する蛍光色素分子のタイプを識別することができる。
いくつかの実施形態において、蛍光色素分子弁別方法の組み合わせが使用されてもよい。例えば、同じ試料分析において、いくつかの蛍光色素分子を寿命に基づいて区別することができ、いくつかの蛍光色素分子は、励起波長と吸収帯との一致に基づいて区別することができる。図9−6Aに関連して説明したような、単一レーザ・システム、又は、レーザ・システムの組み合わせ(例えば、利得切換半導体レーザ及び受動モードロックレーザ)によって、複数の励起波長を生成することができる。
2レーザ・システム9−602の別の実施形態が、図9−6Bに示されている。このシステムにおいては、第2高調波発生の前に、和周波数発生が実行される。例えば、第1のレーザ1−110a及び第2のレーザ1−110bからの出力パルス列9−120a、9−120bが、ダイクロイック・ミラーDC1において結合され、SFGが行われる第1の非線形光学素子へと方向付けられる。その後、少なくとも第1の波長を、SHGが行われる第2の非線形光学素子へと方向付けるために、出力パルス列が(トリクロイックTC1又は2色性スプリッタを使用して)分割され得る。したがって、λ1/2にある第3のパルス列9−120c及びλ3にある第4のパルス列9−120dを発生させることができる。2つのパルス列の同期は、タイミング及び電気機械フィードバック制御回路9−220を使用して行うことができる。
V.構成
諒解され得るように、パルスレーザ1−110及び分析機器1−100及び動作方法の多くの異なる構成及び実施形態があり得る。いくつかの構成及び実施形態を下記に与えるが、本発明は、リストされている構成及び実施形態には限定されない。
(1)350mm以下の最大エッジ長を有するベースプレートと、ベースプレート上に取り付けられている利得媒体と、レーザキャビティの第1の端部に位置する、ベースプレート上に取り付けられている第1の端部ミラーと、ベースプレート上に取り付けられており、レーザキャビティの第2の端部ミラーを形成する可飽和吸収体ミラーとを備えるモードロックレーザであって、モードロックレーザは、50MHzと200MHzとの間の繰り返し数における受動モード・ロックによって光パルスを生成するように構成されている、モードロックレーザ。
(2)モードロックレーザから励起パルスを受信するように構成されているバイオ光電子チップであって、バイオ光電子チップは、標的核酸に対して相補的な伸長鎖へのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の連続的な取り込みを支持する、バイオ光電子チップと、単一の固有波長にある励起パルスをバイオ光電子チップに向けて方向付けるように構成されているビーム・ステアリング光学素子と、単一の固有波長にある励起パルスによって誘
発される蛍光発光を表す信号を受信し、伸長鎖に取り込まれている4つの異なるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のアイデンティティを決定するために、受信信号を処理するように構成されている信号プロセッサとをさらに備え、受信信号は、伸長鎖へのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の連続的な取り込みに対応する、構成(1)のモードロックレーザ。
(3)モードロックレーザが動作している間に、レーザキャビティ内で2のみの自由度のレーザビームの調整を可能にするように構成されている、レーザキャビティ内の調整可能ミラー・マウントをさらに備え、当該自由度は、モードロックレーザが動作している間にレーザビームを調整するためにレーザキャビティ内の光学台によって与えられる2のみの自由度である(1)又は(2)のモードロックレーザ。
(4)ベースプレート上に取り付けられており、利得媒体と可飽和吸収体ミラーとの間でキャビティ内光軸に沿って位置している第1の集束光学素子と、ベースプレート上に取り付けられており第1の集束光学素子と可飽和吸収体ミラーとの間でキャビティ内光軸に沿って位置している第2の集束光学素子とをさらに備え、キャビティ内光軸に沿った第1の集束光学素子の位置に対する調整が、キャビティ内光軸に沿った第2の集束光学素子の位置に対する同じ量の調整よりも大きく、可飽和吸収体ミラー上でのキャビティ内レーザビームの焦点サイズを変化させる(1)乃至(3)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(5)利得媒体の少なくとも2つの側に結合されており、キャビティ内レーザビームを方向制御する、利得媒体にわたる非対称熱勾配を生成するように構成されている温度制御要素をさらに備える(1)乃至(4)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(6)ベースプレート上に取り付けられており、利得媒体と可飽和吸収体ミラーとの間でキャビティ内光軸に沿って位置している第1の集束光学素子と、ベースプレート上に取り付けられており第1の集束光学素子と可飽和吸収体ミラーとの間でキャビティ内光軸に沿って位置している第2の集束光学素子と、第1の集束光学素子と可飽和吸収体ミラーとの間に取り付けられているキャビティ内ビーム・ステアリング・モジュールとをさらに備える(1)乃至(5)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(7)モードロックレーザの平均パワーを検出するように構成されている光検出器と、光検出器及びキャビティ内ビーム・ステアリング・モジュールと通信する制御回路とをさらに備え、制御回路は、光検出器によって検出される信号レベルに基づいて、可飽和吸収体ミラー上でキャビティ内レーザビームを再位置合わせするための信号を与えるように構成されている(6)のモードロックレーザ。
(8)パルスレーザのQスイッチングと関連付けられる1つ又は複数の特性を検出するように構成されている光検出器及び信号プロセッサと、信号プロセッサ及びキャビティ内ビーム・ステアリング・モジュールと通信する制御回路とをさらに備え、制御回路は、Qスイッチングと関連付けられる1つ又は複数の特性の検出に応答して、可飽和吸収体ミラー上でキャビティ内レーザビームを再位置合わせするための信号を与えるように構成されている(6)のモードロックレーザ。
(9)レーザキャビティの長さを延長し、利得媒体と可飽和吸収体ミラーとの間に位置している複数のミラーと、ベースプレート内に形成されており、利得媒体と複数のミラーとの間に位置している取り付け特徴部とをさらに備え、取り付け特徴部は、レーザキャビティを短縮する端部ミラーを保持するために端部ミラー又は固定具を受け入れるように構成されている(1)乃至(8)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(10)キャビティ内光軸の方向に延在し、モードロックレーザの1つ又は複数の光学構成要素を受け入れるように構成されている、ベースプレート内に形成されている少なくとも1つのトレンチをさらに備える(1)乃至(9)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(11)ベースプレートに形成されている集積光学台をさらに含み、集積光学台は、少なくとも1つのトレンチの対向する側に当接し、基本的にキャビティ内光軸に垂直に向けられている2つの共平面と、少なくとも1つのトレンチの対向する側に形成されており、2つの共平面に向かって傾斜している2つの傾斜面とを備える(10)のモードロックレーザ。
(12)モードロックレーザからの光パルスを検出するように構成されている光検出器と、安定した発振器からの電子クロック信号を、モードロックレーザによって生成される光パルスに同期させるように構成されているクロック発生回路とをさらに備える(1)乃至(11)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(13)第1の端部ミラーは、約10%と約25%との間の透過率を有する出力カプラを備える(1)乃至(12)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(14)光パルスの半値全幅持続時間は、約5psと約30psとの間である(1)乃至(13)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(15)光パルスのテール強度は、光パルスのピーク強度から250ps後に、光パルスのピーク強度を20dB下回ったままである(1)乃至(14)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(16)レーザからの出力パルスを、第1のレージング波長から、当該レージング波長の2分の1の波長を有するパルスへと変換する、ベースプレート上に取り付けられている周波数2倍化構成要素をさらに備える(1)乃至(15)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(17)ベースプレート上に取り付けられており、モードロックレーザからの出力を受信するように構成されている周波数2倍化構成要素と、周波数2倍化構成要素からバイオ光電子チップへと送達される周波数2倍化波長におけるパワーの量を表す信号を受信し、受信信号のレベルに基づいて周波数2倍化波長におけるパワーの量を変化させるための信号を与えるように構成されているフィードバック回路とをさらに備える(1)乃至(15)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(18)周波数2倍化構成要素に送達されるモードロックレーザからの出力の偏光を変化させるように構成されている偏光回転器と、偏光回転器の向きを制御する、フィードバック回路に接続されているアクチュエータとをさらに備える(16)又は(17)のモードロックレーザ。
(19)熱絶縁締結具によってベースプレートに取り付けられているダイオード・ポンプ・ソース・モジュールをさらに備える(1)乃至(18)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(20)ダイオード・ポンプ・ソース・モジュールは、ベースプレート内の穴を通じて取り付けられており、ベースプレートの、レーザキャビティと反対の側に位置している、(19)のモードロックレーザ。
(21)単一の固有波長にあるパルス励起エネルギーを生成する工程と、パルス励起エネルギーをバイオ光電子チップに向けて方向付ける工程であって、バイオ光電子チップは、標的核酸に対して相補的である伸長鎖への、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の連続的な取り込みを支持する、方向付ける工程と、単一の固有波長におけるパルス励起エネルギーによって誘発される蛍光発光を表す信号を受信する工程であって、信号は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の伸長鎖への連続的な取り込みに対応する、受信する工程と、伸長鎖に取り込まれている4つの異なるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のアイデンティティを決定するために、受信信号を処理する工程とを備える、DNAをシーケンシングするための方法。
(22)パルス励起エネルギーを生成する工程は、単一の固有波長において動作するモードロックレーザによって光パルスを生成する工程を含む実施形態(21)の方法。
(23)パルス励起エネルギーを生成する工程は、単一の固有波長において動作する利得切換レーザによって光パルスを生成する工程を含む(21)の方法。
(24)受信信号を処理する工程は、4つのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のうちの少なくとも2つの異なるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を識別するために、少なくとも2つの異なる蛍光発光減衰値の間で区別する工程を含む(21)乃至(23)のいずれか1つの方法。
(25)パルス励起エネルギーに同期される電子トリガ信号を生成する工程と、バイオ光電子チップ上の蛍光発光を表す信号の収集のタイミングをとるために電子トリガ信号を与える工程とをさらに含む(21)乃至(24)のいずれか1つの方法。
(26)パルス励起エネルギーがオン状態に続いてオフ状態にあるときに行われるように、蛍光発光を表す信号の収集のタイミングをとる工程をさらに含む(25)の方法。
(27)パルス励起エネルギーを方向付ける工程は、パルス励起エネルギーをバイオ光電子チップ上の導波路に結合する工程を含む(21)乃至(26)のいずれか1つの方法。
(28)結合する工程は、パルス励起エネルギーのビームの、導波路に接続されている入力ポートに対する位置合わせの度合いを示す第1のフィードバック信号を、バイオ光電子チップから受信する工程と、第1のフィードバック信号に基づいてビームを方向制御する工程とを含む(27)の方法。
(29)結合する工程は、標的核酸に送達されるパワーの量を示す第2のフィードバック信号を、バイオ光電子チップから受信する工程と、第2のフィードバック信号に基づいてパルス励起エネルギー内のエネルギーの量を調整する工程とを含む(27)又は(28)の方法。
(30)単一の固有波長にある光励起パルスを生成するように構成されているパルスレーザ・システムと、バイオ光電子チップを受け入れ、バイオ光電子チップとの電気的接続及び光結合を行うためのレセプタクルであって、バイオ光電子チップは、標的核酸に対して相補的である伸長鎖への、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の連続的な取り込みを支持する、レセプタクルと、励起パルスをレセプタクルに向けて方向付けるように構成されているビーム・ステアリング光学素子と、単一の固有波長における励起パルスによって誘発される蛍光発光を表す信号を受信し、伸長鎖に取り込まれている4つの異なるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のアイデンティティを決定するために、受信信号を処理するように構成されている信号プロセッサであって、受信信号は、ヌクレオチド又はヌクレ
オチド類似体の伸長鎖への連続的な取り込みに対応する、信号プロセッサとを備える生物分析機器。
(31)パルスレーザ・システムはモードロックレーザを含む構成(30)の生物分析機器。
(32)モードロックレーザは、ベースプレートと、ベースプレート上に取り付けられている利得媒体と、レーザキャビティの第1の端部に位置する、ベースプレート上に取り付けられている第1の端部ミラーと、ベースプレート上に取り付けられており、レーザキャビティの第2の端部ミラーを形成する可飽和吸収体ミラーとを備える(31)の生物分析機器。
(33)モードロックレーザはファイバ・レーザを含む(31)又は(32)の生物分析機器。
(34)モードロックレーザはモードロックレーザダイオードを含む(31)又は(32)の生物分析機器。
(35)モードロックレーザはキャビティ内周波数2倍化要素を有するダイオード・ポンプ・レーザを含む(31)又は(32)の生物分析機器。
(36)パルスレーザ・システムは利得切換レーザを含む構成(30)の生物分析機器。
(37)利得切換レーザはレーザダイオードを含む(36)の生物分析機器。
(38)利得切換レーザはレーザダイオードと、レーザダイオードにバイポーラ電流パルスを与えるように構成されている電流駆動回路とを備え、バイポーラ電流パルスは、第1の振幅及び第1の極性を有する第1のパルスと、後続する、第1の振幅よりも小さい第2の振幅を有する、反対の極性の第2のパルスとを備える(36)の生物分析機器。
(39)駆動回路は、レーザダイオードの端子に結合されているトランジスタを含み、駆動回路は、ユニポーラ・パルスを受信し、ユニポーラ・パルスの受信に応答して半導体ダイオードにバイポーラ電気パルスを印加するように構成されている(38)の生物分析機器。
(40)パルスレーザ・システムは、連続波レーザと、連続波レーザからの出力を変調する相互接続された光スイッチのアレイとを備える(30)の生物分析機器。
(41)蛍光発光を表す信号の収集を、励起パルスがバイオ光電子チップにおいて基本的にオフ状態にあるときに行われるように制御する同期回路をさらに備える(30)乃至(40)のいずれか1つの生物分析機器。
(42)同期回路は、電子又は電気機械発振器からの第1のクロック信号を、励起パルスの検出から生成される第2のクロック信号に同期させ、生物分析機器によるデータ取得のタイミングをとるために、同期した第1のクロック信号を与えるように構成されているクロック発生回路を含む(41)の生物分析機器。
(43)クロック発生回路は、光パルスから発生する電子パルスの振幅をレベリングするための自動利得制御増幅部を含む(42)の生物分析機器。
(44)クロック発生回路は、光パルスから発生する電子パルスの振幅をレベリングするための飽和増幅部を含む(42)の生物分析機器。
(45)単一の固有波長にあるパルス励起エネルギーを生成するように構成されているレーザと、電子又は電気機械発振器からの第1のクロック信号を、レーザからの光パルス
の検出から生成される第2のクロック信号に同期させ、生物分析機器によるデータ取得のタイミングをとるために、同期した第1のクロック信号を与えるように構成されているクロック発生回路とを備える、生物分析機器。
(46)クロック発生回路は、光パルスから発生する電子パルスの振幅をレベリングするための自動利得制御増幅部を含む構成(45)の生物分析機器。
(47)クロック発生回路は、光パルスから発生する電子パルスの振幅をレベリングするための飽和増幅部を含む(45)の生物分析機器。
(48)クロック発生回路は、第1のクロック信号の位相を第2のクロック信号にロックする位相ロック・ループを含む(45)乃至(47)のいずれか1つの生物分析機器。
(49)クロック発生回路は、第1のクロック信号の位相を第2のクロック信号にロックする遅延ロック・ループを含む(45)乃至(47)のいずれか1つの生物分析機器。
(50)パルスレーザと、連続波レーザと、第1の非線形光学素子と、第2の非線形光学素子とを備えるシステムであって、システムは、第1の固有波長にある、第1の非線形光学素子から発生する第1のパルス列、及び、第2の固有波長にある、第2の非線形光学素子からの第2のパルス列を生成するように構成されている、システム。
(51)第2の非線形光学素子は、連続波レーザのレーザキャビティ内にある構成(50)のシステム。
(52)第2のパルス列は第1のパルス列に同期される(50)又は(51)のシステム。
(53)第2のパルス列は、第2の非線形光学素子において和周波数発生によって生成される(50)乃至(52)のいずれか1つのシステム。
(54)第1の固有波長及び第2の固有波長は、500nmと700nmとの間である(50)乃至(53)のいずれか1つのシステム。
(55)試料を保持するように構成されている生物分析機器と、第1のパルス列及び第2のパルス列からの放射を試料へと方向付けるように構成されているビーム・ステアリング光学素子とをさらに備える(50)乃至(54)のいずれか1つのシステム。
(56)生物分析機器は、試料からの発光を検出し、蛍光寿命に基づいて2つ以上の蛍光色素分子を区別するように構成されているシステム(55)。
(57)第1の固有波長においてパルスレーザを動作させる工程と、第2の固有波長において連続波レーザを動作させる工程と、パルスレーザからの第1のパルス列を、連続波レーザのレーザキャビティに結合する工程と、連続波レーザのレーザキャビティ内で第3の固有波長にある第2のパルス列を発生させる工程とを備える同期した光パルスを与える方法。
(58)第2のパルス列を発生させる工程は、和周波数発生を含む実施形態(57)の方法。
(59)第4の固有波長にある第3のパルス列を発生させるために、パルスレーザからのパルス列を周波数2倍化する工程をさらに含む(57)又は(58)の方法。
(60)第2のパルス列及び第3のパルス列を生物分析機器に与える工程をさらに含む(59)の方法。
(61)生物分析機器において試料中の少なくとも2つの蛍光色素分子を、第2のパルス列及び第3のパルス列のパルスによって励起する工程と、蛍光寿命に基づいて少なくと
も2つの蛍光色素分子を区別する工程とをさらに含む(60)の方法。
(62)第1のパルスレーザと、第2のパルスレーザと、第1の非線形光学素子と、第2の非線形光学素子とを備えるシステムであって、システムは、第1の固有波長にある、第1の非線形光学素子から発生する第1のパルス列、及び、第2の固有波長にある、第2の非線形光学素子からの和周波数発生による第2のパルス列を生成するように構成されている、システム。
(63)第2のパルス列は第1のパルス列に同期される構成(62)のシステム。
(64)試料を保持し、第1のパルス列及び第2のパルス列からの放射を試料へと方向付けるように構成されている生物分析機器をさらに備える(62)又は(63)のシステム。
(65)生物分析機器は、試料からの発光を検出し、蛍光寿命に基づいて2つ以上の蛍光色素分子を区別するように構成されている(64)のシステム。
(66)第3の非線形光学素子をさらに備え、システムは、第3の固有波長にある、第3の非線形光学素子から発生する第3のパルス列を生成するように構成されている(62)乃至(65)のいずれかのシステム。
(67)第3のパルス列は第1のパルス列及び第2のパルス列に同期される(66)のシステム。
(68)第1の固有波長、第2の固有波長、及び第3の固有波長は、500nmと700nmとの間である(62)乃至(67)のいずれかのシステム。
(69)第1の固有波長において第1のパルスレーザを動作させる工程と、第2の固有波長において第2のパルスレーザを動作させる工程と、第1のパルスレーザを、第2のパルスレーザに同期させる工程と、第3の固有波長にある第1のパルス列を生成するために、第1のパルスレーザからのパルスを周波数2倍化する工程と、第1のパルスレーザ及び第2のパルスレーザからのパルスを非線形光学素子に結合する工程と、和周波発生によって、第4の固有波長にある第2のパルス列を発生させる工程とを備える同期した光パルスを与える方法。
(70)第1のパルス列及び第2のパルス列を生物分析機器に与える工程をさらに含む実施形態(69)の方法。
(71)生物分析機器において試料中の少なくとも2つの蛍光色素分子を、第1のパルス列及び第2のパルス列のパルスによって励起する工程と、蛍光寿命に基づいて少なくとも2つの蛍光色素分子を区別する工程とをさらに含む(70)の方法。
(72)第5の固有波長にある第3のパルス列を生成するために、第2のパルスレーザからのパルスを周波数2倍化する工程をさらに含む(69)乃至(71)のいずれかの方法。
(73)第3の固有波長、第4の固有波長、及び第5の固有波長は、500nmと700nmとの間である(72)の方法。
(74)第1のパルスレーザと、キャビティ内可飽和吸収体ミラーを含む第2のパルスレーザとを備えるシステムであって、システムは、第1のパルスレーザからのパルスを、第2のパルスレーザの可飽和吸収体ミラー上へと方向付けるように構成されている、システム。
(75)第2のパルスレーザは受動モード・ロックされる構成(74)のシステム。
(76)第1の非線形光学素子と、第2の非線形光学素子とをさらに備え、システムは、第1の固有波長にある、第1の非線形光学素子から発生する第1のパルス列、及び、第2の固有波長にある、第2の非線形光学素子からの第2のパルス列を生成するように構成されている(74)又は(75)のシステム。
(77)試料を保持し、第1のパルス列及び第2のパルス列からの放射を試料上へと方向付けるように構成されている生物分析機器をさらに備える(74)乃至(76)のいずれか1つのシステム。
(78)生物分析機器は、試料からの発光を検出し、蛍光寿命に基づいて2つ以上の蛍光色素分子を区別するように構成されている(77)のシステム。
(79)第1の固有波長において第1のパルスレーザを動作させる工程と、第1のパルスレーザからのパルス列を、第2のパルスレーザのレーザキャビティ内の可飽和吸収体ミラー上に結合する工程とを備える2つのレーザをモード・ロックするための方法。
(80)第2の固有波長にある第2のパルスレーザを受動モード・ロックする工程をさらに含む実施形態(79)の方法。
(81)第3の固有波長にある第1のパルス列を生成するために、第1のパルスレーザからのパルスを周波数2倍化する工程と、第4の固有波長にある第2のパルス列を生成するために、第2のパルスレーザからのパルスを周波数2倍化する工程とをさらに含む(80)又は(81)の方法。
(82)生物分析機器において試料中の少なくとも2つの蛍光色素分子を、第1のパルス列及び第2のパルス列のパルスによって励起する工程と、蛍光寿命に基づいて少なくとも2つの蛍光色素分子を区別する工程とをさらに含む(81)の方法。
(83)第1の繰り返し数において第1の固有波長を有するパルスを生成するように構成されている第1のレーザキャビティを有する第1のモードロックレーザと、連続波放射を生成するように構成されている第2のレーザキャビティを有する第2のレーザと、第2のレーザキャビティ内の非線形光学素子と、第1のモードロックレーザからの出力を非線形光学素子へと方向付ける光学素子とを備えるパルスレーザ・システム。
(84)試料を保持し、第2の固有波長にある第2のレーザからの出力を試料上へと方向付けるように構成されている生物分析機器をさらに備える構成(83)のパルスレーザ・システム。
(85)第2の固有波長は、500nmと700nmとの間である(84)のシステム。
(86)生物分析機器は、試料からの発光を検出し、蛍光寿命に基づいて2つ以上の蛍光色素分子を区別するように構成されている(84)又は(85)のシステム。
(87)第1のモードロックレーザ及び第2のレーザが取り付けられる基部構造と、第1のレーザキャビティの光路長を、基部構造の任意の横方向寸法よりも大きい長さまで延長する、第1のモードロックレーザ内に位置する光学遅延要素とをさらに備える(83)乃至(86)のいずれかのパルスレーザ・システム。
(88)光学遅延要素は、2つのミラーを備え、2つのミラーは、キャビティ内レーザビームを、光学遅延要素を1回通過するときに2つのミラーの間を3回以上反射させるように構成されている(87)のパルスレーザ・システム。
(89)光学遅延要素は、キャビティ内レーザビームが、光学遅延要素を1回通過するときに3回以上反射される、中実光学材料ブロックを備える(87)のパルスレーザ・システム。
(90)光学遅延要素は、一定の長さの光ファイバを含む(87)のパルスレーザ・システム。
(91)第1のモードロックレーザ及び第2のレーザが取り付けられる基部構造と、基部構造内のプラットフォーム上に取り付けられており、第1のモードロックレーザ内の利得媒体を励起するように構成されているダイオード・ポンプ・ソースとをさらに備え、ダイオード・ポンプ・ソースは、約450nmと約1100nmとの間のポンプ放射を与える(83)乃至(86)のいずれかのパルスレーザ・システム。
(92)プラットフォームは、基部構造を通じて延在する1つ又は複数のトレンチによって基部構造から部分的に分離されている、基部構造のエリアを含む(91)のパルスレーザ・システム。
(93)プラットフォームを基部構造に接続する曲げ部材をさらに備える(91)のパルスレーザ・システム。
(94)第1のレーザキャビティのキャビティ内レーザビームを反射するように構成されている可飽和吸収体ミラーと、レーザキャビティの端部に位置する出力カプラとをさらに備える(83)乃至(90)のいずれかのパルスレーザ・システム。
(95)基部構造内に取り付けられている波長変換要素をさらに含み、波長変換要素は、レージング波長を、第1のモードロックレーザから周波数2倍化出力波長へと変換する(83)乃至(94)のいずれかのパルスレーザ・システム。
(96)出力波長は約500nmと約700nmとの間であり、出力パルス持続時間は、約100ピコ秒未満である(95)のパルスレーザ・システム。
(97)基部構造は、レーザキャビティが配置されるキャビティを備え、基部構造の端部寸法は、約200mm以下であり、高さ寸法は、約60mm以下である(95)のパルスレーザ・システム。
(98)第1のモードロックレーザは約1064nmにおいてレージングするように構成されており、第2のレーザは、約1342nmにおいてレージングするように構成されている(83)乃至(97)のいずれかのパルスレーザ・システム。
(99)非線形光学素子は、和周波数発生によって約594nmの波長にあるパルスを発生させるために、第2のレーザキャビティ内で位置合わせされる(98)のパルスレーザ・システム。
(100)第1の固有波長において、第1のレーザキャビティを有する第1のモードロックレーザ内で光パルスを生成する工程と、第2の固有波長において、連続波モードにおいて第2のレーザキャビティを有する第2のレーザを動作させる工程と、第1のモードロックレーザからのパルスを、第2のレーザキャビティ内の非線形光学素子に注入する工程と、和周波発生によって、第3の固有波長において非線形光学素子内で光パルスを発生させる工程とを備える複数の固有波長にある光パルスを生成する方法。
(101)第1のモードロックレーザと第2のレーザの両方において同じ利得媒体が使用される実施形態(100)の方法。
(102)各レーザ内の利得媒体をダイオード・ポンピングする工程をさらに含む(1
01)の方法。
(103)利得媒体はNd:YVO4である(101)又は(102)の方法。
(104)試料を保持し、光パルスを試料上へと方向付けるように構成されている生物分析機器に、第2のレーザからの光パルスを与える工程をさらに含む(100)乃至(103)のいずれか1つの方法。
(105)第3の固有波長は、500nmと700nmとの間である(100)乃至(104)のいずれか1つの方法。
(106)生物分析機器によって、試料からの発光を検出する工程と、蛍光寿命に基づいて2つ以上の蛍光色素分子を区別する工程とをさらに含む(104)又は(105)の方法。
(107)第1のモードロックレーザからの光パルスからクロック信号を導出する工程と、生物分析機器にクロック信号を与える工程とをさらに含む(104)乃至(106)のいずれかの方法。
(108)第1のモードロックレーザにおいて光パルスを生成する工程は、第1のモードロックレーザを受動モード・ロックする工程を含む(100)乃至(107)のいずれか1つの方法。
(109)第1の固有波長は約1064nmであり、第2の固有波長は約1342nmであり、第3の固有波長は約594nmである(100)乃至(108)のいずれか1つの方法。
(110)第1のモードロックレーザからの光パルスを周波数2倍化する工程をさらに含む(100)乃至(109)のいずれか1つの方法。
(111)基部構造と、基部構造内に取り付けられているダイオード・ポンプ・ソースと、利得媒体を含み、光パルスを生成するように構成されている、基部構造内のレーザキャビティとを備えるパルスレーザであって、ダイオード・ポンプ・ソース及び利得媒体は各々、基部構造から部分的に、熱的に及び機械的に分離されているプラットフォーム上に取り付けられている、パルスレーザ。
(112)レーザキャビティの光路長を、基部構造の横方向寸法よりも大きい長さまで延長する、パルスレーザキャビティ内に位置する光学遅延要素をさらに備える構成(111)のパルスレーザ。
(113)光学遅延要素は、2つのミラーを備え、2つのミラーは、キャビティ内レーザビームを、2つのミラーの間を複数回反射させるように構成されている(112)のパルスレーザ。
(114)光学遅延要素は、キャビティ内レーザビームが複数回反射される、中実光学材料ブロックを備える(112)のパルスレーザ。
(115)光学遅延要素は、一定の長さの光ファイバを含む(112)のパルスレーザ。
(116)ダイオード・ポンプ・ソースは、約450nmと約1100nmとの間のポンプ放射を与える(111)乃至(115)のいずれか1つのパルスレーザ。
(117)ダイオード・ポンプ・ソースからのビームを再成形するように構成されている一対の交差した円柱レンズをさらに備える(111)乃至(116)のいずれか1つの
パルスレーザ。
(118)基部構造内にあり、キャビティ内レーザビームを反射するように構成されている可飽和吸収体ミラーと、レーザキャビティの端部に位置する出力カプラとをさらに備える(111)乃至(117)のいずれか1つのパルスレーザ。
(119)基部構造内に取り付けられている波長変換要素をさらに含み、波長変換要素は、レージング波長を、利得媒体から出力波長へと変換する(111)乃至(118)のいずれか1つのパルスレーザ。
(120)出力波長は約500nmと約700nmとの間であり、出力パルス持続時間は、約10ピコ秒未満である(119)のパルスレーザ。
(121)試料を保持し、出力波長にあるパルスレーザからの出力を試料上へと方向付けるように構成されている生物分析機器をさらに備える(111)乃至(120)のいずれか1つのパルスレーザ。
(122)生物分析機器は、試料からの発光を検出し、蛍光寿命に基づいて2つ以上の蛍光色素分子を区別するように構成されている(121)のパルスレーザ。
(123)基部構造は、レーザキャビティが配置されるキャビティを備え、基部構造の端部寸法は、約200mm以下であり、高さ寸法は、約60mm以下である(119)乃至(122)のいずれか1つのパルスレーザ。
(124)プラットフォームは、基部構造を通じて延在する1つ又は複数のトレンチによって基部構造から部分的に分離されている、基部構造のエリアを含む(111)乃至(123)のいずれか1つのパルスレーザ。
(125)プラットフォームを基部構造に接続する曲げ部材をさらに備える(124)のパルスレーザ。
(126)基部構造はアルミニウムを含む(111)乃至(124)のいずれか1つのパルスレーザ。
(127)パルスレーザキャビティは、2つの波長におけるレージングを支持する利得媒体を含み、可飽和吸収体ミラーは、2つの波長における可飽和吸収を可能にする(111)乃至(126)のいずれか1つのパルスレーザ。
(128)第1のレージング波長は約1064nmであり、第2のレージング波長は約1342nmである(127)のパルスレーザ。
(129)可飽和吸収体ミラーは、反射器と、反射器から第1の距離だけ離間されており、第1のエネルギーバンドギャップを有する第1の多重量子井戸構造と、反射器から第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離間されており、第2のエネルギーバンドギャップを有する第2の多重量子井戸構造とを備える(127)又は(128)のパルスレーザ。
(130)第2のエネルギーバンドギャップは第1のエネルギーバンドギャップよりも大きい(129)のパルスレーザ。
(131)利得媒体内の最小ビーム・ウェストと、可飽和吸収体ミラー上の集束ビーム・ウェストとの比は、約4:1と約1:2との間である(1)乃至(20)のいずれか1つのモードロックレーザ。
(132)利得媒体内のビーム半径は、20マイクロメートル(20ミクロン)と200マイクロメートル(200ミクロン)との間である(1)乃至(20)及び(131)
のいずれか1つのモードロックレーザ。
VI.結論
このように、パルスレーザのいくつかの実施形態のいくつかの態様を説明したが、様々な変更、修正、及び改善が当業者には容易に想到されることが諒解されるべきである。そのような変更、修正、及び改善はこの開示の1部であるように意図されており、本発明の精神及び範囲内にあることが意図されている。本教示を様々な実施形態及び例に関連して説明したが、本教示がこのような実施形態又は例に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者には諒解されるであろう様々な代替形態、修正、及び均等物を包含する。
例えば、実施形態は、レーザキャビティ内に、上述したよりも多くの又は少ない光学構成要素を含むように修正されてもよい。その上、レーザキャビティ構成は、図示されているものとは異なってもよく、いくつかのレーザキャビティは、光路内でより多い又はより少ない旋回又は折り返しを有してもよい。
様々な発明の実施形態が説明及び図示されてきたが、当業者は、その機能を実施し、かつ/又は、それらの結果及び/又は説明されている利点の1つもしくは複数を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定し、そのような変形及び/又は修正の各々は、説明されている本発明の実施形態の範囲内にあると考えられる。より一般的には、当業者は、説明されているすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例であるように意図されていること、ならびに、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される特定の1つ又は複数の用途に応じて決まることを容易に諒解するであろう。当業者は、日常の実験のみを使用して、説明されている特定の発明の実施形態に対する多くの均等物を認識することになり、又は、それを究明することが可能になる。それゆえ、上記の実施形態は例としてのみ提示されていること、ならびに、添付の特許請求項及びその均等物の範囲内で、発明の実施形態は、具体的に説明及び特許請求されているのとは他の様態で実践されてもよいことが理解されるべきである。本開示の発明の実施形態は、説明されている各個々の特徴、システム、システム・アップグレード、及び/又は方法を対象とし得る。加えて、そのような特徴、システム、システム・アップグレード、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、及び/又は方法の任意の組み合わせが、本開示の発明の範囲内に含まれる。
さらに、本発明のいくつかの利点が示され得るが、本発明のすべての実施形態がすべての説明されている利点を含むとは限らないことは諒解されるべきである。いくつかの実施形態は、有利であるとして説明されている任意の特徴を実装しなくてもよい。したがって、上記の説明及び図面は例示のみを目的としたものである。
限定ではないが、特許、特許出願、論説、著書、論文、及びウェブ・ページを含む、この出願において引用されているすべての文献及び同様の資料は、そのような文献及び同様の資料の形式にかかわらず、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。組み込まれている文献及び同様の資料のうちの1つ又は複数が、限定ではないが、定義されている用語、用語の用法、説明されている技法などを含め、この出願と異なるか、又は、相反する場合、この出願が優先する。
使用されている節の見出しは、構成のみを目的としており、決して説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
また、説明されている技術は、そのうち少なくとも1つの例が設けられている方法として具現化され得る。方法の1部分として実施される動作は、任意の適切な様式で順序付けられてもよい。したがって、動作が示されているものとは異なる順序で実施され、たとえ例示的な実施形態においては順次の動作として示されていたとしても、いくつかの動作を
同時に実施することを含んでもよい実施形態が構築されてもよい。
定義及び使用されているものとしてのすべての定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれている文書における定義、及び/又は、定義されている用語の通常の意味に優先するものとして理解されるべきである。
数値及び範囲は、本明細書及び特許請求の範囲において、近似する又は正確な値又は範囲として記載されている場合がある。例えば、いくつかの事例において、「約(about)」、「おおよそ(approximately)」、及び「実質的に(substantially)」という用語が、値を参照して使用されている場合がある。そのような参照は、参照されている値、ならびに、その値に妥当な変動が加わった値及び差し引かれた値を包含するように意図されている。例えば、「約10と約20との間」という語句は、いくつかの実施形態における「正確に10と正確に20との間」、及び、いくつかの実施形態における「10+δ1と20+δ2との間」を意味するように意図されている。値の変動δ1、δ2の量は、いくつかの実施形態においては値の5%未満であってもよく、いくつかの実施形態においては値の10%未満であってもよく、さらに、いくつかの実施形態においては値の20%未満であってもよい。例えば、2桁以上を含む範囲のような、値の大きい範囲が与えられている実施形態では、値の変動δ1、δ2の量は、50%程度と高くなり得る。例えば、動作可能範囲が2から200まで延在する場合、「約80」は、40と120との間の値を包含してもよく、範囲は、1と300との間と大きくなってもよい。正確な値が意図される場合、例えば、「正確に2と正確に200との間」のように、「正確に」という用語が使用される。
「隣接する」という用語は、2つの要素が互いに近接近して(例えば、2つの要素のうちの大きい方の横方向寸法又は垂直方向寸法の約5分の1未満の距離内に)配置されることを指し得る。いくつかの事例において、隣接する要素の間には、介在する構造又は層があってもよい。いくつかの事例において、隣接する要素は、介在する構造又は要素なしに互いに直に隣接してもよい。
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているものとしては、明確に逆に指示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味するように理解されるべきである。
「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているものとしては、そのように結合されている要素、すなわち、いくつかの事例では結合して存在し、他の事例では分離して存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されるべきである。「及び/又は」を用いてリストされている複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合されている要素の「1つ又は複数」として解釈されるべきである。「及び/又は」条項によって具体的に識別されている要素以外の他の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定例として、「備える(comprising)」のような限定しない文言とともに使用されているとき、「A及び/又はB」に対する参照は、1実施形態においてはAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態においてはBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を指し、また別の実施形態においてはAとBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を指し得る、などであり得る。
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものとしては、「又は」は、上記で定義されているような「及び/又は」と同じ意味を有するものとして理解されるべきである。例えば、リスト内で項目を分離しているとき、「又は」又は「及び/又は」は、包含的
である、すなわち、複数の要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上をも含み、また任意選択的に追加のリストされていない項目も含むものとして解釈されるべきである。「〜のうちの1つのみ」もしくは「〜のうちの正確に1つ」、又は、特許請求の範囲において使用されるとき、「〜からなる」のように、明確に逆に指示されている用語だけは、複数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般的に、使用されているような「又は」という用語は、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」又は「〜のうちの正確に1つ」のような、排他性の用語が先行するときは、排他的な選択肢(すなわち「1方又は他方であり、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。「基本的に〜からなる」は、特許請求の範囲において使用されるとき、特許法の分野において使用されるものとしての、その通常の意味を有するべきである。
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものとしては、1つ又は複数の要素のリストを参照する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素のうちのいずれか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものとして理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的にリストされているあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内で具体的に識別されている要素以外の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも可能にする。したがって、非限定例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、もしくは、同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1実施形態においては、Bが存在せず、2つ以上のAを任意選択的に含む少なくとも1つのAを指し(また、任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aが存在せず、2つ以上のBを任意選択的に含む少なくとも1つのBを指し(また、任意選択的にA以外の要素を含む)、また別の実施形態では、任意選択的に2つ以上のAを含む少なくとも1つのA、及び、任意選択的に2つ以上のBを含む少なくとも1つのBを指し得る(また、任意選択的に他の要素を含む)、などである。
特許請求の範囲において、及び、上記の本明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「〜から構成される」などのようなすべての移行句は、限定しないものである、すなわち、含むが、それに限定されないことを意味するものとして理解されるべきである。「〜からなる」及び「基本的に〜からなる」という移行句のみが、それぞれ限定的な又は半限定的な移行句であるべきである。
特許請求の範囲は、その旨述べられていない限り、記載されている順序又は要素に限定されるものとして読み取られるべきではない。添付の特許請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって、形態及び詳細に様々な変更を行うことができることが理解されるべきである。以下の特許請求項の及びその均等物の精神及び範囲内に入るすべての実施形態が特許請求される。