(本開示の基礎となった知見)
本発明者らは、特許文献1に記載された燃料電池システムから水位検知器を省略することが可能かどうか検討した。その結果、図4に示す構造を考え出した。
図4に示すように、アノードオフガスは、アノードオフガス経路304を通じて、燃料電池302からバーナ308へと送られる。アノードオフガス経路304から凝縮水経路310が分岐している。凝縮水経路310は、排水トラップ(水封構造)を形成している。排水トラップによって、アノードオフガスがシステムの外部に排出されることを防止できる。凝縮水経路310には排水弁312が配置されている。通常の運転時において、排水弁312は開いている。アノードオフガスに含まれた凝縮水が凝縮水経路310に集められる。凝縮水経路310に貯められた凝縮水の水位が排水トラップによって規定された水位hを超えると、凝縮水は、凝縮水経路310から溢れてシステムの外部へと排出される。この構成によれば、排水弁312を頻繁に開閉する必要もないし、水位検知器も必須ではないし、凝縮水タンクも必須ではない。
ただし、本発明者らは、凝縮水経路310における凝縮水の水位が常に一定ではなく、変動する可能性があることに気が付いた。
アノードオフガスは、バーナ308に供給され、バーナ308で燃やされる。バーナ308には、空気供給経路314を通じて、空気供給器316から空気が供給される。例えば、改質器306の内部の温度が上がりすぎたとき、又は、COセンサの感度の検査を行うとき、空気供給器316からバーナ308に供給される空気の流量が一時的に増やされる。バーナ308に供給される空気の流量が増えると、バーナ308よりも下流側の経路の圧力が上昇し、それに伴いアノードオフガス経路304の内部の圧力が上昇する。その結果、凝縮水経路310における凝縮水の水位が押し下げられる。水位が下がりすぎると、アノードオフガスが排水トラップを突破して大気中に排出される可能性がある。水位が下がったとしても排水トラップが突破されることを防止するために、凝縮水経路310の高さを増やすことが考えられる。また、アノードオフガス経路304の内部の圧力が上昇しすぎないように、例えば、アノードオフガス経路304の配管を太くして圧力損失を低減することが考えられる。しかし、凝縮水経路310の高さの増加及びアノードオフガス経路304の配管の直径の増大は、システムの寸法の拡大及びコストの増加に直結する。
上記の知見に基づき、本発明者らは、本開示の燃料電池システムを想到するに至った。
本開示の第1態様にかかる燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池に供給されるべき水素ガスを生成する改質器と、
前記改質器を加熱するバーナと、
前記燃料電池と前記バーナとを接続しており、前記燃料電池から排出されたアノードオフガスを前記バーナに供給するためのアノードオフガス経路と、
前記バーナに空気を供給する空気供給器と、
前記アノードオフガス経路から分岐して下方に延び、前記アノードオフガスから生じた凝縮水を貯留し、前記凝縮水の水位が閾値水位を上回ったとき前記凝縮水が外部へと排出されるように構成された凝縮水経路と、
前記凝縮水経路に配置された排水弁と、
前記空気供給器から前記バーナへの空気の供給流量を閾値流量以上の流量に増加させる必要があるときに前記排水弁を閉じるように制御する、及び/又は、前記アノードオフガス経路の内部の圧力が閾値圧力を超えた場合若しくは前記アノードオフガス経路の内部の圧力の上昇を伴う変化が検出された場合に前記排水弁を閉じるように制御する制御器と、
を備えたものである。
排水弁を閉じると、凝縮水経路が排水弁の前後で分断されるので、アノードオフガスが凝縮水経路を突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。凝縮水経路の高さを大幅に増加させたり、アノードオフガス経路の配管を太くしたりする必要もない。したがって、本態様は、燃料電池システムの寸法及びコストの面で有利である。フロートセンサなどの水位センサを使用する必要が無いので、燃料電池システムを簡素化できるとともに、燃料電池システムの信頼性も高まる。
本開示の第2態様において、例えば、第1態様にかかる燃料電池システムは、前記アノードオフガス経路に配置された圧力センサをさらに備え、前記制御器は、前記圧力センサの検出値が前記閾値圧力を超えた場合に前記排水弁を閉じるように制御する。第2態様によれば、アノードオフガスが凝縮水経路を突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。
本開示の第3態様において、例えば、第1態様にかかる燃料電池システムは、前記空気供給器と前記バーナとを接続している空気供給経路と、前記空気供給経路に配置された流量計と、をさらに備え、前記アノードオフガス経路の内部の圧力の上昇を伴う前記変化は、前記流量計の検出値が閾値流量を超えることであり、前記制御器は、前記流量計の検出値が前記閾値流量を超えた場合に前記排水弁を閉じるように制御する。第3態様によれば、アノードオフガスが凝縮水経路を突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。
本開示の第4態様において、例えば、第1態様にかかる燃料電池システムは、前記空気供給器と前記バーナとを接続している空気供給経路と、前記空気供給経路に配置された圧力センサと、をさらに備え、前記アノードオフガス経路の内部の圧力の上昇を伴う前記変化は、前記圧力センサの検出値が閾値空気圧力を超えることであり、前記制御器は、前記圧力センサの検出値が前記閾値空気圧力を超えた場合に前記排水弁を閉じるように制御する。第4態様によれば、アノードオフガスが凝縮水経路を突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。
本開示の第5態様において、例えば、第1態様にかかる燃料電池システムは、前記空気供給器と前記バーナとを接続している空気供給経路をさらに備え、前記アノードオフガス経路の内部の圧力の上昇を伴う前記変化は、前記空気供給器の操作量が閾値操作量を超えることであり、前記制御器は、前記空気供給器の操作量が前記閾値操作量を超えた場合に前記排水弁を閉じるように制御する。第5態様によれば、アノードオフガスが凝縮水経路を突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。
本開示の第6態様において、例えば、第1〜第5態様のいずれか1つにかかる燃料電池システムの前記排水弁は、前記閾値水位よりも下に位置している。第8態様によれば、排水弁を安定して動作させることができるとともに、排水弁の入口からアノードオフガス経路と凝縮水経路との間の分岐位置までの距離を十分に確保することができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
図1に示すように、本開示の一実施形態にかかる燃料電池システム100は、改質器11及び燃料電池13を備えている。改質器11は、例えば、水蒸気改質反応(CH4+H2O→CO+3H2)などの改質反応によって水素ガスを生成するための機器である。改質器11には、改質反応を進行させるための改質触媒が収められている。改質器11には、一酸化炭素を除去するための触媒(CO変成触媒及びCO選択酸化除去触媒)も収められている。改質器11は、水及び原料ガスを用いて、水素ガスを生成する。原料ガスは、例えば、都市ガス、LPガス(液化石油ガス)などの炭化水素ガスである。改質器11で生成された水素ガスが燃料電池13に供給される。燃料電池13は、酸化剤ガスと水素ガスとを用いて電力を生成する。燃料電池13は、例えば、固体高分子形燃料電池又は固体酸化物形燃料電池である。燃料電池13の排熱によって湯が生成される。生成された湯は貯湯タンク(図示省略)に貯められる。
改質器11には、温度センサ40が取り付けられている。温度センサ40は、改質器11の内部の温度を検出する。改質器11の内部の温度は、例えば、触媒の温度又は触媒層の出口温度である。改質器11の複数の位置のそれぞれに温度センサ40が取り付けられていてもよい。温度センサ40としては、サーミスタ、熱電対及び測温抵抗体が挙げられる。
燃料電池システム100は、さらに、バーナ15、排気経路17及びCOセンサ19を備えている。バーナ15は、燃料を燃焼させることによって改質器11を加熱するためのデバイスである。バーナ15は、改質器11に隣接している。バーナ15は、改質器11の内部に配置されていてもよい。排気経路17は、バーナ15に接続されている。排気経路17は、バーナ15で生じた燃焼排ガスの流路である。排気経路17は、例えば、燃料電池システム100の筐体の外部まで延びている。COセンサ19は、排気経路17に配置されている。COセンサ19は、燃焼排ガス中のCO濃度を検出する役割を担っている。COセンサ19は、例えば、接触燃焼式のCOセンサ又は半導体式のCOセンサである。バーナ15とCOセンサ19との間において、排気経路17には、排ガス熱交換器26が配置されている。燃焼排ガスは、排ガス熱交換器26において冷却されたのち、COセンサ19を通過する。排ガス熱交換器26として、プレート式熱交換器又は多管式熱交換器が使用されうる。
バーナ15には、空気供給経路34が接続されている。空気供給経路34は、バーナ15に空気を供給するための流路である。空気供給経路34には、流量計35及び空気供給器36が設けられている。流量計35によって空気供給経路34における空気の供給流量(単位:リットル/min)が検出される。空気供給器36によってバーナ15に空気が供給される。流量計35として、電磁式流量計、カルマン渦式流量計、羽根車式流量計、超音波式流量計などの公知の流量計が使用されうる。空気供給器36の例には、ファン及びブロワが含まれる。空気供給器36は、空気の供給流量を変更可能な供給器でありうる。流量計35及び空気供給器36を使用すれば、バーナ15への空気の供給流量を所望の供給流量に調節することができる。
空気供給経路34には、圧力センサ37(空気圧力センサ)が配置されていてもよい。圧力センサ37は、空気供給経路34の内部の圧力を検出する。空気供給経路34の内部の圧力には、空気供給経路34における空気の供給流量が反映される。そのため、圧力センサ37の検出値から空気の供給流量を推測することが可能である。例えば、空気供給経路34の内部の圧力と空気供給経路34における空気の供給流量との関係を予め実験的に調べる。得られた結果から参照テーブルを作成すれば、空気供給経路34の内部の圧力から空気供給経路34における空気の供給流量を特定することができる。参照テーブルは、後述する制御器32に記憶される。つまり、流量計35の代わりに圧力センサ37を用いることができる。
燃料電池システム100は、さらに、燃料ガス供給経路12、酸化剤ガス供給経路14、アノードオフガス経路16及びカソードオフガス経路18を備えている。
燃料ガス供給経路12は、改質器11から燃料電池13のアノードに水素ガス(水素含有ガス)を供給するための流路である。燃料ガス供給経路12は、改質器11と燃料電池13とを接続している。酸化剤ガス供給経路14は、燃料電池13のカソードに酸化剤ガスとしての空気を供給するための流路である。酸化剤ガス供給経路14の一端は空気取り入れ口であり、例えば、燃料電池システム100の筐体(図示省略)の内部に開口している。酸化剤ガス供給経路14の他端は燃料電池13のカソードに接続されている。酸化剤ガス供給経路14には、空気供給器23が設けられている。空気供給器23は、燃料電池13に空気を供給するためのデバイスである。空気供給器23の例として、ファン、ブロワなどが挙げられる。空気供給器23は、空気の供給流量を変更可能な供給器でありうる。空気供給器23を制御することによって、酸化剤ガス供給経路14における空気の供給流量を調節することができる。酸化剤ガス供給経路14には、加湿器、弁などの他の機器が配置されていてもよい。
アノードオフガス経路16は、燃料電池13のアノードから排出されたアノードオフガスをバーナ15に供給するための流路である。アノードオフガスは、未反応の水素ガス及び未反応の原料ガスを含む可燃性ガスである。アノードオフガス経路16は、燃料電池13のアノードとバーナ15とを接続している。アノードオフガス経路16を通じて、アノードオフガスが燃料電池13からバーナ15に供給される。アノードオフガスは、バーナ15で燃やされる。これにより、アノードオフガスが未処理のまま大気中に排出されることを防止できる。カソードオフガス経路18は、燃料電池13のカソードから排出された未反応の酸化剤ガス(カソードオフガス)を燃料電池システム100の外部へと導くための流路である。カソードオフガス経路18は、燃料電池13のカソードに接続されており、例えば、燃料電池システム100の筐体の外部まで延びている。カソードオフガス経路18は、COセンサ19の上流側又は下流側において、排気経路17に接続されていてもよい。
アノードオフガス経路16には、熱交換器22が設けられている。熱交換器22は、アノードオフガスを冷却し、アノードオフガスに含まれた水蒸気を凝縮させる。熱交換器22として、プレート式熱交換器又は多管式熱交換器が使用されうる。
燃料電池システム100は、さらに、凝縮水経路20及び排水弁21を備えている。凝縮水経路20は、アノードオフガス経路16から分岐している経路であって、下方に向かって延びている。詳細には、凝縮水経路20は、アノードオフガス経路16と凝縮水経路20との分岐位置Kから重力方向の下方に向かって延びている。分岐位置Kは、アノードオフガス経路16において、熱交換器22とバーナ15との間に存在する。アノードオフガスから生じた凝縮水が凝縮水経路20に集められる。
本実施形態において、凝縮水経路20は、第1部分20a及び第2部分20bを含む。第1部分20aは、アノードオフガス経路16に接続された部分であり、例えば、直線状の形状を有する。第2部分20bは、凝縮水が貯められる部分であり、例えば、U字状の形状を有する。第2部分20bは、燃料電池システム100の外部に連通している端部2eを含む。端部2eは、重力方向において、凝縮水経路20の最も下の位置Lと分岐位置Kとの間に位置している。第2部分20bの端部2eが燃料電池システム100の外部に連通しているので、凝縮水経路20に貯められた凝縮水には、アノードオフガス経路16の内部の圧力と大気圧とが加わる。第2部分20bは、端部2eの高さに応じて決まる閾値水位Hを規定している。凝縮水経路20における凝縮水の水位が閾値水位Hを上回ったとき、凝縮水は、凝縮水経路20の第2部分20bから溢れて燃料電池システム100の外部へと排出される。
本実施形態において、凝縮水経路20は、全体として、Pトラップと呼ばれる排水トラップを形成している。ただし、排水トラップの形状は、Pトラップに限定されない。Sトラップ、Uトラップなどの公知の形状の排水トラップが凝縮水経路20に適用されうる。
排水弁21は、凝縮水経路20に配置されている。排水弁21は、例えば、開閉弁である。排水弁21は、ノーマリーオープン型の開閉弁であってもよいし、ノーマリークローズ型の開閉弁であってもよい。燃料電池システム100の通常運転時において、排水弁21は、開いている。排水弁21が閉じられると、凝縮水は、凝縮水経路20において、分岐位置Kと排水弁21との間の部分に貯められる。燃料電池システム100の運転停止時において、排水弁21は開いていてもよいし、排水弁21は閉じられてもよい。本実施形態によれば、排水弁21を頻繁に開閉する必要が無い。
本実施形態において、排水弁21は、閾値水位Hよりも下に位置している。言い換えれば、排水弁21は、凝縮水経路20の第2部分20bに配置されている。分岐位置Kに近い側における凝縮水の水位が閾値水位Hの近傍に存在するとき、排水弁21の内部は凝縮水で満たされている。そのため、排水弁21を安定して動作させることができる。また、排水弁21が閾値水位Hよりも下に位置している場合、排水弁21の入口から分岐位置Kまでの距離を十分に確保することができる。
本実施形態において、凝縮水経路20にタンクが設けられていない。ただし、凝縮水経路20にタンクが設けられていてもよい。そのようなタンクは、例えば、第2部分20bに配置されうる。タンクから溢れた凝縮水が燃料電池システム100の外部へと排出されうる。
燃料電池システム100は、さらに、圧力センサ24を備えている。圧力センサ24は、アノードオフガス経路16に配置されている。圧力センサ24は、アノードオフガスの流れ方向において、分岐位置Kよりも上流側に位置していてもよいし、分岐位置Kよりも下流側に位置していてもよい。圧力センサ24は、アノードオフガス経路16の内部の圧力を検出する。圧力センサ24として、歪ゲージ式圧力センサ、ピエゾ抵抗式圧力センサ、静電容量式圧力センサなどが使用されうる。
燃料電池システム100は、さらに、原料ガス供給経路27、原料供給器28、給水経路30及び水供給器31を備えている。原料ガス供給経路27は、原料の貯蔵タンク、都市ガスのインフラストラクチャなどの原料供給源(図示省略)から改質器11に原料ガスを供給するための流路である。原料ガス供給経路27に原料供給器28が設けられている。原料供給器28の例として、ポンプ、流量調整弁、それらの組み合わせなどが挙げられる。原料供給器28を制御することによって、原料ガスの供給流量を調節することができる。原料ガス供給経路27には、脱硫器、弁などの他の機器が配置されていてもよい。給水経路30は、貯水タンクなどの水源から改質器11に水を供給するための流路である。給水経路30に水供給器31が設けられている。水供給器31の例として、ポンプが挙げられる。水供給器31を制御することによって、水の供給流量を調節することができる。
燃料電池システム100は、さらに、制御器32を備えている。制御器32は、燃料電池13、排水弁21、空気供給器23、原料供給器28、水供給器31、空気供給器36、各種の補助機器などの制御対象を制御する。補助機器には、弁(開閉弁、切替弁及び流量調整弁を含む)、ポンプ、電気ヒータなどが含まれる。制御器32には、COセンサ19、圧力センサ24、流量計35、圧力センサ37及び温度センサ40から検出信号が入力される。検出信号から、排気経路17における燃焼排ガスのCO濃度、アノードオフガス経路16の内部の圧力、空気供給経路34における空気の供給流量、空気供給経路34の内部の圧力、及び、改質器11の内部の温度が特定される。制御器32として、A/D変換回路、入出力回路、演算回路、記憶装置などを含むDSP(Digital Signal Processor)を使用できる。制御器32には、燃料電池システム100を適切に運転するためのプログラムが格納されている。
燃料電池システム100において、各経路は、1又は複数の配管によって構成されうる。
次に、燃料電池システム100の運転について説明する。
燃料電池システム100を起動すべき旨の指示が入力された場合、制御器32は、空気供給器23、原料供給器28、水供給器31、空気供給器36、及び、各種の補助機器の制御を開始する。燃料電池システム100を起動すべき旨の指示は、例えば、運転開始スイッチがオンにされた場合に制御器32に入力される。改質器11が所定の温度に達し、水素ガスの流量が所定流量に達すると、制御器32は、燃料電池システム100の出力が徐々に上昇するように、空気供給器23、原料供給器28、水供給器31、空気供給器36、及び、各種の補助機器を制御する。燃料電池システム100の出力が定格出力に達すると、制御器32は、定格出力を維持するように、空気供給器23、原料供給器28、水供給器31、空気供給器36、及び、各種の補助機器を制御する。
燃料電池13で発電が始まると、燃料電池13のカソードからカソードオフガスが排出され、燃料電池13のアノードからアノードオフガスが排出される。カソードオフガスは、カソードオフガス経路18を通じて、燃料電池システム100の外部へと排出される。アノードオフガスは、アノードオフガス経路16を通じて、バーナ15に供給され、バーナ15で燃やされる。バーナ15には、空気供給経路34を通じて、空気供給器36から空気が供給される。
例えば、改質器11の内部の温度Tが上がりすぎたとき、空気供給器36からバーナ15に供給される空気の流量が一時的に増やされる。これにより、改質器11の内部の温度Tが低下する。空気の流量は、例えば、数分間にわたって増やされる。あるいは、空気の流量は、改質器11の内部の温度Tが閾値温度以下の温度に低下するまで、一時的に増やされる。例えば、定格運転時における空気の流量が10リットル/minであるとき、改質器11の内部の温度を下げるために、空気の流量が10リットル/minから30リットル/minに増やされる。あるいは、COセンサ19の感度を検査すべきとき、空気供給器36からバーナ15に供給される空気の流量が一時的に増やされる。
バーナ15に供給される空気の流量が増えると、バーナ15よりも下流側の経路の圧力が上昇する。具体的には、バーナ15、排ガス熱交換器26及び排気経路17の内部の圧力が上昇する。それに伴い、アノードオフガス経路16の内部の圧力が上昇する。その結果、凝縮水経路20における凝縮水の水位が押し下げられる。水位が下がりすぎると、アノードオフガスが凝縮水経路20の排水トラップを突破して大気中に排出される可能性がある。アノードオフガス経路16の内部の圧力が上昇したとしても凝縮水経路20の排水トラップが突破されることを防止するために、本実施形態では、排水弁21が一時的に閉じられる。このようにすれば、凝縮水経路20が排水弁21の前後で分断されるので、アノードオフガスは、凝縮水経路20の排水トラップを突破できない。
図2Aは、排水弁21を開閉するために制御器32が行う処理を示すフローチャートである。制御器32は、燃料電池システム100の起動後、図2Aに示す処理を所定の制御周期毎に実行する。
ステップS1において、圧力センサ24から検出信号を取得し、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pを検出する。ステップS2において、圧力センサ24の検出値である圧力Pが閾値圧力を超えたかどうかを判断する。圧力Pが閾値圧力を超えた場合、ステップS3において、排水弁21を閉じるように制御する。これにより、アノードオフガスが凝縮水経路20の排水トラップを突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。凝縮水経路20の高さを大幅に増加させたり、アノードオフガス経路16、排ガス熱交換器26又は排気経路17の配管を太くしたりする必要がないので、本実施形態は、燃料電池システム100の寸法及びコストの面で有利である。
圧力Pが閾値圧力以下である場合、ステップS4において、排水弁21を開くように制御する。これにより、凝縮水の水位が分岐位置Kまで上昇してアノードオフガス経路16が凝縮水で閉塞することを防止できる。
閾値圧力は、例えば、燃料電池システム100の設計に応じて実験的に決められる。閾値圧力は、安全をみて、凝縮水経路20の排水トラップが突破されると推測される圧力よりも少し低い圧力に設定されうる。
図2Aに示す例によれば、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pが直接的に検出され、検出された圧力Pに基づいて排水弁21の開閉が制御される。ただし、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇は、他のパラメータから間接的に検出することも可能である。つまり、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇を伴う変化が検出された場合に排水弁21を閉じるように制御してもよい。
図2B〜2Dは、排水弁21を開閉するために制御器32が行う別の処理を示すフローチャートである。
図2Bのフローチャートにおいて、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇を伴う変化は、流量計35の検出値が閾値流量を超えることである。ステップS11において、流量計35から検出信号を取得し、空気供給経路34における空気の供給流量Rを検出する。ステップS12において、流量計35の検出値である供給流量Rが閾値流量を超えたかどうかを判断する。供給流量Rが閾値流量を超えた場合、ステップS13において、排水弁21を閉じるように制御する。これにより、アノードオフガスが凝縮水経路20の排水トラップを突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。凝縮水経路20の高さを大幅に増加させたり、アノードオフガス経路16、排ガス熱交換器26又は排気経路17の配管を太くしたりする必要がないので、本実施形態は、燃料電池システム100の寸法及びコストの面で有利である。
供給流量Rが閾値流量以下である場合、ステップS14において、排水弁21を開くように制御する。これにより、凝縮水の水位が分岐位置Kまで上昇してアノードオフガス経路16が凝縮水で閉塞することを防止できる。
閾値流量は、例えば、燃料電池システム100の設計に応じて実験的に決められる。閾値流量は、安全をみて、凝縮水経路20の排水トラップが突破されると推測される流量よりも少し低い流量に設定されうる。例えば、空気の流量が10リットル/minから30リットル/minに増やされるとき、閾値流量は、10リットル/minと30リットル/minとの間の流量(例えば、25リットル/min)に設定されうる。
アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇は、空気供給経路34における空気の供給流量Rの増加に起因している。そのため、空気の供給流量Rに基づいて排水弁21の開閉を制御しても、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pを直接検出する場合と同じ結果が得られる。アノードオフガス経路16から圧力センサ24が省略されうる。
図2Cのフローチャートにおいて、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇を伴う変化は、圧力センサ37の検出値が閾値空気圧力を超えることである。ステップS21において、圧力センサ37から検出信号を取得し、空気供給経路34の内部の圧力Pairを検出する。ステップS22において、圧力センサ37の検出値である圧力Pairが閾値空気圧力を超えたかどうかを判断する。圧力Pairが閾値空気圧力を超えた場合、ステップS23において、排水弁21を閉じるように制御する。これにより、アノードオフガスが凝縮水経路20の排水トラップを突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。凝縮水経路20の高さを大幅に増加させたり、アノードオフガス経路16、排ガス熱交換器26又は排気経路17の配管を太くしたりする必要がないので、本実施形態は、燃料電池システム100の寸法及びコストの面で有利である。
圧力Pairが閾値空気圧力以下である場合、ステップS24において、排水弁21を開くように制御する。これにより、凝縮水の水位が分岐位置Kまで上昇してアノードオフガス経路16が凝縮水で閉塞することを防止できる。
閾値空気圧力は、例えば、燃料電池システム100の設計に応じて実験的に決められる。閾値空気圧力は、安全をみて、凝縮水経路20の排水トラップが突破されると推測される圧力よりも少し低い圧力に設定されうる。
アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇は、空気供給経路34における空気の供給流量Rの増加に起因している。空気供給経路34における空気の供給流量Rは、空気供給経路34の内部の圧力Pairに密接に関連している。そのため、空気供給経路34の内部の圧力Pairに基づいて排水弁21の開閉を制御しても、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pを直接検出する場合と同じ結果が得られる。アノードオフガス経路16から圧力センサ24が省略されうる。
図2Dのフローチャートにおいて、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇を伴う変化は、空気供給器36の操作量が閾値操作量を超えることである。ステップS31において、空気供給器36の操作量Mを取得する。操作量Mは、例えば、空気供給器36の回転数である。ステップS32において、空気供給器36の操作量Mが閾値操作量を超えたかどうかを判断する。操作量Mが閾値操作量を超えた場合、ステップS33において、排水弁21を閉じるように制御する。これにより、アノードオフガスが凝縮水経路20の排水トラップを突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。凝縮水経路20の高さを大幅に増加させたり、アノードオフガス経路16、排ガス熱交換器26又は排気経路17の配管を太くしたりする必要がないので、本実施形態は、燃料電池システム100の寸法及びコストの面で有利である。
操作量Mが閾値操作量以下である場合、ステップS34において、排水弁21を開くように制御する。これにより、凝縮水の水位が分岐位置Kまで上昇してアノードオフガス経路16が凝縮水で閉塞することを防止できる。
閾値操作量は、例えば、燃料電池システム100の設計に応じて実験的に決められる。閾値操作量は、安全をみて、凝縮水経路20の排水トラップが突破されると推測される操作量よりも少し小さい操作量に設定されうる。
アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇は、空気供給経路34における空気の供給流量Rの増加に起因している。空気供給経路34における空気の供給流量Rは、空気供給器36の操作量Mに密接に関連している。例えば、操作量Mが回転数を表すとき、操作量Mが増加するにつれて、空気の供給流量Rも増加する。そのため、空気供給器36の操作量Mに基づいて排水弁21の開閉を制御しても、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pを直接検出する場合と同じ結果が得られる。アノードオフガス経路16から圧力センサ24が省略されうる。
図2A〜2Dのフローチャートによれば、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pが閾値圧力を超えた場合若しくはアノードオフガス経路16の内部の圧力の上昇を伴う変化が検出された場合に排水弁21が閉じられる。つまり、排水弁21を開閉するための制御が受動的に行われる。他方、以下に説明する図2E及び図2Fのフローチャートによれば、空気供給器36からバーナ15への空気の供給流量を閾値流量以上の流量に増加させる必要があるときに排水弁21が予め閉じられる。つまり、排水弁21を開閉するための制御が能動的に行われる。アノードオフガス経路16の内部の圧力が実際に上昇したかどうかは問わない。いずれの方法によっても、凝縮水経路20が排水弁21の前後で分断されるので、アノードオフガスが凝縮水経路20の排水トラップを突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。凝縮水経路20の高さを大幅に増加させたり、アノードオフガス経路16、排ガス熱交換器26又は排気経路17の配管を太くしたりする必要がないので、本実施形態は、燃料電池システム100の寸法及びコストの面で有利である。フロートセンサなどの水位センサを使用する必要が無いので、燃料電池システム100を簡素化できるとともに、燃料電池システム100の信頼性も高まる。
図2Eに示すように、ステップS41において、温度センサ40から検出信号を取得し、改質器11の内部の温度Tを検出する。ステップS42において、温度センサ40の検出値である温度Tが閾値温度を超えたかどうかを判断する。温度Tが閾値温度を超えた場合、空気供給器36からバーナ15への空気の供給流量を閾値流量以上の流量に増加させる必要があるものと判断する。ステップS43において、空気供給器36を制御して、空気供給経路34における空気の供給流量を閾値流量以上の流量まで増加させる。これにより、改質器11の温度が上がりすぎることを防止できる。
さらに、ステップS44において、排水弁21を閉じるように制御する。これにより、アノードオフガスが凝縮水経路20の排水トラップを突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。凝縮水経路20の高さを大幅に増加させたり、アノードオフガス経路16、排ガス熱交換器26又は排気経路17の配管を太くしたりする必要がないので、本実施形態は、燃料電池システム100の寸法及びコストの面で有利である。ステップS43の処理とステップS44の処理の順序は入れ替わってもよい。
改質器11の内部の温度Tが閾値温度以下である場合、ステップS45において、排水弁21を開くように制御する。これにより、凝縮水の水位が分岐位置Kまで上昇してアノードオフガス経路16が凝縮水で閉塞することを防止できる。
閾値温度は、例えば、改質器11に収められた改質触媒の劣化を回避できる温度に設定されうる。閾値流量は、例えば、改質器11の内部の温度を速やかに下げるために必要な流量である。
アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇は、空気供給経路34における空気の供給流量Rの増加に起因している。一例において、空気の供給流量Rは、改質器11の過昇温を防止するために増やされる。そのため、改質器11の温度Tに基づいて排水弁21の開閉を制御しても、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pを直接検出する場合と同じ結果が得られる。アノードオフガス経路16から圧力センサ24が省略されうる。
なお、図2Eのフローチャートにおいて、温度センサTの検出値が閾値温度を超えたとき、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pの上昇を伴う変化が起こったと判断することもできる。
空気供給器36からバーナ15に供給される空気の流量を増加させるための他の条件は、COセンサ19の感度を検査することである。COセンサ19の感度を検査するとき、空気供給器36からバーナ15に供給される空気の流量が増やされる。
図2Fに示すように、ステップS51において、COセンサ19の感度の検査中かどうかを判断する。COセンサ19の感度を検査中である場合、ステップS52において、排水弁21を閉じるように制御する。これにより、アノードオフガスが凝縮水経路20の排水トラップを突破して大気中に排出されることを確実に防止できる。凝縮水経路20の高さを大幅に増加させたり、アノードオフガス経路16、排ガス熱交換器26又は排気経路17の配管を太くしたりする必要がないので、本実施形態は、燃料電池システム100の寸法及びコストの面で有利である。
COセンサ19の感度の検査中でない場合、ステップS53において、排水弁21を開くように制御する。これにより、凝縮水の水位が分岐位置Kまで上昇してアノードオフガス経路16が凝縮水で閉塞することを防止できる。
COセンサ19の感度の検査は、例えば、所定期間に1回(例えば、24時間に1回)行われる。燃料電池システム100の発電中にCOセンサ19の感度の検査が行われてもよいし、燃料電池システム100の起動前にCOセンサ19の感度の検査が行われてもよい。COセンサ19の感度の検査を実行するタイミングは特に限定されない。
COセンサ19の感度の検査では、空気供給器36からバーナ15に閾値流量以上の流量で空気が供給される。したがって、COセンサ19の感度の検査を実行する必要があるとき、排水弁21が閉じるように制御される。
図2Fのフローチャートにおいて、ステップS51の処理は、COセンサ19の感度の検査を実行する時期が到来したかどうかを判断する処理であってもよい。つまり、COセンサ19の感度の検査が実際に始まる前(空気の供給流量が増やされる前)に排水弁21が閉じられてもよい。
制御器32は、COセンサ19の感度の検査として、例えば、図3に示す各処理を実行する。
図3に示すように、ステップST1において、空気供給器36を制御して、燃焼排ガス中のCO濃度が上昇するようにバーナ15における空気比を増加させる。空気比が増加するように空気供給器36を制御することによって、燃焼排ガス中のCO濃度が上昇する。ステップST1において、空気比(M2/M1)は、例えば、2〜5の範囲に調節される。このとき、燃焼排ガス中のCO濃度(体積濃度)は、例えば、50ppm〜6000ppmに達する。燃料電池システム100の発電中にCOセンサ19の検査が行われる場合、燃料電池13のアノードオフガスがバーナ15に供給される。燃料電池システム100の起動前にCOセンサ19の検査が行われる場合、原料ガスがバーナ15に供給される。
「空気比」とは、燃料を完全燃焼させるために必要な理論空気流量M1に対する実際の空気流量M2の比(M2/M1)を意味する。定格発電期間において、例えば、空気比が1.6となるように空気供給器36が制御される。このとき、燃焼排ガス中のCO濃度は、例えば、50ppm以下である。
次に、ステップST2において、制御器32は、COセンサ19から検出値を取得する。検出値は、COセンサ19によって検出されたCO濃度に対応する。ステップST3において、取得した検出値が閾値以下かどうかを判断する。閾値(閾値濃度)は、例えば、50ppm〜200ppmの範囲内で設定される。COセンサ19の検出値が閾値以下でないとき、つまり、検出値が閾値を越えているとき、一酸化炭素の発生が正しく検出されたことになるので、COセンサ19は正常である。COセンサ19の異常が発見されなかった場合、燃料電池システム100の運転が許可される(ステップST4)。
他方、COセンサ19の検出値が閾値以下であるとき、COセンサ19に異常があると判断する。つまり、COセンサ19の検出値が閾値を超えたとき、制御器32は、COセンサ19が正常であると判断し、COセンサ19の検出値が閾値を越えないとき、COセンサ19に異常があると判断する。この方法によれば、COセンサ19の異常の有無を正確に調べることができる。
COセンサ19に異常がある場合、ステップST5において、異常判定動作を実行する。異常判定動作として、燃料電池システム100を停止させてもよいし、COセンサ19に異常があることを外部に報知してもよい。検査が終了したら、空気比を元の値まで低下させる。つまり、バーナ15の空気比を1.6に戻してCO濃度を低下させる。これにより、燃料電池システム100の運転を継続することができる。COセンサ19の感度の検査の終了に応じて排水弁21が開放される(図2FのステップS51及びステップS53)。
図2Aに示すステップS2、図2Bに示すステップS12、図2Cに示すステップS22、図2Dに示すステップS32、図2Eに示すステップS42及び図2Fに示すステップS51から選ばれる2以上の条件が成立した場合に排水弁21が閉じられてもよい。例えば、空気供給器36の操作量Mが閾値操作量を超え、かつ、アノードオフガス経路16の内部の圧力Pが閾値圧力を超えた場合、排水弁21が閉じられてもよい。COセンサ19の感度の検査が始まり、流量計35の検出値が閾値流量を超えた場合、排水弁21が閉じられてもよい。
空気供給器36からバーナ15に供給される空気の流量を増加させるための条件は、改質器11の内部の温度Tが上がりすぎること及びCOセンサ19の感度を検査することに限定されない。燃料電池システム100では、様々な状況で空気の供給流量が増やされる。例えば、改質器11における改質触媒層の熱を変成触媒層に効率的に伝えるために空気の供給流量を増やすこともある。