以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1〜図16を参照して、第1実施形態による塗布方法について説明する。
(塗布方法の概要)
第1実施形態による塗布方法は、塗布材料を吐出するノズル12を複数含む1つまたは複数の塗布ヘッド11と、被塗布物とを相対移動させ、被塗布物の塗布領域21に画素P単位で塗布材料を吐出する塗布方法である。たとえば、塗布方法は、インクジェット方式などの印刷技術を用いて、被塗布物である基板2に塗布材料を塗布することにより、液晶表示装置、EL表示装置などの表示装置の表示基板を作製するための塗布方法である。
基板2は、ガラス基板のみならず、金属または樹脂などからなる基板、金属または樹脂などからなるフィルムであってもよい。基板2は、平面状形状でも曲面状形状でもよく、湾曲(屈曲)または伸縮するものであってもよい。基板2は、特許請求の範囲の「被塗布物」の一例である。被塗布物としては、基板2以外の立体物(非板状物体)でもよい。
塗布材料は、表示装置の画素を形成するためのディスプレイ用材料である。より具体的には、塗布材料は、各画素におけるRGB等(色数は任意である)の各色の発色用材料または発光用材料を含む。塗布材料は、たとえばカラーフィルタ材料、量子ドット材料、EL発光材料などである。
基板2には、塗布ヘッド11を用いて塗布を行う対象となる塗布領域21が設けられている。塗布領域21には、ブラックマトリクスなどにより区画された複数の画素領域(画素Pが形成される領域)が形成されている。画素Pは、略同一形状、略同一ピッチで縦横にマトリクス状に配列される。マトリクス状配列の互いに直交する2方向を、それぞれX方向、Y方向とする。X方向およびY方向は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1方向」および「第2方向」の一例である。
第1実施形態の塗布方法は、塗布領域21内の全ての画素Pに対して、それぞれ許容誤差範囲内の所定塗布量の塗布材料を画素P単位で塗布する。第1実施形態の塗布方法は、このように塗布領域21内の全面などの広い範囲に渡って、画素P毎に塗布材料を均一に塗布する場合に、特に好適である。
第1実施形態の塗布方法は、後述するように、画素Pに対して、許容誤差範囲内で個別誤差範囲を設定する塗布前の準備段階と、準備段階において設定した個別誤差範囲に従って、塗布ヘッド11を用いて塗布を行う塗布段階とを含む。準備段階は、たとえば、塗布データ31を作成するコンピュータ3の演算処理により実施される。塗布段階は、作成された塗布データ31に従って、塗布ヘッド11を備える塗布装置1によって実施される。
(塗布装置)
塗布装置1は、塗布材料を吐出するノズル12を複数含む1つまたは複数の塗布ヘッド11を備える。塗布装置1は、塗布ヘッド11により、第1実施形態の塗布方法を実施するように構成されている。
具体的には、塗布装置1は、インクジェット方式の塗布装置であり、インクの液滴をノズル12から吐出することにより基板2に塗布を行う。塗布装置1は、複数のノズル12が設けられた塗布ヘッド11を1つまたは複数備える。塗布ヘッド11の数は、2個、3個、4個、5個、・・・、10個、・・・15個、などであってよく、特に限定されない。第1実施形態では、塗布装置1は、複数(たとえば6個)の塗布ヘッド11を備える例を示す。
塗布ヘッド11は、基板2に対して水平方向に相対移動し、基板2に設定された塗布領域21の任意の位置に塗布を行うことが可能である。複数の塗布ヘッド11を備える塗布装置1では、たとえば、水平方向に移動可能なヘッドユニット13に、複数の塗布ヘッド11が設けられ、ヘッドユニット13の移動に伴って複数の塗布ヘッド11が一体的に移動する。複数の塗布ヘッド11がそれぞれ独立して移動可能に構成されていてもよい。
塗布装置1は、塗布ヘッド11の移動および吐出を制御する制御部14を備える。制御部14が、塗布データ31に基づいて塗布ヘッド11を制御することにより、基板2への塗布材料の塗布が行われる。
塗布ヘッド11(ヘッドユニット13)は、たとえばリニアステージなどの直動機構の組み合わせによって移動可能に構成されている。すなわち、塗布装置1は、塗布ヘッド11(ヘッドユニット13)をX軸方向に移動させるX軸移動機構15と、塗布ヘッド11(ヘッドユニット13)をY軸方向に移動させるY軸移動機構16と、を備える。各軸の移動機構はエンコーダ(図示せず)を備えており、制御部14は、エンコーダの出力信号(出力パルス数)に基づいて塗布ヘッド11の位置制御を行う。
図2に示すように、個々の塗布ヘッド11の各ノズル12は、塗布を行う対象となる画素Pのピッチ(ここでは、Y方向のピッチ)に合わせた所定間隔で配列されている。このため、図2の場合、塗布ヘッド11は、X方向の画素列Lxに対してそれぞれ1つのノズル12を割り当てて、対応するノズル12により、X方向の画素列Lxに含まれる各画素Pに対する塗布を行うことが可能である。各ノズル12は、塗布ヘッド11に直線状に配列され、塗布ヘッド11は、直線状のノズル12の列が走査方向(X方向)と直交するY方向に沿うように配置されている。
図2の例では、複数(6個)の塗布ヘッド11が、X方向に並んで配置されている。そのため、複数(6個)の塗布ヘッド11の各々は、X方向の画素列Lxに対してそれぞれ1つのノズル12を割り当てることができる。言い換えると、X方向の1つの画素列Lxに含まれる各画素Pに対しては、6個の塗布ヘッド11の各々で割り当てられた合計6個のノズル12うちから、任意のいずれか1つまたは複数のノズル12を用いて、塗布を行うことができる。このため、塗布ヘッド11をX方向に走査させることにより、複数の画素列Lxを一括して塗布することが可能である一方、個々の画素Pに対して、Y方向に並ぶ複数の塗布ヘッド11の各々のノズル12の内から1つまたは複数を選択的に用いて塗布を行うことができる。なお、たとえば複数(6個)の塗布ヘッド11をY方向に所定画素数分だけ移動させることにより、別の複数(6個)のノズル12を同じ画素列Lxに割り当てることも可能である。
図1を参照して、塗布ヘッド11は、たとえば塗布領域21をX軸方向に走査(スキャン)して、ノズル数に応じた複数画素列分の塗布を行う。X軸方向に往復走査して、同一画素列の塗布を複数回に分けて行うこともできる。その後、塗布ヘッド11は、Y軸方向に所定量シフトして、次の複数画素列分の塗布を行う。この動作を繰り返すことにより、塗布装置1は、塗布領域21の全体にわたる塗布作業を実行する。
塗布データ31は、塗布領域21において、塗布の対象となる画素Pを特定する情報と、画素P毎に、塗布に使用するノズル12または塗布を行う塗布ヘッド11を特定する情報とを含む。
コンピュータ3は、CPUなどのプロセッサ(図示せず)と、プログラムや各種データを記憶する記憶装置(図示せず)とを含む。コンピュータ3は、記憶装置に記憶されたプログラムをプロセッサにより実行することにより、塗布データ31を生成する。コンピュータは、塗布装置1の制御部14であってもよい。この場合、塗布装置1の制御部14に必要なデータを提供するだけで、塗布データ31を作成して塗布作業を実施できる。図1の例では、コンピュータ3は、塗布装置1(制御部14)とは別個に設けられたコンピュータである。
(塗布方法の詳細内容)
図3に示すように、第1実施形態による塗布方法は、画素Pに対する塗布量の許容誤差範囲40(図4参照)内に、互いに異なる複数の個別誤差範囲41(図4参照)を設けるステップ(ステップS1)と、塗布領域21に含まれる複数の画素Pの各々に対して、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定するステップ(ステップS2)と、設定された個別誤差範囲41に基づいて、塗布領域21に含まれる画素Pに対して塗布ヘッド11により塗布材料を塗布するステップ(ステップS5)と、を備える。
〈複数の個別誤差範囲を設けるステップ〉
許容誤差範囲40は、図4に示すように、画素Pへの塗布材料の塗布量の目標値を含む所定範囲として予め設定された数値範囲である。許容誤差範囲40は、製造される物品(表示基板)の設計仕様として予め設定される。許容誤差範囲40は、たとえば、目標値T[pL]に対して上下に幅を持って設定され、上限値および下限値を含む。許容誤差範囲40は、割合(±[%])あるいは量(±[pL])の形式などで設定される。許容誤差範囲40は、たとえば目標値T=90[pL]に対して、±1%などである。
個別誤差範囲41は、許容誤差範囲40内に含まれるように、許容誤差範囲40よりも狭い範囲で設定される数値範囲である。個別誤差範囲41は、塗布量の幅を持って設定され、上限値および下限値を含む。個別誤差範囲41の上限値および下限値の一方が、許容誤差範囲40の上限値および下限値の一方と一致してもよい。個別誤差範囲41は、割合あるいは量の形式などで設定される。
個別誤差範囲41は、許容誤差範囲40内に複数設けられる。図4では、A、BおよびCの3つの個別誤差範囲41を設ける例を示す。個別誤差範囲41の数は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。複数の個別誤差範囲41は、互いに異なる範囲として設定される。すなわち、複数の個別誤差範囲41は、互いに、少なくとも上限値および下限値の一方が異なる。言い換えると、複数の個別誤差範囲41は、数値範囲の中心が互いに異なる。複数の個別誤差範囲41は、数値範囲が完全に異なっている(重複しない)必要はなく、図4に示したように部分的に重複する範囲を含んでいてよい。個別誤差範囲41の数および数値幅は、塗布装置1により制御可能な塗布量の精度に応じて設定される。
図4の例では、個別誤差範囲Aは、許容誤差範囲40内で、目標値に対してプラス側(塗布量が多い側)に偏った範囲に設定されている。個別誤差範囲Bは、許容誤差範囲40内で、目標値を中心としたより狭い範囲(許容誤差範囲をより狭くした範囲)に設定されている。個別誤差範囲Cは、許容誤差範囲40内で、目標値に対してマイナス側(塗布量が少ない側)に偏った範囲に設定されている。
図4のように個別誤差範囲A〜Cが部分的に重複するケースでは、1つ1つの画素Pに着目すれば塗布量が一致する場合があり得るが、統計的には、個別誤差範囲A、B、Cがそれぞれ設定された画素Pに対する塗布量は、個別誤差範囲A、B、Cの数値範囲の相違を反映して許容誤差範囲40内で異なるものとなる。
〈異なる個別誤差範囲が混在するように個別誤差範囲を設定するステップ〉
複数の個別誤差範囲41が設けられると、ステップS2において、塗布領域21に含まれる複数の画素Pの各々に対して、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41が設定される。つまり、各々の画素Pに、複数の個別誤差範囲41のいずれか1つが割り当てられる。図5は、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定した例を示す。個々の画素Pを示す矩形領域内に付した「A」、「B」、「C」の文字が、それぞれの画素Pに設定した個別誤差範囲41を示す。
第1実施形態では、個別誤差範囲41を設定するステップS2において、塗布領域21の所定のX方向の画素列Lxについて、複数の個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定する。すなわち、図5では、各々のX方向の画素列Lxについて、それぞれA、B、Cの個別誤差範囲41が混在するように設定されている。
また、第1実施形態では、個別誤差範囲41を設定するステップS2において、塗布領域21のX方向と直交するY方向の画素列Lyについて、複数の個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定する。すなわち、図5では、各々のY方向の画素列Lyについて、それぞれA、B、Cの個別誤差範囲41が混在するように設定されている。
また、第1実施形態では、図5のように、個別誤差範囲41を設定するステップS2において、塗布領域21に含まれる画素Pの各々に対して、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を画素P毎に設定することが好ましい。すなわち、個別誤差範囲41が、1画素単位で別々に設定されている。図5の例では、隣接する画素P同士に異なる個別誤差範囲41が設定されており、同一の個別誤差範囲41が複数の画素Pに渡って連続しないように設定されている。
図5の例では、3×3の9画素の領域内の画素Pについて、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を割り当てた、個別誤差範囲41の誤差設定パターン50が設定されている。9画素の領域に対する誤差設定パターン50を他の9画素の領域にも適用することにより、塗布領域21の各々の画素Pの個別誤差範囲41が設定されている。この場合、たとえば使用者が9画素の領域内の画素Pに対する誤差設定パターン50をコンピュータ3に入力すれば、入力した誤差設定パターン50を繰り返し適用するだけで、容易に、塗布領域21の全体に渡って異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定することが可能である。誤差設定パターン50のサイズ(画素数)は任意であり、2×2画素、4×4画素などでもよい。誤差設定パターン50は、縦横(XY方向)の画素数が異なっていてもよい。
個別誤差範囲41の設定は、画素毎ではなく、複数の画素Pを単位として行ってもよい。図6の例では、2×2の4画素を単位として個別誤差範囲41を設定した例を示す。図6の場合、4画素の単位領域51の間では同一の個別誤差範囲41が設定されるものの、塗布領域21の全体としては、単位領域51同士の間で、異なる個別誤差範囲41が混在している。単位領域51に含まれる画素数は、必ずしも限定されないが、画素サイズ(画素の縦横寸法)や画素ピッチに応じて、ブロック状の塗布ムラとして視認されない程度に小さな画素数に設定するのが好ましい。
図6の例では、X方向およびY方向の各々に、個別誤差範囲(A〜C)が順番にA、B、C、A、・・・と並ぶように単位領域51の個別誤差範囲41を設定することにより、X方向およびY方向の各方向の画素列について、異なる個別誤差範囲41の設定を混在させている。
図5および図6では、それぞれの個別誤差範囲(A〜C)が、規則性を有する配列となるように設定した例を示した。つまり、図5では、3×3の9画素の誤差設定パターン50を規則的に繰り返し、図6では、A、B、C、A、・・・という規則的なパターンで、単位領域51の個別誤差範囲41を設定した。図7に示すように、個別誤差範囲41は、個別誤差範囲が完全にランダムか、またはランダムと見なせる程度に複雑な規則性を有する(以下、擬似ランダムとする)ように、設定してもよい。
図7では、X方向およびY方向に、特定の規則性を持たない(規則性を持たないと見なせる)ように、それぞれの個別誤差範囲(A〜C)を設定した例を示す。ただし、ランダム設定または擬似ランダム設定の場合、偶然に、同じ個別誤差範囲が設定された画素Pが、直線状に多数並ぶ可能性がある。その場合、たとえばコンピュータ3により、予め設定した所定数以上は同じ個別誤差範囲が連続しない条件下で、ランダムな配列となるように個別誤差範囲41の設定が自動生成されうる。
なお、ここではX方向の画素列Lx、Y方向の画素列Lyについて、異なる個別誤差範囲41の設定を混在させることについて説明したが、図5の例のように、同一の個別誤差範囲41が斜め方向に直線状に並ぶことによって、斜め方向のスジムラが形成される場合には、X方向およびY方向に対して傾斜した斜め方向の画素列に含まれる画素Pに対して、異なる個別誤差範囲41の設定が混在するように、個別誤差範囲41を設定すればよい。
〈塗布に使用するノズルの組み合わせを選択するステップ〉
次に、各々の画素Pに対して、許容誤差範囲40よりも狭い個別誤差範囲41に収まるように、塗布材料の塗布量を制御するための方法を説明する。
図2に示したように、たとえば6個の塗布ヘッド11(1番ヘッド〜6番ヘッドとする)を備える場合、1つの画素Pについて、X方向への走査によって塗布可能なノズル12は、それぞれの塗布ヘッド11について1つずつ、合計6個存在する。それぞれのノズル12は、個体差により、吐出量が僅かに異なる。そこで、第1実施形態による塗布方法は、図3に示すように、画素Pに設定した個別誤差範囲41に応じて、1つまたは複数の塗布ヘッド11に含まれる複数のノズル12の内から、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択するステップ(ステップS3)を備える。選択されたノズル12の合計吐出量が、画素Pに設定された個別誤差範囲41内に収まるように、塗布に使用するノズル12の組み合わせが選択される。
たとえば、図8に示すように、画素Pに対する目標塗布量が90[pL]である場合に、3つのノズル12の組み合わせを選択する。この場合、ノズル1つ当たりの吐出量設定値を30[pL]として、各ノズル12の吐出量の差異(個体差)を利用して合計吐出量を調整する。
図8の例では、1番ヘッド〜6番ヘッドにおいて、それぞれのN番目のノズル12(X方向に並ぶ6個のノズル)は、吐出量が29.61[pL]〜30.55[pL]の範囲でばらつく。各ノズル12の吐出量は、実際に塗布動作を行って実測することにより取得でき、コンピュータ3は、予め測定された各ノズル12の吐出量データを記憶装置に記憶している。
たとえば図8において、1番ヘッド、2番ヘッド、4番ヘッドの各々のN番ノズルが選択される場合が、組み合わせ1である。この場合、合計吐出量は89.79[pL]であり、誤差は−0.23%となる。同様に、3番ヘッド、4番ヘッド、5番ヘッドの各々のN番ノズルが選択される組み合わせ2では、合計吐出量は90.03[pL]であり、誤差は+0.03%となる。3番ヘッド、5番ヘッド、6番ヘッドの各々のN番ノズルが選択される組み合わせ3では、合計吐出量は90.31[pL]であり、誤差は+0.34%となる。画素Pに対する許容誤差範囲40が(±1%)であるとする。組み合わせ1〜3は、いずれも、許容誤差範囲40の範囲内に収まる。
このように、ノズル12の組み合わせを変更することにより、許容誤差範囲40内で、目標値に対してプラス側(塗布量が多い側)やマイナス側(塗布量が少ない側)に偏った合計吐出量を実現することが可能である。
したがって、たとえば図9に示すように、許容誤差範囲40が(±1%)であるのに対して、個別誤差範囲Aを(0%〜+1.0%)、個別誤差範囲Bを(−0.5%〜+0.5%)、個別誤差範囲Cを(−1.0%〜0%)と設定する。この場合、個別誤差範囲A(0%〜+1.0%)が設定された画素Pについては、図8の組み合わせ3(+0.34%)が選択され、個別誤差範囲B(−0.5%〜+0.5%)が設定された画素Pについては、組み合わせ2(+0.03%)が選択され、個別誤差範囲C(−1.0%〜0%)が設定された画素Pについては、組み合わせ1(−0.23%)が選択される。
選択された組み合わせのノズル12を用いて塗布を行うことにより、許容誤差範囲40よりも狭い個別誤差範囲41にも収まるように、塗布材料の塗布量を精密に制御することが可能である。
目標塗布量および組み合わせるノズルの数と、予め測定された各ノズル12の吐出量データとに基づいて、コンピュータ3により、全ての組み合わせによる合計吐出量が算出される。同一の個別誤差範囲41内に収まる合計吐出量を実現する組み合わせが複数存在する場合、いずれの組み合わせを採用してもよい。
〈往路塗布動作において塗布に使用するノズルと、復路塗布動作において塗布に使用するノズルとを割り当てるステップ〉
次に、X方向の各画素列Lxに対する塗布を行う際に、往路塗布動作と復路塗布動作とに分けて、選択した組み合わせのノズル12を往路塗布動作と復路塗布動作とに割り当てる処理を説明する。
図3に示した第1実施形態による塗布方法は、図10に示すように、選択したノズル12の組み合わせの内から、塗布領域21の所定のX方向の一方に向かう往路塗布動作において塗布に使用するノズル12と、X方向の他方に向かう復路塗布動作において塗布に使用するノズル12とを割り当てるステップ(ステップS4)を備える。
なお、同一画素P(同一画素列Lx)に対する往路塗布および復路塗布は、何回行ってもよい。最小は往路塗布および復路塗布を各1回であるが、往路−復路−往路で合計3回の走査を行ってもよい。走査回数が4回以上でもよく、たとえば1回の走査につき1つの塗布ヘッド11(1番ヘッド〜6番ヘッドのいずれか)での塗布を行うこととし、合計6回の走査を行ってもよい。
塗布に使用するノズル12の組み合わせが選択されると、ステップS4では、選択された組み合わせにおける複数のノズル12(複数の塗布ヘッド11)の一部が往路塗布動作に割り当てられ、残りの一部が復路塗布動作に割り当てられる。
たとえば図9に示すように、個別誤差範囲A(0%〜+1.0%)に対して、組み合わせ3(3番ヘッド、5番ヘッド、6番ヘッドの各々のN番ノズル)が選択された場合、3番ヘッドおよび5番ヘッドによる塗布が往路塗布動作に割り当てられ、6番ヘッドによる塗布が復路塗布動作に割り当てられる、といった具合で割り当てがなされる。図9の4番ヘッドのように、個別誤差範囲C(−1.0%〜0%)で選択される組み合わせ1および個別誤差範囲B(−0.5%〜+0.5%)で選択される組み合わせ2の両方で使用されるノズル12を含む場合、個別誤差範囲Cが設定された画素Pおよび個別誤差範囲Bが設定された画素Pの両方を往路および復路の一方のみで塗布してもよいし、個別誤差範囲Cが設定された画素Pを往路および復路の一方で塗布し、個別誤差範囲Bが設定された画素Pを往路および復路の他方で塗布してもよい。
〈塗布ヘッドにより塗布材料を塗布するステップ〉
以上のステップ(S1〜S4)により、基板2の各画素Pに塗布材料を塗布するための塗布データ31に必要な情報が生成される。コンピュータ3により塗布データ31を作成し、作成した塗布データ31に従って塗布装置1を動作させることにより、設定された個別誤差範囲41に基づいて、塗布領域21に含まれる画素Pに対して塗布ヘッド11により塗布材料を塗布するステップ(ステップS5)が実施される。
すなわち、第1実施形態では、塗布を行う画素Pについて、選択した組み合わせのノズル12により、複数回に分けて塗布材料を塗布する。たとえば図8および図9に示したように、各塗布ヘッド11においてN番目のノズル12が通過する画素列Lxについて、個別誤差範囲Aが設定された画素Pに対しては、選択された組み合わせ3に基づき、3番ヘッドのN番ノズル、5番ヘッドのN番ノズル、6番ヘッドのN番ノズル、の各々で合計3回の塗布が実施される。個別誤差範囲Bが設定された画素Pに対しては、選択された組み合わせ2に基づき、3番ヘッドのN番ノズル、4番ヘッドのN番ノズル、5番ヘッドのN番ノズル、の各々で合計3回の塗布が実施される。個別誤差範囲Cが設定された画素Pに対しては、選択された組み合わせ1に基づき、1番ヘッドのN番ノズル、2番ヘッドのN番ノズル、4番ヘッドのN番ノズル、の各々で合計3回の塗布が実施される。
したがって、第1実施形態では、塗布材料を塗布するステップS5において、塗布ヘッド11と、基板2とをX方向に相対移動(走査)させ、X方向の画素列Lx中の、ノズル12により塗布を行う画素Pに対して塗布を行う。すなわち、塗布ヘッド11に含まれる1つのノズル12により、塗布を行う画素Pと塗布を行わない画素Pとが塗布領域21内で混在するため、塗布ヘッド11を走査させる際に、塗布を行う画素Pに対してノズル12から塗布材料を吐出させつつ、塗布を行わない画素Pに対してはノズル12から塗布材料を吐出させないように各ノズル12の吐出制御が行われる。
図11〜図16は、各々の塗布ヘッド11について、すべてのノズル12について採用される組み合わせが同一であると仮定した場合の、塗布ヘッド11毎に塗布を行う画素を示している。実際には、同一の塗布ヘッド11のN番ノズルとN+1番ノズルは吐出量が必ずしも一致しないので、個別誤差範囲A〜Cに対応するノズルの組み合わせも、ノズル12毎に異なる。個別誤差範囲A〜Cの分布は、図5の例を採用する。個別誤差範囲A〜Cに対応するノズル12(塗布ヘッド11)の組み合わせは、図9に示した組み合わせを採用する。また、図11〜図16では、1番ヘッドから6番ヘッドまでを、1番ヘッドから順番に塗布した場合の例を示す。
図11に示すように、1番ヘッドのノズル12により、個別誤差範囲Cが設定された各画素Pに塗布材料が塗布され、その他の画素Pには塗布されない。図12に示すように、2番ヘッドのノズル12により、個別誤差範囲Cが設定された各画素Pに塗布材料が塗布され、その他の画素Pには塗布されない。図13に示すように、3番ヘッドのノズル12により、個別誤差範囲AまたはBが設定された各画素Pに塗布材料が塗布され、その他の画素Pには塗布されない。図14に示すように、4番ヘッドのノズル12により、個別誤差範囲BまたはCが設定された各画素Pに塗布材料が塗布され、その他の画素Pには塗布されない。図15に示すように、5番ヘッドのノズル12により、個別誤差範囲AまたはBが設定された各画素Pに塗布材料が塗布され、その他の画素Pには塗布されない。図16に示すように、6番ヘッドのノズル12により、個別誤差範囲Aが設定された各画素Pに塗布材料が塗布され、その他の画素Pには塗布されない。
1番ヘッドから6番ヘッドまでの塗布の結果、それぞれの画素Pには、個別誤差範囲A〜Cのいずれかの設定に応じた3つのノズル12の組み合わせで塗布が行われる。図16において、ハッチングの向きを異ならせて示したように、それぞれの画素Pは、最終的に許容誤差範囲40内で、かつ、設定された個別誤差範囲41に応じたばらつきを持った塗布量の塗布材料が、塗布される。
また、塗布材料を塗布するステップS5において、塗布ヘッド11と基板2とをX方向の一方と他方とに往復するように相対移動させ、それぞれ割り当てられたノズル12により、往路塗布動作および復路塗布動作を行う。すなわち、図10に示したように、各々の塗布ヘッド11が、X方向の往路塗布動作および復路塗布動作によって、ノズル数に応じた数の画素列Lxに対する塗布を一括して行う。図11〜図16に示した1番ヘッド〜6番ヘッドによる塗布は、往路塗布動作または復路塗布動作のいずれかで実施される。往路塗布動作および復路塗布動作の完了後、各々の塗布ヘッド11は、ノズル数分だけY方向にシフト移動し、ノズル数に応じた数の画素列Lxに対する塗布を一括して行う。塗布領域21の全ての画素Pに対する塗布が完了するまで往路塗布動作および復路塗布動作とシフト移動とを繰り返すことにより、塗布が行われる。
〈塗布方法の処理の流れ〉
次に、再び図3を参照して、第1実施形態の塗布方法の処理の流れについて説明する。
ステップS1において、画素Pに対する塗布量の許容誤差範囲40内に、互いに異なる複数の個別誤差範囲41が設けられる。ステップS1は、コンピュータ3により実施される。複数の個別誤差範囲41は、許容誤差範囲40に基づき、プログラムに従ってコンピュータ3が自動生成してもよいし、個別誤差範囲41が手動で入力されてもよい。
ステップS2において、塗布領域21に含まれる複数の画素Pの各々に対して、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41が設定(図5〜図7参照)される。ステップS2は、コンピュータ3により実施される。
ステップS3において、画素Pに設定した個別誤差範囲41に応じて、1つまたは複数の塗布ヘッド11に含まれる複数のノズル12の内から、塗布に使用するノズル12の組み合わせが選択される。ステップS3は、コンピュータ3により実施される。目標塗布量および組み合わせるノズルの数と、予め測定された各ノズル12の吐出量データとに基づいて、それぞれの個別誤差範囲41に収まる合計吐出量を実現可能なノズル12の組み合わせが選択される。
ステップS4において、選択したノズル12の組み合わせの内から、塗布領域21の所定のX方向の一方に向かう往路塗布動作において塗布に使用するノズル12と、X方向の他方に向かう復路塗布動作において塗布に使用するノズル12とが割り当てられる。ステップS4は、コンピュータ3により実施される。コンピュータ3は、各々の画素Pに塗布を行うノズル12の組み合わせのうちから、往路塗布動作において塗布を行うノズル12(塗布ヘッド11)と、復路塗布動作において塗布を行うノズル12(塗布ヘッド11)と、を割り当てる。以上により、第1実施形態による塗布方法を実施するための塗布データ31が作成される。
ステップS5において、塗布装置1が、設定された個別誤差範囲41に基づいて、塗布領域21に含まれる画素Pに対して塗布ヘッド11により塗布材料を塗布する。すなわち、塗布データ31が塗布装置1の制御部14に読み込まれ、塗布データ31に従って塗布動作を行うように、塗布装置1が制御される。その結果、基板2の各々の画素Pへの塗布材料の塗布が行われる。
(第1実施形態の効果)
次に、第1実施形態の効果について説明する。
第1実施形態では、上記のように、画素Pに対する塗布量の許容誤差範囲40内に、互いに異なる複数の個別誤差範囲41を設けるステップ(S1)と、塗布領域21に含まれる複数の画素Pの各々に対して、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定するステップ(S2)とを設ける。これにより、許容誤差範囲40内でありながら、異なる個別誤差範囲41に設定された画素Pを、塗布領域21中に混在するように分布させることができる。すなわち、画素P毎の塗布量のばらつきを極力抑制するのではなく、許容誤差範囲40内で敢えて塗布量をばらつかせるように、異なる個別誤差範囲41を設定した画素Pを塗布領域21内で混在させることができる。そして、設定された個別誤差範囲41に従って各画素Pを塗布することにより、塗布領域21内の各画素Pに対する塗布量を、許容誤差範囲40内で適度にばらつかせることができる。
ここで、図17(比較例)に示すように、スジムラは、(1)塗布量が一致する画素ラインが形成されること、(2)隣接する画素ライン間で塗布量が異なること、によって形成される。すなわち、個々のノズルによる吐出量のばらつきを反映して、たとえばある画素列Lxに対応するN番目のノズルの目標塗布量に対する誤差がK%の場合に、隣接する画素列Lxに対応する(N−1)番目のノズルの誤差が(N+α)%、(N+1)番目のノズルの誤差が(K+β)%であり、各々のノズルによる塗布量が一定であるとする。この場合、たとえば(N、N+1)の画素列Lx間では、β%分の塗布量のムラが発生する。この画素列間の塗布量のムラが、塗布領域21の全体では、スジムラUとして視認される。直線状に規則性を持って延びるスジムラUは、画素列Lx間の塗布量の差(β%)を極力小さくしても、人間の視覚に把握されやすいため問題となり易い。
これに対し、第1実施形態の塗布方法によれば、図18に示すように、塗布量が許容誤差範囲40内でばらつく画素Pが塗布領域21内に混在することにより、(1)および(2)の条件に合致する画素群が形成されることが抑制される。その結果、塗布量のムラが存在する領域が混在することにより、人間の視覚に把握されやすいスジ状のムラが発生せず、塗布領域21中におけるスジムラUの発生を抑制することができる。
また、第1実施形態(図8、図9参照)では、上記のように、画素Pに設定した個別誤差範囲41に応じて、1つまたは複数の塗布ヘッド11に含まれる複数のノズル12の内から、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択するステップ(S3)を設け、塗布材料を塗布するステップ(S5)において、塗布を行う画素Pについて、選択した組み合わせのノズル12により、複数回に分けて塗布材料を塗布する。これにより、各々のノズル12の吐出量のばらつきを把握した上で、塗布に使用する複数のノズル12の組み合わせを選択し、選択した複数のノズル12を用いて複数回に分けて画素Pの塗布を行うことによって、単一のノズル12の吐出量を調整するよりも精密な塗布量(合計塗布量)の制御が可能となる。その結果、許容誤差範囲40よりも狭い個別誤差範囲41を設定する場合でも、設定した個別誤差範囲41内に収まるように、精密な塗布量の制御ができる。
また、第1実施形態(図11〜図16参照)では、上記のように、ノズル12の組み合わせを選択するステップ(S3)において、塗布領域21の所定のX方向の画素列Lxについて、塗布ヘッド11に含まれる1つのノズル12により塗布を行う画素Pと塗布を行わない画素Pとが塗布領域21内で混在するように、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択し、塗布材料を塗布するステップ(S5)において、塗布ヘッド11と、基板2とをX方向に相対移動させ、X方向の画素列Lx中の、ノズル12により塗布を行う画素Pに対して塗布を行う。これにより、塗布ヘッド11を走査させて画素列Lxの塗布を行う場合でも、画素列Lxに含まれる全ての画素Pを1つのノズル12を用いて塗布するのではなく、1つのノズル12が塗布する画素Pを画素列Lx中で点在させることができる。その結果、画素列Lx中で塗布量が一致する画素ラインが形成されることが抑制されるので、塗布領域21中におけるスジムラの発生を抑制することができる。
また、第1実施形態(図9、図10参照)では、上記のように、選択したノズル12の組み合わせの内から、塗布領域21の所定のX方向の一方に向かう往路塗布動作において塗布に使用するノズル12と、X方向の他方に向かう復路塗布動作において塗布に使用するノズル12とを割り当てるステップ(S4)を設け、塗布材料を塗布するステップ(S5)において、塗布ヘッド11と基板2とをX方向の一方と他方とに往復するように相対移動させ、それぞれ割り当てられたノズル12により、往路塗布動作および復路塗布動作を行う。これにより、選択したノズル12の組み合わせの内から、往路塗布動作において塗布に使用するノズル12と、復路塗布動作において塗布に使用するノズル12とを割り当てることによって、選択されたノズル12の組み合わせで同一の画素Pを複数回に分けて塗布する際に、往路と復路との両方で塗布することができる。その結果、移動方向に応じた塗布材料の微小な偏りが形成されることが抑制できるので、スジムラのみならず、スワスムラが形成されることを抑制することができる。
また、第1実施形態(図5〜図7参照)では、上記のように、個別誤差範囲41を設定するステップ(S2)において、塗布領域21の所定のX方向の画素列Lxについて、複数の個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定し、塗布材料を塗布するステップ(S5)において、塗布ヘッド11と、基板2とをX方向に相対移動させ、X方向の画素列Lxに塗布を行う。これにより、走査方向であるX方向の画素列Lx内において、個別誤差範囲41の異なる画素Pを混在させて塗布量をばらつかせることができる。その結果、スジムラの原因となる塗布量が一致する画素ラインが形成されること、を効果的に抑制することができる。
また、第1実施形態(図5〜図7参照)では、上記のように、個別誤差範囲41を設定するステップ(S2)において、塗布領域21のX方向と直交するY方向の画素列Lyについて、複数の個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定する。これにより、走査方向と直交するY方向の画素列Ly内において、個別誤差範囲41の異なる画素Pを混在させて塗布量をばらつかせることができる。その結果、Y方向の画素列Lyにおいても、スジムラの原因となる塗布量が一致する画素ラインが形成されること、を効果的に抑制することができる。
また、第1実施形態(図5、図7参照)では、上記のように、個別誤差範囲41を設定するステップ(S2)において、塗布領域21に含まれる画素Pの各々に対して、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を画素P毎に設定する。これにより、個別誤差範囲41をそれぞれの画素P単位で設定するので、より緻密に、画素P毎の塗布量を許容誤差範囲40内でばらつかせることができる。その結果、スジムラの発生を効果的に抑制できるとともに、塗布量のばらつきに起因するその他のムラが発生することも抑制できる。
また、第1実施形態による塗布装置1(図1参照)では、上記のように、塗布材料を吐出するノズル12を複数含む1つまたは複数の塗布ヘッド11を備え、塗布ヘッド11により、第1実施形態による塗布方法を実施する。これにより、塗布領域21内の各画素Pに対する塗布量を、許容誤差範囲40内で適度にばらつかせることができるので、塗布領域21中におけるスジムラの発生を抑制することができる。
(第1実施形態の変形例)
図9では、個別誤差範囲41内に収まる合計吐出量を実現する組み合わせを1つ選択して、個別誤差範囲Aに対して組み合わせ3、個別誤差範囲Bに対して組み合わせ2、個別誤差範囲Cに対して組み合わせ1を設定した例を示したが、個別誤差範囲41内に収まる合計吐出量を実現する組み合わせは、複数存在しうる。
そこで、図19に示すように、第1実施形態の塗布方法の変形例では、複数のノズル12の内から、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択するステップ(ステップS3)において、同一の個別誤差範囲41内に収まる合計吐出量を実現する組み合わせが複数存在する場合、同一の個別誤差範囲41が設定された複数の画素Pに対して、異なる組み合わせが混在するように、ノズル12の組み合わせを選択する。
すなわち、図19において、個別誤差範囲A内に収まる合計吐出量を実現する組み合わせが、A1(1番、2番、3番ヘッドのノズル12)、A2(1番、4番、6番ヘッドのノズル12)およびA3(2番、5番、6番ヘッドのノズル12)のように複数(3つ)存在すると仮定する。なお、図19のノズル12の組み合わせは、図8に示した例における各ノズル12の合計吐出量の数値とは無関係に、説明のために便宜的に設定したものである。
図19の場合、それぞれの組み合わせA1、A2およびA3の合計吐出量は、個別誤差範囲A内に収まるものの、互いに異なる。そのため、ノズル12の組み合わせA1、A2およびA3が混在するように、個別誤差範囲Aが設定された画素Pの各々に対するノズル12の組み合わせを選択する。この結果、異なる個別誤差範囲41が設定された画素間で塗布量をばらつかせるだけでなく、同じ個別誤差範囲41が設定された画素間でも、塗布量を僅かずつばらつかせることが可能となる。これにより、変形例では、スジムラが発生することがより効果的に抑制される。
[第2実施形態]
次に、図20〜図23を参照して、第2実施形態による塗布方法について説明する。第2実施形態では、複数の塗布ヘッド11のノズル12の内から塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択する例を示した上記第1実施形態とは異なり、1つの塗布ヘッド11のノズル12の内から、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択する例について説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と共通する点については、説明を省略する。
第2実施形態による塗布方法では、ノズル12の組み合わせを選択するステップ(ステップS3)において、1つの塗布ヘッド11に含まれる複数のノズル12を、複数のノズルグループ60に区分し、画素Pに設定した個別誤差範囲41に応じて、各々のノズルグループ60に含まれる塗布可能ノズルVのうちから、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択する。
複数のノズルグループ60に区分する方法としては、たとえば図20に示すように、1つの塗布ヘッド11に含まれる複数のノズル12を、連続する所定数のノズル12を含んだ複数のノズルグループ60に等分割する方法がある。図20の例では、ノズル数n=240の塗布ヘッド11に対して、1グループ当たり40個のノズル12を含む6個のノズルグループ60に区分している。各ノズルグループ60は、それぞれ、連続する同数(40個)のノズル12を含んでいる。すなわち、6個のノズルグループ60をG1〜G6とすると、グループG1は、1番〜40番のノズル12を含み、グループG2は、41番〜80番のノズル12を含み、グループG3は、81番〜120番のノズル12を含み、グループG4は、121番〜160番のノズル12を含み、グループG5は、161番〜200番のノズル12を含み、グループG6は、201番〜240番のノズル12を含む。
このようにノズルグループ60を設定した場合、塗布材料を塗布するステップ(ステップS5)では、図21および図22に示すように、ノズルグループ60を単位として、X方向の往路塗布動作または復路塗布動作を行う。すなわち、最初に、往路塗布動作で、グループG1に含まれるノズル12(1番〜40番)によって、それぞれ、L1〜L40の画素列Lxに含まれる画素Pに対する塗布を行う。1番〜40番のノズル12の各々と、L1〜L40の画素列Lxとが、一対一で対応する。
次に、塗布ヘッド11を、1つのノズルグループ60の分(40個のノズル分、40画素分)だけY方向にシフト移動させる。復路塗布動作で、グループG2に含まれるノズル12(41番〜80番)によって、それぞれ、L1〜L40の画素列Lxに含まれる画素Pに対する塗布を行う。41番〜80番のノズル12の各々と、L1〜L40の画素列Lxとが、一対一で対応する。なお、このとき、グループG1では、L1〜L40の画素列Lxに隣接する40個の画素列についての復路塗布動作が行われるが、以下では、L1〜L40の画素列Lx以外の画素列Lxについては説明を省略する。
図22に示すように、同様の動作を繰り返すことによって、グループG3(81番〜120番)による往路塗布動作、グループG4(121番〜160番)による復路塗布動作、グループG5(161番〜200番)による往路塗布動作、グループG6(201番〜240番)による往路塗布動作、が順次行われる。
このように塗布動作を行うと、L1〜L40の各画素列Lxに含まれる任意の画素Pについて、各々のノズルグループ60で対応するノズル12が1つずつ存在することにより、合計6個のノズル12の1つまたは複数で塗布を行うことが可能となる。以下では、ある画素Pに対して、各々のノズルグループ60で塗布可能なノズル12を、塗布可能ノズルVとする。
たとえば図23に示すように、画素列L1の各画素Pを例にとると、各ノズルグループ60から、1番、41番、81番、121番、161番、201番の6個のノズル12が、塗布可能ノズルVである。
そこで、第2実施形態では、各々のノズルグループ60に含まれる塗布可能ノズルVのうちから、画素Pに設定した個別誤差範囲41に応じて、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択する。たとえば、1番、41番、81番、121番、161番、201番の塗布可能ノズルVの各々の吐出量が、図8および図9に示した条件に一致すると仮定すれば、個別誤差範囲Aに対しては、グループG3(81番)、G5(161番)およびG6(201番)のノズル12の組み合わせが選択され、個別誤差範囲Bに対しては、グループG3(81番)、G4(121番)およびG5(161番)のノズル12の組み合わせが選択され、個別誤差範囲Cに対しては、グループG1(1番)、G2(41番)およびG4(121番)のノズル12の組み合わせが選択される。L1〜L40のその他の画素列Lxの画素Pについても、同じようにノズルグループ60と同数の塗布可能ノズルVが抽出され、抽出された塗布可能ノズルVの内から、個別誤差範囲41に応じた組み合わせが選択される。
この結果、第2実施形態では、1つの塗布ヘッド11を備える塗布装置1であっても、上記第1実施形態と同様の塗布方法を実施することが可能である。第2実施形態の塗布方法のその他の構成は、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
(第2実施形態の効果)
次に、第2実施形態の効果について説明する。
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、画素Pに対する塗布量の許容誤差範囲40内に、互いに異なる複数の個別誤差範囲41を設けるステップ(S1)と、塗布領域21に含まれる複数の画素Pの各々に対して、異なる個別誤差範囲41が混在するように個別誤差範囲41を設定するステップ(S2)とを設ける。これにより、設定された個別誤差範囲41に従って各画素Pを塗布することにより、塗布領域21内の各画素Pに対する塗布量を、許容誤差範囲40内で適度にばらつかせることができるので、人間の視覚に把握されやすいスジ状のムラが発生せず、塗布領域21中におけるスジムラの発生を抑制することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、ノズル12の組み合わせを選択するステップ(S3)において、1つの塗布ヘッド11に含まれる複数のノズル12を、複数のノズルグループ60に区分し、画素Pに設定した個別誤差範囲41に応じて、各々のノズルグループ60に含まれる塗布可能ノズルVのうちから、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択する。これにより、1つの塗布ヘッド11内でグループ分けされた複数のノズルグループ60の各々から、塗布に使用するノズル12を選択できるので、複数の塗布ヘッド11を備えない構成においても、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択することによって塗布量の精密な制御が可能となる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態では、選択したノズル12の組み合わせの内から、塗布領域21の所定のX方向の一方に向かう往路塗布動作において塗布に使用するノズル12と、X方向の他方に向かう復路塗布動作において塗布に使用するノズル12とを割り当て、割り当てたノズル12によって往路塗布動作と復路塗布動作とそれぞれを行う例を示したが、本発明はこれに限られない。
たとえば図24に示すように、画素Pに対して選択したノズル12の組み合わせでの複数回の塗布を、往路塗布動作または復路塗布動作の一方のみで、行ってもよい。この場合、図3のステップS4は不要である。図24の例では、塗布ヘッド11に含まれるノズル数に応じた1番目の画素列Lxのグループ71に対して、往路塗布動作が行われ、Y方向に塗布ヘッド11の1つ分シフト移動した後、2番目の画素列Lxのグループ72に対して、復路塗布動作が行われる。
図24の場合、1番目の画素列Lxのグループ71と、2番目の画素列Lxのグループ72とでは、塗布方向(往路、復路)が異なるため、グループの境界部分の画素列Lxにおいて、塗布方向の相違に起因するスワスムラが生じ易い。スワスムラの抑制の観点では、図10に示した第1実施形態による塗布方法の方が好ましい。
また、図10および図24のように、塗布ヘッド11のノズル数に対応した数の画素列Lxを一括して塗布する方法では、ノズル数に対応した数の画素列Lxのグループ(図24のグループ71、72)が形成されるため、画素列Lxのグループ単位で塗布量がばらつくことに起因して、一括して塗布される画素列Lxのグループ(71、72)を単位とする、帯状のムラ(いわゆるオビムラ)が形成されることがある。
オビムラを効果的に抑制するには、たとえば図25に示した塗布方法を採用してもよい。図25では、複数の塗布ヘッド11が、走査方向と直交するY方向に部分的にずらして配置されている。なお、図25では、便宜的に4つの塗布ヘッド11を備える構成について示している。
4つの塗布ヘッド11は、それぞれ1画素分(ノズル1つ分)ずつY方向にずれており、4つの塗布ヘッド11の両端を除く領域では各ノズル12がX方向に並んでいる。この構成では、たとえば図25の画素列L1では、往路塗布動作で2番〜4番の塗布ヘッド11の各ノズル12では塗布可能である一方、1番の塗布ヘッド11では塗布できない。画素列L1は、ノズル数分だけY方向にシフト移動した後の復路塗布動作時に、1番の塗布ヘッド11のノズル12による塗布動作が行われる。同様に、画素列L2、L3についても、それぞれ往路で塗布可能な塗布ヘッド11と、復路で塗布可能な塗布ヘッド11とが混在する。この結果、往路で一括して塗布可能な画素列グループと、復路で一括して塗布可能な画素列グループとの境界部分で、往路塗布動作と復路塗布動作との両方で塗布を行う混合領域80が形成されるため、オビムラの発生が抑制できる。また、混合領域80では、往路塗布動作および復路塗布動作が混在するので、スワスムラの発生が抑制できる。
また、上記第1および第2実施形態では、個別誤差範囲41に応じた複数のノズル12の組み合わせにより、それぞれの個別誤差範囲41内に収まる塗布量での塗布を実現した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば単一のノズル12が、個別誤差範囲41内に収まる精度で、吐出量を任意に制御することが可能である場合には、単一のノズル12の吐出量制御によって、各々の画素Pに対する塗布量を制御してもよい。この場合、図3のステップS3は不要である。
また、上記第1および第2実施形態では、1つの塗布ヘッド11に、1列のノズル12を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば1つの塗布ヘッド11に、2列、3列または4列以上の複数列のノズル12を設けてもよい。この場合、塗布ヘッド11をX方向に走査させて塗布を行う場合でも、X方向に複数列並んだノズル12の中から、塗布に使用するノズル12の組み合わせを選択してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、塗布ヘッド11(ヘッドユニット13)を基板2に対して移動させて塗布を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。塗布ヘッド11(ヘッドユニット13)に対して、基板2を移動させて塗布を行ってもよいし、塗布ヘッド11(ヘッドユニット13)および基板2の両方を移動させて塗布を行ってもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、直線状のノズル12の列が走査方向(X方向)と直交するY方向に沿うように塗布ヘッド11が配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。図26に示すように、直線状のノズル12の列がY方向に対して所定角度θだけ傾斜するように、塗布ヘッド11を配置してもよい。塗布ヘッド11を傾斜させる配置では、画素PのY方向のピッチD1がノズル12のピッチD2よりも小さい場合にも、角度θの調節によって、各ノズル12のY方向距離(D2×cosθ)をピッチD1に一致させることが可能である。