JP6872879B2 - 柱梁接合構造及びラーメン構造体 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されている構造は、木製の柱の側面に木製の梁を突き当て、曲げモーメントの伝達が可能となるように接合したものである。このラーメン構造は、いわゆる柱勝ち構造となっており、多層階の建築物に適用したときに柱を通し柱とすることができる。
一方、特許文献2に記載されているラーメン構造は、木製の柱の上端面に木製の梁を載せ掛けて曲げモーメントの伝達が可能となるように接合したものである。このラーメン構造は、いわゆる梁勝ち構造となっており、柱の両側に連続する梁を接合することができる。そして、上層階の柱は梁の上面から立ち上げるものとなる。
また、この柱梁接合構造では、接合金具が梁を構成する一対の横架部材の間に収まり、梁が屋内で露出する構造としても接合金具が目立つことはなく、屋内の仕上がりを良好なものとすることができる。また、梁の上方又は下方から接合金具等の点検や補修を容易に行うことが可能となる。
図15(a)に示すように、柱勝ち構造であって多径間にわたるラーメン構造体では、図15(b)に示すように、水平方向の力が作用してラーメン構造体に変形が生じたときに、柱101に突き当てて接合された梁102と該柱101との間に隙間が生じる。このような変形によって床材や内装材に損傷が生じるおそれがある。また、梁高が大きいと梁102と柱101との間の角度が変化することによって隣接する柱101a,101b間の間隔が変動し、二次応力が生じることがある。これらに対し、本請求項に係るラーメン構造体では、扁平柱と梁との接合部で扁平柱と梁との双方が連続するものであり、上記のような不都合は生じないものとなる。
図1は、本発明に係る柱梁接合構造及びラーメン構造体を適用した木造建築構造躯体を示す概略斜視図である。
この構造躯体は、木製の柱と木製の梁とを曲げモーメントの伝達が可能に接合したラーメン構造体を複数組み合わせて主要部が構成されている。ラーメン構造体は、図1中に示す水平に設定したX軸に沿った方向に梁を有するX方向ラーメン構造体群1と、X軸と直角で水平に設定したY軸に沿った方向に梁を有するY方向ラーメン構造体群2とを含むものである。
Y方向ラーメン構造体群2に含まれる4つのY方向ラーメン構造体21は、第2のX方向ラーメン構造体12の背面側つまり第1のX方向ラーメン構造体11が設けられた側と反対側に配列して設けられている。そして、それぞれのY方向ラーメン構造体21は、Y方向梁41の軸線がX方向ラーメン構造体11,12の複数の柱32間又は柱32が設けられた範囲の外側を通過する位置に設けられている。
Y方向ラーメン構造体21が有するY方向梁41は、第2のX方向ラーメン構造体12が有するX方向梁31−2の上で、主径間梁33と端面を突き合わせ、軸力の伝達が可能となるように接続されている。
一方、Y方向ラーメン構造体21も同様に扁平柱42と一対の横架部材41a,41bからなるY方向梁41とが、扁平柱42の中間部分で曲げモーメントの伝達が可能に接合されたものである。
また、主径間梁33、X方向梁31又はY方向梁41の上には、床材として機能する面部材(図示しない)が固定され、水平方向に広がりを有する上記水平方向構造体の変形を拘束するものとなっている。
図3に示すように扁平柱32には、長辺方向側面32aの幅方向における中央部であって横架部材31a,31bが当接される領域の下部に梁支持凸部52が設けられている。この梁支持凸部52は、金属からなる矩形断面の棒状部材が扁平柱32を貫通して2つの長辺方向側面32aから端部が突き出したものである。また、上記梁支持凸部52の上方であって横架部材31a,31bが当接される領域の上部には、仮支持金具として機能する受け金物53が取り付けられている。受け金物53は扁平柱32に固定され、長辺方向側面32aより張り出した位置で上方に向けて立ち上げられた受け板53aを備えている。
プレート51aは扁平柱32にねじ込まれるビス、釘又はラグスクリュー等を挿通するための複数の小孔がプレートのほぼ全域に分布して設けられている。
連結用ブロック51bは、プレート51aの両側縁に沿った位置で上下方向のほぼ中央部に設けられている。すなわち扁平柱32に接合される一対の横架部材31a,31bの互いに対向する面と近接した位置に、それぞれ設けられている。それぞれの連結用ブロック51bは、鉛直方向に貫通するボルト孔51cを備えており、このボルト孔の内周面には雌ネジが形成されて、上方と下方との双方からボルトをねじ込むことができるものとなっている。
プレート61aは、柱側接合金具のプレート51aと同様に、扁平柱32にねじ込まれるビス、釘又はラグスクリュー等を挿通するための複数の小孔がプレート61aのほぼ全域に分布して設けられている。
X方向梁31を構成するそれぞれの横架部材31a,31bは、扁平柱32の両側からそれぞれ長辺方向側面32aに当接し、図5に示すように扁平柱32に設けられた梁支持凸部52が横架部材31a,31bの切り欠き凹部62に嵌まり込むように上方から該支持凸部52に載せ掛ける。これと同時に扁平柱32に固定されている受け金物53の受け板53aが横架部材31a,31bに固定されている掛け金物63の掛け板63aを抱え込むように掛け合わされる。これにより、横架部材31a,31bは梁支持凸部52によって支持されるとともに横架部材31a,31bの上部は受け金物53と掛け金物63とによって扁平柱32に当接する位置に保持され、横架部材31a,31bの側面が扁平柱32の長辺方向側面32aと対向した姿勢に維持される。ただし、このとき横架部材31a,31bは梁支持凸部52の軸線周り回転が拘束されたものではない。
横架部材31a,31bが梁支持凸部等によって支持され、横架部材31a,31bの側面が扁平柱の長辺方向側面32aに当接された状態では、図6中の一点鎖線で示すように梁側接合金具61の2つの孔あきブロック61bに設けられた鉛直方向の貫通孔61cと、柱側接合金具51の連結用ブロック51bに設けられたボルト孔51cとの中心線がほぼ一致するものとなる。したがって、上方から連結プレート64及びワッシャ65を装着して上側ボルト66を上側の孔あきブロックの貫通孔61cに挿通し、先端部を連結用ブロックのボルト孔51cにねじ込むことができる。一方、下方からも下側ボルト67を連結プレート64及びワッシャ65を装着して下側の孔あきブロックの貫通孔61cに挿通し、先端部を連結用ブロックのボルト孔51cにねじ込むことができる。そして、上側ボルト66と下側ボルト67との双方を締め付けることによって図7に示すように扁平柱32と梁31を構成する2つの横架部材31a,31bとが接合される。
梁側接合金具61及び柱側接合金具51を介して連結された位置でX方向梁31が扁平柱32に対して下方へ変位しようとするときには、扁平柱32に固定されている連結用ブロック51bと横架部材31a,31bに固定されている下側の孔あきブロック61bとが下側ボルト67によって連結されていることにより、X方向梁31の下方への相対的な変位が拘束される。一方、X方向梁31が扁平柱32に対して上方へ変位しようとするときには、扁平柱32に固定されている連結用ブロック51bと横架部材31a,31bに固定されている上側の孔あきブロック61bとが上側ボルト66によって連結されていることにより、X方向梁31の上方への相対的な変位が拘束される。
図9(a)に示す柱梁接合構造は、扁平柱37の上端部に、該扁平柱37の両側に連続する連続梁38を接合するものである。このような部分においても、図2から図7に示す構成を採用して曲げモーメントの伝達が可能に接合することができる。また、図9(b)に示すように扁平柱37は梁38と接合される位置の上方にまで連続する通し柱とし、この扁平柱37に梁38の端部を接合するときに適用することもできる。このときには梁38の端部を梁側接合金具が取り付け可能となる程度に扁平柱37の短辺方向側面37aより突き出して接合するのが望ましい。さらに、図9(c)に示すように扁平柱37の上端部と梁38の端部とを接合するときに適用することもできる。
図10は、梁91を構成する横架部材91a−1,91a−2,91b−1,91b−2が扁平柱との接合部で接続された柱梁接合構造の例を示す概略側面図及び概略平面図である。また、図11は横架部材91aの接続部90の構造を示す分解斜視図である。
この接合構造では、横架部材91a−1,91a−2,91b−1,91b−2が扁平柱92の長辺方向側面のほぼ中央で端面を対向させ、せん断力の伝達が可能に接続されている。
接続された横架部材91a−1,91a−2の端部には、図11に示すようにそれぞれ端面から軸線方向へ所定の範囲に上下方向のスリット91cが設けられており、このスリット91cに鋼板からなる連結プレート93が挿入されている。この連結プレート93には複数のピン孔93aが形成されている。そして、横架部材91a−1,91a−2には連結プレートのピン孔93aと対応する位置に両側面間で水平方向に貫通する貫通孔91dが形成されており、この貫通孔91d及び連結プレートのピン孔93aを貫通するようにドリフトピン94が挿入されている。これにより、互いに接続される横架部材91a−1,91a−2間では連結プレート93を介してせん断力が伝達されるとともに、横架部材が連続するものに比べて低減はされるが曲げモーメントも伝達されるものとなっている。
また、それぞれの横架部材91a−1,91a−2の扁平柱に当接される側面には掛け金物96が取り付けられている。そして、扁平柱92の対応する位置には受け金物97が取り付けられている。これらの掛け金物96及び受け金物97は、図3及び図4に示すものと同じ構造を有するものであるが、幅方向の寸法は縮小されている。
なお、図11には示していない横架部材91b−1,91b−2についても同様の構造によって接続され、同様に扁平柱92と接合される。
扁平柱92には梁支持凸部95及び受け金物97を取り付けておき、接続する一方の横架部材91a−1には連結プレート93をスリット91cに挿入し、ドリフトピン94によって固定しておく。この横架部材91a−1の端部に設けられた切り欠き91eを梁支持凸部95に嵌め合わせるように横架部材91a−1を梁支持凸部95に載せ掛けるとともに、掛け金物を96を受け金物97に掛け合わせて横架部材91a−1を仮支持する。そして、接続する他方の横架部材91a−2を梁支持凸部95に載せ掛けるとともに、端部に設けられたスリット91cに、すでに仮支持された横架部材91a−1に装着された連結プレート93を挿入し、掛け金物96を受け金物97に掛け合わせる。後から梁支持凸部95に載せ掛けた横架部材91a−2には、側面から貫通孔91dにドリフトピン94を挿入し、連結プレート93と該横架部材91a−2とを結合する。その後、扁平柱92に取り付けられた柱側接合金具98と横架部材91a,91bに固定された梁側接合金具99とは、図6及び図7に示す接合構造と同様にして連結する。
なお、掛け金物96は接合される横架部材の一方、すなわち先に架設される横架部材にのみ設け、扁平柱92にはこの掛け金物と対応する受け金物のみを設けるものであってもよい。
扁平柱92の短辺方向側面の位置、つまり扁平柱92に対して上下方向の相対的な変位が拘束された位置間では大きなせん断力が作用し、このせん断力が接続部90を越えて接続した横架部材間で伝達される。一方、曲げモーメントは上下方向の相対的な変位が拘束される位置間で正負が反転し、接続部90の位置でほとんど曲げモーメントが生じないものとなる。したがって、接続部90は曲げモーメントの伝達が生じない構造であっても、水平力Hが作用したときには、横架部材が接続部のない連続するものであるラーメン構造体と同様に挙動し、水平力Hに対して有効に抵抗するものとなる。
また、図14に示す木造建築構造躯体のように、本発明を適用したX方向ラーメン構造体86とともに、Y方向の構造体としては、ラーメン構造とせずに耐力壁82を用いた耐力構造体とするものであってもよい。上記耐力壁は2つの柱84,84の間に面部材85を固定したものである
11,12:X方向ラーメン構造体,21:Y方向ラーメン構造体,
31:X方向梁, 31a,31b:X方向梁を構成する一対の横架部材, 32:X方向梁を支持する扁平柱, 32a:扁平柱の長辺方向側面, 32b:扁平柱の短辺方向側面, 33:主径間梁, 33a,33b:主径間梁を構成する一対の横架部材, 34:通し柱, 35,36:梁, 37:扁平柱, 38:梁,
41:Y方向梁, 41a,41b:Y方向梁を構成する一対の横架部材, 42:Y方向梁を支持する扁平柱,
51:柱側接合金具, 51a:柱側接合金具のプレート, 51b:連結用ブロック,
51c:ネジ孔, 52:梁支持凸部, 53:受け金物, 53a:受け板,
61:梁側接合金具, 61a:梁側接合金具のプレート, 61b:孔あきブロック,
61c:貫通孔, 62:切り欠き部, 63:掛け金物, 63a:掛け板, 64:連結プレート, 65:ワッシャ, 66:上側ボルト, 67:下側ボルト, 68
:凹部,
70:Y方向ラーメン構造体, 71:Y方向梁、 72:柱, 73:X方向ラーメン構造体, 74:X方向梁, 75:扁平柱, 76:主径間梁、
81:Y方向耐力構造体, 82:耐力壁, 83:Y方向梁、 84柱, 85:面部材, 86:X方向ラーメン構造体
90:接続部, 91:梁, 91a,91b:梁を構成する横架部材, 91c:スリット, 91d:貫通孔, 91e:切り欠き, 92:扁平柱, 93:連結プレート, 93a:ピン孔, 94:ドリフトピン, 95:梁支持凸部, 96:掛け金物,
97:受け金物, 98:柱側接合金具, 99:梁側接合金具, 100:柱
Claims (8)
- 水平断面の形状が長方形となった木製の扁平柱と、
前記水平断面の長辺方向に沿って配置され、前記扁平柱の両側から該扁平柱を挟むように接合された一対の横架部材からなる木製の梁と、
前記扁平柱の水平断面の短辺を含む2つの側面にそれぞれ固定された接合金具と、を有し、
一対の前記横架部材のそれぞれは、前記扁平柱に対して該横架部材の軸線方向の変位が拘束されるとともに、前記接合金具を介して前記扁平柱に上下方向の変位が拘束されており、
前記接合金具は、一対の前記横架部材間で、該横架部材の上面の高さから下面の高さまでの範囲に固定されていることを特徴とする柱梁接合構造。 - 水平断面の形状が長方形となった木製の扁平柱と、
前記水平断面の長辺方向に沿って配置され、前記扁平柱の両側から該扁平柱を挟むように接合された一対の横架部材からなる木製の梁と、
前記扁平柱の水平断面の短辺を含む2つの側面にそれぞれ固定された接合金具と、を有し、
一対の前記横架部材のそれぞれは、前記扁平柱に対して該横架部材の軸線方向の変位が拘束されるとともに、前記接合金具を介して前記扁平柱に上下方向の変位が拘束されており、
前記扁平柱の水平断面の長辺を含む2つの側面に、梁支持凸部が設けられ、
前記横架部材は該梁支持凸部に載せ掛けて支持されていることを特徴とする柱梁接合構造。 - 水平断面の形状が長方形となった木製の扁平柱と、
前記水平断面の長辺方向に沿って配置され、前記扁平柱の両側から該扁平柱を挟むように接合された一対の横架部材からなる木製の梁と、
前記扁平柱の水平断面の短辺を含む2つの側面にそれぞれ固定された接合金具と、を有し、
一対の前記横架部材のそれぞれは、前記扁平柱に対して該横架部材の軸線方向の変位が拘束されるとともに、前記接合金具を介して前記扁平柱に上下方向の変位が拘束されており、
一対の前記横架部材の互いに対向する面のそれぞれに固定された一対の梁側接合金具を有し、
該梁側接合金具と前記扁平柱に固定された前記接合金具とが、鉛直方向に軸線を有するボルトによって連結されていることを特徴とする柱梁接合構造。 - 前記ボルトは、前記接合金具が破壊されるか若しくは前記扁平柱から前記接合金具が脱落する上下方向の力、又は前記梁側接合金具が破壊されるか若しくは前記横架部材から前記梁側接合金具が脱落する上下方向の力より小さい引張力で降伏点応力に達するものであることを特徴とする請求項3に記載の柱梁接合構造。
- 一対の前記横架部材の互いに対向する面のそれぞれに固定された一対の前記梁側接合金具は、前記横架部材の上部及び下部で互いに連結されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の柱梁接合構造。
- 水平断面の形状が長方形となった木製の扁平柱と、
前記水平断面の長辺方向に沿って配置され、前記扁平柱の両側から該扁平柱を挟むように接合された一対の横架部材からなる木製の梁と、
前記扁平柱の水平断面の短辺を含む2つの側面にそれぞれ固定された接合金具と、を有し、
一対の前記横架部材のそれぞれは、前記扁平柱に対して該横架部材の軸線方向の変位が拘束されるとともに、前記接合金具を介して前記扁平柱に上下方向の変位が拘束されており、
前記扁平柱に固定され、前記横架部材を前記扁平柱に接合する位置及び姿勢で仮支持する仮支持金具を有することを特徴とする柱梁接合構造。 - 水平断面の形状が長方形となった木製の扁平柱と、
前記水平断面の長辺方向に沿って配置され、前記扁平柱の両側から該扁平柱を挟むように接合された一対の横架部材からなる木製の梁と、
前記扁平柱の水平断面の短辺を含む2つの側面にそれぞれ固定された接合金具と、を有し、
一対の前記横架部材のそれぞれは、前記扁平柱に対して該横架部材の軸線方向の変位が拘束されるとともに、前記接合金具を介して前記扁平柱に上下方向の変位が拘束されており、
前記横架部材は、前記扁平柱の側面に当接される範囲のほぼ中央に、端面が対向してせん断力の伝達が可能に接続された接続部を有することを特徴とする柱梁接合構造。 - 複数の木製の柱と、これらの柱に掛け渡される木製の梁と、を有し、
前記柱の少なくとも一つは、水平断面が長方形で前記梁の軸線方向に長辺を有する扁平柱であり、
前記梁は、前記扁平柱の両側から該扁平柱を挟むように接合された一対の横架部材からなり、
前記扁平柱と前記梁とを接合する構造が、請求項1から請求項7までのいずれかに記載の柱梁接合構造であることを特徴とするラーメン構造体。
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