JP6784461B2 - 木造建築構造躯体 - Google Patents
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特許文献1に記載されている構造は、木製の柱の側面に木製の梁を突き当て、曲げモーメントの伝達が可能となるように接合したものである。梁は柱の周囲の複数の方向から端面を突き当てて柱に接合されている。このラーメン構造は、いわゆる柱勝ち構造となっており、多層階の建築物に適用したときに柱を通し柱とすることができる。
また、特許文献3に記載されている骨組み構造は、柱と梁とを重ね合わせて剛結合された井桁形状の骨格構造体を複数組み合わせたものであり、骨格構造体の張り出した梁の先端部を互いに接合することによって立方体又は直方体に構築するものである。
一方、特許文献2に記載のラーメン構造では、柱上に架け渡される梁は柱の位置を越えて連続する構造とすることができるが、多層階の建築物等において複数の階層に連続する通し柱とすることができない。そして、ラーメン構造体がパネルと組み合わされるものとなっており、屋内に広い空間を確保したり、間取りの自由度を確保したりすることが難しくなっている。
なお、上記木造建築構造躯体は、3つ以上のX方向ラーメン構造体を含む場合であって、第2のX方向ラーメン構造体と第3のX方向ラーメン構造体とが互いに対向するように設けられているときに、第2のX方向ラーメン構造体と第3のX方向ラーメン構造体との間にY方向ラーメン構造体又はY方向耐力構造体の柱が設けられているものも含む。つまり、互いに対向するいずれか2つのX方向ラーメン構造体の間隔を他の互いに隣り合う2つのX方向ラーメン構造体の間隔より大きくして、この間にはY方向ラーメン構造体又はY方向耐力構造体の柱を設けることなく、大きな空間を形成することを可能とするものである。そして、Y方向ラーメン構造体又はY方向耐力構造体の柱は、上記大きな間隔をあけて2つのX方向ラーメン構造体が対向する領域の外側の任意の位置に設けることができるものである。
図1は、本発明に係る木造建築構造躯体の一実施形態を示す概略斜視図である。
この構造躯体は、木製の柱と木製の梁とを曲げモーメントの伝達が可能に接合したラーメン構造体を複数組み合わせて主要部が構成されている。ラーメン構造体は、図1中に示す水平に設定したX軸に沿った方向に梁を有するX方向ラーメン構造体群1と、X軸と直角で水平に設定したY軸に沿った方向に梁を有するY方向ラーメン構造体群2とを含むものである。
Y方向ラーメン構造体群2に含まれる4つのY方向ラーメン構造体21は、第2のX方向ラーメン構造体12の背面側つまり第1のX方向ラーメン構造体11が設けられた側と反対側に配列して設けられている。そして、それぞれのY方向ラーメン構造体21は、Y方向梁41の軸線がX方向ラーメン構造体11,12の複数の柱32間又は柱が設けられた範囲の外側を通過する位置に設けられている。
Y方向ラーメン構造体21が有するY方向梁41は、第2のX方向ラーメン構造体12が有するX方向梁31−2の上で、主径間梁33と端面を突き合わせ、軸力の伝達が可能となるように接続されて、主径間梁33が延長梁として機能するものとなっている。
一方、Y方向ラーメン構造体21も同様に扁平柱42と一対の横架部材41a,41bからなるY方向梁41とが、扁平柱42の中間部分で曲げモーメントの伝達が可能に接合されたものである。
また、主径間梁33、X方向梁31又はY方向梁41の上には、床材として機能する面部材(図示しない)が固定され、水平方向に広がりを有する上記水平方向構造体の変形を拘束するものとなっている。
扁平柱32と一対の横架部材31a,31bからなるX方向梁31との接合は、図2に示すように、扁平柱32の断面の長辺を含む側面(以下、長辺方向側面32a)に一対の横架部材31a,31bが扁平柱32を挟み込むように当接して接合されたものである。そして、扁平柱32の長辺方向側面32aで該横架部材31a,31bが支持され、該横架部材の軸線方向の変位が拘束されるとともに、扁平柱32の断面の短辺を含む側面(以下、短辺方向側面32b)に固定された柱側接合金具51を介して横架部材31a,31bの扁平柱32に対する上下方向の相対的な変位が拘束されるものである。
図3に示すように扁平柱32には、長辺方向側面32aの幅方向における中央部であって横架部材31a,31bが当接される領域の下部に梁支持凸部52が設けられている。この梁支持凸部52は、金属からなる矩形断面の棒状部材が扁平柱32を貫通して2つの長辺方向側面32aから端部が突き出したものである。また、上記梁支持凸部52の上方であって横架部材31a,31bが当接される領域の上部には、受け金物53が取り付けられている。受け金物53は扁平柱32に固定され、長辺方向側面32aより張り出した位置で上方に向けて立ち上げられた受け板53aを備えている。
プレート51aは扁平柱32にねじ込まれるビス、釘又はラグスクリュー等を挿通するための複数の小孔がプレートのほぼ全域に分布して設けられている。
連結用ブロック51bは、プレート51aの両側縁に沿った位置で上下方向のほぼ中央部に設けられている。すなわち扁平柱32に接合される一対の横架部材31a,31bの互いに対向する面と近接した位置に、それぞれ設けられている。それぞれの連結用ブロック51bは、鉛直方向に貫通するボルト孔51cを備えており、このボルト孔の内周面に雌ネジが形成されて、上方と下方との双方からボルトをねじ込むことができるものとなっている。
プレート61aは、柱側接合金具のプレート51aと同様に、扁平柱32にねじ込まれるビス、釘又はラグスクリュー等を挿通するための複数の小孔がプレート61aのほぼ全域に分布して設けられている。
孔あきブロック61bは、プレート61aの幅方向のほぼ中央であって上下に2つが間隔をあけて設けられ、扁平柱32の短辺方向側面32bと近接する位置に突き出している。この位置は、扁平柱32に固定された柱側接合金具51の連結用ブロック51bが突き出している位置の直上及び直下となっている。この孔あきブロック61bには上下方向に貫通孔61cが形成されており、この貫通孔61cは扁平柱32に取り付けられた柱側接合金具51の連結用ブロック51bに設けられたボルト孔51cと軸線が一致する位置に設けられたものである。
X方向梁31を構成するそれぞれの横架部材31a,31bは、扁平柱32の両側からそれぞれ長辺方向側面32aに当接し、図5に示すように扁平柱32に設けられた梁支持凸部52が横架部材31a,31bの切り欠き凹部62に嵌まり込むように上方から該梁支持凸部52に載せ掛ける。これと同時に扁平柱32に固定されている受け金物53の受け板53aが横架部材31a,31bに固定されている掛け金物63の掛け板63aを抱え込むように掛け合わされる。これにより、横架部材31a,31bは梁支持凸部52によって支持されるとともに横架部材31a,31bの上部は受け金物53と掛け金物63とによって扁平柱32に当接する位置に保持され、横架部材31a,31bの側面が扁平柱32の長辺方向側面32aと対向した姿勢に維持される。ただし、このとき横架部材31a,31bは梁支持凸部52の軸線周り回転が拘束されたものではない。
横架部材31a,31bが梁支持凸部等によって支持され、横架部材31a,31bの側面が扁平柱の長辺方向側面32aに当接された状態では、図6中の一点鎖線で示すように梁側接合金具61の2つの孔あきブロック61bに設けられた鉛直方向の貫通孔61cと、柱側接合金具51の連結用ブロック51bに設けられたボルト孔51cとの中心線がほぼ一致するものとなる。したがって、上方から連結プレート64及びワッシャ65を装着して上側ボルト66を上側の孔あきブロックの貫通孔61cに挿通し、先端部を連結用ブロックのボルト孔51cにねじ込むことができる。一方、下方からも下側ボルト67を連結プレート64及びワッシャ65を装着して下側の孔あきブロックの貫通孔61cに挿通し、先端部を連結用ブロックのボルト孔51cにねじ込むことができる。そして、上側ボルト66と下側ボルト67との双方を締め付けることによって図7に示すように扁平柱32と梁31を構成する2つの横架部材31a,31bとが接合される。
なお、上記連結プレート64は、長方形の鋼プレートであって、長辺方向の両端部にボルト66,67を挿通することができる孔が設けられている。これらの孔にボルト66,67を挿通して連結用ブロックのボルト孔51cにねじ込むことによって一対の梁側接合金具51が連結プレート64によって連結されるものである。
梁側接合金具61及び柱側接合金具51を介して連結された位置でX方向梁31が扁平柱32に対して下方へ変位しようとするときには、扁平柱32に固定されている連結用ブロック51bと横架部材31a,31bに固定されている下側の孔あきブロック61bとが下側ボルト67によって連結されていることにより、X方向梁31の下方への相対的な変位が拘束される。一方、X方向梁31が扁平柱32に対して上方へ変位しようとするときには、扁平柱32に固定されている連結用ブロック51bと横架部材31a,31bに固定されている上側の孔あきブロック61bとが上側ボルト66によって連結されていることにより、X方向梁31の上方への相対的な変位が拘束される。
この木造建築構造躯体でも、X方向は図1に示す木造建築構造躯体と同様の複数のラーメン構造体86によって水平方向の力に抵抗するものとなっている。
また、本発明は、以上に説明した実施の態様に限定されるものではなく、本発明の範囲内で様々な態様で実施をすることができるものである。
11,12:X方向ラーメン構造体,21:Y方向ラーメン構造体,
31:X方向梁, 31a,31b:X方向梁を構成する一対の横架部材, 32:X方向梁を支持する扁平柱, 32a:扁平柱の長辺方向側面, 32b:扁平柱の短辺方向側面, 33:主径間梁, 33a,33b:主径間梁を構成する一対の横架部材, 34:通し柱, 35,36:梁,
41:Y方向梁, 41a,41b:Y方向梁を構成する一対の横架部材, 42:Y方向梁を支持する扁平柱,
51:柱側接合金具, 51a:柱側接合金具のプレート, 51b:連結用ブロック, 51c:ネジ孔, 52:梁支持凸部, 53:受け金物, 53a:受け板,
61:梁側接合金具, 61a:梁側接合金具のプレート, 61b:孔あきブロック, 61c:貫通孔,62:切り欠き部, 63:掛け金物, 63a:掛け板, 64:連結プレート, 65:ワッシャ, 66:上側ボルト, 67:下側ボルト, 68:凹部,
70:Y方向ラーメン構造体, 71:Y方向梁、 72:柱, 73:X方向ラーメン構造体, 74:X方向梁, 75:扁平柱, 76:主径間梁,
81:Y方向耐力構造体, 82:耐力壁, 83:Y方向梁, 84:柱, 85:面部材, 86:X方向ラーメン構造体
Claims (7)
- 水平に設定したX軸方向に配置された木製のX方向梁と、該X方向梁を支持する木製の柱と、を備える複数のX方向ラーメン構造体と、
水平で前記X軸と直角に設定したY軸方向に配置された木製のY方向梁と、該Y方向梁を支持する木製の柱と、を備える複数のY方向ラーメン構造体と、を有し、
複数の前記X方向梁と、複数の前記Y方向梁又は該Y方向梁の軸線方向に力の伝達が可能に該Y方向梁と接続された複数のY方向の延長梁とが、前記X方向ラーメン構造体又は前記Y方向ラーメン構造体の前記柱間で交差して互いに接合されていることを特徴とする木造建築構造躯体。 - 複数の前記X方向ラーメン構造体と複数の前記Y方向ラーメン構造体との少なくとも一部は、
前記柱が、水平断面が長方形で該柱が支持する前記梁の軸線方向に長辺を有する扁平柱であり、
前記扁平柱が支持する前記梁は、該扁平柱の両側から該扁平柱を挟むように接合された一対の横架部材からなり、
前記横架部材は、前記扁平柱に対して該横架部材の軸線方向への変位が拘束されるとともに、
前記扁平柱の水平断面の短辺を含む2つの側面に接合金具がそれぞれ固定され、
一対の前記横架部材の双方は、該接合金具を介して該扁平柱に対する上下方向の変位が拘束されている、ラーメン構造体であることを特徴とする請求項1に記載の木造建築構造躯体。 - 水平に設定したX軸方向に配置された木製のX方向梁と、該X方向梁を支持する木製の柱と、を備える複数のX方向ラーメン構造体と、
水平で前記X軸と直角に設定したY軸方向に配置された木製のY方向梁と、該Y方向梁を支持してY方向の水平力に抵抗する耐力壁と、を備えた複数のY方向耐力構造体と、を有し、
複数の前記X方向梁と、複数の前記Y方向梁又は該Y方向梁の軸線方向に力の伝達が可能に該Y方向梁と接続された複数のY方向の延長梁とが、前記X方向ラーメン構造体の前記柱間で交差して互いに接合されていることを特徴とする木造建築構造躯体。 - 複数の前記X方向ラーメン構造体の少なくとも一部は、
前記柱が、水平断面が長方形で該柱が支持する前記X方向梁の軸線方向に長辺を有する扁平柱であり、
前記扁平柱が支持する前記梁は、該扁平柱の両側から該扁平柱を挟むように接合された一対の横架部材からなり、
前記横架部材は、前記扁平柱に対して該横架部材の軸線方向への変位が拘束されるとともに、
前記扁平柱の水平断面の短辺を含む2つの側面に接合金具がそれぞれ固定され、
一対の前記横架部材の双方は、該接合金具を介して該扁平柱に対する上下方向の変位が拘束されている、ラーメン構造体であることを特徴とする請求項3に記載の木造建築構造躯体。 - 前記接合金具は、一対の前記横架部材間で、該横架部材の上面の高さから下面の高さまでの範囲に固定されていることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の木造建築構造躯体。
- 前記扁平柱は、前記梁が接合された位置より上方に及ぶ高さを有するものであり、
前記梁が接合された位置より上方で、前記梁と平行に配置された上層梁が前記扁平柱に接合され、
前記上層梁は、前記扁平柱と曲げモーメントの伝達が可能に接合されていることを特徴とする請求項2、請求項4又は請求項5に記載の木造建築構造躯体。 - 複数の前記X方向ラーメン構造体は、互いに対向するように設けられた第1のX方向ラーメン構造体と第2のX方向ラーメン構造体とを含み、 前記Y方向ラーメン構造体又は前記Y方向耐力構造体が有する前記柱又は前記耐力壁は、第1のX方向ラーメン構造体と第2のX方向ラーメン構造体との間の双方が対向する範囲の背面側にのみ設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の木造建築構造躯体。
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