JP6866701B2 - フライ食品用改質剤、フライ食品用バッター液、フライ食品用麺皮及びフライ食品 - Google Patents

フライ食品用改質剤、フライ食品用バッター液、フライ食品用麺皮及びフライ食品 Download PDF

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Description

本発明は、フライ食品の製造において使用されるフライ食品用改質剤、及び、このフライ食品用改質剤を用いて製造されるフライ食品に関する。
コロッケ、とんかつ、メンチカツ、白身魚等のパン粉付けフライ食品は、通常これらの具材(食品素材)を小麦粉、水等を主原料とするバッター液に浸漬した後、パン粉を付着させて、油ちょう加熱して作製され、サクサクとした食感が求められる。
また、天ぷら、唐揚げ、フリッター等のフライ食品は、具材を、ダシ汁や水に小麦を薄く溶いたバッター液に浸漬した後、そのまま油ちょう加熱して作製され、サクサクとした食感が求められる。
さらに春巻は、小麦粉を主原料とするバッターをドラムや鉄板にて焼成し、得られた皮を包んだ後、油ちょう加熱して作製され、パリパリとした食感が求められる。
これらフライ食品では、フライ直後は、サクサクもしくはパリパリとした好ましい食感となる。しかし、弁当用、テイクアウト用として製造される場合には、消費者が食するまでに長時間、例えば3〜8時間経過するため、具材や空気中の水分が衣のパン粉もしくは衣に移行し、サクサクもしくはパリパリとした食感と徐々に失われる。そして、柔らかい食感となり、曳きが出て歯切れの悪い食感に経時変化してしまう。また、近年では、安全性、簡便性の面から、家庭におけるフライ調理が敬遠される傾向にあり、フライ後に冷凍流通された冷凍フライ食品を電子レンジで解凍して食するケースが急速に増えつつある。この場合には、常温または冷蔵保管された場合よりも更に経時変化が激しく、べたついた柔らかい食感になってしまう。そこでフライ直後のサクサクとした食感を経時的に変化させることなく長時間持続させる技術の開発が望まれており、この問題を解決するために、種々の試みがなされている。
例えば、特許文献1には、飽和ジグリセリン脂肪酸エステルと飽和ソルビタン脂肪酸エステルを必須成分とすることを特徴とするフライ衣用改良剤が開示されている。バッター液を作製する時、一般的には20℃以下の冷水が使用される。しかし、特許文献1に開示されたフライ衣用改良剤は、冷水への分散性が悪いため、バッター液に使用する際に均一に分散せず、フライ後の効果にばらつきがある。
また、特許文献2には、有機酸モノグリセリド及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを含むバッター用油脂組成物をバッター液に添加する方法が記載されている。特許文献2に開示されたバッター用油脂組成物は、冷水下での分散性は若干認められるものの、バッター液中に均一に分散しないため、フライ後の効果にばらつきがあり、十分に満足し得る食感改良効果は不十分であった。
そのほか、特許文献3には、油脂とモノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする油脂組成物が記載されている。このバッター改質剤では、起泡性はあるものの、バッター液の安定性及びフライ食品におけるサクサク感や曳き性で十分に改善できるものではなかった。
特開平07−079711公報 特開2002−291434公報 特開2012−231805公報
本発明の課題は、乳化安定性や、使用時における水への分散性に優れた水中油型乳化組成物であって、フライ直後のサクサクとしたクリスピー感が、長時間経過後にも維持することができるフライ食品用改質剤、この改質剤を含有するフライ食品用バッター液、フライ食品用麺皮及びフライ食品を提供することである。フライ直後だけでなく、長時間経過後もサクサクとしたクリスピー感を維持し、食感の軽さや曳き性に優れ、またフライ後冷凍し電子レンジ解凍してもその食感を長時間維持できるフライ食品を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、食用油脂、特定の乳化剤、および水を有する水中油型乳化油脂組成物をフライ食品用バッター液に添加することにより、上記の課題を解決することの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の〔1〕〜〔5〕である。
〔1〕食用油脂(A)、乳化剤(B)および水(D)を含有する水中油型乳化油脂組成物からなるフライ食品用改質剤であって、
乳化剤(B)は、
ジグリセリンモノ脂肪酸エステル(b1)、
ポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチン(b2)を含有し、
前記の水中油型乳化油脂組成物の中の
食用油脂(A)の含有量が1〜30質量%であり、
ジグリセリンモノ脂肪酸エステル(b1)の含有量が3〜15質量%であり、
ポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチン(b2)の含有量が0.1〜5.0質量%である、フライ食品用改質剤。
〔2〕更に、糖質(C)を含有し、
前記の水(D)の含有量に対する前記の糖質(C)の含有量の比(C/D)は、0.05〜2.5である、前記の〔1〕に記載のフライ食品用改質剤。
〔3〕フライ食品用バッター液全質量に対して、前記の〔1〕又は〔2〕に記載のフライ食品用改質剤を1〜10質量%含有する、フライ食品用バッター液。
〔4〕穀物粉100質量部に対して、前記の〔1〕又は〔2〕に記載のフライ食品用改質剤を1〜10質量部含有する、フライ食品用麺皮。
〔5〕前記の〔1〕又は〔2〕に記載のフライ食品用改質剤を含有するフライ食品。
本発明によれば、長時間経過後のクリスピー感や、食感の軽さ、曳き性に優れたフライ食品を得ることができるフライ食品用改質剤、この改質剤を含有するフライ食品用バッター液、フライ食品用麺皮及びフライ食品を提供することができる。
また、本発明によれば、フライ直後だけでなく、長時間経過後にもサクサクとしたクリスピー感を維持し、食感の軽さや曳き性に優れたフライ食品を提供することができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
[フライ食品用改質剤]
本発明のフライ食品用改質剤は、食用油脂(A)、乳化剤(B)として、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル(b1)、ポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチン(b2)、および液糖を含有する水中油型乳化油脂組成物である。
<食用油脂(A)>
本発明に用いる食用油脂は、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば大豆油、菜種油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油又はハイオレイックヒマワリ油等の植物油脂、牛脂、ラード、魚油又は乳脂等の動物油脂、更にこれらの動植物油脂を分別、水素添加あるいはエステル交換したもの又は中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられ、好ましくは大豆油又は菜種油等の常温(25℃)で液状の植物油脂である。
本発明の水中油型乳化油脂組成物に含まれる食用油脂(A)の含有量は、1〜30質量%であり、好ましくは3〜10質量%である。1質量%未満の場合には、乳化剤(b1)を溶解しにくく、水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性や乳化剤の分散性が悪くなる。一方、30質量%を超えると、乳化安定性が悪くなる。
<乳化剤(B)>
ジグリセリンモノ脂肪酸エステル〔b1〕
本発明に用いるジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等、公知の方法で製造される。
上記ジグリセリンは、通常グリセリン又はグリシドールあるいはエピクロルヒドリン等を加熱し、重縮合反応させることにより、重合度の異なるポリグリセリンの混合物として得ることができる。また、例えば蒸留あるいはカラムクロマトグラフィー等、公知の方法により、ジグリセリンを高濃度化することもできる。エステル化反応に使用するジグリセリンとしては、グリセリンの平均重合度が約1.5〜2.4のジグリセリン組成物、又はグリセリン2分子からなるジグリセリンの含有量が約50質量%、好ましくは約70質量%、より好ましくは90質量%以上であるジグリセリン組成物が挙げられる。
上記脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられる。更に、バッター液生地の起泡性を向上させるためには、炭素数12〜22の直鎖の飽和脂肪酸が好ましく、特に、パルミチン酸又はステアリン酸を、好ましくは約50質量%以上、より好ましくは約70質量%以上含有する飽和脂肪酸又は飽和脂肪酸混合物である。
本発明で用いられるジグリセリンモノ脂肪酸エステル(b1)の製法の概略は、以下のとおりである。すなわち、上記高純度ジグリセリン組成物と脂肪酸を、例えば高純度のステアリン酸を、例えば等モルで、エステル化反応させることにより、未反応のジグリセリン、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、ジグリセリンジステアリン酸エステル、ジグリセリントリステアリン酸エステル又はジグリセリンテトラステアリン酸エステル等を含む混合物が得られる。次に、該混合物から公知の方法、例えば、低真空度での蒸留等で未反応のジグリセリン等を除き、さらに、例えば、流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて該混合物を分子蒸留することにより、留分として、例えばジグリセリンモノステアリン酸エステルを約70質量%以上含むジグリセリンモノ脂肪酸エステル含有物が得られる。
ジグリセリンモノ脂肪酸エステル(b1)は、バッター液生地の起泡性を向上させる機能を有しており、バッター液生地の起泡性能を向上することにより、フライ食品にサクサク又はパリパリとした食感を付すことができる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物におけるジグリセリンモノ脂肪酸エステル(b1)の含有量は、3〜15質量%であり、好ましくは5〜10質量%である。3質量%未満の場合には、起泡性能が低下し、フライ食品においてサクサク又はパリパリとした食感が弱くなる。一方、15質量%を超えると、水への分散性や起泡性能が悪くなる。
ポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチン〔b2〕
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等の公知の方法で製造される。上記ポリグリセリンは、通常グリセリン又はグリシドールあるいはエピクロルヒドリン等を加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物である。該ポリグリセリンとしては、グリセリンの平均重合度が約3〜18、好ましくは約6〜15のポリグリセリン組成物が挙げられ、それらは例えばトリグリセリン(平均重合度約3)、ヘキサグリセリン(平均重合度約6)、オクタグリセリン(平均重合度約8)又はデカグリセリン(平均重合度約10)等である。
上記脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、好ましくは、炭素数16〜18の直鎖の飽和脂肪酸、即ちパルミチン酸又はステアリン酸等を、好ましくは約50質量%以上、より好ましくは約70質量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物が挙げられる。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの製法の概略は以下のとおりである。すなわち、上記高純度のポリグリセリンと脂肪酸を、例えば等モルでエステル化反応させ、反応終了後、反応液を例えば約100℃で保持しながら約15分間静置することによって反応液を二層分離し、未反応のポリグリセリンを含む層を除去することにより、ポリグリセリン脂肪酸エステルが得られる。好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばトリグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート等が挙げられる。
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、6以上であることが好ましい。また、HLBの上限としては、好ましくは16以下であり、より好ましくは12以下であり、更に好ましくは10以下であり、特に好ましくは8以下である。HLBが6以上のものを使用することにより、水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性および起泡性能を高めることができる。
本発明で用いられる酵素分解レシチンは、レシチンを酵素で処理して改質したものである。レシチンを処理する酵素は、特に制限されないが、例えば、ホスホリパーゼA2等が挙げられる。また、酵素処理後に粉末化した粉末酵素分解レシチンや、分別、精製をした酵素分解分別レシチン等を使用してもよい。
本発明の水中油型乳化油脂組成物におけるポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチン(b2)の含有量は、0.1〜5.0質量%であり、好ましくは1〜3質量%である。0.1質量%未満の場合には、水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなり、また、水への分散性や起泡性能も悪い。一方、5.0質量%を超えると、乳化安定性や起泡性が低下し、更に風味も悪くなる。
その他の乳化剤
本発明の水中油型乳化油脂組成物には、上記(b1)〜(b2)の乳化剤以外の乳化剤を使用してもよい。例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。
水中油型乳化油脂組成物における乳化剤(B)の総含有量は、特に制限されないが、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは10〜20質量%である。
<糖質(C)>
本発明の水中油型乳化油脂組成物には、糖質(C)を含有することが好ましい。糖質を含有することによりO/W型の乳化安定性が優れるという効果を奏する。
糖質は、糖類、糖アルコール及び多価アルコール類から選ばれる1種以上が用いられる。糖類としては、例えばキシロース、ブドウ糖、果糖等の単糖、ショ糖、乳糖又は麦芽糖等のオリゴ糖、又はデキストリンあるいは水飴等のでん粉分解物、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース又はマルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖等が挙げられる。糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、マルチトール又は還元水飴等が挙げられる。多価アルコールとしては、プロピレングリコール、グリセリン又はポリグリセリン等が挙げられ、好ましくはソルビトール又は還元水飴等である。これら糖類、糖アルコール又は多価アルコールは、単独で用いるか、又は2種以上の混合物として用いることができる。
<水(D)>
本発明で用いられる水(D)は、飲用可能なものであれば特に制限はなく、例えば蒸留水、イオン交換樹脂処理水、逆浸透膜(RO)処理水又は限外ろ過膜(UF)処理水等の精製水、水道水、地下水あるいは涌水等の天然水又はアルカリイオン水等が挙げられる。
水(D)の含有量に対する糖質(C)の含有量の比(C/D)は、特に制限されないが、好ましくは0.05〜2.5である。水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性を高め、かつ、菌の増幅等を抑制して、保存安定性を高めるという観点から、より好ましくは2.0〜2.4である。
[水中油型乳化油脂組成物の製造方法]
本発明における水中油型乳化油脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。以下に、好ましい水中油型乳化油脂組成物の製造方法を例示する。
例えば、食用油脂(A)と油溶性の乳化剤(B)(b1成分および油溶性のb2成分)を合して約65〜90℃程度に加熱し、該油相を攪拌しながら、この中に約60〜90℃程度に加熱し溶解した糖質(C)と水(必要に応じて水溶性のb2成分)からなる水相をゆっくり加え乳化する。次に、得られた乳化液を攪拌しながら急冷し、その後、必要であればテンパリング操作を行い、本発明の水中油型乳化油脂組成物を得る。得られた組成物の性状は乳化剤の濃度等により異なり一様ではないが、おおむね液状、ペースト状あるいはゲル状を呈する。
また、糖質(C)と水(必要に応じて水溶性のb2成分)からなる水相を約60〜90℃程度に加熱し、該水相を攪拌しながら、この中に約65〜90℃程度に加熱し溶解した食用油脂(A)と乳化剤(B)(b1成分および油溶性のb2成分)からなる油相をゆっくり加え乳化してもよい。次に、得られた乳化液を攪拌しながら急冷し、その後、必要であればテンパリング操作を行い、本発明の水中油型乳化油脂組成物を得ることもできる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物を製造するための装置としては特に限定されず、例えば、攪拌機、加熱用のジャケット又は邪魔板等を備えた通常の攪拌・混合槽を用いることができる。攪拌機に装備する攪拌翼の形状はプロペラ型、かい十字型、ファンタービン型、ディスクタービン型又はいかり型のいずれでも良いが、好ましくはディスクタービン型又はいかり型である。また、TKホモミキサー(製品名;特殊機化工業社製)、クレアミックス(製品名;エムテクニック社製)等の高速回転式ホモジナイザーも使用することができる。
乳化液の冷却は、前記加熱用のジャケットに水又は冷媒を通すことにより行われてもよいが、工業的には、攪拌・混合槽より乳化液を抜き出し、ボテーター(ケメトロン社製)、オンレーター(桜製作所社製)又はコンサーム(アルファ・ラバル社製)等の掻きとり式の急冷混捏装置を用いて行われるのが好ましい。
[フライ食品用バッター液]
本発明のフライ食品用バッター液とは、小麦粉、水等を主原料とする液状物であって、本発明の水中油型乳化油脂組成物からなるフライ食品用改質剤を含有すること以外は、常法により製造したものを用いることができる。
バッター液に本発明の改質剤を添加する操作では、水や液糖などの液状の原料に改質剤を添加し、撹拌により起泡させた後、小麦粉等の固体状の原料を添加する。これにより、原料液の内部に微細な気泡が分散するため、バッター液を調製した際にバッター液内部に微細な気泡が形成され、ポーラス構造を有するバッター液を簡単に調整することができる。
そして、このような微細な気泡を有するバッター液に浸漬させた具材を油ちょうしたフライ食品は、フライ後、長時間経過しても、フライ直後のクリスピー感、食感の軽さを有し、曳き性(歯切れ)において優れた効果を発揮することができる。
フライ食品用バッター液における上記改質剤の添加量は、フライ食品用バッター液全質量に対して1〜10質量%であり、好ましくは3〜7質量%であり、特に好ましくは4〜6質量%である。1質量%未満の場合には、改質剤の効果が弱く、フライ直後および長時間経過後にもサクサクとしたクリスピー感を維持し、食感の軽さや曳き性に優れたフライ食品を提供することができない。また、10質量%を超えると硬くなりすぎる。
[フライ食品用麺皮]
本発明のフライ食品用麺皮とは、春巻き、餃子、焼売、ワンタン、パイ等の中具を包むシートであって、本発明の水中油型乳化油脂組成物からなるフライ食品用改質剤を含有すること以外は、常法により製造したものを用いることができる。
例えば、麺皮原料である小麦粉・澱粉・糖類・水等に、本発明の改質剤を添加して混合することにより液状物の生地を調製し、この生地を、100〜180℃に熱したドラム上に薄く塗布してシート状に連続焼成し、これを正方形に裁断することにより製造することができる。ドラム焼成の条件は、成型に適するシート状の麺皮が得られる範囲内であれば、特に限定されるものではない。なお、本発明においては、具材を包むシート状のものであれば、小麦粉以外の穀物粉、例えば、米粉、そば粉等を原料として使用してもよい。麺皮の厚さは、特に制限されないが、0.2〜2mm程度であることが好ましい。
麺皮原料に本発明の改質剤を添加する操作では、水や液糖などの液状の原料に改質剤を添加し、撹拌により起泡させた後、小麦粉等の固体状の原料を添加する。これにより、麺皮の原料液の内部に微細な気泡が分散するため、麺皮を調製した際に麺皮内部に微細な孔が形成される。
そして、このような微細な孔を有する麺皮をフライ食品とすると、外観、クリスピー感、食感の軽さ、曳き性等において、優れた効果を発揮することができる。
フライ食品用麺皮における上記改質剤の添加量は、穀物粉100質量部に対して1〜10質量部であり、好ましくは3〜7質量部であり、特に好ましくは4〜6質量部である。1質量部未満の場合には、改質剤の効果が弱く、油ちょう直後および長時間経過後にもパリパリとしたクリスピー感を維持し、食感の軽さや曳き性に優れたフライ食品を提供することができない。また、10質量部を超える場合には、焼成した際に、皮が割れてしまい、中具を包むことができない。
[フライ食品]
本発明のフライ食品は、本発明のフライ食品用改質剤を必須成分として含有するものであって、例えば、上記のフライ食品用バッター液を使用して得られたコロッケ、とんかつ、メンチカツ、白身魚フライ、天ぷら、唐揚げ、フリッターや、上記のフライ食品用麺皮を使用して得られた春巻き、餃子、焼売、パイ等が挙げられる。
本発明のフライ食品に使用するその他の原料としては、特に限定するものでなく、通常、小麦粉、澱粉などの粉体、あるいは市販のバッターミックスと水等が挙げられる。本発明のフライ食品の製法としては、特に制限されないが、これらの原料からバッター液や麺皮を作製後、バッター液に具材を浸漬し、パン粉付けもしくはそのままの状態で油ちょう加熱したり、麺皮で中具を包み、油ちょう加熱したりすればよい。油ちょう加熱の条件は、フライ食品の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、コロッケの場合、140〜210℃の食用油脂中で60〜600秒間油ちょう加熱することにより製造することができる。油ちょう加熱に利用される油としては、パーム油、コーン油等の一般的にフライ調理に用いる食用油脂であれば、特に制限されない。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[水中油型乳化油脂組成物の調製]
(1)水中油型乳化油脂組成物の原材料
A成分:
菜種油…日清オイリオ(株)製
B成分:
〔b1〕
ジグリセリンモノ脂肪酸エステル…理研ビタミン(株)製「ポエムDS−100A」(ジグリセリンモノ脂肪酸エステル含量80質量%、主な構成脂肪酸:ステアリン酸)
〔b2〕
ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:6.9)…Loders Croklaan社製「サントン3−1−S XTR」(トリグリセリンモノステアレート)
C成分およびD成分:
液糖(マルチトール)…三菱商事フードテック(株)製「アマミール」(マルチトール含量70質量%)
(2)水中油型乳化油脂組成物の配合
上記原材料を用いた水中油型乳油脂組成物(実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−5)の配合組成を表1に示した。
(3)水中油型乳化油脂組成物の調製
a)1L容ステンレス製ビーカーにC成分およびD成分を入れ約80℃に加熱し、水相とする。
b)別の容器でA成分を80〜90℃に加熱し、これにB成分を加え、80〜90℃で混合・溶解し、油相とする。
c)該水相をスリーワンモータ(型式:FBL−600;HEIDON社製、攪拌翼3枚羽根タービン型2段装着)で緩やかに(約500rpm)撹拌しながら油相を徐々に加え、入れ終わってから更に20分間撹拌を続け、水中油型乳化液を得た。なお、組成物の総量は600gとした。
d)c)の乳化液をビーカーごと約10℃の高温水槽に漬け、ビーカー内壁をゴムへらで掻き取りながら乳化液を冷却・混練りし、全体を均一で艶の有るペースト状とした。
e)得られたペーストを内面コーティングされた金属製丸缶に移し、45℃で1日間テンパリングし、水中油型乳化油脂組成物を得た。
(4)水中油型乳化油脂組成物の評価
次に、得られた水中油型乳化油脂組成物の「O/W型の安定性」、「水への分散性」および「起泡性能」について評価した。
<O/W型の安定性>
水中油型乳化油脂組成物の状態を目視により確認し、「O/W型の安定性」について、以下の評価基準により評価した。その結果を表1の配合表の下部に記載する。
◎:安定したO/W型を形成する。
○:O/W型を形成する。
△:O/W型を形成するが、乳化不安定である。
×:分離もしくは転相する。
<水への分散性>
水中油型乳化油脂組成物の「水への分散性」は、以下のとおり評価した。その結果を表1の配合表の下部に記載する。
1L容ガラスビーカーに700mlの水を入れた後、水中油型乳化油脂組成物35g(5w/v%)を入れて、スリーワンモータで攪拌した。目視により水中油型乳化油脂組成物の分散状態を確認し、「水への分散性」について以下の評価基準により評価した。
◎:完全に分散する。
○:時間を要するが、分散する。
△:やや分散性が劣る。
×:水への分散性なし。
<起泡性能>
水中油型乳化油脂組成物の「起泡性能」は、以下のとおり評価した。その結果を表1の配合表の下部に記載する。
ホバートミキサー用ボールに500mlの水と水中油型乳化油脂組成物25g(5w/v%)を入れた後、ホイッパーを使用して、中高速で3分間攪拌した。撹拌終了後、約10分後の比重を測定し、以下の評価基準により「起泡性能」を評価した。なお、撹拌前の比重は、1.0g/cmである。
◎:0.80g/cm以下である。
○:0.80g/cmより大きく、0.90g/cm以下である。
△:0.90g/cmより大きく、1.0g/cm未満である。
×:1.0g/cmである(変化なし)。
Figure 0006866701

表1を参照すると、実施例1−1〜1−7では、「O/W型の安定性」、「乳化剤の分散性」、「起泡性能」においても優れた効果を有した。A成分の含有量の最適な範囲は、1〜30質量%であることがわかる。A成分が1質量%未満の場合には、B成分を溶解する油分が不足するため、O/W型の安定性が悪くなる。一方、30質量%を超える場合にも、油分が多すぎるため、O/W型の安定性が悪くなる。b1成分の含有量の最適な範囲は、3〜15質量%であり、b1成分を含有しない比較例1−2では、起泡性能が不良であった。b2成分の含有量の最適な範囲は、0.1〜5質量%であることがわかる。
[フライ食品用バッター液の調製]
(1)フライ食品用バッター液の原材料
薄力粉 …日本製粉(株)製「バイオレット」
加工澱粉 …松谷化学製(株)製「スタビローズ500」
増粘剤 …三栄源エフ・エフ・アイ(株)製「サンエース」
液油 …日清オイリオ(株)製「菜種油」
改質剤 …実施例1−2で調製した水中油型乳化油脂組成物
膨張剤(ベーキングパウダー)…大宮糧食工業(株)製「アイコク ベーキングパウダー赤印」
(2)フライ食品用バッター液の作製及び評価
〔A:とんかつ用バッター液〕
上記原材料を用いたとんかつ用バッター液(実施例2−1、3−1〜3−3、比較例2〜1〜2−3、3−1〜3−2)の配合組成を表2、表3に示した。
(A−1)とんかつ用バッター液の作製
a)まず最初に、食塩水(水および食塩)(5℃)、改質剤または液油を添加後、ホバートミキサーで撹拌し(5℃、stage2×10分)、十分に分散溶解させた後に、薄力粉、片栗粉、(およびベーキングパウダー)のプレミックスを添加して、さらにホバートミキサーで撹拌(5℃、stage2×10分)を行って、とんかつ用バッター液を調製した。
b)上記a)で調整したとんかつ用バッター液に豚肉ロース肉(スライス幅12mm)を浸漬後、パン粉付けを行い、180℃のコーン油で6分間油ちょうし、とんかつを作製して、5時間室温で放置した。
(A−2)バッター液の評価
<生地の起泡性>
調製直後のバッター液と一晩熟成後のバッター液において、「生地の起泡性」を以下の評価基準により評価した。その結果を表2、表3の配合表の下部に記載する。
◎:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:起泡性が全くなし
(A−3)とんかつの評価
フライ直後、および、5時間室温放置後のとんかつの「衣のクリスピー感」、「衣の食感の軽さ」、「衣の曳き(歯切れ)」、「食味」について官能試験を行い、以下の評価基準により評価した。その結果を表2、表3の配合表の下部に記載する。なお、食味は、改質剤、液油、膨張剤を添加した場合の味への影響の有無を評価した。
<フライ後の衣のクリスピー感>
◎:サクサク感が強い。
○:サクサク感がある。
△:サクサク感が弱い。
×:サクサク感がない。
□:ザクザクして硬い
<衣の食感における軽さ>
◎:良好
○:やや良好
△:やや不適
×:不適
<フライ後の衣の曳き(歯切れ)>
◎:簡単に噛み切れる。
○:噛み切りやすい。
△:少し曳きが感じられる。
×:曳きが残る。
Figure 0006866701
表2を参照すると、本発明の水中油型乳化油脂組成物からなる改質剤を添加した実施例2−1では、調製した生地が長時間経過しても脱泡することなく、起泡性を維持することができる。また、この起泡性によってバッター液内部に微細な気泡が形成され、油ちょう後の衣がポーラス構造となることで、クリスピー感、食感の軽さ、曳き性を有する。また、ベーキングパウダーを多量に添加するとえぐ味を呈するのに対して、本発明の改質剤を添加しても食味に影響を与えない。
次に、表3では、フライ食品用バッター液における本発明の改質剤の含有量の最適範囲を示す。
Figure 0006866701
表3を参照すると、1質量%未満であると、その改質効果が弱く、一方、10質量%を超えると、衣が硬くなりすぎて、食感が悪くなってしまう。よって、本発明の改質剤の含有量の最適な範囲は、バッター液100質量%に対して1〜10質量%であることがわかる。
〔B:白身魚フライ用バッター液〕
上記原材料を用いた白身魚用バッター液(実施例4、比較例4)の配合組成を表4に示した。
(B−1)白身魚フライ用バッター液の作製
a)最初に、食塩水(水および食塩)(5℃)、改質剤または液油を添加後、ホバートミキサーで撹拌し(5℃、stage2×10分)、十分に分散溶解させた後に、薄力粉、片栗粉、(およびベーキングパウダー)のプレミックスを添加して、さらにホバートミキサーで撹拌(5℃、stage2×10分)を行って、白身魚フライ用バッター液を調製した。
b)上記a)に解凍した白身魚(ホキ)の切り身30gを浸漬後、パン粉を付着させたものを急速冷凍し、−20℃で1週間冷凍保管した。冷凍のまま、180℃のフライ油(ナタネ油使用)で5分間油ちょうし、白身魚フライを作製し、そのまま5時間室温で放置した。
(B−2)バッター液の評価
調製直後のバッター液と一晩熟成後のバッター液において、「生地の起泡性」を上記「とんかつ用バッター液」と同様に評価した。その結果を表7の配合表の下部に記載する。
(B−3)白身魚フライの評価
フライ直後、および、5時間室温放置後の白身魚フライの「衣のクリスピー感」、「衣の食感の軽さ」、「衣の曳き(歯切れ)」、「食味」について官能試験を行い、上記「とんかつ用バッター液」と評価した。その結果を表4の配合表の下部に記載する。
Figure 0006866701
表4を参照すると、本発明の改質剤添加することで、水分の多い白身魚フライでもフライ後のクリスピー感や曳き性等において優れた効果を奏する。
〔C:クリームコロッケ用バッター液〕
クリークコロッケの中種配合を表5に示した。上記原材料を用いたクリームコロッケ用バッター液(実施例5−1〜5−3、比較例5−1〜5−3)の配合組成を表6に示した。
(C−1)クリームコロッケ用バッター液の作製
a)最初に、食塩水(水および食塩)(5℃)、改質剤または液油を添加後、ホバートミキサーで撹拌し(5℃、stage2×10分)、十分に分散溶解させた後に、薄力粉、加工澱粉、(およびベーキングパウダー)のプレミックスを添加して、さらにホバートミキサーで撹拌(5℃、stage2×10分)を行って、クリームコロッケ用バッター液を調製した。
b)上記a)にクリームコロッケの中種を浸漬後、パン粉付けを行い、180℃のコーン油で3分間油ちょうし、クリームコロッケを作製した。
(C−2)バッター液の評価
調製直後のバッター液と一晩熟成後のバッター液において、「生地の起泡性」を上記「とんかつ用バッター液」と同様評価した。その結果を表6の配合表の下部に記載する。
(C−3)クリームコロッケの評価
フライ直後のクリームコロッケの「衣のクリスピー感」、「衣の食感の軽さ」、「衣の曳き(歯切れ)」、「食味」について官能試験を行い、上記「とんかつ用バッター液」と同様評価した。その結果を表6の配合表の下部に記載する。なお、180℃のコーン油で3分間油ちょう後にパンクした個数を測定評価した。
Figure 0006866701
Figure 0006866701
表6を参照すると、改質剤添加することで、パンクしやすいクリームコロッケのパンク防止において優れた効果を奏していた。
〔D:天ぷら用バッター液〕
上記原材料を用いた天ぷら用バッター液(実施例6、比較例6)の配合組成を表7に示した。
(D−1)天ぷら用バッター液の作製
a)最初に水(5℃)、改質剤または液油を添加後、ホバートミキサーで撹拌し(5℃、stage2×10分)、十分に分散溶解させた後に、市販天ぷら粉を添加して、さらにホバートミキサーで撹拌(5℃、stage2×1分)を行って、天ぷら用バッター液を調製した。
b)上記a)に食べやすい大きさにカットしたエビを浸漬後、180℃のコーン油で3分間油ちょうし、天ぷらを作製し、5時間室温で放置した。
(D−2)天ぷらの評価
フライ直後、および、5時間室温放置後の天ぷらの「衣のクリスピー感」、「衣の曳き(歯切れ)」について官能試験を行い、上記「とんかつ用バッター液」と同様評価した。
Figure 0006866701
表7を参照すると、本発明のフライ食品用改質剤を添加することで、水分の多いエビの天ぷらでもフライ後のクリスピー感や曳き性等において優れた効果を奏する。
[フライ食品用麺皮の調製]
(1)フライ食品用麺皮の原材料
薄力粉 …日本製粉(株)製「バイオレット」
液糖・ぶどう糖 …三菱商事フードテック(株)製「アマミール」
食塩 …日本食塩製造(株)製「特級精製塩」
加工澱粉 …松谷化学製(株)製「スタビローズ500」
液油 …日清オイリオ(株)製「菜種油」
改質剤 …実施例1−2で調製した水中油型乳化油脂組成物
膨張剤(ベーキングパウダー)…大宮糧食工業(株)製「アイコク ベーキングパウダー赤印」
(2)フライ食品用麺皮の作製及び評価
〔E:春巻き用麺皮〕
上記原材料を用いた春巻き用麺皮(実施例7、8−1〜8−3、比較例7−1〜7−3、8−1〜8−2)の配合組成を表8、表9に示した。
(E−1)春巻き用麺皮および揚げ春巻きの調製
a)まず最初に、食塩水(水および食塩)(5℃)、液糖・ぶどう糖、改質剤または液油を添加後、ホバートミキサーで撹拌し(5℃、stage2×10分)、起泡させた後に、薄力粉、加工澱粉、(およびベーキングパウダー)のプレミックスを添加して、さらにホバートミキサーで撹拌(5℃、stage2×10分)を行って、薄力粉バッターを調製した。これを5℃で一晩熟成後焼成し、厚さ0.3〜0.5mmの春巻き皮を製造した。
b)この春巻き皮を170mm×170mmにカットし、野菜、肉、調味料を用いた製造した具材13gを載せ、巻き上げて、春巻きを製造した。この春巻きを一晩冷凍した後、180℃のコーン油で5分間油ちょうし、揚げ春巻きを得た。次に、揚げ春巻きを5時間室温で放置した。
(E−2)薄力粉バッター(生地)の評価
<生地の起泡性>
調製直後の薄力粉バッターと一晩熟成後の薄力粉バッターにおいて、「生地の起泡性」を以下の評価基準により評価した。その結果を表8、表9の配合表の下部に記載する。
◎:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:起泡性が全くなし
<生地焼成時の作業性>
薄力粉バッターを焼成する際の作業性を以下の評価基準により評価した。その結果を表8、表9の配合表の下部に記載する。なお、表9中の「N.D」は、春巻き皮の成形性が悪く、評価できないという意味である。
◎:良好
○:やや良好
△:やや不適
×:不適
(E−3)揚げ春巻きの評価
<外観>
油ちょう直後、および、5時間室温放置後の外観を目視により確認し、以下の評価基準により評価した。その結果を表8、表9の配合表の下部に記載する。
◎:全く揚げムラ(あばた状模様)なし。
○:ほぼ揚げムラなし。
△:少し揚げムラあり。
×:全体的に揚げムラあり。
油ちょう直後、および、5時間室温放置後の揚げ春巻きの「クリスピー感」、「食感の軽さ」、「曳き(歯切れ)」、「食味」について官能試験を行い、以下の評価基準により評価した。その結果を表8、表9の配合表の下部に記載する。なお、食味は、改質剤、液油、膨張剤を添加した場合の味への影響の有無を評価した。
<クリスピー感>
◎:サクサク感が強い。
○:サクサク感がある。
△:サクサク感が弱い。
×:サクサク感がない。
<食感の軽さ>
◎:良好
○:やや良好
△:やや不適
×:不適
<曳き(歯切れ)>
◎:簡単に噛み切れる。
○:噛み切りやすい。
△:少し曳きが感じられる。
×:曳きが残る。
Figure 0006866701
表8を参照すると、本発明の水中油型乳化油脂組成物からなる改質剤を使用すると、生地の熟成中にも脱泡することなく、起泡性を維持することができる。また、この起泡性により均一な孔を有する麺皮が形成され、油ちょう後の揚げ春巻きにおいて、優れた外観、クリスピー感、食感の軽さ、曳き性を有する。また、ベーキングパウダーを多量に添加するとえぐ味を呈するのに対して、本発明の改質剤を添加しても食味に影響を与えない。
次に、表9では、フライ食品用麺皮における本発明の改質剤の含有量の最適範囲を示す。
Figure 0006866701
表9を参照すると、小麦粉100質量部に対して1質量部未満であると、その改質効果が弱く、一方、10質量部を超えると、焼成した皮が割れてしまい、次工程の中具を包むことができない。よって、本発明の改質剤の含有量の最適な範囲は、小麦粉100質量部に対して1〜10質量部であることがわかる。
以下に、本発明の改質剤を構成する水中油型乳化油脂組成物の処方例を挙げる。
〔処方例1〕
菜種油 20質量%
グリセリンモノステアレート 2質量%
ジグリセリンモノオレエート 8質量%
ソルビタン脂肪酸エステル 1質量%
ジアセチル酒石酸モノグリセリド 0.2質量%
乳酸モノグリセリド 0.2質量%
酢酸モノグリセリド 0.2質量%
ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:12) 1質量%
酵素分解レシチン 0.5質量%
カゼインNa 2質量%
液糖(マルチトール、水30質量%) 15質量%
液糖(ソルビトール、水30質量%) 49.9質量%
〔処方例2〕
菜種油 20質量%
グリセリンモノステアレート 5質量%
ジグリセリンモノステアレート 4質量%
ソルビタン脂肪酸エステル 1質量%
ショ糖脂肪酸エステル 0.5質量%
トリグリセリンモノステアレート 3質量%
プロピレングリコール脂肪酸エステル 0.5質量%
コハク酸モノグリセリド 1質量%
クエン酸モノグリセリド 1質量%
ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:6) 1質量%
ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB:4.7) 1質量%
酵素分解分別レシチン 0.5質量%
液糖(マルチトール、水30質量%) 16.5質量%
液糖(ソルビトール、水30質量%) 45質量%
本発明のフライ食品用改質剤は、例えば、コロッケ、とんかつ、メンチカツ、魚フライ、天ぷら、から揚げ、フリッター等のフライ用バッター液に添加され、これらのフライ食品の衣のサクサク感を高め、食感の軽さ、曳き(歯切れ)を改善することができる。
本発明のフライ食品用改質剤は、例えば、揚げ春巻き、揚げ餃子、揚げ焼売、揚げワンタン、揚げパイ等のフライ食品の麺皮に添加され、これらのフライ食品の皮のパリパリ感を高め、食感の軽さ、曳き(歯切れ)を改善することができる。
本発明のフライ食品用改質剤、フライ用バッター液及びフライ食品用麺皮は、冷凍食品、惣菜、ファストフード等において好適に利用することができる。


Claims (5)

  1. 食用油脂(A)、乳化剤(B)および水(D)を含有する水中油型乳化油脂組成物からなるフライ食品用改質剤であって、
    乳化剤(B)は、
    ジグリセリンモノ脂肪酸エステル(b1)、
    平均重合度が3〜18のポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチン(b2)を含有し、
    前記の水中油型乳化油脂組成物の中の
    食用油脂(A)の含有量が1〜30質量%であり、
    ジグリセリンモノ脂肪酸エステル(b1)の含有量が3〜15質量%であり、
    前記平均重合度が3〜18のポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチン(b2)の含有量が0.1〜5.0質量%である、フライ食品用改質剤。
  2. 更に、糖質(C)を含有し、
    水(D)の含有量に対する前記糖質(C)の含有量の比(C/D)は、0.05〜2.5である、請求項1に記載のフライ食品用改質剤。
  3. フライ食品用バッター液全質量に対して、請求項1又は2に記載のフライ食品用改質剤を1〜10質量%含有する、フライ食品用バッター液。
  4. 穀物粉100質量部に対して、請求項1又は2に記載のフライ食品用改質剤を1〜10質量部含有する、フライ食品用麺皮。
  5. 請求項1又は2に記載のフライ食品用改質剤を含有する、フライ食品。
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