JP6863096B2 - リード線、リード線の製造方法、および車両用電球 - Google Patents

リード線、リード線の製造方法、および車両用電球 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、リード線、リード線の製造方法、および車両用電球に関する。
ガラスを含み、端部に封止部が設けられたバルブと、一端がバルブの内部に設けられ、他端が封止部から露出する一対のリード線と、バルブの内部において一対のリード線の端部に保持されたフィラメントとを備えた車両用電球がある。リード線の端部は折り曲げられ、フィラメントのレグを挟み込むようにして保持している。
ここで、封止部は、ガラスを含むバルブの端部を加熱し、加熱されたバルブの端部を一対のリード線とともに押しつぶすことで形成される。そのため、一対のリード線は、ガラスの熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する材料から形成されている。一般的に、リード線は、Fe−Ni合金を含む芯材と、銅を含み芯材を覆う層と、ニッケルを含み銅を含む層を覆う層と、を有している。Fe−Ni合金を含む芯材を有するリード線の熱膨張係数はガラスの熱膨張係数に近い。そのため、一対のリード線をバルブの端部に封止した際に、リード線と封止部との密着が不完全となりリークが発生するのを抑制することができる。
ところが、Fe−Ni合金を含む芯材の熱膨張係数、銅を含む層の熱膨張係数、およびニッケルを含む層の熱膨張係数は、異なるものとなる。そのため、車両用電球を点灯させた際にフィラメントにおいて発生した熱によりリード線の折り曲げ部が開き、フィラメントのレグがリード線から外れたり、リード線とフィラメントのレグとの電気的な接続が妨げられたりするおそれがある。
そのため、前述した芯材、銅を含む層、およびニッケルを含む層を有する線材と、ニッケルを含む線材とが接合されたリード線が提案されている。芯材、銅を含む層、およびニッケルを含む層を有する線材を封止部に封止すれば、リークが発生するのを抑制することができる。また、ニッケルを含む線材の端部を折り曲げてフィラメントのレグを挟み込めば、フィラメントにおいて発生した熱により折り曲げ部が開くことを抑制することができる。
しかしながら、この様にすると、リード線の構成が複雑となり製造コストの増大を招くことになる。
そこで、簡易な構成を有し、リード線の折り曲げ部が開くのを抑制することができる技術の開発が望まれていた。
特開平9−45291号公報
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成を有し、リード線の折り曲げ部が開くのを抑制することができるリード線、リード線の製造方法、および車両用電球を提供することである。
実施形態に係るリード線は、線状を呈し、鉄とニッケルを含む芯材と;ニッケルを含み、前記芯材の表面を覆う被覆層と;を有している。前記被覆層の厚みは、1.0μm以上、6.0μm以下であり、前記リード線を50℃〜1000℃まで昇温させて、水素放出量を測定した場合に、(水素量のピーク値)/(水素量の平均値)が2.5以下となる。
本発明の実施形態によれば、簡易な構成を有し、リード線の折り曲げ部が開くのを抑制することができるリード線、リード線の製造方法、および車両用電球を提供することができる。
本実施の形態に係る車両用電球を例示するための模式部分断面図である。 リード線の折り曲げ部を例示するための模式図である。 比較例に係るリード線の断面を例示するための模式図である。 本実施の形態に係るリード線の断面を例示するための模式図である。 リード線からの水素の放出量を例示するためのグラフ図である。
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る車両用電球を例示するための模式部分断面図である。
図2は、リード線の折り曲げ部を例示するための模式図である。
本実施の形態に係る車両用電球1は、二輪車や四輪車(自動車)などの車両に設けられる制動灯、方向指示灯あるいは尾灯などに用いることができる。
また、図1に例示をする車両用電球1は、口金を有さないウエッジベース電球である。 ただし、車両用電球1の用途や形態は例示をしたものに限定されるわけではない。
本実施の形態に係る車両用電球1は、バルブ2の内部においてフィラメント4を保持する一対のリード線6を有するものに適用することができる。
図1に示すように、車両用電球1には、バルブ2、封止部3、フィラメント4、固定部材5、およびリード線6が設けられている。
バルブ2は、一端が半球状を呈した筒状体となっている。バルブ2の形状は、例示をしたものに限定されるわけではなく、例えば、A形、G形、PS形、R形、T形やこれらの複合形、あるいは板状体や皿状体などからなる平板形などとすることもできる。バルブ2の他端には、封止部3が設けられている。
また、バルブ2は、透光性材料から形成されている。そのため、バルブ2は、透光性を有する気密容器となっている。
バルブ2は、例えば、ソーダライムガラスやアルカリ・アルカリ土類ケイ酸ガラス(鉛フリーガラスなどとも称される)などのガラスから形成することができる。
ガラスの物理的特性は、例えば、軟化点が665℃、徐冷点が480℃、歪点が440℃、熱伝導率(100℃)が1.1(W/(m・K))、熱膨張係数(30℃〜380℃)が5×10−6/℃以上(例えば、9.45×10−6/℃)である。
この場合、バルブ2は、透光性を有していればよい。例えば、バルブ2は、無色透明であってもよいし、着色されていてもよい。また、バルブ2の表面や内面には、着色膜、反射膜、散光膜、蛍光体膜などの被膜や、凹凸が設けられていてもよい。バルブ2は、散乱材や蛍光体などを含む材料から形成されていてもよい。
気密容器であるバルブ2の内部は、大気圧よりも減圧されるか、不活性ガスが封入されている。封入される不活性ガスは、例えば、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、または、これらの混合ガスなどとすることができる。また、封入される不活性ガスは、窒素(N)などをさらに含むこともできる。
不活性ガスが封入される場合には、バルブ2の内部の圧力が、0.5MPa〜3.0MPa程度となるようにすることができる。
不活性ガスを封入すれば、フィラメント4の蒸発を抑制し、車両用電球1の寿命を長くすることができる。
封止部3は、直方体形状を有している。
前述したように、封止部3は、バルブ2の一方の端部を封止している。例えば、封止部3は、バルブ2の端部を加熱し、加熱されたバルブ2の端部を一対のリード線6とともに押しつぶすことで形成することができる。この場合、封止部3もガラスから形成されることになる。
封止部3には、封止部3の内部を貫通し、バルブ2の内部に通じた排気管3aが設けられている。排気管3aは、バルブ2の内部を排気したり、バルブ2の内部に不活性ガスを封入したりする際に用いられる。排気管3aの外気側の端部は、封止されている。
また、封止部3には、車両用電球1を車両に設けられた灯具に保持させる際に用いる凸状の爪部などを設けることができる。
フィラメント4は、コイル4aと、コイル4aの両端にそれぞれ設けられたレグ4bを有している。
コイル4aは、線材を巻き回すことで形成されている。
レグ4bは、コイル4aの端部から直線状に伸びている。
コイル4aとレグ4bは、一体に形成されている。フィラメント4(コイル4a、レグ4b)は、例えば、タングステン(W)を主成分として含む線材から形成することができる。
固定部材5は、バルブ2の内部に設けられている。固定部材5は、一対のリード線6を保持する。固定部材5は、例えば、ガラスから形成することができる。固定部材5は、例えば、加熱されたガラスからなる部材を一対のリード線6とともに押しつぶすことで形成することができる。この場合、バルブ2、封止部3、および固定部材5は、同じ材料から形成することもできる。
リード線6は、線状を呈している。リード線6の断面寸法(直径寸法)は、例えば、0.2mm以上、0.76mm以下とすることができる。
図2に示すように、リード線6の一端は折り曲げられ、フィラメント4のレグ4bを挟み込むようにして保持している。リード線6の他端は、封止部3から露出している。リード線6の封止部3から露出している部分は、外部の電源などと接続するための端子となる。
ここで、リード線6の材料の熱膨張係数と、封止部3の材料であるガラスの熱膨張係数との差が大きくなると、リード線6と封止部3との密着が不完全となりリークが発生するおそれがある。
そのため、リード線6は、ガラスの熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する材料から形成されている。
図3は、比較例に係るリード線の断面を例示するための模式図である。
図3に示すように、リード線16は、芯材16a、被覆層16b、および被覆層16cを有する。
芯材16aは、線状を呈している。芯材16aの断面形状は、例えば、円形である。
芯材16aは、ガラスの熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する材料から形成されている。芯材16aは、例えば、鉄(Fe)とニッケル(Ni)を含む合金から形成することができる。
被覆層16bは、芯材16aの表面を覆っている。被覆層16bは、例えば、銅(Cu)を含む。
被覆層16cは、被覆層16bの表面を覆っている。被覆層16bは、例えば、ニッケルを含む。ニッケルを含む被覆層16cを設ければ、リード線16を封止部3に封止する際に、銅を含む被覆層16bが酸化するのを抑制することができる。また、リード線16を封止部3に封止する際に被覆層16cの表面が酸化して酸化ニッケルが生成されると、酸化ニッケルがガラス中に拡散するので、リード線16と封止部3とを密着させることができる。
そのため、リード線16を用いれば、リード線16と封止部3との密着が不完全となりリークが発生するのを抑制することができる。
ところが、芯材16a、被覆層16b、および被覆層16cの材料が異なるため、これらの熱膨張係数が異なるものとなる。前述したように、リード線16の一端は折り曲げられ、フィラメント4のレグ4bを挟み込むようにして保持している。そのため、芯材16a、被覆層16b、および被覆層16cの熱膨張係数が異なると、フィラメント4において発生した熱によりリード線16の折り曲げ部が開き、フィラメント4のレグ4bがリード線16から外れたり、リード線16とフィラメント4のレグ4bとの電気的な接続が妨げられたりするおそれがある。
この場合、リード線16の一方の端部にニッケルからなる線を接合し、ニッケルからなる線の端部を折り曲げて、フィラメント4のレグ4bを挟み込めば、フィラメント4において発生した熱により折り曲げ部が開くのを抑制することができる。しかしながら、この様にすれば、リード線の構成が複雑となり製造コストの増大を招くことになる。
本発明者らは検討の結果、被覆層の種類を減らせば、折り曲げ部6cが開くのを抑制できるとの知見を得た。
図4は、本実施の形態に係るリード線の断面を例示するための模式図である。
図4に示すように、リード線6は、芯材6a、および被覆層6bを有する。
芯材6aは、線状を呈している。芯材6aの断面形状は、例えば、円形である。
芯材6aは、ガラスの熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する材料から形成されている。芯材6aは、例えば、鉄とニッケルを含む。芯材6aは、例えば、鉄とニッケルを含む合金から形成することができる。芯材6aは、例えば、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Cr合金、Fe−Ni−Co合金などから形成することができる。
被覆層6bは、芯材6aの表面を覆っている。被覆層6bは、ニッケルを含む。
前述したように、リード線6の表面がニッケルで覆われていれば、リード線6を封止部3に封止する際に生成された酸化ニッケルがガラス中に拡散するので、リード線6と封止部3とを密着させることができる。また、ニッケルは銅よりも酸化しにくいので、リード線6の封止部3から露出している部分が酸化して、接続不良が発生するのを抑制することができる。
そのため、被覆層6bはニッケルを含む層となっている。
本実施の形態に係るリード線6は、比較例に係るリード線16よりも被覆層の種類が少ない。そのため、車両用電球1の点滅時に発生する熱応力の影響を低減させることができる。その結果、フィラメント4において発生した熱により折り曲げ部6cが開くのを抑制することが容易となる。また、リード線6の構成を簡易なものとすることができる。
ところが、単に、銅を含む被覆層16bを省くと、リード線6を封止部3に封止する際に、リード線6の近傍に気泡が発生することが判明した。リード線6の近傍に気泡が発生すると、リード線6と封止部3との間に隙間が生じ易くなり、リークが発生するおそれがある。気泡は、リード線6を封止部3に封止する際に、芯材6aおよび被覆層6bに吸着されていたガスが放出されたことで形成されたものと考えられる。比較例に係るリード線16の場合には、銅を含む被覆層16bが設けられているので、芯材16aに吸着されていたガスが外部に放出されるのを抑制することができる。ところが、本実施の形態に係るリード線6には、銅を含む被覆層16bが設けられていないので、リード線6の近傍に気泡が発生し易くなったものと考えられる。
本発明者らはさらなる検討の結果、芯材6aの形成後、および、所定の厚みを有する被覆層6bの形成後にそれぞれ所定の熱処理を施せば、気泡の発生を抑制できるリード線6が得られるとの知見を得た。
次に、本実施の形態に係るリード線6の製造方法について説明する。
まず、芯材6aを形成する。
例えば、Fe−Ni合金の溶湯を生成し、真空鋳造法などによりFe−Ni合金の鋳塊を形成する。続いて、熱間圧延法などにより鋳塊から圧延線材を形成し、圧延線材に冷間伸線と熱処理とを繰り返し施し、例えば、直径寸法が0.2mm〜0.76mm程度の芯材6aを形成する。
次に、芯材6aに第1の熱処理を施す。
例えば、加熱炉を用いて芯材6aに熱処理を施すことができる。
この場合、例えば、窒素または水素(H)の雰囲気中において、芯材6aを700℃以上に加熱することができる。芯材6aを700℃以上に加熱すれば、芯材6aに吸着していたガスや水分を除去することができる。この場合、芯材6aを800℃以上に加熱すれば、芯材6aに吸着していたガスや水分を除去するのが容易となる。また、芯材6aを900℃以上に加熱すれば、芯材6aに残る歪を除去することが容易となる。芯材6aに残る歪を除去できれば、所望の熱膨張係数を有する芯材6aを得ることが容易となる。
加熱時間は、芯材6aの直径寸法と加熱温度などに応じて適宜調整することができる。
例えば、芯材6aの直径寸法が0.76mm程度、加熱温度が900℃程度の場合には、加熱時間は、20秒〜200秒程度とすることができる。
また、窒素は水素に比べて芯材6aに吸着しにくい。そのため、窒素の雰囲気中において芯材6aに熱処理を施せば、加熱後の冷却時に芯材6aに吸着するガスの量を抑制することができる。そのため、窒素の雰囲気中において芯材6aに熱処理を施すことがより好ましい。
次に、芯材6aの表面に被覆層6bを形成する。
被覆層6bは、例えば、メッキ法やスパッタリング法などの成膜法を用いて形成することができる。
例えば、電気メッキ法を用いて、芯材6aの表面にニッケルを含む被覆層6bを形成することができる。
ここで、前述したように、封止部3は、バルブ2の端部を加熱し、加熱されたバルブ2の端部を一対のリード線6とともに押しつぶすことで形成される。そのため、封止部3を形成する際にリード線6が加熱されることになる。
この場合、被覆層6bの厚みを薄くしすぎると、リード線6が加熱された際に、芯材6aに含まれていた鉄が被覆層6bの表面に析出しやすくなることが判明した。鉄は酸化しやすいので、鉄が被覆層6bの表面に析出していると、リード線6の封止部3から露出している部分が酸化して、接続不良が発生するおそれがある。
また、被覆層6bの厚みを厚くしすぎると、リード線6の折り曲げ部6cが開き易くなることが判明した。リード線6の折り曲げ部6cが開き易くなる理由は必ずしも明らかではないが、被覆層6bの厚みを厚くしすぎると、熱応力の影響が大きくなることが考えられる。
本発明者らの得た知見によれば、被覆層6bの厚みは、1.0μm以上、6.0μm以下とすることが好ましい。
なお、被覆層6bの厚みに関する詳細は後述する。
次に、表面に被覆層6bが形成された芯材6aに第2の熱処理を施す。
例えば、加熱炉を用いて、表面に被覆層6bが形成された芯材6aに熱処理を施すことができる。
例えば、窒素または水素の雰囲気中において、表面に被覆層6bが形成された芯材6aを700℃以上に加熱することができる。表面に被覆層6bが形成された芯材6aを700℃以上に加熱すれば、被覆層6bに吸着していたガスや水分を除去することができる。またさらに、芯材6aに吸着していたガスや水分を除去することもできる。この場合、表面に被覆層6bが形成された芯材6aを800℃以上に加熱すれば、被覆層6bに吸着していたガスや水分を除去するのが容易となる。また、表面に被覆層6bが形成された芯材6aを800℃以上に加熱すれば、芯材6aに吸着していたガスや水分を除去することも容易となる。また、表面に被覆層6bが形成された芯材6aを900℃以上に加熱すれば、芯材6aに残る歪を除去することが容易となる。
この場合、加熱時間を長くしすぎると、芯材6aに含まれていた鉄が被覆層6bの表面に析出しやすくなる。
そのため、第2の熱処理における加熱時間は、第1の熱処理における加熱時間よりも短くなっている。この場合、第2の熱処理における加熱時間は、表面に被覆層6bが形成された芯材6aの直径寸法と加熱温度などに応じて適宜調整することができる。
例えば、表面に被覆層6bが形成された芯材6aの直径寸法が0.3mm程度、加熱温度が900℃程度の場合には、加熱時間は、20秒〜30秒程度とすることができる。 また、窒素は水素に比べて被覆層6bに吸着しにくい。そのため、窒素の雰囲気中において表面に被覆層6bが形成された芯材6aに熱処理を施せば、加熱後の冷却時に被覆層6bに吸着するガスの量を抑制することができる。そのため、窒素の雰囲気中において表面に被覆層6bが形成された芯材6aに熱処理を施すことがより好ましい。
以上の様にして、本実施の形態に係るリード線6を製造することができる。
すなわち、本実施の形態に係るリード線の製造方法は、以下の工程を備えることができる。
線状を呈し、鉄とニッケルを含む芯材6aを形成する工程。
水素または窒素の雰囲気中において、芯材6aに第1の熱処理を施す工程。
第1の熱処理が施された芯材6aの表面に、ニッケルを含む被覆層6bを形成する工程。
水素または窒素の雰囲気中において、被覆層6bが形成された芯材6aに第2の熱処理を施す工程。
この場合、被覆層6bを形成する工程において、厚みが、1.0μm以上、6.0μm以下の被覆層6bが形成される。
また、第1の熱処理における加熱温度は700℃以上とすることができる。
第2の熱処理における加熱温度は700℃以上とすることができる。
なお、第2の熱処理の後に、表面に被覆層6bが形成された芯材6aをさらに細くすることもできる。
例えば、冷間伸線により、表面に被覆層6bが形成された芯材6aの直径寸法をさらに小さくすることができる。
冷間伸線を行えば、表面に被覆層6bが形成された芯材6aに歪みが発生する。そのため、冷間伸線の後、表面に被覆層6bが形成された芯材6aに熱処理をさらに施すことができる。熱処理の条件は、例えば、前述した第2の熱処理の条件と同様とすることができる。
次に、第1の熱処理、第2の熱処理、および、被覆層6bの厚みについてさらに説明する。
表1および表2は、比較例に係る場合である。すなわち、表1および表2は、第2の熱処理のみを行い、第1の熱処理を行わなかった場合である。表1は、第2の熱処理が窒素の雰囲気中において行われた場合である。表2は、第2の熱処理が水素の雰囲気中において行われた場合である。
評価項目の「気泡発生」においては、肉眼で気泡が確認できなかった場合を「◎」とし、肉眼で微細な気泡は確認できるがリード線6と封止部3との間の密着性に問題がない場合を「○」とし、肉眼で気泡が確認でき、且つ、リークが発生している場合を「×」としている。
評価項目の「鉄の析出」においては、被覆層6bの表面が変色していない場合を「○」とし、被覆層6bの表面が変色した場合を「×」としている。
評価項目の「導通」においては、車両用電球1を所定の点滅サイクルで所定の回数点滅させ、点灯状態に問題がない場合を「○」、不灯となった場合を「×」としている。なお、点滅の1サイクルは、点灯を3分間、消灯を3分間とした。また、点滅回数は500回とした。
Figure 0006863096

Figure 0006863096
表1および表2から分かるように、被覆層6bの厚みが0.5μm以下となれば、芯材6aに含まれていた鉄が被覆層6bの表面に析出する。鉄は酸化しやすいので、鉄が被覆層6bの表面に析出していると、リード線6の封止部3から露出している部分が酸化して接続不良が発生し、不灯となる。一方、被覆層6bの厚みが10.0μm以上となれば、リード線6の折り曲げ部6cが開き易くなり、不灯となる。
また、第1の熱処理を行わなければ、気泡の発生を抑制することができない。
表3〜表6は、第1の熱処理および第2の熱処理を行った場合である。表3は、第1の熱処理および第2の熱処理が窒素の雰囲気中において行われた場合である。表4は、第1の熱処理が水素の雰囲気中において行われ、第2の熱処理が窒素の雰囲気中において行われた場合である。表5は、第1の熱処理および第2の熱処理が水素の雰囲気中において行われた場合である。表6は、第1の熱処理が窒素の雰囲気中において行われ、第2の熱処理が水素の雰囲気中において行われた場合である。
評価項目と評価基準は、表1および表2の場合と同様としている。
Figure 0006863096

Figure 0006863096

Figure 0006863096

Figure 0006863096
表3〜表6から分かるように、被覆層6bの厚みが0.5μm以下となれば、芯材6aに含まれていた鉄が被覆層6bの表面に析出する。鉄は酸化しやすいので、鉄が被覆層6bの表面に析出していると、リード線6の封止部3から露出している部分が酸化して接続不良が発生し、不灯となる。一方、被覆層6bの厚みが10.0μm以上となれば、リード線6の折り曲げ部6cが開き易くなり、不灯となる。
そのため、被覆層6bの厚みは、1.0μm以上、6.0μm以下とすることが好ましい。
また、第1の熱処理および第2の熱処理を行えば、封止部3の内部において、リード線6の近傍に気泡が発生するのを抑制することができる。気泡の発生を抑制できれば、リード線6と封止部3との間に隙間が生じるのを抑制できるので、リークが発生するのを抑制することができる。
この場合、窒素は水素に比べて、芯材6aおよび被覆層6bに吸着しにくい。そのため、表3に例示をした場合(第1の熱処理および第2の熱処理が窒素の雰囲気中において行われた場合)における気泡の発生が最も少なくなる。
芯材6aの体積は被覆層6bの体積よりも大きいので、表6に例示をした場合(第1の熱処理が窒素の雰囲気中において行われ、第2の熱処理が水素の雰囲気中において行われた場合)における気泡の発生が次に少なくなる。
また、表4に例示をした場合(第1の熱処理が水素の雰囲気中において行われ、第2の熱処理が窒素の雰囲気中において行われた場合)における気泡の発生がその次に少なくなる。
また、表5に例示をした場合(第1の熱処理および第2の熱処理が水素の雰囲気中において行われた場合)における気泡の発生は、表3、表4、および表6に例示をした場合に比べると若干多くなるが気泡の発生を低減させることができる。
図5は、リード線からの水素の放出量を例示するためのグラフ図である。
図5中の「A」は、第1の熱処理および第2の熱処理を行わなかったリード線6の場合である。「B」は、窒素の雰囲気中において第1の熱処理および第2の熱処理を行ったリード線6の場合である。
測定に用いたリード線6の直径寸法は0.3mm、長さは10mm、被覆層6bの厚みは2μmとした。
測定には、電子科学(株)製のTDS(昇温脱離分析装置)、型式:EMD−WA1000S/Wを用いた。測定温度範囲は50℃〜1000℃とし、昇温速度は60℃/分とした。測定対象のガスは水素である。
図5から分かるように、第1の熱処理および第2の熱処理を行えば、ガスの発生を大幅に抑制することができる。そのため、封止部3の内部において、リード線6の近傍に気泡が発生するのを抑制することができる。気泡の発生を抑制できれば、リード線6と封止部3との間に隙間が生じるのを抑制できるので、リークが発生するのを抑制することができる。なお、「A」において380℃の近傍において発生した水素は、主に、被覆層6bに吸着していたものと考えられる。
は、水素量のピーク値/水素量の平均値と、気泡発生の関係を例示するための表である。
なお、水素量のピーク値は、50℃〜1000℃までの範囲における水素放出量の最大値である。
水素量の平均値は、50℃〜1000℃までの範囲における水素放出量の平均値である。
また、評価項目の「気泡発生」においては、肉眼で気泡が確認できなかった場合を「◎」とし、肉眼で微細な気泡は確認できるがリード線6と封止部3との間の密着性に問題がない場合を「○」とし、肉眼で気泡が確認でき、且つ、リークが発生している場合を「×」としている。
Figure 0006863096

表7から分かるように、(水素量のピーク値)/(水素量の平均値)が2.5以下となれば、気泡の発生を効果的に抑制することができる。
すなわち、本実施の形態に係るリード線6を50℃〜1000℃まで昇温させて、水素放出量を測定した場合に、(水素量のピーク値)/(水素量の平均値)が2.5以下となる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
1 車両用電球、2 バルブ、3 封止部、4 フィラメント、4a コイル、4b レグ、5 固定部材、6 リード線、6a 芯材、6b 被覆層、6c 折り曲げ部

Claims (6)

  1. 線状を呈し、鉄とニッケルを含む芯材と;
    ニッケルを含み、前記芯材の表面を覆う被覆層と;
    を有し、
    前記被覆層の厚みは、1.0μm以上、6.0μm以下であり、
    前記リード線を50℃〜1000℃まで昇温させて、水素放出量を測定した場合に、(水素量のピーク値)/(水素量の平均値)が2.5以下となるリード線。
  2. 線状を呈し、鉄とニッケルを含む芯材を形成する工程と;
    水素または窒素の雰囲気中において、前記芯材に第1の熱処理を施す工程と;
    前記第1の熱処理が施された芯材の表面に、ニッケルを含む被覆層を形成する工程と;
    水素または窒素の雰囲気中において、前記被覆層が形成された芯材に第2の熱処理を施す工程と;
    を備え、
    前記芯材に第1の熱処理を施す工程が、前記水素の雰囲気中において行われる場合には、前記被覆層が形成された芯材に第2の熱処理を施す工程が、前記窒素の雰囲気中において行われ、
    前記芯材に第1の熱処理を施す工程が、前記窒素の雰囲気中において行われる場合には、前記被覆層が形成された芯材に第2の熱処理を施す工程が、前記水素または窒素の雰囲気中において行われ、
    前記被覆層を形成する工程において、厚みが、1.0μm以上、6.0μm以下の前記被覆層が形成されるリード線の製造方法。
  3. 前記第1の熱処理における加熱温度は700℃以上である請求項記載のリード線の製造方法。
  4. 前記第2の熱処理における加熱温度は700℃以上である請求項またはに記載のリード線の製造方法。
  5. 前記第2の熱処理における加熱時間は、前記第1の熱処理における加熱時間よりも短い請求項のいずれか1つに記載のリード線の製造方法。
  6. バルブと;
    請求項1載の一対のリード線と;
    前記バルブの一方の端部を封止し、前記一対のリード線を保持する封止部と;
    前記バルブの内部において、前記一対のリード線の折り曲げ部に保持されるフィラメントと;
    を具備した車両用電球。
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