以下、本発明の実施の形態に係る圧縮機について図面等を参照しながら説明する。なお、図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置あるいは部品の配置及び向きを限定するものではない。
実施の形態1.
[圧縮機100]
図1は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機100を示す軸方向断面図である。圧縮機100は、冷凍サイクルを循環する冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧の状態にして吐出するスクロール圧縮機である。圧縮機100は、図1に示すように、シェル20と、モータ30と、圧縮部40と、軸部50とを有している。圧縮機100は、低圧シェル型の圧縮機である。
[シェル20]
シェル20は、圧縮機100の外殻を構成し、耐圧性を有している。シェル20は、有底円筒状をなしており、底部に位置するロアーシェル20aと、ロアーシェル20aに載置され円筒状に形成された中央シェル20bと、中央シェル20bの上部を塞ぐアッパーシェル20cとを有する。シェル20は、油を貯留するための油溜り21を底部に有する。シェル20の下部には、シェル20の油溜り21に配置された、油ポンプ23が収容されている。油ポンプ23は、軸部50の一端側に取り付けられており、シェル20の油溜り21に貯留された油を吸引して軸部50内の給油路50aに供給するものである。給油路50aに供給された油は、圧縮機100の内部の軸受部及びオルダムリング41に供給される。この油は、軸受部及びオルダムリング41を潤滑すると共に冷却する。シェル20の側部には、吸入管27が設けられている。吸入管27は、作動ガスをシェル20の内部に吸入する管である。シェル20の上部には吐出管28が設けられている。吐出管28は、作動ガスをシェル20の外部に吐出する管である。マフラー29は、後述する固定スクロール60の上方に設けられており、吐出ポート65及びサブポート62から吐出された作動ガスの脈動を抑えるものである。
フレーム25は、シェル20の内部において、モータ30の上方に設けられ、シェル20に固定されている。フレーム25には、揺動スクロール70と固定スクロール60とが互いの渦巻ラップ部を互いに噛みあうように組み合わせた状態で実装されている。なお、実施の形態1では、固定スクロール60がフレーム25と固定された例について説明するが、固定スクロール60は、フレーム25とは固定されずにシェル20と固定された構成とすることができる。フレーム25は、主軸受54を介して軸部50を回転自在に支持している。フレーム25には、吸入ポート25aが形成されており、作動ガスは、吸入ポート25aを通って圧縮部40に流入する。サブフレーム26は、シェル20の内部において、モータ30の下方に設けられ、シェル20に固定されている。サブフレーム26は、副軸受55を介して軸部50を回転自在に支持するものである。
排油パイプ24は、フレーム25と揺動スクロール70との間の空間と、フレーム25とサブフレーム26との間の空間とを接続する管である。排油パイプ24は、フレーム25と揺動スクロール70との間の空間に流通する油のうち、過剰な油を、フレーム25とサブフレーム26との間の空間に流出させる。フレーム25とサブフレーム26との間の空間に流出した油は、サブフレーム26を通過して油溜り21に戻る。
[モータ30]
モータ30は、軸部50を回転させるものである。モータ30は、シェル20の内部に設けられ、フレーム25とサブフレーム26との間に設置されている。モータ30は、ロータ31とステータ32とを有している。ロータ31は、ステータ32の内周側に設けられており、軸部50に取り付けられている。ロータ31は、自らが回転することにより、軸部50を回転させる。ステータ32は、焼嵌め等によりシェル20に固定されている。ステータ32は、インバータ(図示せず)から供給された電力によって磁界を発生させ、ロータ31を回転させる。
[圧縮部40]
圧縮部40は、シェル20の内部に設けられ、モータ30によって駆動して作動ガスを圧縮するものである。圧縮部40は、フレーム25に収容されており、固定スクロール60と揺動スクロール70とを有している。固定スクロール60は、シェル20の内部に固定されており、固定スクロール60には、圧縮された作動ガスを吐出させる吐出ポート65及びサブポート62が形成されている。揺動スクロール70は、固定スクロール60に対して公転旋回運動を行い、オルダムリング41によって自転運動が規制されている。固定スクロール60と揺動スクロール70とは、夫々互いに向き合った面に、後述する渦巻状の固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71とが形成されている。圧縮部40は、固定渦巻ラップ部61及び揺動渦巻ラップ部71が噛み合った空間に圧縮室を形成させている。圧縮部40は、揺動スクロール70が軸部50の回転によって揺動されると、圧縮室において作動ガスが圧縮される。なお、圧縮部40の詳細な構成については後述する。
オルダムリング41は、揺動スクロール70に取り付けられた環状の部材であり、揺動スクロール70の自転運動を規制するものである。オルダムリング41は、揺動スクロール70のスラスト下面に形成されたオルダム溝41aに取り付けられている。スライダ42は、軸部50の上部の外周面に取り付けられた筒状の部材であり、揺動スクロール70の下部の内面に位置している。即ち、揺動スクロール70は、スライダ42を介して軸部50に取り付けられており、軸部50の回転に伴って揺動スクロール70も回転する。なお、揺動スクロール70とスライダ42との間には、揺動軸受43が設けられている。スリーブ44は、フレーム25と主軸受54との間に設けられた筒状の部材であり、主軸受54と軸部50の相対的な傾斜を吸収する為の部材である。
[軸部50]
軸部50は、フレーム25に支持されている。軸部50とフレーム25との間に設けられた主軸受54は、例えば銅鉛合金等の滑り軸受からなる軸受構造であり、軸部50を回転自在に軸支している。なお、主軸受54が滑り軸受からなる場合について例示しているが、別の公知の軸受構造によって軸部50を軸支してもよい。軸部50は、給油路50aが内部に形成されており、モータ30と圧縮部40とを接続してモータ30の回転力を圧縮部40に伝達する。
軸部50には、第1のバランサ52が取り付けられている。第1のバランサ52は、フレーム25とロータ31との間に位置している。第1のバランサ52は、揺動スクロール70及びスライダ42によって生じるアンバランスを相殺するものである。第1のバランサ52は、バランサカバー52aに収容されている。また、第2のバランサ53は、ロータ31を介して軸部50に取り付けられている。第2のバランサ53は、ロータ31とサブフレーム26との間に位置し、ロータ31の下面に取り付けられている。第2のバランサ53は、揺動スクロール70及びスライダ42によって生じるアンバランスを相殺するものである。
[圧縮部40の詳細]
次に、圧縮部40の詳細について詳細に説明する。圧縮部40は、前述の如く、固定スクロール60と揺動スクロール70とを有している。固定スクロール60は、シェル20の内部に固定され、外周縁部がフレーム25の上部に載置されている。固定スクロール60は、固定渦巻台板部64と、固定渦巻台板部64に形成された固定渦巻ラップ部61とを有する。固定スクロール60の固定渦巻台板部64には、吐出ポート65とサブポート62が形成されている。圧縮室で圧縮された作動ガスは、吐出ポート65とサブポート62とを通り吐出される。あるいは、固定スクロール60には、サブポート62の代わりにインジェクションポート63が形成されていてもよい。圧縮機100から吐出され、インジェクション回路(図示せず)を通過した中間圧の作動ガスが、インジェクションポート63を通じて、圧縮室に導入される。揺動スクロール70は、揺動渦巻台板部74と、揺動渦巻台板部74に形成された揺動渦巻ラップ部71とを有する。
サブポート62からの圧縮ガスの吐出は、圧縮比の小さい運転条件の際に行われる。圧縮ガスは、圧縮室中央にたどり付く前にサブポート62を通り、アッパーシェル20c内にバイパスされる為、圧縮機100は、過剰な圧縮による動力損失を低減することができる。
インジェクションポート63は、圧縮比の高い条件での運転時に圧縮室内に液相の作動流体を注入する際に利用される。インジェクションポート63は、吐出ガスの温度を低下させ、固定スクロール60、揺動スクロール70の熱膨張による破損を防止する機能を持つものである。
図2は、先行技術における揺動スクロール70と固定スクロール60とチップシール80の形状とを示す水平方向断面図である。図3は、図2の揺動スクロール70が移動した揺動スクロール70と固定スクロール60とを示す拡大図である。これらの水平方向断面の位置は、図1の圧縮機100におけるA−A線部分に相当する。なお、以下の図面では、圧縮機の平面視において、固定渦巻台板部64に形成された吐出ポート65、サブポート62もしくはインジェクションポート63の位置も示している。また、以下に説明するサブポート62a及びサブポート62bの総称はサブポート62であり、インジェクションポート63a及びインジェクションポート63bの総称はインジェクションポート63である。まず、図2及び図3を用いて、圧縮機100と共通するサブポート62及びインジェクションポート63の構成について説明する。図2及び図3に示すように、固定スクロール60の固定渦巻台板部64には、固定スクロール60の外向面側の圧縮室40aにサブポート62aが形成され、固定スクロール60の内向面側の圧縮室40bにサブポート62bが形成されている。サブポート62aと、サブポート62bとは、固定スクロール外向面側の圧縮室40aと固定スクロール内向面側の圧縮室40bの対になる位置に配置されている。固定スクロール60にサブポート62ではなくインジェクションポート63が形成されている場合には、図2及び図3のサブポート62の代わりにインジェクションポート63が形成される。この場合、固定スクロール60の固定渦巻台板部64には、固定スクロール60の外向面側の圧縮室40aにインジェクションポート63aが形成され、固定スクロール60の内向面側の圧縮室40bにインジェクションポート63bが形成されている。インジェクションポート63aと、インジェクションポート63bとは、固定スクロール外向面側の圧縮室40aと固定スクロール内向面側の圧縮室40bの対になる位置に配置されている。サブポート62は、1つでもよく、対となるサブポート62を複数設けても良い。同様に、インジェクションポート63は、1つでもよく、対となるインジェクションポート63を複数設けてもよい。
次に、チップシール80について説明する。固定スクロール60と揺動スクロール70のラップ先端面には、チップシール80と同形状のチップシール嵌合用溝81が形成されており、このチップシール嵌合用溝81には、チップシール80が嵌合されている。揺動スクロール70のチップシール80は、揺動渦巻ラップ部71の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する固定スクロール60の固定渦巻台板部64と接する。また、固定スクロール60のチップシール80(図示せず)は、固定渦巻ラップ部61の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する揺動スクロール70の揺動渦巻台板部74と接する。チップシール80は、圧縮機100の運転中に、固定渦巻台板部64に押付けられながら摺動することで、揺動渦巻ラップ部71と固定渦巻台板部64の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。または、チップシール80は、圧縮機100の運転中に、揺動渦巻台板部74に押付けられながら摺動することで、固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻台板部74の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。サブポート62及びインジェクションポート63は固定スクロール60の固定渦巻台板部64に設けられており、揺動スクロール70のラップ先端面に設けられたチップシール80と接近する。チップシール80のシール性を確保する為に、サブポート62又はインジェクションポート63の直径は、チップシール80を完全に跨がない範囲で設定する必要がある。
ここで、サブポート62又はインジェクションポート63を設ける場合の寸法的制約について説明する。サブポート62又はインジェクションポート63は揺動スクロール70のチップシール80と重なる位置に配置されている為、サブポート62又はインジェクションポート63が完全に揺動スクロール70のチップシール80を跨がない寸法にする必要がある。図3において、δは、チップシール80と固定スクロール60との接触範囲であり、チップシール80と固定スクロール60とによるシール幅である。すなわち、圧縮部40は、シール幅δ>0を満足する様に固定スクロール60にサブポート62又はインジェクションポート63の径を設定する必要がある。
図4は、図3のチップシール80とサブポート62又はインジェクションポート63との関係を示す鉛直方向断面図である。図5は、チップシール80が固定スクロール60と接しない場合の圧縮部40の鉛直方向断面図である。図4は、チップシール80と固定スクロール60とによるシール幅δを、シール幅δ>0に形成した場合の圧縮部40の鉛直方向断面図である。この時、圧縮部40は、揺動スクロール70のチップシール80と固定渦巻台板部64とが接触するシール幅δが存在する為、高圧室46から低圧室45への漏れが発生しない。なお、シール幅δの上限値は、チップシール80の幅γである。図5は、チップシール80と固定スクロール60とによるシール幅δを、シール幅δ<0に形成した場合の圧縮部40の鉛直方向断面図である。この時、揺動スクロール70のチップシール80と固定渦巻台板部64とが接触するシール幅δが存在しない為、高圧室46と低圧室45がサブポート62を通じて連通してしまい、高圧室46から低圧室45へと作動ガスの漏れが発生してしまう。従って、サブポート62又はインジェクションポート63の径はδ>0を満足する範囲でしか大きくすることができず、サブポート62又はインジェクションポート63の径を大きく設ける為には揺動スクロール70のチップシール80の形状を工夫する必要がある。
図6は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機100における揺動スクロール70と固定スクロール60とチップシール82の形状とを示す軸方向断面図である。固定スクロール60と揺動スクロール70のラップ先端面には、チップシール82と同形状のチップシール嵌合用溝81が形成されており、このチップシール嵌合用溝81には、チップシール82が嵌合されている。揺動スクロール70のチップシール82は、揺動渦巻ラップ部71の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する固定スクロール60の固定渦巻台板部64と接する。また、固定スクロール60のチップシール82(図示せず)は、固定渦巻ラップ部61の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する揺動スクロール70の揺動渦巻台板部74と接する。チップシール82は、圧縮機100の運転中に、固定渦巻台板部64に押付けられながら摺動することで、揺動渦巻ラップ部71と固定渦巻台板部64の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。または、チップシール82は、圧縮機100の運転中に、揺動渦巻台板部74に押付けられながら摺動することで、固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻台板部74の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。サブポート62又はインジェクションポート63は固定スクロール60の固定渦巻台板部64に設けられており、揺動スクロール70のラップ先端面に設けられたチップシール82と接近する。チップシール82のシール性を確保する為に、サブポート62又はインジェクションポート63の直径は、チップシール82を完全に跨がない範囲で設定する必要がある。
図6に示すように、チップシール82は、異なる曲率を有する複数の曲線で構成されており、第1曲線部82aと、第2曲線部82bと、第3曲線部82cと、の3つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されている。チップシール82は、図6において、曲線の境目を明示する為、切れ目がある様に図示しているが、チップシール82は切れ目の無い一体物である。すなわち、チップシール82は、異なる曲率を有する複数の曲線が連続して形成されている。チップシール82は、サブポート62もしくはインジェクションポート63と接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して、外周の端縁部71b側及び内周の端縁部71c側に配置されている。
チップシール82は、固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通る第1曲線部82aを有する。もしくは、チップシール82は、固定スクロール60の外向面側のインジェクションポート63aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通る第1曲線部82aを有する。第1曲線部82aは、揺動スクロール70の揺動渦巻ラップ部71と同じ曲率のインボリュート曲線で構成されている。
チップシール82は、固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通る第2曲線部82bを有する。もしくは、チップシール82は、固定スクロール60の内向面側のインジェクションポート63bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通る第2曲線部82bを有する。第2曲線部82bは、揺動スクロール70の揺動渦巻ラップ部71と同じ曲率のインボリュート曲線で構成されている。
第1曲線部82aと第2曲線部82bとの境目は、たとえば、揺動スクロール70よりも大きな曲率半径のインボリュート曲線等、滑らかな曲線に形成された第3曲線部82cで繋ぎ合わされている。実施の形態1に係る圧縮機100では、チップシール82が、3つの曲線部分で構成されているが、サブポート62又はインジェクションポート63の数に応じてチップシール82を構成する曲線部分の数を変更すると良いことは言うまでもない。なお、固定スクロール60のチップシール82の形状は、従来通り、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61と同じ曲率のインボリュート曲線で形成され、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61の幅方向において中央71aに配置されていてもよい。
以上のように、圧縮機100のチップシール82は、サブポート62もしくはインジェクションポート63と接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して、外周の端縁部71b側及び内周の端縁部71c側に配置されている。すなわち、チップシール82の固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、サブポート62から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機100は、チップシール82を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、サブポート62の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール82を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、サブポート62の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。これに対し、圧縮機100は、チップシール82が、第1曲線部82aと、第2曲線部82bと、第3曲線部82cと、の3つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されているため、この制約値以上にサブポート62の径を拡大することが可能である。
また、サブポート62の代わりにインジェクションポート63を設ける圧縮機100について同様にインジェクションポート63を大きく設計できる。圧縮機100は、チップシール82のインジェクションポート63aと、インジェクションポート63bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、インジェクションポート63から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機100は、チップシール82を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、インジェクションポート63の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール82を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、インジェクションポート63の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。圧縮機100は、チップシール82が、上記構成を有する第1曲線部82aと、第2曲線部82bと、第3曲線部82cと、の3つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されているため、この制約値以上にインジェクションポート63の径を拡大することができる。
これにより、圧縮機100は、サブポート62から作動ガスが吐出する際の抵抗が低下し、性能改善が可能である。また、圧縮機100は、サブポート62の代わりにインジェクションポート63が形成されている場合は、注入される液相の作動流体の流量が増え、吐出温度をより効率的に下げることが可能である。
また、例えば、従来技術のようにチップシールに切り欠きを設けると、切り欠きから隣接する圧縮室間へのガス漏れが発生し、圧縮機の性能が大きく低下する場合がある。さらに、チップシールの切欠部への応力集中により、チップシールの強度が低下する場合がある。圧縮機100は、チップシール82がサブポート62もしくはインジェクションポート63から離れる位置に配置されているものでありチップシール82には切り欠きが設けられていない。そのため、圧縮機100は、圧縮室間でガス漏れが発生することはなく、また、チップシール82の強度が応力集中により低下することもない。
また、従来の圧縮機は、チップシール80を硬質の樹脂で渦巻型に成形し、かつ揺動スクロール70のチップシール80と固定スクロール60のチップシール80とをそれぞれ揺動渦巻ラップ部71と固定渦巻ラップ部61の先端面の中央71aに配置する。そのため、従来の圧縮機は、揺動スクロール70のチップシール80と、固定スクロール60のチップシール80とを互い違いに取り付けてしまい組立不具合が発生する可能性がある。これに対し圧縮機100は、チップシール82が、上記構成を有する第1曲線部82aと、第2曲線部82bと、第3曲線部82cと、の3つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されている。圧縮機100は、固定スクロール60のチップシール80を従来と同じくインボリュート曲線で形成し、固定渦巻ラップ部61の先端面の中央71aに配置する場合、固定スクロール60のチップシール80と揺動スクロール70のチップシール82の形状が異なる。そのため、圧縮機100は、揺動スクロール70のチップシール82と、固定スクロール60のチップシール80とを互い違いに誤って組立することを防止することができる。
また、圧縮機100のチップシール82は、複数の曲線同士を滑らかに繋いでいる為、揺動スクロール70において、チップシール82の嵌合用溝を一筆書きで一度に加工可能であり、優れた加工性を確保することができる。
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る圧縮機110における揺動スクロール70と固定スクロール60とチップシール83の形状とを示す軸方向断面図である。図1〜図6の圧縮機100と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。圧縮機110は、チップシール83の構成が圧縮機100のチップシール82の構成が異なるだけであり、圧縮機110を構成する他の構成は圧縮機100と同じである。
固定スクロール60と揺動スクロール70のラップ先端面には、チップシール83と同形状のチップシール嵌合用溝81が形成されており、このチップシール嵌合用溝81には、チップシール83が嵌合されている。揺動スクロール70のチップシール83は、揺動渦巻ラップ部71の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する固定スクロール60の固定渦巻台板部64と接する。また、固定スクロール60のチップシール83(図示せず)は、固定渦巻ラップ部61の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する揺動スクロール70の揺動渦巻台板部74と接する。チップシール83は、圧縮機110の運転中に、固定渦巻台板部64に押付けられながら摺動することで、揺動渦巻ラップ部71と固定渦巻台板部64の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。または、チップシール83は、圧縮機110の運転中に、揺動渦巻台板部74に押付けられながら摺動することで、固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻台板部74の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。サブポート62又はインジェクションポート63は固定スクロール60の固定渦巻台板部64に設けられており、揺動スクロール70のラップ先端面に設けられたチップシール83と接近する。チップシール83のシール性を確保する為に、サブポート62又はインジェクションポート63の直径は、チップシール83を完全に跨がない範囲で設定する必要がある。
圧縮機110は、図7に示すように、チップシール83が、異なる曲率を有する複数の曲線で構成されており、第1曲線部83aと、第2曲線部83bと、の2つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されている。チップシール83は、図7において、曲線の境目を明示する為、切れ目がある様に図示しているが、二つの曲線の境目は分断されておらず、チップシール83は切れ目の無い一体物である。すなわち、チップシール83は、異なる曲率を有する複数の曲線が連続して形成されている。チップシール83は、サブポート62もしくはインジェクションポート63と接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して、外周の端縁部71b側及び内周の端縁部71c側に配置されている。
チップシール83は、固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通る第1曲線部83aを有する。もしくは、チップシール83は、固定スクロール60の外向面側のインジェクションポート63aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通る第1曲線部83aを有する。第1曲線部83aは、揺動スクロール70の揺動渦巻ラップ部71と同じ曲率のインボリュート曲線で構成されている。
チップシール83は、揺動スクロール70より大きな曲率半径のインボリュート曲線で構成され、渦巻中央部に近づくに従って、揺動渦巻ラップ部71の内側よりに配置される第2曲線部83bを有する。チップシール83の第2曲線部83bは、固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通る。もしくは、チップシール83の第2曲線部83bは、固定スクロール60の内向面側のインジェクションポート63bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通る。
実施の形態2に係る圧縮機110では、チップシール83が、2つの曲線部分で構成されているが、サブポート62又はインジェクションポート63の数に応じてチップシール83を構成する曲線部分の数を変更すると良いことは言うまでもない。なお、固定スクロール60のチップシール83の形状は、従来通り、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61と同じ曲率のインボリュート曲線で形成され、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61の幅方向において中央71aに配置されていてもよい。
以上のように、圧縮機110のチップシール83は、サブポート62もしくはインジェクションポート63と接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して、外周の端縁部71b側及び内周の端縁部71c側に配置されている。すなわち、チップシール83の固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、サブポート62から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機110は、チップシール83を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、サブポート62の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール83を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、サブポート62の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。これに対し、圧縮機110は、チップシール83が、第1曲線部83aと、第2曲線部83bとの2つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されているため、この制約値以上にサブポート62の径を拡大することが可能である。
また、サブポート62の代わりにインジェクションポート63を設ける圧縮機110について同様にインジェクションポート63を大きく設計できる。圧縮機110は、チップシール83のインジェクションポート63aと、インジェクションポート63bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、インジェクションポート63から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機110は、チップシール83を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、インジェクションポート63の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール83を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、インジェクションポート63の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。圧縮機110は、チップシール83が、上記構成を有する第1曲線部83aと、第2曲線部83bとの2つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されているため、この制約値以上にインジェクションポート63の径を拡大することができる。
これにより、圧縮機110は、サブポート62から作動ガスが吐出する際の抵抗が低下し、性能改善が可能である。また、圧縮機110は、サブポート62の代わりにインジェクションポート63が形成されている場合は、注入される液相の作動流体の流量が増え、吐出温度をより効率的に下げることが可能である。
また、例えば、従来技術のようにチップシールに切欠きを設けると、切欠きから隣接する圧縮室間へのガス漏れが発生し、圧縮機の性能が大きく低下する場合がある。さらに、チップシールの切欠部への応力集中により、チップシールの強度が低下する場合がある。圧縮機110は、チップシール83がサブポート62もしくはインジェクションポート63から離れる位置に配置されているものでありチップシール83には切り欠きが設けられていない。そのため、圧縮機110は、圧縮室間でガス漏れが発生することはなく、また、チップシール83の強度が応力集中により低下することもない。
また、圧縮機110は、チップシール83が、上記構成を有する第1曲線部83aと、第2曲線部83bの2つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されている。圧縮機110は、固定スクロール60のチップシール80を従来と同じくインボリュート曲線で形成し、固定渦巻ラップ部61の先端面の中央71aに配置する場合、固定スクロール60のチップシール80と揺動スクロール70のチップシール83の形状が異なる。そのため、圧縮機110は、揺動スクロール70のチップシール83と、固定スクロール60のチップシール80とを互い違いに誤って組立することを防止することができる。
また、圧縮機110のチップシール83は、複数の曲線同士を滑らかに繋いでいる為、揺動スクロール70において、チップシール83の嵌合用溝を一筆書きで一度に加工可能であり、優れた加工性を確保することができる。
また、圧縮機110は、チップシール83を構成する曲線の数を実施の形態1に係る圧縮機100よりも少なくできる。そのため、圧縮機110は、揺動渦巻ラップ部71の先端面のチップシール83の嵌合用溝を加工する際に、溝を構成する境目が少なくなるので、この境目においてチップシール83の嵌合用溝に段差が生じるなどの加工不具合が起きにくくなる。
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3に係る圧縮機120における揺動スクロール70と固定スクロール60とチップシール84の形状とを示す軸方向断面図である。図1〜図7の圧縮機100及び圧縮機110と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。圧縮機120は、チップシール84の構成が圧縮機100のチップシール82の構成が異なるだけであり、圧縮機120を構成する他の構成は圧縮機100と同じである。
固定スクロール60と揺動スクロール70のラップ先端面には、チップシール84と同形状のチップシール嵌合用溝81が形成されており、このチップシール嵌合用溝81には、チップシール84が嵌合されている。揺動スクロール70のチップシール84は、揺動渦巻ラップ部71の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する固定スクロール60の固定渦巻台板部64と接する。また、固定スクロール60のチップシール84(図示せず)は、固定渦巻ラップ部61の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する揺動スクロール70の揺動渦巻台板部74と接する。チップシール84は、圧縮機120の運転中に、固定渦巻台板部64に押付けられながら摺動することで、揺動渦巻ラップ部71と固定渦巻台板部64の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。または、チップシール84は、圧縮機120の運転中に、揺動渦巻台板部74に押付けられながら摺動することで、固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻台板部74の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。サブポート62又はインジェクションポート63は固定スクロール60の固定渦巻台板部64に設けられており、揺動スクロール70のラップ先端面に設けられたチップシール84と接近する。チップシール84のシール性を確保する為に、サブポート62又はインジェクションポート63の直径は、チップシール84を完全に跨がない範囲で設定する必要がある。
圧縮機120は、図8に示すように、チップシール84が、異なる曲率を有する複数の曲線で構成されており、第1曲線部84aと、第2曲線部84bと、第3曲線部84cと、第4曲線部84dと、第5曲線部84eとを有する。圧縮機120は、図8に示すように、チップシール84が、第1曲線部84aと、第2曲線部84bと、第3曲線部84cと、第4曲線部84dと、第5曲線部84eとの5つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されている。チップシール84は、図8において、曲線の境目を明示する為、切れ目がある様に図示しているが、5つの曲線の境目は分断されておらず、チップシール84は切れ目の無い一体物である。すなわち、チップシール84は、異なる曲率を有する複数の曲線が連続して形成されている。
チップシール84は、固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通る第1曲線部84aを有する。もしくは、チップシール84は、固定スクロール60の外向面側のインジェクションポート63aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通る第1曲線部84aを有する。第1曲線部84aは、例えば、揺動スクロール70の揺動渦巻ラップ部71と同じ曲率のインボリュート曲線で構成されている。
チップシール84は、固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通る第2曲線部84bを有する。もしくは、チップシール84は、固定スクロール60の内向面側のインジェクションポート63bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通る第2曲線部84bを有する。第2曲線部84bは、例えば、揺動スクロール70の揺動渦巻ラップ部71と同じ曲率のインボリュート曲線で構成されている。
第1曲線部84aと第2曲線部84bとの境目は、たとえば、揺動スクロール70よりも大きな曲率半径のインボリュート曲線等、滑らかな曲線に形成された第3曲線部84cで繋ぎ合わされている。チップシール84の第4曲線部84dは、隣接する曲線である第1曲線部84aと第5曲線部84eとの端部を揺動スクロール70よりピッチの小さいインボリュート曲線などを用いて滑らかに繋いでいる。チップシール84の第5曲線部84eは、揺動渦巻ラップ部71の中央を通るインボリュート曲線で形成される。
実施の形態3に係る圧縮機120では、チップシール84が、5つの曲線部分で構成されているが、サブポート62又はインジェクションポート63の数に応じてチップシール84を構成する曲線部分の数を変更すると良いことは言うまでもない。なお、固定スクロール60のチップシール84の形状は、従来通り、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61と同じ曲率のインボリュート曲線で形成され、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61の幅方向において中央71aに配置されていてもよい。
以上のように、圧縮機120のチップシール84は、サブポート62もしくはインジェクションポート63と接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して、外周の端縁部71b側及び内周の端縁部71c側に配置されている。すなわち、チップシール84の固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、サブポート62から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機120は、チップシール84を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、サブポート62の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール84を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、サブポート62の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。これに対し、圧縮機120は、チップシール84が、第1曲線部84aと、第2曲線部84bと、第3曲線部84cと、第4曲線部84dと、第5曲線部84eの5つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されている。そのため、圧縮機120は、この制約値以上にサブポート62の径を拡大することが可能である。
また、サブポート62の代わりにインジェクションポート63を設ける圧縮機120について同様にインジェクションポート63を大きく設計できる。圧縮機120は、チップシール84のインジェクションポート63aと、インジェクションポート63bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、インジェクションポート63から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機120は、チップシール84を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、インジェクションポート63の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール84を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、インジェクションポート63の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。圧縮機120は、チップシール84が、上記構成を有する第1曲線部84aと、第2曲線部84bと、第3曲線部84cと、第4曲線部84dと、第5曲線部84eの5つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されている。そのため、圧縮機120は、この制約値以上にインジェクションポート63の径を拡大することができる。
これにより、圧縮機120は、サブポート62から作動ガスが吐出する際の抵抗が低下し、性能改善が可能である。また、圧縮機120は、サブポート62の代わりにインジェクションポート63が形成されている場合は、注入される液相の作動流体の流量が増え、吐出温度をより効率的に下げることが可能である。
また、例えば、従来技術のようにチップシールに切欠きを設けると、切欠きから隣接する圧縮室間へのガス漏れが発生し、圧縮機の性能が大きく低下する場合がある。さらに、チップシールの切欠部への応力集中により、チップシールの強度が低下する場合がある。圧縮機120は、チップシール84がサブポート62もしくはインジェクションポート63から離れる位置に配置されているものでありチップシール84には切り欠きが設けられていない。そのため、圧縮機120は、圧縮室間でガス漏れが発生することはなく、また、チップシール84の強度が応力集中により低下することもない。
また、圧縮機120は、チップシール84が、上記構成を有する第1曲線部84aと、第2曲線部84bと、第3曲線部84cと、第4曲線部84dと、第5曲線部84eの5つの曲線部分を繋ぎ合わせて一体に構成されている。圧縮機120は、固定スクロール60のチップシール80を従来と同じくインボリュート曲線で形成し、固定渦巻ラップ部61の先端面の中央71aに配置する場合、固定スクロール60のチップシール80と揺動スクロール70のチップシール84の形状が異なる。そのため、圧縮機120は、揺動スクロール70のチップシール84と、固定スクロール60のチップシール80とを互い違いに誤って組立することを防止することができる。
また、圧縮機120のチップシール84は、複数の曲線同士を滑らかに繋いでいる為、揺動スクロール70において、チップシール84の嵌合用溝を一筆書きで一度に加工可能であり、優れた加工性を確保することができる。
なお、一般に、渦巻ラップ先端面において、チップシールが嵌合されていない部分は、隣接する圧縮室間の漏れ流路となる。チップシールをラップ先端面の中央からずらして配置すると、チップシールの内側と外側との漏れ流量が異なる為、対称な位置にある二つの圧縮室において圧力のアンバランスが発生する。この圧力のアンバランスにより渦巻を自転させる力が発生する為、渦巻やオルダムリング41の信頼性に影響がある場合がある。これに対し、圧縮機120は、チップシール84において、固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと接近する第1曲線部84aより渦巻きの外側に位置する第4曲線部84d及び第5曲線部84eが揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置されている。そのため、圧縮機120は、揺動渦巻ラップ部71に形成されたチップシール84の嵌合用溝の両サイドの幅が均等である為、対称な圧縮室の漏れ量が均等になり、揺動スクロール70の動きが安定し、高い信頼性が得られる。
実施の形態4.
図9は、本発明の実施の形態4に係る圧縮機130における揺動スクロール70と固定スクロール60とチップシール85の形状とを示す軸方向断面図である。図1〜図8の圧縮機100、圧縮機110、圧縮機120と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。圧縮機130は、チップシール85の構成が圧縮機100のチップシール82の構成が異なるだけであり、圧縮機130を構成する他の構成は圧縮機100と同じである。
固定スクロール60と揺動スクロール70のラップ先端面には、チップシール85と同形状のチップシール嵌合用溝81が形成されており、このチップシール嵌合用溝81には、チップシール85が嵌合されている。揺動スクロール70のチップシール85は、揺動渦巻ラップ部71の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する固定スクロール60の固定渦巻台板部64と接する。また、固定スクロール60のチップシール85(図示せず)は、固定渦巻ラップ部61の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する揺動スクロール70の揺動渦巻台板部74と接する。チップシール85は、圧縮機130の運転中に、固定渦巻台板部64に押付けられながら摺動することで、揺動渦巻ラップ部71と固定渦巻台板部64の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。または、チップシール85は、圧縮機130の運転中に、揺動渦巻台板部74に押付けられながら摺動することで、固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻台板部74の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。サブポート62又はインジェクションポート63は固定スクロール60の固定渦巻台板部64に設けられており、揺動スクロール70のラップ先端面に設けられたチップシール85と接近する。チップシール85のシール性を確保する為に、サブポート62又はインジェクションポート63の直径は、チップシール85を完全に跨がない範囲で設定する必要がある。
図9に示すように、チップシール85は、異なる曲率を有する複数の曲線で構成されており、第1曲線部85aと、第2曲線部85bと、の2つの曲線部分を有して構成されている。チップシール85は、サブポート62もしくはインジェクションポート63と接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して、外周の端縁部71b側及び内周の端縁部71c側に配置されている。チップシール85は、第1曲線部85aと第2曲線部85bとが分割構造された構造で形成されている。すなわち、チップシール85は、異なる曲率を有する複数の曲線毎に分割して構成されている。チップシール85は、第1曲線部85aと第2曲線部85bとが渦巻曲線方向に重なり合わせても良いし、わずかに隙間を設けて配置されても良い。
チップシール85は、固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通る第1曲線部85aを有する。もしくは、チップシール85は、固定スクロール60の外向面側のインジェクションポート63aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通る第1曲線部85aを有する。第1曲線部85aは、揺動スクロール70の揺動渦巻ラップ部71と同じ曲率のインボリュート曲線で構成されている。
チップシール85は、固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通る第2曲線部85bを有する。もしくは、チップシール85は、固定スクロール60の内向面側のインジェクションポート63bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通る第2曲線部85bを有する。第2曲線部85bは、揺動スクロール70の揺動渦巻ラップ部71と同じ曲率のインボリュート曲線で構成されている。
実施の形態4に係る圧縮機130では、チップシール85が、2つの曲線部分で構成されているが、サブポート62又はインジェクションポート63の数に応じてチップシール85を構成する曲線部分の数を変更すると良いことは言うまでもない。なお、固定スクロール60のチップシール85の形状は、従来通り、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61と同じ曲率のインボリュート曲線で形成され、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61の幅方向において中央71aに配置されていてもよい。
以上のように、圧縮機130のチップシール85は、サブポート62もしくはインジェクションポート63と接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して、外周の端縁部71b側及び内周の端縁部71c側に配置されている。すなわち、チップシール85の固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、サブポート62から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機130は、チップシール85を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、サブポート62の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール85を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、サブポート62の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。これに対し、圧縮機130は、チップシール85が、第1曲線部85aと、第2曲線部85bの2つの曲線部分を有して構成されている。そのため、圧縮機130は、この制約値以上にサブポート62の径を拡大することが可能である。
また、サブポート62の代わりにインジェクションポート63を設ける圧縮機130について同様にインジェクションポート63を大きく設計できる。圧縮機130は、チップシール85のインジェクションポート63aと、インジェクションポート63bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、インジェクションポート63から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機130は、チップシール85を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、インジェクションポート63の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール85を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、インジェクションポート63の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。圧縮機130は、チップシール85が、上記構成を有する第1曲線部85aと、第2曲線部85bの2つの曲線部分を有して構成されている。そのため、圧縮機130は、この制約値以上にインジェクションポート63の径を拡大することができる。
これにより、圧縮機130は、サブポート62から作動ガスが吐出する際の抵抗が低下し、性能改善が可能である。また、圧縮機130は、サブポート62の代わりにインジェクションポート63が形成されている場合は、注入される液相の作動流体の流量が増え、吐出温度をより効率的に下げることが可能である。
また、例えば、従来技術のようにチップシールに切欠きを設けると、切欠きから隣接する圧縮室間へのガス漏れが発生し、圧縮機の性能が大きく低下する場合がある。さらに、チップシールの切欠部への応力集中により、チップシールの強度が低下する場合がある。圧縮機130は、チップシール85がサブポート62もしくはインジェクションポート63から離れる位置に配置されているものでありチップシール85には切り欠きが設けられていない。そのため、圧縮機130は、圧縮室間でガス漏れが発生することはなく、また、チップシール85の強度が応力集中により低下することもない。
また、圧縮機130は、チップシール85が、上記構成を有する第1曲線部85aと、第2曲線部85bの2つの曲線部分を有して構成されている。圧縮機130は、固定スクロール60のチップシール80を従来と同じくインボリュート曲線で形成し、固定渦巻ラップ部61の先端面の中央71aに配置する場合、固定スクロール60のチップシール80と揺動スクロール70のチップシール85の形状が異なる。そのため、圧縮機130は、揺動スクロール70のチップシール85と、固定スクロール60のチップシール80とを互い違いに誤って組立することを防止することができる。
実施の形態4に係る圧縮機130よると、揺動渦巻ラップ部71に設けられたチップシール85の嵌合用溝に異なる曲線の繋ぎ目が存在しない為、加工が容易である。そのため、圧縮機130は、チップシール85の嵌合用溝の曲線の境目に段差が生じる等の製造不具合が発生しない。また、圧縮機130は、チップシール85用の金型の製作も容易である。
実施の形態5.
図10は、本発明の実施の形態5に係る圧縮機140における揺動スクロール70と固定スクロール60とチップシール86の形状とを示す軸方向断面図である。図1〜図9の圧縮機100、圧縮機110、圧縮機120、圧縮機130と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。圧縮機140は、チップシール86の構成が圧縮機100のチップシール82の構成が異なるだけであり、圧縮機140を構成する他の構成は圧縮機100と同じである。
固定スクロール60と揺動スクロール70のラップ先端面には、チップシール86と同形状のチップシール嵌合用溝81が形成されており、このチップシール嵌合用溝81には、チップシール86が嵌合されている。揺動スクロール70のチップシール86は、揺動渦巻ラップ部71の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する固定スクロール60の固定渦巻台板部64と接する。また、固定スクロール60のチップシール86(図示せず)は、固定渦巻ラップ部61の先端に渦巻方向に沿って配置され、対面する揺動スクロール70の揺動渦巻台板部74と接する。チップシール86は、圧縮機140の運転中に、固定渦巻台板部64に押付けられながら摺動することで、揺動渦巻ラップ部71と固定渦巻台板部64の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。または、チップシール86は、圧縮機140の運転中に、揺動渦巻台板部74に押付けられながら摺動することで、固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻台板部74の隙間、及び固定渦巻ラップ部61と揺動渦巻ラップ部71の隙間を埋め、作動ガスの漏れを防止する。サブポート62又はインジェクションポート63は固定スクロール60の固定渦巻台板部64に設けられており、揺動スクロール70のラップ先端面に設けられたチップシール86と接近する。チップシール86のシール性を確保する為に、サブポート62又はインジェクションポート63の直径は、チップシール86を完全に跨がない範囲で設定する必要がある。
圧縮機140は、揺動スクロール70のチップシール86が、異なる曲率を有する複数の曲線で構成されており、インボリュート部86aとR部86bとを有して構成されている。チップシール86は、異なる曲率を有する複数の曲線が連続して形成されている。チップシール86のR部86bは、サブポート62又はインジェクションポート63と接近する箇所に配置されており、サブポート62又はインジェクションポート63を避けるように湾曲して円弧形状に形成されている。チップシール86は、R部86b以外の部分がインボリュート部86aで構成されている。インボリュート部86aは、揺動スクロール70のラップ先端面に配置され、揺動渦巻ラップ部71の幅方向において中央71aを通り揺動渦巻ラップ部71と同じ曲率のインボリュート曲線で形成されている。なお、R部86bの幅は、インボリュート部86aの幅と同じであるが、異なっていてもよい。
チップシール86は、固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通るR部86b1を有する。もしくは、チップシール86は、固定スクロール60の外向面側のインジェクションポート63aと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して外周の端縁部71b側を通るR部86b1を有する。
チップシール86は、固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通るR部86b2を有する。もしくは、チップシール86は、固定スクロール60の内向面側のインジェクションポート63bと接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して内周の端縁部71c側を通るR部86b2を有する。
実施の形態5に係る圧縮機140では、チップシール86が、2つのR部86bを有しているが、サブポート62又はインジェクションポート63の数に応じてチップシール86を構成するR部86bの数を変更すると良いことは言うまでもない。なお、固定スクロール60のチップシール86の形状は、従来通り、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61と同じ曲率のインボリュート曲線で形成され、固定スクロール60の固定渦巻ラップ部61の幅方向において中央71aに配置されていてもよい。
以上のように、圧縮機140のチップシール86は、サブポート62もしくはインジェクションポート63と接近する箇所が、揺動渦巻ラップ部71の幅方向の中央71aに対して、外周の端縁部71b側及び内周の端縁部71c側に配置されている。すなわち、チップシール86の固定スクロール60の外向面側のサブポート62aと固定スクロール60の内向面側のサブポート62bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、サブポート62から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機140は、チップシール86を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、サブポート62の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール86を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、サブポート62の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。これに対し、圧縮機140は、チップシール86が、サブポート62又はインジェクションポート63を避けるように湾曲して円弧形状に形成されたR部86bと、インボリュート部86aとを有して構成されている。そのため、圧縮機140は、この制約値以上にサブポート62の径を拡大することが可能である。
また、サブポート62の代わりにインジェクションポート63を設ける圧縮機140について同様にインジェクションポート63を大きく設計できる。圧縮機140は、チップシール86のインジェクションポート63aと、インジェクションポート63bと接近する箇所がそれぞれ、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに対し、インジェクションポート63から離れる側に配置されている。そのため、圧縮機140は、チップシール86を1つのインボリュート形状で構成し、揺動渦巻ラップ部71の中央71aに配置した場合と比較して、シール幅δを大きく確保でき、かつ、インジェクションポート63の径を大きく設計できる。
具体的には、従来通り、チップシール86を揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置した場合、シール幅δ>0を満足する為には、インジェクションポート63の径を『(ラップ部幅/2)+(チップシール幅/2)』以下の制約値にしなければならない。圧縮機140は、チップシール86が、サブポート62又はインジェクションポート63を避けるように湾曲して円弧形状に形成されたR部86bと、インボリュート部86aとを有して構成されている。そのため、圧縮機140は、この制約値以上にインジェクションポート63の径を拡大することができる。
これにより、圧縮機140は、サブポート62から作動ガスが吐出する際の抵抗が低下し、性能改善が可能である。また、圧縮機140は、サブポート62の代わりにインジェクションポート63が形成されている場合は、注入される液相の作動流体の流量が増え、吐出温度をより効率的に下げることが可能である。
また、例えば、従来技術のようにチップシールに切欠きを設けると、切欠きから隣接する圧縮室間へのガス漏れが発生し、圧縮機の性能が大きく低下する場合がある。さらに、チップシールの切欠部への応力集中により、チップシールの強度が低下する場合がある。圧縮機140は、チップシール86がサブポート62もしくはインジェクションポート63から離れる位置に配置されているものでありチップシール86には切り欠きが設けられていない。そのため、圧縮機140は、圧縮室間でガス漏れが発生することはなく、また、チップシール86の強度が応力集中により低下することもない。
また、圧縮機140は、チップシール86が、サブポート62又はインジェクションポート63を避けるように湾曲して円弧形状に形成されたR部86bと、インボリュート部86aとを有して構成されている。圧縮機140は、固定スクロール60のチップシール80を従来と同じくインボリュート曲線で形成し、固定渦巻ラップ部61の先端面の中央71aに配置する場合、固定スクロール60のチップシール80と揺動スクロール70のチップシール86の形状が異なる。そのため、圧縮機140は、揺動スクロール70のチップシール86と、固定スクロール60のチップシール80とを互い違いに誤って組立することを防止することができる。
また、圧縮機140は、サブポート62又はインジェクションポート63を避けるように湾曲して円弧形状に形成されたR部86bを有している。そのため、圧縮機140は、サブポート62又はインジェクションポート63と接近する最低限の範囲のみ、サブポート62又はインジェクションポート63から離してチップシール86を配置することができる。そして、圧縮機140は、R部86b以外の箇所はインボリュート部86aを揺動渦巻ラップ部71の先端面の中央71aに配置している。そのため、圧縮機140は、チップシール86の内側と外側との漏れ量のアンバランスが最小限に抑えられ、対称位置にある圧縮室の圧力のアンバランスも小さく抑えられる為、高い信頼性が得られる。
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態は、圧縮機100が低圧シェル型である場合を例示しているが、圧縮機100を高圧シェル型としてもよい。