JP6861557B2 - 炭化珪素単結晶インゴットの製造装置及び炭化珪素単結晶インゴットの製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶インゴットの製造装置及び炭化珪素単結晶インゴットの製造方法 Download PDF

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本発明は、炭化珪素単結晶インゴットの製造装置及び炭化珪素単結晶インゴットの製造方法に関するものである。詳しくは、炭化珪素単結晶インゴットの製造中における断熱材の劣化を抑制することができる炭化珪素単結晶インゴットの製造装置、及びこれを用いた炭化珪素単結晶インゴットの製造方法に関するものである。
炭化珪素(SiC)は、優れた半導体特性を有するため、大電力制御用パワーデバイスを製造するためのウエハ用材料として大きな注目を集めている。特に、SiC単結晶ウエハから作製されるSiCショットキーバリアダイオードやMOSFET(Metal Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)をはじめとするSiCパワーデバイスの開発が進められており、耐電圧が1000Vを超え、かつ、導通時のオン抵抗が小さくできる長所を発揮できることから、変換時の電力損失が少ない大電力制御用インバーターをはじめとする各種の電力制御装置が開発されている。
SiC単結晶ウエハを得るためのSiC単結晶インゴットは、目下のところ、改良レーリー法と呼ばれる昇華再結晶法、あるいは技術的には同義であるが、昇華法と呼ばれる方法によって、製造されるのが一般的である(非特許文献1参照)。
耐電圧特性やデバイス長期動作信頼性に優れるSiCパワーデバイスを安定的に実現するためには、SiC単結晶インゴットの欠陥密度を十分に小さくすることが必要である。例えば、パワーデバイス特性に影響を与えるSiC単結晶ウエハの欠陥として、マイクロパイプ欠陥や(0001)基底面上の刃状転位である基底面転位等が挙げられる。特に前者は、転位芯部分に直径が数μm以上の穴が貫通した構造を有する欠陥であり、SiC単結晶ウエハを得るために、インゴットから切り出したSiC単結晶基板にSiC単結晶薄膜をエピタキシャル成長させた際、このような欠陥がエピタキシャル薄膜作製後に薄膜部分に残留すると、逆耐圧特性等が著しく劣化してしまうことが知られている(非特許文献2参照)。このように、SiC単結晶ウエハにおいては、欠陥密度をできる限り低減化することがパワーデバイスとして応用する上で重要となっている。
上記のような欠陥の発生原因の一つとしては、一般的にパワーデバイスに好適な4H型のSiC単結晶を成長する場合に、それ以外の6Hや15R等の異種ポリタイプ結晶が生成・混入することのほか、シリコン液滴や異物等が混入すること等が挙げられる(非特許文献3参照)。このような成長擾乱が発生すると、4H型SiC結晶の原子配列が乱れるために、成長時にマイクロパイプや転位欠陥等が多量に発生する。近年の昇華法成長技術の進展に伴い、SiC単結晶ウエハは、その口径も150mmに及ぶ大口径化に及んでおり、このような大口径ウエハを取り出せる大型のSiC単結晶を成長する全成長プロセスにおいて、上記のような成長擾乱を起こさない、安定した成長条件を実現できる製造方法が求められている。
昇華法においては、黒鉛製の耐熱容器である坩堝にSiC原料と種結晶を装填し、約2000℃以上の高温で、SiCの昇華現象を利用して単結晶成長を行う(非特許文献1参照)。このとき、成長に最適な坩堝内温度環境は、坩堝の周囲に配置される断熱材を工夫することで達成されることが通例である(特許文献1参照)。断熱材について、特別な構造を付与することで坩堝内部の温度分布を決めることも行われており(特許文献2参照)、昇華再結晶法においては高品質なSiC単結晶を得るための重要な一部を構成する。また、坩堝の外周部に高周波誘導を受けて発熱するサセプターを配置することも行われており、サセプター及び断熱材を含めた総合的なホットゾーン構造によって、坩堝内の温度環境の最適化が行われている実態がある(特許文献3参照)。
ところで、一般的な昇華法では、黒鉛製坩堝内にSiC原料と種結晶とを対向するように配置する(例えば特許文献1参照)ため、坩堝は基本的に複数のパーツに分割し、各パーツを継ぎ合わせて形成される。この継ぎ目は、例えば、各パーツにネジ構造等を付与して嵌合し、所望の坩堝構造を組み上げることが通例である。このようにして組み上げた坩堝は、カーボン繊維からなる断熱材や、それに成型用樹脂を浸透させた成型断熱材等で覆い、2000℃を超える高温に加熱することでSiC単結晶の成長が行われる。
しかしながら、坩堝の継ぎ目からは、成長温度では原料の熱分解によって発生するSiC昇華ガスの内圧が上昇するため、坩堝外部へ向かって昇華ガスが漏出する。漏出した昇華ガスは、坩堝を覆う断熱材に浸透し、或いは断熱材の表面近傍に滞留して、坩堝内部と比較して温度が低い部分で優先的に固化することから、これが原因となって断熱材の断熱特性が変化したり、或いは劣化して、坩堝内部の温度分布を変化させてしまう。特に、SiC単結晶が大口径化すると、装填原料量が多くなるために成長中に発生する昇華ガス量も増加し、このため断熱材としての断熱特性変化が大きくなる。このような場合、坩堝内部の温度分布が変化して単結晶成長が不安定化し、所望のポリタイプ以外の異種ポリタイプが発生したりするなど、結晶品質が劣化し易くなる。
上記のような断熱材の劣化を回避するためには、坩堝の継ぎ目を、例えば耐熱性接着剤等を用いて密着させ、内部から昇華ガスが漏出しないようにすることが効果的である。しかしながら、このように坩堝を完全に密閉してしまうと、高温で発生する昇華ガスの坩堝内圧力が上昇し、かえってシリコン液滴のような異相が晶出する成長擾乱(非特許文献4参照)が起こることが知られており(非特許文献3参照)、これが起点となって欠陥が発生するなど、結晶品質が劣化してしまう。
一方で、坩堝と断熱材との間に所定の大きさの空隙を設けて、この空隙での雰囲気ガスの流れを利用することで、坩堝から漏出した昇華ガスを断熱材の外部まで搬送して、断熱材の劣化を防ぐ方法が知られている(特許文献4参照)。このような方法によれば、結晶成長中の最適な加熱条件の制御性を向上させることができ、良質の結晶品質を持つ炭化珪素単結晶の成長を可能にするが、SiC単結晶の大口径化に伴う昇華ガスの発生量の増加に対応するためには、更なる検討の余地がある。
特開2002-308697号公報 特開2008-74662号公報 特表2003-523918号公報 特開2011-219295号公報
Yu. M. Tairov and V. F. Tsvetkov, Journal of Crystal Growth, vol.52 (1981) p.146 G. Wahab, A. Ellison, A. Henry and E. Janzen, Appl. Phys. Lett., vol.76 (2000) p.2725. 藤本、日本結晶成長学会誌Vol.42(2015)p.148. R. C. Glass, D. Henshall, V. F. Tsvetkov and C. H. Carter, Jr, phys. Stat. sol. (b) 202 (1997) p.149.
上述したように、大口径SiC単結晶の成長においても、坩堝内部を高品質なSiC単結晶の成長に適した状態に維持することができ、成長過程における断熱材の断熱特性の経時劣化を回避して安定な成長を実現できる方法が望まれている。
そこで、本発明は、SiC単結晶の成長中での断熱材の劣化を抑制することができ、特に、直径が100mm以上の大口径単結晶成長においても、欠陥の少ない高品質なSiC単結晶インゴットを製造することができる炭化珪素単結晶インゴットの製造装置、及び、これを用いた炭化珪素単結晶インゴットの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上述した従来技術の問題を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも、黒鉛製坩堝の周壁部外側面とこの周壁部外側面を覆う周壁断熱材の内側面との間に黒鉛製遮蔽部材を介在させて、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを黒鉛製遮蔽部材と黒鉛製坩堝の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて断熱材外部に排出することで、結晶成長中の断熱材の劣化を抑制することができ、欠陥密度が小さい高品質なSiC単結晶インゴットを製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、
(1)炭化珪素原料が装填される坩堝本体と種結晶が取り付けられる坩堝蓋体とを有した黒鉛製坩堝、該黒鉛製坩堝の周囲に配置された断熱材、及び、該黒鉛製坩堝を加熱する加熱装置を備えて、炭化珪素原料を加熱して昇華ガスを発生させ、種結晶上に再結晶させる昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴットを製造する炭化珪素単結晶インゴットの製造装置であって、
少なくとも黒鉛製坩堝の周壁部外側面と該周壁部外側面を覆う周壁断熱材の内側面との間に黒鉛製遮蔽部材を介在させて、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを、該黒鉛製遮蔽部材と黒鉛製坩堝の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて、黒鉛製坩堝の上壁部側及び/又は底壁部側から断熱材外部に排出するようにしたことを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造装置、
(2)前記黒鉛製遮蔽部材が、黒鉛製坩堝の底壁部外側面と該底壁部外側面を覆う底壁断熱材の内側面との間に介在する底壁遮蔽部を有して、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを、前記隙間を通じて、黒鉛製坩堝の上壁部側から断熱材外部に排出する(1)に記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置、
(3)前記黒鉛製坩堝の上壁部外側面を覆う上壁断熱材が中央開口部を有しており、前記黒鉛製遮蔽部材が、該上壁断熱材の内側面と黒鉛製坩堝の上壁部外側面との間に介在すると共に、前記中央開口部の内周側面を覆うように延設されて円筒排気口を形成する上壁遮蔽部を有して、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを、前記隙間と連通した該円筒排気口から断熱材外部に排出する(2)に記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置、
(4)前記加熱装置が誘導加熱方式の加熱装置であり、前記黒鉛製遮蔽部材は、該加熱装置で用いる高周波の浸透深さより薄い厚みを有する(1)〜(3)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置、
(5)直径100mm以上の炭化珪素単結晶インゴットを製造するものである(1)〜(4)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
(6)炭化珪素原料が装填される坩堝本体と種結晶が取り付けられる坩堝蓋体とを有した黒鉛製坩堝、該黒鉛製坩堝の周囲に配置された断熱材、及び、該黒鉛製坩堝を加熱する加熱装置を備えた炭化珪素単結晶インゴットの製造装置を用いて、炭化珪素原料を加熱して昇華ガスを発生させ、種結晶上に再結晶させる昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴットを製造する炭化珪素単結晶インゴットの製造方法であって、
少なくとも、黒鉛製坩堝の周壁部外側面と該周壁部外側面を覆う周壁断熱材の内側面との間に黒鉛製遮蔽部材を介在させて、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを、該黒鉛製遮蔽部材と黒鉛製坩堝の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて、黒鉛製坩堝の上壁部側及び/又は底壁部側から断熱材外部に排出することを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造方法、
である。
本発明における炭化珪素単結晶インゴットの製造装置では、坩堝を覆う断熱材が結晶成長中に劣化するのを防ぐことができることから、坩堝内の温度分布を最適に維持でき、欠陥の少ない高品質、SiC単結晶インゴットが簡便に製造可能になる。特に、直径100mm以上の大口径を有するSiC単結晶インゴットの製造において効果的であり、このようなSiC単結晶インゴットから切り出された大口径SiC単結晶基板より製造したSiC単結晶ウエハを用いれば、極めて高性能かつ信頼性に優れた電力制御用パワーデバイスを高効率で作製することができるようになる。
図1(a)、(b)は、本発明に係るSiC単結晶インゴットの製造装置(加熱装置は図示せず)の一例を説明するための模式図である。 図2は、黒鉛製坩堝の他の例を説明するための模式図である。 図3は、昇華再結晶法(改良レーリー法)による単結晶成長装置の構成を説明するための模式図である。 図4は、従来のSiC単結晶インゴットの製造装置(加熱装置は図示せず)を説明するための模式図である。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、炭化珪素(SiC)原料が装填される坩堝本体と種結晶が取り付けられる坩堝蓋体とを有した黒鉛製坩堝、該黒鉛製坩堝の周囲に配置された断熱材、及び、該黒鉛製坩堝を加熱する加熱装置を備えて、SiC原料を加熱して昇華ガスを発生させ、種結晶上に再結晶させる昇華再結晶法により、SiC単結晶インゴットを製造するSiC単結晶インゴットの製造装置に関し、少なくとも黒鉛製坩堝の周壁部外側面と該周壁部外側面を覆う周壁断熱材の内側面との間に黒鉛製遮蔽部材を介在させて、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを、該黒鉛製遮蔽部材と黒鉛製坩堝の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて、黒鉛製坩堝の上壁部側及び/又は底壁部側から断熱材外部に排出できるようにする。
一般に、黒鉛製坩堝は、結晶成長のためのSiC原料や種結晶を装填し易くしたり、或いは、これらSiC原料と種結晶との間の結晶成長領域を大きくするなどの目的から、例えば、上記のように坩堝蓋体と坩堝本体のように2つの坩堝部材に分けたり、坩堝本体を更に上部本体と下部本体に分けるなどして、2つ乃至はそれ以上の坩堝部材に分割されており、これら坩堝部材を継ぎ合せて坩堝を形成する。その際、坩堝部材の継ぎ合せ部分は雄ネジと雌ネジのネジ構造にして螺合させたり、研削加工面同士で互いに嵌合するような機械的な結合のほか、耐熱接着剤等を用いて接合させることができるが、結晶成長温度での坩堝内部の昇華ガス圧力が過度に上昇しないように、少なくとも1箇所の継ぎ合せ部分は昇華ガスが漏出可能となるように、接着剤で接合させずに、ネジ構造や嵌め合い等によって機械的に結合させるのが通常である。
図1(a)、(b)には、本発明に係るSiC単結晶インゴットの製造装置の一例が示されている(加熱装置は図示せず)。これらは、坩堝蓋体3の下面側と坩堝本体4の上面側との継ぎ合せ部分がネジ構造により螺合する黒鉛製坩堝5の例であり、坩堝蓋体3の下面側に雄ネジが形成され、坩堝本体4の上面側に雌ネジが形成されている。そして、この黒鉛製坩堝5の周壁部外側面とこの周壁部外側面を覆う周壁断熱材6の内側面との間に黒鉛製遮蔽部材11が介在することで、坩堝蓋体3と坩堝本体4との継ぎ目から漏出した昇華ガスは、黒鉛製遮蔽部材11と黒鉛製坩堝の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて、周壁断熱材6、底壁断熱材7及び上壁断熱材8からなる断熱材9の外部に排出され(この例では後述するように隙間と連通する円筒排気口12から排出され)、少なくとも周壁断熱材6の内側面に昇華ガスが流出するのを防ぐことができる。
図2は、図1とは異なる構造の黒鉛製坩堝5の例が示されており、坩堝蓋体3の下面側と坩堝本体4の上面側との継ぎ合せ部分を互いに相補的な形状にして嵌合することもできる。また、坩堝本体4を上部本体4aと下部本体4bとに分割して、この図2に示したように、これらの継ぎ合せ部分を互いに相補的な形状にして嵌合してもよく、ネジ構造により螺合するようにしてもよい。この図2に示したような黒鉛製坩堝5の場合でも、先と同様に、坩堝蓋体3と坩堝本体4との継ぎ目や坩堝本体4の継ぎ目(上部本体4aと下部本体4bとの継ぎ目)から漏出した昇華ガスは、黒鉛製遮蔽部材11と黒鉛製坩堝5の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて断熱材9の外部に排出され(この例では後述するように黒鉛製坩堝の上壁部側から断熱材外部に排出され)、少なくとも周壁断熱材6の内側面に昇華ガスが流出するのを防ぐことができる。
本発明における黒鉛製遮蔽部材11は、少なくとも黒鉛製坩堝5の周壁部外側面とこの周壁部外側面を覆う周壁断熱材6の内側面との間に配置されて、黒鉛製坩堝5の周壁部外側面から漏出した昇華ガスが周壁断熱材6側に流出しないように遮断することができ、昇華ガスが、黒鉛製遮蔽部材11と黒鉛製坩堝5の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて、黒鉛製坩堝5の上壁部側から排出されたり、底壁部側から排出されたり、これら両方から排出されるようにすることができればよいが、例えば、図1(a)、(b)に示したように、黒鉛製遮蔽部材11が、黒鉛製坩堝5の底壁部外側面とこの底壁部外側面を覆う底壁断熱材7の内側面との間に底壁遮蔽部11aを有して、昇華ガスが上記隙間を通じて黒鉛製坩堝5の上壁部側から断熱材外部に排出されるようにし、昇華ガスが底壁断熱材7側に流出するのを防ぐようにするのが好ましい。
このうち、図1(b)は、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面を断熱材で覆わずに開放した製造装置の例であるが、図1(a)のように、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面を上壁断熱材8で覆うようにしてもよい。その場合には、黒鉛製遮蔽部材11が、この上壁断熱材8の内側面と黒鉛製坩堝5の上壁部外側面との間に位置する上壁遮蔽部11bを有するようにするのがよいが、一般に、この上壁断熱材8には、坩堝蓋体3の温度を測定する目的であったり、熱放出により種結晶1の中心部の温度を周辺部に比べて低下させる目的等から中央開口部10が設けられることから、好ましくは、この上壁遮蔽部11bの一端が、上壁断熱材8に形成された中央開口部10の内周側面を覆うように延設されて、上壁遮蔽部11bの端部が中央開口部10内で円筒排気口12を形成するのがよい。これにより、この図1の例における黒鉛製遮蔽部材11は、黒鉛製坩堝5の底壁部外側面に底壁遮蔽部11aを有し、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面に上壁遮蔽部11bを有して、黒鉛製坩堝5の外側面(上壁部外側面、周壁部外側面、及び底壁部外側面)と断熱材9の内側面(上壁断熱材内側面、周壁断熱材内側面、及び底壁断熱材内側面)との間に形成された隙間が円筒排気口12と連通して、黒鉛製坩堝5から漏出した昇華ガスがこの円筒排気口12より断熱材9の外部に排出され、昇華ガスが断熱材の内側面に流出するのを防ぐことができる。
なお、黒鉛製遮蔽部材11と黒鉛製坩堝5の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて排出される昇華ガスの排出箇所は、これらの例に限られずに、黒鉛製坩堝5の上壁部側のいずれかから断熱材9の外部に排出されるようにしてもよく、或いは、底壁部側から断熱材9の外部に排出されるようにしてもよい。
また、このような黒鉛製遮蔽部材11については、例えば、黒鉛製坩堝5の形状にあわせて、単一の黒鉛ブロックを削り出して加工するなどして、底壁遮蔽部11aを備えた継ぎ目の無い一体部品の底付き円筒部材として作製するようにしてもよい。また、必要に応じて、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面に対応する板状の黒鉛部材を用意して、これに上壁断熱材8の中央開口部10に対応した穴あけ加工を行い、更には、円筒排気口12を形成するための円筒状の黒鉛部材を用意して、耐熱接着剤等でこれらを上記の底付き円筒部材に接合して上壁遮蔽部11bを設けるようにしてもよい。或いは、黒鉛ブロックから黒鉛製坩堝5の周壁部外側面に対応する筒状の黒鉛部材を削り出して、底壁遮蔽部11aを形成する板状の黒鉛部材や、上記のような上壁遮蔽部11bを形成する各黒鉛部材を耐熱接着剤等で接合するようにしてもよい。ここで、耐熱接着剤としては、例えば、日清紡績(株)社製商品名ST−201等のような市販のカーボン接着用耐熱性接着剤を用いることができる。また、このような耐熱性接着剤以外にも、例えば、フェノール樹脂等の高分子材料をエチルアルコール等の有機溶媒に溶解した接着剤であったり、更には、これらにカーボン粉末を混合させた接着剤等を用いることもできる。また、接着力を増加するために、黒鉛部材に接着剤を塗布して約200℃以上の加熱処理を行うようにしてもよい。
また、この黒鉛製遮蔽部材11の厚みについては、例えば、装置の運搬等でのハンドリング時に破損したりしないように、少なくとも0.5mmの厚みを有するものを用いるのがよい。一方で、厚みの上限については、加熱装置が通電加熱方式(抵抗加熱方式)のものを用いるときには特に制限はないが、誘導加熱方式の加熱装置を用いる場合には、黒鉛製遮蔽部材の厚みは、加熱装置で用いる高周波の浸透深さよりも薄くなるようにするのがよい。
ここで、高周波の浸透深さに関して、黒鉛製坩堝や黒鉛製遮蔽部材等のような黒鉛材に高周波の電磁波を印加した場合、表面近傍に渦電流が発生し、そのジュール熱により加熱される際に、渦電流は表皮効果により表面から深さ方向へ指数関数的に減少する。そのため、渦電流が表面における強さの0.368倍に減少した点までの深さを浸透深さと定義することができる。この浸透深さδ(cm)は、次の式で表される。
Figure 0006861557
ここで、ρは電気抵抗率(μΩ・cm)、μは比透磁率(非磁性体では1)、fは電磁波の周波数(Hz)である(例えば、株式会社ベストシステムホームページ参照:http://www.best-system-t3.com/)。工業用等方性カーボン材料の場合、室温での代表的な電気抵抗値15μΩ・mを採用し、10kHzの電磁波を印加する場合には、浸透深さは約1.9cm(=19mm)となる。浸透深さは、結晶成長が行われる高温(2000℃以上)での電気抵抗率を用いる必要があるが、工業用カーボン材料は、材質にもよるが概ね大きな温度依存性は無いと近似できる(例えば、軽量標準総合センター:https://www.nmij.jp/~nmijclub/netsu/docimgs/1-iwashita.pdf)ことから、室温での計算値δで評価が可能である。なお、電気抵抗率の温度変化が無視できない場合は、成長温度での値を反映した修正を適宜行うようにすればよい。
黒鉛製遮蔽部材の厚みが高周波の浸透深さ以上であると、黒鉛製遮蔽部材自体が主たる発熱体となり、この遮蔽部材の構造が影響して、最適な坩堝内温度分布を変化させてしまうおそれがある。一般的に用いられる誘導加熱方式の加熱装置における周波数(一般的には7〜10kHz程度)であれば、黒鉛材料の電気抵抗率値にも依るが高周波の浸透深さを考慮すると黒鉛製遮蔽部材の厚さは浸透深さよりも十分に小さいことが必要となる。上記の場合では概ね15mm以下程度であるのがよいが、好ましい黒鉛製遮蔽部材の厚みは1mm以上10mm以下であるのがよく、より好ましくは2mm以上5mm以下であるのがよい。なお、上述したように、通電加熱方式の加熱装置を用いる場合、黒鉛製遮蔽部材11の厚みの上限は特に制限されないが、例えば、誘導加熱方式の加熱装置の場合と同程度にすることができる。
本発明におけるSiC単結晶インゴットの製造装置は、上記のような黒鉛製遮蔽部材が、少なくとも黒鉛製坩堝の周壁部外側面とこの周壁部外側面を覆う周壁断熱材の内側面との間に介在する以外には、公知の製造装置と同様にすることができる。そして、本発明においては、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスは、黒鉛製遮蔽部材と黒鉛製坩堝の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて断熱材外部に排出され、少なくとも周壁断熱材6の内側面に昇華ガスが流出するのを防いで、断熱材の特性劣化を回避することができる。好ましくは、図2に示したように、黒鉛製遮蔽部材11が、黒鉛製坩堝5の底壁部外側面とこの底壁部外側面を覆う底壁断熱材7の内側面との間に介在する底壁遮蔽部11aを有したり、図1に示したように、更に、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面とこの上壁部外側面を覆う上壁断熱材8の内側面との間に介在する上壁遮蔽部を有するなどして、昇華ガスがこれら全ての断熱材9の内側面に流出するのを防いで、断熱材9の特性劣化を回避することができる。そのため、例えば、成長開始から終了まで坩堝内の最適な温度分布を維持することができ、また、直径が100mm(4インチ)以上であったり、150mm(6インチ)以上のような大口径のSiC単結晶インゴットを製造するために坩堝内により多くのSiC原料が装填される場合に、特に顕著な効果を発揮するものである。
また、上記のようにして得られた大口径のSiC単結晶インゴットから切り出した、大口径SiC単結晶基板上には、例えば、化学気相蒸着法(CVD法)等によりSiC単結晶薄膜をエピタキシャル成長させることで、実質的に基板の全領域において、基底面転位のような欠陥が極めて少ないエピタキシャルウエハを作製することができる。そして、このようなエピタキシャルウエハを使用することで、電力変換特性に優れた各種のパワーデバイスを効率よく得ることが可能になる。
以下、本発明について、実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
(実施例1)
先ず、昇華再結晶法によるSiC単結晶インゴットの製造に関して、その概略を説明する。図3には、昇華再結晶法による単結晶成長装置の一般的な例が示されている。SiC単結晶基板からなる種結晶1は、坩堝5を形成する黒鉛製の坩堝蓋体3の内壁面に取り付けられ、SiC原料(SiC粉末)2は、同じく坩堝5を形成する黒鉛製の坩堝本体4に充填されている。このようにしてなる黒鉛製坩堝5は、二重石英管13の内部の黒鉛支持棒18に設置され、円周方向の温度不均一性を解消するために、1rpm未満の回転速度で黒鉛製坩堝5が回転可能な機構になっており、結晶成長中はほぼ一定速度で常に回転するようになっている。黒鉛製坩堝5の周囲には、熱シールドのための断熱材(断熱保温材)9が設置されている。二重石英管13は、真空排気装置14により高真空排気(10-3Pa以下)することができ、かつ内部雰囲気をアルゴンガスにより圧力制御することができる。また、二重石英管13の外周には、ワークコイル15が設置されており、高周波電流を流すことにより黒鉛製坩堝5を加熱し、SiC原料2及び種結晶1を所望の温度に加熱することができる。坩堝温度5の計測は、二重石英管13の上部方向の中央部に直径2〜4mmの光路16を設け、坩堝蓋体3の外側表面に設けられた断熱材抜熱穴(中央開口部)10から輻射光を取り出し、二色温度計17を用いて行う。なお、本発明においては黒鉛製坩堝5と断熱材9との間に黒鉛製遮蔽部材が位置するが、図3ではこれを図示しておらず、詳しくは、以下で説明するとおりである。
すなわち、この実施例1においては、種結晶1として、口径102mm、厚さ1.5mmの{0001}4H型SiC単結晶基板を準備し、(000−1)面(C面)が成長面となるように坩堝蓋体3の内側面に貼り付けた。そして、SiC原料2であるSiC粉末を装填した坩堝本体4に対して、図1(a)に示したように、坩堝蓋体3の下面側と坩堝本体4の上面側とをネジ構造により螺合して、昇華ガスが漏出可能となるように継ぎ目部分を形成した。なお、坩堝蓋体3と坩堝本体4とからなる黒鉛製坩堝5は、周壁部、底壁部、上壁部ともに厚みは全て15mmである。
黒鉛製の遮蔽部材11については、この黒鉛製坩堝5の形状にあわせて、単一の黒鉛ブロックから底壁遮蔽部11aを備えた継ぎ目の無い一体部品の底付き円筒部材を作製した。また、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面に対応する板状の黒鉛部材を用意し、その中央部に穴あけ加工を行い、更に、穴あけ加工により形成された開口部に対応した大きさの円筒状の黒鉛部材を用意して、市販のカーボン接着用耐熱性接着剤(日清紡績(株)社製ST-201)で接着し、上壁遮蔽部11bを形成した。そして、底付き円筒部材に黒鉛製坩堝5を収容し、上記のカーボン接着用耐熱性接着剤を用いて上壁遮蔽部11bを接着させた後、それぞれカーボンフェルト製の周壁断熱材6、底壁断熱材7、及び上壁断熱材8を配置して、図1(a)に示したように、黒鉛製坩堝5の外側面とこれらの断熱材9の内側面との間に、黒鉛製遮蔽部材11が介在されるようにした。ここで使用した黒鉛製遮蔽部材11を形成する黒鉛材料(黒鉛ブロックや、板状、筒状の各黒鉛部材)の電気抵抗率は9μΩmである。また、黒鉛製遮蔽部材11の厚みは全て5mmであり、ワークコイル15に流す高周波電流(9.8kHz)の浸透深さ(約15mm)より薄い厚みである。また、カーボンフェルト製の断熱材9の厚みは10mmであり、上壁断熱材8には中央開口部10が形成され、その内周側面を覆うように、上壁遮蔽部11bの端部によって直径25mm、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面からの高さが15mmの円筒排気口12が形成されるようにした。
このようにして断熱材9と上壁遮蔽部11とで被覆した黒鉛製坩堝5を二重石英管13内の黒鉛支持棒18に載せて配置した。そして、二重石英管13内を真空排気した後、ワークコイル15に電流を流し、坩堝蓋体3の表面温度を1700℃まで上げた。その後、雰囲気ガスとして高純度アルゴンガス(純度99.9995%)と高純度窒素ガス(純度99.9995%)の混合ガスを流入させ、二重石英管13内の圧力を約80kPaに保ちながら、坩堝蓋体3の表面温度を目標温度である2250℃まで上昇させた。雰囲気ガス中の窒素濃度は7%とした。その後、成長圧力である1.3kPaに約30分かけて減圧した。この際の坩堝内のSiC原料2と種結晶1との間の温度勾配は約20℃/cmである。そして、成長時間を100時間として結晶成長を行い、その後、直ちに冷却した。
得られたSiC単結晶インゴットの口径は約102.3mmであり、成長面形状は緩やかな凸形状をしており、結晶成長先端の結晶中心近傍の高さは約34mmであった。また、インゴットの外周側面や結晶成長端面、並びに種結晶の裏面(結晶成長端面の反対側)を目視と実体顕微鏡とで観察したところ、亜粒界等のマクロ欠陥の発生は一切なく、成長結晶はほぼ種結晶と同等の良好な結晶品質が実現されていることを確認した。
また、得られたSiC単結晶インゴットについて、研削、切断及び研磨加工を行い、直径100mm、厚さ0.35mmの形状を有し、かつ結晶c軸(六方晶<0001>軸)が<11−20>方向へ4度傾いた4度オフウエハを作製した。このウエハの取り出し位置はインゴットの最上部、すなわち結晶成長端から採取したところ、ウエハは全面が4H型ポリタイプで構成されていた。更に、このウエハを500℃に加熱して溶融したKOH(水酸化カリウム)に約3分間浸漬してエッチングを行い、転位ピットを形成させた。現れたピットの中で、基底面転位に対応する貝殻状のエッチピット(P. Wu, Journal of Crystal Growth, Vol.312 (2010) p.1193)の個数をウエハ全面で計測し、ウエハの面積で割ることで単位面積当たりの基底面転位密度を求めたところ、100mmウエハの全面で67個/cmという極めて小さい密度値が実現されていた。
(比較例1)
図4に示したように、黒鉛製遮蔽部材11を使用せずに、黒鉛製坩堝5の外側面と断熱材9の内側面とが互いに接するようにし、また、この黒鉛製坩堝5は、周壁部、底壁部、上壁部ともに厚みが全て20mmとなるようにして(すなわち誘導加熱される黒鉛の加熱条件が実施例1と同程度となるようにして)、これら以外は実施例1と同様にして結晶成長を行った。
得られたSiC単結晶インゴットの口径は約101.9mmであり、インゴットを詳しく観察したところ、成長面の形状はインゴット周辺部がやや凹面形状をしており、結晶成長先端の結晶中心近傍の高さは約29mmであった。このインゴット周辺部には亜粒界が発生しており、ラマン分光装置を用いて詳しく調べたところ、6H型の異種ポリタイプが混入していることが判明した。また、実施例1と同様に、インゴットの最上部から直径100mm、厚さ0.35mmの4度オフウエハを作製し、実施例1と同様に溶融KOHエッチング法により基底面転位密度を評価したところ、ウエハ周辺部で貝殻状のエッチピット密度が極めて大きく、基底面転位密度は569,000個/cmの値が得られた。
(黒鉛製遮蔽部材の厚み評価試験)
誘導加熱による黒鉛製遮蔽部材の厚みの影響を調べるために、以下のようにしてSiC単結晶インゴットの試験製造を行った。使用した種結晶は全て口径153mm、厚さ2.5mmの{0001}基板からなる4H型SiC単結晶基板であり、(000−1)面(C面)が成長面となるように坩堝蓋体3の内側面に貼り付けた。そして、SiC原料2であるSiC粉末を装填した坩堝本体4に対して、実施例1と同様に、坩堝蓋体3の下面側と坩堝本体4の上面側とをネジ構造により螺合して、昇華ガスが漏出可能となるように継ぎ目部分を形成した。
黒鉛製遮蔽部材11については、上記坩堝蓋体3と坩堝本体4とからなる黒鉛製坩堝5の形状にあわせて、単一の黒鉛ブロックから底壁遮蔽部11aを備えた継ぎ目の無い一体部品の底付き円筒部材を使用した。この底付き円筒部材に上記の黒鉛製坩堝5を収容し、それぞれ厚さ15mmのカーボンフェルト製の周壁断熱材6、及び底壁断熱材7を配置して、図1(b)に示したように、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面を断熱材で覆わずに開放として、黒鉛製坩堝5の外側面とこれらの断熱材9の内側面との間に、黒鉛製遮蔽部材11が介在されるようにした。ここで、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面には、周壁断熱材6と黒鉛製遮蔽部材11とが同じ高さとなるように、それぞれ長さ30mmで突出するようにした。
この評価試験では、下記表1に示したように、黒鉛製坩堝5の厚みと黒鉛製遮蔽部材11との厚みの合計が25mmとなるようにして(周壁部側、底壁部側ともに)、それぞれの厚みを変化させた。また、黒鉛製坩堝5の上壁部の厚み(坩堝蓋体3の厚み)は25mmで固定とした。このようにして断熱材9と上壁遮蔽部11とで被覆した黒鉛製坩堝5を二重石英管13内の黒鉛支持棒18に載せて配置し、結晶成長条件は実施例1の場合と同様にして、成長時間を140時間として結晶成長を行った。
成長後、直ちに冷却して、インゴットを取り出して目視と実体顕微鏡とで表面を観察し、また、実施例1と同様にして、口径が150mmの4度オフウエハを作製して、溶融KOHエッチング法により貝殻状エッチピットをカウントすることで基底面転位密度を求めた。結果を表1にまとめて示す。
Figure 0006861557
表1に示したように、図1(b)に示す構造を有する製造装置では、黒鉛製遮蔽部材11の厚さが5mm以下の場合に、成長面の形状が緩やかな凸形状のSiC単結晶インゴットが得られており、成長が良好であったことを反映して、基底面転位密度も100個/cm程度のきわめて小さい、欠陥の少ないSiC単結晶インゴットが得られていることが判る。他方、黒鉛製遮蔽部材11の厚さが10mm以上になると、高周波加熱によるインゴット製造では、成長端面の形状の凹面性が次第に強くなり、6Hや15Rといった4H型以外の異種ポリタイプが混入する現象が現れている。これは、黒鉛製坩堝5の上壁部外側面にはみ出している黒鉛製遮蔽部材11の厚さが大きくなったことで、高周波誘導によるこの遮蔽部材11部分での発熱が大きくなり、坩堝内の温度分布を大きく変える状況に至ったためであると考えられ、黒鉛製遮蔽部材11の厚みが15mmであったり、特に、黒鉛製遮蔽部材11の厚みが20mmとなると、得られたSiC単結晶インゴットには、異種ポリタイプの混入によりマイクロパイプをはじめとする各種の欠陥が過度に多量発生してしまい、それによってKOHエッチングによる転位密度の評価が正確にできなかった。また、黒鉛製遮蔽部材11の厚みが15mmの場合の結果から、浸透深さの計算値(約15mm)となってはいるものの、高温での電気抵抗値の変動等を考慮した場合、良好な成長安定性を得るためには15mmよりも十分に小さい値とすることが好ましく、工業的には10mm以下とすることが求められることが示された。
以上に示す結果より、本発明の製造装置であれば、坩堝内の昇華ガス圧の過度な上昇が避けられて、かつ昇華ガスによる断熱材の特性劣化を抑制して、安定した大口径SiC単結晶インゴットの製造を可能にすることができる。そのため、異種ポリタイプの混入が無く、低欠陥密度のSiC単結晶ウエハを安定して製造することができるようになる。
1:種結晶、2:炭化珪素原料、3:坩堝蓋体、4:坩堝本体、4a:上部本体、4b下部本体、5:黒鉛製坩堝、6:周壁断熱材、7:底壁断熱材、8:上壁断熱材、9:断熱材、10:中央開口部、11:黒鉛製遮蔽部材、11a:底壁遮蔽部、11b:上壁遮蔽部、12:円筒排気口、13:二重石英管、14:真空排気装置、15:ワークコイル、16:光路、17:二色温度計、18:黒鉛支持棒。

Claims (5)

  1. 炭化珪素原料が装填される坩堝本体と種結晶が取り付けられる坩堝蓋体とを有した黒鉛製坩堝、該黒鉛製坩堝の周囲に配置された断熱材、及び、該黒鉛製坩堝を加熱する加熱装置を備えて、炭化珪素原料を加熱して昇華ガスを発生させ、種結晶上に再結晶させる昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴットを製造する炭化珪素単結晶インゴットの製造装置であって、
    黒鉛製坩堝の周壁部外側面と該周壁部外側面を覆う周壁断熱材の内側面との間及び該黒鉛製坩堝の底壁部外側面と該底壁部外側面を覆う底壁断熱材の内側面との間に黒鉛製の遮蔽部材を介在させて、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを、該黒鉛製遮蔽部材と黒鉛製坩堝の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて、黒鉛製坩堝の上壁部側から断熱材外部に排出するようにしたこと及び、
    該黒鉛製遮蔽部材は一体部品の底付き円筒部材であることを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
  2. 前記黒鉛製坩堝の上壁部外側面を覆う上壁断熱材が中央開口部を有しており、前記黒鉛製遮蔽部材が、該上壁断熱材の内側面と黒鉛製坩堝の上壁部外側面との間に介在すると共に、前記中央開口部の内周側面を覆うように延設されて円筒排気口を形成する上壁遮蔽部を有して、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを、前記隙間と連通した該円筒排気口から断熱材外部に排出する請求項に記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
  3. 前記加熱装置が誘導加熱方式の加熱装置であり、前記黒鉛製遮蔽部材は、該加熱装置で用いる高周波の浸透深さより薄い厚みを有する請求項1または2のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
  4. 直径100mm以上の炭化珪素単結晶インゴットを製造するものである請求項1〜のいずれかに記載の炭化珪素単結晶インゴットの製造装置。
  5. 炭化珪素原料が装填される坩堝本体と種結晶が取り付けられる坩堝蓋体とを有した黒鉛製坩堝、該黒鉛製坩堝の周囲に配置された断熱材、及び、該黒鉛製坩堝を加熱する加熱装置を備えた炭化珪素単結晶インゴットの製造装置を用いて、炭化珪素原料を加熱して昇華ガスを発生させ、種結晶上に再結晶させる昇華再結晶法により炭化珪素単結晶インゴットを製造する炭化珪素単結晶インゴットの製造方法であって、
    黒鉛製坩堝の周壁部外側面と該周壁部外側面を覆う周壁断熱材の内側面との間及び該黒鉛製坩堝の底壁部外側面と該底壁部外側面を覆う底壁断熱材の内側面との間一体部品の底付き円筒部材である黒鉛製遮蔽部材を介在させて、黒鉛製坩堝から漏出した昇華ガスを、該黒鉛製遮蔽部材と黒鉛製坩堝の周壁部外側面との間に形成された隙間を通じて、黒鉛製坩堝の上壁部側から断熱材外部に排出することを特徴とする炭化珪素単結晶インゴットの製造方法。
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