以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のブロック共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物を重合成分として含むブロック共重合体であって、環構造を有することを特徴とする。
[ブロック共重合体]
ブロック共重合体は、通常、(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むブロック[ブロック(I)という]と、ブロック(I)とは異なるブロック[ブロック(II)という]とを少なくとも有している。
なお、ブロック(II)は、通常、ブロック(I)とは異なるガラス転移温度を有している。
ブロック共重合体は、ブロック(I)及びブロック(II)を有する限り、ブロック数は特に限定されず、例えば、ジ乃至デカブロック体などのポリブロック体であってもよい。
代表的なブロック共重合体には、(I)−(II)で表されるジブロック体、(I)−(II)−(I)または(II)−(I)−(II)で表されるトリブロック体、テトラブロック体[例えば、(I)−(II)−(I)−(II)、(II)−(I)−(II)−(I)等]、ペンタブロック体[例えば、(I)−(II)−(I)−(II)−(I)、(II)−(I)−(II)−(I)−(II)等]等が含まれる。
ここで、ポリブロック体の両端に位置する(I)または(II)の分子量、組成等は同じであってもよいし、相互に異なっていてもよい。
また、本発明のブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を重合成分として含む。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン系モノマー[例えば、スチレン、α−アルキルスチレン(例えば、α−メチルスチレンなどのα−C1−4アルキルスチレン)、アルキルスチレン(例えば、ビニルトルエンなどのC1−4アルキルスチレン)、ハロスチレン(例えば、クロロスチレンなど)など]などが挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
芳香族ビニル化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
芳香族ビニル化合物(スチレンなど)は、ブロック共重合体の重合成分として含まれている限り特に限定されず、例えば、ブロック(I)及び/又はブロック(II)の重合成分であってもよく、特に、少なくとも、アクリル酸エステル酸を重合成分とするブロック(例えば、ブロック(II))の重合成分であってもよい。
本発明のブロック共重合体の分子鎖形態は、特に限定されることなく、例えば、線状、分岐状、放射状等のいずれでもよい。当該ブロック共重合体の構造は、ブロック共重合体を含む樹脂組成物の加工特性や機械特性等の必要特性に応じて使い分けられる。
ブロック共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含む限り、特に限定されないが、通常、メタクリル酸エステルを重合成分とするブロックを有する場合が多い。
ブロック(I)は、重合成分が、主として[ブロック(I)の全重合成分のうち、例えば50〜100モル%、好ましくは70〜95モル%の]メタクリル酸エステルであることが好ましい。
代表的なブロック共重合体は、メタクリル酸エステルを重合成分として含むブロック(I)と、アクリル酸エステルを重合成分として含むブロック(II)とを有するブロック共重合体[以下、ブロック共重合体(A)ということがある]である。
このようなブロック共重合体では、ブロック(I)がハード成分(硬質成分)、ブロック(II)がソフト成分(軟質成分)を形成する場合が多い。
以下、ブロック共重合体(A)について、詳述する。
(ブロック共重合体(A))
重合体ブロック(I)を形成させるためのメタクリル酸エステルとしては、例えば、脂肪族メタクリレート[例えば、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸へプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸C1−18アルキル、好ましくはメタクリル酸C1−12アルキル)等]、脂環族メタクリレート[例えば、メタクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、メタクリル酸シクロプロピル、メタクリル酸シクロブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸C3−20シクロアルキル、好ましくはメタクリル酸C3−12シクロアルキル)、架橋環式メタクリレート(例えば、メタクリル酸イソボルニル等)等]、芳香族メタクリレート[例えば、メタクリル酸アリールエステル(例えば、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸o−トリル、メタクリル酸m−トリル、メタクリル酸p−トリル、メタクリル酸2,3−キシリル、メタクリル酸2,4−キシリル、メタクリル酸2,5−キシリル、メタクリル酸2,6−キシリル、メタクリル酸3,4−キシリル、メタクリル酸3,5−キシリル、メタクリル酸1−ナフチル、メタクリル酸2−ナフチル、メタクリル酸ビナフチル、メタクリル酸アントリル等のメタクリル酸C6−20アリール、好ましくはメタクリル酸C6−10アリール)、メタクリル酸アラルキルエステル(例えば、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸C6−10アリールC1−4アルキル)、メタクリル酸フェノキシアルキル(例えば、メタクリル酸フェノキシエチル等のメタクリル酸フェノキシC1−4アルキル)等]等を挙げることができる。
また、メタクリル酸エステルは、ヒドロキシル基、アルコキシ基、グリシジル基等の置換基を有していてもよい。このようなメタクリル酸エステルとしては、例えば、ヒドロキシル基を有するメタクリル酸エステル[例えば、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸ヒドロキシC1−12アルキル)等]、アルコキシ基を有するメタクリル酸エステル[例えば、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、メタクリル酸2−メトキシエチル等のメタクリル酸C1−12アルコキシC1−12アルキル等)]、グリシジル基を有するメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸グリシジル等)等が挙げられる。
重合体ブロック(I)は、これらのメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる等の観点から、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸C1−18アルキルエステルがより好ましく、メタクリル酸メチルがさらに好ましい。
特に、ブロック(I)において、メタクリル酸エステル中のメタアルキルエステル(特に、メタクリル酸メチル)の含有割合は、例えば50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%である。
また、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、重合体ブロック(I)は、メタクリル酸エステル以外の他の重合性単量体1種又は2種以上を共重合成分に含んでいてもよい。
前記他の重合性単量体としては、例えば、下記アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、ビニル化合物[例えば、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の前記例示のスチレン系モノマーなど)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)、α,β−不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテン等のC2−10アルケン)]、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル等が挙げられる。
また、他の重合性単量体は、アミド基含有ビニル系単量体[例えば、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミドなどのN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミドなどのN−シクロアルキル(メタ)アクリルアミド;N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのN−アリール(メタ)アクリルアミド;N−ベンジル(メタ)アクリルアミドなどのN−アラルキル(メタ)アクリルアミド;N−クロロフェニル(メタ)アクリルアミドなどのN−クロロアリール(メタ)アクリルアミド;N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど)など]を含んでいてもよい。アミド基含有ビニル系単量体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル等であり、炭化水素基等の置換基[例えば、脂肪族基(例えば、C1−20アルキル基、C2−20不飽和脂肪族炭化水素基等)、芳香族基(例えば、C6−20芳香族炭化水素基等)等]で置換されていてもよい。
尚、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルは、ブロック共重合体にラクトン環構造を導入するときの残存する単位であってもよい。
これらのうち、他の重合性単量体として、特に、芳香族ビニル化合物を好適に含んでいてもよい。
また、本発明のブロック共重合体(例えば、環構造として環状酸無水物構造を有するブロック共重合体)は、アミド基含有ビニル系単量体(又はアミド基含有ビニル単量体由来の単位)を実質的に含まないのが好ましい。実質的に含まないことで、アミド基含有ビニル系単量体のアミド基が他のポリマーに含まれるエステル基と反応して分子間架橋することによる悪影響(フィッシュアイなど)などを効率よく抑えることができる。
前記他の重合性単量体は、ブロック(I)の共重合成分として少量、例えば、ブロック(I)の全重合成分のうち、好ましくは20質量%以下(例えば1〜20質量%)、より好ましくは10質量%以下(例えば1〜10質量%)含んでいてもよい。
特に、前記のように、他の重合性単量体はアミド基含有ビニル系単量体を実質的に含まないのが好ましいが、アミド基含有ビニル系単量体を含む場合でも、ブロック共重合体を構成する環構造100重量部に対して、例えば、0.1重量部以下、好ましくは0.05重量部以下、さらに好ましくは0.01重量部以下であってもよい。
ブロック共重合体(A)は、前記のように、ブロック(II)の重合成分として、アクリル酸エステルを含む。このようなブロック共重合体(A)において、ブロック(II)の重合成分全体に対するアクリル酸エステルの割合は、例えば、30モル%以上(例えば、35〜100モル%)、好ましくは40モル%以上(例えば、45〜95モル%)、さらに好ましくは50モル%以上(例えば、55〜90モル%)、特に60モル%以上(例えば、65〜80モル%)であってもよく、50〜85モル%程度であってもよい。
重合体ブロック(II)を形成させるためのアクリル酸エステルとしては、例えば、脂肪族アクリレート[例えば、アクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸へプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸C1−18アルキル、好ましくはアクリル酸C1−12アルキル等)]、脂環族アクリレート[例えば、アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、アクリル酸シクロプロピル、アクリル酸シクロブチル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸C3−20シクロアルキル、好ましくはアクリル酸C3−12シクロアルキル)、架橋環式アクリレート(例えば、アクリル酸イソボルニル等)]、芳香族アクリレート[例えば、アクリル酸アリールエステル(例えば、アクリル酸フェニル、アクリル酸o−トリル、アクリル酸m−トリル、アクリル酸p−トリル、アクリル酸2,3−キシリル、アクリル酸2,4−キシリル、アクリル酸2,5−キシリル、アクリル酸2,6−キシリル、アクリル酸3,4−キシリル、アクリル酸3,5−キシリル、アクリル酸1−ナフチル、アクリル酸2−ナフチル、アクリル酸ビナフチル、アクリル酸アントリル等のアクリル酸C6−20アリール、好ましくはアクリル酸C6−10アリール)、アクリル酸アラルキルエステル(例えば、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸C6−10アリールC1−4アルキル)、アクリル酸フェノキシアルキル(例えば、アクリル酸フェノキシエチル等のアクリル酸フェノキシC1−4アルキル)等]等を挙げることができる。
また、アクリル酸エステルは、ヒドロキシル基、アルコキシ基、グリシジル基等の置換基を有していてもよい。このようなアクリル酸エステルとしては、例えば、ヒドロキシル基を有するアクリル酸エステル[例えば、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸ヒドロキシC1−12アルキル等)]、アルコキシ基を有するアクリル酸エステル[例えば、アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、アクリル酸2−メトキシエチル等のアクリル酸C1−12アルコキシC1−12アルキル等)]、グリシジル基を有するアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸グリシジル等)等が挙げられる。
重合体ブロック(II)は、これらのアクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
これらの中でも、柔軟性を向上させる等の観点から、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル等のアクリル酸C1−18アルキルエステルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルがさらに好ましい。
ブロック(II)において、アクリル酸エステル中のアクリル酸アルキルエステルの含有割合は、例えば50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%である。
また、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、重合体ブロック(II)は、アクリル酸エステル以外の他の重合性単量体を共重合成分に含んでいてもよい。
このような他の重合性単量体としては、前記ブロック(I)の重合成分として使用できる他の重合性単量体を使用することができる。
特に、ブロック(II)は、耐湿性の観点等から、アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の前記例示のスチレン系モノマーなど)を重合成分とするのが好ましい。
ブロック(II)の重合成分が芳香族ビニル化合物を含む場合、芳香族ビニル化合物(由来の構造単位)の割合は、ブロック(II)の重合成分(由来の構造単位)全体に対して、例えば、1モル%以上(例えば、2〜70モル%)、好ましくは3モル%以上(例えば、4〜65モル%)、さらに好ましくは5モル%以上(例えば、7〜55モル%)、特に10モル%以上(例えば、12〜50モル%)、特に好ましくは15モル%以上(例えば、15〜50モル%)程度であってもよく、通常5〜50モル%(例えば、8〜40モル%、好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜35モル%)程度であってもよい。
また、ブロック(II)の重合成分が、芳香族ビニル化合物以外の他の重合性単量体を含む場合、本発明の効果を発現させる観点から少量であることが好ましく、ブロック(II)の全重合成分のうち、好ましくは20質量%以下(例えば1〜20質量%)、より好ましくは10質量%以下(例えば1〜10質量%)である。
ブロック(I)のガラス転移温度は、例えば40〜250℃、好ましくは110℃以上(例えば、110〜200℃)、より好ましくは115〜160℃である。
また、ブロック(II)のガラス転移温度は、例えば、−60〜30℃、好ましくは10℃以下(例えば、−55〜0℃)、さらに好ましくは−50〜−5℃、特に−45〜−10℃(例えば、−40〜−12℃)程度であってもよい。ブロック(II)のガラス転移温度とブロック(I)のガラス転移温度との差は、例えば、20〜300℃、好ましくは50〜250℃、さら好ましくは80〜200℃であってもよい。
ブロック(I)の重量平均分子量は、特に限定されないが、ブロック共重合体の強度が優れる等の観点から、例えば10,000〜500,000であり、好ましくは15,000〜200,000であり、より好ましくは20,000〜100,000である。
また、ブロック(II)の重量平均分子量は、特に限定されないが、ブロック共重合体の強度が優れる等の観点から、例えば5,000〜200,000であり、好ましくは10,000〜150,000であり、より好ましくは15,000〜100,000である。
ブロック共重合体全体において、重合体ブロック(I)及び重合体ブロック(II)の組成比は、例えばブロック(I)が20〜90質量%、ブロック(II)が80〜10質量%であり、好ましくはブロック(I)が25〜85質量%、ブロック(II)が75〜15質量%であり、さらに好ましくはブロック(I)が30〜70質量%、ブロック(II)が70〜30質量%である。ブロック(I)の割合が20質量%以上であれば、ブロック(II)との相溶性が向上する傾向があり、ブロック(II)の割合が10質量%以上であれば、本発明のブロック共重合体を含む樹脂組成物で形成されたフィルムの耐折性等の機械的強度が向上する傾向がある。
本発明のブロック共重合体において、ブロック(I)とブロック(II)の含有割合は、ブロック(I):ブロック(II)のモル比が、例えば20:80〜90:10、好ましくは25:75〜85:15、さらに好ましく30:70〜70:30である。ブロック(I)の割合が20モル%以上であれば、ブロック(II)との相溶性が向上する傾向があり、ブロック(II)の割合が10モル%以上であれば、ブロック共重合体を含む樹脂組成物で形成されたフィルムの耐折性等の機械的強度が向上するため好ましい。
本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、ブロック共重合体は、ブロック(I)及び(II)とは別の重合体ブロック[例えば、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル以外の成分を重合成分とするブロック(III)、以下、重合体ブロック(III)ともいう]1種以上を有してもよい。
重合体ブロック(III)と、重合体ブロック(I)及び重合体ブロック(II)との結合の形態は特には限定されないが、例えば、(I)−((II)−(I))n−(III)や、(III)−(I)−((II)−(I))n−(III)等の構造(nは1〜20の整数である)が挙げられる。
上記重合体ブロック(III)の重合成分としては、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテン等のC2−10アルケン)、共役ジエン化合物(例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、ミルセン等)、ビニル化合物[例えば、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p-メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルピリジン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)、α,β−不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルケトン、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等)]、(メタ)アクリルアミド類(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等)、ラクトン系化合物(例えば、ε−カプロラクトン、バレロラクトン等)等を挙げることができる。重合体ブロック(III)は、これらの重合成分の1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
本発明のブロック共重合体におけるブロック(III)の含有量は、特に限定されないが、ブロック(I)及びブロック(II):ブロック(III)のモル比が、例えば100:0〜50:50、好ましくは100:0〜70:30、より好ましくは100:0〜80:20である。
本発明のブロック共重合体におけるブロック(III)の含有量は、特に限定されないが、ブロック共重合体全体において、ブロック(III)が、例えば0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%である。
また、ブロック共重合体は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基を有していてもよい。
[芳香族ビニル化合物]
本発明のブロック共重合体は、前記のように、芳香族ビニル化合物(スチレンなどの前記例示の芳香族ビニル化合物)を重合成分として含む。芳香族ビニル化合物(由来の構造単位)は、ブロック共重合体に含まれている限り、特に限定されず、例えば、ブロック(I)の重合成分及び/又はブロック(II)の重合成分に含まれていてもよい。
特に、芳香族ビニル化合物は、アクリル酸エステルを重合成分として含むブロック(例えば、ブロック(II))に含まれているのが好ましい。同じブロック内に、アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物とを含むことで、耐湿性などの向上又は改善効果を得やすい。
本発明のブロック共重合体において、芳香族ビニル化合物(由来の構造単位)の割合は、例えば、ブロック共重合体の重合成分(由来の構造単位)全体に対して、1モル%以上(例えば、1〜40モル%)、好ましくは3モル%以上(例えば、3〜30モル%)、さらに好ましくは5モル%以上(例えば、5〜25モル%)であってもよい。
本発明のブロック共重合体において、芳香族ビニル化合物(由来の構造単位)の割合は、例えば、ブロック共重合体全体に対して、1質量%以上(例えば、1〜35質量%)、好ましくは3質量%以上(例えば、3〜30質量%)、さらに好ましくは5質量%以上(例えば、5〜25質量%)であってもよい。
芳香族ビニル化合物が特定のブロック(例えば、ブロック(II))中に含まれる場合、ブロック(例えば、ブロック(II)など)の重合成分全体に対する芳香族ビニル化合物の割合は、例えば、1モル%以上(例えば、1〜50モル%)、好ましくは3モル%以上(例えば、3〜45モル%)、さらに好ましくは5モル%以上(例えば、8〜40モル%)、特に10モル%以上(例えば、10〜35モル%)、特に好ましくは15モル%以上(例えば、15〜35モル%)程度であってもよく、通常5〜50モル%程度であってもよい。
芳香族ビニル化合物が特定のブロック(例えば、ブロック(II))中に含まれる場合、ブロック(例えば、ブロック(II)など)全体に対する芳香族ビニル化合物(由来の構造単位)の割合は、例えば、1質量%以上(例えば、2〜50質量%)、好ましくは3質量%以上(例えば、4〜40質量%)、さらに好ましくは5質量%以上(例えば、8〜30質量%)、特に好ましくは10質量%以上(例えば、11〜30質量%)であってもよい。
ブロック共重合体において、芳香族ビニル化合物(由来の構造単位)の割合は、アクリル酸エステル(由来の構造単位)100モルあたり、例えば、1モル以上(例えば、2〜50モル)、好ましくは5モル以上(例えば、7〜40モル)、さらに好ましくは10モル以上(例えば、12〜35モル)であってもよく、通常1〜50モル%程度であってもよい。
[環構造]
本発明のブロック共重合体は、主鎖に環構造を有することが好ましい。主鎖に環構造を有することにより、ブロック共重合体の軟化温度や熱分解温度等の耐熱性、硬度(強度)、耐溶剤性、表面硬度、接着性、酸素や水蒸気のバリヤ性、各種の光学特性が向上する。更に、フィルムやシートにした場合に、高温、高湿度条件下での寸法安定性や形状安定性が向上する。これに加えて、主鎖の環構造は、本発明のフィルムを位相差フィルムとする場合、延伸によってフィルムが大きな位相差を発現することに寄与する。この特徴は、位相差フィルムまたは位相差フィルムの機能を有する偏光子保護フィルムとしての、本発明の光学フィルムの使用を可能とする。
本発明のブロック共重合体が主鎖に有する環構造は、例えば、環状イミド構造(例えば、マレイミド構造、グルタルイミド構造等)、環状無水物構造(例えば、無水マレイン酸構造、無水グルタル酸構造等)、ラクトン環構造等であり、好ましくは、マレイミド構造、無水マレイン酸構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造及びラクトン環構造から選ばれる少なくとも1種である。マレイミド構造は、例えば、シクロヘキシルマレイミド構造、メチルマレイミド構造、フェニルマレイミド構造、ベンジルマレイミド構造である。これら環構造は、ブロック共重合体の主鎖に1種又は2種以上含まれていてよい。
ブロック共重合体の耐熱性の観点からは、当該環構造は、ラクトン環構造、環状イミド構造(例えば、N−アルキル置換マレイミド構造、グルタルイミド構造等)、環状無水物構造(例えば、無水マレイン酸構造、無水グルタル酸構造等)が好ましい。
また、耐水性や耐熱水性などの観点からは、環状非無水物構造[例えば、ラクトン環構造、環状イミド構造(特に、グルタルイミド構造、マレイミド構造)]であるのが好ましい。
本発明のフィルムが光学フィルムである場合、表面硬度、耐溶剤性、接着性、バリヤ特性、光学特性が付与される観点からは、当該環構造は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造及び無水グルタル酸構造が好ましい。光学フィルムの中でも位相差フィルムである場合、正の位相差が付与でき、更に位相差特性の安定性が優れる観点からは、当該環構造はラクトン環構造、グルタルイミド構造が好ましい。
これらの観点から、本発明において、特に好ましい環構造は、ラクトン環構造、環状イミド構造、特に、環状イミド構造である。そのため、本発明のブロック共重合体は、特に、ラクトン環構造及び環状イミド構造(特に、グルタルイミド構造、マレイミド構造)から選択された少なくとも1種の環構造を有するのが好ましく、特に、マレイミド構造を含む環状イミド構造を有するのが好ましい。マレイミド構造は、例えば、マレイミド構造を有する単量体(マレイミドモノマー類)の重合によりブロック共重合体に導入できるが、交互共重合性を示すなど、芳香族ビニル化合物(スチレン系モノマーなど)との親和性が高く、所望量の芳香族ビニル化合物をブロック共重合体に導入しやすく、優れた耐湿性を効率よく得ることができる。
グルタルイミド構造及び無水グルタル酸構造としては、例えば、以下の式(1)で表される構造である。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基であり、R
3は水素原子又は置換基であり、X
1は酸素原子又は窒素原子である。X
1が酸素原子のときn=0であり、X
1が窒素原子のときn=1である。)
式(1)のR1及びR2において、アルキル基としては、例えば、C1−8アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。R1およびR2のなかでは、耐熱性に優れ、複屈折率が小さい光学フィルムを得る観点から、水素原子またはC1−4アルキル基が好ましい。
式(1)のR3において、置換基としては、例えば、炭化水素基等が挙げられる。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香族基である。尚、炭化水素基は、さらにハロゲン等の置換基を有していてもよい。
式(1)のR3において、脂肪族基としては、例えば、C1−10アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル基のなかでは、耐熱性に優れ、複屈折率が小さいブロック共重合体を得る観点から、C1−4アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式(1)のR3において、脂環族基としては、例えば、C3−12シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシクロアルキル基のなかでは、耐熱性に優れ、複屈折率が小さいブロック共重合体を得る観点から、C3−7シクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
式(1)のR3において、芳香族基としては、例えば、C6−20芳香族基[例えば、C6−20アリール基(例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビナフチル基、アントリル基等)、C7−20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)等]が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族基のなかでは、耐熱性に優れ、複屈折率が小さいブロック共重合体を得る観点から、フェニル基およびトリル基が好ましい。
式(1)において、耐熱性に優れ、複屈折率が小さいブロック共重合体を得られる等の観点から、好ましくは、R1およびR2がそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、R3が、C1−10アルキル基、C3−12シクロアルキル基又はC6−20芳香族基であり、より好ましくは、R1およびR2がそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、R3が、C1−4アルキル基、C3−7シクロアルキル基、C6−20アリール基又はC7−20アラルキル基であり、さらに好ましくは、R1およびR2がそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、R3が、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はトリル基であり、最も好ましくは、R1およびR2がそれぞれ独立して水素原子またはメチル基、R3がシクロヘキシル基又はフェニル基である。
なお、本発明のブロック共重合体に用いられるブロック(I)、(II)及び(III)は、式(1)で表わされる構造を1種又は2種以上含んでいてよい。
特に、前記のように、式(1)で表される構造を有する場合、本発明のブロック共重合体は、環状非無水物構造であるグルタルイミド構造(すなわち、式(1)において、X1が窒素原子である構造)を有するのが好ましい。
なお、無水グルタル酸構造(すなわち、式(1)において、X1が酸素原子である構造)は、加水分解したり、酸価が大きくなって耐水性や耐熱水性を低下させたり光学特性を変動させる虞があるため、本発明のブロック共重合体は、無水グルタル酸構造を実質的に有していないか、含んでいても少ないのが好ましい。
無水マレイン酸構造及びマレイミド構造は、例えば、以下の式(2)で表される構造である。
(式中、R
4、R
5は互いに独立して水素原子またはメチル基であり、R
6は水素原子又は置換基であり、X
2は酸素原子または窒素原子である。X
2が酸素原子のときn=0であり、X
2が窒素原子のときn=1である。)
式(2)のR6において、置換基としては、例えば、炭化水素基等が挙げられる。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基{例えば、アルキル基[例えば、C1−6直鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、C1−6分岐アルキル基(例えば、イソプロピル基等)等のC1−6アルキル基等]等}、脂環族基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3−20シクロアルキル基等)、芳香族基{例えば、C6−20芳香族基[例えば、C7−20アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、C6−20アリール基(例えば、フェニル基等)]}である。尚、炭化水素基は、さらにハロゲン等の置換基を有していてもよい。
X2が酸素原子のとき、式(2)により示される環構造は無水マレイン酸構造となる。無水マレイン酸構造は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合することによって形成することができる。
X2が窒素原子のとき、式(2)により示される環構造はマレイミド構造となる。マレイミド構造は、例えば、マレイミドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合することによって形成することができる。
X2が窒素原子のとき、耐熱性に優れ、複屈折率が小さいブロック共重合体を得られる等の観点から、好ましくは、R4及びR5がそれぞれ独立して水素原子、R6がC3−20シクロアルキル基又はC6−20芳香族基であり、より好ましくはR4及びR5がそれぞれ独立して水素原子、R6がシクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基である。
なお、本発明のブロック共重合体に用いられるブロック(I)、(II)及び(III)は、式(2)で表わされる構造を1種又は2種以上含んでいてよい。
特に、前記のように、式(2)で表される構造を有する場合、本発明のブロック共重合体は、環状非無水物構造であるマレイミド構造(すなわち、式(2)において、X2が窒素原子である構造)を有するのが好ましい。
なお、無水マレイン酸構造(すなわち、式(2)において、X2が酸素原子である構造)は、加水分解したり、酸価が大きくなって耐水性や耐熱水性を低下させたり光学特性を変動させる虞があるため、本発明のブロック共重合体は、無水マレイン酸構造を実質的に有していないか、含んでいても少ないのが好ましい。
ブロック共重合体が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は特に限定されず、例えば、4から8員環であってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環又は6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
6員環であるラクトン環構造は、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造であるが、前駆体の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応により、高いラクトン環含有率を有するブロック共重合体が得られることなどの理由から以下の式(3)に示される構造が好ましい。
(式中、R
7、R
8及びR
9は、互いに独立して、水素原子または置換基である。)
式(3)において、置換基としては、例えば、炭化水素基等の有機残基等が挙げられる。
当該炭化水素基としては、例えば、脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−20アルキル基、エテニル基、プロペニル基などのC2−20不飽和脂肪族炭化水素基等)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基などのC6−20芳香族炭化水素基等)等である。前記炭化水素基は、酸素原子を含んでいてもよく、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基及びエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換されていてもよい。
式(3)において、耐熱性に優れ、複屈折率が小さいブロック共重合体を得られる等の観点から、好ましくは、R9が水素原子またはメチル基、R7及びR8がそれぞれ独立して水素原子またはC1−20アルキル基であり、より好ましくは、R9が水素原子またはメチル基、R7及びR8がそれぞれ独立して水素原子またはメチル基である。
なお、本発明のブロック共重合体に用いられるブロック(I)、(II)及び(III)は、式(3)で表わされる構造を1種又は2種以上含んでいてよい。
本発明のブロック共重合体において、環構造は、ブロック(I)、(II)及び(III)のいずれのブロックに導入されていてもよく、通常はブロック(I)及び/又は(II)に導入されており、少なくともブロック(I)(ハード成分など)に導入されていることが好ましく、ブロック(I)及びブロック(II)に導入されていてもよい。
本発明のブロック共重合体における環構造の含有率は特に限定されないが、例えば1〜60モル%(例えば、1〜50モル%)であり、好ましくは1〜40モル%であり、より好ましくは2〜30モル%であってもよく、20モル%以下[例えば、15モル%以下(例えば、1〜12モル%)、好ましくは10モル%以下(例えば、2〜9モル%)]であってもよい。
また、本発明のブロック共重合体における環構造の含有率は特に限定されないが、例えば1〜80質量%であり、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは2〜40質量%である。
特に、ブロック共重合体におけるグルタルイミド構造及び/又は無水グルタル酸構造の含有率は、ブロック共重合体の耐熱性及び透明性を向上させる等の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、フィルムへの成形性を向上させ、機械的強度を高める等の観点から、例えば90質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは57質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
ブロック共重合体における環構造の含有率が5質量%以上であれば、フィルムの耐熱性や、耐溶剤性および表面硬度が良好となるため好ましい。一方、前記含有率が90質量%以下であれば、フィルムの成形性や機械的特性に優れるため好ましい。
ブロック共重合体におけるグルタルイミド構造及び/又は無水グルタル酸構造の含有率は、ブロック共重合体の耐熱性及び透明性を向上させる等の観点から、例えば3〜85モル%、好ましくは6〜50モル%、より好ましくは10〜40モル%である。
また、ブロック共重合体における無水マレイン酸構造及び/又はN−置換マレイミド構造の含有率は、特に限定されないが、ブロック共重合体の耐熱性及び透明性を向上させる等の観点から、例えば5〜90質量%であり、好ましくは10〜70質量%であり、より好ましくは10〜60質量%であり、さらに好ましくは10〜50質量%である。
ブロック共重合体における無水マレイン酸構造及び/又はマレイミド構造の含有率は、ブロック共重合体の耐熱性及び透明性を向上させる等の観点から、例えば1〜50モル%、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%である。
特に、ブロック共重合体における環状イミド構造(例えば、グルタルイミド構造及び/又はマレイミド構造)の含有率は、例えば、2モル%以上(例えば、2〜40モル%)、好ましくは3モル%以上(例えば、3〜30モル%)、さらに好ましくは4モル%以上(例えば、4〜25モル%)であってもよい。
また、ブロック共重合体における環状無水物構造(例えば、グルタル酸無水物構造及びマレイン酸無水物構造など)の含有率は、例えば、20モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは8モル%以下であってもよい。
なお、上記の通り、ブロック共重合体における環状無水物構造の含有割合は少ないのが好ましいが、ブロック共重合体が環状無水物構造を有する場合、その含有率の下限値は、例えば、2モル%、3モル%、4モル%などであってもよい。
また、ブロック共重合体におけるラクトン環構造の含有率は特に限定はされないが、ブロック共重合体の耐熱性及び透明性を向上させる等の観点から、例えば10〜70質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、より好ましくは15〜45質量%である。
ブロック共重合体におけるラクトン環構造の含有率は、ブロック共重合体の耐熱性及び透明性を向上させる等の観点から、ブロック共重合体の耐熱性及び透明性を向上させる等の観点から、例えば6〜60モル%、好ましくは9〜37モル%、より好ましくは9〜30モル%である。
本発明のブロック共重合体のGPC測定法によるスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、10,000〜500,000であることが好ましく、より好ましくは30,000〜300,000であり、さらに好ましくは50,000〜200,000である。この重量平均分子量が10,000よりも大きいと、溶融押出成形において十分な溶融張力を保持でき、良好なシート状成形体が得られやすく、また得られたシート状成形体の破断強度等の力学物性が優れる。一方500,000よりも小さいと、溶融樹脂が高粘度化せず、溶融押出成形で得られるシート状成形体の表面に微細なイボ状の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因する異物の発生を抑制でき、良好なシート状成形体が得られやすい傾向がある。
本発明のブロック共重合体のGPC測定法による分子量分布(Mw/Mn)は、1〜10であることが好ましい。成形加工に適した樹脂粘度に調整する等の観点から、分子量分布(Mw/Mn)は、より好ましくは1.1〜7.0、さらに好ましくは1.2〜5.0、より一層好ましくは1.5〜4.0である。特に、本発明のブロック共重合体の分子量分布は、例えば、3以下、好ましくは2.8以下(例えば、1〜2.6)、さらに好ましくは2.5以下(例えば、1.1〜2.4)、特に2.3以下(例えば、1.2〜2.2)であってもよい。
本発明のブロック共重合体の酸価は、用途等にもよるが、低い方が好ましく、例えば、10mmol/g以下、好ましくは5mmol/g以下、さらに好ましくは3mmol/g以下、最も好ましくは1.5mmol/g以下(例えば、1mmol/g以下)である。
酸価が高すぎると耐水性に劣る。また、ブロック共重合体において、酸価が高いと、透湿率も高くなる傾向があるようであり、寸法安定性や耐久性に課題を生じる。
本発明では、芳香族ビニル化合物(由来の構造単位)の導入と、上記のような低酸価とを組み合わせることで、効率よく耐湿性を改善又は向上できる。
本発明のブロック共重合体は、耐湿性に優れている。例えば、本発明のブロック共重合体において、JIS Z 0208に基づいて、温度40℃、相対湿度90%及び24時間の条件下で測定される透湿度は、100μm換算で、例えば、200g/m2以下(例えば、1〜200g/m2)、好ましくは150g/m2以下(例えば、5〜150g/m2)、さらに好ましくは100g/m2以下(例えば、10〜100g/m2)であってもよい。
本発明のブロック共重合体の40℃以下の温度領域で観測されるガラス転移温度(Tg)は、−100℃以上40℃以下が好ましく、より好ましくは−90℃以上0℃以下、さらに好ましくは−80℃以上−20℃以下である。
また、本発明のブロック共重合体の40℃以上の温度領域で観測されるガラス転移温度(Tg)は、110℃以上(例えば、110℃以上250℃以下)が好ましく、より好ましくは115℃以上230℃以下、更に好ましくは、120℃以上200℃以下である。
[ブロック共重合体の重合方法]
本発明のブロック共重合体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、環構造を形成し得る単量体、及び芳香族ビニル化合物を少なくとも重合成分として用いてブロック共重合体を共重合することによって形成することができる。
また、前記ブロック共重合体(A)を形成した後、環化反応を進行させてブロック共重合体に環構造を導入することによっても形成できる。このような導入方法は、後述のように、他の樹脂を含んでいる場合でも行うことが可能である。また、このような方法では、他の樹脂の種類に応じて、ブロック共重合体(A)及び他の樹脂の双方に環構造を形成(導入)することもできる。
例えば、他の樹脂として、ブロック(I)及び/又はブロック(II)と同様の骨格を有する樹脂[例えば、アクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのメタクリル系樹脂)など]を使用することで、ブロック共重合体(A)及び他の樹脂の双方に、共通する環構造(例えば、グルタルイミド構造など)を導入することもできる。
尚、後から環化反応を行う場合、ブロック共重合体(A)としては市販品のブロック共重合体を使用してもよく、市販品としては、例えば、株式会社クラレ社製クラリティLA4285やLA2250等が挙げられる。
本発明のブロック共重合体の製造方法は、特に制限はなく、公知の手法に準じた方法を採用することができる。
例えば、各ブロックの構成単位であるモノマーをリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、特開平11−335432号公報に記載の方法である有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、特開平6−93060号公報に記載の方法である有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法、Macromol.Chem.Phys.201巻、1108〜1114頁(2000年)に記載の方法であるα−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下ラジカル重合する方法、Macromolecules、26巻、2987頁(1993)に記載の方法であるニトロキシル基媒介重合、Macromolecules、28巻、2093頁(1995)に記載の方法である原子移動ラジカル重合、Macromolecules、31巻、5559頁(1998)に記載の方法である可逆的付加―開裂連鎖移動重合等が挙げられる。
また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合し、本発明のブロック共重合体を含有する混合物として製造する方法等も挙げられる。
これらの方法のうち、特に、ブロック共重合体が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物(例えば、有機リチウム化合物等)を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が推奨される。
本発明において、有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体100モル%に対して、0.01〜10モル%である。
また、有機アルカリ金属化合物及び有機アルミニウム化合物を使用する場合、有機アルミニウム化合物の使用量は、特に限定されないが、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、例えば1〜500モル、好ましくは2〜100モルである。
重合において、必要に応じて公知の添加剤[例えば、無機塩類(例えば、塩化リチウム等)、有機四級塩(例えば、テトラエチルアンモニウムクロリド等)]や触媒等を添加してもよい。添加剤の使用量は、単量体の組合せや反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
重合においては、重合溶媒を使用することができる。重合溶媒としては、特に限定されないが、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素系溶媒[例えば、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂環族炭化水素系溶媒(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(例えば、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等)等]等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合系内における単量体組成物の総量100質量部に対して、通常は1〜200質量部の範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは10〜150質量部であり、より好ましくは50〜100質量部である。
重合時間は、反応規模や反応温度等により一定しないが、単量体の転化率が90%以上となる等の観点から、例えば数分(1分〜10分程度)〜20時間の範囲で適宜選択すれば良く、好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは1〜10時間である。
尚、各種重合体を作成するにあたり、重合を行う際にそのモノマー原料、重合開始剤や触媒などの副原料および重合に用いる溶媒などは可能な限り濾過してから使用することが、重合体の異物低減の観点、および重合後に濾過することよりも低粘度の段階で濾過できることから好ましい。
濾過の方法としては、液体であれば直接、固体であれば重合に使用する溶媒等に溶解してからメンブレンフィルタや中空糸膜フィルタ等の各種フィルタに通せばよく、それぞれ別々に濾過しても、混合物としてから濾過してもよい。また、この際の濾過の精度は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。
また、重合中に発生するゲル成分等の濾過、重合後の環化反応等の反応工程や樹脂ペレット等の成形体とする際の加熱溶融による熱劣化樹脂の除去の観点から、重合溶液の濾過および/または加熱溶融樹脂の濾過を併用することが好ましい。
濾過の方法としては、例えば、リーフディスクフィルタ、キャンドルフィルタ、パックディスクフィルタおよび円筒型フィルタである。なかでも、有効濾過面積が高いリーフディスクフィルタおよびキャンドルフィルタが好ましい。
フィルタ濾材は特に限定されない。例えば、ポリプロピレン、コットン、ポリエステル、ビスコースレーヨン、グラスファイバーなどの各種の繊維の不織布もしくはロービングヤーン巻回体、またはフェノール樹脂含浸セルロースからなる濾材、金属繊維の不織布を焼結した濾材、金属粉末を焼結した濾材、複数の金網を積層した濾材、これらの濾材を組み合わせたいわゆるハイブリッド型の濾材など、いずれの濾材も使用可能である。なかでも、耐久性および耐圧性に優れることから、金属繊維の不織布を焼結した濾材が好ましい。
重合液を濾過する精度は、例えば15μm以下であり、得られた樹脂体を光学フィルムなどの光学部材に使用することを想定すると、その光学的欠点の低減のために5μm以下が好ましい。濾過精度の下限は特に限定されないが、例えば0.2μmである。これら濾過工程は、重合工程、或いは環化反応工程などに引き続いて連続的に実施することができる。
ブロック(I)及び(II)[必要に応じてブロック(III)]は、例えばリビング重合によって重合することができる。
本発明のブロック共重合体は、アニオン重合の場合、例えば、ブロック(I)又は(II)のいずれか一方の単量体(重合成分)を添加して重合した後、もう一方のブロックの単量体を追加して重合することにより、得ることができる。この方法によって、ブロック(I)とブロック(II)が交互に結合したブロック共重合体を得ることができる。
ブロック(I)の単量体とブロック(II)の単量体の添加順序については、特に限定されず、先にブロック(I)の単量体を添加して重合した後にブロック(II)の単量体を追加して重合してもよいし、先にブロック(II)の単量体を添加して重合した後にブロック(I)の単量体を追加して重合してもよい。
例えば、ブロック(I)の単量体を重合した後、ブロック(II)の単量体を追加して重合し、さらにブロック(I)の単量体を追加して重合することにより、(I)−(II)−(I)で表されるトリブロック体を得ることができる。
ブロック(III)を導入する場合も、同様に、所望の順序でブロック(III)の単量体を添加して重合してよい。
主鎖にグルタルイミド構造を有するブロック共重合体は、例えば、前記ブロック共重合体(A)を、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2007−009182号公報に記載されている方法によりイミド化を行うことによって形成することができる。イミド化方法は特に限定されず、イミド化剤を用いて行うことができる。
イミド化剤としては、例えば、メチルアミン等のC1−10アルキルアミン、シクロヘキシルアミン等のC3−12シクロアルキルアミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等のC6−10アリールアミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのイミド化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。イミド化剤のなかでは、耐熱性に優れ、複屈折率が小さいブロック共重合体を得る観点から、メチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジンが好ましく、メチルアミンとアニリンが特に好ましい。
ブロック共重合体(A)をイミド化剤でイミド化させる方法としては、例えば、公知のイミド化方法などを挙げることができる。
具体的な方法としては、例えば、(1)ブロック共重合体(A)を溶解させることができ、イミド化に対して不活性な溶媒に当該ブロック共重合体を溶解させ、得られた溶液にイミド化剤を添加して反応させる方法(バッチ式反応法)、(2)押出機などを用いて溶融状態のブロック共重合体(A)にイミド化剤を添加し、イミド化させる方法(溶融混練法)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記バッチ式反応法には、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いることができる。バッチ式反応槽(圧力容器)は、ブロック共重合体(A)を溶媒に溶解させた溶液を加熱し、撹拌することができ、イミド化剤を添加することができる構造を有するものであることが好ましく、イミド化反応の進行に伴って前記溶液の粘度が高くなることがあるので、撹拌効率に優れているものがより好ましい。前記バッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械工業(株)製、マックスブレンド(登録商標)撹拌槽などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記バッチ式反応法において、イミド化に対して不活性な溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの脂肪族アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロトルエンなどの芳香族系化合物;エーテル系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これら溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの溶媒のなかでは、トルエン、およびトルエンとメチルアルコールとの混合溶媒が好ましい。
前記バッチ式反応法において、イミド化反応の反応温度は、ブロック共重合体(A)をイミド化剤で効率よくイミド化させるとともに、過剰な熱履歴による当該ブロック共重合体の分解、着色などを抑制する観点から、好ましくは160〜400℃、より好ましくは180〜350℃、さらに好ましくは200〜300℃である。
前記溶融混練法には、押出機を用いることができる。押出機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの押出機のなかでは、ブロック共重合体(A)とイミド化剤とを効率よく混合することができることから、二軸押出機が好ましい。二軸押出機としては、例えば、非噛合い型同方向回転式二軸押出機、噛合い型同方向回転式二軸押出機、非噛合い型異方向回転式二軸押出機、噛合い型異方向回転式二軸押出機などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの押出機は、それぞれ単独で用いてもよく、2機以上を直列に接続してもよい。二軸押出機のなかでは、噛合い型同方向回転式二軸押出機は、高速回転が可能であり、ブロック共重合体(A)とイミド化剤とを効率よく混合することができるので好ましい。
前記溶融混練法において、ブロック共重合体(A)のイミド化は、例えば、当該ブロック共重合体を押出機の原料投入部から投入し、溶融させ、シリンダ内に充満させた後、イミド化剤を添加ポンプで押出機中に注入することにより、行うことができる。
前記溶融混練法において、押出機中の反応ゾーンの温度(樹脂温度)はイミド化反応を効率よく進行させるとともに、耐薬品性および耐熱性を向上させる観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは220℃以上であり、ブロック共重合体の分解を抑制し、フィルムの耐折り曲げ性を向上させる観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。なお、前記押出機中の反応ゾーンは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域を意味する。
前記溶融混練法においては、押出機中の反応ゾーンにおける反応時間を長くすることにより、イミド化を促進させることができる。押出機中の反応ゾーン内におけるイミド化の時間は、イミド化を十分に行なう観点から、好ましくは10秒間以上、より好ましくは30秒間以上である。押出機内におけるブロック共重合体(A)の圧力は、イミド化剤の溶解性を向上させる観点から、好ましくは大気圧以上、より好ましくは1MPa以上であり、押出機の耐圧性を考慮して、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下である。
なお、押出機には、未反応のイミド化剤や副生物を除去するために、大気圧以下に減圧させることができるベントを押出機に設けることが好ましい。ベントの数は、1つだけであってもよく、複数であってもよい。
前記溶融混練法によってブロック共重合体(A)をイミド化させる際には、押出機の代わりに、例えば、横型二軸反応装置〔住友重機械工業(株)製、商品名:バイボラック〕、竪型同心二軸攪拌槽〔住友重機械工業(株)製、商品名:スーパーブレンド〕などの高粘度に対応することができる反応装置を用いることができる。
以上のようにして(メタ)アクリル酸エステル単位を含むブロック共重合体をイミド化剤でイミド化させることにより、式(1)で表わされるグルタルイミド構造の繰返し単位を有するブロック共重合体を得ることができる。
主鎖に無水グルタル酸構造を有するブロック共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単位及び(メタ)アクリル酸単位を含むブロック共重合体[以下、ブロック共重合体(B)ともいう]を、隣接する(メタ)アクリル酸エステル単位及び(メタ)アクリル酸単位間で分子内脱アルコール反応(例えば、特開2006−283013号公報、特開2006−335902号公報、特開2006−274118号公報に記載の方法等)により形成することができる。
前記分子内脱アルコール反応を行う方法は、特に限定されないが、例えば、ブロック共重合体(B)を加熱することによって行うことができる。
当該加熱方法は、特に限定されないが、例えば、ブロック共重合体(B)をベントを有する加熱した押出機に通す方法や、ブロック共重合体(B)を不活性ガス(例えば、窒素ガス等)雰囲気又は真空下で加熱脱揮する方法等を使用することができる。
押出機としては、例えば、ユニメルトタイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、二軸・単軸複合型連続混練押出装置、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機等を用いることができ、二軸押出機、二軸・単軸複合型連続混練押出装置等が好ましい。
加熱の温度は、脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、例えば180〜350℃等である。
また、加熱の時間は、ブロック重合体の組成等に応じて適宜変更できるが、例えば1〜2時間等である。
また、前記ブロック共重合体(B)の分子内脱アルコール反応においては、触媒(例えば、酸触媒、塩基性触媒、塩系触媒等)を使用することができる。
触媒の添加量は、ブロック共重合体(B)100重量部に対して、例えば0.01〜1 重量部である。
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。
塩基性触媒としては、例えば、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム等が挙げられる。
塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩、各種アルキルアンモニウム塩を含むアンモニウム塩等が挙げられる。
主鎖に無水マレイン酸構造及び/又はマレイミド構造を有するブロック重合体は、例えば、ブロック(I)及び/又はブロック(II)の重合成分に無水マレイン酸及び/又はマレイミド系化合物{例えば、N−置換マレイミド[例えば、N−アルキルマレイミド(例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド等のN−C1−10アルキルマレイミド等)、N−シクロアルキルマレイミド(例えば、シクロヘキシルマレイミド等のN−C3−20シクロアルキルマレイミド等)、N−アリールマレイミド(例えば、N−フェニルマレイミド等のN−C6−10アリールマレイミドn等)、N−アラルキルマレイミド(例えば、N−ベンジルマレイミド等のN−C7−10アラルキルマレイミド等)]、マレイミド等}を含んでブロック共重合体を形成することにより、得ることができる。
主鎖にラクトン環構造を有するブロック重合体は、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル単位と(メタ)アクリル酸エステル単位を含むブロック共重合体[以下、ブロック共重合体(C)ともいう]を、隣接する単位間で、水酸基とエステル基を分子内脱アルコール反応(例えば、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報の記載の方法等)することにより形成することができる。
前記分子内脱アルコール反応を行う方法は、特に限定されないが、例えば、ブロック共重合体(C)を加熱することによって行うことができる。
当該加熱方法は、特に限定されないが、例えば、ブロック共重合体(C)の重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
加熱の温度は、脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されず、例えば60〜350℃であり、加熱の際に脱揮を行う場合は、150〜350℃等であってよい。
また、加熱の時間は、ブロック重合体の組成等に応じて適宜変更できるが、例えば1〜5時間等である。
また、前記ブロック共重合体(C)の分子内脱アルコール反応においては、触媒(例えば、有機リン化合物、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩等)を使用することができる。
触媒の添加量は、ブロック共重合体(B)に対して、例えば0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2.5重量%である。
[樹脂組成物]
本発明は、本発明のブロック共重合体を含む樹脂組成物も含有する。
本発明の樹脂組成物は、本発明のブロック共重合体を2種以上組み合わせたものであってもよいし、本発明の効果が得られる限り、本発明のブロック共重合体以外の他の樹脂(例えば、熱可塑性重合体等)を含んでいてもよい。
熱可塑性重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィン重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル重合体;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアシレート;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴムあるいはアクリル系ゴムを配合したABS樹脂、ASA樹脂などのゴム質重合体等である。
ゴム質重合体は、表面にアクリル樹脂と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましく、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルムとした際の透明性向上の観点から、例えば20〜300nmであることが好ましく、より好ましくは50〜200nmであり、さらに好ましくは70〜150nmである。
また、他の樹脂(熱可塑性重合体)には、アクリル系樹脂も含まれる。アクリル系樹脂としては、前記ブロック(I)及び/又はブロック(II)に対応する樹脂[例えば、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチルなどの前記例示のメタクリル酸エステル)を重合成分とするメタクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステルを重合成分とする樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体などのメタクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物を重合成分とする樹脂)、このようなメタクリル系樹脂に環構造が導入された樹脂(環構造を有するメタクリル系樹脂、例えば、メタクリル酸メチル−スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体などのメタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物及び環状イミド(マレイミド系化合物など)を重合成分とする樹脂など)など]、前記ブロック共重合体の範疇に属さないブロック共重合体[例えば、前記ブロック共重合体(A)などの環構造が導入されていないブロック共重合体]も含まれる。
特に、他の樹脂は、ブロック共重合体と共通する骨格を有する樹脂、例えば、ブロック(I)に対応する樹脂(ポリメタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステルを重合成分とするメタクリル系樹脂、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び環構造を有するメタクリル系樹脂)、ブロック(II)に対応する樹脂、ブロック(I)及びブロック(II)を有し、環構造を有しないブロック共重合体[例えば、メタクリル酸メチルを重合成分とするブロック(ハードブロック)と、アクリル酸エステル(アクリル酸ブチルなど)を重合成分とするブロック(ソフトブロック)とを有するブロック共重合体)など]などを含んでいてもよい。
本発明のブロック共重合体は、アクリル系樹脂やブロック共重合体と共通する骨格を有する樹脂と混合しても、相溶性等を損なうことがなく、所望の物性を効率よく得ることができる。
そのため、本発明のブロック共重合体は、他の樹脂(特に、アクリル系樹脂やブロック共重合体と共通する骨格を有する樹脂)の改質剤として用いることもできる。
なお、環構造を有する他の樹脂(環構造を有するメタクリル系樹脂など)は、前記のように、ブロック共重合体(A)の共存下で、環化させて得ることもできる。
本発明の樹脂組成物が他の樹脂を含む場合、樹脂組成物における他の樹脂の含有率は、用途等に応じて適宜選択でき、例えば、1〜99質量%(例えば、5〜90質量%)、好ましくは15〜80質量%(例えば、20〜75質量%)、さらに好ましくは30〜70質量%程度である。
また、本発明の樹脂組成物が、他の樹脂[例えば、アクリル系樹脂(例えば、ブロック共重合体と共通する骨格を有するアクリル系樹脂)]を含む場合、本発明のブロック共重合体と、他の樹脂との割合は、所望の物性等に応じて、適宜選択できるが、例えば、前者/後者(質量比)=99/1〜1/99(例えば、95/5〜5/95)、好ましくは90/10〜10/90(例えば、85/15〜15/85)、さらに好ましくは70/30〜30/70程度であってもよい。
本発明の樹脂組成物(例えば、他の樹脂を含む樹脂組成物)において、アクリル酸エステル(由来の構造単位)の割合は、例えば、1質量%以上(例えば、2〜80質量%)、好ましくは5質量%以上(例えば、6〜60質量%)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、11〜50質量%)、特に15質量%以上(例えば、16〜30質量%)であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、上記のような範囲でアクリル酸エステル(由来の構造単位)を含んでいても、耐湿性などに優れている。
本発明の樹脂組成物は、耐熱性、光学特性等の物性を損なわない範囲で、紫外線吸収能を有してもよい。
紫外線吸収能を有する樹脂組成物は、具体的には、ブロック共重合体を製造するときの単量体成分として紫外線吸収性単量体及び/又は紫外線安定性単量体を用いる方法や、紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤をブロック共重合体に配合する方法によって得ることができる。
本発明の光学フィルムに支障がない限り、これらの方法を併用してもかまわない。
また、前記紫外線吸収機能を持続させるためには、紫外線吸収性単量体と紫外線安定性単量体とを併用することや、紫外線吸収剤と紫外線安定剤とを併用することが好ましい。
また、紫外線吸収性単量体及び/又は紫外線安定性単量体と合わせて、紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤を併用することも好ましい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物あるいはベンゾフェノン系化合物あるいはトリアジン系化合物と重合性不飽和基とを有するアクリル系単量体が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリルアミノメチル−5’−(1”,1”,3”,3”−テトラメチル)ブチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等を用いることができる。
また、ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンなどを用いることができる。
また、トリアジン系化合物としては、例えば、4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジンなどを用いることができる。
このような紫外線吸収性単量体を用いる場合には、紫外線吸収性単量体が全単量体の0.1〜25質量%共重合されることが好ましく、1〜15質量%共重合されることがさらに好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば耐候性向上の寄与が大きく、含有量が25質量%以下であれば耐熱水性、耐溶剤性が向上したり、黄変を抑制できたりする。
前記紫外線安定性単量体としては、ヒンダードアミン系化合物に重合性不飽和基が結合されたものを用いることができ、具体例としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
このような紫外線安定性単量体を用いる場合には、紫外線安定性単量体は、全単量体の0.1〜25質量%共重合されることが好ましく、1〜15質量%共重合されることがさらに好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば耐候性向上の寄与が大きく、含有量が25質量%以下であれば耐熱水性、耐溶剤性が向上したり、黄変を抑制できたりする。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノン)−ブタン等が挙げられる。
サリシケート系化合物としては、例えば、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。
ベンゾエート系化合物としては、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
また、トリアゾール系化合物としては、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。
さらに、トリアジン系化合物としては、例えば、2−モノ(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物や2,4−ビス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物、2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロポキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−(1−(2−エトキシヘキシルオキシ)−1−オキソプロパン−2−イルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
その中でも、非晶性の熱可塑性樹脂、特にアクリル樹脂と相溶性が高く吸収特性が優れている点から、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有する紫外線吸収剤が挙げられる。
また、2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤が好ましく用いられ、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−長鎖アルキルオキシ基置換フェニル)−1,3,5−トリアジン骨格や2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−アルキル−4−長鎖アルキルオキシ基置換フェニル)−1,3,5−トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤が特に好ましいトリアジン系紫外線吸収剤である。
市販品としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」(BASFジャパン製)、トリアゾール系紫外線吸収剤として「アデカスタブLA−31」「アデカスタブLA−F70」(ADEKA製)等が挙げられる。
これらは単独で、または2種類以上の組み合わせで使用することができる。また、紫外線吸収剤と合わせて、前記紫外線吸収性単量体を共重合する手法を併用することも好ましい。
紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、本発明の樹脂組成物を含むフィルム中に、本発明のブロック共重合体に対して、0.01〜25質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10質量%である。添加量が少なすぎると耐候性向上の寄与が低く、また多すぎると機械的強度の低下や黄変を引き起こす場合がある。
前記紫外線吸収剤は、分子量が600以上であることが好ましく、より好ましくは650以上であり、さらに好ましくは700以上である。
当該分子量が600以上の場合、紫外線吸収剤を添加した樹脂組成物を成形する際に発泡が生じたり、紫外線吸収剤がブリードアウトしたりすることを防止できる。また、成形時に加えられる熱により紫外線吸収剤が蒸散して、得られた樹脂成形品の紫外線吸収能が低下したり、蒸散した紫外線吸収剤により成形装置を汚染したりするなどの問題を防止できる。
一方、紫外線吸収剤の分子量の上限は、10000以下であることが好ましく、8000以下がなお好ましく、5000以下がより好ましい。当該分子量が10000以下であれば、本発明のブロック共重合体との相溶性が良好となり、最終的に得られる樹脂成形品の色相、濁度などの光学的特性が向上する。
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、その他の添加剤を含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤から構成される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;アンチブロッキング剤;樹脂改質剤;有機充填剤、無機充填剤;可塑剤;滑剤;位相差低減剤である。
添加剤を添加するタイミングは、特に限定されるものではない。例えば、本発明のブロック共重合体の製造中に所定の段階で添加するか、或いは、ブロック共重合体を製造した後に添加剤を加えて加熱溶融させて混練する方法、本発明のブロック共重合体以外の他の熱可塑性重合体に混練しておいてからブロック共重合体に加える方法、などが挙げられる。
これら添加剤は、可能であれば濾過などの方法で異物除去してから使用することが好ましい。濾過の方法としては、液体であれば直接、固体であれば重合に使用する溶媒等に溶解してからメンブレンフィルタや中空糸膜フィルタなどの各種フィルタに通せばよく、それぞれ別々に濾過しても、混合物としてから濾過してもよい。また、この際の濾過の精度は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。
その他の添加剤の含有率は、本発明のブロック共重合体に対して、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%、さらに好ましくは0〜1質量%である。
本発明の樹脂組成物の酸価は、用途等にもよるが、小さいのが好ましく、例えば、10mmol/g以下、好ましくは5mmol/g以下、さらに好ましくは3mmol/g以下、最も好ましくは1.5mmol/g以下(例えば、1mmol/g以下)である。
本発明の樹脂組成物は、耐湿性に優れていてもよい。例えば、本発明の樹脂組成物において、JIS Z 0208に基づいて、温度40℃、相対湿度90%及び24時間の条件下で測定される透湿度は、100μm換算で、例えば、65g/m2以下(例えば、1〜63g/m2)、好ましくは60g/m2以下(例えば、5〜58g/m2)、さらに好ましくは55g/m2以下(例えば、10〜53g/m2)であってもよい。
[フィルム]
本発明は、本発明の樹脂組成物で形成されたフィルムも含有する。
本発明のフィルムは、光学フィルムとして使用することができる。
フィルムの厚さは、特に限定されず、用途等によって適宜調製できるが、例えば1〜400μm、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜60μmである。
当該厚さが1μm以上であれば、光学フィルムとしての十分な強度が保てるため好ましい。当該厚さが400μm以下であれば、フィルムの透明性が優れ、光学フィルムとしての使用に適するため好ましい。
これに加えて、過度に厚い場合、本発明の光学フィルムと他の部材(例えば、機能性フィルム)とを接合する際に接着層に使用する接着剤組成物の乾燥を阻害する。特に、水系の接着剤組成物を使用する際に、溶剤又は分散媒である水の乾燥が遅くなることによって、本発明の光学フィルムと他の部材との積層構造を有する光学部材の品質および生産性の低下を招きやすい。
光学フィルムの厚さは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置に用いられる保護フィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム等の用途に用いる場合には、好ましくは1〜250μm、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜80μmである。
また、例えば、ITO蒸着フィルム、銀ナノワイヤーフィルム、メタルメッシュフィルム等に用いられる透明導電性フィルム等の用途に用いる場合には、本発明の光学フィルムの厚さは、好ましくは20〜400μm、より好ましくは30〜350μm、さらに好ましくは40〜300μmである。
本発明のフィルムは、1.0%以下(例えば、0.1〜1.0%)のヘイズを有することが好ましい。本発明のフィルムの構成によっては、そのヘイズは、0.5%以下(例えば、0.1〜0.5%)、さらには0.3%以下(例えば、0.1〜0.3%)となる。ヘイズは、JIS K7136の規定に基づいて測定される。
本発明のフィルムは、b値が0〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは、b値が0〜1.5%であり、更に好ましくは0〜1.0%であり、最も好ましくは0〜0.5%である。b値を2.0%以下にすることにより、本光学フィルムを画像表示装置に組み込んだ場合に表示される色感が優れたものとなる。
本発明のフィルムの表面の濡れ張力は、例えば30〜70mN/mであることが好ましい。より好ましくは35〜60mN/mであり、さらに好ましくは40〜50mN/mである。表面の濡れ張力が30mN/m以上の場合、本発明の光学フィルムと他の部材との接着性がさらに向上する。
表面の濡れ張力を調整するために、任意の適切な表面処理をフィルムの表面に施し得る。表面処理は、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理である。なかでも、コロナ放電処理およびプラズマ処理が好ましい。
本発明のフィルムは、機械的強度を高める観点から二軸延伸フィルムであってもよい。二軸延伸フィルムは、同時二軸延伸フィルムおよび逐次二軸延伸フィルムのいずれでもよい。また、延伸フィルムの遅相軸の方向は、フィルムの流れ方向であってもよく、幅方向であってもよく、更には任意の方向であってもよい。
本発明のフィルムが前記紫外線吸収剤を含む場合、当該フィルムの波長380nmにおける光線透過率は30%以下(例えば、0〜30%)であることが好ましく、より好ましくは20%以下(例えば、0〜20%)であり、さらに好ましくは10%以下(例えば、0〜10%)であり、5%以下(例えば、0〜5%)が特に好ましい。
波長380nmにおける光線透過率が30%以下であれば、偏光子の劣化を十分抑制することができる。
本発明のフィルムは、公知のフィルム成膜手法により形成できる。フィルム成膜手法は、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法である。なかでも、溶液キャスト法及び溶融押出法が好ましい。
フィルムの成膜に用いる組成物(ドープ)は、公知の方法により形成できる。例えば、得たいアクリル樹脂の組成に応じて配合したブロック共重合体と、所望により、溶媒、その他の樹脂(熱可塑性重合体等)および添加剤等を混合することにより、形成される。
混合方法は、例えば、押出混練または溶液状態での混合である。また、フィルムの成膜に市販のアクリル樹脂を併用してもよい。市販のアクリル樹脂は、例えば、アクリペットVHおよびアクリペットVRL20A(いずれも三菱レイヨン製)である。押出混練には、任意の適切な混合機、例えば、オムニミキサー、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダーを使用できる。
溶液キャスト法を実施するための装置は、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターである。
溶液キャスト法に使用する溶媒は、アクリル樹脂を溶解する限り限定されない。当該溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;アセトン、メチルエチエルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシドである。2種以上のこれら溶媒を併用してもよい。
溶融押出法は、例えば、Tダイ法、インフレーション法である。溶融押出時の成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
Tダイ法を選択した場合、例えば、公知の押出機の先端部にTダイを取り付けることにより、帯状のフィルムを形成できる。形成した帯状のフィルムは、ロールに巻き取って、フィルムロールとしてもよい。溶融押出法では、材料の混合によるアクリル樹脂の形成から、当該樹脂を用いたフィルムの成形までを連続的に行うことができる。帯状のフィルムに易接着層を形成して、帯状の光学フィルムを得てもよい。
延伸フィルムは、前記のようにして得たフィルムを延伸して形成できる。延伸方法は特に限定されず、延伸には公知の延伸機を使用できる。Tダイ法によりフィルムを形成する場合、形成したフィルムを巻き取るロールの温度を調整して、一軸延伸とフィルムの巻き取りとを同時に行うことも可能である。
フィルムを溶融製膜により形成する場合、材料の混合によるアクリル樹脂の形成から、フィルムの形成を経て、延伸フィルムを得るまでの工程を連続的に行うことができる。
溶融成膜に押出機を用いる場合、押出機の種類は特に限定されず、単軸であっても二軸であっても多軸であってもよいが、そのL/D値は(Lは押出機のシリンダの長さ、Dはシリンダ内径)、樹脂を十分に可塑化して良好な混練状態を得るために、好ましくは10以上100以下であり、より好ましくは15以上80以下であり、さらに好ましくは20以上60以下である。L/D値が10未満の場合、樹脂を十分に可塑化できず、良好な混練状態が得られないことがある。一方、L/D値が100を超えると、樹脂に対して過度に剪断発熱が加わることで、樹脂が熱分解する可能性がある。
またこの場合、シリンダの設定温度は、好ましくは200℃以上350℃以下であり、より好ましくは250℃以上320℃以下である。設定温度が200℃未満では、樹脂の溶融粘度が過度に高くなって、原フィルム(未延伸のフィルム)の生産性が低下する。一方、設定温度が350℃を超えると、樹脂が熱分解する可能性がある。
溶融成膜に押出機を用いる場合、押出機の形状は特に限定されないが、1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。このような押出機を用いることによって、開放ベント部から分解ガスを吸引することができ、得られた原フィルムに残存する揮発成分の量を低減できる。開放ベント部から分解ガスを吸引するためには、例えば、開放ベント部を減圧状態にすればよく、その減圧度は、開放ベント部の圧力にして、931〜1.3hPaの範囲が好ましく、798〜13.3hPaの範囲がより好ましい。開放ベント部の圧力が931hPaより高い場合、揮発成分、あるいは樹脂の分解により発生する単量体成分などが、樹脂中に残存しやすい。一方、開放ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは工業的に困難である。
溶融成膜の際には、ポリマーフィルタで濾過した樹脂を成形して原フィルムとすることが好ましい。ポリマーフィルタにより、樹脂中に存在する異物を除去できるため、最終的に得られたフィルムの外観上の欠点を低減できる。なお、ポリマーフィルタによる濾過時には、樹脂は高温の溶融状態となる。このため、ポリマーフィルタを通過する際に樹脂が劣化し、劣化により形成されたガス成分や着色劣化物が流れだして、得られたフィルムに、穴あき、流れ模様、流れスジなどの欠点が観察されることがある。この欠点は、特に、フィルムを連続して溶融成膜する際に観察されやすい。このため、ポリマーフィルタで濾過した樹脂を成形する際には、その成形温度は、樹脂の溶融粘度を低下させ、ポリマーフィルタにおける樹脂の滞留時間を短くするために、例えば、250〜320℃であり、260〜300℃が好ましい。
ポリマーフィルタの構成は特に限定されないが、ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルタを配したポリマーフィルタを好適に用いることができる。リーフディスク型フィルタの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはそれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれでもよいが、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
ポリマーフィルタによる濾過精度は特に限定されないが、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度が1μm以下になると、ポリマーフィルタにおける樹脂の滞留時間が長くなることで当該樹脂の熱劣化が大きくなる他、原フィルムおよびフィルムの生産性が低下する。一方、濾過精度が15μmを超えると、樹脂中の異物を除去することが難しくなる。
ポリマーフィルタの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルタの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;などがある。特に、樹脂の滞留箇所の少ない外流型を用いることが好ましい。
ポリマーフィルタにおける樹脂の滞留時間に特に制限はないが、好ましくは20分以下であり、より好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは5分以下である。また、濾過時におけるフィルタ入口圧およびフィルタ出口圧は、例えば、それぞれ、3〜15MPaおよび0.3〜10MPaであり、圧力損失(フィルタの入口圧と出口圧の圧力差)は、1MPa〜15MPaの範囲が好ましい。圧力損失が1MPa以下になると、樹脂がフィルタを通過する流路に偏りが生じやすく、得られた原フィルムおよび光学フィルムの品質が低下する傾向がある。一方、圧力損失が15MPaを超えると、ポリマーフィルタの破損が起こり易くなる。
ポリマーフィルタに導入される樹脂の温度は、その溶融粘度に応じて適宜設定すればよく、例えば250〜320℃であり、好ましくは255〜310℃であり、さらに好ましくは260〜300℃である。
ポリマーフィルタを用いた濾過処理により、異物、着色物の少ない光学フィルムを得る具体的な工程は、特に限定されない。例えば、(1)クリーン環境下で樹脂の形成および濾過処理を行い、引き続いてクリーン環境下で樹脂の成形を行うプロセス、(2)異物または着色物を有する樹脂を、クリーン環境下で濾過処理した後、引き続いてクリーン環境下で樹脂の成形を行うプロセス、(3)異物または着色物を有する樹脂を、クリーン環境下で濾過処理すると同時に成形を行うプロセス、などが挙げられる。それぞれの工程毎に、複数回、ポリマーフィルタによる樹脂の濾過処理を行ってもよい。
ポリマーフィルタによって樹脂を濾過する際には、押出機とポリマーフィルタとの間にギアポンプを設置して、フィルタ内の樹脂の圧力を安定化することが好ましい。
溶融樹脂は、例えば、押出機等の溶融手段を用いて、熱可塑性樹脂を加熱溶融後ダイへ供給し、ダイからフィルム状に吐出することで供給することができる。フィルム状の溶融樹脂は、温調されたロール(以下、キャストロール)へキャスティングし、引き取りながらさらに温調された他のロール(以下、冷却ロール)へ接せさせて冷却固化してもよく、また、キャストロールとタッチロールの間にフィルム状の溶融樹脂を挟み込んで冷却固化を行ってもよい。本製法はフィルムのロール着地位置が安定し、厚み品質が向上することに加え、フィルム幅方向の冷却も均一化され、冷却固化時の配向状態も均一化し易い利点がある。タッチロールには、フィルム全幅を均一に押圧するため、その用途で設計されたロールを用いることが好ましい。例えば、ゴムやシリコン等柔らかい材質のロールや、ロールの幅方向中央から両端部にかけてロール径が小さくなる構造のロール(クラウンロール)や、金属等薄膜スリーブとゴム等の弾性ロールの二重構造の弾性ロール等を挙げることができる。このうち、ロールの表面粗さを細かくするために表面に金属メッキが可能でロールの幅方向中央から両端部にかけてロール径が小さくなる構造のロール、金属薄膜スリーブと弾性ロールの二重構造のロールが特に好ましい。ロール表面はHcrやNiメッキを施し、表面粗さ0.2s以下とし、表面の傷や汚れのないように管理することが好ましい。
得られたフィルムはそのままでも使用できるが、公知の方法で逐次、若しくは同時に延伸しても良い。また、フィルムの光学的等方性および機械的特性を安定化するために、フィルムに対する熱処理(アニーリング)を実施してもよい。熱処理の方法および条件は、適宜、選択できる。
本発明のフィルムは、機能性コーティング層を有していてもよい。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、ハードコート層、防眩(ノングレア)層、低反射層やモスアイ層などの反射防止層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層、光触媒層などの防汚層、粘接着剤層などであり、各種画像表示装置の最表面に好適に用いることができる。機能性コーティング層は一層のみ積層しても良いし、2層以上を積層しても良い。
機能性コーティング層の積層方法は、種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したり、各々の単独の機能性コーティング層が塗工された部材を粘着剤や接着剤を介して積層した積層体であってもよい。なお、各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。
紫外線遮蔽層は、紫外線遮蔽層よりも下層にある基材層や印刷層などの紫外線劣化する材料の紫外線劣化を防ぐために設けるものである。紫外線遮蔽層は、分子量が1000以下の紫外線吸収剤をアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性または熱硬化性、湿気硬化性、紫外線硬化、電子線硬化などの硬化性樹脂に配合したものが使用できるが、特に、耐候性の点から、特許第3081508号公報、特許第3404160号公報、特許第2835396号公報で開示されているような紫外線吸収性骨格を有する単量体を必須に含む単量体混合物を重合して得られるアクリル系ポリマーが好ましい。市販品としては、例えば、「ハルスハイブリッドUV−G13」や「ハルスハイブリッドUV−G301」(以上、日本触媒社製)、「ULS−935LH」(一方社油脂工業社製)などが挙げられる。
熱線遮蔽層は、例えば、ディスプレイ装置の発光に伴い発生する近赤外線(特に700−1200nm)による周辺機器の誤動作を防ぐために設けられる。熱線遮蔽層としては、有機系や無機系熱線遮蔽物質がアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性または熱硬化性、湿気硬化性、紫外線硬化、電子線硬化などの硬化性樹脂に配合したものが使用される。有機系熱線遮蔽物質としては、フタロシアニン色素やジイモニウム系、スクアリリウム系などの近赤外線領域(700−1800nm)に吸収を有する物質であれば特に限定はなく、用途によってはポルフィリン系やシアニン系色素などの可視領域(400−700nm)に吸収を有する色素と、1種または2種以上組み合わせて使用できる。また、無機系熱線遮蔽物質としては、例えば、金属、金属窒化物、金属酸化物などが挙げられるが、分散媒体への溶解性、耐候性の点から、金属酸化物の微粒子が好ましく使用される。金属酸化物としては、酸化インジウム系、酸化亜鉛系が好ましく、透明性の点から、平均粒径が0.1μm以下であるものが好ましい。
粘接着剤層としては、アクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、またはこれらの共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム等のゴム類や、ポリビニルエーテル系、シリコーン系、マレイミド系、シアノアクリレート系粘接着剤などが挙げられ、これらは単独としても使用しても良いが、さらに架橋剤、粘着付与剤を用いることもできる。光学特性上、耐光性、透明性からはアクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とする共重合体であるアクリル系樹脂が好ましく、さらに好ましくは、芳香族系粘着付与剤を添加して屈折率を調節し、アクリル樹脂フィルムやフィルムの屈折率に近づけた粘着剤がより好ましい。必要に応じて、粘着剤に前記の熱線遮蔽物質、例えば、フタロシアニン色素やシアニン色素を混合して機能性の粘着剤層とすることができ、光学積層体として薄層化、生産性の点で有利である。
電磁波遮蔽層は、例えば、ディスプレー装置からの発光に伴い発生する電磁波による生体や電子機器への悪影響を防ぐために設けるものである。電磁波遮蔽層は、銀、銅、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ等のような金属または金属酸化物の薄膜からなり、これらは真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、プラズマ化学蒸着法等の従来公知のドライプレーティング法を利用し、製造することができる。電磁波遮蔽層は、最もよく用いられるのは、酸化インジウムスズ(ITOと略記されることもある)の薄膜であるが、メッシュ状の穴を有する銅の薄膜や誘電体層と金属層を基材上に交互に積層させた積層体も好適に用いることができる。前記誘電体層としては、酸化インジウム、酸化亜鉛などの透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的である。積層体は、通常、誘電体層よりはじまり3〜13層程度の間で奇数層となるように積層される。
反射防止層は、表面の反射を抑えて、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止するためのものである。反射防止層は、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがある。また、特開2003−292805号公報に開示されているような無機系化合物と有機系化合物との複合微粒子を含む薄膜を積層させたものも使用できる。
ノングレア層は、視野角を広げ、透過光を散乱させるために設けられる。シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粉体をインキ化し、従来公知の塗布法で、他の機能層上に塗布し、熱あるいは光硬化させることにより形成される。また、ノングレア処理したフィルムを他の機能性フィルム上に貼り付けても良い。
本発明のフィルムには、機能層としてハードコート層を設けることも好ましい。本発明において、ハードコート層とは、該層を形成することで透明支持体の鉛筆硬度が上昇する層をいう。実用的には、ハードコート層積層後の鉛筆硬度(JIS K−5400)はH以上が好ましく、更に好ましくは2H以上であり、最も好ましくは3H以上である。ハードコート層の厚みは、0.4〜35μmが好ましく、更に好ましくは1〜30μmであり、最も好ましくは1.5〜20μmである。本発明においてハードコート層は1層でも複数でもかまわない。ハードコート層が複数層の場合、全てのハードコート層の膜厚の合計が上記範囲であることが好ましい。
本発明のフィルムのハードコート層の表面は平坦であって凹凸があっても構わない。また、必要に応じて、表面凹凸や内部散乱付与のためにハードコート層に微粒子を含有させることもできる。
本発明において、ハードコート層は、不飽和二重結合を有する化合物、重合開始剤、必要に応じて、微粒子、含フッ素又はシリコーン系化合物、溶剤を含有する組成物を、支持体上に直接又は他の層を介して塗布、乾燥及び硬化することにより形成することができる。以下各成分について説明する。
ハードコート層形成用組成物には不飽和二重結合を有する化合物を含有することができる。不飽和二重結合を有する化合物はバインダーとして機能することができ、重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーであることが好ましい。該重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーは、硬化剤として機能することができ、塗膜の強度や耐擦傷性を向上させることが可能となる。重合性不飽和基は3つ以上であることがより好ましい。これらモノマーは、1又は2官能のモノマーと3官能以上のモノマーを併用して用いることもできる。
不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CH2が好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
重合性の不飽和結合を有する化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKエステル A−TMMT、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA等を挙げることができる。多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
不飽和二重結合を有する化合物としては、水素結合性の置換基を有する化合物であることが、支持体との密着性、低カール、後述する含フッ素又はシリコーン系化合物の固定性の点から好ましい。水素結合性の置換基とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子と水素結合とが共有結合で結びついた置換基を指し、具体的にはOH−、SH−、−NH−、CHO−、CHN−などが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類や水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。市販されている(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKオリゴ U4HA、同NKエステルA−TMM−3、日本化薬(株)製KAYARAD PET−30等を挙げることができる。
ハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、十分な重合率を与えて硬度などを付与するため、ハードコート層形成用組成物中の無機成分を除いた全固形分に対して、50質量%以上が好ましく、60〜99質量%がより好ましく、70〜99質量%が更に好ましく、80〜99質量%が特に好ましい。
ハードコート層形成用組成物に分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合基を有する化合物を用いることも好ましい。このような化合物を用いることで、ハードコート層に低透湿性を付与することができる。ハードコート性を高めるために、分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合基を2以上有する化合物を用いることがより好ましい。
ハードコート層形成用組成物が分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合基を有する化合物を含有する場合、分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合を有する化合物はハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物中、1〜90質量%が好ましく、2〜80質量%がより好ましく、5〜70質量%が特に好ましい。ハードコート層形成用組成物が分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合基を有する化合物を含有する場合、更に5官能以上の(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
ハードコート層形成用組成物が更に、5官能以上の(メタ)アクリレートを含有する場合、5官能以上の(メタ)アクリレートは、ハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物中、1〜70質量%が好ましく、2〜60質量%がより好ましく、5〜50質量%が特に好ましい。
市販品としては、例えば、「Siコート2」(大八化学社製)、「トスガード510」や「UVHC8553」(以上、東芝シリコーン社製)、「ソルガードNP720」や「ソルガードNP730」や「ソルガードRF0831」(以上、日本ダクロシャムロック社製)などが挙げられる。また、有機ポリマー複合無機微粒子とは、無機微粒子の表面に有機ポリマーが固定された複合無機微粒子を意味し、当該微粒子を含む硬化性樹脂で表面保護層を形成することにより、表面硬度の向上等が図られる。当該複合無機微粒子とはとその製法の詳細は、例えば、特開平7−178335号公報、特開平9−302257号公報、特開平11−124467号公報などに記載されている。当該複合無機微粒子を含有させる硬化性樹脂にも格別の制限はなく、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、多官能アクリル樹脂などが挙げられる。多官能アクリル樹脂としては、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどの樹脂を挙げることができる。上記複合無機微粒子を含有する硬化性樹脂の市販品としては、例えば、「ユーダブルC−3300」や「ユーダブルC−3600」(以上、日本触媒社製)等が挙げられる。
本発明のフィルムは、易接着層を有してもよい。易接着層はフィルムの少なくとも一方の主面に積層されていればよく、両方の主面に積層されていてもよい。
前記易接着層は、前記フィルムの一方の主面に形成されていればよい。なお、本明細書において「主面」とは、フィルムが有する面のうち、フィルムの厚み方向における面ではなく、フィルムの長手方向の辺と幅方向の辺とで決まる面、つまり表面および裏面のことをいう。
易接着層の厚さは、特に限定されず、フィルムの厚さによって異なるが、1nm〜10μmが好ましく、10nm〜5μmがより好ましく、50nm〜1.5μmがさらに好ましい。この範囲では、易接着層による、フィルムと機能性コーティング層との密着性の向上効果が良好である。これに加えて、易接着層自体に位相差が発現することを抑制できる。
易接着層を構成する樹脂は特に限定されず、易接着性を有する公知の樹脂であればよく、例えば、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル−アクリル複合樹脂である。
易接着層を構成する樹脂の数平均分子量は、0.5万〜60万が好ましく、1万〜40万がより好ましい。
易接着層は易接着層と同様、微粒子を含有してもよく、好ましい微粒子としては、前記の微粒子があげられる。
易接着層を構成する樹脂は、ウレタン樹脂が好ましい。この場合、易接着層が他の樹脂層であるときよりも、偏光子に対する接着性が向上する。
ウレタン樹脂は特に限定されず、典型的には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得た樹脂である。ポリオールは、分子中にヒドロキシル基を2個以上有する、任意のポリオールを採用できる。ポリオールは、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールである。2種以上のポリオールを組み合わせてもよい。
ポリアクリルポリオールは、典型的には、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、水酸基を有する単量体との共重合体である。
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルである。
水酸基を有する単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミドである。
ポリアクリルポリオールは、さらなる他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体は、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体および水酸基を有する単量体と共重合が可能である限り、限定されない。
当該他の単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびモノまたはジエステル類;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化α,β−不飽和脂肪族単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族単量体である。
ポリエステルポリオールは、典型的には、多塩基酸成分とポリオール成分との反応により得られる。多塩基酸成分は、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、酒石酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;あるいは、これらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライドなどの反応性誘導体である。
ポリオール成分は、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1−メチル−1,3−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−ブチレングリコール、1−メチル−1,4−ペンチレングリコール、2−メチル−1,4−ペンチレングリコール、1,2−ジメチル−ネオペンチルグリコール、2,3−ジメチル−ネオペンチルグリコール、1−メチル−1,5−ペンチレングリコール、2−メチル−1,5−ペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンチレングリコール、1,2−ジメチルブチレングリコール、1,3−ジメチルブチレングリコール、2,3−ジメチルブチレングリコール、1,4−ジメチルブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFである。
ポリエーテルポリオールは、典型的には、多価アルコールにアルキレンオキシドを開環重合して付加させることにより得られる。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンである。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフランである。
ポリイソシアネートは、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネートである。
ウレタン樹脂は、好ましくは、カルボキシル基を有する。カルボキシル基を有することにより、易接着層の性能(易接着性)が向上する。この効果は、特に、高温・高湿の環境下において顕著である。
カルボキシル基を有するウレタン樹脂は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとに加え、遊離カルボキシル基を有する鎖長剤を反応させることにより得られる。遊離カルボキシル基を有する鎖長剤は、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスクシン酸である。ジヒドロキシカルボン酸は、例えば、ジメチロールアルカン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸)などのジアルキロールアルカン酸である。
ウレタン樹脂の酸価は、好ましくは10以上、さらに好ましくは10〜50、特に好ましくは20〜45である。これらの場合、易接着層の性能(例えば、偏光子などの他の機能性フィルムとの密着性)がより向上する。
ウレタン樹脂は、上述した各成分に加えて、さらに他のポリオールあるいは他の鎖長剤との反応によって得たものでもよい。
他のポリオールは、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど、3以上の水酸基を有するポリオールである。
他の鎖長剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、アミノエチルエタノールアミンなどの脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環族ジアミン;キシリレンジアミン、トリレンジアミンなどの芳香族ジアミンである。
ウレタン樹脂は、公知の方法を応用して形成できる。当該方法は、例えば、各成分を一度に反応させるワンショット法、段階的に反応させる多段法である。カルボキシル基を有するウレタン樹脂は、カルボキシル基の導入が容易であることから、多段法により形成することが好ましい。ウレタン樹脂の形成に用いる触媒は、特に限定されない。
ウレタン樹脂層である易接着層の形成に用いられる水系の易接着組成物は、微粒子およびウレタン樹脂以外に、中和剤を含むことが好ましい。この場合、易接着組成物におけるウレタン樹脂の安定性が向上する。中和剤は、例えば、アンモニア、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールである。
ウレタン樹脂を含有する易接着組成物が水系である場合、ウレタン樹脂を形成する際に、ポリイソシアネートに対して不活性であるとともに水と相溶する有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ジオキサン、テトラハイドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶媒である。
ウレタン樹脂を含有する易接着組成物は、架橋剤を含有することが好ましく、この場合、易接着層の性能が向上する。架橋剤は、特に限定されない。ウレタン樹脂がカルボキシル基を有する場合、架橋剤は、当該カルボキシル基と反応し得る基を有するポリマーが好ましい。
カルボキシル基と反応し得る基は、例えば、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基であり、オキサゾリン基が好ましい。オキサゾリン基を有する架橋剤は、ウレタン樹脂と混合したときの室温でのポットライフが長く、加熱によって架橋反応が進行するため、作業性が良好である。当該ポリマーは、例えば、(メタ)アクリルポリマー、スチレン・アクリルポリマーであり、(メタ)アクリルポリマーが好ましい。架橋剤が(メタ)アクリルポリマーである場合、易接着層の性能がさらに向上する。これに加えて、(メタ)アクリルポリマーは、水系の易接着組成物に安定的に相溶し、ウレタン樹脂を良好に架橋する。
ウレタン樹脂を含む易接着組成物において、当該組成物におけるウレタン樹脂の含有率は、1.5〜15質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。含有率がこれらの範囲にある場合、易接着組成物をフィルムの表面に塗布する際の塗工性が高い。この組成物が架橋剤をさらに含む場合、架橋剤の含有量は、ウレタン樹脂(固形分)100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましい。ウレタン樹脂を含む易接着組成物における微粒子の含有率は、ウレタン樹脂(固形分)100重量部に対して、0.3〜10重量部が好ましく、0.5〜1重量部がより好ましい。
易接着層は、前記密着性を損ねない範囲において微粒子を含有していても良い。微粒子として、任意の適切な微粒子を用いることができ、好ましくは、水分散性の微粒子である。具体的には、無機系微粒子、有機系微粒子のいずれも用いることができ、有機無機複合微粒子であってもよい。
無機系微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。
有機系微粒子としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、シリカである。ブロッキング抑制能にさらに優れ得、かつ、透明性に優れ、ヘイズを生じず、着色もないので、偏光板の光学特性に与える影響がより小さいからである。また、シリカは易接着組成物への分散性および分散安定性が良好であるので、易接着層形成時の作業性にもより優れ得るからである。さらに、シリカは、フィルムとの密着性にも優れる。
微粒子の粒子径(平均一次粒子径)は、300nm以下であり、好ましくは10〜300nm、さらに好ましくは20〜200nmであり、さらに好ましくは、30〜150nmである。
このような粒子径の微粒子を用いることにより、易接着層表面に適切に凹凸を形成して、フィルムと易接着層および/または易接着層どうしの接触面における摩擦力を効果的に低減し得る。その結果、ブロッキング抑制能にさらに優れ得る。また、平均一次粒子径が可視光波長よりも小さく、かつ小さければ小さいほど、粒子による光散乱を抑制できるので、偏光板の光学特性に与える影響をより抑制し得る。
前記微粒子の粒度分布は、1.0〜1.4であることが好ましく、1.0〜1.2がより好ましい。
前記微粒子の平均一次粒子径および粒度分布は、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(例えば、Particle Sizing Systems製、Submicron Particle Sizer NICOMP380)により求めることができる。
具体的には、媒体中に分散した状態にある微粒子に対して、前記測定装置により、その等価球形分布を求める。次に、求めた分布における、大粒子側から積算した積算体積分率50%の粒子の粒子径を求め、これを微粒子の平均一次粒子径(d50)とする。
これとは別に、当該分布における、大粒子側から積算した積算体積分率25%の粒子の粒子径(d25)および75%の粒子の粒子径(d75)を求め、その比(d25/d75)を微粒子の粒度分布とする。なお、媒体は、粒度分布装置の構成および能力に応じて適宜選択でき、例えば水であるが、液体に限られない。
易接着層を形成する組成物が水系の場合、好ましくは、前記微粒子は水分散体として配合される。具体的には、微粒子としてシリカを採用する場合、好ましくは、コロイダルシリカとして配合される。コロイダルシリカとしては、市販品をそのまま用い得る。市販品としては、例えば、扶桑化学工業(株)製のクォートロンPLシリーズ、日産化学工業(株)製のスノーテックスシリーズ、日本アエロジル(株)製のAERODISPシリーズおよびAEROSILシリーズ等が挙げられる。
易接着層における微粒子の含有率の上限は、10質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましく、2質量%未満がさらに好ましい。微粒子の含有率が10質量%を超えると、易接着層の塗膜強度が低下したり透明性が損なわれたりすることがある。易接着層における微粒子の含有率の下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましい。微粒子の含有率が0.1質量%未満になると、光学フィルムの耐ブロッキング性が低下することがある。
フィルムの表面に対する易接着層の形成方法は限定されず、公知の方法に従えばよい。易接着層は、易接着層用樹脂を含有する易接着組成物をフィルムの表面に塗布して、当該組成物の塗布膜を形成した後、形成した塗布膜を乾燥させて形成することが好ましい。前記易接着組成物は上述した微粒子を含有していてもよい。
易接着組成物は、水系の組成物が好ましい。水系の組成物は、有機溶剤系の組成物に比べて、易接着層を形成する際に生じる環境への負荷が小さく、作業性に優れる。水系の組成物は、例えば、易接着性を有する樹脂の分散体である。分散体は、典型的には、易接着性を有する樹脂のエマルジョンである。易接着層用樹脂のエマルジョンは、乾燥により易接着層用樹脂を含む層となる。当該エマルジョンに含まれる微粒子は、そのまま樹脂層に残留する。
易接着層用樹脂を含む易接着組成物が水系である場合、水と相溶する有機溶媒を用いることが好ましい。当該有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ジオキサン、テトラハイドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶媒である。
易接着組成物は、易接着性を有する樹脂および微粒子以外に、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、帯電防止剤である。
易接着層用樹脂層である易接着層の形成に用いられる水系の易接着組成物において、当該組成物における易接着層用樹脂の含有率は、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。含有率がこれらの範囲にある場合、易接着組成物をフィルムの表面に塗布する際の塗工性が高いほか、易接着層の効果を十分に確保できる。
この組成物が架橋剤をさらに含む場合、架橋剤の含有量は易接着層用樹脂100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましい。易接着層用樹脂を含有する易接着組成物における微粒子の含有率は、易接着層用樹脂100重量部に対して、0.3〜10重量部が好ましく、0.5〜1重量部がより好ましい。
易接着層を形成する場合、フィルムの主面(表面)に、易接着層用樹脂を含有する易接着組成物を塗布して当該組成物の塗布膜を形成する工程(塗布工程)と、形成した塗布膜を乾燥させて、前記易接着層用樹脂を含有する易接着層を前記表面に形成する工程(乾燥工程)とを含むことが好ましい。前記易接着組成物は上述した微粒子を含有していてもよい。
この場合、主面(表面)に易接着層用樹脂を含有する易接着層が形成されたフィルムから構成される光学フィルム(本発明の光学フィルム)が形成される。易接着層は、易接着組成物に含まれていた樹脂を含む。
塗布工程では、フィルムの少なくとも一方の主面(表面)に、易接着組成物の塗布膜が形成される。典型的には、フィルムの一方の主面(表面)に、当該塗布膜が形成される。
塗布工程において易接着組成物を塗布する方法には、公知の方法を適用できる。当該方法は、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法である。塗布工程において形成する塗布膜の厚さは、当該塗布膜が易接着層となったときに必要な厚さに応じて、適宜調整できる。
フィルムにおける易接着組成物が塗布される主面(表面)は、表面処理が施されていることが好ましい。表面処理は、上述したとおりであるが、コロナ放電処理およびプラズマ処理が好ましい。コロナ放電処理の条件は限定されない。コロナ放電処理における電子照射量は、50〜150W/m2/分が好ましく、70〜100W/m2/分がより好ましい。
乾燥工程は、公知の方法に従えばよい。乾燥温度は、典型的には50℃以上であり、90℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。乾燥温度をこれらの範囲とすることにより、例えば、耐色性(特に、高温・高湿の環境下)に優れるフィルムが得られる。乾燥温度の上限は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。
未延伸のフィルムから延伸フィルムを製造する場合、ならびに一軸延伸されたフィルムから二軸延伸フィルムを製造する場合、フィルムをいずれかの時点で延伸する必要がある。フィルムの延伸は、易接着層の形成前に行ってもよいし、易接着層の形成後に行ってもよい。易接着層の形成と、フィルムの延伸とを同時に行うこともできる。
フィルムの延伸は、公知の方法に従えばよい。機械的強度を高める観点から二軸延伸フィルムであることが好ましい。
二軸延伸は、典型的には、逐次二軸延伸であるが、縦横延伸を同時に行う同時二軸延伸も好適に使用できる。さらに、フィルムロールに対して斜め方向への延伸であってもよい。なお、本明細書では、フィルムの流れ方向(MD方向)の延伸を縦延伸、幅手方向(TD方向)の延伸を横延伸と呼ぶ。帯状のフィルムの場合、MD方向は当該フィルムの長手方向である。
フィルムの延伸には、公知の延伸機が使用できる。縦延伸機は特に限定されず、例えば、オーブン延伸機またはロール縦延伸機である。
オーブン縦延伸機は、一般に、オーブンと、当該オーブンの入口側および出口側に各々設けられた搬送ロールとから構成される。オーブンの入口側の搬送ロールと、出口側の搬送ロールとの間に周速差を与えることによって、樹脂フィルムがその搬送方向に延伸される。
ロール縦延伸機は、一般に、原反を加熱可能な多数のロールまたはニップロール(これらは予熱ロールとして機能する)と、原反を冷却可能な多数のロールまたはニップロール(これらは冷却ロールとして機能する)とから構成される。この延伸機に送られた原反は、多数の予熱ロールに次々と接触しながら延伸温度にまで予熱され、冷却ロールとの間に設けられた延伸区間においてその流れ方向に延伸された後、多数の冷却ロールに次々と接触して冷却される。
横延伸機は特に限定されないが、テンター延伸機が好ましい。テンター延伸機は、グリップ式でもピン式でも構わないが、フィルムの引き裂けが生じ難いことから、グリップ式が好ましい。グリップ式のテンター延伸機は、一般に、横延伸用のクリップ走行装置とオーブンとから構成される。クリップ走行装置では、フィルムの横端部がクリップで挟まれた状態で当該樹脂フィルムが搬送される。このとき、クリップ走行装置のガイドレールを開き、左右2列のクリップ間の距離を広げることによって、フィルムが横延伸される。グリップ式のテンター延伸機では、フィルムの搬送方向に対してクリップの拡縮機能を持たせることで、同時二軸延伸も可能となる。また、フィルムの延伸方向の左右を異なる速度で、当該フィルムの搬送方向に引張延伸する斜め延伸機であってもよい。
延伸温度は、フィルムを構成するブロック共重合体のTg以上が好ましい。具体的には、Tg+8℃〜Tg+40℃の範囲が好ましく、Tg+10℃〜Tg+33℃の範囲がより好ましく、Tg+13℃〜Tg+28℃の範囲がさらに好ましい。延伸温度がTg+13℃未満の場合、十分な延伸倍率が確保できずに、フィルムの耐折り曲げ白化性が悪化することがある。延伸温度がTg+28℃を超えると、フィルムの面内配向が十分に確保できずに、フィルムの耐折り曲げ白化性が悪化することがある。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは3.5倍以上、より好ましくは3.8倍以上、さらに好ましくは4倍以上である。延伸倍率が3.5倍未満の場合、フィルムの面内配向が十分に確保できずに、フィルムの耐折り曲げ白化性が悪化することがある。なお、面積比で定義した延伸倍率は、未延伸フィルムの膜厚と延伸フィルムの膜厚とから求められる。例えば、未延伸フィルムの膜厚をxμm、延伸フィルムの膜厚をyμmとすると、面積比で定義した延伸倍率は、x/y倍となる。
長手方向の延伸倍率は、1.3〜1.9倍の範囲が好ましく、1.4〜1.9倍の範囲がより好ましい。延伸倍率が1.3倍未満の場合、フィルムの面内配向が十分に確保できずに、フィルムの耐折り曲げ白化性が悪化することがある。なお、長手方向の延伸倍率は面積比で定義される。例えば、延伸倍率をz倍とすると、固定端一軸延伸であるロール縦延伸の場合の延伸倍率はz倍となり、自由端一軸延伸であるオーブン縦延伸の場合の延伸倍率は√z倍となる。
幅手方向の延伸倍率は、1.8〜4.0倍の範囲が好ましく、2.0〜3.8倍の範囲がより好ましい。延伸倍率が1.8倍未満の場合、フィルムの面内配向が十分に確保できずに、フィルムの耐折り曲げ白化性が悪化することがある。また、幅手方向の延伸倍率は、長手方向の延伸倍率の好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.4倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上である。長手方向の延伸倍率の1.3倍未満の場合、フィルム長手方向と幅手方向の延伸配向が同程度となり、耐折り曲げ白化性が悪化することがある。なお、幅手方向の延伸倍率は面積比で定義される。例えば、延伸倍率をz倍とすると、固定端一軸延伸であるテンター横延伸の場合の延伸倍率はz倍となる。
延伸速度は、一方向の延伸につき、好ましくは10〜20,000%/分、より好ましく100〜10,000%/分である。延伸速度が10%/分未満の場合、フィルムの延伸に必要な時間が過度に長くなり、フィルムの製造コストが増すことがある。延伸速度が20,000%/分を超えると、フィルムが破断することがある。
易接着層の形成と、フィルムの延伸とを同時に行う場合、例えば、塗布工程の後に、易接着組成物の塗布膜を形成したフィルムを加熱雰囲気下で延伸すればよい。延伸のために当該フィルムに加える熱により、フィルムの表面に形成された易接着組成物の塗布膜が乾燥し、易接着層となる。なお、本発明のフィルムのTgは通常100℃以上であるため、上述した延伸温度は、易接着組成物の塗布膜から易接着層が形成されるのに十分に高い温度である。
塗布工程において易接着組成物の塗布膜を形成するフィルムは、未延伸フィルムであっても、既に延伸された延伸フィルムであってもよい。塗布膜を形成するフィルムが帯状の一軸延伸フィルムであり、二軸延伸フィルムであるフィルムを製造する場合、一軸延伸の方向が当該フィルムのMD方向であり、塗布膜を形成した後の延伸方向がそのTD方向であることが好ましい。これにより、効率的なフィルムの製造が可能となる。
フィルムを溶融押出により形成する場合、フィルムの形成から、光学フィルムを得るまでの工程を連続的に行うことができる。この場合、フィルムの表面に易接着組成物を塗布する工程、ならびに易接着組成物を塗布したフィルムを加熱雰囲気下で延伸する工程を、連続的に行うことが好ましい。このような連続的に実施される易接着組成物の塗布工程を、インライン塗工と呼ぶ。
二軸延伸フィルムを製造する場合、未延伸のフィルムを延伸して一軸延伸フィルムとする工程、当該一軸延伸フィルムの表面に易接着組成物を塗布する工程、および易接着組成物を塗布したフィルムを加熱雰囲気下で延伸する工程、を連続的に行うことが特に好ましい。
さらに、フィルムに対してコロナ放電処理およびプラズマ処理などの表面処理を行う場合、未延伸のフィルムを延伸して一軸延伸フィルムとする工程、当該一軸延伸フィルムの表面を表面処理する工程、表面処理したフィルムの表面に易接着組成物を塗布する工程、および易接着組成物を塗布したフィルムを加熱雰囲気下で延伸する工程、を連続的に行うことが好ましい。
フィルムの製造方法において、本発明の効果が得られる限り、上述した工程以外の任意の工程を含んでいてもよい。当該工程は、例えば、形成したフィルムに対してさらなる層(例えば樹脂層)を積層する工程、あるいは形成したフィルムに対してコーティング処理、表面処理などの後加工を施す工程である。
本発明の光学フィルムは、例えば、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムである。
本発明の光学フィルムが示す位相差は、ブロック共重合体の組成および延伸状態により制御できる。本発明の光学フィルムは、光学的に等方なフィルムであり得るし、延伸処理等により、光学的な異方性を有する(例えば、位相差などの複屈折を発現する)フィルムでもあり得る。
本発明のフィルムは、ロールに巻回されていてもよい(フィルムロールであってもよい)。
本発明の光学フィルムは、画像表示装置への使用に好適である。画像表示装置は、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、LCDである。LCDは、液晶セルと、液晶セルの少なくとも一方の主面に配置された偏光板とを有する。
本発明の偏光子保護フィルムは上記光学フィルムを含む。光学フィルム以外のフィルムや層を含んでもよい。
[偏光板]
本発明は、本発明のフィルムを備えた偏光板も含有する。
本発明の偏光板は、本発明にかかる光学フィルムを備えている。
LCD(液晶表示装置)には、その画像表示原理に基づき、液晶セルを狭持するように一対の偏光板が配置される。本発明の偏光板は、例えば、偏光子の少なくとも一方の表面に、易接着層を介して本発明の光学フィルム(偏光子保護フィルム)が積層された構造を有する。
従来、偏光子保護フィルムには、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが用いられている。しかし、TACフィルムは耐湿熱性が十分ではなく、TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合、高温または高湿度の環境下で偏光板の特性が劣化することがある。また、TACフィルムは厚さ方向の位相差を有しており、この位相差は、LCDなどの画像表示装置、特に大画面の画像表示装置、の視野角特性に悪影響を与える。
これに対して、偏光子保護フィルムである本発明の光学フィルムはアクリル樹脂フィルムから構成されるため、TACフィルムに比べて耐湿熱性および光学特性を向上させることができる。
偏光板は、典型的には、光学フィルムと偏光子とを接着層(粘接着剤層)を介して積層することにより製造される。本発明の光学フィルムが易接着層を有する場合、易接着層が偏光子側となるように、両者は積層されることが好ましい。
具体的には、例えば、偏光子または光学フィルムから選ばれるいずれか一方の表面に、乾燥後に接着層(粘接着剤層)となる接着剤組成物を塗布した後、両者を貼り合わせて乾燥させる。
接着剤組成物の塗布方法は、例えば、ロール法、噴霧法、浸漬法である。接着剤組成物が金属化合物コロイドを含む場合、乾燥後の接着層の厚さが金属化合物コロイド粒子の平均粒子径よりも大きくなるように、接着剤組成物を塗布する。乾燥温度は、典型的には、5〜150℃、好ましくは30〜120℃である。乾燥時間は、典型的には、120秒以上、好ましくは300秒以上である。
偏光子は限定されず、偏光板として必要な機能に応じて、任意の適切な偏光子を採用できる。偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の部分けん化フィルムのような親水性の高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料のような二色性物質を吸着させて一軸延伸したフィルム;PVAの脱水処理物あるいはポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物を用いたポリエン系配向フィルム、である。なかでも、PVA系フィルムに二色性物質を吸着させて一軸延伸したフィルムが、偏光子として好ましい。この偏光子は、高い偏光二色比を示す。偏光子の厚さは限定されず、一般に、1〜80μm程度である。
PVA系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、PVA系フィルムを、ヨウ素を含む水溶液に浸漬することによって染色し、延伸倍率3〜7倍で一軸延伸することによって作製することができる。
染色に用いる水溶液は、必要に応じて、ホウ酸、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを含んでいてもよい。ヨウ素を含む水溶液として、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物の水溶液を用いてもよい。
PVA系フィルムは、染色の前に、水に浸漬して水洗してもよい。PVA系フィルムの水洗により、当該フィルムの表面に存在する汚れおよびブロッキング防止剤などを除去できる。さらに、水洗によってPVA系フィルムが膨潤するため、染色時のムラが抑制される。延伸は、染色前に行っても、染色後に行っても、染色と同時に行ってもよい。
乾燥後に接着層(粘接着剤層)となる接着剤組成物は、限定されない。接着剤組成物は、PVA系樹脂を含むことが好ましい。
PVA系樹脂は、例えば、以下の重合体を含む:ポリ酢酸ビニルのけん化物およびその誘導体;酢酸ビニルと他の単量体との共重合体のけん化物;PVAをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化またはリン酸エステル化した変性PVA。
前記他の単量体は、例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸およびそのエステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体である。PVA系樹脂は、アセトアセチル基含有PVAを含むことが好ましい。この場合、偏光子と光学フィルム(アクリル樹脂フィルム)との密着性が向上し、偏光板の耐久性が向上する。
PVA系樹脂の平均重合度は、接着剤組成物の接着性の観点から、100〜5000程度が好ましく、1000〜4000がより好ましい。PVA系樹脂の平均ケン化度は、接着剤組成物の接着性の観点から、85〜100モル%程度が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。
アセトアセチル基含有PVAは、例えば、PVAとジケテンとを任意の方法で反応させて得られる。具体例は、PVAを酢酸などの溶媒中に分散させた分散体に、ジケテンを添加する方法;PVAをジメチルホルムアミドまたはジオキサンなどの溶媒に溶解させた溶液に、ジケテンを添加する方法;PVAにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法である。
アセトアセチル基含有PVAにおけるアセトアセチル基変性度は、典型的には、0.1モル%以上であり、好ましくは0.1〜40モル%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは2〜7モル%である。0.1モル%未満の変性度では、変性による効果(例えば、耐水性の向上)が不十分となることがある。変性度が40モル%を超えると、それ以上、耐水性が向上しない。PVAのアセトアセチル基変性度は、NMRにより測定できる。
接着剤組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤は限定されないが、PVA系樹脂に対する反応性を示す官能基を少なくとも2つ有する化合物である。
架橋剤は、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど、アルキレン基と2つのアミノ基とを有するアルキレンジアミン;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物、などのイソシアネート;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどのエポキシ;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのモノアルデヒド;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒドなどのジアルデヒド;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロールメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物などのアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケルなど、一価から三価の金属の塩および酸化物である。
なかでも、架橋剤は、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂およびジアルデヒドが好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂は、メチロール基を有することが好ましく、メチロールメラミンが好適である。ジアルデヒドは、グリオキザールが好適である。
接着剤組成物における架橋剤の配合量は、PVA系樹脂の種類に応じて、適宜、設定できる。典型的には、PVA系樹脂100重量部に対して10〜60重量部程度であり、20〜50重量部が好ましい。この範囲において、良好な接着性が得られる。架橋剤の配合量が過度に多くなると、架橋剤を介した反応が短時間で進行するため、接着剤組成物がゲル化する傾向がある。このため、接着剤組成物としての可使時間(ポットライフ)が極端に短くなり、工業的な使用が困難になることがある。
接着剤組成物は、金属化合物コロイドを含んでいてもよい。金属化合物コロイドは、金属化合物の粒子が分散媒中に分散したコロイドであり得る。金属化合物コロイドは、粒子が有する同種の電荷の相互反発に起因する静電的な安定化により、永続的に安定性を有するコロイドであり得る。接着剤組成物が金属化合物コロイドを含むことにより、例えば、架橋剤の配合量が多い場合であっても、接着剤組成物の安定性が向上する。
金属化合物コロイドにおけるコロイド粒子の平均粒子径は、偏光板としての光学特性(例えば、偏光特性)に悪影響を及ぼさない範囲で設定できる。コロイド粒子の平均粒子径は、1〜100nmが好ましく、1〜50nmがより好ましい。
なお、前記コロイド粒子の平均粒子径は、前述した微粒子の平均一次粒子径の求め方と同じ方法で測定することができる。
これらの範囲では、接着層中に当該コロイド粒子を均一に分散させることができる。これにより、接着性が確保されるとともに、クニック欠陥の発生が抑えられる。クニック欠陥が発生すると、例えば、当該偏光板を組み込んだ画像表示装置において、光抜けが生じる。
金属化合物は限定されず、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアなどの酸化物;ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウムなどの金属塩;セライト、タルク、クレイ、カオリンなどの鉱物である。正電荷を有する金属化合物コロイドが好ましい。正電荷を有するコロイドとなる金属化合物は、アルミナ、チタニアが好ましく、アルミナが特に好ましい。
金属化合物コロイドは、典型的には、分散媒に分散したコロイド溶液である。分散媒は、例えば、水、アルコールである。コロイド溶液における固形分濃度は、典型的には、1〜50重量%程度であり、1〜30重量%が好ましい。コロイド溶液は、安定剤として、硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含んでいてもよい。
接着剤組成物における金属化合物コロイドの配合量(固形分換算)は、PVA系樹脂100重量部に対して200重量部以下が好ましく、10〜200重量部がより好ましく、20〜175重量部がさらに好ましく、30〜150重量部が特に好ましい。これらの範囲では、接着剤組成物の接着性がより確実となりながら、クニック欠陥の発生がより抑えられる。
接着剤組成物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤;各種の粘着付与剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤を含んでいてもよい。
接着剤組成物は、好ましくは水溶液(樹脂溶液)である。水溶液における樹脂の濃度は、組成物の塗工性および放置安定性の観点から、0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。
水溶液の粘度は、1〜50mPa・sが好ましい。接着剤組成物が金属化合物コロイドを含む場合、1〜20mPa・sの低い粘度であっても、クニック欠陥の発生が効果的に抑制される。
水溶液のpHは、2〜6が好ましく、2.5〜5がより好ましく、3〜5がさらに好ましく、3.5〜4.5が特に好ましい。一般に、水溶液のpHの調整によって、金属化合物コロイドの表面電荷が調整される。表面電荷は、好ましくは正電荷である。正電荷であることにより、クニック欠陥の発生がさらに抑制される。金属化合物コロイドの表面電荷は、例えば、ゼータ電位測定機でゼータ電位を測定することで確認できる。
水溶液(樹脂溶液)である接着剤組成物は、公知の方法により形成できる。接着剤組成物が架橋剤および金属化合物コロイドを含む場合、例えば、PVA系樹脂と架橋剤とを混合して適切な濃度に調整した溶液に、金属化合物コロイドを配合する方法をとり得る。PVA系樹脂と金属化合物コロイドとを混合した後に、架橋剤を、接着剤組成物の使用時期を考慮しながら混合してもよい。水溶液の濃度は、水溶液を調製した後に調整可能である。
接着剤組成物から形成される接着層(粘接着剤層)の厚さは、当該組成物の組成に応じて、適宜、設定できる。当該厚さは、10〜300nmが好ましく、10〜200nmがより好ましく、20〜150nmが特に好ましい。この範囲において、接着層(粘接着剤層)は十分な接着力を示す。
[画像表示装置]
本発明は、上述した本発明の偏光板を備えた画像表示装置も含有する。
本発明の画像表示装置は、本発明にかかる光学フィルムを備える。画像表示装置は、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、LCDである。
本発明にかかる光学フィルムを備える画像表示装置(本発明の画像表示装置)の構成は特に限定されず、電源、バックライト部、操作部などの部材を、必要に応じて適宜備えればよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明を以下の実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<重量平均分子量>
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下の通りである。
システム:東ソー製GPCシステム HLC−8220
測定側カラム構成
・ガードカラム:東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ−L
・分離カラム:東ソー製、TSKgel SuperHZM−M 2本直列接続
リファレンス側カラム構成
・リファレンスカラム:東ソー製、TSKgel SuperH−RC
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して始点法により求めた。示差走査熱量計(NETZSCH社製、DSC3500A)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを−100℃から毎分20℃の昇温速度で200℃まで昇温を複数回繰り返すことで安定させたDSC曲線から得た。
<芳香族ビニル化合物由来の構造単位>
芳香族ビニル化合物由来の構造単位に由来する構成単位の割合は、NMR測定装置(Varian社製、商品名:Unity Plus400)を用いて1H−NMRスペクトルを測定することによって求めた。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルのアルキルエステル基のメチレン部位に帰属される3.6ppm〜4.2ppmの範囲の積分強度と、芳香族ビニル化合物由来の構造に由来する6.7〜7.4ppmの領域の積分強度の比率から算出した。
<フィルムの作製>
ブロック共重合体又は樹脂組成物を、手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)を用い、250℃で2分間溶融プレス成形し、100±10μmの未延伸フィルム(原フィルム)を作製した。
<フィルムの厚さ>
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定した。以降に評価方法を示す物性を含め、フィルムの物性を測定、評価するためのサンプルは、フィルムの幅方向の中央部から取得した。
<熱滞留後のヘイズ変化量>
フィルムの熱滞留後のヘイズ変化量は、作成したフィルムを手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)で、280℃20分間熱滞留させる前後の内部ヘイズ値の差として求めた。
フィルムのヘイズは、日本電色工業社製NDH−1001DPを用いて石英セルに1,2,3,4−テトラヒドロナフタリン(テトラリン)を満たし、その中にフィルムを浸漬して測定し、100μmあたりの内部ヘイズ値として算出した。
ブロック共重合体を含む樹脂組成物は熱滞留すると、ブロック共重合体の分散状態に変化が生じ、凝集することでヘイズ変化量が増大する。
<透湿度>
Z0208に規定されるカップ法により、40度の温度および90%の相対湿度で測定し、100μmあたりの値に換算して使用した。
<屈曲性試験>
フィルムの屈曲性試験は、JIS K5600−5−1:1999の規定に準拠して行った。23℃、50%RHの状態に1時間以上静置させた、幅50mm、長さ100mmの試験フィルムを使用し、5枚のサンプルの平均値を測定結果とした。
<吸水率>
吸水率は、以下の方法により求めた。
厚み100±10μm、一片の長さが100mmの正方形の試験片を3枚準備し、80℃で10時間以上乾燥した後に、重量(W1)を測定する。
次に、温度85℃湿度85%に調整した恒温恒湿器に72時間入れたのち、表面に付着した水分を拭き取り、重量(W2)を測定する。
吸水率は、下記式に従い求めた値の平均値とした。
吸水率(%)=(W2−W1)/W1×100
<酸価>
1)(メタ)アクリル系樹脂に残存する酸成分の量(mmol/g)
塩化メチレン25gに試料0.15gを溶解させ、得られた溶液にメタノール15gを添加し、3時間撹拌した。その後、この溶液に1重量%フェノールフタレインエタノール溶液2滴を添加し、撹拌しながら0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌を継続し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液の量をAmlとした。この溶液に0.1N塩酸を滴下し、溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Bml)を測定した。
次に、塩化メチレン25gとメタノール15gとの混合液に1重量%フェノールフタレインエタノール溶液2滴を添加し、撹拌しながら0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌を継続し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液の量をCmlとした。この溶液に0.1N塩酸を滴下し、溶液の赤紫色が消失するまでに要した0.1N塩酸の滴下量(Dml)を測定した。
式:〔試料に残存する酸成分の量(カルボキシル基および酸無水物基の合計量)(mmol/g)〕A1=0.1×[(A−B)−(C−D)]/0.15
に基づいて求めた。
(実施例1)ブロック共重合体(A−1)の合成
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に、1.41重量部の臭化第一銅(CuBr;和光純薬製)、0.66重量部の2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(DBADE;和光純薬製)、68.6重量部のアクリル酸n−ブチル(BA;日本触媒製)、9.5重量部のスチレン(St;東京化成工業製)、16.7重量部のアセトニトリル(ACN;和光純薬製)を仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温した。次いで、0.17重量部のN,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA;和光純薬工業製)を加え、5時間反応を進行させた。得られた反応溶液を活性アルミナでろ過し触媒残渣を除去した後、2.4kPa、80℃で約1時間残存モノマーおよび溶媒を除去し、重合体ブロックを得た。Mnは3.3万、Mwは3.8万、Mw/Mn=1.15、40℃以下の領域におけるガラス転移温度は−28℃であった。芳香族ビニル化合物由来の構造単位は、15.8mol%(13.2wt%)であった。
合成した重合体ブロック21.1重量部、8.4重量部のN−フェニルマレイミド(PMI;日本触媒製)、33.7重量部のメタクリル酸メチル(MMA;住友化学製)、0.21重量部のCuBrおよび重合溶媒としてトルエン33.7重量部を攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に仕込み、窒素を通じつつ80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.78重量部のPMDETAと、2.8重量部のトルエンの混合液を加え、4時間反応を進行させた。得られた反応溶液を活性アルミナでろ過し触媒残渣を除去した後、多量のメタノールに沈殿させ、ろ過、乾燥することによりブロック共重合体(A−1)を得た。
ブロック共重合体(A−1)は、BA−ST共重合体ブロックの両末端にMMAとPMIからなる共重合体ブロックが結合した、トリブロック構造を有し、Mnは4.9万、Mwは6.4万、Mw/Mn=1.3であり、40℃以上の領域におけるガラス転移温度は135℃であった。
(実施例2)ブロック共重合体(A−2)の合成
0.9重量部のDBADE、77重量部のBA、20重量部のST、0.15重量部のCuBrを攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に仕込み、窒素を通じつつ80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.18重量部のPMDETAと、2.5重量部のACNの混合液を添加し、6時間反応を進行させた。得られた反応溶液を活性アルミナでろ過し触媒残渣を除去した後、多量のメタノールに沈殿させ、ろ過、乾燥することにより重合体ブロックを得た。Mnは1.7万、Mwは1.9万、Mw/Mn=1.1であり、40℃以下の領域におけるガラス転移温度は−15℃であった。芳香族ビニル化合物由来の構造単位は、29.1mol%(25.0wt%)であった。
合成した重合体ブロック9.2重量部、10重量部のPMI、40重量部のMMA、10重両部のメチルエチルケトン(MEK;和光純薬製)をサンプル管に仕込んだ。次いで、0.9重量部のCuBr、10重量部のMEK、0.32重量部のトリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミンの混合液をサンプル管に加え、70℃で6.5時間反応を進行させ、実施例1と同様に触媒除去を行った。得られた反応溶液を多量のメタノールに沈殿させ、ろ過、乾燥することによりブロック共重合体(A−2)を得た。
ブロック共重合体(A−2)は、BA−ST共重合体ブロックの両末端にMMAとPMIからなる共重合体ブロックが結合した、トリブロック構造を有し、Mnは5.3万、Mwは11.1万、Mw/Mn=2.1であった。40℃以上の領域におけるガラス転移温度は131℃であった。
(実施例3)ブロック共重合体(A−3)の合成
1.08重量部のDBADE、113重量部のBA、7重量部のST、0.2重量部のCuBr、1.0重量部のACNを攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に仕込み、窒素を通じつつ80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.32重量部のPMDETAと、1.0重量部のメタノールの混合液を添加し、18.5時間反応を進行させた。途中で、0.01重量部のトリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミンの混合液、38重量部のBA、2重量部のSTを2回に分けて添加した。得られた反応溶液を活性アルミナでろ過し触媒残渣を除去した後、多量のメタノールに沈殿させ、ろ過、乾燥することにより重合体ブロックを得た。Mnは3.0万、Mwは3.3万、Mw/Mn=1.1であり、40℃以下の領域におけるガラス転移温度は−39℃であった。芳香族ビニル化合物由来の構造単位は、9.1mol%(7.5wt%)であった。
合成した重合体ブロック12.1重量部、10重量部のPMI、40重量部のMMA、10重両部のMEKをサンプル管に仕込んだ。次いで、0.9重量部のCuBr、10重量部のMEK、0.32重量部のトリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミンの混合液をサンプル管に加え、70℃で5時間反応を進行させ、製造例1と同様に触媒除去を行った。得られた反応溶液を多量のメタノールに沈殿させ、ろ過、乾燥することによりブロック共重合体(A−4)を得た。ブロック共重合体(A−4)は、BA−ST共重合体ブロックの両末端にMMAとPMIからなる共重合体ブロックが結合した、トリブロック構造を有し、Mnは7.4万、Mwは13.6万、Mw/Mn=1.8であった。40℃以上の領域におけるガラス転移温度は133℃であった。
(参考例1)ブロック共重合体(A−4)の合成
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に、0.52重量部のCuBr、1.0重量部のDBADE、90.7重量部のBA、7.2重量部のACNを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温した。次いで、0.43重量部のPMDETAを加え、4.5時間反応を進行させた。
反応溶液を活性アルミナでろ過し触媒残渣を除去した後、2.4kPa、80℃で約1時間残存モノマーおよび溶媒を除去し、重合体ブロックを得た。BAを構成成分とし、Mnは2.5万、Mwは2.8万、Mw/Mn=1.12、ガラス転移温度は−45℃であった。
合成した重合体ブロック19.1重量部、14.7重量部のPMI、58.8重量部のMMA、1.3重量部のCuBrを攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応装置に仕込み、窒素を通じつつ80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.24重量部のPMDETAと、5.88重量部のトルエンの混合液を加え、2時間反応を進行させ、実施例1と同様に触媒除去を行った。得られた反応溶液を多量のメタノールに沈殿させ、ろ過、乾燥することによりブロック共重合体(A−4)を得た。
ブロック共重合体(A−4)は、BAポリマーの両末端にMMAとPMIからなる共重合体ブロックが結合した、トリブロック構造を有し、Mnは4.7万、Mwは6.6万、Mw/Mn=1.4であった。ガラス転移温度は−45℃と144℃に観測され、40℃以上の領域におけるガラス転移温度は144℃であった。
(製造例1)ブロック部を持たないアクリル系重合体(C−1)の合成
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応装置に、17部のPMI、42部のMMA、ならびに重合溶媒として99部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.10部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、1.0部のスチレン(ST)、1.0部のトルエンおよび0.20部の上記t−アミルパーオキシイソノナノエートの混合溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。モノマーの転化率はそれぞれPMIが98.6%、MMAが96.9%、STが99.0%であった。得られた重合溶液を240℃、減圧度2.4kPaで1時間減圧乾燥を行い、PMI、MMA、ST単位を構成単位として有する透明な重合体(C−1)のペレットを得た。
得られた重合体(C−1)のMwは17.2万、Mnは5.9万、Tgは135℃であった。
実施例1〜3,参考例1及び製造例1で得られたポリマー(ブロック共重合体、重合体)の物性をまとめたものを後述の表1に示す。
(実施例4)
実施例1で作成したブロック共重合体(A−1)と、製造例1で作成したアクリル系重合体(C−1)を16:84(重量部)を300重量部のメチルエチルケトンに溶解させた後、200℃、減圧度2.4kPaで1時間減圧乾燥を行い、樹脂組成物B−1を得た。得られた樹脂組成物B−1を用いてフィルムを作成し、物性を評価した。結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例2で作成したブロック共重合体(A−2)と、製造例1で作成したアクリル系重合体(C−1)を28:72(重量部)を300重量部のメチルエチルケトンに溶解させた後、200℃、減圧度2.4kPaで1時間減圧乾燥を行い、樹脂組成物B−2を得た。得られた樹脂組成物B−2を用いてフィルムを作成し、物性を評価した。結果を表2に示す。
(実施例6)
実施例3で作成したブロック共重合体(A−3)と、製造例1で作成したアクリル系重合体(C−1)を50:50(wt%)で実施例4同様に混合し、樹脂組成物B−3を得た。得られた樹脂組成物B−3を用いてフィルムを作成し、物性を評価した。結果を表2に示す。
(参考例2)
製造例1で作成したアクリル系重合体(C−1)を単独で用いてフィルムを作成し、物性を評価した。結果を表2に示す。
(参考例3)
参考例1で作成したブロック共重合体(A−4)と、製造例1で作成したアクリル系重合体(C−1)を18:82(wt%)で実施例4同様に混合し、樹脂組成物B−4を得た。得られた樹脂組成物B−4を用いてフィルムを作成し、物性を評価した。結果を表2に示す。
上記表に示すように、ブロック共重合体に芳香族ビニル化合物の単位を導入(特にBA単位を含むソフト成分)することで、耐湿性を向上できた。一方、吸水性については、芳香族ビニル化合物の導入の有無にかかわらず、ほとんど変化がなく、耐湿性の向上と吸水性の向上との間に相関性がないこともわかった。
また、実施例のブロック共重合体又は樹脂組成物は、耐湿性を向上しつつ、各種物性にも優れたバランスの良い樹脂材料であった。