JP6857986B2 - 立体経編地 - Google Patents
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Description
産業資材としては車両用内装材が挙げられるが、なかでも昨今では、そのクッション性を生かして、自動車の内装部品、例えばインストルメントパネル(以後、インパネともいう)の裏材として用いられている。インパネの裏側(車室内空間と反対側)には、エアバッグが内蔵されている。インパネは、基材と該基材の表面に貼着された裏材とからなる。裏材は、立体織物に基布や表皮等を貼着したもの等が用いられている。そして、自動車の衝突時に、エアバッグの膨張圧によりインパネを破壊してエアバッグが展開されるため、インパネの基材および裏材である立体編物には開裂溝が形成されている。
が、引裂き強度の異なる地組織部を幅方向に交互に配列されてなるものである。前記裏地組織の引裂き強度の小さい地組織部の長さ方向の引裂き強度が170〜330N/50mmの範囲であり、かつ、前記裏地組織の引裂き強度の小さい地組織部の幅方向の引裂き強度が110〜300N/50mmの範囲である。本発明の立体経編地は、エアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地である。
ニードルループ数(個)
= コース密度(コース/25.4mm)×ウエル密度(ウエル/25.4mm)
連結糸の総繊度(dtex)
= 連結糸の繊度(dtex)×コース密度(コース/25.4mm)
×ウエル密度(ウエル/25.4mm)×2
25.4mm四方当たりのシンカーループ数(本)
= 糸条の振り数(アンダーラップ数)×シンカーループを構成する糸の本数
×コース密度(コース/25.4mm)×ウエル密度(ウエル/25.4mm)
裏地組織が引裂き強度の異なる地組織部を幅方向に交互に配列されてなることにより、別工程で表皮材に開裂溝を形成しなくともエアバッグの膨張圧により基材の開裂溝に沿って表皮材を開裂させることが可能となる。
なお、裏地組織を編成する筬としては少なくとも2枚の筬を用いればよく、上限は特に限定されるものでもないが5枚以下であることが好ましい。表地組織を編成する筬としては、少なくとも1枚の筬を用いればよく、上限は特に限定されるものでもないが5枚以下であることが好ましい。また、連結糸用の筬としては、少なくとも1枚の筬を用いればよく、上限は特に限定されるものでもないが3枚以下であることが好ましい。
なお、立体経編地の25.4mm四方当たりのニードルループ数は、下記式から算出することができる。
立体経編地の25.4mm四方当りのニードルループ数(個)
= コース密度(コース/25.4mm)×ウエル密度(ウエル/25.4mm)
一方、引裂き強度の大きい地組織部の25.4mm四方当たりのシンカーループ数は、800〜8000本の範囲であることが好ましく、より好ましくは1700〜7800本の範囲である。シンカーループ数が800本未満であると、立体経編地のクッション性や保型性が損なわれる虞がある。シンカーループ数が8000本を超えると、立体経編地が粗硬で伸びにくくなり、加工時に皺が生じる虞がある。
なお、立体経編地の裏地組織における25.4mm四方当たりのシンカーループ数は、下記式から算出することができる。
25.4mm四方当たりのシンカーループ数(本)
= 糸条の振り数(アンダーラップ数)×シンカーループを構成する糸の本数
×コース密度(コース/25.4mm)×ウエル密度(ウエル/25.4mm)
一方、引裂き強度の大きい地組織部の幅方向を形成するニードルループ数は、1〜112個の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜84個の範囲であり、さらに好ましくは1〜44個の範囲である。ニードルループ数が1個未満であると、立体経編地の強度が不十分となる虞がある。ニードルループ数が112個を超えると、エアバッグの膨張圧による開裂がうまくいかない虞がある。
一方、引裂き強度の大きい地組織部を形成する糸条の繊度(糸抜き配列で導糸される糸条の繊度と、主にフルセットで導糸される糸条の繊度の和)は、44〜550dtexであることが好ましく、より好ましくは44〜440dtexである。繊度が44dtex未満であると、立体経編地のクッション性や保型性が損なわれる虞がある。繊度が550dtexを超えると、立体経編地が粗硬になり、エアバッグの膨張圧による開裂がうまくいかない虞がある。
なお、連結糸の25.4mm四方当たりの総繊度は、下記式から算出することができる。
連結糸の25.4mm四方当たりの総繊度(dtex)
= 連結糸の繊度(dtex)×コース密度(コース/25.4mm)
×ウエル密度(ウエル/25.4mm)×2
また、引裂き強度の大きい地組織部の長さ方向の引裂き強度は、200〜520N/50mmであることが好ましく、より好ましくは220〜460N/50mmである。引裂き強度が200N/50mm未満であると、立体経編地の強度が不十分となる虞がある。引裂き強度が520N/50mmを超えると、立体経編地がエアバッグの膨張圧による開裂がうまくいかない虞がある。
さらに、引裂き強度の小さい地組織部の長さ方向の引裂き強度を1とした場合、引裂き強度の大きい地組織部の長さ方向の引裂き強度が1.2〜2.2の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.3〜2.1の範囲である。1.2未満であると、立体経編地の強度が損なわれる虞がある。2.2を超えると、立体経編地がエアバッグの膨張圧による開裂がうまくいかない虞がある。
また、引裂き強度の大きい地組織部の幅方向の引裂き強度は、160〜360N/50mmであることが好ましく、より好ましくは180〜350N/50mmである。引裂き強度が160N/50mm未満であると、立体経編地の強度が不十分となり保型性が損なわれる虞がある。引裂き強度が360N/50mmを超えると、エアバッグの膨張圧による開裂がうまくいかない虞がある。
さらに、引裂き強度の小さい地組織部の幅方向の引裂き強度を1とした場合、引裂き強度の大きい地組織部の幅方向の引裂き強度が1.0〜2.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.8の範囲である。1.0未満であると、立体経編地の強度が損なわれる虞がある。2.0を超えると、立体経編地がエアバッグの膨張圧による開裂がうまくいかない虞がある。
また、幅方向の引張強度が250〜450N/50mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは280〜380N/50mmの範囲である。引張強度が250N/50mm未満であると立体経編地の強度が損なわれる虞がある。引張強度が450N/50mmを超えると、立体経編地がエアバッグの膨張圧による開裂がうまくいかない虞がある。
JIS L1096 8.18 A法(ミューレン形法)に準拠して測定した。測定は試験片を5枚用いて行い、得られた測定値の平均値を破裂強度とし、下記基準に従って判定した。
○ : 550kPa以上、950kPa以下
△ : 500kPa以上、550kPa未満、
または、950kPa以上、1100kPa未満
× : 500kPa未満、または、1100kPa超え
幅50mm、長さ250mmの大きさの試験片を、長さ方向・幅方向からそれぞれ5枚採取した。この時、試験片の中央に測定したい裏地組織がくるように配置して採取した。各試験片に試験片の長辺が上辺と下辺となるように上辺を100mm、下辺を150mmとした等脚台形のマークを付け、このマークの上辺の中央に、辺と垂直に10mmの切り込みを入れた。室温20±2℃、湿度65±5%RHの状況下で、試験片の短辺を、試験片にマークした等脚台形の上辺が張り、下辺がたるむようにしてつかみ具で挟み、引張試験機オートグラフAG−100A(株式会社島津製作所)を用いて、つかみ幅50mm、つかみ間隔100mm、つかみ具の移動速度200mm/minで試験片を引き裂いた。試験片が切断したときの平均荷重を測定し、各々の方向について5枚の試験片の中の最小値を引裂き強度とし、下記基準に従って判定した。
長さ方向(引裂き強度の大きい地組織部分)
○ : 220N/50mm以上、460N/50mm以下
△ : 200N/50mm以上、220N/50mm未満、
または、460N/50mm超え、520N/50mm以下
× : 200N/50mm未満、または、520N/50mm超え
長さ方向(引裂き強度の小さい地組織部分)
○ : 180N/50mm以上、300N/50mm以下
△ : 170N/50mm以上、180N/50mm未満、
または、300N/50mm超え、330N/50mm以下
× : 170N/50mm未満、または、330N/50mm超え
幅方向(引裂き強度の大きい地組織部分)
○ : 180N/50mm以上、350N/50mm以下
△ : 160N/50mm以上、180N/50mm未満、
または、350N/50mm超え、360N/50mm以下
× : 160N/50mm未満、または、360N/50mm超え
幅方向(引裂き強度の小さい地組織部分)
○ : 110N/50mm以上、280N/50mm以下
△ : 280N/50mm以上、300N/50mm未満
× : 110N/50mm未満、または、300N/50mm超え
幅50mm、長さ250mmの大きさの試験片を、長さ方向・幅方向からそれぞれ5枚採取し、試験片の長さ方向の中央部に距離100mmの評点を記した。室温20±2℃、湿度65±5%RHの状況下で、試験片をつかみ具でたるみのないよう初期荷重が0.98Nとなるように挟み、引張試験機オートグラフAG−100A(株式会社島津製作所)を用いて、つかみ幅50mm、つかみ間隔150mm、つかみ具の移動速度200mm/minで試験片を引張り、破断に要する荷重を測定し、5枚の荷重のうち最低値を引張強度とし、下記基準に従って判定した。
長さ方向
○ : 300N/50mm以上、450N/50mm以下
△ : 280N/50mm以上、300N/50mm未満、
または、450N/50mm超え、500N/50mm以下
× : 280N/50mm未満、または、500N/50mm超え
幅方向
○ : 280N/50mm以上、380N/50mm以下
△ : 250N/50mm以上、280N/50mm未満、
または、380N/50mm超え、450N/50mm以下
× : 250N/50mm未満、または、450N/50mm超え
28ゲージのダブルラッセル編機(RD6DPLM−77E−28G、カールマイヤー社製)を使用して、図3に示すように、筬L−1に56dtex/24fのポリエステルマルチフィラメント加工糸を19in9out(19本糸入れ、9本糸抜きで配列)で配列して2針振りのコード編組織(1−0/2−3)で、筬L−2に33dtex/12fのポリエステルマルチフィラメント加工糸をフルセットで配列してデンビ編組織(1−2/1−0)で裏地組織を編成し、筬L−3、L−4に22dtex/1fのポリエステルフィラメント糸をフルセットで配列して表裏地組織を連結し、筬L−5に33dtex/12fのポリエステルマルチフィラメント加工糸をフルセットで配列してデンビ編組織(1−2/1−0)で、筬L−6に56dtex/24fのポリエステル加工糸加工糸をフルセットで配列して2針振りのコード編組織(1−0/2−3)で使用して表地組織を編成した。
得られた編地をヒートセッターにて190℃で1分間プレセットしたのち、分散染料にて130℃で染色した後、乾燥し、ヒートセッターにて150℃で1分間仕上げセットして、仕上がり42コース/25.4mm、32ウエル/25.4mmで厚み3.0mmの立体経編地を得た。
表1および図3〜6に従い、実施例1と同様の手順で、立体経編地を得た。得られた立体経編地の評価結果を表1に示す。
Claims (14)
- 表裏地組織が連結糸で連結された立体経編地であって、
前記裏地組織が、引裂き強度の異なる地組織部を幅方向に交互に配列されてなり、
前記裏地組織の引裂き強度の小さい地組織部の長さ方向の引裂き強度が170〜330N/50mmの範囲であり、かつ、前記裏地組織の引裂き強度の小さい地組織部の幅方向の引裂き強度が110〜300N/50mmの範囲であることを特徴とするエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。 - 前記裏地組織の引裂き強度の大きい地組織部の長さ方向の引裂き強度が200〜520N/50mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 前記裏地組織の引裂き強度の大きい地組織部の幅方向の引裂き強度が160〜360N/50mmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 前記裏地組織の引裂き強度の小さい地組織部の長さ方向の引裂き強度を1とした場合、前記裏地組織の引裂き強度の大きい地組織部の長さ方向の引裂き強度が1.2〜2.2の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 前記裏地組織の引裂き強度の小さい地組織部の幅方向の引裂き強度を1とした場合、前記裏地組織の引裂き強度の大きい地組織部の幅方向の引裂き強度が1.0〜2.0の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 前記立体経編地の引張強度が、長さ方向が280〜500N/50mmの範囲であり、幅方向が250〜450N/50mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 前記裏地組織において、引裂き強度の小さい地組織部を形成する糸条の繊度が22〜220dtexの範囲であり、引裂き強度の大きい地組織部を形成する糸条の繊度が33〜550dtexの範囲であり、且つ、引裂き強度の小さい地組織部を形成する糸条の繊度が引裂き強度の大きい地組織部を形成する糸条の繊度より小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 前記立体経編地の厚みが1.5〜10mmの範囲であり、連結糸に用いられる糸条の繊度が22〜440dtexの範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 下記式から算出される立体経編地の25.4mm四方当りのニードルループ数が500〜2800個の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
ニードルループ数(個)
= コース密度(コース/25.4mm)×ウエル密度(ウエル/25.4mm) - 下記式から算出される連結糸の25.4mm四方当りの総繊度が26000〜462000dtexの範囲であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
連結糸の総繊度(dtex)
= 連結糸の繊度(dtex)×コース密度(コース/25.4mm)
×ウエル密度(ウエル/25.4mm)×2 - 連結糸におけるモノフィラメント糸の占有率が50〜100%の範囲であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 前記裏地組織において、下記式にて算出される25.4mm四方当たりのシンカーループ数が、引裂き強度の小さい地組織部が0〜2800本の範囲であり、引裂き強度の大きい地組織部が800〜8000本の範囲であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
25.4mm四方当たりのシンカーループ数(個)
= 糸条の振り数(アンダーラップ数)×シンカーループを構成する糸の本数
×コース密度(コース/25.4mm)×ウエル密度(ウエル/25.4mm) - 前記裏地組織において、引裂き強度の小さい地組織部の幅方向を形成するニードルループ数が1〜112個の範囲であり、引裂き強度の大きい地組織部の幅方向を形成するニードルループ数が1〜112個の範囲であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のエアバッグを内蔵した車両内装材の裏材用の立体経編地。
- 前記車両内装材が、インストルメントパネルである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の立体経編地。
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