JP6855121B2 - りん酸塩系埋没材と併用するワックスパターンの表面処理材及びそれを用いた歯科用プレスセラミックスの製作方法 - Google Patents

りん酸塩系埋没材と併用するワックスパターンの表面処理材及びそれを用いた歯科用プレスセラミックスの製作方法 Download PDF

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本発明は歯科用プレスセラミックスのプレス成型時に用いるりん酸塩系埋没材と併用するワックスパターンの表面処理材及びそれを用いた歯科用プレスセラミックスの製作方法に関する。より詳細には、プレス成型したガラスセラミックスと鋳型(りん酸塩系埋没材)との融着による焼き付きを低減し、またガラスセラミックス表面への焼き付き物を除去する時の識別性にも優れるワックスパターンの表面処理材及びそれを用いた歯科用プレスセラミックスの製作方法に関する。
歯科用金属を鋳造成形して歯科用補綴装置を製造することは古くから臨床で応用されてきた。近年、審美性の向上や歯科用金属によるアレルギー症状の改善を意図して、ガラス系材料を用いた歯科用補綴装置が臨床応用されてきている。その中の一つに歯科用プレスセラミックスのプレス成型により歯科用補綴装置を作製する方法があり、その術式は次の通りである。このプレスセラミックスのプレス成型に用いられる鋳型材として、高温用埋没材であるリン酸塩系埋没材が一般的に用いられている。この埋没材は二酸化ケイ素、リン酸マグネシウム等を含んでいるものの、ガラスとの親和性に富んでいるためにプレス成型したガラスセラミックスの表面に融着しやすい。この成形したガラスセラミックス表面に融着した埋没材は、焼き付き物としてガラスセラミックス表面に残留してしまう。そのプレス成型したガラスセラミックスが天然歯のような光沢や色調を発現するためには、その表面をサンドブラスターや研削バーなどにより焼付いた表面を除去、研磨する必要がある。その後、低融点のガラスを主成分とするグレーズ材(ステイン材)を塗布、焼成して最終形態の歯科用補綴装置を得ることができる。しかし、プレス成型したガラスセラミックス表面に融着した焼き付き物が多い場合には、サンドブラスター等でガラスセラミックス部分も含めて多量に除去する必要があった。その結果、プレス成型したガラスセラミックスの寸法や形状の再現性が著しく悪くなり、望むような歯科用補綴装置が得ることが出来ない。
このような問題を解決するために、次のような方法が提案されている。
鋳型の内面に炭素、金属窒化物、金属炭化物等の離型材を塗布する方法の提案があり、これはプレス成型体への焼き付き物を無くすための単純な方法であることが特徴である。しかし、通常、歯科用補綴装置の製造に用いられる鋳型は、その内面が露出しておらず、鋳型の表面には約1〜3mmの湯口が開口しているだけである。このため、この湯口から離型材を入れて、鋳型の内面に十分に塗布することは極めて困難であり、実用的実施は不可能である。
ワックスパターンの表面に離型材を予め塗布した後に埋没材を埋没する、いわゆる、二重埋没法による方法の提案があり、この方法は鋳型の内面を離型材で覆うことが特徴である。しかし埋没操作を二回行わなければならないこと、すなわち、製造工程が、繁雑でかつ操作に長時間を要することが欠点である。また、一般的に離型材と鋳型材の熱膨張係数が異なる。そのため、離型材の塗布により鋳型の熱膨張率が変化し、鋳造される歯科用補綴装置の寸法精度の制御が困難であることも欠点である。さらに、二重埋没法では離型材を均一な厚さで薄く塗布することは極めて困難であり、局所的に離型材が肉厚になる部分が形成され易くなる欠点がある。このため、肉厚な部分の離型材は脆弱で、細かいひび割れが生じやすくなる結果、コーティングが剥離する場合もある。
鋳造用鋳型の主成分である二酸化ケイ素粉末を炭素、金属窒化物または金属炭化物等の離型剤でコーティングし、それを埋没材の主成分として用いる方法の提案がある。この方法では、コーティングされた二酸化ケイ素粉末が鋳型全体に存在するため、熱膨張がほぼ一定となり、また二酸化ケイ素のコーティング部が空隙表面に露出することで、焼き付きを低減できるとしている。しかし、焼き付きの原因は二酸化ケイ素ではなく、粉材に含まれている結合材と成型物との反応であること、そして鋳型の空隙表面全体をコーティングした二酸化ケイ素が露出するとは限らず、粉材中に含まれている結合材も露出することから、焼き付きを抑制することは困難であった。
ワックスパターンの表面に溶媒・窒化ホウ素・界面活性剤からなる表面処理材を塗布する方法が提案されている。この方法は、歯科用補綴装置の形状に再現したワックスパターンの表面に窒化ホウ素を含む表面処理材を溶媒と共に塗布することにより、鋳造の際においてガラス系材料と鋳型との間に耐熱性セラミックスである窒化ホウ素を含む層を形成することができる。その結果、成型したプレスセラミック表面への焼き付きを低減させることができ、そしてプレス成型時の温度を低下させることがないために、プレスセラミックス表面に荒れを発生しないことが特徴である。しかし、この方法では窒化ホウ素自体の比重が大きいために、界面活性剤を含む溶媒中で分離してしまい、均一に塗布することができない。その結果、プレス成型された歯科用補綴装置の表面において部分的に焼き付き物が存在することが欠点である。また、窒化ホウ素の色調とプレス成型したガラスセラミックスである歯科用補綴装置の色調が、ともに白く近似しているために、焼き付き物を除去しようとしても歯科用補綴装置と見分けがつきにくく、窒化ホウ素を十分に取り切れず、残留する場合があることも欠点であった。その結果、残留した窒化ホウ素が体内へ取り込まれる恐れや、残留した窒化ホウ素上に、低融点のガラスを主成分とするグレーズ材を塗布、焼成した場合において、歯科用補綴装置であるガラスセラミックスとグレーズ材の主成分であるガラス同士が融着せず、十分な接着が得られない恐れがある。
特開平8−73310 WO 2016/084585
従来からプレス成型したガラスセラミックス表面への焼き付きを防止するための多くの提案がなされてきたが、前述の通り十分な効果を得ることができなかった。また、焼き付きを防止するための離型剤がプレス成型したガラスセラミックスと色調的に区別することができないために取り残しが発生し、その後に適用するグレーズ材との融着において問題が生じていた。
これらの課題について本発明者らは、鋭意研究した結果、プレス成型したガラスセラミックスと埋没材との焼き付きを防止するために、プレス成型するための鋳型作製時に用いるワックスパターンの表面に特定の耐熱性セラミックス粉末からなる表面処理材を塗布することにより、プレス成型したガラスセラミックスと埋没材との焼き付きを防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、この表面処理材はプレス成型したガラスセラミックスと色調が異なるため、ガラスセラミックス表面上に残存した場合においても明確に識別することができる。また、研磨等の操作により完全に除去することも可能となり、その後に適用するグレーズ材との溶着において悪影響を与えることがないことも明らかにした。
具体的には、歯科用プレスセラミックスの成型時に用いるりん酸塩系埋没材と併用するワックスパターンの表面処理材であって、その表面処理材が耐熱性セラミックス粉末を含むことを特徴とするワックスパターンの表面処理材を提供する。また、前記の耐熱性セラミックス粉末が、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、窒化ケイ素から選ばれた少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
さらに歯科用プレスセラミックスの作製において、前記の表面処理材を筆でワックスパターン表面に塗布する工程と、前記ワックスパターンをりん酸塩系埋没材に埋没・硬化させる工程と、前記埋没材を加熱して前記ワックスパターンを焼却して鋳型を作製する工程と、ガラスインゴットを加熱して前記鋳型に圧入するプレス成型工程からなることを特徴とする歯科用プレスセラミックスの製作方法を提供する。
本発明の表面処理材はワックスパターンの表面に塗りむらが発生せず均一且つ薄い層で塗布することができ、それを用いた埋没材の鋳型にプレス成型したガラスセラミックスへの埋没材との焼き付きを低減させることが可能となった。また、ガラスセラミックス補綴装置を製作するまでの工程においても従来とほとんど変らず、簡便な製作方法でガラスセラミックスの歯科用補綴装置を製作することができる。またそのガラスセラミックス表面に残存した焼き付き物も容易に識別することができ、研磨等の後工程において完全に除去することができることが可能となった。
ワックスパターン 11が石膏模型 13上に形成された状態の模式図 ワックスパターン 11の表面に、表面処理材が塗布され、埋没された状態20の模式図 プレス成型直前の鋳型 30の模式図 焼き付き性評価試験後(実施例)のガラスセラミックス表面写真 焼き付き性評価試験後(比較例)のガラスセラミックス表面写真
11 ワックスパターン
12 スプルー部
13 石膏模型
21 表面処理材
22 プランジャーベース
23 ゴムリング
24 埋没材
30 鋳型
31 空隙
32 耐熱性セラミックス粉末
33 スプルー線部
34 湯口部
35 埋没材の焼成体
A 歯科用補綴装置
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。本実施形態ではワックスパターンの表面処理材の一構成例について説明する。
本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のワックスパターンに塗布する表面処理材は、耐熱性セラミックス粉末を含むことが特徴である。これにより、この表面処理材を塗布したワックスパターンを用いて作製した鋳型にプレス成型したガラスセラッミクス表面への埋没材の焼き付きを低減することが可能となる。本発明の表面処理材は、ワックスパーターンに塗布することが特徴であり、仮に本発明の表面処理材を埋没材に混合させても同等の焼き付きを防止する効果や焼き付き物の視認性を得るのは困難である。
本発明の表面処理材に含まれる耐熱性セラミックス粉末は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、窒化ケイ素から選ばれた少なくとも1種類以上を含んでいることが好ましい。これらの中でも、炭化ケイ素または炭化ホウ素は、焼き付きを防ぐ効果が優れていること、また粉末自体が黒灰色であることよりガラスセラミックスとの色差が明確であることから、特に好ましい。最も好ましくは炭化ケイ素であり、優れた効果を示す。また、耐熱性セラミックス粉末の形状は特に制限はなく、球型や不定形であっても特に問題はない。さらに耐熱性セラミックス粉末の製造方法や破砕方法等にも制限はなくいづれの方法で製造したものでも用いることができる。
本発明の表面処理材に含まれる耐熱性セラミックス粉末の平均粒度は特に制限はないものの、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜50.0μmである。より好ましくは、0.1〜10μmである。平均粒度が0.1μm未満であると十分な離型効果が得難く、一方100μmよりも大きくなるといと塗布面の厚みが厚くなり、また均一な塗布層が得られず、プレス成型したガラスセラミックス表面に凹凸が生じやすくなり、審美性が不良になる恐れがある。本発明の表面処理材のワックスパターンへの塗布方法は特に制限はなく、上部からの散布、筆による塗布、粉状物中へのディッピング等、いずれの方法でも何等問題はない。その中でも本発明の表面処理材を直接筆にとりワックスパターンに軽く押し当てながら塗布することが好ましい。この方法であると余剰分の表面処理材はワックスパターンを逆さまに向けたり、また振動を与えたり、弱風をあてたりすることにより、容易に除去することができ、薄い均一な離型材層をワックスパターン上に形成することができる。また形成した離型材層は呼気程度の風では、剥離することはない程度にワックスパターン上で固着することができる。
さらに本発明の表面処理材をワックスパターンに塗布する操作性をさらに向上させるために、水、有機溶媒、レジン成分、有機天然物、増粘剤等を含んで粘性のある液状物又はクリーム状物、ペースト状物にすることもできる。しかし、これらの場合、粘性が高くなると塗布した膜厚が高くなりプレス形成したガラスセラミックスの最終形態を損なう恐れがあるため、薄く塗布できるぐらいの粘性にしておく必要がある。また、操作性をさらに向上させるために、あらかじめワックスパターンに、水、有機溶媒、レジン成分、有機天然物、増粘剤等を塗布しておき、その後表面処理材を塗布することもできる。また、これらの成分が揮発性のものであればワックスパターンへの塗布時に揮発するため問題はないが、揮発しないものであればワックスパターンを焼却して鋳型を作製する時にワックスパターンと共に蒸発するものでなければならず、あくまでも鋳型の内面には本発明の表面処理材に含まれる耐熱性セラミックス粉末のみが存在する状態でなければならない。耐熱性セラミックス粉末以外の成分は、歯科用補綴装置の変色や黒点の原因となる可能性があるものは含まないことが好ましく、より簡便な塗布作業を可能にするためには本発明の表面処理材は耐熱性セラミックス粉末のみを含んだ粉状物であることが好ましい態様である。
ここで、本実施形態の歯科用補綴装置の製作方法の各工程について図 1、図 2、図3を用いながら以下に説明する。
図1、図2、図3は、本実施形態の歯科用補綴装置の製作方法の各工程を模式的に示したものである。
まず、本実施形態の歯科用補綴装置の製作方法を開始する前に、図1に示すように、形成する歯科用補綴装置Aに対応した形状を有するワックスパターン 11を準備することができる。
ワックスパターン 11は埋没材中に埋没させ、該埋没材が硬化した後焼却することで、図3のように該埋没材中に歯科用補綴装置 Aに対応した形状の空隙を有する鋳型を形成し、該鋳型中の空隙にプレス成型によりガラスセラミックスを供給することで所望の形状の歯科用補綴装置 Aを形成することができる。そして、埋没材中に歯科用補綴装置 Aに対応した形状の空隙を形成する際、該空隙にプレス成型によりガラスセラミックスを供給するための供給路もあわせて形成できるように、ワックスパターン 11にはスプルー部 12を併せて形成しておくことが好ましい。
ワックスパターン 11は、形成する歯科用補綴装置 Aに対応した形状にできるように、例えば印象材等で取得した歯型に石膏を流して作製した石膏模型 13上に形成することができる。
ワックスパターン 11、及びそのスプルー部 12は共に歯科用のワックスにより形成されることが好ましい。
次に、ワックスパターン 11、及びそのスプルー部 12の表面に、本実施形態の表面処理材 21を塗布する工程を実施することができる。
ワックスパターンに表面処理材を塗布する工程はワックスパターン 11、及びそのスプルー部 12を台に固定して実施することが好ましい。例えば後述する埋没工程においてワックスパターン 11、及びそのスプルー部 12をプランジャーベース 22に固定することから、本工程でもプランジャーベース 22に固定して行うことができる。
そして、ゴムリング 23の内部にスラリー状にした埋没材 24 (鋳型材ともいう)を流し込んで、ワックスパターン 11、及びそのスプルー部 12を埋没させる。なお、図2中の表面処理材 21の存在が分かり易いように便宜的に大きな黒丸で記載しており、埋没後もワックスパターン表面に固着している。
埋没工程で用いる埋没材の種類は特に限定されるものではなく、ガラス系材料をプレス成型する温度、圧力に耐えられる材料であれば良い。例えばリン酸塩系の埋没材を好ましく用いることができる。
そして、埋没材の硬化後に、ワックスパターンを含む埋没材を加熱してワックスパターンを焼却し、鋳型を作製する工程を実施することができる。
埋没材が硬化した後、プランジャーベース 22、ゴムリング 23を取り外し、焼成することができる。この際の焼成温度は特に限定されるものではなく、ワックスパターン 11、及びそのスプルー部 12を形成する際に用いたワックスの材料や埋没材 24の材料に応じて温度を選択することができる。
鋳型を作製する工程を実施することにより図3に示すように、ワックスパターン 11が除去され、プレス成型する歯科用補綴装置 Aに対応した形状の空隙 31が形成されると共に、そのスプルー部 12も焼却されるため、該空隙 31に通じるスプルー線部 33が形成される。スプルー線部 33の一方の端部には、後述する成型工程でガラスインゴットを配置するための湯口部 34が形成されている。係る湯口部 34はスプルー線部 33を固定したプランジャーベース 22に対応した形状となっている。
そして、空隙 31、及びスプルー線部 33の表面には、ワックスパターン 11の表面に塗布した本実施形態の表面処理材に含まれている耐熱性セラミックス粉末32が存在している状態とすることができる。なお、図中、耐熱性セラミックス粉末32の存在が分かり易いように便宜的に大きな黒丸で記載している。
また、焼却工程を実施することで埋没材も焼成され、埋没材の焼成体 35とすることができ、該埋没材の焼成体 35中に形成する歯科用補綴装置に対応した形状の空隙 31を有する鋳型 30を形成することができる。
次に、ガラスインゴットを焼却工程で形成した鋳型に鋳込むプレス成型工程を実施することができる。すなわち、プレス成型では、埋没材中のワックスパターンが焼却されることで形成された鋳型内の空隙に、ガラスインゴットを加熱、加圧して充填することができる。
具体的には、図3を用いて説明した鋳型 30の湯口部 34にガラスインゴットを置き、その上にアルミナプランジャ―を設置する。この状態でプレス機にセットし、加熱後プレス成型することで、空隙 31、及びスプルー線部 33にガラス成型体を充填することができる。
成型終了後は鋳型からガラスセ成型体を堀り出し、図 1 記載のスプルー部12を切断することで、歯科用補綴装置 Aを得ることができる。
以上に説明した本実施形態の歯科用補綴装置の製作方法によれば、ガラスインゴットをプレス成型して歯科用補綴装置を製作する際に、セラミックス製の歯科用補綴装置表面に荒れが生じることを抑制することができる。このため、従来よりも歩留まり良く歯科用補綴装置を製作することが可能になる。
以下に、本発明を実施例によって説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<歯科用補綴装置の作製試験>
(歯科用補綴装置の製作)
患者の歯から、シリコーンラバー印象材を用いて歯型を取った。次いで、その歯型に石膏を流し、石膏模型を形成した。次に、図1に示すように、石膏模型13上に歯科用ワックス(株式会社松風製 製品名:マイティーワックスソフト)を用いて、基準ワックスパターン11を形成した。基準ワックスパターン11が、複製できるように歯科用スキャナー(株式会社松風製 製品名松風S-WAVEスキャナー D2000)により基準ワックスパターン11のデータを読取った。次に基準ワックスパターン11のデータをデンタルCAMソフトウェアGO2dental(松風仕様)でNCデータへ変換し、ミリング装置(株式会社松風製 製品名DWX-50)で、ワックスディスク(松風ディスクワックス)から削りだし、歯形状のワックスパターン11を複数個作製した。
そして、ワックスパターン11、及びそのスプルー部(株式会社松風製 製品名:松風キィワックスNo.8)12をプランジャーベース22上に接合した。そして、上述のワックスパターンの表面処理材21(炭化ケイ素 商品名株式会社フジミインコーポレーテッドGC10000、平均粒子径1μm )をワックスパターン11の表面、及びそのスプルー部12の表面に筆を用いて塗布した。
次に、ワックスパターン11、及びそのスプルー部12を固定したプランジャーベース22の土台部の周縁部上に、ワックスパターン11、及びスプルー部12を囲むように、ゴムリング23を配置した。
そして、図2に示すように、ゴムリング23の内部にスラリー状にした埋没材 24 (鋳型ともいう)を流し込んで、ワックスパターン11、及びそのスプルー部12を埋没させた。この際埋没材としては、リン酸塩系埋没材(株式会社松風製 製品名:セラベティP&C)を用いた。
埋没材が硬化するまで放置した後、プランジャーベース 22、ゴムリング 23を取り外し、ワックスパターン11を含む埋没材を大気雰囲気下、850℃で45分間加熱してワックスパターンを焼却して鋳型を形成した。図3に示すように、ワックスパターン11、及びそのスプルー部12が除去されていることが確認できた。
そこで図3に示した鋳型30の湯口部34にガラスセラミックスである二ケイ酸リチウムのインゴットを置き、その上にアルミナプランジャ―を設置する。この状態でプレス成型機(株式会社松風 製品名エステマットプレス)の装置内にセットした。鋳型 30、及びインゴットを真空雰囲気下、925℃加熱しながら、インゴットをピストンによりプレス成型を行った。プレス成型を行うことで、図3に示すように鋳型30内のスプルー線部 33、及び空隙31にプレスガラスセラミックス成形体を充填した。冷却後、鋳型30からガラスセラミックス成型体を石膏鉗子、ガラスビーズによるサンドブラスト処理等によって取り出し、図1に示したスプルー部 12を切断することで歯科用補綴装置を得た。
上記方法で歯科用補綴装置を製作することで、簡便にガラスセラミックスの歯科用補綴装置を製作することができた。またそのガラスセラミックス表面にわずかに残存した焼き付き物も容易に識別することができ、サンドブラスト処理において完全に除去することができることが可能であった。
<焼き付き性評価試験>
歯形状のワックスパターンの代わりに10mm×10mm 厚み1mmの平板のワックスパターンを用いた以外は歯科用補綴装置の作製試験と同様の方法でガラスセラミックス製平板を作製した。用いた表面処理材を以下に示す。なお、実施例で用いた株式会社松風 製品名ワックスクリーナースプレーは、主成分を水とする水性ワックスクリーナー材である。

実施例1 炭化ケイ素 (株式会社フジミインコーポレーテッドGC10000)
平均粒子径約1μm
実施例2 炭化ケイ素 (株式会社フジミインコーポレーテッドGC240)
平均粒子径約55μm
実施例3 炭化ホウ素 (和光純薬工業株式会社製) 平均粒子径約30μm
実施例4 窒化ホウ素 (デンカ株式会社製 窒化ホウ素GP 平均粒子径約
8μm)と水性ワックスクリーナー材(株式会社松風 製品名ワッ
クスクリーナースプレー)が3g:30gの混合物
実施例5 水性ワックスクリーナー材(株式会社松風 製品名ワックスクリーナースプレー)をワックスパターンに塗布し、液が乾燥しないうちに炭化ケイ素 (株式会社フジミインコーポレーテッドGC240)平均粒子径約55μmを筆で塗布したもの
実施例6 窒化ホウ素 (デンカ株式会社製 窒化ホウ素GP 平均粒子径約
8μm)
実施例7 窒化ホウ素 (MOMENTIVE社製 PT-350平均粒子径130μm )
実施例8 水性ワックスクリーナー材(株式会社松風 製品名ワックスクリーナースプレー)をワックスパターンに塗布し、液が乾燥しないうちに炭化ケイ素 (株式会社フジミインコーポレーテッドGC180)平均粒子径約80μmを筆で塗布したもの
比較例1 珪石(福島窯業株式会社製 製品名シリカパウダーC06-12
平均粒子径6μm)
比較例2 酸化アルミニウム(株式会社フジミインコーポレーテッドWA8000
平均粒子径1μm)
比較例3 表面処理材なし
この平板に対して、プレス成型後(サンドブラスト処理前)、およびガラスビーズによるサンドブラスト処理(圧力は、0.4Mpa)を1分間行った後、その処理面に残存する焼き付き物の状態を顕微鏡により観察・評価した。
焼き付き性の評価は以下の基準に従って平板2個について行い、2個の平均で焼き付き物の付着が平板の半分以下の時を「合格」と判定した。結果を表1に示す。また、試験後の平板写真を図4〜図5に示す。

◎ :焼き付き物が全く確認されない
○ :焼き付き物がわずかに付着している(平板全体の25%以下)
△ :焼き付き物が平面全体の半分程度付着している
× :焼き付き物がほぼ平面全体に付着している(平板全体の75%以上)
×× :焼き付き物が平板全体に付着している

Figure 0006855121
焼き付き性評価試験結果について、以下に示す。
・実施例1(炭化ケイ素 平均粒子径約1μm)では、表面処理材の塗布を均一に行うことが可能であり、塗布性は非常に良好であった。また、ガラスセラミックス表面への焼き付きはほとんどなく、わずかに残存した焼き付き物も色差により容易に識別することができるため、サンドブラスト処理において完全に除去することが可能であった。
・実施例2(炭化ケイ素 平均粒子径約55μm)では、表面処理材の塗布性も問題なく、ガラスセラミックス表面の焼き付きもわずかであった。残存した焼き付き物も色差により容易に識別することができるため、サンドブラスト処理においてほとんど除去することが可能であった。
・実施例3(炭化ホウ素 平均粒子径約30μm)では、表面処理材の塗布は問題なく行えた。ガラスセラミックス表面の焼き付きが生じている部分があり残存した焼き付き物も色差により容易に識別することができるため、サンドブラスト処理である程度除去することが可能であった。
・実施例4(窒化ホウ素8μmと水性ワックスクリーナーが3g:30gの混合物)では、表面処理材の塗布時にムラになる部分があった。ガラスセラミックス表面に焼き付きが生じている部分があり、残存した焼き付き物は、ガラスセラミックスと類似の色調であったが、サンドブラスト処理である程度除去することが可能であった。
・実施例5 水性ワックスクリーナー材をワックスパターンに塗布し、液が乾燥しないうちに炭化ケイ素平均粒子径約55μmを筆で塗布したものでは、表面処理材の塗布は問題なく行えた。ガラスセラミックス表面の焼き付きがわずかにあったものの、残存した焼き付き物も色差により容易に識別することができるため、サンドブラスト処理においてほとんど除去することが可能であった。
・実施例6(窒化ホウ素 平均粒子径約8μm)では、表面処理材の塗布は問題なく行えた。ガラスセラミックス表面の焼き付きが生じている部分があり、残存した焼き付き物は、ガラスセラミックスと類似の色調であったが、サンドブラスト処理である程度除去することが可能であった。
・実施例7(窒化ホウ素 平均粒子径130μm )では、表面処理材の塗布面が厚くなる傾向があったが、問題なく塗布が可能であった。ガラスセラミックス表面の焼き付きが生じている部分があり、残存した焼き付き物は、ガラスセラミックスと類似の色調であったが、サンドブラスト処理である程度除去することが可能であった。
・実施例8 水性ワックスクリーナー材をワックスパターンに塗布し、液が乾燥しないうちに炭化ケイ素 平均粒子径約80μmを筆で塗布したものでは、表面処理材の塗布面が厚くなる傾向があったが、問題なく行えた。ガラスセラミックス表面の焼き付きがわずかにあったものの、残存した焼き付き物も色差により容易に識別することができるため、サンドブラスト処理においてほとんど除去することが可能であった。
・比較例1(珪石 平均粒子径6μm)では、塗布時にムラになる部分があった。ガラスセラミックス表面で焼き付きが起こり、焼き付き物はサンドブラスト処理で除去することが困難であった。
・比較例2(酸化アルミニウム 平均粒子径1μm)では、塗布は問題なく行えたものの、ガラスセラミックス表面で焼き付きが起こり、焼き付き物はサンドブラスト処理で除去することが困難であった。
・比較例3では、ガラスセラミックス表面全体で焼き付きが起こり、焼き付き物はサンドブラスト処理で除去することがほとんどできなかった。
以上にワックスパターンの表面処理材、歯科用補綴装置の製作方法を、実施形態、実施例等で説明したが、本発明は上記実施形態、実施例等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
耐熱性セラミックスを含むワックスパターンの表面処理材を歯科用プレスセラミックスの鋳造時に使用することにより、効率よく所望する歯科用補綴装置を得る方法である。すなわち、プレスセラミックスの鋳造において、ワックスパターンの表面処理材を筆でワックスパターンの表面全体に塗布することにより、鋳造時の鋳型とプレス成型したガラスセラミックスとの焼き付きを抑制するだけでなく、鋳造後のサンドブラストや研磨の際にも表面処理材の確認が容易で、確実に取り除くことが出来る。その結果、効率よく所望する歯科用補綴装置を得ることが出来る。

Claims (2)

  1. 歯科用プレスセラミックスの作製において、
    炭化ケイ素粉末を含む表面処理材をワックスパターンの表面に塗布する工程、
    前記ワックスパターンをりん酸塩系埋没材に埋没・硬化させる工程、
    前記埋没材を加熱して前記ワックスパターンを焼却して鋳型を作製する工程、
    ガラスインゴットを加熱して前記鋳型に圧入するプレス成型工程、
    を含むことを特徴とする歯科用プレスセラミックスの製作方法。
  2. 歯科用プレスセラミックスの作製において、
    炭化ケイ素粉末をワックスパターンに塗布する工程、
    前記ワックスパターンをりん酸塩系埋没材に埋没・硬化させる工程、
    前記埋没材を加熱して前記ワックスパターンを焼却して鋳型を作製する工程、
    ガラスインゴットを加熱して前記鋳型に圧入するプレス成型工程、
    を含むことを特徴とする歯科用プレスセラミックスの製作方法。
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