図1は、この発明の実施形態における車両の一例を示す。図1に示すように車両10は、エンジン11、エンジンECU(Electronic Control Unit)12、プラネタリギヤ13、第1モータ(MG1)14、第2モータ(MG2)15、モータECU16、第1インバータ17、第2インバータ18、バッテリ19、バッテリECU20およびHVECU(Hybrid Vehicle Electronic Control Unit)21を備えたハイブリッド車両となっている。エンジン11は、ガソリンや軽油などを燃料として駆動力を出力する内燃機関の一例であり、エンジンECU12によって運転が制御されている。
エンジンECU12は、図示していないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用し、ROMに予め記憶された各種のプログラムが実行されることでエンジン11の運転などを制御する。具体的にはエンジンECU12には、エンジン11の運転を制御するのに必要な各種センサから得られる複数の信号が入力ポートを介して入力される。例えばエンジン11には、クランクシャフト22の回転位置を検出するクランクポジションセンサ23が取り付けられている。クランクポジションセンサ23から得られるクランク角θcrの信号は、エンジンECU12に入力される。エンジンECU12は、入力ポートから入力された複数の信号をパラメータとして各種プログラムに基づいてエンジン11の運転を制御するための各種制御信号を演算または決定し、演算または決定された各種制御信号を、出力ポートを介して出力する。なお、エンジンECU12は、クランクポジションセンサ23から得られる信号に基づいてクランク角回転数、つまりエンジン回転数Neを演算する。エンジンECU12は、HVECU21と通信ポートを介して接続されている。
プラネタリギヤ13は、エンジン11が出力した駆動力が入力される入力要素、第1モータ14に連結されている反力要素および出力要素により差動作用を行う動力分割機構の一例である。入力要素、例えばサンギヤSには、第1モータ14の回転子が接続されている。反力要素、例えばリングギヤRには、駆動輪25,26にデファレンシャルギヤ27を介して速結された駆動軸28が接続されている。出力要素、例えばキャリヤCは、ダンバ機構29を介してクランクシャフト22が接続されている。なお、動力分割機構としては、複数の遊星歯車機構を複合させたものとしてもよい。
第1モータ14は、例えば同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がサンギヤSに接続されている。第2モータ15は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸28に接続されている。第1インバータ17は、第1モータ14と接続されると共に電力ライン30を介してバッテリ19に接統されている。第2インバータ18は、第2モータ15に接続されると共に電力ライン30を介してバッテリ19に接統されている。第1モータ14は、モータECU16の制御によって第1インバータ17が有する複数のスイッチング素子(図示なし)がスイッチング制御されることにより駆動される。第2モータ15は、モータECU16の制御によって、第2インバータ18が有する複数のスイッチング素子(図示なし)がスイッチング制御されることにより駆動される。
モータECU16は、エンジンECU12と同じまたは同様なマイクロコンピュータを含んで構成されている。モータECU16には、第1モータ14および第2モータ15の駆動を制御するのに必要な各種センサからの信号、例えば第1モータ14の回転子の回転位置を検出する第1回転位置検出センサ31からの回転位置θm1や、第2モータ15の回転子の回転位置を検出する第2回転位置検出センサ32からの回転位置θm2などが入力ポートを介して入力される。モータECU16は、第1インバータ17が有する複数のスイッチィング素子へのスイッチィング制御信号や、第2インバータ18が有する複数のスイッチィング素子へのスイッチィング制御信号などを出力ポートを介して出力する。モータECU16は、第1回転位置検出センサ31から得られる第1モータ14の回転子の回転位置に基づいて第1モータ14の回転数Nm1を演算し、また、第2回転位置検出センサ32から得られる第2モータ15の回転子の回転位置に基づいて第2モータ15の回転数Nm2を演算する。
バッテリ19は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、電力ライン30を介して第1インバータ17および第2インバータ18に接続されている。バッテリ19は、バッテリECU20の制御によってバッテリ19の残容量SOCや消費電力量などの情報が管理されている。
バッテリECU20は、エンジンECU12と同じまたは同様なマイクロコンピュータを含んで構成されている。バッテリECU20には、バッテリ19を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。バッテリECU20に入力される情報としては、例えばバッテリ19の端子間に取り付けられた電圧センサ34から得られる電池電圧、バッテリ19の出力端子に取り付けられた電流センサ35から得られる電池電流、およびバッテリ19に取り付けられた温度センサ36から得られる電池温度を含む。バッテリECU20は、HVECU21と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU20は、電流センサから得られる電池電流の積算値に基づいて満充電容量に対する残容量の割合を示す残容量SOCを演算する。
HVECU21は、エンジンECU12と同じまたは同様なマイクロコンピュータを含んで構成されている。HVECU21は、各種センサから得られる信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU21に入力される信号としては、例えばイグニッションスイッチ38から得られるイグニッション信号や、シフトレバー39の操作位置を検出するシフトポジションセンサ40から得られるシフトポジション信号を含む。ここで、シフトボジションとしては、駐車ポジション(Pポジション)、後進ポジション(Rポジション)、ニュートラルポジション(Nポジション)、前進ポジション(Dポジション)などを有する。また、HVECU21に入力される信号としては、例えばアクセルペダル41の踏み込み量を検出するアクセルセンサ42から得られるアクセル開度ACCに相当する信号、ブレーキペダル43の踏み込み量を検出するブレーキセンサ44から得られるブレーキ信号、車速Vを検出する車速センサ45から得られる車速Vに相当する信号を含む。さらに、車両10が加速または減速されることにより発生する車両10の前後加速度Gを検出する加速度センサ47から得られる前後加速度αの信号を含む。
HVECU21は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸28の要求駆動力を設定し、要求駆動力に見合う駆動力が駆動軸28に出力されるように、エンジン11の運転、第1モータ14の駆動および第2モータ15の駆動をそれぞれ制御する運転モードを設定する。運転モードとしては、第1運転モード、第2運転モードおよび第3運転モードを含む。
第1運転モードは、要求駆動力に対応する駆動力がエンジン11から出力されるようにエンジン11の運転を制御すると共に、エンジン11から出力される駆動力の全てが、プラネタリギヤ13、第1モータ14および第2モータ15によってトルク変換されて、変換された駆動力が駆動軸28に伝達されるように第1モータ14および第2モータ15の駆動を制御するモードとなっている。つまりエンジン11から出力される駆動力、第1モータ14および第2モータ15から出力される駆動力を合成して駆動軸28に伝達する運転モードである。この場合は、例えば残容量SOCが所定値以上であり、よってバッテリ19に充電が必要のない運転状態の場合である。
第2運転モードは、要求駆動力とバッテリ19の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン11から出力されるようにエンジン11の運転を制御するとともに、エンジン11から出力される駆動力の全てまたは一部が、バッテリ19の充放電を伴ってプラネタリギヤ13、第1モータ14および第2モータ15によってトルク変換されて、要求駆動力が駆動軸28に出力されるように第1モータ14および第2モータ15の駆動を制御するモードとなっている。つまり、エンジン11から出力される駆動力を駆動軸28と第1モータ14とに分割して入力し、かつその駆動軸に第2モータ15から出力される駆動力を合成して駆動輪25,26に伝達する運転モードである。この運転モードでは、第1モータ14が発電機として作用し、第1モータ14により発電された電力を利用して第2モータ15を走行用として駆動する。この場合は、例えば残容量SOCが所定値以下となってバッテリ19に充電が必要となる運転状態の場合である。
第3運転モードは、エンジン11の運転を停止して、要求駆動力が駆動軸28に出力されるように第2モータ15から出力される駆動力を駆動輪25,26に伝達する運転モードとなっている。
HVECU21は、前述した第1運転モードから第3運転モードのいずれかの運転モードで走行中で、かつアクセルオフの状態で、かつ車両10が減速状態となる条件が成立したときに、車両10に制動力を作用させる制動力制御を実行する。制動力制御は、第2モータ15を回生制御することにより制動力を作用させる制御、および第1モータ14でエンジン11をモータリングすることによって制動力を作用させる制御を含む。制動力制御は、車両10の前後加速度Gに基づいて第1制動モード、第2制動モードおよび第3制動モードのうちのいずれかの制動モードを設定するとともに、車両10の前後加速度Gの時間的な変化に伴って制動モードを変更させる。なお、第1制動モードから第3制動モードは、車両10に作用させる制動力が車速Vに応じて異なるように決められている。HVECU21などは、この発明の実施形態におけるコントローラの一例である。
図2は、車両10の前後加速度Gと各制動モードとの対応関係の一例を示す。図2に説明図の水平方向は車両10の前後加速度を表す。車両10は、前後加速度Gが正側(同図の右方向)に増加すると、車両10の減速度が減少し、車両10が増速する。前後加速度Gが負側(同図の左方向)に増加すると、車両10の減速度が増大し、車両10が減速する。車両10の前後加速度Gが予め決められた閾値G_α以上の場合には、第1制動モードが設定される。車両10の前後加速度Gが予め決められた閾値G_β以上でかつ閾値G_α未満の場合には、第2制動モードが設定される。車両10の前後加速度Gが閾値G_β未満の場合には、第3制動モードが設定される。なお、閾値は、前後加速度Gの正側が大きい値とすると、「G_α>G_β」の関係となる。
第1制動モードは、車両10に作用させる制動力を3つの制動モードのうち一番大きい値に設定する。第3制動モードは、車両10に作用させる制動力を一番小さい値に設定する。第2制動モードは、車両10に作用させる制動力を3つのモードのうちの中間の大きさに設定する。
制動力制御では、第3制動モード、第2制動モードおよび第1制動モードの順に変更する。つまり制動力が増大する方向に向けた制動モードの変更を許可する。そして、逆の方向、つまり制動力が減少する方向に向けた制動モードの変更を不許可とする。つまり制動力制御は、第1制動モードから第2制動モード、第2制動モードから第3制動モードおよび第1制動モードから第3制動モードへの制動力の変更をそれぞれ禁止する。
このように、アクセルオフ時に、車両10の減速度に応じて車両10に作用させる制動力を変えるとともに、減速度が増大する方向、つまり前後加速度Gの負側に向けた方向(車両10が減速する方向)には制動力を減少するように前後加速度Gに対して制動力を変更しない。また減速度が減少する方向、つまり前後加速度Gの正側に向けた方向(車両10が加速する方向)には制動力を増大するように前後加速度Gの増大に対して制動力を追従して増大させる。これにより、例えば急な降坂路から緩やかな降坂路に走行路が変化する場合または平坦路に変化する場合に、制動力が減少する方向に制動力が変更されて運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
図3は、アクセルオフ時の各制動モードにおける制動力と車速との関係の一例を示す。図3に示すように第1制動モードは、車速Vが特定の範囲において第2制動モードを設定したときよりも大きい値に制動力を設定する。第3制動モードは、車速Vが特定の範囲において第2制動モードを設定したときよりも小さい値に制動力を設定する。第2制動モードは、車速Vが特定の範囲において第1制動モードを設定したときより小さい値に、かつ第3制動モードを設定したときよりも大きい値に制動力を設定する。そして、第1制動モードおよび第2制動モードは、特定の範囲における車速Vに応じて、変化させる制動力に特定の幅を持たせるように設定されている。特定の幅は、車速Vが中車速のときに制動力が大きく、それよりも低車速および高車速の場合に制動力が小さくなる幅となっており、各制動モードごとでオーバラップしないように決められている。第3制動モードは、車速Vが特定の範囲において車両10に作用させる制動力が略「0」に決められている。なお、第3制動モードは、第1制動モードおよび第2制動モードと同じまたは同様に車速Vに応じて、変化させる制動力に特定の幅を持たせるように設定されてもよい。
図4は、制動力制御の動作手順の一例を示す。この手順は、制動力制御のメインルーチンとなっており、走行中のアクセルオフ時にHVECU21によって所定時間(例えば、数msec)毎に繰り返し実行される。図4に示すようにステップS1では、制動力制御の開始を許可する条件が成立したか否かを判断する。制動力制御の開始を許可する条件は、ブレーキペダルの踏み込み量、アクセルペダルの踏み込み量、車速および前後加速度などに応じて判断されものであり、成立するとPtrq1判定フラグが「ON」に設定される。制動力制御の開始を許可する条件が成立した場合(Yes側の場合)にはステップS2に移行する。そうでない場合にはステップS3に移行して、Ptrq2判定フラグが「OFF」に設定される。
ステップS2では、Ptrq2判定フラグが「OFF」か否かを判断する。Ptrq2判定フラグが「OFF」の場合(Yes側の場合)にはステップS4に移行する。そうでない場合(No側の場合)にはステップS5に移行して、第2制動モードが選択される。その後にリターンされる。なお、Ptrq2判定フラグは、詳しくは後述するが、前後加速度Gが閾値G_β以上となる期間が所定期間継続された場合に「ON」に設定されるフラグである。
ステップS4では、前後加速度Gが予め決められた閾値G_β未満か否かを判断する。前後加速度Gが閾値G_β未満の場合(Yes側の場合)にはステップS6に移行する。そうでない場合(No側の場合)にはステップS7に移行する。ステップS6では、Ptrq2判定カウンタのカウンタ値をクリアする。
ステップS7では、Ptrq2判定カウンタをカウントアップし、その後ステップS9に移行する。ステップS9では、Ptrq2判定カウンタのカウント値が予め決められた判定値Ctrqを超えたか否かを判断する。Ptrq2判定カウンタのカウント値が判定値Ctrqを超えた場合(Yes側の場合)にはステップS10に移行する。そうでない場合(No側の場合)にはステップS8に移行して第3制動モードが設定される。
ステップS10では、Ptrq2判定フラグを「ON」に設定してステップS11に移行する。ステップS11では、第2制動モードを設定し、その後リターンする。
ステップS3では、Ptrq2判定フラグを「OFF」に設定してステップS12に移行する。ステップS12では、Ptrq2判定カウンタのカウント値をクリアし、その後にステップS13に移行する。ステップS13では、第1制動モードを設定し、その後リターンする。
図5は、図4で説明した制動力制御における事前処理の手順の一例を示す。図5に示す手順は、HVECU21が実行するメインルーチンに予め用意された第1サブルーチンであり、ブレーキセンサ44、アクセルセンサ42、車速センサ45および加速度センサ47などから入力される信号を逐次確認するように繰り返し実行される。
図5に示すようにステップS14にてブレーキセンサ44から得られる信号に基づいてペダル43が踏み込まれていないこと(ブレーキOFF)を検出したか否かを判断する。ブレーキOFFを検出した場合(Yes側の場合)にはステップS15に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはステップS16に移行する。ステップS16にてBKフラグを「OFF」に設定し、その後ステップS17に移行する。ステップS15ではBKフラグを「ON」に設定し、その後ステップS17に移行する。BKフラグONは、ブレーキペダル43を踏み込んでいない状態を表す。
ステップS17にてアクセルセンサ42から得られる信号に基づいてアクセルペダル41が踏み込まれていないこと(アクセルOFF)を検出したか否かを判断する。アクセルOFFを検出した場合(Yes側の場合)にはステップS18に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはステップS19に移行する。ステップS18にてACCフラグを「ON」に設定し、その後ステップS20に移行する。ステップS19ではACCフラグを「OFF」に設定し、その後ステップS20に移行する。ACCフラグONは、アクセルペダル41を踏み込んでいない状態を表す。
ステップS20にて車速Vが予め決められた閾値K1を超えたか否かを判断する。車速Vが閾値K1を超えた場合(Yes側の場合)にはステップS21に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはステップS22に移行する。ステップS21にてSPDフラグを「ON」に設定し、その後ステップS22に移行する。SPDフラグONは、車速Vが閾値K1を超える状態を表す。
ステップS22にて車速Vが予め決められた閾値K2未満か否かを判断する。車速Vが閾値K2未満の場合(Yes側の場合)にはステップS23に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはステップS24に移行する。ステップS23では、SPDフラグを「OFF」に設定し、その後ステップS24に移行する。SPDフラグOFFは、車速Vが閾値K2未満の状態を表す。
ステップS24からステップS27の手順は、前後加速度Gが予め決められた閾値α未満となる期間が第1所定期間(例えば予め決められた閾値C1trq)を継続した場合にGフラグを「ON」に設定する。つまりステップS24にて前後加速度Gが閾値α未満か否かを判断する。前後加速度Gが閾値α未満の場合(Yes側の場合)にはステップS25に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはステップS26に移行する。
ステップS25では、前後加速度Gが閾値α未満となる期間を計時するために、G許可カウンタでカウントを開始し(G許可カウンタ_up)、その後ステップS27に移行する。ステップS27にてG許可カウンタの計時が予め決められた閾値C1trqを超えたか否かを判断する。G許可カウンタの計時が閾値C1trqを超えた場合(Yes側の場合)にはステップS28に移行し、そうでない場合にはステップS29に移行する。ステップS28ではGフラグを「ON」に設定し、その後ステップS29に移行する。ステップS26では、G許可カウンタの計時をクリアし、その後ステップS29に移行する。
ステップS29からステップS33の手順は、前後加速度Gが予め決められた閾値αを超える期間が第2所定期間(例えば予め決められた閾値C2trq)を継続した場合にGフラグを「OFF」に設定する。つまりステップS29にて前後加速度Gが閾値αを超えたか否かを判断する。前後加速度Gが閾値αを超えた場合(Yes側の場合)にはステップS30に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはステップS31に移行する。
ステップS30では、前後加速度Gが閾値αを超える期間を計時するために、G不許可カウンタでカウントを開始し(G不許可カウンタ_up)、その後ステップS32に移行する。ステップS32にてG不許可カウンタの計時が予め決められた閾値C2trqを超えたか否かを判断する。G不許可カウンタの計時が閾値C2trqを超えた場合(Yes側の場合)にはステップS33に移行し、そうでない場合にはリターンする。ステップS33では、Gフラグを「OFF」に設定し、その後リターンする。ステップS31では、G不許可カウンタの計時をクリアし、その後リターンする。
図6は、図4で説明した制動力制御における他の事前処理の手順の一例を示す。図6に示す手順は、図5で説明したBKフラグ、SPDフラグ、GフラグおよびACCフラグに基づいて、図4で説明したメインルーチンで使用するPtrq1判定フラグを設定するために予め用意された第2サブルーチンであり、所定時間毎に繰り返し実行される。図6に示すようにステップS34では、BKフラグが「ON」、かつSPDフラグが「ON」、かつGフラグが「ON」の条件を満たすか否かを判断する。すべてONの場合(Yes側の場合)にはステップS35に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはステップS38に移行する。
ステップS35では、ACCフラグが「OFF」か否かを判断する。ACCフラグが「ON」の場合(Yes側の場合)にはステップS36に移行し、そうでない場合にはステップS38に移行する。ステップS36では前回のACColdフラグが「OFF」、かつ今回のACCフラグが「ON」か否か、つまりACCフラグが「OFF」から「ON」に変化したか否かを判断する。ACCフラグが「OFF」から「ON」に変化した場合(Yes側の場合)にはステップS37に移行し、そうでない場合にはステップS39に移行する。ステップS37では、制動トルクの変更を許可するためのPtrq1判定フラグを「ON」に設定し、その後ステップ39に移行する。ステップS39では、今回のACCフラグの設定を前回のACColdの設定に置き換え、その後リターンする。ステップS38では、Ptrq1判定フラグを「OFF」に設定し、その後ステップS39に移行する。
図7は、制動モードの遷移の一例を示す。図7に示すように時刻t1以前では、アクセルペダル41が一定に踏み込まれた状態で(符号7A)、かつ車両10の加速度が増加した状態になっている(符号7B)。この間では、例えば第1制動モードが選択されているが(符号7C)、アクセルペダル41を踏み込んだアクセルオンの状態のため、制動力制御が開始されておらず、よって第1制動モードによる制動力が車両10に作用することはない。時刻t1では、アクセルオンの状態からアクセルオフの状態に変化し(符号7D)、かつブレーキペダル43の踏み込まれていないブレーキオフの状態となっている(符号7E)。このときの走行路面の変化などにより、車両10の減速度が増加される(符号7F)そして、制動力制御を開始する条件が成立し、このときの車速Vと前後加速度Gとに基づいて第3制動モードが選択される(符号7G)。第3制動モードが選択されることにより、およびこのときの走行路面の変化などにより、車両10の減速度が減少される(符号7H)。
時刻t2では、第3制動モードが選択されることにより加速度が増大する方向に向けた傾斜が緩やかに変化する(符号7H’)。このときの車速Vと前後加速度Gとに基づいて第2制動モードが選択される(符号7I)。その後、時刻t3では、第2制動モードが選択されることにより車両10の加速度が増大され(符号7J)、このときの車速vと前後加速度Gとに基づいて第1制動モードが選択される(符号7K)。そして、時刻3以降は、アクセルオフの状態が継続されていることを条件に、車両10の加速度が減少する方向に変化しても(符号7L)、制動力を減少させる制動モードに変更されないように制動力の変更が禁止される(符号7M)。
図8は、図7とは異なる路面を走行中に遷移する制動モードの一例を示す。図8に示す例では、制動力を減少させる制動モードの変更を禁止する期間にて、アクセルオンの状態またはブレーキオンの状態に変化するまで継続されることを示している。図8に示すように時刻t4以前では、アクセルオンの状態で(符号8A)、かつ車両10の加速度が増大された状態になっている(符号8B)。この間では、第1制動モードが選択されているが(符号8C)、アクセルオンの状態なので、制動力制御が開始されていない。時刻t4では、アクセルオンの状態からアクセルオフの状態に変化し(符号8D)、かつブレーキオフの状態となっている(符号8E)。このときの走行路面の変化などにより車両10の減速度が増大される(符号8F)。そして、制動力制御を開始する条件が成立し、このときの車速vと前後加速度Gとに基づいて第3制動モードが選択される(符号8G)。第3制動モードが選択されることにより、およびこのときの走行路面の変化などにより、車両10の減速度が減少される(符号8H)。
時刻t5では、車両10の減速度が減少する方向に向けた傾斜が緩やかになる(符号8H’)。これにより、第2制動モードが選択される(符号8I)。その後、時刻t6では、アクセルオンの状態に変化する(符号8K)。これにより、制動力制御を実行する条件が不成立となり、制動力制御が終了される。これに伴って、制動力を減少させる制動力モードへの変更を禁止する処理が解除される。なお、時刻t6では、第1制動モードが選択されているが(符号8L)、制動力制御が終了しているので、第1制動モードによる制動力が車両10に作用することはない。その後、時刻t7にて、アクセルオフの状態にされると(符号8M)、車両10の減速度が増大され(符号8N)、このときの車速vと前後加速度Gとに基づいて第3制動モードが選択される(符号8P)。その後、時刻t8では、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキオンの状態となる(符号8Q)。アクセルオフの状態でもブレーキオンの状態に変更されることにより、制動力制御が終了され、制動力を減少させる制動力モードへの変更を禁止する処理が解除される。このとき、第1制動モードが選択されているが(符号8R)、制動力制御が終了しているので、第1制動モードによる制動力が車両10に作用することはない。
以上、この発明における実施形態に基づいて説明したが、この発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。例えば制動力制御を実行する条件として、走行モードとしてノーマルモードに比して燃費をより優先するエコモードが選択されていることを条件に含んでよい。この場合にはエコモードを指示するエコスイッチを備えればよい。また、上記各実施形態では、加速度センサ47を用いて車両10の減速度を検出しているが、例えば車速Vの変化に基づいて車両10の減速度を検出してもよい。
上記各実施形態では、内燃機関の一例としてエンジン11と、駆動力を入出力可能な第1モータ14と、エンジン11の出力軸と第1モータ14の回転軸と駆動軸28とに接続されたプラネタリギヤ(遊星歯車機構)と、駆動軸28に動力を入出力可能な第2モータ15とを備えた車両10として説明しているが、この発明ではこれに限らず、例えば走行用のモータを備え、走行用のモータによって制動力を車両に作用させることができる車両であればいずれの車両であってもよい。
上記各実施形態では、車両10の前後加速度Gに限らず、例えば車両10の左右加速度、車両10の上下加速度、ヨーレート、路面勾配、路面の摩擦係数のうちのいずれか一つまたは複数に基づいて、車両10の制動力を変更してもよい。また、上記実施形態では、制動モードを第1制動モードから第3制動モードの3つのモードに設定しているが、この発明では3つのモードに限らず、例えば2つまたは4つ以上のモードに設定してもよい。
上記各実施形態では、3つの制動モードを予め用意しているが、この発明ではこれに限らず、3つの制動モードを予め用意する代わりに、車両10の減速度に応じて、例えば制動力が連続的に変わるように制動力を演算により求めてもよい。