JP6845085B2 - ナノダイヤモンドの製造方法 - Google Patents
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本発明の他の目的は、ナノダイヤモンドの表面を被覆するグラファイトを、常圧付近の圧力下、酸化剤として硫酸と硝酸の混酸を使用して効率よく除去して、高分散性を有するナノダイヤモンドを得る方法を提供することにある。
酸化処理工程:表面の少なくとも一部がグラファイトで被覆されたナノダイヤモンドと、硫酸と硝酸の混酸とを反応させる工程
熟成工程:反応系内の硫酸濃度を85質量%以下に低下させた後、130℃以上の温度で1時間以上静置する工程
更に、硫酸と硝酸の混酸を使用した酸化処理後に、反応系内の硫酸濃度を低下させてから加熱熟成するため、反応器由来の金属不純物が硫酸と反応して、水洗による除去が困難であり、且つNDの分散性を低下させる原因となる、錯塩を形成することを抑制でき、分散性に優れたNDを製造することができる。
以上より、本発明のNDの製造方法は、環境負荷を低減しつつ、NDの表面を被覆するグラファイトを除去して、高純度且つ高分散性を有するNDを効率よく製造することができるため、工業的にNDを製造する方法として好適である。
本発明のNDの製造方法は、少なくとも、下記酸化処理工程と下記熟成工程とをこの順で有する。
酸化処理工程:表面の少なくとも一部がグラファイトで被覆されたナノダイヤモンド(以後、「粗ND」と称する場合がある)と混酸とを反応させる工程
熟成工程:反応系内の硫酸濃度を85質量%以下に低下させた後、130℃以上の温度で1時間以上静置する工程
本発明においては、グラファイトを酸化する酸化剤として、特定の割合で硫酸と硝酸とを含む混酸を使用することを特徴とする。尚、本発明においては、予め硫酸と硝酸とを混合し、混酸を形成してから反応器内に添加しても、硫酸と硝酸のそれぞれを連続的若しくは間欠的に反応器内に添加し、反応器内において混酸を形成させてもよい。
C+2HNO3→CO2+NO2+NO+H2O
3NO2+H2O→2HNO3+NO
本発明においては、上記酸化処理工程終了後に熟成工程を設ける。
本発明のNDの製造方法において使用する粗NDは、例えば、爆轟法や、高温高圧法を用いて製造することができる。本発明においては、なかでも、より分散性に優れるNDが得られる点で、爆轟法を採用することが好ましい。
熟成工程後のNDは、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとりやすい。この凝着体から一次粒子の分離を促すために、NDに対して水溶媒中で所定のアルカリおよび過酸化水素を作用させる工程を設けてもよい。これにより、NDに含まれる金属性不純物を除去することができ、ND凝着体からND一次粒子の分離を促進することができる。爆轟法で得られる粗NDには金属性不純物が含まれやすく、この金属性不純物は、主に、爆轟法に使用される容器等に由来するFe、Co、Ni等の酸化物である。
解砕工程は、ND凝着体を含有する溶液を解砕処理ないし分散化処理に付すことによってND凝着体(二次粒子)をND一次粒子に解砕ないし分散化するための工程である。
遠心分離工程は、上述の解砕工程を経たNDを含有する溶液から、遠心力の作用を利用して粗大粒子を除去する工程である。本工程の遠心分離処理において、遠心力は例えば15000〜25000×gであり、遠心時間は例えば10〜120分である。これにより、ND粒子の分散する黒色透明の上清液(ND水分散液)が得られる。得られたND水分散液については、水分量を低減することによってND濃度を高めることができる。この水分量低減は、例えばエバポレーターを使用して行うことができる。以上のようにして、ND水分散液を得ることができる。
乾燥工程は、エバポレーターを使用して溶液から水分量を低減させた後の残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させる工程である。加熱乾燥温度は、例えば40〜150℃である。このような乾燥工程を経てNDの粉体(ND(粉体))が得られる。
尚、ND水分散液に含まれるND粒子に関する上記のゼータ電位は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって測定した値である。測定に供されたND水分散液は、超純水を使用してND濃度を0.2質量%に希釈した後、超音波洗浄機を用いて超音波照射を行ったものである。また、測定に供されたND水分散液のpHは、pH試験紙(商品名「スリーバンドpH試験紙」、アズワン(株)製)を使用して確認した。
(生成工程)
生成工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置して容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3である。爆薬としては、TNTとRDXとの混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50であった。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているND粗生成物(上記爆轟法で生成した粗NDの凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行って回収した。ND粗生成物の回収量は0.025kgであった。
次に、酸化処理を行った。具体的には、50℃の冷媒を循環させた凝縮器と前記凝縮器に接続されたアルカリトラップとを備えた反応器中において、1atm下、反応器を加熱しつつ、生成工程で得られたND粗生成物(3g)と濃硫酸(80.6g)と炭酸銅(触媒量)とを反応器に仕込んだ。
そこへ、発煙硝酸(20.4g、硫酸と硝酸の割合が80/20(前者/後者(質量比))となる量)を滴下した。反応温度は150℃であった。その後、反応の進行に伴って蒸発した硝酸、及び生成したH2Oは凝縮器で凝縮して反応器内に戻した。一方、NO、NO2、CO、及びCO2は凝縮器に接続されたアルカリトラップで捕集した。発煙硝酸の滴下開始から48時間後、酸化処理工程における反応を終了した。終了時の反応器内の硫酸濃度は92質量%であった。また、硝酸濃度は検出限界以下であった。
酸化処理工程における反応終了後、反応器内の温度を150℃に維持した状態で、水を加えて反応器内の硫酸濃度を73質量%とし、5時間静置した。その後、反応器内の温度を室温まで冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初は着色していた上清液が、目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
次に、加熱熟成後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ND凝着体を含む)に対して1Lの10質量%水酸化ナトリウム水溶液と1Lの30質量%過酸化水素水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この処理における加熱温度は50〜105℃であった。次に、冷却後、デカンテーションによって上澄みを除いてスラリー(ND凝着体を含む)を得た。
次に、ビーズミル(商品名「ウルトラアペックスミルUAM−015」、寿工業(株)製)を使用して、前工程を経て得られたスラリー300mLを解砕処理に付した。本処理では、解砕メディアとしてジルコニアビーズ(直径0.03mm)を使用し、ミル容器内に充填されるビーズの量はミル容器の容積に対して60%とし、ミル容器内で回転するローターピンの周速は10m/sとした。また、装置を循環させるスラリーの流速を10L/hとして90分間の解砕処理を行った。
次に、上述の解砕工程を経たNDを含有する溶液から、遠心力の作用を利用した分級操作によって粗大粒子を除去した(遠心分離処理)。本工程の遠心分離処理において、遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分とした。これにより、黒色透明のND水分散液を得た。本分散液の一部についてND濃度0.2質量%への超純水による希釈を行った後に当該分散液中のND粒子のゼータ電位を測定したところ、−20.9mV(25℃,pH10.0)であった。
次に、遠心分離工程で得られたND水分散液からエバポレーターを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じた残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させた。加熱乾燥温度は120℃とした。以上のようにして、ND(1)(粉体、動的光散乱法によって測定したメディアン径(粒径D50):4.6nm、クロム含有量:検出限界以下)を得た。
熟成工程を設けなかった以外は実施例1と同様にして、ND水分散液(2)(ゼータ電位(25℃,pH9.8);−30.6mV)、及びND(2)(粉体、動的光散乱法によって測定したメディアン径(粒径D50):4.6nm、クロム含有量:検出限界以下)を得た。
図1より、ND粗生成物はグラファイトが多く検出されたのに対し、ND(1)、(2)は何れもグラファイトがわずかに検出されたのみであり、硫酸と硝酸の混酸を用いた酸化処理によりグラファイトが除去できていることが確認された。
しかし、丸で囲った領域において、ND(1)はピークが検出されたかったのに対し、ND(2)はピークが多く検出されたことから、ND(1)は水洗で金属不純物が除去できたが、ND(2)は水洗しても金属不純物が除去できなかったことがわかった。
Claims (3)
- 下記酸化処理工程と、下記熟成工程とをこの順で有する、ナノダイヤモンドの製造方法。
酸化処理工程:表面の少なくとも一部がグラファイトで被覆されたナノダイヤモンドと、硫酸と硝酸の混酸とを反応させる工程
熟成工程:反応系内の硫酸濃度を85質量%以下に低下させた後、130℃以上の温度で1時間以上静置する工程 - 硫酸と硝酸の混酸が、硫酸と硝酸の混合比(前者/後者(質量))が60/40〜95/5である混酸である、請求項1に記載のナノダイヤモンドの製造方法。
- 酸化処理工程において、表面の少なくとも一部がグラファイトで被覆されたナノダイヤモンドと混酸との反応を、凝縮器を備えた反応器中において、0.5〜2atm下、凝縮器の冷媒温度を、反応圧力下における二酸化窒素の沸点を超え、100%硝酸の沸点より低い温度に設定した状態で行う、請求項1又は2に記載のナノダイヤモンドの製造方法。
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