以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
まず、本発明の一実施形態に係るハイブリッドショベルの構成について説明する。図1は、本実施形態に係るハイブリッドショベルを示す側面図である。
図1に示すように、ハイブリッドショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が取り付けられる。アタッチメントとしてのブーム4、アーム5、及びバケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3には、オペレータ(操作者)が搭乗するキャビン10が設けられると共に、後述するエンジン11(図3参照)等の動力源が搭載される。
また、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、通常作業(ショベル作業)に加えて、クレーン作業を行うことが可能に構成される。図2は、クレーン作業に用いる格納式フック6Fの態様を説明する図であり、図2(a)は、ショベル作業時における格納式フック6Fの状態(格納された状態)を表し、図2(b)は、クレーン作業時における格納式フックの状態(取り出された状態)を表す。
図2(a)、(b)に示すように、格納式フック6Fは、基端側(ワイヤ等を架けるフック部分の反対側)の所定軸を中心に回動可能にアーム5とバケット6の結合部分付近に取り付けられる。図2(a)に示すように、格納式フック6Fは、ショベル作業時において、他の構造部材(アーム5とバケット6を結合するリンク部材等)の間に格納される。そして、図2(b)に示すように、格納式フック6Fは、クレーン作業時において、上記所定軸を中心に回動させることにより、バケット6を全閉にする状態でフック部分を下方に向けた状態にすることが可能となり、バケット6を全閉にする状態でクレーン作業が行われる。
図3は、本実施形態に係るハイブリッドショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図中において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示される。
エンジン11と、アシストモータとしての電動発電機12は、減速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続される。減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続される。即ち、メイン駆動部であるエンジン11と、アシスト駆動部である電動発電機12は、減速機13を介して、メインポンプ14、パイロットポンプ15を駆動する。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。また、電動発電機12には、インバータ18を介して、後述する蓄電装置19(図5参照)を含む蓄電系120が接続される。
エンジン11は、本実施形態に係るハイブリッドショベルの主たる動力源としての内燃機関であり、例えば、ディーゼルエンジンである。エンジン11は、本実施形態に係るハイブリッドショベルの起動中において、常時運転される。
電動発電機12は、蓄電系120から供給される電力により電動アシスト運転が可能な電動機の機能と、エンジン11の動力により発電運転が可能な発電機の機能の双方を有する。本実施形態における電動発電機12は、インバータ20により交流駆動される。電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータ等により構成することができる。
減速機13は、上述の如く、2つの入力軸と1つの出力軸を有し、2つの入力軸のそれぞれにエンジン11及び電動発電機12の駆動軸が接続されると共に、1つの出力軸にメインポンプ14の駆動軸が接続される。かかる構成により、メインポンプ14の負荷が高い場合(エンジン11の出力以上の負荷である場合)は、電動発電機12が電動アシスト運転を行い、エンジン11の出力に加えて、電動発電機12の出力がメインポンプ14に伝達される。一方、メインポンプ14の負荷が低い場合(エンジン11の出力より小さい負荷である場合)は、エンジン11の出力が減速機13を経由して電動発電機12に伝達され、電動発電機12が発電運転を行う。
なお、電動発電機12による電動アシスト運転(力行運転)と発電運転を切り替える制御は、後述するコントローラ30により実行される。
メインポンプ14は、高圧油圧ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給する油圧ポンプであり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。メインポンプ14は、斜板の角度(傾転角)を変更することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量、即ち、ポンプ出力を変化させることができる。メインポンプ14の斜板は、レギュレータ(不図示)により制御される。レギュレータは、電磁比例弁(不図示)に対する制御電流の変化に対応して、斜板の傾転角を変化させる。例えば、制御電流を増加させることにより、レギュレータは、斜板の傾転角を大きくして、メインポンプ14の吐出流量を多くする。また、制御電流を減少させることにより、レギュレータは、斜板の傾転角を小さくして、メインポンプ14の吐出流量を少なくする。
なお、レギュレータ(電磁比例弁)の制御電流は、後述するコントローラ30からの制御指令により設定(変更)される。また、メインポンプ14直後の高圧油圧ライン16には、メインポンプ14の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ14bが設けられる。吐出圧力に対応する信号(吐出圧力信号)は、後述するコントローラ30に出力される。
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して各種油圧制御機器にパイロット圧を供給するための油圧ポンプであり、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、ハイブリッドショベルにおける油圧系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、操作装置26に対する操作入力に応じて、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)、油圧モータ1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の各種アクチュエータに供給する油圧(流量)を制御する。以下の説明では、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9を集合的に「油圧アクチュエータ」と称する場合がある。
操作装置26は、各種アクチュエータ(油圧アクチュエータ、及び後述する電動アクチュエータとしての旋回用電動機21)を操作するための操作手段である。操作装置26は、パイロットライン25から供給されるパイロット圧(1次側のパイロット圧)をオペレータによる操作量、操作方向等の操作内容に応じたパイロット圧(2次側のパイロット圧)に変換して出力する。操作装置26は、油圧ライン27、28を介して、コントロールバルブ17、圧力センサ29にそれぞれ接続される。
なお、コントロールバルブ17は、操作装置26から出力される2次側のパイロット圧に応じて、各油圧アクチュエータに対応するスプール弁を動かし、メインポンプ14が吐出する作動油を各油圧アクチュエータに供給する。圧力センサ29は、操作装置26から入力される2次側のパイロット圧を電気信号に変換し、かかる電気信号を後述するコントローラ30に出力する。
操作装置26は、レバー、ペダル等を含む。例えば、レバーにより旋回機構2(後述する旋回用電動機21)、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、及びバケット6(バケットシリンダ9)の操作が行われてよい。また、ペダルにより下部走行体1(油圧モータ1A、1B)の操作が行われてよい。
また、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、旋回機構2が電動化され、旋回機構2(上部旋回体3)を旋回駆動する旋回用電動機21を有する。電動アクチュエータである旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続される。旋回用電動機21の回転軸21Aには、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、かかる旋回用電動機21(回転軸21A)の回転角等を検出する回転角センサ22を有する。
旋回用電動機21は、旋回機構2を旋回駆動する力行運転と、旋回機構2を回生制動(回生電力を発生させて旋回制動)する回生運転の双方を実現可能に構成される。力行運転の際、旋回用電動機21の動力が旋回減速機24により増力され(駆動トルクが増大され)、旋回機構2(上部旋回体3)が旋回駆動される。また、回生運転の際(上部旋回体3を旋回減速させる際)、上部旋回体3の慣性回転力が旋回減速機24を介して旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させる(上部旋回体3が旋回制動される)。本実施形態に係る旋回用電動機21は、インバータ20により交流駆動される。旋回用電動機21は、例えば、IPMモータを含んで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生制動時に旋回用電動機21による発電電力を増大させることができる。
回転角センサ22は、旋回用電動機21の回転位置(回転角)、回転速度等を検出する検出手段である。回転角センサ22は、例えば、レゾルバ、エンコーダ等、旋回用電動機21の回転角、回転速度等を検出可能な任意のセンサであってよい。回転角センサ22は、旋回用電動機21の回転角、回転速度に対応する検出信号をコントローラ30に出力する。
メカニカルブレーキ23は、旋回機構2(上部旋回体3)を旋回制動する機械的な制動手段である。メカニカルブレーキ23は、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させ、上部旋回体3の停止状態を保持することができる。また、メカニカルブレーキ23は、旋回機構2(上部旋回体3)が旋回する状態で作動することにより、旋回機構2(上部旋回体3)を減速させ、停止させることができる。ここで、図4を用いて、メカニカルブレーキ23について詳細に説明する。
図4は、メカニカルブレーキ23の構成の一例を示す構成図である。図中において、図3と同様に、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線でそれぞれ示される。
図4に示すように、メカニカルブレーキ23は、ブレーキピストン23a、ブレーキシリンダ23b、ブレーキスプリング23c、ブレーキディスク23d、ブレーキプレート23e、ブレーキケース23fを含む。
なお、かかる構成に対応する部品は、例えば、旋回用電動機21と旋回減速機24との間の同一ハウジング内に配置されてもよいし、旋回減速機24の内部(例えば、高速段側の減速機と低速段側の減速機の間)に配置されてもよい。
ブレーキピストン23aは、ブレーキシリンダ23bに内挿され、回転軸21A方向に伸縮可能に設けられる。ブレーキピストン23aは、ブレーキシリンダ23bにパイロットポンプ15からパイロット圧が供給されることにより、縮小方向に作動する。これにより、後述するブレーキディスク23dとブレーキプレート23eを回転軸21A方向に離間させ、メカニカルブレーキ23を解除状態にすることができる。即ち、ブレーキシリンダ23bにパイロット圧を供給することにより、メカニカルブレーキ23を解除状態にすることができる。
ブレーキスプリング23cは、ブレーキピストン23aに対する伸張方向の付勢力を発生させる。これにより、ブレーキシリンダ23bにパイロット圧が供給されない状態で、後述するブレーキディスク23dとブレーキプレート23eを面接触させ摩擦力による制動力を発生させることができる。即ち、ブレーキシリンダ23bへのパイロット圧の供給を停止することにより、メカニカルブレーキ23を作動状態にすることができる。
ブレーキディスク23dは、旋回用電動機21の回転軸21Aと一体に設けられ、旋回用電動機21の回転に伴い、回転する。ブレーキディスク23dは、回転軸21A方向に移動可能な状態で、例えば、スプライン結合を介して回転軸21Aと結合される。また、ブレーキプレート23eは、回転軸21A方向に移動可能な状態で、例えば、スプライン結合を介して固定部であるブレーキケース23fの内面に結合される。回転軸21A(旋回用電動機21)と一体で回転するブレーキディスク23dと固定部であるブレーキケース23fに結合されるブレーキプレート23eとがブレーキスプリング23cの付勢力により面接触することで、制動力(制動トルク)が発生する。
また、メカニカルブレーキ23は、レバーロック切替弁23Va、ブレーキ切替弁23Vbを含む。
レバーロック切替弁23Vaは、パイロットポンプ15からブレーキシリンダ23bにパイロット圧を供給する油圧回路上に設けられ、オペレータによるゲートロックレバー(不図示)の操作に応じて、電磁ソレノイドのON/OFF切替が行われる電磁切替弁である。レバーロック切替弁23Vaは、パイロットポンプ15からブレーキシリンダ23bにパイロット圧を供給する油圧回路上、パイロットポンプ15とブレーキ切替弁23Vbとの間に設けられ、かかる油圧回路の連通状態と非連通状態を切り替える。図中では、ゲートロックレバーが下ろされた状態(電磁ソレノイドのOFF状態)が示され、パイロットポンプ15から供給されるパイロット圧は、レバーロック切替弁23Vaにより遮断され、油圧回路は非連通状態になっている。レバーロック切替弁23Vaは、ゲートロックレバーが引き上げられた状態でかかる油圧回路を連通させ、パイロットポンプ15から供給されるパイロット圧は、ブレーキ切替弁23Vbに供給される。
なお、ゲートロックレバーには、リミットスイッチが接続され、ゲートロックレバーが引き上げられることにより該リミットスイッチから信号が出力され、レバーロック切替弁23Vaは、該信号が入力されることで連通状態になる。また、ゲートロックレバーは、キャビン10内の操縦席への乗降部に設けられるゲートの開閉操作を行うための操作部であり、ゲートロックレバーを引き上げることにより該ゲートが閉じられ、ゲートロックレバーが下ろされると該ゲートが開放される。即ち、ゲートロックレバーが引き上げられた状態は、オペレータが操縦席に着座し、操縦可能な状態にあると判断できる。そのため、ゲートロックレバーが引き上げられた場合にのみパイロット圧がブレーキシリンダ23bに供給されることにより、意図しないメカニカルブレーキ23の解除を防止している。また、レバーロック切替弁23Vaは、パイロットライン25の最上流位置に配置されている。これにより、ゲートロックレバーが引き上げられた場合にのみパイロット圧が操作装置26に供給されることになり、操作装置26への意図しない操作入力による各油圧アクチュエータの作動を防止している。
ブレーキ切替弁23Vbは、後述するコントローラ30から入力されるメカニカルブレーキ23の作動指令信号に応じて、電磁ソレノイドのON/OFF切替が行われる電磁切替弁である。ブレーキ切替弁23Vbは、パイロットポンプ15からブレーキシリンダ23bにパイロット圧を供給する油圧回路上、レバーロック切替弁23Vaとブレーキシリンダ23bとの間に設けられ、かかる油圧回路の連通状態と非連通状態を切り替える。図中では、コントローラ30からの作動指令信号が入力されない状態(電磁ソレノイドのOFF状態)が示されており、パイロットポンプ15からレバーロック切替弁23Vaを介して供給されるパイロット圧は、ブレーキ切替弁23Vbを通過してブレーキシリンダ23bに供給される。即ち、かかる油圧回路は連通状態になっている。ブレーキ切替弁23Vbは、コントローラ30から入力される作動指令信号に応じて電磁ソレノイドがONされることにより、かかる油圧回路を非連通状態にし、レバーロック切替弁23Vaを介してパイロットポンプ15から供給されるパイロット圧を遮断する。これにより、上述の如く、ブレーキスプリング23cが伸張してブレーキピストン23aが伸張方向に作動し、ブレーキディスク23dとブレーキプレート23eを面接触させ、メカニカルブレーキ23が作動する。
メカニカルブレーキ23は、通常(旋回用電動機21を正常運転できる状況等で)、オペレータによる操作装置26の操作が行われない場合に、旋回機構2(上部旋回体3)の停止状態を保持する機能を実現する。また、メカニカルブレーキ23は、緊急時(旋回用電動機21を正常運転できない状況等)において、旋回状態にある旋回機構2(上部旋回体3)を旋回制動して減速・停止させる機能を実現する。かかるメカニカルブレーキ23の動作の詳細については、後述する。
なお、メカニカルブレーキ23の作動により発生する制動トルク(最大制動トルク)は、重量体である上部旋回体3の停止状態を保持するための性能を比較的長期間(長い製品寿命で)保障する観点から、旋回用電動機21の最大トルクより十分に大きく設定される。
図3に戻り、旋回減速機24は、旋回用電動機21の出力(トルク)を減速させることにより、増力させる(トルクを増大させる)手段である。旋回減速機24は、旋回機構2と接続され、旋回用電動機21の出力を減速させて、直接、旋回機構2を旋回駆動する。即ち、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して、旋回機構2(上部旋回体3)を旋回駆動する。
蓄電系120は、インバータ18、20を介して、電動発電機12、旋回用電動機21の駆動電力を供給する電力供給手段であると共に、電動発電機12、旋回用電動機21の発電電力を蓄電(充電)する蓄電手段である。蓄電系120の詳細について、図5を用いて説明をする。
図5は、蓄電系120の構成の一例を示すブロック図である。蓄電系120は、一の蓄電部としての蓄電装置19、昇降圧コンバータ100、及び他の蓄電部としてのDCバス110を含む。
蓄電装置19は、充放電可能な任意の蓄電手段である。例えば、蓄電装置19は、リチウムイオンキャパシタ(Lithium−Ion Capacitor:LIC)、電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor:EDLC)等のキャパシタであってよい。また、蓄電装置19は、リチウムイオン電池(Lithium−Ion Battery:LIB)等の二次電池であってよい。以下、蓄電装置19としてキャパシタを採用することを前提に説明を続ける。
DCバス110は、定電圧の蓄電部であり、インバータ18、20と昇降圧コンバータ100の間に配置され、電動発電機12、蓄電装置19、及び旋回用電動機21の間での電力授受を制御する。
昇降圧コンバータ100は、蓄電装置19とDCバス110との間に配置され、電動発電機12、旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス110の電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える。
また、蓄電系120には、DCバス110の電圧値を検出するDCバス電圧検出部111と、蓄電装置19(キャパシタ)の電圧値及び電流値を検出するキャパシタ電圧検出部112及びキャパシタ電流検出部113が設けられる。DCバス電圧検出部111により検出されるDCバス電圧値と、キャパシタ電圧検出部112及びキャパシタ電流検出部113により検出されるキャパシタ電圧値及びキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。
図3に戻り、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、自身の駆動制御を実行するコントローラ30を有する。コントローラ30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、内部メモリ等を含むマイクロコンピュータ等により構成される。具体的には、内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムをCPU上で実行することにより、各種制御処理を実行する。
コントローラ30は、例えば、操作装置26への操作入力やエンジン11の回転数等に応じて、電動発電機12の駆動制御(電動発電機12による電動アシスト運転と発電運転を切り替える制御)を実行する。また、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100の駆動制御を実行する。具体的には、蓄電装置19の充電状態、電動発電機12の運転状態、及び旋回用電動機21の運転状態等に基づき、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作を切り替える制御(蓄電装置19の充放電制御)を行う。
なお、昇圧動作は、キャパシタの電気エネルギをDCバス110に移動させてDCバス110の電圧を上昇させる動作であり、降圧動作は、DCバス110の電気エネルギを蓄電装置19に移動させてDCバス110の電圧を降下させる動作である。また、電動発電機12の運転状態は、電動アシスト運転状態及び発電運転状態を含み、旋回用電動機21の運転状態は、力行運転状態及び回生運転状態を含む。また、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作を切り替える制御は、DCバス電圧検出部111、キャパシタ電圧検出部112、及びキャパシタ電流検出部113により、それぞれ検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流値に基づき実行される。
また、コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号(旋回機構2を旋回させる操作に対応する信号)を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。例えば、コントローラ30は、当該速度指令に対して、回転角センサ22から入力される旋回用電動機21の回転速度の検出値をフィードバックするフィードバック制御を実行する。そして、コントローラ30は、フィードバック制御により旋回用電動機21に発生させるトルクの制御指令(トルク指令)を生成し、当該トルク指令に応じてインバータ20を駆動することにより、旋回用電動機21の駆動制御(速度制御)を実行する。
また、コントローラ30は、上述したクレーン作業を実行する際の運転モードとして設定されるクレーン作業モードがオペレータにより選択される場合、クレーン作業モード特有の駆動制御を実行する。例えば、操作装置26(レバー)の操作量に対応する旋回機構2(上部旋回体3)の旋回速度を、通常(ショベル作業を行う場合)よりも低くなるように、旋回用電動機21の駆動制御を行う。また、操作装置26(レバー)の操作内容に関わらず、バケット6を全閉状態に維持する制御を実行する。
なお、コントローラ30には、オペレータがクレーン作業モードを選択するために設けられるモード選択スイッチ40が接続される。コントローラ30は、モード選択スイッチ40から出力されるクレーン作業モードの選択状態に関する信号を受信することで、クレーン作業モードが選択されているか否かを判断することができる。
また、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、傾斜センサS1、ブーム角度センサS2、アーム角度センサS3、バケット角度センサS4、ブーム圧センサS5等の各種センサを含む。
傾斜センサS1は、ハイブリッドショベルの水平面に対する2軸方向(前後方向及び左右方向)の傾斜角を検出するセンサである。傾斜センサS1には、例えば、液封入静電容量式傾斜センサ等、任意の傾斜センサが用いられてよい。検出される傾斜角はコントローラ30に出力される。
ブーム角度センサS2は、上部旋回体3におけるブーム4の支持部(関節)に設けられ、ブーム4の基準面(ハイブリッドショベルが水平状態にある場合の水平面)からの角度(ブーム角度)を検出する。ブーム角度センサS2には、例えば、ロータリポテンショメータ等、任意の角度センサが用いられてよく、後述するアーム角度センサS3、バケット角度センサS4についても同様である。検出されるブーム角度(に相当する検出信号)は、コントローラ30に出力される。
アーム角度センサS3は、ブーム4におけるアーム5の支持部(関節)に設けられ、ブーム4に対するアーム5の角度(アーム角度)を検出する。検出されるアーム角度(に相当する検出信号)は、コントローラ30に出力される。
バケット角度センサS4は、アーム5におけるバケット6の支持部(関節)に設けられ、アーム5に対するバケット6の角度(バケット角度)を検出する。検出されるバケット角度(に相当する検出信号)は、コントローラ30に出力される。
ブーム圧センサS5は、ブームシリンダ7の油圧(ブーム圧)を検出する既知の油圧検出手段である。検出されるブーム圧(に相当する検出信号)は、コントローラ30に出力される。
次に、本実施形態に係るハイブリッドショベルの特徴的な動作、即ち、緊急時(旋回用電動機21が正常運転できない場合)に旋回機構2(上部旋回体3)を停止させる動作(緊急停止動作)について説明する。
上述の如く、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、旋回機構2が電動化され、旋回機構2(上部旋回体3)は、旋回用電動機21により旋回駆動される。そのため、旋回状態にある旋回機構2(上部旋回体3)を減速・停止させる場合は、旋回用電動機21を駆動制御する(回生発電による制動トルクを発生させる)必要がある。
ところが、旋回用電動機21を正常運転することができなくなる事態が生じる場合がある。例えば、インバータ20、旋回用電動機21等に故障が発生すると、旋回用電動機21を正常運転することができなくなる。また、回転角センサ22に故障が発生した場合も同様であり、旋回機構2(上部旋回体3)を正常運転することができなくなる。よって、旋回用電動機21を駆動制御することにより旋回機構2(上部旋回体3)を停止させることができないため、旋回機構2(上部旋回体3)の停止状態を保持するために利用されるメカニカルブレーキ23により旋回機構2(上部旋回体3)を停止させる。また、蓄電系120に異常・故障が発生した場合やエンジン11、電動発電機12の異常・故障等で電動発電機12による発電が不能になった場合も同様にメカニカルブレーキ23により旋回機構2(上部旋回体3)を停止させる場合がある。以下、本実施形態に係る特徴的な動作である緊急停止動作について、詳しく説明する。
なお、旋回用電動機21を駆動制御することにより旋回状態にある旋回機構2(上部旋回体3)を停止させる態様を「正常停止」と称し、メカニカルブレーキ23により旋回状態にある旋回機構2(上部旋回体3)を停止させる態様を「緊急停止」と称する。また、メカニカルブレーキ23の作動状態の継続により旋回制動させる態様、即ち、メカニカルブレーキ23により最大制動トルクを作用させる旋回制動の態様を「メカニカルブレーキ23の通常作動」と称する。また、少なくとも通常作動時によりも旋回制動の程度を弱めてメカニカルブレーキ23を作動させる態様を「メカニカルブレーキ23の弱作動」と称する。
図6は、本実施形態に係るハイブリッドショベルによる緊急停止動作に対応するコントローラ30による緊急停止処理の一例を概念的に示すフローチャートである。当該フローチャートは、本実施形態に係るハイブリッドショベルの起動中において、所定時間間隔で実行される。
ステップS101にて、コントローラ30は、旋回機構2(上部旋回体3)を緊急停止すべき状態か否かを判定する。コントローラ30は、緊急停止すべき状態である場合、ステップS102に進み、緊急停止すべき状態でない場合、本フローチャートによる処理を終了する。
なお、旋回機構2(上部旋回体3)を緊急停止すべき状態は、上述の如く、インバータ20、旋回用電動機21、回転角センサ22等に異常・故障が発生して、旋回用電動機21を正常運転できない場合を含む。また、蓄電系120に異常・故障が発生した場合や電動発電機12による発電が不能になった場合等も含む。また、コントローラ30は、例えば、既知の自己診断方法により旋回用電動機21、インバータ20、回転角センサ22等の異常・故障の有無を判断することができる。また、コントローラ30は、入力される各種センサの検出値(インバータ20、昇降圧コンバータ100、蓄電装置19等の過電圧、過電流、温度、緊急停止信号)を処理して、旋回機構2(上部旋回体3)を緊急停止すべきか否かを判断してよい。
ステップS102にて、コントローラ30は、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する。具体的には、ハイブリッドショベルの作業姿勢が、メカニカルブレーキ23の通常作動による最大制動トルクが旋回機構2(上部旋回体3)に作用した際に、姿勢安定性に支障を来すレベルにあるか否かを判定する。コントローラ30は、作業姿勢が安定状態にあると判定する場合、ステップS103に進み。作業姿勢が安定状態にないと判定する場合、ステップS104に進む。ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かの判定手法は、後述する。
ステップS103にて、コントローラ30は、メカニカルブレーキ23を通常作動させて、本フローチャートによる処理を終了する。これにより、旋回機構2(上部旋回体3)に対して、メカニカルブレーキ23による最大制動トルクが作用し、旋回状態にある旋回機構2(上部旋回体3)を減速、停止させることができる。
一方、ステップS104にて、コントローラ30は、メカニカルブレーキ23を弱作動させる。かかるメカニカルブレーキ23の弱作動では、少なくとも通常作動時における旋回制動の程度より弱い、所定の強弱の程度(例えば、旋回用電動機21による最大トルク以下に設定される所定の制動トルク)で、旋回機構2(上部旋回体3)を旋回制動させる。これにより、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にない場合において、通常作動時よりも作用する制動トルクが小さくなるため、制動トルクやその反動トルクによりハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す可能性を抑制することができる。特に、メカニカルブレーキ23の弱作動により発生する制動トルクを旋回用電動機21による最大トルク以下に設定することにより、制動トルクやその反動トルクによりハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す可能性を更に抑制することができる。
コントローラ30は、例えば、作用する制動トルク(ブレーキピストン23aによるブレーキプレート23eへの押圧力)を制御することによりメカニカルブレーキ23の弱作動を実現してよい。また、コントローラ30は、メカニカルブレーキ23の作動時間(ブレーキ切替弁23Vbにおける電磁ソレノイドのON時間)を制御することによりメカニカルブレーキ23の弱作動を実現してもよい。また、その双方を制御することによりメカニカルブレーキ23の弱作動を実現してもよい。以下、図7を参照しつつ、メカニカルブレーキ23の弱作動の実現手法の一例について説明する。
図7は、メカニカルブレーキ23の弱作動の実現手法の一例を説明する図である。具体的には、メカニカルブレーキ23のON/OFF制御の態様を説明する図である。図中において、Tは、メカニカルブレーキ23の作動と解除を繰り返す周期を表し、τは、各周期Tにおけるメカニカルブレーキ23の作動時間を表す。
図7に示すように、メカニカルブレーキ23の作動(ブレーキ切替弁23Vbの電磁ソレノイドON)とメカニカルブレーキ23の解除(ブレーキ切替弁23Vbの電磁ソレノイドOFF)をデューティ比Duty(=τ/T)で繰り返す。この際、メカニカルブレーキ23の作動時間τを非常に短い時間に設定することにより、ブレーキディスク23dとブレーキプレート23eを滑らせながら制動トルクを発生させることが可能となり、旋回機構2(上部旋回体3)の急制動を抑制することができる。また、メカニカルブレーキ23の作動と解除を繰り返すことにより、メカニカルブレーキ23の各作動による制動トルクがデューティ比Dutyにより平滑化(平均化)される。そのため、メカニカルブレーキ23を通常作動させる場合(最大制動トルク)よりも制動トルクを低減させることができる。即ち、メカニカルブレーキ23のON/OFF制御により、旋回機構2(上部旋回体3)を減速・停止させるための制動トルクを、メカニカルブレーキ23を通常作動させる場合よりも小さくすることができる。
例えば、図6のステップS104における処理では、旋回用電動機21の最大トルク(発生可能な最大の制動トルク)以下に設定される所定の制動トルクが発生するように、所定のデューティ比Dutyを設定するとよい。これにより、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に影響を与えることなく、旋回機構2(上部旋回体3)を緊急停止させることができる。
なお、メカニカルブレーキ23のON/OFF制御により発生する制動トルクとデューティ比Dutyとの関係は、予め実験やシミュレーション等により定めることができる。
図8は、本実施形態に係るハイブリッドショベルによる緊急停止動作に対応するコントローラ30による緊急停止処理の他の例を概念的に示すフローチャートである。当該フローチャートは、本実施形態に係るハイブリッドショベルの起動中において、所定時間間隔で実行される。
本実施例では、旋回機構2の旋回速度をモニタリング可能な場合、即ち、回転角センサ22に異常・故障が発生していない場合において、オペレータのレバー操作に応じて、メカニカルブレーキ23を弱作動させる。
なお、ステップS201〜S203は、図6におけるステップS101〜S103と同様であるため、説明を省略し、ステップS204以降について説明を行う。
ステップS204にて、コントローラ30は、回転角センサ22(回転角センサ22とコントローラ30との通信線含む)に異常・故障が発生しているか否かを判定する。即ち、コントローラ30は、回転角センサ22から旋回機構2の旋回速度に対応する旋回用電動機21の回転速度を取得可能であるか否かを判定する。コントローラ30は、回転角センサ22に異常・故障が発生している場合、ステップS205に進み、回転角センサ22に異常・故障が発生していない場合、ステップS206に進む。
ステップS205にて、コントローラ30は、図6のステップS104と同様、少なくとも通常作動時における旋回制動の程度より弱い、所定の強弱の程度(例えば、旋回用電動機21による最大トルク以下に設定される所定の制動トルク)で、メカニカルブレーキ23を弱作動させる。
一方、ステップS206にて、コントローラ30は、レバー操作に対応する旋回制動を実現させる、即ち、レバー操作に対応する制動トルクを発生させる態様で、メカニカルブレーキ23を弱作動させる。コントローラ30は、上述の如く、レバー操作に対応する速度指令に対して回転角センサ22により検出される旋回用電動機21の回転速度をフィードバックしてトルク指令を生成するフィードバック制御を実行している。そのため、かかるトルク指令と同様の制動トルクが発生するようにメカニカルブレーキ23を弱作動させることにより、オペレータによるレバー操作に対応する旋回制動を実現させることができる。
例えば、図7に示したメカニカルブレーキ23のON/OFF制御を用いる場合、コントローラ30は、レバー操作に応じて旋回用電動機21が発生する制動トルクと同等の制動トルクが発生するように、デューティ比Dutyを設定するとよい。具体的には、上述の如く、旋回用電動機21を駆動制御する場合と同様の態様でトルク指令を生成し、当該トルク指令に対応する制動トルクが発生するようにデューティ比Dutyを設定する。これにより、ハイブリッドショベルのオペレータに違和感を与えないようにしつつ、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に影響を与えずに旋回機構2(上部旋回体3)を緊急停止させることができる。
なお、旋回機構2(上部旋回体3)を緊急停止すべき状態が発生した場合、キャビン10内に設けられる所定のインジケータを点灯させる等により、オペレータにかかる異常状態の発生を通知する。これにより、オペレータは、インジケータを確認することで、旋回機構2(上部旋回体3)を旋回停止させるレバー操作を行うため、かかるレバー操作に応じて、旋回機構2(上部旋回体3)を緊急停止させることができる。
次に、上述した図6のステップS102、図8のステップS202でハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する手法について説明する。
まず、第1の例として、実施されている作業内容に基づき、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する手法について説明する。
本実施例にて、コントローラ30は、ハイブリッドショベルによりクレーン作業が実施されている場合、安定状態にない(安定度が低い)と判定し、それ以外(ショベル作業)が実施されている場合、安定状態にあると判定する。
クレーン作業の場合、重量物を吊り下げることも多くなるため、メカニカルブレーキ23の作動による制動トルクが作用すると、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す可能性がある。そのため、クレーン作業が実施されている場合、安定状態にないと判定する。
なお、クレーン作業が実施されているか否かは、クレーン作業モードが選択されているか否か、即ち、モード選択スイッチ40から出力されるクレーン作業モードの選択状態に関する信号を受信したか否かにより判断されてよい。また、ブーム圧センサS5により検出されるブーム圧からクレーン作業が実施されているか否かを判断することもできる。
続いて、第2の例として、ハイブリッドショベルの傾斜レベルに基づき、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する手法について説明する。
本実施例にて、コントローラ30は、傾斜センサS1により検出される傾斜角θが所定閾値θth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
比較的大きく傾斜した傾斜地で作業している場合に、メカニカルブレーキ23の作動による最大制動トルクが作用すると、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す可能性がある。そのため、所定閾値θthを上限として設定し、傾斜角θが所定閾値θth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
続いて、第3の例として、旋回機構2(上部旋回体3)の旋回速度に基づき、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する手法について説明する。
本実施例にて、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回速度RSが所定閾値RSth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
旋回機構2(上部旋回体3)の旋回速度RSが大きくなる程、メカニカルブレーキ23の作動による最大制動トルクが作用した際に、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す可能性が高くなる。そのため、所定閾値RSthを上限として設定し、旋回速度RSが所定閾値RSth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
なお、コントローラ30は、回転角センサ22が故障していない場合、回転角センサ22から受信する検出信号に基づき、旋回機構2(上部旋回体3)の旋回速度RSを取得する。また、コントローラ30は、回転角センサ22が故障している場合、自身が生成する速度指令に基づき、旋回機構2(上部旋回体3)の旋回速度RSを取得(推定)する。
続いて、第4の例として、バケット6の位置(ハイブリッドショベルの作業半径)に基づき、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する手法について説明する。
本実施例にて、コントローラ30は、上部旋回体3(例えば、上部旋回体3とブーム4の結合位置)に対するバケット6の水平方向における位置(作業半径R)に基づき、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する。具体的には、作業半径Rが所定閾値Rth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
作業半径Rが比較的大きい場合(バケット6の位置が上部旋回体3から比較的離れている場合)、メカニカルブレーキ23の作動による最大制動トルクが作用すると、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す可能性がある。即ち、メカニカルブレーキ23の作動による最大制動トルクの反動として、ブーム4、アーム5、バケット6及びバケット6内の掘削された土等の荷重により上部旋回体3に対して大きなモーメントが作用する可能性がある。そのため、作業半径Rが所定閾値Rth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
なお、作業半径Rは、予めコントローラ30の内部メモリ等に格納されるブーム4、アーム5の長さと、ブーム角度センサS2、アーム角度センサS3、バケット角度センサS4の検出値等に基づき算出することができる。
続いて、第5の例として、作業負荷に基づき、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する手法について説明する。
本実施例にて、コントローラ30は、作業負荷LDが所定閾値LDth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
作業負荷LDが比較的高い状況(例えば、掘削作業等を行っている状況)で、メカニカルブレーキ23の作動による最大制動トルクが作用すると、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す可能性がある。即ち、メカニカルブレーキ23の作動による最大制動トルクの反作用として、バケット6に対して大きな外力が作用し、結果として、上部旋回体3に対して大きなモーメントが作用する可能性がある。そのため、作業負荷LDが所定閾値LDth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
なお、作業負荷LDは、吐出圧力センサ14bにより検出されるメインポンプ14の吐出圧力Pから算出してよい。また、作業負荷LDの代わりに、吐出圧力Pを用いて、吐出圧力Pが所定閾値Pth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定してもよい。
続いて、第6の例として、バケット6や格納式フック6Fに掛かる荷重に基づき、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する手法について説明する。
本実施例にて、コントローラ30は、バケット6内の掘削された土等や格納式フック6Fに吊られた物体等の荷重W(バケット6や格納式フック6Fに掛かる荷重W)が所定閾値Wth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
バケット6や格納式フック6Fに掛かる荷重Wが大きくなる程、メカニカルブレーキ23の作動による最大制動トルクが作用する際に、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す可能性が高くなる。即ち、メカニカルブレーキ23の作動による最大制動トルクの反動として、バケット6内の掘削された土等や格納式フック6Fに吊られた物体等の荷重により上部旋回体3に対して大きなモーメントが作用する可能性がある。そのため、バケット6や格納式フック6Fに掛かる荷重Wが所定閾値Wth以上である場合、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
なお、コントローラ30は、ブーム圧センサS5により検出されるブーム圧等に基づき、荷重Wを算出することができる。
また、コントローラ30は、上述した第1〜第6の例の一部又は全部に基づき、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定してよい。例えば、図6のステップS101にて、第1〜第6の例に基づく判定結果のうち、少なくとも1つでハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定される場合、図6のステップS103に進むようにしてよい。
続いて、第7の例として、上述した第1〜第6の例における判定指標の一部又は全部を総合的に評価して、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する手法について説明する。
上述した第1〜第6の例における判定指標は、(1)作業内容(クレーン作業)(2)傾斜角θ(3)旋回速度RS(4)作業半径R(バケット6の位置)(5)作業負荷LD(6)荷重Wである。本実施例にて、コントローラ30は、(1)〜(6)の判定指標の一部又は全部に基づき、総合的に、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定する。
例えば、(1)〜(6)の判定指標それぞれに関して、複数段階の安定度に対するレベル(安定度が高い方からレベル1、レベル2、...)を設定する。より具体的には、(1)の判定指標に関しては、クレーン作業以外にレベル1、クレーン作業にレベル2を割り付ける。また、(2)〜(6)の判定指標に関して、レベル1〜レベル4までの4段階の安定度の範囲を区切る3つの閾値を設定し、判定指標と3つの閾値との大小関係から各判定指標に対する安定度に対するレベルを決定する。傾斜角θを例にとれば、所定閾値θth1、θth2、θth3(θth1<θth2<θth3)を設ける。そして、傾斜角θが所定閾値θth1より小さい場合をレベル1、所定閾値θth1以上且つ所定閾値θth2より小さい場合をレベル2、所定閾値θth2以上且つ所定閾値θth3より小さい場合をレベル3、所定閾値θth3以上である場合をレベル4とする。
その上で、各判定指標(1)〜(6)に対する安定度のレベルを総合的に評価する。例えば、各判定指標(1)〜(6)に対する安定度のレベル値(1〜4の何れか)の合計値(加算値)或いは乗算値を算出し、算出される合計値或いは乗算値が所定値以上である場合は、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にないと判定する。
なお、判定指標(1)〜(6)の全部を用いる必要はなく、判定指標(1)〜(6)の一部を用いて、ハイブリッドショベルの作業姿勢が安定状態にあるか否かを判定してよい。
このように、本実施形態に係るハイブリッドショベルは、上部旋回体3を緊急停止すべき状態が発生した場合、作業モード(クレーン作業モード)、各種センサの検出値、及び旋回用電動機21への制御指令値(速度指令)等に基づき、旋回制動の強弱の程度を決定する。そして、決定された強弱の程度で旋回機構2(上部旋回体3)の旋回制動が行われるように、メカニカルブレーキ23を作動させる。具体的には、作業モード、各種センサの検出値、及び制御指令値に基づき、作業姿勢の安定度を判断し、かかる安定度に応じて旋回制動の強弱の程度を決定する。
これにより、ハイブリッドショベルの作業姿勢の安定度(安定状態にあるか否か)に応じて、制動トルクが調整されるため、旋回機構2(上部旋回体3)の緊急停止により、ハイブリッドショベルの姿勢安定性に支障を来す事態を抑制することができる。
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、ハイブリッドショベルを例示して説明を行ったが、かかる構成には限定されない。即ち、旋回機構を電動化したショベルであればよく、例えば、外部電源からの電力供給により駆動される電動ショベルであってもよい。