以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
まず、本発明の一実施形態に係るショベルの全体構成及び駆動系の構成について説明する。図1は、一実施形態に係るショベルの側面図である。
図1に示すショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回自在に搭載されている。上部旋回体3上には、ブーム4の一端が回動自在に取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5の一端が回動自在に取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が回動可能に取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
本実施形態に係るショベルは、電動機を用いた電動旋回用の旋回駆動装置が搭載されているハイブリッド型のショベルであって、旋回駆動装置に供給する電力を蓄積する蓄電装置を有する。しかしながら、本発明は、電動旋回を採用した任意のショベルに適用でき、例えば外部電源から電力が供給される電気駆動式ショベルにも適用できる。
図2は、一実施形態に係るショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを太い実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を細線でそれぞれ示す。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての変速機13の入力軸に接続されている。また、この変速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
また、電動発電機12には、インバータ18及び昇降圧コンバータ100を介して蓄電装置としてのバッテリ19が接続される。このインバータ18と昇降圧コンバータ100との間は、DCバス110によって接続されている。
また、DCバス110には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続されている。DCバス110は、バッテリ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行うために配設されている。DCバス110には、DCバス電流値を検出するためのDCバス電流検出部111が接続されている。
そして、昇降圧コンバータ100には、コンバータ電流値を検出するためのコンバータ電流検出部106が接続されている。バッテリ19には、バッテリ電流値を検出するためのバッテリ電流検出部107が接続されている。インバータ20には、インバータ電流値を検出するためのインバータ電流検出部108が接続されている。これらの検出部106乃至108、111によって検出される各電流値は、コントローラ30に入力される。
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23(ブレーキ機構)、及び旋回減速機24が接続される。
また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
操作装置26には、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及びレバー操作検出部としての圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、ショベルの電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
このようなショベルは、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型ショベルである。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は変速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、ショベルの運転中は常時運転される。
電動発電機12は、電動(アシスト)運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は変速機13の他方の入力軸に接続される。
変速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が電動(アシスト)運転を行い、電動発電機12の駆動力が変速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が変速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と発電運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生するポンプである。この油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。この油圧操作系の構成については後述する。
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧をオペレータの操作入力に応じて制御する。コントロールバルブ17は、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。オペレータの操作入力は、キャビン10内の運転席に着座しながらレバーを操作する手動操作、又は、遠隔地からの遠隔操作によって行われる。
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
インバータ18は、上述の如く電動発電機12と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12を電動運転している際には、必要な電力をバッテリ19と昇降圧コンバータ100からDCバス110を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12を発電運転している際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス110及び昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19に充電する。図2には、旋回用電動機(1台)及びインバータ(1台)を含む実施の形態を示すが、その他マグネット機構や旋回機構部以外の駆動部として備えることで、複数の電動機及び複数のインバータをDCバス110に接続するようにしてもよい。
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100を介してインバータ18及びインバータ20に接続されている。バッテリ19は、電動発電機12の電動(アシスト)運転と旋回用電動機21の力行運転との少なくともどちらか一方が行われている場合に、電動(アシスト)運転又は力行運転に必要な電力を供給するための電源である。また、バッテリ19は、電動発電機12の発電運転と旋回用電動機21の回生運転の少なくともどちらか一方が行われている場合に、発電運転又は回生運転によって発生した電力を電気エネルギとして蓄積するための電源である。
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるバッテリ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりバッテリ19の充放電制御を行う。この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、バッテリ電流検出部107によって検出されるバッテリ電流値に基づき、コントローラ30によって行われる。
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が旋回減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、旋回減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサである。具体的には、レゾルバ22は、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出する。これにより、レゾルバ22は、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出することにより、上部旋回体3の回転角度及び旋回方向が導出される。また、図2にはレゾルバ22を取り付けた形態を示すが、電動機の回転センサを有しないインバータ制御方式を用いてもよい。
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、コントローラ30からの指令信号に基づき、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。これによって、上部旋回体3を保持する。
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力として上部旋回体3へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、上部旋回体3で発生した回転を増速して旋回用電動機21に機械的に伝達することができる。
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置であり、レバー26A及び26Bとペダル26Cを含む。レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、上部旋回体3の運転席近傍に設けられる。レバー26Bは、ブーム4及びバケット6を操作するためのレバーであり、運転席近傍に設けられる。また、ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)をオペレータの操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
レバー26A及び26Bとペダル26Cの各々が操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御される。これによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
レバー操作検出部としての圧力センサ29は、操作装置26の操作による、油圧ライン28内の油圧の変化を検出する。そして、圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。この電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。これにより、操作装置26に入力される操作量を的確に把握することができる。また、ここでは、レバー操作検出部としての圧力センサを用いるハイブリッド型ショベルについて説明するが、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
次に、旋回駆動装置40の制御機構について、図3を参照しながら説明する。図3は、図1に示すショベルに搭載される旋回駆動装置の制御機構を示すブロック図である。
図3に示すように、旋回用電動機21には、メカニカルブレーキ23を間に挟んで旋回減速機24が接続される。メカニカルブレーキ23は、ブレーキディスク60、ブレーキプレート62、ピストン64、スプリング66、及びシリンダ68を含んで構成される。ブレーキディスク60の上下両側には、ブレーキプレート62が配置されている。ブレーキが作動状態にあるときは、ピストン64はスプリング66により押圧されて常に上側のブレーキプレート62に押し付けられている。上側のブレーキプレート62がピストン64により押圧されると、ブレーキディスク60は上下のブレーキプレート62により挟まれて押圧される。ブレーキディスク60が上下のブレーキプレート62により挟まれて押圧されることで、ブレーキディスク60の回転を阻止しようとするブレーキ力がブレーキディスク60に作用する。そして、油圧ライン57を介してシリンダ68に、パイロットポンプ15から作動油を供給すると、ピストン64が作動油の油圧により押し上げられて、ブレーキプレート62を押圧する力が無くなり、ブレーキは解除される。パイロットポンプ15は、電磁比例弁50を介して、油圧ライン57によって、シリンダ68に接続されている。
コントローラ30は、オペレータの操作入力に応じて電磁比例弁50の制御を行う。具体的には、オペレータが、旋回用電動機21を回転させる旋回用レバー26Aを操作し上部旋回体3を旋回させる場合、オペレータの操作入力に基づき、コントローラ30は、電磁比例弁50に対し指令信号を送信する。この指令信号に対応して電磁比例弁50が制御される。オペレータによる旋回用レバー26Aの操作とは、旋回用レバー26Aを中立位置から左旋回方向又は右旋回方向の何れかの方向に傾倒させる場合の操作のことをいう。この場合には、上部旋回体3が左右何れかの方向に旋回されることになるため、コントローラ30から電磁比例弁50に対し指令信号を送信し、電磁比例弁50の弁開度を開状態とする。電磁比例弁50の弁開度が開状態となると、油圧ライン57を介してシリンダ68に、パイロットポンプ15からの作動油が供給されるため、メカニカルブレーキ23が解除される。これに対し、オペレータが旋回用レバー26Aを中立位置に戻し、上部旋回体3の旋回を停止させる場合には、コントローラ30から電磁比例弁50への指令信号は解除され、電磁比例弁50の弁開度が閉状態となる。この場合は、シリンダ68への作動油の供給は遮断され、メカニカルブレーキ23が作動することになる。
メカニカルブレーキ23の作動は、旋回用電動機21の回生による制動の途中で行ってもよいし、同時であってもよい。旋回用電動機21の回生による制動により発電された電力が十分であると判断されてから、メカニカルブレーキ23を作動させてもよい。コントローラ30は、電磁比例弁50への指令信号のタイミングを制御することができる。
ここで、コントローラ30によるレバー操作の状況の判断は、コントローラ30に所定周期毎に入力されるレバーの操作量に基づいて行われる。具体的には、前回のレバーの操作量と現在のレバーの操作量を比較することにより判断する。例えば、レバーの操作量を中立位置からの傾倒量と定義する。中立位置のレバーの操作量をゼロとし、前回のレバーの操作量と現在のレバーの操作量を導出する。これによって、レバー操作の状況を判断する。
次に、メカニカルブレーキ23を作動させるタイミングについて、図5を参照しながら説明する。図4は、図3に示す旋回駆動装置の制御機構の制御処理を説明するフローチャートである。
図4に示すように、上部旋回体3の旋回速度Vが第1速度Va以下の低速になったときに(ステップS1のYES)、メカニカルブレーキ23が作動するように制御してもよい(ステップS2)。上部旋回体3の旋回速度Vが第1速度Va以下になるまでは(ステップS1のNO)、メカニカルブレーキ23を解除の状態とする(ステップS3)。すなわち、上部旋回体3の旋回速度Vが第1速度Vaを超えて旋回しているときには、メカニカルブレーキ23を解除の状態とする。このように、最初は旋回用電動機21の回生による制動を行い、上部旋回体3の旋回速度Vが低速になった時点で、メカニカルブレーキ23を補助的に作動させてもよい。
本構成によれば、メカニカルブレーキ23が摩耗するのを低減することができる。旋回用レバー26Aを中立位置に戻した時点で、既に、上部旋回体3の旋回速度Vが第1速度Va以下の低速である場合には、メカニカルブレーキ23を用いずに、旋回用電動機21の回生による制動のみによって、上部旋回体3の旋回を停止させてもよい。
なお、メカニカルブレーキ23の作動のタイミングは、旋回速度Vによって行う場合に限られない。所定時間の経過後に、メカニカルブレーキ23を作動させる構成としてもよい。
上述のように、メカニカルブレーキ23の制動力を設定することにより、上部旋回体3が相対的に早い状態から減速を開始する場合に、メカニカルブレーキ23を併用する。これによって、上部旋回体3を早く減速することができる。
また、上部旋回体3が相対的に遅く旋回している場合は、メカニカルブレーキ23を併用させない。このように、上部旋回体3の旋回速度によって、メカニカルブレーキ23の作動、非作動を行うことにより、メカニカルブレーキ23の寿命が向上するとともに、回生による制動より早く停止することが可能となる。また、油圧モータで旋回を行う油圧ショベルの停止感にマッチングすることができる。このように、或る速度Va(所定値)を条件に、メカニカルブレーキの作動、非作動(解除)を切り換えるという簡易な制御によっても、油圧モータで旋回を行う油圧ショベルの停止感にマッチングすることができる。
このように、上部旋回体3を停止させる際に、旋回用電動機21の回生による制動に、メカニカルブレーキ23による制動を補助ブレーキとして用いることによって、上部旋回体3の停止を速やかに行うことができる。
図5は、図1に示すショベルに搭載される旋回駆動装置の制御機構の変形例を示すブロック図である。
本実施形態に係るハイブリッド型ショベルに搭載されるメカニカルブレーキ23は、制動力を調整することができる。この調整は、電磁比例弁50の弁開度を調整してパイロットポンプ15からシリンダ68への作動油の供給量を制御することによって行う。これにより、スプリング66がブレーキプレート62を押圧する力を調整する。所望の押圧力に対応する作動油がシリンダ68内に供給された場合は、電磁比例弁50の弁開度を閉状態にする。図5に示すように、電磁比例弁50とシリンダ68を接続する油圧ライン57には圧力センサ52が設けられている。所望の作動油量がシリンダ68内に供給されたか否かは、この圧力センサ52の検出値に基づきコントローラ30が判断する。圧力センサ52の検出値に基づき、所望の押圧力に対応する作動油量がシリンダ68内に供給されたことを、コントローラ30が判断する場合は、電磁比例弁50への指令信号を解除して弁開度を閉状態にする。
旋回用電動機21にはレゾルバ22が接続されており、レゾルバ22からの出力信号により検出される上部旋回体3の実際の旋回速度Vに基づき、メカニカルブレーキ23の制動力を複数の制動力に制御することができる。詳細は後述する。
本構成を有することにより、メカニカルブレーキ23を複数の制動力に制御することができる。この制動力は、上部旋回体3の旋回速度Vに応じて連続的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。
また、パイロットポンプ15から油圧ライン57を介してシリンダ68内に供給される作動油の圧力を制御することにより、旋回用電動機21の回生による制動に加えて、摩擦トルクを徐々に発生させることもできる。シリンダ68内に供給される作動油の圧力は、コントローラ30からの指令信号によって、電磁比例弁50の弁開度を制御することにより行う。例えば、メカニカルブレーキ23のブレーキプレート62周辺の潤滑油の温度を温度センサ(不図示)により計測し、温度センサの検出値に基づく粘性の変化から摩擦トルクの変化を演算し、その演算結果に基づき、電磁比例弁50の弁開度を制御する。この演算は、コントローラ30のCPUにより行う。
続いて、図5の実施形態に係る旋回駆動装置40'のコントローラ30の制御処理について、図6を参照しながら説明する。図6は、図5に示す旋回駆動装置の制御機構の制御処理の一例を説明するフローチャートである。
減速時に、旋回速度Vが第2速度Vx以上であるか否かの判断が行われる(ステップS11)。
そして、旋回速度Vが第2速度Vx以上であると判断される場合には(ステップS11のYES)、コントローラ30によって、旋回速度Vが第3速度Vy(>Vx)以上であるか否かの判断が行われる(ステップS12)。旋回速度Vが第3速度Vy以上、の高速で旋回している場合は(ステップS12のYES)、メカニカルブレーキ23の制動力を強く設定して強い制動力を発生させる(ステップS15)。一方、旋回速度Vが第2速度Vx未満である場合は(ステップS11のNO)、メカニカルブレーキ23の制動力を弱く設定して弱い制動力を発生させる(ステップSS13)。
なお、旋回速度Vが第2速度Vx以上で第3速度Vyよりも小さい場合には(ステップS11のYES、ステップS12のNO)、メカニカルブレーキ23を中程度に設定して中程度の制動力を発生させる(ステップS14)。
このように、上部旋回体3の旋回速度Vに応じて、メカニカルブレーキ23の制動力を複数の制動力に制御可能な構成にしてもよい。これによって、旋回速度Vに応じた適切な制動力を得ることができる。このように、上部旋回体3の速度に応じて、メカニカルブレーキ23の制動力を可変に制御してもよい。メカニカルブレーキ23の制動力は、圧力によって制御する。
なお、本フローチャートにおいては、上部旋回体3の旋回速度Vに応じて、3段階に制動力を設定する場合を例示して説明したが、この構成には限定されない。3段階以上に制動力を設定してもよいし、制動力を無段階に設定してもよい。さらに、段階的ではなく、旋回速度Vに応じて連続的に制動力を設定してもよい。
また、本発明は、上部旋回体3の旋回速度に基づいて、メカニカルブレーキ23の制動力を設定する場合に限定されない。旋回用電動機21の回転速度、関連する2次的な情報等に基づいて、メカニカルブレーキ23の制動力を設定する構成としてもよい。なお、本実施形態においては、制動力が固定されているメカニカルブレーキ23を除外するものではない。
次に、図5の実施形態に係る旋回駆動装置40'のコントローラ30の制御処理の別の例について、図7を参照しながら説明する。図7は、図5に示す旋回駆動装置の制御機構の制御処理の変形例を説明するフローチャートである。
本実施形態に係るショベルは、上部旋回体3を駆動させる旋回用レバーの操作と旋回情報に応じて、メカニカルブレーキ23の作動及び非作動を切り換えることができる。こので、旋回情報には、上部旋回体3の旋回速度、旋回方向、旋回電動機21の電流値情報等が含まれる。
以下では、上部旋回体3が旋回している場合において、オペレータが旋回用レバー26Aを上部旋回体3の旋回方向と逆方向まで操作した場合、所謂、逆ノッチ操作を行った場合について説明する。
まず、減速時に、旋回用レバー26Aが逆ノッチ操作されているか否かが判断される(ステップS21)。逆ノッチ操作が行われていると判断する場合に(ステップS21のYES)、メカニカルブレーキ23を作動させる(ステップS22)。逆ノッチ操作が行われているか否かは、上部旋回体3の旋回速度、旋回方向、旋回電動機21の電流値情報等に基づいて、コントローラ30が判断する。逆ノッチ操作により、旋回用レバー26Aを中立位置に戻すよりも、旋回用電動機21の回生による制動が大きくなる。この回生による制動に、メカニカルブレーキ23による制動が作用するため、より速やかに上部旋回体3を停止させることができる。
オペレータによって逆ノッチ操作が行われたか否かの判断は、上部旋回体3の回転角度及び旋回方向、又は前回のレバーの操作量に対する現在のレバーの操作量の変位を比較することによって行う。
コントローラ30には、レゾルバ22からの出力信号に基づき、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度及び回転方向が入力され、これによって、上部旋回体3の回転角度及び旋回方向が導出される。また、コントローラ30には、旋回用レバー26Aの操作量に対応する電気信号が入力され、これによって、前回及び現在のレバーの操作量が導出される。
次に、図5の実施形態に係る旋回駆動装置40'のコントローラ30のさらに異なる制御処理について、図8を参照しながら説明する。図8は、図3に示す旋回駆動装置の制御機構の制御処理のさらなる変形例を説明するフローチャートである。
蓄電系に何等かの異常が生じた場合は蓄電系に旋回用電動装置の回生によるエネルギーを供給することは好ましくない。したがって、この場合にはメカニカルブレーキを作動させて、回生による蓄電系へのエネルギを減少させることが好ましい。尚、異常が生じた状態においてこのような制御を行うことも可能であるし、異常が生じうると予想される場合に、回生による蓄電系へのエネルギを減少させることにより、未然に異常を防止することができる。以下具体的に説明する。
コントローラ30は、各部の電流値の監視を行っている。具体的には、コントローラ30には、昇降圧コンバータ電流値Ic、バッテリ電流値Ib、インバータ電流値Iv、及びDCバス電流値Idがそれぞれ入力される。これによって、コントローラ30は上記電流値を取得する(ステップS31乃至S34)。より詳細には、昇降圧コンバータ電流値Icは昇降圧コンバータ電流検出部106によって検出される(図2参照)。バッテリ電流値Ibはバッテリ電流検出部107によって検出される(図2参照)。インバータ電流値Ivはインバータ電流検出部108によって検出される(図2参照)。DCバス電流値IdはDCバス電流検出部111によって検出される(図2参照)。
そして、上記電流値のうち、何れかの電流値が許容電流値を超えている場合に、メカニカルブレーキ23を作動させる(ステップS39)。例えば、まず、Icが昇降圧コンバータ100の許容電流値Icaを超えているか否かが判断され(ステップS35)、超えている場合には(ステップS35のYES)、メカニカルブレーキ23を作動させる。
IcがIcaを超えていない場合には(ステップS35のNO)、Ivがインバータ20の許容電流値Ivaを超えているか否かが判断され(ステップS36)、超えている場合には(ステップS36のYES)、メカニカルブレーキ23を作動させる。
そして、IvがIvaを超えていない場合には(ステップS36のNO)、Ibがバッテリ19の許容電流値Ibaを超えているか否かが判断され(ステップS37)、超えている場合には(ステップS37のYES)、メカニカルブレーキ23を作動させる。
そして、IbがIvbを超えていない場合には(ステップS37のNO)、IdがDCバスの許容電流値Idaを超えているか否かが判断され(ステップS38)、超えている場合には(ステップS38のYES)、メカニカルブレーキ23を作動させる。
このように、昇降圧コンバータ100、バッテリ19、インバータ20、及びDCバス110の電流値の確認に優先順位を任意に付けて、確認を行うことができる。
上記電流値のうち何れかの電流値に異常がある場合には、上部旋回体3を速やかに停止させることができる。これによって、旋回用電動機21等に過剰な電流が供給され続けるのを未然に防止することができる。
上記電流値異常によるメカニカルブレーキ23の作動は、旋回用レバー26Aの操作量Xの如何にかかわらず実行される。
また、蓄電系(蓄電装置、コンバータ、DCバスを含む)については電圧も監視している。蓄電装置の電圧及びDCバスの電圧である。コンバータがDCバスの電圧が所定範囲に入るように電圧制御を行う。しかし、コンバータがエネルギを吸収できない状態にあったり、過渡的に発DCバス電圧が高い状態になることがある。(たとえば、アシストモータが発電した場合)このようなDCバスの電圧が高い状態であって、旋回モータから回生エネルギを受けると、許容電圧を超えてしまうと判断される場合に、メカニカルブレーキを作動させる。DCバスに流入する回生エネルギが減少し、許容電圧内に収めることが可能になる。蓄電装置(キャパシタ)の電圧が高い場合も同様に考えられる。
このように、回生エネルギを吸収できない、または吸収する悪影響が出ると想定される合にメカ的にブレーキを加えることで回生エネルギを減少させるという保護機能を備えると好ましい。
次に、図5の実施形態に係る旋回駆動装置40'のコントローラ30のさらに異なる制御処理について、図9を参照しながら説明する。図9は、図3に示す旋回駆動装置の制御機構の制御処理のさらなる変形例を説明するフローチャートである。
コントローラ30はバッテリ19の残存容量Qbの監視を行っており、バッテリ19の充電状態を判断することができる。
コントローラ30には、バッテリ19から直接、残存容量Qbが入力される。これによって、コントローラ30は、バッテリ19の残存容量Qbを取得する(ステップS41)。次いで、コントローラ30は、バッテリ19が満充電状態であるか否か、の判断を行う。具体的には、コントローラ30において、バッテリ19の残存容量Qbが所定値(閾値)以上であるか否か、の判断が行われる。(ステップS42)。そして、バッテリ19の残存容量Qbが所定値以上の場合は最大蓄電容量Qbaに達していると判断し(ステップS42のYES)、メカニカルブレーキ23を作動させる(ステップS43)。旋回用電動機21の回生電力をバッテリ19に蓄電することができないため、旋回用電動機21の回生による制動を行うことなく、メカニカルブレーキ23を作動させて上部旋回体3を停止させる。
以上の通り、蓄電系の管理情報に基づいてメカニカルブレーキを動作させることで、蓄電系を保護することができる。
また、バッテリ19の残存容量Qbではなく、バッテリ19の電圧値の監視を行ってもよい。
図10は、図1に示すショベルに搭載される上部旋回体の速度波形の一例を示す図である。横軸は、時間Tを示し、縦軸は、上部旋回体3の旋回速度Vを示す。実線部は、時間に対する本実施形態の速度波形の推移を示し、破線部は、時間に対する本実施形態に係る旋回駆動装置の制御機構を用いない場合の速度波形の推移を示す。
オペレータが旋回用レバー26Aを徐々に傾倒させて、時刻T0から上部旋回体3の旋回速度Vが上昇していき、速度V1になった時点で減速させて、上部旋回体3を停止させる場合について説明する。
本実施形態に係る旋回駆動装置の制御機構を用いない場合、すなわち、旋回用電動機21の回生により上部旋回体3の制動を行う場合、図10の破線部に示すように、上部旋回体3は時刻T2で停止する。これに対し、本実施形態に係る旋回駆動装置の制御機構を用いる場合は、図10の実線部に示すように、上部旋回体3は時刻T1で停止させることができる。
旋回用電動機21の回生による制動に、メカニカルブレーキ23による制動を補助ブレーキとして用いることにより、上部旋回体3の停止を速やかに行うことができる。
以上、ハイブリッド型ショベルに設けられる旋回駆動装置を実施形態例により説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではない。他の実施形態例の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
本実施形態では、ブレーキ機構として、ブレーキの解除又は作動を油圧によって切り換えるメカニカルブレーキ23を設けた旋回駆動装置を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、図11に示す旋回駆動装置40''のように、比例ソレノイド70によって、上側のブレーキプレート62をブレーキディスク60に押し付ける構成としたブレーキであってもよい。この場合には、コントローラ30はレゾルバ22からの検出信号に基づき上部旋回体3の旋回速度Vを取得し、その旋回速度Vに適切な押し付け力Fになるようにプランジャ72の飛び出し量を制御する。これにより、旋回速度Vに応じた適切な押し付け力Fをブレーキプレート62に付与することができる。
プランジャ72の飛び出し量やブレーキプレート62の変位を検知する位置センサ71によって、ブレーキの制動力を演算し、上部旋回体3の旋回速度Vに応じて、この押し付け力Fを制御し複数の制動力に制御してもよい。或いは、比例ソレノイド70の押し付け力を検知するフォースセンサによってブレーキの制動力の検知を直接行い、複数の制動力に制御してもよい。なお、これらのセンサに限定されず、ブレーキの制動力を検出できれば、センサの種類は問わない。