以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
図1は打込機10の全体構成を示す斜視図である。打込機10は、本体部分が、筒形状のシリンダケース12と、シリンダケース12の筒状の軸線方向から略直交する方向に突出したハンドル13と、シリンダケース12の上側開口部を閉じるためのヘッドカバー14と、シリンダケース12の下側開口部に固定されるテールカバー15(15a、15b)により、その外殻形状が決定される。ハンドル13は、シリンダケース12の中心線(軸線)に対して交差する方向にその長手方向が延びるように配置される。ハンドル13の付け根付近の下側には止具を射出するためのトリガレバー19が設けられ、後方側付近には打込機10をベルト等に吊すためのフック89が設けられる。テールカバー15は、シリンダケース12の下側を閉鎖すると共に中央に貫通口を有するフランジ部15aと、フランジ部15aと一体に成形され釘の射出方向に延びる略管状のノーズ部15bにより構成される。ノーズ部15bには、ドライバブレード(後述)が通過して止具を射出口24aに向けて案内するための案内通路(後述)が設けられる。
ノーズ部15bの案内通路の下側には、射出通路が形成されたプッシュレバーピース23が設けられる。プッシュレバーピース23はねじ部材65によって連結アーム241の接続部243に取り付けられるもので、プッシュレバーピース23の下端部は釘の射出口24aが形成される。プッシュレバーピース23の射出口24aが、釘の打ち込まれる対象物Wに当接する部材となる。
ノーズ部15bの前方側には、連結アーム241の可動部分を覆うためのノーズカバー160が設けられる。ノーズ部15bの後方側には、止具の供給手段たるマガジン16が設けられる。マガジン16は、止具としての釘(図示せず)を複数収容するもので、複数の釘は連結した状態で並べられ、つまみ52を操作して釘ガイド53内に釘列の最初の釘が案内通路の内部に入るようにセットされる。マガジン16には、長さや釘頭の形状等の異なる釘を収容可能であって、その内部では、シート連結釘又は針金連結釘のいずれかがネイルホルダ(図示せず)に装着され、先頭の釘から1本ずつ案内通路に供給される。セットできる釘としては、スムース釘、スクリュー釘、リング釘等である。また釘の頭形状はカップ状又はフロア状のもの等を使用できる。釘の長さは、例えば25〜50mm程度の様々な長さの釘を装填できる。本実施例の打込機10においては、連結釘がロール状に巻かれた状態でマガジン16内を移動する構造であるが、マガジン16の給送路を直線状に配置して、一列に連結された釘や止具を給送する構成のマガジンを用いても良い。ノーズ部15bの後方かつマガジン16の下方付近には、射出される釘のガイドをする補助ガイド部材60が揺動可能に軸支される。補助ガイド部材60はノーズ部15b側に固定される支持軸59を中心に、接触部61と可動片58がシーソー状に揺動可能なように軸支され、接触部61(61a、61b)が射出通路内に露出することにより、釘の姿勢を矯正する機能を果たす。
図2は本実施例の打込機10の側面図であり、打撃機構部分を断面図にて示す図である。シリンダケース12内及びヘッドカバー14内に亘ってシリンダ25が設けられる。シリンダ25は、その内部においてピストン35を軸方向に対して摺動可能に保持するものである。ピストン35の下側にはドライバブレード36が延びるように接続される。ここではピストン35と棒形状のドライバブレード36が一体的に製造され、これらが止具の打撃子を構成する。ピストン35の外周側であってシリンダ25との間にはシール部材37が介在される。シリンダ25はシリンダケース12に対して、シリンダ25の中心線A1方向にわずかに移動可能である。フランジ26がシリンダ25の軸方向中央付近の外周面に設けられ、フランジ26とシリンダケース12の間にはシール部材27が設けられ、フランジ26の上側及び下側空間を区画する。
ヘッドカバー14は、筒形状のガイド部29を有し、筒形状のメインバルブ30がヘッドカバー14の内部であって、ガイド部29の径方向外側に配置される。メインバルブ30は中心線A1方向にわずかに移動可能である。金属製の圧縮バネ等の弾性部材31は、メインバルブ30を中心線A1方向に付勢してバルブシート28に押し付ける。ヘッドカバー14とメインバルブ30との間にはメインバルブ室32が形成される。ストッパ33は、ガイド部29の内外に亘って配置され、メインバルブ30が移動するとポート34を開閉し、ポート34が開くとピストン35の上側空間と排気室39とが接続される。ピストン35の上側空間の圧縮空気は、排気室39から図示されていない排気通路を通って外部に放出される。ポート34が閉じると、ピストン35の上側空間と排気室39とが遮断される。排気室39には作業者により手動で空気を抜くためのリリーフバルブ38が設けられる。排気室39と蓄圧室17とは、ヘッドカバー14の一部であって筒形状のセパレータ14aによって仕切られている。
ピストン35の上側空間は、ストッパ33とピストン35との間であり、かつ、メインバルブ30の内側に設けられる。作業者がトリガレバー19を引くと蓄圧室17とピストン35の上側空間が連通されるため、圧縮空気がピストン35の上側空間に流れ込むことによりピストン35が下死点側に向かって一気に移動する。ピストン35が下死点まで移動するとダンパ40に衝突する。ダンパ40は、合成ゴム等の弾性体を略円筒状に成形したものであり中心に軸孔40aを有し、シリンダ25内からテールカバー15内に亘って配置される。ピストン35の下側空間は、シリンダ25内でピストン35とダンパ40との間に形成される。シリンダ25のフランジ26よりも下側に複数の通気口43が設けられ、ピストン35の下方向の移動に伴い、ピストン35の下側空間から通気口43を介して戻し空気室44への空気の流入を許容する。通気口43の外側には合成ゴム製のOリング等の逆止弁45が設けられる。逆止弁45は、ピストン35の下側空間の空気圧で弾性変形し、シリンダ25の内部から通気口43を介して戻し空気室44側への空気の流れだけを許容する。フランジ26とテールカバー15との間に形成される戻し空気室44は、空気の力によりピストン35を下死点から上死点に移動させるために用いられる。シリンダ25の下端に近い箇所には、通気口43とテールカバー15との間を常時連通する通気口46が設けられる。
蓄圧室17は、ハンドル13内からシリンダケース12内に亘って設けられるもので、プラグ18に着脱される図示しないエアホースにより供給される圧縮空気を貯める空間である。ハンドル13のシリンダケース12の近傍には、トリガバルブ機構21が設けられる。トリガバルブ機構21は、プランジャ22を移動させることにより、蓄圧室17からトリガバルブ機構21を通る空気通路の開閉弁を制御するもので、プランジャ22はトリガレバー19によってその開閉が操作される。本実施例のトリガレバー19の操作は、プッシュレバー機構と連動して許容又は阻止される構造とされ、プッシュレバーピース23が対象物Wに対して押しつけられている状態でのみ、トリガレバー19がプランジャ22を移動させることができるように構成される。換言すると、プッシュレバーピース23が対象物Wに対して押しつけられていない場合には、作業者がトリガレバー19を引いてもプランジャ22を移動させることができないように構成される。プッシュレバーピース23が対象物Wに対する押し込みと、トリガバルブ機構21との連動を可能とするために、プッシュレバーピース23の上下方向の移動を伝達するための連結アーム241がトリガレバー19の近傍まで延びるように配置される。つまり、プッシュレバーピース23が上方向に移動すると、連結アーム241も上方向に移動する。また、プッシュレバーピース23の対象物Wへの押しつけが解除されると、図示しないバネの付勢力によって連結アーム241は下方に戻され、プッシュレバーピース23も下方向に移動する。
プッシュレバーピース23は、止具の射出口を形成するコンタクト部材となるもので、テールカバー15に対して中心線A1の軸線方向に摺動可能なようにして連結アーム241の下端部分(図1の接続部243)に取り付けられる。ねじ部材65を緩めたり締め付けたりすると、プッシュレバーピース23は連結アーム241に対して着脱可能である。連結アーム241は射出方向と同方向又は逆方向に摺動可能なようにテールカバー15にて保持される。テールカバー15は、シリンダケース12の下側開口を塞ぐフランジ部15aと、ドライバブレード36の案内通路48を形成するためのノーズ部15bが形成された部材であって、金属の一体成形により製造される。案内通路48は、一般に略円形や矩形の孔部形状を有し、ドライバブレード36と概ね整合する形状に形成される。本実施例においてはノーズ部15bの内部に設けられた断面通路が略円形の孔部が例示されている。プッシュレバーピース23の先端には射出通路24が設けられており、案内通路48から射出通路24に至る部分が釘の移動通路となり、射出口24aから釘が射出される。
テールカバー15の上端付近に形成される軸孔47は、中心線A1と同心状に配置され、初期状態においてはドライバブレード36の先端が軸孔47内に位置する。ノーズ部15bの案内通路48の側方に配置されたマガジン16から、釘が1本ずつ案内通路48に供給される。釘の頭部は、その外径が軸部よりも大きく、案内通路48の内径よりも小さい。ドライバブレード36は、シリンダ25の中心線A1に対して垂直な平面における断面形状が円形である。ドライバブレード36の外径は、案内通路48の内径よりもわずかに小さく形成され、釘の打撃時にはドライバブレード36は案内通路48を貫通してプッシュレバーピース23の射出通路24の内部にまで移動する。
次に、打込機10の使用例を説明する。圧縮空気は蓄圧室17に供給され、蓄圧室17の空気圧は大気圧よりも高い。トリガレバー19に操作力が加えられておらず、かつ、プッシュレバーピース23が対象物Wから離れていると、ピストン35の上側空間は排気室39を介してハウジングの外に接続される。蓄圧室17の空気圧はメインバルブ30に加わり、メインバルブ30を中心線A1方向でヘッドカバー14に近づける向きの第1の力が生じる。また、蓄圧室17の空気圧はメインバルブ室32に伝達されており、メインバルブ30は、メインバルブ室32の空気圧に応じた力及び弾性部材31の力により、ヘッドカバー14から離れる向きの第2の力を受ける。このため、メインバルブ30は、第1の力と第2の力との差により、バルブシート28に押し付けられる。つまり、メインバルブ30はポート34を閉じており、蓄圧室17の空気圧はピストン35の上側空間に伝達されない。このときのピストン35の上側空間は大気圧である。
ピストン35はピストン35の下側空間の空気圧で中心線A1方向に付勢され、ピストン35は、図2のようにストッパ33に接触して上死点で停止している。ピストン35が上死点で停止していると、ドライバブレード36の先端の打撃面36dは軸孔47に位置する。そして、トリガレバー19に操作力が加えられ、かつ、プッシュレバーピース23が対象物Wに押し付けられ、プッシュレバーピース23が初期位置から移動すると、メインバルブ室32がハウジングの外に接続され、メインバルブ室32は大気圧になる。すると、メインバルブ30は、弾性部材31の力と、蓄圧室17の空気圧に応じた力との差により、ヘッドカバー14に向けて移動する。このため、メインバルブ30がバルブシート28から離れて開き、ポート34が閉じられる。この結果、蓄圧室17の空気圧でピストン35の上側空間の空気圧が上昇し、ピストン35及びドライバブレード36が下降する。ドライバブレード36が案内通路48に進入すると、ドライバブレード36は図示しない釘の頭部を打撃する。ドライバブレード36の下降に伴い、釘は案内通路48で長手方向に移動して射出通路24へ進入し、射出口24aを通って対象物Wに打ち込まれる。この際、ドライバブレード36の先端は射出口24aとほぼ同位置付近まで到達する。
ピストン35が上死点から下死点に向けて移動中、ピストン35の下側空間の空気は、通気口46を通り、戻し空気室44に進入する。ピストン35の移動中、シール部材37が、中心線A1方向でストッパ33と通気口43との間に位置していると、逆止弁45は通気口43を閉じている。ピストン35の移動中、シール部材37が、通気口43とダンパ40との間に移動すると、逆止弁45は通気口43を開き、ピストン35の上側空間の空気の一部は通気口43を通り、戻し空気室44に進入する。このようにして、戻し空気室44及びピストン35の下側空間の空気圧が上昇する。
そして、ドライバブレード36が釘を打ち込んだ後、作業者はトリガレバー19に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバーピース23の端部を対象物Wから離す。すると、プッシュレバーピース23及び連結アーム241は、図示しないバネの付勢力で初期位置に戻り停止する。さらに、メインバルブ室32と、図示されていない大気通路とが遮断され、蓄圧室17とメインバルブ室32とが接続され、メインバルブ室32の空気圧が上昇する。このため、メインバルブ30がヘッドカバー14から離れてポート34が開く。このように、ピストン35の上側空間は排気室39、及び図示されていない排気通路を介してハウジングの外につながり、ピストン35の上側空間は大気圧となる。この結果、フランジ26が戻し空気室44の圧力を受けてシリンダ25が上昇し、ストッパ33に接触し、ピストン35は上死点で停止する。そして、バルブシート28がメインバルブ30に押し付けられてポート34が閉じられる。
ドライバブレード36が釘を打ち込んだ後に次の打撃を行うには、作業者が必ずトリガレバー19を戻さなければならない“単発モード”に加えて、釘を打ち込んだ後に作業者がトリガレバー19に対する操作力を維持したまま、プッシュレバーピース23を、対象物Wの次の打撃位置に押し付けることにより連続的に打撃操作を行うことができるようにした“連発モード”が設けられる。このモード切替は、トリガレバー19の近傍に設けられた単連切替レバー20(図1参照)を操作することで行う。
図3は打込機10のプッシュレバーピース23付近の部分拡大断面図であって、打ち込み前の状態(ピストン35が上死点位置にある状態)を示す。プッシュレバーピース23は、ノーズ部15bに対して矢印85で示すように所定の範囲内で移動可能であり、図3はプッシュレバーピース23を対象物W等に押し当てている状態、即ちプッシュレバーピース23が上死点側に移動している状態である。プッシュレバーピース23は内周側に射出通路24が形成され、先端に射出口24aを有する。射出通路24の中心軸は、案内通路48の中心線A1と一致するか、あるいはわずかに偏心させて配置され、それらの内径は好ましくは同径であって、共に使用可能な最大径の釘の頭部の外径よりも大きい径とする。プッシュレバーピース23の上方に延びる外筒部23gは、テールカバー15の案内通路48の下側部分の外周側に位置する。プッシュレバーピース23の外筒部23gの内周面とテールカバー15の外周面との間には、わずかな隙間Gが設けられ、プッシュレバーピース23がテールカバー15に対して上下の方向に良好に摺動可能なように構成される。プッシュレバーピース23は、先端を対象物Wに押し当てた際に連結口24cが案内通路48の案内口48aに接近することにより、案内通路48から射出通路24に至る釘の移動通路を形成する。この上死点側に移動した状態にて釘が打ち込み可能であり、案内通路48の先端側に射出通路24が同軸上に、またはわずかに偏心した状態で並ぶことにより、釘の移動経路が確立される。射出時のノーズ部15bの下端位置(案内口48aの位置)と射出通路24の上端位置(連結口24c)の距離Sは、打ち込み深さダイヤル245による設定によって調整可能であるが、座屈防止の観点からはできるだけ小さい方が好ましい。
射出通路24の後方側には切り欠き部231が形成され、切り欠き部231の部分を塞ぐようにして補助ガイド部材60が配置される。補助ガイド部材60は釘を補助的にガイドするものであり、ノーズ部15bに固定される支持軸59によってわずかな回転角だけ揺動可能なように軸支される。補助ガイド部材60は支持軸59の一方側の接触部61がテールカバー15のストッパ部(図示せず)に接触することにより、その揺動角が制限される。また、支持軸59の他方側の可動片58が図示しないスプリング等の弾性力を用いた付勢手段によって矢印67の方向に付勢される。この付勢によって、接触部61は案内通路48の中心線A1に近づく方向に付勢され、案内通路48から釘による圧力を受けたらスプリングの弾性力に抗して接触部61を中心線A1から離れる方向に移動する。このように接触部61が、案内通路48の内面とほぼ同一面になるように配置されることにより、案内される釘の頭部が射出通路24より外側に逸脱して大きく傾くことを抑制できる。つまり、補助ガイド部材60は、案内通路48内で移動する釘を、中心線A1に対して近づける方向に移動させる要素であって、釘の射出方向に向けた姿勢を矯正するガイド手段としての機能を果たす。プッシュレバーピース23の先端面23aの内側が射出口24aを画定する。尚、ここでは図示していないが先端面23aが相手材の打ち込み箇所付近を痛めないように合成樹脂製のキャップ部材(図示せず)プッシュレバーピース23の下端に設けるようにしても良い。
図4はプッシュレバーピース23単体の形状を示す斜視図である。プッシュレバーピース23は、連結アーム241(図1参照)と共にノーズ部15bに対して射出方向と平行にスライド可能に保持される部材である。本実施例のプッシュレバーピース23は、ノーズ部15bに形成された案内通路48(図3参照)と同軸上に、プッシュレバーピース23にて形成される射出通路24を直列に並べることにより釘の移動通路を形成するものである。プッシュレバーピース23の射出通路24よりも右側には、連結アーム241に固定するために上方に延びる取付基台237が設けられる。取付基台237の前側の面が図1で示した接続部243の後面に接するようにして取り付けられる。取付基台237の上下方向中央付近にはねじ部材65(図2参照)を貫通させるためのネジ穴238が形成される。射出通路24よりも左側には、ノーズ部15bの外周に設けられた案内レールたるキー153と係合する凹状のレールガイド236が形成される。補助ガイド部材60(図1参照)の接触部61は、射出通路24に面するように配置されるため、その配置を可能とするためにプッシュレバーピース23の円筒状の壁面の一部を、中心線A1と平行な面で切り落としたような切り欠き部231が形成される。切り欠き部231の外縁位置の外側は、平行な摺動面233が形成される。プッシュレバーピース23は金属の一体成形により構成され、例えば鋼材の鋳造によって製造される。
プッシュレバーピース23の先端側面23bには、プッシュレバーピース23を対象物Wに押しつけた際の滑り止め用の凸部が形成される。その上側には、図示しない合成樹脂製のキャップ部材を装着するための凹凸部たるフランジ部23f、フランジ部23dが形成される。尚、フランジ部23f、フランジ部23dの形状は、キャップ部材を取り付けるために形成されたものであるので、キャップ部材を用いない場合はフランジ部23d、23fを形成しなくても良い。フランジ部23d、23fの上方であって、マガジン16が取り付けられる後方側には、斜め上方に延在するように延びる覆い部234が形成される。覆い部234は、補助ガイド部材60の接触部61の下端付近の揺動空間を確保するために形成されるものであり、切り欠き部231の下側の狭幅部の下側及び左右両側縁部に実質的に連続するような壁部を形成したものである。切り欠き部231のうち覆い部234よりも上側の部分、即ち左右方向の幅が上側に行くにつれて広くなる部分には、縁部を上方向及び内方向(中心線A1に近づく方向)に延長させたリブ235a、235bが形成される。リブ235a、235bは、射出される釘の一部、例えば頭部又は尖った先端部が射出通路24から逸脱しにくくなるように保持するための部位である。リブ235a、235bはプッシュレバーピース23の成形用の型を改良することで容易に製造できる。
図5は、打込機10のプッシュレバーピース23付近の部分斜視図であって、図1の拡大図である。プッシュレバーピース23はねじ部材65によって連結アーム241の接続部243に装着される。その装着の際に、凸部239が取付穴243aと嵌合するように、且つ、レールガイド236がキー153と嵌合するように装着される。ノーズ部15bには軸方向に延びるキー153と、連結アーム241の接続部243を後方側から押さえるための押さえ部154が設けられる。これらキー153と押さえ部154の作用により、プッシュレバーピース23とノーズ部15bが周方向に相対回転することが無く軸方向に良好に摺動可能となる。ノーズ部15bのキー153の上方には、釘の供給機構を軸支するためのヒンジ151、152が設けられる。補助ガイド部材60はノーズ部15bの取付ボス155に軸支され、補助ガイド部材60の等幅案内面61aと拡幅案内面61bは射出通路24の内部に面するように配置される。ここで、等幅案内面61aは左右の幅がほぼ平行な平面状であるが、拡幅案内面61bは曲面状に湾曲した形状とされる。
次に図6を用いて、図2のA−A部の断面図を説明する。(1)はリブ235a、235bを形成しない場合のプッシュレバーピースの形状を示す従来例の図であり、(2)はリブ235a、235bを形成した場合の本実施例のプッシュレバーピース23を示す。接触部61の形状は、左右の幅がほぼ平行な等幅案内面61aと、左右の幅が広がる拡幅案内面61bにより決定されるが、これらの形状は従来例と本実施例で同じである。接触部61の形状に対応して、(1)では切り欠き部131が、(2)では切り欠き部231が形成されるが、これらの外縁形状は、射出側に位置し、軸方向に略平行な幅を有する細長い長方形状の狭幅部132a、232aと、狭幅部132a、232aから反射出側に向けて左右方向の幅が広がる拡張部132b、232bと、拡張部132b、232bに接続されノーズ部15bの内径よりもさらに大きい横幅を有する広幅部132c、232cによって形成される。従来の(1)のプッシュレバーピース123では、ノーズ部115bの下端に逃がし溝(図3の49に相当)が形成されていないため、切り欠き部131の形状は、ノーズ部115bの下端を避けるように形成される。このため、切り欠き部131の左右方向の幅が広がる拡張部132bの軸方向の長さが短くなり、また傾斜も急になる。さらに、ノーズ部115bの下端位置と拡張部における切り欠き部131の縁と、補助ガイド部材60との距離が空いた状態となる。
これに対して本実施例のプッシュレバーピース23では、(2)の点線で示す(1)の切り欠き部の位置からさらに上方に向けてリブ235a、235bを形成したことにより、切り欠き部131の拡張部を上方向に延ばしたような形状とすることができ、(1)に比べて隙間250を狭くすることができた。通常、隙間250はアジャスタ機構のダイヤル245(図1参照)を調整することによりその大きさが変わる。ダイヤル245を調整してプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も近づくようにセットした状態(最沈状態)にて打ち込みを行うと、プッシュレバーピース23側に形成したリブ235a、235bが、ノーズ部15bの下端部と接触してしまう虞がある。しかしながら、本実施例では図3にて示したように、ノーズ部15bの下端の後方側角部に逃げ溝部49を設けたので、(1)の従来例に比べてリブ235a、235bの分だけ補助ガイド部材60とプッシュレバーピース23との間の隙間を埋めることができる。ノーズ部115b、15bに対する接触部61の位置は同じであるため、(2)の本実施例の構造ではノーズ部15bとリブ235a、235bが接触することなく、正常に打ち込み動作を行うことができる。
図7は本実施例の打込機10において、釘の逸脱等が最も生じやすい条件を想定した場合の釘打ち状態を示す図である。ドライバブレード36は、図2に示す通常時の位置からピストン35の下降によって、案内通路48から射出通路24を通り、図示の状態から後に、先端の打撃面36dが射出通路24に入り込み相手材たる対象物Wの表面にまで届く。このドライバブレード36の射出の前に、案内通路48には打ち込まれる釘50が給送されているために、ドライバブレード36の先端面36dが釘50の頭部50aを打撃することにより釘50が対象物Wに打ち込まれる。ドライバブレード36の先端面36dが最も下降した位置(下死点)におけるプッシュレバーピース23の射出口24aとの高さのずれは、プッシュレバーピース23の高さ位置のアジャスタ機構のダイヤル245(図1参照)によって調整することができる。
図7は釘50がこの場合の可能性として斜めに打ち込まれる状態を想定したものである。この状態では打撃途中においてドライバブレード36が下方向に移動中に、給送された釘50が斜めに傾いた状態となり、先端部50cが前方側にずれて、頭部50aが後方側にずれた状態となる。ドライバブレード36は、釘50が傾いた状態のまま頭部50aを打撃するが、その場合の釘50の軸部50bを通る中心軸線がD1であり、ドライバブレード36(又は案内通路48)の中心線A1に対してθだけ傾く状態で対象物Wに打ち込まれる。しかしながら、仮にこのように釘の頭部50aが後方側に倒れた場合は、リブ235a、235bとの当接によって傾きが制限されることになり、リブ235a、235bが形成されない図6(1)のようなプッシュレバーピースに比べると釘50の傾斜角θが大きく改善される。尚、ここで釘50は、頭部50aがリブ235a、235bに接触する側に傾斜しているが、これとは逆方向への傾斜、即ち先端部50cが後方側に傾斜して接触部61付近と接触しながら通過するような場合であっても、釘50の先端部50cがプッシュレバーピース23と補助ガイド部材60との間の隙間に入り込んでしまって釘が座屈する虞を大幅に低減させることができた。
次に図8〜図12を用いてプッシュレバーピース23と補助ガイド部材60との位置関係をさらに説明する。図8は、図9〜図12に示した断面図の断面位置B−B、C−C、D−D、E−Eを示すための図であって、打込機10の構成は図1〜図7で示したものと同一である。
図9は図8のB−B部から上方向を見た断面図である。図9(1)はアジャスタ機構のダイヤル245(図1参照)を調整して通常位置にてプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も離れるようにセットした時(最浮時)の打込み時の状態、即ち、プッシュレバーピース23を対象物Wに押し当てることによりプッシュレバーピース23がノーズ部15bに最接近した状態を示す。図9(2)は、アジャスタ機構のダイヤル245(図1参照)を調整して通常位置にてプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も近づくようにセットした時(最沈時)の打込み時の状態を示す。尚、図8におけるB−B部の断面位置は、ノーズ部15bの位置を基準にして決定し、ノーズ部15bの下端位置の断面である。従って、図9(1)と(2)のプッシュレバーピース23の断面位置は上下方向にわずかにずれていることになり、プッシュレバーピース23のB−B断面位置は、(2)側が(1)側よりも下になる。
図9(1)の最浮時の状態においては、打ち込み前においてプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も離れた位置にあって、プッシュレバーピース23がノーズ部15bから大きく離れた状態にあるため、釘の移動通路(案内通路48+射出通路24)の距離が長くなり、打ち込み時のドライバブレード36の先端の打撃面36dが対象物Wより最も離れることになる。そのため、打ち込み時に、案内通路48の下端位置(案内口48aの位置、図8参照)が、プッシュレバーピース23の射出通路24の連結口24cと最も離れる状態となる。この状態においては、プッシュレバーピース23に形成されたリブ235a、235bはノーズ部15bの逃げ溝部49の位置まで到達しない。
図9(2)の最沈時の状態においては、打ち込み前においてプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も近づく位置にあるため、打ち込み時に形成される釘の移動通路(案内通路48+射出通路24)の距離が短くなり、打ち込み時のドライバブレード36の先端の打撃面36dが対象物Wに最も近づく(又は食い込む)ことになる。そのため、打ち込み時に、案内通路48の下端位置(案内口48aの位置、図8参照)が、プッシュレバーピース23の射出通路24の連結口24cと接近してプッシュレバーピース23に形成されたリブ235a、235bがノーズ部15bの後端部分と衝突するおそれがある。しかしながら、本実施例ではノーズ部15bの下側端部であって、補助ガイド部材60が取り付けられる側に逃げ溝部49を形成したので、ノーズ部15bとリブ235a、235bの衝突を防止できる。また、リブ235a、235bは、補助ガイド部材60の拡幅案内面61bとの間に生ずる隙間(図9(1)の逃げ溝部49の部分を塞ぐ作用をするので、打ち込まれる釘50の、頭部50aや先端部50cがこの隙間F1に落ち込む虞を大幅に抑制でき、釘50を安定して打ち込むことが可能となる。尚、打込機10においてはアジャスタ機構によるプッシュレバーピース23の調整範囲は大きめに設定され、実際に打ち込む場合は、(1)と(2)の間の中間位置にて使用することが多いので、リブ235a、235bが隙間を埋めるのに十分な役割を果たすことになる。
図10は図8のC−C部から下方向を見た断面図であり、(2)と(3)は同じ図である。図8のB−B断面とC−C断面はほぼ同じ水平面にあるが、B−B部よりC−C部の方がわずかに下側にあって、C−C部はノーズ部15bの下端位置に干渉しない断面としている。図10(1)は通常位置にてプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も離れるようにセットした時(最浮時)の打込み時の状態であり、図10(2)は最沈時の打込み時の状態である。図10(1)の最浮時の状態においては、打ち込み前においてプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も離れた位置にあり、プッシュレバーピース23に形成されたリブ235a、235bはノーズ部15bと補助ガイド部材60との左右方向隙間(矢印F2の部分)には到達しない。
図10(2)の最沈時の状態においては、打ち込み前においてプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も近づく位置にあるため、プッシュレバーピース23に形成されたリブ235a、235bが補助ガイド部材60の左右に位置することにより隙間を埋めることになる。このようにリブ235a、235bが隙間を埋める効果を果たすうえに、射出通路24に案内される釘50の先端部50cが、(3)の複数の矢印で示すようにどの方向に傾いたとしてもてプッシュレバーピース23の径が小さく絞られる内壁面と、リブ235a、235b、及び補助ガイド部材60の拡幅案内面61bの作用によって、矢印と反対方向に傾いて中心軸に近づくことによりその姿勢が矯正されながら射出口24aへと案内される。さらに、その後にC−C断面を通過する頭部50aもプッシュレバーピース23の径が小さく絞られる内壁面と、リブ235a、235b、及び補助ガイド部材60の拡幅案内面61bのいずれかによって中心軸に向けてガイドされるので、釘50の姿勢を良好に改善することができる。本実施例では、特にリブ235a、235bを形成したことにより、従来例に比べてH1とH2における打ち込み方向の傾きを効果的に改善することができる。
図11は、図8のD−D部の断面図であり、(1)はプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も離れるようにセットした時(最浮時)の打込み時の状態であり、(2)は最沈時の打込み時の状態である。D−D部の断面位置は、案内通路48、射出通路24の中心軸A1を通る鉛直面であって、後方側を見た図である。(2)においては形成されたリブ235a、235bの位置がわかりやすいように、ハッチングを付しているが、これは断面を示すのではなく側面形状を示している(図11(1)のリブ235a、235bにはハッチングを付していない)。プッシュレバーピース23の後方側側面の切り欠き部231の輪郭形状は、補助ガイド部材60の輪郭形状に沿った形状であり、射出通路24の後方側から中心軸A1方向を見た際に、狭幅部232aと拡張部232bと広幅部232cが形成される。本実施例では、狭幅部232aは、射出通路24の軸方向の長さのおよそ半分程度形成した例である。
図11(1)の最浮時の状態においては、プッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も離れた位置にあり、打ち込み時においてプッシュレバーピース23を対象物Wに押しつけると、プッシュレバーピース23がノーズ部15bに接近する。この際においては、切り欠き部231の下端位置231bは、接触部61の下端位置61dと間隔があいた位置関係となる。従って、拡張部232bにおいて切り欠き部231の輪郭付近に形成されたリブ235a、235bはノーズ部15bの下端位置(案内口48aの位置)と離れることになる。このような状態においてもノーズ部15bの後方下側にリブ235a、235bが位置することになる。
図11(2)の最沈時の状態においては、打ち込み前においてプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も近づく位置にあるため、リブ235a、235bの上側部分は、ノーズ部15bの下端位置(図3に示す案内口48aの位置)の後方側に位置することになる。しかしながら、ノーズ部15bの後方側下端には逃げ溝部49が形成されるため、リブ235a、235bとノーズ部15bが干渉することがない。
図12は図8のE−E部の断面図であり、(1)はプッシュレバーピース23がノーズ部15bと最も離れるようにセットした時(最浮時)の打込み時の状態であり、(2)は最沈時の打込み時の状態である。ここでは、E−E部の断面位置が中心軸A1よりも後方側にあって補助ガイド部材60を縦方向に貫通する断面であり、その断面から前方側を見た図である。この断面位置から見て、切り欠き部231の輪郭位置と補助ガイド部材60との隙間を見ると、最沈時にセットされた状態での打ち込み時には、ノーズ部15bの後方側下端には逃げ溝部49が形成されているため、リブ235a、235bがその逃げ溝部49の位置まで上昇している。従って、矢印F3で部分ではほとんど隙間がない状態とすることができるので、短い釘を打ち込む際に釘50の先端部50cや頭部50aがこれらの隙間に落ち込むことを効果的に抑制できる。また、従来のようにノーズ部15bの後方側下端に逃げ溝部49を設けない場合は、切り欠き部231の位置を全体的に下方にずらすためにプッシュレバーピース23の射出方向の寸法を伸ばさねばならない。しかしながら、本実施例ではリブ235a、235bを形成した分を、ノーズ部15bの下端に設けた逃げ溝部49にて吸収するようにしたので、打ち込み深さダイヤル245を釘が沈む方向に調整して、ノーズ部15bとコンタクト部(プッシュレバーピース23)の境目が狭まった時であっても、リブ235a、235bとノーズ部15b下部が干渉することを防止することができた。