JP6840385B2 - フッ素を含まないはっ水剤及びはっ水加工方法、はっ水性繊維製品 - Google Patents

フッ素を含まないはっ水剤及びはっ水加工方法、はっ水性繊維製品 Download PDF

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Description

本発明は、繊維製品のはっ水加工の分野における、フッ素を含まず、アクリル−シリコーン系共重合体を含有してなるはっ水剤及びそれを用いたはっ水加工方法、ならびに、はっ水性繊維製品に関する。
繊維製品に対して水系分散体を用いて処理を行い、はっ水性を付与する方法において、はっ水成分としてパラフィンワックス、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂を用いることが知られている。フッ素系樹脂は、パラフィンワックスやシリコーン系樹脂よりも優れたはっ水性を示すことから、繊維製品にはっ水性を付与する方法において工業的に広く利用されてきた。
2000年、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の有害性、生体蓄積性、環境汚染性が指摘され、更にパーフルオロオクタン酸(PFOA)を含む、炭素数が8以上のパーフルオロ化合物全般についても懸念が示されるようになった。この為、フッ素系はっ水剤メーカーは、これらを含有せず、また分解生成物として発生させる懸念の無いフッ素系はっ水剤の開発を行ってきた。
しかしながら近年、炭素数に関係なく、パーフルオロアルキル基を持つ化合物自体の有害性、環境汚染性が指摘されたため、繊維製品に対するはっ水加工の分野において、フッ素を含むはっ水剤の使用を取りやめようとする動きも生じている。
従来、フッ素を含まないはっ水性組成物として、パラフィンワックス、シリコーン系樹脂等が周知であるが、はっ水性はフッ素系樹脂と比較して劣るものであった。この中で、近年、フッ素を含まない組成物を用いる技術として、エステル部分のアルキル基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸エステル重合体の水系分散体が、フッ素系樹脂の水系分散体に代替可能なものとして提案されている(特許文献1)。
また同様の技術として、N−メチロール化合物を含まないことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル重合体と、58〜80℃の範囲の融点を有するパラフィンワックスとの水系分散体が、織物布、特に綿、ポリエステル又は綿−ポリエステル混紡布に対するはっ水加工において有用であることが示されている(特許文献2)。
またフッ素を含まないはっ水性組成物として、アクリル−シリコーン系共重合系はっ水剤組成物が開示されている。例えば、エステル部分の炭素数が8以下の(メタ)アクリル酸エステルを構成成分としたアクリル−シリコーン系グラフト共重合体を用いたはっ水処理剤が開示されている。(特許文献3)
しかしながら、これらのはっ水剤には、はっ水性能が十分でない、又は、処理する生地の種類によってはっ水効果が得られない等の実情があり、必ずしも完全なものではなかった。
特開2006−328624号公報 特表2012−522062号公報 特許第2960304号公報
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、フッ素を含まない化合物を用いて、はっ水性及び優れた洗濯耐久性を有するはっ水効果を、幅広い種類の繊維に対して付与することが可能なはっ水剤を提供することにある。
発明者らは前記課題を解決するために検討を重ね、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、ポリシロキサン残基を有するモノマーとを共重合させて得られる、アクリル−シリコーン系共重合体をはっ水成分として用いることに着想した。そして、アルキル基の炭素数が特定範囲である(メタ)アクリル酸エステルと、特定構造のポリシロキサン系モノマーとを、特定の割合で重合させて得られる共重合体を含む水系分散体を用いると、ポリエステル、ナイロン、綿等の多様な生地に対して優れたはっ水性と洗濯耐久性を生地に付与することが可能で、さらに、帯電防止剤を併用してもはっ水性が損なわれないことを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、次の構成を有する。
[1]次式(1)で表される、フッ素を含まない単量体(A)から誘導された繰り返し単位と、
Figure 0006840385
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rは直鎖状又は分岐状の炭化水素基であって、炭素数が16〜30であるものを表す。)
次式(2)で表される、フッ素を含まない単量体(B)から誘導された繰り返し単位と、
Figure 0006840385
(式(2)中、Rは互いに同一でも異なっていてもよい炭素数が1〜10である炭化水素基又はアリール基を表す。Rは炭素数が1〜4である炭化水素基を示す。Xは、酸素原子で中断されてもよい炭素数1〜12の炭化水素基であるスペーサーを介してつながっているラジカル反応性基を表す。Yは互いに同一でも異なっていてもよく、上記式で表される。Zは炭素数1〜4の炭化水素基又はラジカル反応性基Xを表す。nは0〜198の整数を表し、式(2)中にnが複数存在する場合、nは互いに同一でも異なっていてもよく、合計が198を超えない。)
を含み、
前記単量体(A)及び前記単量体(B)の構成割合の合計は、共重合体を構成する単量体の全量に対して51〜100重量%であり、
前記単量体(B)の構成割合は、共重合体を構成する単量体全体の全量に対して0.01〜50重量%であるアクリル−シリコーン系共重合体と、
非イオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤を含む、
フッ素を含まない水系分散体であるはっ水剤。
[2]前記アクリル−シリコーン系共重合体が、さらに、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸基、ブロックトイソシアネート基、アミド基、N−メチロール基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する重合性単量体(C)から誘導された繰り返し単位を含む、前記[1]に記載のはっ水剤。
[3]前記カチオン系界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウムクロライド塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンの四級化物から選択される少なくとも1種の化合物である、[1]又は[2]に記載のはっ水剤。
[4]前記非イオン界面活性剤が、高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシド、高級アルコール、プルロニック型活性剤、アルキルジメチルアミン−N−オキシドから選択される少なくとも1種の化合物である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のはっ水剤。
[5]前記非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、
前記カチオン系界面活性剤がアルキルトリメチルアンモニウム塩である、
[1]〜[4]のいずれか1項に記載のはっ水剤。
[6]前記単量体(B)の構成割合が、共重合体を構成する単量体全体の全量に対して0.01重量%以上40重量%以下である[1]〜[5]のいずれか1項に記載のはっ水剤。
[7]前記重合性単量体(C)が、水酸基を含有する単量体である、
[2]〜[6]のいずれか1項に記載のはっ水剤。
[8]前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載のはっ水剤とともに、
(1)2官能以上のブロックトイソシアネート基を有する化合物の水系分散体又は乳化体
及び/又は、
(2)N−メチロールメラミン
を用いる、繊維製品のはっ水加工方法。
[9][1]〜[7]のいずれか1項に記載のはっ水剤を含む加工液に、繊維を浸漬する工程と、当該工程の後、100℃以上の温度で熱処理する工程と、を含む、繊維製品のはっ水加工方法。
[10][1]〜[9]のいずれか1項に記載のはっ水剤が処理されてなる、はっ水性繊維製品。
本発明のはっ水剤は、フッ素を含まず、優れたはっ水性及び洗濯耐久性を様々な種類の繊維に付与することができる。また、本発明のはっ水剤は、帯電防止剤を併用薬剤として使用した際も優れたはっ水性を繊維に付与することができる。また、本発明のはっ水剤で加工した繊維の風合いは良好である。更に本発明のはっ水剤である分散体は、加工処理に十分な安定性を有する。
(アクリル−シリコーン系共重合体)
本発明のはっ水剤に含まれるアクリル−シリコーン系共重合体は、長鎖(メタ)アクリル酸エステルである単量体(A)から誘導された繰り返し単位を有し、かつ、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーである単量体(B)から誘導されたオルガノポリシロキサン残基を含む繰り返し単位を有する、アクリル−シリコーン系共重合体である。また、当該共重合体は、さらに架橋性単量体(C)、短鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体(D)、その他の単量体(E)から成る群から選択された少なくとも1種の繰り返し単位を有していてもよい。
本発明に用いるアクリル−シリコーン系共重合体は、それを構成するいずれの単量体もフッ素を含まないことを必須とする。
単量体(A):長鎖(メタ)アクリル酸エステル
長鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体は式(1)で示される化合物である。
Figure 0006840385
(式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭化水素基であって、炭素数が16〜30であるものを表す。)
上記において、Rは直鎖状の炭化水素基であることが好ましく、炭化水素基の炭素数は18〜22であることがより好ましい。炭化水素基は飽和でも不飽和でもよいが、飽和の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、アクリル酸エステル単量体の方がメタクリル酸エステル単量体よりもはっ水性の観点からは好ましい。
単量体(A)として例えば、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデカニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等が挙げられ、これらの1又は複数を使用することができる。
単量体(B):ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマー
ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーは式(2)で示される化合物である。
Figure 0006840385
(式(2)中、Rは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素数が1〜10である炭化水素基又はアリール基を表す。Rは、炭素数が1〜4である炭化水素基を示す。Xは、酸素原子で中断されてもよい炭素数1〜12の炭化水素基であるスペーサーを介してつながっているラジカル反応性基を表す。Yは互いに同一でも異なっていてもよく、上記式で表される。Zは炭素数1〜4の炭化水素基又はラジカル反応性基Xを表す。nは0〜198の整数を表し、式(2)中にnが複数存在する場合、nは互いに同一でも異なっていてもよく、合計が198を超えない。)
単量体(B)は、1分子中に1つ以上のラジカル反応性基を有するオルガノポリシロキサン化合物で、ラジカル反応性基とオルガノポリシロキサン構造が有機基のスペーサーを介してつながっている。
単量体(B)において、ラジカル反応性基数は1分子中に1〜2つであり、特に1つであることが好ましい。ラジカル反応性基としては、アゾ基、メルカプト基、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、これらの少なくとも1つを使用することができる。該反応性基としては、ラジカル共重合のし易さや合成のし易さ、市販品の入手のし易さから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
単量体(B)のオルガノポリシロキサン構造の中で、式(2)のRで表される有機基は、炭素数1〜10の炭化水素基又はアリール基の少なくとも1つ以上である。該有機基は、特にメチル基が好ましい。
オルガノポリシロキサンは直鎖状又は分岐状のどちらであってもよく、そのシロキサン構造を構成する4つの骨格単位M(RSiO1/2)、D(RSiO2/2)、T(RSiO3/2)、Q(SiO4/2)の合計は3以上〜200以下であることが好ましい。1分子中にポリシロキサン鎖が2以上ある場合、シロキサン構造の繰り返し数nは互いに同一であっても異なっても良い。シロキサン構造を構成する4つの骨格単位の合計が3未満であると十分なはっ水性が得られず、200を超えると、得られるアクリル−シリコーン系共重合体の皮膜形成性が悪くなり、耐久性が悪くなる。
単量体(B)は公知のいずれかの方法で合成してもよいし、市販品を用いることもできる。ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーの作製方法は種々考えられるが、例えば、シクロトリシロキサンを原料にし、アニオンリビング重合でオルガノポリシロキサン鎖を形成した後、ラジカル反応性基を持つクロロシランで片末端を封鎖する方法や、酸又は塩基触媒存在下で環状シロキサンとラジカル反応性基を有するジシロキサン誘導体の平衡化反応を行う方法等が例として挙げられる。市販品としては例えば、シリコーン系マクロモノマー、シロキサン系マクロモノマー等と称される製品がある。
単量体(C):架橋性単量体
本発明のアクリル−シリコーン系共重合体には、前記の単量体(A)及び単量体(B)に加えて、架橋性を有する単量体(C)から誘導される繰り返し単位が含まれていてもよい。架橋性単量体(C)は、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸基、ブロックトイソシアネート基、アミド基、N−メチロール基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する重合性単量体である。
単量体(C)としては例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ−3−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられ、これらの群から選ばれる重合性単量体の1種又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
単量体(D):短鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体
本発明のアクリル−シリコーン系共重合体には、前記の単量体(A)及び単量体(B)に加えて、短鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体(D)から誘導される繰り返し単位を含んでもよい。
短鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体は、エステル部分の炭素数が1〜15の炭化水素基である。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。
単量体(D)として例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等が挙げられ、これらの1又は複数を使用することができる。
単量体(E):その他の単量体
本発明のアクリル−シリコーン系共重合体には、前記単量体に加えて、その他の単量体(E)から誘導される繰り返し単位を含むことも妨げられない。
単量体(E)としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体ではない他の重合性単量体や、ラジカル反応性基を有するオルガノポリシロキサンを除く他のマクロモノマー等が挙げられる。
例えば、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、酢酸ビニル、ビニルアルキルエーテル、アクリロニトリル、アルキロールアクリルアミド、マレイン酸ジエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリアルキレングリコール等が挙げられる。他の単量体はこれらの例に限定されない。
(アクリル−シリコーン系共重合体の構成割合)
単量体(A)の量は、共重合体に対して50重量%以上、好ましくは75重量%以上である。単量体(A)の量は、重合体に対して、95重量%以下、例えば80重量%以下、あるいは85重量%以下、であってよい。50重量%以上であれば、はっ水性が良好となり好ましい。
単量体(B)の量は、重合体に対して0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。単量体(B)の量は、重合体に対して50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。単量体(B)の量が重合体に対して50重量%より大きい場合、はっ水性能の更なる向上効果が得られない上にはっ水剤の価格が高価になるため費用対効果の面で有効ではない。
また、前記単量体(A)及び前記単量体(B)の構成割合の合計は、共重合体を構成する単量体の全量に対して51〜100重量%であり、好ましくは80〜100重量%である。この範囲であれば、繊維に対して優れたはっ水性と洗濯耐久性とを付与することが可能となる。
単量体(C)の量は、重合体に対して0.01重量%以上、重合体に対して30重量%以下、好ましくは10重量%以下である。アクリル−シリコーン系共重合体に単量体(C)を含むと、洗濯耐久性の効果がより高くなるため好ましい。
単量体(D)の量は、重合体に対して0重量%以上、重合体に対して50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
単量体(E)の量は、重合体に対して0重量%以上、重合体に対して50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
単量体(A)〜(E)のそれぞれは、1種類を用いてもよく、あるいは2種以上の単量体を組み合わせてもよい。また、本発明のはっ水剤に含まれるアクリル−シリコーン系共重合体は、1種の共重合体であってもよいが、2種以上の共重合体の組み合わせであってもよい。
(アクリル−シリコーン系共重合体の製造方法)
上述のアクリル−シリコーン系共重合体を製造する方法としては、公知の乳化重合法を用いることができる。例えば、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法などが挙げられる。また、乳化に際しては、粒子をより小さくするために超音波、ホモジナイザー等の乳化機を使用することが好ましい。
乳化重合のために使用する界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤のみ、又は、非イオン系界面活性剤のみ、もしくはカチオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤を併用することができ、さらに任意の界面活性剤、例えば、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等を使用することができる。カチオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤を併用することが水系分散体を繊維製品に処理する上で特に好ましい。また、一般に反応性乳化剤と呼ばれるラジカル重合性基を有するアニオン系界面活性剤又はカチオン性界面活性剤又は非イオン系界面活性剤を使用してもよい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、各種の脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレン置換フェニルエーテルサルフェート、ポリカルボン酸塩等を使用することができ、対イオンはナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これに限ったものではない。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、各種の高級脂肪酸グリセリン等の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシド、高級アルコール、プルロニック型活性剤、アルキルジメチルアミン−N−オキシド等が挙げられるが、これに限ったものではない。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、各種のアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウムクロライド塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンの四級化物等の四級塩のほか、アルキルアミン塩、アルキルジメチルアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩等の様なアミンを適当な酸で中和したアミン塩を使用することができる。対イオンとしては塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等が挙げられるが、これに限ったものではない。
また乳化重合において、乳化安定化、重合性単量体の溶解性向上のために公知の溶剤を併用してもよい。溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等がある。
乳化重合のために使用する重合開始剤としては、一般的なラジカル開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤は、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物が含まれる。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、水溶性のものが好ましい。
重合においては、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の例は、ラウリルメルカプタン、チオグリコール、チオグリセロール等のメルカプタン基含有化合物、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などである。
乳化重合によって得られたアクリル−シリコーン系共重合体は、そのまま、或いは、必要に応じて濃度調整(濃縮、希釈)、抽出、精製等の公知の処理工程を経て、水系分散体であるはっ水剤として用いられる。はっ水剤におけるアクリル−シリコーン系共重合体の濃度は特に制限されず、取扱性や安定性等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、固形分濃度が10〜50重量%とすることができる。
重合反応の確認及び生成したアクリル−シリコーン系共重合体の確認は、公知の方法を用いることができるが、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法、ガスクロマトグラフィー法、液体クロマトグラフィー法、質量分析法等を用いて反応の進行度を確認することができ、ゲル浸透クロマトグラフィー法、核磁気共鳴分光法等を用いて生成したアクリル−シリコーン系共重合体の分子量および構造を確認することができる。
(はっ水剤)
本発明の水系分散体であるはっ水剤には、はっ水性向上、風合い調整のためにパラフィンワックス、メチルハイドロジェンシリコーン、オクタデシルエチレンウレア、アルキルケテンダイマー、オクチル酸ジルコニル等の非フッ素系はっ水剤の水系分散体を配合してもよい。
また、本発明の水系分散体には前記以外にも、本発明の効果を損なわない限りにおいて任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては例えば、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤、滑脱防止剤等の繊維用薬剤、紫外線吸収剤、消臭剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(繊維製品へのはっ水加工方法)
本発明のはっ水剤を繊維製品に処理する場合には、上記の水系分散体と共に、(1)2官能以上のブロックトイソシアネートの水系乳化体、(2)N−メチロールメラミンのような架橋剤を併用することが好ましい。
(1)2官能以上のブロックトポリイソシアネートは公知の方法により、2官能以上のイソシアネートと適当なブロック剤を反応させることで得られる。イソシアネートとしては、4,4’−ビスイソシアナトフェニルメタン、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートの3量体やトリメチロールプロパンアダクト体が挙げられる。
また、イソシアネートのブロック剤としては、2級又は3級アルコール類、活性メチレン化合物、フェノール類、オキシム類、置換ピラゾール類、カプロラクタムなどが挙げられる。通常、これらのブロックトイソシアネートは公知の方法により、界面活性剤を用いて乳化・分散されたものが使用される。また、予め全イソシアネート基の70〜95%をブロックした後に、適当な分子量にあるポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールを残イソシアネート基と反応させることで、ブロックトイソシアネートは自己乳化性を示し、はっ水剤の洗濯耐久性の向上のみならず、製品の安定性の向上に対し効果を示す。
(2)N−メチロールメラミンとしては、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどが挙げられる。
本発明のはっ水剤は、繊維に対して、優れた洗濯耐久性を有するはっ水性を付与するのに有用である。このために繊維は、本発明のはっ水剤を含む加工液で処理される。加工液は、本発明のアクリル−シリコーン系共重合体や界面活性剤等を含有するはっ水剤と、前述のブロックトイソシアネート、N−メチロールメラミン等を、水で所定濃度に希釈することで得られる。また、繊維製品の仕上げ加工分野において公知のさらなる薬剤、例えば、防しわ剤、柔軟剤、帯電防止剤、滑脱防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、消臭剤、抗菌剤などを加工液中に含有してもよい。
加工液におけるアクリル−シリコーン系共重合体の濃度は特に制限されず、処理方法や条件に応じて適宜選択されるが、例えば、連続法で処理を行う場合は、固形分濃度で0.3〜5.0重量%程度とすることができる。バッチ法で処理を行う場合は、0.3〜3.0%o.w.f.程度とすることができる。
はっ水加工方法については、特に限定されず、種々の方法が採用でき、はっ水加工すべき繊維製品(被処理物)に所望の量を付着させればよく、連続法又はバッチ法等が挙げられる。
連続法としては、まず、本発明のはっ水剤を水に希釈して加工液を調整する。次に、加工液で満たされた含浸装置に、被処理物を連続的に送り込み、被処理物に加工液を含浸させた後、不要な加工液を除去する。含浸装置としては特に限定されず、パッダ、スプレー式付与装置、フォーム式付与装置、コーティング式付与装置などが好ましく採用でき、特にパッダ式が好ましい。
続いて、乾燥機を用いて被処理物に残存する水を除去する操作を行う。乾燥機としては、特に限定されず、ホットフルー、テンター等の拡布乾燥機が好ましい。該連続法は、被処理物が織物等の布帛状の場合に採用するのが好ましい。
バッチ法は、被処理物を加工液に浸漬する工程と、当該工程後に被処理物に残存する水を除去する工程とからなる。該バッチ法は、被処理物が布帛状でない場合、たとえばバラ毛、トップ、糸等連続法に適さない場合に採用するのが好ましい。浸漬する工程においては、たとえば、ワタ染機、チーズ染色機、液流染色機、ビーム染色機等を用いることができる。水を除去する操作においては、チーズ乾燥機、タンブルドライヤー等の温風乾燥機、高周波乾燥機等を用いることができる。
いずれの場合も、加工液に被処理物である繊維を浸漬した後の乾燥(熱処理)工程は、80〜180℃で行うことができ、100℃以上の温度で熱処理することが好ましい。
被処理物である繊維の種類は、本発明の効果を発揮する限り特に制限されないが、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維、綿、麻、絹、ウール等の天然繊維やそれらの組み合わせを用いることができる。繊維の形態は特に制限されず、布帛、不織布、綿、糸等に対してはっ水処理を行い、はっ水性を付与することができる。特に、衣料用途や産業資材用途に用いられる布帛のはっ水処理として好適である。
以下、本発明を実施例にて説明する。但し本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
アクリル−シリコーン系共重合体(A)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル73g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB25g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例2]
アクリル−シリコーン系共重合体(B)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル48g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB50g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例3]
アクリル−シリコーン系共重合体(C)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル90g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーA8g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例4]
アクリル−シリコーン系共重合体(D)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル90g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーC8g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例5]
アクリル−シリコーン系共重合体(E)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、メタクリル酸ステアリル94g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーA4g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例6]
アクリル−シリコーン系共重合体(F)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル94g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーD4g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例7]
アクリル−シリコーン系共重合体(G)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル90g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーE8g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例8]
アクリル−シリコーン系共重合体(H)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル88g、アクリル酸イソステアリル6g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB4g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例9]
アクリル−シリコーン系共重合体(I)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル88g、メタクリル酸イソボロニル6g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB4g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例10]
アクリル−シリコーン系共重合体(J)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル88g、スチレン6g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB4g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[実施例11]
アクリル−シリコーン系共重合体(K)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ベヘニル94g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB4g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[比較例1]
アクリル系共重合体(L)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル98g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[比較例2]
アクリル−シリコーン系共重合体(M)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸オクチル94g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB4g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、窒素雰囲気下で80℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[比較例3]
アクリル系共重合体(N)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、メタクリル酸ステアリル98g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[比較例4]
アクリル系共重合体(O)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ラウリル98g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
[比較例5]
アクリル−シリコーン系共重合体(P)の水系分散体の製造
500mLフラスコに、アクリル酸ラウリル90g、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB8g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド1g、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル6g、ポリオキシエチレン(21モル)ラウリルエーテル2g、ドデシルメルカプタン0.1g、ジプロピレングリコール30g及びイオン交換水224.7gを入れ、50℃にて高速撹拌により乳化分散させ混合液を得た。その後、40℃に保ちながら高圧ホモジナイザーを用いて、40MPaにて処理し乳化液を得た。還流冷却管を取り付けた500mL3口フラスコに乳化液を移し、室温に冷却した後、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを加え、窒素雰囲気下で60℃にて10時間ラジカル重合を行い、ポリマー濃度30重量%を含む生成物364gを得た。
前述の実施例及び比較例で用いたラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーA〜Eの構造を下に示す。
ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーA
Figure 0006840385
ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーB
Figure 0006840385
ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーC
Figure 0006840385
ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーD
Figure 0006840385
ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーE
Figure 0006840385
上記実施例1〜11及び比較例1〜5のアクリル−シリコーン系共重合体及びアクリル系共重合体の組成のまとめを表1に示す。
Figure 0006840385
<はっ水性の評価>
実施例1〜11のアクリル−シリコーン系共重合体及び比較例1〜5のアクリル−シリコーン系共重合体及びアクリル系共重合体のいずれか 50g/L、メイカネートFM−1(明成化学工業社製ブロックトイソシアネート):有効成分30%) 10g/Lとなるよう水で希釈した加工液を調整し、ポリエステルトロピカル布、ポリエステルタフタ布、ナイロンタスラン布、及び綿ブロード布にパティングし、2本のゴムローラーでニップ(ピックアップ90%、30%、60%、70%)し、110℃にて2分間乾燥させた後、170℃にて1分間キュアを行って評価布を作成した。得られた評価布を用いてはっ水性をJIS L 1092(2009)のスプレー法にて評価した。評価布は、いずれの場合も洗濯後自然乾燥を行った。なお、はっ水性は、表2に示す1〜5の5段階の数値にて表記し、数字に+(−)の付いた場合、その数字の評価よりもわずかに良い(悪い)ことを示す。結果を表3に示す。
また、帯電防止剤であるデレクトールAG−7(明成化学工業社製:有効成分25%) 5g/Lを上記の加工液処方に併用して、ポリエステルトロピカル布、ポリエステルタフタ布を同様に加工して、はっ水性を評価した。結果を表4に示す。
Figure 0006840385
<はっ水性の洗濯耐久性の評価>
作成した評価布を洗濯回数0回(HL−0)とし、JIS L 1092(2009)に記載の洗濯方法に準じて洗濯を10回(HL−10)、20回(HL−20)行った後、同様にはっ水性を評価した。
[対照例]
フッ素系樹脂にてはっ水加工を施した例として、AsahiGuard E‐SERIES AG‐E061(旭硝子(株)製、フッ素系はっ水剤、固形分20重量%) 50g/L、メイカネートFM−1(明成化学工業社製ブロックトイソシアネート):有効成分30%) 10g/Lとなるよう水で希釈した加工液を調整し、ポリエステルトロピカル布、ポリエステルタフタ布、ナイロンタスラン布、及び綿ブロード布にパティングし、2本のゴムローラーでニップ(ピックアップ90%、30%、60%、70%)し、110℃にて2分間乾燥させた後、170℃にて1分間キュアを行って評価布を作成した。また、帯電防止剤であるデレクトールAG−7(明成化学工業社製:有効成分25%) 5g/Lを上記の加工液処方に併用して、ポリエステルトロピカル布、ポリエステルタフタ布を同様に加工して、はっ水性を評価した。
Figure 0006840385
Figure 0006840385
表3から、本発明である実施例1〜11は、本発明ではない比較例1〜5及びフッ素系樹脂にてはっ水加工を施した対照例と比較すると、実施例1〜11はいずれもフッ素系樹脂(対照例)とほぼ同等かそれ以上のはっ水性と洗濯耐久性を発現するのに対し、ラジカル反応性オルガノポリシロキサンマクロモノマーを共重合していない比較例1、3及び4ははっ水性が不十分であり、エステル部分の炭素数が16以下の(メタ)アクリル酸エステル単量体を共重合した比較例2、5ははっ水性が不十分であった。また、表4の結果から、帯電防止剤を併用する場合、比較例1〜5ははっ水性及び洗濯耐久性の低下がみられたのに対して、実施例のものはいずれも帯電防止剤を併用した場合にもはっ水性の低下が抑制された。
本発明のはっ水剤は、フッ素を含まず、優れたはっ水性及び洗濯耐久性を様々な種類の繊維に付与することができ、また、帯電防止剤を併用薬剤として使用した際も優れたはっ水性を繊維に付与することができるため、人体や環境への影響が少なく、特に衣料用途、産業資材用途の布帛等に対してはっ水性を付与するのに適している。はっ水性が付与された繊維製品は例えば、衣服、雨傘、レインコート、テント地、日用品、インテリア、カーシート等に広く適用可能であり、これらの用途以外の任意の用途にも幅広く用いることができる。

Claims (9)

  1. 次式(1)で表される、フッ素を含まない単量体(A)から誘導された繰り返し単位と、
    Figure 0006840385
    (式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rは直鎖状又は分岐状の炭化水素基であって、炭素数が16〜30であるものを表す。)
    次式(2)で表される、フッ素を含まない単量体(B)から誘導された繰り返し単位と、
    Figure 0006840385
    (式(2)中、Rは互いに同一でも異なっていてもよい炭素数が1〜10である炭化水素基又はアリール基を表す。Rは炭素数が1〜4である炭化水素基を示す。Xは、酸素原子で中断されてもよい炭素数1〜12の炭化水素基であるスペーサーを介してつながっているラジカル反応性基を表す。Yは互いに同一でも異なっていてもよく、上記式で表される。Zは炭素数1〜4の炭化水素基又はラジカル反応性基Xを表す。nは0〜198の整数を表し、式(2)中にnが複数存在する場合、nは互いに同一でも異なっていてもよく、合計が198を超えない。)
    を含み
    記単量体(A)の構成割合は、共重合体を構成する単量体の全量に対して73〜94重量%であり、
    前記単量体(B)の構成割合は、共重合体を構成する単量体の全量に対して4〜25重量%であるアクリル−シリコーン系共重合体と、
    非イオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤を含み、
    水溶性アミノ樹脂及び水溶性アミノ樹脂の硬化触媒を含まず、
    フッ素を含まない水系分散体であるはっ水剤。
  2. 前記アクリル−シリコーン系共重合体が、さらに、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸基、ブロックトイソシアネート基、アミド基、N−メチロール基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する重合性単量体(C)から誘導された繰り返し単位を含む、請求項1に記載のはっ水剤。
  3. 前記カチオン系界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウムクロライド塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンの四級化物から選択される少なくとも1種の化合物である、
    請求項1又は2に記載のはっ水剤。
  4. 前記非イオン界面活性剤が、高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシド、高級アルコール、プルロニック型活性剤、アルキルジメチルアミン−N−オキシドから選択される少なくとも1種の化合物である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のはっ水剤。
  5. 前記非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、
    前記カチオン系界面活性剤がアルキルトリメチルアンモニウム塩である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のはっ水剤。
  6. 前記重合性単量体(C)が、水酸基を含有する単量体である、
    請求項2〜5のいずれか1項に記載のはっ水剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のはっ水剤とともに、
    2官能以上のブロックトイソシアネート基を有する化合物の水系分散体又は乳化体を用いる、繊維製品のはっ水加工方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のはっ水剤を含む加工液に、繊維を浸漬する工程と、当該工程の後、100℃以上の温度で熱処理する工程と、を含む、繊維製品のはっ水加工方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のはっ水剤が処理されてなる、はっ水性繊維製品。
JP2017084440A 2017-04-21 2017-04-21 フッ素を含まないはっ水剤及びはっ水加工方法、はっ水性繊維製品 Active JP6840385B2 (ja)

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