JP6838861B2 - 撥水性塗料、それにより被覆された金属板および金属容器、並びに、撥水性塗膜の形成方法 - Google Patents

撥水性塗料、それにより被覆された金属板および金属容器、並びに、撥水性塗膜の形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、高粘度物質との接触の際に、高い非付着性を発揮できる塗膜形成用の撥水性塗料に関し、特に、高粘度液体の収容に適した金属容器内面の塗膜形成用の撥水性塗料に関する。また、その撥水性塗料により被覆された金属板、および、金属容器、並びに、その塗料を用いた撥水性塗膜の形成方法に関する。
ガムシロップ、黒蜜、蜂蜜等の高粘度の液状食品が、菓子等の食品の製造原料として流通する際に、従来から、18リットル缶(5ガロン缶)と呼ばれる角筒状あるいは直方体状の缶容器に充填されて輸送されている。この18リットル缶の吐出口から高粘度の内容物を吐出する場合、内容物が缶内面に付着することにより、流出に時間を要したり、内面に付着した内容物の一部が流出しないで容器内に残存したりする問題があった。
このような問題に対し、特許文献1には、疎水性酸化物微粒子を予め容器内面に付着させておくことで、容器内面に内容物が付着することを抑制する技術が開示されている。
特開2015−091722号公報
しかしながら、前述した18リットル缶のような金属板を加工して形成される金属容器では、その製造工程でどうしても金属板を搬送させる必要があり、搬送の際に缶内面となる面が搬送経路の搬送面に接触するため、その接触によって缶内面に付着している疎水性酸化物微粒子が摩耗してしまう、という問題点もあった。そのため、缶内面の耐摩耗性を高めておく必要があった。
特許文献1の段落0036には、凹凸形成用材料に充填粒子を含ませることにより、耐摩耗性を発揮させることが記載されているが、耐摩耗性を付与するに当たって、疎水性酸化物微粒子に加えて充填粒子も添加する必要があり、高コストとなる問題がある。
本発明は、前記課題に鑑みなされたものであり、充填粒子を添加しなくても疎水性微粒子の耐摩耗性を担保でき、かつ、疎水性微粒子による高い非付着性を発揮できる、塗膜形成用の撥水性塗料を低コストで提供することを目的とする。また、この撥水性塗料により被覆された金属板および金属容器、並びに、撥水性塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討を行った結果、熱硬化性樹脂を疎水性微粒子と有機溶剤とともに混合し、これを対象となる表面へ塗布・乾燥して塗膜を形成すれば、高粘度物質に対して高い非付着性を示し、かつ、疎水性微粒子の耐摩耗性を担保する塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の撥水性塗料は、一次粒子の平均粒子径が1〜100nmである疎水性シリカ微粒子、一液系の熱硬化エポキシ樹脂および有機溶剤を含むことを特徴とする。ここで、前記疎水性シリカ微粒子の含有量が前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂100質量部に対して40〜200質量部であることが好ましい。また、前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂がエポキシフェノール樹脂またはエポキシウレア樹脂であることが好ましい。さらに、前記疎水性シリカ微粒子および前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂からなる固形分が撥水性塗料全体の15〜30質量%であり、前記疎水性シリカ微粒子が一次粒子の5〜30倍の平均粒子径になるまで凝集した凝集体として分散していることが好ましい。また、前記疎水性シリカ微粒子がポリジメチルシロキサンでコーティングした疎水性シリカであることが好ましい。
一方、本発明の金属板は、少なくとも一方の面に上記のいずれかの撥水性塗料による塗膜が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の金属容器は、筒状の胴部、底部、及び、吐出口を有する蓋部を有し、少なくとも前記胴部の内面に、上記のいずれかの撥水性塗料による塗膜が形成されていることを特徴とする。ここで、前記胴部は、前記撥水性塗料による塗膜が形成された金属板からなることが好ましい。
さらに、本発明の撥水性塗膜の形成方法は、一次粒子の平均粒子径が1〜100nmである疎水性シリカ微粒子、一液系の熱硬化エポキシ樹脂、及び、有機溶剤を含む撥水性塗料を金属板の少なくとも一方の面に、5〜200mg/dmの塗付量で塗布したのち、塗膜を加熱することを特徴とする。ここで、前記加熱の工程では、170℃〜230℃の温度で、7〜13分間加熱することが好ましい。さらに、前記疎水性シリカ微粒子の含有量が前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂100質量部に対して40〜200質量部になり、かつ、前記疎水性シリカ微粒子および前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂からなる固形分が撥水性塗料全体の15〜30質量%になるように、前記撥水性塗料を調整することが好ましい。
以上の構成によれば、充填粒子を添加しなくても疎水性微粒子の耐摩耗性を担保でき、かつ、疎水性微粒子による高い非付着性を発揮できる、塗膜形成用の撥水性塗料を低コストで提供することができる。
また、本発明の撥水性塗料を用いて金属板に塗膜を形成し、さらにその金属板を加工して金属容器等を形成する際に、塗膜の摩耗を心配することなく金属板の塗膜面を搬送面にすることが可能となり、撥水性に優れた金属容器等を低コストで製造することができる。
本発明に係る撥水性塗料を用いた塗膜の状態を説明するための模式図であり、(A)は物品表面に塗布された直後の塗膜の状態を示し、(B)は物品表面に形成された疎水性微粒子の凹凸構造を示す図である。 実施例に係る耐摩耗試験の方法を説明するための図である。 実施例に係るシートコート塗装を説明するための図である。 実施例に係る18リットル缶の内容物の吐出実験を説明するための図。 上記吐出実験の結果を示すグラフである。
<撥水性塗料>
本発明の撥水性塗料は、疎水性微粒子、熱硬化性樹脂、及び、有機溶剤を含んで構成され、物品表面に形成される塗膜において疎水性微粒子の有する撥水性を最大限に発揮させることが可能な塗料であることに特徴がある。
(a)疎水性微粒子
疎水性微粒子としては、無機物質でも有機物質でもかまわないが、変質しない無機物質からなるものが好ましい。nmオーダーの粒径の微粒子を得るためには、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機酸化物が好ましく、特に、シリカ微粒子の表面を疎水化処理して形成された疎水性シリカが最も好適である。また、食品向けにはポリジメチルシロキサンでコーティングした疎水性シリカが特に好適である。疎水性とは、水などの極性分子をはじく性質であり、糖蜜等の粘度の高い物質に対しても、この性質を発揮する。疎水性微粒子の平均粒子径は1〜100nm、さらには5〜20nmであることが望ましい。ここに示す平均粒子径は、一次粒子についてのものである。微粒子シリカの市販品として、例えば、アエロジルR972,972V,R972CF,R974,R812,R805,RX200,RX300,RY200(いずれも日本アエロジル株式会社製)等の疎水性シリカを好適に用いることができる。このなかでも、特にR972,RX200,RY200が好ましい。また、その他市販の微粒子として、酸化アルミニウムC,二酸化チタンT805,二酸化チタンP25(いずれも日本アエロジル株式会社製)等を用いることもできるが、これらの微粒子のうち、表面が親水性のものは、予め高級脂肪酸、シリコーン油、シランカップリング剤等を用いて疎水化処理しておく必要がある。
(b)熱硬化性樹脂
本発明の撥水性塗料に使用される熱硬化性樹脂として、特に限定されるものではないが、主剤としてエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノール樹脂やウレア樹脂等を含む熱硬化性エポキシ樹脂が好ましい。これらを用いた塗膜は耐内容物性、耐腐食性に優れる。熱硬化性樹脂としては、上記のエポキシ樹脂のような主剤と硬化剤を予め混合した一液系の製剤が好ましい。熱硬化性樹脂は、常温では硬化せず、加熱によって硬化する。従って、熱硬化性樹脂および疎水性微粒子を含む塗料が基材に塗布された後、加熱工程により硬化した熱硬化性樹脂は、疎水性微粒子を基材に付着させるバインダーとして機能する。エポキシ樹脂の市販品としては、一液系の熱硬化性製剤として、例えば、1001B80,1001X70,1001T75(いずれも三菱化学社製)、57−K313M:(関西ペイント社製)等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂に対する疎水性微粒子の添加量は、特に限定されるものではないが、塗膜の撥水性および耐摩耗性を考慮すると、熱硬化性樹脂100質量部に対して疎水性微粒子30〜200質量部であることが望ましく、さらに、塗布方法等も考慮すると、40〜50質量部であることが望ましい(以下、前記量単位をPHR[Per−Hundred−Resin]と表記する場合がある)。
疎水性微粒子の添加量が多すぎると、加熱・乾燥後の熱硬化性樹脂によるバインダー力が不足して、塗膜が基材から容易に剥落してしまう等、塗膜の耐摩耗性が低下する場合がある。また、チキソトロピー(thixotropy)性が高くなり、塗装ムラが出やすくなる。一方、疎水性微粒子の添加量が少ないと、撥水性を発現することができない場合がある。疎水性微粒子の添加量を前記範囲に調整することによって、塗膜表面の樹脂マトリックスから疎水性微粒子が略半球状に突出して外部に突出した状態となり、これによって優れた撥水性を発揮することができると考えられる。
(c)有機溶剤
本発明の撥水性塗料に用いる有機溶剤としては、従来、一般的な塗料に用いられる公知の有機溶剤から、熱硬化性樹脂を溶解し、且つ、疎水性微粒子を分散可能な有機溶剤を選択するとよい。撥水性塗料は、特に限定されるものではないが、疎水性微粒子と熱硬化性樹脂との合計量(固形分)が、撥水性塗料全量中15〜30質量%になるように、有機溶剤を含有することが望ましい。固形分が多すぎると粘度が高くなりすぎ、疎水性微粒子や熱硬化性樹脂を製剤中で均一に分散あるいは溶解し難くなる。固形分が少なすぎると、塗膜形成に時間がかかるほか、製剤の粘度が低くなって、1回の塗布で形成される塗膜の厚さが薄くなるため、必要な厚さを得るために、複数回の塗布を行う必要が生じるなど、塗装性が悪くなる。
本発明に使用可能な有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤が挙げられ、これらを単独であるいは複数を混合して用いてもよい。
以上のような構成の撥水性塗料について、各構成の関係について説明する。例示したエポキシ樹脂と疎水性シリカの組合せの場合、両者の親和性は強くはなく、塗料中で疎水性シリカの表面全体をエポキシ樹脂が不必要に覆ってしまうことはない。そのため、エポキシ樹脂によって複数粒子の疎水性シリカの凝集体の形成が妨げられず、疎水性シリカは適当な大きさの二次粒子として塗料中に存在する。例えば、一次粒子の平均粒子径が10〜20nmである場合、塗料中では一次粒子の5〜30倍の平均粒子径まで凝集した二次粒子、好ましくは100〜200nmの平均粒子径の二次粒子として分散している。なお、エポキシ樹脂と疎水性シリカとは、全く親和性がないという関係ではなく、疎水性シリカの二次粒子において樹脂が粒子間の隙間に入ってバインダーの役目をしたり、有機溶剤が揮発した場合には、疎水性シリカの二次粒子同士を結び付けるバインダーの役目をしたりすると考えられる。従って、疎水性シリカとエポキシ樹脂とには、ある程度の親和性が認められる。このように、本発明においては、熱硬化性樹脂として、疎水性微粒子との親和性が強くないものが好ましい。なお、疎水性微粒子の凝集体が所定の大きさで塗料中に分散した状態を保つために、有機溶剤の存在意義が大きい。つまり、塗料中で、有機溶剤は、熱硬化性樹脂を溶解するとともに、疎水性微粒子の凝集体(二次粒子)を均一に分散させている。
(d)その他成分
また、本発明の撥水性塗料には、効果に影響のない範囲で、顔料、顔料分散剤、可塑剤、増粘剤、消泡剤、造膜助剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、紫外線吸収剤等の各種成分を任意で適当量含有していてもよい。
<塗布方法>
本発明の撥水性塗料の物品表面への塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スプレーコート、ロールコート、フローコート、スピンコート、ディップコート、静電塗装、刷毛又はスポンジ塗装等が挙げられるが、対象物品の形状や大きさ等の条件に応じて、適切な塗布方法を適宜選択して行なえばよい。特に、対象物品をコンベヤーやローラーにて搬送しながら、連続的に塗布できるスプレーコートやロールコート等が生産性向上の面で好ましい。また、物品の塗布面は、加熱・乾燥工程を施されるが、特に限定されるものではなく、赤外線ヒーターや誘導加熱装置などの一般的な加熱装置を用いたり、熱風を当てたりする手法を採用することができる。加熱条件については、170℃〜230℃の温度で、7〜13分間加熱することが好ましい。
有機溶剤は、塗布面において常温でも揮発するが、加熱・乾燥工程によって揮発が促進される。また、熱硬化性樹脂は、加熱・乾燥工程によって熱硬化する。このように有機溶剤が揮発することで、疎水性微粒子の凝集体(二次粒子)はバインダー(熱硬化性樹脂)によって、更に成長して三次粒子になる。そして、硬化した樹脂によってその三次粒子が物品表面に付着すると考えられる。図示すると、図1のようになる。塗料の状態では、疎水性微粒子は、複数粒子の二次粒子として分散している。物品表面に塗布された直後の塗膜の状態を図1(A)に示す。物品表面への塗布後、有機溶剤が揮発することで、疎水性微粒子は三次粒子に成長し、更にエポキシ樹脂の硬化に伴って、三次粒子が物品表面に固定されると考えられる。その結果、物品表面には、ちょうど自然界における蓮の葉の表面凹凸構造に類似した、疎水性微粒子の三次粒子による凹凸構造が形成される。図1(B)に示すように、物品表面に三次粒子が配列した状態になっていると考えられる。また、物品表面の凸部(三次粒子)を拡大して見ると、1つの凸部の表面には、一次粒子(または二次粒子)からなるナノオーダーの構造体が形成されていると考えられる。凸部の表面においては、一次粒子(または二次粒子)の表面が完全に樹脂に覆われておらず、疎水性微粒子の表面の半分以上が露出しているものと考えられる。なお、硬化した樹脂は、三次粒子と物品表面とのバインダーとして機能していると考えられる。同時に、樹脂が一次粒子同士(または二次粒子と)のバインダーとして機能している。
本発明の撥水性塗料の物品表面上への塗付量は、特に限定されるものではないが、5〜200mg/dmの範囲に調整することが望ましく、特に望ましくは15〜150mg/dmである。撥水性塗料の塗付量が前記範囲よりも少ないと、撥水効果が得られない場合があり、一方で塗付量を前記範囲より多くしても、それ以上の撥水効果の向上が見られないため、経済性の点から望ましくない。
本発明の撥水性塗料による塗膜形成後の物品表面において、疎水性微粒子が塗膜被覆領域の投影面積の85〜99%、より好ましくは90〜95%の領域で、その微粒子表面を外部に露出した状態で付着することが望ましい。これは、撥水性塗料中の疎水性微粒子と熱硬化性樹脂との含有比率によって調整することが可能であり、樹脂の含有比率が高すぎると、疎水性微粒子のほとんどが塗膜内部に存在することとなり、塗膜表面に十分な表面凹凸が形成されないため、撥水性を発揮することができない場合がある。他方、疎水性微粒子が塗膜表面から露出しすぎていると、軽い衝撃や軽度の摩耗によって微粒子が容易に剥落してしまうため、撥水性を保持できない。
本発明の撥水性塗料からなる塗膜は耐摩耗性に優れているため、この塗膜を有する金属板を用いれば、その搬送過程で塗膜が搬送面に接触するような場合であっても、塗膜の摩耗を心配する必要がなくなる。従来の製造設備をそのまま用いて、金属容器などの製品に加工することが容易にできる。また、本発明の塗膜には、耐摩耗性の他に、折り曲げ等の加工を金属板に施す際に必要な加工追従性も認められる。なお、金属容器を製造する際、上記のように予め撥水性塗膜を付した金属板を用いてもよいし、あるいは、塗付前の金属板を用いて金属容器などの製品を加工した後、製品の内面などに本発明の塗膜を形成してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
<試験例1:撥水性試験>(疎水性シリカ+一液系加熱硬化エポキシフェノール樹脂)
エポキシ樹脂溶液(SK−2305:桜宮化学社製;一液系エポキシ樹脂,硬化剤:フェノール樹脂,溶媒:キシレン,エチルセロソルブ等)と平均粒径12nmの疎水化シリカ微粒子(アエロジルRY200:日本アエロジル社製)を撹拌混合し、疎水性シリカの添加量が0PHR、10PHR、20PHR、30PHR、40PHR、50PHRとなる撥水性塗料をそれぞれ作成した。これらを表1に記載された塗付量(5〜150mg/dm)となるように鋼板にそれぞれバーコート塗装し、200℃で10分間焼付して、試験片を作成した。
それぞれの試験片について接触角と水転落角を測定し、撥水性の評価を行った。具体的には、試験片の塗膜表面に10μLの水滴を滴下し、接触角計CA−DT(協和界面科学社製)を用いて、水接触角及び水転落角をそれぞれ測定した。接触角が約150度以上であり、かつ、転落角が数度程度までである場合を、「超撥水性である」と評価し、接触角が約150度以上であり、かつ、転落角が数十度程度までである場合を、「超撥水性に準じる」と評価し、それ以外の場合を「超撥水性を示さない」と評価した。
結果を表1に示す。30PHR未満では超撥水性を発現せず、30PHR以上の試験片で超撥水性が確認された。表1には記載していないが、150mg/dm以上の塗付量では、30PHRの添加量の塗料を用いれば、超撥水性を示した。ただし、塗付量を200mg/dmより多くしても、それ以上の撥水効果の向上が見られず、経済性の点から望ましくない。従って、疎水性シリカの塗付量は5〜200mg/dmが好ましく、より好ましくは15〜150mg/dmの範囲である。
<試験例2:耐摩耗試験>
次に、試験片の耐摩耗試験を行った。ここでは、試験例1と同じ、エポキシ樹脂溶液および疎水化シリカ微粒子を用いて、表2に示すように、疎水性シリカの添加量が40PHR、60PHR、100PHR、200PHR、300PHRとなる撥水性塗料をそれぞれ作成した。そして、30mg/dmの塗付量で鋼板に塗布した後、200℃で10分間焼付して試験片をそれぞれ作成した。
各試験片について、図2に示すように、トライボギア表面測定機TYPE:38(新東科学社製)を用いて、試験片の塗膜と平面圧子の間にガーゼを挟み、平面圧子に10g/cmの荷重を負荷して塗膜を押圧する。この状態で、押圧部を200mm/minの速さで押圧面に平行に50mmの区間を所定回数だけ往復移動させた。そして、1往復毎に水接触角と水転落角を試験例1と同様に測定し、その撥水性の低下状態から耐摩耗性を評価した。
結果を表2に示す。耐摩耗性については100PHRが最も良好であり、好ましい添加量は40〜200PHRであった。なお、添加量が300PHR以上では、塗液がペースト状になってしまって塗装性が悪化し、また、添加量を増やしたことでバインド力が低下したため、耐摩耗性がほとんど得られなかった。
<試験例3:1回塗付量の調査>
次に、試験例1と同じ、エポキシ樹脂溶液および疎水化シリカ微粒子を用いて、表3に示すように、疎水性シリカの添加量が、0PHRから80PHRの範囲の各値となる撥水性塗料をそれぞれ作成した。そして、図3に示すシートコーターを用いて塗料を鋼板にシートコート塗装し、1回の塗装で塗布できる塗付量、塗料の固形分(質量%)、および、塗料の粘度(秒)を調査した。なお、塗料の粘度として、オリフィス径が3ミリのザーンカップ(#3)から規定量の塗料が流出するまでの時間(秒)を測定した。
ここで、疎水性シリカの添加量が多くなると、チキソトロピー性が高くなるため、塗装ムラを回避できるレベルまで、有機溶剤を増やした。表3に示す塗料の固形分(質量%)や粘度(秒)は、有機溶剤を増やした結果の値となっている。これに伴い、疎水性シリカの添加量の多い試験では、固形分が低下するため、1回の塗付量も少なくなる傾向になった。表中には示していないが、添加量を80PHRより大きくしても、1回の塗付量は約10mg/dmが頭打ちとなり、それ以上に良い数値は得られなかった。
結果を表3に示す。1回の塗付量が少ないと、必要な塗膜厚を確保するために、複数回の塗装作業を繰り返す必要があるため、実用上は1回の塗布で20mg/dm以上の塗付量を確保することが好ましい。従って、塗装性の観点からは、疎水性シリカの添加量は50PHR以下とするのが好ましい。
以上の試験例1〜3の結果より、疎水性シリカの添加量は、30〜200PHRが好ましい。さらに耐摩耗性の観点からは40〜100PHRが好ましく、さらに塗装性の観点を加味すると40〜50PHRとするのが最も好ましい。
<試験4:18リットル缶の内容物の吐出実験>
次に、本発明の塗料を塗布した鋼板を製造し、これに加工を施して18リットル缶を製罐した。そして、18リットル缶に高粘度液状食品を充填して、その内容物を吐出する実験を行った。
ベース塗料としてSK−2305を用い、疎水性シリカの添加量を40PHRとした撥水性塗料を作成した。これを50mg/dmの塗付量になるように鋼板に塗装し、200℃で10分間焼付けを行って、塗膜付き鋼板を製造し、この鋼板を用いて18リットル缶を作成した(撥水品と呼ぶ)。また、比較のため、疎水性シリカを添加しない塗料を鋼板に塗装し、その鋼板を用いて18リットル缶を作成した(通常品と呼ぶ)。
いずれの18リットル缶も、胴部、底部、吐出口を有する蓋部からなる角形状缶である。胴部は、所定面積に切断した塗装鋼板を、角筒状に折り曲げ加工し、筒部の軸方向に接合部を設けて形成する。この胴部に板状の底部および蓋部を接合することによって18リットル缶になる。蓋部には予め直径33mmの吐出口が設けられている。
吐出実験では、それぞれの缶に高粘度シロップであるPO−20シロップ(三菱商事フードテック株式会社製:5℃の粘度11713mP・s)を20kg充填し、密封した。この缶を逆向きにして、垂直から吐出口側に15度傾けた状態で開栓し、10分間、30秒毎に吐出重量を測定した。図4に缶の吐出状態を示す。
結果を図5に示す。撥水品では、約5分後に吐出重量が充填重量(20kg)にほぼ達し、約8分後には完全に塗出を終了した。これに対し、通常品では吐出が終了するまで10分以上の時間を要した。また、吐出が終了した後、缶内に残った内容物の重量を測定したところ、通常品で約400gであったのに対し、撥水品では30gであった。本発明の撥水性塗料を用いることにより、吐出時間の短縮および缶内の残液量の削減に大きな効果があることが分かった。
また、本発明の塗膜を有した金属板を用いて形成された18リットル缶を試験対象にしていることから、本発明の塗膜には、耐摩耗性の他に、折り曲げ等の加工を金属板に施す際に必要な加工追従性も具備していることが分かった。

Claims (11)

  1. 一次粒子の平均粒子径が1〜100nmである疎水性シリカ微粒子、
    一液系の熱硬化エポキシ樹脂および
    有機溶剤を含む撥水性塗料であって、
    前記疎水性シリカ微粒子の含有量が前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂100質量部に対して40〜200質量部であり、
    前記疎水性シリカ微粒子および前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂からなる固形分が撥水性塗料全体の15〜30質量%であることを特徴とする撥水性塗料。
  2. 前記疎水性シリカ微粒子および前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂からなる固形分が撥水性塗料全体の15〜19質量%であることを特徴とする請求項1記載の撥水性塗料。
  3. 前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂がエポキシフェノール樹脂またはエポキシウレア樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の撥水性塗料。
  4. 前記疎水性シリカ微粒子が一次粒子の5〜30倍の平均粒子径になるまで凝集した凝集体として分散していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の撥水性塗料。
  5. 前記疎水性シリカ微粒子がポリジメチルシロキサンでコーティングした疎水性シリカであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の撥水性塗料。
  6. 少なくとも一方の面に請求項1から5のいずれかに記載の撥水性塗料による塗膜が形成されていることを特徴とする金属板。
  7. 筒状の胴部、底部、及び、吐出口を有する蓋部を有し、
    少なくとも前記胴部の内面に、請求項1から5のいずれかに記載の撥水性塗料による塗膜が形成されていることを特徴とする金属容器。
  8. 前記胴部は、前記撥水性塗料による塗膜が形成された金属板からなることを特徴とする請求項7記載の金属容器。
  9. 一次粒子の平均粒子径が1〜100nmである疎水性シリカ微粒子、一液系の熱硬化エポキシ樹脂、及び、有機溶剤を含む撥水性塗料を金属板の少なくとも一方の面に、5〜200mg/dmの塗付量で塗布したのち、
    塗膜を加熱することによって撥水性塗膜を形成する方法であって、
    前記撥水性塗料の前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂100質量部に対して前記疎水性シリカ微粒子の含有量を40〜200質量部とし、
    前記疎水性シリカ微粒子および前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂からなる固形分を撥水性塗料全体の15〜30質量%にすることを特徴とする撥水性塗膜の形成方法。
  10. 前記加熱の工程では、170℃〜230℃の温度で、7〜13分間加熱することを特徴とする請求項9記載の撥水性塗膜の形成方法。
  11. 前記疎水性シリカ微粒子の含有量が前記一液系の熱硬化エポキシ樹脂100質量部に対して60〜200質量部であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の撥水性塗料。
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