以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、先に説明した、冷房運転時に特定の室内機に流入する冷媒量が不足する設置状態として、地上に設置される1台の室外機と建物の各階に設置される3台の室内機が並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1(A)および図2に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、地上に設置される1台の室外機2と、建物600の各階に設置され、室外機2に液管8およびガス管9で並列に接続された3台の室内機5a〜5cを備えている。詳細には、液管8は、一端が室外機2の閉鎖弁25に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各液管接続部53a〜53cに、それぞれ接続されている。また、ガス管9は、一端が室外機2の閉鎖弁26に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各ガス管接続部54a〜54cに、それぞれ接続されている。以上により、空気調和装置1の冷媒回路100が構成されている。
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、液管8の一端が接続される閉鎖弁25と、ガス管9の一端が接続される閉鎖弁26と、アキュムレータ28と、室外ファン27を備えている。そして、室外ファン27を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、後述する四方弁22のポートaと吐出管41で接続されており、また、圧縮機21の冷媒吸入側は、アキュムレータ28の冷媒流出側と吸入管42で接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側と吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ28の冷媒流入側と冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26と室外機ガス管45で接続されている。
室外熱交換器23は、冷媒と、後述する室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述したように四方弁22のポートbと冷媒配管43で接続され、他方の冷媒出入口は室外機液管44で閉鎖弁25と接続されている。
室外膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外膨張弁24は電子膨張弁であり、その開度が調整されることで、室外熱交換器23に流入する冷媒量、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒量を調整する。室外膨張弁24の開度は、空気調和装置1が冷房運転を行っている場合は全開とされる。また、空気調和装置1が暖房運転を行っている場合は、後述する吐出温度センサ33で検出した圧縮機21の吐出温度に応じてその開度を制御することで、吐出温度が性能上限値を超えないようにしている。
室外ファン27は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、図示しないファンモータによって回転することで図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
アキュムレータ28は、上述したように、冷媒流入側が四方弁22のポートcと冷媒配管46で接続されるとともに、冷媒流出側が圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。アキュムレータ28は、冷媒配管46からアキュムレータ28の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離してガス冷媒のみを圧縮機21に吸入させる。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34が設けられている。
室外機液管44における室外熱交換器23と室外膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度あるいは室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための室外熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が備えられている。
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納されている制御基板に搭載されている。図1(B)に示すように、室外機制御手段200は、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240を備えている。
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27の制御状態等を記憶している。通信部230は、室内機5a〜5cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。
CPU210は、前述した室外機2の各センサでの検出結果をセンサ入力部240を介して取り込む。また、CPU210は、室内機5a〜5cから送信される制御信号を通信部230を介して取り込む。CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン27の駆動制御を行う。また、CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、四方弁22の切り換え制御を行う。さらには、CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、室外膨張弁24の開度調整を行う。
次に、3台の室内機5a〜5cについて説明する。3台の室内機5a〜5cは、室内熱交換器51a〜51cと、室内膨張弁52a〜52cと、分岐した液管8の他端が接続された液管接続部53a〜53cと、分岐したガス管9の他端が接続されたガス管接続部54a〜54cと、室内ファン55a〜55cを備えている。そして、室内ファン55a〜55cを除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室内機冷媒回路50a〜50cを構成している。そして、3台の室内機5a〜5cは全て同じ能力であり、冷房運転時の室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側における冷媒過熱度を所定値(例えば、4deg)以下とできれば、各室内機で充分な暖房能力を発揮できるものである。
尚、室内機5a〜5cの構成は全て同じであるため、以下の説明では、室内機5aの構成についてのみ説明を行い、その他の室内機5b、5cについては説明を省略する。また、図1では、室内機5aの構成装置に付与した番号の末尾をaからbおよびcにそれぞれ変更したものが、室外機5aの構成装置と対応する室内機5b、5cの構成装置となる。
室内熱交換器51aは、冷媒と後述する室内ファン55aの回転により図示しない吸込口から室内機5aの内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものであり、一方の冷媒出入口が液管接続部53aと室内機液管71aで接続され、他方の冷媒出入口がガス管接続部54aと室内機ガス管72aで接続されている。室内熱交換器51aは、室内機5aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
尚、液管接続部53aやガス管接続部54aは、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
室内膨張弁52aは、室内機液管71aに設けられている。室内膨張弁52aは電子膨張弁であり、室内熱交換器51aが凝縮器として機能する場合、すなわち、室内機5aが暖房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51aの冷媒出口(液管接続部53a側)での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように調整される。ここで、目標冷媒過冷却度とは、室内機5aで十分な暖房能力が発揮されるための冷媒過冷却度である。また、室内膨張弁52aは、室内熱交換器51aが蒸発器として機能する場合、すなわち、室内機5aが冷房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51aの冷媒出口(ガス管接続部54a側)での冷媒過熱度が後述する目標冷媒過熱度となるように調整される。
室内ファン55aは樹脂材で形成されており、室内熱交換器51aの近傍に配置されている。室内ファン55aは、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5aの内に室内空気を取り込み、室内熱交換器51aにおいて冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ供給する。
以上説明した構成の他に、室内機5aには各種のセンサが設けられている。室内機液管71aにおける室内熱交換器51aと室内膨張弁52aとの間には、室内熱交換器51aに流入あるいは室内熱交換器51aから流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ61aが設けられている。室内機ガス管72aには、室内熱交換器51aから流出あるいは室内熱交換器51aに流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62aが設けられている。室内機5aの図示しない吸込口付近には、室内機5aの内部に流入する室内空気の温度、すなわち吸込温度を検出する吸込温度センサ63aが備えられている。
また、室内機5aには、室内機制御手段500aが備えられている。室内機制御手段500aは、室内機5aの図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU510aと、記憶部520aと、通信部530aと、センサ入力部540aとを備えている。
記憶部520aは、ROMやRAMで構成されており、室内機5aの制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、使用者による空調運転に関する設定情報等を記憶する。通信部530aは、室外機2および他の室内機5b、5cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部540aは、室内機5aの各種センサでの検出結果を取り込んでCPU510aに出力する。
CPU510aは、前述した室内機5aの各センサでの検出結果をセンサ入力部540aを介して取り込む。また、CPU510aは、使用者が図示しないリモコンを操作して設定した運転情報やタイマー運転設定等を含んだ信号を図示しないリモコン受光部を介して取り込む。また、CPU510aは、運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ制御信号を、通信部530aを介して室外機2に送信するとともに、室外機2が検出した外気温度等の情報を含む信号を通信部530aを介して室外機2から受信する。CPU510aは、取り込んだ検出結果やリモコンおよび室外機2から送信された各種信号に基づいて、室内膨張弁52aの開度調整や、室内ファン55aの駆動制御を行う。
尚、以上説明した室外機制御手段200と室内機制御手段500a〜500cとで、本発明の制御手段が構成される。
以上説明した空気調和装置1が、図2に示す建物600に設置されている。具体的には、室外機2が地上に配置されており、室内機5aが1階、室内機5bが2階、室内機5cが3階に、それぞれ設置されている。そして、室外機2と室内機5a〜5cとは、上述した液管8とガス管9とで相互に接続されており、これら液管8とガス管9とは、図示しない建物600の壁面内や天井裏に埋設されている。尚、図2では、最上階(3階)に設置されている室内機5cと最下階(1階)に設置されている室内機5aとの高低差をHで表している。
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路100における冷媒の流れや各部の動作について、図1(A)を用いて説明する。尚、以下の説明では、室内機5a〜5cが冷房運転を行う場合について説明し、暖房運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1(A)における矢印は冷房運転時の冷媒の流れを示している。
図1(A)に示すように、室内機5a〜5cが冷房運転を行う場合、室外機制御手段200のCPU210は、四方弁22を実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbが連通するよう、また、ポートcとポートdが連通するよう、切り換える。これにより、冷媒回路100が、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能する暖房サイクルとなる。
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管43を介して室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、室外機液管44、開度が全開とされている室外膨張弁24、閉鎖弁25を介して液管8に流入する。
液管8を流れる冷媒は、液管接続部53a〜53cを介して室内機5a〜5cに流入する。室内機5a〜5cに流入した冷媒は、室内機液管71a〜71cを流れ、室内膨張弁52a〜52cで減圧されて室内熱交換器51a〜51cに流入する。室内熱交換器51a〜51cに流入した冷媒は、室内ファン55a〜55cの回転により室内機5a〜5cの内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能し、室内熱交換器51a〜51cで冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5a〜5cが設置された室内の冷房が行われる。
室内熱交換器51a〜51cから流出した冷媒は室内機ガス管72a〜72cを流れ、ガス管接続部54a〜54cを介してガス管9に流入する。ガス管9を流れる冷媒は、閉鎖弁26を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、室外機ガス管45、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ28、吸入管42の順に流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
尚、室内機5a〜5cが暖房運転を行う場合、CPU210は、四方弁22を破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdが連通するよう、また、ポートbとポートcが連通するように切り換える。これにより、冷媒回路100が、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
次に、図1乃至図3を用いて、本実施形態の空気調和装置1において、本発明に関わる冷媒回路の動作やその作用、および、効果について説明する。尚、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能するときに、室内熱交換器51a〜51cに流入する冷媒の温度である熱交入口温度を検出する液側温度センサ61a〜61cと、室内熱交換器51a〜51cから流出する冷媒の温度である熱交出口温度を検出するガス側温度センサ62a〜62cと、室外機制御手段200と、室内機制御手段500a〜500cが、本発明の過熱度検出手段である。
図2を用いて前述したように、本実施形態の空気調和装置1では、室外機2が建物600の地上に設置されるとともに室内機5a〜5cが各階に設置されている。つまり、室外機2が室内機5a〜5cより低い位置に設置されるとともに、室内機5aと室内機5cの設置場所にも高低差Hがある設置となっている。この場合に、空気調和装置1で冷房運転を行ったときは、以下のような問題がある。
冷房運転では、圧縮機21から吐出されたガス冷媒は、吐出管41から四方弁22および冷媒配管43を介して室外熱交換器23に流入し、室外熱交換器23で外気と熱交換を行って凝縮して液冷媒となる。このとき、室外機2が室内機5a〜5cより低い位置に設置されているために、室外熱交換器23で凝縮し液管8に流出した液冷媒は、重力に逆らって室内機5a〜5cに向かって液管8を流れることになる。
従って、室外機2に比べて室内機5a〜5cの設置位置が高い場合は、液管8に流出した液冷媒が室内機5a〜5cに向かって流れにくくなる。そして、各室内機5a〜5cの設置位置の高低差Hがある場合は、3階に設置されている室内機5cの室内膨張弁52cの上流側(室外機2側)における冷媒圧力は、他の階に設置されている室内機5a、5bの室内膨張弁52a、52bの上流側における冷媒圧力よりも低くなる。このため、室内機5cの室内膨張弁52cの上流側の冷媒圧力と下流側(室内熱交換器51c側)の冷媒圧力の圧力差が、室内機5a、5bの室内膨張弁52a、52bの上流側の冷媒圧力と下流側の冷媒圧力の圧力差に比べて小さくなる。
上記のような冷媒回路100の状態では、室内膨張弁52a〜52cの上流側の冷媒圧力と下流側の冷媒圧力の圧力差が小さいほど、室内膨張弁52a〜52cを通過する冷媒量が少なくなる。従って、3階に設置された室内機5cを流れる冷媒量は、他の室内機5a、5bを流れる冷媒量と比べて少なくなる。このことは、1階(一番低い位置)に設置された室内機5aと3階(一番高い位置)に設置された室内機5cの高低差Hが大きくなる程顕著になる。つまり、高低差が大きくなる程、室外機2から液管8に流出した液冷媒が室内機5cに向かって流れにくくなって室内機5cに流入する冷媒量が室内機5a、5bと比べて少なくなる。
そして、室内機5aと室内機5cの高低差がある値(例えば、50m)以上となれば、室内機5cに流入する冷媒量が要求される冷房能力を発揮するのに必要な冷媒量に対して不足する恐れがある。このとき、室内機5cに流入する冷媒量を増やすために室内膨張弁52cの開度を大きくしても、そもそも室外機2から室内機5cに向かって流れる冷媒量が不足しているため、室内機5cに流入する冷媒量は増加せず、冷房能力を発揮できない状態が解消できないという問題がある。
上記のような問題を解決するために、空気調和装置1が冷房運転を行うときに、室内機5a〜5cの室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側(ガス側閉鎖弁54a〜54c側)における冷媒過熱度を定期的(例えば、30秒毎)に求め、求めた冷媒過熱度のうち最大値と最小値を抽出してこれらの平均値を求めて目標冷媒過熱度とする。そして、室内機5a〜5cの室内膨張弁52a〜52cの開度を、室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側における冷媒過熱度が求めた目標冷媒過熱度となるように調整する。
前述したように、室内膨張弁5cを大きくしても室内機5cに冷媒が流れず、室内機5cで冷媒量が不足して冷房能力が発揮されないとき、室内機5a〜5cの各冷媒過熱度は、例えば、室内機5aで1deg、室内機5bで2deg、室内機5cで11deg、というように、各室内機の設置位置が室外機2から上方に行く程大きくなっている。これは、室内機5cで冷媒量が不足することで冷媒過熱度が大きな値となっているのに対し、室内機5a、5bでは冷媒量が室内機5cと比べて多いため冷媒過熱度が小さい値となっていることを示す、つまり、冷房運転時の冷媒回路100において各室内機5a〜5cでの冷媒分布が偏っていることを示す。
冷房運転時に、各室内機5a〜5cでの冷媒分布が偏っているときに、冷媒過熱度の最大値と最小値の平均値を目標冷媒過熱度とすると、目標冷媒過熱度(上記の例の場合では、最大値:11degと最小値:1degの平均値である6deg)より冷媒過熱度の小さい室内機5aおよび5bでは、冷媒過熱度を目標冷媒過熱度まで上昇させるために室内膨張弁52a、52bの開度が絞られる。これにより、室内機5a、5bに流入する冷媒量が減少するとともに、室内膨張弁52a、52の下流側(室内熱交換器51a、51b側)における冷媒圧力が低下する。
一方、目標冷媒過熱度より冷媒過熱度の大きい室内機5cでは、室内膨張弁52a、52bの下流側の冷媒圧力が低下することによって室内膨張弁52cの下流側の冷媒圧力も低下するために、室内膨張弁52cの上流側と下流側の圧力差が大きくなる。従って、室内機5cの冷媒過熱度を目標冷媒過熱度まで低下させるために、室内膨張弁52cの開度を大きくすると室内膨張弁52を通過する冷媒量が増加する、つまり、室内機5cに流入する冷媒量が増えるので、室内機5cの冷房能力が上昇する。
上記のように、冷媒過熱度の最大値と最小値の平均値を目標冷媒過熱度として各膨張弁52a〜52cの開度調整を継続していると、この開度調整を開始してから時間が経過するのにしたがって、室内機5aと室内機5bに流入する冷媒量は減少し、室内機5cに流入する冷媒量は増加する、つまり、室内機5a、5bに流入する冷媒量と室内機5cに流入する冷媒量が近づくので、各室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度も近づいて冷媒過熱度の最大値と最小値の差が小さくなる。このことから、冷媒過熱度の最大値と最小値の差(以降、冷媒過熱度差と記載)が所定値(以降、閾過熱度差と記載)未満となれば、室内機5a〜5cにおける冷媒分布の偏りが解消したと判断できる。
ここで、上記閾過熱度差は予め試験等を行って室外機制御手段200の記憶部220に記憶されているものであり、冷媒過熱度の最大値と最小値の差が閾過熱度差以上となっていれば、冷媒過熱度が最大である室内機で要求されている冷房能力が発揮できないほど、当該室内機に流入する冷媒量が不足している状態であることが判明している値である。尚、閾過熱度差は、例えば2degである。
上述したように、冷媒量バランス制御を継続して実行すると、室内機5aと室内機5bに流入する冷媒量は減少し、室内機5cに流入する冷媒量は増加するので、室内機5aと室内機5bでは冷媒過熱度が大きくなり、室内機5cでは冷媒過熱度が小さくなる。そして、冷媒量バランス制御を開始してから時間が経過するのにしたがって各室内機の冷媒過熱度は近づいていく。
このような状態であるときに、冷媒過熱度の最大値と最小値を用いて求めた平均冷媒過熱度は、冷媒量バランス制御を始める前の、冷媒過熱度の最大値と最小値の間の値で安定する。このとき、この安定したときの平均冷媒過熱度が、前述した各室内機5a〜5cで定格能力を発揮できる冷媒過熱度の所定値(4deg)より大きい値で安定する場合がある。
上記のように、平均冷媒過熱度が大きい値で安定した状態で冷媒量バランス制御を続行すると、室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度を大きな平均冷媒過熱度とするために膨張弁52a〜52cのそれぞれの開度が小さくされ、各室内機5a〜5cに流入する冷媒量が減少するので、室内機5a〜5cの各々の冷房能力が低下するという問題がある。
上記のような問題点を解決するために、冷房運転を行っているときに各室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度を用いて冷媒過熱度差を求める。そして、冷媒過熱度差が閾過熱度差以上であれば、室内機5a〜5cにおける冷媒分布に偏りがあると判断し、目標冷媒過熱度を冷媒過熱度の最大値と最小値の平均値とし、室内機5a〜5cの冷媒過熱度が当該目標冷媒過熱度となるように各膨張弁52a〜52cの開度調整を行う。一方、冷媒過熱度差が閾過熱度差未満であれば、冷媒過熱度の最大値と最小値の平均値が大きい値で安定している恐れがあると判断し、冷媒過熱度の最小値から所定の過熱度減算値(例えば、1deg)を減じた値を目標冷媒過熱度として、室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度を目標冷媒過熱度とするために膨張弁52a〜52cのそれぞれの開度を調整する目標冷媒過熱度制御を実行する。
上記のように、冷媒過熱度の最大値と最小値の差が閾過熱度差以上あるいは未満であるかに応じて、目標冷媒過熱度の算出方法を適宜選択して行う。目標冷媒過熱度を冷媒過熱度の最大値と最小値の平均値とすることによって、室内機5a〜5cにおける冷媒分布の偏りを解消することができる。また、目標冷媒過熱度を冷媒過熱度の最小値から所定の過熱度減算値を減じた値とすることによって、室内機5a〜5cで要求される冷房能力が十分に発揮できる量の冷媒を室内機5a〜5cの各々に供給できる。従って、空気調和装置1の冷房運転時に、室内機5a〜5cで冷媒量が不足することを防止して、各室内機5a〜5cで十分な冷房能力を発揮できる。
ところで、各室内機5a〜5cにおいては、冷房運転時に使用者が要求する設定温度に応じた冷房能力を発揮するために必要な冷媒過熱度(以降、最適冷媒過熱度と記載)がある。この最適冷媒過熱度は、要求される冷房能力を用いて各室内機制御手段500a〜500cの記憶部520a〜520cに記憶された以下に示す式により求められる。
最適冷媒過熱度=−A×冷房能力/100+B・・・(数式1)
上記数式1におけるAおよびBは、各々が試験等を行って求められた定数である。この数式1を用いて求められる最適冷媒過熱度は、要求される冷房能力が小さくなるのにつれてその値が大きくなる。
尚、最適冷媒過熱度は、上述したように数式を用いて求められるのに代えて、要求される冷房能力に対応する最適冷媒過熱度を予め定めたテーブルを、各室内機制御手段500a〜500cの記憶部520a〜520cに記憶しておき、要求される冷房能力に応じた最適冷媒過熱度をこのテーブルを参照して抽出してもよい。
冷房運転時に、室内機5a〜5cの各冷媒過熱度の最大値と最小値の平均値を目標冷媒過熱度として、室内膨張弁52a〜52cの開度調整を行うことを継続すると、前述したように3階に設置された室内機5cに流入する冷媒量が増えるので、冷媒回路100における冷媒循環量が増加する。そして、冷媒回路100における冷媒循環量の増加に伴って、最大値と最小値の平均値すなわち目標冷媒過熱度も小さくなる。一方、室内機5a〜5cの各冷媒過熱度の最小値から過熱度減算値を減じた値を目標冷媒過熱度として、室内膨張弁52a〜52cの開度調整を行うことを継続した場合も、目標冷媒過熱度が小さくなる。
上記のように目標冷媒過熱度が小さくなったときに、室内機5a〜5cのうち要求される冷房能力に応じた最適冷媒過熱度が目標冷媒過熱度より大きい室内機が存在する場合は、当該室内機における冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように室内膨張弁の開度が調整されると、当該膨張弁の開度が最適冷媒過熱度を目指す場合と比べて大きくされる。これにより、当該室内機に流入する冷媒量が必要以上の量となって要求される冷房能力以上の能力が発揮されて、室内温度が設定温度に到達して当該室内機を停止するサーモオフと、室内温度が低下して当該室内機を再起動するサーモオンを頻繁に繰り返す効率の悪い運転となる恐れがある。
そこで、本実施形態の空気調和装置1では、冷房運転時に各室内機5a〜5cの冷媒過熱度を用いて目標冷媒過熱度を求め、各室内機5a〜5cの冷媒過熱度が求めた目標冷媒過熱度となるように各室内膨張弁52a〜52cの開度を調整するときに、求めた目標冷媒過熱度と各室内機5a〜5cで要求される冷房能力に応じた最適冷媒過熱度を比較し、各室内機5a〜5cの冷媒過熱度がいずれか大きい方の値になるように、各室内膨張弁52a〜52cの開度を調整する。
これにより、各室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度が各室内機5a〜5cで要求される冷房能力に対応した値となるように室内膨張弁52a〜52cの開度調整が行える。従って、全ての室内機5a〜5cに過不足ない量の冷媒を供給できるので、室内機5a〜5cが頻繁にサーモオン/サーモオフを繰り返すことなく、かつ、十分な冷房能力を発揮できる。
次に、図3および図4を用いて、本実施形態の空気調和装置1における冷房運転時の制御について説明する。図3は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合の、室外機制御部200のCPU210が行う制御に関する処理の流れを示すものである。また、図4は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合の、室内機制御部500a〜500cのCPU510a〜510cが行う制御に関する処理の流れを示すものである。いずれの図においても、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。尚、図3や図4では本発明に関わる処理を中心に説明しており、これ以外の処理、例えば、使用者の指示した設定温度や風量等の運転条件に対応した冷媒回路100の制御、といった、空気調和装置1に関わる一般的な処理については説明を省略している。また、以下の説明では、全ての室内機5a〜5cが冷房運転を行っている場合を例に挙げて説明する。
また、以下の説明では、室内機5a〜5cの液側温度センサ61a〜61cで検出する室内熱交換器51a〜51cの冷媒入口側における冷媒温度である熱交入口温度をTi(単位:℃。室内機5a〜5c毎に個別に言及する場合は、Tia〜Tic)、室内機5a〜5cのガス側温度センサ62a〜62cで検出する室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側における冷媒温度である熱交出口温度をTo(単位:℃。室内機5a〜5c毎に個別に言及する場合は、Toa〜Toc)とする。
また、熱交出口温度Toから熱交入口温度Tiを減じて求める室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度をSH(単位:deg。室内機5a〜5c毎に個別に言及する場合は、SHa〜SHc)、各室内機5a〜5cの冷媒過熱度SHのうちの最大値である最大冷媒過熱度をSHmax、各室内機5a〜5cの冷媒過熱度SHのうちの最小値である最小冷媒過熱度をSHmin、最大冷媒過熱度SHmaxと最小冷媒過熱度SHminの差である冷媒過熱度差をSHd、閾過熱度差をSHTsとする。
さらには、最大冷媒過熱度SHmaxや最小冷媒過熱度SHminを用いて求める目標冷媒過熱度をSHg、目標冷媒過熱度SHgを求める際に最小冷媒過熱度SHminから減じる値である過熱度減算値をSHr、目標冷媒過熱度SHgの上限値である上限冷媒過熱度をSHu、目標冷媒過熱度SHgの下限値である下限冷媒過熱度をSHl、室内機5a〜5cの最適冷媒過熱度をSHz(単位:deg。室内機5a〜5c毎に個別に言及する場合は、SHza〜SHzc)とする。
ここで、過熱度減算値SHrは、予め試験等を行って室外機制御手段200の記憶部220に記憶されているものであり、例えば1degである。過熱度減算値SHrは、目標冷媒過熱度SHgの変化量を最小限に抑える整数値が選択されている。過熱度減算値SHrを例えば3degといった大きな値とすれば、目標冷媒過熱度SHgが大きく変化しこれに起因して室内機5a〜5cにおける冷媒分布が再び偏ることを防ぐためである。
また、上限冷媒過熱度SHuおよび下限冷媒過熱度SHlも、各々が予め試験等を行って室外機制御手段200の記憶部220に記憶されているものであり、例えば、上限冷媒過熱度SHuが8deg、下限冷媒過熱度SHsが2degである。前述したように。上限冷媒過熱度SHuは、各室内機5a〜5cで要求された冷房能力が発揮できる冷媒過熱度SHの上限値であり、下限冷媒過熱度SHlは、冷媒過熱度差が閾過熱度差以上となるつまりは室内機5a〜5cにおける冷媒分布に偏りが発生する恐れがある下限値である。
また、最適冷媒過熱度SHzは、前述したように、室内機5a〜5cの記憶部520a〜520cに記憶されている数式1に各室内機5a〜5cで要求される冷房能力を代入して求められるか、あるいは、予め冷房能力と対応させたテーブルとして室内機5a〜5cの記憶部520a〜520cに記憶されている値である。
<室外機制御手段が行う処理>
まず、図3を用いて冷房運転時の室外機制御手段200のCPU210が行う処理について説明する。CPU210は、使用者の運転指示が冷房運転指示であるか否かを判断する(ST1)。冷房運転指示でなければ(ST1−No)、CPU210は、暖房運転の開始処理である暖房運転開始処理を実行する(ST17)。ここで、暖房運転開始処理とは、CPU210が四方弁22を操作して冷媒回路100を暖房サイクルとすることであり、空気調和装置1が停止している状態から暖房運転を開始するとき、もしくは、冷房運転から暖房運転に切り替えられる際に行われる処理である。
そして、CPU210は、圧縮機21や室外ファン27を所定の回転数で起動するとともに、通信部230を介して室内機5a〜5cに対し室内ファン55a〜55cの駆動制御や室内膨張弁52a〜52cの開度調整を行うよう指示して暖房運転の制御を開始し(ST18)、ST14に処理を進める。
ST1において、冷房運転指示であれば(ST1−Yes)、CPU210は、冷房運転開始処理を実行する(ST2)。ここで、冷房運転開始処理とは、CPU210が四方弁22を操作して冷媒回路100を図1(A)に示す状態、つまり、冷媒回路100を冷房サイクルとすることであり、空気調和装置1が停止している状態から冷房運転を開始するとき、もしくは、暖房運転から冷房運転に切り替えられる際に行われる処理である。
次に、CPU210は、冷房運転の開始処理を行う(ST3)。冷房運転の開始処理では、CPU210は、室内機5a〜5cからの要求能力に応じた回転数で圧縮機21や室外ファン27を起動する。また、CPU210は、室外膨張弁24の開度を全開とする。
次に、CPU210は、各室内機5a〜5cから熱交入口温度Ti(Tia〜Tic)と熱交出口温度To(Toa〜Toc)を通信部230を介して取り込む(ST4)。尚、各熱交入口温度Tiおよび各熱交出口温度Toは、室内機5a〜5cにおいて液側温度センサ61a〜61cやガス側温度センサ62a〜62cでの検出値をCPU510a〜510cが取り込み、通信部530a〜530cを介して室外機2に送信しているものである。また、上述した各検出値は、所定時間毎(例えば、30秒毎)にCPU210およびCPU510a〜510cに取り込まれて、記憶部210および記憶部520a〜520cに記憶されている。
次に、CPU210は、ST4で取り込んだ各室内機5a〜5cの熱交出口温度Toから熱交入口温度Tiを減じて、室内機5a〜5cの冷媒過熱度SHを求める(ST5)。具体的には、CPU210は、室内機5aの熱交出口温度Toaから熱交入口温度Tiaを減じて冷媒過熱度SHaを求め、これを室内機5aに関連付けて記憶部220に記憶する。CPU210は、室内機5bと室内機5cについても室内機5aと同様に冷媒過熱度SHb、SHcをそれぞれ求め、これらを室内機5bあるいは室内機5cに関連付けて記憶部220に記憶する。
次に、CPU210は、ST5で求めた室内機5a〜5cの冷媒過熱度SHa〜SHcのうちの最大値を最大冷媒過熱度SHmax、最小値を最小冷媒過熱度SHminとし、最大冷媒過熱度SHmaxから最小冷媒過熱度SHminを減じて求めた冷媒過熱度差SHdが閾過熱度差SHTs以上であるか否かを判断する(ST6)。
冷媒過熱度差SHdが閾過熱度差SHTs以上であれば(ST6−Yes)、CPU210は、最大冷媒過熱度SHmaxと最小冷媒過熱度SHminを用いて目標冷媒過熱度SHgを求める(ST7)。ここで、目標冷媒過熱度SHgは、最大冷媒過熱度SHmaxと最小冷媒過熱度SHminの算術平均値:[最大冷媒過熱度SHmax+最小冷媒過熱度SHmin]/2、である。
ST7の処理を終えたCPU210は、ST9に処理を進める。
一方、ST6において冷媒過熱度差SHdが閾過熱度差SHTs以上でなければ(ST6−No)、CPU210は、最小冷媒過熱度SHminを用いて目標冷媒過熱度SHgを求める(ST8)。ここで、目標冷媒過熱度SHgは、最小冷媒過熱度SHminから過熱度減算値SHrを減じた値である。
ST8の処理を終えたCPU210は、ST9に処理を進める。
次に、CPU210は、ST7もしくはST8で求めた目標冷媒過熱度SHgが上限冷媒過熱度SHu以上であるか否かを判断する(ST9)。目標冷媒過熱度SHgが上限冷媒過熱度SHu以上であれば(ST9−Yes)、CPU210は、上限冷媒過熱度SHuを目標冷媒過熱度SHgとして(ST11)、ST13に処理を進める。
目標冷媒過熱度SHgが上限冷媒過熱度SHu以上でなければ(ST9−No)、CPU210は、ST7もしくはST8で求めた目標冷媒過熱度SHgが下限冷媒過熱度SHl以下であるか否かを判断する(ST10)。目標冷媒過熱度SHgが下限冷媒過熱度SHl以下でなければ(ST10−No)、CPU210は、ST7もしくはST8で求めた目標冷媒過熱度SHgをそのまま使用することとして、ST13に処理を進める。目標冷媒過熱度SHgが下限冷媒過熱度SHl以下であれば(ST10−Yes)、CPU210は、下限冷媒過熱度SHlを目標冷媒過熱度SHgとして(ST12)、ST13に処理を進める。
次に、CPU210は、ST9もしくはST11もしくはST12で決定した目標冷媒過熱度SHgを、通信部230を介して室内機5a〜5cに送信する(ST13)。
次に、CPU210は、使用者による運転モード切替指示があるか否かを判断する(ST14)。ここで、運転モード切替指示とは、現在の運転(冷房運転)から別の運転(暖房運転)への切替を指示するものである。運転モード切替指示がある場合は(ST14−Yes)、CPU210は、ST1に処理を戻す。運転モード切替指示がない場合は(ST14−No)、CPU210は、使用者による運転停止指示があるか否かを判断する(ST15)。運転停止指示とは、全ての室内機5a〜5cが運転を停止することを指示すものである。
運転停止指示があれば(ST15−Yes)、CPU210は、運転停止処理を実行し(ST16)、処理を終了する。運転停止処理では、CPU210は、圧縮機21や室外ファン27を停止するとともに室外膨張弁24を全閉とする。また、CPU210は、室内機5a〜5cに対し通信部230を介して運転を停止する旨の運転停止信号を送信する。運転停止信号を通信部530a〜530cを介して受信した室内機5a〜5cのCPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cを停止するとともに室内膨張弁52a〜52cを全閉とする。
ST15において運転停止指示がなければ(ST15−No)、CPU210は、現在の運転が冷房運転であるか否かを判断する(ST19)。現在の運転が冷房運転であれば(ST19−Yes)、CPU210は、ST3に処理を戻す。現在の運転が冷房運転でなければ(ST19−No)、つまり、現在の運転が暖房運転であれば、CPU210は、ST18に処理を戻す。
<室内機制御手段が行う処理>
次に、図4を用いて冷房運転時の室内機制御手段500a〜500cのCPU510a〜510cが行う処理について説明する。まず、CPU510a〜510cは、使用者の指示した運転モードが冷房運転であるか否かを判断する(ST21)。使用者の指示した運転モードが冷房運転でなければ(ST21−No)、つまり、使用者の指示が暖房運転であれば、CPU510a〜510cは暖房運転制御を実行し(ST33)、ST30に処理を進める。ここで、暖房運転制御とは、CPU510a〜510cが使用者の風量指示に応じた回転数で室内ファン55a〜55cを起動するとともに、室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口(液管接続部53a〜53c側)での冷媒過冷却度が通常冷房運転時の目標冷媒過熱度(例えば、6deg)となるように室内膨張弁52a〜52cの開度を調整するものである。
ST21において、使用者の指示した運転モードが冷房運転であれば(ST21−Yes)、CPU510a〜510cは、室内膨張弁52a〜52cの開度を所定開度とする(ST22)。具体的には、CPU510a〜510cは、ガス側温度センサ62a〜62cで検出した熱交出口温度Toa〜Tocから液側温度センサ61a〜61cで検出した熱交入口温度Tia〜Ticを減じて、室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側(ガス管接続部54a〜54c側)での冷媒過熱度SHa〜SHcを求め、求めた冷媒過熱度SHa〜SHcが、運転開始時の目標値である初期冷媒過熱度(例えば、4deg)となるように、室内膨張弁52a〜52cの開度を調整する。
ここで、上記初期冷媒過熱度は、予め試験等を行って求めて記憶部530a〜530cに記憶されている値であり、各室内機で冷房能力が十分に発揮されることが確認できている値である。尚、CPU510a〜510cは、冷房運転の開始から冷媒回路100の状態が安定するまでの間(例えば、運転開始から3分間)は、上述した運転開始時の初期冷媒過熱度となるように室内膨張弁52a〜52cの開度を調整する。
次に、CPU510a〜510cは、使用者の風量指示に応じた回転数で室内ファン55a〜55cを起動する室内ファン回転数制御を行う(ST23)。
次に、CPU510a〜510cは、液側温度センサ61a〜61cで検出した熱交入口温度Tia〜Ticと、ガス側温度センサ62a〜62cで検出した熱交出口温度Toa〜Tocをセンサ入力部540a〜540cを介して取り込み、取り込んだ熱交入口温度Tia〜Ticと熱交出口温度Toa〜Tocを通信部530a〜530cを介して室外機2に送信する(ST24)。上述したように、熱交入口温度Tia〜Ticと熱交出口温度Toa〜Tocは、所定時間毎(例えば、30秒毎)にCPU510a〜510cが取り込んで記憶部530a〜530cに記憶している。
次に、CPU510a〜510cは、室外機2から通信部530a〜530cを介して目標冷媒過熱度SHgを受信したか否かを判断する(ST25)。目標冷媒過熱度SHgを受信していなければ(ST25−No)、CPU510a〜510cはST30に処理を進める。
目標冷媒過熱度SHgを受信していれば(ST25−Yes)、CPU510a〜510cは、使用者から要求されている冷房能力を基づいて最適冷媒過熱度SHzを決定する(ST26)。例えば、CPU510a〜510cは、前述した数式1に各室内機5a〜5cで要求される冷房能力を代入して、各室内機5a〜5cの最適冷媒過熱度SHza〜SHzcを求める。
尚、各室内機5a〜5cの記憶部520a〜520cには、使用者が指示した設定温度と、吸込温度センサ63a〜63cで検出しセンサ入力部540a〜540cを介して取り込んだ各室内機5a〜5cが設置された部屋の室温の温度差に応じて冷房能力が定められた、図示しない冷房能力テーブルが記憶されている。CPU510a〜510cは、設定温度と室温の温度差を定期的(例えば、30秒毎に室温を取り込む度)に求め、求めた温度差に応じた冷房能力を冷房能力テーブルから抽出する。この冷房能力テーブルは、予め試験等を行って求められて記憶部520a〜520cに記憶されているものであり、設定温度と室温の温度差が大きい程冷房能力は大きくなる。
次に、CPU510a〜510cは、ST25で受信した各室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度の共通の目標値である目標冷媒過熱度SHgがST26で決定した室内機5a〜5c毎の最適冷媒過熱度SHzより大きいか否かを判断する(ST27)。目標冷媒過熱度SHgが最適冷媒過熱度SHzより大きい場合は(ST27−Yes)、CPU510a〜510cは、各室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度SHa〜SHcが各室内機5a〜5cの最適冷媒過熱度SHza〜SHzcとなるように、各室内膨張弁52a〜52cの開度を調整する(ST28)。一方、目標冷媒過熱度SHgが最適冷媒過熱度SHz以下の場合は(ST27−No)、CPU510a〜510cは、各室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度SHa〜SHcが目標冷媒過熱度SHgとなるように、各室内膨張弁52a〜52cの開度を調整する(ST29)。
尚、CPU510a〜510cは、ガス側温度センサ62a〜62cで検出した熱交出口温度Toa〜Tocから液側温度センサ61a〜61cで検出した熱交入口温度Tia〜Ticを減じて、室内熱交換器51a〜51cの冷媒過熱度SHa〜SHcを求め、求めた冷媒過熱度SHa〜SHcが、最適冷媒過熱度SHzあるいは目標冷媒過熱度SHgとなるように、室内膨張弁52a〜52cの開度を調整する。
ST28もしくはST29もしくはST33の処理を終えたCPU510a〜510cは、使用者から運転モードの切替えが指示されたか否かを判断する(ST30)。使用者から運転モードの切替えが指示されていれば(ST30−Yes)、CPU510a〜510cはST21に処理を戻す。使用者から運転モードの切替えが指示されていなければ(ST30−No)、CPU510a〜510cは、使用者から運転停止が指示されたか否かを判断する(ST31)。
使用者から運転停止が指示されていれば(ST31−Yes)、CPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cを停止するとともに室内膨張弁52a〜52cを全閉とする運転停止処理を行い(ST32)、処理を終了する。
使用者から運転停止が指示されていなければ(ST31−No)、CPU510a〜510cは、現在の運転が冷房運転であるか否かを判断する(ST34)。現在の運転が冷房運転であれば(ST34−Yes)、CPU510a〜510cは、ST23に処理を戻す。現在の運転が冷房運転でなければ(ST34−No)、つまり、現在の運転が暖房運転であれば、CPU510a〜510cは、ST33に処理を戻す。
以上説明したように、本実施形態の空気調和装置1は、冷房運転時に室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度SHa〜SHcを求め、これらのうちの最大冷媒過熱度SHmaxと最小冷媒過熱度SHminの差である冷媒過熱度差SHdが閾過熱度SHTs以上であるか否かによって、室内膨張弁52a〜52cの開度調整に使用する目標冷媒過熱度SHgを、最大冷媒過熱度SHmaxと最小冷媒過熱度SHminの平均値とするか、あるいは、最小冷媒過熱度SHminから過熱度減算値SHrを減じた値とするかを判断する。
このとき、求めた目標冷媒過熱度SHgが上限冷媒過熱度SHu以上であれば、この上限冷媒過熱度SHuを目標冷媒過熱度SHgとし、求めた目標冷媒過熱度SHgが下限冷媒過熱度SHl以上であれば、この下限冷媒過熱度SHlを目標冷媒過熱度SHgとする。そして、各室内機5a〜5cにおいては、室外機2から受信した目標冷媒過熱度SHgと各室内機5a〜5cで要求される冷房能力に応じた最適冷媒過熱度SHza〜SHzcを比較し、各室内機5a〜5cの冷媒過熱度SHa〜SHcが、最適冷媒過熱度SHza〜SHzcもしく目標冷媒過熱度SHgのうちのいずれか大きい方の値となるように、各室内膨張弁52a〜52cの開度を調整する。
これにより、各室内機5a〜5cにおける冷媒過熱度SHa〜SHcが、各室内機5a〜5cで要求される冷房能力に対応した値となるように、室内膨張弁52a〜52cの開度調整が行える。従って、全ての室内機5a〜5cに過不足ない量の冷媒を供給できるので、室内機5a〜5cが頻繁にサーモオン/サーモオフを繰り返すことなく、かつ、十分な冷房能力を発揮できる。
尚、求めた目標冷媒過熱度SHgと各室内機5a〜5cの最適冷媒過熱度SHza〜SHzcが同じ値である場合は、どちらの冷媒過熱度を用いて各室内膨張弁52a〜52cの開度を調整してもよい。