JP6830899B2 - 冠動脈疾患の診断マーカー - Google Patents

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Description

本発明は、冠動脈疾患の診断に関する。詳細には、本発明は、ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を分子マーカーとする冠動脈疾患の診断に関する。
心疾患は日本人の死亡原因として癌についで第2位であり(総務省統計局の統計データ)、その大部分は冠動脈疾患(虚血性心疾患)である。冠動脈疾患は、心筋に血液を供給する冠状動脈の血流が悪くなり、心筋に十分な血液が供給されないために起こる疾患である。動脈硬化症が主な原因で、血管の内側の狭窄により心筋への血液の供給量の減少や血流の途絶えが生じ、心筋に必要な酸素需要量に対する血液からの酸素供給量が不足して酸素不足の状態となり、狭心症や心筋梗塞を引き起こす。
動脈硬化の惹起には、LDLコレステロールの増加をはじめとする脂質代謝異常が大きな要因となっている。したがって、動脈硬化で変動を示す脂質は、冠動脈疾患の生化学的マーカー候補になり得ることが予測される。特に、LDLコレステロールは、動脈硬化から冠動脈疾患へのマーカーおよび惹起因子となっている。しかし、スタチン投与によってLDLコレステロールを十分に低下させても心血管イベントは完全には抑制されず(非特許文献2)、冠動脈疾患のマーカーおよび治療のターゲットとしても十分とは言えない。
冠動脈疾患のマーカーに関して、血中のホスファチジルイノシトール(36:1)等、少なくとも2つの脂質分析物の量を指標とした冠動脈疾患の診断に関する出願(特許文献1)が存在するが、より簡便な判定方法で冠動脈疾患を診断できるマーカーは知られていない。
国際公開第2011/063470号
American Journal of Cardiology、2008年、第101巻、第8号、サプリメント、S27−S35ページ
冠動脈疾患を診断するための簡便な方法を開発することが本発明の課題である。
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究を行い、末梢血中のホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)をマーカーとして利用することで、冠動脈疾患を診断できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)被験者由来の被験試料におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を測定する工程を含み、その測定値を冠動脈疾患患者由来の試料であることの指標とする、冠動脈疾患の検出方法。
(2)前記測定値が、基準値よりも小さくなることを、前記被験試料が冠動脈疾患患者由来の試料であることの指標とする、(1)記載の方法。
(3)前記基準値が、冠動脈疾患に罹患していない者由来の対照試料における量である、(2)記載の方法。
(4)被験試料が、血液である、(1)〜(3)いずれかに記載の方法。
(5)前記測定が、質量分析またはホスファチジルイノシトール(36:5)もしくはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)と特異的に結合する抗体もしくは抗体断片を用いて行うものである、(1)〜(4)いずれかに記載の方法。
(6)ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を含む、冠動脈疾患検出用キット。
(7)ホスファチジルイノシトール(36:5)もしくはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)と特異的に結合する抗体または抗体断片を含む、冠動脈疾患検出用キット。
(8)ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)からなる冠動脈疾患検出用マーカー。
(9)(1)〜(5)いずれかに記載の方法で冠動脈疾患を検出し、
薬物療法、手術、運動療法及び食事療法からなる群より選ばれる1以上の治療により冠動脈疾患が検出された被験者を治療する、冠動脈疾患の治療方法。
本発明は、例えば、ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を単独でマーカーとして利用し得るため、簡単に冠動脈疾患を診断することができる。さらに、血液または血清を用いて測定が可能であるため、被験者の負担が少なくて済むことを特徴としている。
図1は、ホスファチジルイノシトール(36:5)の例を示した図である。 図2は、リゾホスファチジルイノシトール(20:5)の例を示した図である。 図3は、対照群と冠動脈疾患患者群の末梢血中のホスファチジルイノシトール(36:5)濃度の相対値を示したものである。 図4は、ホスファチジルイノシトール(36:5)のROC曲線を示したものである。 図5は、対照群と冠動脈疾患患者群の末梢血中のリゾホスファチジルイノシトール(20:5)濃度の相対値を示したものである。 図6は、リゾホスファチジルイノシトール(20:5)のROC曲線を示したものである。
本明細書において使用される用語は、特に言及する場合を除いて、当該分野で通常用いられる意味で用いられる。
以下に、本発明の具体的態様を記載するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
本発明は、被験者が冠動脈疾患に罹患しているか否か(冠動脈疾患患者か否か)判断する方法を提供する。
該方法は、
被験者由来の被験試料におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を測定する工程を含み、その測定値を冠動脈疾患患者由来の試料であることの指標とする、冠動脈疾患の検出方法
に関するものである。
また、本発明は、
被験者由来の被験試料におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を測定する工程を含み、ここで、被験試料におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量が、基準値よりも小さくなることを、前記被験試料が冠動脈疾患患者由来の試料であることの指標とする、冠動脈疾患の検出方法を包含する。
さらに、本発明は
被験者由来の被験試料におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を測定する工程を含み、ここで、被験試料におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量が、冠動脈疾患に罹患していない者由来の対照試料における量よりも小さくなることを、前記被験試料が冠動脈疾患患者由来の試料であることの指標とする、冠動脈疾患の検出方法も包含する。
つまり、上記の方法で冠動脈疾患患者由来の試料であることを特定し、冠動脈疾患患者の選別(診断)が可能となる。
本発明の特徴は、被験者由来の被験試料中のホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を分子マーカーとして用いることである。被験者から採取する「被験試料」は、尿、全血、血漿、血清、または血液に由来するものが含まれるが、簡便性の観点から末梢血から調製できる試料が好ましい。末梢血は被験者のいずれの部位から採取してもよいが、静脈からの採取が一般的である。例えば、腕静脈から末梢血を採取することにより、本発明を簡便かつ被験者への負担を少なくして実施できる。好ましくは、採取した末梢血から血漿を分離し、血漿中のホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を測定する。ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)は単独で冠動脈疾患マーカーとして用いることもできるが、他の冠動脈疾患の検出が可能であることが知られているマーカーと組み合わせて利用することもできる。
本発明における測定対象のホスファチジルイノシトールは、極性基にイノシトールをもつ酸性リン脂質の1つであり、PIと略記されることもある。1位、2位の脂肪酸の組み合わせの違いによって多種類の分子種が存在する。例えば、ホスファチジルイノシトールの分子種を質量分析で解析した結果から推定される分子量より、1,2位にエステル結合した脂肪酸の炭素数の合計が38、2重結合の合計が4と予測された場合、ホスファチジルイノシトール(38:4)という表記を行う。
本発明における測定対象のホスファチジルイノシトールは、質量分析で解析した結果から推定される分子量より、1,2位にエステル結合した脂肪酸の炭素数の合計が36で、2重結合の合計が5と予測されるので、ホスファチジルイノシトール(36:5)(sn−1、2位の脂肪酸残基の炭素数の総和が36、二重結合の総和が5のホスファチジルイノシトール)である。
本発明における測定対象のホスファチジルイノシトール(36:5)の例を図1に示す。
本発明における測定対象のリゾホスファチジルイノシトールは、極性基にイノシトールをもつ酸性リン脂質の1つであり、LPIと略記されることもある。含有する脂肪酸の違いによって多種類の分子種が存在する。例えば、リゾホスファチジルイノシトールの分子種を質量分析で解析した結果から推定される分子量より、エステル結合した脂肪酸の炭素数の合計が18、2重結合の合計が1と予測された場合、リゾホスファチジルイノシトール(18:1)という表記を行う。
本発明における測定対象のリゾホスファチジルイノシトールは、質量分析で解析した結果から推定される分子量より、エステル結合した脂肪酸の炭素数の合計が20で、2重結合の合計が5と予測されるので、リゾホスファチジルイノシトール(20:5)(脂肪酸残基の炭素数の総和が20、二重結合の総和が5のリゾホスファチジルイノシトール)である。
本発明における測定対象のリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の例を図2に示す。
ホスファチジルイノシトールおよびリゾホスファチジルイノシトールの量の測定方法としては、例えば、質量分析を用いた方法や免疫測定法等が挙げられる。
質量分析は、下記実施例やJournal of Separation Science、2012年、第35巻、1845−1853ページまたはAnalytical Biochemistry、2008年、第375巻、124−131ページなどを参照して、行うことができる。
免疫測定法としては、公知の免疫学的方法を利用することができる。公知の免疫学的方法としては、例えば、ELISA法、RIA法、ウェスタンブロット法等が例示される。
免疫測定法に用いる抗体は、ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)に特異的結合性を有する限り、その種類や由来等は特に限定されない。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を使用できるが、好ましくはモノクローナル抗体である。
該抗体は、免疫原にホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を用いて公知の方法で調製することができる。ホスファチジルイノシトール(36:5)およびリゾホスファチジルイノシトール(20:5)は、低分子化合物であるため単独で免疫原として抗体を産生することは難しいと考えられることから、キャリアタンパクと複合体を調製することが望ましい。免疫原で免疫される哺乳動物としては、一般には、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラットなどが用いられる。免疫方法は一般的方法により、例えば免疫原を哺乳動物に静脈内、皮内、皮下、腹腔内注射などにより投与することにより行い得る。免疫後に哺乳動物から抗血清を採血し、ポリクローナル抗体を作製、あるいは形質細胞(免疫細胞)を採取し、例えば、「分子細胞生物学基礎実験法」(南江堂 堀江武一ら 1994)等に記載されている方法により、モノクローナル抗体を作製することができる。
抗体には検出・定量可能な標識を付してもよい。標識としては放射性標識、蛍光標識などが知られており、適宜選択して用いることができる。例えば、検出の利便性から、ビオチン化された抗体などが挙げられる。
本発明の冠動脈疾患検出方法では、被験者から得られた被験試料中のホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を基準値と比較し、基準値よりも小さくなる場合、前記被験試料が冠動脈疾患患者由来の試料として選別されることになる。
「基準値」とは、例えば、冠動脈疾患に罹患していない者由来の対照試料におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を意味する。対照試料における量とは、複数のサンプルの平均値を用いることが好ましい。対照試料における量は被験試料と同時に測定してもよいし、予め測定してカットオフ値を設定してもよい。
ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)は、冠動脈疾患に罹患していない者由来の対照試料と比較して、冠動脈疾患患者由来の試料では顕著に少なくなる。従って、本発明の冠動脈疾患の検出方法において被験試料中のホスファチジルイノシトール(36:5)もしくはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量、または、ホスファチジルイノシトール(36:5)もしくはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量に基づく算出値が前記「対照試料」における量より有意に小さいとき、または、予め設定されたカットオフ値より小さいときに、その被験試料は冠動脈疾患患者由来の試料である可能性が高いということができる。
なお、本発明における「カットオフ値」とは、上記冠動脈疾患の検出方法により得られたホスファチジルイノシトール(36:5)もしくはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量、または、ホスファチジルイノシトール(36:5)もしくはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量に基づく算出値と比較して、冠動脈疾患患者と冠動脈疾患に罹患していない者を区別する値を指す。カットオフ値の決定方法は、特に限定されないが、下記実施例のように、ROC曲線を用いてカットオフ値を決定してもよい。
カットオフ値を用いて冠動脈疾患を検出する場合、マーカーの測定方法によって、カットオフ値が変わってくる。従って、目的とするマーカーについて、冠動脈疾患に罹患していない者、冠動脈疾患患者の測定値を事前に確認して、カットオフ値を決めて、それに従って検出することが好ましい。本発明の実施例に従って、被験者の血清を用いてマーカーの測定を行う場合には、本発明の実施例で得られた数値を参考に冠動脈疾患を検出することができる。
なお、被験試料の値と対照試料の値等、2以上の測定値を比較する場合、1種、または、複数の統計的分析(例えば、t−検定、ウェルチのT検定、ウィルコクソンの順位和検定、ANOVA、再帰的分割、ランダムフォレスト等)を使用して、比較することができる。
本発明は、ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を含む、冠動脈疾患検出用キットを提供する。さらに、ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を特異的に認識する抗体を含有することを特徴とするキットを提供する。これらのキットは、本発明の冠動脈疾患の検出方法に利用することができる。
また、これらのキットは、一般的にアッセイを実行するために必要な1つ以上の構成要素を更に含む。構成要素は、標準品、試薬(希釈液、緩衝液など)、容器及び/又は装置であり得る。
更に、本発明は、上記方法でホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を用いて診断し、冠動脈疾患と診断された患者の治療を行うことも可能である。具体的には、上記冠動脈疾患の検出方法において、冠動脈疾患に罹患していない者由来の対照試料における量と比較して、被験試料における量が少ないことを、該被験試料が冠動脈疾患患者由来の試料であることの指標とすることにより、冠動脈疾患を検出する工程、及び
薬物療法、手術、運動療法及び食事療法からなる群より選ばれる1以上の治療により冠動脈疾患が検出された被験者を治療する工程を含む、冠動脈疾患の治療方法である。
つまり、本発明は、
(a)被験者由来の被験試料におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の濃度を測定し、
(b)その測定値を冠動脈疾患患者由来の試料であることの指標として、冠動脈疾患を検出し、
(c) 薬物療法、手術、運動療法及び食事療法からなる群より選ばれる1以上の治療により冠動脈疾患が検出された被験者を治療する、
冠動脈疾患の治療方法を包含する。
薬物療法としては、硝酸薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗血小板薬(アスピリン等)、コレステロール低下薬等が挙げられる。
手術としては、冠動脈バイパス術(CABG)、バルーン血管形成術、ステント留置術等が挙げられる。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
末梢血中のホスファチジルイノシトール(36:5)を分子マーカーとして用いる冠動脈疾患の診断
冠動脈疾患における新規マーカーとしてのホスファチジルイノシトール(36:5)の性能を調べるために、血漿中のホスファチジルイノシトール(36:5)の濃度を対照者群20名及び冠動脈疾患の患者群20名の間で比較した。
対象は冠動脈疾患の患者であり、Proteogenex社より提供される患者由来血漿試料を用いた。対照群は冠動脈疾患に罹患していない成人とした。この実験は塩野義製薬株式会社のヒト組織・遺伝子利用研究倫理委員会の審査承認を得て行った。血液は文書で同意を得て採血、分注して−80℃にて凍結保存した。
被験者の末梢血中のホスファチジルイノシトール(36:5)の濃度は、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(以下、LC/MS/MSともいう)を用いて定量した。
以下、本発明者らが、末梢血中のホスファチジルイノシトール(36:5)の濃度を定量するために使用したLC/MS/MSの系を具体的に示す。
各対象からの血漿に内部標準溶液を加えた後、有機溶媒を加え除タンパク処理し、撹拌・遠心して上清を回収した。この上清に窒素ガスを吹き付けて乾固させ、有機溶媒で再溶解した溶液を測定溶液としてLC/MS/MSにて測定し、血中のホスファチジルイノシトール(36:5)を定量した。LC/MS/MSシステムには、Nexera(島津製作所)‐API5000(AB SCIEX)を用いた。逆相条件下で血中成分を分離・溶出した後、エレクトロスプレーイオン化法、ネガティブイオンモード、MRM(Multiple Reaction Monitoring)法により検出を行った。Analyst(AB SCIEX)にてホスファチジルイノシトール(36:5)および内部標準物質のピークエリアを解析し、そのエリア比を算出した。各被験者のピークエリア比を対照群のピークエリア比の平均値で割った値を相対値とし、血漿中のホスファチジルイノシトール(36:5)を定量した。
対照群および冠動脈疾患の患者群の血漿中のホスファチジルイノシトール(36:5)の量の相対値を図3にまとめた。対照群の血漿中のホスファチジルイノシトール(36:5)の相対値を100とした。
冠動脈疾患患者群では、対照群に対しホスファチジルイノシトール(36:5)の濃度が約79% 減少し、有意差が認められた(P<0.0001)。
実施例1で得られた結果について、ROC解析を行い、結果を図4にまとめた。AUCは0.963であった。
図4の結果より、ホスファチジルイノシトール(36:5)の濃度の相対値を用いて冠動脈疾患の診断をする場合のカットオフ値は、43%となり、カットオフ値以下であれば、冠動脈疾患に罹患している可能性があると診断できる。
末梢血中のリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を分子マーカーとして用いる冠動脈疾患の診断
冠動脈疾患における新規マーカーとしてのリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の性能を調べるために、血漿中のリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の濃度を対照者群20名及び冠動脈疾患の患者群20名の間で、実施例1と同様の方法で比較した。
対照群および冠動脈疾患の患者群の血漿中のリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量の相対値を図5にまとめた。対照群の血漿中のリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の相対値を100とした。
冠動脈疾患患者群では、対照群に対しリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の濃度が約69%減少し、有意差が認められた(P<0.0001)。
実施例3で得られた結果について、ROC解析を行い、結果を図6にまとめた。AUCは、0.897であった。
図6の結果より、リゾホスファチジルイノシトール(20:5)の濃度の相対値を用いて冠動脈疾患の診断をする場合のカットオフ値は、44%となり、カットオフ値以下であれば、冠動脈疾患に罹患している可能性があると診断できる。
以上より、ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)は、末梢血で定量可能な冠動脈疾患の分子マーカーとして使用可能であることが確認された。
本発明は、医薬品の分野、特に冠動脈疾患の診断のための体外診断用医薬品分野において利用可能である。

Claims (5)

  1. 被験者由来の末梢血におけるホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を測定する工程と、ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の測定値を基準値と比較する工程とを含み、該測定値の該基準値に対する相対値、または該測定値と該基準値との差異を冠動脈疾患の指標とする、冠動脈疾患の診断のために使用される指標を提供する方法
  2. 前記測定値が前記基準値よりも小さくなる場合に、前記被験者が冠動脈疾患に罹患している可能性を示す、請求項1に記載の方法。
  3. 前記基準値が、冠動脈疾患に罹患していない者由来の対照試料における量である、請求項2記載の方法。
  4. ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)を内部標準として含む、冠動脈疾患の指標を提供するために被験者由来の末梢血中のホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)の量を質量分析または免疫測定法を用いて測定するためのキット。
  5. ホスファチジルイノシトール(36:5)またはリゾホスファチジルイノシトール(20:5)からなる冠動脈疾患検出用マーカー。
JP2017546559A 2015-10-20 2016-10-19 冠動脈疾患の診断マーカー Active JP6830899B2 (ja)

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