添付の図に示し、以下の明細書に説明する特定の装置およびプロセスは、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の概念の単なる例示的な実施形態であることを理解されたい。したがって、本明細書に開示する実施形態に関連する他の物理的特徴は、特許請求の範囲が明示的にそうでないと述べない限り、限定的であると見なされるべきではない。
ソリッドステート無線周波数(RF)調理機器は、電磁放射を閉じられたキャビティに導入することによって食品を加熱し調製する。閉じられたキャビティ内の異なる場所にある複数のRF供給部は、これらが放射するときに動的電磁波パターンを生み出す。閉じられたキャビティ内で波パターンを制御し、成形するために、複数のRF供給部は、閉じられたキャビティ内でコヒーレンス(すなわち、静止干渉パターン)を維持するために別々に制御された電磁特性を有する波を放射することができる。例えば、各RF供給部は、その他のフィードとは異なる周波数、位相および/または振幅を送信することができる。他の電磁気特性は、RF供給部の間で共通し得る。例えば、各RF供給部は、共通だが可変の周波数で送信することができる。以下の実施形態は、閉じられたキャビティ内で対象物を加熱するようにRF供給部が電磁放射を向ける調理器具を対象とするが、本明細書に説明する方法およびそれに由来する発明の概念はそのように限定されない。カバーされた概念および方法は、電磁放射が閉じられたキャビティに向けられてキャビティの内側の物体上に作用する任意のRF装置に適用可能である。例示的な装置は、レンジ、乾燥機、スチーマーなどを含む。
図1は、1つの実施形態による複数のコヒーレントRF供給部26A〜Dを有する電磁調理装置10のブロック図を示す。図1に示すように、電磁調理装置10は、電源12と、コントローラ14と、RF信号発生器16と、ヒューマン−マシンインターフェース28と、複数のRF供給部26A〜Dに結合された複数の高出力RF増幅器18A〜Dとを含む。複数のRF供給部26A〜Dはそれぞれ、RF電力を複数の高出力RF増幅器18A〜Dのうちの1つから閉じられたキャビティ20内に伝達する。
電源12は、幹線の電力から導出された電力をコントローラ14、RF信号発生器16、ヒューマン−マシンインターフェース28、および複数の高出力RF増幅器18A〜Dに供給する。電源12は、幹線の電力を、これが給電する装置の各々の必要な電力レベルに変換する。電源12は、可変出力電圧レベルを送出することができる。例えば、電源12は、0.5ボルトごとに選択的に制御された電圧レベルを出力することができる。このようにして、電源12は、通常28ボルトの直流を各高出力RF増幅器18A〜18Dの各々に供給するように構成することができるが、15ボルトの直流などのより低い電圧を供給してRF出力電力レベルを所望のレベルだけ下げることもできる。
コントローラ14を電磁調理装置10に含むことができ、これは電磁調理装置10の様々な構成要素と動作可能に結合して調理サイクルを実装することができる。コントローラ14はまた、ユーザ選択入力を受け取り、ユーザに情報を伝えるために、制御パネルまたはヒューマン−マシンインターフェース28と動作可能に結合することができる。ヒューマン−マシンインターフェース28は、ダイヤル、ライト、スイッチ、タッチスクリーン要素、およびユーザが調理サイクルなどのコマンドをコントローラ14に入力し、情報を受け取ることを可能にするディスプレイなどの動作制御を含むことができる。ユーザインターフェース28は、互いに集中化または分散させることができる1つまたは複数の要素を含むことができる。コントローラ14はまた、電源12によって供給される電圧レベルを選択することができる。
コントローラ14には、メモリおよび中央処理装置(CPU)を設けることができ、好ましくはマイクロコントローラで具現化することができる。メモリは、調理サイクルを完了する際にCPUによって実行され得る制御ソフトウェアを記憶するために使用され得る。例えば、メモリは、ユーザによって選択され、電磁調理装置10によって完了することができる1つまたは複数の予めプログラムされた調理サイクルを記憶することができる。コントローラ14はまた、1つまたは複数のセンサから入力を受け取ることができる。コントローラ14と通信可能に結合することができるセンサの非限定的な例は、RF電力レベルを測定するためのRFエンジニアリングの分野で知られているピークレベル検出器、および閉じられたキャビティまたは高出力増幅器18A〜Dの1つまたは複数の温度を測定するための温度センサを含む。
ヒューマン−マシンインターフェース28によって提供されるユーザ入力と、複数の高出力増幅器18A〜18Dから来る順方向および逆方向(または反射)電力の大きさを含むデータ(図1では、高出力増幅器18A〜18Dの各々からRF信号発生器16を通ってコントローラ14までの経路によって表される)とに基づいて、コントローラ14は、調理ストラテジを決定し、RF信号発生器16の設定を算出することができる。このようにして、コントローラ14の主な機能の1つは、ユーザによって開始されたときに調理サイクルをインスタンス化するように電磁調理装置10を動作させることである。以下に説明するRF信号発生器16は、コントローラ14によって示される設定に基づいて、複数のRF波形、すなわち各高出力増幅器18A〜Dごとに1つの波形を生成することができる。
各々がRF供給部26A〜Dのうちの1つに結合された高出力増幅器18A〜18Dはそれぞれ、RF信号発生器16によって提供された低電力RF信号に基づいて高電力RF信号を出力する。高出力増幅器18A〜18Dの各々に入力される低出力RF信号は、電源12によって供給される直流電力を高出力無線周波数信号に変換することによって増幅することができる。1つの非限定的な例では、各高出力増幅器18A〜Dは、50から250ワットの範囲のRF信号を出力するように構成され得る。各高出力増幅器の最大出力ワット数は、実装に応じて250ワットを上回るか、または下回ることができる。各高出力増幅器18A〜18Dは、過度のRF反射を吸収するためのダミー負荷を含むことができる。
複数のRF供給部26A〜Dは、複数の高出力RF増幅器18A〜Dから閉じられたキャビティ20に電力を伝達する。複数のRF供給部26A〜26Dは、空間的に分離されているが固定された物理的位置で閉じられたキャビティ20に結合され得る。複数のRF供給部26A〜Dは、RF信号の低電力損失伝搬用に設計された導波管構造を介して実装され得る。非限定的な1つの例では、マイクロ波エンジニアリングで知られている金属製の矩形導波管は、1メートル当たり約0.03デシベルの電力減衰で、RF電力を高出力増幅器18A〜18Dから閉じられたキャビティ20に案内することができる。
さらに、RF供給部26A〜26Dの各々は、増幅器出力における順方向および逆方向の電力レベルまたは位相の大きさを測定するための感知能力を含むことができる。測定された逆方向電力は、高出力増幅器18A〜Dと閉じられたキャビティ20との間のインピーダンス不整合の結果として高出力増幅器18A〜18Dに戻された電力レベルを示す。部分的に調理ストラテジを実装するためにコントローラ14およびRF信号発生器16にフィードバックを提供することに加えて、逆方向電力レベルは、高出力増幅器18A〜18Dを損傷し得る過剰な反射電力を示すことができる。
高出力増幅器18A〜18Dの各々における逆方向電力レベルの決定と共に、ダミー負荷を含む高出力増幅器18A〜18Dにおける温度感知は、逆方向電力レベルが所定の閾値を超えているどうかを決定するために必要なデータを提供することができる。閾値を超えた場合、電源12、コントローラ14、RF信号発生器16、または高出力増幅器18A〜18Dを含むRF送信チェーン内の制御要素のいずれかが、高出力増幅器18A〜18Dをより低い電力レベルに切り替えるか、完全にオフにできることを決定することができる。例えば、各高出力増幅器18A〜18Dは、逆方向電力レベルまたは感知された温度が数ミリ秒の間高すぎる場合、それ自体を自動的にオフに切り替えることができる。あるいは、電源12は、高出力増幅器18A〜Dに供給される直流電力を遮断することができる。
閉じられたキャビティ20は、その中に任意選択の仕切り24を挿入することによってサブキャビティ22A〜Bを選択的に中に含むことができる。閉じられたキャビティ20は、食品または任意選択の仕切り24の配置および回収のために閉じられたキャビティ20の内部にユーザがアクセスするのを可能にするために、少なくとも片側に遮蔽ドアを含むことができる。
RF供給部26A〜26Dの各々の送信帯域幅は、2.4GHz〜2.5GHzの範囲の周波数を含むことができる。RF供給部26A〜Dは、他のRF帯域を送信するように構成され得る。たとえば、2.4GHzから2.5GHzの間の周波数帯域幅は、産業、科学、および医療(ISM)の無線帯域を構成するいくつかの帯域のうちの1つである。他のRF帯域の送信が考えられ、13.553MHzから13.567MHz、26.957MHzから27.283MHz、902MHzから928MHz、5.725GHzから5.875GHz、および24GHzから24.250GHzの周波数によって定義されたISM帯域に含まれる非限定的な例を含むことができる。
図2を参照すると、RF信号発生器16のブロック図が示される。RF信号発生器16は、順次結合され、すべてRFコントローラ32の指示下にある周波数発生器30、位相発生器34および振幅発生器38を含む。このようにして、RF信号発生器16から高出力増幅器に出力される実際の周波数、位相および振幅は、好ましくはデジタル制御インターフェースとして実装されるRFコントローラ32を介してプログラム可能である。RF信号発生器16は、調理コントローラ14から物理的に分離することができ、またはコントローラ14上に物理的に装着するかまたはその中に一体化することができる。RF信号発生器16は、好ましくは、特注の集積回路として実装される。
図2に示すように、RF信号発生器16は、共通だが可変の周波数(例えば2.4GHzから2.5GHzの範囲)を共有するが、RFチャネル40A〜Dごとに位相および振幅が設定可能である4つのRFチャネル40A〜Dを出力する。本明細書に説明する構成は例示的なものであり、限定的なものと見なすべきではない。例えば、RF信号発生器16は、より多いまたはより少ないチャネルを出力するように構成することができ、実装に応じてチャネルごとに固有の可変周波数を出力する能力を含むことができる。
前述のように、RF信号発生器16は、電源12から電力を引き出すことができ、コントローラ14から1つまたは複数の制御信号を入力することができる。追加の入力は、高出力増幅器18A〜18Dによって決定された順方向および逆方向電力レベルを含むことができる。これらの入力に基づいて、RFコントローラ32は、周波数を選択し、周波数発生器30に信号を送って選択された周波数を示す信号を出力させることができる。図2の周波数発生器30を表すブロックに図式的に表すように、選択された周波数は、正弦波信号を決定し、その周波数は、離散周波数のセットの範囲にわたるものである。1つの非限定的な例では、2.4GHzから2.5GHzまでの範囲の選択可能な帯域幅を1MHzの分解能で離散化することができ、101個の固有の周波数選択を可能にする。
周波数発生器30の後で、信号は、出力チャネルごとに分割され、位相発生器34に向けられる。各チャネルには離散位相、すなわち正弦関数の初期角度を割り当てることができる。図2のチャネルごとの位相発生器36A〜36Dを表すブロックに図式的に表すように、チャネルに対するRF信号の選択された位相は、離散角度のセットにわたる範囲のものであることができる。1つの非限定的な例では、選択可能な位相(振動の半サイクルまたは180度にわたって折り返される)は、10度の分解能で離散化することができ、チャネルごとに19の固有の位相選択を可能にする。
位相発生器34に続いて、チャネルごとのRF信号を振幅発生器38に向けることができる。RFコントローラ32は、チャネル40A〜D内に離散振幅を出力するように(共通周波数および離散位相を有して図2に示す)各チャネルに割り当てることができる。図2のチャネルごとの振幅発生器を表すブロックに図式的に表されるように、RF信号の選択された振幅は、離散振幅(または電力レベル)のセットの範囲にわたるものであることができる。1つの非限定的な例では、選択可能な振幅は、0から23デシベルの範囲にわたって0.5デシベルの分解能で離散化することができ、チャネル当たり47の固有の振幅選択を可能にする。
各チャネル40A〜Dの振幅は、実装に応じていくつかの方法のうちの1つによって制御することができる。例えば、各チャネルに対する振幅発生器38の供給電圧の制御の結果、それぞれの高出力増幅器18A〜Dに対する所望のRF信号出力に正比例する、RF信号発生器16からの各チャネル40A〜Dの出力振幅を生じさせることができる。あるいは、チャネル当たりの出力を、振幅レベルがパルス幅変調信号のデューティサイクルによって符号化されるパルス幅変調信号として符号化することができる。さらに別の代替策は、閉じられたキャビティ20に送信されるRF信号の最終振幅を制御するために、高出力増幅器18A〜18Dの各々に供給される供給電圧を変えるように電源12のチャネルごとの出力を調整することである。
上記で説明したように、電磁調理装置10は、複数のRF供給部26A〜Dで制御された量の電力を閉じられたキャビティ20内に送出することができる。さらに、各RF供給部26A〜Dから送出される電力の振幅、周波数、および位相の制御を維持することによって、電磁調理装置10は、閉じられたキャビティ20内に送出される電力をコヒーレントに制御することができる。コヒーレントRFソースは、電磁波の干渉特性を利用するために制御された方法で電力を送出する。すなわち、定義された空間領域および持続時間にわたって、コヒーレントRFソースは、電場が加算的に分布するように静止干渉パターンを生成することができる。その結果、干渉パターンは、RFソースの任意のものより振幅が大きい(すなわち、強め合う干渉)か、またはRFソースの任意のものより小さい(すなわち、相殺的干渉)、電磁場分布を作りだすように追加することができる。
RFソースの調整および動作環境(すなわち、閉じられたキャビティおよびその中の内容物)の評価は、電磁調理のコヒーレント制御を可能にし、閉じられたキャビティ20内の対象物とRF電力の結合を最大化することができる。動作環境への効率的な送信は、RF生成手順の較正を必要とし得る。上記で説明したように、電磁加熱システムでは、電力レベルは、電源12から出力される電圧、高出力増幅器18A〜18Dおよび振幅発生器38の両方を含む可変利得増幅器の段数上の利得、周波数発生器30の同調周波数などを含む多くの構成要素によって制御され得る。出力電力レベルに影響を与えるその他の要因は、構成要素の寿命、構成要素間の相互作用、および構成要素温度を含む。
次に図3を参照すると、本明細書に説明する様々な態様による導波管110に結合された高出力増幅器18を示す概略図が、示される。高出力増幅器18は、案内構造102を介してサーキュレータ104に結合された1つまたは複数の増幅段100を含む。サーキュレータ104は、案内構造106によって導波管励振器108に結合される。高出力増幅器18は、導波管励振器108によって導波管110に電気的に結合され、電磁ガスケット112によって機械的に結合される。
高出力増幅器18は、増幅器入力から増幅器出力まで無線周波数信号を増幅するためにいくつかの増幅段100が相互接続されるように構成される。増幅段100は、入力電圧の小さな変化を変換して出力電圧の大きな変化を生成するように構成された1つまたは複数のトランジスタを含む。回路の構成に応じて、増幅段100は、電流利得、電圧利得またはその両方を生成することができる。
増幅段100の出力部は、案内構造102を介してサーキュレータ104に結合される。案内構造102は、それだけに限定されないが、印刷回路基板の誘電体基板上に印刷されたマイクロストリップを含む、高出力無線周波数信号を搬送することができる任意の電気コネクタとすることができる。サーキュレータ104は、1つのポートから次のポートに無線周波数信号を送信する受動マルチポート構成要素であり、ここでポートは、1つの構成要素から別の構成要素に無線周波数信号を結合するためのサーキュレータ104上の点である。高出力増幅器18において、サーキュレータ104は、不整合負荷が電力を反映するときに起こり得る有害な影響から増幅段100を隔離するための保護装置として作用する。
サーキュレータ104は、案内構造106を介して導波管励振器108に結合される。高出力増幅器18は、導波管励振器108によってその出力で終端される。導波管励振器108は、高出力増幅器18内での送信に適した第1のモードから、導波管110内での送信に適した第2のモードに電磁エネルギーを変換する。このようにして、導波管110は、RF供給部26A〜Dとして作用して、増幅された電磁信号を高出力増幅器からマイクロ波キャビティに伝える。
電磁ガスケット112は、高出力増幅器18と導波管110との間の安全な接続を提供し、高出力増幅器18と導波管110との間に配置された導波管励振器108の部分を取り囲む。電磁ガスケット112は、高出力増幅器18と導波管110との間の接続を確実にし、無線周波数で電磁遮蔽を提供するのに有用な1つまたは複数の材料から形成され得る。そのような材料は、それだけに限定されないが、銀またはニッケルなどの導電性粒子で充填されたシリコーンベースの構成成分を含むことができる。
高出力増幅器18の出力を終端させる導波管励振器108を設けることにより、従来のコネクタを介して結合されたマイクロ波装置の接合部で通常生じる電磁損失が減少する。すなわち、従来のマイクロ波装置は同軸コネクタ(例えばBNCまたはN型コネクタ)を介して相互接続されており、このコネクタは、コネクタの追加経路長さおよび同軸コネクタの結合における損失によりRF損失を被る。電磁ガスケット112は、導波管励振器108を遮蔽すると共に高出力増幅器18と導波管110との間の結合を機械的に支持することにより導波管励振器108の効率を高める。
次に図4を参照すると、本明細書に説明する様々な態様によるサーキュレータ104を示す横断面図が示される。上記で説明したように、サーキュレータ104は、案内構造102を介して増幅段の出力に結合される。サーキュレータ104は、金属ベースプレート120に装着された積層体122を含む。
積層体122に対して垂直な軸方向に整列している2つのフェライト磁石126、128が、クリップ130によって積層体122に固定される。フェライト磁石126、128は、それだけに限定されないが、円盤を含む、サーキュレータ設計に適した任意の形状とすることができる。
案内構造102は、積層体122上に印刷されたマイクロストリップを含むことができる。積層体122は、それだけに限定されないが、FR−2材料またはFR−4材料を含む、印刷回路板の絶縁層を設けるのに適した任意の材料を含むことができる誘電体基板である。積層体122は、サーキュレータ104を機械的に支持する金属ベースプレート120上に配置される。さらに、金属ベースプレート120は、熱放散マスとして、およびサーキュレータ104によって発生した熱を拡散させるように作用する。金属ベースプレート120は、下側フェライト磁石128を収容するためのポケット124を含む。
サーキュレータ104の製造中、下側フェライト磁石128は、金属ベースプレート120のポケット124内に置かれる。積層体122およびマイクロストリップ案内構造は、金属ベースプレート120に加えられる。上側フェライト磁石126は、下側フェライト磁石128の上方に配置され、クリップ130によって積層体122に固定される。
図5は、図4の集積サーキュレータを示す上面図である。上述のように、サーキュレータ104は、その磁気回路の一部として、プリント回路基板の積層体122と共に、増幅段の出力部(たとえば図3の要素100)に結合されたマイクロストリップ案内構造102を含む。このように、サーキュレータ104は、製造プロセス中にはんだ付け接続を必要とする入力ピンまたは出力ピンを含まない。従来のはんだ接合は、はんだ付けプロセスの結果コールドスポットまたは結合不良が発生する可能性があるため、信頼性の問題に高出力増幅器をさらす可能性がある。したがって、サーキュレータ104は、高出力増幅器にはんだ付けされた従来の個別構成要素ではない。そうではなく、サーキュレータ104は、高出力増幅器の構成要素として直接一体化される。
増幅段100の端部の出力電力レベルが所望の設定点レベルに達するために、RF信号発生器(図1の要素16を参照)は、順方向および逆方向の電力レベル、または閉じられたキャビティ(図1の要素20を参照)に伝えられる無線周波数信号の相対位相を示す信号の形態でのフィードバックに依存することができる。したがって、入力高周波信号に対して電力増幅された無線周波信号を出力するための増幅構成要素に加えて、従来の高出力増幅器は、増幅構成要素によって送受信された無線周波数電力を示す信号を出力する測定構成要素を含み得る。しかし、そのような測定構成要素を高出力増幅器内に一体化することにより、高出力増幅器の出力段は、導波管などの無線周波数フィード(図1の26A〜26Dを参照)に出力される無線周波数信号の電力および忠実度を低下させる可能性がある電気的損失を被る可能性がある。
次に図6を参照すれば、本明細書に説明する様々な態様による、統合測定システム150を有する導波管110に結合された高出力増幅器18を示す概略図が示される。統合測定システム150は、電子構成要素154に結合されたプローブアンテナ152を含む。プローブアンテナ152は、導波管110内の無線周波数電磁波をアナログ電力信号に変換する、導波管110内に配置された部分を含む。プローブアンテナ152は、それだけに限定されないが、ダイポールアンテナを含む導波管内の無線周波数電磁波を測定するのに有用な任意の種類のアンテナとすることができる。
電子構成要素154は、プローブアンテナ152に結合され、出力信号がデジタルであり、かつRF信号発生器(図1の要素16を参照)、コントローラ(図1の要素14を参照)またはRFコントローラ(図1の要素32を参照)などの装置に容易に入力されるようにアナログ−デジタル変換器(ADC)を含むことができる。電子構成要素154は、それだけに限定されないが、導波管110内で検出された無線周波数電力レベルに対して対数線形である直流出力電圧を提供する無線周波数ログ電力検出器を含む、無線周波数信号の測定に有用な任意の構成要素とすることができる。
測定システムは、導波管110を通って伝えられた無線周波数送信をさらに評価するために有用な追加の構成要素を含むことができる。次に図7を参照すれば、本明細書に説明する様々な態様による反射率計164を含む統合測定システム160を有する導波管110に結合された高出力無線周波数増幅器18を示す概略図が、示される。統合測定システム160は、反射率計164に結合されたプローブアンテナ162を含む。プローブアンテナ162は、導波管110内の高周波数電磁波をアナログ電力信号に変換する、導波管110内に配置された部分を含む。プローブアンテナ162は、それだけに限定されないが、ダイポールアンテナを含む導波管内の無線周波数電磁波を測定するのに有用な任意の種類のアンテナとすることができる。
反射率計164は、それだけに限定されないが、整合較正検出器を含む方向性結合器、または導波管110内で両方向に流れる電力を測定するように配向された単一検出器結合器の対を含む、無線周波数信号の位相を測定するのに有用な任意の構成要素を含むことができる。このようにして、統合測定システム160は、電力および位相に従って無線周波数送信を評価することができ、散乱行列またはSパラメータで具現化されるようなネットワーク化記述を形成するために使用することができる。1つの非限定的な実装では、反射率計164は、導波管内の順方向および逆方向の無線周波数放射の位相を測定するように構成された6ポート反射率計である。
反射率計164は、プローブアンテナ162に結合されるとともに、導波管110内の無線周波数電磁波の位相もしくは電力または散乱行列を示す出力信号がデジタルであり、RF信号発生器(図1の要素16を参照)、コントローラ(図1の要素14を参照)またはRFコントローラ(図1の要素32を参照)などの装置に容易に入力されるようにアナログ−デジタル変換器(ADC)を含むことができる。
電磁調理装置10は、1つまたは複数の制御方法を利用して所望の設定点レベルに到達するように電力レベルを調整することができる。そのようなプロセスは、従来の制御方式によって容易に解決されない課題を有し得る。例えば、調理時間を最小にするために、装置10は、最大電力レベルまたは設定点レベルにできるだけ速く到達しようと試みることがある。しかし、最大電力レベルがオーバーシュートされると、高出力増幅器18A〜18Dは損傷を受ける可能性がある。このため、システムは、調理時間を延ばし得る過減衰を防止しながら、回路およびハードウェアが最大電力レベルを超えないように保護する制御方式を実装することができる。
図8を参照すると、装置10の出力電力レベルを制御するための方法600のフロー図が示される。いくつかの実施形態では、RF供給部26A〜D、226A〜Dを生成するために利用される電力の振幅は、通常、電源12および/または振幅発生器38と通信するコントローラ14によって制御され得る。さらに、コントローラ14は、測定システム(例えば統合測定システム150、160)を介して高出力増幅器18A〜Dの各々から出力された電力レベルを検出するように動作可能であり得る。したがって、ステップ602において加熱プロセスが開始されると、コントローラ14は、高出力増幅器18A〜18Dの1つまたは複数の出力電力レベルPoを所望のまたは目標の出力電力PTに設定することができる。さらに、コントローラ14は、測定された電力Pxを監視することができる。ステップ604において、コントローラ14はまた、RFコントローラ32を制御することによってRF供給部18A〜18D間またはこれらの中の位相シフトを制御または更新することもできる。方法600全体を通して、コントローラ14は、測定された電力Pxを伝える信号を測定システムから受信することができる。このようにして、装置10は、目標出力電力PTが迅速に達成され維持されることを確実にするために閉ループフィードバックを提供することができる。
これまでに論じたように、電力レベルが最大電力レベルPmaxまたは定格電力レベルを超えると、高出力増幅器18A〜18Dは損傷を受ける可能性がある。したがって、ステップ606において、コントローラ14は測定された電力Pxを最大電力レベルPmaxと比較することができる。最大電力レベルPmaxを超えている場合、コントローラ14はステップ608に進み、最大電力調整Pmax_減少によって出力電力Poの設定を減少させることができる。最大電力調整は、高出力増幅器18A〜Dからの出力電力Poを調整するためにコントローラ14によって適用され得る複数の電力調整レベルのうちの1つであってよい。追加の電力調整レベル、および電力調整レベル間の関係が、以下の説明でさらに論じられる。コントローラは、電源12および/または振幅発生器38を制御することによって出力電力Poを調整することができる。
ステップ606において、測定された電力レベルPxが最大電力レベルPmaxより小さい場合、方法はステップ610に進んで目標電力PTを設定または更新することができる。ステップ612において、コントローラ14は、測定された電力レベルPxを目標電力PTと比較して電力差ΔPを決定することができる。ステップ614に続き、コントローラ14は、電力差ΔPが負であるか正であるかどうか、したがって、出力電力Poをそれぞれ増加させる必要があるか減少させる必要があるかどうかを決定することができる。電力差ΔPがゼロより大きい場合、ステップ616から624において、コントローラ14は電力差ΔPを複数の調整閾値と比較し、出力電力Poを電力調整レベルだけ減少させることができる。電力差ΔPがゼロより小さい場合、ステップ626から634において、コントローラ14は電力差ΔPを複数の調整閾値と比較し、出力電力Poを電力調整レベルだけ増加させることができる。このようにして、装置10は、コントローラ14からの大きな処理能力を必要とすることなく、測定された電力レベルPxと目標電力PTとの間の差を効率的に補償することができる。
ステップ614において、電力差ΔPがゼロより大きい場合、コントローラ14はステップ616に進んで、電力差の絶対値|ΔP|を低電力減少閾値と比較することができる。ステップ618において、電力差|ΔP|が、低電力減少閾値より小さい場合、コントローラ14は、出力電力レベルPoを現在の設定に維持することができる。電力差|ΔP|が低電力減少閾値より大きい場合、コントローラ14はステップ620に進んで電力差|ΔP|を高減少閾値と比較する。ステップ620において、電力差|ΔP|が高電力減少閾値より大きい場合、コントローラ14はステップ622に進んで、出力電力レベルPoを高速減少電力調整レベルP高速_減少だけ減少させることができる。ステップ620において、電力差|ΔP|が高電力減少閾値より小さい場合、コントローラ14はステップ624に進んで、出力電力レベルPoを低速減少電力調整レベルP低速_減少だけ減少させることができる。高速減少電力調整レベルP高速_減少は、低速減少電力調整レベルP低速_減少よりも大きさが大きくてよい。このようにして、コントローラ14は、装置10の所望のシステム応答を提供するために出力電力レベルPoを高速または低速で変化させることができる。ステップ618、622、または624のいずれかの後、コントローラ14はステップ602に戻ることができる。
ステップ614において電力差ΔPがゼロより小さい場合、コントローラ14は、ステップ626に進んで、電力差|ΔP|の絶対値を低電力増加閾値と比較することができる。ステップ628において、電力差|ΔP|が低電力増加閾値よりも小さい場合、コントローラ14は、出力電力レベルPoを現在の設定に維持することができる。電力差|ΔP|が低電力増加閾値よりも大きい場合、コントローラ14はステップ630に進んで、電力差|ΔP|を高増加閾値と比較することができる。ステップ630において、電力差|ΔP|が高電力増加閾値よりも大きい場合、コントローラ14はステップ632に進んで、出力電力レベルPoを高速増加電力調整レベルP高速_増加だけ増加させることができる。ステップ630において、電力差|ΔP|が高電力増加閾値より小さい場合、コントローラ14はステップ634に進んで、出力電力レベルPoを低速増加電力調整レベルP低速_増加だけ増加させることができる。高速増加電力調整レベルP高速_増加は、低速増加電力調整レベルP低速_増加よりも大きさが大きくてよい。このようにして、コントローラ14は、装置10の所望のシステム応答を提供するために出力電力レベルPoを高速または低速で変化させることができる。ステップ628、632、または634のいずれかの後、コントローラ14はステップ602に戻ることができる。
本明細書で論じるように、方法600は、出力電力レベルPoを複数の電力調整レベルで調整することを実現することができる。異なる電力調整レベルは、出力電力レベルPoを、目標電力レベルPTおよび最大電力レベルPmaxと比較して出力電力レベルPoの特定の状態に見合った大きさだけ調整することを実現することができる。例えば、本明細書で論じる電力調整レベルの関係は以下の通りであり得る:Pmax_減少>P高速_増加>P低速_増加 および Pmax_減少>P高速_減少>P低速_減少 さらに、高増加閾値および高減少閾値は、低増加および低減少閾値よりも大きい値に対応することができる。したがって、本明細書で論じる複数の電力調整レベルおよび電力レベル閾値の各々は、装置10の所望の応答を提供するために様々な用途に適するように調整され得る。
電力および位相の測定値または散乱行列に従って、搬送された無線周波数送信を評価することにより、ソリッドステート無線周波数ソースを有する電磁調理装置(図1の要素10を参照)は閉じられたキャビティ(図1の要素20を参照)を、その中の加熱パターンを決定する共振モードまたは定在波の結合係数を制御することによって正確に励起することができる。すなわち、ソリッドステート電磁調理装置は、特定の共振モードを無線周波数ソースの動作を介してマイクロ波キャビティに結合することによって所望の加熱パターンを励磁することができ、この場合、加熱パターンは共振モードの係数によって決定される。共振モードは、キャビティ寸法、食品負荷タイプ、食品負荷配置および複数のコヒーレント無線周波数ソースの励起条件(例えば、動作周波数およびソース間の位相シフトなど)の関数である。電磁調理装置は、特定の加熱パターンまたは一連の加熱パターンを経時的に励磁するために共振モードの結合係数を選択するようにソリッドステート無線周波数ソースを制御するように構成され得る。特定の共振モードに関連する加熱パターンは、調理工程の均一性または不均一性を決定することができる。しかし、共振モードは食品負荷タイプおよび配置、キャビティサイズおよび励起条件の関数であるため、共振モードおよびそれらの臨界周波数について先験的に知ることは不可能である。
したがって、電磁調理装置は、その場で閉じられたキャビティ内の共振モードを決定するように構成され得る。次に図9を参照すれば、本明細書に説明する様々な態様による、導波管として具現化された2つのRF供給部226A、Bに結合された共振キャビティ222を示す概略図が、示される。RF供給部226A、Bは、それらのそれぞれの高出力増幅器(図1の要素18A、Bを参照)からの電力を閉じられたキャビティ222に伝達する。RF供給部226A、Bは、空間的に分離されているが固定された物理的位置で閉じられたキャビティ222に結合され得る。RF供給部226A、Bは、選択された周波数および位相で閉じられたキャビティ222にRF送信を伝えることができ、この場合、RF送信間の位相シフトまたは差は、励起された共振モードの対称性のクラスに直接関係する。例えば、同相関係(すなわち位相シフト=0°)でRFソースを活性化させると、偶数対称性モードが活性化し、逆位相関係(すなわち位相シフト=180°)でソースを活性化させると、奇数対称性モードが活性化する。対称性は、以下に説明するようにレンジ内の加熱パターンを決定する。この例では、同相関係(すなわち位相シフト=0°)でRFソースを活性化させると、偶数対称性モードが活性化し、逆位相関係(すなわち位相シフト=180°)でソースを活性化させると、奇数対称性モードが活性化する例が与えられているが、システムのハードウェアアーキテクチャに応じて、他の位相シフトが採用されてもよい。
動作中、電磁調理装置は、キャビティ222内で励起されるべき共振モードについて対称性のセット(例えば偶数または奇数)を決定する。電磁調理装置は、動作周波数のセットに対してキャビティ222を励起し、周波数ごとに測定された効率を記憶するように構成される。効率は、
のように順方向電力に対する順方向電力から逆方向電力を引いたものの比に従って測定することができる、消費された総電力で割った有効電力出力によって決定される。
電磁調理装置は、励起された対称性クラスについて効率マップをメモリに記憶するように構成される。
ここで図10を参照すれば、共振キャビティの同相励起228および逆位相励起230についての効率対周波数を示すグラフ図が、示される。この非限定的な例示的な例では、電磁調理装置は、動作周波数ごとに2セットの励起を行い、2つの効率測定値を得るように構成される。
次に図11を参照すれば、本明細書に説明する様々な態様による、キャビティの共振モードを決定するための分析方法の特徴を示す図が、示される。電磁調理装置は、特定のクラスの対称性に対して励起された極の臨界周波数(すなわち、共振モードの共振周波数)を認識するために、応答を通過帯域RLC回路としてモデル化することによって、(同相励起228について示される)記録された効率マップを分析することができる。この目的のために、コントローラ(図1の要素14を参照)またはRFコントローラ(図2の要素32を参照)の物理的または論理的サブ構成要素としてのプロセッサ250は、効率関数の極大値を識別するように構成され得る。プロセッサ250は、それだけに限定されないが、ベクトルフィッティング、マグニチュードベクトルフィッティングなどを含む、効率マップの極の臨界周波数を決定するのに有用な任意のアルゴリズムを実装することができる。このようにして、プロセッサ250は対称面ごとの共振周波数のリスト252を決定することができる。
さらに、プロセッサ250は、決定された各極の相対帯域幅に基づいて品質係数(Q値)を決定することができる。プロセッサ250は、Q値の推定値に基づいて、キャビティ内に位置する食品の存在を決定することができる。例えば、プロセッサ250が、選択された共振モードが7以下などの低いQ値を有すると決定した場合、プロセッサ250は、励起モードが極大値または最大値を有する閉じられたキャビティの部分が食品を含むと決定することができる。同様に、プロセッサ250が、選択された共振モードが1000を超えるなどの高いQ値を有すると決定した場合、プロセッサは、励起モードが極大値または最大値を有する閉じられたキャビティの部分に食品がないと決定することができる。プロセッサ250は、Q値の推定値に基づいて、キャビティ内に位置する食品の種類を分類することができる。例えば、冷凍食品のQ値は約300、水のQ値は約7、金属製品のQ値は約1000である。決定された各極について、プロセッサ250は、モードを励起するために使用される共振周波数と、モードによって加熱される食品の種類を決定するためのQ値とを関連付けることができる。Q値を決定することのさらなる利点が、以下に説明される。
次に図12を参照すれば、本明細書に説明する様々な態様によるキャビティの共振モードを評価するための方法の特徴を示す図が、示される。電磁調理装置のプロセッサがキャビティ222内で励起可能な共振モードを示す極のセット252を決定する、無線周波数フィード226A、Bの同相励起228のこれまで説明した例に基づき、決定された極252A〜Cのそれぞれは、キャビティ222内の加熱パターン260A〜Cに対応する。加熱パターンは共振モードの係数によって決定されることを想起されたい。各加熱パターン260A〜Cは、均一な加熱を示す輪郭を有する空間パターンを有することになる。図12では2進セットの輪郭で描かれているが、実際の加熱パターンは、連続した加熱レベルを示す多くの輪郭を含むことになる。理解を容易にするために、単一の輪郭レベルは、加熱パターンの最も高温の領域を示し、共振モードの偶数対称性および奇数対称性を示す。
次に図13Aおよび図13Bを参照すれば、本明細書に説明する様々な態様による、共振キャビティ222内に配置された食品300A、300Bを位置特定して分類する方法の特徴を示す概略図が、示される。逆位相励起(図13Aに示す)を開始すると、電磁調理装置は、偶数対称性でキャビティ222内に加熱パターン360Aを生成することができ、この場合、最大加熱輪郭302はキャビティ222の中心に生じない。食品300Aの大部分312は最小限の加熱パターン360A内にあり、食品300Aの小部分310のみが最大限の加熱パターン360A内にあるので、キャビティ反射は、食品300Aからの電磁応答よりも大きく、それによって比較的低い効率をもたらす。対照的に、同相励起(図13B)では、食品300Bの大部分314は最大限の加熱パターン360B内にあり、食品300Bの小部分316のみが最小限の加熱パターン360B内にあるので、キャビティ反射は最小化され、効率は偶数対称性励起中に決定された効率よりも高い。したがって、電磁調理装置は、同相励起と逆位相励起との間の効率間の効率を比較することによって、食品がキャビティ222の中心に位置するかどうかを決定することができる。言い換えると、同相励起での効率の方が高いと、食品がキャビティ222の中心に位置しないことを示し、逆位相励起での効率の方が高いと、食品がキャビティ222の中心に位置することを示す。このようにして、電磁調理装置は、偶数対称性の活性化された共振モードの効率に基づいてマイクロ波キャビティ222の中心に配置された食品の存在を決定し、または奇数対称性の活性化された共振モードの効率に基づいて、マイクロ波キャビティ222の中心から離れて配置された食品の存在を決定するように構成され得る。
加えて、プロセッサは、共振モードの効率および対称性に従ってQ値をさらに分析して、キャビティ222内の複数のタイプの食品を検出および位置特定するように構成され得る。プロセッサは、マイクロ波キャビティ222内の食品の位置に従って食品300A、300Bの部分310、314を分類するために、特定された共振モードのサブセットについてQ値を平均するように構成され得る。例えば、プロセッサは、偶数対称性加熱パターン360AのQ値を平均して、偶数対称性加熱パターン360Aの最大加熱輪郭302と交差する食品300Aの部分310内に位置する食品のタイプを決定することができる。同様に、プロセッサは、奇数対称性加熱パターン360BのQ値を平均して、奇数対称性加熱パターン360Bの最大加熱輪郭304と交差する食品300Bの部分314内に位置する食品のタイプを決定することができる。
電子レンジにおけるマグネトロン加熱ソースの非常に一般的な電力量は800〜1000Wの範囲であるので、調理用途は通常数百ワットの範囲の電力レベルを必要とする。それでも、すべての用途がそのような高い電力レベルを必要とするわけではない。例えば、用途が、均一な加熱および/または制御されたプロセスを確実にするために80W程度の低い電力レベルを必要とすることがある。さらに、高すぎる電力レベルが使用されると、一部の調理プロセスは破壊されるかまたは損なわれる(すなわち、電力レベルが増加するにつれて調理プロセスの品質は低下する)。そのような方法の一例は、バターまたはチョコレートの融解である。他の例はパンを発酵させることであり、この場合、酵母の成長に適した温度は、ある一定の時間量を超えてはならない。
ソリッドステートソースの使用は、閉じられたキャビティ20、222の正確な励起、すなわち特定の加熱パターンが対応する特定の共振モードとの正確な結合を可能にする。上記で指摘したように、共振モードは、キャビティ寸法、食品負荷タイプ、ならびに変位および励起条件(すなわち、複数のコヒーレントソースを使用する場合のソース間の動作周波数および位相シフト)の関数である。一方、従来の非コヒーレントマグネトロン源では、動作周波数が固定されており、位相シフト関係が存在しないため、このような結合は制御が困難である。ソリッドステートソースの高められた制御性を活用するために、共振モードの結合係数を制御して、特定の共振モードに関連付けられた特定の加熱パターンおよび/または特定の一連の経時的な加熱パターンを実現し、それによって高められた均一性および/または制御された不均一性を達成することが望ましい。そのような制御された不均一性は、電界、すなわち加熱パターンのソースが、閉じられたキャビティ20、222の左側または別の部分に対して不平衡であるゾーン調理用途に使用され得る。共振モードは食品負荷およびその変位、キャビティサイズ、および励起条件の関数であるため、共振モードおよびそれらの臨界周波数について先験的に知ることは不可能である。したがって、特定のセットのキャビティサイズ/食品負荷タイプならびに変位および励起条件についてどの共振モードが励起されるかを、これらすべての情報を有することなく、たとえばユーザインターフェース28でユーザ入力を受信せずに、またはカメラなどの追加のセンサを有して閉じられたキャビティ20の負荷状態およびすべてのその特性を検出することなく、決定することは不可能である。重ねて、この情報は、加熱パターンについての情報を得て、これを適切に使用するために必要とされる。
本明細書に説明する実施形態は、食品負荷の均一または不均一な加熱を得るために、閉じられたキャビティ20、222内に活性化される(すなわち、エネルギー源がエネルギーを伝達する)事前分類された共振モードを使用する方法に関する。この技術は、吸収スペクトルと共振モードとの間の関連に基づいているので、スペクトルモーダル制御と呼ばれ得る。この理論は、均一な加熱パターン、中心部優勢の加熱パターン、または不平衡なパターンを確実にする。この理論は、閉じられたキャビティ20、222において、ソースと共振モードとの間の結合は、そのような共振モードが特定の離散周波数(共振周波数、臨界周波数、またはいわゆるモードの固有値)においてのみ存在するので動作周波数の関数であるという観察から生じる。マイクロ波キャビティは、同じ周波数応答を共有する等価回路を見つける回路として表され得る。この回路的(フィルタ状)表現を鑑みて、共振モードは、それらの臨界周波数を中心とし、それらのQ値に反比例する帯域を有する通過帯域フィルタとして表され得る。Q値は損失(負荷内に生じる誘電損失と金属内に生じる表面電流から来る金属損失)に関連する。閉じられたキャビティ20、222の通過帯域図が、図14に示される。動作周波数に関するそのような共振モードの結合は、励起の周波数/時間係数に関連する結合係数として考えることができる。
ソースと閉じられた共振キャビティ20、222のモードとの結合は、閉じられたキャビティ20、222に対する、励起変位とそれらの間の位相関係(複数のコヒーレント源が使用される場合)の関数である。この第2の結合係数は、励起の「空間」係数に関連していると考えることができる。加えられた位相シフトは、伝達された共振モードの対称性のクラスに直接関連する。例として、図9に描く閉じられたキャビティ222を取り上げる。ソースを同相関係で活性化させると、偶数対称性モードが活性化し、ソースを逆位相関係で活性化させると、奇数対称性モードが活性化する。この挙動は図13Aおよび図13Bに示されており、この場合、図13Aは逆位相関係を表し、図13Bは同相関係を表している。説明は、2つのソースが置かれる2つの平面間の位相関係、すなわち、2つの前述のクラスの対称性が閉じられたキャビティ222に課す自然位相シフトを考慮して見出すことができる。例えば、(閉じられたキャビティ20のいわゆる自由応答を構成する)あらゆる共振モードは、キャビティ壁、すなわちソースが配置されている場所に特定の境界条件を課す。電子レンジ10の非常に一般的なケースである、閉じられたキャビティ20、222の励起が導波管を介して得られる場合、導波管は、それらが励起するように設計されている共振モードに一致する場所に、かつこれらの間に位相シフトを有して置かれるものとする。この場合、閉じられたキャビティ20、222は、励起されたとき(いわゆる強制応答)、励起の標的となる共振モードが有するであろうものに対応する電磁場構成を呈することになる。このような考察を使用して、臨界周波数および対称性のクラスのマップを得ることが可能である(スペクトルモーダル同定)。さらに、特定された各共振モードについて結合効率を測定または推定することが可能である。
図15は、閉じられたキャビティ222内の不平衡な励起および結果として生じる加熱パターンの例を示すために提供される。図16は、閉じられたキャビティ222内の平衡な励起および結果として生じる加熱パターンの例を示すために提供される。
以下は、共振モードをそれらの対称性に従って分類し、それらの臨界周波数および効率が提供されたリストである。図示する値は、例示を目的とする。
対称性1(偶数、平均効率=79%)
モード1(周波数=2.40GHz、効率=70%)
モード2(周波数=2.41GHz、効率=95%)
モード3(周波数=2.45GHz、効率=80%)
モード4(周波数=2.50GHz、効率=72%)
対称性2(奇数、平均効率=79%)
モード1(周波数=2.40GHz、効率=69%)
モード2(周波数=2.41GHz、効率=78%)
モード3(周波数=2.45GHz、効率=90%)
コントローラ14は、図17に示す、複数のRF供給部26A〜26D、226A〜226BからのRF放射を用いて内部の加熱パターンを制御するために閉じられたキャビティ20、222内に事前分類された一連の共振モードを活性化する方法(400)を実行するように構成され得る。複数のRF供給部26A〜26D、226A〜226Bは、RF放射を閉じられたキャビティ20、222内に伝達し、複数のRF供給部26A〜26D、226A〜226Bにおいて順方向および逆方向の電力を測定する。方法は、閉じられたキャビティ20、222内に配置された負荷に部分的に基づいて、閉じられたキャビティ20、222内の各対称面に送出されるべきエネルギー量に対応する加熱目標を選択するステップ(ステップ402)と、非対称性を検出し、最適な回転面を見つけるステップ(ステップ404)と、加熱目標に基づいて加熱ストラテジを生成して所望の加熱パターンを決定するステップ(406)であって、加熱ストラテジは、所望の加熱パターンに対応する閉じられたキャビティ20、222内に励起される、選択された一連の共振モードを有する、ステップと、選択された一連の共振モードの各共振モードに対応する周波数のセットについてフェーザの選択されたセットを用いて、閉じられたキャビティ20、222を励起して加熱パターンを作りだすステップ(408)と、RF供給部26A〜26D、226A〜226Bにおける順方向および逆方向の電力測定値に基づいて、作りだされた加熱パターンを監視して閉ループ調節を使用して、閉じられたキャビティ20、222内への一連の共振モードを、所望の加熱パターンおよび監視されている作りだされた加熱パターンに基づいて選択的に変更するステップ(ステップ410)とを含む。
加熱目標は、閉じられたキャビティ20、222内の対称面に従って指定されたエネルギー設定点である。換言すれば、加熱目標は、電子レンジ10が各対称面に送出するように構成されたエネルギー量である。さらに、目標設定点は、対称面の間の比に従って指定することができる。例えば、目標設定点は、偶数対称面が奇数対称面の2倍のエネルギーを受けるように設定されている場合、偶数対象面および奇数対称面について2:1の比として設定することができる。加熱目標は、食品負荷および調理サイクル要件に従って構成される。例えば、平衡加熱目標が、再加熱サイクルにあわせて構成され得る。別の例では、2つの小さなグラスのような2つの別々の食品負荷がレンジ10の左半分および右半分のキャビティ中心に関して対称的に置かれる場合、加熱目標は偶数対称性加熱パターンに合わせて構成され得る。
スペクトルモーダル理論は、同相および逆相におけるソースが、キャビティ20、222の中心に対して対称的な特定の加熱パターンを生じさせることを確実にする。したがって、これらのパターンは、中心に置かれた食品負荷を管理するのに適しているが、2つのパターンの重なりのためにエネルギーの大部分が食品負荷の右側に注入される図18で強調されるように、変位の影響を非常に受けやすくなり得る。
要点は、中心に置かれていない食品負荷が対称面内で回転を引き起こし、この回転によってシステムのレンジ負荷にその対称性を失わせることである。したがって、実際の対称面の回転を識別し、これをRF供給部26A〜26D、226A〜226Bに適用し、したがって、図19に示すように、その位相関係を変更して、この望ましくないシナリオを補償することが可能である。ここでαおよびβがRF供給部26A〜26D、226A〜226B間のデルタ位相である。
この方法は、RF供給部位相シフトを適切な対称面に適用するだけで、たとえば(図18で既に説明したような)幅軸、高さ軸および深さ軸上の3D変位を管理するために利用することができる。
ステップ402において加熱目標を選択することの結果は、1つの特定の共振モードと結合する各RF供給部26A〜26D、226A〜226Bについての周波数位相シフト励起のセットである。適用される位相シフトは、各対称性クラスに固有のもの、すなわち対称性クラスがキャビティ20、222に課す自然位相シフトである。これらの共振モードは、そのため、「非回転」または「公称」共振モードと呼ばれ得る。非対称性を識別し、最適な回転面を見つける方法(ステップ404)が、以下に説明される。
選択された非回転共振モードは、対称性の理想的なシナリオを参照しているため、これらは、非対称性のシナリオには最適以下の可能性がある。そのような非対称性のシナリオは、食品負荷の位置によって、またはシステム自体(例えば、RF励起がキャビティに供給される方法における非対称性)によって引き起こされ得る。非回転共振モードを識別した後、コントローラ14は、最終的な非対称性を補償し、したがって最適化された共振モードを提供する最適な回転を見つけるために、これらが実際のシステムに適しているかをチェックする。一部の場合、非回転共振モードの一部は、効率の最適化のために回転を必要としないことが判明し得る。従って、全ての最適化共振モードが回転するわけではない。ステップ402は、種々のサブステップからなる。(1)フェーザ励起、(2)励起解析(3)、共振モード回転、および(4)電力センサ(スカラ)の代わりに電力および位相センサ(ベクトル)の使用。
公称フェーザを選択した後の最初のサブステップ(フェーザ励起サブステップ(1))について、位相シフトに作用して周波数をその共振モードの間ロックし続けることにより、分析される共振モードごとに励起のセットを識別することが可能である。詳細には、非回転共振モードごとに、コントローラ14は、(公称モードの)同じ周波数および位相シフトの組み合わせを有する励起のセットを生成する。位相のセットは、事前に定義されるか、実行時に静的に定義されるか、または異なるパラメータに従って適応的であってよい。さらに、近似を犠牲にして計算時間を節約するために、位相軸は、分析範囲内のすべての位相シフトまたは少数のサンプルのみを含むことができる。特定の対称面に関連する励起は、別のものに近づきすぎて回転するとそれと結合する可能性があるため、位相シフトは任意に定義されない。したがって、コントローラ14が位相軸に対して適切な範囲を設定することが有利である。
選択された動作は、それらの効率と共に記憶することができ、これは以下のように算出することができる。
効率=(入力電力の合計−反射電力の合計)/(入力電力の合計)。
各対称性クラスのモードごとに、マップフェーザ/効率が記憶される。すなわち、キャビティが2つの可能なクラスを有する2つのポートを有し、各々に対して2つのモードが選択された場合、4セットの励起が実行され、各セットは、定義されたすべての位相シフトを有し、したがってさらに分析されるべき4セットの効率測定値を得る。視覚的な例が図20に示されており、ここでは共振モードごとに、コントローラ14は以下を実行する。
対称性1の場合、フェーザψは、両ポートについてabs(ψ)=1であり、arg(ψ)=e^jf0−φであり、ここでφ={−67.5°、−22.5°、0°、22.5°、67.5°}であり、
対称性2の場合、フェーザψはabs(ψ)=1であり、arg(ψ)=e^jf0−φであり、ここでポート1の場合はφ={−67.5°、−22.5°、0°、22.5°、67.5°}であり、ポート2の場合はφ=−180°−{−67.5°、−22.5°、0°、22.5°、67.5°}である。
理論的には効率対位相曲線は、(対称性のものについて0°である)システムの実際の対称面上に最大値を有する正弦波の傾向をたどるべきであるため、次いで、記録された効率マップは効率を最適化する位相シフトを見つけるために第2のサブステップ(励起分析サブステップ(2))において分析される。
前の段階で行われた選択に応じて、効率対位相曲線を描くためにさまざまなストラテジを採用することができる。すべての位相軸が考慮されている場合、励起を走査して最も効率の良い励起を見つけるだけで十分である。別の形では、補間アルゴリズム(線形、スプラインなど)を適用するか、または曲線の傾向に関する先験的な知識を利用したモデル(LSQ、線形回帰など)を定義することも可能である。視覚的な例が図21に示される。
軸の回転は、RF供給部26A〜26D、226A〜226Bの各対の間の位相シフトの組み合わせであり、したがって、1つのソース/ソース位相関係をある値にロックすることは、他のすべての関係に影響を及ぼすため、1つの位相方向の最大検出は他のすべてに相関付けられる。そのため、位相シフトの最適な組み合わせは、別々にとられた方向ごとの最適値の組み合わせに等しくない。
これは、(nport−1)次元関数の最適化問題につながり、そのため、4ポート電子レンジ10の場合、最大値は3次元平面で探索されなければならない。
例えば、4ポート電子レンジ10および4つの要素[−pi/4−pi/8+pi/8+pi/4]から作られた、走査されるべき位相軸が与えられる場合、ポート間の位相シフトの全ての可能な組み合わせは(1つが参照として使用されており、そのためフェーズは変わらない条件で)、
である。
したがって、2ポート電子レンジ10では調査すべき効率−位相曲線は1つしかないが、より複雑なシステムでは、実際の最適回転を見出すために必要な励起および感知の数は、劇的に増加し得る。
前式における「自由」位相シフト(すなわち、制御される量)は、3の数であり、制御変数はちょうど2である。これは、第1のポートと第2のポート間の位相シフト
および第1のポートと第3のポート間の位相シフト
が与えられる場合、最後の位相シフト
は、制御変数ではなく、前の2つの式を満たすという事実に由来する。これは、制御変数の数は制御される変数の数より少なく、1つの係数ずつ最適化する最適な制御は不可能であることを意味する。
以下のように、解決策を見つけるためにさまざまなアプローチが使用され得る。
・全問題を解決する。
・全問題をヒューリスティック関数で近似する。
・すべての副問題を別々に検討し、結果を組み合わせる(図21に示すように)。または、
・副問題の1つまたはサブセットのみ(特定の基準に関して最も意味のある問題)を考え、これ/これらを正確にまたは近似的に解決する。
最適な回転面を見つけた後、それに応じて共振モードが第3のサブステップごとに変更される(共振モード回転サブステップ(3))。全ての対称面からの情報を一致させることから、対称性のクラスごとに分類されたキャビティ内で利用可能な共振モードの全体像を得ることが可能である。
サブステップ(3)に続いて、位相センサを使用して、システムのS行列(散乱行列)を第4のサブステップで収集する(電力および位相センサの使用サブステップ(4))。散乱行列は、実際にシステムを励起することなくスペクトルモーダル励起を実行することを可能にする。その代わりに式を適用することが可能である。
Sx=y
ここで、Sはシステムの散乱行列であり、xは入力フェーザであり、yは出力フェーザであり、入力電力および反射電力を次のように計算する。
入力電力=x*conj(x)
出力電力=y*conj(y)
ここで、conjは、複素共役を表す。
上記で留意したように、効率は次のように算出することができる。
効率=(入力電力の合計−反射電力の合計)/(入力電力の合計)。
非対称性を検出し、最適な回転面、したがって最適化された共振モードを見つけた後(ステップ404)、コントローラ14は、最適化された共振モードを利用するために加熱ストラテジを生成する(ステップ406)。所与の加熱ストラテジに対して、最適化された、選択された一連の共振モードは、コントローラ14に関連したメモリ内に記憶される。電子レンジ10は、リスト内に存在する最適化された共振モードを活性化し、エネルギーをそれらに閉じられたキャビティ20、222内で結合させるためにRFチャネル40A〜40Dの適切な位相シフトおよび動作周波数を適用することによって、選択された一連を実行するように構成される。最適化された各共振モードは、特定の持続時間の間活性化させことができる。例えば、各モードは同じ持続時間の間励起することができ、または別の例では、各モードは、実験的に決定されたモードの効率に反比例する持続時間の間励起することができる。さらに、一連の最適化されたモードは、すべての最適化された共振モード、または加熱目標比に比例するサブセットのみを含むことができる。2:1の目標比の先の例を拡張すると、一連の最適化されたモードは、第2の対称面に属する共振モードの数に関して、第1の対称面に属する共振モードの2倍の数を含むことができる。特定の対称性に属する共振モードは、他の対称性に属する共振モードと交互に配置されて、加熱性能に悪影響を及ぼしかねないあまり長い時間同じ加熱パターンを適用しないようにすることができる。別の例では、第1の対称性に属するモードの逆効率の合計と第2の対称性に属するモードの逆効率の合計とが比率目標エネルギーを満たすように選択されるように、一連の最適化されたモードを選択することができる。別の例では、電子レンジ10は、RFチャネル40A〜40Dに使用される電力出力を調節することによってエネルギー目標設定点を実現することができる。まとめると、上記で説明した例は、加熱ストラテジが設定され、次いで適用される開ループ動作を表す。開ループアルゴリズムの一例が図22に示される。
加熱ストラテジにおいて決定される一連の加熱パターンは、本明細書で「電子撹拌」と呼ばれるものを実行するように選択され得る。「電子撹拌」は、1つの課された動作と次のものとの間の空間的相関が高いように加熱パターンの滑らかな変化を結果としてもたらす一連の加熱パターンである。信号発生器16は小型の信号発生器であってよく、周波数および位相シフトが経時的に滑らかに変化するように設定されてよく、それにより、そのような励起によって引き起こされる加熱パターンもまた滑らかに変化するようになる。電子撹拌の例が図24に示されており、この図は、様々な位相および周波数指数における効率を示す。図24に重ね合わされた様々な線によって示すように、一連の加熱パターンは、効率マップにおいて特定された共振モード(AおよびB)間のいくつかの経路(P)をたどる。したがって、共振モード(AおよびB)を生成するもの間で単に励起を交互にするのではなく、共振モード(AおよびB)の間にある様々な中間励起が生成される。経路(P)は図24では直線的であるが、経路は階段状、補間的または特定の経路をたどることができる。そのような設定は、特定のハードウェア実装形態および/または周波数/位相領域における検出された共振マップの変動に基づいて変動し得る。選択された経路にかかわらず、制御方式は、第1の検出された共振(例えば、A)から第2の検出された共振(例えば、B)に移動することによって加熱パターンの滑らかな変化を引き起こすことを試みることができる。
電子撹拌における各経路は、特定の周波数および位相シフトを有する励起を生成することによって横断することができる。例えば、経路の開始および終了共振モードの周波数および位相は、2つの共振モードの間の経路を横切るように一連の位相および周波数シフトを識別するために使用され得る。経路が線形であり励起が段階的である場合、各励起に対する位相シフトは、開始点の位相(第1の共振モード)と終了点の位相(第2の共振モード)との差を、2つのモード間で発生するステップまたは励起の数で割ったものとして算出することができる。同様に、各励起についての周波数シフトは、開始点の周波数(第1の共振モード)と終了点の周波数(第2の共振モード)との間の差を、2つのモード間で発生するステップまたは励起の数によって割ったものとして算出することができる。
変動の速度(すなわち、撹拌経路の速度)は、特定の食品のタイプおよび/または調理サイクル段階に従って変更され得る。制御信号の位相および周波数を指定することに加えて、コントローラ14は、経路(P)を横切るときの制御信号の周波数および位相の変化率をさらに制御することができる。このようにして、経路(P)に沿った変化速度または移動速度を利用して撹拌速度を制御することができる。そのような速度は、調理サイクルのタイプおよび/または食品負荷のタイプに基づいて変化して調理動作を改善することができる。例えば、撹拌ルートの速度は、食品負荷が凍結されているときは解凍サイクルのセグメントに対してより速くてよく、食品負荷が解凍し始めるときはより遅くてよい。解凍プロセスが開始したとコントローラ14が決定することができる方法は、以下にさらに説明される。
そのような電子撹拌を提供することにより、加熱パターンの多様性が増す(すなわち、2つ以上の共振との同時結合)ことによって調理をより均一に実行することができる。さらに、選択された特定の撹拌ルートおよび選択された励起による連続的な加熱パターンの高い空間的相関により、食品負荷の縁部は均一に照射され得る。これにより、調理プロセスの縁部管理が可能になり、それによって縁部の加熱部分が経時的に交互にされて部分ごとに休ませ、食品負荷のより低温の部分と熱的に熱交換して縁部が焦げるのを回避する。
電子撹拌はこうして、機械的解決法(すなわち撹拌機またはターンテーブル)が提供するものに似た加熱ストラテジを提供する。これにより、特に解凍性能が向上する。本明細書で論じるように、モードは、各RF信号および対応するRF供給部(例えば、RF供給部26A〜26D、226A〜226B)の周波数および位相に対応することができる。例えば、第1のRF信号および第2のRF信号は、周波数および位相シフトを含むモードにおいてRF供給を活性化するためのコントローラ14からの命令に応答してRFコントローラ32によって生成することができる。命令に応答して、第1のRF信号は、第2のRF信号のタイミングに対する周波数および位相シフトで動作するように設定され得る。さらに、第2のRF信号は、第1のRF信号のタイミングに対する周波数および位相シフトで動作するように設定され得る。このようにして、コントローラ14は、調理キャビティ20内に電磁放射を誘発して、本明細書で論じるように電子撹拌を提供するのに必要とされる周波数および位相を達成することができる。
より具体的には、上記で述べた電子撹拌を実行するために、コントローラ14は、共振キャビティのための走査動作を制御するように構成され得る。走査動作は、RF供給部(例えば、RF供給部26A〜26D、226A〜226B)の間またはそれらの中で複数の周波数および対応する位相シフトを発することを含むことができる。複数の周波数を発している間、コントローラ14は、調理キャビティ20内の反射電力の効率を測定することができる。図28を参照してさらに論じるように、コントローラ14は、周波数および位相領域において調理キャビティ20の全体の効率応答をマッピングおよび/または補間するように動作可能であってよい。
測定値または補間された効率の結果に基づいて、コントローラ14は、特定の食品負荷を有する調理キャビティ20のための複数の共振周波数を検出することができる。共振モードは、調理キャビティ20の臨界周波数または共振周波数に対応することができる。例えば、RF供給部の共振周波数は、第1の位相および第1の周波数を含む第1の共振モードと、第2の周波数の第2の位相を含む第2の共振モードとに対応することができる。コントローラ14は、撹拌ルートの中間点または開始点および終了点として、第1の共振モードおよび第2の共振モードを選択することができる。このようにして、コントローラ14は、撹拌ルートを規定する経路を、第1のモードと第2のモードとの間の複数の中間モードとして決定するように動作可能であってよい。
第1の共振モードと第2の共振モードとの間で撹拌ルートが特定されると、コントローラは、中間モードに沿って高出力増幅器18A〜18Dに供給されるRF信号を制御することによって電気撹拌手順を制御することができる。撹拌ルートを制御するために、コントローラ14は、複数の高出力増幅器(例えば、高出力増幅器18A〜18D)を順次活性化させて、中間モードに沿って調理キャビティ内に対応するRF供給を発することができる。このようにして、コントローラ14は、中間モードによって規定される周波数および位相シフトで調理キャビティ20を順次励起することができる。コントローラ14は、2つの共振モード間の経路を横切るようにRF信号間またはRF信号の中で周波数および位相シフトを滑らかに調整するために、周波数および位相シフトを増分的に調整することができる。
コントローラ14は、さらに、撹拌速度を制御するために、1つの中間モードから次への変化率を調整することができる。変化率は、1つまたは複数のユーザ設定および/または特定の食品タイプまたは調理プロセスに対する自動設定に基づいて調整することができる。例えば、コントローラ14は、撹拌速度を制御して、RF供給部の周波数および位相の設定を、モード毎に約0.1秒から約4秒まで変化する速度で変化するように維持し、または同様に各周波数および/または位相の変動を撹拌経路に沿って維持することができる。解凍動作の場合、撹拌速度は1モードあたり約0.05〜0.5秒であってよい。高速加熱動作中の典型的な食品負荷については、撹拌速度はモード当たり約0.5から1秒であってよい。最後に、一部の特定の食品では、モードごとに最大1から3秒までのより低速の撹拌速度が適用され得る。特定の例では、撹拌速度は、ジャガイモまたはマッシュポテトの加熱設定について、1モードあたり約2から3秒であってよい。
図17に戻って参照すれば、ステップ406において加熱ストラテジを生成した後、コントローラ14は、RF供給部26A〜26D、226A〜226Bによって、選択された一連の加熱パターンに対応する周波数のセットについてのフェーザの選択されたセットを用いて閉じられたキャビティ20、222を励起する(ステップ408)。
動作中、コントローラ14は、総入力電力から総反射電力を引いたものとして表された正味電力を決定するために、負荷に送出されるエネルギーまたは効率などの送出されたエネルギーの代用物を検出するために統合増幅器電力測定システム150を使用することによって閉ループ調節を実装することができる(ステップ410)。エネルギー測定は、電流対称面に対してアキュムレータ内に統合することができる。指定された時間間隔で、コントローラ14は閉ループ調節を使用して励起モードの動作シーケンスを再平衡化し、特定の対称面に対する動作回数を増減して必要なエネルギー目標設定点をより良好に達成する。別の例では、コントローラ14は、閉ループ調節を使用して、特定の対称面または特定のモードに対して閉じられたキャビティ20、222に印加される電力を調整することができる。閉ループアルゴリズムの一例が、図24に示される。この例では、再平衡化後、最初の対称面内の最適化された共振モードの数は1つ減少する。適用された回転軸についてのフィードバックを得るために、コントローラ14はエネルギー(または代用物)を監視することもできる。
図25Aは、調理機器が2つのポートを含む、閉じられたキャビティ内の食品負荷の1つの例の効率マップである。図25Bは、調理器具が4つのポートを含む、閉じられたキャビティ内の食品負荷の1つの例の効率マップである。したがって、これらの効率マップは、2つの異なる状態の周波数/位相表現である。各マップにおいて、共振モードは、それらが存在する対称面に関して正方形/三角形でマークされている。図25Bに示す十字マーカは、何らかの理由で(例えば、それが別のものに近すぎるために)アルゴリズムがフィルタリングした共振モードを示す。
図26Aは、システムがほぼ対称であり、共振のほとんどが約0°(第1の対称面)および180°(第2の対称面)である周波数/位相領域における効率マップの例を示す。そのような共振は、回転させる必要はない。この例では、公称軸を使用して最高の効率(結合)が得られる(第1:0°、第2:180°)。図26Bは、システムが非対称であり、ほとんどの共振が0°(第1の対称面)または180°(第2の対称面)のいずれの辺りにもない周波数/位相領域における効率マップの例を示す。そのような共振は、回転を受けやすくなり得る。この例では、各極に特定の回転を適用して最高の効率(結合)が得られる。公称軸(第1:0°、第2:180°)を使用すると、より低い効率が得られる。
上記で説明した方法に対する代替案が、図27を参照して以下に論じられる。ここで、コントローラ14は、図27に示す複数のRF供給部26A〜26D、226A〜226BからのRF放射を用いて内部の加熱パターンを制御するために事前分類された一連の共振モードを閉じられたキャビティ20、222内に活性化する方法(500)を実行するように構成され得る。複数のRF供給部26A〜26D、226A〜226Bは、RF放射を閉じられたキャビティ20、222内に伝達し、複数のRF供給部26A〜26D、226A〜226Bにおいて順方向および逆方向の電力を測定する。方法は、非対称性を検出し、最適な回転面を見つけるステップ(ステップ502)と、閉じられたキャビティ20、222内に配置された負荷に部分的に基づいて、閉じられたキャビティ20、222内の各対称面に送出されるべきエネルギー量に対応する加熱目標を選択するステップ(ステップ504)と、加熱目標に基づいて加熱ストラテジを生成して所望の加熱パターンを決定するステップ(ステップ506)であって、加熱ストラテジは、所望の加熱パターンに対応する閉じられたキャビティ20、222に伝達される選択された一連の共振モードを有する、ステップと、選択された一連の共振モードの各共振モードに対応する周波数のセットについてフェーザの選択されたセットを用いて、閉じられたキャビティ20、222を励起して加熱パターンを作りだすステップ(ステップ508)と、RF供給部26A〜26D、226A〜226Bにおける順方向および逆方向の電力測定値に基づいて、作りだされた加熱パターンを監視して閉ループ調節を使用して、閉じられたキャビティ20、222内への一連の共振モードを、所望の加熱パターンおよび監視されている作りだされた加熱パターンに基づいて選択的に変更するステップ(ステップ510)と、を含む。
方法500では、非対称性を検出し、最適な回転面を見つけるステップ(ステップ502)、および加熱目標を選択するステップ(ステップ504)は、図17に関して上記で説明した方法400とは逆の順序で実行される。さらに、これら2つのステップの詳細は異なる。具体的には、ステップ402において、第1、第2、および第3のサブステップ(フェーザ励起サブステップ(1)、励起分析サブステップ(2)、および共振モード回転サブステップ(3))は、ここでは加熱目標選択ステップ504ではなく非対称性検出ステップ502において実行される。最適な回転を見つけるために、コントローラ14は、非回転共振モードを表す周波数を見つけるために励起の予め選択されたセットを生成し、次に位相をシフトし、その結果得られる効率を測定しながら、共振モードを表すそれらの周波数近くの小さな領域内で励起を生成する。ある周波数における特定の位相が効率の向上につながる場合、最適化された共振モードは、位相シフトしたものであり、回転は位相シフトである。したがって、ステップ502のサブステップ(1)において、コントローラ14は、複数の予め選択された周波数でキャビティを最初に励起して非回転共振モードを識別し、次いで、複数の位相シフト上で作用し、その共振モードに対して周波数をロックし続けることによって、分析される非回転共振モードごとに励起のセットを識別する。詳細には、非回転共振モードごとに、コントローラ14は、(公称モードの)同じ周波数および位相シフトの組み合わせを有する励起のセットを生成する。位相のセットは、事前に定義されるか、実行時に静的に定義されるか、または異なるパラメータに従って適応的であってよい。さらに、近似を犠牲にして計算時間を節約するために、位相軸は、分析範囲内のすべての位相シフトまたは少数のサンプルのみを含むことができる。特定の対称面に関連する励起は、別のものに近づきすぎて回転するとそれと結合する可能性があるため、位相シフトは任意に定義されない。したがって、コントローラ14が位相軸に対して適切な範囲を設定することが有利である。
選択された動作は、それらの効率と共に記憶され得る。各対称性クラスのモードごとに、マップフェーザ/効率が記憶される。すなわち、キャビティが2つの可能なクラスを有する2つのポートを有し、各々に対して2つのモードが選択された場合、4セットの励起が実行され、各セットは、定義されたすべての位相シフトを有し、したがってさらに分析されるべき4セットの効率測定値を得る。
理論的には効率対位相曲線は、システムの実際の対称面上に最大値を有する正弦波の傾向をたどるべきであるため、記録された効率マップは次いで、効率を最適化する位相シフトを見つけるために第2のサブステップ(励起分析サブステップ(2))において分析される。
最適な回転面を見つけた後、それに応じて共振モードが第3のサブステップごとに変更される(共振モード回転サブステップ(3))。全ての対称面からの情報を一致させることから、対称性のクラスごとに分類されたキャビティ内で利用可能な共振モードの全体像を得ることが可能である。サブステップ(1)〜(3)のさらなる詳細は、図17に関して上記で説明されている。
次に、ステップ504において、加熱目標が、次いで、閉じられたキャビティ内に配置された食品負荷に部分的に基づいて、閉じられたキャビティ内の各対称面に送出されるべきエネルギー量に対応して選択され、この場合、加熱目標は、先行するステップ502において選択された回転を使用して回転される複数の共振モードを含む。したがって、ステップ502は、上記で説明したステップ402のサブステップ(4)を含む。加熱目標を選択するとき、コントローラ14は、さらに、食品負荷および調理サイクル要件に従って加熱目標を選択するように構成される。
ステップ504に続いて、コントローラ14は、図17のステップ406〜410に対応するステップ506〜510を実行する。これらのステップが同じである限り、ステップ506〜510の詳細は、提供されない。その代わりに、上記のステップ406〜410の説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
図28を参照して、調理キャビティ20内の共振モードのスペクトルモーダル同定の方法700が次に説明される。システム10は、出力信号のある範囲の周波数および位相シフトにわたって共振ピークをマッピングすることができる。共振マップは調理動作中の食品負荷および加熱キャビティ20の変化に基づいて変化し得るので、その結果がシステム10および食品負荷ごとに測定されることが重要である。一般に、コントローラ14は、周波数掃引を完了することによって共振マップを検出することができ(ステップ702)、それによって、システム10内で励起することができる対称性に従って、様々な周波数および所定の位相シフトにおける励起がキャビティ20にかけられる。ステップ702中、高出力増幅器18A〜18Dの出力電力は、安全レベル(すなわち、高反射が発生した場合でも損傷を確実に防止するのに十分低いレベル)に下げられるものである。
図29Aおよび図29Bを参照すれば、4つの導波管入口ポート(RF供給部26A〜D、226A〜D)を含む調理キャビティ20の実施形態が、示される。ステップ702において、コントローラ14は、RF供給部26A〜D、226A〜Dから発せられた放射に与えられ得る3つの位相シフトが存在することができるように、4つの対応する増幅器18A〜18Dの各々に異なる制御信号を供給するように構成され得る。したがって、コントローラ14は、特定の食品負荷に対するシステム10の応答を測定するために励起対称性が適用され得るように制御することができる。たとえば、4ポートシステムの場合、位相は、[0、0、0]°、[0、45、45]°、[0、90、90]°、[0、180、180]°、などであってよい。任意選択により、ステップ702について、コントローラ14は、所与の周波数/位相シフト点ごとに効率を収集する詳細な共振マップを構築するために、すべての位相シフトベクトルを試験することができる。
任意選択により、コントローラ14は、ステップ704において、ローパスフィルタを用いて、固定位相シフトを与えられた周波数スパンにわたって測定された効率をフィルタリングすることもできる。あるいは、測定された効率は、適応フィルタを用いて、固定位相シフトを与えられた周波数スパンにわたってフィルタリングされてよい。適応フィルタは、増幅器18A〜18Dの各々によって供給される、測定された不平衡電力分布によって与えられた重みを有することができる。結果をフィルタリングすることにより、増幅器18A〜18Dからの注入された電力のピークを取り除くことができる。このようにして、装置10の共振に対応しない誤ったピークを結果から除去することができる。適応フィルタリングの一例が、図30に示される。
いくつかの実施形態では、コントローラ14は、ステップ706に示すように、食品負荷を含む調理キャビティ20を数値モデルまたは数学モデルでモデル化することができる。このモデルは、食品負荷を有する調理キャビティ20の効率をRF供給部26A〜D、226A〜Dの動作周波数に関連付けることができる。例えば、すべての軸について、モデルは、システム効率ηおよびRF供給部26A〜D、226A〜Dのチャネル毎の反射ρを回転角度γ(ポート間の位相シフトのベクトル)に関連付けることができる。この関係は、式1および式2として表される。
式1および式2は、式3に示される一般形でさらに表すことができる。
したがって、調理キャビティ20のモデルは、複数の未知の補間パラメータを含むことができる。これらの補間パラメータは、3つの変数に対応することができる:
周波数ごとに3つのパラメータが存在するので、調理キャビティ20のモデルを反転することができるようにするためにサンプリングされるべき効率の最小数は、3に等しい。例えば、所与の周波数fに対して、コントローラ14は、[0、120、240°]に等しい位相シフトでシステム10を励起することができる。次に、これらの効率を測定システムによって測定して、以下のように3つの効率(例えば85°、70°、69°)を記録することができる。
このようにして、コントローラ14は、ステップ708に示されるように、測定された効率に基づいて、数値モデルの係数として複数の補間パラメータを算出し続けることができる。したがって、補間パラメータは、以下に対応することができる:
補間パラメータを用いて、コントローラ14は、ステップ710に示すように、測定された効率を誘発するために利用される位相シフトとは異なる追加の位相シフトを含む効率結果を推定することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ14は、システムのモデルを利用してシステムの動作範囲にわたるすべての可能な位相シフトについて全空間を補間することができる。すなわち、コントローラ14は、RF供給部26A〜D、226A〜Dの実質的にすべての動作周波数および位相シフトにわたる各食品負荷の調理キャビティ20についてのシステム10の効率応答をモデル化することができる。
本明細書で論じるように、開示する補間方法は、コントローラ14がちょうど3つまたは4つの周波数および位相モードについて効率応答を測定できるようにすることができる。測定された効率を用いて、コントローラ14は、結果を補間して、試験されていないものを含むシステムの補間係数に基づいて他の全ての位相シフトに対する効率応答を得ることができる。補間係数は、メモリ内に記憶され得る。この構成では、コントローラ14は、ほんの少数の入力信号の反射信号の応答を試験して、周波数/位相領域における加熱キャビティ20の全効率を推定することができる。共振マップの例が、図25および図26に示される。図25および26の共振マップは、正方形および三角形で複数の共振ピークを示す。正方形は、偶数対称性のピークを表し、三角形は、奇数対称性のピークを表す。
ステップ712において、コントローラ14は、システム10の共振を共振マップ内の極大値に関連付けることができる。本明細書で論じるように、システムの共振は、システムの臨界周波数または共振周波数を示す共振モードに対応することができる。コントローラ14は、モードをメモリ内に記憶することができ、いくつかの実施形態では、モードに関連する位相シフトおよび周波数を利用して、調理キャビティ20内に供給されるRF供給部を制御することができる。このようにして、コントローラは、調理キャビティ20内の電磁エネルギーの分布を識別し、制御することができる。
ステップ714において、システム10の共振マップは、位相シフトの中の奇数、偶数、または組み合わせられた周波数分布に基づいて分類され得る。すなわち、適用される位相シフトは、結合された共振モードの対称性のクラスに直接関係する。例えば、図29Aにおける位相シフトは、偶数対称性に対応することができる。図29Bの位相シフトは、逆位相関係にあるソースが奇数対称性のモードを活性化することを示すことができる。そのような共振の分類は、それらの絶対位相に従って行うことができる(すなわち、これらが90°〜270°の間にある場合は二次対称面として分類し、90°未満または270°を超える場合は第一の対称面として分類する)。このようにして、コントローラ14は、各RF供給部26A〜D、226A〜Dからの反射信号を監視して、加熱キャビティ20の共振マップのためのサンプルデータを識別することができる。
図28に関して上記で説明した方法は、以下のように要約され得る。コントローラ14は、第1のRF信号および第2のRF信号に対応するRF供給部を制御することができる。RF信号は、システム10の動作範囲内にあり、第1のRF信号と第2のRF信号との間の複数の位相シフトにおいてコントローラ14によって制御され得る。加えて、コントローラ14は、調理キャビティ20内にRF供給部を生成するために、RF信号を増幅するように増幅器18を制御することができる。コントローラ14はさらに、複数の位相シフトについてRF供給部によって誘発されたキャビティ内の反射信号の複数の効率を測定し、キャビティ20の周波数応答についての効率結果を推定することができる。効率結果は、調理装置の動作範囲について推定された追加の位相シフトを含むことができる。この例では、追加の位相シフトは、RF供給部を生成するために利用される複数の位相シフトとは異なる。
効率に加えて、コントローラ14は、RF供給部26A〜D、226A〜Dの各々についての最大反射電力信号を追加的に監視して、増幅器18A〜Dの各々の能力を識別して、本明細書において論じる動作のモードの各々の動作を維持することができる。例えば、反射電力信号に基づいて、コントローラ14は、RF供給部26A〜D、226A〜Dの個々の各チャネルの最大反射を識別することができる。このようにして、コントローラ14は、増幅器18A〜18Dに供給された駆動電力を、増幅器18A〜18Dの各々に対応する最大反射信号と比較して、増幅器18A〜18Dの各々が所望の周波数および電力における動作を維持するように動作可能であるかどうかを決定することができる。したがって、コントローラ14は、増幅器18A〜18Dの動作を保って増幅器18A〜18Dのシステムモデルを動作にわたって維持することを検証することができる。コントローラ14は、さらに、複数の補間パラメータを含む数値モデルに基づいて効率結果を推定するように構成され得る。補間パラメータは、反射信号について測定された複数の効率に基づいて数値モデルに対して算出される。いくつかの実施形態では、コントローラは、調理プロセス中に調理キャビティ20の補間パラメータを更新することができる。補間パラメータを更新するために、コントローラ14は、反射信号の追加の効率を測定し、補間パラメータを再算出して食品負荷を加熱した結果生じ得る効率応答の変化を考慮することができる。
上記で説明したスペクトルモーダル同定方法の利点は、システムの効率応答および共振マップを検出する能力、調和しない電力がシステムに印加されたときのより良好な雑音除去(高出力増幅器18A〜18Dのオーバーシュート、電力の粗調整)、および(ステップ702中に高出力増幅器18A〜18Dの出力電力を安全なレベルまで減少させることによる)より高い有効電力を結果として生じさせる検知−識別時間の低減を含む。任意選択により、ランダムアクセスメモリを使用してシステムの「スナップショット」を記憶してユーザに通知し、スナップショットの経時的な変化を測定または定量化することができる。別の選択肢は、ベクトルフィッティングまたは他のフィッティング技術などの技術を使用してQ値および共振(臨界)周波数に関して共振を分類することである。
電磁調理装置のRFシステムが(マルチポートシステムの設定周波数および設定位相シフトで)所与のRF励起に対して安定しているとき、反射電力は一定である。反射電力が効率に反比例する限り、RFシステムが所与の励起に対して安定しているとき、効率も一定のままである。しかし、RFシステムが不安定である場合、反射電力、従って効率は、経時的にノイズを含む形で変動する。RFシステムの不安定性が強いほど、反射電力の振動が大きくなる。そのような不安定性の原因は、調理サイクルが進行するにつれて食品負荷の特性の変化により起こり得る。以下にさらに説明するように、食品負荷の特性におけるそのような変化は、体積的であってよい。したがって、調理サイクル全体を通して反射電力または効率の変化を監視することにより、食品負荷の体積の変化を検出することができる。食品負荷の体積の変化を検出できること、または食品負荷の特性の他の変化を検出できることは、次の特定のプロセス、すなわちポップコーンの調理、牛乳の加熱、液体の沸騰、およびチョコレートまたはバターなどの食品の融解を制御するのに有利である。別の利点は、この能力を使用して、調理キャビティ内の食品負荷の飛散を検出し、したがってそれを防ぐことができることである。これらの特定の例は、各プロセスに関する別々の見出しの下で以下にさらに論じられる。
複数のRF供給部26A〜D、226A〜Dを有する上記で説明したようなマルチポートシステムでは、入力フェーザのどのような変化(すなわち、周波数、振幅、位相シフト)も効率に影響を与える。したがって、効率の変化は食品負荷の変化ではなくフェーザの変化によって引き起こされ得るため、その調理サイクルのための加熱ストラテジがサイクル全体を通して入力フェーザを変更することを伴う場合、調理サイクル全体を通した効率を表す数値を単純に監視して食品負荷の特性の変化を検出することはできない。したがって、効率の変動係数の時間変動を使用して、入力フェーザの変化から引き起こされるとものと対照させて、食品負荷の特性の変化によって引き起こされる効率の変化を分離することができる。
したがって、電磁調理装置10であって、食品負荷が中に置かれる閉じられたキャビティ20と、コントローラ14と、電磁放射を閉じられたキャビティ内に導入して食品負荷を加熱し、調製するように構成された複数のRF供給部26A〜D、226A〜Dであって、複数のRF供給部における順方向および逆方向電力の測定を可能にするように構成される、複数のRF供給部26A〜D、226A〜Dとを含む、電磁調理装置10が提供され得る。コントローラ14は、図31に示す方法720のステップを実行するように構成され得る。具体的には、コントローラ14は、上記で論じたような加熱ストラテジに従って、システムが、所定の期間(例えば、0.5〜4.0秒)の間複数のRF供給部RF26A〜D、226A〜Dから指定された周波数および位相シフトでRF励起を生成する(ステップ722)ようにシステムを制御することができる。次に、所定の期間にわたって(または励起期間の持続時間の間)、コントローラ14は、複数のRF供給部26A〜D、226A〜Dにおける逆方向電力を測定および分析して(上記で論じた方法で)効率を算出し(ステップ724)、効率の変動係数を決定し(ステップ726および728)、変動係数を監視して食品負荷の特性の予想される変化を識別する(ステップ730)。効率の変動係数の決定は、所定の期間にわたる効率の平均値および標準偏差(std)を決定し(ステップ726)、平均値および標準偏差から変動係数を算出すること(ステップ728)によって行われ得る。ステップ728において、変動係数は、(std/平均)として算出され得る。次に、ステップ732において、コントローラ14は、食品負荷の特性における予想される変化が、そのような変化(例えば、体積の指定された変更)が一部の特定の閾値に到達する時点までの調理サイクル上での変動係数の変化に基づいて識別されたかどうかを決定する。ステップ732を満たすために必要とされる食品負荷特性の変化の指定された程度は、以下に説明する例から明らかになるように食品負荷のタイプに応じて変わることに留意されたい。食品負荷特性におけるそのような変化が特定されない場合、そのような変化が特定されるまで、コントローラ14はステップ722〜732を繰り返す。ステップ722を繰り返す際、加熱ストラテジに従って異なる入力フェーザを使用できることに留意されたい。したがって、方法720を実行する際、コントローラ14は、平均値および標準偏差、したがって各々異なる入力フェーザ励起の持続時間についての変動係数を再計算する。このようにして、平均値および標準偏差は、すべての異なるRF励起にわたって効果的に正規化され、入力フェーザの変化によって引き起こされる効率の変化に関係なく同等である。
コントローラ14が、ステップ730および732において、指定された閾値に達する食品負荷の特性の変化(例えば、指定された体積変化)を識別した後、コントローラ14は、ステップ734を実行し、そこで調理サイクルを停止することができ、または入力フェーザの振幅、周波数および/または位相シフトを含む加熱ストラテジなどの調理制御パラメータを変更することができ、そして、加熱ストラテジのさらに別の変更を引き起こし得るか、または調理サイクルを停止させ得る別の変化が起こるようになるまでステップ722〜732を続ける。重ねて、ステップ734でとられる特定の作用は、食品負荷のタイプ、ならびに食品負荷のそのタイプについての対応する調理サイクルおよび加熱ストラテジに依存することになる。
重要なのは経時的な変化率であって絶対的なレベルではないので、効率の変動係数を算出することにより、食品負荷の特性における変化の識別は、相対的な効率レベルに対して敏感ではない。これは、異なる振幅、周波数および位相シフトにおける異なる励起間の比較を可能にする。
上記で留意したように、変動係数の変化が食品負荷の特性の指定された程度までの変化を識別した後、調理プロセスを停止または変更することができる。任意選択により、共振モードを再マッピングするために周波数走査を繰り返すことができる。
本明細書では効率の変動係数が使用される例が提供されているが、他の測定基準を使用して食品負荷の特性の変化を決定することができる。そのような他の測定基準は、効率に重ね合わされる「ノイズ」の量を測定することができ、この場合、ノイズをすべての入力フェーザにわたって正規化することができる。そのような測定基準は、変動の種類またはシステムの不安定性を区別することができる。1つの方法は、食品負荷の変化によって引き起こされた高い周波数成分に焦点を当てるために測定された逆方向電力または計算された効率に対して高速フーリエ変換(FFT)を実行することとすることができ、これは、入力フェーザの変化によって引き起こされる変化が、入力フェーザが0.5から4.0秒きざみで変化することによって低い周波数成分内にそれら自体が存在するためである。食品負荷の変化を任意の1つの励起中に検出することができるように、効率は各別々のRF励起の持続期間を通して連続的に算出されており、監視されている変化は秒領域ではなく、むしろ1秒未満の領域であることに留意されたい。
変動係数を計算することができる方法をこれまで説明してきたが、次にいくつかの用途が説明される。
A.自動沸騰検出
図32AおよびBを参照すれば、ある期間にわたって調理キャビティ20内で加熱された液体についての効率(図32A)および対応する効率の変動係数(図32B)についてのサンプルデータが、示される。説明のために、液体の静止段階、弱い沸騰状態、および強い沸騰状態のそれぞれの間の効率および対応する変動係数が、示される。効率の変動係数を算出し、信号特性を監視することにより、コントローラ14は、液体の体積内の振動に比例する反射電力内の振動を検出するように動作可能である。特に、効率の変動係数は、液体の沸騰レベルに比例する。すなわち、沸騰度が大きいほど、効率の変動係数が大きい。これらの特性に基づいて、コントローラ14は、沸騰の開始時間、弱い沸騰状態、および強い沸騰状態を含むことができる液体の加熱状態を検出することができる。
コントローラ14は、図33に示す加熱方法740を実行することによって液体の加熱を制御することができ、この方法では、コントローラ14は、初期加熱期間に対応することができる静止段階中、効率の変動係数を最初に測定する(ステップ742)。例えば、静止段階は、図32Bに示すように所定の期間を含むことができる。静止段階中に測定された効率の変動係数を利用して、強い沸騰状態を示す閾値(例えば、閾値743、図32B)を定義することができる(ステップ744)。いくつかの実施形態では、静止段階中に測定された効率の変動係数は、閾値を定義する前にメモリ内に記憶され得る。あるいは、閾値は、メモリに記憶された所定の値によって定義され得る。例えば、閾値は、静止段階またはその中の期間(例えば最初の20秒間)中の変動係数の平均を測定し、その平均に定数(例えば3)を掛けることによって決定され得る。したがって、いくつかの実施形態では、閾値は、静止段階の期間中に測定された効率の変動係数の平均と所定の乗数との間の積に対応することができることが理解されよう。
閾値が定義された後、コントローラ14は、効率の変動係数を監視し(ステップ746)、効率の変動係数が所定の期間にわたって閾値以上である場合(ステップ748)、液体が強い沸騰状態にあることを決定し、それに応答して、コントローラ14は、増幅器18A〜18Dの電力レベルを(たとえばデューティサイクル、入力電力などを変更して)調整する(ステップ750)。別の形では、コントローラ14は、液体が弱い沸騰状態にあると決定し、ステップ748において指定された条件が満たされるまで効率の変動係数を監視し続ける(ステップ746)。ステップ750に関して、調整は、液体を強い沸騰状態に保つために電力レベルを維持または増加すること、液体を強い沸騰状態近くに維持するために電力レベルを下げること、または液体を弱い沸騰状態に戻すこと、または増幅器18A〜18Dを非活性化することによって液体の加熱をすべて停止させることを含むことができる。さらに、電力レベルの調整は、コントローラ14によって設定された期間に限定され得る。任意選択により、ステップ748で指定された条件が満たされた後、すなわち換言すれば、コントローラ14が、液体が強い沸騰状態に達したことを検出した後、コントローラ14は、ユーザインターフェース28またはスマートフォンなどのモバイル装置に通知を出力することができる(ステップ752)。それに応答して、ユーザは、(ユーザインターフェース28またはモバイル装置を介して)コントローラ14に入力を提供して、ステップ750で説明した調整を受け入れるか、またはそうでなければ必要に応じて他の調整を行うことができる。
コントローラ14は、追加的にまたは代替的に、図34に示す加熱方法760を実行することによって液体の加熱を制御することができ、この方法では、コントローラ14は、静止段階中、効率の変動係数を最初に測定する(ステップ762)。静止段階中に測定された効率の変動係数を利用して、強い沸騰状態を示すマスク(例えば、図32Bのマスク763)を定義することができる(ステップ764)。いくつかの実施形態では、静止段階中に測定された効率の変動係数は、マスクを定義する前にメモリに記憶され得る。あるいは、マスクは、メモリに記憶された所定の機能によって定義され得る。マスクは、上昇線形、指数関数、または対数関数として表すことができると考えられる。マスクが定義された後、コントローラ14は、効率の変動係数を監視し(ステップ766)、効率の変動係数が所定の期間マスクに適合する場合(ステップ768)、コントローラ14は、液体が強い沸騰状態であることを決定し、それに応じて増幅器18A〜18Dの電力レベルを調整する(ステップ770)。別の形では、コントローラ14は、液体が弱い沸騰状態にあると決定し、ステップ768において指定された条件が満たされるまで効率の変動係数を監視し続ける(ステップ746)。ステップ770に関して、調整は、電力レベルを維持すること、電力レベルを上げること、電力レベルを下げること、または液体の加熱をすべて停止することを含むことができる。任意選択により、ステップ768で指定された条件が満たされた後、すなわち換言すれば、コントローラ14が、液体が強い沸騰状態に達したことを検出した後、コントローラ14は、ユーザインターフェース28またはスマートフォンなどのモバイル装置に通知を出力することができる(ステップ772)。それに応答して、ユーザは、(ユーザインターフェース28またはモバイル装置を介して)コントローラ14に入力を提供して、ステップ770で説明した調整を受け入れるか、またはそうでなければ所望に応じて他の調整を行うことができる。
ユーザは、ユーザインターフェース28またはモバイル装置を使用してどの方法740、760を実装するかを選択することができることが理解されよう。有利には、上記で説明した方法740、760は、エネルギー消費を大幅に改善し、ユーザが質量または体積などの液体の任意の特定の特性を入力する必要なしに液体の最適な沸騰レベルおよび温度を得ることを可能にする。同様に、システム10は、液体の特定の質量または体積を検出する必要なしに方法740、760を実施することができる。
B.自動牛乳加熱
図35を参照すれば、調理キャビティ20内である期間にわたって加熱された特定の液体、すなわち牛乳についての効率の変動係数(メトリック出力)についてのサンプルデータが示される。牛乳の変動係数の結果は、タンパク質の変性およびその他の化学的変化に関連する、温度上昇に対する誘電率の急な変化に基づいて、約37℃、50℃、および85℃での反射電力の変化を示す。これらの化学反応は、システム10の共振における周波数シフトおよびQ値の変動を引き起こす。変化の各々は牛乳の状態に対応し、この状態は、コントローラ14によって検出され、測定された共振シフトと共に利用されて牛乳の温度を推定し、自動加熱機能を制御することができる。すなわち、コントローラ14は、牛乳の温度を間接的に検出し、牛乳温度が37℃未満、37℃から50℃の間、50℃から85℃の間、85°を上回ることに応じて牛乳の加熱状態を制御することができる。このようにして、コントローラ14は、ユーザ指定の温度入力に基づいて牛乳を特定の温度または範囲に自動的に調製することができる。そのような特徴は、幼児または乳児にとって牛乳を適切な温度に加熱するのに特に有益である。
コントローラ14は、図36に示す加熱方法780を実行することによって液体の加熱を制御することができ、この方法では、コントローラ14は、初期加熱期間に対応することができる静止段階中に効率の変動係数を最初に測定する(ステップ782)。静止段階中に測定された効率の変動係数を利用して、例えば、ユーザインターフェース28またはモバイル装置を介してユーザによって指定された温度を示す閾値を定義することができる(ステップ784)。いくつかの実施形態では、静止段階中に測定された効率の変動係数は、閾値を定義する前にメモリ内に記憶され得る。閾値が定義された後、コントローラ14は、共振シフトと共に効率の変動係数を監視し(ステップ786)、効率の変動係数が閾値以上である場合(ステップ788)、コントローラ14は、増幅器18A〜18Dの電力レベルを調整する(ステップ790)。1つの特定の例では、コントローラ14は、ユーザによって指定された温度で牛乳を維持するか(例えば、「保温」機能)、または牛乳の加熱を完全に停止することができる。任意選択により、ステップ788で指定された条件が満たされた後、すなわち換言すれば、牛乳がユーザによって指定された温度に達したとコントローラ14が推定した後、コントローラ14は、ユーザインターフェース28および/またはスマートフォンなどのモバイル装置に通知を出力することができる(ステップ792)。それに応答して、ユーザは、(ユーザインターフェース28またはモバイル装置を介して)コントローラ14に入力を提供して、ステップ790で説明した調整を受け入れるか、またはそうでなければ所望に応じて他の調整を行うことができる。
有益なことに、上記で説明した方法780は、エネルギー消費を大幅に改善し、ユーザが質量または体積などの牛乳の任意の特定の特性を入力する必要なく最適な牛乳温度を得ることを可能にする。同様に、システム10は、牛乳の特定の質量または体積を検出する必要なしに方法780を実装することができる。
C.自動のバターおよびチョコレートの融解
システム10はまた、融解液体を過熱することなくバターおよびチョコレートを正確に融解するために利用されてもよい。コントローラ14は、図37に示す方法800を実行することによって、バターまたはチョコレートなどの食品負荷の融解を制御することができ、この方法では、コントローラ14は、最初にキャビティ20を走査してスペクトルモーダル同定を用いて共振を測定し、その結果生じる共振マップを生成し(ステップ802)、これはメモリに記憶することができる。加えて、コントローラ14は、初期加熱期間および初期体積に対応することができる静止段階中の効率の変動係数を検出することができる(ステップ804)。次に、コントローラ14は、所定の期間の経過後および/または効率の変動係数の変化が検出されたときに、共振の測定を条件付きで繰り返す(ステップ806)。例えば、コントローラ14は、静止段階に続く効率の変動係数の1つまたは複数の変化を食品負荷の体積の変化であると識別することができる。チョコレート、バター、および類似の物質の場合、体積の変化は、融解開始時の形状および粘度の変化に対応する。次に、コントローラ14は、共振マップ間の変動が、融解状態(すなわち、食品負荷が融解していること)を示す閾値条件を満たすかどうかを決定することができる(ステップ808)。そうでない場合、コントローラ14は、増幅器18A〜Dを制御して、ステップ806に戻る前に(例えば、所定の量のエネルギーで)キャビティ20に電力を印加する(ステップ810)。そうでなければ、ステップ808で閾値条件が満たされた後、コントローラ14は、増幅器18A〜18Dの電力レベルを調整する(ステップ812)。1つの具体例では、コントローラ14は、共振の経時変化率が所定の閾値を下回る場合、ステップ808で指定された条件が満たされると決定する。それに応答して、コントローラ14は、食品負荷の加熱を停止する。いくつかの実施形態では、コントローラ14は、所定量のエネルギーが食品負荷に加えられた後、加熱プロセスを停止する。いくつかの制御方式では、コントローラ14が食品負荷の状態に従ってシステム10の電力レベルを調整することもできると考えられる。任意選択により、ステップ808で指定された条件が満たされた後、すなわち換言すれば、コントローラ14が、食品負荷が融解したことを検出した後、コントローラ14は、ユーザインターフェース28またはスマートフォンなどのモバイル装置に通知を出力することができる(ステップ814)。それに応答して、ユーザは、(ユーザインターフェース28またはモバイル装置を介して)コントローラ14に入力を提供して、ステップ812で説明した調整を受け入れるか、またはそうでなければ所望に応じて他の調整を行うことができる。
方法800を使用して融解プロセス中にシステム10を制御することにより、完全な融解または軟化を、焦げた部分を有することなく自動的に達成することができる。追加的に、ユーザは、融解されるべき食品負荷の質量または体積を入力する必要がない。さらに、融解が達成された後に自動的に停止するため、エネルギーが節約される。
D.液体、ソース、および混合された負荷のための自動スプラッタ制御
次に図38を参照すれば、調理キャビティ20内である期間にわたって加熱された液体についての効率の変動係数(メトリック出力)についてのサンプルデータが、示される。液体は、例えばソースに対応する。いくつかの実施形態では、液体は、混合された負荷、すなわち液体成分と固体成分の両方を有する食品負荷の一部であってよい。
コントローラ14は、図39に示す方法820を使用して液体または少なくとも部分的に液体化された食品負荷の加熱を制御することができ、この方法では、コントローラ14は、初期加熱期間に対応することができる静止段階(たとえば図38の開始点)中に効率の変動係数を最初に測定する(ステップ822)。静止段階の効率の変動係数を利用して、沸騰状態を示す閾値(例えば、図38の閾値823)を定義することができる(ステップ824)。いくつかの実施形態では、静止段階中に測定された効率の変動係数は、閾値を定義する前にメモリに記憶され得る。あるいは、閾値は、メモリに記憶された所定の値によって定義され得る。閾値が定義された後、コントローラ14は、効率の変動係数を監視し(ステップ826)、効率の変動係数が閾値以上である場合(ステップ828)、コントローラ14は、増幅器18A〜18Dの電力レベルを(たとえばデューティサイクル、入力電力などを変更して)調整する(ステップ830)。そうでなければ、コントローラ14は、ステップ828で指定された条件が満たされるまで効率の変動係数を監視し続ける(ステップ826)。ステップ830に関して、調整は、効率の変動係数が所定の量だけ減少するまで電力レベルを減少させ、続いて所定の時間量の間、または効率の変動係数がステップ828で指定された条件を満たす(たとえば閾値に達する)まで電力レベルを増加させることを含むことができる。このようにして、飛散を回避しながら液体が加熱される。ステップ828で指定された条件が満たされる限り、ステップ828および830は、連続的に繰り返されてよく、または所定の期間が経過した後に液体の加熱が停止されてもよい。任意選択により、ステップ828で指定された条件が満たされた後、すなわち換言すれば、コントローラ14は液体が沸騰状態に達したことを検出した後、コントローラ14は、ユーザインターフェース28またはスマートフォンなどのモバイル装置に通知を出力することができる(ステップ832)。それに応答して、ユーザは、(ユーザインターフェース28またはモバイル装置を介して)コントローラ14に入力を提供して、ステップ830で説明した調整を受け入れるか、またはそうでなければ所望に応じて他の調整を行うことができる。
E.自動ポップコーン調理
次に図40を参照すれば、キャビティ20内である期間にわたってポッピングされているポップコーンについての効率の変動係数(メトリック出力)についてのサンプルデータが、示される。この結果から、効率の変動係数は、経時的なポッピングされたカーネルの周波数に比例する。追加的に、効率の変動係数は、ポッピングが始まった後にポップコーンの袋の中の突然の体積増加によって影響を受ける。したがって、効率の変動係数を監視することにより、コントローラ14は、経時的にポッピングされるカーネルの周波数またはタイミングに基づいてポップコーンのポッピングを制御することができる。ポッピングに応答した効率の変動係数の変化は、ポップコーン袋内のカーネルの体積および分布の変化にリンクされ得る。以下により詳細に説明するように、コントローラ14は、ポッピングの開始およびポッピングが完了する閾値を検出することに基づいて、ポップコーンのポッピングを制御することができる。
コントローラ14は、図41に示す方法840を使用することによってポップコーンのポッピングプロセスを制御することができ、この方法では、コントローラ14は、初期ポッピング期間(たとえば図39の開始点)に対応することができる静止段階中に効率の変動係数を最初に測定する(ステップ842)。静止段階中に測定された効率の変動係数を利用して、ポップコーンのポッピング状態を示す閾値(例えば、図40の閾値843)を定義することができる(ステップ844)。いくつかの実施形態では、静止段階中に測定された効率の変動係数は、閾値を定義する前にメモリ内に記憶され得る。あるいは、閾値は、メモリに記憶された所定の値によって定義され得る。閾値が定義された後、コントローラ14は、効率の変動係数を監視し(ステップ846)、効率の変動係数が所定の期間の間閾値以上である場合(ステップ848)、コントローラ14は、増幅器18A〜18Dの電力レベルを(たとえばデューティサイクル、入力電力などを変更して)調整する(ステップ850)。そうでなければ、コントローラ14は、ステップ848で指定された条件が満たされるまで効率の変動係数を監視し続ける(ステップ846)。ステップ850に関して、調整は、増幅器18A〜18Dの電力レベルを調整する(例えば、維持するまたは減少させる)ことを含むことができ、また時間制限を割り当てることを含むこともできる。任意選択により、ステップ848で指定された条件が満たされた後、すなわち換言すれば、コントローラ14がポップコーンがポッピング状態にあることを検出した後、コントローラ14は、ユーザインターフェース28またはスマートフォンなどのモバイル装置に通知を出力することができる(ステップ852)。それに応答して、ユーザは、(ユーザインターフェース28またはモバイル装置を介して)コントローラ14に入力を提供して、ステップ850において説明した調整を受け入れるか、またはそうでなければ所望に応じて他の調整を行うことができる。
方法840の完了に続いて、ポッピングプロセスの終了は、効率の変動係数が所定の時間量の間閾値を下回ることに応答して検出され得る。図42に示すように、方法860は、コントローラ14が効率の変動係数を測定することから始まる(ステップ862)。コントローラ14は、効率の変動係数を監視し(ステップ864)、効率の変動係数が方法840のステップ844で定義された閾値を所定の期間の間下回った場合(ステップ866)、コントローラ14は、電力レベルを調整し(たとえば低下させ)、ポッピングプロセスを終了させる時間制限を割り当てることもできる(ステップ868)。あるいは、コントローラ14は、ポッピング処理を直ちに停止することもできる。そうでなければ、コントローラ14は、ステップ866で指定された条件が満たされるまで効率の変動係数を監視し続ける(ステップ864)。任意選択により、ステップ866で指定された条件が満たされた後、すなわち換言すれば、コントローラ14がポップコーンのポッピングが完了したか、またはほぼ完了していることを検出した後、コントローラ14は、ユーザインターフェース28またはスマートフォンなどのモバイル装置に通知を出力することができる(ステップ870)。それに応答して、ユーザは、(ユーザインターフェース28またはモバイル装置を介して)コントローラ14に入力を提供して、ステップ868で説明した調整を受け入れるか、またはそうでなければ所望に応じて電力レベルおよび/または時間制限に他の調整を行うことができる。
有益なことに、上記で説明した方法840および860は、ポップコーンを焦がすことなく、または過少調理することなくシステム10が自動的にポップコーンをポッピングさせることを可能にする。さらに、ユーザが電力レベルおよび/または時間制限を調整することを可能にすることにより、ユーザは、自分の好みに合わせて自動ポッピング機能を微調整することができる。
システム10のQ値の変化を検出する方法が、次に図43を参照しながら説明される。システム10は、RLC回路と等価の線形受動で時間に独立なシステムとして局所的にモデル化することができる無線周波数(RF)システムに対応することができる。そのようなモデル化は、アドミタンスのフォスター表現に対応することができる。回路等価物は、調理キャビティ14のサイズ、供給システム(例えば、RF供給部26A〜D、226A〜226Dの位置決め)、食品負荷のタイプ(材料および温度)、ならびに食品負荷サイズおよび変位に基づいて変化する抵抗器/インダクタ/コンデンサ(RLC)等価物に対応することができる。食品負荷が加熱されると、等価RLC回路との関係によって、共振(RLC回路)がシフトし、Q値が変化する。Q値の式は式4として示される。
システム10は、反射モード信号を監視することによって調理キャビティ20を走査してスペクトルモード理論に従ってシステム応答をモデル化するようにさらに構成され得る。
例えば、RF供給部26A〜D、226A〜Dからの反射信号に基づいて、システム10の誘電率εを同定することができる。さらに、システム10の損失正接は、虚数部誘電率成分ε”と無損失誘電率成分ε’との間の比として算出されてよく、ここで、無損失誘電率成分は、自由空間誘電率および比誘電率の積である。損失正接の式は式5として示される。
損失正接に基づいて、Q値は、式6に示すように損失正接の逆数として算出され得る。
このようにして、コントローラ14は、RF供給部からの反射信号に基づいてQ値を算出するように動作可能であり得る。共振キャビティをモデル化する方法を説明するさらなる詳細が、Kurokawa、K.、ed.の出版物「 An Introduction to the Theory of Microwave Circuits」:Academic Press、2012年に論じられており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
したがって、RF供給部からの反射信号に基づいて、コントローラ14は、キャビティ20の様々なスペクトルモーダル特性を同定することができる。このようにして、システム10は、極(すなわち共振周波数)を決定し記憶して、調理キャビティ20のQ値を周波数/位相領域内にマッピングすることができる。システム10は、調理作業の開始時に最初にQ値を走査しマッピングすることができる。システム10は、所定の時間量の後、または反射パターンの変化が検出されたときに、走査をさらに繰り返し、Q値をマッピングすることができる。
経時的なQ値の変化を比較することにより、システム10は、食品負荷の変化(例えば、誘電加熱による温度上昇)に起因するシステム10内の変動量を定量化するように動作可能である。このようにして、システムは、1つまたは複数の自動調理機能についての食品負荷の様々な変化を検出することができる。
図43を参照すると、食品負荷が中に置かれる閉じられたキャビティ20と、電磁放射を閉じられたキャビティ20内に導入して食品負荷を加熱し、調製するように構成された複数のRF供給部26A〜D、226A〜Dとを有する電磁調理装置10において調理を制御するための方法900が提供され、複数のRF供給部26A〜D、226A〜Dは、複数のRF供給部26A〜D、226A〜Dにおける順方向および逆方向の電力の測定を可能にするように構成される。方法は、コントローラ14によって実行されてよく、閉じられたキャビティ20内に配置された食品負荷に送出されるべきエネルギー量に対応する加熱目標を選択するステップ(ステップ902)と、一連の所望の加熱パターンを決定するために加熱目標に基づいて加熱ストラテジを生成するステップであって、加熱ストラテジは、一連の所望の加熱パターンに対応する閉じられたキャビティ20内へのエネルギー伝達のための選択された一連の共振モードを有する、ステップ(ステップ904)と、RF供給部26A〜D、226A〜Dに、選択された周波数、選択された位相値および選択された電力レベルの無線周波数信号を出力させ、それによって、選択された一連の共振モードの各共振モードに対応する周波数のセットについてフェーザの選択されたセットを用いて、閉じられたキャビティを励起して加熱パターンを作りだす、ステップ(906)と、RF供給部26A〜D、226A〜Dにおける順方向および逆方向の電力測定値に基づいて作りだされた加熱パターンを監視して、スペクトルモーダル同定を使用して閉じられたキャビティ内の共振を測定し、共振モードおよび識別された共振モードの各々に関連するQ値をコントローラが識別する周波数および位相領域内の効率マップを記憶するステップ(ステップ908)と、指定された変化が少なくとも1つのQ値で検出されたかどうかを決定するステップ(ステップ910)と、少なくとも1つのQ値の指定された変化が識別されたとき、生成された加熱ストラテジを使用して食品負荷の調理を停止するステップ(ステップ912)、または別の場合ステップ906〜910において加熱ストラテジにしたがってキャビティを励起し続け、Q値を監視することを含む。
Q値の指定された変化は、Q値が解凍の完了を示すQ値に変化したときであってよい。具体的には、Q値の指定された変化は、Q値が約8に等しくなるように変化するときであってよい。氷のQ値は約300であり、水のQ値は約8である。したがって、解凍した食品負荷は、約8のQ値を有することになる。したがって、Q値を監視することにより、電磁調理装置10は、ユーザが食品のタイプまたは食品の質量を入力する必要のない自動解凍機能を実装することができる。
また、Q値を監視することにより、電磁調理装置10は、食品負荷の調理がいつ完了したかを自動的に決定することができる。この場合、Q値の指定された変化は、Q値が調理の完了を示すQ値に変化したときである。調理の完了を示すQ値は、ユーザがユーザインターフェース28を介して食品タイプの識別を入力することによって決定され得る。次に、コントローラ14は、加熱目標を選択し、この食品負荷の識別に基づいて加熱ストラテジを生成することができる。さらに、コントローラは、識別された食品負荷のタイプの完全に調理された食品負荷に対応する共振モードを示す事前に記憶された効率マップを選択し、事前に記憶されたマップ内の共振モードのQ値を識別し、調理プロセスの間に記憶された効率マップと前に記憶されたマップを比較して、少なくとも1つのQ値が、調理の完了を示す、事前記憶されたマップから識別されたQ値に変わったときを決定することができる。
次に図44、45、および46を参照すれば、複数の食品タイプについての比誘電率、損失正接、およびQ値を示すプロットが、示される。最初に図44A、44B、および44Cを参照すれば、パンまたは穀物ベースの食品負荷についての実験結果が、示される。実験結果は、パンの温度に関連するパンの比誘電率を図44Aに、損失正接を図44Bに、Q値を図44Cに含む。プロットの各々は、パンの調理具合または調理レベルを識別するために利用され得る様々な特性の指標を示すことができる。本明細書で論じるように、調理具合または調理レベルは、調理キャビティ20内で食品負荷を所望のレベルまで加熱し終えたことを示し得る温度に対応することができる。したがって、様々な実施形態では、コントローラ14は、経過調理時間とは無関係に、および食品負荷の開始温度とは無関係に、調理温度または調製のレベルまたは調理具合を決定することができる。
図44A、図44B、および図44Cのうちの1つまたは複数において実証された結果から、コントローラ14は、食品負荷の化学的変化または物理的変化の形で調理具合のレベルを識別することができる。図44Cを参照すれば、Q値は、約25℃から45℃までの温度にわたって比較的一貫した変化を維持する。次いで、47℃から53℃の間で、Q値は急激に変化する。したがって、食品負荷についてQ値を監視することにより、コントローラ14は、所定の変化閾値を超えるQ値の変化を識別することができる。より具体的には、コントローラ14は、Q値を監視して第1の変化922にわたって所定の変化閾値を超えるQ値の減少を識別することができる。この場合、食品負荷がパンを含むという表示に応答して、コントローラは、約1.05から0.85へのQ値の減少、または所定の期間にわたって起こり得る、少なくとも0.1の減少閾値を超える変化についてQ値を監視することができる。
Q値は調理プロセスの他の期間中よりも第1の変化922にわたってより急激に変化するので、コントローラ14は、パンに関する所定の閾値を超えるQ値の変化率の増加を識別することができる。したがって、コントローラ14は、パンの第1の変化922を一貫して識別し、第1の変化922の検出に応答して調理サイクルを自動的に停止または調整することができる。パンのこの特定の例では、第1の変化922は、パンの酵母の第1のガス発生に対応することができる。したがって、第1の変化922を識別することに応答して、コントローラは、パンの酵母の第1のガス発生を識別し、調理サイクルを調整または停止することができる。
図44、45、および46に留意される特定の温度は近似的であり得ることに留意されたい。したがって、本明細書で論じる特定の温度範囲(例えば第1の範囲922)および他のものは、酵母の第1のガス発生に対応する既知の温度およびコントローラ14によって検出された、本明細書で論じる他の物理的および/または化学的変化と近似的にのみ同じになり得る。しかし、この見かけ上の誤差は、Q値を利用して実験結果に実証された誤差なしに食品負荷の変化を検出する強みを示すにすぎない。換言すれば、コントローラ14は、Q値を監視して、図44、45、および46の実験結果を集めるために利用されるもののような温度プローブを利用するよりもより正確に、食品負荷の物理的および/または化学的構造の変化を検出することができる。また、特定の食品および温度に関して説明したが、本開示は、様々な食品負荷の様々な特性およびそれらの構成成分の自動検出を提供することができる。
さらに図44Cを参照すれば、コントローラは、Q値の第2の変化924をさらに識別することができる。より具体的には、コントローラ14は、Q値を監視して第2の変化922にわたって所定の変化閾値を超えるQ値の増加を識別することができる。この場合、食品負荷がパンを含むという表示に応答して、コントローラは、最初にQ値の第1の変化922を監視する。次に、コントローラは、食品負荷を、第2の変化924について、または所定の期間内に起こり得る、少なくとも0.1の増加閾値を超えるQ値の増加を示す約0.8から1または0.9から0.98のQ値の減少の増加について監視することができる。パンの場合、第2の変化924は、約66℃〜71℃の測定された温度にわたって起こる同時の酵素効果およびデンプン糊化に対応することができる。また、第2の変化924の識別に応答して、コントローラは、調理サイクルを自動的に停止または調整することができる。
次に図45A、45B、および45Cを参照すれば、牛肉または食肉ベースの食品負荷についての実験結果が、示される。実験結果は、牛肉の温度に関連する牛肉の比誘電率を図45Aに、損失正接を図45Bに、Q値を図45Cに含む。プロットの各々は、牛肉の調理具合のレベルまたは調理レベルを識別するために利用され得る様々な特性の指標を示すことができる。図45A、図45B、および図45Cの1つまたは複数に示す結果から、コントローラ14は、食品負荷の化学的変化または物理的変化の形で調理具合のレベルを識別することができる。
図45Cを参照すれば、Q値は、約20℃から80℃までの温度にわたって比較的一貫した変化を維持する。次いで、80℃から90℃の間で、Q値は急激に変化する。したがって、食品負荷についてQ値を監視することにより、コントローラ14は、所定の変化閾値を超えるQ値の変化を識別することができる。より具体的には、コントローラ14は、Q値を監視して第3の変化932にわたって所定の変化閾値を超えるQ値の増加を識別することができる。この場合、食品負荷が牛肉を含むという表示に応答して、コントローラは、約0.6から1.1へのQ値の増加、または所定の期間にわたって起こり得る、少なくとも0.4の増加閾値を超える変化についてQ値を監視することができる。このようにして、コントローラは、牛肉の初期温度とは無関係に、また牛肉を調理するために経過した総調理時間とも無関係に、牛肉の調理具合のレベルを検出することができる。
Q値は調理プロセスの他の期間中よりも第3の変化932にわたってより急激に変化するので、コントローラ14は、牛肉に関する所定の閾値を超えるQ値の変化率の増加を識別することができる。したがって、コントローラ14は、牛肉の第3の変化932を一貫して識別し、第3の変化932の検出に応答して調理サイクルを自動的に停止または調整することができる。牛肉のこの特定の例では、第3の変化932は、牛肉のタンパク質変性に対応することができる。したがって、第3の変化932を識別したことに応答して、コントローラ14は、肉のタンパク質変性を識別し、調理サイクルを調整または停止することができる。
次に図46A、46B、および46Cを参照すれば、ジャガイモまたはジャガイモデンプンを含有する食品負荷についての実験結果が、示される。実験結果は、ジャガイモの温度に関連するジャガイモの比誘電率を図46Aに、損失正接を図46Bに、Q値を図46Cに含む。プロットの各々は、ジャガイモの調理具合または調理レベルを識別するために利用され得る様々な特性の指標を示すことができる。図45A、図45B、および図45Cの1つまたは複数に示す結果から、コントローラ14は、食品負荷の化学的変化または物理的変化の形で調理具合のレベルを識別することができる。
図46Cを参照すれば、Q値は、約20℃から60℃までの温度にわたって徐々に減少するという形で比較的一貫した変化を維持する。次いで、60°Cから65°Cの間で、Q値は方向を変え、増加する。したがって、食品負荷についてQ値を監視することにより、コントローラ14は、所定の変化閾値を超えるQ値の変化、またはQ値の変化率または変化の方向における変化を識別することができる。より具体的には、コントローラ14は、Q値を監視して第4の変化942にわたって所定の変化閾値を超えるQ値の増加を識別することができる。この場合、食品負荷がジャガイモを含むという表示に応答して、コントローラ14は、約1.4から1.7へのQ値の増加、または所定の期間における少なくとも0.2の増加閾値を超える変化についてQ値を監視することができる。このようにして、コントローラ14は、ジャガイモの初期温度とは無関係に、またジャガイモを調理するために経過した総調理時間とも無関係に、ジャガイモの調理具合のレベルを検出することができる。
Q値の傾向は、第4の変化942にわたって方向および速度が変化するので、コントローラ14は、ジャガイモについての所定の閾値を超えるQ値の変化率の増加を識別することができる。したがって、コントローラ14は、ジャガイモの第4の変化932を一貫して識別し、第4の変化942の検出に応答して調理サイクルを自動的に停止または調整することができる。ジャガイモのこの特定の例では、第4の変化942は、ジャガイモデンプンのデンプン糊化に対応することができる。したがって、第4の変化942の識別に応答して、コントローラ14は、ジャガイモデンプンのデンプン糊化を識別し、調理サイクルを調整または停止することができる。
次に図47を参照すれば、算出されたQ値に基づいて食品負荷の調理具合のレベルを識別する方法950が、さらに詳細に論じられる。方法950は、ステップ952においてRF信号の周波数および位相を制御することによって開始することができる。ステップ954において、コントローラ14は、少なくとも第1のRF供給および第2のRF供給を生成し、RF供給を調理キャビティ20内に放射する高出力増幅器18A〜18Dを制御することができる。コントローラ14は、ステップ956において、食品負荷の食品タイプの指示を追加的に受け取ることができる。食品タイプに基づいて、コントローラ14は、Q値閾値または食品タイプの調理具合レベルもしくは調理レベルに対応するメモリからの所定の変化閾値を識別することができる。調理プロセスが開始された後、ステップ958において、コントローラ14は、調理キャビティ20からの少なくとも1つの反射信号を測定し、その反射信号に基づいてQ値を算出することができる。反射信号は、キャビティ14内の順方向および逆方向(または反射)電力の大きさの表示に対応することができる。
Q値の算出から、コントローラ14は、Q値を監視して、ステップ960において所定の変化閾値を超えるQ値の変化を識別することができる。一般に所定の変化閾値として説明されるが、所定の変化閾値は、所定の変化率、変化率の所定の方向(増加または減少)、および/またはQ値の現在の方向、傾向、または変化率を参照した所定の変化または一連の変化に対応することができる。変化率の率および方向(増加または減少)の検出のいくつかの例が、図44、45、および46を参照して論じられる。Q値の変化が所定の閾値を超えない場合、方法950はステップ958に戻ることができる。Q値の変化が所定の閾値を超える場合、コントローラ14は、食品負荷が、ステップ956において示された特定の食品タイプに基づいて識別された完成レベルまたは調理具合状態のレベルに達したことを識別することができる。このようにして、コントローラ14は、食品負荷の初期温度とは無関係に、また食品負荷を調理するために経過した総調理時間とも無関係に、食品負荷の調理具合のレベルを検出するように動作可能であり得る。
上記の方法はコントローラ14によって実行されるように説明されているが、方法の全部または一部は、RFコントロール32または他の任意のコントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、論理回路、またはプログラムゲートアレイによって、別々にまたは組み合わせて実行されてよい。
本開示の目的のために、用語「結合された」(その形態の全てにおいて、結合、結合している、結合された等)は、一般に、2つの構成要素(電気的または機械的)を互いに直接的または間接的に接合することを意味する。そのような接合は、本質的に静止していても、本質的に移動可能であってもよい。このような接合は、2つの構成要素(電気的または機械的)と、互いにまたは2つの構成要素と一体の単一本体として一体的に形成されている任意の追加の中間部材とによって達成され得る。そのような接合は、本質的に恒久的であってよく、または別段の指定がない限り、本質的に取り外し可能または解放可能であってもよい。
例示的な実施形態に示すような装置の要素の構成および配置は例示にすぎないことに留意することも重要である。本発明のいくつかの実施形態のみが本開示に詳細に説明されているが、本開示を検討する当業者は、列挙した主題の新規の教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの改変が可能であることを容易に理解するであろう(例えば、さまざまな要素のサイズ、寸法、構造、形状および比率、パラメータの値、装着配置、材料の使用、色、配向における変動)。例えば、一体的に形成されたものとして示されている要素は、多数の部分から構成されてよく、または多数部分として示す要素は一体的に形成されていてもよく、インターフェースの動作は逆転されても、または別の形でさまざまであってよく、システムの構造および/または部材またはコネクタまたは他の要素の長さまたは幅はさまざまであってよく、要素間に設けられた調整位置の性質または数はさまざまであってよい。システムの要素および/またはアセンブリは、任意の多種多様な色、質感、および組み合わせにおいて、十分な強度または耐久性を提供する多種多様な材料のうちの任意のものから構築され得ることに留意されたい。したがって、そのような改変はすべて、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本発明の趣旨から逸脱することなく、設計、動作条件、および所望のおよび他の例示的な実施形態の配置において、他の置き換え、改変、変更、および省略が加えられてよい。
説明したプロセス内の任意の説明したプロセスまたはステップを他の開示したプロセスまたはステップと組み合わせて、本装置の範囲内で構造を形成することができることが理解されよう。本明細書に開示する例示的な構造およびプロセスは、例示目的のためであり、限定として解釈されるべきではない。
本装置の概念から逸脱することなく前述の構造および方法に変更および改変を加えることができ、さらに、そのような概念が以下の請求項によって、これらの請求項がそうではないと文字通り明示的に述べない限り、包含されることを意図することも理解されたい。
上記の説明は、例示する実施形態の説明のみと考えられる。装置の改変形態が、当業者および装置が製造または使用する者には想定されるであろう。したがって、図に示し上記で説明する実施形態は単に例示を目的としており、均等論を含む特許法の原理に従って解釈されるように特許請求の範囲によって定義される装置の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。