<第1実施形態>
以下、クラッチを備えたモータの第1実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態のモータ10は、車両のウインドガラスを電動で昇降させるパワーウインド装置に備えられるものである。モータ10は、回転力を発生するモータ部20と、モータ部20が出力する回転を減速して出力する出力部30とが一体に組み付けられて構成されている。また、モータ10は、モータ部20と出力部30との間の駆動連結部分にクラッチ40を備えている。
本実施形態のモータ部20は、直流モータよりなる。モータ部20を構成する有底筒状のヨークハウジング21(以下、ヨーク21とする)の内周面にはマグネット22が固着されるとともに、マグネット22の内側には電機子23が配置されている。電機子23は、ヨーク21の中央部に配置される回転軸24を備えている。回転軸24の基端部(図1において上側の端部)は、ヨーク21の底部中央に設けられた軸受25にて軸支されるとともに、同回転軸24における先端寄りの部位には、円筒状の整流子26が固定されている。また、回転軸24の先端部(図1において下側の端部)は、円柱形状から平行に面取りした二面幅形状をなす連結部24aとなっている。
ヨーク21の開口部には、外側に向かって延設されたフランジ部21aが形成されるとともに、同ヨーク21の開口部にはブラシホルダ27が嵌合されている。ブラシホルダ27は、ヨーク21の開口部を閉塞する形状をなすホルダ本体27aと、ホルダ本体27aからヨーク21の径方向外側に突出し図示しない外部コネクタが接続されるコネクタ部27bとを有する。ホルダ本体27aは、図示しない配線でコネクタ部27bに電気的に接続され前記整流子26と摺接する給電用の複数のブラシ28を保持している。また、ホルダ本体27aは、その略中央部に軸受29を保持しており、該軸受29は、回転軸24における整流子26と連結部24aとの間の部分を軸支している。そして、コネクタ部27bを介してブラシ28に供給された外部電源が、整流子26を介して電機子23に供給されると、電機子23(回転軸24)が回転駆動、即ちモータ部20が回転駆動されるようになっている。
前記出力部30は、樹脂製のギヤハウジング31内に減速機構32等を収容して形成されている。ギヤハウジング31は、モータ部20と軸方向に対向する部位(図1において上側の端部)に、該ギヤハウジング31をモータ部20に固定するための固定部31aを備えている。固定部31aは、ヨーク21のフランジ部21aの外形と同様の外形を有するとともに、同固定部31aには、ヨーク21の内側に向けて開口した収容凹部31bが形成されている。そして、収容凹部31b内にブラシホルダ27のホルダ本体27aの一部が挿入された状態で、固定部31aに当接したフランジ部21aが螺子33にて固定部31aに固定されることにより、ギヤハウジング31にヨーク21が固定され、モータ部20と出力部30とが一体化されている。なお、ブラシホルダ27は、ヨーク21と固定部31aとの間に挟持されている。
また、ギヤハウジング31には、収容凹部31bの底部中央にクラッチ収容凹部31cが軸方向に凹設されるとともに、該クラッチ収容凹部31cの底部中央から回転軸24の中心軸線L1方向に沿って延びるウォーム軸収容部31dが凹設されている。更に、ギヤハウジング31には、ウォーム軸収容部31dの側方(図1において右側)に、ホイール収容部31eが凹設されている。このホイール収容部31eとウォーム軸収容部31dとは、ウォーム軸収容部31dの軸方向(長手方向)の略中央部で繋がっている。
ウォーム軸収容部31dには、略円柱状のウォーム軸34(従動軸)が収容されている。ウォーム軸34は、金属材料よりなり、その軸方向の略中央部に螺子歯状のウォーム部34aが形成されている。そして、ウォーム軸34は、ウォーム軸収容部31dの軸方向の両端部にそれぞれ配置された一対の軸受35,36によってその軸方向の両端部が軸支されている。ウォーム軸収容部31d内に配置されたウォーム軸34は、軸受35,36にて軸支されることにより、前記回転軸24と同軸上に配置、即ち回転軸24の中心軸線L1とウォーム軸34の中心軸線L2とが同一直線上となるように配置されている。
前記ホイール収容部31eには、ウォーム軸34のウォーム部34aと噛合する円板状のウォームホイール37が回転可能に収容されている。ウォームホイール37は、ウォーム軸34と共に減速機構32を構成している。即ち、本実施形態の減速機構32は、ウォーム減速機構(ウォームギヤ)である。また、ウォームホイール37の径方向の中央部には、同ウォームホイール37の軸方向(図1において紙面垂直方向)に延び同ウォームホイール37と一体回転する出力軸38が設けられている。この出力軸38には、図示しないウインドレギュレータを介して車両のウインドガラスが連結される。
また、前記クラッチ収容凹部31c内に、モータ部20の回転軸24と出力部30のウォーム軸34とを連結する前記クラッチ40が収容されている。
図2及び図3に示すように、クラッチ40は、クラッチハウジング41、駆動側回転体42、サポート部材43、転動体44及び従動側回転体45を備えている。
クラッチハウジング41は、円筒状をなすとともに、同クラッチハウジング41の軸方向の一端部には、径方向外側に延びる鍔状のフランジ部41aが形成されている。クラッチハウジング41における円筒状の部位の外径はクラッチ収容凹部31cの内径と略等しく形成されるとともに、フランジ部41aの外径はクラッチ収容凹部31cの内径よりも大きく形成されている。また、フランジ部41aには、周方向に等角度間隔となる4箇所に、固定凹部41bが形成されている。各固定凹部41bは、フランジ部41aを軸方向に貫通するとともに、径方向外側に開口している。
図2に示すように、クラッチハウジング41は、フランジ部41aが収容凹部31bの底面に当接するまでクラッチ収容凹部31c内に挿入されるとともに、フランジ部41aにおいてギヤハウジング31に対して固定されている。詳述すると、収容凹部31bの底面であってクラッチ収容凹部31cの開口部の外周には、周方向に等角度間隔となる4箇所に、軸方向に突出した固定突起31fが形成されている。これら4つの固定突起31fは、フランジ部41aの4つの固定凹部41bに軸方向にそれぞれ挿入されており、更に、各固定突起31fの先端部が熱かしめによって加工されている。これにより、クラッチハウジング41は、ギヤハウジング31に対して軸方向に移動不能且つ周方向に回転不能に固定されている。なお、ギヤハウジング31に固定されたクラッチハウジング41は、回転軸24及びウォーム軸34と同軸上に配置されている。
図2及び図3に示すように、駆動側回転体42は、略円筒状の軸連結部51を有する。軸連結部51の外周面には、径方向外側に向かって延びる円盤状の鍔部52が一体に形成されている。
軸連結部51において、モータ部20側の軸方向端部(図2において上端部)の軸中心には、軸方向に沿って延びる駆動軸挿入孔53が形成されている。駆動軸挿入孔53は、回転軸24の連結部24aの外形形状に対応した二面幅形状をなしている。そして、駆動軸挿入孔53に連結部24aが圧入されることにより、駆動側回転体42は回転軸24と一体回転可能に連結される。なお、回転軸24と、該回転軸24に連結された駆動側回転体42とは、同軸上となる(即ち互いの中心軸線が同一直線上に位置する)。
また、軸連結部51において、出力部30側の軸方向端部(図2において下端部)の軸中心には、軸方向に沿って延びる従動軸挿入孔54が形成されている。この従動軸挿入孔54の中心軸線は、駆動軸挿入孔53の中心軸線と一致している。なお、本実施形態では、駆動軸挿入孔53と従動軸挿入孔54とは互いに連通している。
図6(b)に示すように、従動軸挿入孔54の内周面は、軸方向と平行な平面状をなし互いに平行な一対の駆動側伝達面54aを有する。そして、従動軸挿入孔54は、軸方向から見た形状が、駆動側伝達面54aと平行な方向が長手方向、駆動側伝達面54aと直交する方向が短手方向となる略トラック形状(二面幅形状)をなしている。なお、各駆動側伝達面54aには、ゴム材料等の弾性を有する材料よりなる2つの第1弾性部材55が設けられている。また、軸方向視において従動軸挿入孔54の長手方向の両端部には、ゴム材料等の弾性を有する材料よりなる第2弾性部材56がそれぞれ設けられている。第1及び第2弾性部材55,56は、従動軸挿入孔54の内周面から内側に若干突出している。
また、図3及び図6(a)に示すように、駆動側回転体42は、鍔部52から軸方向に出力部30側(図3において下方側)に延出された一対の転動体解除部57を有する。転動体解除部57は、軸方向視における従動軸挿入孔54の長手方向の両側にそれぞれ設けられている。また、2つの転動体解除部57は、回転方向に180°離間し径方向に対向する位置に設けられている。なお、各転動体解除部57における周方向の両端部は、ゴム材料等の弾性を有する材料よりなる弾性部58にて構成されている。これら各転動体解除部57は、クラッチハウジング41の内側に配置される。
図2及び図4に示すように、サポート部材43は、径方向に対向するクラッチハウジング41と従動側回転体45との間に転動体44を保持するものである。本実施形態のサポート部材43は樹脂製である。
サポート部材43は、ウォーム軸34の中心軸線L2を中心とする円環状をなすリング部61を有する。リング部61の外径は、クラッチハウジング41の内径よりも大きい。リング部61は、クラッチハウジング41のフランジ部41aに対してモータ部20側(図2において上側)に配置され、フランジ部41aと軸方向に対向している。
リング部61の下面(フランジ部41aと対向する軸方向の端面)には、リング部61の周方向に沿った円環状の突条をなしフランジ部41aに軸方向から当接する下側突部61aが設けられている。また、リング部61の上面(鍔部52と対向する軸方向の端面)には、軸方向に突出した略半球状をなす複数の上側突部61bが設けられている。本実施形態では、上側突部61bは、周方向に離間した4箇所に設けられている。各上側突部61bは、その先端部が出力部30側から鍔部52に軸方向に当接する。
また、リング部61の内周側における周方向に離間した2箇所(本実施形態では180°間隔となる2箇所)には、リング部61から駆動側回転体42の回転軸線方向(中心軸線L1方向に同じ)に突出した転動体保持部62が形成されている。2つの転動体保持部62は、軸方向に延びる柱状をなす転動体44をそれぞれ保持している。
ここで、転動体保持部62にて保持される転動体44について詳述する。
図5(a)及び図5(b)に示すように、各転動体44は、樹脂製であり、その中心軸線L3が回転軸24の中心軸線L1及びウォーム軸34の中心軸線L2と平行をなすように配置されている。本実施形態の各転動体44は、軸方向から見た形状が二面幅形状をなしている。そのため、各転動体44は、軸方向から見ると、長手方向と短手方向とを有する形状をなしている。図5(b)に示す状態においては、クラッチ40の径方向が転動体44の長手方向となり、クラッチ40の周方向が同転動体44の短手方向となっている。そして、各転動体44は、駆動側回転体42の回転方向X1(クラッチ40の周方向に同じ。以下、回転方向X1とする)の両側に平面状をなす第1及び第2の対向面71a,71bを有する。更に、各転動体44は、クラッチ40の径方向の両側に第1及び第2の円弧面72a,72bを有する。
各転動体44において、第1及び第2の対向面71a,71bは、それぞれ中心軸線L3と平行をなすとともに、互いに平行をなしている。また、各転動体44において、第1及び第2の円弧面72a,72bは、軸方向から見て、中心軸線L3を曲率中心とする円弧状をなしている。なお、本実施形態では、第1の円弧面72aと第2の円弧面72bとは、互いに曲率が等しいが、異なる曲率であってもよい。また、第1及び第2の円弧面72a,72bは、中心軸線L3に対しては傾斜することなく平行に形成されている。
図6(a)に示すように、各転動体44において、径方向外側に位置する第1の円弧面72aは、クラッチハウジング41の円筒状の内周面41cと径方向に対向し、同内周面41cに接触可能である。一方、各転動体44において、径方向内側に位置する第2の円弧面72bは、従動側回転体45と径方向に対向し、同従動側回転体45に接触可能である。
図4、図5(a)及び図5(b)に示すように、各前記転動体保持部62は、リング部61から径方向内側に向かって延びる軸方向支持部63を有している。軸方向支持部63は、転動体44と軸方向に対向している。
また、各転動体保持部62は、軸方向支持部63の周方向の両端部から軸方向(中心軸線L1,L2方向)に沿ってリング部61と反対側(図5(a)において下方)に突出した一対のサポート部64a,64bを有する。即ち、各転動体保持部62において、一対のサポート部64a,64bは、回転方向X1における転動体44の両側で駆動側回転体42の回転軸線方向に突出している。対をなすサポート部64a,64bは、軸方向に沿って互いに平行に延びている。そして、各転動体保持部62において、対をなすサポート部64a,64bは、転動体44を中心軸線L3が中心軸線L1と平行をなすように回転方向X1の両側から保持している。なお、各転動体保持部62の対をなすサポート部64a,64bについて、クラッチ40をモータ部20側から軸方向に見て(即ち図6(a)に示す状態)、転動体44に対して反時計方向側に位置するサポート部を第1サポート部64aとし、転動体44に対して時計方向側に位置するサポート部を第2サポート部64bとする。
図5(b)に示すように、各転動体保持部62において互いに対向する第1及び第2サポート部64a,64bの間の距離は、転動体44の最大外径(即ち、軸方向視における転動体44の長手方向の幅)よりも短い。更に、各転動体保持部62において互いに対向する第1及び第2サポート部64a,64bの間の距離は、転動体44における回転方向X1の幅(第1の対向面71aと第2の対向面71bとの間の長さであって、軸方向視における転動体44の短手方向の幅)よりも若干長い。
図4、図5(a)及び図5(b)に示すように、各転動体保持部62において、第1サポート部64aにおける駆動側回転体42の回転軸線方向(サポート部材43の回転軸線L4方向に同じ)の先端部と第2サポート部64bにおける駆動側回転体42の回転軸線方向の先端部とは、サポート連結部66によって連結されている。本実施形態のサポート連結部66は、サポート部材43と一体に設けられている。サポート連結部66は、第1及び第2サポート部64a,64bの径方向の幅と略等しい幅の平板状をなしている。また、サポート連結部66は、軸方向から見ると、サポート部材43の回転軸線L4を中心とする円弧状をなしている。サポート連結部66は、転動体44における軸方向の一端面に軸方向から当接し、転動体保持部62からの転動体44の軸方向の脱落を抑制する。
また、サポート部材43は、一方の転動体保持部62の第1サポート部64aにおける駆動側回転体42の回転軸線方向(回転軸線L4方向に同じ)の先端部と、当該第1サポート部64aと回転方向X1に隣り合う他方の転動体保持部62の第2サポート部64bにおける駆動側回転体42の回転軸線方向の先端部とを連結する連結部67を有する。連結部67は、第1及び第2サポート部64a,64bと一体に設けられており、軸方向視で回転軸線L4を中心とする円弧状をなしている。本実施形態では、連結部67の径方向の幅は、サポート連結部66の径方向の幅と略等しくなっている。
図2及び図6(a)に示すように、上記構成のサポート部材43によって保持されることにより、2つの転動体44は、回転方向X1において等角度間隔(本実施形態では180°間隔)に配置されている。また、転動体44を保持した各転動体保持部62は、クラッチハウジング41の内側に挿入されて配置されているため、各転動体44は、クラッチハウジング41の内側で同クラッチハウジング41と径方向に対向する。なお、サポート部材43は、クラッチハウジング41に対して回転方向X1に相対回転可能である。
また、前記駆動側回転体42の各転動体解除部57は、サポート部材43のリング部61の内周側を通ってクラッチハウジング41の内側に挿入されている。更に、各転動体解除部57は、2つの転動体保持部62の間にそれぞれ配置され、各転動体保持部62と回転方向X1に隣り合っている。そのため、各転動体解除部57における回転方向X1の両端部(各弾性部58)は、一方の転動体保持部62の第1サポート部64a及び他方の転動体保持部62の第2サポート部64bとそれぞれ回転方向X1に対向している。そして、サポート部材43と駆動側回転体42とは回転方向X1に相対回転可能であり、駆動側回転体42が回転すると、各転動体解除部57は、回転方向の前方側に位置する第1サポート部64aもしくは第2サポート部64bに回転方向から当接するようになっている。
図2及び図3に示すように、前記従動側回転体45は、ウォーム軸34の基端部(図2において上側の端部)に一体に形成されており、金属製である。従動側回転体45は、軸方向に並設された制御部81及び従動側連結部82を備えている。なお、従動側連結部82は、制御部81の基端側(図2において上側)に設けられている。
制御部81は、ウォーム軸34に一体に形成されるとともに、ウォーム軸34の軸方向に延びる柱状をなしている。そして、制御部81は、その中心軸線がウォーム軸34の中心軸線L2と一致しており、ウォーム軸34と同軸上に形成されている。また、図6(a)に示すように、中心軸線L2方向から見ると、制御部81は、ウォーム軸34の中心軸線L2を対称中心とする点対称形状をなしている。
制御部81の外周面には、一対の制御面83が形成されている。各制御面83は、制御部81の外周面において周方向に等角度間隔(本実施形態では180°間隔)となる2箇所に形成されている。そして、各制御面83は、軸方向(中心軸線L2方向)に対して平行、且つ、従動側回転体45の径方向に対して直交する平面状をなしている。更に、一対の制御面83は、互いに平行をなすとともに、各制御面83の軸方向の長さは、前記転動体44の軸方向の長さよりも長い。
図2及び図6(b)に示すように、従動側連結部82は、ウォーム軸34の軸方向に延びる柱状をなしている。従動側連結部82の中心軸線はウォーム軸34の中心軸線L2と一致しており、ウォーム軸34と同軸上に形成されている。また、従動側連結部82は、前記従動軸挿入孔54よりも若干細く形成されている。そして、従動側連結部82は、軸方向と直交する断面形状が略楕円形状をなすとともに、その断面形状は軸方向に一定となっている。また、軸方向視において、従動側連結部82の長手方向は、制御面83と平行な方向であるとともに、同従動側連結部82の短手方向は、制御面83と直交する方向となっている(図6(a)も参照)。なお、図6(b)に示すように、中心軸線L2方向から見ると、従動側連結部82は、ウォーム軸34の中心軸線L2を対称中心とする点対称形状をなしている。
従動側連結部82の外周面には、一対の第1従動側伝達面84及び一対の第2従動側伝達面85が形成されている。対をなす2つの第1従動側伝達面84のうち、一方の第1従動側伝達面84は、他方の第1従動側伝達面84に対して180°反対側に形成されている。そして、2つの第1従動側伝達面84は、それぞれ軸方向と平行な平面状をなすとともに、互いに平行をなしている。また、2つの第1従動側伝達面84の間の距離は、駆動側回転体42の従動軸挿入孔54に設けられた一対の駆動側伝達面54aの間の距離と等しく形成されている。
第2従動側伝達面85は、2つの第1従動側伝達面84の間にそれぞれ形成されるとともに、一方の第2従動側伝達面85は、他方の第2従動側伝達面85に対して180°反対側に形成されている。2つの第2従動側伝達面85は、それぞれ軸方向と平行な平面状をなすとともに、互いに平行をなしている。また、2つの第2従動側伝達面85の間の距離は、駆動側回転体42の従動軸挿入孔54に設けられた一対の駆動側伝達面54aの間の距離と等しく形成されている。そして、第1従動側伝達面84及び第2従動側伝達面85は、軸方向には、従動側連結部82の軸方向の一端から他端に亘って形成されている。
図2に示すように、上記のような従動側回転体45は、駆動側回転体42とは反対側からクラッチハウジング41及びサポート部材43の内側に挿入されている。そして、従動側回転体45は、クラッチハウジング41、駆動側回転体42及びサポート部材43と同軸上に配置されている。
また、図6(b)に示すように、従動側連結部82は、駆動側回転体42と一体回転可能に従動軸挿入孔54に遊嵌されている。従動軸挿入孔54に遊嵌された従動側連結部82の外周面と従動軸挿入孔54の内周面との間には、第1及び第2弾性部材55,56が介在されている。詳しくは、一対の第2弾性部材56は、従動側連結部82の軸方向視における長手方向両端部と接触している。また、4つの第1弾性部材55は、2つの第1従動側伝達面84及び2つの第2従動側伝達面85と駆動側伝達面54aとの間にそれぞれ介在されている。
そして、従動側回転体45に対して駆動側回転体42が中心軸線回りに回転すると、駆動側伝達面54aは、第1弾性部材55を弾性変形させつつ、第1及び第2従動側伝達面84,85のいずれかに対して回転方向に当接する。これにより、駆動側回転体42と従動側回転体45とが回転方向に係合されて駆動側回転体42の回転駆動力が従動側回転体45に伝達されるようになる。
また、図6(a)に示すように、従動側回転体45の制御部81は、各制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間にそれぞれ転動体44が介在されるようにサポート部材43の内側に挿入されており、クラッチハウジング41及び各転動体44と径方向に対向している。即ち、サポート部材43は、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45の各制御面83との間に転動体44を保持している。
そして、各制御面83は、クラッチハウジング41の内周面41cとの間の距離(制御面83と直交する方向の間隔)が、従動側回転体45の回転方向に変化する。本実施形態では、制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間の距離は、各制御面83の周方向の中央において最も長く、各制御面83の周方向の中央から周方向の両端に向かうに連れて徐々に短くなる。また、各制御面83の周方向の中央とクラッチハウジング41の内周面41cとの間の距離は、転動体44の最大外径よりも長く、且つ、各制御面83の周方向端部とクラッチハウジング41の内周面41cとの間の距離は、転動体44の最大外径よりも短い。
次に、上記のように構成されたモータ10の動作を、クラッチ40の動作を中心に、その作用とともに説明する。
図2及び図7(a)に示すように、モータ部20に通電されることによりモータ部20が駆動されると、回転軸24と共に駆動側回転体42が回転する。即ち、駆動側回転体42の回転駆動が開始される。なお、図7(a)及び図7(b)は、駆動側回転体42が第1の方向R1に回転駆動される場合を図示している。そして、図7(a)に示すように、駆動側回転体42の第1の方向R1の回転に伴って、同駆動側回転体42の各転動体解除部57における回転方向前方側の周方向端部(弾性部58)が、各転動体保持部62の第1サポート部64aに回転方向に当接する。
ここで、図4及び図7(a)に示すように、各転動体保持部62において、対をなす第1及び第2サポート部64a,64bの回転軸線L4方向の先端部はサポート連結部66にて連結されている。そのため、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、転動体解除部57が転動体保持部62に駆動側回転体42の回転方向から当接したときの衝撃によって対をなす第1及び第2サポート部64a,64bが弾性変形して互いに離間するように回転方向に開いてしまうことを抑制することができる。従って、第1及び第2サポート部64a,64bの少なくとも一方のサポート部の弾性変形に伴う弾性力によってサポート部材43が駆動側回転体42に対して回転方向に飛ばされてしまうことが抑制される。よって、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、転動体解除部57が駆動側回転体42の回転方向から第1サポート部64aに当接したときの衝撃によってサポート部材43が駆動側回転体42の回転方向(図7に示す例では第1の方向R1)に飛ばされて駆動側回転体42よりも先行して回転することが抑制される。従って、転動体解除部57が第1サポート部64aに駆動側回転体42の回転方向から当接した後は、駆動側回転体42とサポート部材43とが一体的に回転するようになりやすい。そして、各転動体保持部62の第1サポート部64aに回転方向に当接した各転動体解除部57が、各第1サポート部64aを介して各転動体44を第1の方向R1に押圧することにより、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45の制御面83とによる各転動体44の挟持が解除される。
また、図7(b)に示すように、駆動側回転体42は、各駆動側伝達面54aが従動側連結部82の各第2従動側伝達面85に第1の方向R1から当接することで、従動側回転体45と一体回転可能に連結される。
なお、駆動側回転体42(転動体解除部57)によって転動体保持部62が駆動側回転体42の回転方向に押圧されることによりクラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45とによる転動体44の挟持が解除された後に、従動側回転体45がクラッチハウジング41の内周面41cとの間に転動体44を再度挟持しようとすることがある。しかしながら、本実施形態では、サポート部材43が駆動側回転体42よりも先行して回転することが抑制されることにより駆動側回転体42とサポート部材43とが一体的に回転しやすくなっている。そのため、駆動側回転体42とサポート部材43とが一体的に回転することで、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45とによる転動体44の挟持は直ちに解除される。
そして、各転動体解除部57が第1サポート部64a及び転動体44を第1の方向R1に押圧しながら駆動側回転体42とサポート部材43とが一体的に回転するうちに、各転動体44が各制御面83の周方向の中央部に配置される。つまり、転動体44が制御面83とクラッチハウジング41との間に挟持されない(即ち従動側回転体45の回転の妨げとならない)ロック解除状態になる。このロック解除状態において、駆動側回転体42(回転軸24)の回転駆動力が従動側回転体45(ウォーム軸34)に伝達されて回転軸24とウォーム軸34とが第1の方向R1に一体回転し、ウォーム軸34の第1の方向R1の回転が、ウォームホイール37との間で減速されながら出力軸38に伝達され、同出力軸38から出力される。すると、出力軸38の回転方向に応じて図示しないウインドレギュレータを介して車両のウインドガラスが昇降される。そして、モータ部20への通電が停止されると、回転軸24の回転駆動、即ち駆動側回転体42の回転駆動が停止される。
因みに、モータ部20の駆動により、駆動側回転体42が第2の方向R2に回転される場合には、クラッチ40は、各部材の回転方向は反対となるが、上記した駆動側回転体42が第1の方向R1に回転される場合と同様の動作で、回転軸24とウォーム軸34とを連結する。
図8(a)及び図8(b)に示すように、モータ部20の駆動が停止された状態、即ち回転軸24(駆動側回転体42)の非回転駆動時には、負荷側(本実施形態ではウインドレギュレータ側)から出力軸38に荷重がかかると、その荷重により従動側回転体45が回転しようとする。なお、図8(a)及び図8(b)には、従動側回転体45が第2の方向R2に回転しようとした場合を図示している。すると、従動側回転体45の各制御面83が、各制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に配置された転動体44を外周側に押圧する。制御面83に押された転動体44は、対をなすサポート部64a,64bの間で第1の円弧面72aがクラッチハウジング41の内周面41cに当接するとともに、制御面83における同制御面83の周方向の中央よりも周方向の端部(制御面83における第2の方向R2の後方側の端部)寄りの部分に第2の円弧面72bが当接する。そして、各転動体44は、制御面83における第2の方向R2の後方側の端部寄りの部分とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に挟持される。これにより、転動体44がくさびとなって、従動側回転体45の回転(第2の方向R2への回転)が阻止(即ちウォーム軸34の回転がロック)される。従って、回転軸24(駆動側回転体42)の非回転駆動時に出力軸38が回転されることが阻止される。なお、従動側回転体45がロック位置(クラッチハウジング41との間に転動体44を挟持する位置)に配置された状態(図8(a)に示す状態)では、図8(b)に示すように、従動側連結部82の各第2従動側伝達面85は、駆動側回転体42の各駆動側伝達面54aに回転方向(第2の方向R2)に接触しないようになっている。
因みに、モータ部20(駆動側回転体42)の非駆動時に、従動側回転体45が第1の方向R1に回転しようとした場合においても同様にして、従動側回転体45の回転が阻止される。即ち、各転動体44が、制御面83における第1の方向R1の後方側の端部寄りの部分とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に挟持されることにより、各転動体44がくさびとなって、従動側回転体45の回転(第1の方向R1への回転)が阻止(即ちウォーム軸34の回転がロック)される。
次に、本実施形態の効果を記載する。
(1)駆動側回転体42の回転駆動の開始時に駆動側回転体42と転動体保持部62とが駆動側回転体42の回転方向に繰り返し離間したり当接したりすることを抑制できるため、駆動側回転体42の回転駆動の開始時における騒音の発生を抑制することができる。そして、モータ10は、駆動側回転体42の回転駆動の開始時における騒音の発生が抑制されたクラッチ40を備えているため、回転軸24の回転駆動の開始時にモータ10において騒音が発生することが抑制される。
(2)対をなす第1及び第2サポート部64a,64bにおける駆動側回転体42の回転軸線方向の先端部同士を連結するサポート連結部66は、転動体44における軸方向の一端面に軸方向から当接している。従って、駆動側回転体42が転動体保持部62に駆動側回転体42の回転方向から当接したときの衝撃によって対をなす第1及び第2サポート部64a,64bが弾性変形して互いに離間するように回転方向に開いてしまうことを抑制するサポート連結部66によって、転動体保持部62からの転動体44の軸方向の脱落を抑制することができる。
(3)サポート連結部66は、サポート部材43と一体に設けられている。そのため、サポート連結部66を設けたことによる部品点数の増加を抑制することができる。従って、部品点数を増加させることなく、駆動側回転体42の回転駆動の開始時における騒音の発生を抑制することができる。
(4)クラッチ40は、サポート部材43の回転方向に隣り合う2つの転動体保持部62のうち一方の転動体保持部62の第1サポート部64aの軸方向の先端部と、当該第1サポート部64aとサポート部材43の回転方向に隣り合う他方の転動体保持部62の第2サポート部64bの軸方向の先端部とを連結する連結部67を備えている。即ち、駆動側回転体42の回転方向に隣り合う2つの転動体保持部62においては、2つの転動体保持部62が保持する2つの転動体44の間の2つのサポート部64a,64bにおける駆動側回転体42の回転軸線方向の先端部同士が連結部67にて連結されている。一般的に、駆動側回転体42及びサポート部材43の寸法誤差や、組み付け誤差等により、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に全ての転動体保持部62に転動体解除部57が同時に当接することが困難となる場合がある。即ち、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、何れか一方の転動体保持部62に転動体解除部57が回転方向から当接したときに、他方の転動体保持部62には転動体解除部57が回転方向から当接していない場合がある。このような場合においても、本実施形態のクラッチ40においては、一方の転動体保持部62に加えられた駆動側回転体42の回転方向の押圧力は、連結部67を介して他方の転動体保持部62にも伝達される。即ち、他方の転動体保持部62にも連結部67を介して駆動側回転体42の回転方向の押圧力が加えられる。そのため、駆動側回転体42の回転方向に隣り合う2つの転動体保持部62が保持する2つの転動体44において、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45とによる挟持が解除されるタイミングがずれることを抑制することができる。従って、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45とによる各転動体44の挟持をより円滑に解除することができる。
<第2実施形態>
以下、クラッチを備えたモータの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態の構成と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態のサポート部材100は、上記第1実施形態のサポート部材43に代えて上記第1実施形態のクラッチ40に備えられるものである。サポート部材100は、上記第1実施形態のサポート部材43において、サポート連結部66に代えてサポート連結部110を備えた構成となっている。
サポート部材100には、2対のサポート部64a,64bにおけるサポート部材100の回転軸線L5方向の先端部及び2つの連結部67に亘って略円環状の収容凹部101が設けられている。収容凹部101は、軸方向(回転軸線L5方向)に凹設されリング部61とは反対方向に開口している。
また、サポート部材100において、収容凹部101の側壁となる部分には、周方向(サポート部材100の回転方向)に等角度間隔(180°間隔)となる2箇所に位置決め凹部102が設けられている。本実施形態では、位置決め凹部102は、各連結部67の周方向の中央部に設けられており、収容凹部101の径方向内側の側壁101aを径方向に貫通し軸方向(リング部61と反対方向)に開口している。
また、サポート部材100において、収容凹部101の側壁となる部分には、周方向に等角度間隔(180°間隔)となる2箇所に係止爪103が設けられている。2つの係止爪103は、収容凹部101の径方向外側の側壁101bに設けられており、各連結部67の周方向の中央部であって2つの位置決め凹部102と径方向に対向する位置に設けられている。各係止爪103の周方向の両側には、側壁101bの先端から基端に亘って凹設され側壁101bを径方向に貫通した一対の分離溝104が設けられている。各係止爪103は、対をなす分離溝104の間で収容凹部101の底部から軸方向に沿ってリング部61と反対側に延びる延出部103aと、延出部103aの先端部から径方向内側に向かって突出した係止部103bとを有する。延出部103aは、その基端部に対してその先端部が径方向に移動するように弾性変形可能である。また、係止部103bは、側壁101bの内周面よりも径方向内側に突出している。なお、収容凹部101は、係止爪103と位置決め凹部102との間の部分が部分的に深く形成されている。
サポート連結部110は、サポート部材100を構成する樹脂材料よりも単位体積当たりの質量が大きい材料よりなる。そのため、サポート連結部110は、サポート部材100よりも単位体積当たりの質量が大きい。本実施形態では、サポート連結部110は、金属材料よりなり、サポート部材100に対する錘(サポート部材100に質量を付与する錘)となる。
サポート連結部110は、円環状の板状をなしている。サポート連結部110の軸方向の厚さは、収容凹部101の軸方向の深さよりも若干薄くなっている。また、サポート連結部110の内径は、収容凹部101の内径(側壁101aの外径)と略等しいとともに、サポート連結部110の外径は、収容凹部101の外径(側壁101bの内径)と略等しくなっている。
サポート連結部110は、周方向に等角度間隔(180°間隔)となる2箇所に径方向内側に突出した位置決め凸部110aを有する。2つの位置決め凸部110aは、サポート部材100に設けられた2つの位置決め凹部102に対応するように形成されており、周方向の幅が位置決め凹部102の周方向の幅と等しくなっている。
図9及び図10に示すように、このようなサポート連結部110は、サポート部材100の対をなすサポート部64a,64bの間にそれぞれ転動体44をサポート部64a,64bにおける回転軸線L5方向の先端側から挿入した後に、同サポート部材100に対して組み付けられる。サポート連結部110は、係止爪103の延出部103aを外周側に弾性変形させながら収容凹部101内に挿入される。この時、サポート連結部110は、2つの位置決め凸部110aが2つの位置決め凹部102にそれぞれ挿入されるように、収容凹部101内に挿入される。そして、サポート連結部110が収容凹部101の底面に当接するまで同収容凹部101に挿入されると、延出部103aが原形に復帰し、係止部103bが収容凹部101の底面と反対側からサポート連結部110に軸方向に当接する。これにより、サポート連結部110は、係止部103bによってサポート部材100からの脱落が抑制された状態、即ちサポート部材100に組み付けられた状態となる。そして、サポート部材100にサポート連結部110が組み付けられた状態においては、対をなす第1及び第2サポート部64a,64bにおける回転軸線L5方向の先端部同士がサポート連結部110にて連結された状態となる。また、同状態においては、位置決め凸部110aと位置決め凹部102とがサポート部材100の回転方向に係合することにより、サポート部材100とサポート連結部110とがサポート部材100の回転方向に相対回転することが抑制されている。また、同状態においては、サポート連結部110は、転動体44における軸方向の一端面に軸方向から当接し、転動体保持部62からの転動体44の軸方向の脱落を抑制する。
次に、本実施形態の作用を説明する。
モータ部20の駆動により回転軸24の回転駆動が開始されると、回転軸24と一体に回転する駆動側回転体42の回転駆動が開始される。駆動側回転体42の回転に伴って、同駆動側回転体42の各転動体解除部57における回転方向前方側の周方向端部が、各転動体保持部62に回転方向に当接する(図7(a)参照)。
ここで、図11に示すように、サポート部材100に組み付けられたサポート連結部110は、サポート部材100に対する錘となっている。従って、サポート部材100の慣性モーメントが大きくなるため、回転が停止していたサポート部材100は、駆動側回転体42の回転軸線回りに回転し始め難くなっている。更に、サポート連結部110は、各転動体保持部62において対をなす第1及び第2サポート部64a,64bにおける回転軸線L5方向の先端部同士を連結している。そのため、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、転動体解除部57が転動体保持部62に駆動側回転体42の回転方向から当接したときの衝撃によって対をなす第1及び第2サポート部64a,64bが弾性変形して互いに離間するように回転方向に開いてしまうこと(図11において二点鎖線参照)を抑制することができる。従って、第1及び第2サポート部64a,64bの少なくとも一方のサポート部の弾性変形に伴う弾性力によってサポート部材100が駆動側回転体42に対して回転方向に飛ばされてしまうことが抑制される。これらのことから、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、転動体解除部57が駆動側回転体42の回転方向から転動体保持部62に当接したときの衝撃によってサポート部材100が駆動側回転体42の回転方向に飛ばされて駆動側回転体42よりも先行して回転することが抑制される。従って、転動体解除部57が転動体保持部62に駆動側回転体42の回転方向から当接した後は、駆動側回転体42とサポート部材100とが一体的に回転するようになりやすい。そして、各転動体保持部62に回転方向に当接した各転動体解除部57が、各転動体保持部62を介して転動体44を駆動側回転体42の回転方向に押圧することにより、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45の制御面83とによる各転動体44の挟持が解除される。
なお、駆動側回転体42(転動体解除部57)によって転動体保持部62が駆動側回転体42の回転方向に押圧されることによりクラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45とによる転動体44の挟持が解除された後に、従動側回転体45がクラッチハウジング41の内周面41cとの間に転動体44を再度挟持しようとすることがある。しかしながら、本実施形態では、サポート部材100が駆動側回転体42よりも先行して回転することが抑制されることにより駆動側回転体42とサポート部材100とが一体的に回転しやすくなっている。そのため、駆動側回転体42とサポート部材100とが一体的に回転することで、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45とによる転動体44の挟持は直ちに解除される。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2),(4)と同様の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
(1)サポート連結部110は、サポート部材100と別体に形成されておりサポート部材100に組み付けられている。そのため、対をなすサポート部64a,64bの間に転動体44を組み付けた後にサポート連結部110をサポート部材100に組み付けることができる。この場合、サポート部64a,64bにおける回転軸線L5方向(駆動側回転体42の回転軸線方向に同じ)の先端側から対をなすサポート部64a,64bの間に転動体44を挿入することができるため、サポート部材100に対する転動体44の組付けを容易に行うことができる。
(2)サポート連結部110は、サポート部材100に対する錘となっている。従って、サポート部材100の慣性モーメントが大きくなるため、回転が停止していたサポート部材100は、駆動側回転体42の回転軸線回りに回転し始め難くなる。よって、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、転動体解除部57が駆動側回転体42の回転方向から転動体保持部62に当接したときの衝撃によってサポート部材100が駆動側回転体42の回転方向に飛ばされて駆動側回転体42よりも先行して回転することをより抑制することができる。従って、転動体解除部57が転動体保持部62に駆動側回転体42の回転方向から当接した後は、駆動側回転体42とサポート部材100とが一体的に回転するようによりなりやすい。その結果、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に駆動側回転体42と転動体保持部62とが駆動側回転体42の回転方向に繰り返し離間したり当接したりすることをより抑制できるため、駆動側回転体42の回転駆動の開始時における騒音の発生をより抑制することができる。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、連結部67は、第1及び第2サポート部64a,64bに一体に設けられている。しかしながら、連結部67は、サポート部材43,100とは別体で設けられ、サポート部材43,100に組み付けられるものであってもよい。また、クラッチ40は、必ずしも連結部67を備えなくてもよい。
・上記第2実施形態では、サポート連結部110は、サポート部材100を構成する樹脂材料よりも単位体積当たりの質量が大きい金属材料から構成されている。しかしながら、サポート連結部110を構成する材料はこれに限らない。例えば、サポート連結部110は、サポート部材100と同じ樹脂材料からなるものであってもよい。また例えば、サポート連結部110は、サポート部材100を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料であって、単位体積当たりの質量が同じもしくは小さい樹脂材料からなるものであってもよい。このようにしても、上記第1実施形態の(1)と同様の効果を得ることができる。また例えば、サポート連結部110を、サポート部材100を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料であって、サポート部材100を構成する樹脂材料よりも単位体積当たりの質量が大きい樹脂材料から形成すると、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また例えば、サポート連結部110を、金属材料よりなる錘と当該錘を保持する樹脂材料よりなる保持部材とから構成してもよい。
・上記第2実施形態では、サポート連結部110は円環状をなしている。しかしながら、サポート連結部110の形状はこれに限らない。サポート連結部110は、サポート部材100と別体に形成されてサポート部材100に組み付けられ、対をなす第1及び第2サポート部64a,64bにおける駆動側回転体42の回転軸線方向の先端部同士を連結するものであればよい。例えば、サポート連結部110は、各転動体保持部62に対してそれぞれ設けられ、対をなす第1及び第2サポート部64a,64bにおける駆動側回転体42の回転軸線方向の先端部同士を連結する円弧状をなすものであってもよい。
・上記第1実施形態では、サポート連結部66は、第1及び第2サポート部64a,64bの径方向の幅と略等しい幅の円弧状をなす平板状をなしている。しかしながら、サポート連結部66の形状はこれに限らない。サポート連結部66は、対をなす第1及び第2サポート部64a,64bにおける駆動側回転体42の回転軸線方向の先端部同士を連結する形状であればよい。例えば、サポート連結部66は、軸方向から見て第1及び第2サポート部64a,64bよりも径方向の幅が狭い円弧状の板状をなすものであってもよい。また例えば、サポート連結部66は、対をなす第1及び第2サポート部64a,64bの間で直線的に延びるものであってもよい。
・サポート連結部66,110は、必ずしも転動体44の軸方向の一端面に当接する位置に設けられなくてもよい。この場合、転動体保持部62からの転動体44の軸方向の脱落を防止する構成が、サポート連結部66,110とは別に設けられることが好ましい。
・上記各実施形態では、サポート部材43,100の各々は、転動体44を保持する転動体保持部62を2つ備えている。しかしながら、各サポート部材43,100が有する転動体保持部62の数は、2つに限らず、1つもしくは3つ以上であってもよい。転動体保持部62の数は、クラッチ40に備えられる転動体44の数に応じて設定されればよい。因みに、転動体44は、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45との間に少なくとも1つ配置されていればよい。
・上記各実施形態において、クラッチ40を構成するクラッチハウジング41、駆動側回転体42、サポート部材43,100、転動体44及び従動側回転体45の形状は、必ずしも上記各実施形態の形状でなくてもよい。例えば、駆動側回転体42は、回転軸24と一体に形成されたものであってもよい。また例えば、従動側回転体45は、ウォーム軸34と別体に設けられて、同ウォーム軸34と一体回転可能に組み付けられるものであってもよい。また例えば、転動体44は、円柱状や球体状をなすものであってもよい。
・上記各実施形態では、モータ10は、パワーウインド装置の駆動源として用いられているが、他の装置の駆動源に用いられるものであってもよい。
・上記各実施形態では、クラッチ40は、モータ10に備えられ、回転軸24と減速機構32のウォーム軸34とを連結するものである。しかしながら、クラッチ40は、モータ10以外の装置に備えられ、回転駆動される回転軸と、回転軸の回転駆動力が伝達される従動軸とを連結するものであってもよい。