JP6826877B2 - ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
空気入りタイヤ、とりわけモータースポーツ用タイヤにおいては、乾燥路面における高いグリップ性能(ドライグリップ性能)が要求されるともに、操縦安定性のため高温での高い剛性が求められる。そのため、補強性充填剤として発熱性に優れかつ補強性の高い小粒径のカーボンブラックが用いられることがある。
また、空気入りタイヤにおいては、湿潤路面におけるグリップ性能(ウェットグリップ性能)が要求され、モータースポーツ用タイヤにおいてもウェットグリップ性能が求められることがある。ウェットグリップ性能を向上するため、例えば、特許文献1には、ナフサの熱分解によるC5留分とスチレン又はビニルトルエンの共重合樹脂を配合することが提案されているが、この場合、高温でゴム硬度が低下することにより、操縦安定性が損なわれるという問題がある。
ところで、特許文献2には、低温性能及び転がり抵抗性能の悪化を抑えながら、ウェットグリップ性能を向上することを目的として、重量平均分子量が5000〜100万でありかつガラス転移点が−70〜0℃である(メタ)アクリレート系重合体を配合することが開示されている。しかしながら、特定の粒径を持つ微粒子状の(メタ)アクリレート系重合体を配合することは開示されていない。
一方、特許文献3には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーの粒子をゴム組成物に配合することが開示されている。しかしながら、この文献において、該粒子は、スタッドレスタイヤのトレッド面にミクロな凹凸を形成することで氷上摩擦抵抗を向上させるものであり、そのため、粒径が0.1μm〜100μm、好ましくは1μm〜30μmと比較的大きいものを用いる必要がある。より粒径の小さい微粒子状の(メタ)アクリレート系重合体を配合することにより、ウェットグリップ性能を向上できることについての開示はみられない。
特許文献4には、式≡Si−Xで表される反応性シリル基(式中、Xはヒドロキシルまたは加水分解可能な基である)を持つ非芳香族ビニルポリマー(例えば、(メタ)アクリレートの重合体)のナノ粒子を、ゴム組成物に配合することが開示されている。しかしながら、この文献において、該ナノ粒子は補強性充填剤として用いられており、カップリング剤との併用による補強性を発揮するために、反応性シリル基を持つことが必須となっている。反応性シリル基を持たない(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子を用いることにより、操縦安定性の低下を抑えながら、ウェットグリップ性能を向上できることについての開示はみられない。
本発明の実施形態は、操縦安定性の低下を抑えながら、ウェットグリップ性能を向上することができるゴム組成物を提供することを目的とする。
実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積が140〜250m2/gであるカーボンブラック50〜150質量部と、下記一般式(1)で表される構成単位を有しかつ反応性シリル基を持たない(メタ)アクリレート系重合体からなる、ガラス転移点が−70〜0℃かつ平均粒径が10nm以上100nm未満の微粒子1〜30質量部と、を含有するものである。
実施形態に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物からなるゴム部分を備えたものである。
実施形態によれば、小粒径のカーボンブラックを配合したゴム組成物に上記特定の重合体からなる微粒子を配合することにより、操縦安定性を損なうことなくウェットグリップ性能を向上することができる。
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分に、窒素吸着比表面積が140〜250m2/gであるカーボンブラックと、特定の(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子を配合してなるものである。更に石油樹脂が配合されてもよい。このような小粒径のカーボンブラックを配合することで操縦安定性を向上したゴム組成物において、特定の(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子を配合することにより、操縦安定性を損なうことなく、0℃付近での損失係数tanδが向上してウェットグリップ性能を改善することができる。また、該特定の微粒子を配合することにより、石油樹脂を配合したことによる未加硫ゴムの粘着性を抑制して加工性を改善することができる。
ゴム成分としてのジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられ、これらはいずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、NR、BR及びSBRからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
一実施形態として、ゴム成分は、スチレンブタジエンゴムを含むことが好ましく、すなわち、ゴム成分は、スチレンブタジエンゴム単独、又はスチレンブタジエンゴムと他のジエン系ゴムとのブレンドでもよい。例として、ゴム成分100質量部中にスチレンブタジエンゴムを80〜100質量部含むことが好ましい。前記他のジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴム及び/又は天然ゴムが好ましい。
補強性充填剤としてのカーボンブラックについては、本実施形態では窒素吸着比表面積(N2SA)が140〜250m2/gである極めて小粒径のカーボンブラックを用いる。このような小粒径のカーボンブラックを用いることにより、補強性を向上して操縦安定性を高めることができる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、160〜220m2/gであることが好ましく、より好ましくは180〜200m2/gである。ここで、窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準拠して測定される。
該カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して50〜150質量部であることが好ましく、より好ましくは60〜120質量部であり、更に好ましくは70〜100質量部である。
補強性充填剤は、上記カーボンブラック単独でもよいが、カーボンブラックとともにシリカを配合してもよい。シリカとしては、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカの配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して50質量部以下でもよく、10〜30質量部でもよい。
シリカを配合する場合、スルフィドシランやメルカプトシラン等のシランカップリング剤を併用することが好ましく、その場合、シランカップリング剤の配合量は、シリカ質量の2〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは4〜15質量%である。
上記微粒子としては、下記一般式(1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート単位を構成単位(繰り返し単位とも称される。)として有する(メタ)アクリレート系重合体からなるものが用いられる。
該(メタ)アクリレート系重合体は、1種又は2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーを重合してなるものである。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートのうちの一方又は両方を意味する。また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸のうちの一方又は両方を意味する。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ウンデシル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸n−トリデシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ノニル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ウンデシル、及びメタクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸n−アルキル; アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸イソヘプチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸イソウンデシル、アクリル酸イソドデシル、アクリル酸イソトリデシル、アクリル酸イソテトラデシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸イソヘキシル、メタクリル酸イソヘプチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソウンデシル、メタクリル酸イソドデシル、メタクリル酸イソトリデシル、及びメタクリル酸イソテトラデシル等の(メタ)アクリル酸イソアルキル; アクリル酸2−メチルブチル、アクリル酸2−エチルペンチル、アクリル酸2−メチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エチルヘプチル、メタクリル酸2−メチルペンチル、メタクリル酸2−メチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸2−エチルヘプチルなどが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ここで、イソアルキルとは、アルキル鎖端から2番目の炭素原子にメチル側鎖を有するアルキル基をいう。例えば、イソデシルとは、鎖端から2番目の炭素原子にメチル側鎖を持つ炭素数10のアルキル基をいい、8−メチルノニル基だけでなく、2,4,6−トリメチルヘプチル基も含まれる概念である。
一実施形態として、(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位として下記一般式(2)で表される構成単位を有する重合体であることが好ましい。
式(2)の構成単位は、式(1)中のR2が下記一般式(2A)で表される場合である。
このような構成単位を生じる(メタ)アクリレートとしては、上記の(メタ)アクリル酸イソアルキルが挙げられる。かかるイソアルキル基を有する(メタ)アクリレート(より好ましくは、メタクリレート)を用いることにより、本実施形態による効果を高めることができる。式(2)及び(2A)中のZは、炭素数5〜12のアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜10のアルキレン基である。特に好ましくは、炭素数7のアルキレン基であり、一例として、(メタ)アクリレート系重合体は、メタクリル酸イソデシルを含むモノマーの重合体であることが好ましい。
他の実施形態において、上記(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位として、下記一般式(3)で表される構成単位を有する、重合体でもよく、あるいはまた、式(2)で表される構成単位と式(3)で表される構成単位を有する、重合体でもよい。後者の場合、両構成単位の付加形態は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、好ましくはランダム付加である。
式(3)の構成単位は、式(1)中のR2が下記一般式(3A)で表される場合である。
ここで、該共重合体において、式(2)の構成単位を生じる(メタ)アクリレートの具体例としては、上記の(メタ)アクリル酸イソアルキルが挙げられ、特に好ましくは、メタクリル酸イソデシルである。また、式(3)の構成単位を生じる(メタ)アクリレートの具体例としては、上記列挙のアルキル(メタ)アクリレートのうち、(メタ)アクリル酸n−アルキルおよび(メタ)アクリル酸イソアルキルを除くものが挙げられ、特に好ましくは、メタクリル酸2−エチルヘキシルである。
このような共重合体の場合、式(2)の構成単位と式(3)の構成単位の比率(共重合比)は、特に限定されない。例えば、式(2)の構成単位/式(3)の構成単位のモル比で、30/70〜90/10でもよく、40/60〜85/15でもよい。
本実施形態に係る微粒子を構成する(メタ)アクリレート系重合体は、上記のアルキル(メタ)アクリレートのみの重合体でもよいが、より好ましい実施形態によれば、アルキル(メタ)アクリレートを、多官能ビニルモノマーの存在によって架橋してなる架橋構造の重合体である。すなわち、好ましい実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体は、式(1)で表される構成単位とともに、多官能ビニルモノマーに由来する構成単位を含み、該多官能ビニルモノマーに由来する構成単位を架橋点とする架橋構造を有する。
多官能ビニルモノマーとしては、フリーラジカル重合によって重合可能な少なくとも2個のビニル基を有する化合物が挙げられ、例えば、ジオールまたはトリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなど)のジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート; メチレンビス−アクリルアミドなどのアルキレンジ(メタ)アクリルアミド; ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの少なくとも2個のビニル基を持つビニル芳香族化合物などが挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリレート系重合体は、基本的には式(1)の構成単位からなり、即ち式(1)の構成単位を主成分とするが、効果を損なわない範囲で他のビニル系化合物を併用してもよい。特に限定するものではないが、(メタ)アクリレート系重合体を構成する全構成単位(全繰り返し単位)に対する式(1)の構成単位のモル比が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上である。式(1)の構成単位のモル比の上限は、特に限定しないが、例えば上記の多官能ビニルモノマーを添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。多官能ビニルモノマーに基づく構成単位のモル比は、0.5〜20モル%でもよく、1〜10モル%でもよく、1〜5モル%でもよい。
一実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体が式(2)の構成単位を有する重合体である場合、当該重合体の全構成単位に対する式(2)の構成単位のモル比は25モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%以上であり、50モル%以上でもよく、80モル%以上でもよい。当該モル比の上限は、特に限定しないが、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
一実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体が式(3)の構成単位を有する重合体である場合、当該重合体の全構成単位に対する式(3)の構成単位のモル比は25モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%以上であり、50モル%以上でもよく、80モル%以上でもよい。当該モル比の上限は、特に限定しないが、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
また、他の実施形態において、(メタ)アクリレート系重合体が式(2)の構成単位と式(3)の構成単位の共重合体である場合、当該共重合体の全構成単位に対する式(2)の構成単位のモル比が25〜90モル%で、式(3)の構成単位のモル比が5〜60モル%でもよく、式(2)の構成単位のモル比が35〜85モル%で、式(3)の構成単位のモル比が8〜55モル%でもよい。また、式(2)の構成単位と式(3)の構成単位のモル比の合計で80モル%以上でもよく、90モル%以上でもよく、またその上限は、例えば多官能ビニルモノマーを上記のモル比で添加する場合、99.5モル%以下でもよく、99モル%以下でもよい。
本実施形態では、上記(メタ)アクリレート系重合体として、反応性シリル基を持たないものを用いる。すなわち、本実施形態において、微粒子はシリカを代替する補強性充填剤として配合するものではないので、該微粒子を構成する(メタ)アクリレート系重合体の分子末端又は分子鎖中に反応性シリル基を有していないものを用いる。これにより、操縦安定性の低下を抑えながら、ウェットグリップ性能を改良するとの本実施形態の効果を有効に発揮することができると考えられる。ここで、反応性シリル基とは、式≡Si−Xで表される官能基(式中、Xはヒドロキシルまたは加水分解可能な基である。)であり、1〜3個のヒドロキシル基又は加水分解可能な1価の基が4価のケイ素原子に結合した構造を有する基である。Xとしては、ヒドロキシル基、アルコキシル基、及びハロゲン原子が挙げられる。
本実施形態において、上記(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子のガラス転移点(Tg)は−70〜0℃の範囲内に設定される。ガラス転移点の設定は、(メタ)アクリレート系重合体を構成するモノマー組成等により行うことができる。ガラス転移点が−70〜0℃であることにより、ウェットグリップ性能の改善効果を高めることができる。微粒子のガラス転移点は、−50〜−10℃であることが好ましく、より好ましくは−40〜−20℃である。
本実施形態において、上記微粒子の平均粒径は10nm以上100nm未満である。上記特定の構成単位を含む(メタ)アクリレート系重合体を、このような微細な粒子としてジエン系ゴム中に添加することにより、操縦安定性の低下を抑えながら、ウェットグリップ性能を向上するという効果を高めることができる。該微粒子の平均粒径は、より好ましくは20〜90nmであり、更に好ましくは30〜80nmである。
上記微粒子の製造方法は、特に限定されず、例えば、公知の乳化重合を利用して合成することができる。好ましい一例を挙げれば次の通りである。すなわち、(メタ)アクリレートを、架橋剤としての多官能ビニルモノマーとともに、乳化剤を溶解した水等の水性媒体に分散させ、得られたエマルションに水溶性のラジカル重合開始剤(例えば、過硫酸カリウムなどの過酸化物)を添加してラジカル重合させることにより、水性媒体中に(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子が生成されるので、該水性媒体と分離することで微粒子が得られる。その他の微粒子の製造方法として、公知の懸濁重合や分散重合、沈殿重合、ミニエマルション重合、ソープフリー乳化重合(無乳化剤乳化重合)およびマイクロエマルション重合などの重合方法を利用することができる。
本実施形態に係るゴム組成物において、上記(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部であり、より好ましくは5〜25質量部であり、更に好ましくは8〜20質量部である。
本実施形態に係るゴム組成物には、石油樹脂を配合することができる。石油樹脂は、軟化点(JIS K2207 環球式)が70〜120℃程度であり、このように高温で軟化する樹脂を配合することにより、グリップ性能を向上することができる。一方で、石油樹脂を配合すると、未加硫ゴムの粘着性により加工性が悪化するが、本実施形態によれば、上記(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子を配合することで、加工性を改善することができる。
石油樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂が挙げられる。脂肪族系石油樹脂は、炭素数4〜5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C5系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。芳香族系石油樹脂は、炭素数8〜10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂は、上記C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂であり(C5/C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。
石油樹脂の配合量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して20〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量部であり、40〜60質量部でもよい。
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
上記加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ゴム成分に対し、上記微粒子及びカーボンブラックとともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
このようにして得られるゴム組成物は、タイヤに用いられることが好ましく、特に好ましくはモータースポーツ用タイヤに用いることである。一実施形態に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物からなるゴム部分を備えるものである。好ましくは、空気入りタイヤの接地面を構成するトレッドゴムに用いること、即ちタイヤトレッド用ゴム組成物であり、特にはモータースポーツ用タイヤのトレッドゴムに用いることが好ましい。該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140〜180℃でグリーンタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[平均粒径の測定方法]
微粒子の平均粒径は、動的光散乱法(DLS)により測定される粒度分布における積算値50%での粒径(50%径:D50)であり、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計「DLS-8000」を用いた光子相関法(JIS Z8826準拠)により測定した(入射光と検出器との角度90°)。
微粒子の平均粒径は、動的光散乱法(DLS)により測定される粒度分布における積算値50%での粒径(50%径:D50)であり、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計「DLS-8000」を用いた光子相関法(JIS Z8826準拠)により測定した(入射光と検出器との角度90°)。
[Tgの測定方法]
微粒子のTgは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて測定した(測定温度範囲:−150℃〜150℃)。
微粒子のTgは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて測定した(測定温度範囲:−150℃〜150℃)。
[合成例1:微粒子1]
15.0gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル、0.394gのエチレングリコールジメタクリレート、1.91gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水および13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.179gの過硫酸カリウムを添加した後、1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持した。得られた溶液中へのメタノール添加による凝析により、14.5gの微粒子1を得た(重合転化率(生成量/仕込量):94%)。微粒子1の平均粒径は60nm、Tgは−37℃であった。
15.0gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル、0.394gのエチレングリコールジメタクリレート、1.91gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水および13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.179gの過硫酸カリウムを添加した後、1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持した。得られた溶液中へのメタノール添加による凝析により、14.5gの微粒子1を得た(重合転化率(生成量/仕込量):94%)。微粒子1の平均粒径は60nm、Tgは−37℃であった。
微粒子1について、13C−NMRにより、重合体の化学構造を分析したところ、メタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル由来の式(2)の構成単位とともに、エチレングリコールジメタクリレート由来の構成単位(以下、EGDM構成単位)を有し、各構成単位のモル比は、式(2)の構成単位が97モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
[合成例2:微粒子2]
15.0gのメタクリル酸2−エチルヘキシル、0.450gのエチレングリコールジメタクリレート、2.18gのドデシル硫酸ナトリウム、0.205gの過硫酸カリウム、120gの水および13.5gのエタノールを用い、合成例1と同様の手法により、14.2gの微粒子2を得た(重合転化率:92%)。微粒子2の平均粒径は58nm、Tgは−10℃であった。微粒子2についての13C−NMR分析の結果、メタクリル酸2−エチルヘキシル由来の式(3)の構成単位が97モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
15.0gのメタクリル酸2−エチルヘキシル、0.450gのエチレングリコールジメタクリレート、2.18gのドデシル硫酸ナトリウム、0.205gの過硫酸カリウム、120gの水および13.5gのエタノールを用い、合成例1と同様の手法により、14.2gの微粒子2を得た(重合転化率:92%)。微粒子2の平均粒径は58nm、Tgは−10℃であった。微粒子2についての13C−NMR分析の結果、メタクリル酸2−エチルヘキシル由来の式(3)の構成単位が97モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
[合成例3:微粒子3]
15.0gのメタクリル酸n−ドデシル、0.351gのエチレングリコールジメタクリレート、1.70gのドデシル硫酸ナトリウム、0.159gの過硫酸カリウム、120gの水および13.5gのエタノールを用い、合成例1と同様の手法により、13.8gの微粒子3を得た(重合転化率:90%)。微粒子3の平均粒径は62nm、Tgは−65℃であった。微粒子3についての13C−NMR分析の結果、メタクリル酸n−ドデシル由来の式(1)の構成単位が97モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
15.0gのメタクリル酸n−ドデシル、0.351gのエチレングリコールジメタクリレート、1.70gのドデシル硫酸ナトリウム、0.159gの過硫酸カリウム、120gの水および13.5gのエタノールを用い、合成例1と同様の手法により、13.8gの微粒子3を得た(重合転化率:90%)。微粒子3の平均粒径は62nm、Tgは−65℃であった。微粒子3についての13C−NMR分析の結果、メタクリル酸n−ドデシル由来の式(1)の構成単位が97モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
[合成例4:微粒子4]
8.0gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル、7.0gのメタクリル酸2−エチルヘキシル(ここで、メタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル/メタクリル酸2−エチルヘキシル=50/50(モル比))、0.420gのエチレングリコールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水および13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.191gの過硫酸カリウムを添加した後、1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持した。得られた溶液中へのメタノール添加による凝析により、微粒子4を得た(重合転化率:94%)。微粒子4の平均粒径は60nm、Tgは−24℃であった。微粒子4についての13C−NMR分析の結果、メタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル由来の式(2)の構成単位が49モル%、メタクリル酸2−エチルヘキシル由来の式(3)の構成単位が48モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
8.0gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル、7.0gのメタクリル酸2−エチルヘキシル(ここで、メタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル/メタクリル酸2−エチルヘキシル=50/50(モル比))、0.420gのエチレングリコールジメタクリレート、2.04gのドデシル硫酸ナトリウム、120gの水および13.5gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、0.191gの過硫酸カリウムを添加した後、1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持した。得られた溶液中へのメタノール添加による凝析により、微粒子4を得た(重合転化率:94%)。微粒子4の平均粒径は60nm、Tgは−24℃であった。微粒子4についての13C−NMR分析の結果、メタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル由来の式(2)の構成単位が49モル%、メタクリル酸2−エチルヘキシル由来の式(3)の構成単位が48モル%、EGDM構成単位が3.0モル%であった。
[ゴム組成物及びタイヤの作製及び評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
・SBR:JSR(株)製「JSR0202」
・カーボンブラック1:三菱化学(株)製「ダイヤブラック−UX10」(N2SA:190m2/g)
・カーボンブラック2:東海カーボン(株)製「シースト9」(N2SA:142m2/g)
・カーボンブラック3:三菱化学(株)製「ダイヤブラックN339」(N2SA:91m2/g)
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・オイル:JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・石油樹脂:脂肪族系石油樹脂、日本ゼオン(株)製「クイントンM100」(軟化点:95℃)
・微粒子1〜4:合成例1〜4による合成品
・架橋ゴム粒子:ランクセス社製「Nanoprene BM350H」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・老化防止剤:住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック社製「Si69」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」。
・カーボンブラック1:三菱化学(株)製「ダイヤブラック−UX10」(N2SA:190m2/g)
・カーボンブラック2:東海カーボン(株)製「シースト9」(N2SA:142m2/g)
・カーボンブラック3:三菱化学(株)製「ダイヤブラックN339」(N2SA:91m2/g)
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・オイル:JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・石油樹脂:脂肪族系石油樹脂、日本ゼオン(株)製「クイントンM100」(軟化点:95℃)
・微粒子1〜4:合成例1〜4による合成品
・架橋ゴム粒子:ランクセス社製「Nanoprene BM350H」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・老化防止剤:住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック社製「Si69」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」。
得られた各ゴム組成物について、未加硫状態での加工性を評価した。また、160℃で30分間加硫したダンベル状3号形の試験片を作製し、操縦安定性を評価した。また各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することによりモータースポーツ用タイヤ(タイヤサイズ:31/71−18)を作製した。得られたタイヤについてウェットグリップ性能を評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
・加工性:未加硫ゴムのロールへの密着性を1〜5の5段階にて官能評価した。1に近いほど密着性が高く、工程性(加工性)が悪化することを示す。
・操縦安定性:JIS K6251に準拠して、(株)上島製作所製の自動引張り試験機にて、100℃の条件下で100%伸び時のモジュラス(100%引張応力:S100)を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。100℃でのモジュラスは、モータースポーツ用タイヤにおける操縦安定性の指標となるものであり、指数が大きいほど、S100が高く、操縦安定性に優れることを示す。
・ウェットグリップ性能:試験タイヤ4本を自動車に装着し、2〜3mmの水深で水をまいた路面上を走行した。100km/hにて摩擦係数を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど摩擦係数が高く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
結果は表1に示す通りである。比較例1に対し、架橋ゴム粒子を配合した比較例2では加工性の改良効果は小さく操縦安定性も損なわれた。比較例3では、特定の(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子1を配合したものの、小粒径カーボンブラックを用いなかったので、比較例1に対して操縦安定性とウェットグリップ性能に劣っていた。
これに対し、小粒径カーボンブラックと特定の(メタ)アクリレート系重合体からなる微粒子1〜4を組み合わせた実施例1〜11であると、操縦安定性を維持ないし向上しつつ、ウェットグリップ性能及び加工性を改善することができた。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (5)
- 前記ゴム成分100質量部に対し、石油樹脂20〜80質量部を含む、請求項1に記載のゴム組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物からなるゴム部分を備えた空気入りタイヤ。
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