JP6822210B2 - 高熱収縮性ポリアミド繊維、混繊糸および織編物 - Google Patents

高熱収縮性ポリアミド繊維、混繊糸および織編物 Download PDF

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Description

本発明は高熱収縮性を有するポリアミド繊維およびそれを一部に用いた混繊糸およびそれからなる織編物に関するものである。
近年、これまでの繊維には見られなかった特殊繊維を用いた織物などの縫製品の開発が活発である。その中で高収縮性を付与した繊維を利用した例は多く、例えば熱収縮性の異なる2種の繊維を混合した混繊糸や、熱収縮性の高い原糸を製織した後に130〜160℃で仕上げ熱セットして嵩高性やふくらみ感を持たせ、風合いや表面特性を改良した織物の開発が数多くなされている。
高収縮性を付与した繊維の代表例として、高収縮性ポリエステル繊維があるが、ポリエステル繊維はポリアミド繊維と比較してヤング率が高い特性があるために、仕上げ熱セットして収縮させた後の風合いが硬く、衣料用途としての快適性に問題があった。一方、ポリアミド繊維はヤング率が低く柔らかな風合いが得られ、耐摩耗性などの優れた特性を有することから衣料用途に好適に用いられるが、更なる、機能付与のために高収縮性ポリアミド繊維について、多数の開発が行なわれている。
例えば特許文献1には、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドからなる沸騰水収縮率20〜50%、熱収縮応力0.15cN/dtex以上である高収縮性ポリアミド繊維が開示されている。
また、特許文献2には、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドからなる沸騰水収縮率35%以上である高収縮性ポリアミド繊維が開示されている。
さらに、特許文献3には、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドからなる沸騰水収縮率15%以上である高収縮性ポリアミド繊維が開示されている。
WO2016−104278号公報 特開平4−2814号公報 特開平3−64516号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている高収縮性ポリアミド繊維は、高い沸騰水収縮率と収縮応力を有しているものの、高熱収縮応力を発現する温度帯が70〜100℃であるため、該ポリアミド繊維から成る生機を、70〜100℃で精錬・染色した際に熱収縮応力を発現してしまい、温度130〜160℃の仕上げ熱セット工程において、熱収縮応力が発現せず、十分に収縮されないので、ふくらみ感のある高密度な織編物は得られなかった。
特許文献2、3に開示されている高収縮性ポリアミド繊維は、高い沸騰水収縮率を有するものの、収縮応力が小さいため、該ポリアミド繊維を製織・製編した織編物に精錬・染色、仕上げ熱セットをしても、十分に収縮されず、ふくらみ感のある高密度な織物は得られなかった。
そこで、本発明では上記問題点を解決するものであり、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織編物が得られる高収縮性ポリアミド繊維を提供することが課題である。すなわち、沸騰水収縮率が高く、高次加工の精錬・染色温度に相当する温度70〜100℃と仕上げ熱セット温度に相当する温度130〜160℃それぞれの温度帯で高い熱収縮応力を発現するポリアミド繊維によって、少なくとも一部に高収縮性ポリアミド繊維を用いた混繊糸が嵩高性を有し、少なくとも一部に高収縮性を有するポリアミド繊維および/又は混繊糸を用いた織編物が、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織編物とすることを提供することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、主として、次の構成を有する。
(1)沸騰水収縮率が20〜50%、温度70〜100℃での最大熱収縮応力(H1)が0.20cN/dtex以上、温度130〜160℃での最大熱収縮応力(H2)が0.20cN/dtex以上であることを特徴とする高収縮性ポリアミド繊維。
(2)温度70〜100℃での熱収縮応力の最大値(H1)と温度130〜160℃での熱収縮応力の最大値(H2)がH1<H2の関係を満たすことを特徴とする(1)記載の高収縮性ポリアミド繊維。
(3)混繊糸の一部に(1)または(2)に記載の高収縮性ポリアミド繊維を用いることを特徴とする混繊糸。
(4)織編物の一部に(1)または(2)に記載の高収縮性ポリアミド繊維および/または(3)に記載の混繊糸を用いることを特徴とする織編物。
本発明によれば、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織編物が得られる高収縮性ポリアミド繊維を提供することができる。すなわち、沸騰水収縮率が高いと共に、温度70〜100℃と130〜160℃のそれぞれの温度帯で高い熱収縮応力を発現するポリアミド繊維によって、少なくとも一部に高収縮性ポリアミド繊維を用いた混繊糸は嵩高性を有し、少なくとも一部に高収縮性を有するポリアミド繊維および/又は混繊糸を用いた織編物は、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織編物とすることができる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドからなる繊維である。
結晶性ポリアミドは、結晶を形成し融点を有するポリアミドであり、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結されたポリマーであり、ポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリテトラメチレンアジパミド、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)と線状脂肪族ジカルボン酸との縮合重合型ポリアミドなど、及び、これらの共重合体もしくはこれらの混合物が挙げられる。ただし、均一な系を再現しやすく、安定した機能発現の点からホモのポリアミドを用いることが好ましい。
結晶性ポリアミドは、ジアミン類、二塩基酸類からなる高分子量体であり、具体的なジアミン類としてはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。二塩基酸類としてはグルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、エイコサンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、キシリレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。本発明の高収縮性ポリアミド繊維に用いる結晶性ポリアミドはいかなるものでもよいが、製造コスト、繊維の強度保持の両面からポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミドが好ましい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維における非晶性ポリアミドは、結晶を形成せず融点をもたないポリアミドであり、例えば、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、イソフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ω−ラウロラクタム/4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)の重縮合体、テレフタル酸/ω−ラウロラクタム/4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)の重縮合体等がある。また、これらの重縮合体を構成するテレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分のベンゼン環が、アルキル基やハロゲン原子で置換されたものも含まれる。さらに、これらの非晶性ポリアミドは2種類以上併用してもよい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維に用いる非晶性ポリアミドは、ガラス転移温度(Tg)が120〜160℃であることが好ましい。ガラス転移温度以下では、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部は拘束されているため、かかる範囲とすることにより、ポリアミド繊維は、温度130〜160℃で高い熱収縮応力(H2)を発現する。混繊糸を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットした際に収縮特性の異なる繊維をひきつれて収縮することによって、より嵩高い混繊糸が得られる。また、織物を作製した際には、70〜100℃で精錬・染色した後でも、高い熱収縮応力が維持されるため、130〜160℃で仕上げ熱セットした際にも収縮特性の異なる繊維をひきつれて十分に収縮し、よりふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができる。Tgが120℃未満の場合、温度130〜160℃で結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部の拘束力が働かないため、温度130〜160℃での収縮応力(H2)に劣るポリアミド繊維となる。Tgが160℃を超えると、温度130〜160℃では結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部は拘束されているため、温度130〜160℃での収縮応力(H2)に劣るポリアミド繊維となる。高Tgの非晶性ポリアミドとして、ガラス転移温度160℃であるイソフタル酸/ω−ラウロラクタム/4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)の重縮合体、ガラス転移温度125℃であるイソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体を用いることがより好ましい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維における、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの重量比率は、結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミド=90/10〜50/50であることが好ましい。非晶性ポリアミドの重量比率が10重量%未満の場合、高収縮性ポリアミド繊維中の非晶性ポリアミドの含有量が少ないため、熱収縮応力および沸騰水収縮率の収縮特性が小さくなり、混繊糸を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットを施しても糸長差が発現しにくく十分な嵩高性を得ることができず、また、織物を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットを施しても十分に収縮されず、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができない。また、非晶性ポリアミドの重量比率が50重量%を超えると、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドが非相溶系となり、熱収縮応力が小さくなり、混繊糸を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットを施しても糸長差が発現しにくく十分な嵩高性を得ることができず、また、織物を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットを施しても十分に収縮されずふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができない。そのため、結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミド=80/20〜60/40であることがより好ましい。
ここでいう重量比率とは、高収縮性ポリアミド繊維のプロトンNMRを測定し、アミド結合を形成するカルボキシル基のα位の水素に由来するシグナル(通常3ppm付近)のピーク面積(A)と、芳香族炭化水素に由来するシグナル(通常7ppm付近)のピーク面積(B)から結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの繰り返し比を求める(A=結晶性ポリアミドの繰り返し数×2+非晶性ポリアミドの繰り返し数×2、B=非晶性ポリアミドの繰り返し数×4)。同じ高収縮性ポリアミド繊維について、質量分析を行うことで、ポリアミドの繰り返し単位の質量数を測定する。求めた繰り返し比とそれぞれのポリアミドの繰り返し単位の質量数の積から重量比率を算出されるものである。
また、高収縮性ポリアミド繊維には、必要に応じて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、発泡剤、帯電防止剤、成形性改良剤、強化剤等を添加してもよい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドが互いに相溶している相溶系である。相溶系と非相溶系の判断は、3000倍のTEM観察結果において、直径10nm以上の分散相を有する海島の相分離構造が観察されたときは非相溶系、直径10nm以上の分散相を有する海島の相分離構造が観察されなかったときは相溶系と判定した。非相溶系においては、熱収縮応力が小さくなり、混繊糸を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットを施しても糸長差が発現しにくく十分な嵩高性を得ることができず、また、織物を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットを施しても十分に収縮されずふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができない。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、沸騰水収縮率が20〜50%であることが必要である。かかる範囲とすることにより、混繊糸を作製した際には、仕上げ熱セットした際に収縮特性の異なる繊維との収縮差により糸長差が発現し、嵩高い混繊糸が得られる。また、織物を作製した際にも、仕上げ熱セットした際に十分に収縮しふくらみ感のある高密度な織物を得ることができる。沸騰水収縮率が20%未満の場合、混繊糸を作製した際には、仕上げ熱セットを施しても糸長差が発現しにくく十分な嵩高性を得ることができず、また、織物を作製した際には、仕上げ熱セットを施しても十分に収縮されずふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができない。沸騰水収縮率が50%を超えると、織物を作製した際には、仕上げ熱セットを施した際に寸法変化が大きくなり過ぎ、織物の密度が過密になり、風合いが硬くなり、ふくらみ感、ソフト感が劣ることに加えて、織物の交錯点での目の詰まりに斑が生じ、収縮斑が生じるため、得られる織物の品位が劣る。高収縮性ポリアミド繊維の沸騰水収縮率は好ましくは、25〜50%である。
高収縮性ポリアミド繊維を製織した後、該ポリアミド繊維から成る生機は張力の掛かっていない状態で保管される。その後、精錬・染色、仕上げ熱セットの工程を経て織物が作製される。巻き取ったパッケージから解じょした直後は熱収縮応力が高いものの、張力の掛かっていない状態で24時間保持すると、熱収縮応力が低下してしまう高収縮性ポリアミド繊維においては、該ポリアミド繊維から成る生機を張力の掛かっていない状態で保管すると、熱収縮応力が低下してしまい、精錬・染色、仕上げ熱セット時に十分に収縮されず、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができない。巻き取ったパッケージから解じょして、張力の掛かっていない状態で24時間保管しても高い熱収縮応力を維持している高収縮性ポリアミド繊維では、精錬・染色、仕上げ熱セット時に十分に収縮され、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、温度70〜100℃での最大熱収縮応力(H1)が0.20cN/dtex以上、温度130〜160℃の最大熱収縮応力(H2)が0.20cN/dtex以上であることが必要である。ここでいう熱収縮応力とは、カネボウエンジニアリング社製KE−2型熱収縮応力測定機を用い、巻き取ったパッケージから解舒した高収縮性ポリアミド繊維を、張力の掛かっていない状態で、温度20℃、相対湿度65%に24時間保持し、その後、繊維を結び周長16cmのループとし、糸条の繊度(デシテックス)の1/30gの初荷重を掛け、昇温速度100℃/分で測定されるものである。温度70〜100℃と130〜160℃の最大熱収縮応力をかかる範囲とすることにより、混繊糸を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットした際に収縮特性の異なる繊維をひきつれて収縮することによって、より嵩高い混繊糸が得られる。また、織物を作製した際には、70〜100℃で精錬・染色した後でも、高い熱収縮応力が維持されるため、130〜160℃で仕上げ熱セットした際に収縮特性の異なる繊維をひきつれて十分に収縮し、よりふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができる。0.20cN/dtex未満の場合、混繊糸を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットを施しても熱収縮応力が足りず、糸長差が発現しにくく十分な嵩高性を得ることができず、また、織物を作製した際には、130〜160℃で仕上げ熱セットを施しても熱収縮応力が足りず、ふくらみ感のある高密度な織物を得ることができない。高収縮性ポリアミド繊維の熱収縮応力(H1、H2)は好ましくは0.25cN/dtex以上、より好ましくは0.30cN/dtex以上である。また、熱収縮応力が高くなりすぎると、織物を作製した際には、収縮する力が高くなり過ぎ、織物の交錯点での目が詰まりすぎるため、摩擦に弱くなり、毛羽や毛玉等が発生しやすくなるため、得られる織物の品位が低下する傾向がある。このため高収縮性ポリアミド繊維の熱収縮応力(H1、H2)の上限は好ましくは0.50cN/dtexである。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、温度70〜100℃での最大熱収縮応力(H1)が0.20cN/dtex以上、温度130〜160℃での熱収縮応力(H2)が0.20cN/dtex以上であることが必要であり、加えて、温度70〜100℃での熱収縮応力の最大値(H1)と温度130〜160℃での熱収縮応力の最大値(H2)がH1<H2の関係を満たすことが好ましい。かかる範囲とすることにより、70〜100℃で精錬・染色した後でも、高い熱収縮応力が維持されるため、130〜160℃で仕上げ熱セットした際にも、収縮特性の異なる繊維をひきつれて十分に収縮し、よりふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、沸騰水収縮率と熱収縮応力が前記範囲で収縮特性を発現することが重要である。つまり、精錬・染色、仕上げ熱セットした際の寸法変化を表す沸騰収縮率と収縮する力を表す熱収縮応力を同時に満たすことが重要である。かかる範囲とすることにより、混繊糸を作製した際には、70〜100℃で精錬・染色した後でも、高い熱収縮応力が維持されるため、130〜160℃で仕上げ熱セットした際に収縮特性の異なる繊維との糸長差が発現し、さらに収縮特性の異なる繊維をひきつれて収縮することによって、より嵩高い混繊糸が得られる。また、織物を作製した際にも、130〜160℃で仕上げ熱セットした際に収縮特性の異なる繊維を糸ひきつれて十分に収縮し、よりふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、総繊度が5〜80dtexであることが好ましい。特に、スポーツウエア、ダウンジャケット、アウターおよびインナー用基布として用いる際の布帛の強度と軽量性の観点から、8〜50dtexがより好ましく、さらに好ましくは8〜40dtexである。また、高収縮性ポリアミド繊維の単糸繊度は、0.9〜3.0dtexであることが好ましい。特に、スポーツウエア、ダウンジャケット、アウターおよびインナー用基布として用いる際の布帛の強度とソフト感の観点から、0.9〜2.0dtexがより好ましく、さらに好ましくは0.9〜1.3dtexである。単糸繊度が3.0dtex以下である場合、布帛が硬くごわついた着心地とならず、単糸繊度が、前記範囲であるとき、仕上げ熱セットした混繊糸を用いた縫製品あるいは高密度の織編物においても、着用した際に良好なソフト感が得られ快適な着心地が実現できる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維の強伸度は、衣料用途の場合、通常使用される強伸度であればよく、高次加工の観点から伸度25〜50%、強度2.5cN/dtex以上がより好ましい。
発明の高収縮性ポリアミド繊維の繊維断面形状は、特に限定はないが、用途等に応じて任意の形状とすることができるが、円形、三角、扁平、Y型、星形が好ましい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維の製造方法について説明する。
結晶性ポリアミドおよび非晶性ポリアミドを混合・溶融するに際し、プレッシャーメルター、単軸エクストルーダーや二軸エクストルーダーを使用する溶融混練法が挙げられる。結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドとで相溶系を形成し、高い熱収縮応力を得るためには、単軸エクストルーダーを用いることが好ましい。プレッシャーメルターを使用すると、均一に混合されないため、海島の相分離構造を形成し、高い熱収縮応力を得られない。また、二軸エクストルーダーを用いる場合、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドとが反応し過ぎてしまい、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部に形成される高歪み帯が少なくなり、高い熱収縮応力が得られない。紡糸パックへ流入した結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの混合ポリマーは、公知の紡糸口金より吐出される。また、溶融温度、紡糸温度(いわゆるポリマー配管や紡糸パックまわりの保温温度)は、ポリアミドの融点+10℃〜融点+60℃が好ましい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維の製造方法プロセスについて、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法(2工程法)が好ましい。
溶融紡糸の2工程法でのポリアミド繊維の製造について例示する。
紡糸口金から吐出されたポリアミド糸条を、通常の溶融紡糸と同様、冷却、固化され、給油した後に第一ゴデットローラーで引き取り、未延伸糸を一旦ドラムに巻き取る。
この際、紡糸口金直下に加熱筒を設置することが好ましい。加熱筒を設置することにより、紡糸口金から吐出されたポリアミド糸条の冷却速度が遅くなり、未延伸糸の配向を抑えることができるため、後述する第一ホットローラーと第二ホットローラー間で高い延伸倍率で未延伸糸を延伸することができ、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部で高歪み帯が生成され、高い熱収縮応力を発現する。加熱筒を設置しない場合、未延伸糸の配向が進むため、高い延伸倍率で未延伸糸を延伸することができず、熱収縮応力の劣るポリアミド繊維となる。
また、加熱筒の長さは10〜100mmであることが好ましい。かかる範囲とすることにより、未延伸糸の配向を抑えることができるため、後述する第一ホットローラーと第二ホットローラー間で高い延伸倍率で未延伸糸を延伸することができ、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部で高歪み帯が生成され、高い熱収縮応力を発現する。加熱筒の長さが10mm未満の場合、未延伸糸の配向が進むため、高い延伸倍率で未延伸糸を延伸することができず、熱収縮応力の劣るポリアミド繊維となる。一方、加熱筒の長さが100mmを超えると、加熱筒内でのポリアミド糸条の糸揺れが大きく、安定して製糸できない。加熱筒の長さは30〜80mmであることがより好ましい。
また、加熱筒温度は280〜300℃であることが好ましい。かかる範囲とすることにより、未延伸糸の配向を抑えることができるため、後述する第一ホットローラーと第二ホットローラー間で高い延伸倍率で未延伸糸を延伸することができ、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部で高歪み帯が生成され、高い熱収縮応力を発現する。加熱筒温度が280℃未満の場合、未延伸糸の配向が進むため、高い延伸倍率で未延伸糸を延伸することができず、熱収縮応力の劣るポリアミド繊維となる。一方、300℃を超えると、加熱筒内でのポリアミド糸条の糸揺れが大きく、安定して製糸できない。
また、第一ゴデットローラーでの引取速度は500〜1000m/minであることが好ましい。かかる範囲とすることにより、未延伸糸の配向を抑えることができるため、高い延伸倍率で未延伸糸を延伸することができ、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部で高歪み帯が生成され、高い熱収縮応力を発現する。引取速度が1000m/minを超えると、未延伸糸の配向が進むため、高い延伸倍率で未延伸糸を延伸することができず、熱収縮応力の劣るポリアミド繊維となる。第一ゴデットローラーでの引取速度は600〜900m/minであることがより好ましい。
次にドラムに巻き取った未延伸糸を解じょし、第一ホットローラーと第二ホットローラー間で延伸した後、500m/minでボビンに巻き取る。
この際、第一ホットローラーの温度(延伸温度)は120〜170℃であることが好ましい。かかる範囲とすることにより、ポリマーの流動性が高まり、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部で高歪み帯が生成され、熱収縮応力が向上する。延伸温度は130〜170℃であることがより好ましい。
また、第一ホットローラーと第二ホットローラー間の延伸倍率は4.0〜5.0倍であることが好ましい。かかる範囲とすることにより、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部の配向が進み、非晶性ポリアミドの芳香環同士で相互作用し、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部が拘束されるため、高い熱収縮応力を発現する。延伸倍率が4.0倍未満では、非晶性ポリアミドの芳香環同士の相互作用が弱く、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部の拘束力が弱いため、熱収縮応力に劣るポリアミド繊維となる。延伸倍率は4.2〜4.8倍であることがより好ましい。
また、第二ホットローラーの温度(熱セット温度)を調節することで、糸条の熱収縮応力を適切に設計することができる。熱セット温度は、140〜200℃であることが好ましく、150〜190℃であることがより好ましい。
また、巻き取りまでの工程で公知の交絡装置を用い、交絡を施すことも可能である。必要であれば複数回交絡を付与することで交絡数を上げることも可能である。
さらには、巻き取り直前に、追加で油剤を付与するのも可能である。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、高Tgの非晶性ポリアミドを用い、加熱筒、引取速度、延伸温度、および延伸倍率を前記範囲に設定することが好ましい。かかる範囲とすることにより、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部の配向が進み、非晶性ポリアミドの芳香環同士で相互作用し、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの非晶部が拘束されるため、温度130〜160℃で高い熱収縮応力(H2)を発現する。また、混繊糸を作製した際には、70〜100℃で精錬・染色した後でも、高い熱収縮応力が維持されるため、130〜160℃で仕上げ熱セットした際に収縮特性の異なる繊維との糸長差が発現し、さらに収縮特性の異なる繊維をひきつれて収縮することによって、より嵩高い混繊糸が得られる。さらに、織物を作製した際にも、130〜160℃で仕上げ熱セットした際に収縮特性の異なる繊維を糸ひきつれて十分に収縮し、よりふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができる。
本発明の混繊糸は、本発明の高収縮ポリアミド繊維を少なくとも一部に用いる。高収縮性ポリアミド繊維と収縮特性の異なる繊維と混繊することにより、130〜160℃で仕上げ熱セットした際の収縮特性差により糸長差が発現し、嵩高い混繊糸が得られる。ここでいう異収縮性を示す繊維とは、沸騰水収縮率の異なる繊維のことである。化学繊維、天然繊維に限定されるものではないが、化学繊維の例としては、ポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミドに代表されるポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系繊維やポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系繊維などである。衣料用途では、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維が好ましい。スポーツウエア、ダウンジャケット、アウターおよびインナー用途では、ポリアミド系繊維がより好ましい。
また、本発明の高収縮性ポリアミド繊維と収縮特性の異なる繊維との沸騰水収縮率差は、10〜30%であることが、ソフト感とふくらみ感の点で好ましい。さらに好ましくは、沸騰水収縮率差が15〜30%であるとよい。
また、本発明の高収縮性ポリアミド繊維と収縮特性の異なる繊維との熱収縮応力差は、0.10〜0.40cN/dtexであることが、ソフト感とふくらみ感の点で好ましい。さらに好ましくは、熱収縮応力差が0.15〜0.30cN/dtexであるとよい。
本発明の混繊糸は、公知の方法に従い糸加工可能である。混繊法としては、紡糸混繊、エア混繊、合撚、複合仮撚等が適用可能であるが、エア混繊が混繊の制御をし易くまた製造コストも低く好ましい。エア混繊方法としてはインターレース加工、タスラン加工、旋回気流を利用した加工を挙げることができる。
本発明の織編物は、本発明の高収縮ポリアミド繊維および/又は混繊糸を少なくとも一部に用いる。高収縮性ポリアミド繊維と収縮特性の異なる繊維と製織、製編することにより、130〜160℃で仕上げ熱セットした際に、高収縮ポリアミド繊維が十分に収縮し、収縮特性の異なる繊維をひきつれて収縮し、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織編物が得られる。
本発明の織編物は、公知の方法に従い製織、製編可能である。また、織編物の組織は限定されるものではない。織物の場合、その組織は、使用される用途によって平組織、綾組織、朱子組織やそれらの変化組織、混合組織のいずれであっても構わないが、織物の地合いがしっかりしたふくらみ感のある織物とするには、拘束点の多い平組織、平組識と石目、ナナコ組識を組み合わせたリップストップ組識が好ましい。編物の場合、その組織は、使用される用途によって丸編地の天竺組織、インターロック組織、経編地のハーフ組織、サテン組織、ジャカード組織やそれらの変化組織、混合組織のいずれであっても構わないが、編地が薄くて安定性が有り、かつ、伸長率にも優れる点からシングルトリコット編地のハーフ組織地などが好ましい。
本発明の織編物を一部に用いる縫製品は、その用途を限定されるものでないが、衣料用が好ましく、より好ましくは、ダウンジャケット、ウインドブレイカー、ゴルフウエアー、レインウエアなどに代表されるスポーツ、カジュアルウェアや婦人紳士衣料である。特にスポーツウエア、ダウンジャケットに好適に用いることができる。
次に実施例によって本発明を具体的に説明する。
A.融点
示差走査熱量計(DSC)にTA Instrument社製Q1000を用いUniversal Analysis2000にてデータ処理を実施した。測定は窒素流下(50mL/min)で、温度範囲−50〜300℃、昇温速度10℃/min、試料重量約5g(熱量データは測定後重量で規格化)にて測定を実施した。融解ピークから融点を測定した。
B.相対粘度
試料0.25gを、濃度98質量%の硫酸25mlに対して1g/100mlになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98質量%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
C.総繊度、単糸繊度
JIS L1013に準じ総繊度および単糸繊度を測定した。繊維試料を、1/30(g)の張力で枠周1.125mの検尺機にて200回巻かせを作成する。105℃で60分乾燥しデシケーターに移し、20℃、相対湿度55%の環境下で30分放冷し、かせの重量を測定して得られた値から10000m当たりの重量を算出し、公定水分率を4.5%として繊維の総繊度を算出した。測定は4回行い、平均値を総繊度とした。また、総繊度をフィラメント数で除した値を単糸繊度とした。
D.ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC)にTA Instrument社製Q1000を用いUniversal Analysis2000にてデータ処理を実施した。測定は窒素流下(50mL/min)で、温度範囲−50〜270℃、昇温速度2℃/min、温度変調周期60秒、温度変調振幅±1℃、試料重量約5g(熱量データは測定後重量で規格化)にて測定を実施した。段状の基線のずれとして観測される吸熱ピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
E.沸騰水収縮率(沸収)
繊維試料を50cmのループにし、繊度の1/30(g)の初荷重を掛けて長さAを求め、次いでフリーにして沸騰水中に30分間浸漬した後、自然乾燥し、再び繊度の1/30(g)の初荷重を掛けて長さBを求め、次の式で沸騰水収縮率を算出した。
沸騰水収縮率(%)=〔(A−B)/A〕×100 。
F.熱収縮応力
カネボウエンジニアリング社製KE−2型熱収縮応力測定機を用い、巻き取ったパッケージから解舒した繊維糸条を結び周長16cmのループとし、糸条の繊度の1/30gの初荷重を掛け、室温から210℃まで昇温速度100℃/分で測定した。温度70〜100℃および130〜160℃の熱収縮応力の最大値を、それぞれH1’およびH2’とした。また、巻き取ったパッケージから解舒した繊維糸条を、張力の掛かっていない状態で、温度20℃、相対湿度65%に24時間保管し、その後周長16cmのループとし、糸条の繊度の1/30gの初荷重を掛け、室温から210℃まで昇温速度100℃/分で測定した。温度70〜100℃および130〜160℃の熱収縮応力の最大値を、それぞれH1およびH2とした。
G.結晶性ポリアミド、非晶性ポリアミドの重量比率(%)
(a)NMR測定
核磁気共鳴分光法(H−NMR)を用いテトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質(0ppm)として測定した。アミド結合を形成するカルボキシル基のα位の水素に由来するシグナル(通常3ppm付近)のピーク面積(A)と、芳香族炭化水素に由来するシグナル(通常7ppm付近)のピーク面積(B)から結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの繰り返し比を求める(A=結晶性ポリアミドの繰り返し数×2+非晶性ポリアミドの繰り返し数×2、B=非晶性ポリアミドの繰り返し数×4)。
(b)質量分析
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、飛行時間型質量分析法(TOF−MS)、飛行時間型マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−TOF−MS)を用い繰り返し単位の質量数を決定した。
(c)重量比率
結晶性ポリアミドの重量比率(%)=(A/2)×(結晶性ポリアミドの質量数)
非晶性ポリアミドの重量比率(%)=(A/2−B/4)×(非晶性ポリアミドの質量数) 。
H.相溶性
糸条をRuO蒸気に曝し、糸と包埋樹脂との境界を明確にするためのコートをする。その後樹脂に包埋し、薄切片を製作、リンタングステン酸(PTA)水溶液で15min染色する。以上のようにして得られた観察対象物を、透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−7100)を用い、加圧電圧100kVで観察した。観察倍率は3000倍で繊維横断面を観察した。TEM観察結果において、直径10nm以上の分散相を有する海島の相分離構造が観察されたときは非相溶系(×)、直径10nm以上の分散相を有する海島の相分離構造が観察されなかったときは相溶系(○)と判定した。
I.混繊糸評価(嵩高性)
(a)鞘糸の製造
相対粘度2.70のポリカプロラクタム(N6)を使用し、口金吐出孔を60個有する紡糸口金から紡糸温度275℃で溶融吐出させた。溶融吐出させた後、糸条を冷却、給油、交絡した後に2560m/minのゴデットローラーで引き取り、続いて1.7倍に延伸した後に熱セット温度155℃で熱固定し、4000m/minで巻き取り、80dtex60フィラメントのナイロン6糸条を得た。なお、得られたナイロン6糸条は、繊度78.8dtex、強度4.0cN/dtex、伸度59%、沸騰水収縮率10%、熱収縮応力0.09cN/dtexであった。
(b)混繊糸の製造
上記(a)で得られたナイロン6糸条と実施例1〜8および比較例1〜9で得られたポリアミド糸条を、インターレース加工機を用いて、交絡圧2.0kg/cmの交絡処理を施して混繊加工を行い、113dtexの混繊糸を得た。
(c)筒編地作製
混繊糸試料を、筒編機にて度目50となるように調整して筒編地を作製した。作製した筒編地を無荷重の状態で、温度20℃、相対湿度65%で24時間保管した。その後、筒編地を80℃で20分精練を行い、続いてKayanol Yellow N5G 1%owf、酢酸を用いてpH4に調整し、100℃で30分間染色を行い、その後、80℃で20分間Fix処理を行い、最後に風合いの改良のため150℃で30秒間仕上げ熱セットを行った。
(d)筒編地評価
筒編地を熟練技術者(5名)の触感により嵩高感(ふくらみ感)について、以下の5段階で実施した。各技術者の評価点の平均値の小数点一桁を四捨五入した。4点以上を、嵩高感(ふくらみ感)ありとした。
5点:非常に優れる
4点:優れる
3点:どちらでもない
2点:やや劣る
1点:劣る 。
J.織物評価
(a)経糸の製造
相対粘度2.70のポリカプロラクタム(N6)を使用し、口金吐出孔を20個有する紡糸口金から紡糸温度275℃で溶融吐出させた。溶融吐出させた後、糸条を冷却、給油、交絡した後に2560m/minのゴデットローラーで引き取り、続いて1.7倍に延伸した後に熱セット温度155℃で熱固定し、4000m/minで巻き取り、22dtex20フィラメントのナイロン6糸条を得た。
(b)織物の製造
上記(a)で得られたナイロン6糸条を経糸(経糸密度90本/2.54cm)に用い、実施例1〜8および比較例1〜9で得られたポリアミド糸条を緯糸に用い平織物を製織した(目付け40g/cm)。
得られた織物を無荷重の状態で、温度20℃、相対湿度65%で24時間保管した。その後、織物を80℃で20分精練を行い、続いてKayanol Yellow N5G 1%owf、酢酸を用いてpH4に調整し、100℃で30分間染色を行い、その後、80℃で20分間Fix処理を行い、最後に風合いの改良のため150℃で30秒間仕上げ熱セットを行った。
(c)織物評価(高密度感、ソフト感、ふくらみ感)
織物を熟練技術者(5名)の触感により高密度感、ソフト感およびふくらみ感それぞれについて、以下の5段階で実施した。各技術者の評価点の平均値の小数点一桁を四捨五入した。4点以上を高密度感、ソフト感およびふくらみ感ありとした。
5点:非常に優れる
4点:優れる
3点:どちらでもない
2点:やや劣る
1点:劣る 。
[実施例1]
結晶性ポリアミドとしてポリカプロラクタム(N6)(相対粘度ηr:2.62、融点222℃)と、非晶性ポリアミドとしてイソフタル酸/ω−ラウロラクタム/4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)の重縮合体(相対粘度ηr:2.05、ガラス転移温度:160℃)を、結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミドの重量比が70/30で単軸エクストルーダーを用い250℃で溶融混練し、26孔、丸孔の吐出孔を有する紡糸口金を用いて溶融吐出した(紡糸温度:250℃)。溶融吐出させた後、ポリアミド糸条を長さ50mmおよび温度290℃の加熱筒内を通過させ、冷却、給油、交絡した後に600m/minの第1ゴデットローラーで引き取り、未延伸糸をドラムに巻き取った。続いて、巻き取った未延伸糸を延伸温度170℃で4.2倍に延伸した後に熱セット温度190℃で熱固定し、500m/minでボビンに巻き取り、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.46)を得た。
[実施例2]
結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミドの重量比を90/10としたこと以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.54)を得た。
[実施例3]
結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミドの重量比を50/50としたこと以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.39)を得た。
[実施例4]
非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(相対粘度ηr:2.10、ガラス転移温度:125℃)を用い、延伸温度を130℃、熱セット温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.48)を得た。
[実施例5]
非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(相対粘度ηr:2.10、ガラス転移温度:125℃)を用い、結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミドの重量比を90/10として、延伸温度を130℃、熱セット温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.57)を得た。
[実施例6]
非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(相対粘度ηr:2.10、ガラス転移温度:125℃)を用い、結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミドの重量比を50/50として、延伸温度を130℃、熱セット温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.41)を得た。
[実施例7]
結晶性ポリアミドとして、ポリヘキサメチレンアジパミド(N66)(相対粘度ηr:2.80、融点263℃)を用い、単軸エクストルーダーでの溶融混練温度を280℃、紡糸温度を280℃とした以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.64)を得た。
[実施例8]
結晶性ポリアミドとして、ポリヘキサメチレンセバシミド(N610)(相対粘度ηr:2.80、融点219℃)、非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(相対粘度ηr:2.10、ガラス転移温度:125℃)を用い、延伸温度を130℃、熱セット温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.62)を得た。
[比較例1]
加熱筒の温度を250℃、延伸倍率を3.8倍とした以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.46)を得た。
[比較例2]
第1ゴデットローラーの引取速度を1500m/min、延伸倍率を3.1倍とした以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.47)を得た。
[比較例3]
結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミドの重量比を30/70としたこと以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.28)を得た。
[比較例4]
結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミドの重量比を95/5としたこと以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.61)を得た。
[比較例5]
結晶性ポリアミドとして、ポリカプロラクタム(N6)(相対粘度ηr:2.62、融点222℃)とポリヘキサメチレンアジパミド(N66)(相対粘度ηr:2.80、融点263℃)の共重合体で、ポリカプロラクタムとヘキサメチレンアジパミドの共重合比率が85/15の共重合体(相対粘度ηr:2.69、融点:198℃)を用い、非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(相対粘度ηr:2.10、ガラス転移温度:125℃)を用い、延伸温度を室温にしたこと以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.66)を得た。
[比較例6]
結晶性ポリアミドとして、ポリカプロラクタム(N6)(相対粘度ηr:2.62、融点:222℃)と、ナイロンMXD6(三菱ガス化学製、相対粘度ηr:2.70、融点:237℃)を、ポリカプロラクタム/ナイロンMXD6の重量比を50/50として、非晶性ポリアミドを含有せず、延伸温度を90℃、熱セット温度を170℃としたこと以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.66)を得た。
[比較例7]
非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(相対粘度ηr:2.10、ガラス転移温度:125℃)を用い、二軸エクストルーダーを用いて溶融混練し、加熱筒を設置せず、800m/minの第1ゴデットローラーで引き取り、延伸温度120℃で3.3倍に延伸した後に熱セット温度150℃で熱固定した以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.95)を得た。
[比較例8]
非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(相対粘度ηr:2.10、ガラス転移温度:125℃)を用い、二軸エクストルーダーを用いて溶融混練し、加熱筒を設置せず、延伸温度90℃で3.5倍に延伸した後に熱セット温度150℃で熱固定した以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.95)を得た。
[比較例9]
非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(相対粘度ηr:2.10、ガラス転移温度:125℃)を用い、加熱筒を設置せず、延伸温度を室温として3.5倍に延伸した後に熱セット温度150℃で熱固定した以外は、実施例1と同様に紡糸・延伸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条(相対粘度ηr:2.95)を得た。
表1、表2に実施例1〜8、比較例1〜9のポリマー組成と製糸性、紡糸・延伸条件、および原糸特性と混繊糸、織物評価結果を示した。
Figure 0006822210
Figure 0006822210
本発明の実施例1〜8のポリアミド糸条を一部(緯糸)に用いた織物は、仕上げ熱セット工程を経ることで、経糸と緯糸の収縮差によって緯糸が収縮する作用と、緯糸が経糸をひきつれて収縮する作用の相乗効果により優れた収縮を発現し、衣料用に好適なソフト感、ふくらみ感のある高密度な織物が得られた。また実施例1〜8のポリアミド糸条を一部に用いた混繊糸は、熱処理工程を経ることで、芯糸と鞘糸の収縮差によって芯糸が収縮する作用と、芯糸が鞘糸をひきつれて収縮する作用の相乗効果により優れた収縮を発現し、嵩高い混繊糸が得られた。
比較例1では、加熱筒温度が低いために、熱収縮応力(H2)が低く、嵩高性に劣った混繊糸であった。また、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。
比較例2では、第一ゴデットローラーの引取速度が高いために、熱収縮応力(H2)が低く、嵩高性に劣った混繊糸であった。また、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。
比較例3では、非晶性ポリアミドの重量比が多いために、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドが非相溶系となり、熱収縮応力(H1’、H2’)が低く、嵩高性に劣った混繊糸であった。また、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。
比較例4では、非晶性ポリアミドの重量比が少ないために、沸騰水収縮率と熱収縮応力(H1’、H2’)が低く、嵩高性に劣った混繊糸であった。また、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。
比較例5では、結晶性ポリアミドとしてポリカプロラクタム(N6)とポリヘキサメチレンアジパミド(N66)の共重合体を用いており、また延伸温度が低いため、沸騰水収縮率が高く、また、熱収縮応力(H1’、H2’)が低く、嵩高性に劣った混繊糸であった。また、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。
比較例6では、ポリアミド糸条が、結晶性ポリアミドのみで構成されるため、高い熱収縮応力(H1’、H2’)が得られず、嵩高性に劣った混繊糸であった。また、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。
比較例7〜9では、加熱筒を設置していないために、熱収縮応力(H2’)が低く、嵩高性に劣った混繊糸であった。また、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。

Claims (4)

  1. 沸騰水収縮率が20〜50%、温度70〜100℃での最大熱収縮応力(H1)が0.20cN/dtex以上、温度130〜160℃での最大熱収縮応力(H2)が0.20cN/dtex以上であることを特徴とする高収縮性ポリアミド繊維。
  2. 温度70〜100℃での熱収縮応力の最大値(H1)と温度130〜160℃での熱収縮応力の最大値(H2)がH1<H2の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の高収縮性ポリアミド繊維。
  3. 混繊糸の一部に請求項1または2に記載の高収縮性ポリアミド繊維を用いることを特徴とする混繊糸。
  4. 織編物の一部に請求項1または2に記載の高収縮性ポリアミド繊維および/または請求項3に記載の混繊糸を用いることを特徴とする織編物。
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