JP2004244736A - 靴下 - Google Patents
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Abstract
【課題】伸長率、伸長回復率に優れ、かつ洗濯時の乾燥機対応を可能とした靴下を提供する。
【解決手段】複数のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを含み、タテおよびヨコ方向の平均伸長率LAが70%以上、平均伸長回復率LBが60%以上である編地からなり、かつ洗濯後の乾燥機使用(JIS 103法、70℃、40分設定、10回繰り返し)によるタテおよびヨコ方向の平均収縮が10%以下である靴下。
ここで、LA=100×(L1−L)/L
LB=100×(L1−L2)/L1
L:つかみ間隔(mm)、L1:編地の伸び、L2:編地の歪み伸び
【選択図】図1
【解決手段】複数のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを含み、タテおよびヨコ方向の平均伸長率LAが70%以上、平均伸長回復率LBが60%以上である編地からなり、かつ洗濯後の乾燥機使用(JIS 103法、70℃、40分設定、10回繰り返し)によるタテおよびヨコ方向の平均収縮が10%以下である靴下。
ここで、LA=100×(L1−L)/L
LB=100×(L1−L2)/L1
L:つかみ間隔(mm)、L1:編地の伸び、L2:編地の歪み伸び
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、靴下に関する。さらに詳しくは、優れたストレッチ性、回復性、および乾燥機による乾燥時にも収縮をおさえることができ形態を安定させうる靴下に関する。
【0002】
【従来の技術】
靴下には、ハイソックス、通常丈、ショート、スーパーショートなど形態の面、天竺、リブ、ジャガード、スムースなど編組織の面、そして無地、アーガイル、刺繍などデザインの面を組み合わせることにより、非常に多くの種類が存在する。
【0003】
これらの靴下は、身体に適度にフィットし、身体を過度に締め付けず、脱ぎ履きし易く、かつずり落ちを防ぐことのできる、優れたストレッチ性と回復性が要求される。
【0004】
編物は、織物に比べて、その生地構造上からストレッチ性を出しやすく、身体への適度なフィット性、脱ぎ履きし易い、かつずり落ちを防げることから、ほとんどの靴下に使用されている。
【0005】
高いストレッチ性と回復性を得るために、スパンデックスと呼ばれるポリウレタン系弾性繊維をナイロン繊維、ポリエステル繊維でカバーリングした糸を使用し、綿糸、アクリル糸、ウール糸、あるいは綿アクリル糸などの混紡糸類と交編した編地を用いて靴下とすることが行われている。
【0006】
しかし、ポリウレタン弾性繊維は高いストレッチ性を有するものの、これを混用した場合、ポリウレタン固有の性質として熱による過度の収縮を発生し、特に近年普及した乾燥機による過酷な乾燥では、大きな縮みを生じさせるとともに編地表面の荒れ、ひいては靴下表面の荒れが生じるという問題が発生する場合がある。また、ポリウレタン弾性繊維の製造費は非常に高いものである。
【0007】
ポリエステル繊維またはナイロン繊維等に仮撚加工を施し、可撚/解撚によるトルクを発現させた繊維を混用することによってストレッチ性を付与する方法が一般的に行われている。しかしながら、従来からのストレッチ性の範囲内にとどまるものである。
【0008】
また、ポリブチレンテレフタレート繊維を混用する方法も採られてきた。しかしながら、この繊維を用いた場合でも、未だ十分に満足されるストレッチ性をもつ靴下を得ることができていない。
【0009】
一方、異種のポリエステル重合体がサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを構成糸とするストレッチ性に優れた編地(特許文献1参照)や肌着(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、洗濯乾燥による収縮については何ら考慮されていない。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−295165号公報
【0011】
【特許文献2】
特開2002−69707号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したかかる従来技術の問題点を解決し、耐熱収縮性を維持しながら優れたストレッチ性および回復性に優れ、さらに乾燥時の収縮を抑えられる靴下を提供すること、およびかかる靴下を低コストで提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の構成を採用する。
【0014】
すなわち、複数のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを含み、タテおよびヨコ方向の平均伸長率が70%以上、平均伸長回復率が60%以上である編地からなり、かつ洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、70℃×40分・10回繰り返し)によるタテおよびヨコ方向の平均収縮が10%以下の靴下である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の靴下用の編地は、複数のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを構成糸に含むものである。
【0016】
サイドバイサイド型の複合繊維は、ポリマの種類や固有粘度、共重合成分、共重合率等が重なるポリエステル重合体を貼り合わせ、それらの弾性回復率や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものである。粘弾性が異なるポリマの組み合わせの場合、紡糸、延伸時に高粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および染色時の熱処理工程での熱収縮率差により高粘度側が収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単位繊維長あたりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まるといってよく、大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長あたりのコイル数が多くなる。
【0017】
靴下用ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長あたりのコイル数が多い(=伸長特性に優れる)、コイルの耐ヘタリ性が良い(=伸長回復に応じたコイルのヘタリ量が小さく、ストレッチ保持性に優れる)、さらにはコイルの伸長回復時におけるヒステリシスロスが小さい(=弾発性に優れ、フィット感が良い)などである。このコイルの直径は250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0018】
これらの要求を満足しつつ、ポリエステルとしての特性、例えば形態の安定性、熱収縮耐性強さ、高染色堅牢性を有することで、トータルバランスに優れたストレッチ素材からなる靴下とすることが出来る。ここで前記のコイル特性を満足するためには、高収縮成分(高粘度成分)の特性が必要となる。コイルの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性回復特性が要求される。
【0019】
そこで本発明者らはポリエステルの特性を損なうことなく前記特性を満足させるために鋭意検討した結果、高収縮成分にポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略記する)を主体としたポリエステルを用いるのが好ましいことを見出した。PTT繊維は代表的なポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)やポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記する)と同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性に極めて優れている。これはPTTの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシューゴーシュの構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためだと考えている。
【0020】
ここでPTTとは、テレフタール酸を主たる成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし20モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボル酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール類を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナなどの微粒子、抗酸化剤としてのヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0021】
また、低収縮成分には高収縮成分であるPTTとの界面接着性が良好で、製糸性が安定している繊維形成性ポリエステルであれば特に限定されるものではないが、力学的特性、化学的特性および原料価格を考慮すると、繊維形成性のあるPTT、PET、PBTが好ましい。すなわち、サイドバイサイド型に貼り合わせるポリエステル重合体は、製糸された後の弾性回復率や収縮特性などが各成分間で異なる複数のポリエステル重合体が貼り合わされていればよいので、PPT同士、PET同士またはPBT同士であっても、それらの固有粘度、共重合成分の有無、共重合の組成などが異なるものを貼り合わせても構わない。また、言うまでもなく、PPT/PET、PPT/PBTまたはPET/PBTというように異種のポリエステル重合体を貼り合わせてもよい。
【0022】
PTTの紡糸温度における溶融粘度は、もう一方の低収縮成分の紡糸温度における溶融粘度の1.0〜5.0倍が望ましい。1.0倍以上、好ましくは1.1倍以上とすることで、紡糸の繊維形成時においてPTTがより大きな紡糸応力を受け、より強い捲縮発現能力を得ることが出来る。一方、5.0倍以下、好ましくは4.0倍以下とすることで、複合形態の制御が容易となり、また口金下の吐出ポリマの曲がりも紡糸に問題のない程度に抑えることが出来る。
【0023】
サイドバイサイド型複合繊維の複合比率は、製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲が好ましく、65:35〜45:55(重量%)の範囲がより好ましい。
【0024】
サイドバイサイド型複合繊維の繊維断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、扁平断面、ダルマ型断面、C型断面、M型断面、X型断面、W型断面、I型断面、十字型断面を用いることができるが、捲縮発現性と風合いのバランスからは図2に示すような丸断面の半円状サイドバイサイド(a)、軽量性、保温性を狙う靴下の場合は中空サイドバイサイド(d)、ドライ風合いを狙う場合は三角断面サイドバイサイド(g)が好ましく用いられる。
【0025】
サイドバイサイド型複合繊維は、単繊維繊度が0.1〜22デシテックス、総繊維繊度が22〜330デシテックスのフィラメント糸条から構成されることが好ましい。
【0026】
単繊維繊度を22デシテックス以下とすることで、編地の風合いとしてソフト性を有するものとし、靴下としてチクチク感もなく好ましく使用することができる。また0.1デシテックス以上、更に好ましくは1.1デシテックス以上とすることで複合製糸が良好となり、また、捲縮構造が反映され、良好なストレッチ性も得ることが出来る。
【0027】
編地の構成糸に対するサイドバイサイド型複合繊維の混率は、1重量%以上とすることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。混率1重量%未満の場合は、後述する靴下用の編地のタテ及びヨコ方向の平均伸長率、および平均伸長回復率について良好な特性を得ることができにくくなる。サイドバイサイド型複合繊維の編地への混用方法としては、他の素材との通常の交編、交撚、引き揃え、カバーリング、混繊などを採用することができ、靴下種別の狙い用途、編地形成方法、編組織などに応じて適宜使い分ければよい。
【0028】
他の素材としては、合成繊維であるポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、もしくは半合成繊維であるアセテート系繊維もしくは再生繊維であるビスコース・レーヨン、キュプラを含むセルロース系繊維、牛乳蛋白繊維、大豆蛋白繊維を含む蛋白質系繊維、ポリ乳酸系繊維、もしくはこれらのフィラメント糸条使いや紡績糸使い、または混紡糸使い、もしくは綿、麻を含む植物系天然繊維、もしくは羊毛、カシミヤ、絹を含む動物系天然繊維、またはこれらの混紡糸使いがある。
【0029】
本発明の靴下に用いる編地は、従来のようにポリウレタン系弾性繊維を混用せずとも優れた伸長率および伸長回復率を得ることができることに特徴があるが、例えば靴下の最上部部分などの一部分にずり落ちを防ぐためなどの目的でポリウレタン系弾性繊維を混用してもよい。
【0030】
本発明の靴下に用いる編地は、かかとと爪先部分を成形編できる小径の丸編機である靴下編機により、狙い靴下種に応じてシングルシリンダ式およびダブルシリンダ式編機などの各種専用編機にて製造できる。編組織は天竺、リブ、鹿の子、メッシュ、ジャガード、パイルなどの靴下として使用されている編組織のものが適用される。編地は、密度が4〜60ウエル/インチおよび5〜96コース/インチでかつ目付けが10〜150g/一足(1ペア)であることが好ましい。編地の密度を4ウエル/インチ以上および5コース/インチ以上とすることで、靴下としての強度低下や目ヨレの発生などがなくなり、また製編成もよくなる。また密度が60ウエル/インチ以下および96コース/インチ以下とすることで編地の風合いが硬くならず、軽量感を損なうことなく、さらに製編成も良好となり好ましい。
【0031】
靴下の目付けは、10g/一足(1ペア)以上とすることで、機械強度のある靴下となり、150g/一足(1ペア)以下とすることで、靴下の風合いが硬くならず、重く感じたり、動き易さが妨げられず、着用性も良好である。
【0032】
靴下の製造工程には糸の時点で染色加工をおこなう場合と、製編された生地段階にて染色をおこなう場合があるが、どちらの場合においてもサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維が染色工程においてその捲縮発現性を十分に発揮できるように、条件設定すればよい。
【0033】
糸状態での染色の場合は染色ボビンにサイドバイサイド型に張り合わされた複合繊維を巻き取る際に、通常糸使いの巻き取り条件に比較して張力を弱くし、巻き取った糸の密度を粗くすることが望ましい。これによってサイドバイサイド型に張り合わされた複合繊維が染色工程を通ることで、その捲縮発現性が十分に発揮され、優れたストレッチ性と伸長回復率を持つ染糸を得ることが出来る。
【0034】
生地状態での染色の場合は、編成条件を通常糸使いの編成条件よりループ長やランナー長を若干大きめに取り、編密度を粗くすることが望ましい。このことにより、サイドバイサイド型に張り合わされた複合繊維が染色加工工程を通ることで、その捲縮発現性が十分に発揮され優れたストレッチ性と伸長回復率をもった編地を得ることができる。
【0035】
本発明の靴下を構成する編地は、タテおよびヨコ方向の平均伸長率が70%以上、タテおよびヨコ方向の平均伸長回復率が60%以上であることが重要である。
【0036】
平均伸長率および平均伸長回復率は実施例に示す方法で測定することが出来るが、伸長率とは、編地の伸びの程度を表すものであり、この数値が大きい程、靴下にして着用する際に履き易く、動きやすく、疲れ難い。また伸長回復率とは身体の動きで伸長した編地が、素早く元の状態に戻ろうとする回復程度を表すものであり、この数値が大きい程、靴下として着用した際に、よりフィット性に富み、動きやすく、かつずり落ちしない。
【0037】
この伸長率と伸長回復率は編地のタテ方向とヨコ方向の各々の数値を平均して考える必要がある。これは、靴下にして実際着用して動く場合、編地のタテ方向あるいはヨコ方向の一方向のみ伸長されるわけではなく、人間の身体の凹凸・稼動範囲にあわせて三次元的に編地が伸長されるためである。この三次元的な伸長特性が編地のタテ方向とヨコ方向の平均した伸長率である平均伸長率、および平均伸長回復率と相関し、よく一致するものである。
【0038】
本発明の靴下を構成する編地の平均伸長率は70%以上であることが重要であり、それ未満であると、靴下として着用する際に履きづらく、また締め付けにより疲れ易いものとなる。平均伸長率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0039】
また、本発明の靴下を構成する編地のタテ方向およびヨコ方向の平均伸長回復率は60%以上であることが重要であり、それ未満であると動きにより伸長された編地が伸ばされた状態となり、身体へのフィット感に劣ることから、ずり落ちなど着用快適性に劣るものとなる。
【0040】
さらに、本発明の靴下は、洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、70℃、40分設定、10回繰り返し)によるタテおよびヨコ方向の平均収縮が10%以下であることが重要である。平均収縮が10%を超えるものは、洗濯により靴下の形態が保持できず、繰り返しの使用に耐えなくなる。
【0041】
本発明の靴下は適宜選択することにより、ハイソックス、通常丈、ショート、スーパーショートなど形の面、天竺、リブ、ジャガード、スムースなど編組織の面、無地、アーガイル、刺繍などデザインの面の組み合わせにより、ほとんど無数の種類が存在する靴下のあらゆる分野において好ましく使用できる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例における各評価は次のとおり行った。
(1)溶融粘度
東洋精機(株)社製キャピログラフ1Bを用いて、窒素雰囲気下で測定した。実施例中に示す温度(実施例1においては275℃)を測定温度とし、歪み速度6080sec−1での測定を3回行い、平均値を溶融粘度とした。
(2)平均伸長率
伸長率の試験方法は、JIS L1018「メリヤス生地試験方法」の定速伸長法のグラブ法に準じて行った。すなわち、10cm×15cmの試験片をタテ、ヨコ方向にそれぞれ3枚ずつ採取した。次に自記記録装置付定速伸長形引張試験機を用い、上下つかみとも表側は2.54cm×2.54cm、裏側は2.54cm×5.08cmのものを取り付け、つかみ間隔を7.6cmとして試験片のたるみや、張力を除いてつかみに固定した。これを引張速度10cm/minで17.7N(1.8kg)荷重まで引伸ばし、その時のつかみ間隔を測った。その後、直ちに荷重を取り除く方向へ元のつかみ間隔である7.6cmまで戻した。この荷重−除重による挙動を自記記録計に荷重−伸長−回復曲線として描いた(図1を参照)。これを基に、次の式により伸長率LA(%)を求め、3枚の平均値で表した。
【0043】
伸長率LA(%)=100×[(L1−L)/L]
ここで、L:つかみ間隔(mm)
L1:17.7Nまで伸ばした時のつかみ間隔(mm)
編地のタテ方向、ヨコ方向の各々についての伸長率を加算し、さらにその加算値を1/2にして平均伸長率とした。
(3)平均伸長回復率
伸長回復率LB(%)は、前記自記記録計で描いた荷重−伸長−回復曲線を基に、回復曲線がゼロ荷重になった時の伸びL2(mm)を求め、前述のL1(mm)からそのL2(mm)を引くことにより回復伸びL3(mm)を求め、次の式により伸長回復率LB(%)を算出し、3枚の平均値で表した。
【0044】
伸長回復率LB(%)=100×(L3/L1)
ここで、L3=L1−L2
編地タテ方向、ヨコ方向の各々についての伸長回復率を加算し、さらにその加算値を1/2にして平均伸長回復率とした。
(4)着用評価(着用時の履き易さ、動き易さ、ずり落ち状態)
それぞれの編地で靴下の代表的品種であるアーガイルソックスを作成し20℃×65%RHの室内で成人男性3名の被験者が靴下を履き、その後その上に靴を着用した状態でトレッドミルを使い時速5kmの歩行を10分間行った。その後の被験者の自己申告で着用評価(着用時の履き易さ、動き易さ、ずり落ち状態)を次の3段階評価で行った。
<判定表示>
着用時の履き易さ
○:履き易い、△:普通、×:履きにくい
動き易さ
○:動き易い・快適、△:普通、×:うごきにくい・きゅうくつ
ずり落ち
○:ずり落ちしない、△:普通・多少ずり落ちする、×:大きくずり落ちする
(5)総合評価
次のように3段階表示した。
【0045】
判定表示
○:靴下として優れる、△:靴下として問題はない、×:靴下として劣る
[実施例1]
固有粘度(IV)が1.40、275℃における溶融粘度が750poiseのホモPTTと固有粘度(IV)が0.60、275℃における溶融粘度が650poiseのホモPETをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度275℃で72孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1400m/分で引取り、サイドバイサイド型複合構造未延伸糸を得た。さらにホットロール−熱板系延伸機を用いて延伸し、次いで一旦引き取ることなく連続してリラックスして巻き取り、84デシテックス36フィラメントの延伸糸を得た(繊維断面は図2のa)。
【0046】
8ゲージアーガイル編機(手回し天竺機)にて、綿70%、アクリル30%混紡の紡績糸32s×6本引き揃えの糸と同時に上記のPTT/PETのサイドバイサイド複合フィラメント糸を挿入し、綿60%、アクリル25%、PTT/PETサイドバイサイド複合フィラメント糸15%の靴下編地を編成した。
【0047】
この編地を通常の靴下製品加工方法にしたがい、リンキング(靴下先端部分のかがり)、補強、熱セットなどを行い60g/1足(1ペア)密度14ウエル、22コースの靴下製品を得た。得られた編地は平均伸長率が92%、平均伸長回復率が61%とストレッチ特性に優れたものであった。またこの靴下製品の着用評価結果も、履き易さ・動き易さ・ずり落ち難いという点で靴下製品として優れていると判断されるものであった。また、洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、タンブル70℃×40分・10回繰り返し)による収縮も5%と優れたデータを示した。詳細結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同じ編機を用い、綿70%、アクリル30%混紡の紡績糸32s×6本引き揃えの糸と同時に、ポリウレタン20デニールにナイロン70デニールを巻きつけたフィラメントツイストヤーンを挿入し、綿60%、アクリル25%、ナイロン14%、ポリウレタン1%の靴下編地を作製した。
【0048】
この編地を実施例1と同一の靴下製品加工を行い、60g/1足(1ペア)、14ウエル、22コースの靴下製品を得た。得た編地はタテおよびヨコの平均伸長率が139%、平均伸長回復率が62%であるものの、洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、タンブル70℃×40分・10回繰り返し)による収縮が13%と洗濯による収縮が大きく問題があった。また、靴下表面の荒れも激しく、見た目に劣るものであった。詳細結果を表1に併せて示す。
[比較例2]
実施例1と同じ編機を用い、綿70%、アクリル30%混紡の紡績糸32s×6本引き揃えの糸のみで、綿70%、アクリル30%の靴下編地を作成した。
【0049】
この編地を実施例1と同一の靴下製品加工を行い、60g/1足(1ペア)、12ウエル、18コースの靴下製品を得た。得られた編地はタテおよびヨコの平均伸長率が61%、平均伸長回復率が55%であり、ストレッチ特性に劣るものであった。また洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、タンブル70℃×40分・10回繰り返し)による収縮も11%と大きく、問題があった。詳細結果を表1に併せて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
本発明の靴下は、従来の靴下に比べ、伸長率、伸長回復率に優れ、かつ、洗濯後の乾燥機使用による収縮、表面の荒れも非常に少ないという機能性も持ち、幅広い分野に適用できるものであり、効率良く低コストで製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】荷重−伸長回復曲線の説明図である。
【図2】本発明に使用する繊維の繊維横断面形状の一例を示すモデル図である。
【符号の説明】
L1:編地の伸び
L2:編地の歪み伸び
L3:編地の回復伸び
a〜g:繊維横断面形状
【発明の属する技術分野】
本発明は、靴下に関する。さらに詳しくは、優れたストレッチ性、回復性、および乾燥機による乾燥時にも収縮をおさえることができ形態を安定させうる靴下に関する。
【0002】
【従来の技術】
靴下には、ハイソックス、通常丈、ショート、スーパーショートなど形態の面、天竺、リブ、ジャガード、スムースなど編組織の面、そして無地、アーガイル、刺繍などデザインの面を組み合わせることにより、非常に多くの種類が存在する。
【0003】
これらの靴下は、身体に適度にフィットし、身体を過度に締め付けず、脱ぎ履きし易く、かつずり落ちを防ぐことのできる、優れたストレッチ性と回復性が要求される。
【0004】
編物は、織物に比べて、その生地構造上からストレッチ性を出しやすく、身体への適度なフィット性、脱ぎ履きし易い、かつずり落ちを防げることから、ほとんどの靴下に使用されている。
【0005】
高いストレッチ性と回復性を得るために、スパンデックスと呼ばれるポリウレタン系弾性繊維をナイロン繊維、ポリエステル繊維でカバーリングした糸を使用し、綿糸、アクリル糸、ウール糸、あるいは綿アクリル糸などの混紡糸類と交編した編地を用いて靴下とすることが行われている。
【0006】
しかし、ポリウレタン弾性繊維は高いストレッチ性を有するものの、これを混用した場合、ポリウレタン固有の性質として熱による過度の収縮を発生し、特に近年普及した乾燥機による過酷な乾燥では、大きな縮みを生じさせるとともに編地表面の荒れ、ひいては靴下表面の荒れが生じるという問題が発生する場合がある。また、ポリウレタン弾性繊維の製造費は非常に高いものである。
【0007】
ポリエステル繊維またはナイロン繊維等に仮撚加工を施し、可撚/解撚によるトルクを発現させた繊維を混用することによってストレッチ性を付与する方法が一般的に行われている。しかしながら、従来からのストレッチ性の範囲内にとどまるものである。
【0008】
また、ポリブチレンテレフタレート繊維を混用する方法も採られてきた。しかしながら、この繊維を用いた場合でも、未だ十分に満足されるストレッチ性をもつ靴下を得ることができていない。
【0009】
一方、異種のポリエステル重合体がサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを構成糸とするストレッチ性に優れた編地(特許文献1参照)や肌着(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、洗濯乾燥による収縮については何ら考慮されていない。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−295165号公報
【0011】
【特許文献2】
特開2002−69707号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したかかる従来技術の問題点を解決し、耐熱収縮性を維持しながら優れたストレッチ性および回復性に優れ、さらに乾燥時の収縮を抑えられる靴下を提供すること、およびかかる靴下を低コストで提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の構成を採用する。
【0014】
すなわち、複数のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを含み、タテおよびヨコ方向の平均伸長率が70%以上、平均伸長回復率が60%以上である編地からなり、かつ洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、70℃×40分・10回繰り返し)によるタテおよびヨコ方向の平均収縮が10%以下の靴下である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の靴下用の編地は、複数のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを構成糸に含むものである。
【0016】
サイドバイサイド型の複合繊維は、ポリマの種類や固有粘度、共重合成分、共重合率等が重なるポリエステル重合体を貼り合わせ、それらの弾性回復率や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものである。粘弾性が異なるポリマの組み合わせの場合、紡糸、延伸時に高粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および染色時の熱処理工程での熱収縮率差により高粘度側が収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単位繊維長あたりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まるといってよく、大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長あたりのコイル数が多くなる。
【0017】
靴下用ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長あたりのコイル数が多い(=伸長特性に優れる)、コイルの耐ヘタリ性が良い(=伸長回復に応じたコイルのヘタリ量が小さく、ストレッチ保持性に優れる)、さらにはコイルの伸長回復時におけるヒステリシスロスが小さい(=弾発性に優れ、フィット感が良い)などである。このコイルの直径は250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0018】
これらの要求を満足しつつ、ポリエステルとしての特性、例えば形態の安定性、熱収縮耐性強さ、高染色堅牢性を有することで、トータルバランスに優れたストレッチ素材からなる靴下とすることが出来る。ここで前記のコイル特性を満足するためには、高収縮成分(高粘度成分)の特性が必要となる。コイルの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性回復特性が要求される。
【0019】
そこで本発明者らはポリエステルの特性を損なうことなく前記特性を満足させるために鋭意検討した結果、高収縮成分にポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略記する)を主体としたポリエステルを用いるのが好ましいことを見出した。PTT繊維は代表的なポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)やポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記する)と同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性に極めて優れている。これはPTTの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシューゴーシュの構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためだと考えている。
【0020】
ここでPTTとは、テレフタール酸を主たる成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし20モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボル酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール類を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナなどの微粒子、抗酸化剤としてのヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0021】
また、低収縮成分には高収縮成分であるPTTとの界面接着性が良好で、製糸性が安定している繊維形成性ポリエステルであれば特に限定されるものではないが、力学的特性、化学的特性および原料価格を考慮すると、繊維形成性のあるPTT、PET、PBTが好ましい。すなわち、サイドバイサイド型に貼り合わせるポリエステル重合体は、製糸された後の弾性回復率や収縮特性などが各成分間で異なる複数のポリエステル重合体が貼り合わされていればよいので、PPT同士、PET同士またはPBT同士であっても、それらの固有粘度、共重合成分の有無、共重合の組成などが異なるものを貼り合わせても構わない。また、言うまでもなく、PPT/PET、PPT/PBTまたはPET/PBTというように異種のポリエステル重合体を貼り合わせてもよい。
【0022】
PTTの紡糸温度における溶融粘度は、もう一方の低収縮成分の紡糸温度における溶融粘度の1.0〜5.0倍が望ましい。1.0倍以上、好ましくは1.1倍以上とすることで、紡糸の繊維形成時においてPTTがより大きな紡糸応力を受け、より強い捲縮発現能力を得ることが出来る。一方、5.0倍以下、好ましくは4.0倍以下とすることで、複合形態の制御が容易となり、また口金下の吐出ポリマの曲がりも紡糸に問題のない程度に抑えることが出来る。
【0023】
サイドバイサイド型複合繊維の複合比率は、製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲が好ましく、65:35〜45:55(重量%)の範囲がより好ましい。
【0024】
サイドバイサイド型複合繊維の繊維断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、扁平断面、ダルマ型断面、C型断面、M型断面、X型断面、W型断面、I型断面、十字型断面を用いることができるが、捲縮発現性と風合いのバランスからは図2に示すような丸断面の半円状サイドバイサイド(a)、軽量性、保温性を狙う靴下の場合は中空サイドバイサイド(d)、ドライ風合いを狙う場合は三角断面サイドバイサイド(g)が好ましく用いられる。
【0025】
サイドバイサイド型複合繊維は、単繊維繊度が0.1〜22デシテックス、総繊維繊度が22〜330デシテックスのフィラメント糸条から構成されることが好ましい。
【0026】
単繊維繊度を22デシテックス以下とすることで、編地の風合いとしてソフト性を有するものとし、靴下としてチクチク感もなく好ましく使用することができる。また0.1デシテックス以上、更に好ましくは1.1デシテックス以上とすることで複合製糸が良好となり、また、捲縮構造が反映され、良好なストレッチ性も得ることが出来る。
【0027】
編地の構成糸に対するサイドバイサイド型複合繊維の混率は、1重量%以上とすることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。混率1重量%未満の場合は、後述する靴下用の編地のタテ及びヨコ方向の平均伸長率、および平均伸長回復率について良好な特性を得ることができにくくなる。サイドバイサイド型複合繊維の編地への混用方法としては、他の素材との通常の交編、交撚、引き揃え、カバーリング、混繊などを採用することができ、靴下種別の狙い用途、編地形成方法、編組織などに応じて適宜使い分ければよい。
【0028】
他の素材としては、合成繊維であるポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、もしくは半合成繊維であるアセテート系繊維もしくは再生繊維であるビスコース・レーヨン、キュプラを含むセルロース系繊維、牛乳蛋白繊維、大豆蛋白繊維を含む蛋白質系繊維、ポリ乳酸系繊維、もしくはこれらのフィラメント糸条使いや紡績糸使い、または混紡糸使い、もしくは綿、麻を含む植物系天然繊維、もしくは羊毛、カシミヤ、絹を含む動物系天然繊維、またはこれらの混紡糸使いがある。
【0029】
本発明の靴下に用いる編地は、従来のようにポリウレタン系弾性繊維を混用せずとも優れた伸長率および伸長回復率を得ることができることに特徴があるが、例えば靴下の最上部部分などの一部分にずり落ちを防ぐためなどの目的でポリウレタン系弾性繊維を混用してもよい。
【0030】
本発明の靴下に用いる編地は、かかとと爪先部分を成形編できる小径の丸編機である靴下編機により、狙い靴下種に応じてシングルシリンダ式およびダブルシリンダ式編機などの各種専用編機にて製造できる。編組織は天竺、リブ、鹿の子、メッシュ、ジャガード、パイルなどの靴下として使用されている編組織のものが適用される。編地は、密度が4〜60ウエル/インチおよび5〜96コース/インチでかつ目付けが10〜150g/一足(1ペア)であることが好ましい。編地の密度を4ウエル/インチ以上および5コース/インチ以上とすることで、靴下としての強度低下や目ヨレの発生などがなくなり、また製編成もよくなる。また密度が60ウエル/インチ以下および96コース/インチ以下とすることで編地の風合いが硬くならず、軽量感を損なうことなく、さらに製編成も良好となり好ましい。
【0031】
靴下の目付けは、10g/一足(1ペア)以上とすることで、機械強度のある靴下となり、150g/一足(1ペア)以下とすることで、靴下の風合いが硬くならず、重く感じたり、動き易さが妨げられず、着用性も良好である。
【0032】
靴下の製造工程には糸の時点で染色加工をおこなう場合と、製編された生地段階にて染色をおこなう場合があるが、どちらの場合においてもサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維が染色工程においてその捲縮発現性を十分に発揮できるように、条件設定すればよい。
【0033】
糸状態での染色の場合は染色ボビンにサイドバイサイド型に張り合わされた複合繊維を巻き取る際に、通常糸使いの巻き取り条件に比較して張力を弱くし、巻き取った糸の密度を粗くすることが望ましい。これによってサイドバイサイド型に張り合わされた複合繊維が染色工程を通ることで、その捲縮発現性が十分に発揮され、優れたストレッチ性と伸長回復率を持つ染糸を得ることが出来る。
【0034】
生地状態での染色の場合は、編成条件を通常糸使いの編成条件よりループ長やランナー長を若干大きめに取り、編密度を粗くすることが望ましい。このことにより、サイドバイサイド型に張り合わされた複合繊維が染色加工工程を通ることで、その捲縮発現性が十分に発揮され優れたストレッチ性と伸長回復率をもった編地を得ることができる。
【0035】
本発明の靴下を構成する編地は、タテおよびヨコ方向の平均伸長率が70%以上、タテおよびヨコ方向の平均伸長回復率が60%以上であることが重要である。
【0036】
平均伸長率および平均伸長回復率は実施例に示す方法で測定することが出来るが、伸長率とは、編地の伸びの程度を表すものであり、この数値が大きい程、靴下にして着用する際に履き易く、動きやすく、疲れ難い。また伸長回復率とは身体の動きで伸長した編地が、素早く元の状態に戻ろうとする回復程度を表すものであり、この数値が大きい程、靴下として着用した際に、よりフィット性に富み、動きやすく、かつずり落ちしない。
【0037】
この伸長率と伸長回復率は編地のタテ方向とヨコ方向の各々の数値を平均して考える必要がある。これは、靴下にして実際着用して動く場合、編地のタテ方向あるいはヨコ方向の一方向のみ伸長されるわけではなく、人間の身体の凹凸・稼動範囲にあわせて三次元的に編地が伸長されるためである。この三次元的な伸長特性が編地のタテ方向とヨコ方向の平均した伸長率である平均伸長率、および平均伸長回復率と相関し、よく一致するものである。
【0038】
本発明の靴下を構成する編地の平均伸長率は70%以上であることが重要であり、それ未満であると、靴下として着用する際に履きづらく、また締め付けにより疲れ易いものとなる。平均伸長率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0039】
また、本発明の靴下を構成する編地のタテ方向およびヨコ方向の平均伸長回復率は60%以上であることが重要であり、それ未満であると動きにより伸長された編地が伸ばされた状態となり、身体へのフィット感に劣ることから、ずり落ちなど着用快適性に劣るものとなる。
【0040】
さらに、本発明の靴下は、洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、70℃、40分設定、10回繰り返し)によるタテおよびヨコ方向の平均収縮が10%以下であることが重要である。平均収縮が10%を超えるものは、洗濯により靴下の形態が保持できず、繰り返しの使用に耐えなくなる。
【0041】
本発明の靴下は適宜選択することにより、ハイソックス、通常丈、ショート、スーパーショートなど形の面、天竺、リブ、ジャガード、スムースなど編組織の面、無地、アーガイル、刺繍などデザインの面の組み合わせにより、ほとんど無数の種類が存在する靴下のあらゆる分野において好ましく使用できる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例における各評価は次のとおり行った。
(1)溶融粘度
東洋精機(株)社製キャピログラフ1Bを用いて、窒素雰囲気下で測定した。実施例中に示す温度(実施例1においては275℃)を測定温度とし、歪み速度6080sec−1での測定を3回行い、平均値を溶融粘度とした。
(2)平均伸長率
伸長率の試験方法は、JIS L1018「メリヤス生地試験方法」の定速伸長法のグラブ法に準じて行った。すなわち、10cm×15cmの試験片をタテ、ヨコ方向にそれぞれ3枚ずつ採取した。次に自記記録装置付定速伸長形引張試験機を用い、上下つかみとも表側は2.54cm×2.54cm、裏側は2.54cm×5.08cmのものを取り付け、つかみ間隔を7.6cmとして試験片のたるみや、張力を除いてつかみに固定した。これを引張速度10cm/minで17.7N(1.8kg)荷重まで引伸ばし、その時のつかみ間隔を測った。その後、直ちに荷重を取り除く方向へ元のつかみ間隔である7.6cmまで戻した。この荷重−除重による挙動を自記記録計に荷重−伸長−回復曲線として描いた(図1を参照)。これを基に、次の式により伸長率LA(%)を求め、3枚の平均値で表した。
【0043】
伸長率LA(%)=100×[(L1−L)/L]
ここで、L:つかみ間隔(mm)
L1:17.7Nまで伸ばした時のつかみ間隔(mm)
編地のタテ方向、ヨコ方向の各々についての伸長率を加算し、さらにその加算値を1/2にして平均伸長率とした。
(3)平均伸長回復率
伸長回復率LB(%)は、前記自記記録計で描いた荷重−伸長−回復曲線を基に、回復曲線がゼロ荷重になった時の伸びL2(mm)を求め、前述のL1(mm)からそのL2(mm)を引くことにより回復伸びL3(mm)を求め、次の式により伸長回復率LB(%)を算出し、3枚の平均値で表した。
【0044】
伸長回復率LB(%)=100×(L3/L1)
ここで、L3=L1−L2
編地タテ方向、ヨコ方向の各々についての伸長回復率を加算し、さらにその加算値を1/2にして平均伸長回復率とした。
(4)着用評価(着用時の履き易さ、動き易さ、ずり落ち状態)
それぞれの編地で靴下の代表的品種であるアーガイルソックスを作成し20℃×65%RHの室内で成人男性3名の被験者が靴下を履き、その後その上に靴を着用した状態でトレッドミルを使い時速5kmの歩行を10分間行った。その後の被験者の自己申告で着用評価(着用時の履き易さ、動き易さ、ずり落ち状態)を次の3段階評価で行った。
<判定表示>
着用時の履き易さ
○:履き易い、△:普通、×:履きにくい
動き易さ
○:動き易い・快適、△:普通、×:うごきにくい・きゅうくつ
ずり落ち
○:ずり落ちしない、△:普通・多少ずり落ちする、×:大きくずり落ちする
(5)総合評価
次のように3段階表示した。
【0045】
判定表示
○:靴下として優れる、△:靴下として問題はない、×:靴下として劣る
[実施例1]
固有粘度(IV)が1.40、275℃における溶融粘度が750poiseのホモPTTと固有粘度(IV)が0.60、275℃における溶融粘度が650poiseのホモPETをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度275℃で72孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1400m/分で引取り、サイドバイサイド型複合構造未延伸糸を得た。さらにホットロール−熱板系延伸機を用いて延伸し、次いで一旦引き取ることなく連続してリラックスして巻き取り、84デシテックス36フィラメントの延伸糸を得た(繊維断面は図2のa)。
【0046】
8ゲージアーガイル編機(手回し天竺機)にて、綿70%、アクリル30%混紡の紡績糸32s×6本引き揃えの糸と同時に上記のPTT/PETのサイドバイサイド複合フィラメント糸を挿入し、綿60%、アクリル25%、PTT/PETサイドバイサイド複合フィラメント糸15%の靴下編地を編成した。
【0047】
この編地を通常の靴下製品加工方法にしたがい、リンキング(靴下先端部分のかがり)、補強、熱セットなどを行い60g/1足(1ペア)密度14ウエル、22コースの靴下製品を得た。得られた編地は平均伸長率が92%、平均伸長回復率が61%とストレッチ特性に優れたものであった。またこの靴下製品の着用評価結果も、履き易さ・動き易さ・ずり落ち難いという点で靴下製品として優れていると判断されるものであった。また、洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、タンブル70℃×40分・10回繰り返し)による収縮も5%と優れたデータを示した。詳細結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同じ編機を用い、綿70%、アクリル30%混紡の紡績糸32s×6本引き揃えの糸と同時に、ポリウレタン20デニールにナイロン70デニールを巻きつけたフィラメントツイストヤーンを挿入し、綿60%、アクリル25%、ナイロン14%、ポリウレタン1%の靴下編地を作製した。
【0048】
この編地を実施例1と同一の靴下製品加工を行い、60g/1足(1ペア)、14ウエル、22コースの靴下製品を得た。得た編地はタテおよびヨコの平均伸長率が139%、平均伸長回復率が62%であるものの、洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、タンブル70℃×40分・10回繰り返し)による収縮が13%と洗濯による収縮が大きく問題があった。また、靴下表面の荒れも激しく、見た目に劣るものであった。詳細結果を表1に併せて示す。
[比較例2]
実施例1と同じ編機を用い、綿70%、アクリル30%混紡の紡績糸32s×6本引き揃えの糸のみで、綿70%、アクリル30%の靴下編地を作成した。
【0049】
この編地を実施例1と同一の靴下製品加工を行い、60g/1足(1ペア)、12ウエル、18コースの靴下製品を得た。得られた編地はタテおよびヨコの平均伸長率が61%、平均伸長回復率が55%であり、ストレッチ特性に劣るものであった。また洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、タンブル70℃×40分・10回繰り返し)による収縮も11%と大きく、問題があった。詳細結果を表1に併せて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
本発明の靴下は、従来の靴下に比べ、伸長率、伸長回復率に優れ、かつ、洗濯後の乾燥機使用による収縮、表面の荒れも非常に少ないという機能性も持ち、幅広い分野に適用できるものであり、効率良く低コストで製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】荷重−伸長回復曲線の説明図である。
【図2】本発明に使用する繊維の繊維横断面形状の一例を示すモデル図である。
【符号の説明】
L1:編地の伸び
L2:編地の歪み伸び
L3:編地の回復伸び
a〜g:繊維横断面形状
Claims (4)
- 複数のポリエステル重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維フィラメントを含み、タテおよびヨコ方向の平均伸長率が70%以上、平均伸長回復率が60%以上である編地からなり、かつ洗濯後の乾燥機使用(JIS L 0217 103法、70℃×40分・10回繰り返し)によるタテおよびヨコ方向の平均収縮が10%以下である靴下。
- 該複合繊維フィラメントを構成するポリエステル重合体のうち、少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートである請求項1に記載の靴下。
- 該複合繊維フィラメントの単繊維繊度が0.1〜22デシテックス、総繊維繊度が22〜330デシテックスである請求項1または2に記載の靴下。
- 密度が4〜60ウエル/インチおよび5〜96コース/インチ、かつ目付けが10〜150g/一足(1ペア)である請求項1〜3のいずれかに記載の靴下。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101842802B1 (ko) * | 2016-11-30 | 2018-03-27 | 민형미 | 영유아용 신축성 양말의 제조방법 및 그 방법에 의해 제조된 양말 |
WO2020251105A1 (ko) * | 2019-06-13 | 2020-12-17 | 폴프랜즈 주식회사 | 영유아용 신축성 양말의 제조방법 및 그 방법에 의해 제조된 양말 |
-
2003
- 2003-02-12 JP JP2003033449A patent/JP2004244736A/ja not_active Withdrawn
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