JP6822159B2 - 非水電解質、非水電解質蓄電素子 - Google Patents
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Description
水への溶解度が0.01g/100mL以上であるジルコニウム塩又はカルシウム塩を含有する非水電解質の製造方法である。
フッ素化環状カーボネートを含有する非水電解質を用いた蓄電素子では、充放電サイクルに伴って、非水電解質中に炭酸ガス等が多く含まれるようになるために、蓄電素子が膨張するものと考えている。
塩基性化合物であるジルコニウム塩又はカルシウム塩は、酸性ガスである炭酸ガスを捕捉しやすいという性質を持つ。一方、非水電解質蓄電素子に使用される非水電解質は水分の含有量が極めて少ない。そこで、水への溶解度が0.01g/100mL以上となる比較的溶けやすいジルコニウム塩又はカルシウム塩を用いることで、電解液に含まれる微量の水分を介して非水電解質中に溶解した炭酸ガス等を捕捉できるために、非水電解質蓄電素子の膨張を抑制できると考えられる。
本発明の一実施形態に係る蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質を有する。以下、蓄電素子の一例として、二次電池について説明する。上記正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回された電極体を形成する。この電極体はケースに収納され、このケース内に上記非水電解質が充填される。上記非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、上記ケースとしては、二次電池のケースとして通常用いられる公知のアルミニウムケース等を用いることができる。
上記正極は、導電性の基材と、この基材に積層された正極合材層とを有する。
正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスからアルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。つまり、正極基材としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H−4000(2014年)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
上記正極合材層は、正極活物質を含むいわゆる正極合材から形成される。また、正極合材層を形成する正極合材は、必要に応じて導電剤、バインダー(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含むことができる。
リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合は遷移金属のモル数に対して30%を超えることが好ましく、33%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましい。一方、リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属のモル数に対するニッケルのモル数の割合が80%を超えるとリチウム遷移金属複合酸化物の初期クーロン効率が低下する傾向がある。これらの観点から、リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属のモル数に対するニッケルのモル数の割合は80%以下とすることが好ましい。
また、上記の様なニッケルのモル数の割合を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、非水電解質の溶媒に対するニッケルの活性が大きく、正極での副反応が大きくなりやすい傾向が有るので、本発明の非水電解質を適用することで非水電解質蓄電素子の充放電サイクルに伴う膨張を抑制することができるので好ましい。
上記負極は、負極基材、及びこの負極基材に積層される負極合材層を有する。
上記セパレータは、正極と負極とを隔離し、かつ非水電解質を保持する役割を担う。セパレータの材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。また、これらの樹脂とアラミドやポリイミド等の樹脂とを複合した多孔質樹脂フィルムを用いてもよい。
上記非水電解質は、非水溶媒と電解質塩の他に、フッ素化環状カーボネート、及び、水への溶解度が0.01g/100mL以上であるジルコニウム塩又はカルシウム塩を含む。さらに、上記非水電解質には、非水電解質蓄電素子の性能を高めるために、本発明の効果を完全に打ち消さない範囲で添加剤が含有されていてもよい。
これらの中でも、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が好ましい。フルオロエチレンカーボネート(FEC)を用いることで、正極での非水溶媒の酸化分解が抑制され、非水電解質蓄電素子の充放電サイクル特性を向上させることができる。
これらの中でも、水酸化ジルコニウムを用いることが好ましい。
これらの中でも、水酸化カルシウムを用いることが好ましい。
中でも、0.5質量%超1質量%以下とすることで、非水電解質蓄電素子の膨張を抑制する効果が特に高くなるので好ましい。
本発明の一実施形態に係る上記非水電解質蓄電素子の製造方法は、
(1)非水溶媒とフッ素化環状カーボネートを混合した溶液に電解質塩を溶解させること
(2)上記溶液に所定含有量となるようにジルコニウム塩又はカルシウム塩を加えること
(3)(2)で得られた非水電解質を後述する非水電解質蓄電素子の容器内に注入すること
を有する。
(1)非水溶媒とフッ素化環状カーボネートを混合した溶液にジルコニウム塩又はカルシウム塩を加えること
(2)上記溶液に電解質塩を溶解させること
(3)(2)で得られた非水電解質を、後述する非水電解質蓄電素子の容器内に注入すること
としても良い。ここで、上記ジルコニウム塩又はカルシウム塩は、水への溶解度が0.01g/100mL以上である。また、ジルコニウム塩とカルシウム塩を両方加えても良い。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。上記実施の形態においては、蓄電素子が二次電池である形態を中心に説明したが、その他の蓄電素子であってもよい。その他の蓄電素子としては、例えばキャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。
(正極)
正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を用いた。この正極活物質と、導電剤であるアセチレンブラック(AB)と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び非水系溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)を用いて正極合材ペーストを作製した。正極活物質、結着剤及び導電剤の質量比率は93:3:4(固形分換算)とした。この正極合材ペーストを正極基材としてのアルミニウム箔(厚さ15μm)の両面に、正極合材層非形成部を残して間欠塗工し、乾燥させることで正極合材層を作製した。その後、正極合材層表面をロールプレスし、正極を得た。正極の片面当たりの塗布質量は17.7mg/cm2であった。
負極活物質である黒鉛、結着剤であるスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及び溶媒である水を用いて負極合材ペーストを作製した。黒鉛とSBRとCMCの質量比率は96.7:2.1:1.2とした。負極合材ペーストは、水の量を調整することにより、固形分(質量%)を調整し、マルチブレンダーミルを用いた混練工程を経て作製した。この負極ペーストを銅箔(厚さ10μm)の両面に、負極合材層非形成部を残して間欠塗布し、乾燥することにより負極合材層を作製した。その後、ロールプレスを行い、負極を作製した。正極の片面当たりの塗布質量は11.0mg/cm2であった。
フルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを、それぞれ10体積%、90体積%となるように混合した溶媒に、塩濃度が1.0mol/Lとなるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。この溶液に、プロペンスルトンを非水電解質に対して2質量%、水酸化カルシウムを非水電解質に対して0.5質量%となるように加えることで非水電解質を調製した。非水電解質中の水分量は50ppm未満とした。
セパレータには、厚み21μmのポリエチレン製微多孔膜を用いた。
上記正極と、負極と、セパレータとを積層して巻回した。その後、正極の正極合材層非形成部及び負極の負極合材層非形成部を正極リード及び負極リードにそれぞれ溶接してアルミ製角形容器に封入し、容器と蓋板とを溶接後、非水電解質を注入して封口した。この様にして、実施例1の電池を作製した。
フルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを、それぞれ10体積%、90体積%となるように混合した溶媒に、塩濃度が1.0mol/Lとなるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。この溶液に、プロペンスルトンを非水電解質に対して2質量%、水酸化ジルコニウムを非水電解質に対して0.5質量%となるように加えることで非水電解質を調製した。この非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電池を得た。
フルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを、それぞれ10体積%、90体積%となるように混合した溶媒に、塩濃度が1.0mol/Lとなるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。この溶液に、プロペンスルトンを非水電解質に対して2質量%となるように加えることで非水電解質を調製した。この非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電池を得た。
フルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを、それぞれ10体積%、90体積%となるように混合した溶媒に、塩濃度が1.0mol/Lとなるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。この溶液に、プロペンスルトンを非水電解質に対して2質量%、水酸化アルミニウムを非水電解質に対して0.5質量%となるように加えることで非水電解質を調製した。この非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電池を得た。
(容量測定)
上記のようにして作製された実施例1、2及び比較例1、2の各電池について、25℃に設定した恒温槽中で、以下の容量測定を実施し、電池の公称容量と同等の電気量の充放電が可能であることを確認した。容量測定の充電条件は、電流値1CA、電圧4.35Vの定電流定電圧充電とした。充電時間は通電開始から3時間とした。放電条件は、電流1CA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。充電と放電の間には、10分間の休止時間を設けた。なお、上記電流値である1CAとは、電池に1時間の定電流通電を行った時に、電池の公称容量と同じ電気量となる電流値である。
容量測定後の各電池について、電池厚さの測定を行った。
電池の長側面の中心部を当該長側面に対して略垂直な方向から(短側面の面方向に略水平な方向に)ノギスで挟み、電池厚さを測定した。この値を「サイクル前電池厚さ−1(mm)」として記録した。
電池厚み測定後の各電池について、45℃に設定した恒温槽中で、充放電サイクル試験を行った。
充電電流1CmA、充電電圧4.35Vの定電流定電圧充電、及び放電電流1CmA、放電終止電圧2.75Vの定電流放電を繰り返す充放電を100サイクル行った。
充放電サイクル試験後の各電池について、サイクル試験前と同じ様に電池厚さの測定を行った。
この値を「サイクル後電池厚さ−1(mm)」として記録した。
「サイクル前電池厚さ−1(mm)」に対する「サイクル後電池厚さ−1(mm)」の比(サイクル後電池厚さ−1/サイクル前電池厚さ−1)を「電池厚さ増加率−1(%)」とした。表1に「電池厚さ増加率−1(%)」の値を示す。
また、実施例1及び実施例2の電池は、上記ジルコニウム塩又はカルシウム塩ではない、アルミニウム塩を含む非水電解質を用いた電池(比較例2)と比較しても、45℃サイクル試験後の電池厚さ増加率が小さくなっていることが判る。
これらの結果から、フッ素化環状カーボネートを含有する非水電解質において、水への溶解度が0.01g/100mL以上であるジルコニウム塩又はカルシウム塩を含む非水電解質を用いることで、サイクル試験に伴う電池膨れを抑制することできる。
フルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを、それぞれ10体積%、90体積%となるように混合した溶媒に、塩濃度が1.0mol/Lとなるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。この溶液に、プロペンスルトンを非水電解質に対して2質量%、水酸化ジルコニウムを非水電解質に対して1質量%となるように加えることで非水電解質を調製した。この非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の電池を得た。
(容量測定)
上記のようにして作製された実施例2、3及び比較例1の各電池について、25℃に設定した恒温槽中で、以下の容量測定を実施し、電池の公称容量と同等の電気量の充放電が可能であることを確認した。容量測定の充電条件は、電流値1CA、電圧4.35Vの定電流定電圧充電とした。充電時間は通電開始から3時間とした。放電条件は、電流1CA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。充電と放電の間には、10分間の休止時間を設けた。なお、上記電流値である1CAとは、電池に1時間の定電流通電を行った時に、電池の公称容量と同じ電気量となる電流値である。
容量測定後の各電池について、電池厚さの測定を行った。
電池の長側面の中心部を当該長側面に対して略垂直な方向から(短側面の面方向に略水平な方向に)ノギスで挟み、電池厚さを測定した。この値を「サイクル前電池厚さ−2(mm)」として記録した。
電池厚み測定後の各電池について、45℃に設定した恒温槽中で、充放電サイクル試験を行った。
充電電流1CmA、充電電圧4.35Vの定電流定電圧充電、及び放電電流1CmA、放電終止電圧2.75Vの定電流放電を繰り返す充放電を500サイクル行った。
サイクル試験の1サイクル目の放電容量(mAh)に対する500サイクル目の放電容量(mAh)の割合を、「容量維持率(%)」として表2に示す。
充放電サイクル試験後の各電池について、サイクル試験前と同じ様に電池厚さの測定を行った。
この値を「サイクル後電池厚さ−2(mm)」として記録した。
「サイクル前電池厚さ−2(mm)」に対する「サイクル後電池厚さ−2(mm)」の比(サイクル後電池厚さ−2/サイクル前電池厚さ−2)を「電池厚さ増加率−2(%)」とした。表2に「電池厚さ増加率−2(%)」の値を示す。
また、水酸化ジルコニウムを1質量%含む非水電解質を用いた電池(実施例3)は、水酸化ジルコニウムを0.5質量%含む非水電解質を用いた電池(実施例2)よりも45℃サイクル試験後の電池厚さ増加率が小さくなっていることが判る。
さらに、水酸化ジルコニウムを0.5質量%、1質量%含む非水電解質を用いた電池(実施例2及び実施例3)は、上記ジルコニウム塩を含まない非水電解質を用いた電池(比較例1)と比較して、45℃サイクル試験において、容量維持率が大きくなっており、充放電サイクル性能に優れていることが判る。
2 電極体
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (5)
- フッ素化環状カーボネート、及び、
20±0.5℃における水への溶解度が0.01g/100mL以上であるジルコニウム塩を含有する、又は、20±0.5℃における水への溶解度が0.01g/100mL以上であるカルシウム塩を非水電解質に対して2質量%未満含有する非水電解質(但し、酸化カルシウムを含有するもの、及び、塩化ジルコニウムの含有量が非水電解質に対して0.02〜0.50質量%であるものを除く)。 - ジルコニウム塩を含有し、上記ジルコニウム塩が水酸化ジルコニウムであり、水酸化ジルコニウムの含有量が非水電解質に対して2質量%未満である、請求項1に記載の非水電解質。
- カルシウム塩を含有し、上記カルシウム塩が水酸化カルシウムであり、水酸化カルシウムの含有量が非水電解質に対して2質量%未満である、請求項1に記載の非水電解質。
- 請求項1〜3のいずれかの非水電解質を用いた非水電解質蓄電素子。
- フッ素化環状カーボネート、及び、
20±0.5℃における水への溶解度が0.01g/100mL以上であるジルコニウム塩を含有する、又は、20±0.5℃における水への溶解度が0.01g/100mL以上であるカルシウム塩を非水電解質に対して2質量%未満含有する非水電解質(但し、酸化カルシウムを含有するもの、及び、塩化ジルコニウムの含有量が非水電解質に対して0.02〜0.50質量%であるものを除く)を用いた非水電解質蓄電素子の製造方法。
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